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特表2022-519021送電線上に物体を設置するためのデバイス、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】送電線上に物体を設置するためのデバイス、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 9/00 20060101AFI20220311BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220311BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220311BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220311BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220311BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B64D9/00
B64C39/02
B64C27/08
B64D47/08
H02G1/02
H02G7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021541592
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 NO2020050023
(87)【国際公開番号】W WO2020159384
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】20190126
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521316671
【氏名又は名称】ヘイムダル パワー エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン ブラゲ ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ホランド シグルド カロリウス
(72)【発明者】
【氏名】トルスヴィグ レイン オスムンド
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AA01
5G352AC02
5G352AM02
5G367BB13
(57)【要約】
送電線(2)上に物体(10)を設置するためのドローン(1)であって、- ドローン(1)が物体(10)を搬送できるようにドローン(1)を物体(10)に接続するための接続手段(6)と、- 物体(10)上の第2の係合部材に係合するための第1の係合部材(8)と、- 物体(10)を送電線(2)に確実にロックするための物体上のロック手段(12)を第2の係合部材を介して作動させるように第1の係合部材(8)を動作させるための、動力源と、を備え、ドローン(1)はロック手段(12)に係合する前に送電線(2)に対する物体(10)の1以上の自由度を制限するためのデバイス(14)を更に備える、ドローン(1)、が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線(2)上に物体(10)を設置するためのドローン(1)であって、
- 前記ドローン(1)が前記物体(10)を搬送できるように前記ドローン(1)を前記物体(10)に接続するための接続手段(6)と、
- 前記物体(10)上の第2の係合部材に係合するための第1の係合部材(8)と、
- 前記物体を前記送電線(2)に確実にロックするための前記物体(10)上のロック手段(12)を前記第2の係合部材を介して作動させるように前記第1の係合部材(8)を動作させるための、動力源と、を備え、
前記ドローン(1)は、前記ロック手段(12)に係合する前に前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するためのデバイス(14)を更に備えることを特徴とする、ドローン。
【請求項2】
請求項1に記載のドローン(1)であって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)は、前記ドローン(1)の位置とは無関係にアイドル位置から作動位置へと移動するように適合されていることを特徴とする、ドローン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドローン(1)であって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)は、前記ロック手段(12)に係合する前に前記送電線(2)に対する前記物体(10)の全6自由度を制限するように適合されていることを特徴とする、ドローン。
【請求項4】
請求項2または3に記載のドローン(1)であって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)は2つのアーム対(16)を備え、前記アーム対はそれらの間に水平方向に距離が空いており、前記アーム対(16)の各アーム(16a、b)は前記送電線(2)に向かって個別に回転可能であり、このことにより各アーム対(16)は前記ロック手段(12)を作動させる前にそれらの間で前記送電線(2)を包囲するように適合されていることを特徴とする、ドローン。
【請求項5】
請求項2または3に記載のドローン(1)であって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)は1つのクランプ対(24)を備え、前記クランプはそれらの間に水平方向に距離が空いており、前記1つのクランプ対(24)の各クランプは、保持部材(26)が解放されると垂直方向に移動して、前記ロック手段(12)を作動させる前に前記送電線(2)を包囲するように適合されていることを特徴とする、ドローン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のドローン(1)であって、前記ドローン(1)はカメラを備えることを特徴とする、ドローン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のドローン(1)であって、前記ドローン(1)は、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)に対する前記送電線(2)の位置を検知するための近接センサ(18)を備えることを特徴とする、ドローン。
【請求項8】
請求項7に記載のドローン(1)であって、前記ドローン(1)は、前記近接センサ(18)から受信した信号に基づいて前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)を作動させるように適合されている制御ユニットを更に備えることを特徴とする、ドローン。
【請求項9】
送電線(2)上に設置される物体(10)であって、前記物体は前記物体(10)を前記送電線(2)に確実にロックするためのロック手段(12)を備え、前記ロック手段(12)は、前記ロック手段(12)を作動させるために前記ドローン(1)上の前記第1の係合部材(8)が係合する第2の係合部材を更に備えることを特徴とする、物体。
【請求項10】
請求項9に記載の物体(10)であって、前記物体(10)は、以下のパラメータ:
- 電流、
- 温度、
- 前記線のサグ/張力(積雪荷重を含む)、
- 振動、
- 線のギャロッピング、および
- コロナ
のうちの1つ以上などの、前記送電線(2)の状態を監視するための電子デバイスであることを特徴とする、物体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の物体(10)であって、前記物体(10)は、前記ロック手段(12)を手動で作動させるためにホットスティックが係合するように適合されている、前記第2の係合部材とは別個の第3の係合部材(36)を更に備えることを特徴とする、物体。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載の物体(10)であって、前記物体(10)は実質的に球状の形態を有することを特徴とする、物体。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか1項に記載のドローン(1)と請求項9から12のいずれか1項に記載の物体(10)とを備え、前記物体(10)は前記接続手段(6)によって前記ドローン(1)に接続されることを特徴とする、ドローン組立体(100)。
【請求項14】
送電線(2)上に物体(10)を設置するための方法であって、
- 前記物体(10)をドローン(1)に接続するステップと、
- 前記物体(10)を搬送する前記ドローン(1)を前記送電線(2)に向けて飛行させるステップと、
- 前記物体(10)を前記送電線(2)に対して、前記送電線(2)が前記物体(10)の凹部もしくはポケット内にまたは2つの半部(10a、b)の間に受け入れられるように位置決めするステップと、
- 前記凹部もしくはポケットを閉じることによってまたは前記2つの半部(10a、b)を1つに合わせることによって、前記物体(10)を前記送電線(20)にロックするステップと、
- 前記ドローン(1)を前記物体(10)から接続解除するステップと、
- 前記ドローン(1)を前記送電線(2)から離れるように飛行させるステップと、を含む方法において、前記物体(10)を前記送電線(2)にロックする前記ステップの前に、
- 前記ドローン(1)によって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するステップを更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記物体(10)を前記送電線(2)に対して、前記送電線(2)が前記物体(10)の凹部、ポケット内にまたは2つの半部(10a、10b)の間に受け入れられるように位置決めする前記ステップは、カメラ制御を介して前記ドローン(1)を手動操作することに少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法であって、前記物体(10)を前記送電線(2)に対して、前記送電線(2)が前記物体(10)の凹部、ポケット内にまたは2つの半部(10a、b)の間に受け入れられるように位置決めする前記ステップは、制御ユニットを介して前記ドローン(1)を自動操作することに少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線上に物体を設置するためのドローンに関する。より詳細には、本発明は、送電線上に物体を設置するためのドローンであって、ドローンが物体を搬送できるようにドローンを物体に接続するための接続手段と、物体上の第2の係合部材に係合するための第1の係合部材と、物体を送電線にロックするための物体上のロック手段を第2の係合部材を介して作動させるように第1の係合部材を動作させるための、動力源と、を備える、ドローンに関する。本発明は更に、送電線上に設置される物体、かかるドローンおよびかかる物体を備えるドローン組立体、ならびに送電線上に物体を設置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線上への物体の設置は、アクセスの難しいエリアで行われる場合が多く、困難であるとともに時間のかかることが知られている。物体は従来から一般に様々なタイプの安全/警告/視認性マーカであって、1機または2機のヘリコプターと、ヘリコプターの飛行および実際の設置工程の実行の両方のための何人かの作業員とによって設置されてきた。
【0003】
近年、一般に無人航空機(UAV)と呼ばれることも多いドローンが、出力の向上ならびに操作性およびバッテリ寿命の改善をはじめとするその性能の改善によって、多くの関心を集めている。これまで有人航空機が必要であったインフラストラクチャの検査および保守作業において、ドローンの使用がますます増加している。
【0004】
送電線に安全マーカを接続できるドローンが、例えば特許文献1で開示されている。このロシア特許では、安全マーカに接続可能であり、安全マーカを送電線へと飛行させ、送電線が安全マーカの凹部内かまたは2つに半裁した安全マーカの間に受け入れられるようにドローンを位置決めし、その後クランプ操作によって安全マーカを送電線に接続するように適合されており、クランプ操作は送電線が凹部内かまたは2つの半部の間にある間にドローンによって実行される、ドローンが開示されている。
【0005】
特許文献2に開示されている解決法の課題は、ドローンによってクランプ操作が実行される前に安全マーカを送電線に対して適正に位置決めするのが困難な場合のあることである。この課題は、強風状況下で送電線上に安全マーカを設置するときに特に顕著になり得る。
【0006】
特許文献3は、送電線に安全マーカを接続する前にドローンを送電線に対して配向するために使用できる受動的ガイドを含むドローンを開示している。
【0007】
安全マーカについては、安全マーカが送電線に確実に接続される限りは、送電線の理想的な中心の位置決めからの小さいずれが許容可能であり得る。しかしながら最近では、送電線上に送電線の状態、例えば電力、温度、電線張力、振動、等を監視するための電子デバイスを設置することが提案されている。送電線を監視するための電子デバイスであって、送電線自体によって誘導的に電力供給されるものも提案されている。そのような電子的監視デバイスではそれらが機能するために、予測可能な適正な位置決めが欠かせない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ロシア特許第2644420号
【特許文献2】ロシア特許第2644420号
【特許文献3】米国特許公開第2016/0023761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、先行技術の欠点のうちの少なくとも1つを改善するかもしくは減少させること、または少なくとも先行技術の有用な代替を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、以下の説明およびそれに続く特許請求の範囲に明記されている特徴によって達成される。
【0011】
本発明は独立特許請求項によって規定される。従属請求項は本発明の有利な実施形態を規定する。
【0012】
「送電線」は本明細書では、実際の導体線材と、架空地線(シールド線、静電ワイヤ、接地線、等)または架空送電線に関連して提供される任意の他の線材と、の両方を意味することに留意されたい。
【0013】
第1の態様では、本発明はより詳細には、送電線上に物体を設置するためのドローンであって、
- ドローンが物体を搬送できるようにドローンを物体に接続するための接続手段と、
- 物体上の第2の係合部材に係合するための第1の係合部材と、
- 物体を送電線にロックするための物体上のロック手段を第2の係合部材を介して作動させるように第1の係合部材を動作させるための、動力源と、を備え、
ドローンはロック手段に係合する前に送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスを更に備える、ドローン、に関する。
【0014】
物体を送電線にロックする前にドローンに送電線に対する物体の1以上の自由度を制限させることによって、ロック工程の信頼性を高めることができ、送電線上への物体の位置決めの精度および予測可能性を高めることができる。「制限する」とは、送電線に対して移動もしくは回転する能力を低下させること、または、送電線に対して移動もしくは回転する能力を完全にロックすることを意味する。この1以上の自由度は、回転自由度および/または並進自由度であり得る。一実施形態では、ドローンは、ロック手段に係合し送電線に物体をロックする前に、送電線に対する物体の全6自由度を制限するように適合されてもよく、この場合、送電線に対する物体の非常に精確な位置決めおよび配向を達成できる。別の実施形態では、ロック手段に係合する前に、物体は依然として送電線に沿ったある程度の軸方向移動(送電線に沿った並進自由度が制限されないかもしくはある程度低減される)、および/または送電線を中心とした回転が可能であってもよく、このとき残りの自由度が制限(低減または完全にロック)されてもよい。他の実施形態では、1以上の自由度が完全にはロックされずに低減されてもよく、このとき他の自由度は完全にロックされてもよい。設置工程中、物体は接続手段を介して、物体がドローンに対して固定された位置および配向を有するように、ドローンに接続されることにも留意すべきである。
【0015】
ロック手段は、ドローン上の動力源から動力供給される第1の係合部材を介して作動する、機械式または液圧式直動アクチュエータであってもよい。単純な実施形態では、ロック手段は、物体の2つの半部を1つに合わせるためのまたは物体上の凹部もしくはポケットを閉じるための直動アクチュエータとして機能するねじであってもよく、これには、ドローン上の単純なトルク工具によって物体を送電線にロックできるという、および、ロック工程が成功しなかった場合または物体の保守が必要な場合に、ロック工程を元に戻せるという利点がある。代替の実施形態では、ロック手段は、物体2つの半部を1つにクランプするようにまたは物体の凹部もしくはポケットを閉じるように適合された付勢部材、例えば、付勢されたばね、ピストン、または類似のものなどであってもよい。付勢部材はドローンから解放可能であってもよい。
【0016】
物体上の第2の係合部材は典型的には、ドローン上の第1の係合部材が第2の係合部材に相補的に嵌合して係合し得る、ねじの頭部、アイ、ナット、ブラケット、または任意の他の手段であり得る。ある特定の実施形態では、第1の係合部材は内部に六角形形状の部分を有する箱スパナであってもよく、一方、第2の係合部材は相補的に嵌合するナット形状のねじの頭部であってもよい。
【0017】
一実施形態では、1以上の自由度を制限するためのデバイスは、アイドル位置から作動位置へと移動するように適合されてもよく、この場合デバイスは、ドローンから独立的に、送電線に対する物体の1以上の自由度を制限する。このことは、1以上の自由度を制限するためのデバイスが作動位置へと移動される間、ドローンを送電線に対して固定された位置に維持できることを示唆しており、このことによって、ドローンの位置決めおよび案内ならびに続く送電線への物体のロックが簡単になる。物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスは、1つ以上の操作可能なアームおよび/またはクランプ等を含んでもよく、これらは、デバイスが送電線に係合する作動位置へと移動され得る。
【0018】
ある特定の実施形態では、送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスは2つのアーム対を備えることができ、アーム対はそれらの間に水平方向に距離が空いており、アーム対の各アームは送電線に係合するように個別に回転可能であって、このことにより各アーム対はロック手段を作動させる前にそれらの間で送電線を保持または隔離するように適合されている。アームがそれらの「作動」/制限位置へと回転されると、送電線は典型的にはアームと物体の表面の間で隔離または保持されることになる。個別に回転可能なアームを使用することによって、ロック手段に係合する前に送電線を保持/隔離するための単純かつ丈夫な機構が得られる。1つのアーム対の間の水平距離によってまた、物体が送電線を含む水平面内で回転する能力が制限されることも保証される。好ましい実施形態では、1以上の自由度を制限するためのデバイスは、送電線が物体の空間的中心を通って延びるようにおよびロック手段に係合した後で送電線が物体の中心にロックされるように、送電線を物体の中心位置で保持/隔離するように適合され得る。一実施形態では、物体は実質的に球状の形態を有してもよく、送電線はその球の中心に対称にロックされてもよい。
【0019】
1以上の自由度を制限するためのデバイスへの動力供給は、第1の係合部材と同じ動力源によって行われても別個の動力源によって行われてもよい。回転可能なアームは、上述した動力源によって動力供給され、作業員による遠隔制御でまたは制御ユニットを介して自律的に制御される、小型のサーボモータによって駆動され得る。以下で開示するようなより単純な実施形態では、1以上の自由度を制限するためのデバイスは、別個の動力源無しで動作可能な純粋に機械なものであり得ることに留意されたい。
【0020】
代替の実施形態では、送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスは1つのクランプ対を備えることができ、クランプはそれらの間に水平方向に距離が空いており、1つのクランプ対の各クランプは、保持部材が解放されると垂直方向下向きまたは上向きに移動して、ロック手段を作動させる前に送電線に係合または送電線を隔離するように適合されている。クランプは、解放されると単純にそれ自体の重量によって移動するように付勢、または移動するように適合され得る。付勢は荷重をかけたばね、ピストン、または類似のものによって行ってもよく、また保持部材は、付勢部材を押さえておき最終的にクランプを解放して送電線のロックを実行するように適合された、ピン、フック、ジョー、または任意の他のデバイスであってもよい。解放は、保持部材が送電線と物理的に接触することによって機械的に実行されてもよい。より洗練された実施形態では、保持部材は、作業員または制御ユニットから電気制御信号を受信すると付勢部材を解放するように適合された、電磁石などの電磁デバイスであり得る。以下で検討するように、制御信号は手動で実施されてもよく、または制御信号は、閉制御ループ中の1つ以上のセンサからのデータに基づいていてもよい。
【0021】
一実施形態では、ドローンは、カメラが捕捉した画像に基づく、作業員によるドローンの制御および送電線に対する位置決め、ならびに/または、ドローンの自動化された制御を可能にする、カメラを備えてもよい。送電線を物体に対して適正に位置決めするためのドローンの実際の精密な位置決めは、カメラ操作を介して完全に手動で行われてもよく、またはこの位置決めは、完全にもしくは部分的に、カメラおよび/もしくは他のセンサからの入力を介したドローンの自律ソフトウェア制御に基づいていてもよい。一実施形態では、ドローンを送電線まで飛行させる大まかな操作は作業員が行ってもよく、一方、ドローンおよび物体の精密な位置決めは、カメラによって送電線を認識するように、ならびに送電線に対する物体の自由度を制限するためのデバイスに係合する前におよび送電線に物体をロックする前に、物体が送電線に対して適正に位置決めおよび配向されていることを保証するように適合された制御アルゴリズムを与えられた、制御ユニットが行ってもよい。カメラはスペクトルの可視部分で動作させても赤外などの非可視部分で動作させてもよい。
【0022】
加えて、または代替として、ドローンは、送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスに対する送電線の位置を検知するための近接センサを備えてもよい。このことは、送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスが、物体が適正な位置および/または配向となるまでは完全には係合/作動されないことを保証するために、特に有用であり得る。一実施形態では、1以上の自由度を制限するためのデバイスが上で検討したような2つのアーム対を備える場合、一方または両方のアーム対の一方のアーム上に送電線の接近を検知するための近接センサを設けてもよく、既に係合していて垂直方向に延びていてもよい一方のアームに送電線が近接しているときだけ、そのアーム対のアームの他方のアームを、アーム間で送電線が包囲されるように係合させることができる。近接センサは、送電線の接近を検知するように適合された任意のセンサであり得る。単純な実施形態では、近接センサはマイクロスイッチであってもよく、これは送電線が物理的に接触すると、1以上の自由度を制限するためのデバイスを作動させる。別の実施形態では、近接センサは、圧力、温度、電気抵抗、無線周波、または光に基づいて送電線の接近(近距離または直接接触)を検知するように適合されたセンサであってもよく、この場合、光は必ずしも可視である必要はない。
【0023】
一実施形態では、ドローンは、近接センサから受信した信号および/またはカメラから受信した画像に基づいて、送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスを作動させるように適合されている制御ユニットを備えてもよい。制御ユニットにはまた、上で説明したように、物体を備えたドローンを送電線上に自律的に位置決めするための制御アルゴリズムが与えられていてもよく、その場合、物体を送電線に接続する最終段階の手動制御は、ほとんどまたは全く必要ない場合がある。
【0024】
第2の態様では、本発明は、送電線上に設置される物体であって、物体は物体を送電線に確実にロックするためのロック手段を備え、ロック手段は、ロック手段を作動させるためにドローン上の第1の係合部材が係合する第2の係合部材を更に備える、物体、に関する。
【0025】
一実施形態では、ロック手段は、ドローン上の第1の係合部材が物体上の第2の係合部材に係合したときドローンによって操作および作動されるように適合された、ねじであり得る。第1の係合部材はドローンから回転可能であってもよく、この場合、このドローンと物体を組み合わせたシステムは、送電線上で物体をロックするための直動アクチュエータとして機能する。
【0026】
一実施形態では、物体は、以下のパラメータ:
- 電流、
- 温度、
- 線のサグ/張力(積雪荷重を含む)、
- 振動、
- 線のギャロッピング、および
- コロナ
のうちの1つ以上などの、送電線の状態を監視するための電子デバイスであってもよい。
【0027】
好ましくは物体はまた、監視したデータを、別の同様の物体におよび/またはパワーグリッドの状態を監視しその結果受信したデータに基づいてパワーグリッドの性能を最適化するように適合された中央制御ユニットに、記憶するようにおよび/または通信するように適合されてもよい。代替の実施形態では、物体は安全マーカであってもよい。物体はまた、監視用電子デバイスと安全マーカを組み合わせたものであってもよい。
【0028】
代替の実施形態では、物体はまた、ロック手段を手動で作動させるためにホットスティックが係合するように適合されている、やはりロック手段に接続される、第2の係合部材とは別個の第3の係合部材を更に備えてもよい。このことは、作業員が送電線上に物体を設置するまたはそれを保守する必要があり、作業員が同じロック手段をドローンを使用せずに異なる位置から係合させる場合に、有利であり得る。通常は、第3の係合手段は、作業員がそれに下から到達できるように、物体の下側に配設されることになる。第3の係合手段は、相補的な嵌合係合手段を有するホットスティックが係合し得る、ねじの頭部、アイ、ナット、ブラケット、または任意の他の手段であり得る。
【0029】
一実施形態では、物体は実質的に球状であってもよく、このことは空力学的な理由から有益であり得るが、物体はアメリカンフットボールの形状など、任意の幾何形状で形成されてもよい。物体は、1つに合わされて送電線にロックされ得る、本質的に2つの半部として提供され得る。別法として、物体は、中で送電線を所定位置にロックできる、凹部またはポケットを有して形成されてもよい。更に別の実施形態では、物体は、送電線を物体の外面にクランプするようにロックされ得るブラケットを備えてもよい。
【0030】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るドローンを備えるドローン組立体、および、接続手段によってドローンに接続された、本発明の第2の態様に係る物体に関する。
【0031】
第4の態様では、本発明は、送電線上に物体を設置するための方法であって、
- 物体をドローンに接続するステップと、
- 物体を搬送するドローンを送電線に向けて飛行させるステップと、
- 物体を送電線に対して、送電線が物体の凹部もしくはポケット内にまたは物体の2つの半部の間に受け入れられるように位置決めするステップと、
- 凹部もしくはポケットを閉じることによってまたは2つの半部を1つに合わせることによって、物体を送電線にロックするステップと、
- ドローンを物体から接続解除するステップと、
- ドローンを送電線から離れるように飛行させるステップと、を含み、
方法は、物体を送電線にロックするステップの前に、
- ドローンによって、送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するステップを更に含む、方法、に関する。
【0032】
以下では、添付の図面に図示されている好ましい実施形態の例について記載する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図2】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図3】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図4】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図5】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図6】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図7】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図8】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図9】本発明に係るドローンによって送電線上に物体を設置する工程の、様々な段階を示す側面図である。
図10】ドローンを物体に接続および物体から接続解除するための接続手段の詳細を示す、僅かに拡大した斜視図である。
図11】ドローンを物体に接続および物体から接続解除するための接続手段の詳細を示す、僅かに拡大した斜視図である。
図12】ドローンを物体に接続および物体から接続解除するための接続手段の詳細を示す、僅かに拡大した斜視図である。
図13】送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスの、代替の実施形態を示す側面図である。
図14】送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスの、代替の実施形態を示す側面図である。
図15】送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスの、代替の実施形態を示す側面図である。
図16】送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスの、代替の実施形態を示す側面図である。
図17】送電線に対する物体の1以上の自由度を制限するためのデバイスの、代替の実施形態を示す側面図である。
図18】送電線上に設置される物体の代替の実施形態の側面図である。
図19】送電線上に設置される物体の代替の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、参照符号1は送電線上に物体を設置するためのドローンを表すために使用され、参照符号10は送電線上に設置される物体を表すために使用され、参照符号100はかかる物体10に接続されたかかるドローン1を含むドローン組立体を表す。図面では同一または類似の特徴を表すために同一の参照符号を使用する。図面は概略的にかつ単純化して示されており、図中の様々な特徴は実際の縮尺で描かれている場合もそうでない場合もある。
【0035】
ここで、本発明に係るドローン1による送電線2への物体10の設置の様々な段階が示されている、図1図9を参照する。物体10はここでは、実質的に球状の、送電線2の状態を監視するための電子デバイスの形態で示されている。監視用電子機器の詳細および機能性についてはここでは検討しない。物体10に接続されたドローン1は、図1図8に示すように、ドローン組立体100を構成する。ドローン1には、物体上10のねじ7に接続可能な、ブラケットの形態の接続手段6が設けられている。同様の機能性を有するブラケット6が図10図12に更に詳細に示されており、それについては後で検討する。ブラケット6は、ドローン1が物体10を搬送できるように、および、物体10が送電線2に確実に接続されたらドローン1がブラケット6から物体10を解放できるように、ドローン1を単純かつ確実な様式で物体10上のねじ7に接続する。
【0036】
ドローン1は、電気モータ80によってギア81を介して回転可能な、トルク工具の頭部の形態の第1の係合部材8を備える。モータ80は、バッテリの形態の図示されていない電源によって電力供給される。トルク工具8の頭部は、図示されていない六角形形状を内部に有して形成されており、これが、ねじ12の図示されていないナット形状の六角形の頭部の形態の第2の係合部材に、相補的に嵌合する。ねじ12には、物体10の上半部10aにある内ねじに相補的に嵌合する外ねじが設けられている。トルク工具はしたがって単純に箱スパナとして機能する。トルク工具の回転によって、第1の係合部材および第2の係合部材が係合すると、ねじ12が回転することになり、その場合、物体の下半部10bは物体10の上半部10aに向かって直線的に垂直方向上向きに変位されることになるが、その場合、ねじは機械的な直動アクチュエータの形態の単純なロック手段として作用する。物体10の2つの半部10a、bが完全に1つに合わさると、物体10が送電線2に確実にロックされることになる。
【0037】
ロック手段12が係合/作動される前に物体10が送電線2に対して適正な位置および配向にあることを保証するために、ドローン1には、ロック手段12が係合される前に送電線2に対する物体10の1以上の自由度を制限するための、デバイス14が設けられている。図1図9の実施形態では、1以上の自由度を制限するためのデバイス14が2つのアーム対で例示されており、アーム対の各々の各アーム16a、16bは、以下で説明するように、水平な非係合位置と垂直な係合位置の間で個別に回転可能である。アーム16a、16bは、アイドル位置から、アーム16a、16bが送電線2に対する物体10の自由度を制限する作動位置へと移動可能であるので、1以上の自由度を制限するためのデバイスが作動している間、ドローン1を送電線2に対して固定された位置に維持することができる。このことは、もし1以上の自由度を制限するためのデバイスが単純な受動的ガイドまたは類似のものであれば可能ではないと考えられるが、その理由は、その場合には作動中にドローン1を送電線2に向かって降下させる必要があると考えられるからである。図1図9はドローン組立体100を側面図で示しているので、これらの図には2つのアーム対の一方しか示されていないことに留意されたい。ドローン1の他方側には、図示されていない他方のアーム対が対称に設けられている。アームは、作業員からのリモート信号によってまたは上記したような自律制御によって作動されるように適合されている、図示されていない小型のサーボモータによって動作可能である。
【0038】
ドローン組立体100が送電線2に向かって飛行するとき、両アーム16a、bは図1に示すような水平な非係合位置にある。ドローン組立体100が送電線2に接近しつつあるとき、ドローン1上のカメラは送電線を見ている。各アーム対の第1のアーム16aは次いで、図2および図3に示すように、垂直位置へと回転される。アーム対の各々の第1のアーム16aの作動は、ドローン1のカメラが捕捉した生の画像を受信する作業員によって行われてもよく、またはこの作動は、送電線2を認識しこのことによりドローン1が送電線2を越えて物体10を移動させる前に第1のアーム16aを自動的に係合させるように適合されたソフトウェアを備えた制御ユニットによって、自動的に行われてもよい。第1のアーム16aが垂直位置へと回転されると、ドローン1は、図4に示すように、第1のアーム16aが送電線2と接触するように物体10を移動させる。第1のアーム16a同士の間に送電線2に沿った軸方向距離が存在するので、この段階で既に、送電線2に対する物体10の回転自由度は制限されている。物体10が送電線を越えて同じ方向にそれ以上並進移動することもまた防止される。センサはここではマイクロスイッチ18の形態で示されており、送電線2が1つのアーム対の第1のアーム16aと接触したときに検知を行う。マイクロスイッチ18が検知した送電線2の接触に基づいて、1つのアーム対の第2のアーム16bが、図4に示すような垂直位置へとすぐに作動、すなわち回転される。図5では両方のアーム対の両アーム16a、bが係合して垂直方向に延びており、送電線2は各アーム対の2つのアーム16a、bの間で保持されている。この段階において、送電線2の平面内での、すなわち送電線とドローンの中心の間に延びる軸線を中心とした回転移動が、同じ平面内での送電線に対して垂直な並進移動と共に完全にロックされる。それ以外の自由度は制限またはロックされ、その場合の制限の程度は、アーム16a、bと送電線2との間の摩擦接触に依存する。送電線2はいずれの場合も物体10のアーム16a、bの間および上半部10aと下半部10bの間の空間に維持されるので、物体10と送電線2の間の垂直並進移動が制限される。この段階において、ドローン1上のトルク工具8の頭部は、まだ係合していなければ物体上のねじ12の頭部に係合する。次いでトルク工具を作動させて物体10の下半部10bを物体10の上半部10aに向けて移動させるが、その様子が、2つの半部10a、bの間の垂直方向の間隙が小さくなっている図6、および、送電線2が物体10にロックされるように2つの半部10a、bが接触している図7に示されている。示されている実施形態では、送電線2は、概ね球状の形態を有する物体10の中心を通っている。示されている実施形態では、物体10が送電線2に沿って滑走することが、物体10の内面と送電線2の外面の間の摩擦接触に起因して防止される。物体10が送電線2に確実にロックされると、1つのアーム対のアーム16a、bは係脱され、図8に示すようなそれらの水平位置まで回転され得る。
【0039】
アーム16a、bの係脱は、送電線2への物体10のロックの確保を確認した作業員によって、または、物体10が送電線2に確実にロックされたことを認識し次いでこの情報に基づいてアーム16a、bを解放するように適合された、自律型/自動システムによって、行うことができる。アーム16a、bが送電線2から係脱されているとき、示されている実施形態ではブラケットである接続手段6もまた物体10から接続解除され、ドローンは、例えば送電線2に沿った別の位置に設置すべき別の物体10を拾い上げるために、送電線2から飛び去る。
【0040】
図10図12は、ブラケット6と物体10の接続および接続解除を、僅かに拡大し簡略化した図で示す。図10ではブラケット6は、物体上10の1対のねじ7にラッチングされて示されている。ここでもやはり、図面では1つのブラケット6および1対のねじ7しか見えていないが、物体10の反対側で同様のブラケット6が同様の1対のねじ7と係合されることに留意されたい。ドローン1には角度の付いた1対の脚部20が接続されており、この脚部はドローン1からブラケット6まで延びているが、簡潔にするために図10図12のいずれにもドローン1は図示されていない。ドローン1の反対側には図示されていない同様の1対の脚部が接続されており、この脚部は物体10の他方側に接続された図示されていないブラケットまで延びている。ブラケット6はその下側において、ねじ7と係合するように適合されたつめ状部分22を有して形成されている。小型のサーボモータ25は、2つの「つめ」が回転してねじと係合および係脱するよう、つめ状部分22の各側を回転させるように適合されている。ねじとの係合から離れる方へのつめの回転は、作業員からのリモート信号に基づいてまたは自律制御によって開始され得る。ブラケット6の外縁部にある穴23は、図1図9に示すように、回転可能なアーム16a、bのための接続箇所としての役割を果たす。物体10および送電線2からのブラケット6およびアーム16a、bの係脱は、好ましくはサーボモータ25によって同時に実行され得る。図11図12では、つめ状部分22がもはやねじとロック/係合されていないときのブラケット6を見ることができる。図11図12に示すように、ドローン1はこの結果物体10から自由になり、送電線2から飛び去ることができる。
【0041】
図13図17は、送電線2に対する物体10の1以上の自由度を制限するためのデバイス14の別の実施形態を示しており、ここでは、図示されていないドローン1に接続された1対のフォーク形状のクランプ24となっている。ここでもやはり、図にはフォーク形状のクランプ24の一方しか図示されていないが、物体10の他方側には、図示されていない同様のフォーク形状のクランプ24が対称に設けられている。簡潔にするために、これらの図面はドローン1に接続せずに示されている。解放部材はここではつめ状の頂部28を有するアーム26の形態で示されており、実質的に垂直方向に延びている。物体10の2つの半部10a、bの間の垂直方向の間隙を横断して、アームの直線状の下部30が延びている。アーム26のつめ状の頂部28はフォーク形状のクランプ24の相補的な形状の凹部32内へと嵌合し、その結果クランプを保持する、立ち上がって上昇した非係合位置に保持する。アーム30の下側の直線状の部分が送電線2と接触すると、アーム26が送電線2と実質的に平行な回転軸34を中心に回転され、この結果つめ状の頂部28が凹部32の外へと回転されることになり、更にその結果、フォーク形状のクランプ24が垂直方向下向きに自由に移動できるようになる。フォーク形状のクランプ24は、荷重をかけたばねもしくは類似のものによって垂直方向に移動するように付勢され得るか、または、フォーク形状のクランプ24は、単純にそれ自体の重量に基づいて落下し得る。フォーク形状のクランプ24が下向きに移動されて停止すると、送電線2は図15に示すように、フォークの2つの突部の間および物体10の上半部10aと下半部10bの間に「捕捉」される。送電線2が「捕捉」されると、少なくとも並進の2自由度および回転の2自由度が制限されるが、このことは、物体1が送電線2に対して実質的に一定の位置および配向に留まることを示している。物体10は原理的には送電線2を中心に自由に回転するが、ドローン1に接続されればそのような回転は阻止されることになる。実際には、この実施形態において制限されない唯一の自由度は送電線2に沿った並進移動であるが、これは通常、送電線2に対する物体の適正な位置決めにとって決定的なものとはならない。フォーク形状のクランプ24を作動させて上述した自由度を制限すると、図1図9を参照して上で検討したように、ロック手段12を作動させることができる。物体10が送電線2にロックされると、フォーク形状のクランプ24は図17に示すように、単純にドローン1を垂直方向上向きに飛行させることによって、送電線2から自由になる。フォーク形状のクランプ24は、アイドル位置から、フォーク形状のクランプ24が送電線2に対する物体10の自由度を制限する作動位置へと移動可能であるので、1以上の自由度を制限するためのデバイスが作動している間、ドローン1を送電線2に対して固定された位置に維持することができる。このことは、もし1以上の自由度を制限するためのデバイスが単純な受動的ガイドまたは類似のものであれば可能ではないと考えられるが、その理由は、その場合には作動中にドローン1を送電線2に向かって降下させる必要があると考えられるからである。
【0042】
物体10の代替の実施形態が、非常に簡略化した図18図19に示されている。簡潔にするために、これらの図面ではドローン1、送電線2、ならびに第1の係合部材および第2の係合部材は図示されていないが、この実施形態の全体的な発想を説明するために、ここではアイ36の形態である、ねじ12の下端部に設けられた第3の係合部材が示されている。ねじ12は物体10の全高を通って延びており、アイ36には下から作業員によっていわゆるホットスティックを介して係合可能であり、これによりドローンを使用しない物体10のサービスおよび保守の実施が可能になる。ホットスティックを使用してアイ36を介してねじ12を回転させて、物体を開きその結果送電線2から自由にすること、および物体を閉じそれを送電線2に再びロックすることができる。
【0043】
上述した実施形態は本発明を制限するのではなく説明するものであること、および、当業者は付属の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく多くの代替の実施形態を設計できるであろうことに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧内に置かれた任意の参照記号は、特許請求の範囲を限定すると解釈すべきではない。動詞「備える(comprise)」およびその活用形の使用は、請求項に述べられた要素またはステップ以外の要素またはステップの存在を排除しない。ある要素の前にある冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、複数のそのような要素の存在を排除しない。
【0044】
特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2020-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線(2)上に物体(10)を設置するためのドローン(1)であって、
- 前記ドローン(1)が前記物体(10)を搬送できるように前記ドローン(1)を前記物体(10)に接続するための接続手段(6)と、
- 前記物体(10)上の第2の係合部材に係合するための第1の係合部材(8)と、
- 前記物体を前記送電線(2)に確実にロックするための前記物体(10)上のロック手段(12)を前記第2の係合部材を介して作動させるように前記第1の係合部材(8)を動作させるための、動力源と、を備え、
前記ドローン(1)は、前記ロック手段(12)に係合する前に前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するためのデバイス(14)を更に備え、
前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)は、前記ドローン(1)の位置とは無関係にアイドル位置から作動位置へと移動するように適合されていることを特徴とする、ドローン。
【請求項2】
請求項1に記載のドローン(1)であって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)は、前記ロック手段(12)に係合する前に前記送電線(2)に対する前記物体(10)の全6自由度を制限するように適合されていることを特徴とする、ドローン。
【請求項3】
請求項1に記載のドローン(1)であって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)は2つのアーム対(16)を備え、前記アーム対はそれらの間に水平方向に距離が空いており、前記アーム対(16)の各アーム(16a、b)は前記送電線(2)に向かって個別に回転可能であり、このことにより各アーム対(16)は前記ロック手段(12)を作動させる前にそれらの間で前記送電線(2)を包囲するように適合されていることを特徴とする、ドローン。
【請求項4】
請求項1に記載のドローン(1)であって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)は1つのクランプ対(24)を備え、前記クランプはそれらの間に水平方向に距離が空いており、前記1つのクランプ対(24)の各クランプは、保持部材(26)が解放されると垂直方向に移動して、前記ロック手段(12)を作動させる前に前記送電線(2)を包囲するように適合されていることを特徴とする、ドローン。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のドローン(1)であって、前記ドローン(1)はカメラを備えることを特徴とする、ドローン。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載のドローン(1)であって、前記ドローン(1)は、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)に対する前記送電線(2)の位置を検知するための近接センサ(18)を備えることを特徴とする、ドローン。
【請求項7】
請求項に記載のドローン(1)であって、前記ドローン(1)は、前記近接センサ(18)から受信した信号に基づいて前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するための前記デバイス(14)を作動させるように適合されている制御ユニットを更に備えることを特徴とする、ドローン。
【請求項8】
送電線(2)上に設置される物体(10)であって、前記物体は前記物体(10)を前記送電線(2)に確実にロックするためのロック手段(12)を備え、前記ロック手段(12)は、前記ロック手段(12)を作動させるために請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のドローン(1)上の前記第1の係合部材(8)が係合する第2の係合部材を更に備えることを特徴とする、物体。
【請求項9】
請求項に記載の物体(10)であって、前記物体(10)は、以下のパラメータ:
- 電流、
- 温度、
- 前記線のサグ/張力(積雪荷重を含む)、
- 振動、
- 線のギャロッピング、および
- コロナ
のうちの1つ以上などの、前記送電線(2)の状態を監視するための電子デバイスであることを特徴とする、物体。
【請求項10】
請求項またはに記載の物体(10)であって、前記物体(10)は、前記ロック手段(12)を手動で作動させるためにホットスティックが係合するように適合されている、前記第2の係合部材とは別個の第3の係合部材(36)を更に備えることを特徴とする、物体。
【請求項11】
請求項から10のいずれか1項に記載の物体(10)であって、前記物体(10)は実質的に球状の形態を有することを特徴とする、物体。
【請求項12】
請求項1からのいずれか1項に記載のドローン(1)と請求項から1のいずれか1項に記載の物体(10)とを備え、前記物体(10)は前記接続手段(6)によって前記ドローン(1)に接続されることを特徴とする、ドローン組立体(100)。
【請求項13】
送電線(2)上に請求項8から11のいずれか1項に記載の物体(10)を設置するための方法であって、
- 前記物体(10)を請求項1から7のいずれか1項に記載のドローン(1)に接続するステップと、
- 前記物体(10)を搬送する前記ドローン(1)を前記送電線(2)に向けて飛行させるステップと、
- 前記物体(10)を前記送電線(2)に対して、前記送電線(2)が前記物体(10)の凹部もしくはポケット内にまたは2つの半部(10a、b)の間に受け入れられるように位置決めするステップと、
- 前記凹部もしくはポケットを閉じることによってまたは前記2つの半部(10a、b)を1つに合わせることによって、前記物体(10)を前記送電線(20)にロックするステップと、
- 前記ドローン(1)を前記物体(10)から接続解除するステップと、
- 前記ドローン(1)を前記送電線(2)から離れるように飛行させるステップと、を含む方法において、前記物体(10)を前記送電線(2)にロックする前記ステップの前に、
- 前記ドローン(1)によって、前記送電線(2)に対する前記物体(10)の1以上の自由度を制限するステップを更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記物体(10)を前記送電線(2)に対して、前記送電線(2)が前記物体(10)の凹部、ポケット内にまたは2つの半部(10a、10b)の間に受け入れられるように位置決めする前記ステップは、カメラ制御を介して前記ドローン(1)を手動操作することに少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1または1に記載の方法であって、前記物体(10)を前記送電線(2)に対して、前記送電線(2)が前記物体(10)の凹部、ポケット内にまたは2つの半部(10a、b)の間に受け入れられるように位置決めする前記ステップは、制御ユニットを介して前記ドローン(1)を自動操作することに少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、方法。
【国際調査報告】