(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】燃費に関する改善
(51)【国際特許分類】
C10L 1/16 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
C10L1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544330
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020051952
(87)【国際公開番号】W WO2020157017
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】スミス,アラステア・グラハム
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013CB01
(57)【要約】
燃料組成物が導入される、またはその導入が意図されるエンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する目的で、ディーゼル燃料組成物中で粘度増加成分を使用することであって、粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり、VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み、VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、使用。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料組成物が導入される、またはその導入が意図されるエンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する目的のための、ディーゼル燃料組成物中での粘度増加成分の使用であって、前記粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり、前記VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み、前記VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、使用。
【請求項2】
前記VI向上添加剤が、ポリスチレン-ポリイソプレン線状ブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記VI向上添加剤が、前記燃料組成物の総重量を基準として、
(i)0.005%w/w~0.03%w/w、
(ii)0.006%w/w~0.025%w/w、または
(iii)0.007%w/w~0.02%w/w
の濃度で使用される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記VI向上添加剤が、前記燃料組成物の総重量を基準として、
(iv)0.0075%w/w~0.0175%w/w、
(v)0.008%w/w~0.015%w/w、
(vi)0.009%w/w~0.013%w/w
の濃度で使用される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記粘度増加成分が、前記粘度増加成分を添加する前の前記燃料組成物の前記粘度と比較して、
(i)少なくとも0.005mm
2/s、
(ii)0.01mm
2/s~1.0mm
2/s、または
(iii)0.01mm
2/s~0.5mm
2/s
だけ、40℃での前記ディーゼル燃料組成物の動粘度を増加させるのに十分な量で使用される、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記粘度増加成分を含有する前記ディーゼル燃料組成物の40℃での前記動粘度が、
(i)最大4.5mm
2/s、
(ii)2.0mm
2/s~4.0mm
2/s、または
(iii)3.0mm
2/s~3.8mm
2/sの範囲にある、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
2つ以上の粘度増加成分を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
エンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する方法であって、粘度増加成分を含む(ディーゼル)燃料組成物を前記エンジンの燃焼室に導入することを含み、前記粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり、前記VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み、前記VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮点火(ディーゼル)エンジンにおけるディーゼル燃費を改善する方法、特に、燃費を改善するためのディーゼル燃料組成物中での粘度増加成分の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、米国および欧州の現在の排出物規制では、圧縮点火エンジンの排気ガス排出において許容される汚染ガスの許容レベルに厳しい制限が課されている。
【0003】
燃焼プロセスを改善し、かつ不所望な排気ガス排出の生成を削減するための、エンジンおよび燃料の製造業者によって採用されている典型的なアプローチは、何らかの形態の「高度な燃焼」を利用することである。高度な燃焼は、多くの異なる燃焼モードを包含する包括的な用語であり、この用語は、典型的には、以下の特徴のうちの1つ以上を含む:上死点(TDC)のかなり高度な燃料噴射;複数の燃料噴射;大量の排気ガス再循環(EGR);および高い噴射圧力。これらのモードはすべて、通常、燃料・空気の混合を改善し、かつ燃焼温度を下げることによって、NOxおよびすす(微粒子状物質)の非常に低い排出レベルを達成しようとするものである。
【0004】
多くのエンジンはまた、排出物規制によって要求されるレベルまで排気ガスを削減するための何らかの形態の後処理も含む。典型的な後処理は、触媒コンバータ(例えば、NOx排出物を除去するため)および/または微粒子フィルタ(例えば、排気ガス流からすすを除去するため)などのデバイスを含む。
【0005】
エンジンの高度な燃焼プロセスを制御する現在の手段は、NOx生成などの様々なエンジン/燃焼パラメータを監視すること、およびエンジン制御ユニットを使用してエンジンパラメータを調整し、燃焼プロセス中のNOx生成が最小限に抑えられると考えられている一連の条件にエンジンを押し進めることに基づいている。しかしながら、高度な燃焼などの敏感なプロセスを調整することにかかる問題は、特に、これを最小限のNOx生成レベルの方向に押し進める場合(これらの条件下では、燃焼が不安定になる場合がある)に、不完全燃焼が生じ得て、すす/微粒子状物質(PM)の生成が増加し得ることである。したがって、ディーゼルエンジンからの排気ガス排出量は、NOxおよびPM排出量の間の兼ね合いであると見なすことができる。
【0006】
したがって、現代のディーゼル車では、エンジンは、通常、低いNOx排出量および結果的に高いPM排出量を生成するようにセットアップされており、全体的な低排出基準を満たすために、PMトラップを使用して排出物からPMを除去する。このセットアップによって、エンジン効率が低下し、かつ燃料消費量が大幅に増加することが文献で知られている。しかしながら、代替的な排出削減戦略は、はるかにより複雑かつコストがかかるので、重負荷車両でのみ大規模に実装されてきた。実際に、例えば乗用車でNOxの後処理が広く利用できたとしても、PMフィルタの信頼性から、おそらくエンジンのセットアップは、近い将来にわたってほぼ同じままであることが確実になるであろう。
【0007】
しかしながら、高度な燃焼および排気ガス排出の制御は、単に給気およびエンジン制御の問題ではなく、セタン価、密度、および特定の添加剤の存在などの燃料特性の問題でもあると理解されるべきである。よって、開発において、エンジンの排出量は、厳密に指定された参照燃料を参照して測定されるので、エンジンのセットアップは、その参照燃料の特性に合わせて最適化される。このシステムの欠点は、エンジンで使用される燃料の種類の変更が、エンジン性能(例えば、効率の低下)および排出量の両方に重大な影響を与える可能性があることである。
【0008】
例えば、現在の車両後処理技術を促進し、かつ車両の排出量をさらに削減するために、燃料精製所は、硫黄低減技術などの補助システムに投資している。これによって、一般に、より低い密度のディーゼル燃料が利用できるようになった。これらの技術によって提供される柔軟性の向上はまた、精製所が、関連する完全な仕様の下限近くまで燃料密度をさらに削減することによって「エネルギー配分」を最適化することも可能にした。したがって、市場における燃料の密度は、エンジンのキャリブレーションに使用される参照燃料から徐々に離れていった。一部の燃料の特性におけるこのシフトは、特定のエンジンで実際に使用される燃料の種類が重大な影響を与える可能性があることを意味する。
【0009】
さらに、車両のエンジンに噴射される燃料の量は、体積によって大きく制御されるので、燃料の密度が低下すると、エンジンシリンダー内の可燃性燃料の量が減少し、結果的に、変換可能な有効エネルギー量が減少する。これによって、エンジンの排出量が低NOxおよび高PMの方向にさらに移行するが、エンジン効率が低下し、燃料消費量が増加する。NOx排出量においてわずかな利益があるかもしれないが、今では、このセットアップでは、自動車製造業者によって意図され得る燃費と排出物量との最適なバランスがもたらされないと認識されている。
【0010】
上記の操作手順および問題を考慮すると、標準的な精製所燃料を使用するだけでは、燃費と排気ガス排出量との最適なバランスに近づくことは困難である。したがって、エンジンの燃費を改善するための改善された燃料および方法が必要である。
【0011】
WO2012/076653には、燃料組成物が導入される、またはその導入が意図されるエンジンの燃費を改善する目的で、ディーゼル燃料組成物中で粘度増加成分を使用することが開示されている。WO2012/076653には、燃費を改善するためにディーゼル燃料組成物中でSV200を使用することを開示している例がある。SV200とは、ポリスチレン/ポリイソプレン星型ポリマーである。これらの例では、SV200は、1000ppmおよび2000ppmの濃度で使用される。比較的低い濃度で使用可能であるが、それでもかなりの燃費の利益を提供することができる粘度増加成分を見出すことが望ましいであろう。
【0012】
本発明は、従来技術に関連する問題のうちの少なくとも1つを克服または軽減することを目的とする。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の第1の態様では、燃料組成物が導入される、またはその導入が意図されるエンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する目的で、ディーゼル燃料組成物中で粘度増加成分を使用することであって、粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり、VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み、VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、使用が提供される。
【0014】
本発明によると、エンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する方法であって、粘度増加成分を含む(ディーゼル)燃料組成物をエンジンの燃焼室に導入することを含み、粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり、VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み、VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、方法がさらに提供される。
【0015】
驚くべきことに、ディーゼル燃料組成物中での本明細書に定義される線状ブロックコポリマーの使用は、低濃度で使用される場合でも、エンジンにおいて改善された燃費の利益を提供することができると見出された。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、添付の図面によってさらに説明される。
【
図1】「新欧州運転サイクル」(NEDC)を示し、これは、4つの連続した「都市部サイクル」(ECE)および1つの都市外「陸路サイクル」(EUDC)を含む。
【
図2】炭素物質収支によって測定した場合の、投与量125mg/kgでのSV160によってもたらされる燃料消費の利益を示す。
図2に示されるNEDCおよびEUDC全体の利益は、90%の信頼度で統計的に有意であった。
【
図3】コリオリ計によって測定した場合の、投与量125mg/kgでのSV160によってもたらされる燃料消費の利益を示す。
図3に示されるNEDCおよびEUDC全体の利益は、90%の信頼度で統計的に有意であった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
エンジンは、好ましくは、ディーゼルまたは圧縮点火エンジンである。しかしながら、本発明は、ガソリン燃料組成物および対応する非圧縮点火タイプの内燃機関に適用可能であり得るとも想定される。ディーゼルエンジンはまた、ターボチャージャー付きディーゼルエンジンであってもよい。エンジンは、エンジン管理システム(EMS)の制御下にあってもよい。
【0018】
粘度増加成分は、精製所で、または精製所の外で、例えば、販売地点への配送前に、または販売地点で、燃料組成物に添加され得る。
【0019】
本発明はまた、エンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する/増加させる方法に関する。本方法は、粘度増加成分を含む燃料組成物をエンジンの燃焼室に導入することを含む。好ましい燃料組成はディーゼル燃料であり、好ましいエンジンは圧縮点火エンジンである。特に明記しない限り、本発明の使用に関連して記載されているすべての特徴および実施形態が本発明の方法に適用可能であると理解されたい。
【0020】
さらなる別の態様では、本発明は、圧縮点火エンジンおよび/またはそのようなエンジンを動力とする車両を作動する方法に関する。この態様では、本方法は、本明細書において定義される粘度増加成分を含む燃料組成物をエンジンの燃焼室に導入することを含む。
【0021】
特定の用途によると、本発明の使用および/または方法は、他のあらゆる目的のために、例えば、関連する燃料の排出性能を改善するために燃料組成物に導入されることを意図してきた、または意図している、燃料成分または添加剤の添加によって例えば引き起こされ得る燃費の低下を低減または緩和することを目的とし得る。有利なことに、本発明の使用は、粘度増加成分を添加する前の燃料組成物に含まれるディーゼル燃料のものと比較して、最小限の劣化、中立またはより良好な排出性能をもたらす。同様に、本発明の使用および/または方法は、好適には、燃料組成物を動力とするエンジンの性能に、粘度向上成分を添加する前のその性能と比較して最小限の影響を及ぼすか、または悪影響を及ぼさない。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の使用および方法は、所望または所定の燃料基準内にある一方で特定のエンジンにおいて明らかに改善された燃費をもたらす燃料を配合するためのものであり、例えば、燃料組成物は、欧州規格EN 590(2000)、例えば「超低硫黄ディーゼル」に相応するディーゼル燃料であり得る。あるいは、これらの使用および方法は、低容積エネルギーを有する燃料または燃料ブレンドに関連する燃費損失を改善するためのものであり、例えば、スウェーデンクラス1規格に対応するディーゼル燃料を含有する燃料または燃料ブレンドにおいて、より低い車両排出物をもたらす。
【0023】
本発明のさらなる別の態様では、より優れた燃費をエンジンに与える燃料組成物、特に、圧縮点火エンジンで使用するためのディーゼル燃料組成物を調製する方法が提供される。燃料組成物に本明細書において定義されるような粘度増加成分を添加すること、および粘度増加成分を燃料組成物と混合して、選択されたエンジンにおいてより良好な燃費を提供するのに好適な燃料ブレンドを提供すること、を含む方法。
【0024】
本発明の理解を助けるために、本明細書ではいくつかの用語が定義されている。
【0025】
「粘度指数」(またはVI)は、温度による動粘度の変化を測定するために使用される任意単位である。これは、通常、自動車産業の潤滑油の特性評価に使用される。したがって、粘度指数は、液体(または潤滑剤)の粘度が温度の変化と共にどのように変化するかを強調している。通常、液体の粘度は、その温度が上昇するにつれて低下する。多くの潤滑油または燃料の用途では、液体は、広範囲のエンジン条件にわたって、例えば、液体が一般的な環境温度にあるときの始動時にも、また運転中(最大200℃/392°F)にも機能する必要がある。VIが高いほど、温度による粘度の相対的な変化は小さくなる。望ましくは、燃料組成物は、その典型的な作動温度範囲にわたって粘度が大きく変化しない(すなわち、これは、比較的高いVIを有する)。
【0026】
VIスケールに従って粘度を測定する基準温度は、37.8℃および98.9℃(すなわち、100°Fおよび210°F)になるように任意に選択した。しかしながら、典型的には、特に指示がない限り、動粘度の測定は、約40℃および/または約100℃で行われる。便宜上、動粘度は、ASTM D-445またはEN ISO 3104などの当業者に知られている標準化された試験手順を使用して測定される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「粘度増加成分」という用語は、好適な濃度で燃料組成物に添加される場合に、燃料の作動温度範囲内の1つ以上の温度で、その以前の粘度に比べて燃料組成物の粘度を増加させる効果を有する任意の成分を包含する。
【0028】
VI向上剤(粘度調整剤としても知られている)は、流体の粘度をVI向上剤の有用な温度範囲にわたって増加させる添加剤である。有用な作動温度は、好ましくは、エンジン内の燃料組成物の作動温度範囲の少なくとも一部と重なる。
【0029】
VI向上剤は、温度に敏感なポリマー分子である。低温では、分子鎖は収縮するので、流体の粘度に大きな影響を与えない。しかしながら、高温では、鎖が弛緩し、相対的な粘度の増加が生じるものの、実際の粘度は、温度が上昇するにつれてなおも低下するであろう。したがって、VI向上剤の添加は、粘度が低下する速度を止めるのではなく、遅くするのに役立つ。
【0030】
多くの種類および構造のVI向上剤がある。高分子量のポリマーは、増粘剤を作製するのにより良好であるものの、機械的せん断に対する耐性が低下する傾向にある。他方で、低分子量のポリマーは、よりせん断耐性があるものの、より高い温度では粘度を効果的には向上させないので、所望の温度で同じ効果を達成するためにより多い量で使用される場合がある。
【0031】
本明細書で使用される場合、燃料粘度の文脈における「増加」とは、同じまたは同等の条件下で以前に測定された粘度と比較した、何らかの程度の増加を包含する。したがって、この増加は、好適には、粘度増加(または改善)成分または添加剤を組み込む前の燃料組成物の粘度と比較される。あるいは、粘度増加は、他の点では類似している燃料組成物(または同じ燃料組成物のバッチ)と比較して測定することができ、例えば、この燃料組成物は、これに粘度増加成分を添加する前に、内燃機関、特にディーゼルエンジンにおいて使用することが意図されている(例えば、販売されている)。
【0032】
本発明は、例えば、所望の目標粘度を達成するために粘度増加成分を使用して燃料組成物の粘度を調整する(すなわち、増加させる)ことを含み得る。
【0033】
前述のように、粘度増加成分は、同じ条件下で測定した場合に、これが添加される燃料組成物の粘度を増加させるのに十分な量で使用される。動粘度の増加は、40℃または100℃などの任意の好適な温度で測定され得る。便宜上、粘度は40℃で測定される。好適には、粘度増加成分は、少なくとも0.05mm2/s、少なくとも0.1mm2/s、または少なくとも0.2mm2/sだけ粘度を増加させる量で使用される。より好適には、粘度増加は、0.25mm2/s~2.0mm2/s、または0.25mm2/s~1.0mm2/sであり得る。好ましい実施形態では、粘度増加は、0.3mm2/s~0.8mm2/s、例えば、0.32mm2/s~0.67mm2/sである。場合によっては、粘度を、約0.4mm2/s、約0.5mm2/s、約0.6mm2/s、または約0.7mm2/sだけ増加させることが望ましいであろう。
【0034】
同様に、燃費の文脈における「増加」とは、同じまたは同等のエンジンで測定した場合に、粘度増加成分を添加する前の同じ燃料組成物の燃費と比較した、何らかの増加量を包含する。あるいは、燃費の増加は、同じまたは同等のエンジンにおける同じまたは同等の条件下で、類似した燃料組成物と比較して測定することができる。したがって、この増加は、好適には、粘度増加(または)成分または添加剤を組み込む前のエンジンまたは車両の燃費と比較される。
【0035】
燃費の増加は、設定された燃料の量(例えば、L)に対する走行距離(例えば、km)の増加、または同じ条件(例えば、速度、仕事量)下で特定の距離を移動する際の燃料の量または質量の減少として、パーセント増加などの任意の好適な手法で測定および/または報告され得る。例えば、パーセント増加は、少なくとも0.1%、例えば、少なくとも0.2%であり得る。好適には、燃費のパーセント増加は、少なくとも0.25%または少なくとも0.5%である。より好適には、燃費の増加は、少なくとも1.0%、少なくとも2.0%、または少なくとも3.0%である。いくつかの特に好ましい実施形態では、燃費の増加は、少なくとも5.0%またはさらには少なくとも10%である。しかしながら、特に、世界中の車両が1日に使用する燃料の量を考慮した場合、燃費の測定可能な改善によって価値ある利点が提供され得ると理解されるべきである。
【0036】
本発明の燃料組成物が使用されるエンジンは、任意の適切なエンジンであり得る。したがって、燃料がディーゼルまたはバイオディーゼル燃料組成物である場合、エンジンは、ディーゼルまたは圧縮点火エンジンである。同様に、ターボチャージャー付きディーゼルエンジンなどの任意のタイプのディーゼルエンジンを使用することができるが、ただし、同じまたは同等のエンジンを使用して粘度増加成分ありまたはなしでの燃費を測定する。同様に、本発明は、あらゆる車両のエンジンに適用可能である。一般に、本発明は、都市部、都市外、および/または高速道路/フリーウェイ/試験トラック運転条件などの任意の運転条件にも適用可能であるものの、本発明は、特定のエンジンタイプおよび/または特定の運転条件のもとで特に有益であり得る。
【0037】
本発明の文脈において、燃料組成物中での粘度増加成分の「使用」とは、これらの成分を、典型的には1つ以上の燃料成分(典型的にはディーゼルベース燃料)および任意選択的に1つ以上の燃料添加剤とのブレンド(すなわち、物理的混合物)として組成物に組み込むことを意味する。
【0038】
粘度増加成分は、好ましくは、この組成物で運転するべきエンジンに組成物を導入する前に、燃料組成物に組み込まれる。
【0039】
したがって、粘度増加成分は、精製所で燃料組成物またはベース燃料の1つ以上の成分に直接投入(例えば、これらとブレンド)され得る。例えば、これは、好適な燃料成分中で事前に希釈されてもよく、続いて、これは、自動車燃料組成物全体の一部を形成する。
【0040】
あるいは、これは、精製所の下流の自動車燃料組成物に添加され得る。例えば、これは、1つ以上の他の燃料添加剤を含有する添加剤パッケージの一部として添加され得る。これは、場合によっては、精製所で燃料組成を変更することが不都合または不所望であり得るので、特に有利である。例えば、ベース燃料成分のブレンドは、すべての場所では実行可能ではないかもしれないが、比較的低い濃度での燃料添加剤の導入は、燃料貯蔵所で、またはロードタンカー、バージもしくは列車補給点、ディスペンサ、顧客のタンクおよび車両などの他の充填地点でより容易に達成することができる。
【0041】
したがって、本発明の「使用」とは、本発明の利益のうちの1つ(例えば、特定の内燃機関または特定の車両における燃費の増加)を達成するために、自動車燃料組成物中でのその使用についての説明と共に、粘度増加成分を供給することも包含し得る。したがって、粘度増加成分は、燃料添加剤、特にディーゼル燃料添加剤としての使用に好適なおよび/またはそれが意図された配合物の成分として供給され得る。例えば、粘度増加成分または添加剤は、1つ以上の他の燃料添加剤と共に添加剤配合物またはパッケージに組み込まれ得る。1つ以上の燃料添加剤は、当業者に知られているように、清浄剤、防食添加剤、エステル類、ポリアルファオレフィン類、長鎖有機酸、アミンまたはアミド活性中心を含む成分、およびそれらの混合物などの有用な添加剤から選択され得る。
【0042】
その代わりにまたはそれに加えて、本発明の「使用」とは、典型的には燃料組成物をエンジンの燃焼室に導入することによって、粘度増加成分を含有する燃料組成物でエンジンを運転することを含み得る。
【0043】
粘度増加成分
本明細書における使用のための粘度増加成分は、VI向上添加剤である。VI向上添加剤は、例えば、その組成がバッチごとに異なり得る鉱物由来の粘度増加燃料成分(精製所流)とは対照的に、合成的に調製される傾向にあるので、典型的には、明確に定義された構造および品質で入手可能である。VI向上添加剤はまた、潤滑剤における使用に際して広く利用可能でもあり、これらはまた、本発明によって提案される新しい用途にとって魅力的な添加剤となり得る。これらはまた、多くの場合、特に必要な濃度が比較的低いという観点から、鉱物ベースの油などの他の粘度増加成分よりも安価である。
【0044】
本発明による燃料組成物に使用されるVI向上添加剤は、本質的にポリマーである。本明細書における使用のためのVI向上添加剤は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーである。特に好ましいVI向上剤は、スチレンおよびイソプレンに基づく線状コポリマーであり、特に好ましいVI向上剤は、Infineumから市販されているポリスチレン-ポリイソプレン線状ブロックコポリマーであるSV(商標)160である。
【0045】
VI向上添加剤の40℃での動粘度(ASTM D-445またはEN ISO 3104で測定した場合のVK40)は、好適には40mm2/s以上、好ましくは100mm2/s以上、より好ましくは1000mm2/s以上である。15℃でのその密度(ASTM D-4052またはEN ISO 3675)は、好適には600kg/m3以上、好ましくは800kg/m3以上である。その硫黄含有量(ASTM D-2622またはENISO20846)は、好適には1000mg/kg以下、好ましくは350mg/kg以下、より好ましくは10mg/kg以下である。
【0046】
VI向上添加剤は、好適な溶媒、例えば、鉱油またはフィッシャー・トロプシュ由来炭化水素混合物などの油;添加剤が使用されるべき燃料組成物(例えばディーゼル燃料組成物中での使用が意図される場合、軽油または灯油などの中間留出物燃料成分)と適合性のある燃料成分(ここでも、鉱物またはフィッシャー・トロプシュ由来のいずれかであり得る);ポリアルファオレフィン;脂肪酸アルキルエステル(FAAB)、フィッシャー・トロプシュ由来のバイオマス-液体合成生成物、水素化植物油、廃棄物または藻類油またはエタノールのようなアルコールなどのいわゆるバイオ燃料;芳香族溶媒;任意の他の炭化水素または有機溶媒;またはそれらの混合物中に予め溶解され得る。この文脈における使用にとって好ましい溶媒は、鉱油ベースのディーゼル燃料成分および溶媒、ならびに以下で言及される「XtL」成分などのフィッシャー・トロプシュ由来成分である。場合によっては、バイオ燃料溶媒も好ましい。
【0047】
VI向上添加剤は、燃料組成物の総重量を基準として、0.001~0.05%w/wの範囲の濃度で使用される。本発明の利点のうちの1つは、本明細書において定義される特定のVI向上添加剤が、低濃度で使用される場合でも、改善された燃費を提供することができることである。
【0048】
特定の実施形態では、VI向上添加剤は、燃料組成物の総重量を基準として、
(i)0.005%w/w~0.03%w/w、
(ii)0.006%w/w~0.025%w/w、または
(iii)0.007%w/w~0.02w/w
の濃度で使用され得る。
【0049】
VI向上添加剤は、好ましくは、燃料組成物の総重量を基準として、
(i)0.0075%w/w~0.0175%w/w、
(ii)0.008%w/w~0.015%w/w、または
(iii)0.009%w/w~0.013%w/w
の濃度で使用される。
【0050】
いくつかの実施形態では、粘度増加成分は、粘度増加成分を添加する前の燃料組成物の粘度と比較して、燃料組成物の動粘度を、(i)少なくとも0.2mm2/s、(ii)0.25mm2/s~1.0mm2/s、または(iii)0.32mm2/s~0.67mm2/sだけ増加させるのに十分な量で使用される。動粘度は、40℃などの標準条件下で測定される。
【0051】
当然のことながら、燃料組成物の得られるまたは所望の最終的な動粘度は、燃料の所望の特性に従って、ならびに/または国内のもしくは国際的な規制および基準に従って特定され得る。例えば、一実施形態では、粘度増加成分を含むディーゼル燃料組成物の40℃での動粘度は、最大4.5mm2/s、例えば、2.0mm2/s~4.0mm2/s、または3.0mm2/s~3.8mm2/sであり得る。
【0052】
これらの濃度は、VI向上添加剤自体の濃度であり、その有効成分が事前に希釈され得る溶媒(複数可)は考慮しておらず、燃料組成物全体の質量を基準としている。2つ以上のVI向上添加剤の組み合わせが組成物中で使用される場合、同じ濃度範囲が、VI向上添加剤の全体的な組み合わせに適用され得る。量/濃度はppmで表すことも可能であり、この場合、1%w/wは10,000ppmw/wに相当すると理解されたい。
【0053】
本発明の一実施形態によると、2つ以上の粘度増加成分を自動車燃料組成物に使用して、本明細書に記載の本発明の効果のうちの1つ以上を提供することができる。
【0054】
組成物の残りの部分は、例えば、以下により詳細に記載されているように、典型的には、1つ以上の自動車ベース燃料からなり、任意選択的に1つ以上の燃料添加剤と共に構成される。使用されるVI向上添加剤の濃度は、燃料組成物全体の所望の粘度、添加剤を組み込む前の組成物の粘度、添加剤自体の粘度、および/または添加剤が使用される任意の溶媒の粘度のような所望の燃料特徴/特性に依存し得る。本発明によって調製されるディーゼル燃料組成物中に存在するVI向上添加剤、燃料成分(複数可)、および任意の他の成分もしくは添加剤の相対的な割合はまた、密度、排気性能、およびセタン価などの他の所望の特性に依存し得る。燃料組成物全体の密度は、場合によって、特に関連するパラメータであり得る。
【0055】
排出レベルは、European R49、ESC、OICA、またはETC(重負荷エンジンの場合)、またはECE+EUDC、またはMVEG(軽負荷エンジンの場合)の試験サイクルなどの標準試験手順を使用して測定され得る。理想的には、排出性能は、Euro II standard emissions limits(1996)、またはEuro III(2000)、IV(2005)もしくはさらにはV(2008)規格限界に準拠するように構築されたディーゼルエンジンにおいて測定される。
【0056】
使用および方法
粘度指数向上添加剤(VI向上剤とも呼ばれる)は、潤滑剤配合物中での使用についてよく知られており、これらは、より高い温度で粘度を相対的に増加させる(すなわち、粘度の低下を遅らせる)ことによって所望の温度範囲にわたって粘度をできるだけ一定に保つために使用される。これらは、典型的には、礫岩および/またはミセルを形成することができる比較的高分子量の長鎖ポリマー分子に基づく。これらの分子系は高温で膨張するので、相互の動きがさらに制限され、系の粘度が増加する。公知のVI向上剤は、典型的には、潤滑油配合物中に、1~20%w/wの濃度で含まれている。しかしながら、WO01/48120には、これらのタイプの添加剤の一部を、高温でのエンジン始動能力を改善する目的で、燃料組成物、特にディーゼル燃料組成物に使用することが提案されている。US2009/0241882には、加速性能を改善する目的で燃料組成物に使用するための特定のVI向上添加剤が記載されており、この改善は、所定の速度でのエンジン出力、および/またはトルク、および/または車両の牽引力の増加から分かる。WO2012/076653には、燃料組成物が導入される、またはその導入が意図されるエンジンの燃費を改善する目的で、ディーゼル燃料組成物において増粘成分を使用することが開示されている。この文書には、燃費を改善するためのディーゼル燃料組成物中でのSV200の使用を開示している例がある。SV200とは、ポリスチレン/ポリイソプレン星型ポリマーである。これらの例では、SV200は、1000ppmおよび2000ppmの濃度で使用される。
【0057】
今では、特定のVI向上添加剤が、自動車燃料組成物、特にディーゼル燃料組成物の粘度を、比較的低い濃度で使用した場合でも大幅に増加させることができ、またこれによって、この組成物が導入されるエンジンの燃費を改善することができると分かっている。これらの燃費の利益は、都市部、非市街地、および高速道路などの、低速および/または高速でのあらゆるタイプの運転条件のもとで観察され得る。したがって、燃費の利益がいくつかの特定の条件下で他の条件よりも明白になり得るものの、本発明は、特定の運転条件に限定されることはない。
【0058】
同様に、ディーゼル圧縮点火エンジンが好ましいものの、燃費の利益は、特定のタイプのエンジンに限定されることはない。さらに、本発明の利点は、ターボチャージャー付きエンジンおよび非ターボエンジンに適用することができる。
【0059】
したがって、本発明は、内燃機関に導入される燃料によって内燃機関の燃費を改善する効果的な手法を提供することができる。
【0060】
本発明による使用のための粘度増加成分の量は、燃料の種類および/またはエンジンの種類に応じて変化し得て、本発明の利益は、いくつかの条件下で、本発明の利益を観察するのに必要なVI向上剤の量が、典型的な燃料添加剤のレベルなど、驚くほど少なくてもよいことである。また、これによって、燃料調製プロセスのコストおよび複雑性を低減することができる。例えば、その最初の調製時点でベース燃料の含有量を変更するのではなく、精製所の下流で添加剤を組み込むことによって、燃料組成を変更して、燃費を改善することができる。ベース燃料成分のブレンドは、すべての場所では実行可能ではないかもしれないが、比較的低い濃度での燃料添加剤の導入は、燃料貯蔵所で、またはロードタンカー、バージもしくは列車補給点、ディスペンサ、顧客のタンクおよび車両などの他の充填地点でより容易に達成することができる。
【0061】
さらに、比較的低い濃度で使用すべき添加剤は、当然のことながら、数十重量パーセントの濃度で使用される必要のある燃料成分よりもコスト効率よく、輸送、貯蔵、および燃料組成物に導入することができる。
【0062】
比較的低い濃度のVI向上添加剤の使用は、不所望な副作用、例えば、それらが燃料組成物に組み込まれることによって引き起こされる、蒸留または低温流動特性に対する影響を低減するのにも役立つ。
【0063】
本発明の別の態様は、本発明によって調製される燃料組成物をエンジンの燃焼室に導入することを含む、内燃機関および/またはそのようなエンジンを動力とする車両を作動する方法を提供する。燃料組成物は、好ましくは、本発明に関連して記載されている目的のうちの1つ以上のために導入される。したがって、エンジンは、好ましくは、その燃費を改善する目的で、この燃料組成物を用いて作動される。エンジンは、特にディーゼルエンジンであり、またターボチャージャー付きディーゼルエンジンであってもよい。ディーゼルエンジンは、直接噴射式、例えば、ロータリーポンプ、インラインポンプ、ユニットポンプ、電子ユニットインジェクタまたはコモンレール式、または間接噴射式であってもよい。それは、重負荷または軽負荷ディーゼルエンジンであってもよい。例えば、コモンレール式直噴エンジンであってもよい。
【0064】
ディーゼル燃料組成物
VI向上添加剤を含むことから、本発明によって製造された燃料組成物(特にディーゼル燃料組成物)は、好適には、2.0mm2/s以上、2.5mm2/s以上、2.7mm2/s以上、2.8mm2/s以上、または好ましくは2.9mm2/s以上のVK40を有することになる。場合によっては、VK40は、最大4.5mm2/s、最大4.2mm2/s、または最大4.0mm2/sであり得る。有利には、粘度増加成分(VI向上剤など)を含む燃料組成物のVK40は、3.0mm2/s~4.0mm2/s、例えば、3.0mm2/s~3.8mm2/s、3.0mm2/s~3.6mm2/s、または3.0mm2/s~3.3mm2/sの範囲にある。しかしながら、例えば、北極ディーゼル燃料のような例外的な場合には、組成物のVK40は、1.5mm2/sと低くてもよいが、これは、好ましくは、約1.7または2.0mm2/s以上である。本明細書における粘度への言及は、特に明記しない限り、動粘度を意味することが意図されると理解されるべきである。
【0065】
この組成物は、ディーゼル燃料組成物の場合、比較的高い密度、例えば、15℃で830kg/m3以上(ASTM D-4052またはEN ISO 3675)、好ましくは832kg/m3以上、例えば、15℃で832~845kg/m3を有し、これは、現在のEN 590ディーゼル燃料仕様の上限となっている。好ましくは、本明細書の組成物は、15℃で833~837kg/m3の密度を有する。
【0066】
本発明によって調製されるディーゼル燃料組成物は、一般に、圧縮点火(ディーゼル)エンジンでの使用に好適な任意の種類のディーゼル燃料組成物であり得る。これは、VI向上添加剤に加えて、他の標準的なディーゼル燃料成分を含有し得る。例えば、下記の種類のディーゼルベース燃料を主な割合で含んでいてもよい。この文脈において、「主な割合」とは、組成物全体を基準として、少なくとも50%w/w、典型的には少なくとも85%w/wを意味する。より好適には、少なくとも90%w/wまたは少なくとも95%w/w、場合によっては、燃料組成物の少なくとも98%w/wまたは少なくとも99%w/wがディーゼルベース燃料からなる。
【0067】
したがって、VI向上添加剤に加えて、本発明によって調製されるディーゼル燃料組成物は、従来型の1つ以上のディーゼル燃料成分を含み得る。そのような成分は、通常、液体炭化水素中間留出燃料油、例えば石油由来の軽油を含む。一般に、そのような燃料成分は、有機的または合成的に誘導されてもよく、好適には、原油から所望の範囲の留分を蒸留することによって得られる。そのような軽油は、ディーゼル燃料組成物の含有物に好適なレベルまでそれらの硫黄含有量を低減するために、水素化脱硫(hydride-sulphurisation:HDS)装置で処理されてもよい。該燃料成分は、典型的には、グレードおよび用途に応じて、150~410℃または170~370℃の一般的なディーゼル燃料の範囲内の沸点を有する。場合によっては、燃料組成物は、重質炭化水素を分解することによって得られる1つ以上の分解生成物を含む。
【0068】
ディーゼルベース燃料は、フィッシャー・トロプシュ由来のディーゼル燃料成分、典型的には、フィッシャー・トロプシュ由来の軽油からなっていても、またはこれを含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「フィッシャー・トロプシュ由来」という用語は、材料がフィッシャー・トロプシュ縮合プロセスの合成生成物であるか、またはこれから得られることを意味する。したがって、フィッシャー・トロプシュ由来の燃料または燃料成分は、添加された水素を除き、実質的な部分が、フィッシャー・トロプシュ凝縮プロセスから直接的または間接的に得られる炭化水素流である。フィッシャー・トロプシュプロセスは、一酸化炭素および水素を、通常はパラフィン系炭化水素であるより長い鎖に変換する。一酸化炭素および水素自体は、天然ガスまたは有機的に誘導されたメタンなどの有機、無機、天然または合成源に由来し得る。
【0069】
本発明で使用されるフィッシャー・トロプシュ由来のディーゼル燃料成分を、精製またはフィッシャー・トロプシュ反応から直接得ても、または、例えば分留もしくは水素化処理された生成物を得るための、精製物もしくは合成生成物の分留もしくは水素化処理によって間接的に得てもよい。その後、所望の留分(複数可)、典型的には軽油留分(複数可)は、例えば蒸留によって単離され得る。重合、アルキル化、蒸留、分解-脱カルボキシル化、異性化および水素化改質などの他の合成後処理も、当技術分野で知られているように、フィッシャー・トロプシュ縮合生成物の特性を変更するために用いられ得る。
【0070】
フィッシャー・トロプシュ燃料は、ガス、バイオマス、または石炭を液体に変換(XtL)することによって、具体的にはガスから液体への変換(GtL)によって、またはバイオマスから液体への変換(BtL)から得られ得る。任意の形態のフィッシャー・トロプシュ由来燃料構成成分が、本発明に従ったベース燃料として使用され得る。
【0071】
本発明によって調製される組成物中に含有されるディーゼル燃料成分は、典型的には、15℃で750~900kg/m3、好ましくは800~860kg/m3の密度(ASTM D-4052またはEN ISO3675)および/または1.5~6.0mm2/sのVK40(ASTM D-445またはBN ISO 3104)を有することになる。
【0072】
本発明によって調製されるディーゼル燃料組成物において、ベース燃料自体は、上記の種類の2つ以上のディーゼル燃料成分の混合物を含み得る。
【0073】
本発明の有益な実施形態では、ディーゼル燃料は、植物油、水素化植物油もしくは植物油誘導体(例えば、脂肪酸エステル、特に脂肪酸メチルエステル、FAME)、または酸、ケトンもしくはエステルなどの別の含酸素化合物などの、いわゆる「バイオディーゼル」燃料成分からなっていても、またはこれを含有していてもよい。そのような成分は、必ずしもバイオ由来である必要はない。
【0074】
燃料組成物がバイオディーゼル成分を含有する場合、バイオディーゼル成分は、例えば、1%~99%w/wの量で存在し得る。一実施形態では、燃料は、少なくとも2%w/w、例えば、2%~80%w/wのバイオディーゼルを含む。場合によっては、バイオディーゼルは、2%~50%w/w、例えば、3%~40%w/w、4%~30%w/w、または5%~20%w/wで存在する。1つの有益な実施形態では、バイオディーゼル成分はFAMEである。好ましい用途では、FAMEは、燃料組成物の総重量を基準として、約5%w/wで存在する。
【0075】
本発明によると、燃料組成物の粘度を上昇させるために、VI向上剤などの粘度増加成分が使用され得る。したがって、ベース燃料(複数可)は、比較的低い粘度(例えば、3.3mm2/s未満)を有し得て、次いで、粘度増加成分を組み込むことによって「改善」され得る。したがって、例えば、精製プロセスまたは添加剤が燃料の別の重要な特性(排気ガス排出量など)を最適化するために使用されているので、良好なエンジンの燃費にとって本質的に有益ではない可能性のあるベース燃料成分は、燃費を改善するように変性され得る。添加剤または精製プロセスが燃費に及ぼすと予想されていた有害な影響は、燃料の粘度を高めることによって少なくとも部分的に相殺することができる。同様に、比較的低い予想される燃費レベルは、例えば、エンジン管理システムによって制御され得るような、関係するエンジンまたは車両の作動条件の結果であり得る。したがって、本発明の使用および方法はまた、少なくとも部分的にエンジンの作動条件/パラメータから生じるより低いエンジンの燃費に何らかの形で対抗することができる。
【0076】
例えば、ディーゼル燃料組成物の場合、ベース燃料(複数可)は、フィッシャー・トロプシュもしくは鉱物由来の灯油成分などの比較的低い粘度の成分、フィッシャー・トロプシュもしくは鉱物由来のナフサ成分、いわゆる「冬GtL」フィッシャー・トロプシュ由来の軽油、低粘度の鉱油ディーゼル成分もしくはバイオディーゼル成分からなるか、またはこれを含む。そのようなベース燃料は、場合によっては、欧州ディーゼル燃料規格EN 590によって許可されている最大値を下回る、例えば、4.5mm2/s未満、または3.5、3.2もしくは3.0mm2/s未満のVK40(ASTM D-445またはEN ISO 3104)を有し得る。場合によっては、これらは、EN 590によって許可されている最小値を下回る、例えば、2.0mm2/s未満またはさらには1.5mm2/s未満のVK40を有し得る。VI向上添加剤は、最終的な自動車燃料組成物に組み込む前に、1つ以上のそのような燃料成分において事前に希釈され得る。
【0077】
本発明によって調製される自動車用ディーゼル燃料組成物は、好適には、EN 590(欧州の場合)またはASTM D-975(米国の場合)などの適用される現在の標準仕様(複数可)に準拠する。例えば、燃料組成物全体は、15℃で820~845kg/m3の密度(ASTM D-4052またはEN ISO 3675)、360℃以下のT95沸点(ASTM D-86またはEN ISO 3405)、51以上の測定されたセタン価(ASTM D-613)、2~4.5mm2/sのVK40(ASTM D-445またはEN ISO 3104)、50mg/kg以下の硫黄含有量(ASTM D-2622またはEN ISO 20846)、および/または11%w/w未満の多環式芳香族炭化水素(PAH)含有量(IP391(mod))を有し得る。しかしながら、関連する仕様は、国ごとに、また年ごとに異なる場合があり、燃料組成物の使用目的によって異なる場合がある。
【0078】
しかしながら、本発明によって調製されるディーゼル燃料組成物は、これらの範囲外の特性を有する燃料成分を含有し得て、これは、ブレンド全体の特性が、その個々の構成要素の特性とは大きく異なる場合が多くあるためであると理解されたい。
【0079】
本発明によって調製されるディーゼル燃料組成物は、好適には、5000ppmw(重量百万分率)以下、典型的には2000~5000ppmw、または1000~2000ppmw、あるいは最大1000ppmwの硫黄を含有する。例えば、この組成物は、例えば、最大500ppmw、有益には350ppmw以下、好適には100または50またはさらには10ppmw以下で硫黄を含有する、低硫黄もしくは超低硫黄燃料または硫黄不含燃料であり得る。
【0080】
本発明によって調製される自動車燃料組成物、またはそのような組成物中で使用されるベース燃料は、1つ以上の燃料添加剤を含有していても、または添加剤不含であってもよい。添加剤が含まれる(例えば、精製所で燃料に添加される)場合、これは、少量の1つ以上の添加剤を含有し得る。選択した例または好適な添加剤としては、帯電防止剤;パイプライン抵抗低減剤;流動性向上剤(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはアクリレート/無水マレイン酸コポリマー);潤滑性増強添加剤(例えば、エステル系および酸系添加剤);曇り除去剤(例えば、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー);消泡剤(例えば、ポリエーテル変性ポリシロキサン);点火向上剤/セタン向上剤(例えば、2-エチルヘキシルニトレート(EHN)、シクロヘキシルニトレート、ジ-tert-ブチルペルオキシド);防錆剤(例えば、テトラプロペニルコハク酸のプロパン-1,2-ジオール半エステル、またはコハク酸誘導体の多価アルコールエステル);腐食防止剤;防臭剤;耐摩耗添加剤;抗酸化剤(例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールなどのフェノール類);金属不活性化剤;燃焼向上剤;静的散逸添加剤;低温流動性向上剤(例えば、モノオレイン酸グリセロール、アジピン酸ジイソデシル);抗酸化剤;ならびにワックス沈降防止剤が挙げられる(これらに限定されることはない)。この組成物は、例えば、清浄剤を含有し得る。清浄剤含有ディーゼル燃料添加剤は、公知であり、市販されている。そのような添加剤は、エンジン堆積物の蓄積を低減する、除去する、または遅延させることを意図したレベルで、ディーゼル燃料に添加され得る。いくつかの実施形態では、燃料組成物が、消泡剤を、より好ましくは、防錆剤および/または腐食防止剤および/または潤滑性増強添加剤と組み合わせて含有することが有利であり得る。
【0081】
組成物がそのような添加剤(本発明の粘度増加成分以外)を含有する場合、これは、好適には、粘度増加成分(複数可)に加えて、少量の割合(例えば、1%w/w以下、0.5%w/w以下、0.2%w/w以下)の1つ以上の燃料添加剤を含有する。特に明記しない限り、燃料組成物中のそのような各添加剤成分の(活性物質)濃度は、最大10000ppmw、例えば、0.1~1000ppmw、有利には0.1~300ppmw、例えば、0.1~150ppmwの範囲にあり得る。
【0082】
必要に応じて、上に挙げたものなどの1つ以上の添加剤成分は、(例えば、好適な希釈剤と共に)添加剤濃縮物中で共混合されてもよく、次いで、添加剤濃縮物は、ベース燃料または燃料組成物中に分散されてもよい。粘度増加成分、特にVI向上剤は、本発明によると、そのような添加剤配合物に組み込まれ得る。そのような燃料添加剤混合物は、典型的には、任意選択的に上記のような他の成分、ならびに鉱油であり得るディーゼル燃料適合性希釈剤、「SHELLSOL」という商標でShell社から販売されているものなどの溶媒、エステルなどの極性溶媒、および特にアルコール(例えば、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール、および「LINEVOL」という商標でShell社から販売されているものなどのアルコール混合物、特に、C7~9第1級アルコールの混合物であるLINEVOL 79アルコール、または市販のC12~14アルコール混合物)と共に、清浄剤を含有する。
【0083】
燃料組成物中の添加剤の総含有量は、好適には、0~10000ppmw、より好適には5000ppmw未満であり得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、成分の量(例えば、濃度、ppmw、および%w/w)は、活性物質のものであり、すなわち、揮発性溶媒/希釈物質は含まない。
【0085】
一実施形態では、本発明は、所望の目標粘度を達成するために、粘度増加成分(例えば、VI向上添加剤)を使用して燃料組成物の粘度を調整することを含む。
【0086】
好適には、粘度増加成分またはVI向上剤は、燃料組成物の粘度を、前述のように、少なくとも0.005mm2/sかつ2.0mm2/s未満だけ増加させる。より好適には、粘度増加は、0.01mm2/s~1.0mm2/s、例えば、0.01mm2/s~0.5mm2/sである。
【0087】
自動車燃料組成物の最大粘度が、多くの場合、4.5mm2/sの最大VK40を規定する欧州ディーゼル燃料仕様EN 590などの関連する法的および/または商業的仕様によって制限され得る一方で、スウェーデンクラス1ディーゼル燃料は、4.0mm2/s以下のVK40を有する必要がある。しかしながら、典型的な市販の自動車ディーゼル燃料は、現在、約2~3mm2/sなどの、これよりもはるかに低い粘度で製造されている。したがって、本発明は、VI向上添加剤を使用して、その粘度を増加させ、VI向上添加剤が導入される、またはその導入が意図されるエンジンの燃費を改善し、それでいて、所望または法的な粘度範囲内にある、他の点では標準仕様の自動車燃料組成物を操作することを含み得る。
【0088】
いくつかの好ましい実施形態では、燃料組成物の密度は、例えば、標準試験方法ASTM D-4052またはEN ISO 3675を使用して測定した場合に、粘度増加成分を添加することによって、1%未満、例えば、0.1%未満の影響を受ける。
【0089】
本発明の別の態様によると、自動車ベース燃料を粘度増加成分とブレンドすることを含む、自動車燃料組成物を調製する方法が提供される。ブレンドは、本明細書に記載されている目的のうちの1つ以上のために実施され得る。
【0090】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、文脈上別段の必要がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上別段の必要がない限り、単数だけでなく複数も意図するものとして理解されるべきである。
【0091】
したがって、本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して記載されている特徴、整数、特性、化合物、化学的部分または基は、矛盾しない限り、本明細書に記載されている任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきである。したがって、本発明の「使用」の特徴は、本発明の「方法」に直接適用することができる。さらに、特に明記しない限り、本明細書に開示される任意の特徴は、同じまたは同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。
【0092】
これより、本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0093】
導入部
これらの実施例では、ディーゼル燃費に対する燃料粘度の影響を評価するために、車両試験プログラムの結果を報告する。標準的なディーゼルを、異なる濃度の粘度増加成分を含有する同じディーゼル燃料と比較した。粘度増加成分としては、VI向上剤、特にSV160を使用した。SV160は、Infineumから市販されている線状ポリスチレン-ポリイソプレンブロックコポリマーである。
【0094】
1.試験プラットフォームおよび試験サイクル
ディーゼル燃費に対する燃料粘度の潜在的な影響を評価するために、シャシダイナモメータでNissan Qashqai 1.5 dCiという車両を使用して研究を実施した。使用される車両であるNissan Qashqaiの関連技術情報/データを以下の表1に示す。
【表1】
【0095】
各試験の開始前に、シャシダイナモメータを、コールドスタートNEDC運転サイクルの所定の温度に冷却した。
【0096】
運転サイクル
試験サイクルとしては、非過渡新欧州運転サイクル(NEDC)を選択した(
図1)。NEDC運転サイクルは、4つの繰り返される都市部運転サイクル(ECE)と、より高速な運転モードを構成する都市外運転サイクル(EUDC)とからなる。NEDCは、広く認知されている業界標準の試験サイクルである。
【0097】
燃料消費量は、2つの方法によって分析した:体積燃料流量および炭素物質収支。
【0098】
このプログラムでは、1回の燃費試験実施が、各サイクル間での22℃への強制冷却を伴う、4日間にわたる8回のNEDCからなっていた。したがって、NEDCサイクルは、標準的なコールドスタートNEDC試験を正確に再現したものではなく、この試験は、試験間に最低6時間の浸漬期間があり、約23℃に冷却される。
【0099】
2.試験燃料および試験設計
研究で使用した試験燃料の概要を表2に示す。A1は、ベース燃料であった。次いで、125mg/kgの濃度でVI向上剤SV160を添加することによって、試験燃料B1をベース燃料A1から得た。
【表2】
【0100】
セクション1で説明したように、試験結果は、4回のサイクルの平均燃費結果である。組み合わされたNEDCサイクルの結果に加えて、以下についての個別の燃料消費データがある:
(a) コールドスタートECE
(b) 組み合わされた、ECE番号2、3、および4、ならびに
(c) EUDCサイクル
【0101】
表3は、評価に使用した一連の試験を示す。
【表3】
【0102】
選択した燃料のさらなる分析の詳細を表4に示す。
【表4】
【0103】
2.1 試験結果
組み合わせたNEDC試験の測定値を
図2および3にプロットする。データ品質に問題はなく、すべての試験結果を統計分析に使用した。これらのデータは、125ppmでSV160を含有する本発明の試験燃料を使用するエンジンが、SV160のない他の点では同一の対照燃料で運転したときのその性能と比較して、改善された燃費を示したことを表す。
表5および
図2は、炭素物質収支によって測定した場合の、投与量125mg/kgでのSV160によってもたらされる燃料消費の利益を示す。表5および
図2に示されるNEDCおよびEUDC全体の利益は、90%の信頼度で統計的に有意であった。
【0104】
表6および
図3は、コリオリ計によって測定した場合の、投与量125mg/kgでのSV160によってもたらされる燃料消費の利益を示す。表6および
図3に示されるNEDCおよびEUDC全体の利益は、90%の信頼度で統計的に有意であった。
【表5】
【表6】
【0105】
3.結論
この研究の目的は、Nissan Qashqaiにおけるディーゼル燃費に対する燃料粘度の影響を評価することであった。
【0106】
上記の表5および6、ならびに
図2および3に示されるように、SV160添加剤の濃度が125mg/kgである場合、対照燃料と比較して0.9%の燃費の利益(すべての試験結果の平均)がNEDCサイクルにわたって観測された(統計的有意性は90%)。また、示されているように、いくつかのサイクルでは、試験での燃費の利益は、粘度増加成分がない対照燃料と比較して1.3%であった。特に、燃費の利益は、すべての段階で一貫してプラスであった。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料組成物が導入される、またはその導入が意図されるエンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する目的のための、ディーゼル燃料組成物中での粘度増加成分の使用であって
、粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり
、VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み
、VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、使用。
【請求項2】
前記VI向上添加剤が、ポリスチレン-ポリイソプレン線状ブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記VI向上添加剤が、前記燃料組成物の総重量を基準として、
(i)0.005%w/w~0.03%w/w、
(ii)0.006%w/w~0.025%w/w、または
(iii)0.007%w/w~0.02%w/w
の濃度で使用される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記VI向上添加剤が、前記燃料組成物の総重量を基準として、
(i)0.0075%w/w~0.0175%w/w、
(ii)0.008%w/w~0.015%w/w、
または
(iii)0.009%w/w~0.013%w/w
の濃度で使用される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
エンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する方法であって、粘度増加成分を含む(ディーゼル)燃料組成物を前記エンジンの燃焼室に導入することを含み、前記粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり、前記VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み、前記VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
上記の表5および6、ならびに
図2および3に示されるように、SV160添加剤の濃度が125mg/kgである場合、対照燃料と比較して0.9%の燃費の利益(すべての試験結果の平均)がNEDCサイクルにわたって観測された(統計的有意性は90%)。また、示されているように、いくつかのサイクルでは、試験での燃費の利益は、粘度増加成分がない対照燃料と比較して1.3%であった。特に、燃費の利益は、すべての段階で一貫してプラスであった。
本明細書は以下の発明の態様を包含する。
[1]
燃料組成物が導入される、またはその導入が意図されるエンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する目的のための、ディーゼル燃料組成物中での粘度増加成分の使用であって、前記粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり、前記VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み、前記VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、使用。
[2]
前記VI向上添加剤が、ポリスチレン-ポリイソプレン線状ブロックコポリマーを含む、[1]に記載の使用。
[3]
前記VI向上添加剤が、前記燃料組成物の総重量を基準として、
(i)0.005%w/w~0.03%w/w、
(ii)0.006%w/w~0.025%w/w、または
(iii)0.007%w/w~0.02%w/w
の濃度で使用される、[1]または[2]に記載の使用。
[4]
前記VI向上添加剤が、前記燃料組成物の総重量を基準として、
(iv)0.0075%w/w~0.0175%w/w、
(v)0.008%w/w~0.015%w/w、
(vi)0.009%w/w~0.013%w/w
の濃度で使用される、[1]または[2]に記載の使用。
[5]
前記粘度増加成分が、前記粘度増加成分を添加する前の前記燃料組成物の前記粘度と比較して、
(i)少なくとも0.005mm
2/s、
(ii)0.01mm
2/s~1.0mm
2/s、または
(iii)0.01mm
2/s~0.5mm
2/s
だけ、40℃での前記ディーゼル燃料組成物の動粘度を増加させるのに十分な量で使用される、[1]~[4]のいずれか1項に記載の使用。
[6]
前記粘度増加成分を含有する前記ディーゼル燃料組成物の40℃での前記動粘度が、
(i)最大4.5mm
2/s、
(ii)2.0mm
2/s~4.0mm
2/s、または
(iii)3.0mm
2/s~3.8mm
2/sの範囲にある、[1]~[5]のいずれか1項に記載の使用。
[7]
2つ以上の粘度増加成分を含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載の使用。
[8]
エンジンまたはそのようなエンジンを動力とする車両の燃費を改善する方法であって、粘度増加成分を含む(ディーゼル)燃料組成物を前記エンジンの燃焼室に導入することを含み、前記粘度増加成分が、粘度指数(VI)向上添加剤であり、前記VI向上添加剤が、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンモノマーから選択される1つ以上のモノマーブロックを含む線状ブロックコポリマーを含み、前記VI向上添加剤が、0.001%w/w~0.05%w/wの濃度で使用される、方法。
【国際調査報告】