(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(54)【発明の名称】エネルギーチェーンのための動作的に安定したサイドプレート
(51)【国際特許分類】
F16G 13/16 20060101AFI20220314BHJP
H02G 11/00 20060101ALI20220314BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
F16G13/16
H02G11/00 060
H02G3/04 075
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542383
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2020051520
(87)【国際公開番号】W WO2020152221
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】202019100465.7
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507336499
【氏名又は名称】イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヘルマイ
(72)【発明者】
【氏名】チロアレクサンダー ジャイケル
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ティーシス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ストラック
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DD16
5G371CA02
(57)【要約】
本発明は、単一部品のプレート本体を備える、エネルギーチェーンのためのサイドプレート(10;30A、30B)に関し、プレート本体は、プラスチックで作られ、かつ、それぞれ隣接するプレートの対応する重なり領域への枢動可能な接続のためのものである2つの重なり領域(11A、11B;31A…31D)を有し、プレート本体はまた、重なり領域間に中央領域(12;32A、32B)を有する。重なり領域および中央領域は、いくつかの断面移行部を有し、断面移行部のそれぞれは、2つの外側部分的表面の間に配置され、また、断面移行部のうちの少なくとも1つは、プレート本体の第1の部分的表面(F11、F21、F31)と第1の部分的表面に対してある角度で、特に90°の角度で延在する第2の部分的表面(F12、F22、F32)との間で丸み付けされるかまたは屈折される(Q1…Q5)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのクロスピースを介して互いに接続される2つの対向するサイドプレート(10;30A、30B)を備えるチェーンリンクを使用する、線材をガイドするエネルギーガイドチェーンに用いられ、
該サイドプレート(10;30A、30B)が、いずれの場合にも隣接するプレートの対応する重なり領域に旋回可能に接続するための2つの重なり領域(11A、11B;31A~31D)と、該重なり領域間の中央領域(12;32A、32B)とを含むプラスチック材料の一体型プレート本体と、を有し、
前記重なり領域および前記中央領域が、いずれの場合にも2つの外側下位表面の間にいくつかの断面移行部を有し、
前記プレート本体の第1の下位表面(F11、F21、F31)と該第1の下位表面に対してある角度で、特に角度90°で延在する第2の下位表面(F12、F22、F32)との間の前記断面移行部のうちの少なくとも1つの断面移行部が、丸み付けされるかまたは面取りされ(Q1~Q5)、
少なくとも1つの前記断面移行部(Q1~Q5)が、前記第1の下位表面と前記第2の下位表面との交差曲線から距離Aの所に配置される前記第1の下位表面(F11、F21、F31)における移行曲線(C)の始点(PA)に対して前記第2の下位表面(F12、F22、F32)における前記移行曲線(C)の終点(PZ)が1.7・A≦Z≦4.0・A、特に2.3・A≦Z≦3.4・Aで前記交差曲線から距離Zの所に配置されるような、また、前記断面移行部(Q1~Q5)の断面積が前記始点(PA)から前記終点(PZ)まで前記移行曲線(C)に沿って連続的に減少するような経路を有する包絡移行曲線(C)により、範囲を定められる、サイドプレート。
【請求項2】
前記移行曲線(C)が、滑らかまたは無段の厳密に単調に下降する曲線に相当する、請求項1に記載のサイドプレート。
【請求項3】
前記第1の下位表面(F11、F21、F31)が、前記サイドプレートの主平面(H)に対して垂直に配置され、
前記第2の下位表面(F12、F22、F32)が、前記プレート本体の前記主平面(H)に対して平行に配置される、請求項1または2に記載のサイドプレート。
【請求項4】
前記始点(PA)を含む前記第1の下位表面が、前記中央領域(12;32A、32B)上に配置され、
前記終点(PZ)を含む前記第2の下位表面が、重なり領域(11A、11B;31A~31D)上に配置される、請求項3に記載のサイドプレート。
【請求項5】
前記始点(PA)を含む前記第1の下位表面(F31)が、前記重なり領域における止め凹部(15A、15B)の制限止め効果を有する止め表面に相当し、
前記終点(PZ)を含む前記第2の下位表面(F32)が、前記止め凹部(15A、15B)を片側で閉鎖する底壁に相当する、請求項3に記載のサイドプレート。
【請求項6】
前記始点を含む前記第1の下位表面が、前記重なり領域における旋回ピン上に配置され、
前記終点を含む前記第2の下位表面が、そこから前記旋回ピンが突出する側壁領域上に配置される、請求項3に記載のサイドプレート。
【請求項7】
前記移行曲線(C)が、前記プレート本体の外側表面から材料凹部(37A、37B)内への前記断面移行部(Q5)を画定する、請求項1から3のいずれか一項に記載のサイドプレート。
【請求項8】
前記移行曲線(C)の前記経路が、前記終点が2.2・A≦Z≦2.6・Aで前記交差曲線から距離Zの所に配置されるように選択され、
前記経路が、具体的には、前記終点(PZ)において前記第2の下位表面(F12、F22、F32)に接線方向に接触する円の45°円セグメントに相当する、請求項1から7のいずれか一項、特に請求項2に記載のサイドプレート。
【請求項9】
前記プレート本体の前記第1の外側下位表面(F11、F21、F31)と前記第2の外側下位表面(F12、F22、F32)との間の角度が、前記断面移行部に沿って一定の90°になり、
- 前記始点(PA)における初期部分内の前記移行曲線(C)の前記経路が、前記第1の下位表面(F11、F21、F31)と一緒に約45°±5°の角度を形成する接線を有し、かつ/または、
- 前記終点(PZ)における端部分内の前記移行曲線の前記経路が、前記第2の下位表面に実質的に平行であるかまたは前記第2の下位表面に連続的に合流する接線を有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載のサイドプレート。
【請求項10】
少なくとも1つの前記断面移行部(Q1~Q5)が、前記第1の下位表面および前記第2の下位表面の二等分線に対して非対称であり、かつ/または、特に射出成形法により熱可塑性プラスチックから前記プレート本体と一体に作製される、請求項1から9のいずれか一項に記載のサイドプレート。
【請求項11】
前記移行曲線(C)の前記終点(PZ)を含む前記第2の下位表面(F12、F22、F32)が、少なくとも牽引力を伝達するように意図された前記プレート本体の領域に設けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載のサイドプレート。
【請求項12】
内側プレート(30A)、外側プレート(30B)、またはオフセットプレート(10)の形態を取る、請求項1から11のいずれか一項に記載のサイドプレート。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の2つの対向するサイドプレート(10;30A、30B)を有する、エネルギーガイドチェーンのチェーンリンク。
【請求項14】
長手方向において互いに旋回可能に接合された請求項1から12のいずれか一項に記載のサイドプレート(10;30A、30B)からいずれの場合にも構成されるプレートの連なりを2つ備える、エネルギーガイドチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、エネルギーガイドチェーンのためのサイドプレートに関する。エネルギーガイドチェーンは、互いに対して可動である2つの接続点間でのホース、ケーブル、などのような可撓性線材の動的かつ保護されたガイドのために使用される。エネルギーガイドチェーンは、チェーンリンクから作製され、チェーンリンクのそれぞれは、典型的には、クロスピースもしくは対向する2つのクロスピースを介して恒久的にまたは分離可能に互いに接続される、対向する2つのサイドプレートを備える。一般的なサイドプレートのプレート本体は、そのそれぞれが隣接するプレートの対応する重なり領域への旋回可能なまたは関節式の接続のためのものである2つの重なり領域と、それらの間の中央領域とを有する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料で作られた一体の平坦なプレート本体を有するサイドプレートを用いたエネルギーガイドチェーンは、効率的であることが証明されている。プラスチック材料で作られたサイドプレートは、とりわけ、金属薄板プレートと比較すると、重量の著しい減少を可能にする。
【0003】
2つのタイプのプラスチック材料サイドプレートが、頻繁に使用される。すなわち、特許文献1に例示されているような、互いに長手方向に交互に接続されてプレートの連なりを形成する、相補的な内側および外側のプレート、あるいは、特許文献2または特許文献3に例示されているような、平面図においてオフセットされるサイドプレートである。どちらのタイプのプレートも、いずれの場合にも、射出成形により安価に製造され得る。
【0004】
どちらのタイプでも、サイドプレートは、いずれの場合にも、重なり領域および/または中央領域においていずれの場合にも外側表面の2つの下位領域の間にいくつかの断面移行部を有し、それらの断面移行部は、その機能の結果として、互いに対してある角度で特に垂直に位置するかまたは延在する。
【0005】
特に縁の鋭い移行部を避けるために、または、縁部を鈍くするために、丸み付けされた形態でこれらの断面移行部のうちのいくつかを作製することが、一般的な方法である。移行部は、例えば、干渉する縁部を避けるために、大きな側表面から狭い側面へ丸み付けされるか、または、旋回ピンの自由前端部は、組立てを促進するために丸み付けされる。断面移行部は、典型的には、下位表面に対して対称に適用される、四分円弧(quarter-circle arc)の形態の小さな半径を有する半径移行部として丸み付けされる。
【0006】
サイドプレートは、それらの設計に関わりなく、エネルギーガイドチェーンの動作中に、特に長いガイド長さもしくは移動経路および/または高速度の場合に、非常に強い力にさらされる。そのような力は、とりわけ、例として自立用途(自立する上部ランが、下方のランの上方の一定の距離に位置する)において、またはチェーンラン間の偏向円弧(deflection arc)において、移動に必要とされる牽引力の伝達から生じるだけではなく、例えば旋回角度を制限するための制限止め(limit stop)においても生じる。サイドプレートがさらされる応力または荷重は、移動されるランの前進後退運動に起因して、根本的に動的であり、また、多くの場合反復的であり、通常は高い割合で周期的である。そのような場合、荷重循環により、疲労損傷のリスクが高まる。
【0007】
実際には、疲労弱点は、通常、サイドプレートの重要な領域における壁または材料の厚さを適切に増大させた耐久性のある設計により、排除される。しかしながら、この設計により、材料費はより高くなり、エネルギーチェーンの自重(intrinsic weight)もより重くなる。この手法は、動作中に伝達されるべき力もまた重量とともに増大するので、理想的ではない。
【0008】
従来この目的のために使用されることはめったになかったが、上述の半径移行部、または例えば断面移行部として丸み付けされた接続線セグメントは、理論上は、荷重支持領域でのプレート本体における応力ピーク(stress peak)または切欠き応力の一定の減少をもたらすことができ、そのため、疲労損傷のリスクを低下させる。
【0009】
本出願人の試験機関における長期試験は、サイドプレートは、高められた限界数の荷重循環後、おそらくは残留する切欠き効果または材料応力により、従来の丸み付けされた断面移行部でも破損する可能性があることを明らかにした。このことは、静的強度または許容荷重をはるかに下回る荷重においても発生し、また場合により、力の流れの中で他の鋭い縁部の移行部が破損する前にも発生する。したがって、従来の円形の半径移行部は、理想的ではないように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第95/04231号
【特許文献2】独国特許発明第3531066号明細書
【特許文献3】米国特許第4813224号明細書
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の第1の目的は、エネルギーガイドチェーンのための一般的なプラスチック材料サイドプレートを、過剰寸法取り(overdimensioning)または追加の材料を介したより頑丈な設計の必要性を伴わずに、それでもなお高められた運用耐久性(疲労強度)をサイドプレートが有するように、さらに発展させることである。さらに、サイドプレートにおける壁厚またはプラスチック材料の質量を減少させることによりさらなる軽量化の可能性が開かれるべきである。
【0012】
本発明によれば、この目的のために、重なり領域、中央領域、または重なり領域と中央領域との間の移行部であろうとなかろうと、荷重支持に役立つように意図されかつ重要であるとされている少なくとも1つの領域に、プレート本体の第1および第2の下位表面を含む、特異的に成形された断面移行部が設けられる。この目的のために、特異的な経路を有する包絡移行曲線によりこの選択された断面移行部が画定されることが提案され、ここで、断面移行部の断面積は、始点から終点まで移行曲線に沿って連続的に減少し、具体的には単調に(対応する曲線関数によって決定されるように)減少する。移行曲線の本発明による経路は、第1の下位表面と第2の下位表面との概念上の交差曲線から距離Aの所に配置された第1の下位表面内または第1の下位表面上の移行曲線の選択された始点に対して、曲線終点がこの交差曲線から予め定められたより大きな距離Zの所で、すなわち1.7・A≦Z≦4.0・A、特に2.3・A≦Z≦3.4・Aの距離Zの所で第2の下位表面内または第2の下位表面上に配置されるように、設定される。
【0013】
したがって、簡潔に言えば、断面における移行部は、単調に下降する曲線に従って成形され、この曲線は、本発明によれば、隣接する2つの表面の交差曲線からのその曲線の終点距離Zが、その曲線の対向する始点距離Aよりも明らかに大きいように、すなわち具体的には1.7≦Z/A≦4.0の範囲内であるように、選択または構築される。
【0014】
そのような断面移行部は、疲労損傷に関して、特に力の流れに関連する局所的な応力集中または応力ピークに関して、慣例的に適用されている四分円丸み付け半径よりも明らかに有益である。断面移行部は、任意の所望の設置スペースまたは制約に合わせて拡大縮小され得る。平坦な表面の場合、そこから始点および終点の距離が考慮される交差曲線は、交線に対応する。例えば円筒形の旋回ピン表面、またはプレートの平面において湾曲した移行表面を含む、他の表面の対の場合、交差曲線は、対照的に、直線ではない。包絡移行曲線は、断面移行部に沿って少なくとも所々でまたは大部分が不変であることが好ましく、すなわち、断面移行部の外側表面に対する包絡線または包絡曲線であることが好ましい。
【0015】
移行曲線は、数学的にまたは関数解析学によって決定されるような滑らかまたは無段階で厳密に単調に下降する曲線に相当することが、特に有利である。曲率半径は、曲線に沿って少なくとも所々で不変であってよい。1.7≦Z/A≦4.0の比率範囲内の始点距離Aおよび終点距離Zを有して所々でまたはその全体で不変の曲率のものである曲線もまた、使用され得る。
【0016】
独立的な態様によれば、本発明はまた、距離比Z/Aに関わりなく、滑らかに(無段階に)かつ厳密に単調に下降しまたその経路に沿った力の流れに関連するものであるその曲線接線または曲線傾斜(または一次微分もしくは微分商)の個々の特性で区別される移行曲線によって画定される、断面移行部に関する。本発明によれば、その曲線接線が(極値的に見たときの)始点においておおよそ45°±10°、特に±5°の角度で第1の表面に交わり、また、その曲線接線が第2の表面に平行な方向において曲線の経路に沿って漸進的にまたは単調に回転しかつ終点においては好ましくは実質的に(±10°、好ましくは±5°)または厳密に第2の表面に平行である、移行曲線が選択される。
【0017】
移行曲線は、例えば切欠き応力を軽減するのに適した方法に従って構築される、連続的に融合する複数の例えば直線状の部分を含み得る。
【0018】
提案される移行部輪郭は、本発明による断面移行部における動的荷重下での初期亀裂のリスクを明らかに低下させる。金属材料科学から知られているように、そのような初期亀裂は、比較的により柔軟性のあるポリマープラスチックにおいても、荷重循環下で発生して、残留破壊点(point of residual fracture)まで成長する場合がある。したがって、本発明に従って成形された断面移行部の使用は、材料のさらなる使用を伴わずに、運用耐久性のために設計されたサイドプレートの製造を可能にする。特に、サイドプレートの既存の設計と比較すると、不必要な過剰寸法取りを回避するまたは計画的に排除することにより、材料節約を達成することも可能である。
【0019】
具体的には、相補的な内側プレートおよび外側プレートまたは交互にオフセットされたプレートなどの、片側だけで重なるように意図されたサイドプレートの場合、経験によれば、重要部位は主としてプレートの主平面に延在する領域部位からプレートの主平面に対して主に垂直に延在する領域内へ力が流れる場所に位置することが分かった。したがって、移行曲線は、サイドプレートの主平面に垂直な第1の下位表面上または第1の下位表面内にその始点を有し、相応にプレート本体の主平面に平行な第2の下位表面内に終点を有して配置されることが好ましい。本発明は、原則的に、荷重循環に起因する疲労損傷に関して重要である任意のサイドプレート移行部に使用され得る。しかし、調査により、かなりの材料節約を達成することができる2つの特に影響を受けやすい箇所が解明された。
【0020】
疲労損傷に関する第1の重要箇所は、重なり領域と典型的にはより厚い中央領域との間の移行部に位置し、すなわち、好ましい実施形態では、始点を含む第1の下位表面は、中央領域に配置され、終点を含む第2の下位表面は、重なり領域に配置される。したがって、断面移行部は、具体的には、この重なり領域のより薄い壁厚と中央領域のより厚い壁厚との間の移行部に設けられ得る。したがって、必要な移動クリアランスを確保するために、対応する適合した輪郭が、サイドプレートの前方端部に与えられ得る。
【0021】
サイドプレートは、特に長いチェーン場合に、また、移動端におけるエネルギーガイドチェーンの最初の3分の1において、強められた力、すなわち交互する牽引力および推進力を伝達する。ここで、壁厚および/または重なり領域の横方向オフセットの突然の変化の結果として、中央領域への両方の移行部は、著しい荷重にさらされる。
【0022】
疲労損傷に関する第2の重要箇所は、止めポケットまたは止め凹部内にあり、この止めポケットまたは止め凹部は、直接隣接または重なるプレートの対応する止め突出部のための対抗止めを形成する。止め突出部は、旋回角度を制限するために、典型的には両旋回方向において止め凹部内に係合する。調査が示したように、止め凹部内の底部移行部は、特に長い自己支持エネルギーガイドチェーンにおいて、破損のリスクが高い。したがって、始点を含む第1の下位表面が、重なり領域における止め凹部の制限止め効果を有する止め表面を構成し、終点を含む第2の下位表面が、片側で止め凹部を閉鎖する底壁を構成することが、さらに特に有利である。止め突出部上での応力集中または応力ピークも軽減されるかまたは材料節約が可能とされるように、関連する止め突出部上の対応する移行曲線との相互作用が、有利である。
【0023】
断面移行部の提案される輪郭はまた、サイドプレートの他の力伝達領域において、例えばサイドプレートの関節継手において使用され得る。したがって、さらなる実施形態は、始点を含む第1の下位表面が、重なり領域内の旋回ピン上に配置され、終点を含む第2の下位表面が、そこから旋回ピンが突出する側壁領域上に配置されることを提供し、この場合、旋回ピンは、関節継手として機能し、かつ、動作中に旋回軸に垂直な強められた力にさらされる。相応な共役輪郭もまた、対応するピン受けに与えられてよいが、サイドプレートの設計によっては、横方向力は必ずしもここで生じない。
【0024】
さらに、提案される移行曲線を、例えば重量を減少させるようにかつ/またはリリーフノッチと同様にプレート本体における応力集中または応力ピークを軽減するように機能する材料凹部に与えることが、本発明の範囲に含まれる。ここで、始点を含む第1の下位表面は、プレート本体の外側表面上に配置されてよく、終点を含む第2の下位表面は、材料凹部内に配置されてよい。そのような材料凹部を用いて応力集中を最小化するための断面移行部の組合せにより、安定性を著しく損なうことのない重量軽減、および/または、サイドプレートにおける力流れの最適化、特に材料凹部がリリーフノッチの態様で機能する場合には切欠き応力の軽減が、可能である。
【0025】
当然ながら、本発明による断面移行部は、上述の表面移行部のうちの1つだけに、または複数の表面移行部に累積的に適用することが可能である。プレート本体の他の領域に断面移行部を有利に適用することも、本発明の範囲に含まれる。
【0026】
コンピュータ支援製品開発での実施に特に容易であるが有益である移行曲線は、円セグメント、特に45°円セグメント、すなわち「八分円(eighth circle)」に相当する。ここで、適切な定半径を有する移行曲線は、終点が2.2・A≦Z≦2.6・Aで交差曲線から距離Zの所に配置され、また、接触円または曲率円などの円セグメントのための構成円(construction circle)が第2の表面に対して接線方向に適用されるように、適用されることが好ましい。第2の表面に対して接線方向である移行曲線の構成円は、特に比率Z/A=2.5に適した半径を有して第2の表面に対して接線方向に適用され得る。望ましい比率Z/Aは、必要とされる円セグメントの半径を決定する。例えば、突出するように(protrudingly)構築された45°円セグメントに関連して、Z/A=約2.5で45°円セグメントからd=0.1・Aの距離において両側上で2つの等距離曲線または平行曲線間に延在する、他の適切な曲線形状を使用することが、同様に可能である。
【0027】
好ましい移行曲線は、少なくとも曲線の始点と終点との間で滑らかかつ厳密に単調に下降する関数に相当するものであり、これは、始点と終点との間のいかなるジャンプまたは残留エッジも回避することが結果的に可能であるためである。例えば、三角関数、特に正接関数が、この目的に適している。
【0028】
プレート本体の第1の外部下位表面と第2の外側下位表面との間の角度は、断面移行部に沿って一定な90°であってよいが、断面移行部はまた、互いに異なる角度を有する表面に適用されることが可能であり、この場合、有利な効果は、とりわけ、90°に近い角度αにおいて、また場合により45°≦α≦135°の範囲内でも得られる。
【0029】
応力集中の問題は、力伝達領域内の互いに実質的に垂直である表面において顕著である。そのような表面の場合、始点での初期部分における移行曲線の経路は、約45°±5°の角度で第1の下位表面に交わる接線(微分もしくは微分商によって、または曲線傾斜として決定される)を有するものとされ得る。場合により、わずかなエッジが、断面移行部を含むこの交差曲線に残るか、または、丸み付けによって回避され得る。さらに、原則的に、移行曲線の経路が、終点における端部セクションにおいてその曲線接線に関して見たときに第2の下位表面に対して実質的に平行に、場合により±5°で配置され、また理想的には厳密に第2の下位表面内に配置されるように、移行曲線の経路を選択することが有利であり、これは、例えばZ/A=2.5で突出する45°円形セグメント弧により、設計の観点からシンプルに達成することができる。
【0030】
原則的に、関連する荷重は主にまたは圧倒的に一軸性であるので、少なくとも1つの断面移行部は、第1および第2の表面の二等分線に対して非対称に配置される。
【0031】
したがって、断面移行部は、移行曲線の終点を含む第2の下位表面が、2つの交互する荷重ケースのうちの少なくとも一方における意図された領域において引張荷重にさらされる場合、すなわちプレート本体の牽引力伝達領域に設けられる場合に、特に有利である。
【0032】
断面移行部は、前述の移行部が 特に射出成形法により熱可塑性プラスチックからプレート本体と一体に作製される場合には、成形ツールの適切な設計により、非常に大量であっても、直接にまた特別な労力を伴うことなしに、作製され得る。したがって、断面移行部は、例えば機械加工によるいかなる後処理も伴わずに作製され得る。
【0033】
本発明は、少なくとも1つの提案された断面移行部を有する、内側プレート、外側プレート、またはオフセットプレート、特に一体プラスチックプレートに関する。したがって、本発明は、2つのそのようなサイドプレートを含むエネルギーガイドチェーンのチェーンリンク、および、全体としてそのようなチェーンリンクから構築されたエネルギーガイドチェーンにも関する。
【0034】
本発明のさらなる特徴および利点は、保護範囲を制限することなしに、単なる例として添付の図に基づいて以下になされる好ましい例示的な実施形態についてのより詳細な説明から推定され得る
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】第1の実施形態によるオフセットサイドプレートの図であり、チェーン内部と反対の側を向いた外側からの側面図である。
【
図1B】第1の実施形態によるオフセットサイドプレートの図であり、
図1A中の断面線A-Aによる長手方向断面図である。
【
図1C】第1の実施形態によるオフセットサイドプレートの斜視図である。
【
図1D】第1の実施形態によるオフセットサイドプレートの図であり、
図1B中の断面Dの部分拡大図である。
【
図1E】第1の実施形態によるオフセットサイドプレートの図であり、
図1A中の断面線B-Bによる断面の部分拡大図である。
【
図2】例えば
図1Dおよび
図1Eに示されている断面移行部の移行曲線の大きく拡大された曲線表現である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1A~1Eは、射出成形法によりプラスチック材料の一体型プレート本体として製造されるオフセットサイドプレート10を示す。サイドプレート10は、横方向に互い違いにされた平坦な2つの重なり領域11A、11Bと、チェーンピッチ長さの半分にわたる中央領域12と、を有する。中央領域12は、重なり領域11A、11Bと比較すると、より厚い壁厚を有する。第1の重なり領域11Aは、接続される予定の同様に構築されたサイドプレート10の適合する接合ピン14との旋回可能な係合のための接合部受け13を有する。接合ピン14は、対向する第2の重なり領域11Bから外側に突出する。同様に寸法取りされた止めポケット15A、15Bが、いずれの場合にも、プレート本体における切欠き部として、重なり領域11A、11Bの円弧形状の端部領域上に設けられる。それぞれの隣接するサイドプレート10の適合する止め突出部16A、16Bが、円筒形の接合ピン14の旋回軸を中心とした相対的な旋回角度を所望の幅に制限するために、各止めポケット15A、15B内に係合する。これは、止め突出部16A、16Bが相補的な止めポケット15A、15B内で停止することによって行われる。例えば、クロスピースのためのサイドプレート10の締結突出部は、示されていない。さらに、サイドプレート10は、サイドプレート10に鏡像対象であって他の点では同様に構築された反対側のサイドプレートを含んで一体に製造されるチェーンリンクの構成要素であってもよい。
【0037】
サイドプレート10の長手方向において、中央領域12は、前方端部表面F11、F12により両側で範囲を定められ、前方端部表面F11、F12は、それぞれの旋回軸の周りでおおよそ円弧形状に延在し、かつ、プレートの主平面Hに対して垂直に配置される(
図1D)。外方にオフセットされた重なり領域11Aの内側は、平坦な表面F21を形成し、内側にオフセットされた重なり領域11Bの外側は、さらなる平坦な表面F22を形成する。表面F21、F22は、プレートの主平面Hに平行に対して配置され、かつ、プレートの主平面Hに対して移動クリアランスを伴ってわずかに横方向に互い違いにされる、すなわち、表面F21、F22は、前方端部表面F11、F12に対して垂直である。第1の重なり領域11Aの表面F21、および、中央領域12の一方の前方端部表面F11は、断面移行部Q1によって接続される。第2の重なり領域11Bの表面F22、および、中央領域12の他方の前方端部表面F12は、断面移行部Q2によって接続される。断面移行部Q1、Q2の断面輪郭は、例えば
図2に詳細に示されている移行曲線Cに対応して、前方端部表面F11、F12に向かう短い足と横方向表面F21、F22に向かうより長い足とを有して、同一の形状に成形される。
【0038】
図1Eは、その輪郭が
図2の移行曲線Cによって定められる、さらなる断面移行部Q3を示す。断面移行部Q3は、重なり領域11Bにおける止めポケット15Bの縁部として制限止め効果を有する止め表面F31と底壁の外側表面F32とを橋渡しし、底壁は、
図1Eではチェーン内部に向かって、重なり領域11Bの残りの部分と比較して相対的に薄い(壁)厚を有して止めポケット15Bを片側で閉鎖する。同一の形状で成形された断面移行部Q3は、いずれの場合にも止め突出部16A、16Bのための嵌合止めとして機能する止め表面上で、両方の止めポケット15A、15B内で両側に設けられる。丸み付けされた縁部(図示せず)の代わりに、断面移行部Q3に対して補完的な断面移行部が、場合により各止め突出部16A、16B上に設けられ得る。
【0039】
移行曲線Cによる断面移行部Q1、Q2、Q3は、サイドプレート10のプレート本体のそれぞれの領域における疲労損傷、特に力の流れに関連する局所的な応力集中または応力ピークに関して最適化されるが、これは、それらの領域が、一定の荷重サイクルおよび/または高められた力に耐えなければならないためである。断面移行部Q1、Q2、またはQ3は、プレート本体の材料厚さの減少もしくは止めポケット15A、15Bの底壁のさらなる縮小を可能にするか、または、一定の材料厚さにおいて、サイドプレート10の隣接する領域の運用耐久性(繰り返される荷重サイクルへの耐性)の向上をもたらす。
【0040】
応力ピークに関して重要でないさらなる領域において、重なり領域11A、11Bおよび中央領域12は、面取り部として丸み付けされるかまたは慣例的に四分円に対応する半径を有する断面移行部をさらに有する。ここでは、慣例的な曲半径は、例として、サイドプレート10の上下の幅狭の側面への重なり領域11A、11Bの横方向表面F21、F22の移行部に対して(
図1C)、または、サイドプレートの外側側表面への前方端部表面F11、F12の移行部に対して(
図1D)、示される。
【0041】
図2は、断面移行部Q1、Q2またはQ3を構築するための好ましい移行曲線Cを示し、ここで、移行曲線Cは、それぞれのサイズ比に合わせて拡縮される。
図2から明らかなように、一方の下位表面F11、F21、F31上の移行曲線Cの始点PAは、いずれの場合にも、第1の下位表面とこの場合では垂直な下位表面のために垂直である第2の下位表面F12、F22、F32との交差曲線から距離Aの所に位置し、また、第2の下位表面F12、F22、F32上の移行曲線Cの終点PZは、この場合では下位表面F11、F21、F31に垂直である2つの下位表面の交差曲線から距離Zの所に位置する。
図2では、終点PZの距離Zは、約Z=2.5・Aになり、移行曲線Cは、45°円弧セグメントであり、その半径Rは、円弧セグメントを形成する円が正確にZ=2.5・Aの所で第2の下位表面F12、F22、F32に接線方向に交わるかまたは点PZにおいてのみ第2の下位表面F12、F22、F32に接触するように、所望の距離Aに対して選択される。したがって、断面移行部Q1、Q2またはQ3の断面積は、始点PAから終点PZまで移行曲線Cに沿って、この場合では厳密に単調に下降する曲線に従って、連続的に減少することが、同時に確実とされる。移行曲線Cは、2.3・A≦Z≦3.4・Aが認められるように選択されることが好ましく、2.2・A≦Z≦2.6・Aが認められるように選択されることが特に好ましい。特に一定の曲率半径を含まない他の関数、例えば正接曲線(図示せず)、例としてx=0~x(PZ)および1.25≦x(PZ)≦1.4の接線(x)も考慮され得るか、または、Z/A≒3.4でありかつ曲線が約45°でPAにおいて第1の下位表面F11、F21、F31に交わるように適用され得る。後者は、(
図1A~1Eにおけるような)垂直な表面の移行部に関して特に考慮され得る。曲線の接線が、第2の下位表面F12、F22、F32と平行な方向において曲線の経路に沿って連続的に、好ましくは厳密に単調に回転するのであれば、他の三角関数、例えば楕円形のセグメントも考慮され得る。
【0042】
力の流れを最適化するのに有利な移行曲線は、Z/A=約2.5の45°円セグメントから距離d=0.1・Aの所において両側で2本の等距離曲線または平行曲線間に延在する。限界値の考慮に基づくと、移行曲線Cは、例えば約45°±5°の角度で第1の下位表面F11、F21、F31に交わる始点PAにおける接線を有し、この場合、残りの縁部は、設計を単純にするために、この時点では重要でないものとして残され得る。
【0043】
図3A~3Bは、内側プレート30Aおよび外側プレート30Bを含む第2の例示的な実施形態を示す。2つの重なり領域31A、31Bおよび中央領域32Aを含む内側プレート30Aは、プラスチック材料で一体に作製される。2つの重なり領域31C、31Dおよび中央領域32Bを含む外側プレート30Bは、射出成形ステップにおいて同様に一体に作製される。内側プレート30Aおよび外側プレート30Bは、いずれの場合にも、それらの垂直方向中心平面に対して対称であり、かつ、この場合では内側プレート30A上にある接合部受け33とこの場合では外側プレート30B上にある接合ピン34とを活用して連なりを形成するために交互の順序で互いに旋回可能に接続される。内側プレート30Aは、旋回軸を中心として回転対称に分散された、全く同じに成形された4つの止めポケット35A、35B、35C、35Dを、外側上に有する。外側プレート30Bは、旋回角度を制限する目的のために前述のポケットに一致して係合するように突出する4つの止め突出部36A、36B、36C、36Dを、内側上に有する。
【0044】
図1Dからの原則と同様に、
図3Aによれば、内側プレート30Aの中央領域32Aの前方端部表面F11は、断面移行部Q1と合流して、重なり領域31A、31Bの前方端部表面F11に垂直な横方向表面F21になる。断面移行部Q1は、
図2からの移行曲線Cに従って、対応して拡縮される。対応して類似した態様で、前方端部表面F12は、外側プレート30Bの中央領域32B(
図3B)から断面移行部Q1と合流して、重なり領域31C、31Dの横方向表面F21になり、これらの重要な領域での疲労損傷のリスクを低下させる。
【0045】
図1A~1Eとは対照的に、外側プレート30Bは、切欠き応力を減少させるために、ここでは本発明によるさらなる断面移行部Q4を止め突出部36A、36B、36C、36Dに有する。断面移行部Q4は、いずれの場合にも、止め突出部36A、36B、36C、36Dの基部において円周方向に配置され、かつ、
図2からの拡縮された移行曲線Cに対応する。場合により、
図1Eに対応する断面移行部もまた、止めポケット35A、35B、35C、35Dにおいて使用され得る。
【0046】
図3A~3Bは、内側プレート30Aの中央領域32Aの外側上の2つの材料凹部37Aと、いずれの場合にも回転対称に配置されかつ全く同じに成形された外側プレート30B内の4つの材料凹部37Bとをさらに示す。これらの材料凹部37A、37Bへの内側の移行部に対して
図2に示されたような移行曲線Cに従う本発明による断面移行部Q5を使用することにより、内側プレート30Aおよび外側プレート30Bのプレート本体におけるより良好な材料利用が可能になり、したがって、それと同時に、構成要素質量、またはプレート1つにつき必要とされるプラスチック材料の量のかなりの削減が可能になり、そのため、材料費が低減され、また場合により射出成形機のサイクル時間が短縮される。
【0047】
エネルギーガイドチェーンのそれ自体知られている他の特徴に関しては、そのうちのいくつかはここでは示されていないが、簡潔さのために、特許文献2(オフセットプレートに関する)または特許文献1(内側/外側プレートに関する)が最後に参照される。内側および外側という用語は、エネルギーガイドチェーン(図示せず)のチェーンリンクにおける線材のための受入れ空間に関連して、以下で理解されるべきである。
【符号の説明】
【0048】
10 サイドプレート(オフセット)
11A、11B 重なり領域
12 中央領域
13 接合部受け
14 接合ピン
15A、15B 止めポケット
16A、16B 止め突出部
F11、F21、F31 第1の下位表面
F12、F22、F32 第2の下位表面
H プレートの主平面
Q1、Q2、Q3、Q4、Q5 断面移行部
C 移行曲線
PA 始点(移行曲線)
PZ 終点(移行曲線)
R 半径(45°円セグメント)
30A 内側プレート
30B 外側プレート
31A、31B 重なり領域(内側プレート)
31C、31D 重なり領域(外側プレート)
32A、32B 中央領域
33 接合部受け
34 接合ピン
35A、35B、35C、35D 止めポケット
36A、36B、36C、36D 止め突出部
37A、37B 材料凹部
【手続補正書】
【提出日】2021-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】