(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-17
(54)【発明の名称】架橋ポリマーネットワークおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20220310BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20220310BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20220310BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20220310BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220310BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220310BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220310BHJP
A61K 31/716 20060101ALI20220310BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C08B37/00 Q
G02C7/04
A61L15/28 100
A61L27/52
A61L27/20
A61P17/02
A61K9/08
A61K31/716
C08J3/24 Z CEP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544199
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 US2020013057
(87)【国際公開番号】W WO2020159690
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391008847
【氏名又は名称】ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グローブ、ジョージ、エル.、ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】アワスティ、アロク、クマール
(72)【発明者】
【氏名】ミス、マーク、アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルコット、ジェンナー、エル.
(72)【発明者】
【氏名】ハオエンシュタイン、ジェイムズ、アール.
【テーマコード(参考)】
2H006
4C076
4C081
4C086
4C090
4F070
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB02
2H006BB03
2H006BB07
2H006BB09
2H006BB10
2H006DA08
2H006DA09
4C076AA12
4C076BB24
4C081AA01
4C081AB22
4C081CD05
4C081DA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C090AA02
4C090AA04
4C090BB17
4C090BC27
4C090DA22
4F070AA01
4F070AC66
4F070AE08
4F070GA10
4F070GC01
(57)【要約】
架橋ポリマーネットワークが開示される。架橋ポリマーネットワークは、第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、架橋剤との反応生成物を含み、第1のグリコサミノグリカンは、第2のグリコサミノグリカンとは異なる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、第1の架橋剤との反応生成物を含む架橋ポリマーネットワークであって、前記第1のグリコサミノグリカンが、前記第2のグリコサミノグリカンとは異なる、架橋ポリマーネットワーク。
【請求項2】
前記第1のグリコサミノグリカンおよび前記第2のグリコサミノグリカンが、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノビオース、およびキトビオースからなる群から選択される、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項3】
前記第1のグリコサミノグリカンがヒアルロン酸であり、前記第2のグリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項4】
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化1】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’は、それぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-O」は、前記グリコサミノグリカン上の置換ヒドロキシル基を表し、xは、1~20に等しい整数である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項5】
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、請求項4に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項6】
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化2】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’は、それぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、Xは、NHまたはCH
2であり、「a」は、独立して、1~10に等しい整数である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項7】
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、請求項6に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項8】
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化3】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’はそれぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、nは、1~10に等しい整数であり、xは、独立して、1~10に等しい整数である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項9】
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、請求項8に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項10】
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化4】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’はそれぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、xは、独立して、1~10に等しい整数である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項11】
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、請求項10に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項12】
前記第1の架橋剤が、前記第1のグリコサミノグリカンおよび前記第2のグリコサミノグリカンの官能基と反応可能な2つ以上の官能基を含む二官能性または多官能性架橋剤である、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項13】
前記第1の架橋剤が、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン(EGDGE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、1,2-エタンジオールジグリシジルエーテル(EDDE)、ジエポキシオクタン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエステル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,3-ブタジエンジエポキド、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、およびポリエポキシドからなる群から選択される、二官能性または多官能性架橋剤を含む、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項14】
前記第1の架橋剤が、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アザライン酸(azalaic acid)ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ウンデカン二酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ブラシル酸ジヒドラジド、テトラデカン二酸ジヒドラジド、ペンタデカン二酸ジヒドラジド、タプシン酸ジヒドラジド、およびオクタデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択されるジヒドラジド架橋剤を含む、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項15】
前記第1の架橋剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、ヘプチレングリコール、およびオクチレングリコールからなる群から選択される二価アルコール架橋剤を含む、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項16】
前記第1の架橋剤が、グリセリン、ペンタエリスライト、キシリトール、およびガラクチトールからなる群から選択される多価アルコール架橋剤を含む、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項17】
前記第1の架橋剤が、式X-N=C=N-Xのカルボジイミド架橋剤を含み、式中、各Xが、独立して、1~2個のジアルキルアミノ基で任意に置換されたC
1~C
6アルキルであるか、またはC
5~C
6シクロアルキル基である、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項18】
前記第1の架橋剤が、メタクリル酸無水物、オクテイルコハク酸無水物(octeyl succinic anhydride)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)、グルラルアルデヒド(gluraraldehyde)、酸塩化物、n-ヒドロキシコハク酸イミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアミン、ジビニルスルホン、尿素、ジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項19】
前記反応生成物が、前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカンを含む、請求項1~18に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項20】
前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカンが、約20,000~約6,000,000Daの範囲の重量平均分子量を有する、請求項19に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項21】
前記反応生成物が、前記第1のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカン、および前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第2のグリコサミノグリカンをさらに含む、請求項19に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項22】
1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、第2の架橋剤で前記反応生成物と架橋される、請求項1~18に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項23】
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤と同じである、請求項22に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項24】
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤とは異なる、請求項22に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項25】
1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、前記架橋した第1のグリコサミノグリカンおよび第2のグリコサミノグリカンと、第2の架橋剤で架橋される、請求項19に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項26】
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤とは異なる、請求項25に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項27】
前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸である、請求項25に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項28】
(a)前記第1のグリコサミノグリカンと、前記第2のグリコサミノグリカンと、前記第1の架橋剤との前記反応生成物と、(b)1つ以上の第3のグリコサミノグリカンと、を含む混合物をさらに含む、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項29】
前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、直鎖グリコサミノグリカンである、請求項28に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項30】
前記1つ以上の直鎖グリコサミノグリカンが、直鎖ヒアルロン酸または直鎖コンドロイチン硫酸である、請求項29に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項31】
前記1つ以上の直鎖グリコサミノグリカンが、約10,000~約3,000,000Daの範囲の重量平均分子量を有する、請求項29に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項32】
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約20重量%含む、請求項28に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項33】
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約10重量%含む、請求項28に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項34】
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約5重量%含む、請求項28に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項35】
生物医学的デバイスであって、その表面上にコーティングを有し、前記コーティングが、請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、生物医学的デバイス。
【請求項36】
前記生物医学的デバイスが、眼用レンズである、請求項35に記載の生物医学的デバイス。
【請求項37】
前記眼用レンズが、コンタクトレンズまたは眼内レンズである、請求項36に記載の生物医学的デバイス。
【請求項38】
請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む水性パッケージング溶液中に浸漬された、1つ以上の未使用の眼用デバイスを収容する密封容器を含む、眼用デバイスの保管用パッケージングシステムであって、前記溶液が、少なくとも約180mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9のpHを有し、熱滅菌されている、パッケージングシステム。
【請求項39】
前記1つ以上の未使用の眼用デバイスが、コンタクトレンズである、請求項38に記載のパッケージングシステム。
【請求項40】
保管可能な、滅菌眼用デバイスを含むパッケージを調製する方法であって、
(a)請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む水性パッケージング溶液中に眼用デバイスを浸漬することであって、前記溶液が、少なくとも約180mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度および約6~約9の範囲のpHを有する、浸漬することと、
(b)微生物による前記デバイスの汚染を防止する様式で、前記溶液および前記デバイスをパッケージングすることと、
(c)前記パッケージングされた溶液およびデバイスを滅菌することと、を含む、方法。
【請求項41】
請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、水性眼用組成物であって、180mOsmol/kg~500mOsmol/kgの範囲の重量モル浸透圧濃度を有する、水性眼用組成物。
【請求項42】
点眼薬、コンタクトレンズ用保存液、コンタクトレンズ用洗浄液、およびコンタクトレンズ用多目的溶液からなる群から選択される、アイケアまたはコンタクトレンズケア製品の形態である、請求項41に記載の水性眼用組成物。
【請求項43】
多目的溶液または再湿潤液滴の形態である、請求項41に記載の水性眼用組成物。
【請求項44】
創傷治癒を促進するためのゲル組成物であって、請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、ゲル組成物。
【請求項45】
請求項44に記載のゲル組成物を含む創傷被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、架橋ポリマーネットワークおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは着用者にとって可能な限り快適であることが非常に望ましい。コンタクトレンズのメーカーは、レンズの快適性を向上させるために継続的に取り組んでいる。それにもかかわらず、コンタクトレンズを着用している多くの人々は、一日を通して、特に一日の終わりに乾燥または目への刺激を感じる。濡れが不十分なレンズは、レンズ着用者に著しい不快感をもたらす。このような不快感を緩和するために必要に応じて湿潤液滴を使用することができるが、そもそもこのような不快感が生じないことが望ましい。
【0003】
グリコサミノグリカン(GAG)は、繰り返し二糖単位で構築された多糖の群である。高い極性および水の親和性により、それらは人体の多くのシステムで見つけることができる。例えば、GAGは、細胞の表面上、および皮膚、軟骨、および肺などの動物生物の細胞外マトリックス中で生じる。
【0004】
GAGは、各々、ウロン酸およびヘキソサミンからなる繰り返し基礎二糖構造を含み、かつ任意選択的に様々な程度に硫酸化される化学構造を有する。GAGは、それらを構成する二糖に応じて、主に、コンドロイチン硫酸またはデルマタン硫酸で構成される化合物の第1のグループ、ヘパラン硫酸またはヘパリンで構成される化合物の第2のグループ、およびヒアルロン酸化合物の第3のグループ、の3つのグループに分類される。例えば、コンドロイチン硫酸またはデルマタン硫酸で構成される化合物は、二糖類:ウロン酸(グルクロン酸またはイズロン酸)(β1→3)N-アセチルガラクトサミンからなり、ヘパラン硫酸またはヘパリンで構成される化合物は二糖類:ウロン酸(グルクロン酸またはイズロン酸)(β1→4)N-アセチルグルコサミンからなり、ヒアルロン酸は二糖類:グルクロン酸(β1→3)N-アセチルグルコサミンからなる。加えて、硫酸化による修飾との組み合わせにより、構造は非常に多様である。
【0005】
これらのGAGは、分子サイズおよび硫酸化パターンに応じて、特徴的な粘弾性に由来する物理化学的特性および様々な機能的タンパク質との相互作用によって媒介される生物学的特性の両方を有する重要な生物学的材料として知られている。
【0006】
着用者にとって可能な限り快適なコンタクトレンズなどの生物医学的デバイスを作製し、適切な物理的特性および化学的特性、例えば潤滑性および濡れ性を示すことができる改良されたGAGを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、1つ以上の架橋剤との反応生成物を含む架橋ポリマーネットワークであって、第1のグリコサミノグリカンが、第2のグリコサミノグリカンと異なる、架橋ポリマーネットワークを提供する。
【0008】
本発明の第2の実施形態によれば、第2のグリコサミノグリカンと架橋した第1のグリコサミノグリカンを含む架橋ポリマーネットワークであって、第1のグリコサミノグリカンが、第2のグリコサミノグリカンとは異なる、架橋ポリマーネットワークを提供する。
【0009】
本発明の第3の実施形態によれば、生物医学的デバイスであって、その表面上にコーティングを有し、コーティングが、第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、1つ以上の架橋剤との反応生成物を含む1つ以上の架橋ポリマーネットワークを含み、第1のグリコサミノグリカンが、第2のグリコサミノグリカンとは異なる、生物医学的デバイスを提供する。
【0010】
本発明の第4の実施形態によれば、眼用デバイスの保管用パッケージングシステムであって、第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、1つ以上の架橋剤との反応生成物を含む1つ上の架橋ポリマーネットワークを含む、水性パッケージング溶液中に浸漬された、1つ以上の未使用の眼用デバイスを収容する密封容器を含み、第1のグリコサミノグリカンが、第2のグリコサミノグリカンとは異なり、溶液が、少なくとも約200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9のpHを有し、熱滅菌される、眼用デバイスの保管用パッケージングシステムを提供する。
【0011】
本発明の第5の実施形態によれば、保管可能な滅菌眼用デバイスを含むパッケージを調製する方法であって、(a)第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、1つ以上の架橋剤との反応生成物を含む1つ以上の架橋ポリマーネットワークを含む水性パッケージング溶液中に眼用デバイスを浸漬することであって、第1のグリコサミノグリカンが、第2のグリコサミノグリカンとは異なり、溶液が、少なくとも約200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度および約6~約9の範囲のpHを有する、浸漬することと、(b)微生物による前記デバイスの汚染を防止する様式で、溶液およびデバイスをパッケージングすることと、(c)前記パッケージングされた溶液およびデバイスを滅菌することと、を含む、方法を提供する。
【0012】
本発明の第6の実施形態によれば、第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、1つ以上の架橋剤との反応生成物を含む1つ以上の架橋ポリマーネットワークを含む、水性眼用組成物であって、第1のグリコサミノグリカンが、第2のグリコサミノグリカンと異なり、200mOsmol/kg~400mOsmol/kgの範囲の重量モル浸透圧濃度を有する、水性眼用組成物を提供する。
【0013】
本発明の第7の実施形態によれば、創傷治癒を促進するためのゲル組成物であって、第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、1つ以上の架橋剤との反応生成物を含む1つ以上の架橋ポリマーネットワークを含み、第1のグリコサミノグリカンが、第2のグリコサミノグリカンとは異なる、ゲル組成物を提供する。
【0014】
本発明の第8の実施形態によれば、第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、1つ以上の架橋剤との反応生成物を含む1つ以上の架橋ポリマーネットワークを含むゲル組成物を含む創傷被覆材であって、第1のグリコサミノグリカンが、第2のグリコサミノグリカンとは異なる、創傷被覆材を提供する。
【0015】
本発明の架橋ポリマーネットワークは、第1のグリコサミノグリカンを第2のグリコサミノグリカンと架橋させることによって(第1のグリコサミノグリカンは、第2のグリコサミノグリカンとは異なる)、身体との長期接触のために、好適な物理的および化学的特性、例えば、酸素透過性、潤滑性、粘着性および濡れ性を有利に示す。本発明の架橋ポリマーネットワークは、コンタクトレンズなどの生物医学的デバイスの表面に改善された潤滑性を有利に提供する。例えば、本発明の架橋ポリマーネットワークを使用した改善された潤滑性の利点は、例えば、コンタクトレンズとそのそれぞれのパッケージングブリスターとの間の相互作用を最小限に抑えること、加工および取り扱い条件に向けてより堅牢であるレンズ表面、および対象の眼への挿入時に改善された快適性、ならびに沈着(例えば、タンパク質、脂質)を低減させ、したがってコンタクトレンズ着用者によるレンズ表面へのバイオフィルム形成を潜在的に低減することを含む。
【0016】
さらに、本発明の架橋ポリマーネットワークは、コンタクトレンズなどの生物医学的デバイスの表面への改善された濡れ性を有利に提供する。本発明の架橋ポリマーネットワークを使用して濡れ性を改善させた利点は、例えば、眼表面へのコーティングと同様の効果および保湿特性のためのデバイスの水層の蒸発を遅延させ、したがってドライアイ症状を潜在的に緩和することを含むと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、体組織または体液と直接接触することを意図する生物医学的デバイスの表面を処理するのに有用な架橋ポリマーネットワークを対象とする。概して、架橋ポリマーネットワークは、第1のグリコサミノグリカン(GAG)と、第2のグリコサミノグリカンと、1つ以上の架橋剤との反応生成物を含み、第1のグリコサミノグリカンは、第2のグリコサミノグリカンとは異なる。GAGは、多くの交互サブユニットを有する1つの分子である。一般に、GAGは、式A-B-A-B-A-Bによって表され、式中、Aは、ウロン酸であり、Bは、O-またはN-硫酸化のいずれかであるアミノ糖であり、A単位およびB単位は、エピマー含有量または硫酸化に関して不均一であり得る。ウロン酸を含有する任意の天然または合成ポリマーを使用することができる。他のGAGは、異なる糖で硫酸化されている。一般に理解されている構造、例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸またはその塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸カリウム、ヘパラン硫酸、ならびに他の二糖類、例えば、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノビオース、およびキトビオースなどを有する、多くの異なるタイプのGAGが存在する。グリコサミノグリカンは、Sigma、および多くの他の生化学サプライヤーから購入することができる。
【0018】
一実施形態では、第1のGAGは、ヒアルロン酸またはその塩であり、第2のGAGは、コンドロイチン硫酸である。ヒアルロン酸は、交互のβ-(1,4)およびβ-(1,3)グリコシド結合を介して連結された、2つの代替的に連結された糖、D-グルクロン酸およびN-アセチルグルコサミンから構成される、周知の、天然に存在する水溶性生分解性ポリマーである。ヒアルロン酸は、非硫酸化GAGである。ヒアルロナン。ポリマーは、親水性であり、比較的低い溶質濃度で水溶液中で高粘度である。それは、ナトリウム塩であるヒアルロン酸ナトリウムとして自然発生することが多い。市販のヒアルロナンおよびその塩を調製する方法は、周知である。ヒアルロナンは、Seikagaku Company、Clear Solutions Biotech,Inc.,Pharmacia Inc.,Sigma Inc.,および他の多くのサプライヤーから購入することができる。ヒアルロン酸は、以下の式で表される構造の1つ以上の繰り返し単位を有する。
【化1】
したがって、ヒアルロン酸中の繰り返し単位は、以下のようにすることができる。
【化2】
【0019】
概して、ヒアルロン酸またはその塩は、約2~約1,500,000個の二糖単位を有することができる。一実施形態では、ヒアルロン酸またはその塩は、約10,000~約3,000,000ダルトン(Da)の範囲の重量平均分子量を有し得、その下限は、約10,000、約20,000、約30,000、約40,000、約50,000、約60,000、約70,000、約80,000、約90,000、または約100,000であり、上限は、約200,000、約300,000、約400,000、約500,000、約600,000、約700,000、約800,000、約900,000、約1,000,000、または最大約2,800,000であり、下限のいずれかを上限のいずれかと組み合わせることができる。
【0020】
コンドロイチン硫酸は、GlcA-β(1,3)-GalNAc-β(1,4)グリコシド結合によって配列中に配置されたβ-D-グルクロン酸(GlcA)およびN-アセチル-β-D-ガラクトサミン(GalNAc)単位を繰り返すことで構成される直鎖硫酸化多糖である。一実施形態では、コンドロイチン硫酸は、以下の式で表される構造の1つ以上の繰り返し単位を有する。
【化3】
【0021】
一実施形態では、コンドロイチン硫酸は、以下の式で表される構造の1つ以上の繰り返し単位を有する。
【化4】
【0022】
概して、硫酸コンドロイチンは、約2~約1,500,000の繰り返し単位を有することができる。一実施形態では、コンドロイチン硫酸は、約10,000~約3,000,000Daの範囲の重量平均分子量を有することができ、その下限は、約5,000、10,000、約20,000、約30,000、約40,000、約50,000、約60,000、約70,000、約80,000、約90,000、約100,000であり、その上限は、約200,000、約300,000、約400,000、約500,000、約600,000、約700,000、約800,000、約900,000、約1,000,000、または約3,000,000であり、その下限のいずれかは、上限のいずれかと組み合わせることができ、または上限のいずれかは、上限のいずれかと組み合わせることができる。
【0023】
上述のように、反応生成物は、例えば、第1のグリコサミノグリカンを第2のグリコサミノグリカンと架橋させるために、1つ以上の架橋剤を含む。本明細書で使用するための架橋剤は、当該技術分野において既知の任意の好適な架橋剤であり得る。一般に、好適な架橋剤は、例えば、ヒアルロン酸などの第1のグリコサミノグリカンおよびコンドロイチン硫酸などの第2のグリコサミノグリカンに対して相補的な官能基を有する架橋剤である。一実施形態では、好適な架橋剤としては、例えば、二官能性または多官能性の架橋剤が挙げられる。二官能性または多官能性架橋剤は、第1のグリコサミノグリカンを第2のグリコサミノグリカンと接続する。さらに、二官能性または多官能性架橋剤は、第1のグリコサミノグリカンと第2のグリコサミノグリカンとの間のスペーサーとしてさらに作用する。概して、二官能性または多官能性架橋剤は、ヒアルロン酸などの第1のグリコサミノグリカンおよびコンドロイチン硫酸などの第2のグリコサミノグリカンの官能基と反応可能な2つ以上の官能基を含み、共有結合の形成をもたらす。
【0024】
好適な二官能性または多官能性架橋剤としては、例えば、ジビニルスルホン、ジエポキシド、マルチエポキシド、ジヒドラジド、二価アルコール、多価アルコール、多価チオール、無水物、カルボジイムド、ポリカルボン酸、カルボキシメチルチオール、システイン、およびシステイン様アミノ酸などが挙げられる。一実施形態では、二官能性または多官能性架橋剤は、ジグリシジルエーテル誘導体などのビスまたはポリエポキシドである。一実施形態によれば、二官能性または多官能性エポキシド架橋剤は、2つ以上のグリシジルエーテル官能基を含む。グリシジルエーテル官能基は、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸の一級ヒドロキシル基と反応し、エーテル結合を形成する。一実施形態では、好適なビスまたは多官能性架橋剤としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン(EGDGE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、1,2-エタンジオールジグリシジルエーテル(EDDE)、ジエポキシオクタン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエステル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,3-ブタジエンジエポキド、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ポリエポキシドなどが挙げられる。
【0025】
好適なジヒドラジド架橋剤としては、例えば、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アザライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ウンデカン二酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ブラシル酸ジヒドラジド、テトラデカン二酸ジヒドラジド、ペンタデカン二酸ジヒドラジド、タプシン酸ジヒドラジド、オクタデカン二酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0026】
好適な二価アルコール架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコールなどが挙げられる。好適な多価アルコール架橋剤としては、例えば、グリセリン、ペンタエリスライト、キシリトール、およびガラクチトールなどが挙げられる。好適なカルボジイミド架橋剤としては、例えば、式X-N=C=N-Xの化合物が挙げられ、式中、各Xは、独立して、1~2個のジアルキルアミノ基で任意に置換されたC1~C6アルキルであるか、または、C5~C6シクロアルキル基であり、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、およびシクロヘキシルカルボジイミドが挙げられる。好適な無水物架橋剤としては、例えば、メタクリル酸無水物、オクテイルコハク酸無水物(octeyl succinic anhydride)などが挙げられる。一実施形態では、好適な架橋剤は、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)、グルラルアルデヒド(gluraraldehyde)などのアルデヒド架橋剤である。一実施形態では、好適な架橋剤としては、例えば、酸塩化物、n-ヒドロキシコハク酸イミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアミン、尿素、ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0027】
本発明の架橋ポリマーネットワークは、第1のグリコサミノグリカンおよび第2のグリコサミノグリカンの溶液を形成し、前述の1つ以上の架橋剤を添加することによって得ることができる。溶液を、少なくとも第1のグリコサミノグリカンを第2のグリコサミノグリカンと架橋するのに十分な好適な時間攪拌する。一実施形態では、グリコサミノグリカン間の架橋は、約2時間~約24時間の期間にわたって1℃~約99℃で行われ得る。
【0028】
溶液は、例えば、水、クラウンエーテル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、および他の非プロトン性溶媒などの好適な溶媒を含有することができる。概して、第1のグリコサミノグリカンの量は、溶液の総重量に基づいて、約0.010~約50重量%の範囲であり得る。一実施形態では、第1のグリコサミノグリカンの量は、溶液の総重量に基づいて、約0.1~約5重量%の範囲であり得る。一実施形態では、第2のグリコサミノグリカンの量は、溶液の総重量に基づいて、約0.01~約50重量%の範囲であり得る。一実施形態では、第2のグリコサミノグリカンの量は、溶液の総重量に基づいて、約0.1~約5重量%の範囲であり得る。架橋剤は、溶液の総重量に基づいて、約0.05~約10重量%の範囲の量で溶液に添加され得る。
【0029】
反応生成物が、例えば、第2のグリコサミノグリカンと架橋した第1のグリコサミノグリカン、第1のグリコサミノグリカンと架橋した第1のグリコサミノグリカン、第2のグリコサミノグリカンと架橋した第2のグリコサミノグリカン、未反応の第1のグリコサミノグリカンおよび未反応の第2のグリコサミノグリカンを含む化合物の複合混合物を構成することは、当業者には容易に理解されるであろう。例えば、一例示的な実施形態では、第2のグリコサミノグリカンと架橋した第1のグリコサミノグリカンは、約20,000~約6,000,000Daの範囲の重量平均分子量を有し得、その下限は、約20,000、約30,000、約40,000、約50,000、約60,000、約70,000、約80,000、約90,000、または約100,000Daであり、その上限は、約200,000、約300,000、約400,000、約500,000、約600,000、約700,000、約800,000、約900,000、約1,000,000、約2,000,000、約3,000,000、約4,000,000、約5,000,000、または最大約6,000,000Daであり、下限のいずれかを上限のいずれかと組み合わせることができる。反応生成物混合物の1つ以上の特定の成分を単離する必要はない。実際には、反応生成物混合物をそのまま用いることができる。
【0030】
一実施形態では、本発明の架橋ポリマーネットワークを、同じまたは異なる第3のグリコサミノグリカンのうちの1つ以上でさらに架橋することができる。概して、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、上記で論じたグリコサミノグリカンのうちのいずれかであり得る。一実施形態では、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸である。一実施形態では、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸である。一実施形態では、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸を含む。
【0031】
同じまたは異なる第3のグリコサミノグリカンのうちの1つ以上を前述の架橋ポリマーネットワークと架橋させるための架橋剤は、上で論じた架橋剤のうちのいずれかであり得る。当業者であれば理解するように、架橋剤は、前述の反応生成物に使用される架橋剤と同じ架橋剤または異なる架橋剤を使用することができる。
【0032】
概して、本発明の架橋ポリマーネットワークは、上で論じたものと実質的に同じ様式で、同じまたは異なる第3のグリコサミノグリカンのうちの1つ以上とさらに架橋され得る。
【0033】
一実施形態では、本発明の架橋ポリマーネットワークを、同じまたは異なる第3のグリコサミノグリカンのうちの1つ以上とさらに混合することができる。概して、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、上記で論じたグリコサミノグリカンのうちのいずれかであり得る。一実施形態では、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、直鎖グリコサミノグリカンである。一実施形態では、直鎖グリコサミノグリカンは、直鎖ヒアルロン酸である。一実施形態では、直鎖グリコサミノグリカンは、直鎖コンドロイチン硫酸である。概して、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、混合物の総重量に基づいて、約1重量%~約20重量%の範囲の量で本発明の架橋ポリマーネットワークと混合し得る。一実施形態では、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、混合物の総重量に基づいて、約1重量%~約10重量%の範囲の量で本発明の架橋ポリマーネットワークと混合し得る。一実施形態では、1つ以上の第3のグリコサミノグリカンは、混合物の総重量に基づいて、約1重量%~約5重量%の範囲の量で本発明の架橋ポリマーネットワークと混合し得る。
【0034】
本発明の別の実施形態では、本発明の架橋ポリマーネットワークをそれらの表面に含む生物医学的デバイスが提供される。架橋ポリマーネットワークは、生物医学的デバイスの表面全体にわたって、または生物医学的デバイスの表面の一部のみにわたって提供され得る。架橋ポリマーネットワークはまた、生物医学的デバイスの構築物内に提供されてもよい。本明細書で使用される場合、「生物医学的デバイス」という用語は、哺乳類組織または体液中または哺乳類組織または体液上で、好ましくはヒト組織または体液中またはヒト組織または体液上で使用されるように設計される任意の物品を意味すると理解されるべきである。生物医学的デバイスの代表的な例としては、人工尿管、ダイアフラム、子宮内避妊器具、心臓弁、カテーテル、義歯ライナー、人工器官、眼用レンズ用途が挙げられるが、これらに限定されず、ここでは、レンズは、例えば、眼内デバイスおよびコンタクトレンズなどの眼内または眼上に直接配置することを意図している。好ましい生物医学的デバイスは、眼用デバイス、特にコンタクトレンズ、および最も好ましくはシリコーンヒドロゲルから作製されたコンタクトレンズである。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「眼用デバイス」および「レンズ」とは、眼内または眼上に存在するデバイスを指す。これらのデバイスは、光学補正、創傷ケア、組織修復、薬物送達、診断機能、または美容上の強化もしくは効果、あるいはこれらの特性の組み合わせを提供することができる。有用な眼用デバイスとしては、ソフトコンタクトレンズ(例えば、ヒドロゲルソフトレンズ、および非ヒドロゲルソフトレンズなど)、ハードコンタクトレンズ(例えば、気体透過性ハードレンズ材料など)、眼内レンズ、オーバーレイレンズ(overlay lense)、眼内挿入物、光学挿入物、粘弾性物(viscoelastic)などの、眼用レンズが挙げられるが、これらに限定されない。当業者により理解されるように、レンズが壊れることなくそれ自体に折り返すことができる場合、レンズは「ソフト」であるとみなされる。
【0036】
本発明に従って表面が修飾される生物医学的デバイスは、上述の生物医学的デバイスを形成することができる当該技術分野で既知の任意の材料であり得る。一実施形態では、生物医学的デバイスは、それ自体が親水性ではない材料から形成されたデバイスを含む。このようなデバイスは、当該技術分野で既知の材料から形成され、例として、ポリシロキサン、ペルフルオロポリエーテル、例えば、他の重合性カルボン酸に由来するフッ素化ポリ(メタ)アクリレートもしくは等価フッ素化ポリマー、他の重合性カルボン酸に由来するポリアルキル(メタ)アクリレートもしくは等価アルキレステルポリマー、またはフッ素化エチレンプロピレンポリマーなどのフッ素化ポリオレフィン、または好ましくはジオキソール、例えば、ペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールと組み合わせたテトラフルオロエチレンを含む。好適なバルク材料の代表的な例としては、ロトラフィルコンA(Lotrafilcon A)、ネオフォコン(Neofocon)、パシフォコン(Pasifocon)、テレフォコン(Telefocon)、シラフォコン(Silafocon)、フルオシルフォコン(Fluorsilfocon)、パフルフォコン(Paflufocon)、シラフォコン(Silafocon)、エラストフィルコン(Elastofilcon)、フロロフォコン(Fluorofocon)、またはテフロンAF(Teflon AF)材料、例えば、約63~約73mol%のペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールおよび約37~約27mol%のテトラフルオロエチレンのコポリマー、または約80~約90mol%のペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールおよび約20~約10mol%のテトラフルオロエチレンのコポリマーである、テフロンAF1600またはテフロンAF2400が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
別の実施形態では、生物医学的デバイスは、反応性基、例えば、カルボキシ基、カルバモイル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミン基、アンモニウム基、またはヒドロキシ基が、材料中に本質的に存在するので、そこから製造された生物医学的デバイスの表面にも存在するため、それ自体が親水性の材料から形成されたデバイスを含む。このようなデバイスは、当該技術分野で既知の材料から形成され、例として、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド(DMA)、ポリビニルアルコールなど、ならびにこれらのコポリマーを含み、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、およびビニルアルコールなどから選択される2つ以上のモノマーから形成される。好適なバルク材料の代表的な例としては、ポリマコン(Polymacon)、テフィルコン(Tefilcon)、メタフィルコン(Methafilcon)、デルタフィルコン(Deltafilcon)、ブフィルコン(Bufilcon)、フェムフィルコン(Phemfilcon)、オキュフィルコン(Ocufilcon)、フォコフィルコン(Focofilcon)、エタフィルコン(Etafilcon)、ヘフィルコン(Hefilcon)、ビフィルコン(Vifilcon)、テトラフィルコン(Tetrafilcon)、ペルフィルコン(Perfilcon)、ドロキシフィルコン(Droxifilcon)、ジメフィルコン(Dimefilcon)、イソフィルコン(Isofilcon)、マフィルコン(Mafilcon)、ネルフィルコン(Nelfilcon)、アトラフィルコン(Atlafilcon)、などが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なバルク材料の例としては、バラフィルコンA(Balafilcon A)、ヒラフィルコンA(Hilafilcon A)、アルファフィルコンA(Alphafilcon A)、ビラフィルコンB(Bilafilcon B)などが挙げられる。
【0038】
別の実施形態では、本発明に従って表面修飾される生物医学的デバイスは、結合または架橋メンバーを通じて連結される、少なくとも1つの疎水性セグメントおよび少なくとも1つの親水性セグメントを含有する両親媒性セグメント化コポリマーである材料から形成されるデバイスを含む。
【0039】
コンタクトレンズを含む、眼用レンズに一般的に使用される軟質材料および硬質材料の両方を含む、本明細書における生体適合性材料を使用することは、特に有用である。一般に、非ヒドロゲル材料は、その平衡状態で水を含有しない疎水性ポリマー材料である。典型的な非ヒドロゲル材料は、シリコーンアクリル、例えば、嵩高いシリコーンモノマー(例えば、一般に「トリス」モノマーとして知られるトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート)、メタクリレート末端キャップポリ(ジメチルシロキサン)プレポリマー、またはフルオロアルキル側基を有するシリコーン(ポリシロキサンは一般にシリコーンポリマーとしても知られる)を形成したものを含む。
【0040】
一方、ヒドロゲル材料は、平衡状態で水を含有する水和した架橋ポリマー系を含む。ヒドロゲル材料は、約5重量%以上の水(例えば、最大約80重量%)を含有する。好ましいヒドロゲル材料としては、シリコーンヒドロゲル材料が挙げられる。好ましい一実施形態では、材料は、親水性モノマーと共重合したビニル官能化ポリジメチルシロキサン、ならびに親水性モノマーと共重合したフッ素化メタクレートおよびメタクリレート官能化フッ素化ポリエチレンオキシドが含まれる。本明細書で使用するための好適な材料の代表例としては、米国特許第5,310,779号、同第5,387,662号、同第5,449,729号、同第5,512,205号、同第5,610,252号、同第5,616,757号、同第5,708,094号、同第5,710,302号、同第5,714,557号、および同第5,908,906号に開示されているものが挙げられ、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
一実施形態では、コンタクトレンズなどの生物医学的デバイスのためのヒドロゲル材料は、親水性モノマー、例えば1つ以上の不飽和カルボン酸、ビニルラクタム、アミド、重合性アミン、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、オキサゾロンモノマー、これらのコポリマーなどおよびこれらの混合物を含有することができる。有用なアミドとしては、アクリルアミド、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジメチルメタクリルアミドなどが挙げられる。有用なビニルラクタムとしては、N-ビニル-2-ピロリドンなどの環状ラクタムが挙げられる。他の親水性モノマーの例としては、重合性基で官能化されたポリ(アルケングリコール)などの親水性プレポリマーが挙げられる。有用な官能化ポリ(アルケングリコール)の例としては、モノメタクリレートまたはジメタクリレート末端キャップを含有する様々な鎖長のポリ(ジエチレングリコール)が挙げられる。好ましい実施形態では、ポリ(アルケングリコール)ポリマーは、少なくとも2つのアルケングリコールモノマー単位を含有する。なおさらなる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている親水性ビニルカーボネートモノマーまたは親水性ビニルカルバメートモノマー、および米国特許第4,910,277号に開示されている親水性オキサゾロンモノマーである。他の好適な親水性モノマーは、当業者には明らかであろう。別の実施形態では、ヒドロゲル材料は、シロキサン含有モノマー、ならびに前述の親水性モノマーおよび/またはプレポリマーのうちの少なくとも1つを含有することができる。
【0042】
疎水性モノマーの非限定的な例としては、C1-C20アルキルおよびC3-C20シクロアルキル(メタ)アクリレート、置換および非置換アリール(メタ)アクリレート(アリール基は6~36個の炭素原子を含む)、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、低級アルキルスチレン、低級アルキルビニルエーテル、およびC2-C10ペルフルオロアルキル(メタ)アクリレート、および対応して部分的にフッ素化された(メタ)アクリレートがある。
【0043】
多種多様な材料を本明細書で使用することができ、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ材料が特に好ましい。シリコーンヒドロゲルは、一般に、約5重量%よりも大きい、より一般的には、約10~約80重量%の含水率を有する。このような材料は通常、少なくとも1つのシリコーン含有モノマーおよび少なくとも1つの親水性モノマーを含有する混合物を重合させることによって調製される。典型的には、シリコーン含有モノマーまたは親水性モノマーが、架橋剤(架橋剤は複数の重合性官能基を有するモノマーとして定義される)として機能するか、または別個の架橋剤が使用されてもよい。シリコーンヒドロゲルの形成に使用するための適用可能なシリコーン含有モノマーは、当該技術分野において周知であり、多くの例は、米国特許第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,260,000号、同第5,310,779号、および同第5,358,995号に提供されている。
【0044】
適用可能なケイ素含有モノマーの代表的な例としては、嵩高いポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。嵩高いポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーの例は、式Iの構造で表され:
【化5】
式中、Xは-O-または-NR-を表し、Rは水素またはC
1-C
4アルキルを表し、各R
1は独立して水素またはメチルを表し、各R
2は独立して低級アルキルラジカル、フェニルラジカル、または以下の式で表される基を表し:
【化6】
式中、各R
2′は独立して低級アルキルまたはフェニルラジカルを表し、hは1~10である。
【0045】
他の適用可能なケイ素含有モノマーの代表的な例としては、一般に、式Iaに示すような嵩高いポリシロキサニルアルキルカルバメートモノマーが挙げられるが、これに限定されない:
【化7】
式中、Xは-NR-を表し、Rは水素またはC
1-C
4アルキルを表し、R
1は水素またはメチルを表し、各R
2は独立して、低級アルキルラジカル、フェニルラジカル、または以下の式で表される基を表し:
【化8】
式中、各R
2′は独立して、低級アルキルまたはフェニルラジカルを表し、hは1~10などである。
【0046】
嵩高いモノマーの例としては、3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチル-シロキシ)シランまたはトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(トリスと呼ばれることもある)、およびトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカルバメート(TRIS-VCと呼ばれることもある)、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
このような嵩高いモノマーは、分子の2つ以上の末端に不飽和基でキャップされたポリ(オルガノシロキサン)であるシリコーンマクロモノマーと共重合してよい。米国特許第4,153,641号は、例えば、アクリロキシまたはメタクリロキシ基などの種々の不飽和基を開示している。
【0048】
別のクラスの代表的なシリコーン含有モノマーとしては、シリコーン含有ビニルカーボネートまたはビニルカルバメートモノマー、例えば、1,3-ビス[4-ビニルオキシカルボニルオキシ]ブタ-1-イル]テトラメチルジシロキサン、3-(トリメチルシリル)プロピルビニルカーボネート、3-(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート、t-ブチルジメチルシロキシエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、およびトリメチルシリルメチルビニルカーボネートなど、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
別のクラスのケイ素含有モノマーとしては、ポリウレタン-ポリシロキサンマクロモノマー(プレポリマーとも呼ばれる)が挙げられ、これは、従来のウレタンエラストマーのような硬質-軟質ブロックを有し得る。これらは、HEMAなどの親水性モノマーで末端キャップされてもよい。このようなシリコーンウレタンの例は、Lai,Yu-Chin,“The Role of Bulky Polysiloxanylalkyl Methacryates in Polyurethane-Polysiloxane Hydrogels,”Journal of Applied Polymer Science,Vol.60,1193-1199(1996)を含む、様々なまたは出版物に開示されている。PCT公開出願第WO96/31792号は、このようなモノマーの例を開示し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。シリコーンウレタンモノマーのさらなる例は、式IIおよびIIIで表され:
E(
*D
*A
*D
*G)
a
*D
*A
*D
*E’、または (II)
E(
*D
*G
*D
*A)
a
*D
*A
*D
*E’、または (III)
(式中、
Dは独立して、6~約30個の炭素原子を有するアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル、またはアルキルアリールジラジカルを表し、
Gは独立して、1~約40個の炭素原子を有するアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカルまたはアルキルアリールジラジカルを表し、主鎖にエーテル、チオまたはアミン結合を含有してもよく、
*は、ウレタンまたはウレイド結合を表し、
aは少なくとも1であり、
Aは独立して、式IVの二価の重合性ラジカルを表し:
【化9】
式中、各R
sは独立して、炭素原子間のエーテル結合を含有し得る1~約10個の炭素原子を有するアルキルまたはフルオロ置換アルキル基を表し、m′は少なくとも1であり、pは、約400~約10,000の部位重量を提供する数であり、
EおよびE′の各々は独立して、式Vで表される重合性不飽和有機ラジカルを表し:
【化10】
(式中、R
3は水素またはメチルであり、
R
4は、水素、1~6個の炭素原子を有するアルキルラジカル、または-CO-Y-R
6ラジカルであり、Yは-O-、-S-、もしくは-NH-であり、
R
5は、1~約10個の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、
R
6は、1~約12個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、
Xは、-CO-または-OCO-を表し、
Zは、-O-または-NH-を表し、
Arは、約6~約30個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを表し、
wは0~6であり、xは0または1であり、yは0または1であり、zは0または1である。
【0050】
好ましいシリコーン含有ウレタンモノマーは、式VIで表され:
【化11】
式中、mは少なくとも1であり、好ましくは3または4であり、aは少なくとも1であり、好ましくは1であり、pは約400~約10,000の部位重量を提供する数であり、好ましくは少なくとも約30であり、R
7は、イソホロンジイソシアネートのジラジカルなどのイソシアネート基の除去後のジイソシアネートのジラジカルであり、各Eは、以下によって表される基である:
【化12】
【0051】
本発明の別の実施形態では、シリコーンヒドロゲル材料は、(バルクでは、すなわち、共重合されるモノマー混合物中で)を約5~約50重量パーセント、好ましくは約10~約25重量パーセントの1つ以上のシリコーンマクロモノマー、約5~約75重量パーセント、好ましくは約30~約60重量パーセントの1つ以上のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマー、および約10~約50重量パーセント、好ましくは約20~約40重量パーセントの親水性モノマーを含む。一般に、シリコーンマクロモノマーは、分子の2つ以上の末端に不飽和基でキャップされたポリ(オルガノシロキサン)である。上記の構造式中の末端基に加えて、米国特許第4,153,641号は、アクリロキシまたはメタクリロキシを含む追加の不飽和基を開示している。フマル酸塩含有材料、例えば、米国特許第5,310,779号、同第5,449,729号、および同第5,512,205号に開示されているものなども、本発明による有用な基質である。シランマクロモノマーは、ケイ素含有ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメート、または1つ以上の硬質-軟質ブロックを有し、親水性モノマーで末端キャップされたポリウレタン-ポリシロキサンであってもよい。
【0052】
代表的なシリコーン含有モノマーの別のクラスは、フッ素化モノマーを含む。このようなモノマーは、例えば、米国特許第4,954,587号、同第5,010,141号、同第5,079,319号、および同第7,994,356号に開示されるように、それから作製されたコンタクトレンズ上の沈着物の蓄積を低減させるために、フルオロシリコーンヒドロゲルの形成において使用されてきた。また、ある特定のフッ素化側基、すなわち、
-(CF2)-Hを有するシリコーン含有モノマーの使用は、親水性モノマー単位とシリコーン含有モノマー単位との間の適合性を改善することが見出されている。例えば、米国特許第5,321,108号および同第5,387,662号を参照されたい。
【0053】
上記のシリコーン材料は単なる例示であり、本発明による親水性コーティング組成物でコーティングすることによって利益を得ることができ、様々な刊行物に開示されており、コンタクトレンズおよび他の医療デバイスで使用するために継続的に開発されている基材として使用するための他の材料を使用することもできる。例えば、生物医学的デバイスは、カチオン性シリコーン含有モノマーまたはカチオン性フッ素化シリコーン含有モノマーなどの少なくともカチオン性モノマーから形成され得る。
【0054】
本発明を適用するためのコンタクトレンズは、所望の後部および前部レンズ表面を有する成形物品を得るために、様々な従来の技術を使用して製造することができる。スピンキャスト法は、米国特許第3,408,429号および同第3,660,545号に開示されており、スタティックキャスト法は、米国特許第4,113,224号、同第4,197,266号、および同第5,271,876号に開示されている。モノマー混合物の硬化に続いて、所望の最終構成を有するコンタクトレンズを提供するための機械加工操作が行われ得る。一例として、米国特許第4,555,732号は、過剰なモノマー混合物を型内でスピンキャストすることによって硬化させて、前部レンズ表面および比較的大きな厚みを有する成形物品を形成するプロセスを開示している。その後、硬化したスピンキャスト物品の後部表面をレースカットして、所望の厚さを有するコンタクトレンズおよび後部レンズ表面を有するコンタクトレンズを提供する。レンズ表面のレースカットに続いて、さらなる機械加工操作、例えば、エッジ仕上げ操作を行ってもよい。
【0055】
典型的には、有機希釈剤は、モノマー混合物の重合によって生成される重合生成物の相分離を最小限に抑え、反応ポリマー混合物のガラス転移温度を低下させるために、初期モノマー混合物に含まれ、これは、より効率的な硬化プロセスを可能にし、最終的に、より均一な重合生成物をもたらす。初期モノマー混合物および重合生成物の十分な均一性は、主に親水性コモノマーから分離する傾向があるシリコーン含有モノマーを含むため、シリコーンヒドロゲルにとって特に重要である。
【0056】
好適な有機希釈剤としては、例えば、C6~C10直鎖脂肪族一価アルコール、例えばn-ヘキサノールおよびn-ノナノールなどの一価アルコール、エチレングリコールなどのジオール、グリセリンなどのポリオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル、メチルエチルケトンなどのケトン、エナント酸メチルなどのエステル、ならびにトルエンなどの炭化水素が挙げられる。好ましくは、有機希釈剤は、周囲圧力またはそれに近い圧力での蒸発によって硬化物品からの除去を容易にするのに十分な揮発性である。
【0057】
一般に、希釈剤は、モノマー混合物の約5~約60重量パーセントで含まれ得、約10~約50重量パーセントが特に好ましい。必要に応じて、硬化したレンズは、周囲圧力で、またはそれに近い圧力で、または真空下での蒸発によって達成することができる、溶媒除去に供することができる。高温を用いて、希釈剤を蒸発させるのに必要な時間を短縮することができる。
【0058】
次いで、有機希釈剤を除去した後、レンズに、離型および任意選択の機械加工操作を施すことができる。機械加工ステップは、例えば、レンズ縁部および/または表面をバフ加工または研磨することを含む。一般に、このような機械加工プロセスは、物品が型部分から離型される前または後に実施されてもよい。一例として、レンズは、真空ピンセットを用いてレンズを型から持ち上げることによって型から乾燥離型されてもよい。
【0059】
当業者が容易に理解するように、本発明による生物医学的デバイスの、生物医学的デバイス表面官能基は、デバイスの表面に本質的に存在し得る。しかしながら、生物医学的デバイスが官能基をあまりにも少なくまたは全く含有しない場合、デバイスの表面は、例えば、プラズマ化学法(例えば、WO94/06485を参照されたい)、または-OHもしくは-CO2Hなどの基による従来の官能化によって修飾され得る。生物医学的デバイスの好適な生物医学的デバイス表面官能基は、当業者に周知の多種多様な基を含む。このような官能基の代表的な例としては、ヒドロキシ基、シス1,2-ジオール、シス1,3-ジオール、αヒドロキシ酸基(例えば、シアル酸、サリチル酸)、カルボン酸、ジカルボン酸、カテコール、シラノール、ケイ酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
一実施形態では、前述の生物医学的デバイスは、コロナ放電またはプラズマ酸化などの酸化的表面処理に供され、続いて本発明の架橋ポリマーネットワークで処理される。例えば、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)またはポリ(N-ビニルピロリジノン)などの親水性ポリマーを含有するシリコーンヒドロゲル調剤などの生物医学的デバイスを酸化的表面処理に供してレンズの表面上に少なくともケイ酸塩を形成し、次いでレンズを本発明の架橋ポリマーネットワークを含有する水溶液で処理して、滑らかで、安定で、高い濡れ性の架橋ポリマーネットワークベースの表面コーティングにする。複合体形成処理は、オートクレーブ条件(滅菌条件)下で有利に実行される。
【0061】
プラズマプロセス(「電気的グロー放電プロセス」とも称される)などの標準プロセスは、架橋ポリマーネットワークをその表面の少なくとも一部に結合させる前に、生物医学的デバイス上に薄く、耐久性のある表面を提供する。かかるプラズマプロセスの例は、米国特許第4,143,949号、同第4,312,575号、および同第5,464,667号に提供されている。
【0062】
プラズマプロセスは、概して当該技術分野において周知であるが、以下に簡単な概要を提供する。プラズマ表面処理は、低圧で放電をガスに通過させる。放電は、マイクロ波および他の周波数が使用され得るが、高周波(典型的には13.56MHz)であってもよい。放電は、そのガス状態で原子および分子によって吸収されることに加えて、紫外線(UV)放射を生成し、エネルギー電子およびイオン、原子(基底状態および励起状態)、分子、およびラジカルをもたらす。したがって、プラズマは、放電が開始された後に定常状態に達する、基底状態および励起状態の両方における原子および分子の複合混合物である。循環する電場により、これらの励起された原子および分子は、互いに衝突するだけでなく、チャンバーの壁および処理される材料の表面にも衝突する。
【0063】
プラズマから材料表面へのコーティングの堆積は、スパッタリング(スパッタを使用した堆積)の助けなしで高エネルギープラズマから可能であることが示されている。モノマーは、気相から堆積され、低圧雰囲気(約0.005~約5トル、好ましくは約0.001~約1トル)中で、好適には約1000ワットにまでの連続またはパルスプラズマを利用して基材上に重合させることができる。例えば、変調プラズマは、約100ミリ秒のオン、次いでオフを適用され得る。さらに、液体窒素冷却を利用して、気相からの蒸気を基材上に凝縮させ、その後、プラズマを使用して、これらの材料を基材と化学的に反応させる。ただし、プラズマは、堆積を引き起こすための外部冷却または加熱の使用を必要としない。低または高ワット数(例えば、約5~約1000ワット、好ましくは約20~約500ワット)のプラズマは、シリコーンを含む最も耐薬品性のある基材でさえもコーティングすることができる。
【0064】
低エネルギー放電による開始後、プラズマ中に存在するエネルギー自由電子間の衝突は、イオン、励起分子、およびフリーラジカルの形成を引き起こす。そのような種は、一度形成されると、気相中でそれら自体と反応するだけではなく、さらなる基底状態の分子と反応できる。プラズマ処理は、エネルギーガス分子が関与するエネルギーに依存するプロセスとして理解され得る。レンズの表面で化学反応が起こるためには、電荷状態および粒子エネルギーの観点から必要な種(元素または分子)が必要である。高周波プラズマは、一般にエネルギー種の分布を生成する。典型的には、「粒子エネルギー」は、エネルギー種についてのいわゆるボルツマン式エネルギー分布の平均を指す。低密度プラズマでは、電子エネルギー分布は、プラズマを維持する電界強度と放出圧力の比率(E/p)によって関連付けられ得る。プラズマ電力密度Pは、当業者によって理解されるように、ワット数、圧力、ガスの流量などの関数である。参照により本明細書に組み込まれるプラズマ技術に関する背景情報には、以下が含まれる:A.T.Bell,Proc.Intl.Conf.Phenom.Ioniz.Gases,“Chemical Reaction in Nonequilibrium Plasmas”,19-33(1977)、J.M.Tibbitt,R.Jensen,A.T.Bell,M.Shen,Macromolecules,“A Model for the Kinetics of Plasma Polymerization”,3,648-653(1977)、J.M.Tibbitt,M.Shen,A.T.Bell,J.Macromol.Sci.-Chem.,“Structural Characterization of Plasma-Polymerized Hydrocarbons”,A10,1623-1648(1976)、C.P.Ho,H.Yasuda,J.Biomed,Mater.Res.,“Ultrathin coating of plasma polymer of methane applied on the surface of silicone contact lenses”,22,919-937(1988)、H.Kobayashi,A.T.Bell,M.Shen,Macromolecules,“Plasma Polymerization of Saturated and Unsaturated Hydrocarbons”,3,277-283(1974)、R.Y.Chen,米国特許第4,143,949号、1979年3月13、“Process for Putting a Hydrophilic Coating on a Hydrophobic Contact lens”、およびH.Yasuda,H.C.Marsh,M.O.Bumgarner,N.Morosoff,J.of Appl.Poly.Sci.,“Polymerization of Organic Compounds in an Electroless Glow Discharge.VI.Acetylene with Unusual Co-monomers”,19,2845-2858(1975)。
【0065】
プラズマ技術の分野におけるこの以前の研究に基づいて、圧力および放電電力の変化がプラズマによる修飾の割合に及ぼす影響を理解することができる。圧力が高くなるにつれて、割合は一般的に減少する。したがって、圧力がE/pの値を増加させると、プラズマを維持する電界強度とガス圧力の比率が減少し、平均電子エネルギーの減少を引き起こす。電子エネルギーの減少は、すべての電子-分子衝突プロセスの速度係数の減少を引き起こす。圧力の増加のさらなる結果は、電子密度の減少である。圧力が一定に保たれている場合、電子密度と電力の間に線形関係があるはずである。
【0066】
実際には、コンタクトレンズは、それらを非水和状態で、電気グロー放電反応容器(例えば、真空チャンバ)内に配置することによって表面処理される。このような反応容器は市販されている。レンズは、(電極として機能する)アルミニウムトレイ上の容器内で、またはレンズの位置を調整するように設計された他の支持デバイスで支持され得る。レンズの両側の表面処理を可能にする特殊な支持デバイスの使用は、当該技術分野において既知であり、本明細書において使用され得る。
【0067】
上述したように、レンズの表面、例えば、シリコーンヒドロゲル連続着用レンズは、最初に、プラズマの使用によって処理、例えば酸化され、後続の架橋ポリマーネットワーク表面堆積物をレンズにより付着させる。レンズのかかるプラズマ処理は、好適な媒体、例えば、酸素、空気、水、過酸化物、O2(酸素ガス)などの酸化媒体、またはそれらの適切な組み合わせからなる雰囲気中で、典型的には、約13.56Mhzの放電周波数で、好ましくは約20~約500ワットで、約0.1~約1.0トルの圧力で、好ましくは約10秒~約10分以上、より好ましくは約1~約10分で達成され得る。このステップでは、比較的「強い」プラズマが、例えば、5パーセント(5%)の過酸化水素溶液を通して引き込まれる周囲空気を利用されることが好ましい。当業者であれば、後続の架橋ポリマーネットワーク層の結合のための付着を改善または促進する他の方法を知っているであろう。
【0068】
次いで、生物医学的デバイスは、本発明による表面処理を受ける。概して、濡れ性のシリコーンベースのヒドロゲルレンズなどの生物医学的デバイスは、本発明の架橋ポリマーネットワークのうちの少なくとも1つ以上を含む溶液と接触され、それによって、架橋ポリマーネットワークは、生物医学的デバイスの表面上の複数の生物医学的デバイス表面官能基と複合体を形成する。生物医学的デバイスは、型アセンブリ内に直接少なくとも架橋ポリマーネットワークを含有する溶液と接触させることができるか、または生物医学的デバイスを型アセンブリから解放し、次いで溶液と接触させることができる。溶液は、架橋ポリマーネットワークを含有する水系溶液であってもよく、滑らかで、安定で、高い濡れ性の表面とすることができる。複合体形成処理は、オートクレーブ条件下で有利に実行される。
【0069】
溶液は、一般に、点眼薬溶液、および着用中にコンタクトレンズを再湿潤させるためのような、目に直接滴らせるコンタクトレンズ処理溶液、ならびに多目的溶液としても適格なものを含む、目に直接滴下するための組成物を含む。眼用組成物はまた、レンズが眼上に挿入される前にコンタクトレンズを処理するためのコンタクトレンズ処理液、またはレンズを保管するためのパッケージング溶液など、間接的に眼に滴下される組成物を含む。
【0070】
本発明による眼科的に許容される溶液は、生理学的に適合性である。具体的には、組成物は、コンタクトレンズと共に使用するために「眼科的に安全である」必要があり、これは、溶液で処理されたコンタクトレンズが、すすぐことなく眼上に直接配置するのに概して好適であり、安全であることを意味し、すなわち、溶液が、溶液で湿潤されたコンタクトレンズを介して眼と毎日接触するのに安全であり、快適であることを意味する。眼科的に安全な組成物は、眼に適合し、ISO(国際標準化機構)規格および米国FDA規制に従って非細胞傷害性である材料およびその量を含む張度およびpHを有する。この組成物は、発売前の製品中に微生物汚染物質が存在しないことが、そのような製品に必要な程度にまで統計的に実証しなければならないという点で、無菌でなければならない。
【0071】
概して、本発明の架橋ポリマーネットワークの1つ以上は、約0.001~約10重量/重量%、好ましくは約0.1~約2重量/重量%の範囲の量で眼用溶液中に存在し得る。眼用溶液は、液滴の形態であり得、そのような材料を含有するコンタクトレンズ洗浄、消毒、または調整組成物の成分として有用である。一実施形態では、本発明の組成物および/または溶液は、「多目的溶液」として調合され得る。多目的溶液は、レンズ、特にソフトコンタクトレンズの洗浄、消毒、保管、およびすすぎに有用である。多目的溶液は、一部の着用者、例えば、化学消毒剤または他の化学薬剤に特に敏感な着用者が、レンズの挿入前に、別の溶液、例えば、滅菌生理食塩水でコンタクトレンズを洗浄または濡らすことを好む可能性を排除しない。「多目的溶液」という用語はまた、毎日使用されない定期洗浄剤、またはタンパク質をさらに除去するための補助洗浄剤、例えば、通常毎週使用される酵素洗浄剤の可能性も排除しない。「洗浄」という用語は、溶液が、コンタクトレンズの表面上の緩く保持されたレンズ堆積物および他の汚染物質を緩めおよび除去するのに十分な濃度の1つ以上の薬剤を含有することを意味し、これは、指による操作(例えば、溶液を用いたレンズの手動で擦ること(rubbing))、またはレンズと接触して溶液を攪拌する付属デバイス、例えば、機械的洗浄補助剤と組み合わせて使用され得る。
【0072】
従来、市販されている多目的溶液では、必要な消毒および洗浄を提供するために、多目的溶液でレンズを機械的に擦ることを含むレジメンが必要であった。このようなレジメンは、化学消毒溶液として適格でない化学消毒システムのために、政府の規制当局(例えば、FDAもしくは米国食品医薬品局(FDA))の下で必要とされる。本発明の一実施形態では、一方では、擦るレジメン(rubbing regimen)がなくても改善された洗浄および消毒を提供することができ、他方では、点眼薬などの湿潤剤として使用されるのに十分に穏やかである、洗浄および消毒製品を調合することが可能である。例えば、化学消毒液として適格な製品は、コンタクトレンズケア製品の米国FDA(1997年5月1日)が定めた殺菌性能基準を満たしている必要があるが、この基準では、レンズを擦ることを含んでいない。本発明の一実施形態では、組成物は、コンタクトレンズ消毒製品に関するFDAまたはISOのスタンドアロン手順の要件を満たすように調合される。同様に、本発明の組成物は、擦るレジメンを使用せずに強化された洗浄を提供するように調合することができる。このような調剤は、従来の多目的消毒および洗浄製品よりも高い患者コンプライアンスおよびより大きな普遍的魅力を確実にし得る。多目的溶液は、約75cps未満、または約1~約50cps、または約1~約25cps、または全組成物中で少なくとも約95重量/体積(水)パーセント、の粘度を有することができる。
【0073】
水性眼用溶液は、本発明の1つ以上の架橋ポリマーネットワークに加えて、1つ以上の抗菌剤、防腐剤などを含有してもよい。組成物は、一般に、一次抗菌剤を含む。本発明における使用に好適な抗菌剤には、微生物との化学的または理学的相互作用を通じてそれらの抗菌活性を誘導する化学物質が含まれる。これらの薬剤は、単独で、または組み合わせで使用され得る。
【0074】
好適な既知の眼科的に許容される抗菌剤としては、これらに限定されないが、ビグアナイドまたはその塩または遊離塩基、四級アンモニウム化合物またはその塩または遊離塩基、テルペンまたはその誘導体、分岐グリセロールモノアルキルエーテル、分岐グリセロールモノアルキルアミン、分岐グリセロールモノアルキル硫化物、脂肪酸モノエステル(脂肪酸モノエステルは、6~14個の炭素原子を有する脂肪族脂肪酸部分、および脂肪族ヒドロキシル部分を含む)、アミドアミン化合物など、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。
【0075】
眼用組成物での使用に好適なビグアナイド抗菌剤は、当技術分野で既知の任意のビグアナイドまたはその塩であり得る。代表的なビグアナイドとしては、非高分子ビグアナイド、高分子ビグアナイド、およびそれらの塩、ならびにそれらの遊離塩基など、ならびにそれらの混合物が挙げられる。代表的な非高分子ビグアナイドは、ビス(ビグアナイド)であり、例えば、アレキシジン、クロルヘキシジン、アレキシジンの塩、例えば、アレキシジンHCl、クロルヘキシジンの塩、アレキシジン遊離塩基など、およびこれらの混合物である。アレキシジンおよびクロルヘキシジンの塩は、有機または無機のいずれかであり得、典型的には、殺菌性の硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物などである。
【0076】
代表的な高分子ビグアナイドとしては、高分子ヘキサメチレンビグアナイド(polymeric hexamethylene biguanide)(PHMB)(Zeneca,Wilmington,Del.から市販されている)、それらのポリマーおよび水溶性塩が挙げられる。一実施形態では、本明細書で使用するための水溶性高分子ビグアナイドは、少なくとも約1,000の数平均分子量、または約1,000~約50,000の数平均分子量を有し得る。遊離塩基の好適な水溶性塩には、塩酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、およびクエン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、ポリアミノプロピルビグアナイド(PAPB)とも呼ばれるヘキサメチレンビグアナイドポリマーは、最大約100,000の数平均分子量を有する。かかる化合物は、既知であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,758,595号に開示されている。
【0077】
PHMBは、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも6つのビグアナイドポリマーを含む高分子ビグアナイド組成物として最もよく説明されており、これらはPHMB-A、PHMB-CGおよびPHMB-CGAと呼ばれ、これらの一般的な化学構造を以下に示す。
【化13】
【0078】
これらのポリマーの各々について、「n」は、繰り返し基の平均数を表す。実際、ポリマー長の分布は、示されているポリマーの各々について存在するであろう。PHMBへの従来の合成経路は、PHMB-CGA、すなわち一端にシアノグアニジノエンドキャップを有し、他端にアミンを有するもの、として高分子組成物の約50重量%、約25重量%のPHMB-Aおよび約25重量%のPHMB-CGを有する高分子ビグアナイド組成物を提供した。上記3つの主要なPHMBポリマーのこのおおよその重量比を考えると、シアノグアルジノ(cyanoguardino)エンドキャップの割合も、末端基の総数の約50%である。本出願では、この従来のポリマービグアナイド組成物をポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)またはPHMBと称する。
【0079】
13CNMRによって測定した末端アミン基の18モル%未満を含む高分子ビグアナイド組成物も使用することができる。高分子ビグアナイド組成物はまた、末端グアニジン基または末端シアノグアルジノ基のモル濃度の相対的な増加を特徴とすることができる。例えば、一実施形態では、ビグアナイド組成物は、約18モル%未満の末端アミン基、および約40モル%以上の末端グアニジン基を含む。別の実施形態において、ビグアナイド組成物は、約18モル%未満の末端アミン基および約55モル%以上の末端グアニジン基を含む。
【0080】
本出願では、このビグアナイド組成物をPHMB-CG*と称する。また、一般的な意味での高分子ビグアナイド組成物を「ヘキサメチレンビグアナイド」と呼び、当業者であればPHMBとPHMB-CG*の両方を含むことを認識するであろう。
【0081】
本発明の眼用組成物に使用するための好適な第四級アンモニウム化合物の代表的な例としては、ポリ[(ジメチルイミニオ)-2-ブテン-1,4-ジイルクロリド]および[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニオ]-2-ブテニル-w-[トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニオ]-ジクロリド(化学登録番号75345-27-6)、一般にポリクオタニウム1として、商標名ONAMER(登録商標)M(Stepan Company,イリノイ州、ノースフィールド)の下で入手可能、など、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明の眼用組成物に使用するのに好適なテルペン抗菌剤には、任意のモノテルペン、セスキテルペン、および/もしくはジテルペンまたはこれらの誘導体が含まれる。非環式、単環式、および/または二環式モノ、セスキ、および/またはジテルペン、およびより多い数の環を有するものを使用することができる。本明細書で使用されるテルペンの「誘導体」は、1つ以上の官能基、例えば、テルペンアルコール、テルペンエーテル、テルペンエステル、テルペンアルデヒド、テルペンケトンなど、およびそれらの組み合わせを有するテルペン炭化水素を意味すると理解されるべきである。ここでは、トランス異性体およびシス異性体の両方が好適である。テルペンおよび誘導体中のテルペン部分は、6~約100個の炭素原子、好ましくは約10~約25個の炭素原子を含有することができる。
【0083】
好適なテルペンアルコール抗菌剤の代表的な例としては、ベルベノール、トランスピノカルベオール、シス-2-ピナノール、ノポール、イソボルネオール、カルベオール、ピペリトール、チモール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、メントール、1,8-テルピン、ジヒドロ-テルピネオール、ネロール、ゲラニオール、リナロール、シトロネロール、ヒドロキシシトロネロール、3,7-ジメチルオクタノール、ジヒドロ-ミルセノール、テトラヒドロ-アロオシメノール、ペリルアルコール、ファルカリンジオールなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0084】
好適なテルペンエーテルおよびテルペンエステル抗菌剤の代表的な例としては、1,8-シネオール、1,4-シネオール、イソボルニルメチルエーテル、ローズピラン、α-テルピニルメチルエーテル、メントフラン、トランス-アネトール、メチルカビコール、アロシメン(allocimene)ジエポキシド、リモネンモノエポキシド、イソボルニルアセテート、ノニルアセテート、α-テルピニルアセテート、リナリルアセテート、ゲラニルアセテート、シトロネリルアセテート、ジヒドロ-テルピニルアセテート、およびメリルアセテートなど、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0085】
テルペンアルデヒドおよびテルペンケトン抗菌剤の代表的な例としては、ミルテナール、カンホレンアルデヒド、ペリルアルデヒド、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、樟脳、ベルベノン、カルベノン、ジヒドロカルボン、カルボン、ピペリトン、メントン、ゲラニルアセトン、プソイドイオノン、α-イオニン(ionine)、イソープソイド-メチルイオノン、nープソイド-メチルイオノン、イソ-メチルイオノン、n-メチルイオノンなど、ならびにこれらの混合物が挙げられる。当該技術分野において既知である官能基を有する任意の他のテルペン炭化水素は、本明細書において、本発明の組成物で使用され得る。
【0086】
一実施形態では、抗菌剤として好適なテルペンまたはその誘導体としては、トリシクレン、α-ピネン、テルピノレン、カルベオール、アミルアルコール、ネロール、β-サンタロール、シトラール、ピネン、ネロール、b-イオノン、カリオフィレン(クローブ由来)、グアイオール、アニスアルデヒド、セドロール、リナロール、d-リモネン(オレンジ油、レモン油)、ロンギホレン、アニシルアルコール、パチョリアルコール、α-カジネン、1,8-シネオール、ρ-シメン、3-カレン、ρ-8-メンタン、トランスメントン、ボルネオール、α-フェンコール、イソアミルアセテート、テルピン、ケイヒアルデヒド、イオノン、ゲラニオール(バラおよび他の花由来)、マイベリーワックス(ベーベリー蝋、月桂樹およびバーベナの油由来)、ネロール、シトロネロール、カルバコール、オイゲノール、カルボン、α-テルピネオール、アネトール、樟脳、メントール、リモネン、ネロリドール、ファルネソール、フィトール、カロテン(ビタミンA1)、スクアレン、チモール、トコトリエノール、ペリリルアルコール、ボルネオール、シメン、カレン、テルペネン、リナロール、1-テルペン-4-オール、ジンギベレン(生姜由来)など、ならびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
一実施形態では、眼用組成物の成分(ii)の化合物は、分岐グリセロールモノアルキルエーテルを含む。別の実施形態では、眼用組成物の成分(ii)の化合物は、分岐グリセロールモノアルキルアミンを含む。別の実施形態では、眼用組成物の成分(ii)の化合物は、分岐グリセロールモノアルキル硫化物を含む。さらに別の実施形態では、眼組成物の成分(ii)の化合物は、分岐グリセロールモノアルキルエーテル、分岐グリセロールモノアルキルアミン、または分岐グリセロールモノアルキル硫化物の任意の1つの混合物を含む。
【0088】
一実施形態では、本発明の眼用組成物で使用するための分岐グリセロールモノアルキルエーテルは、3-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-1,2-プロパンジオール(EHOPD)である。別の実施形態では、分岐グリセロールモノアルキルアミンは、3-[(2-エチルヘキシル)アミノ]-1,2-プロパンジオール(EHAPD)である。別の実施形態では、分岐グリセロールモノアルキル硫化物は、3-[(2-エチルヘキシル)チオ]-1,2-プロパンジオール(EHSPD)である。さらに別の実施形態では、眼用組成物は、EHOPD、EHAPD、およびEHSPDの任意の1つの混合物を含む。EHOPD、EHAPDおよびEHSPDの化学構造を以下に記載する。
【化14】
【0089】
EHOPDはオクトキシグリセリンとも称され、Sensiva(登録商標)SC50(Schulke&Mayr)の商標名で販売されている。EHOPDは、分岐グリセロールモノアルキルエーテルであり、皮膚に対して穏やかであり、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、コリネバクテリウム・アクアティクム(Corynebacterium aquaticum)、コリネバクテリウム・フラベセンス(Corynebacterium flavescens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、およびコリネバクテリウム・ネフレディ(Corynebacterium nephredi)などの様々なグラム陽性細菌に対して抗菌活性を示すことが知られている。したがって、EHOPDは、約0.2~3重量パーセントの濃度で様々な皮膚消臭剤調製物に使用される。EHAPDは、当業者に周知の化学を使用して、2-エチルヘキシルアミンおよび2,3-エポキシ-1-プロパンジオールから調製することができる。EHSPDは、当業者に周知の化学を使用して、2-エチルヘキシルチオールおよび2,3-エポキシ-1-プロパンジオールから調製することができる。
【0090】
本発明の眼用組成物における使用に好適な脂肪酸モノエステルには、6~14個の炭素原子を有する脂肪族脂肪酸部分、および脂肪族ヒドロキシル部分を含む脂肪酸モノエステルが含まれる。
【0091】
「脂肪族」という用語は、6~14個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和炭化水素を指す。一実施形態では、脂肪族脂肪酸部分は、8~10個の炭素を有する直鎖、飽和または不飽和炭化水素である。別の実施形態では、脂肪族脂肪酸部分は、8~10個の炭素を有する分岐鎖、飽和または不飽和炭化水素である。
【0092】
脂肪酸モノエステルの脂肪族ヒドロキシル部分は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する任意の脂肪族化合物であり得る。多くの実施形態では、脂肪族ヒドロキシル部分は3~9個の炭素を有する。脂肪族ヒドロキシル部分は、プロピレングリコール、グリセロール、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、環状ポリオール、例えば、ソルビタン、グルコース、マンノース、スクロース、フルクトース、フコース、およびイニシトール、ならびにそれらの誘導体、ならびに直鎖ポリオール、例えば、マンニトールおよびソルビトール、ならびにこれらの誘導体など、およびこれらの混合物を含むことができるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の眼用組成物において使用するのに好適なアミドアミンの代表的な例としては、以下の一般式のこれらアミドアミン:
R15-(OCH2CH2)m-X-(CH2)n-Y(式中、R15は、C6-C30飽和または不飽和炭化水素であり、例として、直鎖もしくは分岐鎖の、置換もしくは非置換アルキル、アルキルアリール、またはアルコキシアリール基を含み、mは、0~16であり、nは、2~16であり、Xは、-C(O)-NR16-または-R16N-C(O)-であり、Yは、-N(R17)2であり、R16およびR17の各々は、独立して、水素、C1-C8飽和もしくは不飽和アルキル、またはヒドロキシアルキルである)、またはその薬学的に許容される塩、が含まれる。
【0094】
本発明において利用されるアミドアミンのいくつかは、商業的供給源から入手可能である。例えば、ミリスタミドプロピルジメチルアミンは、Alcon Inc.(Fort Worth,Tx.)からAldox(登録商標)の商品名で入手可能であり、ラウラミドプロピルジメチルアミンは、Inolex Chemical Company(Philadelphia,Pa.)からLEXAMINE(登録商標)L-13の商品名で入手可能であり、ステアラミドプロピルジメチルアミンも、Inolex Chemical CompanyからLEXAMINE(登録商標)S-13として入手可能である。上述のアミドアミンは、米国特許第5,573,726号に記載されるものを含む、既知の技術に従って合成することができる。
【0095】
一次抗菌剤の量は、使用される特定の薬剤に応じて変化し得る。前述の有機窒素含有剤については、典型的には、そのような薬剤は、約0.00001~約0.5重量%、または約0.00003~約0.05重量%の範囲の濃度で存在する。ソルビン酸については、より高い量、典型的には約0.01~約1重量%、または約0.1~約0.5重量%が必要とされ得る。抗菌剤は、使用される調剤中の微生物集団を少なくとも部分的に減少させる量で使用されることが好ましい。必要に応じて、抗菌剤は、消毒量で使用することができ、これにより4時間で少なくとも2logオーダー、より好ましくは1時間で1logオーダーで微生物バイオバーデンを減少させる。最も好ましくは、消毒量は、推奨される浸漬時間のレジメンで使用されるときに、コンタクトレンズへの微生物バイオバーデンを排除する量である(FDA化学消毒有効性試験-1985年7月のコンタクトレンズ溶液ドラフトガイドライン)。
【0096】
水溶液は、眼用溶液に一般的に存在する1つ以上の他の成分、例えば、上記で論じたような、界面活性剤、張度調整剤(tonicity adjusting agent)、緩衝剤、キレート剤、pH調整剤、粘度調整剤、および粘滑剤などをさらに含有してよく、ならびにこれらは、眼用組成物を使用者とってより快適にし、かつ/またはそれらの意図された使用に対してより効果的にするのを助ける。
【0097】
本発明による溶液および/または組成物のpHは、約4.0~約9.0、または約5.0~約8.0、または約6.0~約8.0、または約6.5~約7.8の範囲内に維持されてよい。一実施形態では、pH値は最大でも約7以上である。
【0098】
一実施形態では、生物医学的デバイスは、本発明の架橋ポリマーネットワークのうちの少なくとも1つ以上を含有する緩衝生理食塩水溶液を含有する個々のレンズパッケージに移される。一般に、本発明による眼用デバイスの保管のためのパッケージングシステムは、水性パッケージング溶液中に浸漬された1つ以上の未使用の眼用デバイスを収容する密封容器を少なくとも含む。一実施形態では、密封容器は、密封されたブリスターパックであり、コンタクトレンズなどの眼用デバイスを収容する凹状ウェルが、ブリスターパックを開くために剥離するように適合された金属またはプラスチックシートによって覆われている。密封容器は、レンズに対して妥当な程度の保護を提供する任意の好適な一般的に不活性なパッケージング材料、好ましくはポリアルキレン、PVC、ポリアミドなどのプラスチック材料であってもよい。
【0099】
本発明のパッケージングシステムに眼用デバイスを保管するためのパッケージング溶液中で使用される1つ以上の架橋ポリマーネットワークの量は、眼用デバイスの表面特性を改善するのに有効な量である。これらの架橋ポリマーネットワークは、溶液中にパッケージングされ、次いでパッケージングシステムから取り出されたコンタクトレンズが着用するために眼上に配置されるときに、初期および長時間の快適性を高めると考えられている。一実施形態では、パッケージング溶液中の1つ以上の架橋ポリマーネットワークの濃度は、約0.01~約20%重量/重量の範囲である。一実施形態では、パッケージング溶液中に存在する1つ以上の架橋ポリマーネットワークの濃度は、約0.02~約0.1%重量/重量の範囲である。
【0100】
本発明によるパッケージング溶液は、生理学的に適合性がある。具体的には、溶液は、コンタクトレンズなどのレンズと共に使用するための「眼科的に安全」である必要があり、これは、溶液で処理されたコンタクトレンズが、すすぐことなく眼に直接配置するのに概して好適であり、安全であることを意味し、すなわち、溶液が溶液で湿潤されたコンタクトレンズを介して眼と毎日接触するのに安全あり、快適であることを意味する。眼科的に安全な溶液は、眼に適合し、ISO規格および米国食品医薬品局(FDA)規則に従って非細胞傷害性である材料およびその量を含む張度およびpHを有する。
【0101】
パッケージング溶液はまた、発売前の製品に微生物汚染物質が存在しないことが、そのような製品に必要な程度にまで統計的に実証しなければならないという点で、無菌でなければならない。本発明で有用な液体媒体は、処理またはケアされるレンズに実質的な有害な影響を有さず、本発明のレンズ処理もしくは複数の処理を可能にする、さらには促進するように選択される。一実施形態では、液体媒体は、水性ベースである。特に有用な水性液体媒体は、生理食塩水、例えば、従来の生理食塩水溶液または従来の緩衝生理食塩水溶液に由来するものである。
【0102】
パッケージング溶液のpHは、約6~約9、または約6.5~約7.8の範囲内に維持されるべきである。好適な緩衝液、例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、トリス、および種々の混合リン酸緩衝液(Na2HPO4、NaH2PO4およびKH2PO4の組み合わせを含む)、ならびにこれらの混合物を添加してもよい。概して、緩衝液は、溶液の約0.05~約2.5重量パーセントの範囲の量で使用されることになる。一実施形態では、緩衝液は、溶液の約0.1重量%~約1.5重量%の範囲の量で使用される。一実施形態では、本発明のパッケージング溶液は、ホウ酸緩衝液、例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、またはこれらの混合物のうちの1つ以上を含有するホウ酸緩衝液を含有する。
【0103】
典型的には、パッケージング溶液はまた、塩化ナトリウム溶液0.9パーセントまたはグリセロール溶液2.5パーセントに相当する通常の涙液の浸透圧に近似するように、等張化剤(tonicity agent)で調整される。パッケージング溶液は、単独でまたは組み合わせで使用される生理食塩水と実質的に等張で作製され、そうでなければ、滅菌水と単にブレンドして低張または高張にするとレンズがそれらの望ましい光学パラメータを失う。同様に、過剰な生理食塩水は、刺痛および眼刺激を引き起こす高張溶液の形成をもたらす可能性がある。
【0104】
好適な張度調整剤としては、例えば、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、デキストロース、グリセリン、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムなど、ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの張度調整剤は、典型的には、約0.01~約2.5%重量/体積の範囲の量で個別に使用される。一実施形態では、張度調整剤は、約0.2~約1.5%重量/体積の範囲の量で使用される。等張化剤は、少なくとも約200mOsm/kgの最終浸透価を提供する量で使用されることになる。一実施形態では、張度調整剤は、約200~約400mOsm/kgの最終浸透価を提供する量で使用される。一実施形態では、張度調整剤は、約250~約350mOsm/kgの最終浸透価を提供する量で使用される。一実施形態では、張度調整剤は、約280~約320mOsm/kgの最終浸透価を提供する量で使用される。
【0105】
必要に応じて、1つ以上の追加の成分をパッケージング溶液中に含めることができる。このような追加の成分もしくは複数の成分は、パッケージング溶液に少なくとも1つの有益または所望の特性を付与または提供するように選択される。概して、追加の成分は、1つ以上の眼用デバイスケア組成物において従来使用される成分から選択され得る。好適な追加の成分としては、例えば、洗浄剤、湿潤剤、栄養剤、金属イオン封鎖剤、粘度ビルダー、コンタクトレンズ調整剤、抗酸化剤など、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの追加の成分はそれぞれ、パッケージング溶液に有益または所望の特性を付与または提供するために有効な量でパッケージング溶液に含まれ得る。例えば、そのような追加の成分は、他の、例えば、従来のコンタクトレンズケア製品において使用されるそのような成分の量と同様の量でパッケージング溶液に含まれ得る。
【0106】
好適な金属イオン封鎖剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アルカリ金属ヘキサメタリン酸塩、クエン酸、クエン酸ナトリウムなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0107】
好適な粘度ビルダーとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびポリビニルアルコールなど、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0108】
好適な抗酸化剤としては、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、N-アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンなど、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0109】
本発明によるコンタクトレンズなどの生物医学的デバイスのパッケージングおよび保管方法は、上述の水性パッケージング溶液中に浸漬された生物医学的デバイスを少なくともパッケージングすることを含む。本方法は、コンタクトレンズの製造の直後に、顧客/着用者に送達される前に、水性パッケージング溶液中に生物医学的デバイスを浸漬することを含み得る。あるいは、パッケージングおよびパッケージング溶液中での保管は、最終顧客(着用者)への送達前の中間点で行われ得るが、乾燥状態でのレンズの製造および輸送後に行われ、乾燥レンズは、パッケージング溶液中にレンズを浸漬することによって水和される。したがって、顧客に送達するためのパッケージは、本発明による水性パッケージング溶液中に浸漬された1つ以上の未使用のコンタクトレンズを収容する密封容器を含み得る。
【0110】
一実施形態では、本発明の眼用デバイスパッケージングシステムに至るステップは、(1)少なくとも第1および第2の型部分を含む型内で生物医学的デバイスを成形することと、(2)型部分の少なくとも一方を含む容器中で生物医学的デバイスを水和および洗浄することと、(3)1つ以上の架橋ポリマーネットワークを有するパッケージング溶液を容器中に支持された生物医学的デバイスを有する容器中に導入することと、(4)容器を密封することと、を含む。一実施形態では、本方法はまた、容器の内容物を滅菌するステップを含む。滅菌は、容器の密封前または最も便利には密封後に行われ得、当該技術分野で既知の任意の適切な方法によって、例えば、約120℃以上の温度で密封容器をオートクレーブすることによって行われ得る。
【0111】
別の実施形態では、本発明の架橋ポリマーネットワークは、ゲル調剤であり得る。調剤分野の当業者に容易に理解されるように、ゲルは、半固体、懸濁液型システムである。したがって、一実施形態では、ゲル調剤は、本発明の1つ以上の架橋ポリマーネットワークと、1つ以上のゲル形成剤とを含むことができる。本明細書で使用するためのゲル形成剤は、半固体ゲル剤型について当該技術分野で典型的に使用される任意のゲル化剤であり得る。本明細書で使用される場合、「ゲル化剤」という用語は、液体ビヒクルをゼリー状ビヒクルにするために使用される化合物を意味することを意図している。例示的なゲル化剤としては、例として、限定されないが、合成巨大分子、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース)および天然ガム(例えば、トラガカント)が挙げられる。合成巨大分子には、スクロースおよび/またはペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋したアクリル酸の高分子量水溶性ポリマーであるカルボマー(例えば、カルボマー910、934、934P、940、941、および1342)が含まれる。カルボマーは、その高分子組成に応じて異なる粘度を有する。ゲル化剤は、合成または半合成高分子材料、ポリアクリレートコポリマー、セルロース誘導体、およびポリメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーのいずれかから選択され得る。例えば、カルボポール(Carbopol)934、940、941、974、980、981、1342、5984、ETD2020、ETD2050、およびUltrez10(オハイオ州クリーブランドのNoveonから入手可能)などの様々なグレードのカルボポールを本発明で使用することができる。本発明は、ゲル化剤としてカルボポール980を含むことが好ましい。カルボポールは、カルボマーである。一般に、カルボマーは、アリルスクロースまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルのいずれかと架橋したアクリル酸の合成高分子量ポリマーである。
【0112】
ゲル化機構は、可溶性塩を形成するカルボン酸部分を中和に依存する。ポリマーは親水性であり、中和すると輝く(sparkling)透明なゲルを生成する。カルボマーゲルは、ゲル粘度と降伏値が本質的に温度の影響を受けないという点で良好な熱安定性を有する。外用剤(topical product)として、カルボマーゲルは、最適なレオロジー特性を有する。固有の擬塑性流動は、せん断が終わったときの粘度の即時回復を可能にし、高い降伏値と素早い破断により、分注に理想的である。本薬学的調剤において、カルボマーゲルは、懸濁化剤または粘度上昇剤として使用される。カルボポールの水溶液は、遊離カルボン酸残基の存在により、本質的に酸性である。この溶液の中和は、ポリマーを架橋させ、ゼラチン化して、所望の粘度の粘性一体構造を形成する。ゲル化剤の量は大きく異なり、通常、約0.1%~約10%重量/重量の範囲である。
【0113】
ゲル組成物は、創傷被覆材(例えば、包帯、絆創膏、経皮吸収パッチ)に組み込むことができる。一般に、これらの実施形態では、ゲル組成物は、創傷被覆材を形成するため、第2の層に関連付けられたパフ、ガーゼ、フリース、ゲル、粉末、スポンジ、または他の材料内に埋め込まれる。皮膚を横切る、組成物、特に組成物内の治療用タンパク質の流れ(flux)を増加させるために、吸収促進薬を使用することもできる。そのような流れの速度は、律速膜(rate controlling membrane)を提供することか、治療用タンパク質をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることのいずれかにより制御できる。
【0114】
特定の実施形態では、創傷被覆材の第2の層は、エラストマー層、蒸気透過性フィルム、防水フィルム、織布または不織布、メッシュなどであり得る。組成物含有層および第2層は、任意の好適な方法(例えば、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、硬化性接着剤などの接着剤の塗布、積層などの加熱または加圧、縫合、スタッド、他の留め具などの使用による物理的接着)を使用して接着することができる。
【0115】
創傷被覆材は、皮膚または他の組織に付着させるための接着剤を含んでよい。皮膚または他の組織との結合を形成するのに適切な任意の接着剤を使用することができるが、ある特定の実施形態では、感圧接着剤が使用される。感圧接着剤は、一般に、軽い圧力が加えられたときに基体に接着するが、除去されたときにはほとんどないし全く残留物を残さない接着剤として定義される。感圧接着剤には、溶液溶剤型(solvent in solution)接着剤、ホットメルト接着剤、水性エマルション接着剤、カレンダー可能(calenderable)接着剤、および放射線硬化性接着剤が含まれる。
【0116】
感圧接着剤中で最も一般的に使用されるエラストマーとしては、天然ゴム、スチレン-ブタジエンラテックス、ポリイソブチレン、ブチルゴム、アクリル、およびシリコーンが挙げられる。特定の実施形態では、アクリルポリマーまたはシリコーン系感圧性接着剤を使用することができる。アクリルポリマーは、多くの場合、アレルギー誘発性のレベルが低く、皮膚からきれいに除去可能であり、臭いが少なく、機械的および化学的刺激の割合が低い可能性がある。生体適合性のために、医療用グレードのシリコーン感圧接着剤を選択することができる。
【0117】
特定の実施形態の創傷被覆材に使用するための感圧接着剤の適合性に影響を及ぼす要因の中には、皮膚刺激性成分の不在、接着剤が皮膚からきれいに除去され得るような十分な粘着強度、過度の機械的皮膚刺激なしに皮膚の動きに適応する能力、および体液に対する良好な耐性がある。
【0118】
以下の実施例は、当業者が本発明を実施することを可能にするために提供されるものであり、単なる例示である。実施例は、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0119】
実施例1
以下の一般構造1を有する、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)を用いたヒアルロン酸(HA)およびコンドロイチン硫酸(CS)の架橋ポリマーネットワークの調製:
【化15】
【0120】
磁気攪拌機を取り付けた100mLの丸底フラスコに、60mLの(逆浸透)水、3.00gのHA(二糖単位に基づいて7.44mmol)、および3.00gのCS(二糖単位に基づいて6.01mmol)を添加した。次いで、材料の完全な溶解を確実にするため溶液を15時間攪拌して、pH6.65を有する透明溶液を得た。この溶液に、1.2mLのBDDE(6.25mmol)を添加した。15分間の攪拌後、0.2gの水酸化ナトリウム10重量%溶液で、わずかに曇った溶液のpHを8.5に調整した。24時間後、反応混合物を次に900mLのエタノール中に注ぎ、沈殿物を生成させ濾過した。固体を3×100mLのエタノールで洗浄し、高真空下で24時間乾燥させて、HA、CS、分岐および/またはHA-CS、HA-HA、およびCS-CSの架橋ポリマーネットワークの組成を有する4.6g(収率77%)の白色固体を得た。
【0121】
透析物質のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALS)による分析は、0.660の線形類似体と比較して、重量平均分子量が87,500であり、分岐コンフォメーションの傾き(branching conformation slope)が0.375であることを示した。アセトアミドのメチル基に対する、付着したBDDEの内部メチレン基のNMRによる積分は、2.90モル%のBDDEが官能化されていることを示す。
【0122】
架橋HA-CS構造1のSEC-MALS結果は、以下の表1に示すように、分子量(光散乱検出による絶対MW)の増加を示した。
【表1】
【0123】
実施例2
以下の構造2を有する、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)を用いたHAおよびCSの架橋ポリマーネットワークの調製:
【化16】
【0124】
攪拌棒を装着した50mLのエルレンマイヤーフラスコに、HA1.50g(二糖単位に基づいて3.72mmol)と共に31.9mLの(逆浸透)水を添加した。攪拌バーを取り付けた別個のエーレンマイヤーフラスコに、31.9mLの(逆浸透)水および1.86gのCS(二糖単位に基づいて3.72mmol)を添加した。材料の完全な溶解を確実にするため両方の溶液を15時間攪拌した。各溶液に、0.5mLの(逆浸透)水中の0.075g(0.389mmol)のN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩を添加した。各容器を0.5mLの(逆浸透)水ですすいだ。溶液を5分間攪拌させ、次いで攪拌棒を装着した100mLの丸底フラスコに加えた。フラスコを各2mLの(逆浸透)水ですすいだ。この溶液に、0.5mLの(逆浸透)水中の0.062g(0.353mmol)のADHを添加した。
【0125】
pHを、6.08gの1NHClで7.08から4.54に調整した。40分後、3.49gの1N HClでpHを6.15~4.53に調整した。次に、6時間後、pHは4.65であり、24時間後、0.425gの10重量%の水酸化ナトリウムでpHを4.65から7.36に調整した。溶液を、100mMの塩化ナトリウムと共に、PBS緩衝液(1.0mM)中の分子量カットオフ(MWCO)3500を使用して、3時間ごとに透析槽を交換しながら透析した。合計6回の交換が行われた。3回目と4回目の交換は、50mMのNaClおよび1mMのPBS緩衝液中であった。最後の2回の交換は、(逆浸透)水中でのみ行われる。溶液を3日間凍結乾燥して、HA、CS、分岐および/またはHA-CS、HA-HA、およびCS-CSの架橋ポリマーネットワークの組成を有する、2.70gのふわふわした白色固体(収率78%)を得た。
【0126】
透析物質のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC_MALS)による分析は、0.803の線形類似体と比較して、124,000の重量平均分子量、および0.445の分岐コンフォメーションの傾きを示した。アセトアミドのメチル基に対する、付着したADHの内部メチレン基のNMRによる積分は、4.75モル%のADHが官能化されていることを示す。
【0127】
架橋されたHA-CS構造2のSEC-MALS結果は、以下の表2に示すように、分子量(光散乱検出による絶対MW)の増加を示した。
【表2】
【0128】
実施例3
HAおよびCSの架橋ポリマーネットワークと混合した直鎖HAの調製。
【0129】
実施例1または2のHA-CSの架橋ポリマーネットワークを、所望の重量平均分子量、すなわち約10,000~約3,000,000Daの直鎖HAポリマー鎖とさらに混合して、ソフトゲル(混合HA鎖を有する架橋したHA-CS)を得て、次いで、高剪断ミキサーを使用して崩壊させ、沈殿させ、乾燥させる。あるいは、実施例1または2のHA-CSの架橋ポリマーネットワークを、1:1~1:20(HA-CS:HA)の重量比で所望の重量平均分子量の直鎖HAと一緒に混合し、次いで水に溶解して、様々な用途でさらに使用するためのゲルを生成する。
【0130】
実施例4
以下の成分を表3に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表3】
【0131】
実施例5
以下の成分を表4に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表4】
【0132】
実施例6
以下の成分を表5に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表5】
【0133】
実施例7
以下の成分を表6に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表6】
【0134】
実施例8
以下の成分を表7に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表7】
【0135】
実施例9
以下の成分を表8に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表8】
【0136】
実施例10
以下の成分を表9に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表9】
【0137】
実施例11
以下の成分を表10に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表10】
【0138】
実施例12
以下の成分を表11に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表11】
【0139】
実施例13
以下の成分を表12に列挙したそれぞれの量で混合することによりパッケージング溶液を作製する。
【表12】
【0140】
実施例14
バラフィルコンA製のコンタクトレンズは、標準的な製造手順に従って注型(cast)および加工される。バラフィルコンAは、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、1,3-ビス[4-ビニルオキシカルボニルオキシ)ブタ-1-イル]ポリジメチルシロキサンおよびN-ビニルオキシカルボニルアラニンからなるコポリマーである。すべてのバラフィルコンAレンズは、架橋ポリマーネットワークに曝露される前に、エアプラズマ処理される。
【0141】
実施例1の架橋ポリマーネットワークでコーティングするために、各レンズを、適切な緩衝系、例えば、300ppmのEDTAを含有するか、または含有せずに、リン酸緩衝生理食塩水システム(PBS)、ホウ酸緩衝生理食塩水(BBS)に溶解した架橋ポリマーネットワークの100または250ppm(重量/体積)溶液の3.8mLを含有するポリプロピレンブリスターパッケージに入れる。ブリスターパッケージは、ホイル蓋ストックで密封し、121℃で30分間オートクレーブする。
【0142】
実施例15
バラフィルコンA製のコンタクトレンズは、標準的な製造手順に従って注型および加工される。バラフィルコンAは、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、1,3-ビス[4-ビニルオキシカルボニルオキシ)ブタ-1-イル]ポリジメチルシロキサンおよびN-ビニルオキシカルボニルアラニンからなるコポリマーである。すべてのバラフィルコンAレンズは、架橋ポリマーネットワークに曝露される前に、エアプラズマ処理される。
【0143】
実施例2の架橋ポリマーネットワークでコーティングするために、各レンズを、適切な緩衝系、例えば、300ppmのEDTAを含有するか、または含有せずに、PBS、BBSに溶解した架橋ポリマーネットワークの100または250ppm(重量/体積)溶液の3.8mLを含有するポリプロピレンブリスターパッケージに入れる。ブリスターパッケージは、ホイル蓋ストックで密封し、121℃で30分間オートクレーブする。
【0144】
本明細書に開示される実施形態に様々な修正を行うことができることが理解されるであろう。したがって、上記の説明は、限定的と解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の例示としてのみ解釈されるべきである。例えば、上に記載される、本発明を動作させるための最良の態様として実装される機能は、例示目的のみのためである。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、他の構成および方法を実施することができる。さらに、当業者は、本明細書に追加される特徴および利点の範囲および趣旨内で他の修正を想定するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、第1の架橋剤との反応生成物を含む架橋ポリマーネットワークであって、前記第1のグリコサミノグリカンが、前記第2のグリコサミノグリカンとは異なる、架橋ポリマーネットワーク。
【請求項2】
前記第1のグリコサミノグリカンおよび前記第2のグリコサミノグリカンが、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノビオース、およびキトビオースからなる群から選択される、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項3】
前記第1のグリコサミノグリカンがヒアルロン酸であり、前記第2のグリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項4】
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化1】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’は、それぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-O」は、前記グリコサミノグリカン上の置換ヒドロキシル基を表し、xは、1~20に等しい整数である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項5】
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、請求項4に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項6】
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化2】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’は、それぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、Xは、NHまたはCH
2であり、「a」は、独立して、1~10に等しい整数である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項7】
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、請求項6に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項8】
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化3】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’はそれぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、nは、1~10に等しい整数であり、xは、独立して、1~10に等しい整数である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項9】
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、請求項8に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項10】
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化4】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’はそれぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、xは、独立して、1~10に等しい整数である、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項11】
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、請求項10に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項12】
前記第1の架橋剤が、前記第1のグリコサミノグリカンおよび前記第2のグリコサミノグリカンの官能基と反応可能な2つ以上の官能基を含む二官能性または多官能性架橋剤である、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項13】
前記第1の架橋剤が、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン(EGDGE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、1,2-エタンジオールジグリシジルエーテル(EDDE)、ジエポキシオクタン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエステル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,3-ブタジエンジエポキド、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、およびポリエポキシドからなる群から選択される、二官能性または多官能性架橋剤を含む、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項14】
前記第1の架橋剤が、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アザライン酸(azalaic acid)ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ウンデカン二酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ブラシル酸ジヒドラジド、テトラデカン二酸ジヒドラジド、ペンタデカン二酸ジヒドラジド、タプシン酸ジヒドラジド、およびオクタデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択されるジヒドラジド架橋剤を含む、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項15】
前記第1の架橋剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、ヘプチレングリコール、およびオクチレングリコールからなる群から選択される二価アルコール架橋剤を含む、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項16】
前記第1の架橋剤が、グリセリン、ペンタエリスライト、キシリトール、およびガラクチトールからなる群から選択される多価アルコール架橋剤を含む、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項17】
前記第1の架橋剤が、式X-N=C=N-Xのカルボジイミド架橋剤を含み、式中、各Xが、独立して、1~2個のジアルキルアミノ基で任意に置換されたC
1~C
6アルキルであるか、またはC
5~C
6シクロアルキル基である、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項18】
前記第1の架橋剤が、メタクリル酸無水物、オクテイルコハク酸無水物(octeyl succinic anhydride)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)、グルラルアルデヒド(gluraraldehyde)、酸塩化物、n-ヒドロキシコハク酸イミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアミン、ジビニルスルホン、尿素、ジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1~3に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項19】
前記反応生成物が、前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカンを含む、請求項1~18に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項20】
前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカンが、約20,000~約6,000,000Daの範囲の重量平均分子量を有する、請求項19に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項21】
前記反応生成物が、前記第1のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカン、および前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第2のグリコサミノグリカンをさらに含む、請求項19に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項22】
1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、第2の架橋剤で前記反応生成物と架橋される、請求項1~18に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項23】
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤と同じである、請求項22に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項24】
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤とは異なる、請求項22に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項25】
1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、前記架橋した第1のグリコサミノグリカンおよび第2のグリコサミノグリカンと、第2の架橋剤で架橋される、請求項19に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項26】
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤とは異なる、請求項25に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項27】
前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸である、請求項25に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項28】
(a)前記第1のグリコサミノグリカンと、前記第2のグリコサミノグリカンと、前記第1の架橋剤との前記反応生成物と、(b)1つ以上の第3のグリコサミノグリカンと、を含む混合物をさらに含む、請求項1に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項29】
前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、直鎖グリコサミノグリカンである、請求項28に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項30】
前記1つ以上の直鎖グリコサミノグリカンが、直鎖ヒアルロン酸または直鎖コンドロイチン硫酸である、請求項29に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項31】
前記1つ以上の直鎖グリコサミノグリカンが、約10,000~約3,000,000Daの範囲の重量平均分子量を有する、請求項29に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項32】
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約20重量%含む、請求項28に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項33】
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約10重量%含む、請求項28に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項34】
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約5重量%含む、請求項28に記載の架橋ポリマーネットワーク。
【請求項35】
眼用デバイスであって、その表面上にコーティングを有し、前記コーティングが、請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、
眼用デバイス。
【請求項36】
前記
眼用デバイスが、眼用レンズである、請求項35に記載の
眼用デバイス。
【請求項37】
前記眼用レンズが、コンタクトレンズまたは眼内レンズである、請求項36に記載の
眼用デバイス。
【請求項38】
請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む水性パッケージング溶液中に浸漬された、1つ以上の未使用の眼用デバイスを収容する密封容器を含む、眼用デバイスの保管用パッケージングシステムであって、前記溶液が、少なくとも約180mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9のpHを有し、熱滅菌されている、パッケージングシステム。
【請求項39】
前記1つ以上の未使用の眼用デバイスが、コンタクトレンズである、請求項38に記載のパッケージングシステム。
【請求項40】
保管可能な、滅菌眼用デバイスを含むパッケージを調製する方法であって、
(a)請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む水性パッケージング溶液中に眼用デバイスを浸漬することであって、前記溶液が、少なくとも約180mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度および約6~約9の範囲のpHを有する、浸漬することと、
(b)微生物による前記デバイスの汚染を防止する様式で、前記溶液および前記デバイスをパッケージングすることと、
(c)前記パッケージングされた溶液およびデバイスを滅菌することと、を含む、方法。
【請求項41】
請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、水性眼用組成物であって、180mOsmol/kg~500mOsmol/kgの範囲の重量モル浸透圧濃度を有する、水性眼用組成物。
【請求項42】
点眼薬、コンタクトレンズ用保存液、コンタクトレンズ用洗浄液、およびコンタクトレンズ用多目的溶液からなる群から選択される、アイケアまたはコンタクトレンズケア製品の形態である、請求項41に記載の水性眼用組成物。
【請求項43】
多目的溶液または再湿潤
点滴薬の形態である、請求項41に記載の水性眼用組成物。
【請求項44】
創傷治癒を促進するためのゲル組成物であって、請求項1~34に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、ゲル組成物。
【請求項45】
請求項44に記載のゲル組成物を含む創傷被覆材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0144
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0144】
本明細書に開示される実施形態に様々な修正を行うことができることが理解されるであろう。したがって、上記の説明は、限定的と解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の例示としてのみ解釈されるべきである。例えば、上に記載される、本発明を動作させるための最良の態様として実装される機能は、例示目的のみのためである。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、他の構成および方法を実施することができる。さらに、当業者は、本明細書に追加される特徴および利点の範囲および趣旨内で他の修正を想定するであろう。
なお、下記[1]から[45]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
第1のグリコサミノグリカンと、第2のグリコサミノグリカンと、第1の架橋剤との反応生成物を含む架橋ポリマーネットワークであって、前記第1のグリコサミノグリカンが、前記第2のグリコサミノグリカンとは異なる、架橋ポリマーネットワーク。
[2]
前記第1のグリコサミノグリカンおよび前記第2のグリコサミノグリカンが、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノビオース、およびキトビオースからなる群から選択される、[1]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[3]
前記第1のグリコサミノグリカンがヒアルロン酸であり、前記第2のグリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸である、[1]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[4]
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化17】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’は、それぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-O」は、前記グリコサミノグリカン上の置換ヒドロキシル基を表し、xは、1~20に等しい整数である、[1]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[5]
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、[4]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[6]
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化18】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’は、それぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、Xは、NHまたはCH
2
であり、「a」は、独立して、1~10に等しい整数である、[1]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[7]
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、[6]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[8]
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化19】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’はそれぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、nは、1~10に等しい整数であり、xは、独立して、1~10に等しい整数である、[1]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[9]
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、[8]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[10]
前記反応生成物が、以下の式で表される架橋構造を含み、
【化20】
式中、GAGおよびGAG’は、独立して、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンであり、前記GAGおよびGAG’はそれぞれ、複数のヒドロキシル基を有し、「GAG-C(O)」は、前記グリコサミノグリカン上の置換カルボキシル基を表し、xは、独立して、1~10に等しい整数である、[1]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[11]
GAGがヒアルロン酸であり、GAG’がコンドロイチン硫酸である、[10]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[12]
前記第1の架橋剤が、前記第1のグリコサミノグリカンおよび前記第2のグリコサミノグリカンの官能基と反応可能な2つ以上の官能基を含む二官能性または多官能性架橋剤である、[1]~[3]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[13]
前記第1の架橋剤が、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン(EGDGE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、1,2-エタンジオールジグリシジルエーテル(EDDE)、ジエポキシオクタン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエステル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,3-ブタジエンジエポキド、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、およびポリエポキシドからなる群から選択される、二官能性または多官能性架橋剤を含む、[1]~[3]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[14]
前記第1の架橋剤が、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アザライン酸(azalaic acid)ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ウンデカン二酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ブラシル酸ジヒドラジド、テトラデカン二酸ジヒドラジド、ペンタデカン二酸ジヒドラジド、タプシン酸ジヒドラジド、およびオクタデカン二酸ジヒドラジドからなる群から選択されるジヒドラジド架橋剤を含む、[1]~[3]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[15]
前記第1の架橋剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、ヘプチレングリコール、およびオクチレングリコールからなる群から選択される二価アルコール架橋剤を含む、[1]~[3]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[16]
前記第1の架橋剤が、グリセリン、ペンタエリスライト、キシリトール、およびガラクチトールからなる群から選択される多価アルコール架橋剤を含む、[1]~[3]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[17]
前記第1の架橋剤が、式X-N=C=N-Xのカルボジイミド架橋剤を含み、式中、各Xが、独立して、1~2個のジアルキルアミノ基で任意に置換されたC
1
~C
6
アルキルであるか、またはC
5
~C
6
シクロアルキル基である、[1]~[3]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[18]
前記第1の架橋剤が、メタクリル酸無水物、オクテイルコハク酸無水物(octeyl succinic anhydride)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)、グルラルアルデヒド(gluraraldehyde)、酸塩化物、n-ヒドロキシコハク酸イミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアミン、ジビニルスルホン、尿素、ジイソシアネートからなる群から選択される、[1]~[3]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[19]
前記反応生成物が、前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカンを含む、[1]~[18]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[20]
前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカンが、約20,000~約6,000,000Daの範囲の重量平均分子量を有する、[19]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[21]
前記反応生成物が、前記第1のグリコサミノグリカンと架橋した前記第1のグリコサミノグリカン、および前記第2のグリコサミノグリカンと架橋した前記第2のグリコサミノグリカンをさらに含む、[19]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[22]
1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、第2の架橋剤で前記反応生成物と架橋される、[1~18に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[23]
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤と同じである、[22]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[24]
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤とは異なる、[22]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[25]
1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、前記架橋した第1のグリコサミノグリカンおよび第2のグリコサミノグリカンと、第2の架橋剤で架橋される、[19]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[26]
前記第2の架橋剤が、前記第1の架橋剤とは異なる、[25]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[27]
前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸である、[25]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[28]
(a)前記第1のグリコサミノグリカンと、前記第2のグリコサミノグリカンと、前記第1の架橋剤との前記反応生成物と、(b)1つ以上の第3のグリコサミノグリカンと、を含む混合物をさらに含む、[1]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[29]
前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンが、直鎖グリコサミノグリカンである、[28]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[30]
前記1つ以上の直鎖グリコサミノグリカンが、直鎖ヒアルロン酸または直鎖コンドロイチン硫酸である、[29]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[31]
前記1つ以上の直鎖グリコサミノグリカンが、約10,000~約3,000,000Daの範囲の重量平均分子量を有する、[29]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[32]
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約20重量%含む、[28]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[33]
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約10重量%含む、[28]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[34]
前記混合物が、前記混合物の総重量に基づいて、前記1つ以上の第3のグリコサミノグリカンを約1重量%~約5重量%含む、[28]に記載の架橋ポリマーネットワーク。
[35]
生物医学的デバイスであって、その表面上にコーティングを有し、前記コーティングが、[1]~[34]に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、生物医学的デバイス。
[36]
前記生物医学的デバイスが、眼用レンズである、[35]に記載の生物医学的デバイス。
[37]
前記眼用レンズが、コンタクトレンズまたは眼内レンズである、[36]に記載の生物医学的デバイス。
[38]
[1]~[34]に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む水性パッケージング溶液中に浸漬された、1つ以上の未使用の眼用デバイスを収容する密封容器を含む、眼用デバイスの保管用パッケージングシステムであって、前記溶液が、少なくとも約180mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9のpHを有し、熱滅菌されている、パッケージングシステム。
[39]
前記1つ以上の未使用の眼用デバイスが、コンタクトレンズである、[38]に記載のパッケージングシステム。
[40]
保管可能な、滅菌眼用デバイスを含むパッケージを調製する方法であって、
(a)[1]~[34]に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む水性パッケージング溶液中に眼用デバイスを浸漬することであって、前記溶液が、少なくとも約180mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度および約6~約9の範囲のpHを有する、浸漬することと、
(b)微生物による前記デバイスの汚染を防止する様式で、前記溶液および前記デバイスをパッケージングすることと、
(c)前記パッケージングされた溶液およびデバイスを滅菌することと、を含む、方法。
[41]
[1]~[34]に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、水性眼用組成物であって、180mOsmol/kg~500mOsmol/kgの範囲の重量モル浸透圧濃度を有する、水性眼用組成物。
[42]
点眼薬、コンタクトレンズ用保存液、コンタクトレンズ用洗浄液、およびコンタクトレンズ用多目的溶液からなる群から選択される、アイケアまたはコンタクトレンズケア製品の形態である、[41]に記載の水性眼用組成物。
[43]
多目的溶液または再湿潤液滴の形態である、[41]に記載の水性眼用組成物。
[44]
創傷治癒を促進するためのゲル組成物であって、[1]~[34]に記載の架橋ポリマーネットワークのうちの1つ以上を含む、ゲル組成物。
[45]
[44]に記載のゲル組成物を含む創傷被覆材。
【国際調査報告】