(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20220311BHJP
A61M 1/38 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A61M1/02 125
A61M1/02 180
A61M1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519912
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2019041299
(87)【国際公開番号】W WO2020090543
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2018206648
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507114521
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】10811 West Collins Avenue, Lakewood, Colorado 80215, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 政嗣
(72)【発明者】
【氏名】デービス ベンツ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA12
4C077BB04
4C077CC04
4C077DD13
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH13
4C077KK27
(57)【要約】
【課題】回路内圧を精度よく測定することができる生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法を提供する。
【解決手段】血液成分採取システム10Aの遠心分離装置14は、カセット装着状態で、ライン形成部材52の一部を構成する第1被荷重測定部56にかかる荷重を検出する第1荷重検出部88と、カセット装着状態で、血液成分採取中に、第1荷重検出部88によって検出された荷重と内圧算出データとを用いて第1被荷重測定部56の内圧を算出する内圧算出部116と、を備え、内圧算出部116は、第1被荷重測定部56の内圧を算出する際に、温度による内圧算出データの変化を反映した計算を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムであって、
前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材を有し、
前記分離装置は、
前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出部と、
前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取中に、前記荷重検出部によって検出された荷重と内圧算出データとを用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出部と、を備え、
前記内圧算出データは、前記荷重検出部によって検出される荷重と前記被荷重測定部の内圧との関係を示すデータであり、
前記内圧算出部は、前記被荷重測定部の内圧を算出する際に、温度による前記内圧算出データの変化を反映した計算を行う、生体成分採取システム。
【請求項2】
請求項1記載の生体成分採取システムであって、
前記内圧算出データは、前記被荷重測定部の反力を含むデータであり、
前記内圧算出部は、温度による前記被荷重測定部の反力の変化を反映した計算を行う、生体成分採取システム。
【請求項3】
請求項2記載の生体成分採取システムであって、
前記分離装置は、前記被荷重測定部の反力に影響する影響情報を取得する情報取得部を備え、
前記内圧算出部は、前記情報取得部によって取得された影響情報に基づいて、温度による前記被荷重測定部の反力の変化を反映した計算を行う、生体成分採取システム。
【請求項4】
請求項3記載の生体成分採取システムであって、
前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、前記分離装置の作動時に生体液および生体成分が流通しない空洞部を形成する空洞形成部材を有し、
前記分離装置は、
前記デバイス装着状態で、前記生体成分採取中に時間に応じて変化する前記被荷重測定部の反力を得るために、前記空洞形成部材の一部を構成する被反力測定部の反力を検出する反力検出部と、
前記情報取得部によって取得された影響情報を用いて前記反力検出部で検出された反力を補正する反力補正部と、を備え、
前記内圧算出部は、前記反力補正部により補正された反力を用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する、生体成分採取システム。
【請求項5】
請求項3記載の生体成分採取システムであって、
前記分離装置は、
前記デバイス装着状態で、前記生体成分採取が行われる前に、前記荷重検出部により検出された荷重を用いて前記被荷重測定部の反力の時間変化を示す初期データを取得するデータ取得部と、
前記初期データに基づいて前記生体成分採取中に時間に応じて変化する前記被荷重測定部の反力を予測するための予測データを算出する予測データ算出部と、
前記生体成分採取中に、前記予測データを用いて前記被荷重測定部の反力を算出する反力算出部と、
前記情報取得部によって取得された影響情報を用いて前記反力算出部で算出された反力を補正する反力補正部と、を有し、
前記内圧算出部は、前記反力補正部により補正された反力を用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する、生体成分採取システム。
【請求項6】
請求項5記載の生体成分採取システムであって、
前記予測データ算出部は、前記初期データに基づいて最小二乗法を用いて前記予測データを算出する、生体成分採取システム。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の生体成分採取システムであって、
前記情報取得部によって取得される影響情報は、前記生体液ラインに生体液が流通されてからの経過時間、前記ライン形成部材の温度または前記ライン形成部材の硬度である、生体成分採取システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の生体成分採取システムであって、
前記荷重検出部は、前記デバイス装着状態で、前記被荷重測定部を押圧する、生体成分採取システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の生体成分採取システムであって、
前記内圧算出データは、前記荷重検出部によって検出される荷重から前記被荷重測定部の反力を引いた差分荷重と前記被荷重測定部の内圧との関係を示す検量線を含むデータであり、
前記内圧算出部は、温度による前記検量線の変化を反映した計算を行う、生体成分採取システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の生体成分採取システムであって、
前記分離装置は、
前記デバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する較正用被荷重測定部にかかる荷重を検出する較正用荷重検出部と、
前記デバイス装着状態で、前記生体成分採取が行われる前に、前記較正用荷重検出部によって検出された荷重と較正用内圧算出データとを用いて前記較正用被荷重測定部の内圧を算出する較正用内圧算出部と、
前記較正用内圧算出部によって算出された内圧を用いて前記内圧算出データを補正する補正部と、を備え、
前記較正用内圧算出データは、前記較正用荷重検出部によって検出される荷重と前記較正用被荷重測定部の内圧との関係を示すデータであり、
前記較正用内圧算出部は、温度による前記較正用内圧算出データの変化を反映した計算を行う、生体成分採取システム。
【請求項11】
生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムであって、
前記生体成分採取用デバイスは、
軟質素材で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材と、
前記ライン形成部材上の温度が計測される温度被計測部と、を有し、
前記分離装置は、
前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出部と、
前記温度被計測部の温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された温度に基づいて、前記荷重検出部によって検出される荷重と前記被荷重測定部の内圧との関係を示す内圧算出データを補正する補正部と、
前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取中に、前記荷重検出部によって検出された荷重と前記補正部で補正された内圧算出データとを用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出部と、を備える、生体成分採取システム。
【請求項12】
生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムを用いた回路内圧取得方法であって、
前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材を有し、
前記回路内圧取得方法では、
前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出ステップと、
前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取中に、前記荷重検出ステップで検出された荷重と内圧算出データとを用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出ステップと、を行い、
前記内圧算出データは、前記荷重検出ステップによって検出される荷重と前記被荷重測定部の内圧との関係を示すデータであり、
前記内圧算出ステップでは、温度による前記内圧算出データの変化を反映した計算を行う、回路内圧取得方法。
【請求項13】
請求項12記載の回路内圧取得方法であって、
前記内圧算出データは、前記被荷重測定部の反力を含み、
前記内圧算出ステップでは、前記被荷重測定部の内圧を算出する際に、温度による前記被荷重測定部の反力の変化を反映した計算を行う、回路内圧取得方法。
【請求項14】
請求項13記載の回路内圧取得方法であって、
前記被荷重測定部の反力に影響する影響情報を取得する情報取得ステップを行い、
前記内圧算出ステップでは、前記情報取得ステップで取得された影響情報に基づいて、温度による前記被荷重測定部の反力の変化を反映した計算を行う、回路内圧取得方法。
【請求項15】
請求項14記載の回路内圧取得方法であって、
前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、前記分離装置の作動時に生体液および生体成分が流通しない空洞部を形成する空洞形成部材を有し、
前記回路内圧取得方法は、
前記デバイス装着状態で、前記生体成分採取中に時間に応じて変化する前記被荷重測定部の反力を取得するために、前記空洞形成部材の一部を構成する被反力測定部の反力を検出する反力検出ステップと、
前記情報取得ステップによって取得された影響情報を用いて前記反力検出ステップで検出された反力を補正する反力補正ステップと、を行い、
前記内圧算出ステップでは、前記反力補正ステップにより補正された反力を用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する、回路内圧取得方法。
【請求項16】
請求項14記載の回路内圧取得方法であって、
前記デバイス装着状態で、前記生体成分採取が行われる前に、前記荷重検出ステップにより検出された荷重を用いて前記被荷重測定部の反力の時間変化を示す初期データを取得するデータ取得ステップと、
前記初期データに基づいて前記生体成分採取中に時間に応じて変化する前記被荷重測定部の反力を予測するための予測データを算出する予測データ算出ステップと、
前記生体成分採取中に、前記予測データを用いて前記被荷重測定部の反力を算出する反力算出ステップと、
前記情報取得ステップによって取得された影響情報を用いて前記反力算出ステップで算出された反力を補正する反力補正ステップと、を行い、
前記内圧算出ステップでは、前記反力補正ステップにより補正された反力を用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する、回路内圧取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置に装着可能に構成された生体成分採取用デバイスを備えた生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の献血においては、供血者から全血を採取する全血採血の他に、供血者の身体への負担が軽い成分採血(アフェレーシス)が行われている。成分採血は、血液成分採取システム(アフェレーシスシステム)を使用し、全血から特定の血液成分だけを採取し、残りの成分を供血者の体内に再び戻す採血方法である。
【0003】
特許文献1には、供血者から取り出した全血を遠心分離して血小板を採取する血液成分採取システムが開示されている。この血液成分採取システムは、処理される血液または血液成分が流れる回路を形成する採血回路セットと、この採血回路セットが装着される遠心分離装置(血液成分分離装置)とを備える。
【0004】
採血回路セットは、採血針を有する採血ライン、全血が導入される帯状のチャネル(分離器)、血液成分などを収容するための複数のバッグと、複数のチューブを介してこれらに接続されたカセットとを備える。カセットには、供血者からの血液を導入するライン、バッグへと血液成分を移送するライン、採取しない血液成分を供血者へと戻す返血ラインなどを含む複数の流路が形成されている。使用に際し、カセットは、血液成分分離装置に設けられた取付部に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような血液成分採取システムでは、血液成分分離装置が適正に動作しているか否かを確認するために、採血回路内の圧力(回路内圧)を測定して監視することが必要である。血液成分採取システム以外の生体成分採取システムにおいても、同様の課題がある。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、回路内圧を精度よく測定することができる生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムであって、前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材を有し、前記分離装置は、前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出部と、前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取中に、前記荷重検出部によって検出された荷重と内圧算出データとを用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出部と、を備え、前記内圧算出データは、前記荷重検出部によって検出される荷重と前記被荷重測定部の内圧との関係を示すデータであり、前記内圧算出部は、前記被荷重測定部の内圧を算出する際に、温度による前記内圧算出データの変化を反映した計算を行う、生体成分採取システムである。
【0009】
本発明の第2の態様は、生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムであって、前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材と、前記ライン形成部材上の温度が計測される温度被計測部と、を有し、前記分離装置は、前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出部と、前記温度被計測部の温度を取得する温度取得部と、前記温度取得部で取得された温度に基づいて、前記荷重検出部によって検出される荷重と前記被荷重測定部の内圧との関係を示す内圧算出データを補正する補正部と、前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取中に、前記荷重検出部によって検出された荷重と前記補正部で補正された内圧算出データとを用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出部と、を備える、生体成分採取システムである。
【0010】
本発明の第3の態様は、生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムを用いた回路内圧取得方法であって、前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材を有し、前記回路内圧取得方法では、前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出ステップと、前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取中に、前記荷重検出ステップで検出された荷重と内圧算出データとを用いて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出ステップと、を行い、前記内圧算出データは、前記荷重検出ステップによって検出される荷重と前記被荷重測定部の内圧との関係を示すデータであり、前記内圧算出ステップでは、温度による前記内圧算出データの変化を反映した計算を行う、回路内圧取得方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被荷重測定部の内圧を算出する際に、温度による内圧算出データの変化を反映した計算を行うため、回路内圧を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る血液成分採取システムの概略図である。
【
図2】
図1の血液成分採取用カセットの斜視図である。
【
図4】
図2のカセットを
図3のカセット取付部に載せた状態の斜視図である。
【
図5】クランプの動作を説明する第1説明図である。
【
図6】クランプの動作を説明する第2説明図である。
【
図7】クランプの動作を説明する第3説明図である。
【
図8】クランプの動作を説明する第4説明図である。
【
図9】クランプの動作を説明する第5説明図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る回路内圧取得方法を説明するためのフローチャートである。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る血液成分採取システムの概略図である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る回路内圧取得方法を説明するためのフローチャートである。
【
図19】予測データを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1において、本発明に係る生体成分採取システムの第1実施形態である血液成分採取システム10Aは、供血者から血液(全血)を連続的に取り出して体外で遠心分離することにより、特定の血液成分(本実施形態では、血漿(乏血小板血漿:PPP))を採取し、残りの血液成分を供血者に戻す血液アフェレーシスシステムとして構成されている。本実施形態において、血液成分は生体成分であり、血液は生体液(少なくとも1つの生体成分を含有する液体)である。
【0015】
まず、
図1に示す血液成分採取システム10Aの概略を説明する。この血液成分採取システム10Aは、血液成分を貯留および流動するための採血回路セット12と、採血回路セット12に遠心力を付与する遠心分離装置14(分離装置)とを備える。採血回路セット12は、供血者から取り出された全血が導入され全血を複数の血液成分に遠心分離する血液処理部16を有する。遠心分離装置14は、血液処理部16に遠心力を付与するためのロータ18aを有する遠心部18を備える。血液処理部16は、遠心部18に装着可能である。
【0016】
採血回路セット12は、汚染防止や衛生のため、1回の使用毎に使い捨てされる。採血回路セット12は、採血針20および初流血採取バッグ21を有する採血・返血部22と、血液処理部16と、複数のバッグ24と、これらの要素にチューブを介して接続された生体成分採取用デバイスとしての血液成分採取用カセット28(以下、「カセット28」と略称する)とを備える。複数のバッグ24は、抗凝固剤であるACD液を収容したACD液用バッグ24aと、血漿(乏血小板血漿)を貯留するためのPPP用バッグ24bとを含む。
【0017】
採血・返血部22は、チューブコネクタ30を介してACD液用バッグ24aおよびカセット28に接続されている。ACD液用バッグ24aは、ACD液移送チューブ23を介してチューブコネクタ30に接続されている。
【0018】
カセット28は、ドナー側チューブ32を介して採血・返血部22に接続されるとともに、処理部側チューブ34を介して血液処理部16に接続されている。血液処理部16は、遠心分離装置14の遠心部18(ロータ18a)に装着され、血液が導入、流動および流出するように容器状に構成されている。血液処理部16には、PPP移送チューブ36を介してPPP用バッグ24bが接続されている。
【0019】
図2において、カセット28は、平面視で長方形状に構成されたカセット本体40を備える。カセット本体40は、軟質素材で形成されている。カセット本体40を構成する軟質素材は、カセット本体40の全体に亘って同一の素材が用いられている。なお、カセット本体40は、異なる複数の素材で構成されていてもよい。具体的に、カセット本体40は、軟質素材で形成された第1シート40aおよび第2シート40bを有する。第1シート40aと第2シート40bとは厚さ方向に重ねられかつ互いに接合されている。
【0020】
第1シート40aおよび第2シート40bを構成する軟質素材としては、例えば、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタンなどが挙げられる。塩化ビニルの可塑剤としては、例えば、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、フタル酸ビス-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0021】
カセット本体40は、第1シート40aと第2シート40bとの間に形成された血液ライン42(生体液ライン)と空洞部43とを有する。本実施形態において、第1シート40aと第2シート40bとの接合手段は、融着(高周波融着、熱融着など)である。第1シート40aと第2シート40bとは、他の接合手段(接着など)により接合されていてもよい。また、カセット本体40の外周縁部40cには、硬質素材(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど)で構成された第1ポート部材44および第2ポート部材46が設けられている。
【0022】
第1ポート部材44は、長方形状のカセット本体40の長軸方向一端部である第1端部45aに設けられ、血液ライン42の一端側に設けられた第1のポート43aに接続されている。第2ポート部材46は、カセット本体40の長軸方向他端部である第2端部45bに設けられ、血液ライン42の他端側に設けられた第2のポート43bに接続されている。第1ポート部材44にはドナー側チューブ32が接続され、第2ポート部材46には処理部側チューブ34が接続されている。
【0023】
本実施形態では、第1ポート部材44と第2ポート部材46とは、長方形状のカセット本体40の長軸方向に沿った同一直線上に配置されている。なお、第1ポート部材44と第2ポート部材46とは、上記同一直線上に配置されていなくてもよい。
【0024】
カセット本体40に形成された血液ライン42は、採血時に血液を流通させるための採血ライン42a(採取ライン)と、返血時に血液成分を流通させるための返血ライン42b(返還ライン)とを有する。採血ライン42aの一端部42a1と、返血ライン42bの一端部42b1とは、第1結合部48を介して互いに結合している。採血ライン42aの他端部42a2と、返血ライン42bの他端部42b2とは、第2結合部50を介して互いに結合している。
【0025】
空洞部43には、遠心分離装置14の作動時に血液および血液成分が流通しない。空洞部43の第1端部47aは、採血ライン42aの中間部と第3結合部51を介して接続している。空洞部43の第2端部47bは、閉じている。採血ライン42aと返血ライン42bとは、少なくとも部分的に並列して延在している。空洞部43は、直線状に形成されており、採血ライン42aのうち返血ライン42bと平行に延在する部分に対して直列に接続している。採血ライン42aの少なくとも一部は、並列に延在する空洞部43と返血ライン42bとの間に延在している。第1結合部48、第2結合部50および第3結合部51は、それぞれ血液ライン42の一部を構成している。
【0026】
カセット本体40では、血液ライン42の両側に、融着箇所であるシール部55が血液ライン42に沿って形成されている。また、カセット本体40の外周縁部40cには、シール部57が当該外周縁部40cに沿って形成されている。
【0027】
カセット本体40(血液ライン42を形成する凸状部を除く)において、シール部55、57以外の箇所は、第1シート40aと第2シート40bとが互いに融着されていない非シール部である。シール部55は、形成時に加圧されているため、非シール部よりも厚みが小さく、非シール部に対して凹んでいる。換言すれば、非シール部は、シール部55に対して厚さ方向に突出している。
【0028】
カセット本体40のうち血液ライン42を形成する壁部は、血液ライン42内に陽圧が作用していないときでも、カセット本体40の両面側において、カセット28の厚さ方向に凸状に膨らんでいる。したがって、血液ライン42は、自然状態で開いている流路である。外力によって押圧された際には、押圧された箇所の血液ライン42を閉じる方向に弾性変形可能である。
【0029】
カセット本体40は、血液ライン42を形成するライン形成部材52と、空洞部43を形成する空洞形成部材53とを備える。ライン形成部材52は、採血ライン42aを形成する採血ライン形成部材54を有する。採血ライン形成部材54には、カセット28が遠心分離装置14に装着されたカセット装着状態(デバイス装着状態)で遠心分離装置14に搭載された後述する第1荷重検出部88(
図3参照)によって押圧される第1被荷重測定部56(第1被押圧部)が設けられている。第1被荷重測定部56は、採血ライン42aの壁部の一部を構成している。したがって、第1被荷重測定部56は、カセット本体40のシート面41(ベース面)からカセット本体40の厚さ方向に膨出している。
【0030】
採血ライン形成部材54のうち第1被荷重測定部56の近傍には、温度測定部93(
図3参照)によって温度が計測される温度被計測部59が設けられている。この場合、温度被計測部59の温度を温度測定部93で測定することによって、第1被荷重測定部56の温度を精度よく取得することができる。なお、温度被計測部59は、ライン形成部材52上の温度が計測される部分であれば、ライン形成部材52の任意の位置に設けることができる。つまり、温度被計測部59は、第1被荷重測定部56の少なくとも一部を形成していてもよい。この場合、第1被荷重測定部56の温度を一層精度よく取得することができる。また、温度被計測部59は、後述する返血ライン形成部材58に設けられていてもよい。
【0031】
ライン形成部材52は、返血ライン42bを形成する返血ライン形成部材58を有する。返血ライン形成部材58には、カセット装着状態で遠心分離装置14に搭載された後述する第2荷重検出部89(
図3参照)によって押圧される第2被荷重測定部60(第2被押圧部、較正用被荷重測定部)が設けられている。第2被荷重測定部60は、返血ライン42bの壁部の一部を構成している。したがって、第2被荷重測定部60は、カセット本体40のシート面41からカセット本体40の厚さ方向に膨出している。
【0032】
第2被荷重測定部60は、フィルタ収容部62を構成する。フィルタ収容部62には、血液成分に含まれる所定成分(血液凝集塊)を分離するためのフィルタ部材64が収容されている。
【0033】
第2被荷重測定部60は、第1被荷重測定部56よりも変形しやすい。本実施形態では、第2被荷重測定部60の幅が第1被荷重測定部56の幅よりも大きいことにより、第2被荷重測定部60が第1被荷重測定部56よりも変形しやすい。第1被荷重測定部56の幅に対する第2被荷重測定部60の幅の割合は、例えば、300%以上に設定され、好ましくは500%以上に設定され、より好ましくは800%以上に設定される。
【0034】
なお、第2被荷重測定部60を構成する壁部の厚さが第1被荷重測定部56を構成する壁部の厚さよりも薄く設定されることにより、第2被荷重測定部60が第1被荷重測定部56よりも変形しやすくなっていてもよい。あるいは、第2被荷重測定部60が第1被荷重測定部56よりも柔軟な材料で構成されることにより、第2被荷重測定部60が第1被荷重測定部56よりも変形しやすくなっていてもよい。
【0035】
空洞形成部材53は、軟質素材で構成された第3被荷重測定部66(被反力測定部)を有する。第3被荷重測定部66は、カセット装着状態で遠心分離装置14に搭載された後述する第3荷重検出部90によって押圧される部位である。
【0036】
第1被荷重測定部56および第3被荷重測定部66は、互いに同一形状および同一サイズに形成されている。したがって、第1被荷重測定部56および第3被荷重測定部66の剛性は互いに同一となっている。
【0037】
カセット28には、遠心分離装置14に備えられた流路開閉機構である複数のクランプ72(72a~72d)(
図3参照)が作用する複数のクランプ作用部76(76a~76d)が設けられている。カセット28を遠心分離装置14に装着すると、クランプ作用部76は、対応するクランプ72に当接または対向する。具体的に、クランプ作用部76aは、カセット28における採血ライン42aの第1ポート部材44側を形成する箇所に設けられている。クランプ作用部76b、76cは、返血ライン42bのうち第2被荷重測定部60の両側を形成する箇所にそれぞれ設けられている。クランプ作用部76dは、第3被荷重測定部66と第3結合部51との間(空洞部43の第3結合部51の近傍箇所)に設けられている。
【0038】
なお、カセット28に形成される流路構成や、設けられるバッグ24の個数および配置は、上述および図示した構成に限られず、採取する血液成分の種類や使用方法などに応じて改変がなされてもよい。
【0039】
図1において、遠心分離装置14は、血液成分採取において繰り返し使用される機器であり、例えば、医療施設や採血用車両などに備えられる。遠心分離装置14は、ロータ18aを有する遠心部18と、採血回路セット12のカセット28が取り付け可能に構成されたカセット取付部78とを備える。
【0040】
図3に示すように、カセット取付部78は、カセット装着溝82が形成された取付ベース84と、閉じたときに取付ベース84を覆うように構成された開閉可能な蓋体86と、カセット28のクランプ作用部76(
図2参照)を押圧可能に構成された複数のクランプ72とを備える。カセット取付部78は、さらに、カセット28の第1被荷重測定部56(
図2参照)を押圧可能な第1荷重検出部88と、カセット28の第2被荷重測定部60(
図2参照)を押圧可能な第2荷重検出部89(較正用荷重検出部)と、カセット28の第3被荷重測定部66(
図2参照)を押圧可能な第3荷重検出部90(反力検出部)と、温度被計測部59(
図2参照)の温度を測定するための温度測定部93を備える。
【0041】
取付ベース84の外周部には、カセット28の第1ポート部材44を配置可能な第1ポート配置溝84aと、カセット28の第2ポート部材46を配置可能な第2ポート配置溝84bとが設けられている。第1ポート配置溝84aおよび第2ポート配置溝84bは、カセット装着溝82に連通している。
【0042】
蓋体86は、取付ベース84にヒンジ部85を介して回動可能に連結されている。カセット28が取付ベース84のカセット装着溝82に保持された状態で蓋体86を閉じると、カセット28は、取付ベース84と蓋体86との間に挟まれる。取付ベース84および蓋体86には、それぞれカセット28のフィルタ収容部62を受容可能な凹部87a、87bが設けられている。これにより、取付ベース84と蓋体86との間でカセット28を適切に保持しつつ、フィルタ収容部62が潰れることが防止される。また、凹部87a、87bにより、フィルタ収容部62が過剰に膨らむことが防止される。
【0043】
第1荷重検出部88は、取付ベース84に設けられた第1貫通孔92aに挿入されるとともに、カセット装着溝82に露出している。第1荷重検出部88の上面は、カセット装着溝82の底面82aから突出している。第2荷重検出部89は、凹部87aの底面91に設けられた第2貫通孔92bに挿入されるとともに、凹部87a内に露出している。第2荷重検出部89の上面は、凹部87aの底面91から突出している。第3荷重検出部90は、取付ベース84に設けられた第3貫通孔92cに挿入されるとともに、カセット装着溝82に露出している。第3荷重検出部90の上面は、カセット装着溝82の底面82aから突出している。
【0044】
底面82aからの第1荷重検出部88の突出高さと、底面82aからの第3荷重検出部90の突出高さは、同一である。第1荷重検出部88、第2荷重検出部89および第3荷重検出部90は、例えば、ロードセルにより構成される。温度測定部93は、第1荷重検出部88の近傍に位置している。
【0045】
複数のクランプ72(72a~72d)は、カセット装着溝82に保持された状態のカセット28の厚さ方向に進退動作可能であり、カセット28に設けられた複数のクランプ作用部76(76a~76d)の配置に対応するように配置されている。複数のクランプ72は、カセット装着溝82の底面82aに開口する複数の孔部94を介して、複数のクランプ作用部76をそれぞれ押圧可能である。蓋体86において、閉じたときに複数の孔部94(クランプ72)に対応する位置には、複数の突起96が設けられている。
【0046】
カセット取付部78にカセット28が装着された状態でクランプ作用部76がクランプ72によって押圧されていないときは、クランプ作用部76内の流路は開通している。クランプ72が孔部94から突出してクランプ作用部76を押圧すると、クランプ作用部76内の流路が閉塞される。そして、クランプ72が後退すると、カセット本体40(クランプ作用部76)の弾性復元力により、クランプ作用部76は元の形状に戻り、クランプ作用部76内の流路が開通する。
【0047】
図1に示すように、遠心分離装置14は、ACD液移送チューブ23に作用するACD液移送ポンプ98と、カセット28に接続された処理部側チューブ34に作用する採取・返還ポンプ100とを有する。ACD液移送ポンプ98は、ACD液用バッグ24aからACD液移送チューブ23を介してカセット28および血液処理部16へとACD液を移送するポンプである。採取・返還ポンプ100は、血液または血液成分を移送するためのポンプである。換言すれば、採取・返還ポンプ100は、供血者側から血液処理部16へと血液を移送するとともに、血液処理部16から供血者側へと血液成分を移送するポンプである。ACD液移送ポンプ98および採取・返還ポンプ100は、例えば、ローラポンプ、フィンガーポンプにより構成される。
【0048】
遠心分離装置14は、さらに、制御部102を有する。制御部102は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM、RAM、などを有しており、CPUがROMに記憶されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)として機能する。なお、各種機能実現部は、ハードウエアとしての機能実現器により構成することもできる。
【0049】
制御部102は、上述した複数のクランプ72の動作を制御する。制御部102は、記憶部104、温度取得部106(情報取得部)、第1補正部108、第2補正部110、較正用内圧算出部112、較正部114および内圧算出部116を備える。
【0050】
温度取得部106は、ライン形成部材52の温度(第1被荷重測定部56の反力に影響する影響情報)を取得する。具体的には、温度取得部106は、温度測定部93が計測した温度を取得する。
【0051】
第1補正部108は、温度取得部106で取得された温度に基づいて、第2荷重検出部89によって検出される荷重と第2被荷重測定部60の内圧との関係を示す較正用内圧算出データを補正する。較正用内圧算出データは、第2被荷重測定部60の弾性復元力に基づく反力と、第2荷重検出部89によって検出される荷重から第2被荷重測定部60の反力を引いた差分荷重と第2被荷重測定部60の内圧との関係を示す較正用検量線L0(
図11A参照)と、を含むデータである。
【0052】
第1補正部108は、温度取得部106で取得された温度に基づいて第2被荷重測定部60の反力を補正する第1反力補正部118と、温度取得部106で取得された温度に基づいて較正用検量線L0を補正する第1検量線補正部120とを有する。
【0053】
第2補正部110は、温度取得部106で取得された温度に基づいて、第1荷重検出部88によって検出される荷重と第1被荷重測定部56の内圧との関係を示す内圧算出データを補正する。内圧算出データは、第1被荷重測定部56の弾性復元力に基づく反力と、第1荷重検出部88によって検出される荷重から第1被荷重測定部56の反力を引いた差分荷重と第1被荷重測定部56の内圧との関係を示す検量線La(
図11B参照)と、を含むデータである。
【0054】
第2補正部110は、温度取得部106で取得された温度を用いて第3荷重検出部90で検出された荷重(第3被荷重測定部66の弾性復元力に基づく反力)を補正する第2反力補正部122と、温度取得部106で取得された温度に基づいて検量線Laを補正する第2検量線補正部124とを有する。
【0055】
較正用内圧算出部112は、カセット装着状態で、血液成分採取が行われる前に、第2荷重検出部89によって検出された荷重と第1補正部108で補正された較正用内圧算出データとを用いて第2被荷重測定部60の内圧を算出する。すなわち、較正用内圧算出部112は、温度による較正用内圧算出データの変化を反映した計算を行う。
【0056】
較正部114は、較正用内圧算出部112によって算出された第2被荷重測定部60の内圧を用いて内圧算出データ(検量線Lの傾き)を較正する。
【0057】
内圧算出部116は、カセット装着状態で、血液成分採取中に、第1荷重検出部88によって検出された荷重と第2補正部110で補正された内圧算出データとを用いて第1被荷重測定部56の内圧(回路内圧)を算出する。すなわち、内圧算出部116は、温度による内圧算出データの変化を反映した計算を行う。
【0058】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る血液成分採取システム10Aの作用を説明する。
【0059】
図1に示す血液成分採取システム10Aを用いて供血者から血液成分採取を行うための準備(セットアップ)として、採血回路セット12が遠心分離装置14に装着される。具体的には、カセット28がカセット取付部78に取り付けられるとともに、血液処理部16がロータ18aに装着される。一方、採血針20は、供血者に穿刺される。
【0060】
カセット28がカセット取付部78に取り付けられる際、
図4に示すように、カセット28は、まず、カセット装着溝82に装着される。そして、蓋体86が閉じられることで、取付ベース84と蓋体86との間にカセット28が保持された状態となる。この結果、カセット28の第1被荷重測定部56、第2被荷重測定部60および第3被荷重測定部66が、それぞれ、第1荷重検出部88、第2荷重検出部89および第3荷重検出部90に押圧されて若干だけ弾性変形した状態となる。
【0061】
この場合、第1荷重検出部88に押圧されることによる第1被荷重測定部56の変形量は、第3荷重検出部90に押圧されることによる第3被荷重測定部66の変形量と同じである。また、カセット28の複数のクランプ作用部76が、複数のクランプ72に対向配置された状態となる。
【0062】
図1に示した遠心分離装置14に対して、ユーザの操作により動作開始が指示されると、遠心分離装置14では、後述する較正ステップを実行した後、ACD液移送ポンプ98の作用下に、ACD液によるプライミングが実行される。具体的に、プライミングでは、カセット28外に配置された図示しないラインセンサで第1のポート43aの直近までACD液が来るのを検知した段階で、ACD液によるプライミングを終了する。
【0063】
次に、遠心分離装置14は、ロータ18aを回転させることによりロータ18aに装着された血液処理部16に遠心力を付与するとともに、採取・返還ポンプ100を作動させることにより供血者から血液(全血)を取り出して血液処理部16内に血液を導入する(採取動作)。血液処理部16内に導入された血液は、ロータ18aの回転に伴う遠心力によって、赤血球(濃厚赤血球)、バフィーコートおよび血漿(乏血小板血漿)に分離される。
【0064】
血液処理部16内で分離された血漿は、PPP移送チューブ36を介してPPP用バッグ24bへと導入される。残りの血液成分(赤血球およびバフィーコート)は、遠心分離処理後に供血者へと戻される(返還動作)。このとき、残りの血液成分に含まれる血液凝集塊などの異物は、カセット28の返血ライン42bに設けられたフィルタ部材64によりトラップされるため、異物が供血者に戻ることで生じるリスクを低減することができる。上述した採取動作と返還動作のサイクルは、複数回行われる。
【0065】
血液成分採取システム10Aの稼働時において、遠心分離装置14のクランプ72(
図3)は以下のように動作する。
【0066】
図5に示すように、ACD液によるプライミングを行う際には、クランプ72dが閉じられ、クランプ72a、72b、72cが開けられる。これにより、空洞部43は、血液ライン42から遮断された状態となる。そして、この状態で、第1のポート43a直近のカセット28外の図示しないラインセンサで第1のポート43aの直近までACD液が来るのを検知した段階で、ACD液によるプライミングを終了する。
【0067】
次に、初回の採血を行う際には、
図6に示すように、クランプ72dが閉じられクランプ72a、72b、72cが開けられた状態が維持される。そして、この状態で、供血者からの血液がカセット28の血液ライン42に導入され、血液によってカセット28の血液ライン42(回路)内の空気がすべて血液処理部16へと押し出される。
【0068】
初回の採血の途中で、
図7に示すように、クランプ72b、72cが閉じられることで、返血ライン42bが閉鎖される。これにより、フィルタ収容部62に陰圧が作用してフィルタ収容部62が閉塞することが防止される。
【0069】
次に、供血者への血液成分の返血を行う際には、
図8に示すように、クランプ72aが閉じられ、クランプ72b、72cが開けられることで、採血ライン42aが閉鎖される一方、返血ライン42bが開放される。したがって、血液成分がフィルタ部材64を通過する際に、血液成分に含まれる血液凝集塊がフィルタ部材64にトラップされる。採血ライン42aは閉鎖されているため、異物が採血ライン42aを介して供血者に戻されることはない。
【0070】
次に、2回目以降の採血を行う際には、
図9のように、クランプ72b、72cが閉じられ、クランプ72aが開けられることで、返血ライン42bが閉鎖される一方、採血ライン42aが開放される。したがって、血液は、採血ライン42aおよび返血ライン42bのうち採血ライン42aのみを介して血液処理部16側(遠心部18側)へと移送される。その後、返血(
図8)が再び行われる。このような採血と返血が複数回繰り返される。
【0071】
そして、最終の返血を行う際には、
図8に示すように、クランプ72aが閉じられ、クランプ72b、72cが開けられる。
【0072】
次に、血液成分採取システム10Aを用いた回路内圧取得方法について
図10に示すフローチャートにしたがって説明する。
【0073】
回路内圧取得方法では、
図10に示すように、ステップS1の第1温度取得ステップにおいて、温度取得部106は、温度測定部93によって測定されたライン形成部材52(温度被計測部59)の温度を取得する。
【0074】
そして、ステップS2の第1検量線補正ステップにおいて、第1検量線補正部120は、第1温度取得ステップによって取得された温度に基づいて第2被荷重測定部60の較正用検量線L0の傾きを補正する。これにより、傾きが補正された検量線L1が得られる(
図11A参照)。なお、較正用検量線L0は、実験または解析によりあらかじめ取得することができる。
【0075】
また、ステップS3の第1反力補正ステップにおいて、第1反力補正部118は、第1温度取得ステップによって取得された温度に基づいて第2被荷重測定部60の弾性復元力に基づく反力を補正する。
【0076】
続いて、ステップS4の較正ステップにおいて、較正用内圧算出部112は、第2荷重検出部89によって検出された荷重から第2被荷重測定部60の反力を引いた差分荷重と検量線L1とに基づいて第2被荷重測定部60の内圧を算出する。そして、較正部114は、較正用内圧算出部112によって算出された内圧を用いて内圧算出データ(検量線Lの傾き)を較正する(
図11B参照)。これにより、較正された検量線Laが得られる。なお、検量線Lは、実験または解析によりあらかじめ取得することができる。
【0077】
第2被荷重測定部60は、第1被荷重測定部56よりも変形しやすいため、第2荷重検出部89により検出する荷重と、荷重に対応する圧力との関係が、非常に安定している。したがって、第2荷重検出部89を、第1荷重検出部88の参照用センサとして利用し、較正ステップで回路内圧を算出する際に利用する検量線Lの傾きを較正することにより、精度の高い回路内圧の測定が可能となる。
【0078】
次に、ステップS5において、プライミングを実施する。具体的には、ACD液移送チューブ23をACD液用バッグ24aに接続するとともに、ACD液移送ポンプ98を駆動して、ACD液をカセット28の血液ライン42の直前まで満たす操作を行う。
【0079】
その後、ステップS6において、カセット28の血液ライン42に血液を導入する。この際、ステップS7において、制御部102は、採血ライン42aに対する血液の流通が開始されてからの経過時間の計測を開始する。
【0080】
次いで、ステップS8の反力検出ステップにおいて、第1被荷重測定部56の弾性復元力に基づく反力を得るために、第3荷重検出部90は、第3被荷重測定部66にかかる荷重(第3被荷重測定部66の弾性復元力に基づく反力)を検出する。
【0081】
また、ステップS9の第2温度取得ステップ(情報取得ステップ)において、温度取得部106は、経過時間と時間・温度線(温度算出用データ)とに基づいてライン形成部材52(第1被荷重測定部56)の温度を算出する。時間・温度線は、血液ライン42に血液の導入を開始してからの経過時間とライン形成部材52の温度との関係を示すデータであって、記憶部104に保存(記憶)されている。時間・温度線は、実験または解析によりあらかじめ取得することができる。
【0082】
なお、第2温度取得ステップでは、時間・温度線を記憶した外部データベースにアクセスして、時間・温度線を参照してもよい。また、第2温度取得ステップでは、温度測定部93を用いてライン形成部材52(温度被計測部59)の温度(血液ライン42の壁部の温度)を取得してもよい。
【0083】
そして、ステップS10の第2検量線補正ステップにおいて、第2検量線補正部124は、第2温度取得ステップによって取得された温度に基づいて検量線Laの傾きを補正する(
図11B参照)。これにより、傾きが補正された検量線Lbが得られる。
【0084】
また、ステップS11の第2反力補正ステップにおいて、第2反力補正部122は、第2温度取得ステップによって取得された温度に基づいて反力検出ステップで検出された反力を補正する。これにより、第3被荷重測定部66の反力を用いて血液成分採取中に時間および温度に応じて変化する第1被荷重測定部56の反力をリアルタイムに精度よく算出することができる。
【0085】
その後、ステップS12の内圧算出ステップにおいて、第1荷重検出部88によって検出された荷重から第2反力補正ステップで得られた第1被荷重測定部56の反力を引いた差分荷重と検量線Lbとに基づいて第1被荷重測定部56の内圧(回路内圧)を算出する。
【0086】
この場合、本実施形態に係る血液成分採取システム10Aおよび回路内圧取得方法は、以下の効果を奏する。
【0087】
血液成分採取中(採血動作中または返血動作中)に採取・返還ポンプ100が作動している場合、第1荷重検出部88により、血液が流れる採血ライン42aの内圧(回路内圧)と、第1被荷重測定部56の反力(第1被荷重測定部56の変形に伴う復元力)とを合計した荷重が検出される。すなわち、回路内圧が陽圧である場合、
図12Aに示すように、第1荷重検出部88により検出される荷重(第1被荷重測定部56からの押圧力)は、回路内圧と反力を単純加算することにより得られる。一方、回路内圧が陰圧である場合、
図12Bに示すように、第1荷重検出部88により検出される荷重は、反力から回路内圧の絶対値を引くことにより得られる。
【0088】
しかしながら、
図13に示すように、第1被荷重測定部56の反力は経時的に減少する。
図13では、カセット28をカセット取付部78に装着した時の第1被荷重測定部56の反力を0とした場合の、第1被荷重測定部56の反力の時間変化のイメージを示している。このように第1被荷重測定部56の反力が経時的に減少するのは、第1被荷重測定部56が第1荷重検出部88に押圧される状態が継続することに伴ってクリープ変形するためである。したがって、第1被荷重測定部56の反力として経時的に変化しない固定値を用いると、回路内圧の測定精度が低下する。
【0089】
そこで、血液成分採取システム10Aでは、第1被荷重測定部56の反力と同様に経時的に減少する第3被荷重測定部66の反力をリアルタイムで検出して、回路内圧の算出に用いている。なお、空洞部43は常圧の状態で閉塞されるため、空洞部43の内圧は、常に0mmHgである。このため、第3荷重検出部90により検出される荷重は、第3被荷重測定部66の反力(第3被荷重測定部66の変形に伴う復元力)のみである。
【0090】
また、血液導入が開始されると、採血ライン42aには血液が流通する一方で空洞部43には血液が流通しないため、第1被荷重測定部56の温度が第3被荷重測定部66の温度よりも高くなる。そうすると、第1被荷重測定部56の反力は温度により変化するため、採血ライン42aに血液が流通した状態では、第3荷重検出部90で検出された第3被荷重測定部66の反力は、第1被荷重測定部56の反力と同じにならない。さらに、第1被荷重測定部56の検量線Laは、血液導入に伴う第1被荷重測定部56の温度変化によって変化する。すなわち、内圧算出データは、温度変化によって変化する。
【0091】
そのため、内圧算出部116は、第1被荷重測定部56の内圧を算出する際に、温度による内圧算出データの変化を反映した計算を行っている。これにより、第1被荷重測定部56の内圧(回路内圧)を精度よく測定することができる。なお、回路内圧は、例えば、-300mmHg~500mmHgである。
【0092】
内圧算出データは、被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を含むデータである。内圧算出部116は、温度による被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力の変化を反映した計算を行う。また、内圧算出ステップでは、温度による被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力の変化を反映した計算を行う。これにより、被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧を一層精度よく測定することができる。
【0093】
分離装置(遠心分離装置14)は、被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力に影響する影響情報(温度)を取得する情報取得部(温度取得部106)を備え、内圧算出部116は、情報取得部(温度取得部106)によって取得された影響情報(温度)に基づいて、温度による被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力の変化を反映した計算を行う。
【0094】
回路内圧取得方法では、被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力に影響する影響情報(温度)を取得する情報取得ステップ(第2温度取得ステップ)を行い、内圧算出ステップでは、情報取得ステップ(第2温度取得ステップ)で取得された影響情報(温度)に基づいて、温度による被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力の変化を反映した計算を行う。
【0095】
これにより、第1被荷重測定部56の内圧を算出する際に、温度による第1被荷重測定部56の反力の変化を反映した計算を簡単に行うことができる。
【0096】
生体成分採取用デバイス(カセット28)は、軟質素材で構成され、分離装置(遠心分離装置14)の作動時に生体液(血液)および生体成分(血液成分)が流通しない空洞部43を形成する空洞形成部材53を有する。分離装置(遠心分離装置14)は、デバイス装着状態(カセット装着状態)で、生体成分採取中(血液成分採取中)に時間に応じて変化する被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を得るために、空洞形成部材53の一部を構成する被反力測定部(第3被荷重測定部66)の反力を検出する反力検出部(第3荷重検出部90)と、情報取得部(温度取得部106)によって取得された影響情報(温度)を用いて反力検出部(第3荷重検出部90)で検出された反力を補正する反力補正部(第2反力補正部122)と、を備える。内圧算出部116は、反力補正部(第2反力補正部122)により補正された反力を用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧を算出する。
【0097】
また、回路内圧取得方法は、デバイス装着状態(カセット装着状態)で、生体成分採取中(血液成分採取中)に時間に応じて変化する被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を取得するために、空洞形成部材53の一部を構成する被反力測定部(第3被荷重測定部66)の反力を検出する反力検出ステップと、情報取得ステップ(第2温度取得ステップ)によって取得された影響情報(温度)を用いて反力検出ステップで検出された反力を補正する反力補正ステップと、を行う。内圧算出ステップでは、反力補正ステップにより補正された反力を用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧を算出する。
【0098】
これにより、情報取得部(温度取得部106)によって取得された影響情報(ライン形成部材52の温度)に基づいて反力検出部(第3荷重検出部90)で検出された反力を補正し、その反力を用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧を算出するため、回路内圧を精度よく測定することができる。
【0099】
荷重検出部(第1荷重検出部88)は、デバイス装着状態(カセット装着状態)で、被荷重測定部(第1被荷重測定部56)を押圧している。これにより、簡易な構成により回路内圧を精度よく測定することができる。
【0100】
情報取得部(温度取得部106)によって取得される影響情報は、ライン形成部材52の温度である。これにより、被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を精度よく補正することができる。
【0101】
内圧算出データは、荷重検出部(第1荷重検出部88)によって検出される荷重から被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を引いた差分荷重と被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧との関係を示す検量線Laを含むデータであり、内圧算出部116は、温度による検量線Laの変化を反映した計算を行う。これにより、被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧(回路内圧)をより精度よく測定することができる。
【0102】
分離装置(遠心分離装置14)は、デバイス装着状態(カセット装着状態)で、ライン形成部材52の一部を構成する較正用被荷重測定部(第2被荷重測定部60)にかかる荷重を検出する較正用荷重検出部(第2荷重検出部89)と、デバイス装着状態(カセット装着状態)で、生体成分採取(血液成分採取)が行われる前に、較正用荷重検出部(第2荷重検出部89)によって検出された荷重と較正用内圧算出データとを用いて較正用被荷重測定部(第2被荷重測定部60)の内圧を算出する較正用内圧算出部112と、較正用内圧算出部112によって算出された内圧を用いて内圧算出データを補正する補正部(第1補正部108)と、を備える。較正用内圧算出データは、較正用荷重検出部(第2荷重検出部89)によって検出される荷重と較正用被荷重測定部(第2被荷重測定部60)の内圧との関係を示すデータであり、較正用内圧算出部112は、温度による較正用内圧算出データの変化を反映した計算を行う。これにより、較正用被荷重測定部(第2被荷重測定部60)の内圧を精度よく測定することができる。
【0103】
生体成分採取用デバイス(血液成分採取用カセット28)は、軟質素材で構成され、生体液(血液)または生体成分(血液成分)が流通する生体液ライン(血液ライン42)を形成するライン形成部材52と、ライン形成部材52上の温度が計測される温度被計測部59と、を有する。分離装置(遠心分離装置14)は、生体成分採取用デバイス(血液成分採取用カセット28)が分離装置(遠心分離装置14)に装着されたデバイス装着状態(カセット装着状態)で、ライン形成部材52の一部を構成する被荷重測定部(第1被荷重測定部56)にかかる荷重を検出する荷重検出部(第1荷重検出部88)と、温度被計測部59の温度を取得する温度取得部106と、温度取得部106で取得された温度に基づいて、荷重検出部(第1荷重検出部88)によって検出される荷重と被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧との関係を示す内圧算出データを補正する補正部(第2補正部110)と、デバイス装着状態(カセット装着状態)で、生体液ライン(血液ライン42)に生体液(血液)または生体成分(血液成分)を流通させる生体成分採取中(血液成分採取中)に、荷重検出部(第1荷重検出部88)によって検出された荷重と補正部(第2補正部110)で補正された内圧算出データとを用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧を算出する内圧算出部116と、を備える。これにより、被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧(回路内圧)を精度よく測定することができる。
【0104】
上述した血液成分採取システム10Aでは、カセット28に代えて、
図14に示す血液成分採取用カセット28A(以下、「カセット28A」と略称する。)が採用されてもよい。カセット28Aのカセット本体40Aでは、空洞部43は、採血ライン42aとは独立した流体非連通の流路である。したがって、空洞部43は、常時、採血ライン42aとは独立した空間であり、内部には空気が封入されている。カセット28Aの他の部分は、
図2などに示したカセット28の構成と同様に構成されている。カセット28Aによれば、遠心分離装置14におけるクランプ72d(
図4)を不要にすることができる。したがって、遠心分離装置14の構成を簡素化できるとともに、クランプ72の動作に係る制御を簡素化することが可能となる。
【0105】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る生体成分採取システムの第2実施形態である血液成分採取システム10Bについて説明する。なお、第2実施形態に係る血液成分採取システム10Bにおいて、上述した第1実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。第2実施形態において、上述した第1実施形態と同様の構成については同様の作用効果を奏する。
【0106】
図15に示すように、血液成分採取システム10Bは、採血回路セット12Aと遠心分離装置14Aとを備える。採血回路セット12Aは、血液成分採取用カセット28B(以下、「カセット28B」と略称する。)を有する。採血回路セット12Aのカセット28B以外の構成は、上述した採血回路セット12と同じである。
図16に示すように、カセット28Bのカセット本体40Bは、上述した空洞部43(
図2参照)およびクランプ作用部76d(
図2参照)を有しない。カセット28Bの他の部分は、
図2などに示したカセット28の構成と同様に構成されている。
【0107】
図15に示すように、遠心分離装置14Aは、遠心部18と、カセット取付部78Aと、制御部102Aとを備える。
図17において、カセット取付部78Aは、
図3などに示す第3荷重検出部90、第3貫通孔92c、クランプ72d、クランプ72dが挿入される孔部94およびクランプ72dに対応する突起96が設けられていない。カセット取付部78Aの他の部分は、
図3などに示したカセット取付部78の構成と同様に構成されている。
【0108】
図15において、制御部102Aは、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM、RAM、などを有しており、CPUがROMに記憶されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)として機能する。なお、各種機能実現部は、ハードウエアとしての機能実現器により構成することもできる。
【0109】
制御部102Aは、記憶部104、データ取得部150、温度取得部106(情報取得部)、第1補正部108、第2補正部157、較正用内圧算出部112、較正部114、予測データ算出部152、反力算出部154および内圧算出部156を備える。
【0110】
データ取得部150は、カセット装着状態で、血液ライン42に血液または血液成分を流通させる血液成分採取が行われる前に、第1荷重検出部88により検出された荷重を用いて第1被荷重測定部56の反力の時間変化を示す初期データA(
図19参照)を取得する。
【0111】
予測データ算出部152は、初期データAに基づいて血液成分採取中に時間と第1被荷重測定部56の温度とに応じて変化する第1被荷重測定部56の反力を予測するための予測データB(
図19参照)を算出する。具体的には、予測データ算出部152は、初期データAに基づいて最小二乗法を用いて予測データBを算出する。
【0112】
反力算出部154は、血液成分採取中に、予測データBに基づいて第1被荷重測定部56の反力を算出する。第2補正部157は、温度取得部106で取得された温度に基づいて、内圧算出データを補正する。第2補正部157は、第2反力補正部158と第2検量線補正部124とを有する。第2反力補正部158は、温度取得部106で取得された温度に基づいて反力算出部154で算出された第1被荷重測定部56の反力を補正する。
【0113】
内圧算出部156は、カセット装着状態で、血液成分採取中に、第1荷重検出部88によって検出された荷重と第2補正部157で補正された内圧算出データとを用いて第1被荷重測定部56の内圧(回路内圧)を算出する。換言すれば、内圧算出部156は、温度による内圧算出データの変化を反映した計算を行う。
【0114】
次に、血液成分採取システム10Bを用いた回路内圧取得方法について
図18に示すフローチャートにしたがって説明する。
【0115】
図18に示すように、ステップS21において、制御部102Aは、カセット28Bがカセット取付部78Aに装着されたか否かを判定する。具体的には、制御部102Aは、取付ベース84のカセット装着溝82にカセット28Bが取り付けられた状態で蓋体86を閉じた時にカセット28Bがカセット取付部78Aに装着されたと判定する。
【0116】
カセット28Bがカセット取付部78Aに装着されていないと制御部102Aによって判定された場合(ステップS21:NO)には、カセット取付部78Aにカセット28Bが装着されたと判定されるまでステップS21に留まる。
【0117】
カセット28Bがカセット取付部78Aに装着されたと制御部102Aによって判定された場合(ステップS21:YES)、ステップS22において、制御部102Aは、カセット28Bがカセット取付部78Aに装着されたと制御部102Aが判定した時からの第1経過時間の計測を開始する。続いて、ステップS23において、制御部102Aは、第1経過時間が所定時間t1(
図19参照)に到達したか否かを判定する。ここで、所定時間t1は、任意に設定可能であるが、例えば、5分に設定される。
【0118】
第1経過時間が所定時間t1に到達していないと制御部102Aによって判定された場合(ステップS23:NO)、第1経過時間が所定時間t1に到達したと判定されるまでステップS23に留まる。第1経過時間が所定時間t1に到達したと制御部102Aによって判定された場合(ステップS23:YES)、ステップS24においてデータ取得ステップを行う。
【0119】
図19に示すように、データ取得ステップにおいて、データ取得部150は、血液成分採取が行われる前に、所定のデータ取得時間t2の間、第1荷重検出部88により検出された荷重を用いて第1被荷重測定部56の反力の時間変化を示す初期データAを取得する。ここで、データ取得時間t2は、任意に設定可能であるが、例えば、5分間に設定される。
【0120】
続いて、
図18のステップS25の予測データ算出ステップにおいて、
図19に示すように、予測データ算出部152は、初期データAに基づいて血液成分採取中に時間に応じて変化する第1荷重検出部88の反力を予測するための予測データB(ベースライン)を算出する。具体的には、予測データ算出ステップにおいて、予測データ算出部152は、初期データAに基づいて最小二乗法を用いて得られた結果と温度の関数である補正変数とを用いて予測データBを算出する。補正変数は、実験または解析によりあらかじめ取得することができる。これにより、血液成分採取中に時間に応じて変化する第1被荷重測定部56の反力をリアルタイムに精度よく算出することができる。算出された予測データBは、記憶部104に保存(記憶)される。
【0121】
次に、第1温度取得ステップ(ステップS26)、第1検量線補正ステップ(ステップS27)、第1反力補正ステップ(ステップS28)および較正ステップ(ステップS29)を行う。これらステップS26~ステップS29の処理は、上述した
図10のステップS1~ステップS4の処理と同じである。
【0122】
続いて、
図18のステップS30において、ACD液移送ポンプ98を駆動して、ACD液をカセット28Bの血液ライン42の直前まで満たす上述したプライミングを実施する。その後、ステップS31において、カセット28Bの血液ライン42に血液を導入する。この際、ステップS32において、制御部102Aは、採血ライン42aに対する血液の流通が開始されてからの第2経過時間の計測を開始する。
【0123】
次いで、ステップS33の反力算出ステップにおいて、反力算出部154は、血液成分採取中に、第2経過時間と予測データBとに基づいて第1被荷重測定部56の反力を算出する。
【0124】
続いて、ステップS34の第2温度取得ステップにおいて、温度取得部106は、第2経過時間と時間・温度線(温度算出用データ)とに基づいてライン形成部材52の温度(血液ライン42の壁部の温度)を算出する。すなわち、この第2温度取得ステップ(情報取得ステップ)の処理は、上述した
図10のステップS9の第2温度取得ステップの処理と同じである。
【0125】
そして、ステップS35の第2検量線補正ステップを行う。このステップS35の処理は、上述した
図10のステップS10の処理と同じである。
【0126】
また、ステップS36の第2反力補正ステップにおいて、第2反力補正部158は、第2温度取得ステップによって取得された温度に基づいて反力算出ステップで算出された反力を補正する。これにより、血液成分採取中に時間および温度に応じて変化する第1被荷重測定部56の反力をリアルタイムに精度よく算出することができる。
【0127】
その後、ステップS37の内圧算出ステップにおいて、内圧算出部156は、血液成分採取中に、第1荷重検出部88により検出された荷重から第2反力補正ステップで得られた反力を引いた差分荷重と検量線Lbとに基づいて第1被荷重測定部56の内圧(回路内圧)を算出する。
【0128】
本実施形態において、分離装置(遠心分離装置14A)は、デバイス装着状態(カセット装着状態)で、生体成分採取(血液成分採取)が行われる前に、荷重検出部(第1荷重検出部88)により検出された荷重を用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力の時間変化を示す初期データAを取得するデータ取得部150と、初期データAに基づいて生体成分採取中(血液成分採取中)に時間に応じて変化する被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を予測するための予測データBを算出する予測データ算出部152と、生体成分採取中(血液成分採取中)に、予測データBを用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を算出する反力算出部154と、情報取得部(温度取得部106)によって取得された影響情報(温度)を用いて反力算出部154で算出された反力を補正する反力補正部(第2反力補正部110a)とを有する。内圧算出部156は、反力補正部(第2反力補正部110a)により補正された反力を用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧を算出する。
【0129】
また、回路内圧取得方法は、デバイス装着状態(カセット装着状態)で、生体成分採取(血液成分採取)が行われる前に、荷重検出ステップにより検出された荷重を用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力の時間変化を示す初期データAを取得するデータ取得ステップと、初期データAに基づいて生体成分採取中(血液成分採取中)に時間に応じて変化する被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を予測するための予測データBを算出する予測データ算出ステップと、生体成分採取中(血液成分採取中)に、予測データBを用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を算出する反力算出ステップと、情報取得ステップ(第2温度取得ステップ)によって取得された影響情報(温度)を用いて反力算出ステップで算出された反力を補正する反力補正ステップ(第2反力補正ステップ)と、を行う。内圧算出ステップでは、反力補正ステップ(第2反力補正ステップ)により補正された反力を用いて被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の内圧を算出する。
【0130】
これにより、時間および温度に応じて変化する被荷重測定部(第1被荷重測定部56)の反力を正確に算出することができる。したがって、回路内圧を精度よく測定することができる。
【0131】
予測データ算出部152は、初期データAに基づいて最小二乗法を用いて予測データBを算出している。これにより、予測データBを容易に算出することができる。
【0132】
生体成分採取用デバイスは、カセット28、28A、28Bの形態に限らない。したがって、生体成分採取用デバイスは、採血ライン42aを有する第1軟質チューブ部材と、返血ライン42bを有する第2軟質チューブ部材とを備え、第1軟質チューブ部材と第2軟質チューブ部材の両端部同士がそれぞれコネクタを介して連結されている構成であってもよい。
【0133】
第1荷重検出部88により検出した荷重を用いて回路内圧を算出する際に利用する内圧算出データは、検量線Lに限らず、あらかじめ用意されたテーブルであってもよい。第1荷重検出部88、第2荷重検出部89および第3荷重検出部90は、第1被荷重測定部56、第2被荷重測定部60および第3被荷重測定部66を押圧することなく(非接触で)荷重を測定するように構成されていてもよい。
【0134】
情報取得部で取得される影響情報は、ライン形成部材52の温度に限定されず、生体液ライン(血液ライン42)に生体液が流通されてからの経過時間またはライン形成部材52(第1被荷重測定部56)の硬度であってもよい。
【0135】
本発明の適用範囲は、血液成分採取システム10A、10Bに限らず、流路を介して液体を流動させる種々のシステム、例えば、全血献血システムや患者やドナーから採取され、あるいは、培養された各種細胞の培養装置、あるいは、薬液投与システムなどに適用することができる。したがって、生体成分採取用デバイス(生体成分採取システム)に流す液体は、血液に限らない。
【0136】
本発明に係る生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0137】
10A、10B…血液成分採取システム(生体成分採取システム)
14、14A…遠心分離装置(分離装置)
28、28A、28B…血液成分採取用カセット(生体成分採取用デバイス)
42…血液ライン(生体液ライン) 56…第1被荷重測定部(被荷重測定部)
60…第2被荷重測定部 66…第3被荷重測定部(被反力測定部)
88…第1荷重検出部(荷重検出部) 89…第2荷重検出部
90…第3荷重検出部(反力検出部) 106…温度取得部(情報取得部)
116、156…内圧算出部 118…第1反力補正部
122、158…第2反力補正部
【国際調査報告】