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特表2022-519127柑橘類繊維及びスクレログルカン組成物、並びにパーソナルケア用途におけるそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(54)【発明の名称】柑橘類繊維及びスクレログルカン組成物、並びにパーソナルケア用途におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20220311BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220311BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220311BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220311BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/9789
A61K8/73
A61Q5/02
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544929
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 US2020016413
(87)【国際公開番号】W WO2020160544
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/799,962
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/822,359
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】エヴァラート、エマニュエル ポール ジョス マリー
(72)【発明者】
【氏名】マゾエ、ジャック アンドレ クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB331
4C083AB332
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC902
4C083AD132
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD191
4C083AD201
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD221
4C083AD242
4C083AD352
4C083AD411
4C083AD572
4C083AD611
4C083AD662
4C083BB01
4C083BB11
4C083BB21
4C083BB44
4C083BB48
4C083BB51
4C083CC05
4C083CC38
4C083DD31
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083FF04
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、局所製剤における使用のための製造エマルション又は水性混合物における使用ための、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカン、具体的にはスクレログルカンを含む、組成物に関する。本発明は更に、エマルション、水性混合物、又は局所製剤を製造するためのプロセス、及びそれらの使用、特にパーソナルケア製品における使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相及び油相を含むエマルションであって、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを含む、エマルション。
【請求項2】
前記柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンが、90:10~10:90、より好ましくは80:20~20:80、又は70:30~30:70、又は60:40~40:60、又は50:50の比である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記エマルション中の前記水相の量が、30重量%~99重量%、又は40重量%~60重量%、又は60重量%~80重量%、又は70重量%~90重量%である、請求項1又は2に記載のエマルション。
【請求項4】
前記エマルション中の前記油相の量が、0.1重量%~70重量%、又は5重量%~55重量%、又は10重量%~40重量%、又は10重量%~30重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項5】
前記柑橘類繊維及び/又は1,3-β-D-グルカンが、前記水相、前記油相、又はその両方中に分散している、請求項1~4のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項6】
前記油相が、天然油、水素添加油、トリグリセリド、菜種油、又は非天然油を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項7】
防腐剤、塩、ビタミン、乳化剤、品質改良剤、栄養素、微量栄養素、糖、タンパク質、多糖類、ポリオール、グルコース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、pH調整剤、皮膚軟化剤、染料、顔料、皮膚活性物質、ワックス又はシリコーンからなる群から選択される少なくとも1つの更なる成分を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項8】
前記柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンが、前記エマルションを製造するために使用される場合、ブレンド、好ましくは共処理ブレンドの形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項9】
前記エマルション中の前記ブレンドの量が、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~3重量%、より好ましくは0.3重量%~3重量%である、請求項8に記載のエマルション。
【請求項10】
前記柑橘類繊維及び/又は1,3-β-D-グルカンが、前記水相、前記油相、又はその両方中に分散している、請求項1~9のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のエマルションを含む、局所製剤。
【請求項12】
化粧品、クリーム、香油、石鹸、日焼け止め、保湿剤、ローション、シャンプー、ヘアスタイリング製品、リーブオンヘアジェル、コンディショナ、ヘアケア製品、頭皮トリートメント、又は皮膚トリートメントである、請求項11に記載の局所製剤。
【請求項13】
柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを含む乾燥ブレンドであって、好ましくは前記乾燥ブレンドが、共処理ブレンドである、乾燥ブレンド。
【請求項14】
前記ブレンド中の前記柑橘類繊維の濃度が、25重量%~99重量%、又は35重量%~95重量%、又は55重量%~85重量%であり、かつ、前記ブレンド中の前記1,3-β-D-グルカンの濃度が、0.1重量%~75重量%、又は1重量%~65重量%、又は5重量%~55重量%、又は10重量%~55重量%である、請求項13に記載の乾燥ブレンド。
【請求項15】
前記柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンが、90:10~10:90、より好ましくは80:20~20:80、又は70:30~30:70、又は60:40~40:60、又は50:50の比である、請求項13に記載の乾燥ブレンド。
【請求項16】
請求項13、14、又は15のいずれか一項に記載のブレンドを含む水性混合物であって、任意に、前記混合物の粘度が、3~300,000Cpsである、水性混合物。
【請求項17】
請求項16に記載の水性混合物を含む、局所製剤。
【請求項18】
パーソナルケア製品である、請求項11又は17に記載の局所製剤。
【請求項19】
柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンのエマルションを生産するためのプロセスであって、
a)柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンのブレンドを提供する工程と、
b)前記ブレンドを水に添加し、混合して水相を形成する工程と、
c)前記水相中に油を分散させて、エマルションを得る工程と、を含み、
任意に、前記プロセスが、工程c)の前及び/又は後に均質化工程を更に含む、プロセス。
【請求項20】
前記1,3-β-D-グルカンが、スクレログルカンである、請求項1~19のいずれか一項に記載のエマルション、局所製剤、乾燥ブレンド、水性混合物、又はプロセス。
【請求項21】
水中油型エマルションである、請求項1~20のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項22】
パーソナルケア組成物を調製するための、請求項1~21のいずれか一項に記載の乾燥ブレンドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年2月1日に出願された「CITRUS FIBERS AND SCLEROGLUCAN EMULSIONS AND THE USE THEREOF IN PERSONAL CARE APPLICATIONS」と題された米国特許仮出願第62/799,962号、及び2019年3月22日に出願された「CITRUS FIBERS AND SCLEROGLUCAN EMULSIONS AND THE USE THEREOF IN PERSONAL CARE APPLICATIONS」と題された米国特許仮出願第62/822,359号の利益を主張するものであり、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンのブレンドに関し、水溶液又はエマルションの生成におけるこれらのブレンドの使用、及びパーソナルケアのための局所製剤の製造におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
柑橘類繊維(例えば、柑橘類の剥離繊維又は「CPF(citrus peel fibres)」)は、パーソナルケアを意図した様々な製品(例えば、局所製剤)における成分として使用されてきた。柑橘類繊維は、柑橘類の果実の細胞壁に由来し、セルロースのミクロフィブリルを含む。柑橘類果実の一般的な種としては、オレンジ、スイートオレンジ、クレメンタイン、キンカン、タンジェリン、タンジェロ、温州ミカン、マンダリン、グレープフルーツ、シトロン、ザボン、レモン、ラフレモン、ライム、及びリーチライムが挙げられる。
【0004】
柑橘類繊維は、全果汁嚢であり、柑橘類の小胞、粗い果肉、フローター、柑橘類の細胞、浮遊果肉、果汁嚢、又は果肉と呼ばれることもある柑橘類の果肉とは区別される。柑橘類繊維はまた、柑橘類の果実の紐状中央部分及び膜壁である柑橘類のぼろ(citrus rag)とも区別される。
【0005】
柑橘類繊維は、典型的には柑橘類繊維の供給源、例えば、柑橘類の皮、柑橘類の果肉、柑橘類のぼろ、又はそれらの組み合わせから得られる。更に、柑橘類繊維は、セルロース、ペクチン、及びヘミセルロースなどの柑橘類果実の一次細胞壁の成分を含有し、タンパク質も含有し得る。
【0006】
国際公開第2012/016201号及び国際公開第2018/009749号に開示されているものなどの様々な技術を使用して、柑橘類繊維の特性を調整して、最終製品に特定のレオロジー挙動、質感、及び外観を付与し得る。
【0007】
柑橘類繊維、並びに糖、タンパク質、多糖類、ポリオール、グルコース、スクロース、グリセロール及びソルビトールなどの追加の化合物を含有する組成物は、当該技術分野において、例えば、国際公開第2017/023722号及び国際公開第2017/019752号において既知である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかしながら、柑橘類繊維を含有する従来の製剤は、準最適な特性を有する可能性がある。例えば、それらは、不快な(例えば、ゼリー状、糸のような又はごつごつした)質感及び/又は稠度を有する、非白色(例えば、灰色又はベージュ色)である場合がある。これらはまた、安定性が低く及び/又は粘度が高い場合がある。そのような特性は、消費者に対する製品の感覚的訴求力に悪影響を及ぼし、処理中に問題を引き起こす場合がある。
【0009】
最適な感覚的特性を有する柑橘類繊維を含む製剤の必要性は満たされていない。特に、最適な安定性、粘度、色、質感及び/又は稠度を有する製剤が必要とされている。これらの配合物は、任意の種類のパーソナルケア組成物を含む様々な最終使用用途で有利に利用され得る。
【0010】
本発明は、水相及び油相を含む組成物及びエマルション、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを含むエマルションを提供することによって上記で特定された課題に対処することを目的とする。エマルションは、好ましくは水中油型エマルションである。
【0011】
柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンは、好ましくは99:1~1:99の比である。例えば、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンの比は、90:10~10:90、又は80:20~20:80、又は70:30~30:70、又は60:40~40:60又は約50:50であり得る。
【0012】
エマルション中の水相の量は、30重量%~99重量であり得る。例えば、エマルション中の水相の量は、40重量%~60重量%、好ましくは60重量%~80重量%、最も好ましくは70重量%~90重量%であり得る。
【0013】
エマルション中の油相の量は、0.1重量%~70%であり得る。例えば、エマルション中の油相の量は、5重量%~55重量%、好ましくは10重量%~40重量%、最も好ましくは10重量%~30重量%であり得る。
【0014】
柑橘類繊維及び/又は1,3-β-D-グルカンは、エマルションの水相中に分散し得、したがってエマルションの水相中に存在し得る。柑橘類繊維及び/又は1,3-β-D-グルカンは、エマルションの油相中に分散し得、したがってエマルションの油相中に存在し得る。柑橘類繊維及び/又は1,3-β-D-グルカンは、エマルションの油相及び水相中に分散し得、したがってエマルションの水相及び油相中に存在し得る。
【0015】
本発明の一態様において、エマルションの油相は、天然油、水素添加天然油、合成油又は石油系油を含む。
【0016】
エマルションは、少なくとも1つの更なる成分を更に含み得る。更なる成分としては、防腐剤、塩、ビタミン、乳化剤、品質改良剤、栄養素、微量栄養素、糖、タンパク質、多糖類、ポリオール、グルコース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、pH調整剤、皮膚軟化剤、染料、顔料、皮膚活性物質、ワックス又はシリコーンを含み得るが、これらに限定されない。
【0017】
エマルションを製造するために使用される場合、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンは、ブレンドの形態であり得る。そのようなブレンドは、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンの機械的混合によって調製され得、あるいは、ブレンドは、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンの共乾燥又は共処理によって調製され得る。好ましくは、エマルションを製造するために使用される場合、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンは、共処理ブレンドの形態である。
【0018】
エマルション中のブレンドの量は、エマルションの総重量に対して0.1重量%~5重量%であり得る。例えば、エマルション中のブレンドの量は、0.1重量%~4重量%、好ましくは0.2重量%~3重量%、最も好ましくは0.3重量%~3重量%であり得る。
【0019】
本発明はまた、本明細書に開示のエマルションを含む局所製剤を提供する。
【0020】
本発明は更に、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを含む乾燥ブレンドを提供する。柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを含む乾燥ブレンドは、共乾燥又は共処理ブレンドであり得る。
【0021】
ブレンド中の柑橘類繊維の濃度は、ブレンドの総重量に対して25重量%~99重量%であり得る。例えば、柑橘類繊維の濃度は、35重量%~95重量%、好ましくは45重量%~90重量%、最も好ましくは55重量%~85重量%であり得る。
【0022】
ブレンド中の1,3-β-D-グルカンの濃度は、ブレンドの総重量に対して0.1重量%~75重量%であり得る。例えば、1,3-β-D-グルカンの濃度は、1重量%~65重量%、好ましくは10重量%~55重量%、最も好ましくは15重量%~45重量%であり得る。
【0023】
本発明はまた、本明細書に開示の乾燥ブレンドを含む水性混合物を提供する。水性混合物は、3~300,000Cpsの粘度を有し得る。
【0024】
本発明は、本明細書に開示されるように、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンのエマルションを製造するためのプロセスを更に提供する。プロセスは、
a)柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンのブレンドを提供する工程と、
b)ブレンドを水に添加し、混合して水相を形成する工程と、
c)水相中に油を分散させて、エマルションを得る工程と、を含む。
任意に、均質化工程が、工程c)の前及び/又は後に含まれ得る。
好ましくは、本発明において使用される1,3-β-D-グルカンは、スクレログルカンである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示で使用される略語及び用語の説明が、本発明を理解し、実施することを助けるために提供される。
【0026】
別途記載のない限り、エマルション又は製剤成分の全比率は、重量パーセント(重量%)を指す。
【0027】
別途記載のない限り、開示される全パラメータ範囲は終点を含み、全値はその間にある。
【0028】
代表的な特徴は、以下の説明で提示され、これは、単独で、又は本明細書の説明及び/又は図面の他の箇所に開示される1つ以上の特徴と任意の組み合わせで組み合わせ得る。
【0029】
明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」及びその変形は、指定された特徴、工程又は整数が含まれることを意味する。用語は、他の特徴、工程又は成分の存在を除外すると解釈されるべきではない。
柑橘類繊維
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「柑橘類繊維」は、柑橘類の果実から得られ、セルロースのミクロフィブリルを含む細長い物体を指す。本開示において有用な柑橘類繊維は、例えば、国際公開第2013/109721号の方法によって調製され得る。柑橘類繊維は、典型的には、高解像度走査型電子顕微鏡(「SEM(scanning electron microscope)」)によって観察及び測定される、長さ対幅比が少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、又は最も好ましくは少なくとも15である長さ(長軸)及び幅(短軸)を有する。柑橘類繊維の長さは、好ましくは少なくとも0.5μm、より好ましくは少なくとも1μmである。柑橘類繊維の幅は、好ましくは最大100nm、より好ましくは最大50nm、最も好ましくは最大15nmである。柑橘類繊維を形成するミクロフィブリルは、典型的には、1μm~500μmの長さを有する。柑橘類繊維を形成するミクロフィブリルの大部分(すなわち、少なくとも75%)の長さは、典型的には最大で250μm又は最大で100μmである。好ましくは、柑橘類繊維は、1μm~250μmの粒径を有する。柑橘類繊維の試料を、当該技術分野において既知の任意の方法に従って粉砕し、ふるい分けして、様々な粒径の柑橘類繊維を生成し得る。
【0031】
本発明で使用される柑橘類繊維は、実質的な化学修飾を受け得、すなわち、当該繊維は、エステル化、誘導体化、又は酵素修飾、及びこれらの組み合わせのいずれかなどの化学修飾プロセスに供され得る。好ましくは、本発明において使用される柑橘類繊維は、実質的な化学修飾を受けていない。
【0032】
1,3-β-D-グルカン
1,3-β-D-グルカンは、β-(1,3)様式で結合したD-グルコース残基の骨格を特徴とする多糖類であり、種々の1,3-β-D-グルカンは、それらの側基及び分子量に関して互いに構造的に異なる。例えば、カードランは、β-(1,3)-Dグルコース骨格のみからなるが、シゾフィラン、スクレログルカン及び酵母グルカンは、β-(1,6)-グリコシル側鎖を含有する。典型的には、1,3-β-D-グルカンは微生物発酵によって生成され、発酵ブロスは、通常は低温殺菌された後に、直接、又は希釈若しくは精製された形態で使用される(例えば、米国特許第3,301,848号を参照)。1,3-β-D-グルカンは、精製形態で、又は1,3-β-D-グルカンと発酵残渣との混合物として使用され得る。本発明の目的のために、使用される1,3-β-D-グルカンは、好ましくは精製されて、1,3-β-D-グルカン以外の発酵ブロスの微生物細胞及び/又は水溶性成分の量及び活性を低減及び中和する。国際公開第2009/062561号は、そのような高純度1,3-β-D-グルカンの製造方法を開示している。
【0033】
本発明内で使用される1,3-β-D-グルカンは、1,3-β-D-グルカンとして分類される任意の多糖類、すなわち、D-グルコース残基のβ-(1,3)結合骨格を有する任意の多糖類を含む。そのような1,3-β-D-グルカンの例としては、カードラン(例えば、Agrobacterium spp.から産生されるβ-(1,3)結合D-グルコース残基のホモポリマー)、グリフォラン(例えば、真菌Grifola frondosaから産生される分枝状1,3-β-D-グルカン)、レンチナン(β-(1,3)-骨格の各5番目のグルコース残基において結合した2つのグルコース分岐を有する分枝状1,3-β-D-グルカンは、例えば、真菌Lentinus eeodesから産生する)、シゾフィラン(例えば、真菌Schizophyllan communeから産生されるβ-(1,3)-骨格中の3番目のグルコース残基ごとに1つのグルコース分岐を有する分枝状1,3-β-D-グルカン)、スクレログルカン(例えば、真菌Sclerotium spp.から産生される、β-(1,3)-骨格の3つのグルコース分子のうちの1つが(1,6)-β結合により側のグルコースユニットに結合している分枝状1,3-β-D-グルカン)、SSG(例えば、真菌Sclerotinia sclerotiorumから産生される高分岐β-(1,3)-グルカン)、酵母由来の可溶性グルカン(例えば、Saccharomyces cerevisiaeから産生されるβ-(1-6)結合側基を有する1,3-β-D-グルカン)、及びラミナリン(例えば、褐藻Laminaria digitataから産生されるβ-(1,3)-グルカン及びβ-(1,6)-グルカン側基を有する1,3-β-D-グルカン)が挙げられる。
【0034】
好ましくは、1,3-β-D-グルカンは、スクレログルカンである。
【0035】
スクレログルカンは、糸状菌Sclerotium rolfsiiの発酵によって産生される天然多糖類である。その化学構造は、以下に示すように、3つの主残基ごとに1つのβ(1-6)D-グルコース側鎖を有する直鎖β(1-3)D-グルコース骨格からなる。
【化1】
【0036】
スクレログルカンは、商業化の可能性が高く、産生株又は培養条件に応じて異なる分枝頻度、側鎖長、及び/又は分子量を示し得る。本明細書で使用される場合、用語「分子量」は、分子中の原子の原子重量値の合計の尺度を指す。
【0037】
使用される1,3-β-D-グルカンが、スクレログルカンである場合、精製された形態であり得、又は発酵残渣との混合であり得る。スクレログルカンは、天然のスクレログルカン又は加水分解スクレログルカンの形態であり得る。スクレログルカンの分子量は、50,000~6,000,000ダルトンであり得る。好ましくは、スクレログルカンが天然のスクレログルカンである場合、スクレログルカンの分子量は1,500,000~6,000,000ダルトンであり得る。好ましくは、スクレログルカンが加水分解クレログルカンである場合、分子量は50,000~100,000ダルトンであり得る。
【0038】
スクレログルカンは、溶液中での三重らせんから、滑らかかつ柔らかい質感を有する製剤のための理想的な天然由来の増粘剤及び安定剤を作製することができる。水溶性、増粘能力、及び温度、pH、塩分に対する幅広い安定性によりスクレログルカンは種々のパーソナルケア用途に有用である。
エマルション
【0039】
一態様において、本発明は水中油型エマルションである。エマルションは、2つの非混和性液体を含有する混合物として定義され得、これは、一方の液体が、他方の液体全体に液滴又は小球として分散している。分散した液体は、分散相と呼ばれ、他方の液体は、連続相と呼ばれる。水中油型エマルションにおいて、本発明のように、油は分散相又は油相であり、水は連続相又は水相である。
【0040】
本発明のエマルションは、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを含む。好ましくは、1,3-β-D-グルカンは、スクレログルカンである。
【0041】
柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンは、好ましくは99:1~1:99の比である。例えば、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンの比は、90:10~10:90、又は80:20~20:80、又は70:30~30:70、又は60:40~40:60又は50:50であり得る。
【0042】
代表的なエマルションは、良好な安定性を有し、室温及び/又は高い貯蔵温度(例えば、45℃)で測定した場合、長期間(例えば、12週間)にわたって、水相及び油相間の分離がほとんど又は全くない。したがって、長い貯蔵寿命を必要とする製品(例えば、局所製剤)を製造するために使用され得る。
1.水相
【0043】
本発明のエマルションは、水相を含有する。水相は、水を含むか、又はそれからなり得、特に脱塩水、トウモロコシ花水などのフローラル水、ヴィッテル水、ルーカス水、ラロッシュポゼ水などのミネラルウォーター、及び/又は湧き水を含むか、又はそれらからなり得る。好ましくは、本発明によって利用される水相として、脱塩水が使用される。
【0044】
エマルション中の水相の量は、30重量%~99重量%であり得る。例えば、エマルション中の水相の量は、40重量%~60重量%、好ましくは60重量%~80重量%、最も好ましくは70重量%~90重量%であり得る。
2.油相
【0045】
代表的なエマルションはまた、水相中に分散された油相を含有する。本明細書で使用される場合、用語「分散」は、水相内部に液滴を形成する油相を指す。液滴は、任意のサイズ又は形状であり得る。好ましくは、液滴は、水相全体にわたって均一に分布する。エマルションの油相の性質は重要ではない。したがって、油相は、化粧品又は皮膚科学分野において従来使用されている任意の脂肪物質からなり得る。具体的には、油相は、好ましくは、少なくとも1つの油、すなわち、室温(20~25℃)及び大気圧(760mmHg)で液体形態である任意の脂肪性物質を含み得る。
【0046】
好ましい油相は、以下のものであり得る少なくとも1つの油を含み、それは、炭化水素ベース油、すなわち主に水素及び炭素原子、並びに任意に、例えばヒドロキシル又は酸ラジカルの形態で、酸素、窒素、硫黄及び/又はリン原子を主に含有する油、シリコーン油、すなわち、少なくとも1つのケイ素原子、好ましくは少なくとも1つのSi-O基を含む油、フッ素オイル、すなわち、少なくとも1つのフッ素原子を含む油、非フッ素油、又はそれらの混合物であり得る。好ましくは、本発明のエマルションは、油相として少なくとも1つの炭化水素ベース油を含む。
【0047】
炭化水素ベース油は、4~20個の炭素原子を含む脂肪酸の液体トリグリセリドなどの動物起源又は植物起源のものであり得、例としては、ココナッツ油、キャノーラ油、菜種油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、キュウリ油、グレープ種子油、ゴマ種子油、ヘーゼルナッツ油;アプリコット油、マカダミア油;アララ油、ヒマシ油、ココアバターアーモンド油、アボカド油、ババス油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えば、Stearineries Duboisにより販売されているもの、又はDynamit NobelによりMiglyol 810、812及び818の名称で販売されているもの、Desert Whaleにより商品名Jojoba Oil Goldenで販売されている、Simmondsia Chinensis(Jojoba)Seed Oil、Cognis(BASF)により商品名Betatene 30% OLVで販売されているベータ-カロテン、Nestle World Trade Co.により商品名Rosehip Seed Oilで販売されているRosa Canina Fruit油、シアバター油、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
好ましくは、油相は植物油及び/又は植物性脂肪を含有し、より好ましくは、ココナッツ油を含有し、より好ましくは、ココアバター及び植物油、例えば、アーモンド油を含有し、更により好ましくは、油相は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カカオバター、及び当該トリグリセリドとは異なる植物油、例えば、アーモンド油を含有する。
【0049】
炭化水素ベース油は、鉱物又は合成起源の直鎖又は分枝鎖炭化水素であり得る。あるいは、炭化水素ベース油は、合成エーテル、合成エステル、12~26個の炭素原子を含有する分枝鎖及び/又は不飽和炭素系鎖を有する、室温で液体である脂肪族アルコール、C12~C22の高級脂肪酸、又はそれらの混合物であり得る。
【0050】
エマルション中の油相の量は、0.1重量%~70%であり得る。例えば、エマルション中の油相の量は、5重量%~55重量%、好ましくは10重量%~40重量%、最も好ましくは10重量%~30重量%であり得る。
ブレンド
【0051】
有利には、本発明のエマルションは、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを含むか、又はそれらからなるブレンドを使用して製造される。本明細書で使用される場合、用語「ブレンド」は、2つ以上の物質の混合物を指す。
【0052】
ブレンドは、乾燥ブレンドであり得、これは、繊維の総重量に対して20重量%未満の量の液体、例えば水及び/又は有機溶媒を含有することを意味する。好ましくは、当該繊維は、繊維の総重量に対して、最大で12重量%、より好ましくは最大で10重量%、又は最も好ましくは最大8重量%の量の水(すなわち、水分含有量)を含有する。そのような乾燥ブレンドは、水性媒体中で容易に分散可能でありながら、輸送及び貯蔵に経済的である。乾燥ブレンドは、完全に乾燥している必要はなく、又は水及び/若しくは有機溶媒が存在しなくてもよく、したがって、乾燥ブレンドは、0.5%~20%の水、又は0.5%~12%、0.5%~8%、1%~12%、1~10%、又は1%~8%の任意の範囲を含有し得る。
【0053】
エマルション中のブレンドの量は、0.1重量%~5重量%であり得る。例えば、エマルション中のブレンドの量は、0.1重量%~4重量%、好ましくは0.2重量%~3重量%、最も好ましくは0.3重量%~3重量%であり得る。
【0054】
ブレンドは、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを混合、共乾燥又は共処理することによって産生され得る。最も好ましくは、ブレンドは、共処理ブレンド、すなわち、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンを共処理することによって得られるブレンドである。本明細書で使用される場合、用語「混合」とは、1,3-β-D-グルカンが、及び柑橘類繊維が、乾燥状態又は実質的に乾燥状態で共に機械的にブレンドされたブレンドを指す。本明細書で使用される場合、用語「共乾燥ブレンド」は、1,3-β-D-グルカンが、及び柑橘類繊維が、水及び/又は溶媒と組み合わせて共に混合され、更に乾燥されて、水及び/又は溶媒の一部、大部分、又は全てを除去されたブレンドを指す。本明細書で使用される場合、用語「共処理ブレンド」は、1,3-β-D-グルカンが、柑橘類繊維間に分布し、より具体的には、繊維を形成するミクロフィブリル間であり、すなわち、1,3-β-D-グルカンの大部分が当該ミクロフィブリル間に分布しているブレンドを指す。好ましくは、当該ブレンドは、当該ミクロフィブリル間に、ブレンド中に存在する1,3-β-D-グルカンの少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、更により好ましくは少なくとも50重量%、更により好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%が分散するように共処理される。国際公開第2017/019752号の方法を使用して、スクラログルカン及び柑橘類繊維の共処理ブレンドを調製し得る。共処理ブレンドは、概して、繊維の調製プロセスの任意の段階で、1,3-β-D-グルカンを乾燥、湿潤、液体又は溶液の形態で柑橘類繊維のスラリーに添加することによって調製される。機械的剪断の工程中に行われることが好ましい。概して、柑橘類繊維は、高圧均質化又は当該技術分野において既知の任意の剪断プロセスのような高剪断処理を受ける。この操作前に1,3-β-D-グルカンを添加することにより、セルロースミクロフィブリル間で1,3-β-D-グルカンを分布することができる。あるいは、1,3-β-D-グルカンは、柑橘類繊維プロセスのどこでも添加され得る。ブレンドはまた、乾燥、湿潤又は水/溶媒分散柑橘類繊維が、1,3-β-D-グルカンプロセスの精製段階、すなわち低温殺菌後の任意の段階に添加される、他の方法でも行われ得る。
【0055】
ブレンド中の柑橘類繊維の濃度は、有利には、25重量%~99重量%であり得る。例えば、柑橘類繊維の濃度は、35重量%~95重量%、好ましくは45重量%~90重量%、最も好ましくは55重量%~85重量%であり得る。好ましくは、これらの量は、乾燥ブレンドに特徴的である。
【0056】
ブレンド中の1,3-β-D-グルカンの濃度は、0.1重量%~75重量%であり得る。例えば、1,3-β-D-グルカンの濃度は、1重量%~65重量%、好ましくは5重量%~55重量%、又は10重量%~55重量%、最も好ましくは15重量%~45重量%であり得る。好ましくは、これらの量は、乾燥ブレンドに特徴的である。
【0057】
あるいは、乾燥ブレンドは、柑橘類繊維対1,3-β-D-グルカンの比を特徴とし得る。ブレンド中の比率は、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、60:40~40:60、又は55:45~45:55であり得る。好ましい比は52:48である。
【0058】
乾燥ブレンドは、任意に他の成分結合剤、充填剤、品質改良剤、乳化剤、活性成分を任意の量で含有し得る。
【0059】
一態様において、本発明は、本明細書に開示の乾燥ブレンドを含む水性混合物を提供する。本明細書で使用される場合、用語「水性混合物」は、50%超の水である液相を有する本明細書に開示の乾燥ブレンドのいずれかで作製された混合物を指す。液相は、他の非水溶媒、又はアルコール若しくは他の有機溶媒などの材料を含み得る。好ましくは、液相は、80%又は90%超の水である。好ましくは、液相は、95%又は99+%の水である。いくつかの実施形態において、水性混合物又は液相は、5%又は1%未満の任意の非水溶媒を含有する。他の実施形態において、水性混合物又は液相は、溶媒として水を含有する。
【0060】
水性混合物は、有利には、3~300,000Cpsの粘度を有し得る。例えば、水溶液の粘度は、200~27,000Cps、3,000~25,000Cps、4,500~20,000Cps、又は5,000~15,000Cpsであり得る。
局所製剤
【0061】
本明細書で提供される乾燥ブレンドを含むエマルション又は水性混合物は、局所製剤などのパーソナルケア製品の製造に有用である。本発明者らは、柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンの組み合わせを含む製剤は、以下に更に説明されるような多くの望ましい特性を有することを予期せず見出した。
【0062】
一態様において、本発明は、本明細書に記載の乾燥ブレンドを含むエマルション又は水性混合物を含む局所製剤である。本明細書で使用される場合、用語「局所製剤」は、身体の一部に直接適用され得る製剤を指す。用語「製剤」は、本発明による様々な重量範囲における様々な成分の組成を示すために本明細書で使用される。
【0063】
本明細書に記載の乾燥ブレンドを含むエマルション又は水性混合物で製造される製剤は、クレンジング、コンディショニング、保湿、皮膚の欠陥の最小化又は治療、皮膚の油性の減少、髪又は皮膚への芳香の提供などのため、化粧品又は活性物質を皮膚又は髪に送達するために、髪、頭皮、爪及び皮膚上での使用に好適である。
【0064】
「パーソナルケア」は、任意の化粧品、衛生用、洗面用、及び局所ケア製品を意味し、かつ含み、それはこれらに限定されないが、リーブオン製品(すなわち、適用後にケラチン基質上に残される製品)、リンスオフ製品(すなわち、適用中又は適用の数分以内に、ケラチン基質から洗浄又はすすぎ洗いされる製品)、シャンプー、ヘアカール及び髪矯正製品、ヘアスタイル維持及びヘアコンディショニング製品、爪、手、足、顔、頭皮及び/又は身体用のローション及びクリーム;毛髪染料、顔及び身体のメイクアップ、ネイルケア製品、収斂剤、デオドラント、制汗剤、抗ニキビ、老化防止、脱毛剤、コロン及び香料、皮膚保護クリーム及びローション(日焼け止め剤など)、皮膚及び身体洗浄剤、皮膚コンディショナ、皮膚トナー、皮膚引き締め組成物、皮膚日焼け及び美白組成物、液体石鹸、固形石鹸、バス製品、シェービング製品、及びオーラル衛生製品(練り歯磨き、オーラル懸濁剤、及びマウスケア製品など)。
【0065】
このようなパーソナルケア製剤の質感は限定されず、とりわけ、限定するものではないが、液体、ゲル、スプレー、エマルション(ローション及びクリームなど)、シャンプー、ポメイド、フォーム、錠剤、スティック(リップケア製品など)、メイクアップ、坐剤であり得、そのいずれも皮膚又は髪又は強健性に適用され得、典型的には、水ですすぐ又はシャンプー若しくは石鹸で洗浄するなどによって、除去されるまで、それと接触したままであるように設計される。他の形態は、柔らかく、硬く又は圧搾可能であり得るゲルであり得る。スプレーは、手動ポンプ式指作動式噴霧器から送達される非加圧エアロゾルであり得るか、又は化学的若しくはガス状噴射剤が使用されるムース、スプレー若しくは泡形成組成物などの加圧エアロゾルであり得る。
【0066】
本明細書に開示される乾燥ブレンドを含むエマルション又は水性混合物を含む局所製剤は、シャンプーであり得る。有利には、シャンプーは、共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンを含み得る。
【0067】
本明細書に記載の乾燥ブレンドを含むエマルション又は水性混合物を含む局所製剤は、3~8のpHを有し得る。好ましくは、局所製剤のpHは4~7である。
【0068】
本明細書に開示の乾燥ブレンドを含むエマルション又は水性混合物を使用して調製された製剤は、概して審美的に魅力的であると考えられる白色又はオフホワイト色を有する。いくつか場合、本明細書に開示の製剤は、着色された最終製品を製造するために更に処理されてもよい。そのような場合、白色又はオフホワイト色は、最終的な色に影響を及ぼすことなく追加の顔料を示すため、有益である。
【0069】
白色度は、既知の方法を使用して、例えば、色彩分光計を使用して決定され得、座標L、a、及びbに関して記載され得る。好ましくは、局所製剤は、L値が66~83であり、a値が0.3~-1.1であり、b値が3~10である。
【0070】
更に、本明細書に開示される乾燥ブレンドを含むエマルション又は水性混合物を使用して調製された製剤は、心地よいクリーミーで滑らかな質感を有する。この質感は、触感及び適用が心地よく感じる。更に、稠度は、良好な製品ピックアップが達成され得るためのものである。良好な製品ピックアップとは、使用者の指で十分な製品(すなわち、多すぎず、少なすぎない)を収集することができることを意味する。
【0071】
適用時に、本発明の製剤は、フレッシュで快適な皮膚感触を残すことも見出されている。
エマルション及び局所製剤の製造プロセス
【0072】
本発明のエマルションは、
a)柑橘類繊維及び1,3-β-D-グルカンのブレンドを提供する工程と、
b)ブレンドを水に添加し、混合して水相を形成する工程と、
c)水相中に油を分散させて、エマルションを得る工程と、を含むプロセスによって形成され得る。
【0073】
プロセスは、工程c)の前及び/又は後に、均質化工程を任意に更に含み得る。
【0074】
1,3-β-D-グルカンは、好ましくは、スクレログルカンであり得る。
【0075】
有利には、ブレンドを提供することは、上述のように、共乾燥又は共処理ブレンドを提供することを含み得る。
【0076】
有利には、ブレンド及び水を、室温で、5000rpmで5~20分間(例えば、Silversonホモジナイザを使用して)混合して、水相を形成し得る。例えば、ブレンド及び水を、5~20分間、好ましくは10~15分間、より好ましくは10分間混合し得る。
【0077】
水相及び油相を、工程c)の前及び/又は工程c)中に加熱し得る。相を、別々に加熱し得る。室温で固体、半固体、又は内臓である油相が使用される場合、油相を、そのプロセス能力を改善するために、その融解温度を超えて加熱し得る。油相を加熱すべき場合、水相を、油相が加熱される温度と少なくとも同じ温度に加熱することが好ましい。好ましくは、加熱プレートを使用して加熱相を撹拌しながら混合する。水相及び油相が加熱されると、油は水相中に分散し得る。
【0078】
均質化は、理想的には、少なくとも1分間、より好ましくは少なくとも3分間、より好ましくは5~20分間、5000rpmで(例えば、Silversonホモジナイザを使用して)行う。例えば、油相及び水相を、5~20分間、好ましくは10~15分間、又はより好ましくは10分間均質化し得る。
【0079】
一態様において、本発明は、上記のプロセスによって得ることができる柑橘類繊維及びスクレログルカンを含むエマルションを提供する。
【0080】
乾燥ブレンドを含む水性混合物は、上記の工程a)及びb)を利用することによって調製され得る。
【0081】
局所製剤は、上記の工程a)及びb)、又は工程a)~c)及び続いて少なくとも1つの更なる成分をエマルションに添加し、混合して局所製剤を得る工程d)を実施することによって得ることができる。
【0082】
少なくとも1つの更なる成分は、防腐剤、塩、ビタミン、乳化剤、品質改良剤、栄養素、微量栄養素、糖、タンパク質、多糖類、ポリオール、グルコース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、pH調整剤、皮膚軟化剤、染料、顔料、皮膚活性物質、ワックス又はシリコーンからなる群から選択され得る。
【0083】
好ましくは、防腐剤は、Isaguard PEHG及び/又は塩(例えば塩化ナトリウム)である。
【0084】
エマルションをその形成中に周囲温度を超えて加熱した場合、工程d)の前に冷却してもよく、エマルションが冷却されたら、更なる成分を添加してもよい。
【0085】
エマルション及び少なくとも1つの更なる成分を、有利には、周囲温度又は高温で、5000rpmで2~20分間(例えばSilversonホモジナイザを使用して)混合して局所製剤を形成し得る。例えば、エマルション及び少なくとも1つの更なる成分を、2~10分、又は2~7分、又は好ましくは2~5分、又はより好ましくは2分間混合し得る。2つ以上の更なる成分を添加する場合、それらを別々に又は一緒に添加し得る。更なる成分のそれぞれ又は一部の添加後、又は全ての更なる成分の添加後にエマルションを混合してもよい。
【0086】
水は、例えば蒸発に起因して、プロセス全体を通して失われ得る。したがって、プロセスは、水損失を確認し、水を局所製剤に添加して戻す工程を更に含み得る。その後、水の添加後に混合物を混合し得る(例えば、「Silverson型ホモジナイザ」L5M-A Laboratory Mixer,Silverson」を使用して5000rpmで2分間)。
【0087】
一態様において、本発明は、上記の方法によって得ることができるエマルション及び少なくとも1つの更なる成分を含む局所製剤であり得る。
【実施例
【0088】
材料及び測定方法
出発物質:
使用した柑橘類繊維は、Cargill Incorporatedから入手したCitriTex-ACFであった。あるいは、柑橘類繊維は、例えば、国際公開第2012/016190号及び国際公開第2017/019752号に記載されているような既知のプロトコルを使用して調製されてもよい。
【0089】
使用したスクレログルカンは、Cargill Incorporatedから入手したActigum(商標)CS 6 スクレログルカン、Actigum(商標)CS 11 QD、Actigum(商標)CS 11又はActigum CS QD Iであった。CS-6は、精製されておらず、60~75%スクレログルカンを含有する、発酵後のスクレログルカンである。CS-11は、精製製品であり、85~90%のスクレログルカンを含有する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0090】
水保持容量は、以下のように決定される。
1.Clark Lubs緩衝液(試料50g+緩衝液50g)で2重量%の繊維のスラリーを希釈することによって、1重量%の繊維懸濁液を調製した。
2.速度400rpmで磁気撹拌機(30分)を用いて分散させた。
3.遠心管(キャップを有する)を風袋引きした(W)。
4.繊維懸濁液を2つの遠心管に迅速に移し、蓋をした。
5.正確に同じ重量2×2(+/-0.1g)を有するようにチューブを平衡化した(W)。
6.管を、室温で3000gで10分間遠心分離した。
7.ピペットによって上清を除去し、秤量した(W)。
8.充填した材料を秤量した(W)。
9.水保持容量は以下のように計算される:WHC=(W-W)/(W-W100
本発明のブレンドで調製された試料についての水保持容量は、対照製剤よりも優れた水保持容量を明確に示す。この特性は、パーソナルケア用途において非常に有利であり、望ましい。
実施例1
【0091】
様々な濃度の共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンでエマルション及び局所製剤を調製し、上記の方法及び手順に従って試験した。柑橘類繊維又はスクレログルカン単独を含む共処理柑橘類繊維エマルションも対照試料として調製した。比較目的のために、ブレンドの形態の柑橘類繊維及びスクレログルカンを含むエマルションも試験し、並びに、スクレログルカン以外の化合物と組み合わせた柑橘類繊維を含むエマルションも試験した。例えば、CitriTex-ACF及びグリセロール、CitriTex-ACF及びエリスリトール、並びにCitriTex-ACF及びSatiagel(商標)VPC 512(Cargill Incorporated)。表1において、2重量%の柑橘繊維及び20重量%の菜種油を用いて全てのエマルションを作製し、保存した。結果を以下の表1に示す。

【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】

【0092】
結果は、共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンを含むエマルションが、皮膚上に広がるのが速い、滑らかでクリーミーな質感を有する局所製剤を提供することを示す。特に、結果は、50:50の比のスクレログルカン対柑橘類繊維を含むエマルションが、オフホワイト色及び高い安定性を有することを示す。
【0093】
対照的に、柑橘類繊維単独では、油相及び水相の間に、あまり望ましくない滑らかでない質感及び高い分離度を有する灰色がかったベージュ色の配合物を提供する。結果は、スクレログルカンのみは白色の色及び滑らかな質感を有する製剤を提供することを示しているが、製剤は低いピックアップを有する。
【0094】
他の化合物グリセロール、エリスリトール、及びsatiagelで共処理柑橘類繊維を含むエマルションは、油相及び水相の間のある程度の分離及びより望ましくない灰色がかったベージュ色を有する製剤を提供した。
実施例2
【0095】
更にエマルション及び局所製剤を、様々な濃度の共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンで調製し、以下の時間間隔の後に上記の方法及び手順に従って試験した:0日(D0)、1日(D1)、1週間(W1)、2週間(W2)、3週間(W3)、4週間(W4)、16週間(W16)。柑橘類繊維、CS 11 スクレログルカン又はCS 6 スクレログルカンのみを含むエマルションも対照試料として調製した。比較目的のために、スクレログルカン以外の化合物と組み合わせて柑橘類繊維を含むエマルション。例えば、CitriTex-ACF及びエリスリトール、並びにCitriTex-ACF及びSatiagel(商標)VPC 512(Cargill Incorporated)。

【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】

【0096】
表3の結果は、共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンを含むエマルションが、4~5のpHを有する局所製剤を提供することを示す。特に、結果は、共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンを含むエマルションが、4週間にわたって同様のpHを維持する局所製剤を提供することを示す。
【0097】
satiagelで共処理された柑橘類繊維を含むエマルションはより酸性のpHを有する製剤を提供する。対照的に、スクレログルカン単独は、よりアルカリ性のpHを有する製剤を提供する。

【表11】
【表12-1】
【表12-2】

【0098】
表5は、35:65の比のCS11スクレログルカン対柑橘類繊維を含む局所製剤は、皮膚への迅速な吸収を伴う、滑らかでフレッシュな質感を有する。
【0099】
表6は、柑橘類繊維及びスクレログルカンを含むエマルションで調製された局所製剤が白色又はオフホワイト色を有することを示す。
【0100】
更に、表6は、柑橘類繊維単独か、又は他の化合物を有する柑橘類繊維かのいずれかを含むエマルションは、より望ましくないベージュ色、灰色、及び暗色の局所製剤を生成することを示す。
【表13】
実施例3
【0101】
本発明による共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンでシャンプーを調製した。比較目的のために、シャンプー処方3は、共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンを含んでいなかった。シャンプー配合物を表7に詳述する。
【表14】
【0102】
シャンプー製剤1及び2は、油相及び水相の間の分離を伴わずに良好な安定性を示した。
【0103】
対照的に、シャンプー配合物3は、共処理柑橘類繊維及びスクレログルカンを含まず、室温で顕著な不安定性の兆候を示し、懸濁した光る粒子は、製剤から徐々に分離した。
【0104】
前述の明細書、又は以下の請求項、又は付属の図面で開示され、特定の形態、又は開示される機能を実行する手段によって表される特徴部、若しくは、開示される結果を達成するための方法又はプロセスは、必要に応じて、発明を実現するために様々な形態で用いられ得る。
【0105】
本発明の特定の例示的実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲は、これらの実施形態にのみ限定されることを意図するものではない。特許請求の範囲は、文字通り、目的にかなって、及び/又は均等物を包含するものと解釈されるべきである。
【国際調査報告】