(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-17
(54)【発明の名称】遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症2型に対するAAVベクター治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20220310BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220310BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220310BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20220310BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20220310BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220310BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220310BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20220310BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220310BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20220310BHJP
C12N 9/48 20060101ALN20220310BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20220310BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/864 100Z
C12N15/12
A61K38/48
A61P27/10
A61P25/28
A61P25/14
A61K9/50
A61K9/16
A61K47/06
C12N9/48 ZNA
C12N15/57
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544194
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 US2020016235
(87)【国際公開番号】W WO2020160486
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518138077
【氏名又は名称】スパーク セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPARK THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, デイビッド ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】トト, メアリーアン
(72)【発明者】
【氏名】ダーセン, スー イー.アイ.
【テーマコード(参考)】
4B050
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD11
4B050JJ10
4B050LL01
4C076AA31
4C076AA61
4C076BB21
4C076DD01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA44
4C084DC02
4C084MA17
4C084MA56
4C084NA05
4C084NA14
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA17
4C087MA56
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZC51
(57)【要約】
本明細書では、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)を必要とする霊長類を治療する方法であって、(a)TPP1をコードする核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供するステップと;(b)所定量の組換えAAVベクターを霊長類の中枢神経系(CNS)に投与するステップであって、TPP1が霊長類において発現される、ステップとを含む、方法が開示される。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)を必要とする霊長類を治療する方法であって、
(a)TPP1をコードする核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供するステップと;
(b)所定量の前記組換えAAVベクターを、前記霊長類の中枢神経系(CNS)に投与するステップであって、前記TPP1は前記霊長類において発現される、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記霊長類がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒトが、遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症(CLN2)を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトが、約1~10歳であるか、又は10歳を超える、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒトが、約2~5歳である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記投与が、側脳室又は大槽への投与である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記投与が、前記側脳室の後頭角への投与である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組換えAAVベクターが、一方の側脳室に、片側投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組換えAAVベクターが、各側脳室に、両側投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組換えAAVベクターが、片側又は両側の側脳室に複数回、片側又は両側投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記TPP1が、前記CNS中で増加したレベルで発現される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記TPP1が、CNS全体にわたって発現又は送達される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記TPP1が、上衣細胞において発現されるか、又は上衣細胞に送達される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記TPP1が、実質に送達される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記TPP1発現が、ニューロンへの最大半量のTPP1取り込みに必要とされるものに等しいか又はそれを超えるレベルで持続される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記TPP1発現が、K
取り込みに等しいか又はそれを超えるレベルで持続され、K
取り込みが、少なくとも約60ng/mLである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記TPP1発現が、K
取り込みに等しいか又はそれを超えるレベルで持続され、K
取り込みが、少なくとも約60ng/mL~120ng/mLである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記TPP1発現が、約120ng/mLを超えるレベルで持続される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記TPP1発現が、約150ng/mLを超えるか、約200ng/mLを超えるか、約250ng/mLを超えるか、又は約300ng/mLを超えるレベルで持続される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
TPP1発現が、CNSにおいて少なくとも約5週間、又は少なくとも約10週間、又は少なくとも約20週間持続される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
検出可能なTPP1発現又はTPP1活性が、CNSにおいて少なくとも5週間、又は少なくとも10週間、又は少なくとも20週間持続される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記組換えAAVベクターが、約1.5×10
13AAVベクターゲノムを超える用量で;約5×10
13AAVベクターゲノム、若しくは約5×10
13AAVベクターゲノムを超える用量で;約1×10
14AAVベクターゲノム、若しくは約1×10
14AAVベクターゲノムを超える用量で;約5×10
14AAVベクターゲノム、若しくは約5×10
14AAVベクターゲノムを超える用量で;約1×10
15AAVベクターゲノム、若しくは約1×10
15AAVベクターゲノムを超える用量で;又は約5×10
15AAVベクターゲノム、若しくは約5×10
15AAVベクターゲノムを超える用量で前記CNSに投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記組換えAAVベクターが、約1.5×10
13~約5×10
15ベクターゲノムの用量範囲で;約1×10
14~約3×10
15ベクターゲノムの用量範囲で;約2×10
14~約2×10
15ベクターゲノムの用量範囲で;約2.5×10
14~約7.5×10
14ベクターゲノムの用量範囲で;約5×10
14~約5×10
15ベクターゲノムの用量範囲で;又は約1×10
15~約5×10
15ベクターゲノムの用量範囲で前記CNSに投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記組換えAAVベクターが、約1×10
14ベクターゲノムの用量で、約2×10
14ベクターゲノムの用量で、約3×10
14ベクターゲノムの用量で、約4×10
14ベクターゲノムの用量で、約5×10
14ベクターゲノムの用量で、約6×10
14ベクターゲノムの用量で、約7×10
14ベクターゲノムの用量で、約8×10
14ベクターゲノムの用量で、約9×10
14ベクターゲノムの用量で、約1×10
15ベクターゲノムの用量で、約2×10
15ベクターゲノムの用量で、約3×10
15ベクターゲノムの用量で、約4×10
15ベクターゲノムの用量で、又は約5×10
15ベクターゲノムの用量で前記CNSに投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、前記CLN2の1つ又は複数の症状を、低下させる、減少させる、又は阻害するか;又は前記CLN2の1つ又は複数の症状の進行若しくは悪化を、予防する、又は低下するか;又は前記CLN2の1つ又は複数の症状を安定化するか;又は前記CLN2の1つ又は複数の症状を改善する、請求項3~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ又は複数の症状が、視力障害、認知発達障害又は認知発達の不良、運動制御の喪失及び発作からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
TPP1をコードする前記核酸が、発現制御エレメントに作動可能に連結された発現カセットを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記発現制御エレメントが、前記核酸の5’側に位置する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記発現制御エレメントが、CAG(配列番号3)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター/エンハンサー、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター/エンハンサー、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)プロモーター、又はニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターを含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記異種核酸が、1つ又は複数の5’及び/又は3’AAV逆方向末端反復(ITR)の間に位置する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ又は複数のAAV ITRが、AAV Repタンパク質によってプロセシングされない、変異した、改変された、又はバリアントAAV ITRを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ又は複数のAAV ITRが、前記組換えAAVベクター中の二本鎖逆方向反復配列構造に、自己相補的レポーター導入遺伝子ゲノムの形成を可能にするか、又は促進にする、変異した、改変された、又はバリアントAAV ITRを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記変異した、改変された、又はバリアントAAV ITRが、欠失されたD配列、及び/又は変異した、改変された、若しくはバリアント末端分離部位(TRS)配列を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組換えAAVベクターが、5’→3’方向で、第1のAAV ITR;哺乳動物細胞において作動可能なプロモーター;異種核酸;ポリアデニル化シグナル;及び任意選択で、第2のAAV ITRを含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ又は複数のITRが、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74、又はRh10 ITRを含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記組換えAAVベクターが、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74、Rh10、SPK1(配列番号1)、又はSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/若しくはVP3、又は前述のAAV血清型のいずれかのハイブリッド若しくはキメラのVP1、VP2及び/又はVP3配列と60%又はそれ以上同一であるVP1、VP2又はVP3配列を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記組換えAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、Rh10、Rh74、SPK1(配列番号1)及びSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/又はVP3カプシドタンパク質からなる群から選択されるVP1、VP2及び/又はVP3カプシドタンパク質と100%の配列同一性を有するVP1、VP2及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記組換えAAVベクターが、前記核酸の3’に位置するポリアデニル化配列をさらに含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
TPP1、発現制御エレメント、又はポリアデニル化配列をコードする前記核酸が、TPP1、発現制御エレメント、又はポリアデニル化配列をコードする野生型核酸と比較して低下したCpGである、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリアデニル化配列が、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列を含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記TPP1がヒトであり、配列番号4に示される配列を含むか若しくはそれからなるか、又はその機能的バリアント若しくは多型形態である、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記組換えAAVベクターが、
(a)1つ又は複数のAAVカプシド、及び
(b)1つ又は複数のAAV逆方向末端反復(ITR)であって、前記1つ又は複数のAAV ITRが、前記核酸又は前記発現カセットの5’末端又は3’末端に隣接する、ITR
を含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記1つ又は複数のITRの5’又は3’に位置するイントロンをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つ又は複数の前記1つ又は複数のITR及び/又は前記イントロンが、CpGが減少するように改変されている、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記組換えAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、又はSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/又はVP3配列と90%又はそれ以上の配列同一性を有するAAV VP1、VP2及び/又はVP3カプシド、又はAAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、又はSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/又はVP3配列と95%又はそれ以上の配列同一性を有するカプシド、又はAAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、又はSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/又はVP3配列と100%の配列同一性を有するカプシドを含むカプシド血清型を有する、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記1つ又は複数のITRが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、若しくはRh74 AAV血清型、又はそれらの組み合わせのいずれかの1つ又は複数のITRを含む、請求項41~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記組換えAAVベクターが、生物学的に適合性のある担体又は賦形剤を含む医薬組成物中にある、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記医薬組成物が空AAVカプシドをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記空AAVカプシド対前記組換えAAVベクターの比が、約100:1~50:1、約50:1~25:1、約25:1~10:1、約10:1~1:1、約1:1~1:10、約1:10~1:25、約1:25~1:50、又は約1:50~1:100内又はその間である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記空AAVカプシド対前記組換えAAVベクターの比が、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記医薬組成物が、界面活性剤をさらに含む、請求項47~50のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0002]遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症2型(CLN2)はまた、Jansky-Bielschowsky病及び遅発型小児性NCL(LINCL)とも呼ばれ、約2~4歳の小児に発症する進行性神経変性疾患である。症状には、けいれん、運動制御及び視覚の喪失、認知及び発達障害が含まれ、生後20年以内に死に至る。基礎にある病理学的機序は、対応する遺伝子の変異に起因した、可溶性リソソーム酵素トリペプチジルペプチダーゼ-1(TPP1)の欠損又は欠陥である。
【0002】
[0003]報告は、脳の側脳室を裏打ちする上衣細胞のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター形質導入が、ヒトTPP1の脳脊髄液(CSF)への持続的分泌を提供し、それによって中枢神経系全体にわたって発現されたTPP1タンパク質を送達することができることを示している(Martz,L.、Biocentury Innovation、2015年12月10日)。CLN2のイヌモデルにおける上衣形質導入を介したAAV2-CAG-TPP1の送達は、疾患修飾及び延命を提供することが報告された(Katz,M.L.ら、(2015年).Sci Transl Med、7巻(313頁))。
【発明の概要】
【0003】
[0004]本明細書には、AAV2-CAG-ヒトTPP1ベクターの安全性及び忍容性を評価する非ヒト霊長類研究が開示される。AAVベクターは、1E13~2.17E14ベクターゲノム/脳の範囲の3用量で側脳室への片側
注射によって送達され、続いて5週間及び20週間の観察が行われた。各動物におけるベースラインからのCSF中のTPP1活性及び抗原レベルの変化をモニターした。TPP1活性レベルは、ベースラインと比較して、低用量コホートでは約17倍、高用量コホートでは約48倍のピーク増加を示した。さらに、研究期間中、試験した全用量での平均hTPP1導入遺伝子発現レベルは、TPP1のK取り込み範囲を超えた。関連する中枢神経系(CNS)組織の予備分析では、ベクターの送達又はTPP1導入遺伝子の発現に関連する病理学的変化は同定されていない。結論として、非ヒト霊長類におけるAAV2ベクターを利用した上衣細胞形質導入後のヒトTPP1の発現は、CLN2を有する動物に治療効果を与えるのに十分な約60~約120ng/mLのK取り込み値以内又はそれ超える持続的なCSF TPP1タンパク質発現が一貫して認められれば、十分に忍容的であった。
【0004】
[0005]ある実施形態では、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)を必要とする霊長類を治療する方法であって、(a)TPP1をコードする核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供するステップと;(b)所定量の上記組換えAAVベクターを、上記霊長類の中枢神経系(CNS)に投与するステップであって、上記TPP1は上記霊長類において発現される、ステップとを含む。
【0005】
[0006]ある実施形態では、霊長類はヒトである。ある実施形態では、ヒトは、遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症(CLN2)を有する。ある実施形態では、ヒトは、約1~10歳であるか、又は10歳を超える。ある実施形態では、ヒトは、約2~5歳である。
【0006】
[0007]ある実施形態では、霊長類を治療する方法において、組換えAAVベクターは、側脳室又は大槽に投与される。ある実施形態では、組換えAAVベクターは、側脳室の後頭角に投与される。ある実施形態では、組換えAAVベクターは、一方の側脳室に、片側投与される。ある実施形態では、組換えAAVベクターは、各側脳室に、両側投与される。ある実施形態では、組換えAAVベクターは、片側又は両側の側脳室に複数回、片側又は両側投与される。
【0007】
[0008]ある実施形態では、TPP1は、CNSにおいて増加したレベルで発現される。ある実施形態では、TPP1は、CNS全体にわたって発現又は送達される。ある実施形態では、TPP1は、上衣細胞において発現されるか、又は送達される。ある実施形態では、TPP1は、実質に送達される。
【0008】
[0009]ある実施形態では、TPP1発現は、ニューロンへの最大半量のTPP1取り込みに必要とされるものに等しいか又はそれ超えるレベルで持続される。ある実施形態では、TPP1発現は、K取り込みに等しいか又はそれ超えるレベルで持続され、K取り込みは、少なくとも約60ng/mLである。ある実施形態では、TPP1発現は、K取り込みに等しいか又はそれ超えるレベルで持続され、K取り込みは、少なくとも約60ng/mL~120ng/mLである。ある実施形態では、TPP1発現は、約120ng/mLを超えるレベルで持続される。ある実施形態では、TPP1発現は、約150ng/mLを超えるか、約200ng/mLを超えるか、約250ng/mLを超えるか、又は約300ng/mLを超えるレベルで持続される。ある実施形態では、TPP1発現は、CNSにおいて、少なくとも約5週間、又は少なくとも約10週間、又は少なくとも約20週間持続される。ある実施形態では、検出可能なTPP1発現又はTPP1活性は、CNSにおいて、少なくとも5週間、又は少なくとも10週間、又は少なくとも20週間持続される。
【0009】
[0010]ある実施形態では、霊長類を治療する方法において、組換えAAVベクターは、約1.5×1013AAVベクターゲノムを超える用量で;約5×1013AAVベクターゲノム若しくは約5×1013を超えるAAVベクターゲノムの用量で;約1×1014AAVベクターゲノム若しくは約1×1014を超えるAAVベクターゲノムの用量で;約5×1014AAVベクターゲノム若しくは約5×1014を超えるAAVベクターゲノムの用量で;約1×1015AAVベクターゲノム若しくは約1×1015を超えるAAVベクターゲノムの用量で;又は約5×1015AAVベクターゲノム若しくは約5×1015を超えるAAVベクターゲノムの用量でCNSに投与される。
【0010】
[0011]ある実施形態では、霊長類を治療する方法において、組換えAAVベクターは、約1.5×1013~約5×1015ベクターゲノムの用量範囲で;約1×1014~約3×1015ベクターゲノムの用量範囲で;約2×1014~約2×1015ベクターゲノムの用量範囲で;約2.5×1014~約7.5×1014ベクターゲノムの用量範囲で;約5×1014~約5×1015ベクターゲノムの用量範囲で;又は約1×1015~約5×1015ベクターゲノムの用量範囲でCNSに投与される。
【0011】
[0012]ある実施形態では、霊長類を治療する方法において、組換えAAVベクターは、約1×1014ベクターゲノムの用量で、約2×1014ベクターゲノムの用量で、約3×1014ベクターゲノムの用量で、約4×1014ベクターゲノムの用量で、約5×1014ベクターゲノムの用量で、約6×1014ベクターゲノムの用量で、約7×1014ベクターゲノムの用量で、約8×1014ベクターゲノムの用量で、約9×1014ベクターゲノムの用量で、約1×1015ベクターゲノムの用量で、約2×1015ベクターゲノムの用量で、約3×1015ベクターゲノムの用量で、約4×1015ベクターゲノムの用量で、又は約5×1015ベクターゲノムの用量でCNSに投与される。
【0012】
[0013]ある実施形態では、方法は、CLN2の1つ又は複数の症状を、低下させる、減少させる若しくは抑制するか;又はCLN2の1つ又は複数の症状の進行又は悪化を、予防する、若しくは低下させるか;又はCLN2の1つ又は複数の症状を安定化するか;又はCLN2の1つ又は複数の症状を改善する。
【0013】
[0014]ある実施形態では、1つ又は複数の症状は、視覚障害、認知発達障害又は認知発達の不良、運動制御の喪失及び発作からなる群から選択される。
【0014】
[0015]ある実施形態では、TPP1をコードする核酸は、発現制御エレメントを作動可能に連結された発現カセットを含む。ある実施形態では、発現制御エレメントは、核酸の5’側に位置される。ある実施形態では、発現制御エレメントは、CAG(配列番号3)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター/エンハンサー、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター/エンハンサー、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)プロモーター、又はニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターを含む。
【0015】
[0016]ある実施形態では、異種核酸は、1つ又は複数の5’及び/又は3’AAV逆方向末端反復(ITR(複数可))の間に位置する。ある実施形態では、1つ又は複数の5’及び/又は3’AAV ITR(複数可)は、AAV Repタンパク質によってプロセシングされない変異した、改変された又はバリアントAAV ITRを含む。ある実施形態では、1つ又は複数の5’及び/又は3’AAV ITR(複数可)は、組換えAAVベクター中の二本鎖逆方向反復配列構造への自己相補的レポーター導入遺伝子ゲノムの形成を可能にするか又は促進する、変異した、改変された又はバリアントAAV ITRを含む。ある実施形態では、変異した、改変された又はバリアントAAV ITRは、欠失されたD配列、及び/又は変異した、改変された若しくはバリアント末端分離部位(TRS)配列を有する。
【0016】
[0017]ある実施形態では、組換えAAVベクターは、第1のAAV ITR;哺乳動物細胞において作動可能なプロモーター;異種核酸;ポリアデニル化シグナル;及び任意選択で第2のAAV ITRを5’→3’方向で含む。
【0017】
[0018]ある実施形態では、1つ又は複数のITR(複数可)は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74又はRh10 ITRを含む。
【0018】
[0019]ある実施形態では、組換えAAVベクターは、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh74、Rh10、SPK1(配列番号1)、又はSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/若しくはVP3、又は前述のAAV血清型のいずれかのハイブリッド若しくはキメラのVP1、VP2及び/又はVP3配列と60%又はそれ以上同一であるVP1、VP2又はVP3配列を含む。ある実施形態では、組換えAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、Rh10、Rh74、SPK1(配列番号1)及びSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/又はVP3カプシドタンパク質からなる群から選択されるVP1、VP2及び/又はVP3カプシドタンパク質と100%の配列同一性を有するVP1、VP2及び/又はVP3カプシドタンパク質を含む。
【0019】
[0020]ある実施形態では、組換えAAVベクターは、核酸の3’側に位置するポリアデニル化配列をさらに含む。ある実施形態では、TPP1をコードする核酸、発現制御エレメント又はポリアデニル化配列は、TPP1をコードする野生型核酸、発現制御エレメント又はポリアデニル化配列と比較して、CpGが低下している。ある実施形態では、ポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列を含む。
【0020】
[0021]ある実施形態では、TPP1は、ヒトであり、配列番号4として示される配列を含むか若しくはそれからなり、又はその機能的バリアント若しくは多型形態(polymorphic form)である。
【0021】
[0022]ある実施形態では、組換えAAVベクターは、(a)1つ又は複数のAAVカプシド、及び(b)1つ又は複数のAAV逆方向末端反復(ITR(複数可))を含み、1つ又は複数のAAV ITRは、核酸又は発現カセットの5’末端若しくは3’末端に隣接する。
【0022】
[0023]ある実施形態では、組換えAAVベクターは、1つ又は複数のITR(複数可)の5’又は3’に位置するイントロンをさらに含む。
【0023】
[0024]ある実施形態では、少なくとも1つ又は複数の1つ又は複数のITR(複数可)及び/又はイントロンは、CpGが減少するように改変されている。
【0024】
[0025]ある実施形態では、組換えAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、若しくはSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/若しくはVP3配列と90%以上の配列同一性を有するAAV VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドを含むカプシド血清型;或いはAAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、SPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/若しくはVP3配列と95%以上の配列同一性を有するカプシド;或いはAAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、若しくはSPK2(配列番号2)VP1、VP2及び/若しくはVP3配列と100%の配列同一性を有するカプシドを有する。
【0025】
[0026]ある実施形態では、1つ又は複数のITR(複数可)は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、若しくはRh74 AAV血清型の、又はそれらの組合せのいずれかの1つ又は複数のITRを含む。
【0026】
[0027]ある実施形態では、組換えAAVベクターは、生物学的に適合性のある担体又は賦形剤を含む医薬組成物中にある。
【0027】
[0028]ある実施形態では、医薬組成物は、空AAVカプシドをさらに含む。ある実施形態では、空AAVカプシド対組換えAAVベクターの比は、約100:1~50:1、約50:1~25:1、約25:1~10:1、約10:1~1:1、約1:1~1:10、約1:10~1:25、約1:25~1:50、又は約1:50~1:100の範囲内又はその間である。ある実施形態では、空のAAVカプシド対組換えAAVベクターの比は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1である。
【0028】
[0029]ある実施形態では、医薬組成物は、界面活性剤をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】側脳室後頭角(白い垂直線)の標的の代表的な磁気共鳴画像(MRI)画像を示す図である。
【
図2A】CSFにおけるヒトTPP1タンパク質の迅速な発現を示す図である。(A)ベクター投与後の30日間のCSF中のヒトTPP1レベル。全用量(1.0×10
13vg、5.0×10
13vg及び2.17×10
14vg/動物)は、形質導入後の2週間からTPP1タンパク質レベルの測定可能な増加が認められた。アスタリスク(*)は、溶血した試料を示し、転帰が上昇する可能性がある。(B)CSF中のヒトTPP1活性レベルの分析は、機能的タンパク質発現を示した。
【
図2B】CSFにおけるヒトTPP1タンパク質の迅速な発現を示す図である。(A)ベクター投与後の30日間のCSF中のヒトTPP1レベル。全用量(1.0×10
13vg、5.0×10
13vg及び2.17×10
14vg/動物)は、形質導入後の2週間からTPP1タンパク質レベルの測定可能な増加が認められた。アスタリスク(*)は、溶血した試料を示し、転帰が上昇する可能性がある。(B)CSF中のヒトTPP1活性レベルの分析は、機能的タンパク質発現を示した。
【
図3A】20週間にわたるCSFにおける持続的なヒトTPP1タンパク質発現及び活性を示す図である。(A)AAV2-CAG-hTPP1送達後、20週間にわたるCSF中のヒトTPP1レベル。hTPP1の発現レベルは、1匹を除いた全ての動物において、ニューロンリソソームへの最大半量の取り込みに必要なレベルを超えた(K
取り込みは約60~120ng/mLである)。5.0×10
13vg/動物の用量の発現レベルは、試験終了時にK
取り込みの上限値の平均1.55倍であり、10~20週にかけて、動物単位で比較的一貫した発現を示した。(B)CSF中のヒトTPP1活性レベル。CSF中のヒトTPP1の持続的発現を示した全ての動物は、時間経過の期間にわたって、TPP1活性の上昇レベルを持続した。TPP1タンパク質発現に見られたように、平均活性レベルは、5.0×10
13vg/動物の用量を受けた動物において最高であることが見出された。
【
図3B】20週間にわたるCSFにおける持続的なヒトTPP1タンパク質発現及び活性を示す図である。(A)AAV2-CAG-hTPP1送達後、20週間にわたるCSF中のヒトTPP1レベル。hTPP1の発現レベルは、1匹を除いた全ての動物において、ニューロンリソソームへの最大半量の取り込みに必要なレベルを超えた(K
取り込みは約60~120ng/mLである)。5.0×10
13vg/動物の用量の発現レベルは、試験終了時にK
取り込みの上限値の平均1.55倍であり、10~20週にかけて、動物単位で比較的一貫した発現を示した。(B)CSF中のヒトTPP1活性レベル。CSF中のヒトTPP1の持続的発現を示した全ての動物は、時間経過の期間にわたって、TPP1活性の上昇レベルを持続した。TPP1タンパク質発現に見られたように、平均活性レベルは、5.0×10
13vg/動物の用量を受けた動物において最高であることが見出された。
【
図4】CSFにおけるTPPタンパク質発現の平均レベルを時間経過の期間にわたって示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[0034]「核酸」又は「ポリヌクレオチド」配列によりコードされるTPP1「ポリペプチド」、「タンパク質」及び「ペプチド」は、天然に存在する野生型TPP1タンパク質と同様に、完全長天然型TPP1配列、並びに機能的TPP1サブ配列、改変された形態又は配列バリアントを、サブ配列、改変された形態又はバリアントが天然の全長TPP1タンパク質のある程度の機能性を保持する限り含む。本発明の方法及び使用において、核酸配列によりコードされるこのようなTPP1ポリペプチド、タンパク質及びペプチドは、欠陥があるか、又はその発現が不十分であるか、又は治療された哺乳動物において欠損している、内因性TPP1タンパク質と同一であることができるが、必要ではない。
【0031】
[0035]ポリヌクレオチドをコードするTTP1ポリペプチド又はTPP1は、それぞれ、1つ又は複数のアミノ酸残基又はヌクレオチド改変、例えば、限定されないが、1つ又は複数のアミノ酸残基又はヌクレオチド置換(例えば、1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100、100~150、150~200、200~250、250~500、500~750、750~850個又はそれ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチド)を含み得る。
【0032】
[0036]アミノ酸改変の例は、例えば、TPP1における参照配列の保存的アミノ酸置換又は欠失(例えば、サブ配列又は断片)である。ある実施形態では、改変された又はバリアントTPP1配列は、未改変のTPP1配列の機能又は活性の少なくとも一部を保持する。
【0033】
[0037]TPP1の他の哺乳動物形態を含む、TPP1をコードするすべての哺乳動物及び非哺乳動物形態の核酸は、公知であるか又は公知でないかに関わらず、明示的に含まれる。
【0034】
[0038]本明細書で使用される場合、用語「ベクター」とは、核酸の挿入又は組み込みによって操作することができる小型担体核酸分子、プラスミド、ウイルス(例えば、AAVベクター)、又は他のビヒクルを指す。このようなベクターは、遺伝子操作(すなわち、「クローニングベクター」)のため、細胞内へのポリヌクレオチドの導入/移入、及び細胞で挿入されたポリヌクレオチドの転写又は翻訳に使用することができる。「発現ベクター」は、宿主細胞における発現に必要とされる必須の調節領域を有する遺伝子又は核酸配列を含む特殊化されたベクターである。
【0035】
[0039]ベクター核酸配列は、一般的に、細胞で増殖するための少なくとも複製起点、及び任意選択で、異種核酸(例えば、TPP1をコードする核酸)、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)、イントロン、逆方向末端反復(ITR)、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)、ポリアデニル化シグナルなどの付加的エレメントを含有する。
【0036】
[0040]ウイルスベクターは、ウイルスゲノムを含む1つ又は複数の核酸エレメントに由来するか又はそれに基づく。特定のウイルスベクターには、アデノ随伴ウイルス(AAV)及びレンチウイルスベクターが含まれる。
【0037】
[0041]用語「組換え体」は、組換えAAV(rAAV)ベクターなどのベクターのモディファイヤー、並びに組換え核酸及びポリペプチドなどの配列のモディファイヤーとして、組成物が、一般的に自然界では起こらない様式で操作された(すなわち、遺伝子操作された)ことを意味する。組換えAAVベクターの特定の例は、野生型AAVゲノムに通常は存在しない核酸配列がAAVゲノム内に挿入される場合である。用語「組換え体」は、AAVベクター、並びに核酸などの配列に関しては、本明細書において常に使用されるわけではないが、ポリヌクレオチドを含む組換え体は、このような省略にもかかわらず、明示的に含まれる。
【0038】
[0042]「組換えAAVベクター」又は「rAAV」は、AAVゲノムから野生型ゲノムを除去するための分子方法を使用し、異種核酸と呼ばれる非天然核酸配列で置換することによって、AAVの野生型ゲノムから誘導される。典型的には、AAVに関して、AAVゲノムの一方又は両方の逆方向末端反復(ITR)配列は、AAVベクターに保持される。rAAVは、AAVゲノムの全部又は一部が、AAVゲノム核酸に関して非天然配列に置換されているため、AAVゲノムと区別される。したがって、非天然(非AAV)配列の組み込みは、AAVベクターを「組換え」ベクターとして定義し、これを「rAAVベクター」と称することができる。
【0039】
[0043]rAAV配列は、細胞のその後の感染(形質導入)について、エクスビボ、インビトロ又はインビボでパッケージすることができる(本明細書では「粒子」と称する)。組換えAAVベクター配列がAAV粒子にカプシド化又はパッケージされる場合、粒子は「rAAVベクター」又は「rAAV粒子」とも称することができる。このようなrAAV粒子は、ベクターゲノムをカプシド化又はパッケージするタンパク質を含み、AAVの場合、それらはカプシドタンパク質と称される。
【0040】
[0044]「ベクターゲノム」又は「vg」と簡便に略されるものは、組換えプラスミド配列の部分を指し、最終的にパッケージングされるか又はカプシド化されて、ウイルス(例えば、rAAV)粒子を形成する。組換えプラスミドを用いて組換えベクターを構築又は製造する場合、ベクターゲノムは、組換えプラスミドのベクターゲノム配列に対応しない「プラスミド」の部分を含まない。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は、プラスミドのクローニング及び増幅に重要である「プラスミド骨格」と称することができ、このプロセスは、増殖及び組換えウイルス生成に必要であるが、それ自体は、ウイルス(例えば、AAV)粒子にパッケージ又はカプシド化されない。したがって、「ベクターゲノム」とは、ウイルス(例えば、AAV)によってパッケージされ又はカプシド化された核酸を指す。
【0041】
[0045]本明細書で使用される場合、AAVベクターに関して用語「血清型」とは、他のAAV血清型と血清学的に区別されるカプシドを意味する。血清学的識別性は、別のAAVと比較して、1つのAAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づいて決定される。交差反応性の差は、通常、カプシドタンパク質配列/抗原決定基の差(例えば、AAV血清型のVP1、VP2、及び/又はVP3配列の差)によるものである。
【0042】
[0046]従来の定義では、血清型とは、目的のウイルスが、中和活性のために、全ての既存の及び特徴付けられた血清型に特異的な血清に対して試験されており、目的のウイルスを中和する抗体が見つからなかったことを意味する。より多くの天然に存在するウイルス分離株が発見され、及び/又はカプシド変異体が生成されるにつれて、現在存在する血清型のいずれとも血清学的差異が存在するか又は存在しない場合もある。したがって、新しいウイルス(例えば、AAV)が血清学的差異を持たない場合、この新しいウイルス(例えば、AAV)は、対応する血清型のサブグループ又はバリアントである。多くの場合、カプシド配列改変を有する変異ウイルスに対して、なおも中和活性の血清学的試験を行う必要があり、従来の血清型の定義に従った別の血清型であるかどうかを決定する必要がある。したがって、便宜上、及び繰り返しを避けるために、用語「血清型」は、広くは、血清学的に区別されるウイルス(例えば、AAV)、並びに所与の血清型のサブグループ又はバリアント内にあり得る血清学的に区別されないウイルス(例えば、AAV)の両方を指す。
【0043】
[0047]rAAVベクター/粒子は、任意のウイルス株又は血清型を含む。例えば、限定されないが、rAAVベクターゲノム又は粒子(VP1、VP2及び/又はVP3などのカプシド)は、例えば、AAV-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-rh74、-rh10又はAAV-2i8などの任意のAAV血清型に基づくことができる。このようなrAAVベクター/粒子は、同一の株又は血清型(又はサブグループ若しくはバリアント)に基づくことができるか、あるいは互いに異なることができる。例えば、限定されないが、1つの血清型ゲノムに基づくrAAVベクターゲノム又は粒子(カプシド)は、ベクターをパッケージングする1つ又は複数のカプシドタンパク質と同一であり得る。さらに、rAAVベクターゲノムは、ベクターゲノムをパッケージングする1又は複数のカプシドタンパク質とは異なるAAV血清型ゲノムに基づくことができ、その場合、3つのカプシドタンパク質のうちの少なくとも1つは、異なるAAV血清型、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、-rh74、-rh10、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、SPK2(配列番号2)、又はそのバリアントであり得る。より具体的には、rAAV2ベクターゲノムは、AAV2 ITRを含むことができるが、異なる血清型、例えば、AAV1、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、-rh74、-rh10、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、SPK2(配列番号2)、又はそのバリアントからのカプシドを含むことができる。したがって、rAAVベクターには、特定の血清型に特徴的な遺伝子/タンパク質配列と同一の遺伝子/タンパク質配列、並びに「シュードタイプ」とも呼ばれる「混合」血清型が含まれる。
【0044】
[0048]ある実施形態では、rAAVベクターは、1つ又は複数のAAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、-rh74、-rh10、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、又はSPK2(配列番号2)カプシドタンパク質(VP1、VP2、及び/又はVP3配列)と少なくとも70%又はそれ以上(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%など)同一のカプシド配列を含むか、又はそれからなる。ある実施形態では、rAAVベクターは、1つ又は複数のAAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、-rh74又は-rh10 ITR(複数可)と少なくとも70%又はそれ以上(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%など)同一の配列を含みか、又はそれからなる。
【0045】
[0049]ある実施形態では、rAAVベクター/粒子には、そのAAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74及びAAV-2i8バリアント(例えば、アミノ酸挿入、付加、置換及び欠失などの、ITR及びカプシドバリアント)、例えば、国際公開第WO2013/158879号(国際出願PCT/US2013/037170)、国際公開第WO2015/013313(国際出願PCT/US2014/047670)及び米国特許出願公開第2013/0059732号(米国出願第13/594,773号)に記載されているものが含まれる。
【0046】
[0050]AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、-rh74、-rh10、AAV-2i8、SPK1(配列番号1)、SPK2(配列番号2)、並びにバリアント、ハイブリッド、及びキメラ配列などのrAAV粒子は、5’及び/又は3’末端に1つ又は複数の機能性AAAV ITR配列が隣接する1つ又は複数の異種ポリヌクレオチド配列(導入遺伝子)を含むように、当業者に公知である組換え技術を用いて構築することができる。rAAVベクターは、典型的には、rAAVベクター粒子への組換えベクターの救出、複製、及びパッケージングのために必要に応じて、少なくとも1つの機能的な隣接ITR配列(複数可)を保持する。したがって、rAAVベクターゲノムは、複製及びパッケージングのために必要とされる配列(例えば、機能的ITR配列)をシスで含む。
【0047】
[0051]組換えAAV粒子を生成するための宿主細胞は、限定されないが、異種rAAVベクターのレシピエントとして使用され得る又は使用されてきた微生物、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞を含む。安定なヒト細胞株HEK293(例えば、受託番号ATCC CRL1573下のAmerican Type Culture Collectionを介して容易に入手可能)からの細胞を使用することができる。ある実施形態では、アデノウイルス5型DNA断片で形質転換され、アデノウイルスE1a及びE1b遺伝子を発現する改変されたヒト胚腎細胞株(例えば、HEK293)を用いて、組換えAAV粒子を作製する。改変されたHEK293細胞株は、容易にトランスフェクトされ、rAAV粒子を生成するための特に便利なプラットフォームを提供する。組換えAAV生成に適した他の宿主細胞株は、国際出願PCT/2017/024951に記載される。
【0048】
[0052]ある実施形態では、AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターのトランスフェクションの前に、又はそれと同時に、AAVヘルパー構築物を宿主細胞にトランスフェクトすることによって、宿主細胞に導入される。したがって、AAVヘルパー構築物は、生産的なAAV形質導入に必要とされる、欠落しているAAV機能を補完するために、AAV rep及び/又はcap遺伝子の少なくとも一過性の発現を提供するために時々使用される。AAVヘルパー構築物は、しばしばAAV ITRを欠いており、それ自体で複製もパッケージ化もできない。これらの構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、又はビリオンの形態であり得る。Rep及びCap発現生成物の両方をコードする一般的に使用されるプラスミドpAAV/Ad及びpIM29+45などの多数のAAVヘルパー構築物が記載されている。Rep及び/又はCap発現生成物をコードする多数の他のベクターが公知である。
【0049】
[0053]哺乳動物細胞を形質導入することができる組換えAAVベクター/粒子を作製する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、組換えAAVベクター/粒子は、米国特許第9,408,904号;国際出願PCT/US2017/025396及び同PCT/US2016/064414に記載されるように生成することができる。
【0050】
[0054]用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、本明細書において、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含む全ての形態の核酸、オリゴヌクレオチドに言及するように互換的に使用される。核酸には、ゲノムDNA、cDNA及びアンチセンスDNA、並びにスプライシングされた又はスプライシングされていないmRNA、rRNA、tRNA及び抑制性DNA又はRNA(RNAi、例えば、低分子又はショートヘアピン(sh)RNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子又は短鎖干渉(si)RNA、トランス-スプライシングRNA、又はアンチセンスRNA)が含まれる。核酸には、天然に存在する、合成の、及び意図的に改変された又は組換えされたポリヌクレオチド(例えば、バリアント核酸)が含まれる。
【0051】
[0055]ベクターゲノム、cDNA、ゲノムDNA、RNA、及びそれらの断片などの核酸は、一重、二重、若しくは三重、線状又は環状であり得、任意の長さであり得る。核酸の検討において、特定の核酸の配列又は構造は、5’から3’方向に配列を提供する慣例に従って本明細書に記載され得る。
【0052】
[0056]「導入遺伝子」は、本明細書において、細胞又は生物内に導入されることを意図するか又は導入された異種核酸を便宜的に言及するために使用される。導入遺伝子には、TPP1をコードする核酸などの任意の異種核酸が含まれる。
【0053】
[0057]用語「形質導入する」及びその文法的変形は、rAAVベクターなどの分子の細胞又は宿主生物への導入を指す。異種核酸/導入遺伝子は、レシピエント細胞のゲノム核酸に組み込まれ得るか又は組み込まれなくてもよい。導入された異種核酸はまた、レシピエント細胞又は宿主生物中に染色体外に又は一時的にのみ存在し得る。
【0054】
[0058]「形質導入された細胞」は、導入遺伝子が導入されている細胞である。したがって、「形質導入された」細胞(例えば、細胞又は組織又は臓器細胞などの哺乳動物)は、例えば、核酸(例えば、導入遺伝子)を細胞内に取り込んだ後の細胞における遺伝的変化を意味する。したがって、「形質導入された」細胞は、外因性核酸(例えば、TPP1をコードする核酸)が導入されている細胞、又はその子孫である。細胞(複数可)を増殖させ、導入されたタンパク質を発現させることができる。遺伝子治療の使用及び方法に関して、形質導入された細胞は、哺乳動物、霊長類、又はヒトなどの対象中にあり得る。
【0055】
[0059]「発現制御エレメント」とは、作動可能に連結された核酸の発現に影響する核酸配列(複数可)を指す。本明細書に記載される発現制御エレメントには、プロモーター及びエンハンサーが含まれる。AAVベクターを含むベクター配列は、1つ又は複数の「発現制御エレメント」を含むことができる。典型的には、このようなエレメントは、適した異種ポリヌクレオチド転写、及び必要に応じて翻訳を促進するために含まれる(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にする遺伝子の正しいリーディングフレームの維持、及び終止コドンなど)。このようなエレメントは、典型的には、「シス作用性」エレメントと称されるシスに作用するが、トランスにも作用する場合がある。
【0056】
[0060]発現制御は、転写、翻訳、スプライシング、メッセージ安定性などのレベルで行うことができる。典型的には、転写を調節する発現制御エレメントは、転写された核酸の5’末端(すなわち、「上流」)付近に並置される。発現制御エレメントは、転写された配列の3’末端(すなわち、「下流」)又は転写物内(例えば、イントロン内)に位置することもできる。発現制御エレメントは、かなりの距離においてさえ、転写された配列(例えば、ポリヌクレオチドからの1~10、10~25、25~50、50~100、100~500、又はそれ以上のヌクレオチド)に隣接して又は離れて位置させることができる。それにもかかわらず、AAVベクターの長さの制限のために、発現制御エレメントは、典型的には、異種核酸の転写開始部位から1~1000ヌクレオチド以内である。
【0057】
[0061]機能的には、作動可能に連結された核酸の発現は、エレメント(例えば、プロモーター)によって少なくとも部分的に制御可能であり、その結果、エレメントは、核酸の転写、及び必要に応じて、転写物の翻訳を調節する。発現制御エレメントの具体例は、プロモーターであり、これは、通常、転写された核酸配列の5’側に位置する。プロモーターは、典型的には、プロモーターが存在しない場合に発現される量と比較して、作動可能に連結された核酸から発現される量を増加させる。
【0058】
[0062]本明細書で使用される「エンハンサー」とは、異種核酸に隣接して位置する配列を指すことができる。エンハンサーエレメントは、典型的には、プロモーターエレメントの上流に位置するが、また機能もし、配列の下流又は配列内に位置することができる。したがって、エンハンサーエレメントは、異種核酸配列の上流又は下流に、10~50塩基対、50~100塩基対、100~200塩基対、又は200~300塩基対、又はより多くの塩基対を位置させることができる。エンハンサーエレメントは、典型的には、プロモーターエレメントによってもたらされる発現よりも、作動可能に連結された核酸の発現を増加させる。
【0059】
[0063]発現構築物又はカセットは、特定の細胞型又は組織型における発現を駆動するのに役立つ調節エレメントを含み得る。発現制御エレメント(例えば、プロモーター)は、特定の組織又は細胞型において活性であり、本明細書では「組織特異的発現制御エレメント/プロモーター」と称される。組織特異的発現制御エレメントは、典型的には、特定の細胞又は組織(例えば、肝臓)において活性である。発現制御エレメントは、典型的には、特定の細胞、組織、又は臓器において活性である。これは、それらは、特定の細胞型、組織型、又は臓器型に固有である転写活性化タンパク質、又は転写の他の調節因子によって認識されるためである。このような調節エレメントは、当業者に公知である(例えば、Sambrookら(1989年)、及びAusubelら(1992年)を参照されたい)。
【0060】
[0064]発現制御エレメントはまた、多くの異なる細胞型においてポリヌクレオチドの発現を駆動することができるユビキタス又は無差別のプロモーター/エンハンサーを含む。このようなエレメントには、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター/エンハンサー配列、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター/エンハンサー配列、及び種々の哺乳動物細胞型において活性である他のウイルスプロモーター/エンハンサー、又は天然に存在しない合成エレメント(例えば、Boshartら、Cell、41巻:521~530頁(1985年)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、細胞質β-アクチンプロモーター及びホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターが含まれる。
【0061】
[0065]発現制御エレメントはまた、調節可能な様式、すなわち、シグナル又は刺激が、作動可能に連結された異種性ポリヌクレオチドの発現を増加又は減少させる様式で発現を付与することができる。シグナル又は刺激に応答して作動可能に連結されたポリヌクレオチドの発現を増加させる調節可能なエレメントは、「誘導性エレメント」(すなわち、シグナルによって誘導される)とも称される。特定の例としては、限定されないが、ホルモン(例えば、ステロイド)誘導性プロモーターが挙げられる。典型的には、このようなエレメントによって付与される増加又は減少の量は、存在するシグナル又は刺激の量に比例し、シグナル又は刺激の量が大きいほど、発現の増加又は減少が大きい。調節可能な発現制御エレメントには、例えば、限定されないが、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター;ステロイドホルモン誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター;T7ポリメラーゼプロモーターシステム(国際公開第WO98/10088号);テトラサイクリン抑制システム(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻:5547~5551頁(1992年));テトラサイクリン誘導システム(Gossenら、Science、268巻:1766~1769頁(1995年);またHarveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.2巻:512~518頁(1998年)参照);RU486誘導システム(Wangら、Nat.Biotech.15巻:239~243頁(1997年)及びWangら、Gene Ther.4巻:432~441頁(1997年));及びラパマイシン誘導システム(Magariら、J.Clin.Invest.100巻:2865~2872頁(1997年);Riveraら、Nat.Medicine.2巻:1028~1032頁(1996年))が含まれる。本発明において使用され得る他の調節可能な制御エレメントは、特定の生理学的状態、例えば、温度、急性期、発達によって調節されるものである。
【0062】
[0066]発現制御エレメントはまた、異種ポリヌクレオチドの天然エレメント(複数可)を含む。天然の制御エレメント(例えば、プロモーター)は、異種ポリヌクレオチドの発現が天然の発現を模倣すべきであることが望ましい場合に、本発明で使用され得る。天然のエレメントは、異種ポリヌクレオチドの発現が一時的若しくは発生的に、又は組織特異的な様式で、又は特定の転写刺激に応答して調節される場合に、本発明で使用され得る。イントロン、ポリアデニル化部位又はKozakコンセンサス配列などの他の天然の発現制御エレメントを使用することもできる。
【0063】
[0067]用語「作動可能に連結された」とは、核酸配列の発現に必要な調節配列が、核酸配列の発現をもたらすように、配列に対して適切な位置に配置されることを意味する。この同じ定義は、発現ベクター、例えばrAAVベクター中の核酸配列及び転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、及び終結エレメント)の配列に適用されることがある。
【0064】
[0068]核酸と作動可能に連結した発現制御エレメントの例において、その関係は、制御エレメントが核酸の発現を調節するようなものである。より具体的には、例えば、限定されないが、作動可能に連結された2つのDNA配列は、2つのDNAが、少なくとも1つのDNA配列が他の配列に対して生理学的効果を発揮することができるような関係で配列(シス又はトランス)されることを意味する。
【0065】
[0069]したがって、ベクターのためのさらなるエレメントは、限定されないが、AAV ITR配列の1つ又は複数のコピー、又はイントロンなどの配列に隣接する発現制御(例えば、プロモーター/エンハンサー)エレメント、転写終結シグナル又は終止コドン、5’又は3’非翻訳領域(例えば、ポリアデニル化(polyA)配列)を含む。
【0066】
[0070]さらなるエレメントは、例えば、パッケージングを改善し、汚染核酸の存在を低下するために、例えば、限定されないが、充填剤又はスタッファーポリヌクレオチド配列を含む。AAVベクターは、一般的に約4kb~約5.2kb、又はわずかに大きいサイズ範囲を有するDNAの挿入物を典型的には受容する。したがって、より短い配列については、ウイルス粒子内にAAVベクターをパッケージするのに許容されるウイルスゲノム配列のほぼ又は正常なサイズに長さを調節するために、スタッファー又は充填剤を含める。ある実施形態では、充填剤/スタッファー核酸配列は、核酸の非翻訳(非タンパク質コード化)セグメントである。4.7kb未満の核酸配列について、充填剤又はスタッファーポリヌクレオチド配列は、配列と組み合わされた場合(例えば、ベクターに挿入された場合)、約3.0~5.5kb、又は約4.0~5.0kb、又は約4.3~4.8kbの全長を有する長さを有する。
【0067】
[0071]用語「単離された」とは、組成物のモディファイヤーとして使用される場合、組成物がヒトの手で作製されるか、又はそれらの天然に存在するインビボ環境から完全に若しくは少なくとも部分的に分離されることを意味する。一般的に、単離された組成物は、それらが通常自然界で関連付けられた1つ又は複数の物質、例えば、限定されないが、1つ又は複数のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜を実質的に含まない。
【0068】
[0072]用語「単離された」は、ヒトの手で生成された組合せ、例えば、限定されないが、rAAV配列、又はAAVベクターゲノム及び医薬製剤をパッケージ又はカプシド化するrAAV粒子を排除しない。用語「単離された」はまた、ハイブリッド/キメラ、多量体/オリゴマー、修飾(例えば、リン酸化、グリコシル化、脂質化)、又は誘導体化された形態、又はヒトの手によって生成された宿主細胞において発現される形態などの組成物の代替の物理的形態を排除しない。
【0069】
[0073]用語「実質的に純粋な」とは、目的の化合物(例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質など)を少なくとも50~60重量%含む調製物を指す。調製物は、目的の化合物の少なくとも75重量%、又は少なくとも85重量%、又は約90~99重量%を含むことができる。純度は、目的の化合物に適した方法(例えば、クロマトグラフィー法、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析など)によって測定される。
【0070】
[0074]特定のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を参照する場合、語句「から本質的になる」とは、所与の配列番号の特徴を有する配列を意味する。例えば、限定されないが、アミノ酸配列を参照して使用する場合、この語句は、配列自体、並びに配列の基本的及び新規な特性に影響を及ぼさない分子修飾を含む。
【0071】
[0075]TPP1をコードする核酸を含む核酸、発現ベクター(例えば、AAVベクターゲノム)、プラスミドは、組換えDNA技術法を用いて調製することができる。ヌクレオチド配列情報の利用可能性は、種々の手段による本発明の単離された核酸分子の調製を可能にする。TPP1をコードする核酸は、種々の標準的なクローニング、組換えDNA技術を用いて、細胞発現又はインビトロ翻訳及び化学合成技術を介して作製することができる。ポリヌクレオチドの純度は、配列決定、ゲル電気泳動などによって決定することができる。例えば、限定されないが、核酸は、ハイブリダイゼーション又はコンピュータベースのデータベーススクリーニング技術を用いて単離することができる。このような技術には、限定されないが、(1)ゲノムDNA又はcDNAライブラリーをプローブとハイブリダイズさせて、相同なヌクレオチド配列を検出すること;(2)共有された構造的特徴を有するポリペプチドを検出するために、例えば、限定されないが、発現ライブラリーを用いて、抗体スクリーニングを行うこと;(3)目的の核酸配列にアニーリングすることができるプライマーを用いて、ゲノムDNA又はcDNA上でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うこと;(4)関連配列の配列データベースをコンピュータで検索すること;及び(5)減算核酸ライブラリーの差分スクリーニングを行うことが含まれる。
【0072】
[0076]核酸は、任意の好都合なクローニングベクター中でDNAとして維持することができる。ある実施形態では、クローンは、プラスミドクローニング/発現ベクター、例えば、pBluescript(Stratagene、La Jolla、CA)中に維持され、これは、適切な大腸菌(E.coli)宿主細胞中で増殖される。或いは、核酸は、哺乳動物細胞における発現に適したベクター、例えば、限定されないが、AAVベクター中に維持され得る。翻訳後修飾がタンパク質機能に影響を与える場合、核酸分子は、哺乳動物細胞において発現され得る。
【0073】
[0077]ある実施形態では、rAAVベクターは、任意選択で、宿主細胞内でコードされたタンパク質の発現を可能にするような方法で配置された細胞内での異種核酸の発現に必要な調節エレメントを含み得る。発現に必要なこのような調節エレメントは、限定されないが、本明細書に記載され、当業者に公知であるプロモーター配列、エンハンサー配列及び転写開始配列を含む。
【0074】
[0078]本発明の方法及び使用には、分裂細胞及び/又は非分裂細胞を含む、宿主細胞への核酸(導入遺伝子)の送達(形質導入)が含まれる。本発明の核酸、rAAVベクター、方法、使用及び医薬製剤は、治療方法として、異種核酸によってコードされる配列を、それを必要とする対象に送達し、投与し、又は提供する方法において、さらに有用である。このようにして、核酸は、対象においてインビボで転写され、タンパク質が生成される。対象は、タンパク質が欠乏しているため、又は対象におけるタンパク質の生成により、治療方法として若しくは他の方法として、何らかの治療効果を付与し得るために、タンパク質から利益を得ることができ、又はタンパク質を必要とすることができる。
【0075】
[0079]本発明は、ヒト及び獣医学的用途を含む動物に有用である。したがって、適切な対象には、ヒトなどの哺乳動物、並びにヒト以外の哺乳動物が含まれる。用語「対象」とは、動物、典型的には、ヒト、ヒト以外の霊長類(類人猿、ギブン、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、マカク)、家畜(イヌ及びネコ)、及び実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)などの哺乳動物を指す。ヒト対象には、胎児、新生児、乳児、幼児及び若年成人の対象が含まれる。対象には、動物疾患モデル、例えば、限定されないが、CLN2などのタンパク質/酵素欠乏のマウス及び他の動物モデルが含まれる。
【0076】
[0080]本発明による治療に適した対象には、TPP1欠損又は欠乏性を有するか若しくは有するリスクを有する対象、又は異常な、部分的に機能的な若しくは機能的でないTPP1を生成する対象が含まれる。対象は、TPP1発現及び/又は活性について試験されて、このような対象が本発明の方法による治療に適切であるかどうかを決定することができる。対象は、TPP1をコードする内因性核酸における変異についても試験することができる。ある種の遺伝子変異は、TPP1活性を低下するか又は破壊することが公知である。本発明による治療に適した対象にはまた、TPP1から恩恵を受ける対象が含まれる。治療された対象は、治療後、定期的に、例えば、1~4週間毎、1~6ヵ月毎、6~12ヵ月毎、又は1、2、3、4、5年若しくはそれ以上毎にモニターされ得る。
【0077】
[0081]TPP1活性を検出する及び/又は測定するためのアッセイは、当該技術分野において公知であり、Liuら、2017年、Clin.Chem.、63巻:1118-1126頁、doi:10.1373/clinchem.2016.269167、及びBarcenasら、2014年、Anal.Chem.、87巻:7962-7968頁に記載されたアッセイが挙げられる。
【0078】
[0082]対象は、免疫応答、例えば、AAVに対する抗体について試験され得る。したがって、候補対象は、本発明の方法による治療前にスクリーニングすることができる。対象はまた、治療後にAAVに対する抗体について試験することができ、任意選択で、治療療後の一定期間、モニターすることができる。AAV抗体を発生させている対象は、免疫抑制剤、又は本明細書に記載される他のレジメンで治療することができる。
【0079】
[0083]また、本発明による治療に適した対象には、AAVに対する抗体(抗AAV抗体)を有するか又は生成するリスクを有する対象が含まれる。rAAVベクターは、いくつかの技術を用いて、このような対象に投与又は送達することができる。例えば、限定されないが、AAV空のカプシド(すなわち、ベクターゲノムを欠くAAV)は、対象中の抗AAV抗体に結合するように送達され得、それによって、異種核酸を含むrAAVベクターが対象の細胞を形質導入することを可能にする。
【0080】
[0084]本明細書に記載されるように、rAAVは、細胞を透過し、核酸/遺伝物質を細胞内に導入することができるため、遺伝子療法ベクターとして有用である。AAVはヒトの病原性疾患と関連付けられないため、rAAVベクターは、実質的なAAVの病因又は疾患を引き起こすことなく、異種ポリヌクレオチド配列(例えば、治療タンパク質及び薬剤)をヒト患者に送達することができる。
【0081】
[0085]rAAVベクターは、分裂細胞及び非分裂細胞に対する指向性を含む、このような用途のための多くの望ましい特徴を有する。これらのベクターを用いた初期の臨床経験はまた、持続的な毒性を示さず、免疫応答は一般にごくわずかであるか検出不能である。AAVは、受容体媒介性のエンドサイトーシス又はトランスサイトーシスにより、インビボで広範な細胞型に感染することが公知である。これらのベクター系は、中枢神経系、脳、網膜上皮、肝臓、骨格筋、気道、関節及び造血幹細胞などの多くの組織を標的とするヒトにおいて試験されている。
【0082】
[0086]例えば、限定されないが、複数コピーのTPP1、従ってより多量のTPP1タンパク質を提供することができるrAAVベクターを導入することが望ましい場合がある。改良されたrAAVベクター及びこれらのベクターを生成する方法はWright J.F.(Hum Gene Ther 20巻:698~706頁、2009年)などの多数の参考文献、特許、及び特許出願において詳細に記載される。
【0083】
[0087]rAAVベクターは、例えば、限定されないが、頭蓋内注入を介して、生物学的に適合性のある担体中の注入を介して患者に投与することができる。rAAVベクターは、単独で又は他の分子と組み合わせて投与することができる。したがって、rAAVベクター及び他の組成物、薬剤、薬物、生物学的製剤(タンパク質)を医薬組成物に組み込むことができる。このような医薬組成物は、特に、対象へのインビボ又はエクスビボでの投与及び送達に有用である。
【0084】
[0088]ある実施形態では、医薬組成物はまた、薬学的に若しくは生物学的に許容される担体又は賦形剤を含む。このような賦形剤は、それ自体が、組成物を受け取る個体に有害な免疫応答を誘導せず、過度の毒性なしに投与され得る任意の医薬物質を含む。
【0085】
[0089]本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」及び「生理学的に許容される」とは、1つ又は複数の投与経路、インビボ送達又は接触に適した、生物学的に許容される製剤、気体、液体若しくは固体、又はそれらの混合物を意味する。「薬学的に許容される」又は「生理学的に許容される」組成物は、生物学的又は他には望ましくない物質であり、例えば、実質的な望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、物質を対象に投与することができる。したがって、このような医薬組成物は、例えば、核酸、ベクター、ウイルス粒子又はタンパク質を対象に投与する際に、本発明で使用することができる。
【0086】
[0090]薬学的に許容される賦形剤には、限定されないが、水、生理食塩水、グリセロール、糖及びエタノールなどの液体が含まれる。薬学的に許容される塩はまた、本明細書において、例えば、限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を含み得る。さらに、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質がこのようなビヒクルに存在し得る。
【0087】
[0091]医薬組成物は、塩として提供することができ、限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多数の酸で形成することができる。塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性又は他のプロトン性溶媒中でより溶解性である傾向がある。他の場合には、調製物は、使用前に緩衝液と組み合わせて、pH4.5~5.5の範囲で、以下:1~50mMのヒスチジン、0.1~2%のスクロース、及び2~7%のマンニトールのいずれか又は全てを含有し得る凍結乾燥粉末であり得る。
【0088】
[0092]医薬組成物は、本明細書に記載されるか又は当業者に公知であるように、投与又は送達の特定の経路と適合性があるように製剤化することができる。したがって、医薬組成物は、種々の経路による投与に適した担体、希釈剤、又は賦形剤を含む。
【0089】
[0093]非経口投与に適した組成物は、活性化合物の水性及び非水性溶液、懸濁液又はエマルジョンを含み、これらの調製物は、典型的には無菌であり、意図されたレシピエントの血液と等張であり得る。組成物は、例えば、限定されないが、水、緩衝化生理食塩水、ハンクス液、リンゲル液、デキストロース、フルクトース、エタノール、動物油、植物油又は合成油を含む。水性注入懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る。
【0090】
[0094]さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油注入懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。任意選択で、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる適切な安定化剤又は試薬を含み得る。
【0091】
[0095]共溶媒及びアジュバントを製剤に添加することができる。共溶媒には、ヒドロキシル基又は他の極性基、例えば、限定されないが、イソプロピルアルコールなどのアルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテルなどのグリコール;グリセロール;ポリオキシエチレンアルコール及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルが含まれる。アジュバントには、例えば、限定されないが、大豆レシチン及びオレイン酸などの界面活性剤;ソルビタントリオレエートなどのソルビタンエステル;及びポリビニルピロリドンが含まれ得る。
【0092】
[0096]医薬組成物が調製された後、それらを適切な容器に入れ、治療のためにラベルを付けることができる。このようなラベルには、投与量、頻度、及び方法が含まれ得る。
【0093】
[0097]本発明の組成物、方法及び使用に適した医薬組成物及び送達システムは、当該技術分野において公知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2003年)、第20版、Mack Publishing Co.、Easton、PA;Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990年)、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA;The Merck Index (1996年)、第12版、Merck Publishing Group、Whitehouse、NJ;Pharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms(1993年)、Technomic Publishing Co.,Inc.、Lancaster、Pa.;Ansel and Stoklosa、Pharmaceutical Calculations(2001年)、第11版、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD;及びPoznanskyら、Drug Delivery Systems(1980年)、R.L.Juliano編集、Oxford、N.Y.、253~315頁を参照されたい)。
【0094】
[0098]「有効量」又は「十分量」とは、単回又は複数回用量において、単独で又は組み合わせて、1つ又は複数の他の組成物(薬物などの治療剤又は免疫抑制剤)、治療、プロトコール、又は治療レジメン剤とともに、任意の持続時間(長期又は短期)の検出可能な応答、任意の測定可能若しくは検出可能な程度の対象における又は任意の持続時間(例えば、分、時間、日、月、年、又は治癒)の期待される又は望ましい結果を提供する量を指す。
【0095】
[0099]用量は様々であり、治療が指示される疾患のタイプ、発症、進行、重症度、頻度、持続期間、又は確率、望ましい臨床エンドポイント、以前の又は同時の治療、対象の一般的な健康、年齢、性別、人種又は免疫学的能力、及び当業者によって認識される他の要因に依存し得る。投薬量、数、頻度又は持続期間は、治療若しくは療法の副作用、合併症又は他の危険因子、及び対象の状態によって示されるように、比例的に増加又は減少させることができる。当業者は、治療的又は予防的利益を提供するのに十分な量を提供するのに必要な投薬量及び時期に影響し得る因子を理解する。
【0096】
[0100]治療効果を達成するための用量、例えば、対象若しくは患者の体重1キログラムあたりのベクターゲノムの用量(vg/kg)、又は対象又は患者の脳あたりのベクターゲノムの用量(vg/脳)、又は対象若しくは患者のCNSに送達されるベクターゲノムの用量(vg/CNS)は、限定されないが、投与経路、治療効果を達成するために必要な異種ポリヌクレオチド発現のレベル、治療される特定の疾患、ウイルスベクターに対する任意の宿主免疫応答、異種ポリヌクレオチド又は発現産物(タンパク質)に対する宿主免疫応答、及び発現されるタンパク質の安定性を含むいくつかの要因に基づいて変化する。
【0097】
[0101]一般的に、用量は、約1.5×1013組換えAAVベクターゲノムよりも大きい。例えば、約5×1013組換えAAVベクターゲノム又は約5×1013を超える組換えAAVベクターゲノムの用量;約1×1014組換えAAVベクターゲノム又は約1×1014を超える組換えAAVベクターゲノムの用量;約5×1014組換えAAVベクターゲノム又は約5×1014を超える組換えAAVベクターゲノムの用量;約1×1015組換えAAVベクターゲノム又は約1×1015を超える組換えAAVベクターゲノムの用量;及び約5×1015組換えAAVベクターゲノム又は約5×1015を超える組換えAVベクターゲノムの用量。
【0098】
[0102]ある実施形態では、組換えAAVベクターゲノムは、約1.5×1013~約5×1015組換えAAVベクターゲノムの用量範囲で;約1×1014~約3×1015組換えAAVベクターゲノムの用量範囲で;約2×1014~約2×1015組換えAAVベクターゲノムの用量範囲で;約2.5×1014~約7.5×1014組換えAAVベクターゲノムの用量範囲で;約5×1014~約5×1015組換えAAVベクターゲノムの用量範囲で;及び約1×1015~約5×1015組換えAVベクターゲノムの用量範囲で投与される。
【0099】
[0103]ある実施形態では、rAAVベクターゲノムは、約1×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約2×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約3×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約4×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約5×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約6×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約7×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約8×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約9×1014ベクターゲノムの用量で投与され、約1×1015ベクターゲノムの用量で投与され、約2×1015ベクターゲノムの用量で投与され、約3×1015ベクターゲノムの用量で投与され、約4×1015ベクターゲノムの用量で投与され、又は約5×1015ベクターゲノムの用量で投与される。
【0100】
[0104]ある実施形態では、用量は、約1.5×1013rAAV vg/対象又は患者の脳を超える。例えば、約5×1013rAAV vg/脳又は約5×1013rAAV vg/脳を超える用量;約1×1014rAAV vg/脳又は約1×1014rAAV vg/脳を超える用量;約5×1014rAAV vg/脳又は約5×1014rAAV vg/脳を超える用量;約1×1015rAAV vg/脳又は約1×1015rAAV vg/脳を超える用量;及び約5×1015rAAV vg/脳又は約5×1015rAAV vg/脳を超える用量。
【0101】
[0105]ある実施形態では、rAAV vgは、約1.5×1013~約5×1015rAAV vg/脳の用量範囲;約1×1014~約3×1015rAAV vg/脳の用量範囲;約2×1014~約2×1015rAAV vg/脳の用量範囲;約2.5×1014~約7.5×1014rAAV vg/脳の用量範囲;約5×1014~約5×1015rAAV vg/脳の用量範囲;及び約1×1015~約5×1015rAAV vg/脳の用量範囲で投与される。
【0102】
[0106]ある実施形態では、rAAV vgは、約1×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約2×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約3×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約4×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約5×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約6×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約7×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約8×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約9×1014rAAV vg/脳の用量で投与され、約1×1015rAAV vg/脳の用量で投与され、約2×1015rAAV vg/脳の用量で投与され、約3×1015rAAV vg/脳の用量で投与され、約4×1015rAAV vg/脳の用量で投与され、又は約5×1015rAAV vg/脳の用量で投与される。
【0103】
[0107]本明細書で使用される「単位投薬形態」とは、治療される対象のための単一の投薬量として適した物理的に離散した単位を指し;各単位は、所望の効果(例えば、予防又は治療効果)をもたらすように、1つ又は複数の用量で投与された場合に計算される、医薬担体(賦形剤、希釈剤、ビヒクル又は充填剤)と任意選択で関連付けた所定量を含有する。単位投薬形態は、例えば、液体組成物、又は凍結-乾燥(freeze-dried)若しくは凍結乾燥(lyophilized)状態の組成物を含み得るアンプル及びバイアル内にあり得;例えば、無菌液体担体は、インビボでの投与又は送達の前に添加され得る。個々の単位投薬形態は、複数回の投薬キット又は容器に含めることができる。rAAV粒子、及びその医薬組成物は、投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、単一又は複数の単位投薬形態で包装することができる。
【0104】
[0108]治療のための「有効量」又は「十分量」の用量(例えば、向上するため、又は治療上の利益又は改善を提供するため)は、典型的には、疾患の1つ、複数若しくはすべての有害な症状、結果又は合併症、例えば、測定可能な程度まで、疾患に起因して又は関連付けられた、1つ又は複数の有害な症状、障害、病気、病態、又は合併症に対して、応答を提供するのに有効であるが、疾患の進行又は悪化を減少、低下、阻害、抑制、制限又は制御することは満足のいく結果である。
【0105】
[0109]有効量又は十分量は、単一の投与において提供され得るが、必ずしもそうではなく、複数の投与を必要とし得、単独で又は別の組成物(例えば、薬剤)、治療、プロトコール又は治療レジメンと組み合わせて投与され得るが、必ずしもそうではない。例えば、量は、対象の必要性、治療された疾患のタイプ、状態及び重症度、又は治療の副作用(もしあれば)によって示されるように、比例的に増加され得る。さらに、有効量又は十分量は、第2の組成物(例えば、別の薬物又は薬剤)、治療、プロトコール又は治療レジメンを伴わずに、単回又は複数回投薬する場合、有効又は十分である必要はない。これは、追加の用量、このような用量を上回る若しくは超える量又は期間、或いは追加の組成物(例えば、薬物又は薬剤)、治療、プロトコール又は治療レジメンが、所与の対象において有効又は十分と考えられるために含めることができるためである。有効と考えられる量はまた、TPP1欠乏症(例えば、CLN2)の治療のためのTPP1をコードする核酸の投与などの、別の治療、治療レジメン又はプロトコールの使用の減少をもたらす量を含む。
【0106】
[0110]したがって、本発明の方法及び使用はまた、とりわけ、別の化合物、薬剤、薬物、療法レジメン、治療プロトコール、プロセス、若しくは救済の減少した必要性又は使用をもたらす方法及び使用を含む。したがって、本発明によれば、別の治療又は療法の必要性又は使用を減少させる方法及び使用が提供される。
【0107】
[0111]有効量又は十分量は、治療された各々の及び全ての対象、又は所与の群若しくは集団における治療された対象の大部分において有効である必要はない。有効量又は十分量とは、群又は一般集団ではなく特定の対象における有効性又は十分性を意味する。このような方法に典型的なように、一部の対象は、所与の治療方法又は使用に対して、より大きな反応を示すか、又はより小さい反応を示すか若しくは反応を示さない。
【0108】
[0112]対象への投与又はインビボ送達は、疾患に起因した又は関連付けられた有害な症状、状態、合併症などの発症に先立って行うことができる。例えば、スクリーニング(例えば、遺伝学的)を用いて、このような対象を、本発明の組成物、方法及び使用のための候補として同定することができる。したがって、このような対象には、機能性遺伝子生成物(例えば、TPP1質欠乏)の不十分な量又は欠乏に関して陽性とスクリーニングされた対象、又は異常、部分的に機能性又は非機能性の遺伝子生成物(例えば、TPP1)を生成する対象が含まれる。
【0109】
[0113]本明細書に開示される本発明の方法及び使用に従った対象への投与又はインビボ送達は、対象が、治療の標的となる疾患を有し、疾患の1つ又は複数の症状を有し、又は対象が疾患の1つ又は複数の症状を有さないにもかかわらず、スクリーニングされ、本明細書に記載される陽性であるとして同定された後の1~2時間、2~4時間、4~12時間、12~24時間、又は24~72時間以内に行うことができる。当然に、本発明の方法及び使用は、対象が、治療の標的となる疾患を有し、疾患の1つ又は複数の症状を有し、又はスクリーニングされ、本明細書に記載される陽性であるとして同定された後の1~7日、7~14日、14~24日、24~48日、48~64日以上、数カ月又は数年後に行うことができる。
【0110】
[0114]用語「向上する」とは、対象の疾患若しくはその症状、又は根底にある細胞応答における検出可能又は測定可能な改善を意味する。検出可能又は測定可能な改善は、疾患の発生、頻度、重症度、進行、又は期間における主観的若しくは客観的な減少、低下、阻害、抑制、制限若しくは制御、或いは疾患に起因した又は関連付けられた合併症、或いは疾患の症状若しくは基礎原因若しくは結果における改善、或いは疾患の回復を含む。
【0111】
[0115]CLN2の場合、有効量は、視力障害、認知発達障害又は認知発達の不良、運動制御の喪失又は発作を抑制する、低下する、又は改善する量である。有効量はまた、CLN2の有害症状の悪化を安定化させる又は阻害する又は予防する量である。
【0112】
[0116]治療用量は、他の因子の中でも、対象の年齢及び全身状態、疾患又は障害の重症度に依存する。ヒトにおける治療有効量は、個々の患者の反応に基づいて、医師によって決定され得る比較的広い範囲に含まれる。
【0113】
[0117]医薬組成物などの組成物は、コードされたタンパク質の生成を可能にするために、対象に送達させることができる。ある実施形態では、医薬組成物は、レシピエントが対象中に治療上有効量のタンパク質を生成することを可能にするのに十分な遺伝物質を含む。
【0114】
[0118]組成物は、限定されないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、及び水を含む、任意の無菌の生体適合性のある医薬担体中に処方及び/又は投与することができる。組成物は、単独で、又は止血に影響する他の薬剤(例えば、補因子)と組み合わせて、患者に処方及び/又は投与することができる。
【0115】
[0119]本発明の治療方法は、全身的に、局部的に又は局所的に、又は任意の経路、例えば、注入又は輸注による送達及び投与を含む。インビボでの医薬組成物の送達は、一般的に、注入によって達成することができる。例えば、rAAVベクター/粒子は、頭蓋内、例えば、CNS内、特に、例えば、側脳室などの脳の一部に投与され得る。
【0116】
[0120]本発明による治療方法及びrAAVベクターは、所望の治療的、有益な、相加的、相乗的若しくは相補的な活性又は効果を有する任意の化合物、薬剤、薬物、治療又は他の治療レジメン若しくはプロトコールの追加使用を含む組み合わせ療法を含む。例示的な組合せ組成物及び治療には、生物学的製剤(タンパク質)、薬剤(例えば、免疫抑制剤)及び薬物などの第2の活性剤が含まれる。このような生物学的製剤(タンパク質)、薬剤、薬物、治療及び療法は、本発明による任意の他の方法又は治療に先立って、実質的に同時に、又はそれに続いて、投与又は実施することができる。
【0117】
[0121]化合物、薬剤、薬物、治療又は他の療法レジメン若しくはプロトコールは、組合せ組成物として投与することができ、又は核酸、ベクター、若しくはrAAV粒子の送達若しくは投与と同時に、又は連続的に(送達の前又は後に)投与するなど、別々に投与することができる。したがって、本発明は、本明細書に記載されるか又は当業者に公知の任意の化合物、薬剤、薬物、療法レジメン、治療プロトコール、プロセス、治療薬又は組成物との組合せで本発明による治療方法が行われる組合せを提供する。化合物、薬剤、薬物、療法レジメン、治療プロトコール、プロセス、救済又は組成物は、本発明に従って患者に投与される核酸、ベクター又はrAAV粒子の投与に先立って、実質的に同時に、若しくはその後に投与又は実施することができる。
【0118】
[0122]ある実施形態では、少なくとも1つの免疫抑制剤は、rAAVベクターの対象への投与に先立って、実質的に同時に、又はその後に対象に投与される。ある実施形態では、免疫抑制剤は、抗炎症剤である。ある実施形態では、免疫抑制剤は、ステロイドである。ある実施形態では、免疫抑制剤は、プレドニゾン、シクロスポリン(例えば、シクロスポリンA)、ミコフェノール酸、リツキシマブ又はその誘導体である。
【0119】
[0123]遺伝子導入におけるAAVに対する体液性免疫を低下する(克服する)又は回避する戦略には、高ベクター用量の投与、抗AAV抗体を吸着させるためのデコイとしてのAAV空カプシドの使用、AAVに対する体液性免疫応答を減少する、低下する、阻害する、予防する又は根絶するための免疫抑制薬の投与、AAVカプシド血清型の変更又は中和抗体に対する感受性が低いようにAAVカプシドを操作すること、抗AAV免疫グロブリンを吸着させるための血漿交換サイクルの使用、それによって抗AAV抗体力価を低下させること、及びバルーンカテーテルなどの送達技術の使用、続いて生理食塩水洗浄が含まれる。このような戦略は、Mingozziら、2013年、Blood、122巻:23~36頁に記載されている。
【0120】
[0124]AAV空カプシド対rAAVベクターの例示的な比は、約100:1~50:1、約50:1~25:1、約25:1~10:1、約10:1~1:1、約1:1~1:10、約1:10~1:25、約1:25~1:50、又は約1:50~1:100の範囲内又はその間であり得る。比はまた、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1であり得る。
【0121】
[0125]投与するAAV空カプシドの量は、特定の対象において生成されるAAV抗体の量(力価)に基づいて較正することができる。
【0122】
[0126]AAV抗体は、既存であり得、標的細胞のTPP1遺伝子導入ベクター形質導入を低下又はブロックするレベルで存在し得る。或いは、AAV抗体は、AAVへの曝露又はAAVベクターの投与後に発現し得る。このような抗体がAAVベクターの投与後に発現される場合、これらの対象は、それに応じて治療することもできる。
【0123】
[0127]別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は研究に使用することができるが、適切な方法及び材料を本明細書に記載する。
【0124】
[0128]本明細書に引用される全ての特許、特許出願、刊行物、及び他の参考文献、GenBank引用、及びATCC引用は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾が生じた場合、定義を含む本明細書が支配する。
【0125】
[0129]本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書に開示される各特徴は、同一、同等又は類似の目的を果たす代替の特徴に置き換えることができる。したがって、特に明示的に述べられない限り、開示される特徴(例えば、TPP1をコードする核酸、TPP1をコードする核酸を含む発現カセット、及びTPP1をコードする核酸を含むrAAV粒子)は、同等又は類似の特徴の属の例である。
【0126】
[0130]本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「and」、及び「その(the)」は、文脈が明確に別の意味を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「核酸」への言及は複数のこのような核酸を含み、「ベクター」への言及は複数のこのようなベクターを含み、「ウイルス」又は「粒子」への言及は複数のこのようなウイルス/粒子を含む。
【0127】
[0131]本明細書で使用される場合、全ての数値又は数値範囲は、文脈が明確に別の意味を示さない限り、このような範囲内の整数及び範囲内の値又は整数の端数を含む。したがって、説明するために、86%以上の同一性への言及は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%など、並びに86.1%、86.2%、86.3%、86.4%、86.5%など、87.1%、88.2%、88.3%、88.4%、88.5%などを含む。
【0128】
[0132]より大きい(morethan)(超える(greater than))又はより小さい(less than)を伴う整数への言及は、それぞれ参照された数値より大きい又は小さい任意の数を含む。したがって、例えば、1.5×1013超への言及は、1.6×1013、1.7×1013、1.8×1013、1.9×1013、2.0×1013、2.1×1013、2.2×1013、2.3×1013、2.4×1013、2.5×1013、2.6×1013、2.7×1013、2.8×1013、2.9×1013、3.0×1013、3.1×1013、3.2×1013などを含む。
【0129】
[0133]本明細書で使用される場合、全ての数値又は範囲は、文脈が明確に別の意味を示さない限り、部分範囲並びにこのような範囲内の値及び整数の端数を含む。したがって、説明するために、1~10などの数値範囲への言及は、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、2~8、2~9、2~10、3~4、3~5、3~6、3~7、3~8、3~9、3~10など;及び1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5などを含む。したがって、1~50の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などから、最大50まで、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などを含む。
【0130】
[0134]一連の範囲への言及は、シリーズ内の異なる範囲の境界の値を結合する範囲を含む。したがって、一連の範囲への言及を説明するために、例えば、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~850は、1~20、1~30、1~40、1~50、1~60、10~30、10~40、10~50、10~60、10~70、10~80、20~40、20~50、20~60、20~70、20~80、20~90、50~75、50~100、50~150、50~200、50~250、100~200、100~250、100~300、100~350、100~400、100~500、150~250、150~300、150~350、150~400、150~450、150~500などの範囲を含む。
【0131】
[0135]本発明は、本発明の多数の実施形態を説明するために、肯定的な言語を使用して、本明細書において一般的に開示される。本発明はまた、具体的には、物質又は材料、方法ステップ及び条件、プロトコール、又は手順などの、特定の主題が全部又は一部除外される実施形態を含む。例えば、本発明の特定の実施形態では、材料及び/又は方法ステップは除外される。したがって、本発明が、本発明において明示的に除外されない態様を含まないものに関して、本明細書において一般的に表現されていないとしても、それにもかかわらず、本明細書において開示される。
【0132】
[0136]本発明の多くの実施形態が記載されている。それにもかかわらず、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の用途及び条件に適合させるために本発明の種々の変更及び修正を行うことができる。したがって、以下の実施例は、いかなる方法であれ、請求された発明の範囲を例示することを意図しているが、限定するものではない。
【実施例】
【0133】
実施例1
[0137]本研究では、成体アカゲザル(Macaca mulatta)の非ヒト霊長類(雌及び雄)を用いた。投与群は、対照(ビヒクルのみ);低用量(1.0×1013vg/動物);中用量(5.0×1013vg/動物);高用量(2.17×1014vg/動物)であった。
【0134】
[0138]投与群別動物数:対照(各時間点でn=3)、低用量(各時間点でN=3)、中用量(各時間点でn=3)及び高用量群(各時間点でn=4)。時間点は30日及び90日であった。
【0135】
[0139]AAV2-CAG-hTTP1投与:脊椎針(22G、3.5”Quinke BD)を用いた側脳室後頭角へのMRIガイド下片側送達(
図1;垂直線)。総体積4mLを(100μL/分)で送達させた。
【0136】
[0140]脳脊髄液(CSF)分析には、TPP1酵素活性アッセイ及びヒトTPP1タンパク質発現アッセイ(WES Western)が含まれた。
【0137】
実施例2
[0141]本実施例は、AAV2-CAG-ヒトTPP1の脳室内送達後のCNSにおけるヒトTPP1の短期及び長期発現並びに活性を示すデータの記載を含む。
【0138】
[0142]ヒトTPPは、CNSの側脳室の上衣細胞を標的とするAAV-CAG-ヒトTPP1(AAV-CAG-hTPP1とも呼ばれる)ベクターの送達後に、非ヒト霊長類のCSF中に分泌された。AAVベクターの送達後、20週間の時間経過にわたって、ヒトTPP1の測定可能であり、持続的な発現があった(
図2A、3A及び4)。さらに、3つ全てのAAVベクター用量におけるTPP1発現レベルは、以前に報告されたように、TPP1のK
取り込み内又はそれを超えるレベルをもたらした(Vuillemenot,B.R.ら、(2014年)Toxicol Appl Pharmacol、277巻(1号)、49~57頁)。これは、これらの動物における実質への長期であり、持続的な細胞取り込みの可能性が高いことを示している(Katz,M.L.ら、(2015年)Sci Transl Med、7巻(313頁);Tecedor,L.(2018年)16th International Conference on NCL、London、UK)。TPP1活性分析は、発現されたTPP1タンパク質の機能的生存性を確認する(
図2B及び3B)。AAV2-CAG-hTPP1を受けた動物の死後組織の予備分析では、希釈剤のみを受けた対照動物と比較して、有意な病理学的変化は示されなかった。動物における発現したhTPP1の組織取り込みの分析が行われている。
【0139】
[0143]これらの研究は、遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症の治療のために側脳室の上衣細胞からヒトTPP1の発現をもたらす、効果的な上衣指向性遺伝子治療アプローチを実証している。
【0140】
実施例3
Spk1 VP1カプシド(配列番号1):
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDNGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLQAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVESPVKTAPGKKRPVEPSPQRSPDSSTGIGKKGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPIGEPPAAPSGVGPNTMAAGGGAPMADNNEGADGVGSSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGSTNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNEGTKTIANNLTSTIQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFEFSYNFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTQSTGGTAGTQQLLFSQAGPNNMSAQAKNWLPGPCYRQQRVSTTLSQNNNSNFAWTGATKYHLNGRDSLVNPGVAMATHKDDEERFFPSSGVLMFGKQGAGKDNVDYSSVMLTSEEEIKTTNPVATEQYGVVADNLQQQNAAPIVGAVNSQGALPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPTTFNQAKLASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTNVDFAVNTEGTYSEPRPIGTRYLTRNL
【0141】
Spk2 VP1カプシド(配列番号2):
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWALQPGAPKPKANQQHQDNARGLVLPGYKYLGPGNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLKYNHADAEFQERLKEDTSFGGNLGRAVFQAKKRLLEPLGLVEEAAKTAPGKKRPVDQSPQEPDSSSGVGKSGKQPARKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPAAPTSLGSNTMASGGGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSQWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKKLSFKLFNIQVKEVTQNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLNRTQGTTSGTTNQSRLLFSQAGPQSMSLQARNWLPGPCYRQQRLSKTANDNNNSNFPWTAASKYHLNGRDSLVNPGPAMASHKDDEEKFFPMHGNLIFGKEGTTASNAELDNVMITDEEEIRTTNPVATEQYGTVANNLQSSNTAPTTRTVNDQGALPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQIMIKNTPVPANPPTTFSPAKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSVNVDFTVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRPL
【0142】
CAGプロモーター配列(配列番号3):
ATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTCGAGGTGAGCCCCACGTTCTGCTTCACTCTCCCCATCTCCCCCCCCTCCCCACCCCCAATTTTGTATTTATTTATTTTTTAATTATTTTGTGCAGCGATGGGGGCGGGGGGGGGGGGGGGGCGCGCGCCAGGCGGGGCGGGGCGGGGCGAGGGGCGGGGCGGGGCGAGGCGGAGAGGTGCGGCGGCAGCCAATCAGAGCGGCGCGCTCCGAAAGTTTCCTTTTATGGCGAGGCGGCGGCGGCGGCGGCCCTATAAAAAGCGAAGCGCGCGGCGGGCGGGGAGTCGCTGCGACGCTGCCTTCGCCCCGTGCCCCGCTCCGCCGCCGCCTCGCGCCGCCCGCCCCGGCTCTGACTGACCGCGTTACTCCCACAGGTGAGCGGGCGGGACGGCCCTTCTCCTCCGGGCTGTAATTAGCGCTTGGTTTAATGACGGCTTGTTTCTTTTCTGTGGCTGCGTGAAAGCCTTGAGGGGCTCCGGGAGGGCCCTTTGTGCGGGGGGAGCGGCTCGGGGGGTGCGTGCGTGTGTGTGTGCGTGGGGAGCGCCGCGTGCGGCTCCGCGCTGCCCGGCGGCTGTGAGCGCTGCGGGCGCGGCGCGGGGCTTTGTGCGCTCCGCAGTGTGCGCGAGGGGAGCGCGGCCGGGGGCGGTGCCCCGCGGTGCGGGGGGGGCTGCGAGGGGAACAAAGGCTGCGTGCGGGGTGTGTGCGTGGGGGGGTGAGCAGGGGGTGTGGGCGCGTCGGTCGGGCTGCAACCCCCCCTGCACCCCCCTCCCCGAGTTGCTGAGCACGGCCCGGCTTCGGGTGCGGGGCTCCGTACGGGGCGTGGCGCGGGGCTCGCCGTGCCGGGCGGGGGGTGGCGGCAGGTGGGGGTGCCGGGCGGGGCGGGGCCGCCTCGGGCCGGGGAGGGCTCGGGGGAGGGGCGCGGCGGCCCCCGGAGCGCCGGCGGCTGTCGAGGCGCGGCGAGCCGCAGCCATTGCCTTTTATGGTAATCGTGCGAGAGGGCGCAGGGACTTCCTTTGTCCCAAATCTGTGCGGAGCCGAAATCTGGGAGGCGCCGCCGCACCCCCTCTAGCGGGCGCGGGGCGAAGCGGTGCGGCGCCGGCAGGAAGGAAATGGGCGGGGAGGGCCTTCGTGCGTCGCCGCGCCGCCGTCCCCTTCTCCCTCTCCAGCCTCGGGGCTGTCCGCGGGGGGACGGCTGCCTTCGGGGGGGACGGGGCAGGGCGGGGTTCGGCTTCTGGCGTGTGACCGGCGGCTCTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTCATGCCTTCTTCTTTTTCCTACAGCTCCTGGGCAACGTGCTGGTTATTGTGCTGTCTCATCATTTTGGCAAA
【0143】
TPP1(配列番号4、ヒト):
MGLQACLLGLFALILSGKCSYSPEPDQRRTLPPGWVSLGRADPEEELSLTFALRQQNVERLSELVQAVSDPSSPQYGKYLTLENVADLVRPSPLTLHTVQKWLLAAGAQKCHSVITQDFLTCWLSIRQAELLLPGAEFHHYVGGPTETHVVRSPHPYQLPQALAPHVDFVGGLHRFPPTSSLRQRPEPQVTGTVGLHLGVTPSVIRKRYNLTSQDVGSGTSNNSQACAQFLEQYFHDSDLAQFMRLFGGNFAHQASVARVVGQQGRGRAGIEASLDVQYLMSAGANISTWVYSSPGRHEGQEPFLQWLMLLSNESALPHVHTVSYGDDEDSLSSAYIQRVNTELMKAAARGLTLLFASGDSGAGCWSVSGRHQFRPTFPASSPYVTTVGGTSFQEPFLITNEIVDYISGGGFSNVFPRPSYQEEAVTKFLSSSPHLPPSSYFNASGRAYPDVAALSDGYWVVSNRVPIPWVSGTSASTPVFGGILSLINEHRILSGRPPLGFLNPRLYQQHGAGLFDVTRGCHESCLDEEVEGQGFCSGPGWDPVTGWGTPNFPALLKTLLNP
【0144】
[関連出願]
[0001]本特許出願は、2019年2月1日に出願された米国特許仮出願第62/800,131号の優先権の利益を主張する。全てのテキスト、表、図面及び配列を含む上述の出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】