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特表2022-519093放射性同位元素が標識された光架橋性ハイドロゲル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】放射性同位元素が標識された光架橋性ハイドロゲル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/06 20060101AFI20220311BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220311BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220311BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A61K51/06 100
A61K45/00
A61K51/06 200
A61P35/00
A61K9/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544703
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 KR2019018094
(87)【国際公開番号】W WO2020159080
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0012906
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518279417
【氏名又は名称】エスエヌヴィア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ヤン スン ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソダム
(72)【発明者】
【氏名】イム サン-グ
(72)【発明者】
【氏名】スジート クマル
(72)【発明者】
【氏名】アジーシュ チャンドラセカラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB11
4C076CC27
4C076FF02
4C076FF68
4C084AA12
4C084AA17
4C084MA02
4C084MA27
4C084MA66
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZB26
4C085HH03
4C085JJ11
4C085KA29
4C085KB79
4C085LL18
(57)【要約】
本発明は、光架橋性ハイドロゲル及びその製造方法を提供する。ハイドロゲルは、放射性同位元素が標識された光架橋性化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含有することができ、これは、放射線治療用組成物、放射線診断イメージング用組成物、及び抗ガン治療用組成物として用いられる。ハイドロゲルは、放射線治療が必要な局所的部位に留まりに優れて、周辺組織の損傷を最小化しながら、癌などの疾患を治療することができる。また、抗ガン剤と併用して抗ガン治療用薬学組成物として利用できて、効果的に癌を治療することができる。本発明によるハイドロゲルは、携帯用微小流体システムを用いて現場で即時迅速かつ簡便に製造して使用することができ、これを通じて放射線治療の効果を極大化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
前記化学式1において、
Xは、光架橋が可能なアクリレート、メタクリレート、グリシジルメタクリレート、及びビニルエステルからなる群から選択され、
Yは、OHであるか、下記化学式2であり、
【化2】
前記化学式1または前記化学式2において、
及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択され、
及びmは、0~2の整数であり、
nは、20~4,000である。
【請求項2】
前記放射性同位元素は、
131I、125I、124I、123I、18F、19F、177Lu、及び211Atからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩に放射性同位元素が標識されたことを特徴とする、化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
前記放射性同位元素は、
131I、125I、124I、123I、18F、19F、177Lu、及び211Atからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
請求項3または4に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、放射線治療用光架橋性ハイドロゲル。
【請求項6】
前記ハイドロゲルは、
10~200μmの平均粒子を有するマイクロゲルであることを特徴とする、請求項5に記載の放射線治療用光架橋性ハイドロゲル。
【請求項7】
請求項5に記載のハイドロゲルを有効成分として含有する、放射線治療用薬学組成物。
【請求項8】
請求項5に記載のハイドロゲルを有効成分として含有する、放射線診断イメージング用組成物。
【請求項9】
請求項5に記載のハイドロゲル及び抗ガン剤を含む、抗ガン治療用薬学組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の光架橋性化合物を製造する段階と、
前記製造された光架橋性化合物を光開始剤溶液に溶解させた後、微小流体デバイスのインレットに注入する段階と、
前記微小流体デバイスのアウトレットに界面活性剤を含有したオイルを注入する段階と、
遠心分離を用いてマイクロドロップレットを形成する段階と、
前記形成されたマイクロドロップレットを抽出して光架橋させた後、洗浄してマイクロゲルを形成する段階と、
を含む、放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項11】
前記光架橋性化合物の製造段階は、
ヒアルロン酸、その塩及びこれらの組み合わせからなる群から選択された生分解性高分子及びメタクリレートを反応させる段階と、
前記反応させた反応物に1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択された1つ以上の化合物を接合させる段階と、
前記接合された化合物に放射性同位元素を標識する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項12】
前記反応段階は、
0~10℃に冷却させた前記生分解性高分子溶液に前記メタクリレートを30分~2時間にわたって滴加し、pH7~pH11の範囲で20~30時間保持させて行われることを特徴とする、請求項11に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項13】
前記光架橋性化合物は、
前記光開始剤溶液のうち、1~20重量%含有されることを特徴とする、請求項10に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項14】
前記製造方法は、
現場で10~60分以内に前記マイクロゲルを製造して、即時使われることを特徴とする、請求項10に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項15】
前記マイクロゲルは、
ゲルタイプの注射剤型で製造されることを特徴とする、請求項10に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項16】
前記マイクロゲルは、
体内に注入されて1~3週間注入部位に留まることを特徴とする、請求項10に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素が標識された光架橋性ハイドロゲル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、現在までも人類が直面している最も致命的な疾病の1つであって、早期診断と治療法とに多くの発展を遂げたが、依然として癌は、全世界の死亡原因の30%を占める。癌を治療する方法の1つである化学療法は、大衆的に使われるが、薬物の濃度を調節しにくく、腫瘍部位への低い標的化能力という限界を有する。外部放射線療法は、機器を通じて体内に放射線を誘導し、腫瘍細胞を破壊する方法で相対的によく制御され、調節される治療法であるが、腫瘍に隣接した正常組織の非特異的破壊、イオンビームの経路での不良、浸透する組織に対する高い放射線量の必要性など問題点が依然として残っている。対照的に、内部放射線療法は、外科的手術と外部放射線療法とに比べて簡便であり、患者の苦痛を最小化させる。90Y、67Cu、188Re、177Lu、131Iなどと放射性元素が含まれた溶液を静脈注射して腫瘍細胞の破壊を誘導してきた。
【0003】
ヨード(Iodine)放射性同位元素は、放射線イオン化の効果で甲状腺組織に蓄積されて癌細胞の細胞死と壊死とを誘発する内部放射線治療剤である。しかし、体内注入後、迅速に全身に広がって所望しない臓器や正常組織に損傷を与える副作用がある。それを解決するために、ヨウ素を高分子に標識するか、担持して、留まる時間を高めるか、所望の部位にターゲティング(targeting)する効果を収めた。しかし、生体適合性が低い伝達体(carrier)を使用するか、製造時間が長くて効率を落とし、所望の部位に効果的に留まりが低かった。両親媒性高分子であるポリL-乳酸(poly L-lactic acid、PLLA)に131Iを標識したナノ粒子は、腫瘍組織に移動したが、標的器官を除いた器官での放射線の検出によって、局所的な伝達には難しい点がある。また、抗ガン治療剤であるドキソルビシン(doxorubicin)を内包する131Iが標識されたキトサン(chitosan)マイクロハイドロゲルは、局所的に注入部位で保持しているが、マイクロハイドロゲルを製作する過程が複雑であって、臨床に適用するのに難点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記問題点を解決するために、本発明は、光架橋性化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0005】
本発明は、前記化合物またはその塩を含有する放射線治療用光架橋性ハイドロゲル及びその製造方法を提供する。
【0006】
また、本発明は、前記ハイドロゲルを含有する放射線治療用、放射線診断イメージング用または抗ガン治療用薬学組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、下記化学式1で表され、
【0008】
【化1】
【0009】
前記化学式1において、
【0010】
Xは、光架橋が可能なアクリレート(acrylate)、メタクリレート(methacrylate)、グリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate)、及びビニルエステル(vinyl ester)からなる群から選択され、
【0011】
Yは、OHであるか、下記化学式2であり、
【0012】
【化2】
【0013】
前記化学式1または前記化学式2において、R及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール(imidazole)、ピロール(pyrrole)、フラン(furan)、チオフェン(thiophene)、インドール(indole)、及び3,4-ジヒドロキシフェニル(3,4-dihydroxyphenyl)からなる群から選択され、m及びmは、0~2の整数であり、nは、20~4,000である。
【0014】
本発明による化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、放射性同位元素が標識される。
【0015】
本発明による放射線治療用光架橋性ハイドロゲルは、前記化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有することができる。
【0016】
本発明による放射線治療用薬学組成物は、前記ハイドロゲルを有効成分として含有することができる。
【0017】
本発明による放射線診断イメージング用組成物は、前記ハイドロゲルを有効成分として含有することができる。
【0018】
本発明による抗ガン治療用薬学組成物は、前記ハイドロゲル及び抗ガン剤を含みうる。
【0019】
本発明による放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法は、光架橋性化合物を製造する段階;前記製造された光架橋性化合物を光開始剤溶液に溶解させた後、微小流体デバイスのインレット(inlet)に注入する段階;前記微小流体デバイスのアウトレット(outlet)に界面活性剤を含有したオイルを注入する段階;遠心分離を用いてマイクロドロップレット(microdroplets)を形成する段階;及び前記形成されたマイクロドロップレットを抽出して光架橋させた後、洗浄してマイクロゲルを形成する段階;を含みうる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるハイドロゲルは、ヒアルロン酸に光架橋的性質を付与し、放射性核種を標識したマイクロサイズのハイドロゲルであって、放射線治療が必要な局所的部位に留まりに優れて、周辺組織の損傷を最小化しながら治療することができる。それによって、前記ハイドロゲルは、放射線治療用薬学組成物、放射線診断イメージング用組成物として用いられる。また、抗ガン剤と併用して抗ガン治療用薬学組成物として利用できて、効果的に癌を治療することができる。
【0021】
本発明によるハイドロゲルは、生分解性、生体適合性に優れたヒアルロン酸を用いて免疫拒絶反応がほとんどなくて、安全な治療組成物として使われる。
【0022】
本発明によるハイドロゲルは、携帯用微小流体システムを用いて現場で即時迅速かつ簡便に製造して使用することができ、これを通じて放射線治療の効果を極大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例による131I-標識された光架橋性メタクリル化ヒアルロン酸(HAMA)の合成過程を示す図式化したものである。
図2】本発明の一実施例によるヒアルロン酸基盤のコンジュゲートのH NMRスペクトル及び化学的構造を示す図面である。
図3】本発明の一実施例によるマイクロゲル製作中、マイクロドロップレット形成の概略図である。
図4】本発明の一実施例によるマイクロゲル形成溶液のHAMA濃度による粘度変化を測定したものである。
図5】本発明の一実施例による遠心分離機の分当り回転数(RPM)によるHAMAマイクロドロップレットのサイズを示す図面である。
図6】本発明の一実施例による131I-HAMAマイクロゲルの現場での製作過程である。
図7】本発明の一実施例によって製造された131I-HAMAマイクロゲル内の放射線強度を定量化したものである。
図8】本発明の一実験例によって製造された蛍光物質が結合したHAMAである。
図9】本発明の一実験例によって製造されたマイクロゲルの形状である。
図10】本発明の一実験例によるFITC-HAMAマイクロゲルをラットに注射した部位である。
図11図10による実験の結果である。
図12】本発明の一実験例によるラットのSPECTイメージである。
図13】本発明の一実験例による131Iの流れを示す図面である。
図14】本発明の一実験例による131I溶液の他の組織への移動を測定したものである。
図15】本発明の一実験例による131I-HAMAマイクロゲル溶液の他の組織への移動を測定したものである。
図16】本発明の一実施例によるマイクロゲルの活用例を示す概略図である。
図17】本発明の一実施例によるHAMAの製造過程である。
図18図17によって製造されたHAMAのH NMRスペクトルである。
図19】本発明の一実験例によるハイドロゲルの機械的物性を示すグラフである。
図20】本発明の一製造例によって生成されたHAMA及びHAMA-N-indoleのUV/visスペクトルである。
図21】本発明の一製造例によって生成されたHAMA-N-indole及びHAMA-N-iodoindoleのH NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0025】
本発明者らは、生分解性及び生体適合性に優れたヒアルロン酸に光架橋的性質を付与し、放射性核種である131Iを標識して現場で携帯用微小流体システムを用いてマイクロサイズのハイドロゲルを製作し、これにより製作されたマイクロゲルを生体内に注入した時、他の組織に広がらず、注入した部位に局所的に保持していることを確認することにより、本発明を完成した。
【0026】
【0027】
本明細書において、「放射線(radiation)」は、エネルギーが空間を通じて伝播される現象または伝播を媒介する物質を意味し、多様な放射性核種によって放出される。
【0028】
本明細書において、「放射線治療」は、前記高エネルギー放射線を用いて細胞の増殖と生存とに必須的な核酸、細胞膜などに化学的変性を招く作用を通じて癌細胞などを殺す治療を意味する。
【0029】
本明細書において、「放射能(radioactivity)」は、前記放射線の強度を意味する。
【0030】
本明細書において、「マイクロハイドロゲル」は、注射器を用いて注入される数ないし数百マイクロメートル(μm)単位レベルに水に溶けず、膨潤される架橋された粒子であって、一般的に膨潤性の球状または板状のゲル粒子を意味し、「マイクロジェル」または「マイクロゲル」などの用語として表現される。
【0031】
本明細書において、「HAMA」は、メタクリレート基が結合されたヒアルロン酸を意味するものであって、ヒアルロン酸メタクリレート(hyaluronate methacrylate)、メタクリル化ヒアルロン酸(methacrylated hyaluronic acid)などの用語として表現される。
【0032】
本明細書において、「HAMA-A」は、メタクリレート基が結合されたヒアルロン酸(HAMA)に多種の環式化合物Aが接合(コンジュゲート、conjugate)されることを意味する。
【0033】
本明細書において、「HAMA-A-B」は、前記HAMAに接合された環式化合物Aに放射性同位元素(B)が標識されたことを意味する。
【0034】
本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0035】
本発明による化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、下記化学式1で表され、
【0036】
【化3】
【0037】
前記化学式1において、Xは、光架橋が可能なアクリレート、メタクリレート、グリシジルメタクリレート、及びビニルエステルからなる群から選択された1つであり、
【0038】
Yは、OHであるか、下記化学式2であり、
【0039】
【化4】
【0040】
前記化学式1または前記化学式2において、R及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択される環式化合物であり、m及びmは、0~2の整数であり、nは、20~4,000(数平均分子量は、10,000~2,000,000)、望ましくは、100~400(数平均分子量は、50,000~200,000)である。
【0041】
より詳細には、前記Yには、N-(3-アミノプロピル)-イミダゾール(N-(3-Aminopropyl)-imidazole;API)、3-(1H-ピロール-1-イル)-1-プロパンアミン(3-(1H-pyrrol-1-yl)-1-propanamine)、1-(3-フリル)メタンアミン(1-(3-Furyl)methanamine)、チエニルメチルアミン(thienylmethylamine)、トリプタミン(tryptamine)、ドーパ(3,4-dihydroxyphenylalanine;DOPA)及びその誘導体からなる群から選択されたものが結合されうる。
【0042】
これにより、前記化合物は、ヒアルロン酸メタクリレート(以下、HAMA)-API、HAMA-DOPA、HAMA-pyrrol、HAMA-furan、HAMA-thiophene、HAMA-indole及びその誘導体などが含まれうる。
【0043】
本発明による前記薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な塩基性塩または酸性塩のうち何れか1つの形態を含みうる。
【0044】
塩基性塩は、有機塩基塩、無機塩基塩のうち何れか1つの形態で使用することができ、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、セシウム塩、アミニウム(aminium)塩、アンモニウム塩、トリエチルアミニウム塩、及びピリジニウム塩からなる群から選択されうるが、これらに制限されるものではない。
【0045】
酸性塩は、遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。遊離酸としては、無機酸と有機酸とを使用することができ、無機酸としては、塩酸、臭素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、二重リン酸、硝酸などを使用することができ、有機酸としては、クエン酸、酢酸、マイレン酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコサン、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、酢酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、4-トルエンスルホン酸、ガラクツロン酸、エンボン酸、グルタミン酸、クエン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸などを使用することができる。望ましくは、無機酸としては、塩酸、有機酸としては、メタンスルホン酸を使用することができる。
【0046】
また、本発明による前記化合物は、薬学的に許容される塩だけではなく、通常の方法によって製造可能なあらゆる塩、水化物及び溶媒化物をいずれも含みうる。例えば、前記化合物をアセトン、メタノール、エタノール、またはアセトニトリルなどの水混和性有機溶媒に溶かし、過量の有機塩基を加えるか、無機塩基の塩基水溶液を加えた後、沈殿または結晶化させて製造することができる。または、この混合物で溶媒や過量の塩基を蒸発させた後、乾燥させて付加塩を得るか、または析出された塩を吸入濾過させて製造することができる。
【0047】
本発明による化合物または塩において、前記放射性同位元素は、ハロゲン族放射性同位元素を含み、131I、125I、124I、123I、18F、19F、177Lu、及び211Atからなる群から選択された1つ以上であり、望ましくは、131Iであるが、これらに制限されるものではない。
【0048】
本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩に放射性同位元素が標識されたことを特徴とする化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0049】
前記放射性同位元素は、ハロゲン族放射性同位元素を含み、131I、125I、124I、123I、18F、19F、177Lu、及び211Atからなる群から選択された1つ以上であり、望ましくは、131Iであるが、これらに制限されるものではない。
【0050】
前記放射性同位元素は、前記化合物に含まれたイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択される環式化合物に1つ以上標識され、より詳細には、N-(3-アミノプロピル)-イミダゾール(API)、3-(1H-ピロール-1-イル)-1-プロパンアミン、1-(3-フリル)メタンアミン、チエニルメチルアミン、トリプタミン、ドーパ(DOPA)及びその誘導体からなる群から選択された環式化合物に標識されて、HAMA-API-I、HAMA-DOPA-I、HAMA-pyrrol-I、HAMA-furan-I、HAMA-thiophene-I、HAMA-N-iodoindole及びその誘導体などを形成しうる。より詳細なことは、下記の製造例によって後述される。
【0051】
本発明は、放射線治療用光架橋性ハイドロゲルを提供する。
【0052】
本発明による放射線治療用光架橋性ハイドロゲルは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩に放射性同位元素、詳細には、131I、125I、124I、123I、18F、19F、177Lu、及び211Atからなる群から選択された1つ以上を標識する化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有することができる。
【0053】
前記ハイドロゲルは、軟質及び多孔性構造を形成するために、架橋結合過程で組織化された3次元ネットワークを形成する親水性高分子で構成された高度に水和された物質であって、特に、光架橋を通じて形成された前記ハイドロゲルは、柔らかくて流動性に優れた長所がある。
【0054】
前記ハイドロゲルは、マイクロメートル単位サイズの平均粒子を有し、詳細には、10~200μm、望ましくは、50~100μmの平均粒子を有するマイクロゲルである。本発明の一実験例によれば、前記マイクロゲルは、放射線治療のために人体内に注入される。
【0055】
本発明は、放射線治療用薬学組成物を提供する。
【0056】
本発明による放射線治療用薬学組成物は、前記光架橋性ハイドロゲルを有効成分として含有することができる。
【0057】
本発明において、「治療」は、癌のような疾患または疾病が好転または有利になるあらゆる行為であれば、制限なしに含まれうる。
【0058】
本発明による薬学組成物において、前記放射線治療の対象となる疾患の種類は、特に制限しないが、例えば、甲状腺癌、乳癌、胆道癌、胆嚢癌、膵臓癌、大腸癌、子宮癌、食道癌、胃癌、脳癌、直腸癌、肺癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭頸部癌、皮膚癌、血液癌、及び肝癌からなる群から選択される1つ以上の癌であり、望ましくは、乳癌、子宮癌、前立腺癌または皮膚癌である。
【0059】
本発明の薬学組成物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内及び頭蓋骨内注射または注入技術を含む非経口投与で投与され、望ましくは、注射剤の剤型で投与される。
【0060】
前記非経口投与のための薬学組成物は、滅菌水性または非水性液剤、分散剤、懸濁剤、または乳剤だけではなく、滅菌液剤または懸濁剤として使用する直前に再調剤する滅菌散剤がある。適した滅菌水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びこれらの混合物、植物性オイル(例えば、オリーブオイル)、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)がある。例えば、分散剤及び懸濁剤の場合には、レシチンのような被覆材を使用して適切な特定のサイズを保持し、界面活性剤を使用して適切な流動性を保持することができる。
【0061】
また、非経口組成物は、防腐剤、湿和剤、乳化剤及び分散剤のような補助剤を含有することができる。注射用剤型の滅菌は、例えば、滅菌フィルターを通じて濾過させるか、混合する前、製造時に、または投与直前(二重容器注射器パッケージの場合でのように)に混合物の成分をあらかじめ滅菌して使用することができる。
【0062】
本発明による薬学組成物は、疾病の治療のために、単独で固形癌の周辺に注入されるか、または手術後、残存または散在された癌を治療するために使われる。それだけではなく、ホルモン治療、薬物治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。
【0063】
本発明は、放射線診断イメージング用組成物を提供する。
【0064】
本発明による放射線診断イメージング用組成物は、前記光架橋性ハイドロゲルを有効成分として含有することができる。前記放射線診断イメージは、疾患または疾病の診断のために、放射線が被写体を通過するか、内部に注入されて生成された放射線イメージデータを意味する。前記イメージデータを通じて疾病有無、癌のサイズ、位置などを把握することができる。
【0065】
また、本発明は、抗ガン治療用薬学組成物を提供する。
【0066】
本発明による抗ガン治療用薬学組成物は、前記光架橋性ハイドロゲル及び抗ガン剤を含みうる。前記抗ガン剤は、タキサンまたはその誘導体、例えば、ドセタキセル(docetaxel)、カバジタキセル(cabazitaxel)、パクリタキセル(paclitaxel)であり、その他にも、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、シスプラチン(cisplain)、アクチノマイシン-D(actinomycin-D)、5-フルオロウラシル(5-fluouracil)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、プロカルバジン(Procarbazine)、リツキシマブ(Rituximab)、イマチニブ(Imatinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、これらの薬学的に許容可能な塩及び水化物からなる群から選択される1つ以上であるが、これらに制限されるものではない。
【0067】
前記ハイドロゲルの放射性同位元素と前記抗ガン剤とを併用して抗ガン治療に利用することにより、より効果的に治療することができる。
【0068】
本発明は、放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法を提供する。本発明によるマイクロハイドロゲルの製造方法は、前記化合物のような光架橋性化合物を製造する段階;前記製造された光架橋性化合物を光開始剤溶液に溶解させた後、微小流体デバイスのインレットに注入する段階;前記微小流体デバイスのアウトレットに界面活性剤を含有したオイルを注入する段階;遠心分離を用いてマイクロドロップレットを形成する段階;及び前記形成されたマイクロドロップレットを抽出して光架橋させた後、洗浄してマイクロゲルを形成する段階;を含みうる。
【0069】
本発明による製造方法において、前記光架橋性化合物の製造段階は、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、その塩及びこれらの組み合わせからなる群から選択された生分解性高分子及びメタクリレートを反応させる段階;前記反応させた反応物に1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択された1つの化合物を接合させる段階;及び前記接合された化合物に放射性同位元素を標識する段階;を含みうる。
【0070】
前記ヒアルロン酸(HA)は、軟組織の細胞外基質から見つけられる線形ポリサッカライドであって、優れた生体適合性及び生分解性を有する生体高分子である。前記「生分解性」は、pHが6~8である生理的溶液(physiological solution)に露出された時に分解される性質を意味し、望ましくは、ヒトを含んだ哺乳動物の生体内で体液または微生物などによって分解される性質を意味する。
【0071】
前記ヒアルロン酸の塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトなどの無機塩と、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩と、がいずれも含まれうるが、これらに限定されるものではない。本発明では、ヒアルロン酸自体、またはその塩を単独で、またはヒアルロン酸及びその塩を2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
前記生分解性高分子は、前記ヒアルロン酸の以外にもポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)のような合成高分子;ヘパランサルフェート(heparan sulfate)、コンドロイチンサルフェート(chondrotin sulfate)、キトサン、アルギン酸のような多糖類または炭水化物;ゼラチン、コラーゲン、アルブミンのような天然タンパク質を構成要素として含みうる。
【0073】
前記メタクリレートは、光架橋剤であって、前記ヒアルロン酸と反応して光架橋性のハイドロゲルを収得することができる。前記「光架橋剤」は、光照射によってラジカルが形成されることにより、反応系内でラジカル反応を誘発することができる化合物を意味し、通常の光架橋剤または光開始剤として使われる化合物は、本発明の光架橋剤として使われるが、但し、生体内毒性がないか、微弱な光架橋剤または光開始剤を使用することがより望ましい。
【0074】
前記光架橋の技術は、前駆体溶液の現場での架橋結合を可能にし、化学的架橋結合の技術よりも架橋密度に対するさらに良い空間及び時間制御を提供する。紫外線または可視光を使用する光架橋結合方法は、広い範囲の機械的性質及び分解性を有するハイドロゲルを製造することができる。
【0075】
前記高分子及びメタクリレートを反応させる段階は、0~10℃、望ましくは、3~7℃に冷却させた前記生分解性高分子溶液に前記メタクリレートを30分~2時間、望ましくは、1時間~1時間30分にわたって滴加し、pH7~pH11、望ましくは、pH8~pH10の範囲で20~30時間保持させて行われ、これにより、メタクリレート化されたヒアルロン酸(以下、HAMA)が形成されうる。前記段階の方法によって形成されたHAMAは、100%以上のメタクリル化度(degree of methacrylation;DM)、すなわち、高いメタクリレート基置換程度を有し、前記メタクリル化度が高いほど機械的物性、強度も向上する。前記機械的物性が向上したHAMAは、生体内で生分解が徐々に起こって、適切な時間の間に放射線治療が行われる。
【0076】
次に、前記接合段階は、前記形成されたHAMAに1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択された1つの化合物を接合させることができる。より詳細には、N-(3-アミノプロピル)-イミダゾール(API)、3-(1H-ピロール-1-イル)-1-プロパンアミン、1-(3-フリル)メタンアミン、チエニルメチルアミン、トリプタミン、ドーパ(DOPA)及びその誘導体からなる群から選択された環式化合物が接合される。
【0077】
前記放射性同位元素標職段階は、前記接合された化合物に放射性同位元素、例えば、131I、125I、124I、123I、18F、19F、177Lu、及び211Atからなる群から選択された1つ以上を標識して放射性同位元素が標識された光架橋性化合物を形成しうる。
【0078】
本発明による製造方法において、前記光架橋性化合物は、前記光開始剤溶液のうち、1~20重量%含有され、前記遠心分離は、1000~2000RPM、望ましくは、1400~1600RPMで行われる。これにより、放射線治療に適切な量のマイクロハイドロゲルを製造することができる。
【0079】
本発明による製造方法において、前記マイクロゲルは、ゲル(gel)タイプの注射剤型で製造可能であり、体内に注入されて1~3週間注入部位に留まる。また、前記製造方法は、現場で10~60分以内、望ましくは、10~30分以内に前記マイクロゲルを製造して、即時使われて、放射線治療が必要である時、適切に製造して使われる。
【0080】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0081】
<準備例1>
【0082】
無水メタクリル酸(Methacrylic anhydride)、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)、N-(3-アミノプロピル)-イミダゾール(API)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide;EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxysuccinimide;NHS)、クロラミンT(chloramine T)、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulfite)、ヨウ化ナトリウム(sodium iodide)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)、アセトアルデヒド(acetaldehyde)、シクロヘキシルイソシアニド(cyclohexyl isocyanide)、フルオレセイン-アミン(fluorescein-amine)は、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich、St.Louis MO、USA)から購入した。ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane;PDMS、Sylgard 184)は、ダウコーニング(Dow Corning)から購入した。Pico-surf(TM)2wt% in NovecTM 7500は、スフィアフルイディクス(Sphere Fluidics、Cambridge、UK)から購入した。Novec 7500 oilは、3M(St Paul、MN)から購入した。分子量90KDaのヒアルロン酸(HA)は、バイオランド(Bioland、SK、Korea)から購入した。
【0083】
<実施例1>131I-標識されたメタクリル化ヒアルロン酸(HAMA)の製造
【0084】
図1は、本発明の一実施例による131I-標識された光架橋性メタクリル化ヒアルロン酸(HAMA)の合成過程を示す図式化したものである。
【0085】
図1を参照すれば、メタクリル化ヒアルロン酸(以下、HAMA)は、ヒアルロン酸(HA)の1次ヒドロキシ基のエステル化(esterification)反応を通じて製造された。25℃で脱イオン水50mLにヒアルロン酸240mgを溶かした。この溶液を4℃で1M NaOHを用いてpH9に製造した後、無水メタクリル酸420mgを入れ、24時間撹拌した。完了した合成物を8時間ごとに水を交換しながら、96時間脱イオン水で透析した。透析された生成物を凍結乾燥してHAMAを得た。
【0086】
HAMA-APIは、HAMAのカルボキシ基とN-(3-アミノプロピル)-イミダゾール(以下、API)のアミン基とのアミド化(amidation)反応を通じてヒアルロン酸にAPIが接合(conjugate)された。HAMA 240mgを25℃で40mL PBS(phosphate buffered saline、pH7.4)に4時間溶かした。
1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(以下、EDC)230mg、1.2mmolとN-ヒドロキシスクシンイミド(以下、NHS)276mg、2.4mmolとを入れ、30分間カルボキシ基を活性化させるために撹拌した。この化合物にPBS 10mLに溶かしたAPI(150mg、1.2mmol)を一滴ずつ添加し、12時間反応を行った。完了した合成物は、PBSで透析され、凍結乾燥してHAMA-APIを得た。
【0087】
HAMA-APIのイミダゾール環(imidazole ring)にヨードを置換するために、クロラミンT方法を使用した。2mLの遠心分離用チューブにHAMA-API 24mgを入れて、PBS 500μlに溶かし、NaI(Na131I)100μlを入れ、10分間置いた。PBSに溶かしたクロラミンT溶液10μl(5mg/mL)を入れ、10分間ボルテックシングした。反応を終結するために、PBSに溶かした重亜硫酸ナトリウム(sodium bisulfite)溶液10μl(10mg/mL)を入れた。残余物を除去するために、エタノール1mLを反応物に入れ、20分間5000RPMで遠心分離した。上澄み液は、除去した後、ヨードが標識されたHAMAを得た。
【0088】
ヒアルロン酸基盤のコンジュゲートは、H-NMR(600MHz Agilent NMR System、Palo Alto、USA)を通じて化学的特性を分析した。
【0089】
図2は、本発明の一実施例によるヒアルロン酸基盤のコンジュゲートのH NMRスペクトル及び化学的構造を示す。図2を参照すれば、メタクリレート基(Methacrylate group)は、5.5~6.5ppm、API基は、7.0~8.5ppmの範囲で鮮明に観察された。そして、ヨウ素化されたI-HAMAは、イミダゾール環の5番炭素がヨード置換によって強度(intensity)が減ったと分析した。
【0090】
<実施例2>光架橋性HAMAマイクロゲルの製作
【0091】
同位元素で標識された高分子の放射能低下を最小化するためには、現場で迅速にマイクロゲル(microgels)を作らなければならない。このために、131I-標識された光架橋性ヒアルロン酸を携帯用遠心微小流体システム(Portable Centrifugal Microfluidic System)を通じて油中水型(water-in-oil;W/O)エマルジョンでHAMAマイクロゲルを製作した。
【0092】
図3は、本発明の一実施例によるマイクロゲル製作中、マイクロドロップレット形成の概略図である。
【0093】
図3を参照すれば、まず、調節された量のHAMAを200μlの1重量%イルガキュア(irgacure)2959(水溶性光開始剤)溶液に溶かした後、微小流体装置のインレットに注入した。この装置のアウトレットには、2重量%pico-surfを溶かしたノベックオイル(novec oil)を50μl注入した。溶液が満たされた装置を携帯用遠心分離機(Micro-12、Hanil、Korea)にアウトレットが中心に向かって結合し、3分間RPMを調節してマイクロドロップレットを形成させた。アウトレット方向に加えられる遠心力とアウトレット内部のノズルの毛細血管現象とによってドロップレット(droplets)が形成された。
【0094】
アウトラットに形成されたマイクロゲルをピペットで抽出後、マイクロチューブ(microtube)に移し、UV光(350~500nm、OhmiCure S1500、Exclitas、USA)を通じてマイクロドロップレットを形成するHAMAの架橋を完了した。架橋されたマイクロゲルのオイル(oil)を除去するために、ミニセルストレーナー(mini cell strainer、pore size:40μm、Bio-Rev、Japan)に入れ、エタノールで1000RPMで3分間遠心分離を繰り返してオイル及び光架橋剤を洗浄した。引き続き、洗浄されたHAMAマイクロゲルをPBSに分散させた。
【0095】
図4は、本発明の一実施例によるマイクロゲル形成溶液のHAMA濃度による粘度変化を測定したものである。図4を参照すれば、HAMA溶液の濃度が高くなるほどマイクロゲル形成溶液の粘度も高くなり、それによる粘度は、7cPから135cPまでに測定された。
【0096】
図5は、本発明の一実施例による遠心分離機の分当り回転数(RPM)によるHAMAマイクロドロップレットのサイズを示す。図5を参照すれば、HAMA溶液の濃度とRPMによるHAMAマイクロドロップレットのサイズは、70~90μmにサイズの変化は鮮明に表われず、生成されたドロップレットのサイズは、RPMと無関係であるという結果を得た。しかし、同じ濃度でRPMが変化すれば、生成されるHAMAマイクロドロップレット量の差が発生するために、現場で所望の量のHAMAマイクロゲルを製作するためには、1500RPM条件で3~6重量%のHAMAを適用することが適していると考えられる。
【0097】
<実施例3>131I-HAMAマイクロゲルの現場での製作
【0098】
図6は、本発明の一実施例による131I-HAMAマイクロゲルの現場での製作過程である。図6を参照すれば、前記実施例2によるマイクロゲルの製作方法によって131Iが標識されたHAMA粉末をPBS溶液に分散させて、131I-HAMAマイクロゲルの製作に15分がかかり、現場で放射性同位元素が標識されたマイクロハイドロゲルを製作できるという長所を有する。
【0099】
<実験例1>生体外(In Vitro)131I放出の実験
【0100】
常温で6ウェル(well)にセルストレーナー(pore size:70μl、SPL)を入れ、セルストレーナー上に0.3mCiの131I-HAMAマイクロゲルをキャスティングした。131I-HAMAマイクロゲルが満たされたウェルに5mLのPBS(pH7.4)を充填し、経時的にセルストレーナーに残っている131I-HAMAマイクロゲルの放射線強度をCRC015Rドーズキャリブレータ(dose calibrator、Capintec Inc.,Ramsey、USA)で測定した。
【0101】
図7は、本発明の一実施例によって製造された131I-HAMAマイクロゲル内の放射線強度を定量化したものである。
【0102】
図7を参照すれば、経時的な131I-HAMAマイクロゲル内に留まる131Iの強度を示したものであって、初期1時間は、未標職された131Iや架橋反応に参加することができなかった131I-HAMAマイクロゲル内131I-HAMAの放出で放射線の強度が35%減少したと観察されたが、その以後には、理論的な放射性崩壊(theoretical radioactive decay)である131Iの半減期(half-life of 131I=8.02 day)と類似している減少傾向を示した。挿入された絵の目盛りは、20μmを示す。
【0103】
すなわち、製造された100μm程度のサイズを有する放射性マイクロゲルは、注射器を通じて容易に所望の部位に注入され、定量の放射線治療(radiotherapy)を果たすことができる。そして、マイクロゲルの分解及び溶解速度は、架橋度によって変わりうるために、所望の期間の間に放射線治療が可能であり、これを通じて投与容量(dose)を最小化しながら、局所部位に放射線治療を極大化することができ、これは、組織損傷の最小化を期待することができる。
【0104】
<実験例2>光架橋性HAMAマイクロゲルの生体内(In Vivo)生分解性の実験
【0105】
雄ラット(rat、12~13週齢)は、セムタコ(SamTacho、Osan、Republic of Korea)から購入した。あらゆるラットは、釜山大学校動物資源センター(Animal Resources Center、Busan、Korea)で管理された。
【0106】
生体内でHAMAマイクロゲルの安定性を評価するために、蛍光物質が結合されたHAMAを製造した。HAMA 200mgを25℃で超純水(DI water)160mLとジメチルスルホキシド(DMSO)70mLの溶液に溶かした。この混合物にフルオレセイン-アミン、アセトアルデヒド、シクロヘキシルイソシアニド100μlを入れて、アミド化反応を24時間進行した。
【0107】
図8は、本発明の一実験例によって製造された蛍光物質が結合したHAMAである。
【0108】
図8を参照すれば、HAMAのカルボキシル基とフルオレセイン-アミンとのアミド化反応を通じてコンジュゲーションされた。最終混合物を100mM NaCl溶液で48時間透析し、凍結乾燥した後、微小流体システムを通じてフルオレセインイソチオシアナート(Fluorescein isothiocyanate;以下、FITC)がコンジュゲートされたHAMAマイクロゲルを製作した。
【0109】
図9は、本発明の一実験例によって製造されたマイクロゲルの形状である。
【0110】
図9を参照すれば、蛍光顕微鏡を通じて安定してコンジュゲートされたFITC-HAMAマイクロゲルの形状を確認することができた。
【0111】
図10は、本発明の一実験例によるFITC-HAMAマイクロゲルをラットに注射した部位である。図10を参照すれば、FITC-HAMAの生体分布を評価するために、動きが活発なラットの大腿部筋肉内にPBS(pH7.4)に分散された溶液を0.2mLを注入した。
【0112】
図11は、図10による実験の結果である。
【0113】
図11を参照すれば、FITC-HAMAマイクロゲルを注入してから1,168時間が経った後、ラットの大腿部筋肉を摘出し、0.1cmの厚さに切った組織を蛍光顕微鏡(Eclipse TS100、Nikon、Japan)を通じて分析した。FITC-HAMAマイクロゲルは、ラットの大腿筋肉内に安定して注入されて、注入部位の筋肉組織に埋め込まれている形態で観察され、高分子分解または留まりによる組織での炎症は観察されていない。
【0114】
<実験例3>131I-HAMAマイクロゲルの生体内局所的留まり(retention)の実験
【0115】
131I-HAMAマイクロゲルが生体内に注入された部位でどれほど保持され、131Iの分布を確認するために実験を進行した。PBSに分散されたNa131Iと131I-HAMAマイクロゲル(1mCi/mL)溶液をラットの大腿部筋肉内に0.2mLを注入した後、SPECTイメージングシステム(Infinia Hawkeye 4、GE Healthcare、USA)で経時的にガンマイメージを得た。注入した直後から30分以内には、動的モード(dynamic mode)で注入部分での放射能を秒当たりカウンターで測定した。30分以後からは、静的モード(static mode)で経時的に131Iが注入されたレット全体のイメージを得て、注入部位、甲状腺、前記のような主要組織のガンマカウンターを測定した。
【0116】
図12は、本発明の一実験例によるラットのSPECTイメージである。
【0117】
図12を参照すれば、aは、Na131I溶液、bは、131I-HAMAマイクロゲル溶液を注入したものであって、200μCiの放射性を有する131I溶液を筋肉質内に注入したラットは、30分で全身に流れ、131I-HAMAマイクロゲル溶液を注入したラットは、168hが経っても注入部位に局所的に留まることを確認することができた(T:甲状腺、S:胃、B:膀胱)。
【0118】
図13は、本発明の一実験例による131Iの流れを示す。
【0119】
図13を参照すれば、注入部位での131Iの流れを動的映像を通じて分析した結果、131I溶液の体内での広がる速度が、131I-HAMAマイクロゲルよりもさらに早いと表われた。
【0120】
図14は、本発明の一実験例による131I溶液の他の組織への移動を測定したものであり、図15は、本発明の一実験例による131I-HAMAマイクロゲル溶液の他の組織への移動を測定したものである。図14及び図15を参照すれば、131I溶液は、注入部位以外に甲状腺、胃、そして、膀胱でも測定されたが、131I-HAMAマイクロゲル溶液は、他の部位でほとんど発見されていない。また、131I溶液では、放射線強度が急減したが、131I-HAMAマイクロゲル溶液では、ハイドロゲルの分解と共に徐々に減少した。
【0121】
図16は、本発明の一実施例によるマイクロゲルの活用例を示す概略図である。図16を参照すれば、131Iで標識された光架橋結合性ヒアルロン酸(HA)で製造された放射性マイクロゲルは、注射部位に限定され、注入後、筋肉組織に張り付いて放射性核種の標的部位への滞在時間は増加するが、体液での早い吸収は最小化することができる。このような技術を適用すれば、既存の放射性核種を周期的に患者に注射する放射線治療法を改善することができ、また、低い毒性を有する新たな注射可能な放射能核種製剤の伝達剤への潜在力を保有する。
【0122】
<実施例4>メタクリレート置換が向上したヒアルロン酸の製造
【0123】
約1.0gヒアルロン酸(HA、Mw:90kDa;SNvia、Korea)を12mLの蒸留水に溶解させ、1N水酸化ナトリウムを用いてpHを8まで調整した。ヒアルロン酸溶液は、5℃まで冷却させた後、ヒアルロン酸の二糖単位に対して1倍または4倍当量の無水メタクリル酸(MA)を1時間にわたって滴加した。同時に、1N水酸化ナトリウムを添加してpHを8.0から10.0の間に保持させた。温度とpHは、23時間さらに保持させた後、マクロマ(macromer)溶液を3日間蒸留水で透析(Cellu Sep、nominal molecular weight cutoff 3500 Da)し、-55℃で冷凍して凍結乾燥させ、使用する前まで-20℃で保管した。H NMRスペクトルは、Bruker 600-NMR分光器(spectrometer)を用いて獲得した。これは、メタクリレート基のヒアルロン酸への結合を確認し、メタクリル化度(以下、DM)の計算に用いられた(n=3)。
【0124】
図17は、本発明の一実施例によるHAMAの製造過程である。
【0125】
光架橋性メタクリレート基は、一般的に水性塩基性条件下で無水メタクリル酸と反応させてヒアルロン酸重合体の主鎖(backbone)に混入される。
ヒアルロン酸の1次ヒドロキシル基(hydroxyl group)は、エステル交換反応に最も反応性がある部位と見なされる。ヒアルロン酸は、二糖類単位当たり4個のヒドロキシル基を有し、4個のヒドロキシル基いずれもは、メタクリレート基と混入される。
【0126】
ヒアルロン酸の分子量、ヒアルロン酸に対する無水メタクリル酸のmol比及び反応時間を変化させることにより、異なるDMを有するHAMAが合成される。反応混合物のpH及び温度のようにDMを決定する他の媒介変数もある。無水メタクリル酸は、水性媒質で加水分解されるが、特に、pH10.0以上で水酸化イオンによって触媒化されてメタクリル酸を形成し、ヒアルロン酸とさらに反応しない。低温で無水メタクリル酸のメタクリル酸への加水分解は、さらに遅いと見なされる。しかし、この温度で無水メタクリル酸は、別途の段階として存在する。
【0127】
図17を参照すれば、生物学的活性とより優れた溶液加工性とを考慮する時、90kDaヒアルロン酸が選択された。異なるDMでHAMAを合成するために、二糖類単位に対して無水メタクリル酸の1倍及び4倍当量をヒアルロン酸と反応させた。また、無水メタクリル酸の過度な加水分解を最小化し、反応中の相分離を減少させるために、激しく撹拌しながら、1時間にわたって滴加した。同時に、pHは、5℃で24時間8.0~10.0に保持された。
【0128】
図18は、図17によって製造されたHAMAのH NMRスペクトルである。H NMR実験は、メタクリレート基をヒアルロン酸に混入させてDMの決定に使われた。
【0129】
図18を参照すれば、H NMRスペクトルは、アクリレート陽性子に相応するδ5.6及び6.0ppm付近に新たなピークを表わして、メタクリレート基がヒアルロン酸に混入されたことを示した。DMは、メタクリレート陽性子(5.6及び6.0ppm)とヒアルロン酸のメチル陽性子(1.9ppm)との相対的な統合から計算され、これは、無水メタクリル酸の1及び4当量に対して二糖当たり46±4%及び181±36%の値を示した。
【0130】
ヒアルロン酸及びその誘導体の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーシステムで推定された。これらは、類似した重合体分子量の分布を示し、反応中に早期の架橋結合または鎖分裂を示さなかった。100%以上のメタクリル化は、4当量の無水メタクリル酸が使われた時、1つ以上のヒドロキシル基が置換されたことを示唆する。
【0131】
すなわち、前記実施例4によって、1時間にわたって無水メタクリル酸を徐々に添加することにより、無水メタクリル酸の過度な加水分解を最小化し、5℃で24時間pH8.0とpH10.0との間で激しく撹拌し、保持させて、4倍超過した無水メタクリル酸で100%以上の高いDMを得た。
【0132】
<実験例4>メタクリレート置換が向上したHAMAハイドロゲルの機械的物性
【0133】
簡略に、5%(w/v)、10%(w/v)及び20%(w/v)の異なる濃度の高分子前駆体溶液を光架橋結合させて、幅は5mm、長さは20mm、厚さは1.5mmの引張試験構造で製造した。
【0134】
ハイドロゲルは、機械的テスター(AND 210、Korea)で直接分析した。ひずみ速度(strain rate)は、引張試験のために、1mm min-1に設定された。サンプルの極限引張強度(ultimate tensile strengths)は、ハイドロゲルの破断点(引張破断)で決定された。引張強度(tensile strength)は、応力-変形率曲線で応力の最大点で決定された。
【0135】
ヤング率(Young’s modulus;引張弾性率)は、変形率-応力曲線で傾きの初期5%を求めて計算した。弾性(elasticity)は、応力変形率曲線の変形率の最大点で決定された。
【0136】
図19は、本発明の一実験例によるハイドロゲルの機械的物性を示すグラフである。図19を参照すれば、(A)は、低いDM及び高いDMでHAMA溶液(n=5)の多様な濃度(5%、10%、20%[w/v])から生成されたHAMAハイドロゲルの応力-変形曲線であり、(B)は、前記ハイドロゲルの引張強度グラフ、(C)は、前記ハイドロゲルのヤング率グラフ、及び(D)は、前記ハイドロゲルの延伸率(elongation)グラフを示す(表は、p<0.05()、p<0.01(**)及びp<0.001(***)の統計的有意レベルを示す)。
【0137】
前記(A)の応力-変形曲線は、高いDMのHAMA溶液の濃度が高いほど曲線の傾きも大きいと表われた。
【0138】
前記(B)の引張強度は、HAMA溶液の濃度が5%から20%に増加するにつれて、低いDMは、3.31±0.61から21.22±6.48kPaに、高いDMは、8.83±2.99から44.24±7.09kPaに一定に増加すると表われた。
【0139】
前記(C)のヤング率も、DM及び濃度が高いほど増加すると表われた。
【0140】
前記(D)の延伸率は、DM及び濃度によって6~17%の範囲で多様に表われた。
【0141】
<製造例1>HAMA-DOPA-I
[反1]
【0142】
【化5】
【0143】
反応式1は、HAMA-DOPA-Iの製造過程を示す。前記実施例4によって、メタクリレート置換が向上したHAMAを製造した後、100mgのHAMAを10mL PBS(pH7.4)溶液に溶解させた。1N HClを使用してpHを5.5に調整した後、前記実施例1のHAMA-APIの製造方法と同じ方法で、EDC 85.5mgとNHS 102.7mgとを溶液に添加し、30分間撹拌した。以後、前記APIの代わりに、前記反応式1によって、126.9mgのドーパミン塩酸塩を添加し、1N NaOHを使用して反応混合物のpHを7に調整した後、25℃で24時間撹拌した。反応混合物をpH5.0溶液で2日間透析(Cellu Sep、nominal molecular weight cutoff 3500 Da)し、引き続き、1日間蒸留水で透析した。得られた溶液を凍結乾燥して生成物を得て、生成されたHAMA-DOPA溶液を製造した後、131Iを標識した。前記実施例1によるHAMA-APIよりも131I置換がさらに多くなって、放射線治療の効果もさらに高いと予想された。
【0144】
<製造例2>HAMA-pyrrol-I
[反2]
【0145】
【化6】
【0146】
反応式2は、HAMA-pyrrol-Iの製造過程を示す。前記実施例4によって、メタクリレート置換が向上したHAMAを製造した後、100mgのHAMAを10mL PBS(pH7.4)溶液に溶解させた。1N HClを使用してpHを5.5に調整した後、前記実施例1のHAMA-APIの製造方法と同じ方法で、EDC 85.5mgとNHS 102.7mgとを溶液に添加し、30分間撹拌した。以後、前記APIの代わりに、前記反応式2によって、110.7mgの3-(1H-ピロール-1-イル)-1-プロパンアミンを添加して25℃で24時間撹拌した。反応混合物をpH5.0溶液で2日間透析し、引き続き、1日間蒸留水で透析した。得られた溶液を凍結乾燥して生成物を得て、生成されたHAMA-pyrrol溶液を製造した後、131Iを標識した。
【0147】
<製造例3>HAMA-furan-I
[反3]
【0148】
【化7】
【0149】
反応式3は、HAMA-furan-Iの製造過程を示す。前記実施例4によって、メタクリレート置換が向上したHAMAを製造した後、100mgのHAMAを10mL PBS(pH7.4)溶液に溶解させた。1N HClを使用してpHを5.5に調整した後、前記実施例1のHAMA-APIの製造方法と同じ方法で、EDC 85.5mgとNHS 102.7mgとを溶液に添加し、30分間撹拌した。以後、前記APIの代わりに、前記反応式3によって、119.2mgの3-(アミノメチル)フラン塩酸塩(3-(aminomethyl)furan hydrochloride)を添加して25℃で24時間撹拌した。反応混合物をpH5.0溶液で2日間透析し、引き続き、1日間蒸留水で透析した。得られた溶液を凍結乾燥して生成物を得て、生成されたHAMA-furan溶液を製造した後、131Iを標識した。
【0150】
<製造例4>HAMA-thiophene-I
【反4】
【0151】
【化8】
【0152】
反応式4は、HAMA-thiophene-Iの製造過程を示す。前記実施例4によって、メタクリレート置換が向上したHAMAを製造した後、100mgのHAMAを10mL PBS(pH7.4)溶液に溶解させた。1N HClを使用してpHを5.5に調整した後、前記実施例1のHAMA-APIの製造方法と同じ方法で、EDC 85.5mgとNHS 102.7mgとを溶液に添加し、30分間撹拌した。以後、前記APIの代わりに、前記反応式4によって、100.9mgの2-チオフェンメチルアミン(2-thiophene methylamine)を添加して25℃で24時間撹拌した。反応混合物をpH5.0溶液で2日間透析し、引き続き、1日間蒸留水で透析した。得られた溶液を凍結乾燥して生成物を得て、生成されたHAMA-Thiophene溶液を製造した後、131Iを標識した。
【0153】
<製造例5>HAMA-N-iodoindole(誘導体1)
[反5]
【0154】
【化9】
【0155】
反応式5は、HAMA-N-iodoindoleの製造過程を示す。前記実施例4によって、メタクリレート置換が向上したHAMAを製造した後、100mgのHAMAを20mLジメチルスルホキシド(以下、DMSO)溶液に溶解させた。次いで、前記実施例1のHAMA-APIの製造方法と同じ方法で、EDC 115.1mgとNHS 138.1mgとを溶液に添加し、2時間撹拌した。以後、前記APIの代わりに、前記反応式5によって、77.5mgのN-エチルジイソプロピルアミン(N-ethyldiisopropylamine)を前記混合物に添加した後、96.1mgのトリプタミンを添加した。反応物を36時間窒素下で撹拌した。反応混合物をDMSO溶液で12時間透析し、引き続き、3日間蒸留水で透析した。得られた溶液を凍結乾燥して生成物を得て、生成されたHAMA-indole溶液を製造した後、131Iを標識してHAMA-N-iodoindoleを製造した。
【0156】
図20は、本発明の一製造例によって生成されたHAMA及びHAMA-N-indoleのUV/visスペクトルであり、図21は、本発明の一製造例によって生成されたHAMA-N-indole及びHAMA-N-iodoindoleのH NMRスペクトルである。
【0157】
以上、本発明についての具体的な実施例を説明した。当業者ならば、本発明が、本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態として具現可能であるということを理解できるであろう。したがって、開示された実施形態は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にあるあらゆる差異点は、本発明に含まれたものと解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2021-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含み、
体内に注入された時、1~3週間注入部位に留まることを特徴とする、放射線治療用光架橋性ハイドロゲル:
【化1】
前記化学式1において、
Xは、光架橋が可能なアクリレート、メタクリレート、グリシジルメタクリレート、及びビニルエステルからなる群から選択され、
Yは、OHであるか、下記化学式2であり、
【化2】
前記化学式1または前記化学式2において、
及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択され、
及びmは、1~3の整数であり、
nは、20~4,000である。
【請求項2】
前記放射性同位元素は、
131I、125I、124I、123I、18F、19F、177Lu、及び211Atからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の放射線治療用光架橋性ハイドロゲル
【請求項3】
前記ハイドロゲルは、
10~200μmの平均粒子を有するマイクロゲルであることを特徴とする、請求項1に記載の放射線治療用光架橋性ハイドロゲル。
【請求項4】
請求項に記載のハイドロゲルを有効成分として含有する、放射線治療用薬学組成物。
【請求項5】
請求項に記載のハイドロゲルを有効成分として含有する、放射線診断イメージング用組成物。
【請求項6】
請求項に記載のハイドロゲル及び抗ガン剤を含む、抗ガン治療用薬学組成物。
【請求項7】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩から選択される1つ以上の光架橋性化合物を製造する段階と、
前記製造された光架橋性化合物を光開始剤溶液に溶解させた後、微小流体デバイスのインレットに注入する段階と、
前記微小流体デバイスのアウトレットに界面活性剤を含有したオイルを注入する段階と、
遠心分離を用いてマイクロドロップレットを形成する段階と、
前記形成されたマイクロドロップレットを抽出して光架橋させた後、洗浄してマイクロゲルを形成する段階と、
を含む、放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法:
【化3】
前記化学式1において、
Xは、光架橋が可能なアクリレート、メタクリレート、グリシジルメタクリレート、及びビニルエステルからなる群から選択され、
Yは、OHであるか、下記化学式2であり、
【化4】
前記化学式1または前記化学式2において、
及びR は、それぞれ同一または異なり、水素、1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択され、
及びm は、1~3の整数であり、
nは、20~4,000である。
【請求項8】
前記光架橋性化合物の製造段階は、
ヒアルロン酸、その塩及びこれらの組み合わせからなる群から選択された生分解性高分子及びメタクリレートを反応させる段階と、
前記反応させた反応物に1つ以上の放射性同位元素を標識することができるイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、及び3,4-ジヒドロキシフェニルからなる群から選択された1つ以上の化合物を接合させる段階と、
前記接合された化合物に放射性同位元素を標識する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項9】
前記反応段階は、
0~10℃に冷却させた前記生分解性高分子溶液に前記メタクリレートを30分~2時間にわたって滴加し、pH7~pH11の範囲で20~30時間保持させて行われることを特徴とする、請求項に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項10】
前記光架橋性化合物は、
前記光開始剤溶液のうち、1~20重量%含有されることを特徴とする、請求項に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項11】
前記製造方法は、
現場で10~60分以内に前記マイクロゲルを製造して、即時使われることを特徴とする、請求項に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項12】
前記マイクロゲルは、
ゲルタイプの注射剤型で製造されることを特徴とする、請求項に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【請求項13】
前記マイクロゲルは、
体内に注入されて1~3週間注入部位に留まることを特徴とする、請求項に記載の放射線治療用光架橋性マイクロハイドロゲルの製造方法。
【国際調査報告】