(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(54)【発明の名称】局所ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20220314BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220314BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220314BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220314BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220314BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220314BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220314BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220314BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C07D495/04 105Z
C07D495/04 CSP
A61K31/5377
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/42
A61K47/02
A61K47/36
A61P43/00 111
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545964
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020016876
(87)【国際公開番号】W WO2020163525
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521345693
【氏名又は名称】ベンセラ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】アフメド エフ.アブデル-マギド
(72)【発明者】
【氏名】アーギス カイドニーウス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロッシ
(72)【発明者】
【氏名】ホック エス.タン
【テーマコード(参考)】
4C071
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC02
4C071CC21
4C071EE13
4C071FF05
4C071GG06
4C071HH18
4C071JJ01
4C071JJ08
4C071KK14
4C071LL01
4C076AA06
4C076AA07
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC11
4C076DD08A
4C076DD08N
4C076DD27P
4C076DD37A
4C076DD37N
4C076DD38A
4C076DD38N
4C076DD39A
4C076DD39N
4C076DD41A
4C076DD41N
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4C076DD42N
4C076DD45A
4C076DD45N
4C076DD46A
4C076DD46N
4C076DD47A
4C076DD47N
4C076DD55A
4C076DD55N
4C076EE06P
4C076EE09P
4C076EE23A
4C076EE23N
4C076EE30P
4C076EE32P
4C076EE36P
4C076EE42P
4C076EE58P
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB26
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA63
4C086ZA36
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、式(I):
による化合物及び血管奇形を治療するためのその化合物を含む局所製剤を提供し、式中、添え字m、L
1、R
1、及びL
1-R
1は、本明細書に記載の通りである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
を有する化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩であって、
式中、
添え字mが0~2の整数であり、そして
i)L
1が、結合、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)S-、又は-C(O)NH-であり、そして
R
1が、C
1-6アルキル、C
1-6ヒドロキシアルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、C
6-10アリール、C
6-10アリール-C
1-6アルキル、又はC
6-10アリール-C
2-6アルケニルである、
ii)L
1-R
1が式:
【化2】
を有し、
式中、
波線が式(I)の隣接酸素原子への連結を示し、
添え字tが0~1の整数であり、
添え字p及びqが独立して0~2の整数であり、
R
3が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
4が水素であり、又はR
3及びR
4が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
6が水素、C
1-6アルキル、又はC
2-6アルケニルであり、又はR
5及びR
6が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、そして
R
7が水素、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
1-6アルキル-C(O)-、又はC
2-6アルケニル-C(O)-であり、又は
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そして
R
6及びR
7が組み合わさって、O、S、及びNから選択されるさらなる1~2個のヘテロ原子を環の頂点として任意選択で有する3~6員複素環を形成する、又は
iii)L
1が-C(O)-であり、そして
R
1が、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸又は10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である
化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩。
【請求項2】
添え字mが0又は1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(II)又は(III):
【化3】
を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
式(IIa):
【化4】
を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
次式:
【化5】
からなる群より選択される式を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
1がメチル又はエチルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
1がフェニル-CH=CH-である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
添え字p及びqがそれぞれ0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
式(IIa-1)又は(IIIa-1)を有する、請求項8に記載の化合物。
【化6】
【請求項10】
前記8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸が、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載化合物。
【請求項11】
前記10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸が、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ワクチン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、コルンビン酸、ピノレン酸、及びステアリドン酸からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
次式:
【化7】
からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
血管奇形を治療するための局所製剤であって、
a)式(I):
【化8】
を有する化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩であって、
式中、
添え字mが0~2の整数であり、そして
i)L
1が、結合、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)S-、又は-C(O)NH-であり、そして
R
1が、C
1-6アルキル、C
1-6ヒドロキシアルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、C
6-10アリール、C
6-10アリール-C
1-6アルキル、又はC
6-10アリール-C
2-6アルケニルである、
ii)L
1-R
1が式:
【化9】
を有し、
式中、
波線が式(I)の隣接酸素原子への連結を示し、
添え字tが0~1の整数であり、
添え字p及びqが独立して0~2の整数であり、
R
3が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
4が水素であり、又はR
3及びR
4が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
6が水素、C
1-6アルキル、又はC
2-6アルケニルであり、又はR
5及びR
6が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、そして
R
7が水素、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
1-6アルキル-C(O)-、又はC
2-6アルケニル-C(O)-であり、又は
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そして
R
6及びR
7が組み合わさって、O、S、及びNから選択されるさらなる1~2個のヘテロ原子を環の頂点として任意選択で有する3~6員複素環を形成する、又は
iii)L
1が-C(O)-であり、そして
R
1が、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸又は10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である
化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、並びに
b)1つ又は複数の局所賦形剤
を含む、局所製剤。
【請求項14】
ローション、スプレー剤、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、及びパッチからなる群より選択される、請求項13に記載の局所製剤。
【請求項15】
前記1つ又は複数の局所賦形剤が、1つ又は複数の溶媒、1つ又は複数の浸透促進剤、1つ又は複数のゲル化剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の局所製剤。
【請求項16】
前記1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤が、C
2-6アルコール、C
2-6アルキレングリコール、ジ-(C
2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、C
1-3アルキル-(OCH
2CH
2)
1-5-OH、DMSO、脂肪アルコール、脂肪酸、及び脂肪エステルからなる群より選択される、請求項15に記載の局所製剤。
【請求項17】
前記1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤が、ジ-(C
2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、C
1-3アルキル-(OCH
2CH
2)
1-5-OH、DMSO、脂肪アルコール、及び脂肪酸からなる群より選択される、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項18】
前記1つ又は複数のゲル化剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボポール、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、メチルセルロース、ポロキサマー(Pluronics)、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キサンタンガム、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15に記載の局所製剤。
【請求項19】
前記C
2-6アルコールが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項20】
前記C
2-6アルコールがエタノール又はイソプロパノールである、請求項16又は19に記載の局所製剤。
【請求項21】
前記ジ-(C
2-6アルキレン)グリコールがジプロピレングリコールである、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項22】
前記ポリエチレングリコールがPEG400である、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項23】
前記C
1-3アルキル-(OCH
2CH
2)
1-5-OHが、2-(2-エトキシエトキシ)エタノールである、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項24】
前記脂肪アルコールが、カプリンアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘネイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、リグノセリルアルコール、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項25】
前記脂肪酸が、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ワクチン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、コルンビン酸、ピノレン酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項26】
前記脂肪酸が、ネオデカン酸、イソステアリン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項27】
前記脂肪エステルが、グリセリド、脂肪酸のエチレングリコールモノエステル及びジエステル、脂肪酸のプロピレングリコールモノエステル及びジエステル、ソルビタンエステル、脂肪酸のC
1-6アルキルエステル、並びにアジピン酸及びセバシン酸のジ-(C
1-6アルキル)エステルからなる群より選択される、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項28】
前記1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤が、DMSO、オレイン酸、オレイルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコール、及びPEG400からなる群より選択される、請求項17に記載の局所製剤。
【請求項29】
DMSOが、存在する場合、前記基剤製剤の30重量%~50重量%、20重量%~50重量%、30重量%~40重量%、20重量%~40重量%、又は20重量%~30重量%の量で存在する、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項30】
前記C
2-6アルコールが存在しない、請求項16に記載の局所製剤。
【請求項31】
式(I)の前記化合物が塩を含まない形態である、請求項13に記載の局所製剤。
【請求項32】
さらに安定剤を含む、請求項13~31のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項33】
式(I)の前記化合物が、無塩かつ無水ベースで、前記基剤製剤の0.05重量%~15重量%、0.5重量%~10重量%、1重量%~10重量%、2重量%~10重量%、5重量%~10重量%、又は2重量%~5重量%の量で存在する、請求項13~32のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項34】
式(I)を有する前記化合物の相対的な純度が、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって10%未満減少する、請求項13~33のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項35】
式(I)を有する前記化合物から式(IV):
【化10】
を有する対応する化合物への加水分解が、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の湿度で6か月間にわたって10%未満であり、式中、添え字mが0~2の整数である、請求項13~34のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項36】
同じ局所製剤中で、式(I)を有する前記化合物の皮膚透過速度が、式(IV)を有する前記対応する化合物の皮膚透過速度と比較して、2倍を超えて増加する、請求項13~35のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項37】
同じ局所製剤中で、式(I)を有する前記化合物の皮膚透過速度が、式(IV)を有する前記対応する化合物の皮膚透過速度と比較して、2~5倍増加する、請求項13~36のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項38】
式(I)の前記化合物が式(IIa):
【化11】
で表される、請求項13~37のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項39】
式(I)の前記化合物が、
【化12】
からなる群より選択される式で表される、請求項13~37のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項40】
式(I)の前記化合物が、式:
【化13】
で表される、請求項13~38のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項41】
式(I)の前記化合物が、式:
【化14】
で表される、請求項13~37及び39のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項42】
ホスホイノシチド-3-キナーゼ(PI3K)を阻害することを介して血管奇形を治療する方法であって、その治療を必要とする対象に、有効量の請求項13~41のいずれか一項に記載の前記局所製剤を投与することを含む、方法。
【請求項43】
前記血管奇形が、静脈奇形、動脈奇形、動静脈奇形、又はリンパ管奇形である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記局所製剤が局所的に投与される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記局所製剤が、ローション、スプレー剤、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、又はパッチとして投与される、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
皮膚を通過した後の、式(I)を有する前記化合物から式(IV)を有する対応する化合物への変換が、24時間にわたって少なくとも50%である、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月6日に出願された米国仮特許出願第62/802,093号及び2020年1月7日に出願された米国仮特許出願第62/958,049号に基づく優先権を主張する。これらの仮出願はそれぞれ、その全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府助成による研究及び開発の下でなされた発明に対する権利についての記載
該当なし
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列表」、表又はコンピュータプログラムリストの付属書類の参照
該当なし
【背景技術】
【0004】
血管異常は血管腫瘍と血管奇形に大別される。これらの病変は、さまざまな種類の異常な血管要素から構成され、主に乳児、小児、若年成人で発症して、悪化し、成人期まで持続する。血管異常は痛みを伴うことがあり、出血、感染、又は臓器障害を合併することがあり、他の組織に二次的な影響を及ぼす可能性がある。現在の治療法は、外科的切除、パルスレーザー、硬化療法などであり、それらは侵襲的で、再発のリスクを伴う。これらの血管異常に対する薬理学的な選択肢は増えてきているが、現在のところ、特異的な標的治療法は開発されていない。
【0005】
血管奇形は、現在の分類が患者の転帰と組織学的特徴しか考慮していないため、臨床的に難しい。実際、これらの病変を血管腫瘍と区別することに多くの努力が注がれている。乳児血管腫などの血管良性腫瘍は自然に退縮し、プロプラノロールで治療できる一方で、血管奇形は何年も進行し続ける。静脈奇形は、現在、治療及び予後が不足していることから、強い関心を呼んでいる。さらに、これらの病変の発症機序はいまだ不明である。
【0006】
ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)経路は、細胞の成長と増殖を促進する役割があるので、腫瘍において広く研究されてきた。PI3Kの最も一般的な変異は、p110α触媒サブユニットをコードするPIK3CA遺伝子にあり、例えば、この経路の恒常的なシグナル伝達をもたらしうる「ホットスポット(hotspot)」活性化変異E545KとH1047Rが挙げられる。結果的に、セリン/スレオニンキナーゼであるAktの活性化は、mTOR及び他の中間体の調節を通して増殖及び細胞成長経路を促進しうる。ホットスポットPIK3CA変異は、腫瘍形成を促進することにくわえて、総称してPIK3CA関連異常過剰成長スペクトラムと呼ばれる広範な非悪性過成長障害を引き起こすことも示されている。最近になって、一般人口の約5000人に1人の頻度で発生する、血管奇形のうち最も頻度の高い静脈奇形(VM)において、PIK3CAの変異が確認されている(Limaye N, et al. Am J Hum Genet. 2015;97:914-921)。これらの痛みを伴い、多く場合外観を損なう病変は、内皮細胞の過剰増殖、支持血管壁細胞の消失、及び無秩序な細胞外マトリックスを特徴とし、結果としてさまざまな組織で血管の拡張及び膨張をもたらし、皮膚の皮膚層(the cutaneous layer of the skin)でよくみられる(Uebelhoer M, et al. Cold Spring Harb Perspect Med. 2012;2)。
【0007】
米国特許第6,838,457号では、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノールが、優れたPI3K阻害活性及びがん細胞増殖抑制活性を有することが開示されている。しかし、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)経路を阻害することによって血管奇形を治療するための皮膚を通した化合物の局所送達は知られていない。これを考慮すると、血管奇形を治療するために局所的に送達できるPI3K阻害剤及びその製剤の開発が喫緊に必要である。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は、式(I):
【化1】
を有する化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩であって、
式中、
添え字mが0~2の整数であり、そして
i)L
1が、結合、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)S-、又は-C(O)NH-であり、そして
R
1が、C
1-6アルキル、C
1-6ヒドロキシアルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、C
6-10アリール、C
6-10アリール-C
1-6アルキル、又はC
6-10アリール-C
2-6アルケニルである、
ii)L
1-R
1が式:
【化2】
を有し、
式中、
波線が式(I)の隣接酸素原子への連結を示し、
添え字tが0~1の整数であり、
添え字p及びqが独立して0~2の整数であり、
R
3が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
4が水素であり、又はR
3及びR
4が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
6が水素、C
1-6アルキル、又はC
2-6アルケニルであり、若しくはR
5及びR
6が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、そして
R
7が水素、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
1-6アルキル-C(O)-、又はC
2-6アルケニル-C(O)-であり、又は
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そして
R
6及びR
7が組み合わさって、O、S、及びNから選択されるさらなる1~2個のヘテロ原子を環の頂点として任意選択で有する3~6員複素環を形成する、又は
iii)L
1が-C(O)-であり、そして
R
1が、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸若しくは10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である
化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0009】
第2の態様では、本発明は、血管奇形を治療するための局所製剤を提供する。その局所製剤は、
a)式(I):
【化3】
を有する化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩であって、
式中、
添え字mが0~2の整数であり、そして
i)L
1が、結合、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)S-、又は-C(O)NH-であり、そして
R
1が、C
1-6アルキル、C
1-6ヒドロキシアルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、C
6-10アリール、C
6-10アリール-C
1-6アルキル、若しくはC
6-10アリール-C
2-6アルケニルである、
ii)L
1-R
1が式:
【化4】
を有し、
式中、
波線が式(I)の隣接酸素原子への連結を示し、
添え字tが0~1の整数であり、
添え字p及びqが独立して0~2の整数であり、
R
3が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
4が水素であり、又はR
3及びR
4が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
6が水素、C
1-6アルキル、又はC
2-6アルケニルであり、又はR
5及びR
6が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、そして
R
7が水素、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
1-6アルキル-C(O)-、又はC
2-6アルケニル-C(O)-であり、又は
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そして
R
6及びR
7が組み合わさって、O、S、及びNから選択されるさらなる1~2個のヘテロ原子を環の頂点として任意選択で有する3~6員複素環を形成する、又は
iii)L
1が-C(O)-であり、そして
R
1が、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸若しくは10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である
化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、並びに
b)1つ又は複数の局所賦形剤
を含む。
【0010】
第3の態様では、本発明は、ホスホイノシチド-3-キナーゼ(PI3K)を阻害することを介して血管奇形を治療する方法を提供する。その方法は、その治療を必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物及び1つ又は複数の局所賦形剤を含む局所製剤を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、式(IIa)又は(IIb)の化合物を調製するための合成スキーム1を示す。
【
図2】
図2は、式(IIIa)又は(IIIb)の化合物を調製するための合成スキーム2を示す。
【
図3】
図3は、局所ゲル製剤中の化合物1.002のヒトの皮膚への累積透過を時間の関数としてプロットしたものを示す。
【
図4】
図4は、ゲル製剤中の3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(MTPP)と化合物1.002のヒトの皮膚への累積透過の比較を示す図である。
【
図5】
図5は、局所ゲル製剤の化合物1.002のヒトとマウスの皮膚への累積透過を比較したものである。
【
図6】
図6は液体リザーバー経皮パッチの系を示す。
【
図7】
図7は、経皮液体リザーバーパッチを調製するための製造プロセスのフロー図を表す。
【
図8】
図8は、3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノールの、経皮リザーバーパッチを介した7日間にわたるヒトの皮膚への累積透過をプロットしたものを示す。
【
図9】
図9は、化合物1.002の、7日間にわたる経皮リザーバーパッチを介したヒトの皮膚への累積透過をプロットしたものを示す。
【
図10】
図10は、3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノールと化合物1.002の、7日間にわたる経皮リザーバーパッチを介したヒトの皮膚への累積透過の比較を示す。
【
図11】
図11は、化合物1.002のヒトの皮膚への皮膚透過速度(skin flux)に対する、ゲル製剤中のオレイン酸と比較したモノオレイン酸グリセロール、オレイン酸オレイル、又はイソステアリン酸の効果を示す。
【
図12】
図12は、化合物1.002のヒトの皮膚への皮膚透過速度に対する、ゲル製剤中のオレイン酸と比較したネオデカン酸又はイソステアリン酸の効果を示す。
【
図13】
図13は、化合物1.002のヒトの皮膚への皮膚透過速度に対するゲル製剤中のオレイン酸の効果を示す。
【
図14】
図14は、化合物1.002のヒトの皮膚への皮膚透過速度に対するゲル製剤中のオレイン酸及びオレイルアルコールの効果を示す。
【
図15】
図15は、グリコールの組み合わせを有するゲル製剤中の化合物1.002の累積透過の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.概略
本発明は、式(I)の化合物及び血管奇形の治療のために式(I)の化合物を含む局所製剤を提供する。局所送達後、本発明の化合物は、PI3K/AKT経路の一部であるホスホイノシチド3-キナーゼ酵素の1つ又は複数を阻害することができる式(IV)の対応する化合物に実質的に変換され、それによって血管奇形の治療のための有益な治療効果をもたらす。本発明はまた、本発明の局所製剤を用いてPI3K/AKT経路を阻害することによって血管奇形を治療する方法を提供する。
【0013】
II.定義
本明細補で使用される略語は、化学及び生物学の技術分野内での慣用的な意味を有する。
【0014】
「アルキル」は、示された炭素原子数を有する(すなわち、C1-6は1~6個の炭素を意味する)直鎖又は分枝状の飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキルは、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6及びC5-6など、任意の数の炭素を含むことができる。例えば、C1-6アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルはまた、限定されないが、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど、最大24個までの炭素を有するアルキル基を指すことができる。
【0015】
「アルケニル」は、少なくとも2つの炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を有し、示された炭素原子の数を有する(すなわち、C2-6は2~6個の炭素を意味する)直鎖又は分岐状の炭化炭素を指す。アルケニルは、C2、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C3、C3-4、C3-5、C3-6、C4、C4-5、C4-5、C5、C5-6、及びC6など、任意の数の炭素を含むことができる。アルケニル基は、限定されないが、1、2、3、4、5又はそれより多い数を含む、任意の好適な数の二重結合を有することができる。アルケニル基の例としては、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニル、又は1,3,5-ヘキサトリエニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「アルコキシ」は、アルキル基を連結点につなげる酸素原子を有するアルキル基:アルキル-O-を指す。アルコキシ基は、C1-C6など任意の好適な数の炭素原子を有することができる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが挙げられる。
【0017】
「ヒドロキシアルキル」は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基で置換された上記で定義されたアルキル基を指す。アルキル基については、ヒドロキシアルキル基又はアルキルヒドロキシ基は、C1~C6など任意の好適な数の炭素原子を有することができる。例示的なヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル(ヒドロキシが1位又は2位にある)、ヒドロキシプロピル(ヒドロキシが1、2又は3位にある)、ヒドロキシブチル(ヒドロキシが1、2、3又は4位にある)、ヒドロキシペンチル(ヒドロキシが1、2、3、4又は5位にある)、ヒドロキシヘキシル(ヒドロキシが1、2、3、4、5又は6位にある)、1,2-ジヒドロキシエチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「ハロゲン」又は「ハロ」フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0019】
「ハロアルキル」は、上で定義したように、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたアルキルを指す。アルキル基としては、ハロアルキル基は、C1-C6などの任意の好適な数の炭素原子を有することができる。例えば、ハロアルキルとしては、トリフルオロメチル、フルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチルなどが挙げられる。いくつかの例では、「ペルフルオロ」という用語は、すべての水素がフッ素で置換された化合物又はラジカルを定義するために使用することができる。例えば、ペルフルオロメチルは、1,1,1-トリフルオロメチルを指す。
【0020】
「シクロアルキル」は、3~12個の環原子又は示された原子数を含有する飽和又は部分的に不飽和の単環式、縮合二環式又は架橋多環式の環集合体を指す。シクロアルキルは、C3-6や、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11、C3-12など、任意の数の炭素を含むことができる。飽和単環式シクロアルキル環としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが挙げられる。飽和二環式及び多環式シクロアルキル環としては、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン及びアダマンタンが挙げられる。また、シクロアルキル基は、環の中に1つ又は複数の二重結合や三重結合を有して、部分的に不飽和であることもできる。部分的に不飽和である代表的なシクロアルキル基としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-及び1,5-異性体)、ノルボルネン、並びにノルボルナジエンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式のC3-C8シクロアルキルである場合、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式のC3-6シクロアルキルである場合、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
「アリール」は、任意の好適な数の環原子及び任意の好適な数の環を有する芳香族環系を指す。アリール基は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の環原子など、任意の好適な数の環原子、及び6~10、6~12、又は6~14の環員を含むことができる。アリール基は、単環式であることもでき、縮合して二環式若しくは三環式の基を形成することもでき、又は結合で連結してビアリール基を形成することもできる。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチル及びビフェニルが挙げられる。いくつかのアリール基は、フェニル、ナフチル又はビフェニルなど、6~12の環員を有する。他のアリール基は、フェニル又はナフチルなど、6~10の環員を有する。いくつかの他のアリール基は、フェニルなど6個の環員を有する。
【0022】
「アリール-アルキル」は、アルキル構成要素及びアリール構成要素を有するラジカルで、そのアルキル構成要素がアリール構成要素を連結点に連結するものを指す。アルキル構成要素は、アリール構成要素と連結点に連結するために、少なくとも2価のアルキレンであることを除いて、上記で定義した通りである。アルキル構成要素は、C1-2や、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6及びC5-6など、任意の数の炭素を含むことができる。アリール構成要素は上記で定義した通りである。アリール-アルキル基の例としては、ベンジル(フェニル-CH2-)が挙げられるが、これに限定されない。アリール-アルキル基は、置換されていても、無置換であってもよい。
【0023】
「アリール-アルケニル」は、アルケニル構成要素とアリール構成要素の両方を有するラジカルで、アルケニル構成要素がアリール構成要素を連結点に連結するものを指す。アルケニル構成要素は、アリール構成要素と連結点に連結するために、少なくとも2価のアルケニレンであることを除いて、上記で定義した通りである。アルケニル構成要素は、C2や、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-8、C3、C3-4、C3-5、C3-6、C4、C4-5、C4-5、C5、C5-6、及びC6など、任意の数の炭素を含むことができる。アルケニル構成要素は、限定されないが、1、2、3、4、5又はそれより多い数を含む、任意の好適な数の二重結合を有することができる。アリール構成要素は、上記で定義した通りである。アリール-アルケニル基の例としては、フェニル-CH=CH-が挙げられるが、これに限定されない。アリール-アルケニル基は、置換されていても、無置換であってもよい。
【0024】
「複素環」又は「ヘテロシクロアルキル」は、3~12個の環員並びに1~4個のN、O及びSのヘテロ原子を有する飽和環系を指す。ヘテロ原子は、限定されないが、S(O)及びS(O)2など、酸化されていることもありうる。ヘテロシクロアルキル基は、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、又は3~12個の環員など、任意の数の環原子を含むことができる。ヘテロシクロアルキル基には、1、2、3、又は4、又は1~2、1~3、1~4、2~3、2~4、又は3~4など、任意の好適な数のヘテロ原子が含まれうる。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-及び1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、又はジチアンなどの基を挙げることができる。ヘテロシクロアルキル基は、芳香族又は非芳香族の環系に縮合して、限定されないが、インドリンを含むメンバーを形成することもできる。ヘテロシクロアルキル基は、非置換でも、置換であってもよい。例えば、ヘテロシクロアルキル基は、多数あるなかでも、C1-6アルキル又はオキソ(=O)で置換することができる。
【0025】
ヘテロシクロアルキル基は、環上の任意の位置を介して連結することができる。例えば、アジリジンは1-又は2-アジリジンであることができ、アゼチジンは1-又は2-アゼチジンであることができ、ピロリジンは1-、2-又は3-ピロリジンであることができ、ピペリジンは1-、2-、3-又は4-ピペリジンであることができ、ピラゾリジンは1-、2-、3-、又は4-ピラゾリジンであることができ、イミダゾリジンは1-、2-、3-又は4-イミダゾリジンであることができ、ピペラジンは1-、2-、3-又は4-ピペラジンであることができ、テトラヒドロフランは1-又は2-テトラヒドロフランであることができ、オキサゾリジンは2-、3-、4-又は5-オキサゾリジンであることができ、イソオキサゾリジンは2-、3-、4-又は5-イソオキサゾリジンであることができ、チアゾリジンは2-、3-、4-又は5-チアゾリジンであることができ、イソチアゾリジンは2-、3-、4-又は5-イソチアゾリジンであることができ、モルホリンは2-、3-又は4-モルホリンであることができる。
【0026】
「N結合ヘテロシクロアルキル」又は「窒素結合ヘテロシクロアルキル」は、環上のN-位を介して連結したヘテロシクロアルキル基を指す。例えば、N結合アジリジニルはアジリジン-1-イルであり、N結合アゼチジニルはアゼチジン-1-イルであり、N結合ピロリジニルはピロリジン-1-イルであり、N結合ピペリジニルはピペリジン-1-イルであり、N結合ピラゾリジニルはピラゾリジン-1-イル又はピラゾリジン-2-イルであり、N結合イミダゾリジニルはイミダゾリジン-1-イル又はイミダゾリジン-3-イルであることができ、N結合ピペラジニルはピペラジン-1-イル又はピペラジン-4-イルであり、N結合オキサゾリジニルはオキサゾリジン-3-イルであり、N結合イソオキサゾリジニルはイソオキサゾリジン-2-イルであり、N結合チアゾリジニルはチアゾリジン-3-イルであり、N結合イソチアゾリジニルはイソチアゾリジン-2-イルであり、N結合モルホリニルは4-モルホリニルである。
【0027】
ヘテロシクロアルキルが3~8個の環員及び1~3個のヘテロ原子を含む場合、代表的なメンバーとしては、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、オキサン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン及びジチアンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルはまた、5~6個の環員及び1~2個のヘテロ原子を有する環を形成することもでき、代表的な環員としては、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、及びモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同じように機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸ミメティックを指す。アミノ酸は、アミン官能基(-NH2又は-NH)とカルボキシル官能基(-COOH)を、アミノ酸それぞれに特有の側鎖(R基)とともに含有する。カルボン酸基に隣接する第1(α-)炭素に結合するアミン基を有するアミノ酸をα-アミノ酸と呼ぶ。
【0029】
本明細書において、アミノ酸は、一般に知られている3文字の記号、又はIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する1文字の記号のいずれかによって言及されうる。天然に存在するアミノ酸の例としては、アラニン(Ala/A)、グリシン(Gly/G)、イソロイシン(Ile/I)、ロイシン(Leu/L)、プロリン(Pro/P)、バリン(Val/V)、フェニルアラニン(Phe/F)、トリプトファン(Trp/W)、チロシン(Tyr/Y)、アスパラギン酸(Asp/D)、グルタミン酸(Glu/E)、アルギニン(Arg/R)、ヒスチジン(His/H)、リジン(Lys/K)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr/T)、アスパラギン(Asn/N)、グルタミン(Gln/Q)、メチオニン(Met/M)、及びシステイン(Cys/C)からなる群より選択される20個のアミノ酸が挙げられる。
【0030】
「非天然アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本構造を有することができるが、必ずしも同じ基本構造を有するとは限らない化合物を指す。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸は、修飾された側鎖(例えばノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。非天然アミノ酸としては、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、アゼチジンカルボン酸、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン、アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、ターシャリー-ブチルグリシン、2,4-ジアミノイソ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリジン、アロ-ヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルアラニン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルペンチルグリシン、N-メチルバリン、ナフタラニン、ノルバリン、オルニチン、ペンチルグリシン、ピペコリン酸及びチオプロリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「アルキレングリコール」はHO-[アルキレン-O]-Hの式を有する化合物を指し、そこにおいて、アルキレン基は2~6、2~4、又は2~3個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレングリコールはC2-6アルキレングリコールである。いくつかの実施形態では、C2-6アルキレングリコールはプロピレングリコール(1.2-プロパンジオール)である。
【0032】
「ジ-アルキレングリコール」はHO-(アルキレン-O)2-Hの式を有する化合物を指し、そこにおいて、アルキレン基は2~6、2~4、又は2~3個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、ジ-アルキレングリコールはジ-(C2-6アルキレン)グリコールである。いくつかの実施形態では、ジ-(C2-6アルキレン)グリコールはジプロピレングリコールである。ジプロピレングリコールは、1つ又は複数の異性体、例えば、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、2-(2-ヒドロキシ-プロポキシ)-プロパン-1-オール、2-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エトキシ)-プロパン-1-オール、及び3,3’-オキシビス(プロパン-1-オール)を含むことができる。
【0033】
「ポリエチレングリコール」は、添え字「n」が多岐にわたるHO-(CH2CH2O)n-OHの式を有するポリマーを指す。好適なポリエチレングリコールは、ポリマー分子の各末端に遊離ヒドロキシル基を有していてもよく、低級アルキル、例えばメチル基でエーテル化された1つ又は複数のヒドロキシル基を有していてもよい。また、エステル化可能なカルボキシ基を有するポリエチレングリコールの誘導体も好適である。本発明で有用なポリエチレングリコールは、任意の鎖長又は分子量のポリマーであることができ、枝分かれを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は約200~約9000である。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は約200~約5000である。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は約200~約900である。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は約400である。好適なポリエチレングリコールとしては、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、及びPEG900が挙げられるが、これらに限定されない。名称中の「PEG」の後に続く数字は、ポリマーの平均分子量を指す。
【0034】
「脂肪酸」は、直鎖又は分岐し、飽和又は不飽和の長い脂肪族鎖をもつカルボン酸を指す。天然に存在する脂肪酸のほとんどは、8~24個の偶数個の炭素原子からなる分岐していない鎖を有する。
【0035】
「飽和脂肪酸」は、アルキル鎖を有する脂肪酸を指す。アルキル構成要素は上記で定義した通りである。8~24個の炭素原子を有する飽和脂肪酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、及びリグノセリン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸は、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、又はイソステアリン酸である。
【0036】
「飽和脂肪酸の脂肪族鎖」は、上記で定義した対応する飽和脂肪酸のアルキル鎖を指す。脂肪族鎖は、対応する飽和脂肪酸よりも1つ少ない炭素原子を有し、例えば、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸の脂肪族鎖は、7~17個の炭素原子を有する。
【0037】
「不飽和脂肪酸」は、1つ又は複数のC=C二重結合を有する長い脂肪族鎖をもつカルボン酸を指す。C=C二重結合により、シス異性体又はトランス異性体のいずれかが生じうる。シス配置とは、二重結合に隣接する2つの水素原子が、鎖の同じ側にあることを意味する。対照的に、トランス配置は、隣接する2つの水素原子が鎖の反対側にあることを意味する。不飽和脂肪酸は10~24個の炭素を含みうる。不飽和脂肪酸には、モノ-不飽和脂肪酸、ジ-不飽和脂肪酸、及びポリ-不飽和脂肪酸が含まれる。
【0038】
モノ-不飽和脂肪酸としては、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ワクチン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、及びネルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸は、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ワクチン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、コルンビン酸、ピノレン酸、又はステアリドン酸である。
【0039】
ジ-不飽和脂肪酸としては、リノール酸、エイコサジエン酸、及びドコサジエン酸が挙げられるが、これらに限定されない。18個の炭素原子を有するジ-不飽和脂肪酸はリノール酸である。
【0040】
ポリ-不飽和脂肪酸としては、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、コルンビン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、18個の炭素原子を有するポリ-不飽和脂肪酸は、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、コルンビン酸、ピノレン酸、又はステアリドン酸である。
【0041】
「不飽和脂肪酸の脂肪族鎖」は、上記で定義した対応する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖を指す。脂肪族鎖は、対応する不飽和脂肪酸よりも1つ少ない炭素原子を有し、例えば、10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖は、9~17個の炭素原子を有する。
【0042】
「脂肪アルコール」は、飽和又は不飽和のいずれかの長い脂肪族鎖をもつ第一級アルコールを指す。また、脂肪アルコールは、わずか4~6個の炭素から22~26個もの炭素に及びうる。脂肪アルコールとしては、カプリンアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール(不飽和)、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール(不飽和)、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘネイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール(不飽和)、及びリグノセリルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「脂肪エステル」又は「脂肪酸エステル」は、脂肪酸とアルコールが結合して生じるエステルの一種である。
【0044】
「グリセリド」は、アルコール構成要素がグリセロールである場合の脂肪エステルを指す。生成されるグリセリル脂肪エステル(又はグリセリド)は、モノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドでありうる。「モノグリセリド」は、エステル結合を通してグリセロール分子に共有結合した1つの脂肪酸鎖からなるグリセリドである。「ジグリセリド」は、エステル結合を通してグリセロール分子に共有結合した2つの脂肪酸鎖からなるグリセリドである。「トリグリセリド」は、エステル結合を通してグリセロール分子に共有結合した3つの脂肪酸鎖からなるグリセリドである。
【0045】
「ソルビタンエステル」は、ソルビトールと少なくとも1つの脂肪酸とのエステル化から得られる化合物又は化合物の混合物を指す。ソルビタンエステルを得るのに有用な脂肪酸としては、本明細書に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。好適なソルビタンエステルとしては、Span20(ソルビタンモノラウレート)、40(ソルビタンモノパルミテート)、60(ソルビタンモノステアレート)、65(ソルビタントリステアレート)、80(ソルビタンモノオレエート)、及び85(ソルビタントリオレエート)を含むSpanTMシリーズ(Uniqema社から入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なソルビタンエステルとしては、R. C. Rowe and P. J. Shesky, Handbook of pharmaceutical excipients, (2006), 5th ed.に列挙されているものが挙げられる。その文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
「アジペート」はアジピン酸のジエステルを指し、「セバケート」はセバシン酸のジエステルを指し、「ラウレート」はラウリン酸のエステルを指し、「ミリステート」はミリスチン酸のエステルを指し、「パルミテート」はパルミチン酸のエステルを指し、「ステアレート」はステアリン酸のエステルを指す。いくつかの実施形態では、アジペート、セバケート、ラウレート、ミリステート、パルミテート、又はステアレートは、それぞれ、アジピン酸のジ-C1-6アルキルエステル、セバシン酸のジ-C1-6アルキルエステル、パルミチン酸のC1-6アルキルエステル、又はステアリン酸のグリコールモノエステルである。
【0047】
「溶媒和物」は、本明細書で提供される化合物又はその塩であって、非共有結合性の分子間力によって結合した化学量論的又は非化学量論的な量の溶媒をさらに含むものを指す。本明細書では、溶媒は非水溶媒を指す。
【0048】
「水和物」は、少なくとも1つの水分子と複合体形成した化合物を指す。本発明の化合物は、1~10個の水分子と複合体形成することができる。
【0049】
本明細書で使用される「組成物」は、指定された成分を指定された量で含む生成物、及び指定された成分を指定された量で組み合わせた結果として直接的又は間接的に生じる生成物を包含することを意図される。「薬学的に許容される」は,担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他の成分と相溶性でなければならず、そのレシピエントに悪い影響を及ぼしてはならないことを意味する。
【0050】
「薬学的に許容される賦形剤」は、活性薬剤の対象への投与及び対象物による吸収を助ける物質を指す。本発明に有用な医薬用賦形剤としては、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香料、着色料が挙げられるが、これらに限定されない。本発明における経皮/局所送達に有用な医薬品賦形剤としては、促進剤、可溶化剤、酸化防止剤、可塑剤、増粘剤、ポリマー、感圧接着剤が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、他の医薬品賦形剤が本発明に有用であることを認識するであろう。
【0051】
「基剤製剤の重量」は、式(I)の化合物又は3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(MTPPと略す)及びゲル化剤を含まない製剤の総重量を指す。
【0052】
「脂肪酸が、基剤製剤の約x重量%~約y重量%の量で存在する」は、式(I)の化合物又はMTPP及びゲル化剤を含まない基剤製剤の総重量と比較して、約x重量%~約y重量%の量で存在する脂肪酸を指す。
【0053】
「式(I)の化合物が、基剤製剤の約x重量%の量で存在する」は、式(I)の化合物及びゲル化剤を含まない製剤の総重量と比較した式(I)の化合物の重量%割合を指す。
【0054】
「1つ又は複数のゲル化剤が、基剤製剤の約x重量%~約y重量%の量で存在する」は、式(I)の化合物又はMTPP及びゲル化剤を含まない製剤の総重量と比較したゲル化剤の重量%割合を指す。例えば、「ヒドロキシプロピルセルロースが、基剤製剤の約x重量%~約y重量%の量で存在する」は、式(I)の化合物又はMTPP及びヒドロキシプロピルセルロースを含まない基剤製剤の総重量と比較したヒドロキシプロピルセルロースの重量%割合を指す。
【0055】
「局所製剤中の式(I)の化合物の相対的な純度」は、ストレス条件下(例えば80℃)又は通常の保存条件(例えば室温)で保存された、式(I)の化合物のある特定の時点(例えば10日目)での純度を、ゼロ時点(すなわち0日目)における式(I)の化合物の初期純度と比較したものを指す。従来通り、ゼロ時点(すなわち0日目)での式(I)の化合物の相対的な純度を100%とする。
【0056】
「IC50」は、最大の応答の50%阻害を達成する、そのような応答を測定するアッセイにおける特定の試験化合物の量、濃度、又は投与量を指す。
【0057】
「阻害」、「阻害する」及び「阻害剤」は、特定の作用又は機能を妨げる化合物又は妨げる方法を指す。
【0058】
「投与すること」は、例えば、ローション、スプレー剤、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、又はパッチのような局所投与を指す。
【0059】
「局所(topical)」は、疾患又は病態、例えば血管奇形を治療するための、好適な化合物(例えば活性薬剤)又は化合物(例えば活性薬剤)を含む組成物の皮膚への適用を意味する。いくつかの実施形態では、「局所」は、血管奇形を治療するための、表皮又は真皮への十分な浸透を伴う、好適な化合物(例えば活性薬剤)又は化合物(例えば活性薬剤)を含む組成物の皮膚への適用を意味する。局所適用のいくつかの実施形態では、化合物又は組成物は、著しい全身暴露も、他の器官系の疾患を治療又は予防する意図もなしに、表皮又は真皮に浸透する。局所適用のいくつかの実施形態では、化合物又は組成物は、全身への分布のために皮膚を横切って経皮的に送達される。例としては、薬物送達に使用される経皮パッチが挙げられる。
【0060】
「治療する」、「治療すること」、「治療」は、傷害、病状、又は病態の治療又は改善の成功のいずれの指標も指し、緩和、寛解、症状の軽減、又は傷害、病状、又は病態を患者にとってより耐えられるものにすること、変性又は衰退の速度を遅くすること、変性の最終点での衰弱を軽くすること、患者の身体的又は精神的な健康状態を改善することなど、客観的又は主観的なパラメーターを含む。症状の治療又は改善は、身体検査、精神神経検査、及び/又は精神医学的評価の結果を含む客観的又は主観的なパラメーターに基づくことができる。
【0061】
「患者」又は「対象」は、本明細書に記載の医薬組成物の投与によって治療できる疾患又は病態に罹患している、又はそれに罹患しやすい生存生物を指す。非限定的な例としては、ヒト、他の哺乳類、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、及び他の非哺乳類動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。
【0062】
「治療有効量」は、特定された疾患又は病態を治療又は改善するために、又は検出可能な治療又は抑制効果を示すために有用な化合物又は医薬組成物の量を指す。正確な量は治療の目的に依存することなり、当業者であれば公知の技術を用いて確めることができるであろう(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1 3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999)、Pickar, Dosage Calculations (1999)、及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkins)を参照)。
【0063】
「約」は、指定された値を含む値の範囲であって、当業者であれば指定された値と合理的に同様であると考えるであろう範囲を意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、当該技術分野で一般的に許容される測定を用いて標準偏差内であることを意味する。いくつかの実施形態では、約は、指定された値の+/-10%に及ぶ範囲を意味する。いくつかの実施形態では、約は、指定された値を意味する。
【0064】
「1つ(A)」、「1つ(an)」又は「1つ(a(n))」は、本明細書において置換基の群又は「置換基」に関して使用される場合、少なくとも1つを意味する。例えば、化合物が「1つの(an)」アルキル又はアリールで置換されている場合、化合物は、任意選択で少なくとも1つのアルキル及び/又は少なくとも1つのアリールで置換され、各アルキル及び/又はアリールは任意選択で異なる。別の例では、化合物が「1つの(a)」の置換基(substituent group)で置換されている場合、化合物は少なくとも1つの置換基で置換され、各置換基は任意選択で異なる。
【0065】
III.化合物
1つの態様では、本発明は、
式(I):
【化5】
を有する化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩であって、
式中、
添え字mが0~2の整数であり、そして
i)L
1が、結合、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)S-、又は-C(O)NH-であり、そして
R
1が、C
1-6アルキル、C
1-6ヒドロキシアルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、C
6-10アリール、C
6-10アリール-C
1-6アルキル、又はC
6-10アリール-C
2-6アルケニルである、
ii)L
1-R
1が式:
【化6】
を有し、
式中、
波線が式(I)の隣接酸素原子への連結を示し、
添え字tが0~1の整数であり、
添え字p及びqが独立して0~2の整数であり、
R
3が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
4が水素であり、又はR
3及びR
4が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
6が水素、C
1-6アルキル、又はC
2-6アルケニルであり、又はR
5及びR
6が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、そして
R
7が水素、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
1-6アルキル-C(O)-、又はC
2-6アルケニル-C(O)-であり、又は
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そして
R
6及びR
7が組み合わさって、O、S、及びNから選択されるさらなる1~2個のヘテロ原子を環の頂点として任意選択で有する3~6員複素環を形成する、又は
iii)L
1が-C(O)-であり、そして
R
1が、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸又は10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である
化合物、又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、添え字mは0又は1である。いくつかの実施形態では、添え字mは1である。いくつかの実施形態では、添え字mは0である。
【0067】
いくつかの実施形態では、添え字mは0であり、化合物は式(II):
【化7】
で表され、
式中、L
1、R
1、及びL
1-R
1は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態において本明細書で定義されている通りである。
【0068】
いくつかの実施形態では、添え字mは1であり、化合物は式(III):
【化8】
で表され、
式中、L
1、R
1、及びL
1-R
1は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態において本明細書で定義されている通りである。
【0069】
式(I)、(II)、及び(III)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、L1は結合である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)O-である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)NH-である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)S-である。
【0070】
式(II)のいくつかの実施形態では、L
1は-C(O)-であり、化合物は式(IIa):
【化9】
で表され、
式中、R
1又はL
1-R
1としての-C(O)-R
1は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態において本明細書で定義されている通りである。
【0071】
式(II)のいくつかの実施形態では、化合物は、式(IIb)、(IIc)、及び(IId):
【化10】
のいずれか1つで表され、
式中、R
1は、C
1-6アルキル、C
1-6ヒドロキシアルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、C
6-10アリール、C
6-10アリール-C
1-6アルキル、又はC
6-10アリール-C
2-6アルケニルである。
【0072】
式(III)のいくつかの実施形態では、L
1は-C(O)-であり、化合物は、式(IIIa):
【化11】
で表され、
式中、R
1又はL
1-R
1としての-C(O)-R
1は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態において本明細書で定義されている通りである。
【0073】
式(III)のいくつかの実施形態では、化合物は、式(IIIb)、(IIIc)、及び(IIId):
【化12】
のいずれか1つで表され、
式中、R
1は、C
1-6アルキル、C
1-6ヒドロキシアルキル、C
1-6ハロアルキル、C
2-6アルケニル、C
6-10アリール、C
6-10アリール-C
1-6アルキル、又はC
6-10アリール-C
2-6アルケニルである。
【0074】
式(I)~(III)、(IIa)~(IId)、及び(IIIa)~(IIId)のいずれか1つに関して、いくつかの実施形態では、R1は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C6-10アリール、C6-10アリール-C1-6アルキル、又はC6-10アリール-C2-6アルケニルである。
【0075】
式(I)~(III)、(IIa)~(IId)、及び(IIIa)~(IIId)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R1はC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R1はメチルである。いくつかの実施形態では、R1はエチルである。
【0076】
式(I)~(III)、(IIa)~(IId)、及び(IIIa)~(IIId)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R1はC2-6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R1は、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニル、又は1,3,5-ヘキサトリエニルである。いくつかの実施形態では、R1はプロペニルである。
【0077】
式(I)~(III)、(IIa)~(IId)、及び(IIIa)~(IIId)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R1はC6-10アリール-C2-6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R1はフェニル-C2-6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R1はフェニル-CH=CH-である。
【0078】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つに関して、L
1-R
1又は-C(O)R
1は式:
【化13】
を有し、
式中、
波線が、式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つの隣接酸素原子への連結を示し、
添え字tが0~1の整数であり、
添え字p及びqが独立して0~2の整数であり、
R
3が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
4が水素であり、又はR
3及びR
4が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そしてR
6が水素、C
1-6アルキル、又はC
2-6アルケニルであり、又はR
5及びR
6が組み合わさって環状アミノ酸の側鎖であり、そして
R
7が水素、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
1-6アルキル-C(O)-、又はC
2-6アルケニル-C(O)-であり、又は
R
5が水素、又は天然若しくは非天然アミノ酸の側鎖であり、そして
R
6及びR
7が組み合わさって、O、S、及びNから選択されるさらなる1~2個のヘテロ原子を環の頂点として任意選択で有する3~6員複素環を形成する。
【0079】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、添え字tは1である。いくつかの実施形態では、添え字tは0である。
【0080】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、添え字tは1であり、添え字p及びqは独立して0~2の整数である。いくつかの実施形態では、添え字tは1であり、添え字p及びqは独立して0又は1である。いくつかの実施形態では、添え字tは1であり、添え字p及びqはそれぞれ0である。
【0081】
添え字tが1であり、添え字p及びqがそれぞれ0である場合、式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R4は水素であり、R3は、アラニン(Ala/A)、グリシン(Gly/G)、イソロイシン(Ile/I)、ロイシン(Leu/L)、バリン(Val/V)、フェニルアラニン(Phe/F)、トリプトファン(Trp/W)、チロシン(Tyr/Y)、アスパラギン酸(Asp/D)、グルタミン酸(Glu/E)、アルギニン(Arg/R)、ヒスチジン(His/H)、リジン(Lys/K)、セリン(Ser/S)、スレオニン(Thr/T)、アスパラギン(Asn/N)、グルタミン(Gln/Q)、メチオニン(Met/M)及びシステイン(Cys/C)からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。いくつかの実施形態では、R4は水素であり、R3は、アラニン(Ala/A)、グリシン(Gly/G)、イソロイシン(Ile/I)、ロイシン(Leu/L)、バリン(Val/V)、フェニルアラニン(Phe/F)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr/T)、アスパラギン(Asn/N)、及びグルタミン(Gln/Q)からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。いくつかの実施形態では、R4は水素であり、R3は、アラニン(Ala/A)、グリシン(Gly/G)、イソロイシン(Ile/I)、ロイシン(Leu/L)、バリン(Val/V)、及びフェニルアラニン(Phe/F)からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。いくつかの実施形態では、R3及びR4は一緒になってプロリン(Pro/P)を形成する。
【0082】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R5は、アラニン(Ala/A)、グリシン(Gly/G)、イソロイシン(Ile/I)、ロイシン(Leu/L)、バリン(Val/V)、フェニルアラニン(Phe/F)、トリプトファン(Trp/W)、チロシン(Tyr/Y)、アスパラギン酸(Asp/D)、グルタミン酸(Glu/E)、アルギニン(Arg/R)、ヒスチジン(His/H)、リジン(Lys/K)、セリン(Ser/S)、スレオニン(Thr/T)、アスパラギン(Asn/N)、グルタミン(Gln/Q)、メチオニン(Met/M)及びシステイン(Cys/C)からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。いくつかの実施形態では、R5は、アラニン(Ala/A)、グリシン(Gly/G)、イソロイシン(Ile/I)、ロイシン(Leu/L)、バリン(Val/V)、フェニルアラニン(Phe/F)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr/T)、アスパラギン(Asn/N)、及びグルタミン(Gln/Q)からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。いくつかの実施形態では、R5は、アラニン(Ala/A)、グリシン(Gly/G)、イソロイシン(Ile/I)、ロイシン(Leu/L)、バリン(Val/V)、及びフェニルアラニン(Phe/F)からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。
【0083】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R6及びR7は互いに独立して、水素、C1-6アルキル、又はC2-6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7はそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、R6及びR7の一方は水素であり、他方はC1-6アルキル又はC2-6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7の一方は水素であり、他方はC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7の一方は水素であり、他方はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7は互いに独立して、C1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7は互いに独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7はそれぞれメチルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7は互いに独立して、C2-6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7はそれぞれ-CH2CH=CH2である。
【0084】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R6は水素、C1-6アルキル、又はC2-6アルケニルであり、R7はC1-6アルキル-C(O)-、又はC2-6アルケニル-C(O)-である。いくつかの実施形態では、R7はメチル-C(O)-、エチル-C(O)-、プロピル-C(O)-、イソプロピル-C(O)-、ブチル-C(O)-、ペンチル-C(O)-、又はヘキシル-C(O)-である。いくつかの実施形態では、R6は水素であり、R7は-C(O)CH3である。
【0085】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R5及びR6は一緒になってプロリン(Pro/P)を形成し、R7は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルキル-C(O)-、又はC2-6アルケニル-C(O)-である。いくつかの実施形態では、R5及びR6は一緒になってプロリン(Pro/P)を形成し、R7は水素である。いくつかの実施形態では、R5及びR6は一緒になってプロリン(Pro/P)を形成し、R7はC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R5及びR6は一緒になってプロリン(Pro/P)を形成し、R7はメチルである。いくつかの実施形態では、R5及びR6は一緒になってプロリン(Pro/P)を形成し、R7はC1-6アルキル-C(O)-である。いくつかの実施形態では、R5及びR6は一緒になってプロリン(Pro/P)を形成し、R7は-C(O)CH3である。
【0086】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、R6及びR7は一緒になって、O、S、及びNから選択されるさらなる1~2個のヘテロ原子を環の頂点として任意選択で有する3~6員複素環を形成する。いくつかの実施形態では、R6及びR7は一緒になって、N結合アジリジニル、N結合アゼチジニル、N結合ピロリジニル、N結合ピペリジニル、N結合ピペラジニル、及びN結合モルホリニルから選択される3~6員複素環を形成する。
【0087】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、添え字pは1であり、R3は水素である。いくつかの実施形態では、添え字qは1であり、R5は水素である。いくつかの実施形態では、添え字pは2であり、R3は水素である。いくつかの実施形態では、添え字qは2であり、R5は水素である。
【0088】
式(I)、(II)、及び(IIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、添え字t及びqはそれぞれ0であり、化合物は式(IIa-1):
【化14】
で表され、式中、R
5、R
6、及びR
7は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態において本明細書で定義されている通りである。
【0089】
式(I)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、添え字t及びqはそれぞれ0であり、化合物は式(IIIa-1):
【化15】
で表され、式中、R
5、R
6、及びR
7は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態において本明細書で定義されている通りである。
【0090】
式(IIa-1)又は(IIIa-1)に関して、いくつかの実施形態では、R5は、アラニン(Ala/A)、グリシン(Gly/G)、イソロイシン(Ile/I)、ロイシン(Leu/L)、バリン(Val/V)、及びフェニルアラニン(Phe/F)からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。
【0091】
式(IIa-1)又は(IIIa-1)のいくつかの実施形態では、R6及びR7はそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、又はC2-6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルである。いくつかの実施形態では、R6及びR7はそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、R6及びR7はそれぞれメチルである。
【0092】
式(IIa-1)又は(IIIa-1)のいくつかの実施形態では、R6は水素、C1-6アルキル、又はC2-6アルケニルであり、R7はC1-6アルキル-C(O)-、又はC2-6アルケニル-C(O)-である。いくつかの実施形態では、R7はメチル-C(O)-、エチル-C(O)-、プロピル-C(O)-、イソプロピル-C(O)-、ブチル-C(O)-、ペンチル-C(O)-、又はヘキシル-C(O)-である。いくつかの実施形態では、R6は水素であり、R7は-C(O)CH3である。いくつかの実施形態では、R6はメチルであり、R7は-C(O)CH3である。
【0093】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つに関して、L1は-C(O)-であり、R1は、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸又は10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である。
【0094】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1は8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、8~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸は、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はカプリル酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はペラルゴン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はカプリン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はネオデカン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はウンデシル酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はラウリン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はトリデシル酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はミリスチン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はペンタデシル酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はパルミチン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はマルガリン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はステアリン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はイソステアリン酸の脂肪族鎖である。
【0095】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1は、10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、10~18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸は、10~18個の炭素原子を有するモノ-不飽和脂肪酸、18個の炭素原子を有するジ-不飽和脂肪酸、又は18個の炭素原子を有するポリ-不飽和脂肪酸である。
【0096】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1は、10~18個の炭素原子を有するモノ-不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、10~18個の炭素原子を有するモノ-不飽和脂肪酸は、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、及びワクチン酸からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はカプロレイン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はラウロレイン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はミリストレイン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はパルミトレイン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はサピエン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はオレイン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はエライジン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はワクチン酸の脂肪族鎖である。
【0097】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1は、18個の炭素原子を有するジ-不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はリノール酸の脂肪族鎖である。
【0098】
式(I)、(II)、(IIa)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1は、18個の炭素原子を有するポリ-不飽和脂肪酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、18個の炭素原子を有するポリ-不飽和脂肪酸は、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、コルンビン酸、ピノレン酸、及びステアリドン酸からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はα-リノレン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はγ-リノレン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はコルンビン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はピノレン酸の脂肪族鎖である。いくつかの実施形態では、L1は-C(O)-であり、R1はステアリドン酸の脂肪族鎖である。
【0099】
式(I)の例示的な化合物が表1に列挙されている。
【表1-1】
【表1-2】
【0100】
いくつかの実施形態では、式(I)、(II)、及び(IIa)のいずれか1つの化合物は式:
【化16】
を有する。
【0101】
いくつかの実施形態では、式(I)、(III)、及び(IIIa)のいずれか1つの化合物は式:
【化17】
を有する。
【0102】
本発明の化合物は塩として存在することができる。本発明はそのような塩を含む。適用可能な塩の形態の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩又はそれらのラセミ混合物を含む混合物、コハク酸塩、ベンゾエート及びグルタミン酸などのアミノ酸との塩が挙げられる。これらの塩は、当業者に公知の方法で調製することができる。また、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、又はマグネシウム塩、又はこれらに類する塩など、塩基付加塩も含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を十分な量の所望の酸と、溶媒なし又は好適な不活性溶媒中のいずれかで、接触させることによって得ることができる。許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸に由来するもの、及び酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような有機酸に由来する塩が挙げられる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含まれる。本発明のある種特有の化合物は、化合物を塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかに変換することを可能にする塩基性官能基と酸性官能基の両方を含有する。
【0103】
他の塩としては、本発明の方法で用いられる化合物の酸塩又は塩基塩が挙げられる。薬学的に許容される塩の実例(Illustrative examples)は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)の塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)の塩、及び第四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)の塩である。薬学的に許容される塩は毒性がないことが理解される。好適な薬学的に許容される塩に関するさらなる情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に記載されている。その文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
薬学的に許容される塩には、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて、比較的毒性がない酸又は塩基で調製される活性化合物の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態を十分な量の所望の塩基と、溶媒なし又は好適な不活性溶媒中のいずれかで、接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、マグネシウム塩、又はこれらに類する塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を十分な量の所望の酸と、溶媒なし又は好適な不活性溶媒中のいずれかで、接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸に由来するもの、及び酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的毒性のない有機酸に由来する塩が挙げられる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al., "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照)。本発明のある種特有の化合物は、化合物を塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかに変換することを可能にする塩基性官能基と酸性官能基の両方を含有する。
【0105】
好ましくは、化合物の中性形態は、従来のやり方で塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を単離することによって再生される。化合物の親形態は、極性溶媒への溶解性などのある特定の物理的特性において、さまざまな塩の形態と異なる。
【0106】
本発明のある特定の化合物は、水和物形態を含む溶媒和物形態だけでなく、非溶媒和物形態でも存在することができる。一般に、溶媒和物形態は非溶媒和物形態と同等であり、本発明の範囲に包含される。本発明のある特定の化合物は、複数の結晶形態又は非晶質形態で存在しうる。一般に、すべての物理的形態は、本発明によって企図される使用に関して同等であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0107】
本発明のある特定の化合物は二重結合を有し、互変異性体、幾何異性体及び個々の異性体は、本発明の範囲に包含される。本発明の化合物には、あまりにも不安定で合成及び/又は単離できないことが当該技術分野で公知のものは含まれない。
【0108】
異性体には、同じ数と種類の原子を有する、したがって同じ分子量を有するが、原子の構造配置や立体配置については異なる化合物が含まれる。
【0109】
この発明のある特定の化合物が互変異性形態で存在する可能性があることは当業者であれば明らかであろう。そのような化合物の互変異性形態はすべて本発明の範囲内である。互変異性体とは、平衡状態で存在し、ある異性体から別の異性体へと容易に変換される2つ以上の構造異性体のうちの1つを指す。
【0110】
特に断りのない限り、本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する1つ又は複数の原子において、原子同位体を天然にはない割合で含有してもよい。例えば、本発明の化合物は、例えば重水素(2H)、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、フッ素-18(18F)、窒素-15(15N)、酸素-17(17O)、酸素-18(18O)、炭素-13(13C)、又は炭素-14(14C)など放射性同位体や安定同位体で標識することができる。本発明の化合物の同位体のバリエーションはすべて、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲に包含される。
【0111】
IV.局所製剤
別の態様では、本発明は、血管奇形を治療するための局所製剤を提供する。この局所製剤は、a)式(I)を有する化合物、及びb)1つ又は複数の局所賦形剤を含み、式(I)を有する化合物は本明細書で定義及び記載されている。
【0112】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の局所賦形剤は、1つ又は複数の溶媒、1つ又は複数の浸透促進剤、1つ又は複数のゲル化剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0113】
理解されるように、本明細書に記載の局所製剤のいくつかの賦形剤は、複数の機能をもちうる。例えば、所与の物質は、溶媒と浸透促進剤の両方として作用しうる。いくつかのそのような場合には、所与の物質の特性が複数の機能を可能にする場合であっても、その物質の機能は単一であるとみなすことができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、C2-6アルコール、C2-6アルキレングリコール、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、C1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、DMSO、脂肪アルコール、脂肪酸、及び脂肪エステルからなる群より選択される。
【0115】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、C2-6アルコールを含む。いくつかの実施形態では、C2-6アルコールは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、C2-6アルコールはエタノール又はイソプロパノールである。いくつかの実施形態では、C2-6アルコールはエタノールである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はエタノールを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はエタノールを含まない。
【0116】
いくつかの実施形態では、C2-6アルコールは、製剤の0重量%~約80重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、C2-6アルコールは存在しない。いくつかの実施形態では、エタノールは存在しない。
【0117】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、C2-6アルキレングリコール、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせから選択されるグリコールを含む。いくつかの実施形態では、C2-6アルキレングリコールはプロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせから選択されるグリコールを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール及びポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、C2-6アルキレングリコールはプロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、ジ-(C2-6アルキレン)グリコールはジプロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールは、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、又はPEG900である。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG900、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、ジプロピレングリコール、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG900、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、ジプロピレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、ジプロピレングリコール及びPEG400を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、グリコールは、基剤製剤の約5重量%~約60重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、グリコールは、基剤製剤の5重量%~50重量%、5重量%~40重量%、5重量%~30重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、20重量%~60重量%、20重量%~50重量%、20重量%~40重量%、30重量%~60重量%、30重量%~50重量%、30重量%~40重量%、40重量%~60重量%、40重量%~50重量%、又は50重量%~60重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、グリコールは、基剤製剤の約5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、グリコールは、基剤製剤の約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、グリコールは、基剤製剤の約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、グリコールは、基剤製剤の約30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、グリコールは、基剤製剤の約35重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、グリコールは、基剤製剤の約40重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、グリコールは、ジプロピレングリコール、PEG400、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、グリコールはジプロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、グリコールはPEG400である。いくつかの実施形態では、グリコールはジプロピレングリコール及びPEG400である。いくつかの実施形態では、ジプロピレングリコール及び/又はPEG400は、基剤製剤の約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ジプロピレングリコール及び/又はPEG400は、基剤製剤の約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ジプロピレングリコール及び/又はPEG400は、基剤製剤の約30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ジプロピレングリコール及び/又はPEG400は、基剤製剤の約35重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ジプロピレングリコール及び/又はPEG400は、基剤製剤の約40重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ジプロピレングリコールは基剤製剤の約5重量%の量で存在し、PEG400は基剤製剤の約30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ジプロピレングリコールは基剤製剤の約5重量%の量で存在し、PEG400は基剤製剤の約35重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ジプロピレングリコールは基剤製剤の約5重量%の量で存在し、PEG400は基剤製剤の約40重量%の量で存在する。
【0119】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OHを含む。いくつかの実施形態では、C1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OHは2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(すなわちトランスクトールである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は2-(2-エトキシエトキシ)エタノールを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、2-(2-エトキシエトキシ)エタノールは、基剤製剤の約1重量%~約50重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、2-(2-エトキシエトキシ)エタノールは、基剤製剤の5重量%~50重量%、10重量%~50重量%、10重量%~40重量%、又は10重量%~30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、2-(2-エトキシエトキシ)エタノールは、基剤製剤の約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、2-(2-エトキシエトキシ)エタノールは、基剤製剤の約25重量%の量で存在する。
【0121】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は脂肪アルコールを含む。本明細書で使用される場合、「脂肪アルコール」という用語は、飽和又は不飽和である脂肪族アルコールを指す。いくつかの実施形態では、脂肪アルコールは、異なる脂肪アルコールの混合物にある。いくつかの実施形態では、脂肪アルコールは、平均で約12~20、14~20、12~18、14~18、又は16~18個の炭素を有する。好適な脂肪アルコールとしては、カプリンアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘネイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、リグノセリルアルコール、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、溶媒又は浸透促進剤は、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキジルアルコール、ヘネイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、及びリグノセリルアルコールから選択される1つ又は複数の脂肪アルコールを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はオレイルアルコールを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、脂肪アルコールは、基剤製剤の約0.5重量%~約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、脂肪アルコールは、基剤製剤の1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、又は5重量%~10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、脂肪アルコールは、基剤製剤の約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、オレイルアルコールは、基剤製剤の0.5重量%~20重量%、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、又は5重量%~10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、オレイルアルコールは、基剤製剤の約10重量%の量で存在する。
【0123】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は脂肪酸を含む。本明細書で使用される場合、「脂肪酸」という用語は、直鎖又は分枝状で、飽和又は不飽和である脂肪族の酸を指す。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、異なる脂肪酸の混合物にある。いくつかの実施形態では、脂肪酸は平均で約8~約30個の炭素を有する。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、平均で約12~20、14~20、12~18、14~18、又は16~18個の炭素を有する。好適な脂肪酸としては、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ワクチン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、コルンビン酸、ピノレン酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、カプリン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、セトステアリン酸、イソステアリン酸、セスキオレイン酸、セスキ-9-オクタデカン酸、セスキイソオクタデカン酸(sesquisooctadecanoic acid)、ベヘン酸、イソベヘン酸、アラキドン酸、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、ネオデカン酸、イソステアリン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸から選択される1つ又は複数の脂肪酸を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、ネオデカン酸、イソステアリン酸、及びオレイン酸から選択される1つ又は複数の脂肪酸を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はネオデカン酸を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はイソステアリン酸を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はオレイン酸を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はリノール酸を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はリノレン酸を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、脂肪酸は、基剤製剤の約0.5重量%~約15重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、基剤製剤の1重量%~15重量%、2重量%~15重量%、3重量%~15重量%、2重量%~15重量%、2重量%~10重量%、又は5重量%~15重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、オレイン酸は、基剤製剤の約0.5重量%~約15重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、オレイン酸は、基剤製剤の約2重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、オレイン酸は、基剤製剤の約5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、オレイン酸は、基剤製剤の約10重量%の量で存在する。
【0125】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は脂肪エステルを含む。いくつかの実施形態では、脂肪エステルは、グリセリル脂肪エステル、脂肪酸のエチレングリコールモノエステル及びジエステル、脂肪酸のプロピレングリコールモノエステル及びジエステル、ソルビタンエステル、脂肪酸のC1-6アルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、又はそれらの組み合わせのジ-(C1-6アルキル)エステルである。
【0126】
いくつかの実施形態では、脂肪エステルはグリセリドである。いくつかの実施形態では、グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドである。グリセリドは、任意選択で、スルホン酸基又はその薬学的に許容される塩で置換されていてもよい。脂肪酸のグリセリドを誘導するのに好適な脂肪酸としては、本明細書に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、グリセリドは、12~18個の炭素原子を有する脂肪酸のモノグリセリドである。いくつかの実施形態では、グリセリドはステアリン酸グリセリルである。いくつかの実施形態では、グリセリドは、モノラウリン酸グリセロール、モノカプリン酸グリセロール、モノカプリル酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、又はモノオレイン酸グリセロールである。いくつかの実施形態では、グリセリドはモノオレイン酸グリセロールである。いくつかの実施形態では、グリセリドは、12~18個の炭素原子を有する脂肪酸のトリグリセリドである。
【0127】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はグリセリドを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はモノグリセリドを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はモノオレイン酸グリセロールを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、脂肪エステルは、脂肪酸のエチレングリコールモノエステル、脂肪酸のプロピレングリコールモノエステル、又は脂肪酸のC1-6アルキルエステルである。いくつかの実施形態では、脂肪エステルは、エチレングリコールモノエステル、プロピレングリコールモノエステル、又は脂肪酸のC1-4アルキルエステルである。エチレングリコールモノエステル、プロピレングリコールモノエステル、及び脂肪酸のC1-4アルキルエステルのいずれか1つを得るのに好適な脂肪酸としては、本明細書に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、脂肪エステルは、エチレングリコールモノエステル、プロピレングリコールモノエステル、又は12~18個の炭素原子を有する脂肪酸のC1-4アルキルエステルである。脂肪酸のエステルの非限定的な例としては、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはラウリン酸メチルである。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはミリスチン酸イソプロピルである。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはパルミチン酸イソプロピルである。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはモノステアリン酸エチレングリコールである。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはモノステアリン酸プロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはモノオレイン酸エチレングリコールである。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはモノオレイン酸プロピレングリコールである。
【0129】
いくつかの実施形態では、脂肪エステルはソルビタンエステルである。ソルビタンエステルを誘導するのに好適な脂肪酸としては、本明細書に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。好適なソルビタンエステルとしては、スパン(Span)20(モノラウリン酸ソルビタン)、40(モノパルミチン酸ソルビタン)、60(モノステアリン酸ソルビタン)、65(トリステアリン酸ソルビタン)、80(モノオレイン酸ソルビタン)、及び85(トリオレイン酸ソルビタン)を含むスパンTMシリーズ(ユニケマ(Uniqema)から入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
いくつかの実施形態では、脂肪エステルは、アジピン酸のジ-(C1-4アルキル)エステル(すなわち、アジペート)又はセバシン酸のジ-(C1-4アルキル)エステル(すなわち、セバケート)である。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはジイソプロピルアジペートである。いくつかの実施形態では、脂肪エステルはジエチルセバケートである。
【0131】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、C1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、DMSO、脂肪アルコール、及び脂肪酸からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、DMSO、オレイン酸、オレイルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコール、及びPEG400からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、DMSO、オレイン酸、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコール、及びPEG400からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤は、DMSO、オレイン酸、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコール、及びPEG400からなる群より選択される。
【0132】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はDMSOを含まない。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の溶媒又は浸透促進剤はDMSOを含む。いくつかの実施形態では、DMSOは、基剤製剤の50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、又は20重量%未満の量で存在する。いくつかの実施形態では、DMSOは、基剤製剤の30重量%~50重量%、20重量%~50重量%、10重量%~50重量%、30重量%~40重量%、20重量%~40重量%、10重量%~40重量%、20重量%~30重量%、10重量%~30重量%、又は10重量%~20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、DMSOは、基剤製剤の30重量%~50重量%、20重量%~50重量%、30重量%~40重量%、20重量%~40重量%、又は20重量%~30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、DMSOは、基剤製剤の20重量%~40重量%又は20重量%~30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、DMSOは基剤製剤の約30重量%の量で存在する。
【0133】
本発明で使用できるポリマー増粘剤(ゲル化剤)としては、化粧品及び医薬品業界で頻繁に使用される親水性及びヒドロアルコール性ゲル化剤など、当業者に公知ものが挙げられる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のゲル化剤は、カルボポール(現在はカルボマーとして知られる)、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、メチルセルロース、ポロキサマー(Pluronics)、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キサンタンガム、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のゲル化剤をヒドロキシプロピルセルロース含む。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、分子量が40,000Da、80,000Da、100,000Da、140,000Da、180,000Da、280,000Da、370,000Da、700,000Da、850,000Da、1,000,000Da、1,150,000Da、及び2,500,000Daからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、分子量が140,000Da、180,000Da、280,000Da、370,000Da、700,000Da、850,000Da、1,000,000Da、及び1,150,000Daからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、分子量が700,000Da、850,000Da、1,000,000Da、及び1,150,000Daからなる群より選択される。
【0134】
本明細書に記載のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)としては、ニッソー(Nisso)SSL、ニッソーSL、ニッソーL、ニッソーLM、ニッソーLMM、ニッソーM、ニッソーH、ニッソーVH、クルーセル(Klucel)ELF、クルーセルEF、クルーセルLF、クルーセルJF、クルーセルGF、クルーセルMF、及びクルーセルHFが挙げられる。ニッソーSSLは平均分子量が40,000Daであり、ニッソーSLは平均分子量が100,000Daであり、ニッソーLは平均分子量が140,000Daであり、ニッソーLMは平均分子量が180,000Daであり、ニッソーLMMは平均分子量が280,000Daであり、ニッソーMは平均分子量が700,000Daであり、ニッソーHは平均分子量が1,000,000Daであり、ニッソーVHは平均分子量が2,500,000Daである。局所製剤におけるニッソーHPC(すなわち、ニッソーSSL、ニッソーSL、ニッソーL、ニッソーLM、ニッソーLMM、ニッソーM、ニッソーH、及びニッソーVH)の好適な粒径としては、通常の粉末(40メッシュ)、微粉末(100メッシュ)、及び超微粉末(300メッシュ)が挙げられる。ニッソーHPCのテクニカルデータシートを参照されたい。該テクニカルデータシートはその全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースはニッソーHである。クルーセルELFは平均分子量が40,000Daであり、クルーセルEFは平均分子量が80,000Daであり、クルーセルLFは平均分子量が95,000Daであり、クルーセルJFは平均分子量が140,000Daであり、クルーセルGFは平均分子量が370,000Daであり、クルーセルMFは平均分子量が850,000Daであり、クルーセルHFは平均分子量が1,150,000Daである。局所製剤におけるクルーセルHPCの好適な粒径としては、レギュラーグレードとファイングレードが挙げられる。クルーセルHPC製品のテクニカルデータシートを参照されたい。該テクニカルデータシートはその全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースはクルーセルHFである。
【0135】
1つ又は複数のゲル化剤が存在する場合、いくつかの実施形態では、局所製剤は粘度が5,000~100,000cPである。1つ又は複数のゲル化剤が存在する場合、いくつかの実施形態では、局所製剤は粘度が5,000~50,000cPである。1つ又は複数のゲル化剤が存在する場合、いくつかの実施形態では、局所製剤は粘度が5,000~15,000cPである。ヒドロキシプロピルセルロースが存在する場合、いくつかの実施形態では、局所製剤は粘度が5,000~100,000cPである。ヒドロキシプロピルセルロースが存在する場合、いくつかの実施形態では、局所製剤は粘度が5,000~50,000cPである。ヒドロキシプロピルセルロースが存在する場合、いくつかの実施形態では、局所製剤は粘度が5,000~15,000cPである。
【0136】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のゲル化剤は、基剤製剤の約0.5重量%~約30重量%の量で存在し、一方で局所製剤は粘度が5,000~100,000cPである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のゲル化剤は、基剤製剤の約0.5重量%~約30重量%の量で存在し、一方で局所製剤は粘度が5,000~50,000cPである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のゲル化剤は、基剤製剤の約0.5重量%~約30重量%の量で存在し、一方で局所製剤は粘度が5,000~15,000cPである。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、基剤製剤の約0.5重量%~約5重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約20重量%、又は約20重量%~約30重量%の量で存在し、一方で局所製剤は粘度が5,000~100,000cPである。平均分子量が700,000Da未満のヒドロキシプロピルセルロースが使用される場合、いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、基剤製剤の約5重量%~約30重量%の量で存在し、一方で局所製剤は粘度が5,000~100,000cPである。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、基剤製剤の0.5重量%~4重量%、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、1重量%~5重量%、1重量%~4重量%、1重量%~3重量%、1重量%~2重量%、又は2重量%~5重量%の量で存在し、一方で局所製剤は粘度が5000~15000cPである。いくつかの実施形態では、平均分子量が700,000Da~1,150,000Daから選択されるヒドロキシプロピルセルロースは、基剤製剤の約2重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、平均分子量が700,000Da~1,150,000Daから選択されるヒドロキシプロピルセルロースは、基剤製剤の約1重量%の量で存在する。
【0137】
いくつかの実施形態では、局所製剤は安定剤を含む。本明細書に記載の安定剤は、製剤を安定化させる薬剤又はバッファーを含む。本発明で使用するのに好適なバッファーとしては、酢酸バッファー、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、乳酸バッファー、及びホウ酸バッファーが挙げられるが、これらに限定されない。製剤を安定化させるのに好適な薬剤には抗酸化剤がある。本発明で使用するのに好適な抗酸化剤としては、クエン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、コエンザイムQ10(CoQ10)、イデベノン、リコピン、アスコルビン酸、エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)、及びシリマリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
いくつかの実施形態では、局所製剤は実質的に酸素を含まない。
【0139】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、無水の形態である。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、水和した形態である。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、無水及び水和物形態の混合物である。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明の局所製剤を調製するのに使用される式(I)の化合物は塩を含まない形態である。
【0141】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、無塩かつ無水ベースで、基剤製剤の0.05重量%~15重量%、0.5重量%~12重量%、0.5重量%~10重量%、1重量%~10重量%、2重量%~10重量%、5重量%~10重量%、又は2重量%~5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、無塩かつ無水ベースで、基剤製剤の約1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、無塩かつ無水ベースで、基剤製剤の約5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、無塩かつ無水ベースで(on a and anhydrous basis)、基剤製剤の約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、局所製剤中に飽和濃度で存在する。
【0142】
いくつかの実施形態では、エタノールは局所製剤中に存在しない。いくつかの実施形態では、DMSOは局所製剤中に存在しない。
【0143】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FI)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)50重量%~90重量%のC2-6アルコール、
c)1重量%~15重量%の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、又はそれらの組み合わせ、
d)5重量%~15重量%のC2-6アルキレングリコール、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせ、及び
e)0重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース、
ここで、b)~d)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0144】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FI-1)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)60重量%~90重量%のC2-6アルコール、
c)1重量%~15重量%の脂肪酸、及び
d)5重量%~15重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール。ここで、b)~d)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0145】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FI-2)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)60重量%~90重量%のC2-6アルコール、
c)1重量%~15重量%の脂肪酸、
d)5重量%~15重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール、及び
e)1重量%~3重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~d)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0146】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FI-3)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)60重量%~90重量%のC2-6アルコール、
c)1重量%~15重量%の脂肪アルコール、
d)5重量%~15重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール、及び
e)1重量%~3重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~d)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0147】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FI-4)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)60重量%~90重量%のC2-6アルコール、
c)1重量%~15重量%の脂肪エステル、
d)5重量%~15重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール、及び
e)1重量%~3重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~d)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0148】
上記製剤(FI)、(FI-1)、(FI-2)、(FI-3)、及び(FI-4)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、C2-6アルコールはエタノールであり、脂肪酸はオレイン酸であり、脂肪アルコールはオレイルアルコールであり、脂肪エステルはモノオレイン酸グリセロールであり、ジ-(C2-6アルキレン)グリコールはジプロピレングリコールであり、ヒドロキシプロピルセルロースはクルーセルHFである。
【0149】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/若しくは薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)2重量%~15重量%の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、又はそれらの組み合わせ、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、
e)30重量%~50重量%のC2-6アルキレングリコール、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせ、及び
f)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0150】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-1)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)5重量%~15重量%の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、又はそれらの組み合わせ、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、
e)30重量%~50重量%のC2-6アルキレングリコール、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせ、及び
f)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0151】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-2)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)5重量%~15重量%の脂肪酸、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、
e)30重量%~50重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール、並びに
f)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0152】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-3)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)5重量%~15重量%の脂肪アルコール、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、
e)30重量%~50重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール、及び
f)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0153】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-4)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)2重量%~15重量%の脂肪酸又は脂肪アルコール、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、
e)30重量%~50重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール及びポリエチレングリコール、及び
f)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0154】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-5)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)2重量%~15重量%の脂肪酸又は脂肪アルコール、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、
e)3重量%~10重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール、
f)25重量%~45重量%のポリエチレングリコール、及び
g)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~f)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0155】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-6)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)2重量%~15重量%の脂肪酸又は脂肪アルコール、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、
e)3重量%~5重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール、
f)25重量%~45重量%のポリエチレングリコール、及び
g)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~f)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0156】
製剤(FII)~(FII-6)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、脂肪酸はオレイン酸であり、脂肪アルコールはオレイルアルコールであり、脂肪エステルはモノオレイン酸グリセロールであり、C1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OHは2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(トランスクトール)であり、ジ-(C2-6アルキレン)グリコールはジプロピレングリコールであり、ポリエチレングリコールはPEG400であり、ヒドロキシプロピルセルロースはクルーセルHFである。
【0157】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-7)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)5重量%~15重量%のオレイン酸、
d)10重量%~30重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)30重量%~50重量%のジプロピレングリコール、並びに
f)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0158】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-8)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイン酸、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約40重量%のジプロピレングリコール、並びに
f)約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0159】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-9)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイン酸、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約40重量%のジプロピレングリコール、並びに
f)約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0160】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-10)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイン酸、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約40重量%のジプロピレングリコール、及び
f)約1重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0161】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-11)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイン酸、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約40重量%のジプロピレングリコール、並びに
f)約1重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0162】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-12)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)2重量%~15重量%のオレイン酸又はオレイルアルコール、
d)10重量%~30重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)3重量%~5重量%のジプロピレングリコール、
f)25重量%~45重量%のPEG400、並びに
g)0.5重量%~5重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~f)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0163】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-13)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイルアルコール、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約5重量%のジプロピレングリコール、
f)約35重量%のPEG400、並びに
g)約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~f)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0164】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-14)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート又はその水和物、溶媒和物、及び/若しくは薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイルアルコール、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約5重量%のジプロピレングリコール、
f)約35重量%のPEG400、並びに
g)約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~f)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0165】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-15)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)約33重量%のDMSO、
c)約2重量%のオレイン酸、
d)約22重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約5重量%のジプロピレングリコール、
f)約38重量%のPEG400、並びに
g)約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~f)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0166】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-16)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイルアルコール、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約5重量%のジプロピレングリコール、
f)35重量%のPEG400、並びに
g)約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~f)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0167】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FII-17)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート又はその水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)約33重量%のDMSO、
c)約2重量%のオレイン酸、
d)約22重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、
e)約5重量%のジプロピレングリコール、
f)38重量%のPEG400、並びに
g)約2重量%のヒドロキシプロピルセルロース。ここで、b)~f)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0168】
上記製剤(FII-7)~(FII-17)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースはクルーセルHFである。
【0169】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、上記の製剤(FII)、(FII-1)~(FII-17)のいずれか1つに存在しない。
【0170】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FIII)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)5重量%~15重量%の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、又はそれらの組み合わせ、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、並びに
e)30重量%~50重量%のC2-6アルキレングリコール、ジ-(C2-6アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせ。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0171】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FIII-1)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)5重量%~15重量%の脂肪酸、
d)10重量%~30重量%のC1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OH、並びに
e)30重量%~50重量%のジ-(C2-6アルキレン)グリコール。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0172】
製剤(FIII)及び(FIII-1)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、脂肪酸はオレイン酸であり、脂肪アルコールはオレイルアルコールであり、脂肪エステルはモノオレイン酸グリセロールであり、C1-3アルキル-(OCH2CH2)1-5-OHは2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(トランスクトール)であり、ジ-(C2-6アルキレン)グリコールはジプロピレングリコールである。
【0173】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FIII-2)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、0.5重量%~15重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/又は薬学的に許容される塩、
b)20重量%~30重量%のDMSO、
c)5重量%~15重量%のオレイン酸、
d)10重量%~30重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、並びに
e)30重量%~50重量%のジプロピレングリコール。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0174】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FIII-3)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約3重量%の式(I)の化合物又は水和物、溶媒和物、及び/若しくは薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイン酸、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、並びに
e)約40重量%のジプロピレングリコール。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0175】
いくつかの実施形態では、局所製剤(FIII-4)は以下を含む。
a)無塩かつ無水ベースで、約10重量%の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート又はその水和物、溶媒和物、及び/若しくは薬学的に許容される塩、
b)約30重量%のDMSO、
c)約10重量%のオレイン酸、
d)約20重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、並びに
e)約40重量%のジプロピレングリコール。ここで、b)~e)までの1つ又は複数の局所賦形剤の総重量を100%とする。
【0176】
上記製剤(FIII-2)~(FIII-4)のいずれか1つのいくつかの実施形態では、局所製剤はさらにトコフェロールを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の局所製剤は、透明、透き通った、又は単相(monophasic)の見た目の外観を有する。いくつかの実施形態では、局所製剤の見た目の外観は、80℃の温度で10日間にわたって維持される。いくつかの実施形態では、局所製剤の見た目の外観は、40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって維持される。
【0178】
1つ又は複数のゲル化剤が存在する場合、本発明に記載の局所ゲル製剤は、80℃の温度で10日間、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって安定した粘度を有する。いくつかの実施形態では、局所ゲル製剤の粘度は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって、5,000~100,000cpsを維持する。いくつかの実施形態では、局所ゲル製剤の粘度は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって、5,000~50,000cpsを維持する。いくつかの実施形態では、局所ゲル製剤の粘度は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって、5,000~15,000cpsを維持する。
【0179】
製剤中の式(I)の化合物の純度は、分析法、例えばHPLC法で決定することができる。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、時間ゼロ(すなわち0日目)に局所製剤中に存在する95%~105%の純度を有する。
【0180】
本明細書に記載の局所製剤は、80℃の温度で10日間、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって式(I)の化合物の好適な物理的安定性をもたらす。いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)を有する化合物の相対的な純度は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって10%未満減少する。いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)を有する化合物の相対的な純度は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって5%未満少する。いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)を有する化合物の相対的な純度は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって2%未満減少する。いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)を有する化合物の相対的な純度は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって1%未満減少する。
【0181】
式(I)の化合物は、下記に示すように、ある特定の条件下で式(IV)の対応する化合物に加水分解できると考えられている。
【化18】
式中、添え字m、L
1、及びR
1は本明細書で定義及び記載されている通りである。
【0182】
いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって10%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって5%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって2%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって1%未満である。
【0183】
本明細書に記載の局所製剤は、同じ組成(すなわち同じ1つ又は複数の局所賦形剤)をもつ製剤中の式(IV)の化合物と比較して、強化された皮膚透過性の増強をもたらす。皮膚透過性は、さまざまな動物皮膚モデルにおける皮膚透過速度実験によって評価することができる。いくつかの実施形態では、式(I)を有する化合物の皮膚透過速度は、同じ局所製剤中の式(IV)を有する対応する化合物の皮膚透過速度と比較して2~5倍増加する。いくつかの実施形態では、式(I)を有する化合物の皮膚透過速度は、同じ局所製剤中の式(IV)を有する対応する化合物の皮膚透過速度と比較して約2倍増加する。
【0184】
いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)の化合物は式(IIa)で表される。
【化19】
式中、R
1又はL
1-R
1としての-C(O)R
1は本明細書に定義及び記載されている通りである。
【0185】
いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)の化合物は、式(IIb)、(IIc)、及び(IId)のいずれか1つで表される。
【化20】
式中、R
1は本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態で本明細書に定義されている通りである。
【0186】
いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)の化合物は次式で表される。
【化21】
【0187】
いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)の化合物は式(IIIa)で表される。
【化22】
式中、R
1又はL
1-R
1としての-C(O)-R
1は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態において本明細書で定義されている通りである。
【0188】
いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)の化合物は、式(IIIb)、(IIIc)、及び(IIId)のいずれか1つで表される。
【化23】
式中、R
1は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態において本明細書に定義されている通りである。
【0189】
いくつかの実施形態では、製剤中の式(I)の化合物は次式で表される。
【化24】
【0190】
いくつかの実施形態では、製剤中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテートから3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノールへの加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって10%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテートから3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノールへの加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって5%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテートから3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノールへの加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって2%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテートから3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノールへの加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって1%未満である。
【0191】
いくつかの実施形態では、製剤中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテートから(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノールへの加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって10%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテートから(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノールへの加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって5%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテートから(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノールへの加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって2%未満である。いくつかの実施形態では、製剤中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテートから(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノールへの加水分解は、80℃の温度で10日間にわたって、又は40℃の温度及び75%の相対湿度で6か月間にわたって1%未満である。
【0192】
式(I)の化合物を送達するのに使用される局所製剤は、ローション、スプレー剤、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、又はパッチである。
【0193】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を送達するのに使用される局所製剤は、ローション又はクリームである。局所製剤及びそれらの調製として使用できるクリーム及びローションは、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 282-291(Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995)に開示されている。その文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0194】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を送達するのに使用される局所製剤は、ゲル、例えば二相ゲル又は単相ゲルである。ゲルは、液体によって互いに浸透した小さな無機粒子又は大きな有機分子の懸濁液からなる半固体系である。ゲルの塊(mass)が小さな個別の無機粒子のネットワークを含む場合、それは二相ゲルに分類される。単相ゲルは、明らかな境界が分散された巨大分子と液体の間に存在しないように、液体全体に均一に分散された有機巨大分子からなる。本発明で使用するのに好適なゲルは、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1517-1518(Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995)に開示されている。その文献は参照により本明細書に組み込まれる。本発明で使用するための他の好適なゲルは、米国特許第6,387,383号(2002年5月14日発行)、米国特許第6,517,847号(2003年2月11日発行)、及び米国特許第6,468,989号(2002年10月22日発行)に開示されている。各特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0195】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を送達するのに使用される局所製剤は軟膏である。軟膏は、水をもし含有したとしてもごくわずかである油性の半固体である。いくつかの例では、軟膏は、ワックス、ペトロラタム、又はゲル化した鉱油などの炭化水素をベースとするものである。本発明で使用するのに好適な軟膏は当該技術分野で周知であり、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 1585-1591(Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995)に開示されている。その文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
いくつかの実施形態では、局所投与は、本明細書に記載の局所製剤を含むパッチの形態で達成することができる。いくつかの実施形態では、パッチは皮膚上の患部に接触する。いくつかの実施形態では、パッチは、患部に隣接する皮膚上の領域に接触する。
【0197】
V.方法
第3の態様では、本発明は、ホスホイノシチド-3-キナーゼ(PI3K)を阻害することを介して血管奇形を治療する方法を提供する。その方法は、その治療を必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物及び1つ又は複数の局所賦形剤を含む局所製剤を投与することを含む。
【0198】
本明細書で使用される「血管奇形」という用語は、出生時に明らかでありうる、あるいは出生時には明らかではなく、数週間後、数ヶ月後、又は数年後に現れうる血管及び/又はリンパ管の非悪性の先天性異常を指す。いくつかの実施形態では、血管奇形は血管腫ではない。ある特定の非限定的な実施形態では、血管奇形は、平滑筋細胞及び周皮細胞の両方を含有する無秩序な壁細胞層に囲まれた、さまざまな直径の拡張した血管を形成する単一の内皮層の存在を特徴とする。
【0199】
いくつかの実施形態では、血管奇形は、静脈奇形、動脈奇形、動静脈奇形又はリンパ管奇形でありうる。ある特定の非限定的な実施形態では、対象は血管奇形に罹患している。
【0200】
血管奇形は、限定されないが、中枢神経系(脳、脊髄)、皮膚、眼(網膜を含むがこれに限定されない)、耳、(顔面)洞((facial) sinus)、肺、心臓、肝臓、胆嚢、脾臓、消化器系(食道、胃、十二指腸、腸、結腸、直腸)、膵臓、腎臓、膀胱、卵巣、精巣、関節、鼻、唇などの器官などを含む身体の多様な部位に存在又は隣接しうる。
【0201】
いくつかの実施形態では、対象は悪性病変に罹患している。
【0202】
いくつかの実施形態では、対象は悪性病変に罹患していることが知られていない。
【0203】
いくつかの実施形態では、対象は多系統の遺伝性障害に罹患している。
【0204】
いくつかの実施形態では、対象は多系統の遺伝性障害に罹患していることが知られていない。
【0205】
いくつかの実施形態では、対象は、その外科的治療が高リスクとなると思われる少なくとも1つの血管奇形に罹患している。これらには、その位置のために、罹患率又は死亡率の実質的なリスクなしにアクセスすることが難しい領域(例えば、限定されないが、脳内、例えば脳幹内の奇形)における血管奇形、及び手術が禁忌である衰弱した対象における奇形が含まれることになる。さらに、複数の病変がある場合は、全体としてのリスク、効率、又は再発のリスクのために、外科的選択肢よりも内科的治療が好ましい場合がある。
【0206】
いくつかの実施形態では、対象は、例えば遺伝及び/又は以前に存在した病変のために、血管奇形の発生又は再発のリスクがある。
【0207】
いくつかの実施形態では、局所製剤は血管奇形の部位に局所的に投与される。いくつかの実施形態では、局所製剤は、ローション、スプレー剤、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、又はパッチとして局所的に投与される。
【0208】
局所送達の後、式(I)の化合物は、下記に示すように、式(IV)の対応する化合物に変換されると考えられている。
【化25】
式中、添え字m、L
1、及びR
1は本明細書で定義及び記載した通りである。
【0209】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、PI3K/AKT経路の一部であるホスホイノシチド3-キナーゼ酵素の1つ又は複数を阻害することができる式(I)の化合物を含む局所製剤の局所投与を含み、それによって血管奇形の治療のための有益な治療効果をもたらすことができる。
【0210】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、式(I)の化合物を含む局所製剤の局所投与を含み、そこにおいて、式(I)の化合物は、PI3K/AKT経路の一部であるホスホイノシチド3-キナーゼ酵素の1つ又は複数を阻害することができる式(IV)の対応する化合物に実質的に変換され、それによって血管奇形の治療のための有益な治療効果をもたらすことができる。
【0211】
いくつかの実施形態では、皮膚を通過した後の、式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への変換が、24時間にわたって少なくとも50%である。いくつかの実施形態では、皮膚を通過した後の、式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への変換が、24時間にわたって50%~99%、60%~90%、又は70%~90%である。いくつかの実施形態では、皮膚を通過した後の、式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への変換が、24時間にわたって約85%である。
【0212】
式(I)を有する化合物が非局所的な経路で送達される場合、いくつかの実施形態では、対象における式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への変換は、24時間にわたって少なくとも50%である。いくつかの実施形態では、対象における式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への変換は、24時間にわたって50%~99%、60%~90%、又は70%~90%である。いくつかの実施形態では、対象における式(I)を有する化合物から式(IV)を有する対応する化合物への変換は24時間にわたって約85%である。
【0213】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される製剤中の式(I)の化合物は、式(II)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIa-1)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(IIIa-1)のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される製剤中の式(I)の化合物は、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテートである。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される製剤中の式(I)の化合物は、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテートである。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、PI3K/AKT経路を阻害する3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノールに変換される3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテートを含む局所製剤を局所的に投与することを含み、それによって血管奇形を治療する。
【0215】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、PI3K/AKT経路を阻害する(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノールに変換される3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテートを含む局所製剤を局所的に投与することを含み、それによって血管奇形を治療する。
【0216】
本発明の治療法は、単独で投与してもよく、別の形態の医薬治療及び/又は外科治療と併用して投与してもよい。医薬治療及び/又は薬剤の非限定的な例としては、抗血管形成剤、ステロイド、mTOR阻害剤、β-遮断剤(例えばプロプラノロール)、及び/又は血圧を下げる薬剤のうちの1つ又は複数を用いた治療が挙げられるが、それらに限定されない。ある特定の実施形態では、「併用して」とは、PI3K/Akt経路の阻害剤及び別の医薬剤(pharmaceutical agent)、例えばmTOR阻害剤が、治療レジメン又は計画の一部として対象に投与されることを意味する。ある特定の実施形態では、併用しての使用にあたって、PI3K/Akt経路阻害剤と医薬剤を投与前に物理的に合わせる必要も、それらを同じ時間枠にわたって投与する必要もない。
【実施例】
【0217】
VI.実施例
一般的な合成方法
本明細書に記載の化合物は、当業者に明らかな任意の方法で調製、単離又は取得することができる。本明細書記載の化合物は、下記に示す例示的調製スキームに従って調製することができる。例示的調製スキームに示されていない反応条件、ステップ、及び反応物は、当業者にとって明らかであり、公知であろう。本明細書で使用される場合、これらのプロセス、スキーム、及び例で使用されている記号及び慣例は、特定の略語が具体的に定義されているかどうかにかかわらず、現代の科学文献、例えばthe Journal of the American Chemical Society又はthe Journal of Biological Chemistryで使用されているものと一致する。具体的には、以下の略語を例及び本明細書全体で使用することができるが、これらに限定されない。g(グラム)、mg(ミリグラム)、mL(ミリリットル)、μL(マイクロリットル)、mM(ミリモル)、μM(マイクロモル)、Hz(ヘルツ)、MHz(メガヘルツ)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、h、hr、又はhrs(時間)、min(分)、rt又はRT(室温)、MS(マススペクトロメトリー)、ESI(エレクトロスプレーイオン化)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、HPLC(高圧液体クロマトグラフィー)、THF(テトラヒドロフラン)、CDCl3(重水素化クロロホルム)、AcOH(酢酸)、Ac2O(無水酢酸)、DCM(ジクロロメタン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMSO-d6(重水素化ジメチルスルホキシド)、EtOAc(酢酸エチル)、MeOH(メタノール)、及びBOC(t-ブチルオキシカルボニル)。
【0218】
以下のすべての例では、当業者に公知の標準的なワークアップ及び精製方法を利用することができる。特に断りのない限り、温度はすべて℃(摂氏)で表す。別段の指示がない限り、反応はすべて室温で行う。本明細書で説明する合成方法論は、具体的な例の使用を通して適用可能な化学を例示することを意図しており、本開示の範囲を示すものではない。
【0219】
式(IIa)又は(IIb)の化合物は、
図1に示すように、合成スキーム1に従って重要中間体6を介して調製する。
【0220】
式(IIIa)又は(IIIb)の化合物は、
図2に示すように、合成スキーム2に従って重要中間体15を介して調製する。
【0221】
実施例1:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート(化合物1.002)
ステップ-1:メチル3-(3-メトキシベンズアミド)チオフェン-2-カルボキシラート(3)
【化26】
アセトニトリル(1075mL)中のメチル-3-アミノ-2-チオフェンカルボキシラート(2)(90g、0.57mol、1.0当量)の溶液に、炭酸カリウム(87.0g、0.63mol)を加え、それに続いて3-メトキシベンゾイルクロライド(1)(96.8g、0.57mol)を加え、混合物を還流で1時間加熱した。大部分のアセトニトリルを減圧下で蒸発させて淡い黄色っぽいの固体残渣を得た。水(2.0L)を加え、反応混合物を1時間撹拌した。固体を濾過によって集め、水(200mL)で洗浄し、乾燥させてメチル3-(3-メトキシベンズアミド)チオフェン-2-カルボキシラート(3)(156.2g、収率:93.65%)を得た。
【0222】
ステップ-2:2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オン(4)
【化27】
メタノール中のアンモニア溶液(14%、2.0L)を、メチル3-(3-メトキシベンズアミド)チオフェン-2-カルボキシラート(3)(100.0g、0.343mol)に加え、混合物を50psiのスチールボム中で70℃にて36時間加熱した。溶媒を減圧下で除去した。イソプロパノール(1.66L)を加え、それに続いて水酸化ナトリウム水溶液(2M、2.0L)を加えた。その溶液を還流下で15時間加熱し、その後、氷水浴で冷却した。反応混合物を、塩酸水溶液(4M、1.1L)を用いてpH1に酸性化し、析出した白色固体を濾過によって集め、水(2.0L)で洗浄し、真空オーブンで50℃にて乾燥させて、2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オン(4)(75.1g、収率:84.7%)を得た。
【0223】
ステップ-3:4-クロロ-2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン(5)
【化28】
2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オン(4)(150.0g、0.58mol)に、オキシ塩化リン(750mL)を加え、暗混合物を還流で5時間加熱した。過剰なオキシ塩化リンの大部分を、減圧下での蒸留によって除去した。残った油状残渣を20℃未満で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(4.0L)に加えた。反応混合物を20℃で2時間撹拌した。得られた固体を濾過によって集め、水(0.5L)で十分に洗浄した後、真空オーブンで50℃にて24時間乾燥させて、4-クロロ-2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン(5)(122.5g、76.3%)を得た。(フラスコ内の)残った粘性物質をジクロロメタン(1.5L)に溶解し、その溶液を20℃未満で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1.5L)と攪拌した。ジクロロメタン層を分離し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮して、化合物5の二回目の生成物(29.4g、18.3%)を得た。全体の収量は151.9g(94.6%)であった。
【0224】
ステップ-4:4-(2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン(化合物1.001)
【化29】
モルホリン(165.27g、1.897mol)を、メタノール(3.75L)中の4-クロロ-2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン(5)(150.0g、0.542mol)の撹拌懸濁液に加えた。その反応混合物を還流で2時間加熱した。メタノールの大部分(元の体積の85~90%)を減圧下で蒸発させた。得られた固体を濾過によって集め、次いで水(2.0L)に懸濁し、1時間撹拌した。固体を濾過によって集め、水(100mL)で洗浄し、真空オーブンで60℃にて乾燥させて、4-(2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン(1.001)(151.0g、85%)を得た。
【0225】
ステップ-5:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノール(6)
【化30】
酢酸(900mL)中の4-(2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン(1.001)(150.0g、0.458mol)の懸濁液に、HBr水溶液(48%、900mL)を加え、反応混合物を還流で24時間加熱した。反応混合物を20℃に冷却した。析出した固体を濾過によって集め、脱塩水(1.0L)で洗浄した。その固体を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(0.75L)と混合し、室温で1.0時間撹拌した。固体を濾過によって集め、水(0.75L)で十分に洗浄し、真空オーブンで50℃にて乾燥させて、粗製3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノール(6)(103.1g、収率:71.8%)を得た。
【0226】
DMSO(388mL)を粗製の6(77.7g)に室温で加えた。混合物を50℃で30分撹拌し、固体を完全に溶解させた。その溶液を35℃に冷却し、0.45ミクロンのフィルターを通して濾過した。脱塩水(1.3L)を濾液に加え、2時間撹拌した。析出した白色固体を濾過し、水(0.5L)で洗浄した後、真空オーブンで60℃にて乾燥させて純粋物質6(75.2g、96.7%)を得た。
【0227】
ステップ-6:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート(化合物1.002)
【化31】
酢酸エチル(250mL)中の、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノール(6)(10.0g、31.9mmol)と、酢酸ナトリウム(0.65g、0.25当量、3.86mol)、無水酢酸(6.52g、2.0当量、63.82mmol)の混合物を、80℃まで2.5時間加熱した。反応混合物を40℃に冷却した。活性炭(2.5g)を加え、40℃で1時間撹拌した。ハイフローベッド(hyflow bed)を通して反応混合物を濾過し、固体を酢酸エチル(50mL)で洗った。濾液を飽和炭酸水素ナトリウム水(100mL)で洗浄し、次いで脱塩水(100mL)で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、0.45ミクロンのフィルターを通して濾過し、固体を酢酸エチル(50mL)で洗った。濾液を濃縮して元の体積の約70~80%を除去した。n-ヘプタン(20mL)を加え、溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルアセテート(1.002)(9.1g、80.2%)をオフホワイトの固体として得た。
【0228】
実施例2:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルヘキサノエート(化合物1.006)
【化32】
ヘキサノイルクロリド(12.88g、95.73mmol)を、ピリジン(410.0mL)中の6(10.0g、31.9mmol)の溶液に、0℃で滴下して加えた。反応混合物を室温まで温め、16時間撹拌した。分析により、反応混合物が約95%の未反応の出発材料を含有することが示された。ヘキサノイルクロリド(4.0g)を0℃で加え、反応混合物を室温で24時間撹拌した。TLC分析により、約50%~60%の未反応の6が依然として残っていることが示された。反応混合物を真空下で濃縮した。塩化メチレン(2×500mL)を残渣に加え、それに続いて飽和NaHCO
3水溶液(1.0L)を加えた。混合物を15分間撹拌した後、撹拌を止め、有機層を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶液を濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物を、溶離液としてn-ヘプタン中0~30%のEtOAcを用いたシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製し、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルヘキサノエート(1.006)(2.4g、収率:18.3%)を黄色の粘性のある半固体として得た。
【0229】
実施例3:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルデカノエート(化合物1.008)
【化33】
デカノイルクロリド(18.2g、95.73mmol)を、ピリジン(410.0mL)中の6(10.0g、31.91mmol)の溶液に、0℃で滴下して加えた。反応混合物を室温まで温め、16時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮した。粗生成物(9.0g)を酢酸エチル(250mL)に溶解した。飽和NaHCO
3溶液(2×500mL)をその溶液に加え、室温で30分間撹拌した。有機層を分離し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて粗生成物を得た。得られた粗生成物を、n-ヘプタン中15%酢酸エチルを用いたシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製し、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルデカノエート(1.008)(10.0g、67.0%)を黄色っぽい液体として得た。
【0230】
その生成物(9.0g)をEtOAc(250mL)に溶解し、その溶液を飽和NaHCO3水溶液(500mL)と混合し、30分間撹拌した。有機層を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた生成物を、n-ヘプタン中15%のEtOAcを用いたシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーでさらに精製し、純粋な化合物1.008(8.0g、88.9%)を無色の粘性のある化合物として得た(全体の収率:59.6%)。
【0231】
実施例4:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルオレエート(化合物1.011)
【化34】
オレイン酸(10.63g、37.65mmol)、EDC HCl(6.72g、35.10mmol)、DMAP(0.97g、7.98mmol)を、DCM(310mL)中の6(10.0g、31.91mmol)の溶液に加えた。反応混合物を室温で15時間撹拌した。飽和NaHCO
3溶液(1.0L)を反応混合物に加え、15分間撹拌した。層を分離した。水層を塩化メチレン(2×500mL)で抽出し、抽出物を有機層と合わせた。合わせたCH
2Cl
2をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて粗生成物を得た。その粗生成物を、溶離液としてn-ヘプタン中0~30%の酢酸エチルを用いたシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製し、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルオレエート(1.011)(8.7g、47.18%)を無色の液体として得た。
【0232】
実施例5:エチル(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)カーボネート(化合物1.012)
【化35】
クロロギ酸エチル(10.38g、95.73mmol)を、ピリジン(410mL)中の3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェノール(6)(10.0g、31.91mmol)の撹拌溶液に、0℃で加えた。反応混合物を室温まで温め、48時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1.0L)を残渣に加え、生成物をDCM(2×500.0mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(2×500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。その粗生成物を、溶離液としてn-ヘプタン中0~30%のEtOAcを用いたシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製し、エチル(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)カーボネート(1.012)(8.0g、65.0%)を白色固体として得た。
【0233】
実施例6:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルシンナメート(化合物1.014)
【化36】
シンナモイルクロリド(15.94g、95.73mmol)を、ピリジン(410mL)中の6(10.0g、31.9mmol)の溶液に、0℃で滴下して加えた。反応混合物を室温まで温め、16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。塩化メチレン(2×500mL)を加えて残渣を溶かした。塩化メチレン溶液を飽和NaHCO
3水溶液(1.0L)で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて粗生成物を得た。その粗生成物を、溶離液としてn-ヘプタン中0~30%の酢酸エチルを用いたシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製して、エチル 3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニルシンナメート(1.014)を白色固体として2回に分けて生成物を得た(1回目生成物:1.2g、2回目生成物:11.0g、合計12.2g、全体の収率:86.2%)。
【0234】
実施例7:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテート(化合物1.015)
ステップ1:3-シアノベンゾイルクロリド(8)
【化37】
DMF(9mL)及び塩化チオニル(500mL)を、トルエン(1.0L)中の3-シアノ安息香酸(7)(1hge300g、679.8mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、室温で加えた。得られた混合物を80℃で1.5時間撹拌した。反応の進行をTLC(移動相:n-ヘプタン中40%EtOAc)でモニターした。溶媒を減圧下で蒸発させ、3-シアノベンゾイルクロリド(8)を黄色の液体として得た(105.35g、93.6%)。
【0235】
ステップ2:メチル3-(3-シアノベンズアミド)チオフェン-2-カルボキシラート(10)
【化38】
アセトニトリル(1.0L)中のメチル-3-アミノ-2-チオフェンカルボキシラート(9)(100g、636.17mmol、1.0当量)の溶液に、炭酸カリウム(96.71g、699.79mmol、1.1当量)を加え、それに続いて3-シアノベンゾイルクロリド(8)(105.34g、636.17mmol、1.0当量)を加え、混合物を還流下で2時間加熱した。反応の進行をTLC(移動相:n-ヘプタン中35%EtOAc)でモニターした。淡黄色の析出物が現れた。大部分のアセトニトリルを減圧下で蒸発させて淡黄色の固体を得た。この混合物を水(1.2L)で希釈し、0.5時間撹拌した。固体を濾過によって集め、水(0.4L)で洗浄し、50℃で乾燥させて、メチル3-(3-シアノベンズアミド)チオフェン-2-カルボキシラート(10)(172.0g、94.2%)を得た。
【0236】
ステップ3:3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)安息香酸(11)
【化39】
メタノール(4.5L)中のメチル3-(3-シアノベンズアミド)チオフェン-2-カルボキシラート(10)(229.0g、799.83mmol、1.0当量)の撹拌溶液を10℃に冷却した。アンモニアをその溶液にパージして11%アンモニア性溶液を作り、次いで、混合物を200psiのスチールボム内で、100℃で16時間加熱した。反応の進行をTLC(移動相:DCM中5%MeOH)でモニターした。次いで、溶媒を真空下で除去し、2M水酸化ナトリウム水溶液(4.5L)を加えた。この溶液を80℃で1時間加熱した。反応の進行をTLC(移動相:DCM中5%MeOH)でモニターした。混合物を10℃に冷却した。反応混合物を、4M塩酸(4.5L)を用いてpH1に酸性化し、白色の析出物を濾過によって集め、水(2.2L)で洗浄した。ウェットケーキをイソプロピルアルコール(572.5mL)中で室温にて1時間攪拌し、得られた固体を濾過によって集め、60℃で乾燥させて、化合物3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)安息香酸(11)(206.0g、94.6%)を得た。
【0237】
ステップ4:メチル3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート(12)
【化40】
メタノール(4.1L)中の3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)安息香酸(11)(205.0g、752.9mmol、1.0当量)の溶液に、硫酸(920g、9.38mol、12.46当量)を室温で加え、混合物を還流下で2時間加熱した。反応の進行をTLC(移動相:DCM中5%MeOH)でモニターした。大部分のメタノールを減圧下で蒸発させた。残渣を冷やした飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2.5L)に加えてpH7にした。固体を濾過によって集め、水(1.7L)で十分に洗浄し、50℃で乾燥させて、淡褐色固体の3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート(12)を得た(161.10g、74.69%)。
【0238】
ステップ5:メチル3-(4-クロロ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート(13)
【化41】
メチル3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート(12)(161.0g、562.33mmol、1.0当量)に、POCl
3(805.0mL)を加え、暗混合物を還流で2時間加熱した。反応の進行をTLC(移動相:DCM中5%MeOH)でモニターした。大部分のオキシ塩化リンを減圧下で蒸留して除去した。油状残渣を20℃未満で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3.5L)に加え、CH
2Cl
2(8.0L)で希釈した。有機層を分離し、水(3.5L)で洗浄し、Na
2SO
4を用いて乾燥し、濃縮して淡褐色固体のメチル 3-(4-クロロ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート(13)(115.0g、66.7%)を得た。
【0239】
ステップ6:メチル3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート(14)
【化42】
モルホリン(99.38g、1140.96mmol、3.5当量)を、メタノール(2.5L)中のメチル3-(4-クロロ-3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート(13)(100.0g、325.99mmol、1.0当量)の撹拌懸濁液に加えた。反応混合物を還流で2時間加熱した。反応の進行をTLC(移動相:n-ヘプタン中50%酢酸エチル)でモニターした。大部分のメタノールを減圧下で蒸発させた。粗生成物を、n-ヘプタン中20~50%のEtOAc、次いでDCM中0~3%MeOHを用いたシリカゲル(230~400メッシュサイズ)上のカラムクロマトグラフィーで精製して、4-(2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン(14)をオフホワイトの固体として得た(93.0g、80.26%)。
【0240】
ステップ7:(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノール(15)
【化43】
DIBAL(99.56g、700.08mmol、4.29当量)を、トルエン(1.16L)中の4-(2-(3-メトキシフェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン(14)(58.0g、163.19mmol、1.0当量)の溶液に、-78℃で窒素雰囲気下において加えた。反応混合物を-78℃で2時間攪拌した。反応の進行をTLC(移動相:n-ヘプタン中60%EtOAc)でモニターした。反応混合物をメタノール(100mL)で<20℃でクエンチした。次いで、それを水(3.5L)で希釈し、酢酸エチル(3×2.0L)で抽出した。合わせた抽出物をブライン(3.5L)で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮して、(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノール(15)をオフホワイトの固体として得た(50.0g、93.6%)。
【0241】
ステップ8:3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテート(化合物1.015)
【化44】
酢酸エチル(0.54L)中の(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノール(15)(27.0g、82.47mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、無水酢酸(59.43g、582.24mmol、7.06当量)及び酢酸ナトリウム(33.83g、412.35mmol、5.0当量)を室温で加えた。反応混合物を還流で2時間加熱した。反応の進行をTLC(移動相:n-ヘプタン中60%EtOAc)でモニターした。反応混合物を室温まで冷まし、次いで水(0.9L)で希釈した。水層を酢酸エチルで2回抽出した(1.25L×2)。合わせた抽出物を飽和NaHCO
3水溶液(0.8L)及びブライン(0.8L)で洗浄し、次いでNa
2SO
4上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテート(1.015)(27.9g、収率:91.57%、HPLC領域:97.67%)を得た。粗製1.015(27.9g、HPLC:97.67%)を酢酸エチル(83.7mL、3倍相当体積量)に懸濁し、室温で2時間撹拌した。得られた固体を濾過によって集め、酢酸エチル(14.0mL)で洗浄し、室温で乾燥させて、3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ベンジルアセテート(1.015)(25.0g、82%、HPLC領域:99.25%)を得た。
【0242】
実施例8:局所ゲル製剤の調製
本発明の局所ゲル製剤は、下記に示す手順に従って調製することができる。下記の手順に示されていない反応条件及びステップは、当業者にとって明らかであり、公知であろう。
【0243】
局所ゲル製剤を、表2に示す賦形剤を用いて調製した。液体賦形剤、すなわちDMSO、オレイン酸、トランスクトールP、及びジプロピレングリコールを、20mL容バイアル内でボルテックス撹拌によって混合した。次いで、有効成分である式(I)の化合物、例えば化合物1.002を加え、バイアル内容物を10分間超音波処理して化合物を溶解させた。その溶液は、約105mg/mLの飽和濃度に達した。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を加えて、バイアルをボルテックスでさらに10分間撹拌してゲル製剤を得た。その透明なゲルの粘度を測定し、約7,000~10,000センチポイズ(cp)の範囲であった。
【表2】
【0244】
実施例9:インビトロヒト皮膚透過試験
試験-1:化合物1.002の局所ゲル製剤
実施例8のゲル製剤をドナー相として用いて、化合物1.002のヒトの皮膚への透過と局所適用としての有効性を調べた。インビトロ皮膚透過実験では、製剤ごとに3名の皮膚ドナーと(各ドナーに対して)3つの拡散セルを使用した。ニューヨーク消防士皮膚バンク(New York Firefighters Skin Bank)、ニューヨーク州から提供された、ダーマトームで薄切りにした(Split thickness dermatomed)(厚さ約375μm)分層ヒト死体皮膚を用いて、インビトロで被験化合物(すなわち薬剤)の透過率を測定した。インビトロ皮膚透過試験はすべて、コンソール(モデルFDC-6)を備えたVertical Diffusion Cellsアセンブリ、及び加熱コントローラー(Logan Instruments社、ニュージャージー州サマセット)を使用して行った。各アセンブリは、マグネチックスターラーと1.767cm2の拡散領域を備えた6つの垂直なジャケット(37℃±0.5℃)で覆われた12mL容フランツ型拡散セルで構成されていた。
【0245】
皮膚透過速度試験を48時間の期間で行った。実験を開始後に所定の間隔(2、4、8、24、48時間)で、HPLCによって薬物の濃度を測定するためにレシーバーコンパートメントの全内容物を採取した。レシーバーコンパートメントに新鮮なレシーバーメディア(medium)を補充した。レシーバー媒体は、0.5mg/mlのオレス(Oleath)20を含むpH7.4のリン酸バッファーであり、レシーバー媒体中の薬物の飽和濃度は0.152mg/mlであった。そのレシーバーメディアへの薬物の溶解性は、各採取間隔を通してシンク条件を確実にするのに十分であった。
【0246】
レセプター相の試料を、2、4、8、12、24及び48時間において採取し、化合物1.002及び3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(化合物1.002の代謝物、MTPPと略す)の濃度を、有効なHPLC法を用いて測定した。化合物1.002のMTPPへの代謝は、エステル分解酵素によってヒトの皮膚で行われる。
【0247】
HPLC法:カラム-Gemini C-18 4.6×150mm、粒径5μm、移動相-水:アセトニトリル25:75(0.1%TFA含有)、流量-1mL/分、検出-274nm、カラム温度-40℃、及び実行時間-10分
MTPP及び化合物1.002の保持時間は、それぞれ3.9分及び7.2分であった。
【0248】
48時間の間の薬物の皮膚透過速度及び透過薬物の累積量(MTPPと化合物1.002の合計)を計算した。表3に示す。時間に対する累積透過量のプロットを
図3に示す。
【表3】
【0249】
試験-2:化合物1.002の局所ゲル製剤
化合物1.002の飽和濃度を120mg/mLとしたことを除いて、同じゲル製剤を用いて試験-1の皮膚透過速度実験を繰り返した。48時間の間に皮膚を透過したMTPP又は化合物1.002の累積量を表4に示す。
【表4】
【0250】
上記試験1及び試験2により、最初の24時間で皮膚を透過した化合物1.002の相当な量(例えば82%~100%)が、親化合物の3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(MTPPと略す)に代謝されたことが示された。最初の24時間は、実際の生体内での適用時間を表す。
【0251】
試験-3:MTPP及び化合物1.002の局所ゲル製剤
製剤うちの1つの化合物1.002を、3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(MTPPと略す)で置き換えたことを除いて、実施例8で用いた組成物及び手順に従って飽和ゲル製剤を調製した。皮膚透過速度実験を、実施例9の試験-1に記載の手順に従って行った。48時間の間に皮膚を透過したMTPP又は化合物1.002の累積量を
図4に示す。この図から、化合物1.002のヒトの皮膚への透過は、MTPPの透過よりも約6倍高いことが明らかである。
【0252】
試験-4:MTPP及び化合物1.001の局所ゲル製剤
化合物1.002を、それぞれ、3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(MTPPと略す)及び化合物1.001で置き換えたことを除いて、実施例8で用いた組成物及び手順に従って飽和ゲル製剤を調製した。皮膚透過速度実験を、実施例9の試験-1に記載の手順に従って行った。
【0253】
3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(MTPP)は、その完全な化合物として透過した。MTPPのメチルエーテル誘導体である化合物1.001は、皮膚透過速度実験においてその完全な化合物として透過することが見出され、この化合物はヒトの皮膚でMTPPに代謝されないようであることを示している。MTPP及び化合物1.001の皮膚透過速度データを表5に示す。
【表5】
【0254】
試験-5:化合物1.006の局所ゲル製剤
化合物1.002を化合物1.006で置き換えたことを除いて、実施例8で用いた組成物及び手順に従って飽和ゲル製剤を調製した。皮膚透過速度実験を、実施例9の試験-1に記載の手順に従って行った。
【0255】
化合物1.006は、ヒトの皮膚を透過し、皮膚においてエステル分解酵素によって、MTPPに代謝されることがわかった。表6A及び表6Bは、2つの別々の実験による皮膚透過データを示す。表6Bに示した結果のための製剤中の化合物1.006の飽和濃度は215mg/mLであった。
【表6】
【表7】
【0256】
薬物(すなわちMTPPと化合物1.006)の合計によれば、透過した化合物1.006の総量は、化合物1.002の総量よりも顕著に少ないことがわかった。
【0257】
試験-6:化合物1.012の局所ゲル製剤
化合物1.002を化合物1.012で置き換えたことを除いて、実施例8で用いた組成物及び手順に従って飽和ゲル製剤を調製した。製剤中の化合物1.012の飽和濃度は58mg/mLであった。皮膚透過速度実験を、実施例9の試験-1に記載の手順に従って行った。
【0258】
化合物1.012はヒトの皮膚を透過し、皮膚においてエステル分解酵素によって完全にMTPPに代謝されることがわかった。皮膚透過データを表7に示す。
【表8】
【0259】
化合物1.012を含むゲル製剤の安定性試験を80℃で行った。製剤中の化合物1.012は非常に安定であることがわかった。HPLC分析で、80℃において5日後に99%の相対的な純度、10日後に96%の相対的な純度であった。
【0260】
薬物の合計(すなわちMTPPと化合物1.012)によれば、透過した化合物1.012の総量は、化合物1.002の総量よりも顕著に少ないことがわかった。
【0261】
試験-7:化合物1.008、1.011、及び1.014の局所ゲル製剤
実施例8と同様の手順を用いて、化合物1.008、1.011、又は1.014の飽和ゲル製剤をそれぞれ調製した。混和性を観察することによって飽和溶解度を決定した。皮膚透過速度実験を、実施例9の試験-1に記載の手順に従って行った。
【0262】
ゲル製剤中の化合物1.008、1.011、及び1.014の皮膚透過は、化合物1.002の透過と比較して10%未満であることがわかった。
【0263】
化合物1.008、1.011、又は1.014を含むゲル製剤の安定性試験を80℃で行った。3つの化合物はすべて、80℃で10日間非常に安定であることがわかった。
【0264】
実施例10:インビトロ皮膚透過試験-ヒトの皮膚対マウスの皮膚
実施例8のゲル製剤を使用して、ヒトとマウスの皮膚への皮膚透過を測定した。マウスの皮膚は、毒物学研究及び初期の生体内試験に広く使用されているので、この2種類の皮膚の透過の違いを理解することは重要である。皮膚透過試験は、実施例9に記載の方法に従って行った。
【0265】
図5は、化合物1.002のヒト及びマウスの皮膚への48時間の間の皮膚透過の比較を示す。
図5に示されるように、化合物1.002のマウスの皮膚への透過は、ヒトの皮膚への透過の約3倍高かった。化合物1.002のMTPPへの代謝は、どちらの皮膚でも同じように良好に進行した。
【0266】
実施例11:エタノールをベースとする局所ゲル製剤
化合物1.002及び主にエタノールを含む局所ゲル製剤を、以下の組成物を用いて、実施例8に記載の手順に従って調製した。
【表9】
【0267】
皮膚透過実験を実施例9に示した手順に従って行い、その結果を表8に示した。
【表10】
【0268】
実施例12:液体製剤の調製
溶液製剤を、増粘剤を用いずに、実施例8に記載のゲル製剤と同様に調製した。製剤の組成を表9に示す。溶液の粘度は13.4cpでああった。その溶液は局所スプレー剤又はローションとして使用することができる。
【表11】
【0269】
実施例13:化合物を送達するためのリザーバー経皮パッチ
図6に示す液体リザーバー経皮パッチの系を作り、3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(MTPPと略す)又は式(I)の化合物を送達するために使用することができる。経皮パッチを使用して、1日での送達に有用な局所適用と比較して、単回のパッチの適用で最大3.5日又は7日分の薬剤を送達することができる。
【0270】
試験-1:3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール
表10に示す組成を有する以下のゲル製剤を、実施例8に従って調製し、リザーバーパッチの系に組み込んだ。
【表12】
【0271】
表10の組成をもつゲル製剤を用いたパッチを、
図7に示す過程に従って調製した。要約すると、その過程は以下を含む:a)ゲル製剤の調製;b)パッチの形成、充填及びヒートシールを含む支持フィルムの調製;c)感圧粘着層の調製;並びにd)別個の層の積層及び個々のパッチの型抜き。
【0272】
図8は、7日に期間にわたって得られた、表10のゲル製剤を含有する液体経皮リザーバーパッチを介したMTPP皮膚透過データを示す。
【0273】
試験-2:化合物1.002
図6の液体リザーバー経皮パッチを調製し、化合物1.002の送達の研究に使用した。その経皮パッチを使用して、単回のパッチ貼付から7日間、ヒトの皮膚を通してインビトロで化合物1.002を送達した。表11に示す組成を有する以下のゲル製剤を、実施例8に従って調製し、リザーバーパッチの系に組み込んだ。
【表13】
【0274】
表11の組成を有するゲル製剤を用いたパッチを、
図7に示す方法に従って調製した。パッチは、大きさが1.8cm
2で、0.3mLのゲル製剤を含有した。パッチの支持層は、経皮パッチによく使用されるポリエステルとポリエチレンの積層体であるスコッチパック(Scotchpak)9723であった。制御膜は、孔径を制御した多孔質(最大で90%)の超高分子量ポリエチレン膜であるソリュポール(SOLUPOR)(登録商標)10P05Aであった。ヒトの皮膚に接触する感圧接着剤は、官能基をもたない非架橋のアクリレートコポリマーであるスコッチパック9723であった。
【0275】
図9は、7日の期間にわたって得られた、表11のゲル製剤を含有する液体経皮リザーバーパッチを介した化合物1.002の皮膚透過データを示す。化合物1.002は、ヒトの皮膚を透過する際に、エスタラーゼによってMTPPに代謝されることが確認された。この試験では、化合物1.002の約85%がヒトの皮膚を透過した後にMTPPに代謝されることが見出された。
【0276】
図10は、経皮リザーバーパッチからのMTPPと化合物1.002のヒト皮膚透過の比較を示す。
【0277】
実施例14:インビトロでのヒト皮膚透過-促進剤の効果
試験-1:モノオレイン酸グリセロール、オレイン酸オレイル、及びイソステアリン酸 対オレイン酸
実施例8のゲル製剤中の10%オレイン酸(OA)を、10%モノオレイン酸グリセロール、10%オレイン酸オレイル、及び10%イソステアリン酸などの他の皮膚透過促進剤に替えて、皮膚透過を実施例9に記載の手順を用いて得た。試験の結果を
図11に示す。
【0278】
試験-2:ネオデカン酸又はイソステアリン酸対オレイン酸
実施例8のゲル製剤中の10%オレイン酸(OA)を、10%ネオデカン酸(NA)、10%ネオデカン酸(NA+1%クエン酸、2%オレイン酸、及び2%オレイン酸+5%イソステアリン酸などの他の皮膚透過促進剤に替えて、皮膚透過を実施例9に記載の手順を用いて得た。試験の結果を表12及び
図12にまとめる。
【表14】
【0279】
実施例15:インビトロにおけるヒト皮膚透過-オレイン酸の効果
オレイン酸をそれぞれ1%、2%、5%及び10%使用した化合物1.002の4つの局所ゲル製剤を、実施例8に従って調製した。10%オレイン酸を用いた製剤は、表2に示したものと同じ組成物を有した。他の製剤は、10%の製剤の改変であり、オレイン酸の量が少ないことを考慮して、すべての成分を比例的に減らした。すべての製剤中の化合物1.002の溶解度を測定し、その後、調製した製剤はすべて、飽和ゲル製剤とみなした。上記に示された例と同様に、化合物1.002の大部分はMTPPに代謝された。上記の4つの製剤中の化合物1.002の透過データを
図13に示す。化合物1.002のヒトの皮膚を通した観察透過速度は、ゲル製剤中のオレイン酸の量の増加がするにつれて増加することが明らかである。
【0280】
実施例16:インビトロにおけるヒト皮膚透過-オレイン酸及びオレイルアルコールの効果
化合物1.002を含む局所ゲル製剤16A、16B、及び16Cを、実施例8に従って調製した。それぞれの製剤の組成と各製剤中の化合物1.002の量を表13に示す。3つの製剤すべてにおける化合物1.002の溶解度は飽和に達した。
【表15】
【0281】
実施例9に記載の手順を用いて、時間の関数として3つの製剤のそれぞれから皮膚透過を得た。透過した(MTPP+化合物1.002)の合計量で表される透過データを
図14に示す。24時間の時点で、3つの製剤では、透過した(MTPP+化合物1.002)の合計量の約10%が化合物1.002であった。10%のオレイン酸を含有する製剤16Bは、他の2つの製剤よりも優れた性能を示したことが、グラフから明らかである。24時間において、製剤16B中の化合物1.002の累積透過は、10%のオレイルアルコールを含有する製剤16Cの透過よりも約20%高かった。
【0282】
実施例17:グリコールの組み合わせを有する局所ゲル製剤
DPGとPEG400の組み合わせを含む局所ゲル製剤を、PEG400も他の賦形剤と混合したことを除いて実施例8の手順に従って、表14に示した賦形剤を用いて調製した。
【表16】
【0283】
皮膚透過試験を実施例9に記載の方法に従って行った。
【0284】
図15は、実施例16のゲル製剤(2%オレイン酸)、16A(2%オレイン酸)との皮膚透過の比較を示す。PEG400を含む製剤17Aと17Bの両方が、DPGのみを含む製剤16Aよりも優れた性能を示したことが、グラフから明らかである。24時間において、2%のオレイン酸を有する製剤17Aは、10%のオレイルアルコールを有する製剤17Bに匹敵する性能を示した。
【0285】
実施例18:局所ゲル製剤の加速安定性試験
試験-1:化合物1.002、1.012、又は1.006のゲル製剤
化合物1.002、1.012、及び1.006をそれぞれ有効成分として使用した局所ゲル製剤を、表2に示す賦形剤を用いて実施例8に従って調製した。これらのゲル製剤を、80℃で10日間、安定性試験に供した。80℃で10日間の条件下での安定性は、室温での3年間の安定性とほぼ同等であると考えられている。80℃で5日間及び10日間曝露した後の被験化合物の相対的な純度を、その初期純度(0日目)と比較してHPLCで測定した。各製剤の被験化合物の安定性データを表15に示す。
【表17】
【0286】
試験-2:化合物1.008、1.011、又は1.014のゲル製剤
化合物1.008、1.011、及び1.014をそれぞれ有効成分として使用した局所ゲル製剤を、表2に示す賦形剤を用いて実施例8に従って調製した。飽和溶解度は混和性を観察することによって決定した。
【0287】
80℃での加速安定性試験を各製剤について行った。下の表16に示すように、3つの化合物はすべて、80℃で10日間非常に安定であることがわかった。表に示した値は、それぞれの化合物の親化合物MTPPに対する加水分解の%割合である。
【表18】
【0288】
試験-3:オレイン酸の効果
オレイン酸の含有量をそれぞれ1%、2%、5%、10%で異なる化合物1.002の局所ゲル製剤を、表2に示した賦形剤を用いて実施例8に従って調製した。これらのゲル製剤を、室温での3年間の安定性とほぼ同等であると考えられている80℃での10日間の安定性試験に供した。80℃における0日目、5日目、7日目、及び10日目の被験化合物の純度をHPLCで測定した。被験化合物の検出不純物は、加水分解物であるMTPPのようである。オレイン酸をさまざまな含有量で有する局所製剤中の化合物1.002の安定性データを表17に示す。
【表19】
【0289】
すべての上記製剤は80℃で10日間曝露しても変色が少しも認められず、透明なままであることもわかった。
【0290】
試験-4:2%オレイン酸又は10%オレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含有するゲル製剤
実施例17のゲル製剤を、80℃で10日間の安定性試験に供した。80℃で10日間の条件下での安定性は、室温での3年間の安定性とほぼ同等であると考えられている。80℃で5日間及び10日間曝露した後の化合物1.002の相対的な純度を、その初期純度(0日目)と比較してHPLCで測定した。各製剤の化合物1.002の安定性データを表18に示す。
【表20】
【0291】
化合物1.002を飽和度80%で配合した実施例17のゲル製剤を、凍結/融解試験(-20℃/25℃、24時間/24時間;3サイクル)に供した。各製剤中の化合物1.002の外観を表19に示す。
【表21】
【0292】
実施例19:化合物1.002を含む局所ゲル製剤局所ゲル製剤の6ヶ月安定性試験
別段の指示がない限り、HPLC法を用いて化合物1.002及び不純物の含有量を測定し、ASTM D1544をゲル製剤の色の標準試験法として用い、ガスクロマトグラフ法を用いてオレイン酸の含有量を測定し、ブルックフィールド粘度計を使用してゲル製剤の粘度(cP)を測定した。
【0293】
A:ガラス容器内での化合物1.002のゲル製剤の安定性
試験-1:HPLCガラスバイアル内での10%オレイン酸及びDPGを含有するゲル製剤
局所ゲル製剤を、実施例8の手順に従って表20に示す賦形剤を用いて調製した。
【表22】
【0294】
HPLCガラスバイアル内のゲル製剤を、40℃/相対湿度75%で6か月間の安定性試験に供した。40℃/相対湿度75%における0か月目、1か月目、3か月目、及び6か月目の化合物1.002の純度をHPLCで測定した。化合物1.002の検出不純物は、加水分解物であるMTPPのようである。10%オレイン酸を有する局所製剤中の化合物1.002の安定性データを表21に示す。
【表23】
【0295】
試験-2:10%オレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含有するゲル製剤
10%オレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含む局所ゲル製剤を、PEG400も他の賦形剤と混合したことを除いて実施例8の手順に従って、表22に示した賦形剤を用いて調製した。
【表24】
【0296】
ガラス瓶内のゲル製剤を、25℃/相対湿度60%で6か月間の安定性試験に供した。25℃/相対湿度60%における0か月目、1か月目、3か月目、及び6か月目の化合物1.002の純度をHPLCで測定した。化合物1.002の検出不純物は、加水分解物であるMTPPのようである。10%オレイルアルコール、5%DPG、及び35%PEG400を有する局所製剤中の化合物1.002の安定性データを表23に示す。
【表25】
【0297】
B:Lablabo社製容器内内での化合物1.002のゲル製剤の安定性
試験-3:Lablaboアムコア(Amcor)ホイル18mL容器内の10%オレイルアルコール及びDPGを含有するゲル製剤
10%オレイルアルコール及びDPGを含む局所ゲル製剤を、実施例8の手順に従って表24に示す賦形剤を用いて調製した。
【表26】
【0298】
Lablaboアムコアホイル18mL容器内のゲル製剤を、40℃/相対湿度75%で6か月間、安定性試験に供した。40℃/相対湿度75%における0か月目、1か月目、3か月目、4か月目、5か月目、及び6か月目の化合物1.002の純度をHPLCで測定した。化合物1.002の検出不純物は、加水分解物であるMTPPのようである。10%のオレイルアルコール及び40%のDPGを有する局所製剤中の化合物1.002の安定性データを表25に示す。
【表27】
【0299】
試験-4:Lablaboアムコアホイル18mL容器内の10%オレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含有するゲル製剤
10%のオレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含む局所ゲル製剤を、PEG400も他の賦形剤と混合したことを除いて実施例8の手順に従って、表26に示した賦形剤を用いて調製した。
【表28】
【0300】
Lablaboアムコアホイル18mL容器内のゲル製剤を、40℃/相対湿度75%で6か月間の安定性試験に供した。40℃/相対湿度75%における0か月目、1か月目、2か月目、3か月目、及び6か月目の化合物1.002の純度をHPLCで測定した。化合物1.002の検出不純物は、加水分解物であるMTPPのようである。10%のオレイルアルコール、5%のDPG、及び35%のPEG400を有する局所製剤中の化合物1.002の安定性データを表27に示す。
【表29】
【0301】
試験-5:Lablabo Eliopackホイル33mL容器内の10%のオレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含有するゲル製剤
10%のオレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含む局所ゲル製剤を、PEG400も他の賦形剤と混合したことを除いて実施例8の手順に従って、試験4の表26に示した賦形剤を用いて調製した。
【0302】
Lablabo Eliopackホイル33mL容器内のゲル製剤を、40℃/相対湿度75%で6か月間の安定性試験に供した。40℃/相対湿度75%における0か月目、1か月目、2か月目、3か月目、及び6か月目の化合物1.002の純度をHPLCで測定した。化合物1.002の検出不純物は、加水分解物であるMTPPのようである。10%のオレイルアルコール、5%のDPG、及び35%のPEG400を有する局所製剤中の化合物1.002の安定性データを表28に示す。
【表30】
【0303】
試験-6:Lablabo ACSホイル55mL容器内の10%のオレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含有するゲル製剤
10%のオレイルアルコール、DPG、及びPEG400を含む局所ゲル製剤を、PEG400も他の賦形剤と混合したことを除いて実施例8の手順に従って、試験2の表22に示した賦形剤を用いて調製した。
【0304】
Lablabo ACSホイル55mL容器内のゲル製剤を、40℃/相対湿度75%で6か月間の安定性試験に供した。40℃/相対湿度75%における0か月目、1か月目、3か月目、及び6か月目の化合物1.002の純度をHPLCで測定した。化合物1.002の検出不純物は、加水分解物であるMTPPのようである。10%のオレイルアルコール、5%のDPG、及び35%のPEG400を有する局所製剤中の化合物1.002の安定性データを表29に示す。
【表31】
【0305】
実施例20:化合物1.002の安定性試験
化合物1.002の医薬品有効成分(API)としての3つのロットの安定性を12ヶ月間調べた。下の表30は、安定性試験のHPLCアッセイ結果を示す。
【表32】
【0306】
実施例21:脂質キナーゼ阻害活性
化合物1.002及び1.015の脂質キナーゼ阻害活性を、それらの対応する親化合物、すなわち3-(4-モルホリノチエノ(3,2-d)ピリミジン-2-イル)フェノール(MTPP)及び(3-(4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)メタノール(MTPPMと略す)と比較して評価した。
【0307】
脂質キナーゼ:ADP-Gloフォーマットのリアクションバイオロジー社(Reaction Biology Corporation)(RBC)の脂質キナーゼを使用した。
【0308】
アッセイの説明:キナーゼ反応は、ATPを用い、副産物としてADPを生成した。ADP生成量をADP-Gloの発光検出によって定量した。このアッセイは3段階の反応であった。まず、ATP存在下で脂質基質とのキナーゼ反応を行い、次いでADP-GloTM試薬で反応をクエンチして残存ATPを取り除き、次いで最後に、ADPをATPに変換し、それをルシフェラーゼ/ルシフェリン反応を用いて測定した。
【0309】
アッセイ手順:アッセイは以下のステップに従って行った。
1. 新鮮に調製した反応バッファーに基質を調製する。
2.キナーゼを基質溶液に入れ、穏やかに混合する。
3. アコースティック(Acoustic)技術(エコー(Echo)550、ナノリットル範囲)で100%DMSO中の化合物をキナーゼ反応混合物に送り、室温で20分間インキュベートする。
4. ATPを反応混合物に入れて反応を開始させる。
5. 30℃で30分間インキュベートする。
6. ADP-Glo試薬を用いて反応をクエンチし、40分間インキュベートする。
7. 検出用混合物(Detection Mixture)を加え、30分間インキュベートする。
8. 発光を測定する。
【0310】
データ分析:ADP標準曲線をもとに、発光をμM ADP生成に換算した。標準曲線とIC50値を得るための非線形回帰は、グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアを用いて行った。
【0311】
表31は、化合物1.002及び1.015のIC
50値を、それぞれ対応する親化合物MTPP及びMTPPMと比較して列挙したものである。
【表33】
【0312】
前述の発明は、理解を明確にするために例示及び例によって詳しく説明されているが、当業者であれば、ある特定の変更や修正が添付の請求項の範囲内で実行できることを理解するであろう。くわえて、本明細書に記載の各参考文献は、各参考文献が個別に参照により組み込まれる場合と同じ程度に、その全体が参照により組み込まれる。本出願と本明細書に記載の参考文献の間に矛盾がある場合、本出願が優先されるものとする。
【図】
【国際調査報告】