(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(54)【発明の名称】腎不全リスクを計算する利尿監視及び予測システム及びこれらに関する方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20220314BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220314BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220314BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220314BHJP
G01N 33/493 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G16H50/20
C12M1/00 A
C12Q1/02
A61B5/00 102A
G01N33/493 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539022
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 IB2019060017
(87)【国際公開番号】W WO2020157557
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】102019000001365
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506075182
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ トリノ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100163902
【氏名又は名称】市川 奈月
(72)【発明者】
【氏名】アンコーナ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】カウダ,ヴァレンティーナ アリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】マンティ,エリカ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA15
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2G045JA01
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4C117XJ13
5L099AA04
5L099AA15
(57)【要約】
本発明は、患者の腎不全の発症のリスクを計算するための利尿(1)の監視システム、及び、関連する監視及び予測の方法に関し、尿容器(2)の計測値を記録、保存、比較及び処理する第1のアルゴリズム(15)及び、将来の尿容器(2)の計測値及びそれらに関連する腎不全リスクのレベルを予測する第2のアルゴリズム(25)を含む装置(5)を備える。本発明はまた、より一般的には、患者の健康状態を予測する体液(10)の監視システム、及び、関連する監視及び予測の方法に関し、体液容器(20)の測定値を記録、保存、比較及び処理する第1のアルゴリズム(150)及び、体液容器(20)の将来の測定値及びそれらに関連する患者の健康状態を予測する第2のアルゴリズム(250)を含む装置(50)を備える。本発明は、病院及び診療所、集中治療、腎臓学、泌尿器科、心臓病学及び移植の分野において有利な用途を見出す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腎不全リスクを予測する利尿監視システム(1)であって、
尿の容器(2)と、
前記尿容器(2)の重量計(3)と、
前記尿容器(2)の測定値を記録、保存、比較及び処理する第1のアルゴリズム(15)、及び、尿容器(2)の将来の測定値及びそれらに関連する腎不全リスクのレベルを予測する第2のアルゴリズム(25)を備える装置(5)と、
前記装置(5)が備える前記第1のアルゴリズム(15)及び前記第2のアルゴリズム(25)の出力を表示するビデオ端末(7)と、
前記重量計(3)及び前記装置(5)を接続する第1の「ワイヤレス」システム(4)と、
前記装置(5)及び前記ビデオ端末(7)を接続する第2の「ワイヤレス」システム(6)と、
を備える利尿監視システム。
【請求項2】
前記尿容器(2)は、滅菌袋である
請求項1に記載の利尿監視システム(1)。
【請求項3】
前記重量計(3)は、ロードセルである、
請求項1又は2に記載の利尿監視システム(1)。
【請求項4】
前記第1のアルゴリズム(15)は、各重量測定値を実施した時刻と関連づけ、患者の体重(体重/時間/患者の体重)で正規化された1時間毎の尿の生成率を計算し、続いて、この正規化された1時間毎の尿生成率が、急性腎障害(AKI)のステージを定義するためのKDIGOおよびRIFLEガイドラインによって定義された1時間毎の生成率のしきい値と比較される、前記体重計(3)を介して取得したデータを分析する数学モデルを含み、
前記第2のアルゴリズム(25)は、
少なくとも前記第1のアルゴリズム(15)によって計算された利尿の現在の値及び過去の値を入力とし、必要に応じて、前記患者の電子医療記録(35)から抽出された前記現在の値及び前記過去の値を入力とし、将来の容器の重量測定値の予測(UO(t)
A)を出力とする数学モデル(H-25)と、
前記予測(UO(t)
A)を、リアルタイムで観測された対応する値(UO(t))と比較する(e(t)
A)数学モデルと、
前記比較結果(e(t)
A)に基づいて、前記適応数学モデル(H-25)によって実行された前記計算を修正する数学モデルと、
前記適応数学モデル(H-25)の出力、前記尿容器(2)の前記重量測定値の前記現在の値と前記過去の値、及び、前記電子医療記録(35)の前記患者の生理学的パラメータを入力とし、前記尿容器の最後の重量測定後24/48時間以内に急性腎不全を発症するリスクレベル(1から10のランキング)(R(t)
A)を出力とする数学モデル(M-25)とを含む、
請求項1,2又は3に記載の利尿監視システム(1)。
【請求項5】
前記適応数学モデル(H-25)は、線形及び非線形回帰モデル、及び、機械学習モデルを含み、好ましくは人工ニューラルネットワークであって、
前記数学モデル(M-25)は、可変二分応答を伴う回帰モデルを含み、好ましくはロジットおよびプロビットモデル、機械学習モデル、好ましくは分類モデル、人工ニューラルネットワーク及びSVMモデルであって、
前記現在の値及び前記過去の値は、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、前記患者に投与された液体の量、及び、現在の疾患を含む前記患者の電子医療記録(35)から抽出される
請求項4に記載の利尿監視システム(1)。
【請求項6】
患者の腎不全リスクを予測するための利尿監視方法であって、
腎不全のリスクがある前記患者が所定の期間に生成した尿のサンプルを採取し、それを尿容器(2)に収集し(ステップ100)、
前記尿容器(2)の重量を測定し(ステップ101)、
第1のアルゴリズム(15)により、前記尿容器(2)の前記測定値を記録及び保存し(ステップ102)、
前段のステップ(ステップ100からステップ102)を、所定の回数繰り返し(ステップ103)、
前記第1のアルゴリズム(15)により、利尿の経過を決定するため、経時的に記録及び保存された前記尿容器(2)の前記測定値を比較及び処理し(ステップ104)、
前段のステップ(ステップ104)で決定された傾向に基づいて、前記適応数学モデル(H-25)及び前記機械学習数学モデル(M-25)を含む第2のアルゴリズム25により、前記尿容器(2)の前記将来の測定値の値及び腎不全を発症する前記リスクを予測し(ステップ105)、
前述のステップ(ステップ105)で取得したデータをビデオ端末(7)に転送する(ステップ106)、
利尿監視方法。
【請求項7】
前記第1のアルゴリズム(15)は、各重量測定値を実施された時刻と関連づけ、患者の体重(体重/時間/患者の体重)で正規化された1時間毎の尿の生成率を計算し、続いて、この正規化された1時間毎の尿生成率が、急性腎障害(AKI)のステージを定義するためのKDIGOおよびRIFLEガイドラインによって定義された1時間毎の生成率のしきい値と比較される、前記重量計(3)を介して取得したデータを分析する数学モデルを含み、
前記第2のアルゴリズム(25)は、
少なくとも前記第1のアルゴリズム(15)によって計算された利尿の現在の値及び過去の値を入力とし、必要に応じて、前記患者の電子医療記録(35)から抽出された前記現在の値及び前記過去の値を入力とし、将来の容器の重量測定値の前記予測(UO(t)
A)を出力とする数学モデル(H-25)と、
前記予測(UO(t)
A)を、リアルタイムで観測された対応する値(UO(t))と比較する(e(t)
A)数学モデルと、
前記比較結果(e(t)
A)に基づいて、前記適応数学モデル(H-25)によって実行された前記計算を修正する数学モデルと、
前記適応数学モデル(H-25)の出力、前記尿容器(2)の前記重量測定値の前記現在の値と前記過去の値、及び、前記電子医療記録(35)の前記患者の生理学的パラメータを入力とし、前記尿容器の最後の重量測定後24/48時間以内に急性腎不全を発症するリスクレベル(1から10のランキング)(R(t)
A)を出力とする数学モデル(M-25)とを含む、
請求項6に記載の利尿監視方法。
【請求項8】
ステップ100の前記所定の期間は、30秒から10分の範囲であり、好ましくは5分に等しく、
ステップ103の前記所定の回数は、1から100の範囲であり、好ましくは、50に等しい
請求項6又は7に記載の利尿監視方法。
【請求項9】
患者の急性腎不全のリスクレベルを計算する利尿予測方法(UO(t))であって、
適応数学モデル(H-25)を使用して、少なくとも、装置(5)によって記録及び処理された利尿の現在の値及び過去の値を考慮し、かつ、オプションで、必要に応じて、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、前記患者に投与された液体の量、及び、現在の疾患に関連する前記患者の電子医療記録(35)から抽出された、前記現在の値及び前記過去の値を考慮し、前記患者の利尿の傾向を計算し(ステップ300)、
期待値(UO(t)
A)、つまりステップ300の前記計算の出力を、リアルタイムで測定された対応する値(UO(t))と比較し(ステップ301)、
ステップ301の前記比較に基づいて、ステップ300の前記計算を修正し(ステップ302)、
前記予測値(UO(t)
A、UO(t+l)
A、UO(t+2)
A)、つまりステップ300の前記計算の出力を、「KDIGOおよびAKINガイドライン」によって定義された急性腎不全の診断のしきい値と比較し(ステップ303)、
ステップ303の前記比較に基づいて、急性腎不全を発症するリスクレベル(1から10のランキング)割り当て(ステップ304)、
機械学習数学モデルM-25により、少なくとも前記現在の値(UO(t))、前記過去の値、及び、利尿の前記適応数学モデル(H-25)によって予測された値を考慮し、かつ、オプションで、必要に応じて、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数および心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、患者に投与された体液の量、及び、現在の疾患に関連する前記患者の電子医療記録(35)から抽出された前記現在の値及び前記過去の値を考慮し、前記患者の将来の時点の腎不全のリスクファクタを計算する(ステップ305)、
利尿の予測方法。
【請求項10】
前記適応数学モデル(H-25)は、好ましくはベイズ推定量を使用することにより、リアルタイムで提供される前記患者に関連する利用可能な追加情報を較正アルゴリズムが考慮するモデルである
請求項9に記載の利尿予測方法。
【請求項11】
ステップ303の前記予測値(UO(t)
A、UO(t+l)
A、UO(t+2)
A)は、各増分が5分から6時間の範囲の時間値になるように増加する対応する時点(t、t+1、t+2)に関連する
請求項9又は10に記載の利尿予測方法。
【請求項12】
前記機械学習数学モデル(M-25)は、可変二分応答を有する回帰モデル(ロジット及びプロビットモデルを含む)、及び、機械学習モデル(分類モデル、人工ニューラルネットワーク及びSVMモデルを含む)から選択される
請求項9,10又は11に記載の利尿予測方法。
【請求項13】
患者の健康状態を予測する体液監視システム(10)であって、
体液容器(20)、
前記体液容器(20)の重量計(30)と、
前記体液容器(20)の測定値を記録、保存、比較及び処理する第1のアルゴリズム(150)、及び、前記体液容器(20)の将来の測定値及びそれらに関連する患者の健康状態を予測する第2のアルゴリズム(250)を備える装置(50)と、
前記装置(50)が備える前記第1のアルゴリズム(150)及び前記第2のアルゴリズム(250)の出力を表示するビデオ端末(70)と、
前記重量計(30)及び前記装置(50)を接続する第1の「ワイヤレス」システム(40)と、
前記装置(50)及び前記ビデオ端末(70)を接続する第2の「ワイヤレス」システム(60)と、
を備える体液監視システム。
【請求項14】
前記体液は、腹水、リンパ液、尿、血液、羊水及び唾液から選択される
請求項13に記載の体液監視システム(10)。
【請求項15】
前記体液容器(10)は、滅菌袋である
請求項13又は14に記載の体液監視システム(10)。
【請求項16】
患者の健康状態を予測する体液監視方法であって、
前記患者が所定の期間に生成した体液のサンプルを採取し、それを体液容器(20)に収集し(ステップ200)、
前記体液容器(20)の重量を測定し(ステップ201)、
前記第1のアルゴリズム(150)により、前記体液容器(20)の前記測定値を記録及び保存し(ステップ202)、
前段のステップ(ステップ200からステップ202)を、所定の回数繰り返し(ステップ203)、
前記第1のアルゴリズム(150)により、有機流体重量の傾向を決定するため、経時的に記録及び保存された体液容器(20)の前記測定値を比較及び処理し(ステップ240)、
前段のステップ(ステップ204)で決定された傾向に基づいて、前記適応数学モデル(H-250)及び前記機械学習数学モデル(M-250)を含む第2のアルゴリズム(250)により、前記体液容器(20)の前記将来の測定値の値及び前記患者の健康状態の悪化のリスクを予測し(ステップ205)、
前段のステップ(ステップ205)で取得したデータをビデオ端末(70)に転送する(ステップ206)、
体液監視方法。
【請求項17】
前記体液は、腹水、リンパ液、尿、血液、羊水及び唾液から選択される
請求項16に記載の体液の監視システム。
【請求項18】
前記第1のアルゴリズム(150)は、各重量測定値を実施された時刻と関連づけ、患者の体重(体重/時間/患者の体重)で正規化された1時間毎の体液の生産率を計算し、前記重量計(30)を介して取得したデータを分析する数学モデルを含み、
前記第2のアルゴリズム(250)は、
少なくとも前記第1のアルゴリズム(150)によって計算された体液の現在の値及び過去の値を入力とし、必要に応じて、前記患者の電子医療記録(350)から抽出された前記現在の値及び前記過去の値を入力とし、将来の容器の重量測定値の前記予測(UO(t)
A)を出力とする適応数学モデル(H-250)と、
前記予測(UO(t)
A)を、リアルタイムで観測された対応する値(UO(t))と比較する(e(t)
A)数学モデルと、
前記比較結果(e(t)
A)に基づいて、前記適応数学モデル(H-250)によって実行された前記計算を修正する数学モデルと、
適応数学モデル(H-250)の出力、体液容器(20)の重量測定値の前記現在の値と前記過去の値、及び、前記患者の電子医療記録(350)の前記生理学的パラメータを入力とし、体液容器の最後の重量測定後24/48時間以内の患者の健康の悪化のリスクレベル(1から10のランキング)(R(t)
A)を出力とする数学モデル(M-250)とを含む、
請求項16又は17に記載の体液監視システム。
【請求項19】
ステップ200の前記所定の期間は、30秒から10分の範囲であり、好ましくは5分に等しく、
ステップ203の前記所定の回数は、1から100の範囲であり、好ましくは50に等しい
請求項16、17又は18に記載の体液監視システム。
【請求項20】
患者の健康状態のレベルを計算するための体液の流れの予測方法であって、
適応数学モデル(H-250)を使用して、少なくとも、装置(50)によって記録及び処理された体液の現在の値及び過去の値を考慮し、かつ、オプションで、必要に応じて、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、患者に投与された液体の量、及び、現在の疾患に関連する前記患者の電子医療記録(350)から抽出された、前記現在の値と前記過去の値を考慮し、前記患者の体液の傾向を計算し(ステップ400)、
期待値(UO(t)
A)、つまりステップ400の前記計算の出力を、リアルタイムで測定された対応する値(UO(t))と比較し(ステップ401)、
ステップ401の前記比較に基づいて、ステップ400の前記計算を修正し(ステップ402)、
前記機械学習数学モデル(M-250)により、
少なくとも前記現在の値(UO(t))、前記過去の値、及び、前記体液の前記適応数学モデル(H-250)によって予測された値を考慮し、かつ、オプションで、必要に応じて、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、患者に投与された液体の量、及び、現在の疾患に関連する患者の電子医療記録(350)から抽出された前記現在の値及び前記過去の値を考慮し、前記将来の時点の健康状態のレベルを計算する(ステップ403)、
体液の流れの予測方法。
【請求項21】
前記適応数学モデル(H-250)は、好ましくはベイズ推定値を使用することにより、リアルタイムで提供される前記患者に関連する利用可能な追加情報を較正アルゴリズムが考慮するモデルである
請求項20に記載の体液の流れの予測方法。
【請求項22】
ステップ403の前記予測値(UO(t)
A、UO(t+l)
A、UO(t+2)
A)が対応する時点(t、t+1、t+2)は、各増分が5分から6時間の範囲の時間値になるように増分される
請求項20又は21に記載の体液の流れの予測方法。
【請求項23】
前記数学モデル(M-250)は、可変二分応答を有する回帰モデル(ロジット及びプロビットモデルを含む)及び、機械学習モデル(分類モデル、人工ニューラルネットワーク及びSVMモデルを含む)から選択される
請求項20、21又は22に記載の体液の流れの予測方法。
【請求項24】
前記体液は、腹水、リンパ液、尿、血液、羊水及び唾液から選択される
請求項20、21、22又は23に記載の体液の流れの予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の腎不全の発症のリスクを計算するための利尿(1)の監視システム、及び、関連する監視及び予測の方法に関し、尿容器(2)の測定値の記録、保存、比較及び処理のための第1のアルゴリズム(15)、及び、尿容器(2)の将来の測定値及びそれらに関連する腎不全リスクのレベルを予測するための第2のアルゴリズム(25)を含む装置(5)を備える。本発明はまた、より一般的には、患者の健康状態を予測するため体液(10)の監視システム、及び、関連する監視及び予測の方法に関し、体液容器(20)の測定値の記録、保存、比較及び処理のための第1のアルゴリズム(150)、及び、体液容器(20)の将来の測定値及びそれらに関連する患者の健康状態を予測する第2のアルゴリズム(250)を含む(50)を備える。本発明は、病院及び診療所、集中治療、腎臓学、泌尿器学、心臓病学及び移植の分野において有利な用途を見出す
【背景技術】
【0002】
本発明は、医療分野に関連し、特に、患者の健康状態の起こりうる変化の早期診断を目的とする、患者のバイタルパラメータの監視及び予測に関する。
【0003】
具体的には、本発明は、入院中かつカテーテル挿入中の患者及び急性腎障害の早期診断のための、システム及び方法に関し、これら早期診断は、患者の利尿を継続的に監視し、患者の腎機能の危機的な段階を、自動的かつ即時に評価し、主治医に連絡することで得られる。
【0004】
一般的には、本発明は、患者の健康状態を確証するための患者の体液の継続的な監視を通して早期診断を得るためのシステム及び方法に関する。
【0005】
本発明が適用される好ましい分野は、病院、診療所、集中治療、腎臓学、泌尿器学、心臓学及び移植手術等に関する。
【0006】
腎臓の適切な機能の調査と利尿の監視は、入院患者の管理においてしばしば過小評価されている所見である。人口の高齢化、ますます効率的な手術および蘇生により、急性腎障害(AKI)は現在、あらゆる種類の集中治療室で見られる症候群である。
【0007】
AKIは、障害に達する可能性があり、長い時間が経過したとしても生じうる腎臓損傷として定義されている。この用語は、腎機能の低下が腎臓の機能的または構造的変化を引き起こす病変に続発することが多いことを認識し、急性腎障害の全範囲を識別する。
【0008】
さらに、集中治療はこの症候群が発生する可能性がある唯一の分野ではない。臨床データの多数の証拠(KDIGO、急性腎障害の臨床診療ガイドライン、Kidney International Supplements (2012) Vol. 2, Suppl. 1,1-138頁参照)は、多くの患者が透析を必要としないが、入院中にAKIを発症したことを示した。
【0009】
イタリア腎臓学会は、AKIを、急性腎不全を含む腎機能の突然の低下(IRA)、および腎の構造及び機能に影響を与える複数の病的状態と定義する。
【0010】
内野らによる研究を含む臨床データ(Uchino S.、Bellomo R.、Goldsmith D.他、入院患者の急性腎不全に対するRIFLE基準の評価、Crit.CareMed.2006; 34:1913-1917を参照)は、中等度で可逆的な形態のAKIでさえ、死亡率が増加するリスクを伴う可能性があると指摘する。実際、それほど深刻ではないRIFLEリスクレベルであるRIFLE-R(リスク)に分類された患者は、RIFLE基準に従って腎不全になりやすいと分類されていない患者よりも2.5倍高い死亡率を示したことが実証されている。また、入院患者全体の5%以上、集中治療室に入院している患者の約50%がAKIに苦しんでおり、イタリアでは毎年40万人以上が急性腎障害に苦しんでいると推定される(Mandelbaum M. 他「急性腎傷害ネットワーク基準を使用した急性腎不全の重症患者の転帰」Crit.CareMed.(2011)39(12)2659-64参照)。また、集中治療室に入院している患者の急性腎不全の発症は、死亡率を5倍増加させ、平均27日間追加の入院を必要とし、その結果、推定医療費が患者1人あたり最大4,000ユーロ増加すると推定される(Macedo E.、Malhotra R.、Bouchard J.、Wynn SK、Mehta RL「乏尿は重症患者の高い死亡率の早期予測因子」Kidney International(2011)80、760-767参照)。
【0011】
したがって、AKIは、一般的で有害であるが潜在的に治療可能な状態をもたらし、腎機能のわずかな低下でさえ、患者の予後に悪影響を与える。
【0012】
この意味で、AKIの診断とタイムリーな治療は、患者の臨床経過と予後を改善することができる。
【0013】
血圧、心拍数、血中酸素濃度等の他のバイタルパラメータとは異なり、医師は現在、利尿レベルなどのクリティカルパラメータに利用できる信頼性の高いリアルタイム監視システムを持っていない。
【0014】
現在まで、監視は病棟看護師が手動で行っており、定期的(約6時間毎)に採尿バッグの目盛りで利尿レベルをチェックしている。
【0015】
このタイプの監視の例は、E.Macedo他の「急性腎不全の予防」(Critical Care Clinics、Volume 31、Issue 4、773-784頁)に記載されている。
【0016】
このタイプの手順に関連する主な問題は、測定の精度の低さと自動データ収集システムの欠如に関係する。これは、主治医により患者の利尿の過程で異常を認識でき無いことを意味し、その結果、深刻な臨床的結果を予測する可能性のある中程度の信号でさえ過小評価される。
【0017】
入院中に急性腎不全を発症した患者の管理に関する2029年に発表された研究「患者の転帰と死亡に関する国家機密調査」(ロンドン、英国、https://www.ncepod.org.uk/CommonThemes.pdfを参照)において、実際には、43%の患者がAKIの発症の遅い診断を受け、54%の症例でAKIを発症するリスクが主治医によって過小評価されていたと推定されている。
【0018】
いくつかの特許文書は、病院環境での患者の最善の管理のために患者の利尿を監視することを目的としたシステムを記載。
【0019】
文書WO2008/059483 A3は、光学的測定に基づいて体液を監視するためのシステムを記載する。
【0020】
このソリューションの欠点は、測定システムの無菌性を維持することの難しさ、ソリューションの技術的な複雑さとその結果としての技術的性質の問題、データ接続の欠如、患者の将来の健康状態を予測するための処理の欠如、及び、装置の全体的な寸法である。特許文献EP3282948 Alでは、尿を監視する装置と、AKIのリスクを計算するそれに関連するアルゴリズムとを含む、腎機能を監視するシステムが記載される。このソリューションの未解決の問題には、主に2つのタイプがある。
【0021】
第1に、尿バッグの重量を計算するためのプラットフォームが存在するため、監視装置の全体的な寸法がかなり大きく、病院のベッド周辺の医師や医療専門家の作業を妨げることなくシステムを使用することはできない。
【0022】
第2の問題は、前述の解決策で提案されたAKIリスク計算システムから出力される出力のタイプに関連する。
【0023】
前述の解決策で提案されているような診断支援システムの場合、情報の受信者、この場合は医師による、システムによって提供される情報の理解および受信の程度が重要な役割を果たす。
【0024】
前述の解決策で提案された出力は、対応する患者のAKIの発生確率を定義する「リスクスコア」で構成される。多くのの研究(例えば、K.B.Kashani「自動急性腎障害アラート」J.Kidney Intern、2018年9月、第94巻、第3号、484-490ページ; K.B.Kashani、E.A.Burdmann、L.SeongHooi、D.Khullar、A.Bagga、R.Chakravarthi、R.Mehta、「急性腎障害のリスク評価:資源が限られた国と資源が豊富な国の相違点と類似点」Kidney International Reports、2017年、第2巻、第4号、519-529ページ)は、この情報がどのように医師によって理解されておらず、不十分に実施されており、その結果、臨床診療に統合されておらず、患者の健康の改善への影響を失っているのかを示す。
【0025】
文書WO 2017/149272 A1は、ロードセルに基づいて体液、すなわち尿を監視するシステムを記載する。
【0026】
このソリューションの欠点は、腎不全の発症を予測するシステムがないことと装置の全体的な寸法である。
【0027】
より一般的には、文書US4922922Aは、外科手術中に患者から放出される体液を監視するシステムを記載する。
【0028】
この解決策の問題は、患者の健康状態を決定するための、体液の将来の傾向を予測するシステムの欠如、及び、患者の他のバイタルパラメータと失われた体液の量の統合の欠如にある。利尿、より一般的には、体液を監視及び予測するシステム及び方法は、例えば、腎不全のリスクの評価、より一般的には、患者の健康状態の評価などの多くの用途の要件を満たすであろう。
【0029】
本発明は、前述の要件を満たすことを目的とする。特に、本発明は、急性腎障害(AKI)の発症を早期に認識する方法の技術的問題を解決することを意図する。
【0030】
さらに、本発明は、病院環境における腎不全の管理の質をどのように改善するかという技術的問題を解決し、その結果、相対死亡率、及び、通常の入院日数を低減することを意図する。
【0031】
さらに、本発明は、患者の利尿の傾向をリアルタイムで予測し、及び、将来の急性腎障害(AKI)を発症するリスクをリアルタイムで評価する、継続的な監視システムによって、AKIの発症を正しく管理するために必要な臨床情報を医療専門家にどのように提供するかという技術的問題を解決することを意図する。
【0032】
さらに、本発明は、利尿監視装置のサイズをどのように縮小するかという技術的問題を解決することを意図する。
【0033】
さらに、本発明は、患者の健康状態の変化をどのように早期に認識するかという技術的問題を解決することを意図する。
【0034】
さらに、本発明は、病院環境における患者の健康状態の変化の管理の質をどのように改善し、その結果、相対死亡率および通常の入院日数を低減する技術的問題を解決することを意図する。
【0035】
さらに、本発明は、患者の体液の傾向をリアルタイムで予測し、将来の健康状態を悪化させるリスクをリアルタイムで評価する継続的な監視システムによって、患者の健康状態の変化の開始を正しく管理するために必要な臨床情報を医療関係者にどのように提供するかという技術的問題を解決することを意図する。
【0036】
したがって、要約すると、現在のところ、出願人の知る限り、腎不全のリスクを評価するために、そしてより一般的には、患者の健康状態の評価するために、利尿、より一般的には体液を監視および予測することを可能にする解決策は知られていない。
【0037】
したがって、出願人は、本発明によるシステム及び方法を用いて、この欠如を是正することを意図する。
【発明の概要】
【0038】
本発明の目的は、腎不全のリスクを評価するために利尿の監視及び予測が不可能であることに関連する既知の技術の欠点を克服することである。
【0039】
より一般的には、本発明の目的は、患者の健康状態を評価するために体液の流れを監視及び予測が不可能であることに関連する既知の技術の欠点を克服することである。
【0040】
そのような目的は、患者の健康状態、特に、AKIの発症リスクを評価するため、有利に、また、患者のバイタルパラメータ、具体的には、利尿の経時的な検出、記録、及び、処理により、患者の体液の流れ、特に、利尿を監視及び予測することを可能にする本発明に係るシステム及び方法で達成される。
【0041】
本発明に係るシステム及び方法は、病気の発症、特にAKIの発症の早期診断に役立つ、経時的に患者から採取されたサンプルの重量の検出、経時的な傾向を特定するのに有用なそのような重量データの記録及び処理を、出願人の知る限り初めて組み合わせる。
【0042】
具体的には、本発明の前述及び他の目的及び利点は、以下の説明から明らかなように、請求項1に記載の患者の腎不全のリスクを予測する利尿監視システムによって達成される。
【0043】
本発明に係る利尿監視システムの好ましい実施形態及び変形は、従属請求項2から5の主題を形成する。
【0044】
本発明の別の独立した態様は、患者の腎不全のリスクを予測する利尿監視方法に関し、請求項6の主題を構成する。
【0045】
本発明に係る利尿監視方法の好ましい実施形態及び変形は、従属請求項7及び8の主題を形成する。
【0046】
本発明の他の独立した態様は、患者の急性腎不全のリスクレベルを計算する利尿予測法に関し、請求項9の主題を構成する。
【0047】
本発明に係る利尿予測方法の好ましい実施形態及び変形は、従属請求項10から12の主題を形成する。
【0048】
本発明の他の独立した態様は、患者の健康状態を予測する体液の監視方法に関し、請求項13の主題を構成する。
【0049】
本発明に係る体液の監視方法の好ましい実施形態及び変形は、従属請求項14及び15の主題を形成する。
【0050】
本発明の他の独立した態様は、患者の健康状態を予測する体液の監視方法に関し、請求項16の主題を構成する。
【0051】
本発明に係る体液の監視方法の好ましい実施形態及び変形は、従属請求項17から19の主題を形成する。
【0052】
本発明の他の独立した態様は、患者の健康状態のレベルを計算する体液の予測方法に関し、請求項20に記載の主題を構成する。
【0053】
本発明に係る体液の予測方法の好ましい実施形態及び変形は、従属請求項21から24の主題を形成する。
【0054】
添付されたすべての特許請求の範囲は、本説明の不可欠な部分を形成し、そこに請求された技術的特徴のそれぞれは、おそらく独立しており、本発明の他の態様に関して独立して使用できることが理解される。
【0055】
添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の保護の範囲から逸脱することなく、記載されているもの(例えば、形状、サイズ、配置、及び、同等の機能を有する部品に関連する)に無数の変更を加えることができることが直ちに明らかであろう。
【0056】
利点として、患者のバイタルパラメータの進行を監視及び予測するシステム及び方法を提供する本発明に係る技術的解決策は、以下を可能にする。
・カテーテルを挿入された患者の利尿の管理に関連する将来の臨床診療において、革新的なシステム及び方法の導入により、現在使用されている臨床手順を克服する。
・現在の臨床基準に関して、問題、特に、AKIの発症を、より正確で早期の診断を可能にするため、利尿、または、より一般的には、患者の体液の、継続的かつ自動監視、及び、急性腎不全の重症度段階、または、より一般的には、健康状態の変化の自動かつ即時の評価(臨床医学会によってすでに共有及び受け入れられている国際ガイドラインから得られたパラメータと閾値との即時の比較による)。
・AKI発症のリスクレベルが上昇した場合、または、より一般的には、バイタルパラメータの異常な変化が発生した場合、主治医の即時かつ自動のアラートシステムを介して、進行中の症候群のよりタイムリーな介入及び治療を開始し、臨床像の悪化とその結果としての合併症を回避する可能性がある。
・収集したデータをリアルタイムで送信及び保存することにより、AKI又は別の病理の発症を早期かつ正確に診断できる予測モデルを開発することを目的として、経時的な利尿傾向、又は、患者の体液の事後分析を行う。
・入院患者及びカテーテル挿入患者の急性腎障害の臨床治療を大幅に改善し、早期診断及び臨床介入を可能にする。
・カテーテルを挿入された患者の生活の質を改善する。
・急性腎不全の管理に関連する医療費を削減し、集中治療室での入院日数及び病院への再入院数を削減する。
・さまざまな治療アプローチに従って、疾患の経過に関する予測モデルの開発を可能にする。
・2つの異なる装置で構成される監視システムの開発を可能にする。第1は、侵襲性が最小限であり、病院のベッド周辺の医療活動を妨げることがない装置であり、第2は、医療活動を妨げないように配置された場所で最も運びにくい装置である。
・カテーテルを挿入された患者の利尿を含む体液の将来の傾向を予測できる予測アルゴリズムの開発を可能にし、これからAKIの発症のリスクレベルを計算する。
【0057】
さらなる有利な特徴は、限定ではなく単なる例として提供される、好ましいが排他的ではない実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。
【0058】
本発明は、添付の図面を参照して、限定ではなく例として提供されるいくつかの好ましい実施形態によって以下に説明される。これらの図面は、本発明の異なる態様および例を示しており、適切な場合、異なる図の同様の構造、構成要素、材料、および/または要素は、同様の参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、本発明に係る患者の腎不全のリスクを予測する利尿監視システムの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る患者の腎不全のリスクを予測する利尿監視システムのフロー図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る患者の健康状態を予測する体液の監視システムの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る患者の健康状態を予測する体液の監視方法のフロー図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る患者の腎不全のリスクを予測する利尿監視システムの装置の第2のアルゴリズムによって実行される一連の詳細を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る患者の健康状態を予測する体液の監視システムの装置の第2のアルゴリズムによって実行される一連の詳細を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は様々な変更及び代替の実施の影響を受けやすいが、いくつかの好ましい実施形態が図面に示され、以下に詳細に説明される。
【0061】
しかしながら、本発明を例示された特定の実施形態に限定する意図はないが、逆に、本発明は、請求項に定義されるように、本発明の範囲内にあるすべての変更、代替の実施、及び、同等物を網羅することを意図することを理解されたい。
【0062】
したがって、以下の説明では、「例えば」、「等」、「または」、「いずれか」の使用は、特に明記しない限り、制限なしに排他的な代替物ではないことを示す。「また」の使用は、特に明記しない限り、「含むがこれに限定されない」ことを意味する。「含む/備える」の使用は、特に明記しない限り、「含む/備えるが、これに限定されない」ことを意味する。
【0063】
本発明のシステム及び方法は、病気の発症、特にAKIの発症の早期診断に有効な経時的な傾向を特定するため、経時的に患者から採取されたサンプルの重量の検出、そのような重量データの記録及び処理を組み合わせる、革新的な概念に基づく。
【0064】
要約すると、本発明のシステムおよび方法は、以下を利用する。
・主治医による患者の健康状態の遠隔監視のため、Bluetooth(登録商標、以下同様)ネットワークを介して相互に通信できる機器、及び、3Gネットワークを介してデータを伝送できる機器の2台の機器を用いる、カテーテル挿入された患者の利尿の自動及びリアルタイム監視
利点として、患者のベッドの周囲の領域における機器の全体的な寸法を縮小できる。
・2つの機器に実装された、急性腎不全の進行段階及び関連するリスクレベルを決定するアルゴリズム。
・データを収集、処理及び主治医に送信するプロセス。
【0065】
本発明は、その主な目的として、入院中のカテーテルを挿入された患者における急性腎不全の早期診断、および、一般に、彼らの健康の悪化の早期診断を有する。
【0066】
本発明のシステム及び方法は、患者の利尿(または別のバイタルパラメータ)を繰り返し監視することにより、国際ガイドラインで定義されているとおり、生理学的利尿レジメン(または健康状態)に関する不一致を自動的かつリアルタイムで特定することを可能にする。さらに、本発明のシステム及び方法は、遠隔接続を介して、主治医に警告閾値の可能な克服を通知することを可能にし、その結果、早期診断及びタイムリーな治療的介入の実行を可能にする。
【0067】
本明細書において、「体液」の用語は、ヒト由来の体液を意味し、尿、血液及び他の血液生成物、唾液、粘液、羊水、腹水、リンパ系液、胃液、血液、一般の体液を含むがこれらに限定されない。
【0068】
本明細書において、「電子臨床記録」および「電子医療記録」の用語は、患者及び患者の健康状態に関連して収集されたデータのセットを含むが、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、患者に投与された体液の量、及び、現在の疾患に限定されない。本明細書では、「電子臨床記録」および「電子医療記録」の用語は、同義語として区別なく使用される。
【0069】
本説明において、「KDIGOガイドライン」の用語は、文書「2012年腎臓病:急性腎障害(AKI)のグローバル転帰の改善(KDIGO)臨床診療ガイドライン」に記載されている急性腎不全の管理に関するガイドラインを意味する(出典:Webサイトhttps://kdigo.org/guidelines/acute-kidney-injury/;アクセス日:2019年1月28日)。
【0070】
本明細書において、「RIFLEガイドライン」の用語は、「Bellomo R.、Ronco C.、Kellum JA、他、急性腎不全-定義、結果測定、動物モデル、輸液療法及び情報技術のニーズ:急性透析品質戦略(ADQI)グループの第2回国際コンセンサス会議。 Crit Care2004; 8:R204-212」に記載される急性腎不全の管理のためのガイドラインを意味する。
【0071】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態を示す
図1に示されるように、患者の腎不全のリスクを予測する利尿監視システム1は、以下を含むことが観察される。
尿の容器2、
尿容器2の重量計、
尿容器2の測定値を記録、保存、比較及び処理する第1のアルゴリズム15、及び、尿容器2の将来の測定値及びそれらに関連する腎不全リスクのレベルを予測する第2のアルゴリズム25を備える装置5、
装置5が備える第1のアルゴリズム15及び第2のアルゴリズム25の出力を表示するビデオ端末7、
重量計3及び装置5を接続する第1のワイヤレスシステム4、及び、装置5及びビデオ端末7を接続する第2のワイヤレスシステム。
【0072】
好ましくは、尿容器2は、滅菌袋である。
【0073】
好ましくは、重量計3は、ロードセルである。
【0074】
好ましくは、
第1のアルゴリズム15は、各重量測定値を実施した時刻と関連づけ、患者の体重(体重/時間/患者の体重)で正規化された1時間毎の尿の生成率を計算し、続いて、この正規化された1時間毎の尿生成率が、急性腎障害(AKI)のステージを定義するためのKDIGOおよびRIFLEガイドラインによって定義された1時間毎の生成率のしきい値と比較される、体重計3を介して取得したデータを分析する数学モデルを含み、
第2のアルゴリズム25は、
少なくとも第1のアルゴリズム15によって計算された利尿の現在の値及び過去の値を入力とし、必要に応じて、患者の電子医療記録35から抽出された現在の値及び過去の値を入力とし、将来の容器の重量測定値の予測UO(t)Aを出力とする数学モデルH-25と、
予測UO(t)Aを、リアルタイムで観測された対応する値UO(t)と比較するe(t)A数学モデルと、
比較結果e(t)Aに基づいて、適応数学モデルH-25によって実行された計算を修正する数学モデルと、
適応数学モデルH-25の出力、尿容器2の重量測定値の現在の値と過去の値、及び、電子医療記録35の患者の生理学的パラメータを入力とし、尿容器の最後の重量測定後24/48時間以内に急性腎不全を発症するリスクレベル(1から10のランキング)R(t)Aを出力とする数学モデルM-25とを含む。
【0075】
好ましくは、 適応数学モデルH-25は、線形及び非線形回帰モデル、及び、機械学習モデルを含み、好ましくは人工ニューラルネットワークである。
【0076】
好ましくは、数学モデルM-25は、可変二分応答を伴う回帰モデルを含み、好ましくはロジットおよびプロビットモデル、機械学習モデル、好ましくは分類モデル、人工ニューラルネットワーク及びSVMモデルである。
【0077】
好ましくは、現在の値及び過去の値は、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、前記患者に投与された液体の量、及び、現在の疾患を含む患者の電子医療記録35から抽出される。
【0078】
例示的で非限定的な実施形態では、利尿監視システム1は、ハードウェアコンポーネントおよびソフトウェアコンポーネントを含む。
【0079】
ハードウェアコンポーネントは、重量計3及び装置5を含む。
【0080】
重量計3は、病院環境でカテーテルを挿入された患者に使用される尿バッグ2の内部に存在する利尿の量を測定するタスクを有する。このような測定は、尿バッグ2の重量を計算することによって実行される。
【0081】
このようにして収集されたデータは、Bluetooth接続を介して装置5に転送される。重量計3のハードウェアコンポーネントは次の通りである。
・尿バッグの重量測定の管理、及び、Bluetooth接続を介して重量計3へのデータの送信に使用されるLow-Energy-Bluetooth(BLE)接続を備えたバッテリー駆動のマイクロコントローラ。
・尿バックの重量の計測に用いられるロードセル。
・ロードセルによって生成された測定信号を、尿バッグの重量に対して増幅および変換する24ビットのアナログ-デジタルコンバータ(ADC)。このように処理されたデータは、ケーブルによって上記のマイクロコントローラに転送される。
・重量計3の操作に必要なすべてのハードウェアコンポーネントの収容に使用されるケーシング。
・重量測定センサ及び尿バッグの接続に使用されるチェーン及びフック。最終的に、バッグは吊り下げられ、フックに引っ掛けられる。
【0082】
重量計3は、集中治療室の患者のベッド構造に取り付けられ、患者のベッドサイドの近くで手術を行う医療スタッフの日常業務を妨げないようにサイズが小さく、患者の生存が依存する可能性のある即時の介入を必要とすることが多い。
【0083】
尿を含むバッグにも患者の尿の流れにも、いかなる種類の侵襲的手術も行われないこと、また、重量計3を使用するのに、特定のタイプ又は製造のバックを使用する必要がないことを指摘したい。
【0084】
装置5は、以下のタスクを持つ。
・尿バッグの重量に関連するBluetooth接続を介して重量計3に送信されたデータを受信する。
・受信したデータの分析及び処理。
・主治医が後で表示できるように、処理されたデータを、3G接続を介してスマートフォンアプリケーションに送信する。
・3G接続を介して収集されたデータを保存するため、生データを電子データベースに送信する。
・生データ及び処理済みデータを、部門の看護師に表示できるようにする。
・監視対象の患者に関する情報を入力できるようにする。
【0085】
装置5のハードウェアコンポーネントは以下である。
・Bluetooth接続を介して重量計3によって送信されたデータの受信、前述のデータの処理、および生データと処理済みデータの表示を管理するために使用される、3GおよびBluetooth接続を備えた電源コンセントを動力源とするマイクロコントローラ容量性タッチスクリーン。
・マイクロコントローラによって生データと処理済みデータを表示し、病棟の勤務中の看護師が患者情報を入力するために使用される静電容量式タッチスクリーン。
【0086】
ソフトウェアコンポーネントは、重量計3用のソフトウェア及び装置5用のソフトウェアを含む。
【0087】
対応するマイクロコントローラ内に実装された重量計3のソフトウェアは、以下のタスクを持つ。
・ロードセルのデータ収集を管理し、5分毎に尿バックの重量を計測する。
・収集したデータをBluetooth接続を介して装置5に送信する。
【0088】
さらに、そのようなソフトウェアは、重量計3の消費電力を最小限に抑えるように最適化されており、これにより、電池で電力を供給できる。
【0089】
対応するマイクロコントローラ内に実装された装置5のソフトウェアは、以下のタスクを持つ。
・重量計3によって装置5に送信されたデータのBLE接続を介して受信を管理する。
・受信したデータを処理する。このような処理は、急性腎不全または急性腎障害または腎障害の発症リスクを判定し、各患者をリスクのレベルと関連付けることを目的とする。このようなリスクは、監視対象患者の過去24時間の利尿(尿バッグの重量を経時的に測定して得られた)と、急性腎障害(AKI)の進行段階の定義についての国際ガイドライン「急性腎障害のKDIGO臨床診療ガイドライン」(2012年3月)によって決定されたしきい値と比較して計算される。さらに、急性腎障害の予測モデルを決定して実装することを目的として、機械学習アルゴリズムが実装される。
・処理されたデータ、及び、装置5にある静電容量式タッチスクリーンを使用して計算されたリスクレベルの表示を管理する。
・医療従事者がタッチスクリーンディスプレイを介して、各患者に割り当てたコード、体重(kg)、年齢など、監視対象の患者に関連する機密データの入力を管理する。
・3G接続を介して、処理済みデータ及び計算されたリスクレベルのオンラインデータベース及びスマートフォンアプリケーションへの送信を管理する。
【0090】
要約すると、入院したカテーテルを挿入された患者のための、本発明に係る利尿監視システム1は、実質的に以下を含む。
・データ収集:入院患者の尿バッグの重量の継続的な測定。
・収集されたデータの精緻化:尿排出量と、特定のレベルのリスクに関連する腎不全の進行の段階を国際ガイドラインKDIGOで表される閾値とを比較して提供されるmL/hr/kg(尿排出量)での経時的な患者の利尿の計算、および、急性腎不全の発症の正確なリスクレベルの決定につながる急性腎不全の発症の予測モデルの決定と実装のための機械学習アルゴリズムによる患者の利尿の処理。
・処理されたデータ及び患者のリスクレベルの主治医への伝達:このような伝達は、医者が、患者の利尿及びそれに関連するリスクレベルをリアルタイムで知り、その結果、データドキュメントとリスクレベルを主治医が所有するスマートフォンアプリケーションに送信することにより、患者の健康状態に迅速に介入することを目的とする。
【0091】
さらに、
図2を参照すると、本発明の好ましい実施形態を示し、患者の腎不全のリスクを予測するための利尿監視方法は、本発明の他の態様に関して独立して使用可能な独立した態様を構成し、以下のステップを含む。
・腎不全のリスクがある患者が所定の期間に生成した尿のサンプルを採取し、それを尿容器2に収集する(ステップ100)。
・尿容器2の重量を測定するステップ(ステップ101)。
・第1のアルゴリズム15により、尿容器2の測定値を記録及び保存する(ステップ102)。
・前段のステップ(ステップ100からステップ102)を、所定の回数繰り返す(ステップ103)。
・第1のアルゴリズム15により、利尿の経過を決定するため、経時的に記録及び保存された尿容器2の測定値を比較及び処理する(ステップ104)。
・前段のステップ(ステップ104)で決定された傾向に基づいて、適応数学モデルH-25及び機械学習数学モデルM-25を含む第2のアルゴリズム25により、尿容器2の将来の測定値の値及び腎不全を発症するリスクを予測する(ステップ105)。
・前述のステップ(ステップ105)で取得したデータをビデオ端末(7)に転送する(ステップ106)。
【0092】
好ましくは、
・第1のアルゴリズム15は、各重量測定値を実施された時刻と関連づけ、患者の体重(体重/時間/患者の体重)で正規化された1時間毎の尿の生成率を計算し、続いて、この正規化された1時間毎の尿生成率が、急性腎障害AKIのステージを定義するためのKDIGOおよびRIFLEガイドラインによって定義された1時間毎の生成率のしきい値と比較される、重量計3を介して取得したデータを分析する数学モデルを含み、
・第2のアルゴリズム25は、
少なくとも第1のアルゴリズム15によって計算された利尿の現在の値及び過去の値を入力とし、必要に応じて、患者の電子医療記録35から抽出された現在の値及び過去の値を入力とし、将来の容器の重量測定値の予測UO(t)Aを出力とする数学モデルH-25と、
予測UO(t)Aを、リアルタイムで観測された対応する値UO(t)と比較するe(t)A数学モデルと、
比較結果e(t)Aに基づいて、適応数学モデルH-25によって実行された計算を修正する数学モデルと、
適応数学モデルH-25の出力、尿容器2の重量測定値の現在の値と過去の値、及び、電子医療記録35の患者の生理学的パラメータを入力とし、尿容器の最後の重量測定後24/48時間以内に急性腎不全を発症するリスクレベル(1から10のランキング)R(t)Aを出力とする数学モデルM-25とを含む。
【0093】
好ましくは、
・ステップ100の所定の期間は、30秒から10分の範囲であり、好ましくは5分に等しく、また、
・ステップ103の所定の回数は、1から100の範囲であり、好ましくは、50に等しい。
【0094】
さらに、患者の急性腎不全のリスクレベルを計算する利尿予測方法(UO(t))は、本発明の他の側面に関して自律的に使用できる独立した側面を構成し、以下のステップを含む。
・適応数学モデルH-25を使用して、少なくとも、装置5によって記録及び処理された利尿の現在の値及び過去の値を考慮し、かつ、オプションで、必要に応じて、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、前記患者に投与された液体の量、及び、現在の疾患に関連する患者の電子医療記録35から抽出された、現在の値及び過去の値を考慮し、患者の利尿の傾向を計算する(ステップ300)。
・期待値UO(t)A、つまりステップ300の計算の出力を、リアルタイムで測定された対応する値UO(t)と比較する(ステップ301)。
・ステップ301の比較に基づいて、ステップ300の計算を修正する(ステップ302)。
・予測値UO(t)A、UO(t+l)A、UO(t+2)A、つまりステップ300の計算の出力を、「KDIGOおよびAKINガイドライン」によって定義された急性腎不全の診断のしきい値と比較する(ステップ303)。
・ステップ303の比較に基づく、急性腎不全を発症するリスクレベル(1から10のランキング)割り当て(ステップ304)。
・機械学習数学モデルM-25により、少なくとも現在の値UO(t)、過去の値、及び、利尿の適応数学モデルH-25によって予測された値を考慮し、かつ、オプションで、必要に応じて、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数および心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、患者に投与された体液の量、及び、現在の疾患に関連する前記患者の電子医療記録(35)から抽出された現在の値及び過去の値を考慮し、患者の将来の時点の腎不全のリスクファクタを計算する(ステップ305)。
【0095】
好ましくは、適応数学モデルH-25は、例えばベイズ推定量を使用することにより、リアルタイムで提供される患者に関連する利用可能な追加情報を較正アルゴリズムが考慮するモデルである。
【0096】
好ましくは、ステップ303の予測値UO(t)A、UO(t+l)A、UO(t+2)Aは、各増分が5分から6時間の範囲の時間値になるように増加する対応する時点t、t+1、t+2に関連する。
【0097】
好ましくは、機械学習数学モデルM-25は、可変二分応答を有する回帰モデル(ロジット及びプロビットモデルを含む)、及び、機械学習モデル(分類モデル、人工ニューラルネットワーク及びSVMモデルを含む)から選択される。
【0098】
図3を参照すると、本発明の一般的な実施形態を示し、患者の健康状態を予測するための体液の監視方法10は、本発明の他の態様に関して独立して使用可能な独立した態様を構成し、
体液容器20と、
体液容器20の重量計30と、
体液容器20の測定値を記録、保存、比較及び処理する第1のアルゴリズム150、及び、体液容器20の将来の測定値及びそれらに関連する患者の健康状態を予測する第2のアルゴリズム250を備える装置50と、
装置50が備える第1のアルゴリズム150及び前記第2のアルゴリズム250の出力を表示するビデオ端末70と、
重量計30及び装置50を接続する第1の「ワイヤレス」システム40と、
装置(50)及び前記ビデオ端末(70)を接続する第2の「ワイヤレス」システム(60)とを含む。
【0099】
好ましくは、体液は、腹水、リンパ液、尿、血液、羊水及び唾液から選択される。
【0100】
好ましくは、体液容器10は、滅菌袋である。
【0101】
さらに、
図4を参照すると、本発明の一般的な実施形態を示す、患者の健康状態を予測する体液監視方法は、本発明の他の態様に関して独立して使用可能な独立した態様を構成し、以下のステップを含む。
・患者が所定の期間に生成した体液のサンプルを採取し、それを体液容器20に収集する(ステップ200)。
・体液容器20の重量を測定する(ステップ201)。
・第1のアルゴリズム150により、体液容器20の測定値を記録及び保存する(ステップ202)。
・前段のステップ(ステップ200からステップ202)を、所定の回数繰り返す(ステップ203)。
・第1のアルゴリズム150により、有機流体重量の傾向を決定するため、経時的に記録及び保存された体液容器20の測定値を比較及び処理する(ステップ240)。
・前段のステップ(ステップ204)で決定された傾向に基づいて、適応数学モデルH-250及び機械学習数学モデルM-250を含む第2のアルゴリズム250により、体液容器20の将来の測定値の値及び患者の健康状態の悪化のリスクを予測する(ステップ205)。
・前段のステップ(ステップ205)で取得したデータをビデオ端末70に転送する(ステップ206)。
【0102】
好ましくは、体液は、腹水、リンパ液、尿、血液、羊水及び唾液から選択される。
【0103】
好ましくは、
・第1のアルゴリズム150は、各重量測定値を実施された時刻と関連づけ、患者の体重(体重/時間/患者の体重)で正規化された1時間毎の体液の生産率を計算し、重量計30を介して取得したデータを分析する数学モデルを含み、
・第2のアルゴリズム250は、
少なくとも第1のアルゴリズム150によって計算された体液の現在の値及び過去の値を入力とし、必要に応じて、患者の電子医療記録350から抽出された現在の値及び過去の値を入力とし、将来の容器の重量測定値の予測UO(t)Aを出力とする適応数学モデルH-250と、
予測UO(t)Aを、リアルタイムで観測された対応する値UO(t)と比較するe(t)A数学モデルと、
比較結果e(t)Aに基づいて、適応数学モデルH-250によって実行された計算を修正する数学モデルと、
適応数学モデルH-250の出力、体液容器20の重量測定値の現在の値と過去の値、及び、患者の電子医療記録350の生理学的パラメータを入力とし、体液容器の最後の重量測定後24/48時間以内の患者の健康の悪化のリスクレベル(1から10のランキング)R(t)Aを出力とする数学モデルM-250とを含む。
【0104】
好ましくは、
・ステップ200の所定の期間は、30秒から10分の範囲であり、好ましくは5分に等しく、
・ステップ203の所定の回数は、1から100の範囲であり、好ましくは50に等しい。
【0105】
さらに、患者の健康状態のレベルを計算するための体液の流れの予測方法は、本発明の他の側面に関して独立して使用可能な独立した側面を構成し、以下のステップを含む。
・適応数学モデルH-250を使用して、少なくとも、装置50によって記録及び処理された体液の現在の値及び過去の値を考慮し、かつ、オプションで、必要に応じて、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、患者に投与された液体の量、及び、現在の疾患に関連する患者の電子医療記録から抽出された、現在の値と過去の値を考慮し、患者の体液の傾向を計算する(ステップ400)。
・期待値UO(t)A、つまりステップ400の計算の出力を、リアルタイムで測定された対応する値UO(t)と比較する(ステップ401)。
・ステップ401の比較に基づいて、ステップ400の計算を修正する(ステップ402)。
・機械学習数学モデルM-250により、少なくとも現在の値UO(t)、過去の値、及び、体液の適応数学モデルH-250によって予測された値を考慮し、かつ、オプションで、必要に応じて、血中クレアチニンレベル、動脈圧、心拍数と心電図、体温、酸素飽和度、呼吸数、患者の体重、患者に投与された液体の量、及び、現在の疾患に関連する患者の電子医療記録から抽出された現在の値及び過去の値を考慮し、将来の時点の健康状態のレベルを計算する(ステップ403)。
【0106】
好ましくは、適応数学モデルH-250は、例えば、ベイズ推定値を使用することにより、リアルタイムで提供される患者に関連する利用可能な追加情報を較正アルゴリズムが考慮するモデルである。
【0107】
好ましくは、ステップ403の予測値UO(t)A、UO(t+l)A、UO(t+2)Aが対応する時点t、t+1、t+2は、各増分が5分から6時間の範囲の時間値になるように増分される。
【0108】
好ましくは、機械学習数学モデルM-250は、可変二分応答を有する回帰モデル(ロジット及びプロビットモデルを含む)及び、機械学習モデル(分類モデル、人工ニューラルネットワーク及びSVMモデルを含む)から選択される。
【0109】
好ましくは、体液は、腹水、リンパ液、尿、血液、羊水及び唾液から選択される。
【0110】
図5を参照すると、本発明に係る患者の腎不全のリスクを予測する利尿監視システム1の装置5のアルゴリズム25によって実行される一連の詳細を表し、アルゴリズム25は以下を含む。
・少なくとも第1のアルゴリズム15によって計算された利尿の現在の値及び過去の値を入力とし、必要に応じて、患者の電子医療記録35から抽出された現在の値及び過去の値を入力とし、将来の容器の重量測定値の予測UO(t)
Aを出力とする数学モデル(H-25)。
・予測UO(t)
Aを、リアルタイムで観測された対応する値UO(t)と比較するe(t)
A数学モデル。
・比較結果e(t)
Aに基づいて、適応数学モデルH-25によって実行された計算を修正する数学モデル。
・適応数学モデルH-25の出力、尿容器2の重量測定値の現在の値と過去の値、及び、電子医療記録35の患者の生理学的パラメータを入力とし、尿容器の最後の重量測定後24/48時間以内に急性腎不全を発症するリスクレベル(1から10のランキング)R(t)
Aを出力とする数学モデル(M-25)。
【0111】
図6を参照すると、本発明に係る患者の健康状態を予測する体液の監視システム10の装置50のアルゴリズム250によって実行される一連の詳細を表し、アルゴリズム250は、以下を含む。
・少なくとも第1のアルゴリズム150によって計算された体液の現在の値及び過去の値を入力とし、必要に応じて、患者の電子医療記録350から抽出された現在の値及び過去の値を入力とし、将来の容器の重量測定値の予測UO(t)
Aを出力とする適応数学モデルH-250。
・予測UO(t)
Aを、リアルタイムで観測された対応する値UO(t)と比較するe(t)
A数学モデル。
・比較結果e(t)
Aに基づいて、適応数学モデルH-250によって実行された計算を修正する数学モデル。
・適応数学モデルH-250の出力、体液容器20の重量測定値の現在の値と過去の値、及び、患者の電子医療記録350の生理学的パラメータを入力とし、体液容器の最後の重量測定後24/48時間以内の患者の健康の悪化のリスクレベル(1から10のランキング)(R(t)
A)を出力とする数学モデル(M-250)。
【0112】
例1
上記の機能を有する尿バッグの重量計は、例えば、以下を有し得る。
・5×5×5cmのL×W×Hサイズで、29×36×4.75mmサイズの長寿命の充電式3.7Vおよび500mAhリチウムイオン電池電源を装備し得る35x33x7mmのサイズの小型バッテリー充電器。
・センサによって収集されたデータを制御及び管理し、低電力Bluetooth接続を介して尿容器へ送信するSensorTileモジュールに取り付けられたSTM32L476JGプロセッサ。
・小型化ロードセル重量センサ。具体的にはS215-012、容量5.4kg、サイズ28.7×5.99×5.99mm、精度±1g。
・ロードセル用の24ビットアナログ-デジタルコンバータ(ADC)。31×22mmサイズの具体的にはHX711モデル。5×5×5cmサイズのABS製エンクロージャおよびIP68の防水。
【0113】
参照番号5で示され、上記の機能を有する装置は、例えば、以下を有し得る。
・全体寸法は20×10×10cm
・ソケット付きの電源を装備しうる。
・ユーザがデータを入力する3.5"タッチスクリーン。
・低エネルギーBluetooth接続を介して受信したデータを制御及び管理し、本明細書で前述したアルゴリズムを実装するRasperry Pi3 b plusマイクロコントローラ。
・尿容器をモバイルネットワークに接続するために使用されるRaspberry pi 3G 4G LTEベースシールドv2電子カード。
【0114】
本発明に係るシステム及び方法は、後述するように、既知の解決策と比較される。
【0115】
本発明と既知の解決策との比較の結果は、以下の表に要約されている。
【表1】
【0116】
前述の表は、本発明と比較した既知の解決策を示す。特に、本発明に存在し、以前の解決策には存在しない主な技術的特徴を強調する。
【0117】
本発明は、好ましい実施形態において、タイムリーな治療的介入を可能にし、潜在的な重大な状況を特定するための重要な指標を得るために、このパラメータの傾向を監視することを目的として、カテーテル挿入された患者の利尿のレベルを測定および分析する革新的なシステムを説明する。説明されているシステム及び方法の革新的な価値は、とりわけ、患者の利尿レベルの継続的な検出と監視の活動の自動化によって表される。このパラメータは、現在、不正確な方法で長期間にわたって視覚的に検証されている。
【0118】
このシステムは、即時のデータ収集を可能にし、患者の利尿レベルを継続的に計算し、この情報をデータベースに送信して、将来使用可能にし、主治医が容易に分析できるようにする。さらに、システムは収集されたデータをリアルタイムで分析し、治療目的の達成と急性腎障害症候群AKIの診断のための国際ガイドラインによって示される利尿剤の閾値の克服を検証できる。
【0119】
第二に、患者の利尿レベルのパラメータが決定された生理学的範囲内にあるかどうかを手動で監視する必要がなくなるため、システムは医療従事者の作業を最適化できる。さらに、生理学的パラメータの監視など、反復的なタスクで必然的に一般的なヒューマンエラーは制限される。
【0120】
このシステムは、尿道カテーテルの管理に関するあらゆるタイプの部門及び現在の実務に適応するように設計されている。その結果、現在使用されている器具の変更にそれ以上の費用を必要とせず、ほとんどの市販のカテーテルバッグに完全に統合できる。
【0121】
さらに、尿が測定器に接触しないため、このようなシステムは患者の健康を危険にさらすことはなく、無菌及び感染からの保護を保証する。
【0122】
ここで提案されたシステム内で使用されるそれぞれの技術が広く使用されていることを考えると、低い製造コストが期待される。
【0123】
したがって、ここで提案するシステムは、情報収集の自動化、精度及び継続性に由来する強力で革新的価値と、データ接続システムのおかげで主治医と積極的に対話する能力を、使いやすく、使用環境に適合した、費用対効果の高い技術に組み合わせることができる。
【0124】
前述のことから推測できるように、本明細書に記載の革新的な技術的解決策は、以下の有利な特徴を有する。
・カテーテルを挿入された患者の利尿の管理に関連する将来の臨床診療において、革新的なシステム及び方法の導入により、現在使用されている臨床手順を克服する。
・利尿、又は、より一般的には患者の体液の継続的かつ自動の監視及び急性腎不全の重症度段階、又は、より一般的には健康状態の変化の自動かつ瞬時の評価(臨床医学界によってすでに共有され及び受け入れられている国際ガイドラインから得られたパラメータ及び閾値の瞬時比較による)を通じて、現在の臨床基準に関して、問題、特にAKIの発症のより正確で早期に診断する。
・AKI発症のリスクレベルが上昇した場合、又は、より一般的にはバイタルパラメータの異常な変化が発生した場合に、主治医への即時かつ自動のアラートシステムを介して、よりタイムリーな介入及び臨床像の悪化とその結果としての合併症を回避する可能性を伴う進行中の症候群の治療を開始する。
・AKIまたは別の病状の発症を事前かつ正確に診断できる予測モデルを開発することを目的とし、収集したデータをリアルタイムで送信および保存することにより、患者の経時的な利尿傾向又は任意の体液の事後分析を行う。
・入院中のカテーテルを挿入された患者の急性腎障害の臨床治療を大幅に改善し、早期診断と臨床的介入を可能にする。
・カテーテルを挿入された患者の生活の質を改善する。
・急性腎不全の管理に関連する医療費を削減し、集中治療室での入院日数と病院への再入院数を削減する。
・さまざまな治療アプローチにより、病気の経過に関する予測モデルの開発を可能にする。
【0125】
したがって、上記の説明から、本発明によるシステム及び方法が、意図された目的を達成することをどのように可能にするかは明らかである。
【0126】
したがって、当業者には、本発明の教示および定義された保護の範囲から逸脱することなく、添付のクレームにより、添付の図を参照して説明された解決策に修正およびさらなる変形を加えることが可能であることは明らかである。
【国際調査報告】