(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】燃焼機関における可変圧縮比を提供する方法及び該方法のための装置
(51)【国際特許分類】
F02D 15/04 20060101AFI20220311BHJP
F02D 15/02 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
F02D15/04 E
F02D15/02 B
F02D15/04 A
F02D15/04 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540555
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 SE2020050075
(87)【国際公開番号】W WO2020159425
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518118437
【氏名又は名称】ヘドマン エリクソン パテント アーベー
【氏名又は名称原語表記】HEDMAN ERICSSON PATENT AB
【住所又は居所原語表記】Staringe Sateri,642 95 Flen,Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ヘドマン、マッツ
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA02
3G092AA12
3G092AB03
3G092DD08
3G092DD09
3G092FA15
(57)【要約】
燃焼室(9)を主ピストン(1)内のピストンボウルによって実質的に形成する燃焼機関における可変圧縮比を提供する方法であって、該ピストンボウルは、最小容積の燃焼室(9)を提供する上/外方位置と、最大容積の燃焼室(9)を提供する下/内方位置との間で、又は圧縮行程前に導入された空気質量に応じて、それらの間の位置で、バネ作用に対して変位可能なセコンダリピストン(3)を含む、方法に関する。本方法は、上記セコンダリピストン(3)を、導入された空気質量が、圧縮行程の終わりに、所定圧力に圧縮されるように適合された実質的に一定のバネ力を有するバネ(5)上に載置して配置する。また、これに対応する装置、及びその装置を含むディーゼル機関にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を主ピストン内のピストンボウルによって実質的に形成する燃焼機関における可変圧縮比を提供する方法であり、前記ピストンボウルは、最小容積の前記燃焼室を提供する上/外方位置と、最大容積の前記燃焼室を提供する下/内方位置との間で、又は圧縮行程前に導入された空気質量に応じて、それらの間の位置で、バネ作用に対して変位可能なセコンダリピストンを含む、方法であって、前記セコンダリピストンを、導入された空気質量が、前記圧縮行程の終わりに、前記セコンダリピストンが前記上/外方位置にあるときと、前記下/内方位置にあるときとで実質的に同じである所定圧力に圧縮されるように適合された実質的に一定のバネ力を有するバネ上に載置して、配置する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バネ力を、作動行程中に、燃料が着火すると、変位可能なピストンを、該ピストンの下端位置へ変位させるように、更に適合する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ディーゼル機関において可変圧縮比を提供し、請求項1に記載の前記方法を実行する装置であって、前記燃焼室をピストンボウルによって実質的に形成し、前記ピストンボウルは、最小容積の前記燃焼室を提供する上/外方位置と、最大容積の前記燃焼室を提供する下/内方位置との間で、又は前記圧縮行程前に導入された空気質量に応じて、それらの間の位置で、バネ作用に対して変位可能なセコンダリピストンを含む、装置であり、前記セコンダリピストンを、導入された空気質量が、前記圧縮行程の終わりに、前記セコンダリピストンが前記上/外方位置にあるときと、前記下/内方位置にあるときとで実質的に同じである所定圧力に圧縮されるように適合された実質的に一定のバネ力を有するバネ上に載置する
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
前記バネ力を、作動行程中に、燃料が着火すると、前記変位可能なピストンを、該ピストンの下端位置へ変位させるように、更に適合する
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の装置を含む
ことを特徴とするディーゼル機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変圧縮比を提供する方法、及び全種類のピストン燃焼機関で効率を高め、更に、ディーゼル機関で酸化窒素の発生を抑制するという目的を有する対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のディーゼル機関の課題は、酸化窒素、所謂NOxの放出を減少させることである。提案された解決手段は、スウェーデン国特許第1500404-7号(特許文献1)に記載されており、該手段では、燃焼室をシリンダヘッド内に配設し、特に、可変圧縮比が可能であることを前提条件としている。提案された解決手段から、燃焼室の大きさを、正確に制御可能にし、その結果、好適な実施形態において、制御自在な吸気弁を介して導入される空気質量に適合させる必要があると読み取れる。可変圧縮比に関する幾つかの提案された解決手段があるが、本発明者が知る限り、そうした解決手段の中で、大きさが可変の燃焼室をピストン内に配設することを伴うものは、知られていない。大きさ的に可変な燃焼室をピストン内に設置することによって、効率が高い解決手段が、全種類のピストン燃焼機関に提供される。燃焼室の実質的な部分が通常ピストン内のボウルとして形成されるディーゼル機関に関して、本発明では、結果的に、ボウルの大きさが可変となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】スウェーデン特許第1500404-7号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、正確に燃焼室を変動させる可能性に関する要件を満たすディーゼル機関における可変圧縮比に対する解決手段を提供すると同時に、原理的に全種類のピストン燃焼機関で使用できる解決手段を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を、本明細書の後に記載される特許請求の範囲で示す特徴的な特性を本発明に提供することによって、達成する。
【0006】
機関制御システムは、例えば、アクセルペダルの位置に基づいて、幾つかの異なる動作、例えば圧縮行程前にどれくらいの空気を導入するか、どれくらいの燃料を導入するか、いつそれを導入するか、及びスウェーデン国特許第1500404-7号(特許文献1)に関しては、最適な効率や、最小限の酸化窒素等を達成するために、燃料室を、どの大きさに調節すべきかも決定する。本発明は、燃焼室をピストン内に設けること、及び燃焼室の大きさを、自動的に調節することを特徴とし、そのため上記スウェーデン国特許とは異なる。
【0007】
ここでは、本発明について、機関制御システムからの決定及び信号伝達後に、燃焼室の大きさをどのように調節し、制御するかを示すだけで、説明する。燃焼室の大きさを調節するための第1の基本は、機関制御システムが決定した空気量を、吸気行程中に導入することである。
【0008】
本発明は、燃焼室を主ピストン内のピストンボウルによって実質的に形成する燃焼機関における可変圧縮比を提供する方法及び装置であって、該ピストンボウルは、最小容積の燃焼室を提供する上/外方位置と、最大容積の燃焼室を提供する下/内方位置との間で、又は圧縮行程前に導入された空気質量に応じて、それらの間の位置で、バネ作用に対して変位可能なセコンダリピストンを含む、方法及び装置に関する。セコンダリピストンを、導入された空気質量が、圧縮行程の終わりに、所定圧力(及び温度)まで圧縮されるように適合した実質的に一定のバネ力を有するバネ上に載置して、配置する。この所定圧力は、2つ以上の機関負荷ポイントで、好適には、上記上/外方位置と上記下/内方位置に対応する機関負荷ポイントで、また好適には、全ての中間機関負荷でも、最も好適には、機関の全負荷範囲内、即ち、0%~100%の負荷で、実質的に同じとする。所定圧力は、実施形態において、機関負荷にかかわらず、実質的に同じとしてもよい。
【0009】
一定のバネ力とは、バネが、実質的に一定だが、必ずしも正確に一定ではなく、しかし、例えば±5%又は±10%内、少なくともバネの意図した作動長/伸張範囲内であり得るバネ力を有すること、即ち、バネが、対応する上/外方位置以下で、対応する下/内方位置以上に対応する伸張を有する場合を意味すると理解される。好適には、バネは、全機関負荷範囲内で実質的に一定のバネ力を有する。対応する方法で、シリンダにおける実質的に同じ圧力とは、圧力が、実質的に一定であるが、2つ以上の機関負荷ポイント間で、例えば±10%内で幾らか変動があり得ることを意味すると理解される。
【0010】
また、本発明は、本発明による装置を含むディーゼル機関にも関する。
【0011】
燃焼室、つまりピストン内のボウルでは、ボウルの底部を、上端位置と下端位置との間で、上向きに又は下向きに移動できる可動セコンダリピストンによって形成する。この移動は、吸気行程中に導入された空気質量に応じた距離で、圧縮行程中に、受動的に行われる。
【0012】
最小空気質量を導入すると、ボウルの底部は、セコンダリピストンの上端位置になり、最大空気質量を導入すると、ボウルの底部は、圧縮行程の終わりに、セコンダリピストンの下端位置になる。
【0013】
ボウルの底部は、一定のバネ力を有するバネ、例えば機械バネ上に載置されるが、これは基本的に、導入された空気質量が、大きさ的にボウルの作動範囲内で、燃料をディーゼル機関に導入するピストンの上端位置で、常に、同じ端圧及び温度に圧縮されることを意味する。作動範囲外では、端圧及び温度を、導入された空気質量に応じて、低く又は高くしてもよい。
【0014】
燃料が着火する際に、ボウルの底部、つまり可動セコンダリピストンが、下端位置より上方に位置するならば、該ピストンの底部は、圧力上昇により、該ピストンの下端位置まで直進すると共に、結果として、即座に温度が低下し、熱損失が低減し、NOx発生の低減も想定される。作動行程中、ボウルの底部は、上端位置に戻るが、これは、膨張率が、ボウルの大きさを変え得ないようなものであることを意味する。
【0015】
或いは、本発明による方法を、燃焼室を主ピストン内のピストンボウルによって実質的に形成する燃焼機関における可変圧縮比を提供する方法であり、該ピストンボウルは、最小容積の燃焼室を提供する上/外方位置と、最大容積の燃焼室を提供する下/内方位置との間で、又は圧縮行程前に導入された空気質量に応じて、それらの間の位置で、バネ作用に対して変位可能なセコンダリピストンを含む、方法であって、燃焼室の大きさを、導入された空気質量に応じて部分負荷中にバネ作用に対して、調節し、自動的に適合させる、方法として記載してもよい。
【0016】
或いは、本発明による装置を、燃焼機関における可変圧縮比を提供し、本発明による方法を実行する装置であって、燃焼室を主ピストン内のピストンボウルによって実質的に形成する、装置であり、該ピストンボウルは、最小容積の燃焼室を提供する上/外方位置と、最大容積の燃焼室を提供する下/内方位置との間で、又は圧縮行程前に導入された空気質量に応じて、それらの間の位置で、バネ作用に対して変位可能なセコンダリピストンを含む、装置であって、セコンダリピストンの上記位置を、導入された空気質量に応じて達成する、装置として記載してもよい。
【0017】
更なる説明を、図面を用いて、以下に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ディーゼル機関、又は別の種類のピストン機関、例えばオットー機関のピストンの断面図を模式的に示しており、燃焼室の大きさ、つまりピストンボウルの大きさを、少量の空気供給用に、圧縮行程後に機関のピストンを上端位置にした状態で、自動的に調節している。
【
図2】ディーゼル機関、又は別の種類のピストン機関、例えばオットー機関のピストンの断面図を模式的に示しており、燃焼室の大きさ、つまりピストンボウルの大きさを、中量の空気供給用に、圧縮行程後に機関のピストンを上端位置にした状態で、自動的に調節している。
【
図3】ディーゼル機関、又は別の種類のピストン機関、例えばオットー機関のピストンの断面図を模式的に示しており、燃焼室の大きさ、つまりピストンボウルの大きさを、大量の空気供給用に、圧縮行程後に機関のピストンを上端位置にした状態で、自動的に調節している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面では、異なる大きさ、小、中、大の大きさのピストンボウルを有する3実施例を示しているが、それらの間のどの大きさも、圧縮が始まる前にどれ程の空気が供給されるかに応じて、起こり得る。
【0020】
全ての図面は、本発明を原理的に示している。連接棒、ピストンリング及び潤滑油の存在や、分かり切った細部については、図示していない。ピストンボウルの上下縁部を、本発明の範囲において、異なる方法で形成してもよい。
【0021】
図1は、ピストン1に適用された本発明を示している。ピストン1には、従来のピストンボルト2が存在する。更に、ピストン1内に配置された小ピストン3が示されており、この小ピストン3は、室6内に走るピストン軸4に接続されている。ピストン3を、圧縮行程の終わりに圧縮室9内で生じた圧力に適合する一定のバネ力を有する機械バネ5上に載置する。圧縮室は、ここでは、ピストン3が上側位置にある状態、即ち、吸気行程中に小質量の空気を導入した状態で、最小である。
【0022】
図2は、中~大質量の空気を導入した結果生じた、圧縮行程の終わりでの、圧縮室内におけるピストン3の位置を示している。ピストン3に対する機械的止め部7が示されているが、この機械的止め部7は、
図3で具現化されている。
【0023】
図3は、最大の空気質量を導入した結果生じた、圧縮行程の終わりでの、圧縮室内におけるピストン3の位置を示している。ピストン3は、機械的止め部7上に載置されている。
【0024】
本発明は、以上で言及及び記載した実施形態に限定されないが、以下のクレームの範囲内で変形を行ってもよい。
【国際調査報告】