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特表2022-519012ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbO4セラミックス粉体及びその製造方法
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  • 特表-ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbO4セラミックス粉体及びその製造方法 図1
  • 特表-ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbO4セラミックス粉体及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbO4セラミックス粉体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 35/00 20060101AFI20220311BHJP
   C04B 35/495 20060101ALI20220311BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C01G35/00 C
C04B35/495
C01G33/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538498
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 CN2019070804
(87)【国際公開番号】W WO2020133575
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811647659.0
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521285805
【氏名又は名称】昆明理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】馮 晶
(72)【発明者】
【氏名】呉 鵬
(72)【発明者】
【氏名】葛 振華
(72)【発明者】
【氏名】宋 鵬
(72)【発明者】
【氏名】チン リン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュン
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB01
4G048AB05
4G048AC08
4G048AD04
4G048AE05
(57)【要約】
ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体及びその製造方法。ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体であって、化学一般式はRE1-x(Ta/Nb)1-x(Zr/Ce/Ti)2xであり、0<x<1である。セラミックス粉体の結晶構造は直方晶相であり、格子の空間群はC222であり、粒径は10~70μmである。また、セラミックス粉体は球形である。製造時には、原料をボールミリングして、高温固相法を用いて反応させた後、溶剤、有機接着剤と混合してスラリーCを得る。次いで、遠心噴霧した後に乾燥した粉粒体を得、焼結することで、APS技術のセラミックス粉体に対する要求を満たす、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体であって、前記セラミックス粉体の化学一般式はRE1-x(Ta/Nb)1-x(Zr/Ce/Ti)2xであり、0<x<1であり、前記セラミックス粉体の結晶構造は直方晶相であり、格子の空間群はC222であり、粒径は10~70μmであり、前記セラミックス粉体は球形であることを特徴とするジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体。
【請求項2】
REはSc、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Yb、Luのうちの1種又は複数種の混合であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体。
【請求項3】
RE:(Ta/Nb):(Zr/Ce/Ti)のモル比が(1-x):(1-x):2xのRE粉末、Ta粉末/Nb粉末、ドーパント(ZrO粉末/CeO粉末/TiO粉末)を秤量して溶剤中に加え、混合溶液を形成し、混合溶液を、ボールミルを用いて、ボールミリング時間10h以上、ボールミル回転速度300r/min以上でボールミリングし、乾燥を経て、乾燥した粉末Aを得るステップ1と、
ステップ1で得られた粉末Aを反応温度1500~1800℃、反応時間6~20hで高温固相反応させ、成分がRE1-x(Ta/Nb)1-x(Zr/Ce/Ti)2xの粉末Bを得るステップ2と、
ステップ2で得られた粉末Bを溶剤、有機接着剤と混合してスラリーCを得、前記スラリーCにおける粉末Bの質量百分率は10~40%、有機接着剤の質量百分率は0.1~3%、残りは溶剤であり、400~800℃の温度下、遠心速度8000~9000r/minでスラリーCを遠心噴霧して乾燥させ、乾燥した粉粒体Dを得るステップ3と、
ステップ3で得られた粉粒体Dを800~1300℃の温度下、焼結時間7~9hで焼結して、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体を作製するステップ4とを含むことを特徴とする請求項2に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ1における乾燥は回転蒸発器を用いて行われ、乾燥温度は40~60℃、回転蒸発時間は2~4hであることを特徴とする請求項3に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ1で得られた粉末A、前記ステップ2で得られた粉末B、前記ステップ4で得られた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体はいずれも、200~500メッシュの篩でふるい分けされることを特徴とする請求項4に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ3において、遠心噴霧温度は600℃、遠心速度は8500r/minであることを特徴とする請求項5に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ1におけるRE粉末、Ta粉末/Nb粉末は、秤量の前に予備乾燥が行われ、予備乾燥温度は400~700℃、乾燥時間は5~8hであることを特徴とする請求項6に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ1において、RE粉末、Ta粉末/Nb粉末の純度は99.9%以上であることを特徴とする請求項7に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ3において、スラリーCにおける粉末Bの質量百分率は25%、有機接着剤の質量百分率は2%であることを特徴とする請求項8に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ4における焼結温度は1200℃、焼結時間は8hであることを特徴とする請求項9に記載のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックス粉体製造分野に属し、具体的には、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遮熱コーティング材料は主に航空エンジン工業で応用されており、低熱伝導率、高熱膨張係数、焼結防止、良好な高温安定性などの利点を有している。主に、断熱、酸化防止、粒子の衝突に効果的に抵抗して航空エンジンの高温領域部品の基板を保護するという機能を発揮する。
【0003】
YSZ(イットリア安定化ジルコニア)は現在、最も広く研究及び応用されている遮熱コーティングである。しかし、1200℃以上のとき、YSZは相転移が発生してコーティング効力を失うため、研究者はYSZに代わることができる遮熱コーティングを探さなければならなかった。2007年、ハーバード大学のClarke教授の研究グループはカリフォルニア大学サンタバーバラ分校のLevi教授らとともに、新型遮熱コーティング材料として有望なタンタル酸イットリウム(YTaO)強弾性体を提供した。しかし、希土類タンタル酸塩に関する研究は主に、結晶構造と発光性能などの分野における理論計算に集中している。2016年、Wangらは固相反応法によって緻密な希土類タンタル酸塩ブロック材料を作製し、熱伝導率がYSZ材料よりも非常に低くなるという結論を提供した。また、114型RETa/NbOの化合物中に四価イオンをドープすることで、基板材料の熱伝導率を更に低減でき、基板材料の熱膨張係数を更に向上させられることなどを示す研究もある。研究者による多数の研究と実験結果は、希土類タンタル酸塩の遮熱コーティングにおける応用に理論的基礎を提供した。
【0004】
大気プラズマ溶射法(APS)及び電子ビーム物理気相堆積法(EBPVD)の技術は現在、工業上の遮熱コーティング材料製造において一般的な製造技術である。EBPVDは柱状結晶構造の遮熱コーティングの製造に多く用いられ、APS技術はラメラ構造の遮熱コーティングの製造に多く用いられており、コーティングは緊密で気孔率が低い。しかし、APS技術は粉体に対する要求が多く、粉体は一定の密度を有していること、有機接着剤は適量であること、粉体の形状、一定の粒径分布を有していることなどが含まれる。粒径分布においては一般的に10~200μmの範囲内でなければならず、粉体の形状は球形又は略球形でなければならない。現在、APSプロセスを満たす、ドープされた希土類タンタル酸塩セラミックス粉体を製造できるプロセスはまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体及びその製造方法を提供することにより、APS技術におけるセラミックス粉体に対する要求を満たすこと、且つ、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体を合金基板上に溶射した後、熱伝導を低減する機能を発揮することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を実現するために、本発明は基礎的技術方案として、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体を提供する。当該セラミックス粉体の化学一般式はRE1-x(Ta/Nb)1-x(Zr/Ce/Ti)2xであり、0<x<1である。セラミックス粉体の結晶構造は直方晶相であり、格子の空間群はC222であり、粒径は10~70μmである。また、セラミックス粉体は球形である。
【0007】
本技術方案の有益な効果は以下のとおりである。
【0008】
1、本基礎的技術方案において、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の粒径は10~70μmである。一方では、このような粒径分布はAPS溶射技術における粉体への要求を満たし、粉体の粒径が大きすぎるためにスプレーガンのノズルを塞いでしまって溶射が失敗するという問題を引き起こすことはない。他方では、粉体の粒径が小さすぎるために粉体の質量が小さくなり、粉末がスプレーガンのプラズマ熱線の外面に存在して中央部に入っていかないということもない。このような粉末は長時間の加熱作用下で直接揮発してしまい、溶射の失敗を引き起こす。
【0009】
2、本基礎的技術方案において、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体は球形である。このような粉体は表面が滑らかであることから粉体の流動性が優れている。これによりAPS溶射技術の要求を満たし、更に、質の高い、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩コーティングも得られる。
【0010】
3、本基礎的技術方案において、RETa/NbOの化合物中に四価イオン(Zr4+、Ce4+又はTi4+)をドープすることで、基板の熱伝導率を更に低減でき、基板の熱膨張係数を更に向上させることが可能になる。
【0011】
更に、REはSc、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Yb、Luのうちの1種又は複数種の混合である。
【0012】
有益な効果としては、これら複数種又は複数種を混合した希土類元素を用いた場合、得られる希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体は粒径が均一であることが、発明者の実験によって検証された。
【0013】
本発明はまた、別の基礎的方案として、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法を提供する。当該製造方法は、以下のステップを含むことを特徴とする。
【0014】
ステップ1については以下の通りである。
【0015】
RE:(Ta/Nb):(Zr/Ce/Ti)のモル比が(1-x):(1-x):2xのRE粉末、Ta粉末/Nb粉末、ドーパント(ZrO粉末/CeO粉末/TiO粉末)を秤量して溶剤中に加え、混合溶液を形成する。次いで、混合溶液をボールミルでボールミリングする。ボールミリング時間は10h以上、ボールミルの回転速度は300r/min以上である。乾燥を経て、乾燥した粉末Aを得る。
【0016】
ステップ2については以下の通りである。
【0017】
ステップ1で得られた粉末Aを高温固相反応させる。反応温度は1500~1800℃、反応時間は6~20hである。その後、成分がRE1-x(Ta/Nb)1-x(Zr/Ce/Ti)2xの粉末Bを得る。
【0018】
ステップ3については以下の通りである。
【0019】
ステップ2で得られた粉末Bを溶剤、有機接着剤と混合してスラリーCを得る。前記スラリーCにおける粉末Bの質量百分率は10~40%、有機接着剤の質量百分率は0.1~3%、残りは溶剤である。400~800℃の温度下でスラリーCを遠心噴霧することで乾燥させることができる。遠心速度は8000~9000r/minである。これにより、乾燥した粉粒体Dを得る。
【0020】
ステップ4については以下の通りである。
【0021】
ステップ3で得られた粉粒体Dを800~1300℃の温度下で焼結する。焼結時間は7~9hである。その後、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体が作製される。
【発明の効果】
【0022】
本技術方案の有益な効果は以下のとおりである。
【0023】
1、ステップ1~ステップ4のプロセスで製造し、粒径が10~70μmのジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩(RETaO/RENbO)セラミックス粉体を得ることで、APS溶射技術の要求を満たし、更に、希土類タンタル/ニオブ酸塩(RETaO/RENbO)セラミックス粉体を遮熱コーティングとして使用することを実現する。
【0024】
2、ステップ1及びステップ2を用いて目的相RE1-x(Ta/Nb)1-x(Zr/Ce/Ti)2xセラミックス粉末を得ることができる。
【0025】
3、ステップ3において、遠心噴霧方式を用いて作製したスラリーCを乾燥させるが、有機接着剤は、目的相RE1-x(Ta/Nb)1-x(Zr/Ce/Ti)2xセラミックス粉末中の微細な粉末顆粒を凝集させるためである。遠心噴霧乾燥の原理は、スラリーCが高速回転する噴霧ディスクに供給されて、極めて小さな液滴に霧化される。スラリーCの表面積が大幅に増加し、熱空気と接触して水分が即時に蒸発することで、極めて短い時間内に乾燥させて略球形の粉末を得ることができる。
【0026】
4、ステップ4の焼結は、ステップ3で得られた粉粒体Dに一定の結合強度、一定の密度を形成するためのものであり、更には球形状を形成する。
【0027】
更に、前記ステップ1における乾燥は回転蒸発器を用いて行われる。乾燥温度は40~60℃、回転蒸発時間は2~4hである。
【0028】
有益な効果としては、回転蒸発器を用いて乾燥を行うことで、乾燥時間が短くなり、且つ回転の過程で粉体が十分に乾燥されることが挙げられる。
【0029】
更に、前記ステップ1で得られた粉末A、前記ステップ2で得られた粉末B、前記ステップ4で得られた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体はいずれも、200~500メッシュの篩でふるい分けされる。
【0030】
有益な効果としては、各ステップで得られた粉体をふるい分けすることで、顆粒が大きな粉末が発生することを回避できることが挙げられる。焼結ステップを例に挙げると、焼結の過程でブロックが発生する可能性があるため、ふるい分けを行うことでこれらのブロックを除去することができる。
【0031】
更に、前記ステップ3において、遠心噴霧温度は600℃、遠心速度は8500r/minである。
【0032】
有益な効果としては、当該パラメータでは得られる粉体の粒径は均一であり、且ついずれも球形状を呈していることが、発明者の実験によって検証された。
【0033】
更に、前記ステップ1におけるRE粉末、Ta粉末/Nb粉末は、秤量の前に予備乾燥が行われる。予備乾燥温度は400~700℃、乾燥時間は5~8hである。
【0034】
有益な効果としては、予備乾燥は前駆粉体中の水分含有量を減少させて、水分が正確な秤量に影響を与えることを抑えられることが挙げられる。
【0035】
更に、前記ステップ1において、RE粉末、Ta粉末/Nb粉末の純度は99.9%以上である。
【0036】
有益な効果としては、純度が高い前駆粉体を用いることで入り込む不純物元素を減らし、不純物が粉体製造に好ましくない影響を与えることを抑えられることが挙げられる。
【0037】
更に、前記ステップ3において、スラリーCにおける粉末Bの質量百分率は25%、有機接着剤の質量百分率は2%である。
【0038】
有益な効果としては、当該パラメータでは、目的相RETa/NbO粉末中の微細な粉末顆粒を凝集する効果を高めることができることが、発明者の実験によって検証された。
【0039】
更に、前記ステップ4における焼結温度は1200℃、焼結時間は8hである。
【0040】
有益な効果としては、当該パラメータでは、粉粒体Dの結合強度が高まり、密度が高まり、また球形状を形成することができることが、発明者の実験によって検証された。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は本発明における実施例5で作製した、ジルコニアがドープされた希土類タンタル酸塩(Sc0.8Ta0.8Zr0.4)のXRD図である。
図2図2は本発明における実施例5で作製した、ジルコニアがドープされた希土類タンタル酸塩(Sc0.8Ta0.8Zr0.4)のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、具体的な実施形態を通じて更に詳細に説明する。
【0043】
ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体であって、セラミックス粉体の化学一般式はRE1-x(Ta/Nb)1-x(Zr/Ce/Ti)2xであり、0<x<1である。REはSc、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Yb、Luのうちの1種又は複数種の混合であり、セラミックス粉体の結晶構造は直方晶相であり、格子の空間群はC222であり、粒径は10~70μmである。また、セラミックス粉体は球形である。
【0044】
出願人は研究過程において、本発明のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体及びその製造方法について多数の実験を行った。ここではその中の12組の実験について説明を行う。ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体及びその製造方法における実施例1~12の各パラメータを表1、表2に示す(表1は実施例1~6の具体的なパラメータであり、表2は実施例7~12の具体的なパラメータである)。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
ここでは実施例1を例として、本発明のジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の製造方法について説明を行う。
【0048】
ジルコニア(ZrO)がドープされた希土類タンタル酸塩(RETaO)セラミックス粉体(Sc0.8Ta0.8Zr0.4)の製造方法は、以下の複数のステップを含む。
【0049】
ステップ1については以下の通りである。
【0050】
ジルコニア(ZrO)粉末、希土類酸化物粉末Sc、五酸化タンタル(Ta)粉末を予備乾燥させた。予備乾燥温度は600℃、予備乾燥時間は8hであった。次いで、ジルコニア(ZrO)粉末5.58g、希土類酸化物粉末Sc6.24g、五酸化タンタル(Ta)粉末20gを秤量してエタノール溶剤に加え、混合溶液を得た。混合溶液におけるSc:Ta:Zrのモル比は2:2:1であった。次いで、混合溶液をボールミルで10hボールミリングした。ボールミルの回転速度は300r/minであった。
【0051】
ボールミリング後に得られたスラリーを回転蒸発器(型番N-1200B)で乾燥させた。乾燥温度は60℃、乾燥時間は2hであった。乾燥後の粉末を300メッシュの篩でふるい分け、粉末Aを得た。
【0052】
ステップ2ついては以下の通りである。
【0053】
ステップ1で得られた粉末Aに高温固相反応法を用いて、成分がZrOがドープされたScTaOである粉末Bを作製した。反応温度は1700℃、反応時間は10hであった。次いで、300メッシュの篩で粉末Bをふるい分けした。
【0054】
ステップ3ついては以下の通りである。
【0055】
ステップ2でふるい分けした粉末Bを脱イオン水溶剤、有機接着剤と混合してスラリーCを得た。スラリーCにおける粉末Bの質量百分率は25%、有機接着剤の質量百分率は2%、残りは溶剤であった。有機接着剤はポリビニルアルコール又はアラビアゴムが用いられ、本実施例ではポリビニルアルコールを用いた。次いで、遠心噴霧法を用いてスラリーCを乾燥させた。乾燥時の温度は600℃、遠心速度は8500r/minであった。その後、乾燥した粉粒体Dを得た。
【0056】
ステップ4ついては以下の通りである。
【0057】
ステップ3で得られた粉粒体Dを1200℃の温度下で8h焼結した。次いで、300メッシュの篩で焼結後の粉粒体Dをふるい分け、粒径が10~70μm且つ球形の、ジルコニア(ZrO)がドープされたScTaOセラミックス粉体(Sc0.8Ta0.8Zr0.4)を得た。
【0058】
実施例2~6が実施例1と異なる点は、パラメータの違い及び最後に形成されるセラミックス粉体が異なっていることのみである。
【0059】
実施例1~12においてXRD、SEMによるキャラクタリゼーションを行った。ここでは実施例1を例として、得られた、ジルコニアがドープされた希土類タンタル酸塩セラミックス粉体(Sc0.8Ta0.8Zr0.4)材料のキャラクタリゼーションについて説明を行う。
【0060】
1 XRDによるキャラクタリゼーションについては以下の通りである。
【0061】
X線回折パターンを図1に示す。図1によれば、実施例1で得られた、ジルコニアがドープされた希土類タンタル酸塩セラミックス粉体(Sc0.8Ta0.8Zr0.4)は直方晶相であり、不純物相はなく、格子の空間群はC222である。また、実施例2~12で得られた、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体はいずれも直方晶相であり、不純物相はなく、格子の空間群はいずれもC222であった。
【0062】
2 SEMによるキャラクタリゼーションについては以下の通りである。
【0063】
実施例1で調製した、ジルコニアがドープされた希土類タンタル酸塩セラミックス粉体(Sc0.8Ta0.8Zr0.4)のSEMパターンを図2に示す。図2によれば、粉体の粒径範囲は10~70μmであり、且つ球形状を呈している。また、実施例2~12で得られた、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体の粒径範囲はいずれも10~70μmであり、且ついずれも球形状を呈していた。
【0064】
比較例3組を挙げて、実施例1~12で得られたセラミックス粉体と比較を行う。
【0065】
比較例1において、実施例1との違いは、遠心噴霧方式を用いずに乾燥させたことである。乾燥温度は800℃、乾燥時間は1.5hであった。最後に得られた粉体の粒径は180~220μmであり、且つ粉体は不規則な形状を呈していた。
【0066】
比較例2において、実施例1との違いは、ボールミリング時間が7hであることである。最後に得られた粉体の平均粒径は200μmよりも大きかった。
【0067】
比較例3において、実施例1との違いは、焼結後にふるい分け処理を行っていないことである。最後に得られた粉体中には粒径が220μmよりも大きいブロックが含まれていた。
【0068】
以上述べたように、本実施例1~12で調製した、ジルコニア/酸化チタン/酸化セリウムがドープされた希土類タンタル/ニオブ酸塩RETa/NbOセラミックス粉体は、粒径が10~70μm内であり、且つ球形状を呈しているため、APS溶射技術における粉体に対する要求に適合している。比較例1~3はいずれも、APS溶射技術に適合するセラミックス粉体を調製できなかった。
【0069】
当業者であれば本発明における技術方案の構想を逸脱しないことを前提に、更に若干の変形や改良を加えることが可能である。また、これらについても本発明による保護の範囲であるとみなすべきであり、これらが本特許の実施による効果及び特許の実用性に影響を及ぼすことはない。
図1
図2
【国際調査報告】