(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(54)【発明の名称】光防御用植物由来組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220314BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544845
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 IL2020050150
(87)【国際公開番号】W WO2020161720
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519011865
【氏名又は名称】アリエル サイエンティフィック イノベーションズ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521339072
【氏名又は名称】ザ デッド-シー アンド アラバ サイエンス センター
【氏名又は名称原語表記】THE DEAD-SEA & ARAVA SCIENCE CENTER
【住所又は居所原語表記】Masada National Park, Doar-Na Yam HaMelach, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン-ヴァリッド ショシャナ
(72)【発明者】
【氏名】コーヘン ガイ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AD201
4C083AD202
4C083CC19
4C083EE01
4C083EE17
4C083FF01
(57)【要約】
UV吸収性材料、任意で1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコース、をウルシの葉および/または未熟果から得るための方法、ならびに当該方法で得られるUV吸収性材料、および当該UV吸収性材料を含む組成物を本明細書に記載する。本方法は、ウルシの葉および/または未熟果と水混和性有機溶媒とを接触させ、水混和性有機溶媒を除去することを含む。本明細書に記載の組成物は、組成物中のUV吸収性材料の濃度が少なくとも0.005mg/mlである日焼け止め組成物のみならず、医薬用および/または化粧用の組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV吸収性材料と、皮膚医学的に許容される担体とを含み、前記UV吸収性材料がウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果の抽出物であり、前記UV吸収性材料の組成物中の濃度が少なくとも0.005mg/mlである、日焼け止め組成物。
【請求項2】
前記組成物中の前記UV吸収性材料の濃度が、波長300nmで路長1mmの照射の少なくとも90%を吸収するのに十分な量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ウルシがRhus coriariaを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記UV吸収性材料が、複数のガロイル置換基の結合したグルコース部分を有する化合物を少なくとも1種含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の前記化合物が1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記UV吸収性材料が、前記ウルシの葉および/または未熟果と水混和性有機溶媒とを接触させ、前記水混和性有機溶媒を除去して、UV吸収性材料を得ることを含む方法によって得られ得るものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記水混和性有機溶媒がC
1-4アルコールを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記水混和性有機溶媒がエタノール、アセトンおよび/またはグリセリンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記接触が、ソックスレー抽出器を用いて実施する抽出を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記接触が、前記ウルシの葉および/または未熟果の乾燥重量1g当たり5~40mlの前記水混和性有機溶媒の比率を用いて実施される、請求項6~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記方法が、極性溶媒と非極性溶媒との間の前記UV吸収性材料の分配と、前記極性溶媒に分配される画分の回収とをさらに含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記非極性溶媒がアルカンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記アルカンがヘキサンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記極性溶媒が水を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記方法が、前記極性溶媒に分配された画分の水と水不混和性極性有機溶媒との間の分配、および前記水不混和性極性有機溶媒に分配される画分の回収をさらに含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記水不混和性極性有機溶媒がエステルを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記エステルが酢酸エチルを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記方法が、前記水不混和性極性有機溶媒に分配される画分の水を含む溶媒との接触による、前記UV吸収性材料の結晶化をさらに含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記方法が、前記UV吸収性材料のカラムクロマトグラフィーによる精製をさらに含む、請求項6~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
ウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果から単離された1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースと、皮膚医学的に許容される担体とを含み、前記1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの組成物中の濃度が少なくとも0.005mg/mlである、日焼け止め組成物。
【請求項21】
前記組成物中のUV吸収性材料の濃度が、波長300nmで路長1mmの照射の少なくとも90%を吸収するのに十分な量である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
ウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果から抽出されたUV吸収性材料と、皮膚医学的に許容される担体とを含む、医薬用または化粧用の組成物。
【請求項23】
前記ウルシがRhus coriariaを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
複数のガロイル置換基の結合したグルコース部分を含む化合物を少なくとも1種含む、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1種の前記化合物が1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
皮膚老化および創傷からなる群より選ばれる状態の治療用である、請求項22~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記化粧用の組成物が、皮膚の若返り用組成物および/またはピーリング用組成物である、請求項22~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
UV吸収性材料を得るための方法であって、ウルシ(Rhuss spp.)の葉および/または未熟果と水混和性有機溶媒とを接触させ、前記水混和性有機溶媒を除去して、UV吸収性材料を得ることを含む方法。
【請求項29】
前記水混和性有機溶媒がC
1-4アルコールを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記水混和性有機溶媒がエタノール、アセトンおよび/またはグリセリンを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記接触が、ソックスレー抽出器を用いて実施する抽出を含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記接触が、前記ウルシの葉および/または未熟果の乾燥重量1g当たり5~40mlの前記水混和性有機溶媒の比率を用いて実施される、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
極性溶媒と非極性溶媒との間の前記UV吸収性材料の分配と、前記極性溶媒に分配された画分の回収とをさらに含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記非極性溶媒がアルカンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アルカンがヘキサンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記極性溶媒が水を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記極性溶媒に分配される画分の水と水不混和性極性有機溶媒との間の分配、および前記水不混和性極性有機溶媒に分配される画分の回収をさらに含む、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記水不混和性極性有機溶媒がエステルを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記エステルが酢酸エチルを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記水不混和性極性有機溶媒に分配される画分の水を含む溶媒との接触による、前記UV吸収性材料の結晶化をさらに含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記UV吸収性材料のカラムクロマトグラフィーによる精製をさらに含む、請求項28~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ウルシがRhus coriariaを含む、請求項28~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記UV吸収性材料が、複数のガロイル置換基の結合したグルコース部分を有する化合物を少なくとも1種含む、請求項28~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1種の前記化合物が1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記UV吸収性材料中の前記1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの純度が少なくとも95重量%である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項28~45のいずれか一項に記載の方法で得られたUV吸収性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年2月7日出願の米国仮特許出願第62/802,219号について、優先権に基づく権利を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、そのいくつかの実施形態において、光防御、特に植物材料から得られ得るUV防止用の組成物に関するが、これらに限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
表皮の表面および内部層に直接影響を与える太陽照射、特にその紫外B(UVB)領域に対する慢性的な曝露は、日焼け、紅斑、免疫応答の変調および外因性皮膚老化の増加を含む、複数の病理生理学的変化と関連付けられている[Matsurama & Anathaswamy, Toxicol Appl Pharmacol 2004, 195:298-308、Kraemer, Proc Natl Acad Sci USA 1997, 94:11-14、Lavker et al., J Am Acad Dermatol 1995, 32:53-62、Portugal-Cohen et al., Exp Dermatol 2009, 18:781-789]。重要な点は、UVBは細胞のアポトーシスを誘導し、表皮細胞のDNAを損傷して、さらに皮膚を傷つけ得る点であり、これは皮膚癌の発生の主要リスクの1つと考えられている[Tuorkey, Eur J Cancer Prev2015, 24:430-438]。
【0004】
日焼け止めは太陽照射に対する防御として使用されており、皮膚癌に対抗するための重要なツールとしてのみならず、太陽照射によって誘導される他の皮膚の不調、例えば、老化、皴の形成、望まない色素沈着およびコラーゲンの消失、の緩和も目的とする[Mancebo et al., Dermatol Clin 2014, 32:427-428]。しかしながら、現在使用されている市販の日焼け止めは皮膚を貫通して浸透し、循環器系に到達し、体に全身性の損傷をもたらすことが報告されている[Touitou & Godin, Clin Dermatol 2008, 26:375-379]。日焼け止めで処置され、続いてUV照射に暴露された皮膚は、逆説的であるが、劇的に増加したROS(活性酸素種)の存在を示す[Hanson et al., Free Radic Biol Med 2006, 41:1205-1212]。これは、日焼け止めの最外皮膚層を貫通する能力と、いくつかの日焼け止めのラジカルを好む能力とを示している。さらに日焼け止めの入った化粧品を使用する個人の尿および母乳から日焼け止めおよびその分解副産物が検出されている[Hayden et al., Lancet 1997, 350:863-86]。いくつかの日焼け止めについては、エストロゲン受容体や甲状腺受容体に結合し、活性化する能力も報告されている[Gilbert et al., Int J Cosmet Sci 2013, 35:208-219]。
【0005】
日焼け止めは有意な毒性をヒトの使用者に示すだけでなく、泳者の付けた日焼け止めや排水によって運ばれた日焼け止めによる汚染は、サンゴやサンゴ礁に対して生態学的且つ実存的な脅威となる[Danovaro et al., Environ Health Perspect 2008, 116:441-447]。
【0006】
ウルシ(Sumac)(シリア語で赤という意味)は、Rhus属およびウルシ科(Anacardiaciae family)の関連属に属する植物である。
【0007】
特によく知られたウルシの種であるRhus coriariaは、典型的には高さ1~3メートルの低木または小木であり、その葉は小葉が9~15枚の奇数羽状複葉であり、その花序はまとまった直立円錐花序であり、小さな緑がかった白い花を付け、その果実は長軟毛で、赤い、単一種子の石果である。Rhus coriariaは地中海のマキーおよび森林に野生で生息し、深く、よく乾燥した土壌に生育する。
【0008】
ウルシの主たる用途は、中近東で一般的なスパイスであり、酸っぱい果実から作られる。未成熟化および種子も食される。さらにウルシは着色成分およびタンニンを含み、これらは上等な皮革の染色およびなめしに使用され、シルクやウールといったタンパク質が主成分の織物材料を染色することもできる[Shabbir, J Animal Plant Sci2012, 22:505-512]。植物の異なる部分から様々な色の染料を調製することができる。さらに種子から抽出した油はろうそくの製造に用いることができる。ウルシは、加水分解可能なタンニン(ガロタンニンを含む)、揮発性油、アントシアニン、没食子酸、ならびにミリセチン、ケルセチンおよびケンフェロール等のフラボノイドを保持することが報告されている[Mavlyanov et al., Chem Nat Comp 1997, 33:209、Guvenc & Koyuncu, Turkish J Med Sci 1994, 20:11-13、el-Sissi et al., Planta Med 1972, 21:67-71、Mehrdad et al., J AOAC Int 2009, 92:1035-1043]。
【0009】
ウルシは次の性質:抗微生物作用[Adwan et al., Asian Pac J Trop Med 2010, 266-269]、抗真菌作用[Hashem & Alamri, Saudi J Biol Sci 2010, 17:167-175]、抗酸化および軟骨防御作用[Panico et al., J Med Plant Res 2009, 3:855-861]、化学損傷時のDNA保護作用[Chakraborty et al., Mut Res 2009, 661:10-17]、血糖降下作用[Giancarlo et al., Nat Prod Res 2006, 20:882-896]、抗虚血および血管弛緩作用[Beretta et al., Planta Med 2009, 75:1482-1488]を有することが報告されており、さらに非変異原生である[Al-Bataina et al., J Trace Elem Med Biol 2003, 17:85-90]。
【0010】
米国特許出願公開第2010/0215630号明細書は、病原となる虫類に対する効果を保存する目的で、虫および微生物に対する薬剤を紫外線照射から保護するためにアニス、アストラガルス、香菜、桂皮、丁子、ディル、コロハ、ナツシロギク、葛、甘草、シャクヤク、マジョラム、オレガノ、パプリカ、ペパーミント、ナンキンハゼ、ローズマリー、セージ、スペアミント、立浪草、セントジョンズワート、ウルシ、タラゴン、タイムおよび/またはカノコソウの抽出物を使用することを記載する。
【0011】
「タンニン」という用語は、典型的にはタンニンのヒドロキシル基またはカルボキシル基を介して、種々の分子と強力な複合体を形成することのできるポリフェノール様生物分子を意味する。
【0012】
植物由来のタンニンは、典型的には、次の主要な2つのクラスの一方に属する:フェノール基によってエステル化された中心炭水化物を含む、加水分解可能なタンニン(没食子酸またはエラグ酸由来)、およびフラボノイド類の縮合重合によって形成される縮合タンニン。没食子酸エステルを含む加水分解可能タンニンは、「ガロタンニン」とも呼ばれる。
【0013】
「タンニン酸」という用語には、グルコースまたはキナ酸のポリガロイルエステルが含まれる。市販のタンニン酸は、通常、タラ(Tara spinosa)の鞘、ヌルデ(Rhus chinensis)またはアレッポカシ(Aleppo oak)(Quercus infectoria)の没食子、あるいはスンマーク(tanner’s sumac)(Rhus coriaria)の葉から抽出される。原料に応じて、多くのガロイル部分は典型的には2~12の範囲であるが、タンニン酸の化学式は、多くの場合、慣例として、デカガロイルグルコースの式で表される。
【0014】
グルコースのガロイルエステルで構成された分子が20の植物の科から500超同定されており、その範囲は非常に単純な、分子量が332Daである1-モノガロイル-β-グルコース(グルコガリン)から、分子量が4000Da超の複雑なポリマーにまで及ぶ。
【0015】
Rothman & Henningsen[J Invest Dermatol 1947, 9:307-313]は、p-アミノ安息香酸の日焼け防止効果について記載しており、このような目的でタンニン酸が頻繁に使用されているものの、UV照射への暴露の際には急激な分解という問題が発生することを記載している。
【0016】
米国特許第4,104,368号明細書は、長鎖四級アンモニウム塩と日除け効果を提供する酸性部分(例えば、p-アミノ安息香酸およびその誘導体、サリチル酸およびその誘導体、マロン酸およびその誘導体、桂皮酸およびその誘導体、タンニン酸および没食子酸、ナフトールスルホン酸、ならびにアントラニル酸)を含む、整肌および日除け効果を提供するための組成物について記載している。
【0017】
タンニン酸は、米国特許第5,169,624号、第8,703,753号、第9,737,472号、および第10,064,797号の明細書において、日焼け止め処方用のUVフィルター剤のリストに含まれている。
【0018】
米国特許第10,111,821号明細書は、局所的に投与した組成物を用いて電磁放射スペクトルの一部を除くことで、特定波長の電磁放射を投与する光療法を記載している。広範囲にわたる紫外線吸収分子がそこに記載されており、ペンタガロイルグルコースも含まれる。
【0019】
米国特許第7,776,915号明細書は、年老いた皮膚の外観を向上させるための局所用組成物であって、リポイド酸、カルニチンおよびカルノシンと、任意の追加成分、例えば、抗酸化剤、抗糖化剤、コラーゲン促進剤、ミトコンドリア系蘇生剤(mitochondrial resuscitants)、チオレドキシン、グルタチオン、NADH、抗炎症剤、脱色素剤、皮膚保護脂質および日焼け止め剤を含むものを記載している。ペンタガロイルグルコースは、抗炎症剤の長いリストの中に含まれている。
【0020】
米国特許第4,741,915号明細書は、ペンタガロイルグルコース等のガロタンニン類の食品や化粧品(シェービングフォーム、アフターシェーブ、ボディローション、メイク落とし用乳液、顔用クリーム、日焼けローション、マスク等)における抗酸化剤としての使用を記載している。
【0021】
さらなる背景技術には、Berardini et al.[Rapid Commun Mass Spectrom 2004, 18:2208-2216]、Chuarienthong et al.[Int J Cosmet Sci 2010, 32:99-106]、Cohen et al.[Negev, Dead Sea and Arava Studies 2015, 7:66-74]、Haddock et al.[J Chem Soc Perkin Trans 1 1982, 0:2535-2545]、Nichols & Katiyar[Arch Dermatol Res 2010, 302:71-83]、Ozer et al.[J Ethnopharmacol2015, 161:86-91]、Schuch et al.[Free Rad Biol Med 2017, 107:110-124]、Schwack & Rudolph[J Photochem Photobiol B Biol 1995, 28:229-234]、およびWineman et al.[J Herbal Med 2015, 5:199-206]が含まれる。
【発明の概要】
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、ウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果から抽出された材料を含み、当該材料は紫外線および/またはブルーライトを吸収する組成物が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、UV吸収性材料と、皮膚医学的に許容される担体とを含み、前記UV吸収性材料がウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果の抽出物であり、前記UV吸収性材料の組成物中の濃度が少なくとも0.005mg/mlである、日焼け止め組成物が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、ウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果から単離された1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースと、皮膚医学的に許容される担体とを含み、前記1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの組成物中の濃度が少なくとも0.005mg/mlである、日焼け止め組成物が提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、ウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果から抽出されたUV吸収性材料と、皮膚医学的に許容される担体とを含む、医薬用または化粧用の組成物が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、ウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果から単離された1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースと、皮膚医学的に許容される担体とを含む、医薬用または化粧用の組成物が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、UV吸収性材料を得るための方法であって、ウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果と水混和性有機溶媒とを接触させ、前記水混和性有機溶媒を除去して、UV吸収性材料を得ることを含む方法が提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースを得るための方法であって、ウルシ(Rhus spp.)の葉および/または未熟果と水混和性有機溶媒とを接触させ、前記水混和性有機溶媒を除去して、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースを得ることを含む方法が提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、任意の対応する実施形態に基づき、本明細書において記載された方法によって得られたUV吸収性材料が提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、任意の対応する実施形態に基づき、本明細書において記載された方法によって得られた1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースが提供される。
【0031】
本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、ウルシはRhus coriariaを含む。
【0032】
組成物に関連する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、組成物中のUV吸収性材料の濃度は波長300nmで路長1mmの照射の少なくとも90%を吸収するのに十分な量である。
【0033】
本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、UV吸収性材料は、複数のガロイル置換基の結合したグルコース部分を有する、少なくとも1種の化合物を含む。
【0034】
複数のガロイル置換基の結合したグルコース部分を有する、少なくとも1種の化合物に関連する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、少なくとも1種の化合物は1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースを含む。
【0035】
1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースを含むUV吸収性材料の本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、UV吸収性材料中の1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの純度は、少なくとも95重量%である。
【0036】
医薬用または化粧用の組成物の本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、組成物は皮膚老化および創傷からなる群より選ばれる病態の治療養である。
【0037】
化粧用組成物に関する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、化粧用組成物は皮膚の若返り用組成物および/またはピーリング用組成物である。
【0038】
UV吸収性材料に関する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、UV吸収性材料は、ウルシの葉および/または未熟果と水混和性有機溶媒とを接触させ、前記水混和性有機溶媒を除去して、UV吸収性材料を得ることを含む方法によって得られ得る。
【0039】
方法に関する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、水混和性有機溶媒はC1-4アルコールを含む。
【0040】
方法に関する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、水混和性有機溶媒はエタノール、アセトンおよび/またはグリセリンを含む。
【0041】
方法に関する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、ウルシの葉および/または未熟果と水混和性有機溶媒との接触は、ソックスレー抽出器を用いて実施する抽出を含む。
【0042】
方法に関する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、ウルシの葉および/または未熟果と水混和性有機溶媒との接触は、ウルシの葉および/または未熟果の乾燥重量1g当たり5~40mlの前記水混和性有機溶媒の比率を用いて実施される。
【0043】
方法に関する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、方法は、極性溶媒と非極性溶媒との間のUV吸収性材料の分配と、極性溶媒に分配された画分の回収とをさらに含む。
【0044】
極性溶媒と非極性溶媒との間の分配を含む方法の、本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、非極性溶媒はアルカンを含む。
【0045】
極性溶媒と非極性溶媒との間の分配を含み、非極性溶媒はアルカンを含む方法に関連した本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、アルカンはヘキサンを含む。
【0046】
極性溶媒と非極性溶媒との間の分配を含む方法に関連した本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、極性溶媒は水を含む。
【0047】
極性溶媒と非極性溶媒との間の分配を含む方法に関連した本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、方法は極性溶媒に分配された画分の水と水不混和性極性有機溶媒との間の分配、および水不混和性極性有機溶媒に分配された画分の回収をさらに含む。
【0048】
水と水不混和性極性有機溶媒との間の分配を含む方法に関連した本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、水不混和性極性有機溶媒はエステルを含む。
【0049】
水とエステルを含む水不混和性極性有機溶媒との間の分配を含む方法に関連した本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、エステルは酢酸エチルを含む。
【0050】
水と水不混和性極性有機溶媒との間の分配を含む方法の、本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、方法は水不混和性極性有機溶媒に分配される画分を水を含む溶媒と接触させることでUV吸収性材料を結晶化させることをさらに含む。
【0051】
方法に関する本明細書に記載のいくつかの任意の実施形態によると、方法は、前記UV吸収性材料のカラムクロマトグラフィーによる精製をさらに含む。
【0052】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料を、本発明の実施形態の実践または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面を詳細に参照して示す細部は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。同様に、図面と共に説明を見ることで、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、(イスラエル内の)種々の地理的位置から得たRhus coriariaの枝、小枝、葉、未熟果、熟果および根のエタノール抽出物(0.1mg/ml)のSPF値を示す棒グラフである。
【
図2】
図2は、本発明の例示的な実施形態に従って、Rhus coriariaの葉から例示的UV吸収物質(SH-101)を抽出するための方法を模式的に示す。
【
図3】
図3は、SPF値、および
図2に示したように50グラムの乾燥Rhus coriaria葉粉末から抽出した材料のパーセント収率を、エタノール抽出物を得るために用いたエタノール容量(単位:ml)の関数としてを示すグラフである。
【
図4A】
図4A~4Cは、本発明のいくつかの実施形態に基づき、Rhus coriariaの葉から抽出した例示的UV吸収物質(SH-401)(
図4Aと4B)のHPLCクロマトグラム(吸収は290nm)、ならびにHPLCクロマトグラムの主要ピークと関連付けられる例示物質のUV吸収スペクトル(
図4C)を示す(ここに提示した結果は3回の実験の代表的なものである)。
【
図4B】
図4A~4Cは、本発明のいくつかの実施形態に基づき、Rhus coriariaの葉から抽出した例示的UV吸収物質(SH-401)(
図4Aと4B)のHPLCクロマトグラム(吸収は290nm)、ならびにHPLCクロマトグラムの主要ピークと関連付けられる例示物質のUV吸収スペクトル(
図4C)を示す(ここに提示した結果は3回の実験の代表的なものである)。
【
図4C】
図4A~4Cは、本発明のいくつかの実施形態に基づき、Rhus coriariaの葉から抽出した例示的UV吸収物質(SH-401)(
図4Aと4B)のHPLCクロマトグラム(吸収は290nm)、ならびにHPLCクロマトグラムの主要ピークと関連付けられる例示物質のUV吸収スペクトル(
図4C)を示す(ここに提示した結果は3回の実験の代表的なものである)。
【
図5】
図5は、Rhus coriariaの葉から抽出した例示的UV吸収化合物(ペンタガロイルグルコース)の、NMR解析で決定した構造表す。
【
図6】
図6は、Rhus coriariaから単離した例示物質(SH-401)、粗Rhus coriaria抽出物、および市販のUVBフィルター剤の、濃度0.01mg/ml(n=3)のSPF値を示す棒グラフである。
【
図7】
図7は、SH-401(濃度が0.01mg/ml)のSPF値の、SH-101のフィルムをUV照射に暴露した時間に対する関数(n=3)を示す棒グラフである。
【
図8A】
図8A~8Cは、SH-401(化合物)濃度の関数として示した、ヒト皮膚移植片をSH-401とインキュベートしたときの(MTTアッセイで求めた)表皮細胞生存率(
図8A)、および0.02、0.1、0.2、1または2μg/cm
2のSH-401または市販のSPF30の組成物(Dr.Fisher)によって事前に処理したヒト皮膚移植片の、UVB照射(350mJ/cm
2)への暴露から24時間後の細胞におけるアポトーシスのレベル(
図8B)とTNFαのレベル(
図8C)を示すグラフである(*は非照射ベヒクル対照(0)に対するp<0.05、#は照射ベヒクル対照(UV)に対するp<0.05、n=3)。
【
図8B】
図8A~8Cは、SH-401(化合物)濃度の関数として示した、ヒト皮膚移植片をSH-401とインキュベートしたときの(MTTアッセイで求めた)表皮細胞生存率(
図8A)、および0.02、0.1、0.2、1または2μg/cm
2のSH-401または市販のSPF30の組成物(Dr.Fisher)によって事前に処理したヒト皮膚移植片の、UVB照射(350mJ/cm
2)への暴露から24時間後の細胞におけるアポトーシスのレベル(
図8B)とTNFαのレベル(
図8C)を示すグラフである(*は非照射ベヒクル対照(0)に対するp<0.05、#は照射ベヒクル対照(UV)に対するp<0.05、n=3)。
【
図8C】
図8A~8Cは、SH-401(化合物)濃度の関数として示した、ヒト皮膚移植片をSH-401とインキュベートしたときの(MTTアッセイで求めた)表皮細胞生存率(
図8A)、および0.02、0.1、0.2、1または2μg/cm
2のSH-401または市販のSPF30の組成物(Dr.Fisher)によって事前に処理したヒト皮膚移植片の、UVB照射(350mJ/cm
2)への暴露から24時間後の細胞におけるアポトーシスのレベル(
図8B)とTNFαのレベル(
図8C)を示すグラフである(*は非照射ベヒクル対照(0)に対するp<0.05、#は照射ベヒクル対照(UV)に対するp<0.05、n=3)。
【
図9】
図9は、0、0.02、0.1、0.2、1または2μg/cm
2のSH-101で処理し、UVB照射有りまたは無しの皮膚移植片における、DCFDA(ジクロロフルオレセイン二酢酸)アッセイで決定したROS(活性酸素種)発生レベル(任意単位)を示す棒グラフである(n=3、*はUVBおよび0μg/cm
2のSH-101処理に対するp<0.05)。
【
図10】
図10は、0、0.02、0.1、0.2、1または2μg/cm
2のSH-101で処理し、UVB照射有りまたは無しの皮膚移植片における、ELISAアッセイによってMDA(マロンジアルデヒド)濃度として測定した脂質過酸化レベルを示す棒グラフである(n=3、*はUVBおよび0μg/cm
2のSH-101処理に対するp<0.05)。
【
図11】
図11は、DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)色変化に基づき決定された、SH-401が0.1、0.5または1重量%の濃度で活性酸素種を除去する能力(マイクロモルのTorolox相当単位として測定)を示す棒グラフである(0%のSH-401のベヒクルを対照とした。n=3、*はベヒクル対照に対するp<0.05)。
【
図12】
図12は、UVB照射(350mJ/cm
2)および/または2μg/cm
2のSH-401(化合物)とのインキュベーションによる処理後の皮膚移植片の、COMET DNA断片化アッセイに付した表皮細胞の画像である。(皮膚の処理後に表皮を引きはがし、単細胞試料をEDTAで得た。画像は3回の実験の代表であり、矢印は損傷を受けた細胞の「テール部」を示す。)
【
図13】
図13は、0、0.01、0.02、0.2または2μg/cm
2のSH-401で処理後、350mJ/cm
2のUVB照射有りまたは無しの皮膚移植片から単離した表皮細胞における、ELISAによって決定したシクロブタンピリミジン二量体(CPD)レベルを示す棒グラフである(n=3、*は非照射ベヒクル対照に対するp<0.05、#は照射ベヒクル対照に対するp<0.05)。
【
図14】
図14のA~Dは、350mJ/cm
2のUVB照射(
図14Bと14D)またはUVB照射なし(
図14Aと14C)であり、SH-401とのインキュベーション(
図14Cと14D)またはSH-401とのインキュベーションなし(
図14Aと14B)の皮膚移植片の組織学的画像を示す(対照=SH-401またはUVBに暴露されていない対照試料、
図14B中の矢印は注目すべき特徴を強調するものであり、全ての画像が3つの試料を代表するものである)。
【
図15】
図15のAおよびBは、UVB照射および記載の濃度のSH-101に暴露されたか、あるいはSH-101なしの暴露(UVB)に付された皮膚移植片における、ELISAによって決定したプロコラーゲンレベル(
図15A)およびMMP1レベル(
図15B)(対照=SH-401またはUVBに暴露されていないベヒクル対照試料、*はベヒクル対照に対するp<0.05、#はUVBのみの群に対するp<0.05、n=3)。
【
図16】
図16は、SH-101またはベヒクル(エタノール)に24時間曝露した、創傷を誘導したコンフルエントなHaCaT細胞(2本の縦線の間)の顕微鏡画像である(対照=SH-401またはベヒクルに暴露されていない対照試料、全ての画像が3つの試料を代表するものである)。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、光防御、より具体的には、これに限定されるものではないが、植物材料から得ることのできるUV防除組成物に関する。
【0056】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、必ずしもその用途が、以下の記載に示すまたは実施例で例示する詳細に限定されるものではないことを理解するべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、さまざまな手段で実施または実行することが可能である。
【0057】
本発明者らは、有害なUV照射の防除に特に効果的な薬剤(例:日焼け止め剤)として機能し、驚くべきことに、アンチエイジングおよび創傷治癒効果といった有益な付加的効果を皮膚細胞に対して発揮する天然のUV吸収性材料をウルシから見出した。
【0058】
本発明を実践に移すに当たり、本発明者らは、ペンタガロイルグルコース等の特定のUV吸収化合物を単離するための効果的な方法さらに見出した。
【0059】
次に図面に参照する。
図1は、ウルシの葉および未熟果のエタノール抽出物が、当該植物の他の部分よりも効果的に有害なUV照射を防除することを示す。
【0060】
図2は、本発明の例示的な実施形態に基づく、例示的なUV吸収物質(SH-101)をウルシの葉から抽出する方法を示す。
図4A~4Bは、SH-401の純度およびUV吸収を示す。
図3は、UV吸収性材料の抽出効率に対するエタノール容量の効果を示す。
【0061】
図5は、考慮すべきスペクトル解析の証拠から決定した、SH-401(ペンタガロイルグルコース)の構造を示す。
図6は、日焼け止め剤としてのSH-401の効能(SPF値で測定)が市販の日焼け止め剤と比べて遜色のないものであることを示す。
図7は、SH-401がUV照射への暴露に対して安定であることを示す。
【0062】
図8Aは、SH-401がヒト皮膚細胞に対して毒性がないことを示し、
図8B、8Cおよび
図14A~14Dは、SH-401がUVB照射に対してヒト皮膚細胞を保護することを示す。
図9および
図10は、SH-401がヒトの皮膚におけるROS(活性酸素種)発生および脂質の過酸化を減少させることを示す。
図11は、SH-401が抗酸化剤であることを示す。
図12および
図13は、SH-401が皮膚細胞におけるUV誘導性DNA損傷を減少させることを示す。
図15A~15Bは、SH-401が皮膚におけるUV誘導性コラーゲン分解を逆転させることを示す。
【0063】
組成物:
本発明の実施形態の一態様においては、UV吸収性材料と、皮膚医学的に許容される担体とを含み、UV吸収性材料がウルシの葉および/または未熟果の抽出物である組成物が提供される。
【0064】
本明細書を通じて、「UV吸収」という用語は、200nm~500nmの範囲の少なくとも一部の波長の電磁照射を吸収することを意味する。400nm~500nmの副範囲をここでは「ブルーライト」とも呼び、このような波長の吸収を「UV吸収」という用語の範囲に含めることは簡潔さのためである。
【0065】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、「UV吸収」という用語は、280nm~500nmの範囲の少なくとも一部の波長の吸収を意味する。このような実施形態のいくつかにおいて、「UV吸収」という用語は、280nm~400nmの範囲の少なくとも一部の波長の吸収を意味し、当該波長は本明細書において「紫外線B波」(UVB)(280~320nm)および「紫外線A波」(UVA)(320~400nm)とも呼ばれる。このような実施形態のいくつかにおいて、「UV吸収」という用語は、280nm~320nm(即ち、UVB)の範囲の少なくとも一部の波長の吸収を意味する。このような実施形態のいくつかにおいて、「UV吸収」という用語は、290nm~320nm(即ち、UVB)の範囲の少なくとも一部の波長の吸収を意味する。
【0066】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、「UV吸収」という用語は、300nm~500nmの範囲の少なくとも一部の波長の吸収を意味する。このような実施形態のいくつかにおいて、「UV吸収」という用語は、300nm~400nmの範囲の少なくとも一部の波長の吸収を意味し、当該波長は当業界において「近紫外線」とも呼ばれる。
【0067】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、「UV吸収」という用語は、ブルーライトの吸収、即ち、400nm~500nmの範囲の少なくとも一部の波長の吸収を意味する。当該波長を吸収する材料は容易に視認できる色(例:黄色)を帯びていることがある。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも0.005mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも0.01mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも0.02mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも0.05mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも0.1mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも0.2mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも0.5mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも1mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも2mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも5mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも10mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも20mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも50mg/mlである。いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は少なくとも100mg/mlである。
【0069】
いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は400mg/ml以下、任意で200mg/ml以下、任意で100mg/ml以下、任意で50mg/ml以下、任意で20mg/ml、および任意で10mg/ml以下である。
【0070】
いくつかの実施形態において、組成物中のUV吸収性材料の濃度は、約0.05~約10mg/ml、または約10mg/ml~約50mg/ml、または約50~約200mg/ml、または約100~約400mg/mlであり、その間の任意の中間値および副範囲も含む。
【0071】
組成物に関連する任意の実施形態のいくつかにおいて、組成物は日焼け止め組成物である。
【0072】
本明細書において、「日焼け止め組成物」とは、皮膚上に薄い膜として投与されたときに、UV照射の吸収および/またはUV照射の反射によって、太陽からのUV照射を少なくとも部分的に(典型的には、290~320nmの範囲の照射、任意でより広い波長範囲、例えば、290nm~400nmを)防除(block)または遮蔽(screen)する組成物を意味する。日焼け止め組成物は任意で、UV照射または太陽光全般の防除または遮蔽用、および/または太陽光と関連する傷害(例:日焼け、癌リスク)の(例:局所投与による)最小化用と(例えば、日焼け止め組成物のパッケージ内またはパッケージ上に)特定される。
【0073】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいては、組成物中のUV吸収性材料の濃度は、波長300nmで路長1mmの照射の少なくとも90%を吸収するのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、濃度は、波長300nmで路長3mmの照射の少なくとも90%を吸収するのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、濃度は、波長300nmで路長0.1mmの照射の少なくとも90%を吸収するのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、濃度は、波長300nmで路長0.03mmの照射の少なくとも90%を吸収するのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、濃度は、波長300nmで路長0.01mmの照射の少なくとも90%を吸収するのに十分な濃度である。
【0074】
当業者には認められるように、少なくとも90%の吸収は、(ランベルト=ベールの法則によると)吸光度として少なくとも1に対応し(そして少なくとも99%の吸収は吸光度として少なくとも2に対応し、少なくとも99.9%の吸収は吸光度として少なくとも3に対応し)、吸光度とは、減衰係数(材料に固有の性質)、濃度および路長の積である。よって路長1mmに対する少なくとも90%の吸収は、減衰係数および濃度の積が少なくとも1mm-1であることに対応する。従ってこのような限定は、与えられた吸光度特性を有する化合物の濃度を定義する。300nmの照射を吸収する化合物の混合物(例:本明細書に記載のUV吸収性材料)の場合、各化合物の減衰係数および濃度の積の合計が少なくとも1mm-1である。
【0075】
与えられた路長(例:1mm)が減衰係数および濃度の積を定義する(例:少なくとも1mm-1である)ことから、材料による吸収は異なる路長、例えば、組成物中の他の化合物による散乱または吸収を最小化するためにより短い路長で測定してもよいことを理解されたい。従って、例えば、路長1mmにおける吸光度が少なくとも1であることは、任意で、路長10mmにおける吸光度が(本明細書および当業界で定義されるように)少なくとも10である、また、路長0.1mmにおける吸光度が(本明細書および当業界で定義されるように)少なくとも0.1であるというように実践的に決定することもできる。
【0076】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいては、UV吸収性材料は、複数のガロイル(即ち、3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)置換基を有する少なくとも1種の化合物、例えば、2~10のガロイル置換基、または4~6(例:5)のガロイル置換基を有する化合物を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1種の化合物は、複数のガロイル置換基の結合した炭水化物部分、例えば、グルコース部分を含む。炭水化物部分は、任意で、D-グルコース部分等の糖(例:ヘキソース)部分、またはキナ酸部分でもよい。
【0077】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、ガロイル置換基はエステル結合を介して他の部分に結合している、即ち、ガロイルが他の部分の酸素原子に結合している。
【0078】
ガロイル置換基は任意で骨格部分(例:炭水化物部分)に結合するか、または代わりに、いくつかのガロイル置換基が任意で骨格部分に直接結合し、いくつかのガロイル置換基が他のガロイル置換基に結合することもできる。このような実施形態において、骨格部分(例:グルコース部分)のガロイル置換基のそれぞれがガロイルそのものの形態であるか、またはガロイルで置換されたガロイル(例:3,4-ジヒドロキシ-5-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ベンゾイル)である。このような実施形態において、骨格部分(例:グルコース部分)のガロイル置換基のそれぞれがガロイルそのものの形態である。
【0079】
本明細書において例示したように、(グルコースの異なる酸素原子に直接結合した5のガロイル部分を含む)1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースは、ウルシから高い効率で抽出することができる。
【0080】
任意の対応する実施形態のいくつかにおいて、UV吸収性材料における1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの濃度は少なくとも80重量%である。いくつかの実施形態において、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの濃度は少なくとも90重量%である。いくつかの実施形態において、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの濃度は少なくとも95重量%である。いくつかの実施形態において、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの濃度は少なくとも98重量%である。いくつかの実施形態において、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの濃度は、少なくとも99重量%である。
【0081】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいては、任意の対応する実施形態に基づく、ここに記載されたUV吸収性材料は、(例:ウルシからの1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの単離に関連して記載した任意の実施形態による)ウルシの葉および/または未熟果より単離された1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースである。いくつかの実施形態において、(本明細書に記載した任意の対応する実施形態に基づく)1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの濃度は、少なくとも0.005mg/mlである。
【0082】
本明細書を通じて、「ウルシ(sumac)」という用語は、Rhus spp.、即ち、ウルシ属(genus Rhus)に属する任意の植物を意味する。ウルシの例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。Rhus chinensis(通称:ヌルデ(Chinese sumac))、Rhus delavayi、Rhus hypoleuca、Rhus punjabensis(通称:パンジャーブ・スマック)、Rhus taitensis、 Rhus sanwicensis、Rhus coriaria(通称:スンマーク(tanner’s sumac、Sicilian sumac、またはelm-leaved sumac))、Rhus aromatica(通称:フラグラント・スマック(fragrant sumac))、Rhus copallinum(通称:ウイングド・スマック(winged sumac またはshining sumac))、Rhus glabra(通称:スムース・スマック(smooth sumac))、Rhus lanceolata(通称:プレーリー・スマック(prairie sumac))、Rhus michauxii(通称:ミショー・スマック(Michaux’s sumac))、Rhus typhina(通称:アメリカハゼノキ(staghorn sumac))、Rhus choriophylla(通称:マーンズ・スマック(Mearn’s sumac))、Rhus integrifolia(通称:レモネード・スマック(lemonade sumac))、Rhus kearneyi(通称:カーニー・スマック(Kearney sumac))、Rhus microphylla(通称:アカシカ(desert sumacまたはlittleleaf sumac))、Rhus ovata(通称:シュガー・スマック(sugar sumac))、Rhus trilobata(通称:スカンクブッシュ・スマック(skunkbush sumac))、Rhus virens(通称:エバーグリーン・スマック(evergreen sumac))、andRhus muelleri(通称:ミューラー・スマック(Muller’s sumac))。例示的な実施形態において、ウルシはRhus coriariaである。
【0083】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいては、UV吸収性材料は、任意の対応する実施形態に基づき、本明細書において記載の方法によって得ることができる。
【0084】
方法:
本発明の実施形態の一態様においては、UV吸収性材料(例:本明細書に記載した、任意の対応する実施形態に基づくUV吸収性材料)をウルシから得るための方法が提供される。方法は、ウルシの葉および/または未熟果を水混和性有機溶媒と接触させる工程を含む(例えば、UV吸収性材料を抽出物として得る)。いくつかの実施形態において、方法は、例えば、溶媒の蒸発によって、水混和性有機溶媒を除去する工程をさらに含む。
【0085】
ウルシの葉および/または未熟果は、水混和性有機溶媒と接触させる前に、任意で、例えば、空気(任意で乾燥空気)への暴露および/または緩やかな(例えば、100℃未満、または75℃未満、または50℃未満の温度での)加熱によって乾燥させる。
【0086】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、水混和性有機溶媒は、1つの-OH基または2つ以上の-OH基を含むアルコール(任意で2種以上のアルコール)(例:エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、および/またはグリセリン)を含む、および/またはケトン(例:アセトン)を含む。いくつかの実施形態において、水混和性有機溶媒はC1-4アルコール(例:t-ブチルアルコール、1-プロパノール、イソプロパノール、エタノールおよび/またはメタノール)、アセトンおよび/またはグリセリンを含む。いくつかの実施形態においてエタノールは例示的な水混和性有機溶媒である。
【0087】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、ウルシの葉および/または未熟果と、水混和性有機溶媒との接触は、抽出を含む。このような実施形態において、抽出はソックスレー抽出器で実施する。
【0088】
本明細書において、「ソックスレー抽出器」という用語は、抽出に使用した溶媒を再利用するように構成された器具であり、材料を抽出するために溶媒を原料(例:ウルシ)と接触させ、材料の抽出に用いた溶媒を蒸発させ、そして溶媒の蒸気を凝集させて、蒸気が原料と接触するように戻すことで、材料をさらに抽出する。「ソックスレー抽出器」という用語には当業界で「クマガワ抽出器」として知られる器具を含む、種々の特定の設計の器具が含まれる。
【0089】
ソックスレー抽出器に関連する実施形態には、揮発性の水混和性有機溶媒、例えば、(大気圧下の)沸点が100℃以下の溶媒が特に適している。
【0090】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、ウルシと接触させる水混和性有機溶媒の量は、1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり少なくとも5mlの溶媒であり、任意で1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり少なくとも10mlの溶媒であり、任意で1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり少なくとも15mlの溶媒である。このような実施形態において、溶媒はエタノールを含む。
【0091】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、ウルシと接触させる水混和性有機溶媒の量は、1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり40ml以下の溶媒であり、任意で1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり30ml以下の溶媒であり、任意で1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり約20ml以下の溶媒である。このような実施形態において、溶媒はエタノールを含む。
【0092】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、ウルシと接触させる水混和性有機溶媒の量は、1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり5~40mlの範囲内の溶媒であり、任意で1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり10~30mlの溶媒である。本明細書において例示したように、1グラム(乾燥重量)のウルシ当たり約20mlの水混和性有機溶媒は効率的な抽出を提供することができる。いくつかの実施形態において、溶媒はエタノールを含む。
【0093】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、方法は、例えばより純度の高い(より効率よく吸収する)UV吸収性材料を得るために、極性溶媒と非極性溶媒との間の(例:任意の対応する実施形態に基づく、本明細書に記載の水混和性有機溶媒を用いて得られた抽出物の形態の)UV吸収性材料の分配と、極性溶媒に分配された画分の回収とをさらに含む。
【0094】
本明細書において、「分配」という用語は、材料を2種の非相溶性の液体と接触させ、例えば、2種の液体のそれぞれに対する材料中の種々の成分の異なる親和性および/または溶解性に基づき、材料の異なる部分を異なる相へと移動(即ち、分配)せしめることを意味する。一方または両方の相を任意で他の相から分離し、相に分配された部分を回収する。
【0095】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、非極性溶媒は1種以上の炭化水素および任意で1種以上の脂肪族炭化水素を含む。いくつかの実施形態において、非極性溶媒は1種以上のアルカン類、例えば、1種以上の炭素数5~16のアルカン類を含む。いくつかの実施形態において、ヘキサンは例示的な非極性溶媒である。
【0096】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、極性溶媒は水を含み、例えば、少なくとも80重量%の水、または少なくとも90重量%の水、または少なくとも95重量%の水、または少なくとも98重量%の水、または少なくとも99重量%の水を含む。例示的な実施形態において、極性溶媒は実質的に水からなる。
【0097】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、非極性溶媒は 脂肪族炭化水素であり、極性溶媒は実質的に水からなる。
【0098】
特定の論理に縛られるものではないが、非極性溶媒はかなりの量の他の植物由来物質(例:クロロフィル)を極性溶媒に分配されるUV吸収性材料から分離させると信じられている。さらに、(例:本願明細書に記載のような)適切な比率の極性および非極性溶媒は、分離される植物由来物質の割合を増加させる、および/または廃棄となるUV吸収性材料の割合を最小にするとも信じられている。
【0099】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、分配に使用する非極性溶媒の水に対する比率は少なくとも0.05mlの溶媒であり、任意で水1ml当たり少なくとも0.1mlの溶媒、任意で水1ml当たり少なくとも0.15mlの溶媒であり、任意で水1ml当たり少なくとも0.25mlの溶媒である。このような実施形態において、溶媒はヘキサンを含む。
【0100】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、分配に使用する非極性溶媒の水に対する比率は、水1ml当たり1ml以下の溶媒であり、任意で水1ml当たり0.6ml以下の溶媒であり、任意で水1ml当たり0.4ml以下の溶媒であり、任意で水1ml当たり約0.25ml以下の溶媒である。このような実施形態において、溶媒はヘキサンを含む。
【0101】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、分配に使用する非極性溶媒の水1mlに対する比率は0.05~1mlの溶媒であり、任意で水1ml当たり0.1~0.6mlの範囲の溶媒、任意で水1ml当たり0.15~0.4mlの範囲の溶媒、任意で水1ml当たり約0.25mlの溶媒である。このような実施形態において、溶媒はヘキサンを含む。
【0102】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、例えば、より純度の高い(より効率的に吸収する)UV吸収性材料を得るために、方法は、水と水不混和性極性有機溶媒との間のUV吸収性材料の分配、および水不混和性極性有機溶媒に分配された画分の回収をさらに含む。UV吸収性材料は、任意で、本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づく、(非極性溶媒ではなく)極性溶媒に分配した画分の形態である。
【0103】
水不混和性極性有機溶媒の例として以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。酢酸C1-4アルキル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、と酢酸ブチル)および炭酸プロピレン等のエステル類、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、オクタノール、およびシクロヘキサノール等のアルコール類、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、およびシクロヘキサノン等のケトン類、フルフラアルデヒド等のアルデヒド類、アニリン等のアミン類、ジクロロメタンおよび1,2-ジクロロエタン等の極性塩素化溶媒、二硫化炭素、ならびにニトロメタン、ニトロプロパン、およびニトロベンゼン等のニトロ化合物。いくつかの実施形態において、酢酸エチルが例示的な水不混和性極性有機溶媒である。
【0104】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、分配に使用する水不混和性極性有機溶媒の水に対する比率は、水1ml当たり少なくとも0.3mlの溶媒、任意で水1ml当たり少なくとも0.6mlの溶媒、任意で水1ml当たり少なくとも1mlの溶媒、任意で水1ml当たり少なくとも1.5mlの溶媒である。このような実施形態において、溶媒は酢酸エチルを含む。
【0105】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、分配に使用する水不混和性極性有機溶媒の水に対する比率は、水1ml当たり7.5ml以下の溶媒、任意で水1ml当たり4ml以下の溶媒、任意で水1ml当たり2.5ml以下の溶媒、任意で水1ml当たり約1.5ml以下の溶媒である。このような実施形態において、溶媒は酢酸エチルを含む。
【0106】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、分配に使用する水不混和性極性有機溶媒の水に対する比率は、水1ml当たり0.3~7.5mlの範囲内の溶媒、任意で水1ml当たり0.6~4mlの範囲内の溶媒、任意で水1ml当たり1~2.5mlの範囲内の溶媒、任意で水1ml当たり約1.5mlの溶媒である。このような実施形態において、溶媒は酢酸エチルを含む。
【0107】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、方法は、例えば、より純度の高いUV吸収性材料を得るために、UV吸収性材料の結晶化の実施をさらに含む。結晶化は、任意で、当業界で知られるいかなる適切な方法で実施してもよい。いくつかの実施形態においては、結晶化は、(例:本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づく水不混和性極性有機溶媒に分配された画分の形態の)UV吸収性材料を水を含む溶媒と接触させることで実施する。
【0108】
水を含む溶媒は、任意で、例えば、水と、(任意の対応する実施形態に基づき記載した)1以上の水混和性有機溶媒の混合物である。任意の対応する実施形態のいくつかにおいて、水を含む溶媒は、水とアルコールとを含み、例えば、アルコール濃度は、約20~約80重量%の範囲内(例:アルコール:水の重量比は20:80~80:20のアルコール:水)、または約30~約60重量%の範囲内(例:アルコール:水の重量比は30:70~60:40)、または約40重量%(例:アルコール:水の重量比は40:60)である。エタノール/水(例えば40:60の重量比)は、結晶化を実行するための例示的な水を含む溶媒である。
【0109】
結晶化に続き、UV吸収性材料の結晶は、任意で、濾過および/または溶媒の蒸発によって溶媒から分離することができる。それによって比較的純度の高い、単離されたUV吸収性材料が得られる。
【0110】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態のいくつかにおいては、本明細書に記載の任意の対応する実施形態(任意で結晶化を直前の工程として含む)に基づき得られたUV吸収性材料は、カラムクロマトグラフィーで、例えば、カラムから出てくる画分のUV吸収を同定することで、さらに精製する。いくつかの実施形態において、固定相は疎水性である。例示的な実施形態において、炭素鎖(オクタデシルまたはC18)結合シリカが固定相に用いられる。水溶液(例:0.1%のトリフルオロ酢酸)とアセトニトリルの勾配が例示的な移動相である。
【0111】
本明細書に記載の、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースを含むUV吸収性材料を得るための方法に関連する任意の実施形態のいくつかにおいて、UV吸収性材料中の1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースは比較的高い、例えば、UV吸収性材料の少なくとも95重量%の純度を有す。いくつかの実施形態において、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの純度は少なくとも98重量%である。いくつかの実施形態において、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの純度は少なくとも99重量%である。いくつかの実施形態において、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの純度は少なくとも99.5重量%である。いくつかの実施形態において、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースの純度は少なくとも99.8重量%である。
【0112】
本発明の実施形態の一態様においては、本明細書において記載した、任意の対応する実施形態に基づく方法によって得られたUV吸収性材料が提供される。
【0113】
処方および使用:
本明細書において上述したように、本明細書に示す任意の実施形態におけるUV吸収性材料は、皮膚医学的に許容される担体を含む組成物の一部として活用することができる。
【0114】
このような組成物は任意で局所使用を目的としたいかなる組成物でもよい。
【0115】
すでに上述したように、組成物は任意で、(例:日照下で)UV照射を防除または遮蔽する目的で使用される、日焼け止め組成物である。(本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づく)日焼け止め組成物は、任意で、日焼け止め以外の主たる使用目的(例:化粧用および/または薬学的用途)を有し、日焼け止め活性は組成物の補助的活性であってもよいことを理解されたい。
【0116】
上記の代わりにまたは加えて、(本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づく)組成物は、任意で、医薬組成物および/または化粧用組成物(例:化粧品に含まれる組成物)である。このような実施形態において、組成物は皮膚老化または創傷の治療用、他えば、創傷治癒を促進するために使用する医薬組成物として、同定されている。いくつかの実施形態において、化粧用組成物は皮膚の若返り用組成物および/またはピーリング用組成物、例えば、皮膚の若返りまたは皮膚のピーリングに使用するために同定されたものである。
【0117】
本明細書において、「化粧用」および「化粧用組成物」および「化粧品」という用語は、審美目的で使用される局所用の物質または製品(製造品)を意味する。化粧用組成物は、所望の審美的効果の提供を容易にするために、任意で、医薬活性をさらに発揮する物質を含んでもよい。
【0118】
本明細書に記載の活性成分を有利に使用することのできる化粧用組成物または化粧品としては、例えば、おしろい(make-up)、ゲル類、マニキュア、アイシャドウ、リップグロス、口紅などが挙げられる。
【0119】
本明細書において、「医薬/薬学用」という用語は、例えば皮膚を、化粧品によって変化させることを含む、体の少なくとも一部(例:皮膚)の状態および/または行動を有利に変化させることを目的とした任意の化合物および/または組成物を意味する。このような定義は、例えば、化粧的効果を用語の範囲から除き得る規制当局の使用する当該用語の範囲よりも広いことを理解されたい。
【0120】
医薬用または化粧用組成物の有利な効果は、任意で、UV照射によって生じる損傷に対する防御と関連付けることができ、このような効果は、任意であるが、必須ではなく、皮膚に到達するUV照射量の減少によって少なくとも部分的に仲介される。
【0121】
上記の代わりにまたは加えて、医薬用または化粧用組成物の有利な効果は、UV照射量減少以外のメカニズム(例えば、抗酸化作用)による、UV照射によって誘導される損傷に対する防御と関連付けることができる、および/またはUV照射とは関連しない損傷、例えば、創傷の治療(例:UV照射と関連しない創傷の治癒の促進)と関連付けることができる。
【0122】
本発明の実施形態の他の態様においては、(本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づく、)ウルシ由来のUV吸収性材料またはウルシ由来のUV吸収性材料を含む組成物の、薬剤(例えば、皮膚老化または創傷治療用薬剤)の製造における使用が提供される。
【0123】
本発明の実施形態の他の態様においては、治療を必要とする対象における皮膚老化および/または創傷を治療するための方法であって、(本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づく)ウルシ由来のUV吸収性材料を対象に局所投与することを含む方法が提供される。
【0124】
本明細書において、「皮膚医学的に許容される担体」という用語は、生物の皮膚に投与した際に有意な刺激を生じることがなく、且つ投与した化合物の生物活性や性質を無効にすることのない担体または希釈剤を意味する。
【0125】
従って、本発明の実施形態に基づき使用する組成物は、賦形剤および補助剤を含む1種以上の担体を用いて公知の方法によって処方することが可能であり、当該担体は、上記化合物の化粧用および/または医薬用として使用可能な製剤への加工を容易にする。
【0126】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、組成物に添加されて活性成分、例えば、本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づくUV吸収性材料の投与をさらに容易にする、不活性な物質を指す。適切な固体相またはゲル相の担体または賦形剤には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
薬物の処方および投与のための技術は「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co., Easton, PA, latest editionに見出すことができ、本参照をもって本明細書に組み込まれるものとする。
【0128】
本明細書に記載した、本発明の種々の実施形態における組成物は、当業界で公知の方法、例えば、公知の混合、溶解、顆粒化、湿式粉砕、乳状化、カプセル化、捕捉化または凍結乾燥のための工程によって製造することができる。
【0129】
本明細書に詳細に記載するように、適切な担体と、任意で組成物に含めることのできる他の材料とを選択することで、本明細書に記載の組成物を局所投与に適した任意の形態に処方することができる。よって、組成物は、例えば、クリーム剤、軟膏剤、ペースト剤、ゲル剤、ローション剤および/または洗浄剤の形状であり得る。
【0130】
軟膏剤は、典型的には、植物油(例:シアバターおよび/またはカカオバター)またはワセリンまたはワセリン誘導体を主体とする半固体調製物である。他の担体またはベヒクルと同様に、軟膏基剤は、不活性で、安定で、非刺激性で、かつ非感作性である必要がある。
【0131】
ローション剤は、摩擦を与えずに皮膚表面に適用される調製物である。ローション剤は、典型的には、水基剤またはアルコール基剤の液体または半液体の調製物、例えば、水中油型エマルションである。ローション剤は、より流動性の高い組成物の適用が容易であることから(例:多くの場合、日焼け止め組成物において望ましいように)身体の広い領域を処置する場合に一般に好ましい。
【0132】
クリーム剤は、水中油型または油中水型のいずれかである、粘稠な液体または半固体のエマルションである。クリーム基剤は典型的には油相と、乳化剤と、水相とを含有する。油相は、「親油」相とも呼ばれ、任意でワセリンおよび/またはセチルアルコールもしくはステアリルアルコールなどの脂肪族アルコールを含む。水相は任意で湿潤剤を含む。クリーム処方中の乳化剤は、任意で非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性の界面活性成分である。
【0133】
本明細書において、「エマルション」という用語は、2以上の異なる相(例:親水相と親油相)に液体を含む組成物を意味する。非液状物質(例:分散した固体および/または気泡)が任意で存在してもよい。
【0134】
本明細書および当業界で使用するように、「油中水型エマルション」とは、親油相中に分散した水相によって特徴づけられるエマルションである。
【0135】
本明細書および当業界で使用するように、「水中油型エマルション」とは、水相中に分散した親油相によって特徴づけられるエマルションである。
【0136】
ペースト剤は半固体の剤形であって、その基剤の性質によって、脂肪性ペースト剤と単相水性ゲルから作製されたペースト剤とに分けられる。脂肪性ペースト剤の基剤は、一般に、ワセリン、親水性ワセリン等である。単相水性ゲルから作製されたペースト剤は一般に、カルボキシメチルセルロース等を基剤として組み込んでいる。
【0137】
ゲル処方は、半固体の、懸濁液型の系である。単相ゲル剤は、典型的には水性である担体液全体にわたり実質的に均質に分布した有機巨大分子を含有するが、好ましくは、非水性溶媒と、所望により油とをさらに含有する。好ましい有機巨大分子、すなわちゲル化剤には、カルボマーポリマーのファミリー、例えば、Carbopol(登録商標)の商標で市販されているものとして得られる、カルボキシポリアルキレンなどの架橋アクリル酸ポリマーが含まれる。当該態様における他の種類の好ましいポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、およびポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、トラガントおよびキサンタンガムなどのガム、アルギン酸ナトリウム、ならびにゼラチンである。均質なゲルを調製するため、アルコールまたはグリセリンなどの分散剤を添加してもよく、ゲル化剤を、粉砕、機械的混合もしくは撹拌、またはこれらの組合せによって分散してもよい。
【0138】
局所投与用に処方された組成物は、任意で、パッチ、スワッブ、綿球および/またはパッドに含まれてもよい。
【0139】
皮膚パッチなどは以下の成分の全てまたは一部を含んでもよい。投与される(例:本明細書に記載の)組成物、任意で使用前に取り除かれる、保存時にパッチを保護するライナー、種々の成分を1つにまとめるおよび/またはパッチを皮膚に張り付けるための粘着剤、外部環境からパッチを保護するための裏剤、および/または皮膚への薬剤の放出を制御するメンブラン。
【0140】
任意の実施形態において、組成物は室温(例:20℃)で少なくとも2週間、任意で少なくとも1ヶ月、任意で少なくとも2ヶ月、任意で少なくとも6ヶ月、任意で少なくとも1年間安定(例:実質的な化学的変化および/または相分離なし)である。
【0141】
本発明の実施形態の文脈に適した医薬組成物、化粧用組成物および日焼け止め組成物としては、それぞれの意図する目的を達成するのに効果的な量の活性成分が含まれた組成物が挙げられる。
【0142】
特定の目的に対する有効量の決定は、特に本明細書の提供する詳細な開示に照らした、当業者の能力の範囲内である。
【0143】
投与される医薬用または化粧用の組成物の量および/または医薬用または化粧用の組成物中の活性成分の量は、治療される対象、状態の深刻度、投与方法、医薬組成物を処方する医師の判断などに依存し得る。
【0144】
投与される日焼け止め組成物および/または活性成分(例:本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づくUV吸収性材料)の量は、保護する太陽光の程度、(例:皮膚の色素形成の影響を受ける)太陽光に対する対象の感受性、ならびに完全な防御が望ましいか否か(例:日焼けを誘導するためには中庸なUV曝露が望ましい)といった因子に依存し得る。
【0145】
日焼け止め組成物の提供する(例えば、活性成分濃度に相関する)UV防除活性の程度は、任意で、当業界で知られた他の技術を用いて表す、例えば、紫外線保護指数(SPF)値として定量的に表すこともできる。
【0146】
本明細書に記載の任意の対応する実施形態に基づく組成物は、任意で、組成物の意図する、例えば、本明細書に記載の効果を提供するために、適切な追加の活性成分をさらに含んでもよい。このような追加の活性成分としては、例えば、日焼け止め剤、UV吸収剤、抗酸化剤、皮膚処置剤および/または本明細書に記載の状態を治療するための薬剤が挙げられる。
【0147】
例えば、(例:日焼け止め組成物に使用するための)UV照射の防除における使用に適した追加の活性成分としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ベンゾフェノン類(例:ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-7、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-9、ベンゾフェノン-10、および安息香酸ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシル)、p-アミノ安息香酸およびその誘導体、例えば、N-アルキル置換誘導体および/またはそのエステル類(例:N-ジメチル-p-アミノ安息香酸イソペンチルおよびN-ジメチル-p-アミノ安息香酸オクチル)、アボベンゾン、ベモトリジノル、ビソクトリゾール、3-(4-メチルベンジリデン)-カンファ、ドロメトリゾールトリシロキサン、エカムスル、エチルヘキシルトリアゾン、メンチルアントラニレート、オクトクリレン、イスコトリジノール、メトキシシナメートまたはその誘導体(例:エステル)(例:4-メトキシシナメートイソペンチル、4-メトキシシナメートオクチルおよびシノキサート)、ポリシリコーン-15、サリチル酸およびその塩(例:サリチル酸トロルアミン)またはその誘導体(例:エステル)(例:ホモサレートおよびサリチル酸オクチル),並びにTiO2および/またはZnOなどの無機化合物。
【0148】
いくつかの実施形態において、追加の活性(UV防除性)成分はTiO2および/またはZnOであり、例えば、合成有機薬剤の使用を任意で防止することができる。
【0149】
創傷の治療および/または創傷治癒の促進に用いるための組成物における使用に適した追加の活性成分としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。パンテノールおよびその誘導体(例:エチルパンテノール)、アロエベラ、パントテン酸およびその誘導体、アラントイン、ビサボロール、およびグリシルリチン酸二カリウムといった、皮膚無痛化薬および/または治癒剤。
【0150】
本明細書に記載の組成物において、(例:UV誘導性または非UV誘導性の皮膚損傷を減少させるための)追加の活性成分に適した抗酸化剤としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、カロテンおよびカロテノイド(例:アルファ-カロテン、ベータ-カロテン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ルテイン、リコペン、ゼアキサンチンおよびビタミンA)、クルクミン、ユーゲノール、フラボノイド類(例:フラボン、イソフラボン、フラバノール、フラボノール、フラバノン、スチルベノイド、アントシアニン)、グルタチオン、プロピルガレート、四級ブチルヒドロキシキノン、トコフェロール類(例:ビタミンE)、尿酸および抗酸化酵素(例:チオレドキシン、カタラーゼおよびスーパーオキシドジスムーターゼ)。
【0151】
本明細書に記載の組成物は、例えば、香りや栄養因子(例:皮膚または毛髪の栄養因子)を増やすために添加される追加の成分を含んでもよい。
【0152】
このような成分は、ヒトにおける局所使用に適当として、健全な医療判断の範囲内で、毒性、不適応、不安定、アレルギー応答等を誘導しないものから選択される。さらにこのような任意の成分は、本発明の活性成分の利点を許容できない程に変化させない限り、有用である。
【0153】
CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, Second Edition (1992)は、本発明の組成物における使用に適した、スキンケア業界で使用される広範囲にわたる、非限定的な化粧材料を開示する。このような材料の分類の例としては、研磨剤、吸収剤、香料、顔料、色素/着色剤、エッセンシャルオイル、皮膚感覚惹起剤、収れん剤(例:丁子油、メントール、カンファー、ユーカリオイル、オイゲノール、乳酸メンチルエステル、ウィッチヘーゼル蒸留物)といった審美成分、抗ニキビ薬、固結防止剤、消泡剤、抗微生物剤、例:活性成分としてではなく、組成物の保存用の)抗酸化剤、バインダー、生物学的添加剤、緩衝剤、嵩高剤、キレート化剤、化学添加物、着色剤、化粧用収れん剤、化粧用殺生物剤、変性剤、医薬用収れん剤、外用鎮痛剤、組成物のフィルム形成能および持続性を補助するためのフィルム形成剤または材料(例:ポリマー)(例:エイコセンとビニルピロリドンとの共重合体)、乳白剤、pH調節剤、推進薬、還元剤、捕捉剤、皮膚調整剤(例:多目的および閉塞性の浸潤剤)、皮膚処置剤、増粘剤、およびビタミンとその誘導体が挙げられる。
【0154】
本明細書の記載のいくつかの実施形態における組成物はin vivoで使用するためのものであるため、組成物は高純度であり且つ有害になり得る汚染物を含まない、例えば、少なくとも国際食品(National Food)(NF)グレードであり、通常は少なくとも解析グレードであり、好ましくは医薬グレードである。与えられた化合物はその使用前に合成されていなければならないが、この限りにおいて、このような合成またはその後の精製は、合成または精製の過程において使用され得る任意の汚染し得る毒性物質を実質的に含まない製品をもたらすことが好ましい。
【0155】
本発明の組成物は、所望により、活性成分を含む1種以上の単位剤形を含むことが可能なFDA(米国食品医薬品局)承認キット等のパック又はディスペンサーデバイスとして提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパック等の金属又はプラスチック箔を含むことができる。パック又はディスペンサーデバイスには投与用説明書を添付することができる。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって定められた形式の容器に関連する通知を添付することもでき、この通知は、組成物の形態やヒト又は動物への投与に関する機関による承認を反映している。このような通知は、例えば、処方薬に関して米国食品医薬品局によって承認された標識、又は承認された製品の添付文書に関するものとすることができる。本発明の任意の実施形態における組成物は、調製し、適切な容器に入れ、(例:本明細書に記載の任意の実施形態に基づく)皮膚の治療および/または防御用として標識することもできる。
【0156】
従って、本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に記載した医薬組成物は、本明細書に記載の状態を、治療を必要とする患者において治療するために、パッケージング材料中に梱包され、パッケージング材料の表面またはその内部に、その識別が印刷されたものである。
【0157】
本明細書で使用する「約」は、±10%を意味する。
【0158】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味する。
【0159】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0160】
「から実質的になる」という用語は、組成物、方法または構造が追加の成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。但しこれは、追加の成分、工程および/または部分が、請求項に記載の組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
【0161】
本明細書において、単数形を表す「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数をも対象とする。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物をも含み得る。
【0162】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、およびその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6も具体的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0163】
本明細書において数値範囲を示す場合、それは常に示す範囲内の任意の引用数(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間の分数および整数の全てを含むことを意図する。
【0164】
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の各分野の従事者に既知のもの、または既知の様式、手段、技術および手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
本明細書で使用する「治療する」という用語は、病態の進行の抑止、実質的な阻害、遅延または逆転、病態の臨床的または審美的な症状の実質的な寛解、あるいは病態の臨床的または審美的な症状の発現の実質的な予防を含む。
【0166】
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の所定の特徴はまた、1つの実施形態において、これら特徴を組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的な組み合わせ、または適当な他の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される所定の特徴は、その要素なしでは特定の実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須要件であると捉えてはならない。
【0167】
上述したように、本明細書に記載され、特許請求の範囲に請求される本発明のさまざまな実施形態および態様は、以下の実施例によって実験的に支持されるものである。
【実施例】
【0168】
ここで、上記の記載と共に本発明のいくつかの実施形態を限定することなく説明する以下の実施例に参照する。
【0169】
材料と方法
材料:
DMEM(100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを添加したダルベッコの変法イーグル培地)はBiological Industries社(イスラエル国)より入手した。
DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)はSigma Aldrich社より入手した。
エタノールはMercury Scientific & Industrial Products Ltd.より入手した。
メタノールはMercury Scientific & Industrial Products Ltd.より入手した。
MTT(臭化3-(4,5-ジメチルチアゾリ-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム)はSigma Aldrich社より入手した。
【0170】
防御指数の計算:
Dutra et al.[Braz J Pharma Sci 2004, 40:381-385]に記載の手順に従い、OptLab(商標)Xソフトウエア(Ascanis社)を使用してマンスール式を用いてSPF(紫外線防御指数)値を計算するために、吸収スペクトルを用いた。
【0171】
高速液体クロマトグラフィー:
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)のクロマトグラムは、次のようにして得た。2度蒸留した水:メタノール比が95:5の混合物で試料を濃度0.01mg/mlに希釈し、光ダイオードアレイ検出器を備えたWaters社のHPLC装置のRP-18カラムに10μlをロードし、96%のトリフルオロ酢酸(0.1%)水溶液から100%アセトニトリルの勾配を流速1ml/分で使用した。
【0172】
ヒト皮膚移植片上の試験:
インフォームドコンセントへの署名後に、腹部美容整形手術を受ける30~60歳の健康な女性から、許可を得て皮膚を採取した。Portugal-Cohen et al.[Exp Dermatol 2011, 20:749-755]に記載の手順に従って0.8×0.8cm2の切片に皮膚を切り出すために機械的皮膚プレスを用いた。Portugal-Cohen et al.[Exp Dermatol 2011, 20:749-755]およびCohen et al.[Dead Sea and Arava Studies 2015, 7:66-74]に記載の手順に従い、真皮側が培地に浸漬するように、皮膚移植片を空気/液体界面に維持した。100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを添加したDMEM(ダルベッコの変法イーグル培地)を含む6穴培養プレートに、ヒト皮膚移植片を、真皮側が下で表皮が上になるように加えた。全ての試料を一晩の回復期後に使用した。
【0173】
実施例1
UV防除能を有する植物のスクリーニング
種々の植物のUVB防除能をスクリーニングするために、ユダヤの砂漠に生息する伝統的に使用されているハーブについて大規模スクリーニングを実施した。各試験植物の葉、小枝、枝、果実および根を回収、乾燥、粉砕し、ソクスレーシステムを使用して個別にエタノール、水、クロロフォルムまたは酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PMA)で抽出した。真空下で溶媒を蒸発させた後、0.1グラムの粗抽出液を超音波を用いて等量の溶媒に再懸濁し、積分球なしのCary(商標)60デュアルビーム分光光度計(Agilent社)を用いたUV吸収スペクトル解析のために、既定の濃度に希釈した。
【0174】
予備結果(データは示さない)は、試験した植物種の大部分において、エタノールによる葉の抽出物が最も高いUV吸光度値を発揮することを示した。
【0175】
表1に、種々の植物の葉のエタノール抽出物の、(上述した方法で決定した)SPF(紫外線防御指数)値をまとめた。
【0176】
【0177】
表1に示されるように、スンマーク(tanner's sumac)(Rhus coriaria)の葉のエタノール抽出物が、試験植物の中で最も高いSPF値(UVB照射に対する防御)をin vitroで発揮した。
【0178】
よって、スンマーク(tanner's sumac)の抽出物をさらなる試験に付した。ウルシの異なる部分の抽出物を種々の栽培地域のウルシから作製した。
【0179】
図1に示したように、ウルシの葉および未熟果の抽出物が、UV光の遮蔽においてウルシの枝、小枝、完熟果または根の抽出物よりかなり効果的であった。
【0180】
実施例2
ウルシの葉からのUV防除物質の単離
上記実施例1に記載した種々のウルシの葉抽出物の内、最も効果的な抽出物(キルヤット・アルバ地方由来の試料)をいくつかの単離技術に付すことでさらに精製した。各工程の後には、本明細書において「SH-101」と称するUV吸収成分を単離するために、得られた画分をUV吸光度によって評価した。その純度は、本明細書において上述した手順に従い、HPLCで決定した。
【0181】
困難な実験の後、最大収率効率を達成するために、以下の一般抽出方法を設計した。
【0182】
図2に示したように、抽出100は、その第1の工程において、Rhus coriariaの葉の乾燥粉末を、例えば、粉砕によって得る。乾燥粉末は、任意で、当業界で知られる適切ないかなる技術でも得ることができる。Rhus coriariaの葉から水および揮発性化合物を除去した後には、乾燥粉末10の重量は未乾燥の葉の重量の約35±5重量%となり得る。
【0183】
次の工程において、乾燥粉末10をエタノール、任意で(例:ソックスレー抽出器を用いて)温かいエタノールと接触させ、その後、エタノールを蒸発させて、Rhus coriariaの葉のエタノール抽出物20を得る。
【0184】
乾燥粉末10対エタノールの(重量対容積)比は、任意で、約1:20(1グラムの乾燥粉末10対20mlのエタノール)であった。この比では、39.64±2.35%(乾燥粉末10の重量に対するエタノール抽出物20の重量)の収率が得られた。
【0185】
図3に示すように、50グラムの乾燥ウルシ葉粉末を種々の容量のエタノールで抽出した際には、約1000mlを超える量のエタノールの使用は、低SPF値および高収率(抽出物の重量)に関連付けられ、一方、約1000ml未満(および特に約400ml未満)の使用は類似したSPF値および低収率と関連付けられた。
【0186】
これらの結果は、1グラムの乾燥粉末10に対して約20ml超のエタノールの使用は、UV防除に寄与しない材料の有意な量の抽出をもたらし、一方、1グラムの乾燥粉末10に対して約20ml未満(および特に約8ml未満)のエタノールの使用は、UV吸収性材料の抽出の有意な低下をもたらした。
【0187】
次の工程においては、エタノール抽出物20を、蒸留水22に懸濁する工程、n-ヘキサン/水24で分配する工程、および工程24で得た水抽出物を酢酸エチル26で分配する工程に付して、酢酸エチル抽出物30を得た。n-ヘキサン/水24で分配する際には、黒緑色の固体をヘキサン相に抽出してもよい。
【0188】
蒸留水22への懸濁および分配24は、任意で、約1グラムのエタノール抽出物20対約20mlの水対約5mlのヘキサンという比率(例:約50グラムのエタノール抽出物20、約1000mlの水、および約250mlのヘキサン)を用いて実施することができる。分配26は、任意で、1mlの水対1.5mlの酢酸エチルという比率(例:約1000mlの水と約1500mlの酢酸エチル)を用いて実施することができる。これら比率を用いることで、26.46±3.78%(エタノール抽出物20の重量に対する酢酸エチル抽出物30の重量)という収率が得られた。
【0189】
次に酢酸エチル抽出物30を、任意で40:60(エタノール:水)の比のエタノールおよび水の混合物における結晶化32に付し、続いて濾過および溶媒の蒸発34を行い、プールした乾燥結晶化上清40を得る。
【0190】
結晶化32は、任意で、抽出物30と溶媒(エタノール/水)との比が、溶媒1ml当たり約0.1mgの抽出物30となるように行う。この比を用いることで、最大の収率である34.8±4.2%(酢酸エチル抽出物30の重量に対するプールした乾燥結晶化上清40の重量)が得られた。
【0191】
プールした乾燥結晶化上清40は任意で逆相カラムクロマトグラフィー42、任意で4%~25%のアセトニトリル勾配の、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液中のアセトニトリルで溶出するC18カラムを使用し、プールした純粋SH-401 50を得る。30.15±2.34%(プールした乾燥結晶化上清40の重量に対するSH-401 50の重量)のクロマトグラフィー収率を得た。
【0192】
上記一般方法を使用した例示的な抽出においては、総SH-401収率として0.452±0.082%を得た(未乾燥ウルシ葉の重量に対するSH-401の重量)。
【0193】
このシンプルであるが洗練された方法は、化学的に関連する市販の化合物の総費用と同等の費用で化合物の高収率を達成する。また、例えば、植物の環境農業的パラメーターの最適化(例:SH-101の高産生によって特徴づけられる種の使用)によって、さらなる収率の増加を達成し、材料の総費用を削減することもできる。
【0194】
実施例3
ウルシの葉由来のUV防除物質(SH-401)の特徴付け
上記実施例2に記載した方法などを用いてSH-101をウルシの葉から単離した。精製SH-101をHPLCおよび他のスペクトル分析技術を用いて特徴づけた。
【0195】
図4Aおよび
図4Bに示したように、HPLC解析において、高純度産物を含む画分(保持時間=107.9分)が得られた(ピーク面積%で純度~99.79%)。
【0196】
図4Cに示したように、得られた画分は適切なUVB流域(290-320nm)に強い吸収を示し、吸収ピークは217nmおよび279.5nmであった。
【0197】
単離された化合物は白色の、大部分が無定形の粉末で、融点は220~250℃の範囲内であった。
【0198】
SH-401はFeCl3の存在下では濃い青色を呈し、KIO3の存在下では赤みのある色を呈した。これらの色反応はガロタンニンに関する報告と類似していた[Haddock et al., J Chem Soc Perkin Trans 1 1982, 0:2535-2545]。
【0199】
さらに赤外(KBr)スペクトル(図示せず)は、3950cm-1および1712cm-1に吸光度を示し、これらはそれぞれガロイル部分のヒドロキシル基とカルボニル基と一致していた。
【0200】
まとめると、上記色反応およびUVスペクトルと赤外スペクトルは、SH-401がガロタンニンであることを示した。
【0201】
精製画分を質量分析でさらに解析した。これにはQ-TOF 6545(高解像度)LC-MS(ESI/APCI/ASAP)質量分析計(Agilent社)を使用して、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)および高解像度質量分析の両方を用いた。
【0202】
下記表2に示したように、LC-MSで得られた質量スペクトルには、それぞれ(M-H)-イオンと(M-2H)-2イオンに対応する約939Daと約469Daのピークが含まれ、SH-401の化学式がC41H32O26であることを示唆した。
【0203】
【0204】
重要なことに、SH-101の分子量は一般的な市販のUV吸収性材料の3倍以上であり、この事実は潜在的な皮膚への吸収および潜在的な全身性有害作用を減少させ得る。
【0205】
さらに、Q-TOF質量分析で得た質量スペクトルは、m/z939.09のピーク(上記LC-MS結果と一致)を含み、没食子酸アニオン(169Da)に対応するm/z168.46のイオンピーク、没食子酸のニュートラルロスによってもたらされると予測される質量(170Daのロス)に対応するm/z769.08のイオンピーク、およびガロイル部分(C7H4O4)について予想される質量に対応するm/z331.07からm/z939.09の152の一定差で隔てられた一連のイオンピークも含んでいた。
【0206】
上記結果は、Berardini et al[Rapid Commun Mass Spectrom 2004, 18:2208-2216]における、(マンゴの果皮、果肉および仁由来の)ガロタンニンに関連する、没食子酸のニュートラルロス(170.02Daのロス)およびガロイルの分裂(152.01Daのロス)を含む断片化経路に関する記載と一致している。
【0207】
従って、上記結果は、SH-401が複数のガロイル部分を含み、分子量が約940Daであることを示し、5つのガロイル基と分子量180Daの追加部分(例:六炭糖、SH-101はC41H32O26)とを含むことを示唆している。
【0208】
SH-401ガロタンニンの構造を1H-NMRおよび13C-NMR 1Dスペクトルデータ(700MHz、CD3OD中で入手)並びにDEPT、COSY、HMBCおよびHMQC 2D-NMRによって決定した。
【0209】
下記に詳述するように、NMRデータ解析に基づき、SH-401は
図5に示した1,2,3,4,6-ペンタガロイル-β-D-グルコース(β-D-グルコピラノース、ペンタキス(3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート)の構造を有すると判明した。
1Hおよび
13Cのケミカルシフトの帰属を下記表3にまとめた。上述した構造は、上述したUV吸収、赤外および質量スペクトル分析データによって支持されている。
【0210】
1H-NMRスペクトルは、6.5および7.15ppmのスペクトル領域内に5つの芳香族シングレットを含み、これは分子中のガロイル基の5つの磁気的に同等ではないプロトンに帰属される5つの芳香族部分の存在と一致した。
【0211】
4.35および6.25ppmの間に出現する共鳴で表される第2のセットのプロトンは、グルコピラノース部分の7つの炭素結合プロトンに帰属された。糖領域においては、スペクトルは5つの明確な低磁場シフトプロトン共鳴を示した。大きなカップリング定数を有する6.23ppmのダブレットである1つの1Hシグナルはα,β-構造のグルコースアノマープロトンに帰属させることができる。5.90ppmの1Hトリプレットおよび5.61ppm(d,J=12Hz)、4.40ppm(dd,J=12,44Hz)と5.58ppmの3つの1Hシグナルは、H-2、H-4とH-6グルコースプロトンに帰属された。これらプロトンのシグナルは、β-D-グルコピラノースのそれらと比べて有意に低磁場であり、ガロイル単位の位置がこれの中心であることを示唆した。
【0212】
グルコースメチレン基の2Hシグナルは、HMBC実験で示されるように、4.51および4.37に出現した。DEPT NMRデータは、SH-401が厳密に1つのメチレン(CH2)基を有することを示した。
【0213】
【0214】
1H-1H等核COSY実験は、表3に示したように、グルコース部分のH-1~H-6a/bのカップリングネットワークの同定を可能にした。さらに4.37ppmのプロトンと4.51ppmのプロトンとの間に観察された相関は、これらプロトンがグルコースメチレン(CH2)基に帰属されることを追認した。
【0215】
13C-NMRスペクトルは以下のシグナル(δC)を示した。93.89、72.26、69.88、74.18、74.50(5アノマーC)、63.19(グルコースメチレンC)、166.27(没食子酸エステル1、C=O)、119.81、110.69、146.61、146.61(没食子酸エステル1、C)、167.08(没食子酸エステル2、C=O)、120.32、110.48、146.43、140.36、(没食子酸エステル2、C)、166.99(没食子酸エステル3、C=O)、120.28、110.53、146.50、140.41(没食子酸エステル3、C)、167.36(没食子酸エステル4、C=O)、120.44、110.45、146.34、140.18、(没食子酸エステル4、C)、167.99、(没食子酸エステル6、C=O)、121.12、110.40、146.53、140.06、(没食子酸エステル6、C)。
【0216】
一結合1Hx13C相関を検出するためのHMQC実験は、約7.11、7.05、6.98、6.95および6.90ppmのケミカルシフトの水素に結合した5つの炭素原子(ガロイル部分のオルト位に帰属)を示した。
【0217】
広範囲1Hx13C相関を検出するためのHMBC実験は、約7.05ppmのケミカルシフトを有するプロトンが約140、122および110ppmの位置の炭素原子と相関したことを示した。
【0218】
総合すると、これら結果は、C-1、C-2、C-3、C-4およびC-6位のヒドロキル期はガロイル化されていることを示す[De Bruyn et al., Bull Soc Chim Belges 1977, 86:259-265]。
【0219】
上記分子量は、公知の市販のUVフィルター剤の3倍を超える。この因子は、皮膚への潜在的な浸透および関連した有害作用を減少さる傾向にある。
【0220】
図6に示したように、精製方法によって、得られたSH-401のSPF値は、0.01mg/mlで粗抽出物に対して10倍超に増加した、即ち、粗Rhus coriaria混合物は0.67±0.09、精製SH-401画分は9.09±0.72であった。
【0221】
この結果は、日焼け止め剤として単離した薬物が粗抽出物混合物よりも優れており、よって、ウルシのUV吸収成分としてのSH-401の重要性を確証するものである。
【0222】
図6にさらに示されるように、SH-401(0.01mg/ml)のSPF値は試験した市販の合成UVフィルター類と少なくとも同等であった。
【0223】
光安定性を評価するために、PMMA(ポリメチルメタクリレート)のスライド上に純粋SH-401の均一なフィルムを形成するために、2mlのSH-101溶液をスライド上に付して溶媒を蒸発させた。次に試料を最長25時間の種々の期間にわたりUV照射に暴露した。ガラス板をエタノール/水混合物(2:98%v/v)に浸漬し、フィルムを超音波で溶解させた。UV試料を次にUV-可視光吸光度スペクトル分析で定量化し、上述した方法に従ってSPF値を決定し、時間の関数としてプロットした。
【0224】
図7に示すように、SH-401はUV照射に対してかなりの安定性を示し、12時間のUV照射に対して実質的なSPF値の変化を示さなかった。
【0225】
総合すると、上記結果は、SH-401が効果的な日焼け止め剤として機能するのに十分なUV吸収および光安定性を有することを示す。
【0226】
実施例4
ウルシの葉由来のSH-401のヒト皮膚細胞に対する効果
活性化合物SH-401(実施例2の記載と同様に単離)の安全性と効能を探索するために、上記材料と方法の項に記載した手順に従って、ヒト皮膚移植片に対していくつかの実験を実施した。
【0227】
図8Aに示されるように、SH-401の局所投与は、試験した(最大溶解度に至る)全濃度範囲にわたり、MTTアッセイで決定した皮膚生存率を犠牲にすることはなかった。この結果は、ヒトの皮膚はSH-401を広く許容することを示す。
【0228】
図8Bおよび
図8Cが示すように、SH-401は、カスパーゼ-3活性化アッセイとELISAアッセイでそれぞれ決定したように、表皮におけるUVB誘導性アポトーシス(
図8B)およびTNFαの過剰分泌(
図8C)を弱めた。本明細書においてさらに示されるように、SH-401の効果は、対照として使用した市販の処方であるUltrasol(商標)SPF30処方(Dr.Fisher)と同等であった。
【0229】
UVB誘導性傷害に共通する特徴の1つがROS(活性酸素種)の発生であり、これはDNA損傷を増加させ、脂質過酸化の発生を増強し、細胞内のタンパク質および膜を妨害する[Schuch et al., Free Rad Biol Med 2017, 107:110-124]。よって、UVB照射の有害な影響に対抗する因子と仮定された、皮膚細胞におけるUVB誘導性ROS発生に対するSH-401の効果について試験した。UVB照射時のROS発生をDCFDA(ジクロロフルオレセイン二酢酸)アッセイおよびROS発生と関連する脂質過酸化の(ELISAによる)測定の両方で皮膚移植片において評価した。
【0230】
図9が示すように、DCFDAアッセイで決定したところ、SH-401は皮膚細胞におけるUVB誘導性ROS発生を用量依存的に弱めた。
【0231】
さらに
図10が示すように、SH-401は、皮膚細胞におけるUVB誘導性の脂質過酸化を用量依存的に弱めた。
【0232】
上記結果は、SH-401はUVB照射による皮膚細胞におけるROS形成を弱めることを示す。
【0233】
DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)法を用いて抗酸化能をさらに評価した。SH-401の存在下におけるDPPHの色変化を検量線に基づきTrolox(6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸)当量を抗酸化能に換算した。
【0234】
図11に示すように、SH-401は強力な抗酸化剤であり、1重量パーセントの溶液が100グラム当たり2,310マイクロモルのTrolox当量(TE)単位を示した。
【0235】
これらの結果は、UV照射に対するSH-401による防御は、少なくとも部分的に、化合物の抗酸化性質によって仲介されることを示す。
【0236】
さらに、OxiSelect(商標)コメットアッセイキットを製造者の説明書に従って使用し、同様に処理した試料のDNA断片化についてCOMET(単細胞ゲル電気泳動)アッセイにより決定した。
【0237】
図12に示したように、COMETアッセイによって決定したところ、SH-401はUVB誘導性DNA損傷を弱めた。
【0238】
図13に示したように、SH-401は、UVBによって生じる初期型のDNA変異原性であるUVB誘導性のシクロブタンピリミジン二量体(CPD)の形成を減少させた。
【0239】
SH-401の細胞に対する効果を処理皮膚移植片の組織学的試験によってさらに求めた。
【0240】
図14A~14Dに示したように、UVB照射は核濃縮「日焼け細胞」の形成および表皮層の減少を誘導し(
図14B)、SH-401は照射のこういった有害な効果を逆転させた。
【0241】
これらの結果は、SH-401がヒトの皮膚をUV照射から防御するうえで効果的であることを示す。
【0242】
実施例5
皮膚老化および創傷治癒に対するSH-401の効果
SH-401の皮膚老化に対する効果を評価するために、皮膚老化および皴形成において影響を受ける、細胞外マトリックスバランスの次の2つの重要な因子を試験した:環境損傷に続くコラーゲン合成、およびコラーゲン分解のカギとなる酵素であるマトリックスメタロプロテイナーゼ-1(MMP1)の活性。
【0243】
図15Aおよび
図15Bに示したように、SH-401は、環境損傷(UVB照射)に続いて、用量依存的にコラーゲン合成を促進し、MMP1活性を減少させた。
【0244】
これら結果は、SH-401が皮膚においてアンチエイジング性能を発揮することを示す。
【0245】
皮膚の創傷治癒に対するSH-401の効果をコンフルエントなHaCaT細胞の創傷閉鎖in vitroモデルを用いて求めた。
【0246】
図16に示したように、SH-401はin vitroのモデルにおいて創傷閉鎖を促進した。
【0247】
これら結果は、SH-401が創傷治癒を促進することを示す。
【0248】
本発明をその特定の実施形態との関連で説明したが、多数の代替、改変および変種が当業者には明らかであろう。したがって、そのような代替、改変および変種の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
【0249】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれについて具体的且つ個別の参照により本明細書に組み込む場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本願におけるいかなる参考文献の引用または特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。
【0250】
さらに本願の基礎出願に係る書類も、本参照をもって本明細書に完全に組み込まれたものとする。
【国際調査報告】