(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】TLR阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 401/12 20060101AFI20220311BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20220311BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20220311BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20220311BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20220311BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220311BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220311BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220311BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220311BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220311BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220311BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220311BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220311BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220311BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220311BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220311BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220311BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20220311BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20220311BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220311BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220311BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220311BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220311BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220311BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220311BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
C07D401/14
A61K31/472
A61K31/454
A61K31/4545
A61P1/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P37/02
A61P1/16
A61P1/18
A61P9/00
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P13/12
A61P19/10
A61P21/02
A61P25/00
A61P31/04
A61P43/00 111
A61P9/10
A61P25/28
A61P25/16
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544777
(86)(22)【出願日】2020-01-25
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2020050583
(87)【国際公開番号】W WO2020157620
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521338710
【氏名又は名称】インシリコ メディシン アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ザヴォロンコフス, アレクサンドルス
(72)【発明者】
【氏名】アラディンスキー, ヴラジーミル
(72)【発明者】
【氏名】アリパー, アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB09
4C063CC10
4C063CC12
4C063CC15
4C063DD06
4C063DD10
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC21
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB07
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC42
(57)【要約】
本明細書中に示す一般式(I)(式中、変数の意味は明細書中で説明されている)の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。医薬組成物は、本発明の化合物を含むことができ、TLR7/8受容体を阻害する方法で使用することができる。本発明は、さらに、被験体におけるTLR7、TLR8、またはTLR7/8の活性を阻害する方法であって、一般式(I)~(V)および下記の式1~30の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩を前述の障害のある被験体に投与する工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化34】
(式中、
環Bは、3~7個の原子を含む置換または非置換の単環であり、前記単環は、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールから選択され、
ここで、前記ヘテロシクリルまたはヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有し;
Gは、置換または非置換のC
0~C
5アルキレンを表し;
W、U、E、およびJのうちの1つはCR-TまたはN-Tを表し、W、U、E、およびJのうちの残りは独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;
Tは、
【化35】
を表し、ここで、
Zは、-O-C(O)-、-(O)C-O-、-N-C(O)-、-(O)C-N-、-O-C(NR)-、-(NR)C-O-、-O-C(S)-、-(S)C-O-、-C(O)-、-C(O)ON-、および-N-C(O)-O-から選択され;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~24、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前記アルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前記ヘテロ原子は、独立して、-O-、-S-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前記アルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換された3~8員のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、
R1は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、C
1~C
10アルコキシ、-CN、3~8員の飽和または部分不飽和の炭素環、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環のヘテロアリール環のうちの1つまたは1つより多くであり;
R2は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、-OR、-SR、-CN、3~8員の飽和または部分不飽和の炭素環、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環のヘテロアリール環のうちの1つまたは1つより多くであり;
各Rは、独立して、H、C
1~C
20アルキル、C
2~C
20アルケニル、C
2~C
20アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-OR、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、-CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R、3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールであり、
または2つのR基が存在する場合、共に、N、S、およびOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~8員の飽和または不飽和の炭素環または複素環を形成する)
の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
前記化合物は、一般式(II):
【化36】
を有し、式中、
YおよびLは、独立して、CRまたはNであり;または、必要に応じて、YおよびLのうちの1つが存在せず、
W、U、E、およびJのうちの1つは、-CH(T)-またはN-Tを表し、W、U、E、およびJの残りは、独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;
Gは、非置換C
0~C
5アルキレンを表し;
Tは、
【化37】
を表し、ここで、
Zは、-O-C(O)-、-(O)C-O-、-N-C(O)-、-(O)C-N-、-O-C(NR)-、-(NR)C-O-、-O-C(S)-、-(S)C-O-、-C(O)-、-C(O)ON-、および-N-C(O)-O-から選択され;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~12、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前記アルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前記ヘテロ原子は、独立して、-O-、-S-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前記アルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、3~8員の置換または非置換のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、
R
1は、相互に独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、F、Cl、ハロゲン化C
1~C
4アルキル、ヒドロキシC
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルコキシ、または-CNのうちの1つまたは1つより多くであり;
R
2は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、-OR、-SR、または-CNのうちの1つまたは1つより多くであり;
各Rは、独立して、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、-CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R、3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールである、
請求項1に記載の化合物、またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項3】
前記化合物は、一般式(III):
【化38】
を有し、式中、
YおよびLは、独立して、CRまたはNであり、
必要に応じて、YおよびLのうちの1つが存在しない可能性があり;
W、U、E、およびJのうちの1つは、-CH(T)-またはN-Tを表し、W、U、E、およびJの残りは、独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;
Tは、
【化39】
を表し、ここで、
Xは、-(CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前記アルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前記ヘテロ原子は、独立して、-O-、-S-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前記鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、3~8員の置換または非置換のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、
R
1は、相互に独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、F、Cl、ハロゲン化C
1~C
4アルキル、ヒドロキシC
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルコキシ、または-CNのうちの1つまたは1つより多くであり;
R
2は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、-OR、-SR、または-CNのうちの1つまたは1つより多くであり;
各Rは、独立して、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、-CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R、3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールである、
請求項1に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項4】
式(III)において、Tは、
【化40】
を表し、
ここで、Xは-(CH
2)
n-であり、nは1~5であり、
Aは、3~8員の置換または非置換のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールである、
請求項3に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項5】
式(III)において、Tは、
【化41】
【化42】
を表し、ここで、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11、T12、および/またはT13中の環は、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換されており、
ここで、各Rは、独立して、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、-CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R、3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールである、
請求項4に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項6】
W、U、E、およびJのうちの1つは、-CH(T)-またはN-Tを表し、W、U、E、およびJの残りは、独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前記アルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前記ヘテロ原子は、独立して、-O-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前記鎖は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、
【化43】
から選択される構造を表し、前記構造は、非置換であるか、C
1~C
6アルキル、-F、-Cl、-CHF
2、-CF
3、-OMe、-OEt、ヒドロキシC
1~C
4アルキル、C
1~C
6アルコキシ、-OH、または-CNから独立して選択される1つまたは1つより多くのR基で置換されている、
請求項3に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項7】
R1およびR2は、ハロゲン、-CN、C
1~C
10アルコキシ、-CHal
3、-C(O)ORから独立して選択され、ここで、Rは、H、C
1~C
10アルキル、NR
2であり、ここで、Rは、独立して、H、C
1~C
10アルキルであるか、共にN、S、およびOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~8員の飽和または不飽和の炭素環または複素環を形成する、請求項3に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項8】
式(III)において、Tは、
【化44】
を表し、
ここで、Xは-(CH
2)
n-であり、nは1~5であり、
Aは、3~8員の置換または非置換のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、
R1は1つまたは2つの置換基であり、各R
1は、独立して、CF
3、F、または-CNを表し、
R2はHを表し、
AはC
1~C
10アルコキシで置換されている、
請求項4に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項9】
式(III)において、Tは、
【化45】
を表し、
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前記鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前記ヘテロ原子は、独立して、-O-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前記アルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、
【化46】
を表し、
ここで、R基の数は1から3まで変動し、各Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシから独立して選択される、
請求項3に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項10】
Aは、
【化47】
を表し、
ここで、Rは、F、Cl、OH、CN、OMe、OEt、OPr、O-iPr、NH
2、NO
2、COOH、COOMe、またはCOOEtを表す、請求項3に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項11】
前記化合物は、式(IV):
【化48】
の構造を有し、式中、
YおよびLは、独立して、CHまたはNであり;または、必要に応じて、YおよびLのうちの1つは存在せず、
G1は、CH
2であるか存在せず、
各Rは、H、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、または-CNから独立して選択され;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~6、それにより、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシで必要に応じて置換されたアルキレン鎖を形成する、
請求項3に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項12】
前記化合物は、式(V):
【化49】
を有し、式中、
YはCHまたはNであり;または、必要に応じて、Yは存在せず、
各Rは、H、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、または-CNから独立して選択され;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~6、それにより、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシで必要に応じて置換されたアルキレン鎖を形成する、
請求項3に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項13】
前記化合物は、TLR7もしくはTLR8、またはTLR7とTLR8の両方を阻害することができる、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
1つまたは1つより多くの請求項1に記載の化合物またはその塩;および薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、TLR7、TLR8、もしくはTLR7/8の両方の活性によって媒介される障害もしくは疾患、自己免疫疾患、ならびに/または炎症性疾患ならびに/またはがんの処置で使用するために構成されている、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記障害または疾患が、微生物による宿主の免疫系の過剰刺激に関連する疾患、インターフェロン媒介性疾患、または炎症性サイトカイン媒介性炎症疾患から選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記障害が、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、骨粗鬆症、全身性硬化症、多発性硬化症、乾癬、糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、高免疫グロブリンD血症、周期熱症候群、全身性若年性特発性関節炎、敗血症、アテローム性動脈硬化症、セリアック病、シェーグレン症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびがんから選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記がんが、結腸直腸がん、乳がん、卵巣癌、膵臓がん、肺がん、腎細胞癌、子宮頸がん、および多発性骨髄腫から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
被験体におけるTLR7、TLR8、またはTLR7/8の活性を阻害する方法であって、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を前記被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項20】
前記被験体が、微生物による被験体の免疫系の過剰刺激に関連する障害もしくは疾患、インターフェロン媒介性疾患、または炎症性サイトカイン媒介性炎症疾患を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記疾患が、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、骨粗鬆症、全身性硬化症、多発性硬化症、乾癬、糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、高免疫グロブリンD血症、周期熱症候群、全身性若年性特発性関節炎、敗血症、アテローム性動脈硬化症、セリアック病、シェーグレン症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびがんから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、結腸直腸がん、乳がん、卵巣癌、膵臓がん、肺がん、腎細胞癌、子宮頸がん、および多発性骨髄腫から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
環Bは、5~6個の原子を含む置換または非置換の単環であり、前記単環は、アリールまたはヘテロアリールから選択され、
ここで、前記ヘテロアリールは、窒素である1個のヘテロ原子を有し;
Gは結合を表し;
W、U、E、およびJのうちの1つはCR-Tを表し、W、U、E、およびJのうちの残りは、独立して存在しないか、独立してCR
2を表し;
Zは、-N-C(O)-または-(O)C-N-から選択され;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~24、それにより、アルキレン鎖を形成し、前記アルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、ピリジニル、ピロリジニル、A1、A2、A3、またはA4のうちの1つであり、
ここで、2つのR基は、炭素環または複素環を形成しない、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
YおよびLは、独立して、CR1またはNであり、ここで、YおよびLのうちの少なくとも1つはCR1であり;または、必要に応じて、YおよびLのうちの1つは存在せず;
W、U、E、およびJのうちの1つは-CH(T)-を表し、W、U、E、およびJのうちの残りは、独立して存在しないか、独立してCR
2を表し;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~12、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前記アルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されている、請求項2に記載の化合物。
【請求項25】
YおよびLは、独立して、CR1またはNであり、ここで、YおよびLのうちの少なくとも1つはCR1であり;または、必要に応じて、YおよびLのうちの1つは存在せず;
W、U、E、およびJのうちの1つは-CH(T)-を表し、W、U、E、およびJのうちの残りは、独立して存在しないか、独立してCR
2を表し;
Tは、T1またはT2:
【化50】
を表し;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前記アルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されている、請求項3に記載の化合物。
【請求項26】
式(III)において、TはT1を表し;
ここで、Xは-(CH
2)
n-であり、nは1~5である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
式(III)において、Tは、必要に応じて、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換されたT4、T5、T8、T9を表す、請求項5に記載の化合物。
【請求項28】
YまたはLのうちの少なくとも1つはCHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項29】
前記化合物は、化合物27:
【化51】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
Bはフェニルまたはピリジニルであり;
Gは結合であり;
UはCR
2であり;
WはCR-TまたはCR
2であり;
EはCR-TまたはCR
2であり;
JはCR-TまたはCR
2であり、ここで、W、E、またはJのうちの1つのみがCR-Tであり;
Zはアミドであり;
Xは、置換または非置換のC1~C24アルキル鎖であり;
Aは、ピリジニル、ピロリジニル、A1、A2、A3、またはA4のうちの1つであり、ここで、Aは、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換されている、
請求項1に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項31】
Bはピリジニルであり;
Gは結合であり;
UはCH
2であり;
WはCH
2であり;
EはCH-Tであり;
JはCH
2であり;
Zはアミドであり;
Xは、置換または非置換のC1~C24アルキル鎖であり;
Aは、ピリジニル、ピロリジニル、A1、A2、A3、またはA4のうちの1つであり、ここで、Aは、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換されている、
請求項1に記載の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【請求項32】
前記化合物は、以下の構造:
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
のうちの1つから選択される、請求項1に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、発明の名称が「TLR阻害剤(TLR INHIBITORS)」である2019年1月30日出願の米国特許出願第16/262,631号(その全体が本明細書中で参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、Toll様受容体(「TLR」)阻害剤、特に、TLR7、TLR8、TLR7/8(Toll様受容体7/8の組み合わせ)の阻害剤として有用な新規の化合物に関する。新規の化合物、かかる化合物を含む組成物、その調製方法、およびその使用方法を本明細書中に提供する。本発明は、炎症性疾患および/または自己免疫疾患などのTLR阻害に関連する状態の処置に有用な本発明の化合物の少なくとも1つを含む医薬組成物、ならびに被験体におけるTLR活性を阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
Toll様受容体(TLR受容体またはTLR)は、病原体由来の分子に結合することによって病原体の侵入を検出し、炎症誘発性遺伝子発現のシグナル伝達カスケードを誘導する膜貫通タンパク質である。より正確には、TLRは、病原性微生物によって排他的に発現される病原体関連微生物パターン(PAMP)、または壊死細胞もしくは死細胞から放出される内因性分子である損傷関連分子パターン(DAMP)として公知の高度に保存された構造モチーフを認識する。これには、熱ショックタンパク質などの細胞内タンパク質および細胞外基質由来のタンパク質断片が含まれる(McCarthy C.et al,“Toll-like receptors and damage-associated molecular patterns:novel links between inflammation and hypertension” Am.J.Physiol.Heart.Circ.Physiol.,2014,15 Jan;306(2):H184-96)。
【0004】
TLR受容体は、先天免疫および適応免疫の重要な構成要素として報告された(Pasare C.,et al(2005)“Toll-Like Receptors:Linking Innate and Adaptive Immunity”.In:Gupta S.,Paul W.E.,Steinman R.(eds)Mechanisms of Lymphocyte Activation and Immune Regulation X.Advances in Experimental Medicine and Biology,vol 560.Springer,Boston,MA)。
【0005】
TLRファミリーのうちで、TLR7/8(Toll様受容体7/8)は、一本鎖RNAによって活性化され得るヌクレオチド感受性TLRである(Heil,F.et al,“Species-Specific Recognition of Single-Stranded RNA via Toll-like Receptor 7 and 8.”,Science,2004,303(5663):1526-29)。
【0006】
PAMP認識の際に、TLRは、典型的には、細胞内シグナル伝達カスケードを誘導する。短期間の炎症応答は、感染性因子を排除するのに役立つので、有益であり得る。しかしながら、長期間の炎症は、組織が損傷する可能性があるので望ましくない。実際に、TLR経路を介した炎症性サイトカインおよびケモカインの過剰産生は、しばしば、多くの炎症関連疾患および自己免疫疾患に関連する。したがって、宿主防御を有効にするにはTLR経路において炎症を微調整することが非常に望ましい。
【0007】
TLRファミリー、特にTLR7/8は、病原体認識および先天免疫の活性化ならびに抗ウイルス免疫の制御において重要な役割を果たす(Ramirez-Ortiz et al.“TREML4 amplifies TLR7-mediated signaling during antiviral responses and autoimmunity”,Nat Immunol.2015 May;16(5):495-504)。TLR7シグナル伝達の操作は、慢性の高度免疫活性化を低下させ、それにより、HIV感染後の疾患への進行を低下させる可能性のあるストラテジーと見なされ得る(S.Baenziger et al “Triggering TLR7 in mice induces immune activation and lymphoid disruption,resembling HIV-mediated pathology”,Blood 2009 113:377-388)。
【0008】
他の結果から、TLR7を誘発するとリンパ系を破壊し得ることが実証された(Awais et al.2017;Baenziger et al.2009)。対応するPAMPまたはDAMPによってTLRが刺激されるとシグナル伝達カスケードが開始され、それにより、転写因子(AP-1、NF-κB、およびインターフェロン調節因子(IRF)など)が活性化される。IRFは、抗ウイルス防御、細胞増殖、および免疫制御において重要な役割を果たすことが公知の転写因子のファミリーを形成している。より具体的には、TLR7およびTLR8は、IRF5およびIRF7を活性化する(Schoenemeyer A.et al.“The Interferon Regulatory Factor,IRF5,Is a Central Mediator of Toll-like Receptor 7 Signaling” 2005,Vol.280,No.17,pp.17005-17012)。TLR7によるNF-κ-B(活性化されたB細胞の核性因子κ軽鎖エンハンサー)の活性化は、MyD88遺伝子依存性シグナル伝達カスケードを通じて、それらの各TLRドメイン(Hemmi et al,Nature Immunology,3(2),196-200)およびTRAF6を介して行われる。このカスケードにより、サイトカイン分泌および炎症応答も生じる。NF-κBは、慢性炎症における腫瘍発生で重要な役割を果たす(J.Cherfils-Vicini et al “Triggering of TLR7 and TLR8 expressed by human lung cancer cells induces cell survival and chemoresistance”,J Clin Invest.2010;120(4):1285-1297)。
【0009】
TLR7が欠損するとTLR8が免疫応答の制御を代償することが示された(Awais M.,et al,“TLR7 Deficiency Leads to TLR8 Compensative Regulation of Immune Response against JEV in Mice”,Frontiers in Immunol.,vol.8,2017,160)。
【0010】
自己免疫疾患に加えて、これらのTLR7/8は、無制御の急性または慢性の炎症に関連する他の疾患(マラリアなど)についても調査中である(Gao W,et al,“Inhibition of Toll-Like Receptor Signaling as a Promising Therapy for Inflammatory Diseases:A Journey from Molecular to Nano Therapeutics”,Front Physiol.2017;8:508)。
【0011】
アルツハイマー病の病因は、特にアミロイド-b(Ab)に応答する炎症誘発性サイトカイン、特にインターロイキンIL-12およびIL-23の上方制御によって特徴づけられる炎症性要素を有する(Vom Berg J.et al,Inhibition of IL-12/IL-23 signaling reduces Alzheimer’s disease-like pathology and cognitive decline,Nat Med.2012 Dec;18(12):1812-9)。
【0012】
神経炎症がパーキンソン病の進行において重要な役割を果たしていることが証明された。多くの研究によってパーキンソン病患者におけるサイトカイン(TNFおよびIL-6が含まれる)のレベルの上昇が示されている(Pereira JR,IL-6 serum levels are elevated in Parkinson’s disease patients with fatigue compared to patients without fatigue,J.Neurolog.Sciences,2016,370:153-156)。
【0013】
TLR発現は宿主の免疫細胞で最初に発見されたが、非悪性および悪性の上皮細胞におけるTLRの発現もいくつか報告されている。特に、TLR7およびTLR8は、ヒト肺腫瘍で発現する(Cherfils-Vicini J.et al,Triggering of TLR7 and TLR8 expressed by human lung cancer cells induces cell survival and chemoresistance,J Clin Invest.2010;120(4):1285-1297)。
【0014】
TLRは、多くのがん細胞型で発現される。慢性炎症中に、正常な線維芽細胞および上皮細胞内でTLRが異常に活性化されると腫瘍性形質転換および発がんが促進され得る。TLRシグナルによって活性化されたがん細胞は、サイトカインおよびケモカインを放出し、それにより、免疫細胞を動員および最適化し、サイトカインおよびケモカインをさらに放出することができる。その結果、免疫寛容に関連するサイトカインプロフィールが異常になり、がんが進行し、腫瘍微小環境が増大する(Sato Y.et al,“Cancer Cells Expressing Toll-like Receptors and the Tumor” Cancer Microenviron.2009 Sep;2(Suppl 1):205-214)。
【0015】
インターロイキン-6(IL-6)は、サイトカイン分子の1つであり、種々の細胞型(腫瘍細胞が含まれる)によって産生および分泌される。IL-6は、悪性細胞の増殖および分化に関与し、血清中およびほとんどのがん(結腸直腸がん、乳がん、卵巣癌、膵臓がん、肺がん、腎細胞癌、子宮頸がん、および多発性骨髄腫など)の腫瘍組織内に高濃度で認められる。IL-6レベルの上昇は、侵襲性腫瘍の成長および多くのがん型における治療応答に関連する。循環IL-6レベルの高い患者は、一般に、予後不良および生存期間の短縮に関連し、IL-6レベルの低い患者は、治療応答がより良い。IL-6は、がん細胞アポトーシスの阻害および腫瘍促進因子(増殖、血管形成など)の刺激による腫瘍の進行および治療抵抗性において重要な役割を果たす。これらの影響は、いくつかのシグナル伝達経路によって媒介される(Neeraj Kumari et al,“Role of interleukin-6 in cancer progression and therapeutic resistance”,Tumor Biol.(2016)37:11553-11572)。
【0016】
IL-12のp40単量体ががん細胞の細胞死からの回避を補助する重要な役割を果たすことが実証された。様々なマウスおよびヒトのがん細胞がp40をp40ホモ二量体(p402)、IL-12、またはIL-23よりも高いレベルで産生することが見いだされた。同様に、p40の血清レベルは、前立腺がん患者で遥かに高かった(Kundu M.et al,“Selective neutralization of IL-12 p40 monomer induces death in prostate cancer cells via IL-12-IFN-γ”,Proc Natl Acad Sci U S A.2017 Oct 24;114(43):11482-11487)。
【0017】
結論として、TLRが過剰に活性化されると過剰な炎症促進性サイトカインおよびケモカインの産生によって免疫系ホメオスタシスに影響を及ぼし、その結果、多くの炎症性疾患および自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、感染関連性の敗血症、アテローム性動脈硬化症、および喘息、ならびにがん疾患など)を発症し得る。したがって、TLRシグナルを標的にする阻害剤/アンタゴニストは、これらの障害を処置するのに有益であり得ると考えられる。
【0018】
したがって、TLR媒介経路において炎症促進性および抗炎症性のサイトカインおよびケモカインを制御することが望ましい。
【0019】
リガンド研究は、TLR7および8が一本鎖ウイルスRNAを認識するという事実に基づき得る。合成類似体は、グアノシン含有化合物などのDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドに類似した構造を有し、抗ウイルス活性を有するイミダゾキノリンがこれらの受容体を活性化すると述べられている(Hemmi et al,“Small anti-viral compounds activate immune cells via the TLR7 MyD88-dependent signaling pathway” Nature Immunology,3(2),196-200)。
【0020】
特許出願国際公開第2015/088045号(TAKEDA PHARMACEUTICAL COMPANY LIMITED,JP,18.06.2015)は、自己免疫疾患の予防または治療のための薬剤として有用なTLR7、TLR9、TLR7/8、TLR7/9、またはTLR7/8/9に対する阻害作用を有するピロロ[3,2-c]ピリジン誘導体を開示している。しかし、TLR7/8受容体を有効に阻害する化合物を提供することが依然として必要である。
【0021】
さらに、様々なタイプの適応症のためのTLR7標的薬が存在し(S.Rakoff-Nahoum et al.2009.“Toll-like Receptors and Cancer.” Nature Reviews.Cancer 9(1):57-63;Hennessy,Elizabeth J.,Andrew E.Parker,and Luke A.J.O’Neill.2010.“Targeting Toll-like Receptors:Emerging Therapeutics?” Nature Reviews.Drug Discovery 9(4):293-307)、前記TLR7標的薬は、現在、これらの各適応症について種々の開発または臨床試験段階にある。
【0022】
イミキモド(Aldara(商標);R-837、S-26308)(イミダゾキノリンアミン)は、1997年に外陰部疣贅および肛門周囲の疣贅の局所処置用にFDAが最初に承認した免疫調節剤である。種々の良性疾患、前悪性疾患、および悪性疾患(角化症、基底細胞癌、光線性角化症、外陰上皮内新生腫瘍、および限局性強皮症、脱毛症などの自己免疫疾患(autoimmune decease)など)の処置としてイミキモドを使用した研究が行われた(Sauder,D.N.2003.“Imiquimod:Modes of Action” The British Journal of Dermatology 149(s66):5-8)。イミキモドは、Toll様受容体7アゴニストと報告されている(Drug News Perspect.2008 Apr;21(3):158-65)。
【0023】
TLRアンタゴニスト試験は、敗血症性ショックおよび自己免疫障害、特に全身性エリテマトーデスの処置を含む。
【0024】
ヒドロキシクロロキンは、Toll様受容体7アンタゴニストと報告されている。この薬物は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、IGA糸球体腎炎、自己免疫性血小板減少性紫斑、全身性エリテマトーデス、冠状動脈疾患、前糖尿病症候群、血小板減少症、および肺サルコイドーシスなどの様々な適応症のためにTLR7を標的にする(Scherbel Al.,et al.“Comparison of effects of two antimalarial agents,hydroxychloroquine sulfate and chloroquine phosphate,in patients with rheumatoid arthritis”.Cleve.Clin.Q.1957;24:98-104;F.Sheikhbahaie et al.,“The effect of hydroxychloroquine on glucose control and insulin resistance in the prediabetes condition”,Adv.Biomed.Res.2016;5:145,published online 2016 Aug 30;Kalia,Sunil,and Jan P.Dutz.2007.“New Concepts in Antimalarial Use and Mode of Action in Dermatology” Dermatologic Therapy 20(4):160-74;A.Makkouk et al “The potential use of toll-like receptor(TLR)agonists and antagonists as prophylactic and/or therapeutic agents”,Immunopharm.and Immunotoxic,2009;31(3):331-338)。
【0025】
しかしながら、心筋症などのヒドロキシクロロキン治療では副作用が報告され(Catherine A.Millares-Sipin et al,“Restrictive Cardiomyopathy Associated With Long-Term Use of Hydroxychloroquine for Systemic Lupus Erythematosus”,J.of Pharm.Practice.30(5):571-575,OCT 2017)、一方で、エリテマトーデスの処置には使用されている。
【0026】
結論として、TLR7/8受容体を調整することによって免疫系のホメオスタシスを制御する処置が可能であり、したがって、治療法を調査する余地がある。
【0027】
しかしながら、これらのTLRを調節すると対象物に侵入する様々な免疫に対する免疫応答を促進/阻害する正確な機序は依然として不明であり、様々なTLR7/8モジュレーターが様々な応答を誘導することが見いだされている。したがって、現時点では、有効かつ選択的なTLR7および8モジュレーターをさらに研究開発することは有利であり得る。
【0028】
ある特定のTLRアンタゴニストを使用する上で起こり得る主な問題は、感染性因子および腫瘍に対する感受性の増加である。
さらに、自己免疫疾患(autoimmune decease)の処置でよく見られる問題は、患者を長期または生涯にわたって治療する必要があることであり、したがって、処置を受ける被験体の望ましくない副作用を回避するために、要求通りにか必要に応じて医薬品を変更することができるように種々の医薬品を有することが重要である。
したがって、本発明が解決すべき技術上の問題は、とりわけ、自己免疫疾患(autoimmune decease)、炎症性疾患、およびがん疾患の処置において使用することができる新規のタイプの有効なTLR7/8阻害剤を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】McCarthy C.et al,“Toll-like receptors and damage-associated molecular patterns:novel links between inflammation and hypertension” Am.J.Physiol.Heart.Circ.Physiol.,2014,15 Jan;306(2):H184-96
【非特許文献2】Pasare C.,et al(2005)“Toll-Like Receptors:Linking Innate and Adaptive Immunity”.In:Gupta S.,Paul W.E.,Steinman R.(eds)Mechanisms of Lymphocyte Activation and Immune Regulation X.Advances in Experimental Medicine and Biology,vol 560.Springer,Boston,MA
【非特許文献3】Heil,F.et al,“Species-Specific Recognition of Single-Stranded RNA via Toll-like Receptor 7 and 8.”,Science,2004,303(5663):1526-29
【非特許文献4】Ramirez-Ortiz et al.“TREML4 amplifies TLR7-mediated signaling during antiviral responses and autoimmunity”,Nat Immunol.2015 May;16(5):495-504
【非特許文献5】S.Baenziger et al “Triggering TLR7 in mice induces immune activation and lymphoid disruption,resembling HIV-mediated pathology”,Blood 2009 113:377-388
【非特許文献6】Awais et al.2017;Baenziger et al.2009
【非特許文献7】Schoenemeyer A.et al.“The Interferon Regulatory Factor,IRF5,Is a Central Mediator of Toll-like Receptor 7 Signaling” 2005,Vol.280,No.17,pp.17005-17012
【非特許文献8】Hemmi et al,Nature Immunology,3(2),196-200
【非特許文献9】J.Cherfils-Vicini et al “Triggering of TLR7 and TLR8 expressed by human lung cancer cells induces cell survival and chemoresistance”,J Clin Invest.2010;120(4):1285-1297
【非特許文献10】Awais M.,et al,“TLR7 Deficiency Leads to TLR8 Compensative Regulation of Immune Response against JEV in Mice”,Frontiers in Immunol.,vol.8,2017,160
【非特許文献11】Gao W,et al,“Inhibition of Toll-Like Receptor Signaling as a Promising Therapy for Inflammatory Diseases:A Journey from Molecular to Nano Therapeutics”,Front Physiol.2017;8:508
【非特許文献12】Vom Berg J.et al,Inhibition of IL-12/IL-23 signaling reduces Alzheimer’s disease-like pathology and cognitive decline,Nat Med.2012 Dec;18(12):1812-9
【非特許文献13】Pereira JR,IL-6 serum levels are elevated in Parkinson’s disease patients with fatigue compared to patients without fatigue,J.Neurolog.Sciences,2016,370:153-156
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【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
発明の概要
1つの態様によれば、本発明は、式I:
【化1】
(式中、
環Bは、3~7個の原子を含む置換または非置換の単環であり、前述の単環は、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールから選択され、
ここで、前述のヘテロシクリルまたはヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有し;
Gは、置換または非置換のC
0~C
5アルキレンを表し;
W、U、E、およびJのうちの1つはCR-TまたはN-Tを表し、W、U、E、およびJのうちの残りは独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;
Tは、
【化2】
を表し、ここで、
Zは、-O-C(O)-、-(O)C-O-、-N-C(O)-、-(O)C-N-、-O-C(NR)-、-(NR)C-O-、-O-C(S)-、-(S)C-O-、-C(O)-、-C(O)ON-、および-N-C(O)-O-から選択され;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~24、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前述のアルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前述のヘテロ原子は、独立して、-O-、-S-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、非置換であり得るか、1つまたは1つより多くのR置換基で置換され得る3~8員のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、
R
1は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、C
1~C
10アルコキシ、-CN、3~8員の飽和または部分不飽和の炭素環、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環のヘテロアリール環のうちの1つまたは1つより多くであり;
R
2は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、-OR、-SR、-CN、3~8員の飽和または部分不飽和の炭素環、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環のヘテロアリール環のうちの1つまたは1つより多くであり;
各Rは、独立して、H、C
1~C
20アルキル、C
2~C
20アルケニル、C
2~C
20アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、CHal
3(3個のハロゲンを有する炭素原子)、-NHCO(C
1~C
10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R;3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールであり、
または2つのR基は、存在する場合、共に、N、S、およびOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~8員の飽和または不飽和の炭素環または複素環を形成する)
の化合物または立体異性体を提供する。
【0032】
好ましくは、環BならびにN、Y、W、E、J、およびCによって形成される環の両方は、単環である(すなわち、これらの環は、他の飽和または不飽和の環と縮合しない)。
【0033】
また、本発明は、明細書中の以下に記載の新規の化合物の特定の実施形態に関する。
【0034】
また、本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。組成物を、TLR7、TLR8、またはTLR7/8の両方の活性によって媒介される障害または疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患および/またはがんの処置で使用することができる。
【0035】
より具体的には、適応症は、過敏症、微生物による宿主の(例えば、障害のある被験体または患者の)免疫系の過剰刺激に関連する疾患、インターフェロン媒介性疾患、または炎症性サイトカイン媒介性炎症疾患から選択される。
【0036】
本発明は、さらに、被験体におけるTLR7、TLR8、またはTLR7/8の活性を阻害する方法であって、一般式(I)~(V)および下記の式1~30の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩を前述の障害のある被験体に投与する工程を含む、方法に関する。
【0037】
障害は、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、骨粗鬆症、全身性硬化症、多発性硬化症、乾癬、糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病(Cronh’s Disease)および潰瘍性大腸炎)、高免疫グロブリンD血症、周期熱症候群、全身性若年性特発性関節炎、敗血症、アテローム性動脈硬化症、セリアック病、がん、シェーグレン症候群、アルツハイマー病、またはパーキンソン病から選択される障害であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
本発明は、TLR7受容体の阻害性、TL8の阻害性、またはTLR7およびTLR8の二重阻害性を有する一般式(I)の化合物に関する。
【0039】
第1の態様では、本発明は、一般式(I):
【化3】
(式中、
環Bは、3~7個の原子を含む置換または非置換の単環であり、前述の単環は、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールから選択され、
ここで、前述のヘテロシクリルまたはヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有し;
Gは、置換または非置換のC
0~C
5アルキレンを表し;
W、U、E、およびJのうちの1つはCR-TまたはN-Tを表し、W、U、およびJのうちの残りは独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;
Tは、
【化4】
を表し、ここで、
Zは、-O-C(O)-、-(O)C-O-、-N-C(O)-、-(O)C-N-、-O-C(NR)-、-(NR)C-O-、-O-C(S)-、-(S)C-O-、-C(O)-、-C(O)ON-、および-N-C(O)-O-から選択され;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~24、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前述のアルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前述のヘテロ原子は、独立して、-O-、-S-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、非置換であり得るか、1つまたは1つより多くのR置換基で置換され得る3~8員のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、
R
1は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、C
1~C
10アルコキシ、-CN、3~8員の飽和または部分不飽和の炭素環、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環のヘテロアリール環のうちの1つまたは1つより多くであり;
R
2は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、-OR、-SR、-CN、3~8員の飽和または部分不飽和の炭素環、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環のヘテロアリール環のうちの1つまたは1つより多くであり;
各Rは、独立して、H、C
1~C
20アルキル、C
2~C
20アルケニル、C
2~C
20アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル(例えば、アルキル-アミド)、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R;3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールであり、または2つのR基は共に、存在する場合、N、S、およびOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~8員の飽和または不飽和の炭素環または複素環を形成する)
の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0040】
好ましくは、環BならびにN、Y、W、E、J、およびCによって形成される環の両方は、単環である(すなわち、これらの環は、他の飽和または不飽和の環と縮合しない)。
【0041】
第2の態様では、本発明は、化合物が一般式(II):
【化5】
(式中、
YおよびLは、独立して、CRまたはNであり;または、YおよびLのうちの1つが存在せず、
W、U、E、およびJのうちの1つは、-CH(T)-またはN-Tを表し、W、U、E、およびJの残りは、独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;
Gは、非置換C
0~C
5アルキレンを表し;
Tは、
【化6】
を表し、ここで、
Zは、-O-C(O)-、-(O)C-O-、-N-C(O)-、-(O)C-N-、-O-C(NR)-、-(NR)C-O-、-O-C(S)-、-(S)C-O-、-C(O)-、-C(O)ON-、および-N-C(O)-O-から選択され;
Xは、(-CH
2-)nを表し、ここで、n=1~12、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前述のアルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前述のヘテロ原子は、独立して、-O-、-S-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、3~8員の置換または非置換のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、
R
1は、相互に独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、F、Cl、ハロゲン化C
1~C
4アルキル、ヒドロキシC
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルコキシ、または-CNのうちの1つまたは1つより多くであり;
R
2は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、-OR、-SR、または-CNのうちの1つまたは1つより多くであり;
各Rは、独立して、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、-CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル(アルキル-アミド)、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R;3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールである)
の化合物であることを特徴とする、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0042】
さらなる態様では、本発明の化合物は、化合物が一般式(III):
【化7】
を表し、ここで、
YおよびLは、独立して、CRまたはNであり;または、必要に応じて、YおよびLのうちの1つが存在せず、
W、U、E、およびJのうちの1つは、-CH(T)-またはN-Tを表し、W、U、E、およびJの残りは、独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;
Gは、非置換C
0~C
5アルキレンを表し;
Tは、
【化8】
を表し、ここで、
Xは、-(CH
2-)nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前述のアルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前述のヘテロ原子は、独立して、-O-、-S-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル;またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、3~8員の置換または非置換のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、
R
1は、相互に独立して、H、C
1~C
12アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、F、Cl、ハロゲン化C
1~C
4アルキル、ヒドロキシC
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルコキシ、または-CNのうちの1つまたは1つより多くであり;
R
2は、相互に独立して、H、C
1~C
20アルキル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、-OR、-SR、または-CNのうちの1つまたは1つより多くであり;
各Rは、独立して、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、-CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R;3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールである
の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩であることを特徴とする。
【0043】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書中に定義の式(III)の化合物であって、ここで、本明細書中に示すように定義された式(III)において、Tは、
【化9】
を表す、化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0044】
本発明のさらなる態様では、本明細書中に定義の式(III)において、Tは、
【化10】
【化11】
を表し、ここで、これらの構造のいずれかは、非置換であり得るか、1つまたは1つより多くのR基で置換することができ、
各Rは、独立して、H、C
1~C
10アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、-CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R;3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールである;
またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【0045】
さらに、本発明は、本明細書中に定義の式(III)の化合物であって、ここで、W、U、E、およびJのうちの1つは、-CH(T)-またはN-Tを表し、W、U、E、およびJの残りは、独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;Tは、
【化12】
を表し、ここで、Xは-(CH
2)
n-であり、nは1~5であり、
Aは、3~8員の置換または非置換のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールである、
化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0046】
本発明のさらに別の態様では、式(III)において、W、U、E、およびJのうちの1つは-CH(T)-またはN-Tを表し、W、U、E、およびJのうちの残りは独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;Tは、
【化13】
【化14】
を表し、ここで、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11、またはT12中の環は、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換されており、
ここで、各Rは、独立して、H、C1~C10アルキル、C2~C10アルケニル、C2~C10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO
2、-CN、-COOH、-CHO、-SO
3H、-SO
2R、-SOR、-NH
2、-NHR、-NR
2、-CHal
3、-NHCO(C
1~C
10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO
2R、-C(O)N(R)
2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)
2、-NRSO
2R;3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C
3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールである;
化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0047】
さらに、本発明は、本明細書中に定義の式(III)の化合物であって、ここで、W、U、E、およびJのうちの1つは、-CH(T)-またはN-Tを表し、W、U、E、およびJの残りは、独立して存在しないか、または独立してCR
2、NR、もしくはSを表し;T構造内のXは、(-CH
2-)nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前述のアルキレン鎖の炭素原子は、少なくとも1つのヘテロ原子で置き換えられ得、ここで、前述のヘテロ原子は、独立して、-O-、または-NH-であり、但し、各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子によって各他のヘテロ原子から分離しており;前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシで必要に応じて置換されており;
Aは、
【化15】
【化16】
から選択される断片または構造を表し、ここで、Aの構造は、非置換であり得るか、C
1~C
6アルキル、-F、-Cl、-CHF
2、-CF
3、-OMe、-OEt、ヒドロキシC
1~C
4アルキル、-OH、または-CNから独立して選択される1つまたは1つより多くのR基で置換することができる、
化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0048】
本発明のさらに別の態様では、本明細書中に定義の式(III)の化合物において、R1およびR2は、ハロゲン、-CN、C1~C10アルコキシ(-OC1~C10アルキル)、-CHal3、-C(O)ORから独立して選択され、ここで、Rは、H、C1~C10アルキル、NR2であり、ここで、Rは、独立して、HまたはC1~C10アルキルであり、または2つのR基が、共に、N、S、およびOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~8員の飽和または不飽和の炭素環または複素環を形成することができる、
化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0049】
さらに別の態様では、本明細書中に定義の式(III)において、Aは、
【化17】
を表し、ここで、前述のR基の数は1から3まで変動し、各Rは、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシから独立して選択される、
またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0050】
本発明のさらに別の態様では、化合物は、式(IV):
【化18】
(式中、
YおよびLは、独立して、CHまたはNであり;または、必要に応じて、YおよびLのうちの1つは存在せず、
G1は、CH
2であるか存在せず、
各Rは、H、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、または-CNから独立して選択され;
Xは(-CH
2-)nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシで必要に応じて置換されている)
の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩である。
【0051】
本発明のさらに別の態様では、化合物は、式(V):
【化19】
(式中、
YはCHまたはNであり;または、Yは存在せず、
各Rは、H、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、または-CNから独立して選択され;
Xは(-CH
2-)nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
8アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、C
2~C
8アルキニル、ハロゲン化C
1~C
6アルキル、ヒドロキシC
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6アルコキシで必要に応じて置換されている)
の化合物またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩である。
【0052】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下を含むことができる:環Bは、5~6個の原子を含む置換または非置換の単環であり、前述の単環は、アリールまたはヘテロアリールから選択され、ここで、前述のヘテロアリールは、窒素である1個のヘテロ原子を有し;Gは結合を表し;W、U、E、およびJのうちの1つはCR-Tを表し、W、U、E、およびJのうちの残りは、独立して存在しないか、独立してCR2を表し;Zは、-N-C(O)-または-(O)C-N-から選択され;Xは、(-CH2-)nを表し、ここで、n=1~24、それにより、アルキレン鎖を形成し、前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C1~C20アルキル、C2~C10アルケニル、C2~C10アルキニル、ハロゲン化C1~C10アルキル、ヒドロキシC1~C10アルキル、またはC1~C10アルコキシで必要に応じて置換されており;Aは、ピリジニル、ピロリジニル、A1、A2、A3、またはA4のうちの1つであり、ここで、2つのR基は、炭素環または複素環を形成しない。
【0053】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下を含むことができる:YおよびLは、独立して、CR1またはNであり、ここで、YおよびLのうちの少なくとも1つはCR1であり;または、必要に応じて、YおよびLのうちの1つは存在せず;W、U、E、およびJのうちの1つは-CH(T)-を表し、W、U、E、およびJのうちの残りは、独立して存在しないか、独立してCR2を表し;Xは、(-CH2-)nを表し、ここで、n=1~12、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C1~C20アルキル、C2~C10アルケニル、C2~C10アルキニル、ハロゲン化C1~C10アルキル、ヒドロキシC1~C10アルキル、またはC1~C10アルコキシで必要に応じて置換されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下を含むことができる:YおよびLは、独立して、CR1またはNであり、ここで、YおよびLのうちの少なくとも1つはCR1であり;または、必要に応じて、YおよびLのうちの1つは存在せず;W、U、E、およびJのうちの1つは-CH(T)-を表し、W、U、E、およびJのうちの残りは、独立して存在しないか、独立してCR
2を表し;Tは、T1またはT2:
【化20】
を表し;
Xは、(-CH
2-)
nを表し、ここで、n=1~6、それにより、アルキレン鎖を形成し、ここで、前述のアルキレン鎖は、ハロゲン、C
1~C
20アルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、ハロゲン化C
1~C
10アルキル、ヒドロキシC
1~C
10アルキル、またはC
1~C
10アルコキシで必要に応じて置換されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下を含むことができる:式(III)において、TはT1を表し;ここで、Xは-(CH2)n-であり、nは1~5である。
【0056】
いくつかの実施形態では、式(III)において、Tは、必要に応じて、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換されたT4、T5、T8、T9を表す。いくつかの実施形態では、YまたはLのうちの少なくとも1つはCHである。
いくつかの実施形態では、化合物は、以下を含むことができる:Bはフェニルまたはピリジニルであり;
Gは結合であり;UはCR2であり;WはCR-TまたはCR2であり;EはCR-TまたはCR2であり;JはCR-TまたはCR2であり、ここで、W、E、またはJのうちの1つのみがCR-Tであり;Zはアミドであり;Xは、置換または非置換のC1~C24アルキル鎖であり;Aは、ピリジニル、ピロリジニル、A1、A2、A3、またはA4のうちの1つであり、ここで、Aは、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換されている;またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【0057】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下を含むことができる:Bはピリジニルであり;Gは結合であり;UはCH2であり;WはCH2であり;EはCH-Tであり;JはCH2であり;Zはアミドであり;Xは、置換または非置換のC1~C24アルキル鎖であり;Aは、ピリジニル、ピロリジニル、A1、A2、A3、またはA4のうちの1つであり、ここで、Aは、非置換であるか、1つまたは1つより多くのR基で置換されている;またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容され得る塩。
【0058】
さらに、本明細書中で使用される用語を定義する。
【0059】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合、直鎖(すなわち、非分枝鎖)または完全飽和の分枝炭化水素鎖を意味する。アルキル基は、1~12個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を含む。他の実施形態では、脂肪族基は、1~4個の脂肪族炭素原子を含む。さらなる他の実施形態では、アルキル基は1~3個の炭素原子を含み、さらに他の実施形態では、脂肪族基は1~2個の脂肪族炭素原子を含む。
【0060】
例示的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、ノニル、およびデシルである。
【0061】
用語「シクロアルキル」は、本明細書中で使用される場合、完全に飽和しているか、1つまたは1つより多くの不飽和単位を含むが、芳香族ではなく、分子の残部への結合点を1つ有する単環C3~C8炭化水素を指す。例示的な基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル(cycooctyl)、シクロデシル、シクロドデシル、およびアダマンチルが含まれる。
【0062】
別段の指示がない限り、本明細書中で使用される用語「アルケニル」は、それ自体または別の基の一部としての、主鎖内に2~20個の炭素、いくつかの実施形態では2~12個の炭素、いくつかの実施形態では2~8個の炭素を含み、主鎖内に1つまたは1つより多くの二重結合を含む直鎖または分枝鎖のラジカルを指す(ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル、および4,8,12-テトラデカトリエニルなど)。「置換アルケニル」には、1つまたは1つより多くの置換基(上記の「アルキル」および「シクロアルキル」の定義に含まれる置換基など)で必要に応じて置換されたアルケニル基が含まれる。
【0063】
別段の指示がない限り、本明細書中で使用される用語「アルキニル」は、それ自体または別の基の一部としての、直鎖内に2~20個の炭素、いくつかの実施形態では2~12個の炭素、いくつかの実施形態では2~8個の炭素を含み、直鎖内に1つまたは1つより多くの三重結合を含む直鎖または分枝鎖のラジカルを指す(2-プロピニル、3-ブチニル、2-ブチニル、4-ペンチニル、3-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、2-ヘプチニル、3-ヘプチニル、4-ヘプチニル、3-オクチニル、3-ノニニル、4-デシニル、3-ウンデシニル、および4-ドデシニルなど)。「置換アルキニル」には、1つまたは1つより多くの置換基(上記の「アルキル」および「シクロアルキル」の定義に含まれる置換基など)で必要に応じて置換されたアルキニル基が含まれる。
【0064】
用語「ハロゲン」は、F、CI、Br、またはIを意味する。
【0065】
本明細書中で使用される用語「ハロゲン化アルキル」、「ハロゲン化アルケニル」、および「アルキニル」は、単独または別の基の一部としての、フッ素、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素から選択される1つまたは1つより多くの原子で置換された「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」を指す。
【0066】
用語「アルコキシル」は、酸素原子に結合した直鎖および分枝鎖の炭化水素鎖(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、およびイソプロポキシなど)を指す。
【0067】
用語「ヘテロ原子」は、1つまたは1つより多くの酸素、硫黄、窒素、またはリン(窒素、硫黄、またはリンの任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の四級化形態;または複素環の置換可能な窒素、例えば、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルなどの)、ΝΗ(ピロリジニルなどの)、またはNR+(N置換ピロリジニルなどの)を含む)を意味する。
【0068】
用語「アルキレン」は、二価アルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち、-(CH2)n-であり、ここで、nは、正の整数、好ましくは1~6、1~4、1~3、1~2、または2~3である。置換アルキレン鎖は、1つまたは1つより多くのメチレン水素原子が置換基で置換されたポリメチレン基である。適切な置換基には、脂肪族置換基についての以下に記載の置換基が含まれる。
【0069】
用語「アルケニレン」は、二価アルケニル基を指す。置換アルケニレン鎖は、少なくとも1つの二重結合を含み、1つまたは1つより多くの水素原子が置換基で置換されたポリメチレン基である。適切な置換基には、脂肪族置換基についての以下に記載の置換基が含まれる。
【0070】
個別に使用される、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」のようなより大きな部分の一部としての用語「アリール」は、別段の指示がない限り、合計で3~14個の環員を有する単環系および二環系を指し、ここで、系内の少なくとも1つの環は芳香族であり、系内の各環は3~7個の環員を含む。本発明のある特定の実施形態では、「アリール」は、芳香環系を指す。例示的なアリール基は、シクロペンタジエニル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびアントラシルなどである。本明細書中で使用される場合、芳香環が1つまたは1つより多くの非芳香環に縮合した基(インダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなど)も、用語「アリール」の範囲内に含まれる。
【0071】
単独またはより大きな部分(例えば、「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアラルコキシ」)の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、5~10個の環原子、好ましくは5、6、または9個の環原子を有し;炭素原子に加えて、1~5個のヘテロ原子を有する基を指す。用語「ヘテロ原子」は、窒素、酸素、または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化形態および塩基性窒素の任意の四級化形態が含まれる。
【0072】
ヘテロアリール基には、制限されないが、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、およびプテリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル(benzthiazolyl)、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが含まれる。
【0073】
用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールで置換され、アルキル部分およびヘテロアリール部分に結合したアルキル基を指す。
【0074】
用語「ヘテロシクリル」は、別段の指示がない限り、飽和または部分不飽和であり得る、3~7員の、好ましくは5~7員の単環または7~10員の二環の複素環部分を指す。炭素原子に加えて、上記定義のように、1つまたは1つより多くの、好ましくは1~4個のヘテロ原子を含めることができる。
【0075】
かかる飽和または部分不飽和の複素環式ラジカルの例には、制限されないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル ピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが含まれる。ラジカルまたは結合点がヘテロシクリル環上にある場合、ヘテロシクリル環を、1つまたは1つより多くのアリール、ヘテロアリール、またはシクロアルキル環と縮合することができる(インドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルなど)ことも本発明の範囲内である。ヘテロシクリル基は、必要に応じて、単環または二環である。
【0076】
ラジカルを形成する場合、複素環は、安定な構造を形成可能な主分子に、任意のヘテロ原子または炭素原子で、結合され得る。
【0077】
用語「単環」は、結合された縮合環はないが、必要に応じて環内の任意の安定な原子に置換基を有する、一価で飽和または部分不飽和または芳香族の環ラジカルを指す。
【0078】
別段の指示がない限り、「必要に応じて置換された」基は、置換に利用可能な任意の部分の位置に適切な置換基を有する。分子の安定性によって置換基の数が決定づけられ、当業者は、置換基を選択することによって適用分野に応じてどの置換基の特徴および数を使用すればよいのかを容易に決定するであろう。別段の指示がない限り、置換基は、H、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C2~C20アルキニル、ハロゲン化C1~C20アルキル、ハロゲン、-OH、-NO2、-CN、-COOH、-CHO、-SO3H、-SO2R、-SOR、-NH2、-NHR、-NR2、-CHal3、-NHCO(C1~C10)アルキル、-CONHR、-C(O)R、-CO2R、-C(O)N(R)2、-NRC(O)R、-NRC(O)N(R)2、-NRSO2R;3~8員の飽和または部分不飽和のシクロアルキル、C3~10アリール、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員の複素環(heterocylic ring)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールから選択することができる。
【0079】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容され得る塩」は、哺乳動物内で使用するのに適切であり、有毒でない傾向がある塩を指す。薬学的に許容され得る塩は、無機および有機の酸および塩基を使用して形成される。薬学的に許容され得る塩の例は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸など)または有機酸(酒石酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸、テレフタル酸など)を用いて形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容され得る塩には、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、ピバリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ウンデカン酸塩、アルギン酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、過硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩など、および塩の混合物が含まれる。
【0080】
適切な塩基由来の塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、およびN(Cアルキル)塩が含まれる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩などが含まれる。さらなる薬学的に許容され得る塩には、適切な場合、非毒性アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、および対イオン(ハライドなど)を用いて形成されたアミンカチオン塩、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルホン酸アルキル塩、およびアリールスルホン酸塩が含まれる。
【0081】
式(I)の化合物には、全ての可能なその光学異性体およびラセミ混合物が含まれる。別段の記載がない限り、本明細書中に記載の構造は、全ての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何異性体(または配座異性体))の構造形態;例えば、各不斉中心についてR体およびS体の立体配置、二重結合に関するZ型およびE型の異性体、およびZ型およびE型の配座異性体が含まれることを意味する。したがって、単一の立体化学異性体だけでなく、本発明の化合物の鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何異性体(または配座異性体)の混合物は、本発明の範囲内にある。別段の記載がない限り、本発明の化合物の全ての互変異性型は、本発明の範囲内にある。
【0082】
式Iの化合物を、付加塩の形態で使用することができる。より具体的には、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、および他の薬学的に許容され得る酸の塩などの酸付加塩を使用することができる。式Iの化合物の薬学的に許容され得る酸付加塩は、一般に、極性溶媒中での各化合物の、等モル量の比較的強い酸(好ましくは、塩酸、硫酸、もしくはリン酸などの無機酸またはメタンスルホン酸などの有機酸)との反応によって調製される。塩を溶解しない溶媒(かかる溶媒の例は、ジエチルエーテルである)の添加によって、塩の単離が容易になる。
【0083】
本発明のさらに別の態様では、医薬組成物は、1つまたは1つより多くの上記の化合物またはその塩;および薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。より具体的には、医薬組成物は、TLR7受容体、TLR8受容体、またはTLR7/8受容体の両方の活性によって媒介される障害または疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患および/またはがんの処置において有用である。障害は、過敏症、微生物による宿主の(被験体または患者の)免疫系の過剰刺激に関連する疾患、インターフェロン媒介性疾患、または炎症性サイトカイン媒介性炎症疾患から選択することができる。
【0084】
本発明の別の態様では、本発明の化合物は、TLR7受容体もしくはTLR8受容体、またはTLR7受容体およびTLR8受容体の両方を阻害することができる。
【0085】
本発明の別の態様では、1つまたは1つより多くの式I~Vおよび以下の1~30の化合物またはその塩;および薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含む医薬組成物を主張する。
【0086】
本発明の別の態様では、TLR7受容体、TLR8受容体、またはTLR7/8の両方活性によって媒介される障害または疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患および/またはがんの処置で用いるための医薬組成物を主張する。
【0087】
障害は、微生物による宿主の免疫系の過剰刺激に関連する疾患、インターフェロン媒介性疾患、または炎症性サイトカイン媒介性炎症疾患から選択される。好ましくは、障害は、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、骨粗鬆症、全身性硬化症、多発性硬化症、乾癬、糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病(Cronh’s Disease)および潰瘍性大腸炎)、高免疫グロブリンD血症、周期熱症候群、全身性若年性特発性関節炎、敗血症、アテローム性動脈硬化症、セリアック病、シェーグレン症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびがんから選択される。
【0088】
好ましくは、がんは、結腸直腸がん、乳がん、卵巣癌、膵臓がん、肺がん、腎細胞癌、子宮頸がん、および多発性骨髄腫から選択される。
【0089】
別の態様では、被験体におけるTLR7、TLR8、またはTLR7/8の活性を阻害する方法であって、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を前述の被験体に投与する工程を含む、方法を主張する。
【0090】
本方法は、TLR7受容体、TLR8受容体、またはTLR7/8受容体を発現する細胞を、TLR7受容体、TLR8受容体、またはTLR7/8受容体を阻害するのに十分な量で接触させる工程を含む。本方法を、in vivoまたはin vitroで実施することができる。
【0091】
別の実施形態では、本発明は、TLR7受容体、TLR8受容体、またはTLR7/8受容体の結合によって媒介される患者の状態を処置する方法に関する。本方法は、治療有効量の本発明の化合物を被験体に投与する工程を含む。好ましくは、投与すべき化合物は、TLR7受容体、TLR8受容体、またはTLR7/8受容体を選択的に阻害する。
【0092】
本発明の組成物中の化合物の量は、被験体においてTLR7/8を測定可能な程度に阻害するのに有効な量である。
【0093】
用語「被験体」は、本明細書中で使用される場合、動物、好ましくは、細胞、生物組織、または動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0094】
用語「薬学的に許容され得る担体または薬学的に許容され得るビヒクル」は、製剤化される化合物の薬理学的活性を実質的に変動させない非毒性の担体、アジュバント、またはビヒクルを指す。本発明の組成物中で使用される薬学的に許容され得る担体またはビヒクルには、レシチン、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、緩衝物質(クエン酸およびリン酸など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
本発明の方法は、微生物による宿主の免疫系の過剰刺激に関連する疾患、インターフェロン媒介性疾患、または炎症性サイトカイン媒介性炎症疾患から選択される障害を処置する。好ましくは、疾患は、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、骨粗鬆症、全身性硬化症、多発性硬化症、乾癬、糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病(Cronh’s Disease)および潰瘍性大腸炎)、高免疫グロブリンD血症、周期熱症候群、全身性若年性特発性関節炎、敗血症、アテローム性動脈硬化症、セリアック病、シェーグレン症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびがんから選択され、好ましくは、結腸直腸がん、乳がん、卵巣癌、膵臓がん、肺がん、腎細胞癌、子宮頸がん、および多発性骨髄腫から選択される。
【0096】
本発明のTLR阻害剤として記述される式(I)~(V)および下記の1~30の化合物、および必要に応じて少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体を含む本発明の組成物は、任意の投与で許容され得る。特に、組成物を、経口で、非経口で、吸入噴霧により、局所に、直腸に、経鼻で、口内に、膣内に、または埋め込んだリザーバを介して投与することができる。
【0097】
本明細書中で使用される用語「非経口」には、皮下、静脈内、筋肉内などが含まれる。好ましくは、組成物は、経口で、または静脈内に投与されるべきである。ビヒクルおよび溶媒のうちで使用が許容され得るものは、単独の、またはモノグリセリド、ジグリセリド、またはポリグリセリドと組み合わせた、水およびリンゲル液である。
【0098】
本発明の薬学的に許容され得る組成物は、任意の経口投与に許容され得る投薬形態で経口投与される。例示的な経口投薬形態は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤、または液剤である。経口用の錠剤の場合、一般に使用される担体には、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も添加される。カプセル形態の経口投与のために、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。
【0099】
また、特に処置の標的が容易に局所適用可能な領域または器官(眼、皮膚、または下部腸管の疾患が含まれる)を含む場合、本発明のTLR阻害剤として記載の式(I)~(V)の化合物を含む本発明の薬学的に許容され得る組成物をまた、局所的に投与する。適切な局所製剤は、これらの領域または器官の各々のために容易に調製される。
【0100】
局所適用のために、提供された薬学的に許容され得る組成物は、本発明の化合物を、必要に応じて他の活性成分と共に、1つまたは1つより多くの担体に懸濁または溶解した適切な軟膏に製剤化される。本発明の化合物の局所投与のための例示的な担体は、鉱油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、および水である。適切な局所用キャリアには、鉱油、ソルビタンモノステアラート、ポリソルベート、セチルアルコール、ベンジルアルコール、および水が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明の薬学的に許容され得る組成物は、必要に応じて鼻エアロゾルまたは吸入によって投与される。かかる組成物は、医薬製剤分野で周知の技術にしたがって調製され、ある特定の保護剤(ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤が含まれる)、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用した生理食塩水溶液として調製される。
【0102】
被験体を処置するための単回投薬形態の組成物を製造するために必要に応じてビヒクル材料の担体と組み合わせた本発明のTLR阻害剤として記載の式(I)~(V)の化合物の量は、処置される宿主、特定の投与様式に応じて変動するであろう。好ましくは、提供した組成物は、0.01~100mg/体重kg/日の投薬量の化合物をこれらの組成物を投与される患者に投与することができるように製剤化すべきである。
【0103】
また、本発明のTLR阻害剤として記載の式(I)~(IV)の化合物は、上述の通りに1つまたは1つより多くの賦形剤を用いてマイクロカプセル化した形態であり得る。錠剤、カプセル剤、丸薬、および顆粒剤の固体投薬形態を、コーティングおよびシェル(腸溶コーティング、放出制御コーティング、および製剤処方分野で周知の他のコーティングなど)を用いて調製することができる。かかる固体投薬形態では、活性化合物を、少なくとも1つの不活性希釈剤(スクロース、ラクトース、またはデンプンなど)と混合してよい。また、かかる投薬形態は、通常の慣行通り、不活性希釈剤以外のさらなる物質(例えば、錠剤化滑沢剤および他の錠剤化助剤(ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなど))を含む。カプセル剤、錠剤、および丸薬の場合、投薬形態は、必要に応じて緩衝剤も含む。投薬形態は、必要に応じて乳白剤を含み、また、有効成分(複数可)を、必要に応じて遅延様式で腸管のある特定の部分にのみ、または優先的に放出する組成物の投薬形態であり得る。使用することができる包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが含まれる。
【0104】
本発明のTLR阻害剤として記載の式(I)~(V)の化合物は、医薬組成物内で免疫応答を調整する任意の材料(例えば、生きているウイルス、細菌、または寄生虫の免疫原;不活化されたウイルス、腫瘍由来、原生動物、生物由来、真菌、または細菌の免疫原、トキソイド、毒素;自己抗原;多糖;タンパク質;糖タンパク質;ペプチド;細胞ワクチン;DNAワクチン;組換えタンパク質;糖タンパク質;およびペプチドなど)と併せて用いるためのワクチンアジュバントとして有用であり得る。いくつかの態様では、併用療法(TLR阻害剤とワクチンの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)を、自己免疫疾患または炎症性障害の処置で用いる。いくつかの態様では、併用療法(TLR阻害剤とワクチンの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)を、感染症の処置で用いる。
【0105】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与のための投薬形態には、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル、散剤、液剤、噴霧剤、吸入剤、または貼剤が含まれる。活性成分を、無菌条件下で薬学的に許容され得る担体および必要に応じた任意の防腐剤または緩衝液と混合する。眼科製剤、点耳剤、および点眼薬も本発明の範囲内にあることが企図される。さらに、本発明は、身体への化合物の制御送達がもたらされるという利点が付加される経皮貼布の使用を企図する。かかる投薬形態を、適切な媒体中に化合物を溶解または分配することによって作製することができる。また、吸収促進剤を使用して、皮膚を通過する化合物の流れを増大させることができる。速度を調節する膜を準備するか、ポリマーマトリックスまたはゲル中に化合物を分散させることによって速度を調節することができる。
【0106】
本発明は、さらに、TLR7/8関連障害を罹患した被験体を処置する方法であって、治療有効量の有効量の式(I)~(IV)の化合物を前述の被験体に投与する工程を含む、方法に関する。
【0107】
用語「治療有効量」は、本明細書中で使用される場合、当該分野で一般的に知られており、医学界で認識および利用されている投薬量および投与期間を指す。かかる量は、投与される特定の薬剤(複数可)、処置を受ける被験体のサイズおよび/もしくは状態、または担当医によって決定される他の医学的要因に応じて変動するであろう。
【0108】
本発明の化合物は、TLR7活性化に応答するがんのための抗がん剤として有用である。ある特定の実施形態では、がんには、乳房、膀胱、骨、脳、中枢神経系および末梢神経系、結腸、肉腫、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、腎臓、小腸、軟部組織、精巣、皮膚、尿管、膣および外陰のがん;遺伝性のがん、網膜芽細胞腫(retinomblastoma)、ウィルムス腫瘍、白血病、リンパ腫、非ホジキン病、慢性および急性骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、およびT細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群、およびAIDS関連がん型疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
本明細書中に記載の方法による免疫の抑制/阻害を、個体(免疫応答の望ましくない活性化に関連する障害を罹患している個体が含まれる)に対して実施することができる。また、本開示は、TLR7および/またはTLR8誘導性の応答を(例えば、in vitroまたはin vivoで)阻害する方法を提供する。いくつかの変形形態では、細胞を、免疫応答に寄与する細胞由来の応答を阻害するのに有効な量のTLR阻害剤と接触させる。
【0110】
TLR7およびTLR8の阻害ならびに両方の二重阻害は、サイトカイン活性に関連する種々の疾患または障害の処置および/または予防に有用である。TLR7および/またはTLR8の阻害剤が治療薬として使用され得る状態には、自己免疫疾患および炎症性障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
被験体における免疫応答を阻害する方法であって、少なくとも1つの本明細書中に開示のTLR阻害剤を、個体における免疫応答を阻害するのに有効な量で個体に投与する工程を含む、方法を本明細書中に提供する。いくつかの変形形態では、免疫応答は、自己免疫疾患に関連する。さらなる態様では、免疫応答の阻害により自己免疫疾患の1つまたは1つより多くの症状が改善される。なおさらなる態様では、免疫応答の阻害により自己免疫疾患が処置される。なおさらなる態様では、免疫応答の阻害により自己免疫疾患の発症が予防されるか遅延される。いくつかの変形形態では、TLR阻害剤はTLR7依存性免疫応答を阻害する。いくつかの変形形態では、TLR阻害剤はTLR8依存性免疫応答を阻害する。いくつかの変形形態では、TLR阻害剤はTLR7依存性応答およびTLR8依存性免疫応答を阻害する。いくつかの態様では、少なくとも1つのTLR阻害剤を、個体における免疫応答を阻害するのに有効な量で投与する。
【0112】
また、個体における自己免疫疾患を処置または予防する方法であって、有効量のTLR7および/またはTLR8の阻害剤を個体に投与する工程を含む、方法を本明細書中に提供する。いくつかの態様では、自己免疫疾患は、皮膚、筋組織、および/または結合組織に関連する。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、個体において皮膚、筋組織、および/または結合組織の症状によって明示されていない。
【0113】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は全身性である。自己免疫疾患には、関節リウマチ、自己免疫性膵炎、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、多発性硬化症、抗リン脂質症候群、硬化性胆管炎、全身に発症する関節炎、過敏性腸疾患、強皮症、シェーグレン病、白斑、多発性筋炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、炎症性腸疾患(クローン病が含まれる)、潰瘍性大腸炎、および自己免疫性肝炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
したがって、本発明は、動物、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおけるTLR7、TLR8、またはTLR7/8を阻害する方法であって、有効量の式Iの化合物を動物に投与する工程を含む、方法を提供する。免疫応答の阻害のための全ての組成物と同様に、特定のTLR阻害製剤の有効量および投与方法は、個体、処置すべき状態、および当業者に明らかな他の要因に基づいて変動させることができる。化合物の有効量は、当該分野で公知の要因に応じて変動するであろうが、約0.1~10mg/kg、0.5~10mg/kg、1~10mg/kg、0.1~20mg/kg、0.1~20mg/kg、または1~20mg/kgの用量であると予想される。
【0115】
いくつかの実施形態では、併用療法(TLR阻害剤とコルチコステロイドの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)を、自己免疫疾患または炎症性障害の処置で使用する。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、自己免疫性皮膚疾患、多発性硬化症、膵炎、糸球体腎炎、腎盂炎、硬化性胆管炎、およびI型糖尿病から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患はシェーグレン病である。
【0116】
本明細書中に提供したTLR阻害剤ならびにTLR7および/またはTLR8依存性免疫応答を阻害する方法についての使用説明書を含むキットも本明細書中に提供する。
【0117】
キットは本明細書中に記載のTLR阻害剤(またはTLR阻害剤を含む製剤)、ならびに意図する処置(例えば、TLR7および/またはTLR8依存性免疫応答の抑制、自己免疫疾患の1つまたは1つより多くの症状の改善、慢性炎症性疾患の症状の改善、ウイルスに応答したサイトカイン産生の減少、ならびに/またはTLR7および/またはTLR8によって媒介された疾患または障害の1つまたは1つより多くの症状の処置および/または予防)のためのTLR阻害剤または製剤の使用および投薬量に関する説明書一式(一般に書面による説明書であるが、説明書を含む電子記憶媒体(例えば、磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容され得る)を含む1つまたは1つより多くの容器を含み得る。キットと共に含まれる説明書は、一般に、意図する処置のための投薬量、投与計画、および投与経路に関する情報を含む。TLR阻害剤(またはTLR阻害剤を含む製剤)のための容器は、単位用量、大量包装(例えば、複数用量の包装)または分割単位用量であり得る。キットは、アジュバントを含む容器をさらに含み得る。
【0118】
本発明は、実施例を用いてさらに説明されているが、実施例は、特定の実施形態を説明するが、本発明の範囲を制限しないことが意図される。
【0119】
以下の実施例に示すように、ある特定の例示的な実施形態では、以下の一般的な手順にしたがって化合物を調製する。一般的方法は本発明のある特定の化合物の合成を示しているが、以下の一般的方法および当業者に公知の他の方法を、本明細書中に記載の全ての化合物ならびにこれらの各化合物のサブクラスおよび種に適用することができると認識されるであろう。
【0120】
以下のプロセス、スキーム、および例の説明で使用される記号および慣習は、現代の科学論文(例えば、Journal of the American Chemical Society or the Journal of Biological Chemistry)で使用されるものと一致する。別段の指示がない限り、全ての温度を℃(セ氏温度)で表している。
【0121】
使用した全ての溶媒は、市販されており、さらに精製せずに使用した。典型的には、無水溶媒を使用して反応させた。フラッシュカラムクロマトグラフィを、一般に、高純度の塩基性不活性化処理シリカベースのトリファンクショナル結合C18リガンドを特徴とするsymmetry C18カラムを使用して実施した。
【0122】
全てのNMRスペクトルを、Bruker DPX-400 NMR分光器(400.13MHz)で記録した。発表されたガイダンス(J.Org.Chem.,Vol.62,No.21,1997)にしたがって、基準シグナルとしての残存非重水素化溶媒ピークから低磁場側の1H-NMR化学シフト(δH)を百万分率(ppm)で示す。NMRデータの略称はs(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、m(マルチプレット)である。
【0123】
高分解能LC-MSスペクトルを、Shimadzu LC10 AvpクロマトグラファーおよびUV検出器Shimadzu SPD 10A vp、光散乱検出器ELSD Sedex75、オートサンプラーGilson215を備えたAPI 165 EX分光計で記録した。
【0124】
一般に、本発明の化合物を、容易に入手可能な出発物質から調製することができる。かかる出発物質が市販されていない場合、出発物質を標準的な合成技術によって調製してよい。
【0125】
化合物の分析データを、以下の表1にまとめる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0126】
また、本発明の化合物は、以下の化合物のうちの1つを含み得る。
【化21】
【0127】
したがって、これらの化合物上のR基を、本明細書中に提供した他の化合物に独立して置換して良い。そのようなものとして、R基は、骨格または一般構造の間で交換可能であり得る。
【実施例】
【0128】
実施例1
本発明の化合物を、以下の手順を使用して調製することができる。
化合物1:1-(4-シアノフェニル)-N-(3-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化22】
方法A。1-(4-シアノフェニル)-N-(3-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-4-カルボキサミド。1-(4-シアノフェニル)ピペリジン-4-カルボン酸(1mmol、230mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、3-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパン-1-アミン(1mmol、190.28mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、1-(4-シアノフェニル)-N-(3-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-4-カルボキサミドを白色固体として得た(369mg、92%)。MS:m/z=403[M+H]
+。
【0129】
化合物2:N-(3-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)-1-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化23】
方法B。N-(3-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)-1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミド。1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボン酸(1mmol、274mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、3-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパン-1-アミン(1mmol、190.28mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、N-(3-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)-1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミドを白色固体として得た(428mg、96%)。MS:m/z=447[M+H]
+。
【0130】
化合物8:1-(5-シアノピリジン-2-イル)-N-(2-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化24】
方法C。1-(5-シアノピリジン-2-イル)-N-(2-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミド。1-(5-シアノピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボン酸(1mmol、231mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタンアミン(1mmol、176.26mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、1-(5-シアノピリジン-2-イル)-N-(2-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミドを白色固体として得た(362mg、93%)。MS:m/z=390[M+H]
+。
【0131】
化合物10:1-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-N-(2-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-3-カルボキサミド
【化25】
方法D:1-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-N-(2-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-3-カルボキサミド。1-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)ピペリジン-3-カルボン酸(1mmol、248mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタンアミン(1mmol、176mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、1-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-N-(2-(3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-3-カルボキサミドを黄色固体として得た(394mg、97%)。MS:m/z=407[M+H]
+。
【0132】
化合物11。1-(4-シアノフェニル)-N-(2-(インドリン-1-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化26】
方法E:1-(4-シアノフェニル)-N-(2-(インドリン-1-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミド。1-(4-シアノフェニル)ピペリジン-4-カルボン酸(1mmol、230mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、2-(インドリン-1-イル)エタンアミン(1mmol、162mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、1-(4-シアノフェニル)-N-(2-(インドリン-1-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミドを白色固体として得た(340mg、91%)。MS:m/z=375[M+H]
+。
【0133】
化合物17:N-(3-(インドリン-1-イル)プロピル)-1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化27】
方法F:N-(3-(インドリン-1-イル)プロピル)-1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミド。1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボン酸(1mmol、274mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、3-(インドリン-1-イル)プロパン-1-アミン(1mmol、176mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、N-(3-(インドリン-1-イル)プロピル)-1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミドを白色固体として得た(414mg、96%)。MS:m/z=433[M+H]
+。
【0134】
中間体1:2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタンアミン
【化28】
方法G。
2-(2-ヒドロキシエチル)イソインドリン-1,3-ジオン(10mmol、1.91g)およびDIPEA(10mmol、1.29g)を含むCH
2Cl
2の溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.15当量、3.25g)を5℃で滴下して加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。この後、混合物を5%NaHCO
3水溶液および水で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、真空中で蒸発させて、2-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)エチルトリフルオロメタンスルホナートを黄色油状物として得た(2.94g、92%)。MS:m/z=324[M+H]
+。
【0135】
方法H。
2-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)エチルトリフルオロメタンスルホナート(5mmol、1.62g)を含むCH2Cl2(100ml)の溶液に6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(0.8当量、0.65g)および飽和NaHCO3水溶液(100ml)を添加した。混合物を室温で12時間撹拌した。この後に、混合物を水で洗浄した。層を分離し、有機層をNa2SO4で乾燥させ、蒸発させて、2-(2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの粗生成物を得た。
【0136】
方法I。
粗製2-(2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンを含むMeOH(200ml)の溶液にN2H4・H2O(25mmol、1.71g)を添加した。混合物を室温で12時間撹拌した。次第にペレットが生成され、これを濾過した。溶媒を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタンアミンを白色固体として得た(0.93g、90%)。MS:m/z=207[M+H]+
【0137】
化合物21:1-(4-シアノフェニル)-N-(2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化29】
方法J:1-(4-シアノフェニル)-N-(2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミド。1-(4-シアノフェニル)ピペリジン-4-カルボン酸(1mmol、230mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタンアミン(1mmol、206mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、1-(4-シアノフェニル)-N-(2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)ピペリジン-4-カルボキサミドを白色固体として得た(397mg、95%)。MS:m/z=419[M+H]
+。
【0138】
化合物22:N-(2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)-1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化30】
方法K:N-(2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)-1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミド。1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボン酸(1mmol、274mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタンアミン(1mmol、206mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、N-(2-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エチル)-1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミドを白色固体として得た(430mg、93%)。MS:m/z=463[M+H]
+。
【0139】
中間体2:3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパン-1-アミン
【化31】
方法L。
6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン塩酸塩(10mmol、1.99g)をエタノール(100mL)に溶解し、Et
3N(10mmol、1.01g)にてアクリロニトリル(30mmol、1.59g)の接触下で処理した。混合物を5時間加熱還流した。揮発物を減圧下で除去し、残渣をCH
2Cl
2と水との間で分配した。有機層をブラインで洗浄し、(Na
2SO
4)で乾燥させ、濾過した。溶媒を蒸発させると粗生成物が得られ、これをクロマトグラフィによって精製して、3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパンニトリルを白色固体として得ることができた(2.07g、96%)。MS:m/z=217[M+H]
+。
【0140】
方法M。
3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパンニトリル(5mmol、1.08g)を含むTHF(10ml)の溶液を、新たに調製したAlCl3(9mmol、1.20g)およびLiAlH4(9.25mmol、0.35g)を含むTHF(乾燥、250mL)の懸濁液に窒素雰囲気下で滴下して加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。慎重なその後の水(5mmol、0.1mL)、NaOH(1N、5mL)、および別の水(20mmol、0,4mL)の添加によってワークアップを開始し、形成された塩をセライトで濾過した。透明な溶液を乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮して、3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパン-1-アミンを白色固体として得た(0.94g、86%)。MS:m/z=221[M+H]+。
【0141】
化合物29:1-(4-シアノフェニル)-N-(3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-3-カルボキサミド
【化32】
方法N:1-(4-シアノフェニル)-N-(3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-3-カルボキサミド。1-(4-シアノフェニル)ピペリジン-3-カルボン酸(1mmol、230mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパン-1-アミン(1mmol、220mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、1-(4-シアノフェニル)-N-(3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-3-カルボキサミドを白色固体として得た(419mg、97%)。MS:m/z=433[M+H]
+。
【0142】
化合物30:1-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-N-(3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-3-カルボキサミド
【化33】
方法O:1-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-N-(3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-3-カルボキサミド。1-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)ピペリジン-3-カルボン酸(1mmol、248mg)を含むDMF(2mL)の溶液にCDI(1mmol、162mg)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパン-1-アミン(1mmol、220mg)を添加した。混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンで希釈し、5%Na
2CO
3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して、1-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-N-(3-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロピル)ピペリジン-3-カルボキサミドを白色固体として得た(405mg、90%)。MS:m/z=451[M+H]
+。
【0143】
実施例2
表1に示した本発明の試験化合物1~30を、単一の濃度でこれらの化合物がヒト末梢血単核細胞(PBMC)上のToll様受容体を調節する能力について試験した。
【0144】
すなわち、本実験では、特異的サイトカインの放出によって測定した場合に本発明の化合物がヒトPBMCにおいてTLR7/8を阻害する能力を評価した。以下のサイトカインを、完全なサイトカイン応答プロフィール(試料の希釈なし)について測定した:IL-1β、IL-6、IL-12p40、TNFα、およびIFNα。
【0145】
各サイトカインの誘導レベルを、5-パラメータ非線形回帰分析(ここで、y=(A+((B-A)/(1+(((B-E)/(E-A))*((x/C)^D)))))を使用して検量線から内挿した。次いで、内挿データを、ビヒクル対照に対して標準化した。また、対照に対する百分率(PoC)を、式PoC=(試験試料/陽性ビヒクル対照)×100を使用して計算した。
【0146】
凍結保存されたヒトPBMCを、浸漬により解凍した。細胞を、適切な密度(1×105/ウェル)に希釈し、化合物試験ウェルについて150μL/ウェルの培養培地(RPMI1640、10%不活化ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L-グルタミン)を有する96ウェルポリプロピレンプレートに播種した。対照ウェルについては、細胞(1×105/ウェル)を、150μL/ウェルの培養培地にプレートした。
【0147】
細胞を37℃、5%CO2で1時間インキュベートし、その後に試験化合物または対照を添加した。
【0148】
試験化合物をDMSOに溶解して20×保存溶液を作製し、次いで、細胞培養培地を用いてさらに希釈した。ヒト末梢血単核細胞におけるTLR7/8を刺激するチアゾロキノロン誘導体CL075を内毒素を含まない水に1mg/mLで再懸濁して、作業用保存溶液を作製した。
【0149】
試験化合物をPBMCに体積10μLで添加し、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。化合物を、最終アッセイ濃度10μMにて二連で試験した。同時に、基準化合物デキサメタゾンを対照として体積10μLで添加して最終アッセイ濃度100nMとし、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後、40μLの適切に希釈した作業用保存TLRリガンドを試験化合物および基準化合物のウェルに添加して、それぞれ最終アッセイ体積200μLとした。対照CL075を2μg/mLで使用した。
【0150】
プレートを、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。プレートを、200×gで10分間遠心分離した。細胞培養上清を回収し、分析のために必要になるまで-80℃で保存した。
【0151】
陽性対照CL075(2μg/mL)は、ヒトPBMCからの適切なサイトカインの放出を刺激した。
【0152】
表2は、試験化合物および100%二重阻害対照としてのCL075で24時間刺激したヒトPBMCにおけるTLR7/8二重阻害を実証している。採取した細胞培養上清をIL-1β、IL-6、IL-12p40、TNFα、およびIFNα放出について測定して、二重TLR7/8阻害を評価した。
【表2】
【0153】
表2に提供したデータから、TLR7/8阻害アッセイにおいて、本発明の試験化合物がCL075処置によって誘導されたサイトカインの放出を有意に阻害したことが確認された。
【0154】
同一のTLR7/8阻害アッセイにおいて、試験化合物は、CL075処置後のヒトPBMCからのIL-1β、IL-12p40、およびIFNαの放出の阻害を示した。基準化合物デキサメタゾンは、予想される範囲内でサイトカイン放出を阻害した。
【0155】
実施例3.TLR7/8阻害アッセイIC50
特異的サイトカインの放出によって測定した場合に本発明の化合物がヒト末梢血単核細胞(PBMC)上のToll様受容体(TLR)を阻害する能力を試験するために、化合物を8つの異なる濃度で試験した。
【0156】
50%阻害濃度(IC50)は、物質が特異的な生物学的機能または生化学的機能を阻害する効力の基準である。この定量的基準は、所与の生物学的過程(または過程の構成要素、すなわち、酵素、細胞、細胞受容体、または微生物)を半分阻害するために化合物(阻害剤)がどの程度必要であるのかを示す。
【0157】
凍結保存されたヒトPBMCを、浸漬により解凍した。細胞を、適切な密度(1×105/ウェル)に希釈し、化合物試験ウェルについて150μL/ウェルの培養培地(RPMI1640、10%不活化FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L-グルタミン)を有する96ウェルポリプロピレンプレートに播種した。対照ウェルについては、細胞(1×105/ウェル)を、150μL/ウェルの培養培地にプレートした。細胞を37℃、5%CO2で1時間インキュベートし、その後に試験化合物または対照を添加した。試験化合物をDMSOに溶解して20×保存溶液を作製し、次いで、細胞培養培地を用いてさらに希釈した。陽性対照CL075を内毒素を含まない水に1mg/mLで再懸濁して、作業用保存溶液を作製した。
【0158】
試験化合物をPBMCに体積10μLで添加し、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。化合物を、最終アッセイ濃度100、50、10、5、1、0.5、0.1、0.01μMにて二連で試験した。同時に、基準化合物デキサメタゾンを対照として体積10μLで添加して最終アッセイ濃度100nMとし、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後、40μLの適切に希釈した作業用ストックTLR7/8リガンドを試験化合物および基準化合物のウェルに添加して、それぞれ最終アッセイ体積200μLとした。対照を、体積40μLの希釈した作業用ストックのPBMCに添加し、その後に10μLの適切に希釈したビヒクルを添加して化合物添加を模倣し、最終アッセイ体積を200μLにした。したがって、アッセイにおける最終DMSOビヒクル濃度は、1~0.5%であった。対照CL075を2μg/mLで使用した。
【0159】
プレートを、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。次いで、プレートを、200×gで10分間遠心分離した。細胞培養上清を回収し、分析のために必要になるまで-80℃で保存した。各試料のサイトカインレベルを、製造者のプロトコールにしたがってLuminex法を使用して決定した。
【0160】
各々のサイトカイン誘導レベルを、5パラメータ非線形回帰分析(ここで、y=(A+((B-A)/(1+(((B-E)/(EA))*((x/C)^D)))))を使用して検量線から内挿した。次いで、内挿データを、ビヒクル対照または無刺激対照に対して標準化した。また、対照に対する百分率(PoC)を、式PoC=(試験試料/陽性ビヒクル対照)×100を使用して計算した。
【0161】
グラブス最大ノルム残差検定を使用して外れ値を計算した。
採取した細胞培養上清を、IL-1β、IL-6、IL-12p40、TNFα、およびIFNαの放出について測定してTLR7/8阻害を評価した。
【0162】
8つの試験化合物を、24時間のインキュベーション後に1人のヒトドナー由来のPBMCにおけるTLR7/8を阻害する能力について評価した。
【0163】
TLR7/8阻害アッセイでは、試験化合物1~30は、CL075処置によって誘導されたサイトカインの放出を用量依存様式で阻害した。対照的に、基準化合物デキサメタゾンは、サイトカイン放出を予想範囲内で阻害した。
【0164】
陽性対照CL075(2μg/mL)は、各々の特異的TLRアッセイにおいて、ヒトPBMCからの適切なサイトカインの放出を刺激した。サイトカインの分泌レベルは測定可能であり、予想範囲内にあった。例示的な化合物の活性を、表3に示す。
【表3】
【国際調査報告】