(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】優れた難燃性を備えた硬化性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20220311BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20220311BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20220311BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220311BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20220311BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220311BHJP
B60R 21/235 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K9/04
C08K9/00
C08K3/34
C08L83/06
C08L83/05
B60R21/235
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544704
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2019074155
(87)【国際公開番号】W WO2020155008
(87)【国際公開日】2020-08-06
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516190747
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・シャンハイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES SHANGHAI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウェンチュアン・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】スーウェン・イェー
(72)【発明者】
【氏名】チーコアン・スン
【テーマコード(参考)】
3D054
4J002
【Fターム(参考)】
3D054CC26
4J002CP04X
4J002CP05W
4J002CP06W
4J002CP13W
4J002CP14W
4J002DA116
4J002DD047
4J002DE187
4J002DJ036
4J002EZ047
4J002EZ057
4J002FB086
4J002FD136
4J002FD207
4J002GB00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、以下を含む硬化性シリコーン組成物に関する:(A)ポリオルガノシロキサンポリマー;(B)少なくとも2つのケイ素結合反応性基を有する架橋性有機ケイ素化合物;(C)成分(A)と成分(B)の間の反応を促進することができる触媒;及び(D)前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%のベントナイトであって、少なくとも第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理されたベントナイト。さらに、本発明はまた、硬化性シリコーン組成物及びそれから得られる製品の難燃性を改善する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む硬化性シリコーン組成物:
(A)式(I-1)で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンポリマー
R
1
aZ
bSiO
[4-(a+b)]/2 (I-1)
式中、
R
1は独立して、ヒドロキシル、アルコキシ、アルケニル、及びアルキニル基からなる群から選択され、
Zは同じでも異なっていてもよく、1~30、好ましくは1~12の炭素原子を持つ1価非反応性炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基とアリール基から選択され、
aは1、2、又は3であり、bは0、1、又は2であり、a+bの合計は1、2、又は3である;
(B)少なくとも2つのケイ素結合反応性基を有する架橋性有機ケイ素化合物;
(C)成分(A)と成分(B)の間の反応を促進することができる触媒;及び
(D)前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%のベントナイトであって、少なくとも第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理されたベントナイト。
【請求項2】
アンモニウムイオンによって計算する場合、前記ベントナイトが、処理されたベントナイトの総重量に基づいて、15%を超える、好ましくは30%を超える量の第四級アンモニウム塩で処理されたことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンポリマーが、以下の式(I-2)を有する少なくとも1つのシロキサン単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物:
【化1】
式中、
c=0、1、2、又は3であり、
Z
1は同じでも異なっていてもよく、1~30、好ましくは1~12の炭素原子を持つ1価非反応性炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基とアリール基から選択される。
【請求項4】
Z又はZ
1がC
1~C
8のアルキル基及び/又はC
6~C
20のアリール基から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサンポリマーは、式R
3SiO
1/2のシロキサン単位M、式R
2SiO
2/2のシロキサン単位D、式RSiO
3/2のシロキサン単位T、及び式SiO
4/2のシロキサン単位Qからなる群(Rは1~20個の炭素原子を有する1価の炭化水素基を表す)から選択される少なくとも2つの異なるシロキサン単位を含むアルケニルポリシロキサン樹脂A’を含み、
ただし、これらのシロキサン単位の少なくとも1つはシロキサン単位T又はQであり、シロキサン単位M、D及びTの少なくとも1つはアルケニル基を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
前記架橋性有機ケイ素化合物は、モノマー、ホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物であり、一般式R
4
a’R
5
b’SiO
4-a’-b’/2の少なくとも1つの単位を含み、R
4は、1~約18個の炭素原子を有するアルキル、アリール、及びハロゲン化アルキル基からなる群から選択され、R
5は、水素、ヒドロキシ、及びアルコキシからなる群から選択される反応性基であり、a’の値は0又は1であり、b’の値は2から3であり、a’+b’の合計は2又は3であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
前記架橋性有機ケイ素化合物は、分子あたり同じ又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つ、好ましくは3つ以上のSi-H基を含む水素含有ポリシロキサンを含む、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。。
【請求項8】
前記水素含有ポリシロキサンが以下を含むことを特徴とする、請求項7に記載の硬化性シリコーン組成物:
(i)以下の式を有する少なくとも2つのシロキシル単位、好ましくは少なくとも3つのシロキシル単位:
【化2】
式中、
d=1又は2又は3であり、e=0、1又は2であり、d+e=1、2又は3であり、
Z
3は同じでも異なっていてもよく、1~30、好ましくは1~12の炭素原子を持つ1価非反応性炭化水素基を表し、好ましくはC
1~C
8のアルキル基とC
6~C
20のアリール基から選択される;及び
(ii)任意選択で、以下の式を有する少なくとも1つのシロキサン単位:
【化3】
式中、
f=0、1、2、又は3であり、
Z
3は同じでも異なっていてもよく、上記と同じ意味を持つ。
【請求項9】
前記第四級アンモニウム塩が6~30、好ましくは10~18の炭素原子の炭素鎖を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項10】
前記第四級アンモニウム塩が、C
6~C
30、好ましくはC
10~C
18のアルキル炭素鎖を含むアルキル第四級アンモニウム塩を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項11】
前記処理剤は、ビニル、アミノ、アルキル、メタクリロキシ及びエポキシ基を含む官能性オルガノシラン化合物;有機チタン酸塩カップリング剤;オクタデカン酸;及び同じ処理効果をもたらすことが可能である官能基を含む他の化合物から選択される少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項12】
前記組成物はさらに接着促進剤を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項13】
前記接着促進剤が、同じ又は異なるシリコーン原子に結合した、少なくとも1つのアルケニル基と、少なくとも1つのエポキシ及び/又はトリアルコキシシリル基を有する有機シリコーン化合物であることを特徴とする、請求項12に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項14】
成分(A)及び(B)の総量は、前記組成物のポリマーマトリックスに基づいて、50重量%を超え、好ましくは65重量%を超え、より好ましくは80重量%を超え、特に好ましくは90重量%を超えることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項15】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~25重量%、より好ましくは5~20重量%の量のシリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む。
【請求項16】
請求項1に定義される硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善するためのベントナイトの使用であって、前記ベントナイトは、前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%の量で添加され、第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理されたことを特徴とする使用。
【請求項17】
請求項1に定義される硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善する方法であって、前記組成物にベントナイトを添加することを含み、前記ベントナイトは、第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理され、前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%の量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物を硬化させることによって得られる製品、特にエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた難燃性を備えた硬化性シリコーン組成物、硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善する方法、及び本発明の硬化性シリコーン組成物から得られた製品に関する。さらに、本発明はまた、硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善するためのベントナイトの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
液体シリコーンゴム(LSR)は、自動車産業、電子機器、医療材料などの様々な用途でコーティング組成物としてすでに広く使用されている硬化性シリコーン組成物である。
【0003】
エアバッグなどの重要な製品については、難燃性が厳しく求められている。シリコーンゴム組成物の難燃性を向上させるために、様々な無機フィラー及びオルガノポリシロキサン樹脂を添加することが通常の方法となる。
【0004】
US2013099468は、エアバッグベースファブリックのシリコーンゴムコーティングにオルガノホスファゼン化合物を使用して、FMVSS-302テストに基づく50mm/分未満の低燃焼速度を達成しており、硬化コーティングは低い表面粘着性と高いブロッキング防止特性を示す。
【0005】
JP3165312は、オルガノポリシロキサン樹脂で調製されたエアバッグ用の液体シリコーンゴムコーティング組成物を開示しており、少量のコーティング(17~19gsm)を有するベースファブリックのシリコーンゴムは、50mm/分未満の燃焼速度の優れた難燃性を有する。
【0006】
US5529837Aは、最大20μmの平均粒子サイズを有する炭素、NiO2、FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、CoO2、CeO2、又はTiO2粉末を含むシリコーンコーティング組成物を開示している。得られたシリコーンコーティングは5~20μmの薄さで、540mm/分の燃焼速度で難燃性を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
満足のいく難燃性能を達成するためには、有機ハロゲン含有難燃剤よりも多くの無機難燃剤を使用する必要があるが、汚染の問題を引き起こす可能性がある。しかし、認可される難燃性を確保できる無機フィラーの通常の高用量のために、無機フィラー難燃剤を含むシリコーンコーティングでは、コーティング重量を低くすることは困難である。低重量は、より少ない材料重量、及びコーティングからのVOC又はその他の有害な汚染物質の量を減らす必要のあるさまざまなコーティング用途に有益である。そのような製品は、例えば、高い難燃性と低いコーティング重量の両方が重要であるエアバッグである。
【0008】
したがって、シリコーンゴム組成物の難燃性を改善し、好ましくはコーティング重量を可能な限りさらに低く維持するための効果的な方法を理解する必要性が引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の発明者は、驚くべきことに、上記の課題は、以下に定義される硬化性シリコーン組成物を使用することによって解決できることを発見した。本発明の組成物を用いて、優れた難燃性(例えば、FMVSS-302で特定されるもの)を達成することができる。さらに、本発明の組成物は、驚くべきことに、難燃性の性能を損なうことなく、20gsm以下、例えば5~15gsm、又は約10gsm未満の低いコーティング重量をもたらすことが可能である。特に、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、織布と不織布、又は熱可塑性エラストマーとポリウレタンシートなどの布又はポリマー基材にコーティングする場合、本発明のシリコーン組成物は、10gsmのコーティング重量で、最大で70mm/分未満、平均で40mm/分未満の優れた難燃性をもたらすことができる。
【0010】
第1の態様では、本発明は、以下を含む硬化性シリコーン組成物に関する:
(A)式(I-1)で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンポリマー
R1
aZbSiO[4-(a+b)]/2 (I-1)
式中、
R1は独立して、ヒドロキシル、アルコキシ、アルケニル、及びアルキニル基からなる群から選択され、
Zは同じでも異なっていてもよく、1~30、好ましくは1~12の炭素原子を持つ1価炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基とアリール基から選択され、
aは1、2、又は3であり、bは0、1、又は2であり、a+bの合計は1、2、又は3である;
(B)少なくとも2つのケイ素結合反応性基を有する架橋性有機ケイ素化合物;
(C)成分(A)と成分(B)の間の反応を促進することができる触媒;及び
(D)前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%のベントナイトであって、少なくとも第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理されたベントナイト。
【0011】
第2の側面では、本発明は、硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善するためのベントナイトの使用に関し、前記ベントナイトは、第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理され、前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%の量で添加されることを特徴とする。
【0012】
第3の側面では、本発明は、硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善する方法に関し、前記組成物にベントナイトを添加することを含み、前記ベントナイトは、第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理され、前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%の量で添加されることを特徴とする。
【0013】
第4の側面では、本発明は、上記の硬化性シリコーン組成物から得られる製品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
硬化性シリコーン組成物
本明細書の文脈において、「硬化性シリコーン組成物」、「シリコーンゴム組成物」、「液体シリコーンゴム」及び「シリコーンコーティング組成物」という用語は同義であり、交換可能に使用され得る。自動車産業では、エアバッグは通常、そのような組成物を布地にコーティングすることによって製造される。
【0015】
当業者は、いわゆる硬化性シリコーン組成物が、ポリマーマトリックスの主成分としての有機ケイ素化合物、ポリマー又は樹脂から実質的になるか、又はそれらを含むべきであることを認識している。1つの有利な実施形態では、硬化性シリコーン組成物のポリマーマトリックスは、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは90重量%又は95重量%、さらには100重量%の成分(A)と(B)の合計量を含む。
【0016】
成分(A)
成分(A)は、式(I-1)で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンポリマーである:
R1
aZbSiO[4-(a+b)]/2 (I-1)
式中、
R1は独立して、ヒドロキシル、アルコキシ、アルケニル、及びアルキニル基からなる群から選択され、
Zは同じでも異なっていてもよく、1~30、好ましくは1~12の炭素原子を持つ1価非反応性炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基とアリール基から選択され、
aは1、2、又は3であり、bは0、1、又は2であり、a+bの合計は1、2、又は3である。
【0017】
さらに、前記ポリオルガノシロキサンポリマーは、任意選択で、以下の式(I-2)を有する少なくとも1つのシロキサン単位を含む:
【化1】
式中、
c=0、1、2、又は3であり、
Z
1は同じでも異なっていてもよく、1~30、好ましくは1~12の炭素原子を持つ1価非反応性炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基とアリール基から選択され
【0018】
有利には、ポリオルガノシロキサンポリマーは、実質的に式(I-1)及び(I-2)のシロキサン単位からなり得る。それは、少なくとも50mPa・s、好ましくは200,000mPa・s未満の粘度を有し得る。本開示では、すべての粘度データは動粘度値に関するものであり、特に明記しない限り、ブルックフィールド機器を使用して、例えば、20℃で既知の方法で測定することができる。
【0019】
ポリオルガノシロキサンポリマーは、線状、分岐状、又は環状構造のものであり得る。当業者は、線状又は分岐構造の場合、ポリオルガノシロキサンポリマーが基-R’又はSiR’3によって終端され得ることを理解できる。ここで、R’は、互いに独立して、ヒドロキシル、又はアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル若しくはアリールなどの炭化水素基を示す。
【0020】
本開示の文脈において、アルキル及びアルコキシ基は、有利には1~18、より好ましくは1~12、最も好ましくは1~8個の炭素原子を有し得、したがって、例えばメチル、エチル、プロピル、メトキシ及びエトキシ基を含み得る。アルケニル基及びアルキニル基は、好ましくは2~12、より好ましくは2~8個の炭素原子を有し得、したがって、例えば、ビニル、プロペニル及びエチニル基を含み得る。アリール基は、好ましくは6~20、より好ましくは6~12個の炭素原子を有し得、したがって、例えば、フェニル、トリル、キシリル又はナフチル基を含み得る。
【0021】
例示的な一実施形態では、Z又はZ1は、C1~C8のアルキル基、及び/又はC6~C20のアリール基から選択される。
【0022】
式(I-1)のシロキサン単位の例には、ビニルジメチルシロキシ、ビニルフェニルメチルシロキシ、ビニルメチルシロキシ及びビニルシロキサン単位が含まれ得る。
【0023】
式(I-2)のシロキサン単位の例は、SiO4/2単位、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、ジフェニルシロキシ、メチルシロキシ及びフェニルシロキシ基である。
【0024】
ポリオルガノシロキサンポリマーの例には、ジメチルポリシロキサン(ジメチルビニルシリル末端基を含む)、(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー(トリメチルシリル末端基を含む)、(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー(ジメチルビニルシリル末端基を含む)及び環状メチルビニルポリシロキサンなどの線状又は環状化合物が含まれ得る。
【0025】
成分(A)の1つの好ましい実施形態において、ポリオルガノシロキサンポリマーは、以下を含むか、又は以下からなる、アルケニルポリシロキサン樹脂A’を含み得る:
式R3SiO1/2のシロキサン単位M、式R2SiO2/2のシロキサン単位D、式RSiO3/2のシロキサン単位T、及び式SiO4/2のシロキサン単位Qからなる群(Rは1~20個の炭素原子を有する1価の炭化水素基を表す)から選択される少なくとも2つの異なるシロキサン単位。ただし、これらのシロキサン単位の少なくとも1つはシロキサン単位T又はQであり、シロキサン単位M、D及びTの少なくとも1つはアルケニル基を含む。
【0026】
有利には、ポリシロキサン樹脂A’は、200~100,000、好ましくは200~50,000、より好ましくは500~30,000の範囲の重量平均分子量を有する。ここで、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー及びポリスチレンを標準として使用することによって得ることができる。
【0027】
有利には、ポリオルガノシロキサンポリマー又は好ましくはポリシロキサン樹脂A’中のすべて又は実質的にすべてのアルケニル基がシロキサン単位M(MVi単位)又はシロキサン単位D(DVi単位)に結合している場合、本開示のシリコーン組成物は、他の方法で結合されるアルケニル基を有するものよりも、室温又はより高い温度でより迅速に硬化することができる。
【0028】
上記は、ポリシロキサン樹脂A’のほんの一例である。単位M、T、D及びQによって構成される他の樹脂もまた、ポリシロキサン樹脂としての使用に適していることは当業者には明らかであろう。
【0029】
一実施形態では、ポリシロキサン樹脂A’の量は、組成物の総重量に基づいて、0~50重量%、好ましくは1~40重量%、より好ましくは5~35重量%の範囲であり得る。
【0030】
本開示の文脈において、組成物又は成分、特にポリシロキサン樹脂又は成分(A)及び(B)に言及する場合、「(実質的に)…からなる/含む」という用語は、関連する組成物又は成分は、関連する組成物又は成分の総重量に基づいて、挙げられた物質を50重量%を超えて、例えば、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、さらには100重量%含むことを意味する。
【0031】
成分(B)
成分(B)は、分子あたり少なくとも2つ又は3つのケイ素結合反応性基を有する架橋性有機ケイ素化合物であり、これは、上記の成分(A)と、特に、当業者によく知られているように、硬化メカニズムに基づいて、成分(A)のアルケニルのような反応性基R1又はヒドロキシル基とそれぞれ反応することができる。架橋性有機ケイ素化合物は、モノマー、オリゴマー、又はポリマーであり得る。一実施形態では、それらは、好ましくは、25℃で1000mPa・s以下、より好ましくは、25℃で2~500mPa・sの粘度を有する。
【0032】
1つの可能な実施形態において、適切な架橋性有機ケイ素化合物は、縮合反応を開始することができ、一般に式R4-nSi-Ynによって表すことができる多官能性シラン化合物である。ここで、nは3又は4であり、Rはアルキル又はアリールのような非反応性炭化水素基であり、Yは加水分解性官能基である。ポリシロキサンポリマーとのさまざまな架橋メカニズムに応じて、グループYには、カルボニルオキシ(-OCO-)、オキシム(-ON=C<)、エーテル(-O-)、アミン、アミド(>N-CO-)、アルケニルオキシ、及び/又はアミノキシル(-O-N<)基を含み得る。したがって、グループYは、アルコキシ(-OR’’’)、-OCOR’’’、-ON=CR’’’2、-NHR’’’、-NR’’’COR’’’、-O-C(R’’’)=CH2及び-ONR’’’2からなる群から選択され得る。R’’’は、1~30個の炭素原子を有する、アルキル又はアリールなどの非反応性炭化水素基を示し、好ましくはメチル、エチル、プロピルである。これらの架橋有機ケイ素化合物の調製方法は、当業者に周知であるか、又は容易に利用可能である。
【0033】
別の好ましい実施形態において、架橋有機ケイ素化合物は、モノマー、ホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物であり、一般式R4
a’R5
b’SiO4-a’-b’/2の少なくとも1つの単位を含む。ここで、R4は、1~約18個の炭素原子を有するアルキル及びアリール基からなる群から選択され、R5は、水素、ヒドロキシ、及びアルコキシからなる群から選択される反応性基であり、a’の値は0又は1であり、b’の値は2から3であり、a’+b’の合計は2又は3である。
【0034】
上記のように、成分(A)の官能基の選択及び様々な硬化メカニズムに応じて、成分(B)のSi原子に結合した反応性基が選択される。例えば、好ましい付加硬化反応の場合、架橋有機ケイ素化合物は、ヒドロシリル化メカニズムに従って、成分(A)のアルケニル基と反応して架橋するために、分子あたり同じ又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つ、好ましくは3つ以上のSi-H基を含む水素含有ポリシロキサンを含むか、又はそれからなることができ、それにより、硬化した製品を形成する。
【0035】
付加硬化反応の好ましい一実施形態では、水素含有ポリシロキサンは、以下を含む:
(i)以下の式を有する少なくとも2つのシロキシル単位、好ましくは少なくとも3つのシロキシル単位:
【化2】
式中、
d=1又は2又は3であり、e=0、1又は2であり、d+e=1、2又は3であり、
Z
3は同じでも異なっていてもよく、1~30、好ましくは1~12の炭素原子を持つ1価炭化水素基を表し、好ましくはC
1~C
8のアルキル基とC
6~C
20のアリール基から選択される;及び
(ii)任意選択で、以下の式を有する少なくとも1つのシロキサン単位:
【化3】
式中、
f=0、1、2、又は3であり、
Z
3は同じでも異なっていてもよく、上記と同じ意味を持つ。
【0036】
好ましい実施形態において、Z3は、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、フェニル、キシリル及びトリルなどからなる群から選択され得る。
【0037】
水素含有ポリシロキサンの動粘度は、少なくとも10mPa・s、好ましくは20~1000mPa・sである。
【0038】
水素含有ポリシロキサンは、実質的に、式(II-1)の単位及び任意選択の式(II-2)の単位からなることができる。水素含有ポリシロキサンは、線状、分岐状、又は環状構造のものであり得る。同様に、当業者はまた、線状又は分枝構造の場合、成分(B)、好ましくは水素含有ポリシロキサンが、基-R”又は-SiR”3によって終端され得ることを理解できる。ここで、R”は、互いに独立して、基Z3に与えられた意味を持つか、Hを表す。
【0039】
式(II-1)の単位の例には、H(CH3)2SiO1/2、HCH3SiO2/2、及びH(C6H5)SiO2/2が含まれる。
【0040】
式(II-2)の単位の例は、式(I-2)の単位について上に与えられたものと同じであり得る。
【0041】
水素含有ポリシロキサンの例には、ジメチルポリシロキサン(水素化ジメチルシリル末端基を含む)、(ジメチル)(ヒドロメチル)ポリシロキサン単位(トリメチルシリル末端基を含む)を有するコポリマー、(ジメチル)(ヒドロメチル)ポリシロキサン単位(水素化ジメチルシリル末端基を含む)を有するコポリマー、トリメチルシリル末端基を有する水素化メチルポリシロキサン及び環状水素化メチルポリシロキサンなどの線状、分岐状、又は環状化合物が含まれ得る。
【0042】
場合によっては、水素含有ポリシロキサンは、水素化ジメチルシリル末端基を含むジメチルポリシロキサンと、少なくとも3つのヒドロシリル基を含むオルガノポリシロキサンとの混合物であり得る。
【0043】
成分(A)のR1などの反応性基がヒドロキシル基又はアルコキシ基である場合、架橋有機ケイ素化合物の反応性基は、それぞれアルコキシ基又はヒドロキシル基のいずれかであり、2つの成分間で縮合反応を可能にすることが好ましい。成分(A)の反応性基がヒドロキシル基又はアルケニル基である場合、架橋有機ケイ素化合物の反応性基は水素原子であり得、2つの成分間の縮合又は付加反応のいずれかを可能にする。
【0044】
成分Bは、硬化性液体シリコーンゴム組成物を製造するために従来使用されている量で使用される。使用される量は、選択された反応基の特定の架橋メカニズム及び所望の特性に応じて変化する。例示的な実施形態では、縮合硬化組成物の場合、架橋成分Bは、成分Aの100重量部あたり約0.1~15重量部の量で存在する。
【0045】
付加硬化を用いて高品質の硬化物を得るためには、成分Bのケイ素結合水素全体と成分Aのケイ素結合アルケニル基とのモル比は、好ましくは1:2~15:1の範囲にある。さらにより好ましくは、成分Bは、ケイ素結合水素と成分Aによって提供されるケイ素結合アルケニルとのモル比の約1:1~3:1の範囲を提供するのに十分な濃度で添加される。
【0046】
成分(C)
成分(C)は、成分(A)と成分(B)との間の反応を触媒又は促進することができる触媒である。シリコーンゴム組成物の架橋反応のタイプ、すなわち縮合反応又は付加反応のいずれかに応じて、当業者は、成分(C)に特定の適切な化合物を選択する。
【0047】
縮合反応によって硬化されるシリコーンコーティング組成物の一実施形態では、触媒は、スズ又はチタンに基づく触媒などの既知の縮合触媒のいずれかであり得る。有用な有機スズ化合物は、スズの原子価が+2又は+4の化合物である。これらのスズ化合物は、ケイ素上で置換されたアルコキシ基とケイ素上で置換されたヒドロキシル基との間の反応を促進することが当技術分野で知られている。縮合触媒として有用な典型的なスズ化合物には、ステアリン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、ナフタン酸第一スズ、ヘキソ酸第一スズ、コハク酸第一スズ、カプリル酸第一スズ、及びオクタン酸第一スズなどのカルボン酸の第一スズ塩;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルチンジオクトエート、ジブチルスズジホルメート、及びジブチルチンジネオデカノエートなどのカルボン酸のスズ塩、ならびに上記の部分的に加水分解された生成物が含まれる。本発明の目的のために、ジブチルスズジラウレート、ジメチルチンジネオデカノエート、及びオクタン酸第一スズが好ましい触媒である。
【0048】
付加反応によって硬化されるシリコーンコーティング組成物の一実施形態では、適切な付加触媒には、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム又は白金含有触媒などの白金族金属系の触媒が含まれる。白金系の触媒が特に好ましく、担体(例えば粉末炭)上に堆積された白金から、塩化白金、白金の塩、塩化白金酸、及びそれらのカプセル化された形態までの範囲の既知の形態のいずれかをとることができる。白金触媒の好ましい形態は、クロロ白金酸、白金アセチルアセトナート、ハロゲン化白金とエチレン、プロピレン、オルガノビニルシロキサン、及びスチレンなどの不飽和化合物との錯体;ヘキサメチルジ白金、PtCl2、PtCl3、PtCl4、及びPt(CN)3である。あるいは、白金族触媒は白金触媒である。白金触媒の適切な形態には、以下が含まれるが、これらに限定されない:塩化白金酸、1,3-ジエテニル-1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン白金錯体、ハロゲン化白金又は塩化白金酸とジビニルジシロキサンとの錯体、及び塩化白金酸、ジビニルテトラメチルジシロキサン及びテトラメチルジシロキサンの反応によって形成される錯体。
【0049】
成分(C)は、本発明のシリコーンゴム組成物を所望の時間内に架橋するのに十分な量で使用され、これは通常、ルーティン実験によって決定することができる。一般に、縮合触媒は、成分(A)100重量部ごとに、約0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部のレベルで添加することができる。さらに、白金系の触媒などの添加触媒の有効量は、例えば、組成物の総重量に基づいて、100万部あたり、約0.1~1000重量部の金属(例えば、白金)、好ましくは2~100ppm、より好ましくは5~50ppmであり得る。
【0050】
成分(D)
成分(D)は、少なくとも第四級アンモニウム塩を含む処理剤によって処理されたベントナイトである。好ましくは、それはナノスケールのプレートレットフィラーベントナイト化合物である。ナノスケールのプレートレットフィラーは、ポリマー又は樹脂中のベントナイト材料のようなフィラーの分散体であるナノ複合体の形態であり得る。ベントナイト材料は、その表面に保持される第四級アンモニウム塩を含む処理剤で表面処理される。第四級アンモニウム塩は、6~30の炭素鎖、好ましくは10~18の炭素原子を含む。
【0051】
一実施形態では、適切な第四級アンモニウム塩は、C6~C30、好ましくはC10~C18のアルキル炭素鎖を含むアルキル第四級アンモニウム塩を含む。第四級アンモニウム塩に加えて、処理剤は、少なくとも1つの助剤をさらに含み得、助剤は、ビニル、アミノ、アルキル、メタクリロキシ及びエポキシ基を含む官能性オルガノシラン化合物;有機チタン酸塩カップリング剤;オクタデカン酸;及び同じ処理効果をもたらす又は促進し得る官能基を含む他の化合物から選択される。好ましくは、処理剤は、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%又は少なくとも70重量%又は90重量%の第四級アンモニウム塩及び任意選択で前記助剤を含むか、又はそれらからなる。1つの有利な実施形態において、ベントナイトは、アンモニウムイオンによって計算する場合、前記ベントナイトが、処理されたベントナイトの総重量に基づいて、15%を超える、好ましくは30%を超える量の第四級アンモニウム塩で処理されている。
【0052】
さらに、好ましくは、ベントナイト材料はハロゲンを含まない。そのようなベントナイト化合物の市販の製品には、例えば、Garamite(登録商標)1958又はGaramite(登録商標)1210が含まれる。また、好ましくは、ハロゲン又はハロゲン含有化合物は組成物に含まれない。
【0053】
驚くべきことに、少なくとも第四級アンモニウム塩で処理されたベントナイト化合物の表面は、シリコーンマトリックスとよく相容し、優れた難燃性能を発揮すると同時に、シリコーン組成物のコーティング重量を10gsm未満に抑えることが見出された。
【0054】
一実施形態では、処理されたベントナイト化合物は、好ましくは、D50=1~50μm、例えば5~30μmの粒子サイズを有する。
【0055】
ベントナイト化合物は、組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%、例えば0.1%又は0.15%から約11%の量で添加される。ベントナイト化合物を少量でも使用すれば、難燃性が驚くほど向上することがわかった。ただし、20%を超えると、低コーティング重量と加工性が損なわれる可能性がある。
【0056】
他の任意的な成分
上記の成分(A)から(D)に加えて、本発明による硬化性シリコーン組成物は、必要に応じて組成物の全体的な特性を調整するために、任意選択でさらなる成分を含むことができる。
【0057】
そのような追加の構成要素の一例は、接着促進剤である。本開示の一実施形態では、接着促進剤は、エポキシシラン、アルコキシシラン、アシルオキシシラン、アリールオキシシラン又はそれらのオリゴマーから1つ又は複数選択され得る。それらには、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ガンマ-メタクリロキシ-プロピルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシランベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン及びフマル酸ビス(トリメトキシシリルプロピル)、トリメトキシシリル官能基修飾シリコーンなどのアルコキシ又はアリールオキシシリコーンが含まれるが、これらに限定されない。さらに、それらはまた、シラノール、1つ又は複数のアルコキシシリル官能基を含むオリゴシロキサン、アルコキシシリル官能基を含むポリシロキサン、ヒドロキシル官能基を含む1つ又は複数のオリゴマーシロキサン、1つ又は複数のアリールオキシシリル官能基を含むポリシロキサン、1つ又は複数のアルコキシシリル官能基を含むシクロシロキサン、1つ又は複数のヒドロキシル基を含むシクロシロキサン、テトラアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びそれらの混合物、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0058】
接着促進剤の量は、成分(A)100重量部あたり0.01~5重量部、好ましくは1~3重量部であり得る。
【0059】
組成物にさらに含まれ得る成分の例には、顔料、着色剤、又はシリカ、炭酸カルシウム、石英、ウォラストナイト、酸化セリウム、Al(OH)3、Fe2O3、Al2O3、マイカ、タルク、MgO、Mg(OH)3、TiO2が含まれる。しかしながら、これらのフィラーを大量に使用しても、難燃性のさらなる向上には寄与せず、低コーティング重量性能を大きく損なうため、好ましくは30重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5%未満又はさらには0%の量で使用される。好ましい実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~25重量%、より好ましくは5~20重量%の量のシリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む。
【0060】
硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善する方法に関して、本発明のプロセスは、組成物にベントナイトを添加することを含み、ベントナイトは、第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理され、組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16%、より好ましくは0.05~12%の量で添加される。
【0061】
本発明のシリコーン組成物の個々の成分を混合する順序は厳密に制限されていない。本発明の方法による一実施形態では、成分(A)、成分(B)、及び任意選択で成分(C)のプレミックスは、例えば室温で十分に攪拌しながら最初に形成し、次に、成分(D)で処理したベントナイトを当該プレミックスに添加される。
【0062】
本発明のシリコーン組成物の調製後、硬化反応は、架橋メカニズムに応じて異なる反応条件下で開始される。
【0063】
本開示の最後の側面では、本発明は、上記の硬化性シリコーン組成物から得られる製品に関する。例示的な実施形態では、製品は、本発明の硬化性シリコーン組成物を、浸漬コーティング、ロールコーティング及びブラシコーティングなどの任意の従来の方法で基材上にコーティングし、次いで、当業者に知られている適切な条件下(加熱あり又は加熱なし)で組成物を硬化させることによって得ることができる。例示的な実施形態では、硬化は、120~220℃の温度で10分以内、好ましくは5分、例えば150~180℃の温度で45秒~120秒で実施することができる。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物がコーティングされる適切な基材は、例えば、布、ポリマーフィルム、熱可塑性エラストマー、金属、ガラス繊維又はセラミック材料のようなガラス、好ましくは、織物若しくは不織布、又はポリマーフィルム若しくはシートを含む布、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリウレタン、ポリエステル、及びそれらの組成物又は混合物を含む。好ましい実施形態では、そのような製品はエアバッグであり得る。
【実施例】
【0065】
第1部分:コーティングされた布の炎色テスト
テストサンプルの作製
シリコーン液体コーティング組成物を布にナイフコーティングし、160℃で2分間硬化させる。
布:ポリアミド66、470dtex、51×51(cm)
コーティング重量の測定:コーティング前のブランクの重量(W1)を測定し、硬化後のコーティングされた布の重量(W2)を測定し、及びコーティング面積Sを測定する。次の式に従って重量を計算する:
CW=(W2-W1)/S、単位:平方メートルあたりのグラム
テスト装置:
テスト基準:FMVSS-302
テスト条件:ワイヤーなし、コーティングされていない側を火に向ける。
【0066】
【0067】
例1(比較例1)
75.53部の成分A1と14.655部の沈降炭酸カルシウム、5.45部の成分B1及び0.02部の1-エチニル-1-シクロヘキサノールを装填し、100gスピードミキサーカップにて2000rpmで30秒間混合した。その後、促進剤として0.75部のビニルトリメトキシシラン及び1.45部の(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランをスピードミキサーに加え、2000rpmで30秒間混合し、続いて2.1部のテトラブタノレートチタン及び0.03部の成分C1を加え、さらに2000rpmで30秒間混合した。例1の調製された混合物は、難燃性に関してテストされ、例2~6のプレミックスとして使用された。
【0068】
例2~8
例2~8のサンプルは、それぞれのフィラー、すなわち、Garamite 1958、CP-250、CP-27、ウォラストナイト、水酸化アルミニウム及び酸化第二鉄を、表1に指定されるそれぞれの量で、例1によるプレミックスに添加し、次いでスピードミキサーで2000rpm、30秒間混合することによって調製した。組成とテスト結果を表1に示す。
【0069】
比較組成(対比)
75.53部の成分A1と14.655部の未処理ベントナイト、5.45部の成分B1及び0.02部の1-エチニル-1-シクロヘキサノールを装填し、100gスピードミキサーカップにて2000rpmで30秒間混合した。その後、促進剤として0.75部のビニルトリメトキシシラン及び1.45部の(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランをスピードミキサーに加え、2000rpmで30秒間混合し、続いて2.1部のテトラブタノレートチタン及び0.03部の成分C1を加え、さらに2000rpmで30秒間混合した。
【0070】
【0071】
テスト結果:
例4~6は、同じコーティング条件下で低コーティング重量10gsmを達成することはできない。
上記のテストでは、ベントナイトをわずか3%で平均燃焼速度40mm/分未満を達成でき、ナイフコーティングで約10gsmの低被覆重量を達成できることが示された。他のフィラーに関しては、コーティング重量が15gsm未満のレベルに達することができず、はるかに高い投与量でも、40mm/分未満の平均燃焼速度を達成することは依然として困難である。
【0072】
テストサンプルの作製
シリコーン液体コーティング組成物を布にナイフコーティングし、160℃で2分間硬化させる。
布:ポリアミド66、470dtex、46×46(cm)
コーティング重量の測定:コーティング前のブランクの重量(W1)を測定し、硬化後のコーティングされた布の重量(W2)を測定し、及びコーティング面積Sを測定する。次の式に従って重量を計算する:
CW=(W2-W1)/S、単位:平方メートルあたりのグラム
テスト装置:
テスト基準:FMVSS-302
テスト条件:ワイヤーなし、コーティングされていない側を火に向ける。
【0073】
【0074】
テスト結果:
例9、10、12もまた、表2に記載されるような様々な充填剤を添加して、上記のプレミックスに基づいて調製された。それらはすべて、例1と比較して、布でより優れた難燃性能を示し、処理されたベントナイトの0.25%の投与量で性能を40%向上させることができる。
【0075】
第2部分:硬化シリコーンエラストマーの火炎テスト
テストサンプルの作製
2~10分間脱気した混合液体シリコーンを2mm厚のテフロン処理金型に注ぎ、150℃のオーブンで30分間硬化させる。硬化したスラブを幅2cm、長さ15cmに切断し、23±2℃、50±5%RHで48時間放置する。
【0076】
テスト条件:各試験片は、その下端がブンゼン(Bunsen)バーナーチューブの10mm上になるように支持される。その後、試験片を吊るす。試験片の下端の中央に高さ20mmの青い炎を10秒間当ててから、取り除く。各組成について、5つの試験片をテストし、各試験片の個々の消火時間を記録する。t1は、5回の消火時間の平均として報告される。
【0077】
例13(比較例2)
95.27部の成分A2、3.12部の成分B2、1.45部の成分B3及び0.155部のメチルビニルシクロシロキサンを装填し、100gスピードミキサーカップにて2000rpmで30秒間混合し、続いて0.0182部の成分C1を加え、さらに2000rpmで30秒間混合した。例13の調製された混合物は、難燃性に関してテストされ、例14~15のプレミックスとして使用された。
【0078】
例14~15
例14~15のサンプルは、表2に指定された様々な量のGaramite 1958を例13によるプレミックスに添加し、次いで2000rpmで30秒間スピードミキサーで混合することによって調製された。組成とテスト結果を表3に示す。
【0079】
【0080】
テスト結果
上記の試験は、ベントナイトのわずか3部で、50秒未満の平均t1を達成できることを示した。
【0081】
第3部分:硬化シリコーンエラストマーの火炎試験
テストサンプルの作製
2~10分間脱気した混合液体シリコーンを2mm厚のテフロン処理金型に室温で注ぎ、24時間硬化させる。次に、硬化したスラブを幅2cm、長さ15cmに切断し、23±2℃、50±5%RHで48時間放置する。
【0082】
テスト条件:各試験片は、その下端がブンゼンバーナーチューブの10mm上になるように支持される。試験片を吊るす。次に、試験片の下端の中央に高さ20mmの青い炎を10秒間当ててから、取り除く。燃焼時間、燃焼距離を記録する。
【0083】
例16(比較例3)
58.37部の成分A3と24.991部の成分B4、12.65部の未処理石英フィラー及び0.285部の粘度45mPa・sのヒドロキシゲン終端ポリジメチルシロキサンオイルを装填し、100gスピードミキサーカップにて2000rpmで30秒間混合した後、3.58部の成分C2を添加した。例16の調製された混合物は、難燃性に関してテストされ、例17のプレミックスとして使用された。
【0084】
例17
例17のサンプルは、例16の100部のプレミックスを3部のGaramite 1958を100gスピードミキサーカップに加え、次にスピードミキサーにて2000rpmで30秒間混合することによって調製された。組成とテスト結果を表3に示す。
【0085】
【0086】
テスト結果
処理されたベントナイトの3部だけで燃焼距離を半分にすることができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む硬化性シリコーン組成物:
(A)式(I-1)で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンポリマー
R
1
aZ
bSiO
[4-(a+b)]/2 (I-1)
式中、
R
1は独立して、ヒドロキシル、アルコキシ、アルケニル、及びアルキニル基からなる群から選択され、
Zは同じでも異なっていてもよく、1~3
0の炭素原子を持つ1価非反応性炭化水素基を表し
、
aは1、2、又は3であり、bは0、1、又は2であり、a+bの合計は1、2、又は3である;
(B)少なくとも2つのケイ素結合反応性基を有する架橋性有機ケイ素化合物;
(C)成分(A)と成分(B)の間の反応を促進することができる触媒;及び
(D)前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20%、好ましくは0.01~16
%のベントナイトであって、少なくとも第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理されたベントナイト。
【請求項2】
アンモニウムイオンによって計算する場合、前記ベントナイトが、処理されたベントナイトの総重量に基づいて、15%を超え
る量の第四級アンモニウム塩で処理されたことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンポリマーが、以下の式(I-2)を有する少なくとも1つのシロキサン単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物:
【化1】
式中、
c=0、1、2、又は3であり、
Z
1は同じでも異なっていてもよく、1~3
0の炭素原子を持つ1価非反応性炭化水素基を表
す。
【請求項4】
Z又はZ
1がC
1~C
8のアルキル基及び/又はC
6~C
20のアリール基から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサンポリマーは、式R
3SiO
1/2のシロキサン単位M、式R
2SiO
2/2のシロキサン単位D、式RSiO
3/2のシロキサン単位T、及び式SiO
4/2のシロキサン単位Qからなる群(Rは1~20個の炭素原子を有する1価の炭化水素基を表す)から選択される少なくとも2つの異なるシロキサン単位を含むアルケニルポリシロキサン樹脂A’を含み、
ただし、これらのシロキサン単位の少なくとも1つはシロキサン単位T又はQであり、シロキサン単位M、D及びTの少なくとも1つはアルケニル基を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
前記架橋性有機ケイ素化合物は、モノマー、ホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物であり、一般式R
4
a’R
5
b’SiO
4-a’-b’/2の少なくとも1つの単位を含み、R
4は、1~約18個の炭素原子を有するアルキル、アリール、及びハロゲン化アルキル基からなる群から選択され、R
5は、水素、ヒドロキシ、及びアルコキシからなる群から選択される反応性基であり、a’の値は0又は1であり、b’の値は2から3であり、a’+b’の合計は2又は3であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
前記架橋性有機ケイ素化合物は、分子あたり同じ又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2
つ以上のSi-H基を含む水素含有ポリシロキサンを含む、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物
。
【請求項8】
前記水素含有ポリシロキサンが以下を含むことを特徴とする、請求項7に記載の硬化性シリコーン組成物:
(i)以下の式を有する少なくとも2つのシロキシル単
位:
【化2】
式中、
d=1又は2又は3であり、e=0、1又は2であり、d+e=1、2又は3であり、
Z
3は同じでも異なっていてもよく、1~3
0の炭素原子を持つ1価非反応性炭化水素基を表
し;及び
(ii)任意選択で、以下の式を有する少なくとも1つのシロキサン単位:
【化3】
式中、
f=0、1、2、又は3であり、
Z
3は同じでも異なっていてもよく、上記と同じ意味を持つ。
【請求項9】
前記第四級アンモニウム塩が6~3
0の炭素原子の炭素鎖を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項10】
前記第四級アンモニウム塩が、C
6~C
30
のアルキル炭素鎖を含むアルキル第四級アンモニウム塩を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項11】
前記処理剤は、ビニル、アミノ、アルキル、メタクリロキシ及びエポキシ基を含む官能性オルガノシラン化合物;有機チタン酸塩カップリング剤;オクタデカン酸;及び同じ処理効果をもたらすことが可能である官能基を含む他の化合物から選択される少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項12】
前記組成物はさらに接着促進剤を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項13】
前記接着促進剤が、同じ又は異なるシリコーン原子に結合した、少なくとも1つのアルケニル基と、少なくとも1つのエポキシ及び/又はトリアルコキシシリル基を有する有機シリコーン化合物であることを特徴とする、請求項12に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項14】
成分(A)及び(B)の総量は、前記組成物のポリマーマトリックスに基づいて、50重量%を超
えることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項15】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて
、1~25重量
%の量のシリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む。
【請求項16】
請求項1に定義される硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善するためのベントナイトの使用であって、前記ベントナイトは、前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20
%の量で添加され、第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理されたことを特徴とする使用。
【請求項17】
請求項1に定義される硬化性シリコーン組成物の難燃性を改善する方法であって、前記組成物にベントナイトを添加することを含み、前記ベントナイトは、第四級アンモニウム塩を含む処理剤で処理され、前記組成物中の他の成分の総重量に基づいて、0.001~20
%の量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物を硬化させることによって得られる製品、特にエアバッグ。
【国際調査報告】