(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの内面に対する密封剤の貼付方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
B29D30/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542549
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2020050488
(87)【国際公開番号】W WO2020152596
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019000001153
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ポントーニ
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP02
4F215AP06
4F215AQ01
4F215AQ04
4F215VA02
4F215VA16
4F215VD22
4F215VK34
4F215VP11
4F215VQ02
(57)【要約】
空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)を貼り付けるための貼付システム(1)及び方法が開示される。これは、空気入りタイヤ(4)を支持装置(5)により回転軸線(6)周りで回転させるステップと、空気入りタイヤ(4)の内側に配置される分配ヘッド(10)により、空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)の層を貼付するステップと、堆積直後の密封剤(2)の層を、空気入りタイヤ(4)の内面(3)に対して押圧ローラ(12)により押圧するステップと、堆積直後の密封剤(2)の層に対して、所望値(F
DES)の力(F)を生成するアクチュエータ装置(16)により押圧ローラ(12)を押し付けるステップと、アクチュエータ装置(16)により生成される力(F)の測定値(F
MSR)を、力センサー(18)により決定するステップと、アクチュエータ装置(16)により生成される力(F)を、力(F)の測定値(F
MSR)の関数として周期的に変化させるステップと、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)を貼り付ける貼付方法であって、
・空気入りタイヤ(4)を支持装置(5)によって回転軸線(6)周りで回転させるステップと、
・空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)の層を、空気入りタイヤ(4)の内側に配置される分配ヘッド(10)によって堆積させるステップと、
・堆積直後の密封剤(2)の層を、空気入りタイヤ(4)の内面(3)に対して、押圧ローラ(12)によって押圧するステップと、
・該押圧ローラ(12)を、堆積直後の密封剤(2)の層に対して、所望値(F
DES)の力(F)を生成するアクチュエータ装置(16)によって押し付けるステップと、
を備える貼付方法において、
・該アクチュエータ装置(16)によって生成された力(F)の測定値(F
MSR)を、力センサ(18)によって決定するステップと、
・前記アクチュエータ装置(16)によって生成される力(F)を、力(F)の測定値(
FMSR)の関数として周期的に変化させるステップと、
を更に備えることを特徴とする、貼付方法。
【請求項2】
請求項1に記載の貼付方法であって、前記前記アクチュエータ装置(16)によって生成される力(F)を、所望値(F
DES)に追従するフィードバック制御によって周期的に変化させる、貼付方法。
【請求項3】
請求項2に記載の貼付方法であって、
・力(F)の所望値(F
DES)と、力(F)の測定値(F
MSR)との差に基づいて力誤差(e)を計算するステップと、
・前記アクチュエータ装置(16)を駆動するために使用可能な目標値(P
TRG)を、前記力誤差(ε)の関数として決定するステップと、
を更に備える、貼付方法。
【請求項4】
請求項3に記載の貼付方法であって、
・位置センサー(7)によって空気入りタイヤ(4)の回転軸線(6)周りでの角度位置(α)を決定するステップと、
・該空気入りタイヤ(4)の角度位置(α)の関数として補正値(P
COR)を決定するステップと、
・該補正値(P
COR)を前記目標値(P
TRG)に適用する際に前記アクチュエータ装置(16)を駆動するための作動値(P
ACT)を決定するステップと、
を更に備える、貼付方法。
【請求項5】
請求項4に記載の貼付方法であって、前記作動値(P
ACT)を、前記補正値(P
COR)と前記目標値(P
TRG)に基づいて決定する、貼付方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の貼付方法であって、
・前記角度位置(α)の関数として前記補正値(P
COR)について想定される複数の進展をメモリ(24)に格納するステップと、
・前記メモリ(24)に格納された補正値(P
COR)の想定される複数の進展のうちの少なくとも1つを利用して、前記目標値(P
TRG)に適用される前記補正値(P
COR)を決定するステップと、
を更に備える、貼付方法。
【請求項7】
請求項6に記載の貼付方法であって、
・前記メモリ(24)に格納された角度位置(α)の関数としての補正値(P
COR)の各進展に対して、前記角度位置の(α)の関数(F)としての力(F)の測定値(F
MSR)の対応する進展を関連付けるステップと、
・前記メモリ(24)に格納された角度位置(α)の関数としての力(F)の測定値(F
MSR)について想定される全ての進展から、前記力センサ(18)によってリアルタイムで測定される力(F)の測定値(F
MSR)の進展に最も近似する力(F)の測定値(F
MSR)の進展を識別するステップと、
・その後、関連する補正値(P
COR)の進展を利用して、前記目標値(P
TRG)に適用すべき補正値(P
COR)を決定するステップと、
を更に備える、貼付方法。
【請求項8】
請求項7に記載の貼付方法であって、前記メモリ(24)に格納された角度位置(α)の関数としての力(F)の測定値(F
MSR)について想定される全ての進展のうちで、前記力センサ(18)によってリアルタイムで測定される力(F)の測定値(F
MSR)の進展に最も近似する力(F)の測定値(F
MSR)の進展を識別するために、人工ニューラルネットワーク等の人工知能アルゴリズムを使用する、貼付方法。
【請求項9】
請求項6に記載の貼付方法であって、
・前記メモリ(24)に格納された角度位置(α)の関数としての補正値(P
COR)の各進展に対して、該角度位置の(α)の関数(F)としての力(F)の測定値(F
MSR)の対応する進展を関連付けるステップと、
・前記メモリ(24)に格納された角度位置(α)の関数としての力(F)の測定値(F
MSR)について想定される全ての進展のうちで、前記力センサ(18)によってリアルタイムで測定される力(F)の測定値(F
MSR)の進展に最も近似する力(F)の測定値(F
MSR)の進展を有する補正値(F
COR)の進展を利用して、前記目標値(P
TRG)に適用すべき補正値(P
COR)を決定するステップと、
を更に備える、貼付方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の貼付方法であって、前記アクチュエータ装置(16)が、加圧ガスによって弾性力を発生させる空圧式である、貼付方法。
【請求項11】
空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)を貼り付けるための貼付システム(1)であって、
・空気入りタイヤ(4)を回転軸線(6)周りで回転させるための支持装置(5)と、
・空気入りタイヤ(4)内に配置可能であり、空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)の層を堆積させるための分配ヘッド(10)と、
・堆積直後の密封剤(2)の層を空気入りタイヤ(4)の内面(3)に対して押圧するための押圧ローラ(12)と、
・所望値(F
DES)の力(F)を生成して押圧ローラ(12)を、堆積直後の密封剤(2)の層に対して押し付けるためのアクチュエータ装置(16)と、
を備える貼付装置(1)において、
・前記アクチュエータ装置(16)によって生成される力(F)の測定値(F
MSR)を決定するための力センサ(18)と、
・前記アクチュエータ装置(16)によって生成される力(F)を、力(F)の測定値(F
MSR)の関数として周期的に変化させるための制御ユニット(19)と、
を備える貼付システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの内面に密封剤を貼り付けるための貼付方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤの開発は、パンク孔を封止するための密封剤が内張りに貼り付けられた空気入りタイヤに向けられている。通常、密封剤は高い粘度を有することにより、空気入りタイヤの状態に関係なく、パンク孔に対する封止作用と、タイヤの内部キャブティ内における安定性の両方を確保している。
【0003】
密封剤は、空気入りタイヤの接地領域(パンクが発生する可能性がある空気入りタイヤの領域)において、加硫済みの空気入りタイヤに貼り付けられる。特に、密封剤は、トレッドと、サイドウォールの一部に貼り付けられる。
【0004】
既知の密封剤貼付システム、例えば欧州特許出願公開第0080968号公報(特許文献1)や米国特許第4398492号明細書(特許文献2)に記載されている密封剤貼付システムでは、密封剤貼付装置が加硫済みの空気入りタイヤに挿入される。密封剤貼付装置は、軸線方向に移動可能であり、かつ、密封剤をストリップ状に分配するための分配ヘッドを一端で支持するアームを備える。空気入りタイヤを(典型的には、空気入りタイヤを載置した電動ローラによって)その回転軸線周りで回転させ、アームによって支持される分配ヘッドを空気入りタイヤの一側から空気入りタイヤの他側まで軸線方向に移動させることにより、空気入りタイヤの内面を覆う密封剤を、内面上で螺旋状に堆積させる(すなわち、密封剤が螺旋状に貼り付けられる)。
【0005】
空気入りタイヤの内面上に堆積させる密封剤のストリップのより高い均一性と、空気入りタイヤの内面に対する密封剤の層のより良好な接着性の両者を確実なものとするため、空気入りタイヤの回転方向において分配ヘッドの上流側に配置される押圧ローラを分配ヘッドに取り付け、その押圧ローラによって堆積直後の密封剤の層を空気入りタイヤの内面に押し付けることが提案されている。
【0006】
押圧ローラは、(空気入りタイヤの内面に対して垂直な)半径方向に移動できるように可動に取り付けられ、所定のばね力を有するばねにより、堆積直後の密封剤の層に対して一定の力で押し付けられる。これにより、押圧ローラは、所定の所望値にほぼ等しい一定の力で密封剤の層を押圧する際に、密封剤の層の形状及び空気入りタイヤの内面の形状にそれ自体を適応させることができる。
【0007】
しかしながら、既知の貼付システムにおいて、押圧ローラが密封剤の層を押圧する実際の力は、(特に、空気入りタイヤの回転速度を増加させて、密封剤貼付サイクルの完了までの所要時間を短縮する場合に)所望値と比較して有意な偏差のあり得ることが確認された。すなわち、密封剤の層の高い均一性は、常に達成可能であるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0080968号公報
【特許文献2】米国特許第4398492号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明の課題は、空気入りタイヤの内面に密封剤を貼り付けるための貼付システム及び方法、特に、上述した欠点がなく、製造が容易かつ経済的である貼付システム及び方法を提供することである。
【0010】
本発明によれば、空気入りタイヤの内面に密封剤を貼り付けるために、添付の特許請求の範囲に記載されている貼付システム及び方法が提供される。
【0011】
請求項は、本明細書の一体部分として、本発明の好適な実施形態を記載するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
次に、添付図面に示す例示的な実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【
図1】本発明に係る貼付システムを、明確性の見地から一部を取り除いた状態で示す概略側面図である。
【
図3】
図1の貼付システムにおける制御ユニットに実装される制御ロジックを説明するためのブロック図である。
【
図4】
図1の貼付システムにおける押圧ローラによって堆積直後の密封剤の層を押圧する有効な力の進展変動を、空気入りタイヤの角度位置の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、参照数字1は、空気入りタイヤ4の内面3の少なくとも一部に密封剤2を貼り付けるための貼付システム1全体を示している。換言すれば、空気入りタイヤ4は、外面と、外面とは反対側の内面3によって境界が定められるトロイダル形状を有し、密封剤2は、内面3の少なくとも一部に貼り付けられる。一般的に、密封剤2は、トレッドに配置された内面3と、側面部に配置された内面3の一部(通常はパンクが発生する可能性のある領域)に貼り付けられる。
【0014】
貼付システム1は、垂直位置に配置される空気入りタイヤ4を支持すると共に、空気入りタイヤ4を対称的な中心軸線と一致する回転軸線6の周りで回転させるための支持装置5を備える。通常、支持装置5は、空気入りタイヤ4を垂直位置で安定に保持するためのサイドレール(図示せず)と、空気入りタイヤ4を載置して駆動するための電動ローラ(線図的に示す)を備える。
【0015】
貼付システム1は、回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4の角度位置を決定するための位置センサ7を備える。位置センサ7は、例えば、支持装置5における電動ローラの1つに結合された角度エンコーダ等で構成することができ、位置センサ7は、空気入りタイヤ4の変位を直接的に読み取ることができる。
【0016】
貼付システム1は、空気入りタイヤ4のサイドウォールにおける外面に対向して配置され、サイドウォールに施されている図形識別コード(通常はバーコード等)を読み取るためのカメラ8を備える。空気入りタイヤ4において、図形識別コードは常に同一位置(更には同一角度位置)に施されるため、カメラ8が図形識別コードの存在を検出すると、空気入りタイヤ4回転軸線6周りでの対応する角度位置を状況に応じて決定して、回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4の角度位置の絶対角度基準位置を取得することができる。
【0017】
貼付システム1は、空気入りタイヤ4の内面3上に密封剤2のストリップを堆積させるための、密封剤2の貼付ユニット9を備える。貼付ユニット9は、空気入りタイヤ4の内面3上に堆積される密封剤2のストリップを分配するための分配ヘッド10と、分配ヘッド10を支持し、かつ移動させるための移動装置11(例えばロボットアーム)を備える。貼り付けの開始時及び終了時に、移動装置11は分配ヘッド10をそれぞれ空気入りタイヤ4の内側及び外側で移動させる。他方、貼り付けの間、移動装置11は分配ヘッド10を空気入りタイヤ4の一側から他側まで(回転軸線6と平行な)軸線方向に移動させつつ、密封剤2の均一な層を、内面3が覆われるように内面3上に堆積させる(密封剤2は螺旋状に施される)。
【0018】
分配ヘッド10は、密封剤2のリザーバと、密封剤2をリザーバから吸い出し、加圧下で分配ヘッド10に供給するポンプ体を含む密封剤2の供給装置に(通常は可撓パイプを介して)接続されている。
【0019】
空気入りタイヤ4の回転方向において分配ヘッド10の上流側に配置される押圧ローラ12は、分配ヘッド10上に取り付けられ、密封剤2の堆積直後の層を空気入りタイヤ4の内面3に対して押し付けるためのものである。押圧ローラ12の機能は、密封剤2の層のより高い均一性と、空気入りタイヤ4の内面3に対する密封剤2の層のより良好な接着の両者を確実なものとすることである。
【0020】
好適な実施形態において、押圧ローラ12の外面は、低接着性材料(例えば、非粘着性テフロン(登録商標)等のコーティング)によって被覆されている。好適な実施形態において、押圧ローラ12の外面は、押圧ローラ12に配置された電気抵抗等によって、所定の温度まで加熱される。非粘着性コーティングと加熱を組み合わせれば、押圧ローラ12の外面に対する密封剤2の付着を一層確実に防止することができる。
【0021】
図2に明示するように、押圧ローラ12は、回転軸線13(押圧ローラ12の対称中心軸線と一致し、空気入りタイヤ4の回転軸線6に平行である)の周りで回転可能に取り付けられ、自由である。すなわち、押圧ローラ12は、回転軸線13周りで自由回転する構成とされている。更に、押圧ローラ12は、半径方向(空気入りタイヤ4の内面3に対して垂直で、空気入りタイヤ4の回転軸線6に対して垂直な方向)に移動(並進)できるように可動に取り付けられている。特に、押圧ローラ12は、回転軸線13周りで回転できるように支持アーム14の一端にヒンジ結合される一方で、他方、支持アーム14の他端(支持アーム14における押圧ローラ12とは反対側の端部)は、押圧ローラ12の回転軸線13に平行な回転軸線15(空気入りタイヤ4の回転軸線6に対して平行)の周りで回転できるように分配ヘッド10自体にヒンジ結合されている。
【0022】
押圧ローラ12自体を密封剤2の堆積直後の層に対して常に押し付けるため、押圧ローラ12を押し込むための空気ばね16(加圧ガスにより弾性力を生成するガスばね)が設けられている。空気ばね16が生成する荷重(弾性力)は、電気的に調整可能である。換言すれば、空気ばね16が生成する荷重(弾性力)は、一定ではないが、空気ばね16内に組み込まれた電動アクチュエータを作動させることにより、必要に応じて調整することができる。好適ではあるが非限定的な実施形態において、空気ばね16の固定部分はブラケット17を介して分配ヘッド10に剛性的に取り付けられる一方で、空気ばね16の可動部分(ピストン)は支持アーム14を押し込み可能とされている。
【0023】
空気ばね16により支持アーム14に対して(直接的に)加えられる力F、したがって押圧ローラ12に対して(間接的に)加えられる力Fを測定するために、力センサ18(例えばロードセル)が空気ばね16に取り付けられている。異なる完全に同等の実施形態において、力センサ18は、押圧ローラ12に加えられる力Fを直接測定するように、押圧ローラ12に(例えば、押圧ローラ12のベアリング内で)組み込まれる。
【0024】
貼付システム1は、空気ばね16が押圧ローラ12(したがって、支持アーム14)に加える力Fを制御することのできる制御ユニット19を備える。これにより、力Fは、所定の所望値FDES(一般的には一定であるが、空気入りタイヤ4の形式の関数として、及び密封剤2の種類の関数として変化する)に可能な限り等しい値に維持される。特に、制御ユニット19は、空気ばね16(特に、その電動アクチュエータ)に対して作動値PACTを周期的に供給し、その作動値は、例えば空気ばね16内におけるガスの所望圧力に対応するものとする。換言すれば、制御ユニット19は、(必要に応じて)作動値PACTを周期的に変化させ、これに基づいて空気ばね16の電動アクチュエータは、押圧ローラ12(したがって支持アーム14)に対して空気ばね16が加える力Fの所望値FDESに追従するように駆動される。
【0025】
図3に示すように、制御ユニット19は、所定の所望に従うように、空気ばね16により押圧ローラ12に対して(ひいては支持アーム14に対して)加えられる力Fが所定の所望値F
DESに追従するように、すなわち、空気ばね16により押圧ローラ12に加えられる力Fの(力センサ18による)測定値F
MSRが、空気ばね16により押圧ローラ12に加えられる力Fの所定の所望値F
DESと可能な限り同一となるように、フィードバック制御を実行する。
【0026】
図3に示す実施形態において、制御ユニット19は、空気ばね16が押圧ローラ12に加える力Fの所望値F
DESを提供するためのメモリブロック20を備える。一般的に、所望値F
DESは一定であり、空気入りタイヤ4の形式、密封剤2の種類、及び場合によっては、空気入りタイヤ4の内面3に堆積された密封剤2の層の厚さの変化のみに基づいて変化する。
【0027】
制御ユニット19は、空気ばね16が押圧ローラ12に加える力Fの所望値FDESと、空気ばね16が押圧ローラ12に加える力Fの(力センサ18による)測定値FMSRとの差を計算することにより力誤差εを計算するための減算器ブロック21を備える。
【0028】
制御ユニット19は、空気ばね16の電動アクチュエータを駆動するために使用される目標値PTRGを、力誤差εの関数として決定するための制御ブロック22(通常はPIDコントローラ)を備える。
【0029】
制御ユニット19は、回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4の角度位置α(位置センサ7で決定される)の関数として、補正値PCORを決定するための計算ブロック23を備える。好適な実施形態において、計算ブロック23によって提供される補正値PCORは、回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4の角度位置α(位置センサ7で決定される)の関数として可変であり、したがって、空気入りタイヤ4の非対称性(例えば、トレッドパターン内における詰まったスペースと空のスペースの周期的な入れ替わりや、接合部の存在による)を考慮に入れることが可能である。好適な実施形態において、計算ブロック23は、角度位置αの関数としての補正値PCORについて想定される複数の進展を格納するためのメモリ24を備える。
【0030】
好適な実施形態において、メモリ24に格納された角度位置αの関数としての補正値PCORの各進展は、角度位置αの関数としての力Fの測定値FMSRの対応する進展と関連している。認識システム(例えば、人工ニューラルネットワーク等の人工知能アルゴリズムに基づくもの)を使用して、計算ブロック23は、メモリ24に格納された角度位置αの関数として、測定値FMSRについて想定される全ての進展のうちで、力センサ18によってリアルタイムで提供される測定値FMSRの進展に最も近似する測定値FMSRの進展を識別し、次に、補正値PCORの関連する進展を利用する。換言すれば、メモリ24に格納された補正値PCORの各進展は、測定値FMSRの対応する進展によって特徴付けられ、したがって、計算ブロック23は、力センサ18によってリアルタイムで提供される測定値FMSRの進展に最も近似する測定値FMSRの進展を含む補正値PCORを選択する。時間の経過に伴って、計算ブロック23のメモリ24は、補正値PCORの新たな進展が徐々に蓄積され、次第に一層「エキスパート」になる。一実施形態において、計算ブロック23は、メモリ24に格納された2つ以上の補正値PCORの進展の数学的補間に基づいて、外部に提供すべき補正値PCORの進展を決定することができる。これは、力センサ18によってリアルタイムに提供される測定値FMSRの進展に近似する測定値FMSRの関連する進展を有するものとする。
【0031】
別の実施形態においては、角度位置αの関数としての補正値PCORの進展のみがメモリ24内に記憶される(測定値FMSRの対応する進展は存在しない)。この場合、計算ブロック23は、外部に供給される補正値PCORの進展を、空気入りタイヤ4の形式の関数として、密封剤2の種類の関数として、そして空気入りタイヤ4の内面3上に堆積された密封剤2の層の厚さの関数として選択する。
【0032】
制御ユニット19は、制御ブロック22によって供給される目標値PTRGと計算ブロック23によって供給される補正値PCORを(代数的に、すなわち符号を考慮して)加算することにより作動値PACTを計算するための加算器ブロック25を備える。
【0033】
換言すれば、制御ブロック22によって供給される目標値PTRGは、空気ばね16に供給され、又は空気ばね16の電動アクチュエータを駆動するために使用される作動値PACTを決定するために、計算ブロック23から供給される補正値PCORによって補正される。
【0034】
図示しない別の実施形態においては、ブロック24及び25が設けられていない。したがって、空気ばね16の電動アクチュエータを駆動するために使用される作動値PACTは、制御ブロック22によって直接的に供給される。この場合、作動値PACTは、補正値PCORが存在しないことにより、制御ブロック22によって供給される目標値PTRGと一致する。
【0035】
要約すると、制御ユニット19は、回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4の角度位置α(位置センサ7で決定)と、空気ばね16が押圧ローラ12に加える力Fの測定値FMSR(力センサ18で決定)を受信し、これらの量を処理される密封剤2の貼り付け予測モデル内で人工知能アルゴリズムによって組み合わせることにより、空気ばね16の電動アクチュエータを駆動するための作動値PACTを決定する。
【0036】
図4及び
図5は、空気ばね16によって押圧ローラ12に加えられる力Fの測定値F
MSR(力センサ18によって決定される)の2組の実験データを、(回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4の(位置センサ7により決定される)角度位置αの変化(0°~360°)の関数として示す。
図4のデータは、上述した制御方法を無効化した状態で取得したものであり、空気ばね16によって押圧ローラ12に加えられる力Fが±10%前後の範囲内で変動していることを示している。対照的に、
図5のデータは、上述した制御方法を有効化した状態で取得したものであり、空気ばね16によって押圧ローラ12に加えられる力Fが約±3%の範囲内で変動している(力Fの変動幅が3分の1に減少している)ために正味の改善が図られていることを示している。
【0037】
図示しない別の実施形態において、空気ばね16は、電気的に可変調整可能な力Fを押圧ローラ12に加えることができる別形式のアクチュエータ装置(空圧式又はその他の形式)に置き換えられる。
【0038】
本明細書に記載した実施形態は、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせることができる。
【0039】
上述した貼付システム1は、多くの利点を有している。
【0040】
先ず、上述した貼付システム1によれば、密封剤2の層の貼り付けに際して空気ばね16が押圧ローラ12に加える力Fの変動を大幅に(
図4及び5に示すデータを対比すれば分かるように、約3分の1まで)減少させることができる。したがって、上述した貼付システム1は、(空気入りタイヤ4の内面3に対する密封剤2のビードの厚さ及び幅に関して)非常に均一な貼り付けを可能とするものである。
【0041】
更に、上述した貼付システム1は、全ての状況下において特に効果的かつ効率的である。これは、予期しないイベントと偶発的なイベントの両者に(フィードバック制御によって計算された目標値PTRGに基づいて)対処することができ、経験からの学習を重ねる(ニューラルネットワーク等の人工知能アルゴリズムによって計算された補正値PCORに基づいて)ことにより、更に一層正確になるためである。
【0042】
換言すれば、上述した貼付システム1において、フィードバック制御と人工知能を相乗的に作用させることにより、密封剤2の層の貼り付けの間に空気ばね16が押圧ローラ12に加える力Fの変動を常に最小化することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 貼付システム
2 密封剤
3 内面
4 空気入りタイヤ
5 支持装置
6 回転軸線
7 位置センサ
8 カメラ
9 貼付ユニット
10 分配ヘッド
11 移動装置
12 押圧ローラ
13 回転軸線
14 支持アーム
15 回転軸線
16 空気ばね
17 ブラケット
18 力センサ
19 制御ユニット
20 記憶ブロック
21 減算ブロック
22 制御ブロック
23 計算ブロック
24 データベース
25 加算ブロック
F 力
FDES 所望値
FMSR 測定値
PTRG 目標値
PCOR 補正値
PACT 駆動値
ε 力誤差
【国際調査報告】