(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】化学蒸着方法および装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/50 20060101AFI20220311BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20220311BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20220311BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20220311BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C23C16/50
C23C16/04
H01L21/285 C
C23C26/00 B
C23C16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544851
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 SE2020050036
(87)【国際公開番号】W WO2020159418
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521339131
【氏名又は名称】イオナウティクス・エービー
【氏名又は名称原語表記】IONAUTICS AB
【住所又は居所原語表記】Kabelgatan 9B,943 31 Oejebyn,Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ペザーセン、ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】ナドム、ハマ
【テーマコード(参考)】
4K030
4K044
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030BA05
4K030BA07
4K030BA14
4K030BA58
4K030BB14
4K030CA01
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4K030FA01
4K030FA12
4K030HA07
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4K030KA20
4K030LA15
4K044AA01
4K044AB02
4K044BA01
4K044BA06
4K044BB01
4K044BC14
4K044CA14
4M104BB04
4M104BB05
4M104DD43
4M104DD44
4M104GG09
(57)【要約】
本開示は、基板上への化学蒸着のための方法に関し、この方法は、前駆体ステップと反応物ステップとを含み、前駆体ステップは、基板(170)上に前駆体分子の層を化学吸着させることを含み、反応物ステップは、前駆体分子を還元することができる種を基板(170)表面の少なくとも一部に添加することを含み、それにより還元された前駆体分子の少なくとも一部が基板(170)表面上に蒸着され、反応物ステップの少なくとも一部の間に、電圧源(130)によって、基板(170)表面の少なくとも一部に正バイアスを印加し、還元種を添加するステップは、電子源(150)によって電子を自由粒子として提供することを含み、それにより、反応物ステップ中に、自由電子が基板(170)表面に伝達されるときに、閉じた電気回路が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上への化学蒸着のための方法(300A、B)であって、前記方法は、
前駆体ステップ(310)と、
反応物ステップ(320)とを含み、
前記前駆体ステップ(310)は、前駆体分子の層を前記基板(170)上に化学吸着させることを含み、前記反応物ステップ(320)は、前記前駆体分子を還元することができる表面種を前記基板(170)の少なくとも一部に添加することを含み、それにより、前記化学吸着された前駆体分子の少なくとも一部が還元され、膜が前記基板(170)表面上に蒸着され、
前記反応物ステップ(320)の少なくとも一部の間に、電圧源(130)によって、前記基板(170)表面の少なくとも一部に正バイアスを印加し、
前記還元種を添加する前記ステップ(320)は、電子源(150)によって電子を自由粒子として提供することを含み、
それにより、前記反応物(320)ステップ中に、前記自由電子が前記基板(170)表面に伝達されるときに、閉じた電気回路が形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記前駆体分子が還元可能な原子又は分子を含み、還元された原子又は分子の固体材料が少なくとも半導電性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前駆体分子が、フェロセン、コバルトセン、ニッケロセン又はルテノセンなどのメタロセン分子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体ステップ(310)及び前記反応物ステップ(320)が、前記前駆体ステップ(310)と前記反応物ステップ(320)とを交互に行うことによって循環される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板(170)は、リソグラフィ及び/又はエッチング技術を用いて最初にパターニングされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基板(170)が、露出した導電性基板(170)の領域が残された絶縁材料でマスクされた導電性基板(170)を含み、それにより材料の蒸着が前記露出した導電性基板(170)上でのみ起こり、材料のパターンが前記露出した基板(170)領域から成長することを可能にする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
フィンを含むFETであって、前記FETの少なくとも前記フィンが、請求項6に記載の方法に従って製造される、FET。
【請求項8】
基板(170)上への化学蒸着のための装置(100、200)であって、前記装置は、
前記基板(170)を保持するための基板ホルダ(140)であって、前駆体分子が前記基板(170)上に蒸着されるように配置されている、基板ホルダと、
電圧源(130)と、
前記基板(170)表面で前記前駆体分子を還元することができる還元種を提供するように配置された前駆体分子還元種源とを含み、
前記前駆体分子還元種源は電子源(150)を備え、前記電子源(150)は、前記基板170の近傍に自由電子を提供するように配置され、
前記電圧源(130)は、前記基板(170)の表面の少なくとも一部に正バイアスを印加するように配置され、
それにより前記自由電子が、前記基板(170)表面に伝達されたときに、閉じた電気回路を形成することを特徴とする装置。
【請求項9】
前記電子源(150)がプラズマ発生器(250)を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
気相中に前駆体分子を提供するように配置された前駆体気化器(120、160)を含む、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
制御された低圧環境において前記基板ホルダ(140)及び基板(170)を収容するように構成された真空チャンバ(110)を備える、請求項8~10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学蒸着に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に材料の薄膜を蒸着させる技術は、家庭用ミラーの反射層からプロセッサなどの半導体デバイスまであらゆるものを形成するために使用されている。所望の薄膜は、導電性または半導電性であることが多い。化学蒸着(CVD)は、気体分子から薄膜を製造する技術であり、薄膜を形成する原子を含有する分子は、前駆体と呼ばれる。CVDは、電子産業にとって極めて重要であるが、純粋な金属の薄膜になると限界がある。前駆体分子中の金属原子は、典型的には正の酸化状態にあり、すなわち、それらには電子が欠如している。従って、金属原子は形式的に陽イオンである。金属のCVDでは、金属膜を蒸着させるために、欠如している電子を提供する分子還元剤が必要である。しかしながら、多くの金属は、高い還元電位を有するので、還元するのが非常に困難である。従って、強力な還元剤が必要とされる。十分に高い還元力を有するいくらかの分子が実証されているが、それらは化学的に合成するには複雑であり、CVDで使用することが困難である。
【発明の概要】
【0003】
上記に従って、高い還元電位を有する原子を含む種を利用する改善された蒸着方法の必要性が存在する。
【0004】
本発明の目的は、導電性および半導電性材料の化学蒸着を改善することである。
【0005】
これは、本開示によれば、前駆体ステップおよび反応物ステップを含む、基板上への化学蒸着のための方法によって達成された。基板表面の少なくとも一部は、電圧源に電子的に接続される。前駆体ステップは、基板上に前駆体分子の層を化学吸着させることを含む。反応物ステップは、前駆体分子を還元することができる種を基板表面の少なくとも一部に添加することを含む。この方法は、反応物ステップの少なくとも一部の間に電圧源によって基板表面の少なくとも一部に正バイアスを印加することを特徴とし、還元種を添加するステップは、接地に接続された電子源によって提供される自由電子を基板表面の少なくとも一部に伝達することを含み、それにより、反応物ステップ中に、自由電子が基板表面に伝達されるときに、閉じた電気回路が形成される。本明細書における自由電子という用語は、自由粒子としての電子を指す。本明細書における基板表面という用語は、基板および任意の蒸着材料の最外層を指す。本明細書における閉回路という用語は、一定の印加電位バイアスで基板を通る電流を連続的に実質的に維持する能力を指す。
【0006】
正バイアスは、電圧源に電気的に接続された基板表面領域に向かって電子を引き付ける。このようにして得られた閉回路は、電圧源に電子的に接続された基板表面の領域に負電荷が蓄積するのを防止する。正のバイアスは、基板表面の電子的に接続された領域に電子を引き付け、電子は前駆体分子を還元し得る。
【0007】
前駆体分子を還元するための自由電子の使用は、強力な還元剤を表面に輸送する必要性を排除する。前駆体分子を還元するための自由電子の使用は、蒸着中に環境条件を変化させる必要性を排除し得る。主に表面の接続された領域において前駆体分子を還元するために自由電子を使用することにより、半導体デバイスを作成するための新規なおよび/または改善された技法が可能になり得る。
【0008】
電子源はプラズマ発生器であってもよい。プラズマ発生器は、一般的に、前駆体を提供するための化学蒸着用に設計された真空チャンバ内で使用される。CVDセットアップにおけるプラズマ発生器の普及により、本開示は、既存の化学蒸着システムにおいて最小限の修正で利用されることが可能になる。
【0009】
この方法は、導電性基板上に化学吸着され、その後、還元された基板上に前駆体の少なくとも一部を蒸着させることができる任意の前駆体と共に使用するのに適している。前駆体は、フェロセン、コバルトセン、ニッケロセンまたはルテノセンなどのメタロセン分子であってよい。
【0010】
膜の層を効率的に構成し続けるために、蒸着された材料の表面および電圧源は電気的に接続されたままである必要があり、したがって、蒸着された材料は導体または半導体である必要がある。メタロセンは、フェロセン、コバルトセン、ニッケロセンまたはルテノセンのような正の酸化状態にある金属原子を含む分子群である。導電性表面での少なくともいくらかのメタロセンの還元は、表面上の金属原子の蒸着をもたらす。少なくともいくらかのメタロセンは、本開示における前駆体分子としての使用に適している。
【0011】
基板表面上の前駆体分子の多層を還元させるために、本方法は、前駆体ステップおよび反応物ステップを同時に実行するか、または前駆体ステップおよび反応物ステップを循環させるかのいずれであってもよい。しかしながら、電子が基板表面の領域に引き付けられるためには、前記表面領域は電圧源に電気的に接続される必要がある。したがって、還元された前駆体が絶縁層をもたらす場合、前駆体分子の還元は最終的に停止する。本方法が層を連続的に構築するために、前駆体分子は還元可能な原子を含み、還元された原子の固体材料は少なくとも半導電性である。一例として、前駆体フェロセンを還元して、前駆体中の鉄原子が基板上に導電性鉄膜を形成するようにしてもよい。効率的な蒸着のための基板表面と電圧源との間の電気接続の要件を利用して、例えば、リソグラフィなどの技法で作成された絶縁体材料でパターン形成された基板を使用することによって、層成長の位置を制御することができる。本開示は、フィン電界効果トランジスタ(FinFET)におけるフィンなどの集積回路の部品を製造するための新規かつ改善された方法を可能にし得る。
【0012】
本開示は、基板上への化学蒸着のための装置に関する。装置は、基板ホルダと、基板と、電圧源と、電子源とを備える。基板ホルダは、基板を保持するように配置される。基板表面の少なくとも一部は、化学吸着された前駆体分子を含む。基板表面の少なくとも一部は、電圧源に電気的に接続される。電圧源の負端子は接地されてもよい。電子源は接地されてもよい。電子源は、基板の近傍に自由電子を提供するように配置される。装置は、動作中に電圧源によって基板表面の少なくとも一部に正のバイアスが印加されることを特徴とする。動作中は、電子源および正の基板バイアスの両者がアクティブであり、自由電子が基板に輸送される。装置は、自由電子が基板に移動するときに閉回路を生成するように配置される。
【0013】
装置は、真空蒸着チャンバを備えることができる。基板ホルダおよび基板は、真空蒸着チャンバ内に配置される。電圧源および電子源は、真空蒸着チャンバと接合されてもよい。真空蒸着チャンバは、低圧かつ制御された環境での蒸着を可能にする。
【0014】
装置は、ヒータを備える昇華チャンバを備えてもよい。ヒータは、前駆体材料を保持し加熱するように配置される。昇華チャンバは、前駆体気化器として機能し、気相中に前駆体分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、CVDのための装置を概略的に示す。
【
図2】
図2は、真空チャンバ内におけるCVDのための装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面全体を通して、同一の参照番号は、同一の部分、概念、および/または要素を指す。したがって、1つの図における参照番号に関して述べられることは、それ以外のことが明示的に述べられない限り、他の図における同じ参照番号に等しく良好に適用される。
【0017】
図1は、電圧源130と、基板ホルダ140と、電子源150とを備えるCVD用の装置100を概略的に示す。基板ホルダ140は、基板170を保持するように配置される。基板170表面の少なくとも一部は、導電性または半導電性である。基板170表面の少なくとも一部は、基板170が基板ホルダ140内に取り付けられたときに、電圧源130に電気的に接続される。電子源150は接地されている。電子源150は、接地電源190によって制御されてもよい。電圧源130および基板170は、基板170との電気的接続を形成するように配置された基板ホルダ140の少なくとも一部を介して電気的に接続されてもよい。
【0018】
電子源150は、基板170の近傍に自由電子を提供するように配置される。電子源150は、例えば、プラズマ発生器、電子フラッドガン、電界放出源または熱イオン源である。本明細書における自由電子という用語は、自由粒子としての電子を指す。基板170表面の少なくとも一部は、化学吸着された前駆体分子によって覆われている。基板170表面上の前駆体分子は、フェロセンなどの自由電子によって還元されることが可能な分子を含み、それにより前記前駆体分子の少なくとも一部が基板170表面上に蒸着される。
【0019】
電子源150によって提供される十分な量の自由電子が基板170の表面に到達するために、電圧源130は、基板170表面の少なくとも一部に接地に対して正の電位を印加するように構成される。電圧源130に電子的に接続された基板170表面の領域では、印加された電位が電荷蓄積を減少させ、自由電子を引き付ける。動作中、基板170を通って流れる電流として閉回路が形成される。動作中、新たな前駆体分子が基板170表面に追加されなければ、還元させることができる基板170表面上の前駆体分子の数を減損させることができ、それにより蒸着が終了する。
【0020】
装置100は、動作中に基板170の表面に前駆体を連続的に化学吸着させることができる前駆体供給装置を備えていてもよい。装置100は、基板170表面に電子を輸送するステップを実行するように装置100を動作させる前に、基板170表面に前駆体分子を化学吸着させるステップを実行するように構成された前駆体供給装置を備えてもよく、これにより、ステップ間を循環させることによって複数の層を蒸着させる。
【0021】
図2は、真空チャンバ内におけるCVDのための装置200を示す。
【0022】
図示した例では、装置は、真空蒸着チャンバ110と、昇華チャンバ120と、電圧源130とを備える。真空蒸着チャンバ110は接地されている。真空蒸着チャンバ110は、ポンプに接続するように構成される。真空蒸着チャンバ110は、基板ホルダ140と、プラズマ発生器250と、ポンプへの接続部111と、昇華チャンバ120への接続部112とを備える。昇華チャンバ120は、ヒータ160と、ガスラインへの接続部121とを備える。プラズマ発生器250は、電子源150として機能する。チャンバ間の接続部112および昇華チャンバ120とガスラインとの間の接続部121はいずれも、それぞれの接続部を閉じるように配置された弁を備える。ヒータ160は、前駆体材料を保持し加熱するように構成されている。基板ホルダ140は、基板170の表面の少なくとも一部が電圧源130に電気的に接続可能な状態で基板170を保持するように構成される。電圧源130は、電圧源130に電気的に接続された基板170の表面の少なくとも一部に接地に対して正の電位を印加するように構成される。プラズマ発生器250は接地されている。プラズマ発生器250は、プラズマ発生領域180内にプラズマを提供するように構成される。プラズマ発生器250は、接地電源190によって制御されてもよい。基板140ホルダは、プラズマ発生領域180とチャンバ間の接続部112との間に実質的に配置される。プラズマ発生領域180は、実質的に、ポンプにつながる接続部111と基板ホルダ140との間に位置する。プラズマ発生領域180と基板ホルダ140との間の距離は、数cm程度であってもよい。
【0023】
図3Aおよび
図3Bは、前駆体ステップ310と、反応物ステップ320と、蒸着ステップ330とを含む2つのCVD法300A-Bの代表的モードを概略的に示す。前駆体ステップ310は、基板170表面上に前駆体分子を化学吸着させることを含む。反応物ステップ320は、基板170表面の少なくとも一部に自由電子を輸送することを含む。蒸着ステップ330は、基板170表面で前駆体分子を還元する電子を含み、その後、還元された前駆体分子の少なくとも一部が基板170表面上に蒸着される。ユーザ制御の前駆体ステップ310および反応物ステップ320とは異なり、蒸着ステップ330は、基板170表面での化学反応および結果として生じる蒸着を表す。蒸着ステップ330は、原因として前駆体ステップ310および反応物ステップ320に依存するので、本開示は、蒸着ステップ330なしで説明されてもよい。蒸着ステップ330は、反応物ステップ320が必ずしも材料を基板170表面上に蒸着させない方法を明確にするために含まれる。
【0024】
図3Aは、方法300Aの代表的なモードを説明しており、ここでは、前駆体ステップ310および反応物ステップ320が同時に開始され、前駆体分子および自由電子を基板170表面に輸送し、前駆体ステップ310および/または反応物ステップ320を終了することによって蒸着が停止するまで、蒸着ステップ330と連続的に並行して実行される。
【0025】
図3Bは、方法300Bの代表的なモードを説明しており、原子層蒸着(ALD)において循環される自己制限ステップと同様に、前駆体ステップ310および反応物ステップ320が循環される。前駆体ステップ310は、十分な量の前駆体分子が基板170表面上に化学吸着されるまで実行される。前駆体の添加は、例えば、気化した前駆体材料を含む昇華チャンバ130へのバルブを閉じることによって停止される。反応物ステップ320は、十分な量の前駆体分子が基板170表面上で還元されるまで実行され、その時点で電子源150がオフにされ、および/または基板170表面におけるバイアス電圧が変更される。基板170の表面に到達する自由電子の数は、電圧源130を流れる電流に基づいて計算することができる。通常動作下では、蒸着ステップ330は実質的に反応物ステップ320と同時に行われる。しかしながら、容易に還元可能な前駆体分子が基板170表面上に存在しない場合には、蒸着ステップ330は、反応物ステップ320中に行われない。
【0026】
図2に戻り、本開示を利用するCVD蒸着手順の一例を説明する。真空蒸着チャンバ110は室温に維持される。最初に、チャンバ間の接続部112が閉じられる。鉄を蒸着させるために、前駆体材料であるフェロセンが、昇華チャンバ120内に配置されたヒータ160内に装填される。コバルト、ニッケルおよびルテニウムを蒸着させるために、それぞれ、コバルトセン、ニッケロセンまたはルテノセンを使用してもよい。Si上に50nmのAg膜を含む清浄な10×10mm基板170が基板ホルダ140上に載置される。基板ホルダ140および基板170は、昇華チャンバ120へのコネクタ112とプラズマ発生領域180との間に位置する。基板170は、プラズマ発生領域180から数cm離れて位置する。基板170および電圧源130は電気リードによって接続され、電気リードは複数の点で基板170のAg膜と接合する。リードと基板との接合は、基板170に電気的に接続するように構成された基板ホルダ140の少なくとも一部を利用する。真空蒸着チャンバ110は閉じられ、ポンプダウンされる。チャンバ間の接続部112が開かれ、それにより両方のチャンバが50Pa(0.4Torr)までポンプダウンされる。昇華チャンバ120とガスラインとの間の接続部121を開き、昇華チャンバ120を40sccmのArガスで2時間パージする。ガスラインへの接続部121は閉じられ、チャンバは50Paまでポンプダウンされる。チャンバ間の接続部112は閉じられる。ヒータ160は、前駆物質を前駆物質昇華温度、フェロセンでは70℃に加熱する。電圧源は基板170と接地との間に+40Vの直流を印加し、それにより基板170の表面は正のバイアスを有する。同時に、プラズマ発生器250がArプラズマ(70W、40sccm)の生成を開始し、チャンバ間の接続部112が開かれる。フェロセン前駆体分子が基板170表面に到達し、電子によって還元されると、Feが基板170表面に蒸着される。基板170を通る60秒間の平均電流300mAで、基板表面上に膜が蒸着される。同時に、Arプラズマがオフにされ、チャンバ間の接続部112が閉じられる。真空蒸着チャンバ110は窒素で満たされ(ガス入口は図示せず)、蒸着が完了する。
【国際調査報告】