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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(54)【発明の名称】癌の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20220314BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20220314BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20220314BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20220314BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220314BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220314BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P37/04
A61K31/7088
A61K45/06
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K39/39
A61K39/395 N
A61K38/19
A61P13/08
A61K31/4166
A61K31/4439
C12N15/12 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546363
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 US2020017172
(87)【国際公開番号】W WO2020163690
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/802,813
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518286769
【氏名又は名称】マディソン ヴァクシーンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マクニール,ダグ
(72)【発明者】
【氏名】レシニェフスキ,リチャード アール.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA20
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA19
4C084MA02
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC421
4C084ZC422
4C084ZC751
4C085AA03
4C085AA14
4C085AA38
4C085CC23
4C085DD62
4C085DD86
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG05
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086EA16
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC42
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
癌の治療および予防に関する技術を提供する。とりわけ、前立腺癌の治療に関する組成物および方法を提供する(ただし、これに限定されるものではない)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における前立腺癌を治療する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)被験体に1つ以上のワクチンを投与する工程であって、
上記ワクチンは、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)遺伝子とアンドロゲン受容体(AR)遺伝子のリガンド結合ドメインとからなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する核酸を含んでいる、工程;
(b)上記被験体に、ヒトプログラム死受容体1(PD-1)阻害剤を投与する工程;
(c)上記被験体に、アンドロゲン受容体拮抗剤を投与する工程;
ここで、上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤を、8~16週間にわたり併用投与し、
これに続いて、上記ワクチン、上記PD-1阻害剤および上記アンドロゲン受容体拮抗剤を、8~16週間にわたり併用投与する。
【請求項2】
上記併用投与は、
上記ワクチンを投与する工程と、
これに続いて、上記ワクチンの投与から24時間以内に、上記PD-1阻害剤および/または上記アンドロゲン受容体拮抗剤を投与する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記核酸は、転写調節因子および/または免疫刺激配列をさらに有している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PAP遺伝子またはAR遺伝子に由来する上記ヌクレオチド配列は、転写調節因子に作動可能に連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記PAP遺伝子は、ヒトPAP遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記PAP遺伝子は、齧歯類PAP遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記AR遺伝子は、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記被験体は、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記核酸は、pTVG4-HPである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記PD-1阻害剤は、モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブ、JNJ-63723283またはニボルマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記ヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号6、これらの一部、またはこれらの置換変異体に由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記PD-1阻害剤を1~5mg/kgの用量で投与し、上記ワクチンを約100μgの量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記PD-1阻害剤を静脈内投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記アンドロゲン受容体拮抗剤は、エンザルタミドまたはアパルタミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記エンザルタミドを160mgの用量で投与し、上記アパルタミドを240mgの用量で投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記ワクチンは、アジュバントをさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記ワクチンは、GM-CSFをさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記ワクチンを皮内投与または経皮投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
上記ワクチンを約3週間ごとに投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
上記ワクチン、上記アンドロゲン受容体拮抗剤および上記PD-1阻害剤を複数回投与し、
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤の最初の併用投与の後、
上記ワクチンを、10~21日ごとに投与し、
上記PD-1阻害剤を、最長90日間にわたって17~28日ごとに投与し、
上記アンドロゲン受容体拮抗剤を、上記ワクチンの最初の投与の約8~12週間後から最長90日間にわたって、毎日投与する、
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
上記アンドロゲン受容体拮抗剤を、90日間にわたり毎日投与し、
これに続いて、上記アンドロゲン受容体拮抗剤を投与しない期間を設ける、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記アンドロゲン受容体拮抗剤の投与を、90日ごとに繰り返す、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤を、最長90日間にわたって、10~28日ごとに併用投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤を、91~365日間にわたって、10~28日ごとに併用投与する工程さらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤を、366~730日間にわたって、10~28日ごとに投与する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
上記ワクチンは、PAPに対する第1ワクチンおよびARに対する第2ワクチンを含んでおり、
上記第1ワクチンおよび上記第2ワクチンを併用投与する、
請求項24に記載の方法。
【請求項28】
上記方法により、上記被験体における抗腫瘍反応が生じ、
上記抗腫瘍反応は、上記ワクチンの単独投与または上記ワクチンと上記PD-1阻害剤との組合せ投与と比較して優れている、
請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
上記方法により、PAP特異的T細胞および/またはAR特異的T細胞の数が増加する、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
上記方法により、被験体におけるPAP特異的抗体および/またはAR特異的抗体の量が増加する、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
上記方法により、PSAレベルが検出不能となる、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
上記検出不能なPSAレベルは、上記アンドロゲン受容体拮抗剤の投与停止後においても持続する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
上記検出不能なレベルは、上記アンドロゲン受容体拮抗剤の投与停止後、6箇月間以上持続する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
(1)前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)遺伝子とアンドロゲン受容体(AR)遺伝子のリガンド結合ドメインとからなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する核酸を含有するワクチンを含んでいる、第1医薬組成物と、
(2)PD-1阻害剤を含んでいる、第2医薬組成物と、
(3)アンドロゲン受容体拮抗剤を含んでいる、第3医薬組成物と、
を備えている、キット。
【請求項35】
上記PAP遺伝子は、ヒトPAP遺伝子または齧歯類PAP遺伝子である、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
上記AR遺伝子は、ヒトである、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
上記第2医薬組成物は、ペムブロリズマブ、JNJ-63723283またはニボルマブを含んでいる、請求項34に記載のキット。
【請求項38】
上記第3医薬組成物は、エンザルタミドまたはアパルタミドを含んでいる、請求項34に記載のキット。
【請求項39】
上記第1医薬組成物、上記第2医薬組成物および上記第3医薬組成物を、単回用量として含んでいる、請求項34に記載のキット。
【請求項40】
上記第1医薬組成物の量、上記第2医薬組成物の量および上記第3医薬組成物の量は、核酸ワクチン、PD-1阻害剤およびアンドロゲン受容体拮抗剤を複数回投与する投薬スケジュールのための用量に対して充分な量である、請求項34に記載のキット。
【請求項41】
上記ヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号6に記載の配列によって与えられるポリペプチドまたはペプチドをコードする、請求項34に記載のキット。
【請求項42】
それを必要とする被験体の前立腺癌を治療するための、
前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)遺伝子および/またはAR遺伝子に由来するヌクレオチド配列を有する核酸を含んでいるワクチン、
ヒトプログラム死受容体1(PD-1)阻害剤、ならびに、
アンドロゲン受容体拮抗剤
の使用であって、
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤を、8~16週間にわたって併用投与し、
これに続いて、上記ワクチン、上記PD-1阻害剤および上記アンドロゲン受容体拮抗剤を8~16週間にわたって併用投与する、
使用。
【請求項43】
上記併用投与は、
上記ワクチンを投与する工程と、
これに続いて、上記ワクチンの投与から24時間以内に、上記PD-1阻害剤および/または上記アンドロゲン受容体拮抗剤を投与する工程と、
を含む、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
上記核酸は、転写調節因子および/または免疫刺激配列をさらに含んでいる、請求項42または43に記載の使用。
【請求項45】
上記PAP遺伝子に由来するヌクレオチド配列は、転写調節因子に作動可能に連結されている、請求項42~44のいずれか1項に記載の使用。
【請求項46】
上記PAP遺伝子は、ヒトPAP遺伝子である、請求項42~45のいずれか1項に記載の使用。
【請求項47】
上記PAP遺伝子は、齧歯類PAP遺伝子である、請求項42~45のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
上記AR遺伝子は、ヒトである、請求項42~47のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
上記被験体は、ヒトである請求項42~48のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
上記核酸は、pTVG4-HPである、請求項42~49のいずれか1項に記載の使用。
【請求項51】
上記PD-1阻害剤は、モノクローナル抗体である、請求項42~50のいずれか1項に記載の使用。
【請求項52】
上記PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブ、JNJ-63723283またはニボルマブである、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
上記ヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号6、これらの一部、またはこれらの置換変異体に由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、請求項42~52のいずれか1項に記載の使用。
【請求項54】
上記PD-1阻害剤を1~5mg/kgの用量で投与し、上記ワクチンを約100μgの量で投与する、請求項42~43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項55】
上記PD-1阻害剤を静脈内投与する、請求項42~54のいずれか1項に記載の使用。
【請求項56】
上記アンドロゲン受容体拮抗剤は、エンザルタミドまたはアパルタミドである請求項42~55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
上記エンザルタミドを160mgの用量で投与し、上記アパルタミドを240mgの用量で投与する、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
上記ワクチンは、アジュバントをさらに含んでいる、請求項42~57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
上記ワクチンは、GM-CSFをさらに含んでいる、請求項42~58のいずれか1項に記載の使用。
【請求項60】
上記ワクチンを皮内投与または経皮投与する、請求項42~59のいずれか1項に記載の使用。
【請求項61】
上記ワクチンを約3週間ごとに投与する、請求項42~60のいずれか1項に記載の使用。
【請求項62】
上記ワクチン、上記アンドロゲン受容体拮抗剤および上記PD-1阻害剤を複数回投与し、
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤の最初の併用投与の後、
上記ワクチンを、10~21日ごとに投与し、
上記PD-1阻害剤を、最長90日間にわたって17~28日ごとに投与し、
上記アンドロゲン受容体拮抗剤を、上記ワクチンの最初の投与の約8~12週間後から最長90日間にわたって、毎日投与する、
請求項42から61のいずれか一項記載の使用。
【請求項63】
上記アンドロゲン受容体拮抗剤を、90日間にわたり毎日投与し、
これに続いて、上記アンドロゲン受容体拮抗剤を投与しない期間を設ける、
請求項62に記載の使用。
【請求項64】
上記アンドロゲン受容体拮抗剤の投与を、90日ごとに繰り返す、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤を、最長90日間にわたって、10~28日ごとに併用投与する、請求項42~64のいずれか1項に記載の使用。
【請求項66】
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤を、91~365日間にわたって、10~28日ごとに併用投与する工程さらに含む、請求項42~65のいずれか1項に記載の使用。
【請求項67】
上記ワクチンおよび上記PD-1阻害剤を、366~730日間にわたって、10~28日ごとに投与する工程をさらに含む、請求項42~66のいずれか1項に記載の使用。
【請求項68】
上記ワクチンは、PAPに対する第1ワクチンおよびARに対する第2ワクチンを含んでおり、
上記第1ワクチンおよび上記第2ワクチンを併用投与する、
請求項42~67のいずれか1項に記載の使用。
【請求項69】
上記方法により、上記被験体における抗腫瘍反応が生じ、
上記抗腫瘍反応は、上記ワクチンの単独投与または上記ワクチンと上記PD-1阻害剤との組合せ投与と比較して優れている、
請求項42~68のいずれか1項に記載の使用。
【請求項70】
上記方法により、PAP特異的T細胞および/またはAR特異的T細胞の数が増加する、請求項42~69のいずれか1項に記載の使用。
【請求項71】
上記方法により、被験体におけるPAP特異的抗体および/または特異的抗体の量が増加する、請求項42~70のいずれか1項に記載の使用。
【請求項72】
上記方法により、PSAレベルが検出不能となる、請求項42~71のいずれか1項に記載の使用。
【請求項73】
上記検出不能なPSAレベルは、上記アンドロゲン受容体拮抗剤の投与停止後においても持続する、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
上記検出不能なレベルは、上記アンドロゲン受容体拮抗剤の投与停止後、6箇月間以上持続する、請求項72または73に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、米国仮出願第62/802,813号(2019年2月8日出願)の優先権および利益を主張する。同仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本明細書において提供される技術は、癌の治療および予防に関連しており、とりわけ前立腺癌の治療に関する組成物および方法に関連している(ただし、これに限定されるものではない)。
【背景技術】
【0003】
アメリカ合衆国において、前立腺癌は、男性に最も多くみられる癌である。2017年のアメリカ癌学会の予測によると、前立腺癌の新規診断は約161,360件であり、前立腺癌に起因する死亡は約26,730件である。
【0004】
早期前立腺癌の治療としては、通常、注意深い経過観察またはモニタリング、根治的前立腺摘除術、放射線療法(単独療法またはアンドロゲン遮断療法(ADT)との組合せ療法)が挙げられる。
【0005】
進行前立腺癌は、ADTで治療する。現在のところ、根治的前立腺全摘除術は、進行癌の症例に対する選択肢ではない。これは、この療法は身体の他の部位に転移した癌を治療するものではないからである。
【0006】
進行前立腺癌および侵襲性前立腺癌に対する、さらなる治療が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書にて提供される技術は、癌の治療および予防に関連しており、とりわけ前立腺癌の治療に関する組成物および方法に関連している(ただし、これに限定されるものではない)。
【0008】
本明細書に記載の組成物および方法により、前立腺癌の治療のための既存のプロトコルよりも改善された治療が提供される。本明細書に記載の方法によれば、アンドロゲン受容体拮抗剤と、1つ以上のDNAワクチンおよびPD-1阻害とを組合せた間欠治療によって、進行前立腺癌の被験体のテストステロン減少療法による副作用を回避または遅延させられる。それゆえ、この被験体はQOLが改善される。
【0009】
例えば、いくつかの実施形態において、本明細書では、被験体(例えば、ヒト被験体)における前立腺癌を治療する方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む。
【0010】
(a)被験体に1つ以上のワクチンを投与する工程。このワクチンは、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)遺伝子とアンドロゲン受容体(AR)遺伝子のリガンド結合ドメインとからなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する核酸を含んでいる。
【0011】
(b)被験体に、ヒトプログラム死受容体1(PD-1)阻害剤を投与する工程。
【0012】
(c)被験体に、アンドロゲン受容体拮抗剤を投与する工程。
【0013】
ここで、ワクチン、PD-1阻害剤およびアンドロゲン受容体拮抗剤は、併用投与する。
【0014】
さらなる実施形態においては、それを必要とする被験体の前立腺癌を治療するための、下記の使用が提供される。
【0015】
(a)前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)遺伝子および/またはAR遺伝子に由来するヌクレオチド配列を有する核酸を含んでいるワクチン
(b)ヒトプログラム死受容体1(PD-1)阻害剤
(c)アンドロゲン受容体拮抗剤
ここで、ワクチン、PD-1阻害剤およびアンドロゲン受容体拮抗剤は、併用投与する。
【0016】
いくつかの実施形態において、併用投与は、下記の工程を含む。
【0017】
(a)ワクチンを投与する工程。
【0018】
(b)これに続いて、ワクチンの投与から24時間以内に、PD-1阻害剤およびアンドロゲン受容体拮抗剤を投与する工程。
【0019】
本発明は、特定のPAP遺伝子またはAR遺伝子に限定されない。いくつかの実施形態において、PAP遺伝子またはAR遺伝子は、ヒトPAP遺伝子または齧歯類PAP遺伝子である。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列がコードするポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号6、これらの一部、またはこれらの置換変異体であるアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態において、核酸は、pTVG4-HPを有している。いくつかの実施形態において、核酸は、転写調節因子および/または免疫刺激配列をさらに有している。いくつかの実施形態において、PAP遺伝子またはAR遺伝子に由来するヌクレオチド配列は、転写調節因子に作動可能に連結されている。
【0020】
本発明は、特定のPD-1阻害剤に限定されない。いくつかの実施形態において、PD-1阻害剤は、モノクローナル抗体である(例えば、ペムブロリズマブ、JNJ-63723283またはニボルマブ)。いくつかの実施形態においては、1~5mg/kgの用量でPD-1阻害剤を投与する。いくつかの実施形態においては、PD-1阻害剤を、150~250mg(好ましくは180~200mg、最も好ましくは約200mg)の用量で、3週間または4週間ごとに投与する。あるいは、PD-1阻害剤を、220~260mg(最も好ましくは約240mg)の用量で、2週間ごとに投与する。あるいは、PD-1阻害剤を、450~510mg(最も好ましくは480mg)の用量で、4週間ごとに投与する。いくつかの実施形態においては、PD-1阻害剤を静脈内投与する。
【0021】
本発明は、特定のアンドロゲン受容体拮抗剤に限定されない。いくつかの実施形態において、アンドロゲン受容体拮抗剤は、エンザルタミドまたはアパルタミドである。いくつかの実施形態においては、エンザルタミドを、120~200mg(好ましくは140~180mg、最も好ましくは約160mg)の用量で、毎日投与する。あるいは、エンザルタミドを、210~270mg(より好ましくは約240mg)用量で、毎日投与する。また、アパルタミドを、210~270mg(より好ましくは約240mg)の用量で、毎日投与する。
【0022】
いくつかの実施形態において、ワクチンは、アジュバント(例えば、GM-CSF)をさらに含んでいる。いくつかの実施形態においては、ワクチンを、皮内投与または経皮投与する。いくつかの実施形態においては、ワクチンを、約100μgの量で投与する。いくつかの実施形態においては、ワクチンを、約1~4ごと(例えば、3週間ごと)に投与する。
【0023】
いくつかの実施形態においては、ワクチン、アンドロゲン受容体拮抗剤、およびPD-1阻害剤を複数回投与する。この複数回投与において、ワクチンおよびPD-1阻害剤を最初に併用投与した後、(a)ワクチンは、10~21日ごとに投与し;(b)PD-1阻害剤は、最長90日間にわたって17~30日ごとに投与し;(c)アンドロゲン受容体拮抗剤は、ワクチンの最初の投与の1~16週間後(最も好ましくは約12週間後)から、最長90日間にわたって、毎日投与する。いくつかの実施形態においては、(a)アンドロゲン受容体拮抗剤を、90日間にわたり毎日投与し;(b)これに続いて、アンドロゲン受容体拮抗剤を投与しない期間を設ける。例えば、いくつかの実施形態においては、アドロゲン受容体拮抗剤を投与しない90日間の休止期間の後に、アンドロゲン受容体拮抗剤を毎日投与することを、90日ごとに繰り返す。いくつかの実施形態においては、ワクチンおよびPD-1阻害剤を、最長90日間にわたって、10~28日ごとに併用投与する。いくつかの実施形態においては、ワクチンおよびPD-1阻害剤を、91~365日間(または366~730日間)にわたって、10~28日ごとに投与する。いくつかの実施形態において、ワクチンは、PAPに対する第1ワクチンおよびARに対する第2ワクチンを含んでおり、第1ワクチンおよび第2ワクチンを併用投与する(例えば、別々のまたは同じ医薬組成物中において)。
【0024】
いくつかの実施形態において、上述の方法または使用により被験体に生じる抗腫瘍反応は、ワクチンの単独投与またはワクチンとPD-1阻害剤との組合せ投与と比較して優れている。いくつかの実施形態においては、上述の方法または使用によって、被験体におけるPAP特異的T細胞および/またはAR特異的T細胞の数が増加するか、あるいは、被験体におけるPAP特異的抗体および/またはAR特異的抗体の数が増加する。いくつかの実施形態においては、上述の方法または使用により、PSAレベルが検出不能となる。この状態は、例えば、アンドロゲン受容体拮抗剤の投与の中断後でも持続する(例えば、アンドロゲン受容体拮抗剤の投与の中断から、1箇月後、4箇月後、6箇月後、12箇月後、24箇月後、またはそれ以上経過後)。
【0025】
さらなる実施形態においては、下記を備えているキットを提供する。
【0026】
(1)前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)遺伝子とアンドロゲン受容体(AR)遺伝子のリガンド結合ドメインとからなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する核酸を含んでいるワクチンを含んでいる、第1医薬組成物
(2)PD-1阻害剤を含んでいる、第2医薬組成物
(3)アンドロゲン受容体拮抗剤を含んでいる、第3医薬組成物
いくつかの実施形態においては、第1医薬組成物、第2医薬組成物および第3医薬組成物を、単回用量として提供する。いくつかの実施形態において、キットが備えている第1医薬組成物の量、第2医薬組成物の量および第3医薬組成物の量は、核酸ワクチン、PD-1阻害剤およびアンドロゲン受容体拮抗剤を複数回投与する投薬スケジュールのための用量に対して充分な量である。
【0027】
本明細書に含まれる教示に基づけば、関連技術の当業者にとって、さらなる実施形態の存在は明白であろう。
【0028】
本技術に関して上述した(および他の)特徴、態様および利点は、以下の図面に関連して、より良く理解されるであろう。
【0029】
以下で理解されたいことには、図は必ずしも一定の縮尺で描かれている訳ではなく、面中の対象の縮尺関係も必ずしも一定ではない。図は、本明細書において開示されている装置、システムおよび方法の種々の実施形態を明確にし、理解することを意図して描かれている。図面を通して、同一の参照符号は、可能な限り同一または類似の構成要素を参照するために用いている。また、図面は、いかなる形でも本教示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A図1Aは、研究の1日目以降における、血清PSAの最良の変化(%)を示している。アスタリスクは、PAP特異的Th1免疫の証拠が認められた被験体を示している(有意なIFNγおよび/またはグランザイムB応答が、治療後に2回以上検出された被験体)。
図1B-1】図1Bは、6箇月間(左)および24箇月間(右)における、血清PSAのベースラインからの最良の変化を示している。
図1B-2】図1B-1を参照。
図2図2は、例示的な臨床試験のプロトコルを示す。
図3図3は、例示的なPAP配列を示す。
図4図4は、例示的なAR配列を示す。
図5A図5A~Bは、被験体における無増悪生存を示す。(A)は、ARペプチドに対する免疫応答ありおよび免疫応答なしを示している。(B)は、ARタンパク質に対する免疫応答ありおよび免疫応答なしを示している。
図5B図5Aを参照。
図6A図6A~Bは、ARワクチンとADTとの組合せにに関して、被験体におけるARに対する患者応答を示している(ARにおける応答ありおよび応答なし)。(C)は、PCWG2基準である。(D)は、被験体におけるPSA進行までの期間である(ARにおける応答ありおよび応答なし)。
図6B図6Aを参照。
図7A図7A~Bは、ARワクチンおよびチェックポイント阻害剤により、前立腺腫瘍を患っているマウスにおける抗腫瘍効果が改善されたことを示している。(A)は、ARワクチンおよびPD-1阻害剤を施した。(B)は、ARワクチン、ADTおよびPD-1阻害剤を施した。
図7B図7Aを参照。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において提供されるのは、癌の治療および予防に関連する技術である。とりわけ、前立腺癌の治療に関連する組成物および方法に関連する(ただし、これに限定されるものではない)。種々の実施形態の詳細な説明においては、説明を目的として、多数の具体的な詳細説明を記載し、開示された実施形態の完全なる理解を与える。しかし、当業者ならば理解するであろうが、これらの具体的な詳細説明の有無にかかわらず、これらの種々の実施形態は実施できる。他の例においては、構造およびデバイスをブロック図で示す。さらに、当業者ならば容易に理解するであろうが、方法の提供および実行に係る特定の順序は、例示的なものである。この順序は変更されることがあり、そのような方法も、本明細書に開示されている種々の実施形態の趣旨および範囲内にあることが意図される。
【0032】
本出願において引用されている全ての文献および類似の物には、特許、特許出願、記事、書籍、学術論文およびインターネットのウェブページが含まれる(ただし、これらには限定されない)。これらは、あらゆる目的のために、その全体が参照により明示的に組み込まれる。別途定義されていない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本明細書に記載されている種々の実施形態が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味である。組み込まれた参考文献における用語の定義が、本教示において提供される定義と異なるように見受けられる場合は、本教示において提供される定義が優先する。本明細書において用いられる節の見出しは、編集のみを目的としており、いかなる形であっても、記載されている主題を限定するものとして解釈すべきではない。
【0033】
〔定義〕
本技術の理解を促進するために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。詳細な説明の全体にわたって、追加の定義が記載されている。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、文脈上明らかに異なる場合を除いて、下記の用語は本節に明示的に関連付けられている意味を有する。本明細書において用いられるとき、用語「一実施形態において」とは、必ずしも同じ実施形態を意味する訳ではないが、同じ実施形態を意味する場合もある。さらに、本明細書において用いられるとき、用語「他の実施形態において」とは、必ずしも異なる実施形態を意味する訳ではないが、他の実施形態を意味する場合もある。したがって、後述の通り、本発明の種々の実施形態は容易に組合せることができ、これは本発明の技術的範囲または技術的思想から逸脱していない。
【0035】
本明細書において用いられるとき、用語「または」とは、文脈上明らかに異なる場合を除いて、包括的な演算子「または」であり、用語「および/または」に相当する。用語「に基づく」とは、排他的ではなく、文脈上明らかに異なる場合を除いて、記載されていない追加の要因に基づくことを許容する。さらに、本明細書全体を通じて、「a」、「an」および「the」の意味は、複数形への言及をも包含している。「in」の意味は、「in」および「on」を包含している。
【0036】
本明細書において用いられるとき、「最良の全応答」とは、ベースラインから疾患の進行/再発までに記録された最良の応答である。このとき、進行性疾患の参照点は、ベースライン後に記録された最小の測定値である。
【0037】
本明細書において用いられるとき、「応答の最初の記録」とは、治療の開始と、本明細書で定義される治療に対する部分奏効または完全奏効の最初の記録との間の時間を意味する。
【0038】
本明細書において用いられるとき、「奏効の持続時間」とは、測定基準が完全奏効または部分奏効(いずれの状態が先に記録される場合でも)を満たす時点から、疾患の再発または進行が客観的に記録される最初の日までの期間を意味する。このとき、治療が開始されてから記録された最小の測定値を参照点とする。
【0039】
本明細書において用いられるとき、「全完全奏効の持続時間」とは、完全奏効に関する測定基準が満たされた時点から、疾患の再発が客観的に記録される最初の日までの期間を意味する。
【0040】
本明細書において用いられるとき、「安定した疾患の持続時間」とは、ベースラインから疾患進行の基準が満たされるまでの期間を意味する。このとき、ベースライン以降に記録された最小の測定値を参照点とする。
【0041】
本明細書において用いられるとき、「生存」とは、説明されている技術に係る治療を開始してから、何らかの原因による死まで(または、追跡を打切った患者においては最後の追跡まで)の期間を意味する。
【0042】
本明細書において用いられるとき、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」とは、互換的に使用され、ペプチド結合により連結されているアミノ酸を含有している化合物を意味する。遺伝子によってコードされる「タンパク質」または「ポリペプチド」とは、遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のみならず、タンパク質の翻訳後修飾をも包含している。用語「アミノ酸配列」が、タンパク質分子のアミノ酸配列を意味するために本明細書に記載されている場合、アミノ酸配列および類似の用語(ポリペプチドまたはタンパク質など)は、記載されているタンパク質分子に関連する完全な天然アミノ酸配列に当該アミノ酸配列を限定することを意味しない。さらに、アミノ酸配列は、タンパク質をコードする核酸配列から推定できる。本明細書で用いられる、従来の1文字および3文字のアミノ酸コードは下記の通りである。アラニン=Ala、A;アルギニン=Arg、R;アスパラギン=Asn、N;アスパラギン酸=Asp、D;システイン=Cys、C;グルタミン酸=Glu、E;グルタミン=Gln、Q;グリシン=Gly、G;ヒスチジン=His、H;イソロイシン=Ile、I;ロイシン=Leu、L;リジン=Lys、K;メチオニン=Met、M;フェニルアラニン=Phe、F;プロリン=Pro、P;セリン=Ser、S;トレオニン=Thr、T;トリプトファン=Trp、W;チロシン=Tyr、Y;バリン=Val、V。本明細書において用いられるとき、コード「Xaa」およびコード「X」は、任意のアミノ酸を意味する。
【0043】
用語「部分」とは、タンパク質に関連して使用する場合(「所与のタンパク質の一部」のように)、当該タンパク質の断片を意味する(当該タンパク質のペプチドなど)。断片の大きさは、4アミノ酸残基から、アミノ酸配列全体から1個のアミノ酸を引いたものまででありうる。例えば、断片の大きさの範囲は、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上のアミノ酸から、最長でアミノ酸配列全体から1個のアミノ酸を引いたものまでである。
【0044】
用語「相同体」または「相同」とは、ポリペプチドに関連して使用する場合、2つのポリペプチド間において、配列同一性が高いこと、三次元構造の類似性が高いこと、または活性中心と作用機序との間の類似性が高いことを意味する。好適な実施形態において、相同体は、参照配列との配列同一性が60%超であり、より好ましくは75%超であり、さらにより好ましくは90%超である。
【0045】
ポリペプチドに適用するとき、用語「実質的な同一性」とは、2つのペプチド配列の配列同一性が80%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上またはそれ以上(例えば、99%))であることを意味する。このとき、2つの配列の比較は、デフォルトギャップ重量を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって、アラインメントを最適化して行う。好ましくは、同一でない残基の位置同士は、保存的アミノ酸置換の関係にある。
【0046】
用語「変異体」および「突然変異体」とは、ポリペプチドに関連して使用する場合、他のアミノ酸配列(通常は関連するポリペプチド)とは1個以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を意味する。変異体は、置換されたアミノ酸が類似の構造的または化学的特性を有するような、保存的変化を有していてもよい。保存的アミノ酸置換の一類型は、類似の側鎖を有している残基の間の互換性を意味している。例えば、脂肪族側鎖を有しているアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンである。脂肪族ヒドロキシル側鎖を有しているアミノ酸群は、セリンおよびトレオニンである。アミド含有側鎖を有しているアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンである。芳香族側鎖を有しているアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンである。塩基性側鎖を有しているアミノ酸群は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンである。硫黄含有側鎖を有しているアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。より稀な事態であるが、変異体は、非保存的変化を有していてもよい(例えば、グリシンのトリプトファンによる置換)。類似する小変異は、アミノ酸の欠失もしくは挿入(例えば、付加)、またはその両方を有していてもよい。生物活性を維持したまま置換、挿入または欠失できるアミノ酸残基およびその数を決定する際のガイドラインは、本技術分野で周知のコンピュータプログラムによって判明しうる(例えば、DNAStarソフトウェア)。機能的アッセイにより変異体を試験してもよい。好ましい変異体における変化(置換、欠失などの種類に関わらず)は、10%未満であり、好ましくは5%未満であり、さらにより好ましくは2%未満である。
【0047】
核酸またはタンパク質の変異体を記載するために使用される表記法によって、突然変異の種類と、塩基またはアミノ酸の変化とが特定される。ヌクレオチドの置換に関して(例えば、76A>T)、数字は5’末端からのヌクレオチドの位置を表しており、最初の文字は野生型のヌクレオチドを表しており、2番目の文字は置換後のヌクレオチドを表している。上記の例においては、76番目のアデニンがチミンで置換されている。ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、相補的DNA(cDNA)およびRNAの突然変異を区別する必要が生じた場合は、簡便な慣例を用いる。例えば、核酸塩列の100番目の塩基がGからCに突然変異した場合、この突然変異がゲノムDNAに発生したならば、g.100G>Cと表す。この突然変異がミトコンドリアDNAに発生したならば、m.100G>Cと表す。この突然変異がcDNAに発生したならば、c.100G>Cと表す。この突然変異がRNAに発生したならば、r.100g>cと表す。アミノ酸の置換の場合(例えば、D111E)、最初の文字は野生型アミノ酸の1文字コードを表しており、数字はN末端からのアミノ酸の位置を表しており、2番目の文字は突然変異において存在するアミノ酸の1文字コードを表している。ナンセンス突然変異は、2番目のアミノ酸をXで表す(例えば、D111X)。アミノ酸の欠失について(例えば、ΔF508、F508del)、ギリシャ文字Δ(デルタ)または文字列「del」は、欠失を表している。文字は野生型に存在するアミノ酸を表しており、数字は野生型に存在するアミノ酸のN末端からの位置を表している。イントロンの突然変異は、イントロン番号またはcDNA位置によって指定される。具体的には、GTスプライスドナー部位のGから始まる正の数、またはAGスプライスアクセプター部位のGから始まる負の数のいずれかにより表される。「g.3’+7G>C」は、ゲノムDNAレベルにおける、nt+7でのGからCへの置換を表している。完全長ゲノム配列が分かっている場合、その突然変異は、ゲノム参照配列のヌクレオチド番号によって最良に表される。以下を参照(あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる):den Dunnen & Antonarakis, "Mutation nomenclature extensions and suggestions to describe complex mutations: a discussion". Human Mutation 15: 7-12 (2000); Ogino S, et al., "Standard Mutation Nomenclature in Molecular Diagnostics: Practical and Educational Challenges", J. Mol. Diagn. 9(1): 1-6 (February 2007)
用語「ドメイン」とは、ポリペプチドに関連して使用する場合、固有の構造的特性および/または機能的特性を有しているポリペプチドのサブセクションを意味する。通常、この特性は、多様なポリペプチドにわたって類似している。このサブセクションは、通常は連続するアミノ酸が含まれている。しかし、協調して作用するアミノ酸や、折り畳みまたは他の構造の結果互いに近接しているアミノ酸が含まれていてもよい。タンパク質ドメインの例としては、膜貫通ドメインおよびグリコシル化部位が挙げられる。
【0048】
用語「遺伝子」とは、コーディング配列を有している核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を意味する。このコーディング配列は、RNAまたはポリペプチドもしくはその前駆体(例えば、プロインスリン)の産生に必要である。ポリペプチドの所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限りにおいて、機能的ポリペプチドは、完全長コーディング配列(または、コーディング配列の任意の部分)によってコードされていてよい。用語「部分」とは、遺伝子に関連して使用する場合、当該遺伝子の断片を意味する。この断片の大きさの範囲は、少数のヌクレオチドから、遺伝子配列全体から1個のヌクレオチドを引いたものまでであってよい。したがって、「遺伝子の少なくとも一部を有しているヌクレオチド」には、遺伝子の断片または遺伝子全体が含まれる場合がある。
【0049】
用語「遺伝子」はまた、構造遺伝子のコーディング領域をも包含している。遺伝子には、コーディング領域の5’末端および3’末端に隣接している長さ約1kbの配列も含まれる。このとき、遺伝子は、完全長mRNAの長さに対応している。コーディング領域の5’側に位置し、mRNA上に存在する配列を、5’非翻訳配列と称する。コーディング領域の3’側または下流側に位置し、mRNA上に存在する配列を、3’非翻訳配列と称する。用語「遺伝子」には、遺伝子のcDNAおよびゲノム形態の両方が含まれる。遺伝子のゲノム形態またはクローンに含まれているコーディング領域は、「イントロン」または「介在領域」もしくは「介在配列」と称される非コーディング配列で中断されている。イントロンとは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子の部分である。イントロンは、調節因子(エンハンサーなど)を有していてもよい。イントロンは、核または一次転写産物から除去されるか、あるいはスプライスアウトされる。したがって、イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物には存在しない。mRNAは、翻訳中に機能して、新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を特定する。
【0050】
さらに、遺伝子のゲノム形態は、イントロンを含むことに加えて、RNA転写物上に存在する配列の5’末端および3’末端の両方に位置する配列を含んでいてもよい。これらの配列を、フランキング配列またはフランキング領域と称する。フランキング配列は、mRNA転写物上に存在する非翻訳配列の5’側または3’側に位置している。5’フランキング領域は、調節配列を含んでいてもよい(遺伝子の転写を制御または影響するプロモーターおよびエンハンサーなど)。3’フランキング領域は、転写の終了、転写後切断およびポリアデニル化を指示する配列を含んでいてもよい。
【0051】
用語「野生型」とは、遺伝子に関連して使用する場合、天然に存在する供給源から単離される遺伝子の特徴を有している遺伝子を意味する。用語「野生型」とは、遺伝子産物に関連して使用する場合、天然に存在する供給源から単離される遺伝子産物の特徴を有している遺伝子産物を意味する。用語「天然に存在する」とは、対象に適用する場合、対象が天然に見られることを意味する。例えば、天然の供給源から単離でき、実験室でヒトによって意図的に修飾されていない生物(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、「天然に存在する」ものである。野生型遺伝子は、集団の中で最も頻繁に見られる遺伝子である。したがって、遺伝子の正常な形態または野生型形態として、任意に指定される。逆に、用語「修飾された」または「突然変異」とは、遺伝子または遺伝子産物に関連して使用する場合、野生型遺伝子または野生型遺伝子産物と比較したときに、配列および/または機能特性に修飾を有している(すなわち、変化した特徴を有している)遺伝子または遺伝子産物を意味する。「天然に存在する」突然変異体を単離できることに留意されたい。この突然変異体は、野生型遺伝子または野生型遺伝子産物と比較したときに、変化した特性を有していることによって認定される。
【0052】
用語「遺伝子発現」とは、遺伝子にコードされた遺伝情報が、遺伝子の転写により(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素作用をにより)RNAに変換され、mRNAの翻訳によってタンパク質に変換する過程を意味する。RNAは、例えば、mRNA、rRNA、tRNAまたはsnRNAである。上記の過程における多くの段階において、遺伝子発現を制御できる。
【0053】
本明細書において用いられるとき、用語「作動可能に連結されている」とは、ヌクレオチド配列の転写または翻訳が、別の機能的ヌクレオチド配列(プロモーター、エンハンサー、転写因子結合部位など)の影響下にあることを意味することを意図する。また、「作動可能に連結されている」とは、DNA断片のコーディング配列が適切なリーディングフレームを維持して存在するように、2つのヌクレオチド配列が連結されていることも意図する。このようにして、DNA構築物中には、所定のヌクレオチド配列(例えば、PAPをコードするヌクレオチド配列)に加えて、被験体における発現のために、プロモーター、エンハンサーなどのヌクレオチド配列が含まれている。用語「異種ヌクレオチド配列」とは、プロモーター配列と作動可能に連結されることが天然にはない配列を意図する。このヌクレオチド配列は、プロモーター配列に対しては異種であるが、被験体に対しては同種(天然)であってもよいし、異種(外来)であってもよい。
【0054】
本明細書において用いられるとき、用語「治療」とは、本明細書に記載の治療剤(例えば、DNAワクチン、PD-1阻害剤および/またはアンドロゲン受容体拮抗剤)の適用または投与として定義される。あるいは、用語「治療」は、本明細書に記載の患者に対する方法によって特定される。あるいは、用語「治療」は、患者から単離された組織または細胞株に対する、治療剤の適用または投与によっても特定される。ここで言う患者は、疾患、疾患の症状、または疾患に対する素質を有している。治療の目的は、疾患、疾患の症、または疾患に対する素質を、治療すること(cure)、治癒させること(heal)、軽減すること(alleviate)、緩和すること(relieve)、変化させること(alter)、治療すること(remedy)、改善すること(ameliorate)、改善すること(improve)、または影響を与えること(affect)である。
【0055】
本技術に係る組成物は、薬学的に許容可能な塩の形態で投与してもよい。用語「薬学的に許容可能な塩」とは、親化合物の有効性を有しており、生物学的または他の点で好ましくない点を有していない塩(例えば、受容者に対する毒性または有害性がない塩)を意味する。好適な塩には、酸付加塩が含まれる。酸付加塩は、例えば、本技術の化合物の溶液と、薬学的に許容可能な酸(塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸または安息香酸など)の溶液とを混合することによって形成できる。本技術で採用される特定の化合物は、酸部分(例えば、COOHまたはフェノール基)を有していてもよい。この場合、薬学的に許容可能な好適な塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩)、および適当な有機配位子と形成される塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。また、酸(COOH)またはアルコール基が存在する場合、薬学的に許容可能なエステルを採用することにより、化合物の溶解性または加水分解特性を変化させられる。例えば、薬学的に許容可能な塩には、金属(無機)塩および金属有機塩の両方が含まれている。薬学的に許容可能な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, pg. 1418 (1985)において与えられている。物理的特性および化学的特性に基づいて適切な塩形態を選択することは、当業者の間で周知である。当業者によって理解されることには、薬学的に許容可能な塩の例としては、無機酸の塩(塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸、および硝酸塩など);有機酸の塩(リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩もしくはパルモ酸塩、サリチル酸塩およびステアリン酸塩など)が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。同様に、薬学的に許容可能なカチオンの例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウム(特に、第二級アミンとのアンモニウム塩)が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。また、結晶形、水和物および溶媒和物も本技術の範囲内に含まれる。
【0056】
用語「投与」およびその変化形(例えば、化合物、ワクチン、薬物などを「投与する」工程)とは、化合物に関連して使用する場合、治療または予防を必要とする個体に、化合物または当該化合物のプロドラッグを提供することを意味する。本技術の化合物またはそのプロドラッグを1種類以上の他の有効成分と組合せて提供する場合、「投与」およびその変化形には、化合物またはプロドラッグおよび他の薬剤を、同時にまたは異なる時点で提供することが含まれると理解される。本明細書において用いられるとき、用語「併用投与」とは、2種類の薬剤を投与する(好ましくは24時間以内に投与する)ことを意味する。組合せ薬剤を併用投与する(例えば、24時間以内に投与する)場合、これらの薬剤を、単一の組成物中で一緒に投与してもよいし、別々に投与してもよい。別々に投与する場合には、第1薬剤(PAPワクチンなど)を投与し、患者をモニタリングした後、指定された期間内(好ましくは24時間以内)に第2薬剤(PD-1阻害薬およびアンドロゲン受容体拮抗剤など)を投与する。本明細書において用いられるとき、用語「組成物」には、特定量の特定成分を含む製品と、ならびに特定量の特定成分の組合せから直接または間接的に生じる任意の製品とが包含されることが意図される。
【0057】
本明細書において用いられるとき、用語「共投与(co-administration)」および「共投与する工程(co-administering)」とは、2種類以上の薬剤(例えば、DNAワクチンと、PD-1阻害剤および/またはアンドロゲン受容体拮抗剤)を被験体に投与または処置することを意味する。いくつかの実施形態において、2種類以上の薬剤または処置の共投与は、同時である。他の実施形態においては、第1薬剤/第1処置を、第2薬剤/第2処置の前に施す。いくつかの実施形態において、共投与は、同じ投与経路であってもよいし、異なる投与経路であってもよい。当業者であれば理解するであろうことには、使用される種々の薬剤または処置の製剤および/または投与経路は変更できる。共投与における適切な投薬量は、当業者によって容易に決定される。いくつかの実施形態において、薬剤または処置を共投与する場合には、それぞれの薬剤または処置を、それらの単独投与に適切な用量よりも低い用量で投与する。したがって、薬剤または処置の共投与により、潜在的に有害な(例えば、毒性のある)薬剤の必要な投薬量を減少させるような実施形態においては、共投与は特に望ましい。あるいは、2種類以上の薬剤の共投与によって、他の薬剤を共投与することにより、ある薬剤の有益な作用に対する被験体の感作が生じる場合にも、共投与は特に望ましい。
【0058】
本明細書において用いられるとき、用語「薬学的に許容可能な」とは、医薬組成物の成分が互いに適合しており、医薬組成物の受容者にとって有害でないことを意味する。
【0059】
本明細書において用いられるとき、用語「被験体」とは、治療、観察または実験の対象となる動物(好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒト)を意味する。
【0060】
本明細書において用いられるとき、用語「有効量」とは、生物学的応答または医薬的応答を誘発する有効成分または医薬品の量を意味する。この応答は、細胞、組織、臓器、システム、動物またはヒトにおいて生じるものであり、研究者、獣医師、医師または他の臨床家によって求められているものである。いくつかの実施形態において、有効量とは「治療有効量」であり、治療する疾患または状態の症状を軽減するための量である。いくつかの実施形態において、有効量とは「予防有効量」であり、予防する疾患または状態の症状を予防するための量である。有効成分を塩として投与する場合、有効成分の量に関する言明は、化合物の遊離形態(非塩形態)の量に関する言明である。
【0061】
本技術の方法においては、化合物(任意構成で塩の形態)を、有効成分と作用部位とが接触させる任意の手段によって投与してよい。医薬と組合せた使用に利用できる任意の従来の手段によって、化合物を投与してよい。一つの治療剤として投与してもよいし、治療剤の組合せとして投与してもよい。化合物を単独で投与してもよい。しかし、通常は、採用する投与経路および標準的な薬学慣行に基づいて選択される薬学的担体と共に投与される。本技術の化合物の投与方法の例としては、経口投与、非経口投与(皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射または点滴など)、吸入スプレー、または直腸投与が挙げられる。有効量の化合物と、非毒性かつ薬学的に許容可能な従来の担体、アジュバントおよびビヒクルを含んでいる医薬組成物の単位投薬量の形態で投与できる。本技術分野で周知の技術に従えば、経口投与に好適な液体調製物(例えば、懸濁液、シロップ、エリキシルなど)を調製できる。この際、一般的な媒体(水、グリコール、油、アルコールなど)を使用してもよい。好適な本技術分野で周知の技術に従えば、経口投与に固体調製物(例えば、粉末、丸剤、カプセル剤および錠剤)を調製できる。この際、固体賦形剤(デンプン、糖、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤など)を使用してもよい。本技術分野で周知の技術に従えば、非経口組成物を調製できる。この際、通常は、担体として滅菌水(および、溶解助剤などの任意構成である他の成分)を使用する。本技術分野で周知の方法に従えば、注射可能な溶液を調製できる。この際、担体は、生理食塩水、グルコース溶液、または生理食塩水とグルコースの混合物を含む溶液を含んでいる。本技術で使用する医薬組成物の調製に適した方法や、組成物に適した成分に関するさらなる説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, edited by A. R. Gennaro, Mack Publishing Co., 1990に与えられている。本技術の化合物は、本明細書に記載の合成反応スキームにて説明されている種々の方法によって作製できる。化合物の調製に使用する出発物質および試薬は、一般的に、市販の供給業者(例えば、Aldrich Chemical Co.)から入手可能である。あるいは、下記の参考文献に記載されている手順に従って、当業者に周知の方法で作製する。Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, Wiley & Sons: New York, Volumes 1-21 ; R. C. LaRock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd edition Wiley-VCH, New York 1999; Comprehensive Organic Synthesis, B. Trost and I. Fleming (Eds.) vol. 1-9 Pergamon, Oxford, 1991; Comprehensive Heterocyclic Chemistry, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1984, vol. 1-9; Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1996, vol. 1-11; Organic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40.
本明細書において用いられるとき、用語「免疫応答を誘導するための組成物」とは、(例えば、1回、2回、3回またはそれ以上を、例えば、数週間、数箇月間または数年間の間隔を空けて)被験体に投与したときに、被験体における免疫応答を刺激、生成および/または誘発する組成物を意味する。この組成物により、例えば、CD8+および/またはCD4+T細胞が産生されたり、抗体が産生されたりする。いくつかの実施形態において、組成物は、核酸および1つ以上の他の化合物または薬剤を含んでいる。他の化合物または薬剤の例としては、治療薬、生理学的に許容可能な液体、ゲル、担体、稀釈剤、アジュバント、賦形剤、サリチル酸塩、ステロイド、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗体、サイトカイン、抗生物質、結合剤、充填剤、防腐剤、安定化剤、乳化剤、および/または緩衝剤が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。免疫応答は、先天性免疫応答(例えば、非特異的免疫応答)であってもよいし、学習性免疫応答(例えば、後天性免疫応答)であってもよい。
【0062】
本明細書において用いられるとき、用語「アジュバント」とは、免疫応答を賦活しうる任意の物質を意味する。いくつかのアジュバントは、免疫系の細胞を活性化できる(例えば、アジュバントによって、免疫細胞はサイトカインを産生および分泌するようになる)。免疫系の細胞を活性化できるアジュバントの例としては、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);QS21などのQ. saponariaの樹皮から精製されたサポニン(HPLC分画で21番目のピークに溶出する糖脂質。Aquila Biopharmaceuticals, Inc., Worcester, Mass.);ポリ(ジ(カルボキシラートフェノキシ)フォスファゼン(PCPPポリマー。Virus Research Institute, USA);モノホスホリル脂質Aなどのリポ多糖類の誘導体(MPL。Ribi ImmunoChem Research, Inc., Hamilton, Mont.);ムラミルジペプチド(MDP。Ribi);トレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP。Ribi);OM-174(脂質Aに関連するグルコサミン二糖類;OM Pharma SA, Meyrin, Switzerland);リーシュマニア伸長因子(精製リーシュマニアタンパク質。Corixa Corporation, Seattle, Wash.)が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。従来のアジュバントも、本技術分野で周知である。従来のアジュバントの例としては、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム(ミョウバン)が挙げられる。いくつかの実施形態においては、本技術の組成物を、1種類以上のアジュバントと共に投与する。
【0063】
本明細書において用いられるとき、用語「(例えば、免疫応答を誘導する組成物の)免疫応答を誘導するために有効な量」とは、(例えば、被験体に投与する場合には)当該被験体における免疫応答を刺激、生成および/または誘発するために必要とされる用量レベルを意味する。(例えば、同じまたは異なる経路を介する)1回以上の投与、適用または用量によって、有効量を投与できる。特定の製剤または投与経路に限定されることを意図するものではない。
【0064】
本明細書において用いられるとき、用語「被験体が免疫応答を生じるような条件下」とは、定性的または定量的な任意の免疫応答(例えば、先天性免疫応答または後天性免疫応答)が、誘導、生成および/または刺激されることを意味する。
【0065】
本明細書において用いられるとき、用語「免疫応答」とは、被験体の免疫系による応答を意味する。免疫応答の例としては、Toll様受容体(TLR)の活性化における検出可能な変化(例えば、増加);リンホカイン(例えば、Th1もしくはTh2型サイトカインなどのサイトカインまたはケモカイン)の発現および/または分泌;マクロファージの活性化;樹状細胞の活性化;T細胞(例えば、CD4+T細胞またはCD8+T細胞)の活性化;NK細胞の活性化;B細胞の活性化(例えば、抗体の生成および/または分泌)が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。免疫応答のさらなる例としては、MHC分子に対する免疫原(例えば、免疫原性ポリペプチドなどの抗原)の結合および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の誘導;B細胞応答(例えば、抗体産生)の誘導;Tヘルパーリンパ球応答;免疫原性ポリペプチドが由来する抗原に対する遅延型過敏応答(DTH)の誘導;任意成長段階にある(例えば、形質細胞)T細胞やB細胞などの免疫系の細胞の増殖(例えば、細胞集団の増殖);抗原提示細胞による抗原の修飾および提示の増加が挙げられる。免疫応答は、被験体の免疫系により外来性と認識される免疫原(例えば、非自己抗原または外来性として認識される自己抗原)に対する免疫応答であってもよい。したがって、本明細書において用いられるとき、用語「免疫応答」には、任意の類型の免疫応答が含まれる。その例としては、先天性免疫応答(例えば、Toll受容体シグナリングカスケードの活性化);細胞媒介性の免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞などのT細胞および免疫系の非特異的細胞によって媒介される応答);体液性免疫応答(例えば、血漿、リンパ液および/または組織液中への抗体の産生および分泌を媒介する応答などの、B細胞によって媒介される応答)が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。用語「免疫応答」は、抗原および/または免疫原に応答する被験体の免疫系の能力に関する、あらゆる態様を包含している。抗原および/または免疫原に応答の例としては、免疫原に対する初期応答、および適応免疫応答による後天性応答(例えば、免疫記憶)が挙げられる。
【0066】
本明細書において用いられるとき、用語「免疫原」および「抗原」とは、被験体における免疫応答を誘発できる薬剤および/またはその部分もしくは構成要素を意味する。薬剤の例としては、PAPポリペプチドおよび/またはARポリペプチドが挙げられる。薬剤の部分または構成要素の例としては、PAPポリペプチド由来のペプチドおよび/またはARポリペプチド由来のペプチドが挙げられる。
【0067】
本明細書において用いられるとき、用語「疾患進行」とは、診断アッセイ(分子アッセイまたは画像化アッセイなど)による、疾患が進行している新たな証拠の出現を意味する。例えば、骨スキャンにおける新たな病変の出現が挙げられる。
【0068】
〔詳細な説明〕
本明細書の開示は、特定の例示的態様に言及している。しかし、これらの態様は例示であって、限定ではないと理解されたい。
【0069】
PD-1/PD-L1阻害剤を用いて観察された劇的な臨床反応は、癌免疫療法が2013年の科学における飛躍的進歩であると評される理由の一つとなった(Science[1])。実際に、PD-1を標的とすることは、腫瘍ではなくT細胞を直接標的とするため、普遍的な抗癌治療となる可能性がある。しかし、これまでの臨床試験の結果が示すところによると、ある種の固形腫瘍を患っている患者は、前立腺癌を含む他の組織型の患者よりも、効果が高い[2]。この差は、奏効患者および非奏効患者における既存のT細胞の差に起因している可能性が高い。前立腺癌は、PD-L1を発現することがあり、浸潤性PD-1発現T細胞を有していることが明らかになっているが、一部の癌に比べると頻度は低い[3]。まとめると、これらの結果が示しているのは、機能的に活性な腫瘍特異的CD8+T細胞の頻度の増加を目的とする治療と組合せることにより、反応性の低い腫瘍(前立腺癌など)に対するPD-1/PD-リガンド阻害の有効性が向上しうるということである。
【0070】
早期かつPSA再発性(非転移性)前立腺癌患者を対象に、前立腺酸性ホスファターゼ(MV-816)を標的としたDNAワクチンに対する応答を評価した[4、5]。治療を施した38人の被験体において、重大な有害事象は認められなかった。さらに、PAP特異的CD4+T細胞およびCD8+T細胞の証拠が出現した患者が数例認められ、PSA倍加時間が延長された患者も数例認められた。このことから、免疫学的有効性が示され、抗腫瘍効果の可能性が示された[4,5]。免疫後数箇月の時点で複数回検出可能なPAPに対する長期的なIFNγ分泌免疫応答の存在は、PSA倍加時間の増加と関連しており、これが有効性に関する合理的なバイオマーカーとして役立つ可能性が示された[6]。さらに、免疫反応は、数箇月後に反復免疫によって増強される可能性があることが分かり、DNAワクチンが腫瘍特異的CD8+T細胞を誘発する簡便な手段となる可能性が示された[5]。さらに、予備的な研究では、以前にMVI-816を用いて治療した患者は、PD-L1を発現しているEpCam+循環上皮細胞(CEC)を有しており、マウスモデルでの所見と類似していることが示されている[7]。これらの所見は、前立腺腫瘍に特異的なCD8+T細胞を誘発するためにMVI-816ワクチンを使用することができ、その有効性はPD-1阻害との併用治療によって向上する可能性があることを、さらに支持するものである。
【0071】
本発明の実施形態の開発過程において実施された研究が実証するところによると、DNAワクチン接種によるT細胞活性化によりCD8+T細胞のPD-1が上方制御され、ワクチン接種時のPD-1阻害によりマウスモデルにおけるより良好な抗腫瘍応答が得られる。これらの所見に基づき、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)患者を対象に、MVI-816とペムブロリズマブを組合せて使用する試験を実施した。この試験では、2種類の薬剤を同時または順番に、12~24週間にわたって患者に投与した。観察されたところによると、ペムブロリズマブによるPD-1阻害は、ワクチンと併用投与する場合、13人の患者中8人でPSA低下を誘発し(図1)、PSA低下が最も大きかった患者のうち2人において客観的腫瘍縮小効果がみられた。PSA応答は、PAP標的抗原に対する免疫応答の発現を伴っており、CD8+腫瘍浸潤リンパ球を誘発し、T細胞活性化療法としてのワクチンの役割と一致した。これらは、以下に示す理由により、有望な所見である。すなわち、チェックポイント阻害剤単独によるPD-1阻害は、エンザルタミドを併用投与された患者以外には、これまでの第I相試験におけるこの段階の前立腺癌患者に対する単剤での臨床効果をほとんど示さなかった[8,9,10]。さらに、ワクチン投与後のPSA値の低下、および客観的X線応答の改善はまれである。
【0072】
アンドロゲン遮断は、転移性前立腺癌患者に対する基本的な治療である。この療法は、PSA再発前立腺癌の患者にも一般的に使用されており、この段階の疾患では間隔を空けてまたは継続的に使用されている。アンドロゲン遮断療法は、オンターゲット直接抗腫瘍効果に加えて、免疫刺激効果をも有している。免疫刺激効果には、胸腺の再増殖、ナイーブT細胞の放出増加の誘導、前立腺への免疫細胞浸潤の増加(骨髄細胞およびリンパ球のいずれも)、調節T細胞数の減少、および前立腺抗原に対する抗体反応の増加が含まれる[11~16]。前臨床研究が示すところによると、アンドロゲン遮断により、チェックポイント阻害[17]、放射線照射腫瘍細胞ワクチン[18]、T細胞養子移入[19]、および抗原特異的ワクチン[20,21]を含む、種々の免疫療法アプローチの有効性が高められる可能性がある。
【0073】
最近公開された結果[22]が示すところによると、アンドロゲン遮断により、in vitroおよびin vivoにおいて、ヒトおよびマウスの前立腺腫瘍細胞におけるAR発現が増加する。発現の増加は、経時的に持続した。AR発現の増加は、AR特異的T細胞による認識および細胞溶解活性を伴っていた。さらに、ADTおよびワクチン接種(具体的には、ARのリガンド結合ドメインをコードするDNAワクチン(MVI-118))を組合せることにより、2種類のマウス前立腺癌モデル(Myc-CaPマウスおよび前立腺特異的PTEN欠損マウス)において、腫瘍体積で測定する抗腫瘍応答が改善され、去勢抵抗性前立腺腫瘍の出現が遅延された。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態においては、ADTをAR指向免疫療法と組合せて、ARの抵抗性および過剰発現の主要なメカニズムを標的とする。いくつかの実施形態においては、アンドロゲン受容体拮抗剤であるエンザルタミドを、抗腫瘍ワクチン接種と組合せて使用する[21]。エンザルタミドまたはアパルタミドなどのアンドロゲン受容体拮抗剤の利点は、テストステロン産生に影響を及ぼすことなく、その作用を媒介することである。したがって、上述の通り、アンドロゲン受容体拮抗剤は免疫療法と組合せて断続的に使用することができる[23]。疾患の初期段階にある患者においては、テストステロン抑制による潜在的かつ長期的な影響を抑制できる。PSAを検出不能なレベルまで低下させ、アンドロゲン遮断療法が必要になる前に前立腺癌を治癒させるか転移性再発を有意に遅延させる能力が、前立腺癌の治療における実質的かつ臨床的に意義のある革新的な進歩である。
【0075】
例示的な組成物および方法を、本明細書にて説明する。
【0076】
〔I.DNAワクチン〕
本発明の実施形態には、癌標的(例えば、PAPおよび/またはAR)に対するDNAワクチンが含まれる。
【0077】
[PAP]
前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)は、前立腺癌における腫瘍抗原である。PAP特異的CD8+CTLは、前立腺癌細胞を溶解させることができる。PAPは、1938年に初めて同定され、最初は前立腺癌を検出する血清マーカーとして使用されていた。正常な前立腺細胞および悪性の前立腺細胞におけるPAPの発現には、確固とした証拠がある。PAPの発現は、転移性癌の前立腺起源を証明するために、現在でも免疫組織化学的染色において使用されている。前立腺組織において、PAPは、普遍的に発現している。そのため、特定の腫瘍によっては発現したりしなかったりする可能性がある特定の癌遺伝子とは異なり、前立腺癌に対する免疫指向療法のための普遍的な標的候補として有望な抗原である。さらに、前立腺癌患者の一部は、PAPに対応する既存の抗体およびT細胞有していることが示されている。このことは、この自己タンパク質に対する耐性が、in vivoで回避できることを示唆している。特に、PAPに特異的なTh1様免疫応答は、免疫化されていない患者においてでさえ、抗腫瘍応答を許容する免疫環境が存在していることを示している。また、実験により実証されているところによると、前立腺癌細胞に対する細胞溶解活性を有しているPAPに特異的なCD8+T細胞が前立腺癌患者において存在しており、これはワクチン接種により増強できる。
【0078】
PAP遺伝子は公知であり、ヒト、マウスおよびラットからクローニングされている(例えば、配列番号1、配列番号2および配列番号3をそれぞれ参照)。当業者であれば容易に認識されるように、PAP遺伝子をコードするDNA配列はいずれも、本発明にとって適している。他の動物由来の任意の他のPAP遺伝子も、当該遺伝子は同定され、特徴付けられ、クローニングされているため、本発明にとって適している。イヌおよび非ヒト霊長類は、PAP遺伝子を有していることが知られている。容易に認識できることに、任意の起源のPAP遺伝子によってコードされるタンパク質(または、その誘導体、等価物、変異体もしくは突然変異体)が、自己または異種抗原性PAPタンパク質によって動物に誘導される免疫応答と実質的に同様の免疫応答を宿主動物に誘導する限りにおいて、当該PAP遺伝子(または、その誘導体、等価物、変異体、突然変異体など)は、本技術に適している。前立腺癌におけるPAPの役割およびPAPを標的とする例示的なワクチンは、WO2017/139628に記載されている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0079】
[AR]
いくつかの実施形態においては、アンドロゲン受容体のリガンド結合ドメインを標的とするDNAワクチンが提供される(例えば、米国特許第9,433,668号、第8,962,590号、第8,513,210号および第7,910,565号を参照。各文献は参照により本明細書に組み込まれる)。このワクチンは、任意の期限のアンドロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(または、当該リガンド結合ドメインの誘導体、等価物、変異体、突然変異体など)を利用している。リガンド結合ドメイン(または、その誘導体、等価物、変異体もしくは突然変異体)が、アンドロゲン受容体の自己または異種抗原性リガンド結合ドメインによって動物に誘導される免疫応答と実質的に同様の免疫応答を、宿主であるヒトまたは非ヒト動物に誘導できる限りにおいて、このワクチンは、本発明に適している。同様に、ポリヌクレオチド配列および当該ポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドまたはタンパク質(または、その誘導体、等価物、変異体もしくは突然変異体)が、アンドロゲン受容体の自己または異種抗原性リガンド結合ドメインによって動物に誘導される免疫応答と実質的に同様の免疫応答を、宿主であるヒトまたは非ヒト動物に誘導できる限りにおいて、アンドロゲン受容体のリガンド結合ドメインをコードする任意の起源のアンドロゲン受容体遺伝子のポリヌクレオチド配列(または、当該ポリヌクレオチドの誘導体、等価物、変異体、突然変異体など)は、本発明に適している。
【0080】
アンドロゲン受容体遺伝子は、公知であり、多くの種からクローニングされている。例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、チンパンジー、マカクおよびキツネザルのアンドロゲン受容体のcDNAおよびアミノ酸配列には、それぞれ、それぞれ以下のGenBankのアクセッション番号が付与されている:NM_000044(cDNA:配列番号5、アミノ酸配列:配列番号6);NM_013476(cDNA:配列番号7、アミノ酸配列:配列番号8);NM_012502(cDNA:配列番号9、アミノ酸配列:配列番号10);NM_001003053;NM_001009012;U94179;U94178。他の生物種に由来するアンドロゲン受容体遺伝子も公知である。このような種としては、Sus scrofa、Astatotilapia burtoni、Gallus gallus、Kryptolebias marmoratus、Alligator mississippiensis、Leucoraja erinacea、Haplochromis burtoni、Pimephales promelas、Dicentrarchus labrax、Gambusia affinis、Micropogonias undulates、Oryzias latipes、Acanthopagrus schlegelii、Rana catesbeiana、Crocuta crocuta、Eulemur fulvus collarisおよびAnguilla japonicaが挙げられる(ただし、これらには限定されない)。それぞれ、GenBankのアクセッション番号NM_214314(またはAF161717)、AY082342、NM_001040090、DQ339105、AB186356、DQ382340、AF121257、AY727529、AY647256、AB099303、AY701761、AB076399、AY219702、AY324231、AY128705、U94178およびAB023960を参照されたい。本発明において、ヒトアンドロゲン受容体のリガンド結合ドメインとは、アミノ酸位置が第651位~第681位である任意のアミノ酸から、アミノ酸位置が第900位~第920位である任意のアミノ酸までのポリペプチドを表す。例えば、第681位~第900位のアミノ酸を含むヒトアンドロゲン受容体またはその断片と、これをコードするポリヌクレオチドを含んでいるDNAワクチンとが、好適なワクチンである。他の生物種に由来するアンドロゲン受容体の対応するリガンド結合ドメインは、(ヒトの配列に対する)配列アラインメントによって容易に決定できる。例えば、配列の同一性または相同性に関連して後述する方法によって決定できる。好適な実施形態において、本発明において使用されるポリペプチドは、アミノ酸位置が第661位~第671位である任意のアミノ酸から、アミノ酸位置が第910位~第920位の任意のアミノ酸までのヒトアンドロゲン受容体由来のポリペプチドである。より好適な実施形態において、本発明において使用されるポリペプチドは、ヒトアンドロゲン受容体の第661位~第920位または第664位~第920位のアミノ酸を含むポリペプチドである。他の生物種に由来するアンドロゲン受容体の対応する断片を決定するための参考として、ヒトアンドロゲン受容体のアミノ酸位置第661位~第920位に対応する、ラット、イヌ、チンパンジー、マカクおよびキツネザルのアンドロゲン受容体上のアミノ酸位置は、それぞれ、第640位~第899位、第643位~第902位、第648位~第907位、第652位~第910位、第636~895位および第625位~第884位である。留意されたいことには、上述したヒト、マウス、ラット、イヌ、チンパンジー、マカク、およびキツネザルのアンドロゲン受容体の断片は、同じアミノ酸配列を有している。他の生物種のアンドロゲン受容体のリガンド結合ドメインも公知であるか、または配列アラインメントによって容易に同定できる。当業者ならば容易に理解するように、アンドロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(またはより大きな断片)をコードする任意のDNA配列は、本発明に適している。このDNA配列には、上述の生物種のいずれかおよび他の動物に由来する完全長の受容体も含まれる。
【0081】
さらに、アンドロゲン受容体のリガンド結合ドメインの断片(HLA-A2と結合しうる断片など)もまた、アンドロゲン受容体またはそのリガンド結合ドメインを発現している細胞に対する細胞傷害性応答を誘発する、有用な抗原である。これらの断片をコードするポリヌクレオチドは、機能的等価物と見做せる。これらの断片の例は、後述する実施例に記載している。とりわけ、以下の4つの断片の使用が意図される:配列番号11(配列番号6の第811位~第819位のアミノ酸)、配列番号12(配列番号6の第761位~第770位のアミノ酸)、配列番号13(配列番号6の第805位~第813位のアミノ酸)、配列番号14(配列番号6の第859位~第867位のアミノ酸)。
【0082】
[DNAワクチン]
本発明が提供するDNA型ワクチンは、ポリペプチド抗原、哺乳動物アンドロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(またはその特定の断片)、および/またはPAP抗原を発現させる。本発明が提供する方法は、上述のワクチンを使用して、ヒトまたは非ヒト動物における前立腺癌を治療する方法である。いくつかの実施形態において、ワクチンは、プラスミドワクチンである。プラスミド型DNAワクチンの利点は、規定された数(通常は少数)のタンパク質しかコードしないことである。したがって、動物または患者を繰り返し免疫化できる。また、ウイルスであれば、細胞を殺傷したり、ゲノムに組み込まれたり、他の望ましくない免疫応答を潜在的に誘導したりすることがある。これらの欠点はいずれも、プラスミド型DNAワクチンによって回避される可能性が高い。いくつかの実施形態において、DNAワクチン技術(例えば、組成物、方法などに関する技術)は、米国特許出願公開第2004/0142890A1に開示されている通りである(この文献は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。
【0083】
DNAワクチンは、ペプチド型ワクチンと同様に、製造が比較的容易かつ安価である点で有利である。また、DNAワクチンは、樹状細胞型ワクチンのように、患者ごとに個々別々のものではない。組換えタンパク質ワクチンでは、抗原は抗原提示細胞に取り込まれ、主にMHCクラスIIに関連して発現する。これとは異なり、核酸ワクチンに含まれているDNAは、抗原提示細胞に取り込まれ、同細胞により直接発現させられる。そのため、自然な流れとして、MHCクラスIおよびMHCクラスIIのエピトープの両方によって抗原提示される[38]。
【0084】
いくつかの実施形態において、PAPポリペプチドの誘導体、等価物、変異体、断片、または突然変異体の配列は、ヒトPAP配列(配列番号1)またはヒトAR配列(配列番号6)に対して、85%以上同一である。より好ましくは、同一性は88%以上であり、90%以上が好ましく、95%以上がより一層この悪しく、95%以上がより一層好ましい。アミノ酸配列間またはヌクレオチド配列間の同一性は、当業者が手動で決定してもよいし、アルゴリズムを採用したコンピューターベースの配列比較・同定ツール(BLAST(Basic Local Alignment Search Tool; Altschul et al. (1993) J. Mol. Biol. 215:403-410)など)を使用して決定してもよい。
【0085】
いくつかの実施形態においては、完全長PAPタンパク質または完全長ARタンパク質の一部分のみをコードする、完全長遺伝子の断片が構築される。これらの断片ペプチドは、タンパク質抗原における体液性応答、細胞傷害性応答またはその両方を誘発するので、機能的等価物とみなされる。
【0086】
本技術が提供するDNA型ワクチンは、タンパク質抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)抗原、および/またはAR抗原を発現させる。いくつかの実施形態において、PAP抗原およびAR抗原は、同じ核酸によって提供される。いくつかの実施形態において、PAP抗原およびAR抗原は、2つの核酸において提供される。いくつかの実施形態において、PAP抗原およびAR抗原は、同じ組成物に含まれている2つの核酸において提供される。いくつかの実施形態において、PAP抗原およびAR抗原は、異なる組成物に含まれている2つの核酸において提供される。
【0087】
いくつかの実施形態において、PAP遺伝子および/またはAR遺伝子が連結されている発現ベクターは、ポリヌクレオチドワクチン接種のために特異的に最適化されている発現ベクターである。当業者に周知の通り、好適な発現ベクターの特徴の例としては、転写プロモーター、免疫原性エピトープ、免疫刺激配列、および免疫増強遺伝子または免疫調節遺伝子をコードする追加のシストロン(当該シストロン自体のプロモーター、転写ターミネーター、細菌性複製起点、および抗生物質耐性遺伝子を含む)が挙げられる。必要に応じて、いくつかの実施形態において、ベクターは、ポリシストロン性mRNAを発現させるための内部リボソーム侵入部位(IRES)を有している。
【0088】
本技術のいくつかの実施形態においては、転写プロモーターに直接連結されているPAPタンパク質および/またはARタンパク質をコードする遺伝子を使用してもよい。いくつかの実施形態においては、組織特異的なプロモーターまたはエンハンサー(例えば、筋クレアチンキナーゼ(MCK)エンハンサー要素)を使用して、ポリヌクレオチドの発現を特定の組織型に制限する。例えば、筋細胞は、最終的に分化した細胞であり分裂しない。外来DNAの染色体への組み込みは、細胞分裂およびタンパク質合成の両方によって促進されるとされている。したがって、タンパク質の発現を非分裂細胞(筋細胞など)に制限することが、好ましい場合がある。さらに、いくつかの実施形態においては、PSAプロモーターを使用して、タンパク質の発現を前立腺組織に制限する。いくつかの実施形態においては、組織特異的または細胞特異的なプロモーターを使用して、タンパク質の発現を抗原提示細胞に標的化する。例えば、いくつかの実施形態においては、α-フェトプロテイン(AFP)プロモーターを使用して、発現を肝組織に制限する(例えば、Peyton et al. 2000, Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 97:10890-10894を参照)。しかし、プラスミド型DNAワクチンが導入される多くの組織においては、CMVプロモーターの使用は発現のために充分である。
【0089】
種々の実施形態における好適なベクターは、PAP抗原および/またはAR抗原(または、その機能的等価物もしくは誘導体)をコードする任意のプラスミドDNA構築物を有している。このPAP抗原および/またはAR抗原は、真核生物プロモーターに作動可能に連結されている。このようなベクターの例としては、pCMVシリーズの発現ベクター(Stratagene (La Jolla, Calif.)より販売);または、pCDNAシリーズもしくはpREPシリーズの発現ベクター(Invitrogen Corporation (Carlsbad, Calif.)より販売)が挙げられる。
【0090】
本発明には数多の実施形態が存在することが、本明細書に基づいて当業者に理解される。したがって、種々の実施形態において、異なる転写プロモーター、ターミネーターおよび他の転写調節要素が使用される。他の真核生物の転写プロモーターの例としては、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、ヒト伸長因子-1α(EF-1α)プロモーター、およびヒトユビキチンC(UbC)プロモーターが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態においては、導入遺伝子を発現させる裸のプラスミドDNAを使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、裸のプラスミドDNAを直接に皮内注射または筋肉内注射し、取り込ませ、発現させる(例えば、Wolff et al., 1990, Science 247:1465-8を参照)。このアプローチが有効であるのは、ごく僅かな割合の筋細胞のみがin vivoで直接形質転換され、指向性の高い送達によって限局された筋組織のみを標的化できることである。高い効率で遺伝子を送達する方法を与える、種々の代替的アプローチが知られている(例えば、Acsadi et al., 1991, New Biol. 3:71-81; Wolff et. al., 1991, Biotechniques 11:474-85; Budker et. al., 1996, Nat. Biotechnol. 14:760-4; Davis et al., 1993, Hum. Gene Ther. 4:151-9; Danko et al., 1994, Gene Ther. 1:114-21; Manthorpe et al., 1993, Hum. Gene Ther. 4:419-31を参照)。
【0092】
いくつかの実施形態において、DNAワクチンは、pTVG-HPである(例えば、ヒトPAPのcDNAを有しているpTVG4ベクターである)。pTVG-HPは、E. coli中で産生されるプラスミドDNAであって、ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)のcDNAをコードしている。特に、pTVG-HPプラスミドは、プラスミドベクターpNGVL3(例えば、ミシガン大学National Gene Vector Laboratoryから入手したもの)から構築した。このベクターは、pCDNA3.1発現ベクターと同様にCMVプロモーターからの転写を駆動し、CMVイントロンA配列もさらに有しておりタンパク質発現が増強されている(Lee et al., 1997, Mol. Cells 7:495-501)。このベクターはまた、マルチクローニング部位を有しており、真核細胞性の抗生物質耐性遺伝子を発現しない。そのため、真核細胞系で発現が予想される唯一のタンパク質は、CMVプロモーターによって駆動されるものであり、この点はpCDNAベクターとは異なっている。このベクターに、2コピーの免疫刺激(ISS)断片(36bp)を挿入して、ベクターpTVG4を作製した。ISS断片は、既報(Hartmann et al., 2000, J. Immunol. 164:1617-24)にて同定された5’-GTCGTT-3’モチーフを有していた(例えば、5’末端にTpCジヌクレオチドを有しており、これに続いてTpTジヌクレオチドによって分離されている3個の6-mer CpGモチーフ(5’-GTCGTT-3’)を有するポリヌクレオチド)。このベクターにヒトPAPのコーディング配列をクローニングし、PAPの発現をin vitroの発現研究にて確認した。この構築物を「pTVG-HP」と称する。したがって、いくつかの実施形態において、DNAワクチンは、CpG免疫刺激配列を有している。いくつかの実施形態において、免疫刺激配列は、TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT(配列番号4)である。
【0093】
いくつかの実施形態において、ワクチンは、GM-CSFを含んでいる。GM-CSF(Leukine (R), Sargramostim)は、ワクチンアジュバントである。具体的に、GM-CSFは、造血前駆細胞(樹状抗原提示細胞など)の生存、クローン増殖および分化を支える成長因子である。GM-CSFは、安全であり、免疫抗原に対する抗体およびT細胞の応答の誘導に有効なアジュバントとなることが示されている[58,59]。GM-CSFの使用は、ほとんど毒性を伴わない[60,61,62]。GM-CSFは、無菌・白色・防腐剤不使用であり、凍結乾燥粉末として250μgのバイアルで提供されている。組換えヒトGM-CSF(rhGM-CSF)は、静脈内投与または皮下投与する場合、50~500μg/m/日の用量範囲ならば、一般的に許容できる。
【0094】
本技術の特定の実施形態においては、バイアルを解凍し、プラスミド型DNAワクチンを使用してGM-CSFを再構成する。例えば、各DNAによる免疫化ににおいては、0.2mg/mLのpTVG-HPを0.6mL吸引して、250μgのGM-CSFを再構成する。次に、2つのツベルクリンシリンジに0.25mLずつ吸引する。これによって、100μgの用量のDNAと、208μgのGM-CSFとが、効果的に提供される。
【0095】
〔II.PD-1阻害〕
腫瘍が免疫系による検出を回避する主要な機構に、T細胞受容体PD-1のリガンドである、PD-L1またはPD-L2を発現させるというものがある。PD-L1またはPD-L2によりPD-1が活性化すると、T細胞の機能が低下し、免疫耐性が向上する。臨床試験においてこれらの薬剤により観察された有害事象は比較的少なく、また早期臨床試験のいくつかの症例において観察された長期的な疾患応答を考慮すると、PD/PD-L阻害剤(例えば、PD-1および/またはPD-L1阻害剤)の開発は、現在のところ非常に興味深い話題である。とりわけ、PD-1を標的とすることは、普遍的な治療法となるはずである。なぜならば、この治療法はT細胞の一部を標的とするのであり、腫瘍を直接標的としないからである。しかし、これまでの臨床試験の結果が示唆するところによると、ある種の固形腫瘍型(特に、腎細胞癌、黒色腫、非小細胞肺癌)の患者は、前立腺癌を含む他の組織癌の患者よりも、より効果が高い[18,19]。応答した患者と応答しなかった患者のT細胞の違いが、この相違の根底にあるのかもしれない。具体的には、前立腺癌と比べて腎細胞癌および黒色腫の患者では、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)がより高い頻度で観察されることが多い。さらに、PD-1またはPD-L1を使用した早期臨床試験から判明しているところによると、生検により確認された標的腫瘍細胞にPD-1のリガンド(PD-L1)の1つ以上の発現は、治療に対する臨床的応答と関連する[18]。組織浸潤T細胞がIFNγの発現を介してPD-L1の発現を誘導するができ、かつ、PD-1のリガンド結合によりT細胞のエフェクター機能が低下するを鑑みるに、これは予想される結果である。前立腺癌はPD-L1を発現させることができ、浸潤性のPD-1発現T細胞を有しうることが実証されている[20]。総括すると、これらの結果によって示されているのは、前立腺癌に対する抗腫瘍免疫療法の有効性が、以下によって高まるかも知れないことである:(i)ワクチン接種などにより腫瘍特異的T細胞の数を増加させられる薬剤を組合せること。(ii)例えば、PD阻害剤および/またはPD-L阻害剤(例えば、抗PD-1抗体などのPD-1阻害剤および/または抗PD-L1抗体などのPD-L1阻害剤)による、PD阻害および/またはPD-L阻害(PD-1および/またはPD-L1阻害など)。
【0096】
PD-1またはPD-L1を標的とした抗体を用いた早期臨床試験において抗腫瘍効果が認められたことに鑑みて、複数の製薬企業が関連製剤の開発を進めている。現時点では1種類の治療薬が承認されており、それはペムブロリズマブ(KEYTRUDA, Merck)である。具体的に、ペムブロリズマブは、イピリムマブ抵抗性の進行黒色腫の治療薬として2014年9月に承認された。これは、イピリムマブによる治療後に疾患が進行した進行(転移性)黒色腫の患者を対象とするオープンラベルで国際的な多施設共同拡大コホートの第I相試験に基づく、画期的な療法として承認されたのであった。この臨床試験では、173人の患者に対して、2種類の用量(2mg/kgまたは10mg/kg)のうちいずれかの容量にて、3週間隔でペムブロリズマブを投与した。投与は、疾患が進行するか、耐えられない毒性が現れるまで続けた。用量に関係なく、全奏効率は26%であった。グレード3の倦怠感が、複数の患者で報告された薬剤関連のグレード3または4の有害事象として唯一のものであった。これらの所見を考慮し、今日では、ペムブロリズマブはイピリムマブ抵抗性黒色腫患者の治療薬としてFDAに承認されており、疾患進行または耐えられない有害作用が現れるまで、2mg/kgの用量を3週間ごとに静脈内投与する。しかし、注目すべきことに、早期臨床試験が示唆するところによると、治療を停止した場合であっても、治療による奏効期間が延長することがある。
【0097】
いくつかの実施形態において、PD-1経路阻害剤は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、ペンブロリズマブである(商標名「Keytruda (R)」として市販されている)。ペンブロリズマブは、ヒトプログラム死受容体1(PD-1)阻害抗体であり、イピリムマブ投与後に切除不能または転移性黒色腫が認められ、疾患が進行した患者の治療に適応される。また、BRAFのV600突然変異が陽性である場合には、BRAF阻害剤にも適応される。ペンブロリズマブは単回使用バイアルで入手可能であり、注射用の100mgの凍結乾燥粉末から構成されている。3週間ごとに200mgの固定用量で投与することが好ましい。4.0mLの注射用無菌水(USP)をバイアルに加えると、25mg/mL溶液が調製される。いくつかの実施形態においては、0.9%塩化ナトリウム注射液(USP)を含んでいるIVバッグに2個のバイアルの内容物を移して、稀釈溶液の最終濃度が1~10mg/mLとなるようにする。したがって、いくつかの実施形態においては、ペンブロリズマブを静脈内注入する。例えば、無菌の非発熱性低タンパク質結合0.2μm~5μmインラインフィルターまたはアドオンフィルターを有しているIVラインを使用して、30分間にわたって投与する。
【0098】
いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体はニボルマブである(商標名「Opdivo (R)」として市販されている)。ニボルマブは、ヒトIgG4抗PD-1モノクローナル抗体であり、活性化T細胞におけるプログラム細胞死1(PD-1)受容体のリガンド活性化を阻害することにより、免疫調節因子として作用する。具体的に、ニボルマブは、T細胞の活性化および応答に関する負の調節因子を阻害するように作用する。そのため、免疫系が腫瘍を攻撃できるようになる。すなわち、ニボルマブは、PD-L1がPD-1に結合することを阻害し、T細胞が腫瘍を攻撃できるようにする。
【0099】
本発明はまた、本発明の方法およびキットにおける他のPD-1拮抗剤の使用を意図する。他のPD-1拮抗剤の例としては、BMS-936559(Bristol-Myers Squibb)、MEDI0680(MedImmune/AstraZeneca)、MEDI4736(MedImmune/AstraZeneca)、MPDL3280A(Genentech/Roche)、MSB0010718C(EMD Serono)、Pidilizumab(CureTech)が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。
【0100】
〔III.アンドロゲン遮断療法〕
いくつかの実施形態において、前立腺癌の治療は、アンドロゲン遮断療法(ADT)を含む。テストステロンは、脳において開始される一連の過程を介して合成される。身体がテストステロンのレベルが低いことを検知すると、視床下部はLHRHを産生し始める。LHRHが下垂体により受容されると、LH(黄体形成ホルモン)の合成が活性化される。LHは精巣へ移動し、そこでテストステロンの形成を誘導する。薬物によるアンドロゲン遮断療法には、2種類の方法がある。一つは、下垂体からのLHの放出を防ぐものである。もう一つは、身体がアンドロゲンを使用する能力を阻害するものである。
【0101】
LHRH作動剤およびLHRH拮抗剤の2種類の薬剤があり、いずれも精巣で作られるテストステロンの量を減少させる。これらの薬剤には、下垂体におけるLHの形成を抑制する働きがある。LHRH作動剤は、テストステロン量を急激に増加させた後、大幅に減少させる(この仮定をフレアと称する)。LHRH拮抗剤は、テストステロン量を直接減少させる。LHRH作動剤およびLHRH拮抗剤の有効成分の例、リュープロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ヒストレリンおよびデガレリクスが挙げられる(ただし、これらには限定されない)。いくつかの実施形態においては、これらの薬物を皮下注射し、外科的去勢と同じ結果をえる。
【0102】
いくつかの実施形態においては、抗アンドロゲン療法(例えば、アンドロゲン受容体拮抗剤)を利用する。去勢処置後においても、副腎がアンドロゲン産生の他の中心となることが判明した。そのため、抗アンドロゲン剤を使用してアンドロゲンを使用するあらゆる身体能力を阻害する、補完的な治療が開発されている。前立腺細胞はアンドロゲン受容体(AR)を有しており、アンドロゲン(テストステロンなど)によって刺激されると、成長が促進され、前立腺への分化が維持される。しかし、これらの成長促進シグナルは、癌細胞において発生した場合には問題となりうる。抗アンドロゲン剤はアンドロゲン受容体に対する親和性が高いため、細胞内に入り、テストステロンと受容体タンパク質との結合を阻害できる。
【0103】
アンドロゲン受容体拮抗剤の例としては、酢酸シプロテロン、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、エンザルタミドおよびアパルタミドが挙げられる(ただし、これらには限定されない)。これらのアンドロゲン受容体拮抗剤は、全て経口錠剤の形態で投与される。さらなるアンドロゲン受容体拮抗剤の例としては、テストステロン合成を標的とする薬剤(例えば、アビラテロン酢酸エステルおよびseviteronel)、ARの核移行を標的とする薬剤(例えば、エンザルタミド、アパルタミドおよびダロルタミド)、併用治療剤(例えば、ガレテロン)が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。
【0104】
いくつかの実施形態において、アンドロゲン受容体拮抗剤は、エンザルタミドまたはアパルタミドである。
【0105】
〔IV.治療方法〕
上述した通り、本明細書においては、前立腺癌の治療のための併用治療が提供される。いくつかの実施形態において、治療には、1つ以上のDNAワクチン(例えば、PAPおよび/またはARを標的とするDNAワクチン)と、PD-1阻害およびアンドロゲン受容体拮抗剤ととの組合せが含まれている。
【0106】
いくつかの実施形態において、DNAワクチン(例えば、PAPおよび/またはARを標的とするDNAワクチン)は、本明細書に記載の通り、PD経路阻害剤およびAR拮抗剤と併用投与される(例えば、本明細書に詳細に記載されている投薬スケジュールを参照)。いくつかの実施形態において、DNAワクチン(例えば、PAPおよび/またはARを標的とするDNAワクチン)は、PD経路阻害剤による治療の前、治療と同時、または治療後に投与される(例えば、本明細書に詳細に記載されている投薬スケジュールを参照)。
【0107】
いくつかの実施形態においては、DNAワクチンおよびPD-1経路阻害剤を、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間またはそれ以上にわたって併用投与する。これに続いて、DNAワクチン、PD-1経路阻害剤およびAR拮抗剤を、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間またはそれ以上併用投与する。これに続いて、DNAワクチン、PD-1経路阻害剤およびAR拮抗剤を投与しない期間を設ける(例えば、1週間、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、24週間、またはそれ以上)。
【0108】
いくつかの実施形態においては、AR拮抗剤を、DNAワクチンおよびPD-1経路阻害剤と同時に、複数週間の間隔を空けて投与する(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、またはそれ以上)。これに続いて、AR拮抗剤を投与しない期間を設ける(例えば、1週間、4週間、6週間、10週間、12週間、16週間、18週間、24週間、またはそれ以上)。いくつかの実施形態において、AR拮抗剤による治療の期間は、DNAワクチンおよびPD-1経路阻害剤による長期治療中に設けられる。
【0109】
したがって、本技術のいくつかの実施形態は、癌患者(例えば、非転移性、ホルモン感受性、生化学的再発(PSA再発)の前立腺癌患者、または転移性、去勢抵抗性の前立腺癌患者)における、ペムブロリズマブまたはニボルマブと、DNAワクチンおよびAR拮抗剤との組合せ投与に関する(例えば、同時または連続的な投与)。
【0110】
いくつかの実施形態においては、DNAワクチンの投与の前および/または後において、併用治療に対する応答に関して患者を試験する。いくつかの実施形態においては、PD経路阻害剤(例えば、ペンブロリズマブまたはニボルマブ)の投与の前および/または後において、患者を試験する。いくつかの実施形態において、試験の例としては、イメージング(例えば、放射線撮影法、骨イメージング)、抗腫瘍応答速度の測定(PCWG2基準を使用する客観的応答速度および/またはPSA応答速度)、PAPまたはAR特異的T細胞の応答強度の測定、循環T細胞におけるPD-1発現の測定、循環上皮細胞(CEC)および/または腫瘍生検におけるPD-L1発現の測定、腫瘍増殖速度の測定、PAP特異的抗体の量の測定、前立腺関連抗原(例えば、PSAおよび/またはPAP)の量の測定が挙げられる。
【0111】
いくつかの実施形態においては、バイオマーカーをモニタリングする(例えば、治療経過を追跡するために、および/または、治療の有効性の予測因子として)。バイオマーカーの例としては、CECまたは腫瘍生検におけるPD-L1発現、腫瘍特異的T細胞または腫瘍細胞における他の調節分子の発現(前者の場合はTIM3、BTLAおよびLAG3など;後者の場合はHVEM、ホスファチジルセリン、PD-L2など)、PD-1調節抗原特異的T細胞(例えば、trans vivo DTH試験によって同定される)が挙げられる。
【0112】
一般的に意図されているところによると、DNAワクチン、AR拮抗剤およびPD-1阻害剤は、哺乳動物に投与するために製剤化されている。とりわけ、これらの化合物の投与に応答する状態にあるヒト(例えば、前立腺癌を患っているヒト被験体)に投与するために製剤化されている。したがって、意図される化合物を薬理学的組成物として投与するとき、当該化合物は、薬学的に許容可能な担体と混合して製剤化されていることが意図される。例えば、意図される化合物を、薬理学的に許容可能な塩として経口投与してもよいし、生理食塩水溶液(例えば、pH:約7.2~7.5に緩衝されている液)として静脈内投与してもよい。この目的のために、従来公知の緩衝液(リン酸塩、重炭酸塩またはクエン酸塩など)が使用できる。もちろん、当業者であれば、本明細書の教示の範囲内で製剤を設計変更して、特定の投与経路のための様々な製剤を提供することができる。特に、意図される化合物を、水または他のビヒクルにおける溶解性を高めるために設計変更することができる。溶解性の向上は、例えば、通常の技術的創作の範囲内に含まれる些少な設計変更により、容易に達成できる(塩製剤、エステル化など)。また、特定の化合物の投与経路および投薬レジメンを変更して、患者における有益な効果を最大化するために当該化合物の薬物動態を管理することも、通常の技術的創作の範囲内である。
【0113】
特定の医薬剤型において、種々の目的のために意図される化合物のプロドラッグ形態を形成してもよい(毒性の減少、臓器または標的細胞特異性の向上など)。種々のプロドラッグ形態の中でも、当該化合物のアシル化(アセチル化または他のアシル化)誘導体、ピリジンエステル、および種々の塩形態が好ましい。当業者であれば、当該化合物を容易に設計変更してプロドラッグ形態とし、宿主生物または患者内の標的部位への有効成分の送達を促進する方法を認識している。また、当業者であれば、、宿主生物または患者内の標的部位に当該化合物を送達する際に、プロドラッグ形態の好ましい薬物動態学的パラメータを(利用できるならば)利用して、当該化合物の意図される効果を最大化させる。同様に理解されたいことには、意図される化合物は、生物学的に活性のある形態に代謝されてもよい。それゆえ、本明細書に記載の化合物の全ての代謝産物が、特に意図されている。さらに、意図される化合物(およびこれらの組合せ)を、追加の薬剤とさらに組合せて投与してもよい。
【0114】
被験体への投与に関して意図されることには、化合物は、薬学的に有効な量で投与される。当業者であれば理解するように、薬学的に有効な量は、使用する治療剤、被験体の年齢、状態および性別、ならびに被験体における疾患の重篤度に応じて変化する。一般的に、投薬量は、有害な副作用を引き起こすほど多量にするべきではない(血液の問題、肺の問題、大腸炎、肝炎、腎炎、下垂体炎、甲状腺機能障害など)。また、投薬量は、所望の治療目標を達成するために、個々の医師によって調節されうる。したがって、腫瘍が小さい疾患を患っている男性(例えば、非転移性または微小転移性ホルモン感受性前立腺癌、生化学的に再発した前立腺癌を患っている男性)においては、PD-1阻害剤の標準用量の1/2、1/3または1/4を投与することが意図される。これにより、有効な抗腫瘍応答を生じさせ、かつ、進行癌または転移癌に用いられる標準用量のPD-1阻害剤に起因する毒性および副作用を低減させる。
【0115】
本明細書において用いられるとき、用語「薬学的に有効な量」によって包含される実際の量は、投与経路、治療される被験体の類型、および特定の被験体の考慮すべき身体的特徴に応じて変化する。薬学的に有効な量を決定するための、これらの因子および因子間の関係は、医学、獣医学および他の関連技術の当業者に周知である。薬学的に有効な量および投与方法は、有効性を最大にするように設計できるが、体重、食事、併用している医薬品、および当業者が認識する他の因子などに応じて変化する。
【0116】
好ましくは、医薬組成物は、本技術の1種類以上の化合物と、1つ以上の薬学的に許容可能な担体、稀釈剤または賦形剤と、を含んでいる。薬学的に許容可能な担体は、本技術分野で周知である。例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されているものが挙げられる(あらゆる目的のために、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。
【0117】
したがって、いくつかの実施形態において、免疫療法剤は以下に示すものとして製剤化されている。錠剤、カプセル、持続放出性錠剤、持続放出性カプセル、持続放出性ペレット;徐放性錠剤、徐放性カプセル、徐放性ペレット;速放性錠剤、速放性カプセル、速放性ペレット;舌下錠剤;ゲルカプセル;マイクロカプセル;経皮送達製剤;経皮ゲル;経皮パッチ;経皮溶解性マイクロニードル製剤(例えば、パッチにおいて提供される);無菌溶液;標的部位への直接注射として筋肉内注射、皮内注射、もしくは皮下注射に使用するために、または静脈内投与に使用するために調製されている無菌溶液;直腸投与用に調製されている溶液;胃栄養チューブまたは十二指腸栄養チューブを通して投与するために調製されている溶液;直腸投与のための坐剤;溶液またはエリキシル剤として調製されている、経口摂取のための液体;局所用クリーム;ゲル;ローション;チンキ;シロップ;エマルション;懸濁液。
【0118】
いくつかの実施形態において、持続放出製剤は、持続的放出メカニズム、持続的活性メカニズム、延長された放出メカニズム、制御された放出メカニズム、調節された放出メカニズム、または継続的放出メカニズムを有している。例えば、組成物は、迅速に、ゆっくりと、または任意の適切な放出速度で化合物が経時的に溶解するように製剤化されている。
【0119】
いくつかの実施形態において、組成物は、有効成分が不溶性物質(例えば、種々のアクリル樹脂、キチン)の基剤に埋め込まれているように製剤化されている。これにより、溶解した化合物は、基剤中の孔を通って外に放出される(例えば、拡散によって)。いくつかの実施形態において、製剤は、ポリマー系の錠剤に封入されている。このポリマー系の錠剤は、一方の側にレーザー穿孔された穴を有しており、他方の側に多孔質膜を有している。胃酸は多孔質膜を透過し、それによって、レーザー穿孔された穴を通して薬物が押し出される。やがて、全ての用量の薬物が系内に放出される一方で、ポリマー容器は無傷のままであり、通常の消化を経た後に排泄される。いくつかの持続的放出製剤では、化合物は基剤中に溶解しており、基剤は物理的に膨潤してゲルを形成している。これにより、化合物はゲルの外表面を通って放出されるようになる。いくつかの実施形態において、製剤はマイクロカプセル化形態である。マイクロカプセル化形態は、例えば、いくつかの実施形態において、複合体溶解プロファイルを与えるために使用される。例えば、不活性コアの周りに化合物をコーティングし、不溶性物質を用いて層状にして微小球を形成することにより、いくつかの実施形態においては、より安定で再現性のある溶解速度が便利な形態で提供される。この形態は、他の制御放出される(例えば、即時放出される)医薬成分と特定の実施形態において組合せられる。例えば、マルチパートゲルカプセルが提供される。
【0120】
いくつかの実施形態において、本技術の調製物および/または製剤は、粒子として提供される。本明細書において用いられるとき「粒子」とは、全体または一部が本明細書に記載の化合物からなり構成されうる、ナノ粒子またはマイクロ粒子(または、場合によってはさらに大きい粒子)を意味する。粒子は、コーティング(腸溶コーティングなどであるが、これには限定されない)に被覆されているコアの中に、調製物および/または製剤を含んでいてもよい。調製物および/または製剤は、粒子全体に分散していてもよい。調製物および/または製剤は、粒子中に吸収されていてもよい。粒子は、任意の次数放出動態を取ってもよい(ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、およびこれらの任意の組合せなど)。粒子は、調製物および/または製剤の他に、薬学および医学の分野で通常に使用される任意の材料を含んでいてもよい(侵食性材料、非侵食性材料、生分解性もしくは非生分解性材料、またはこれらの組合せなどであるが、これらには限定されない)。粒子は、溶液または半固体状態の製剤を含有しているマイクロカプセルであってもよい。粒子は、事実上、どのような形状であってもよい。
【0121】
非生分解性ポリマー材料および生分解性ポリマー材料のいずれもを使用して、調製物および/または製剤を送達するための粒子を製造できる。ポリマーは、天然ポリマーまたは合成ポリマーであってもよい。ポリマーは、放出が望まれる時間に基づいて選択される。特に興味深い生体接着性ポリマーとしては、H. S. Sawhney, C. P. Pathak and J. A. Hubell in Macromolecules, (1993) 26: 581-587に記載されている生体侵食性ヒドロゲルが挙げられる(この教示は、参照によって本明細書に組み込まれる)。ポリマーの例としては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)が挙げられる。
【0122】
本技術はまた、化合物またはその塩の水溶液を含んでいる安定な医薬品を調製して、分解産物の形成を阻害する方法を提供する。化合物またはその塩と、1種類以上の阻害剤とを含んでいる溶液が提供される。密封可能な容器内に溶液を最終充填する前および/または後に、1つ以上の滅菌技術の下で溶液を処理して、安定な医薬品を形成させる。当該製剤は、製剤が実質的に均質である限り(例えば、薬物が製剤内に実質的に均一に分布する限り)、本技術分野で周知の種々の方法によって調製できる。均一に分布させることにより、製剤からの薬物の放出の制御が容易になる。
【0123】
いくつかの実施形態において、化合物は緩衝剤と共に製剤化されている。緩衝剤は、薬学的に許容可能な任意の緩衝剤であってよい。緩衝系の例としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液およびリン酸緩衝液が挙げられる。緩衝剤の例としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸ナトリウムおよびリン酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、重炭酸ナトリウムおよび炭酸、コハク酸ナトリウムおよびコハク酸、ヒスチジン、安息香酸ナトリウムおよび安息香酸が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態において、化合物は、キレート剤と共に製剤化されている。キレート剤は、薬学的に許容可能な任意のキレート剤であってよい。キレート化剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、エデト酸、versene acidおよびsequestreneとも同義)、およびEDTA誘導体(エデト酸二カリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸三ナトリウムおよびエデト酸カリウムなど)が挙げられる。他のキレート剤の例としては、クエン酸およびその誘導体が挙げられる。クエン酸は、クエン酸一水和物としても知られている。クエン酸の誘導体の例としては、無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム二水和物が挙げられる。さらに他のキレート剤の例としては、ナイアシンアミドおよびその誘導体、ならびにデソキシコール酸ナトリウムおよびその誘導体が挙げられる。
【0125】
いくつかの実施形態において、化合物は酸化防止剤と共に製剤化されている。酸化防止剤は、薬学的に許容可能な任意の酸化防止剤であってよい。酸化防止剤は当業者に周知であり、例えば以下の物質が挙げられる。アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウムなど)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸アルキル、ピロ亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム、トコフェロールおよびその誘導体(d-αトコフェロール、d-αトコフェロール酢酸エステル、dl-αトコフェロール酢酸エステル、d-αトコフェロールコハク酸エステル、βトコフェロール、δトコフェロール、γトコフェロールおよびd-αトコフェロールポリオキシエチレングリコール1000コハク酸エステル)、モノチオグリセロール、亜硫酸ナトリウム。これらの物質は、通常、0.01~2.0%の範囲で添加する。
【0126】
いくつかの実施形態において、化合物は凍結防止剤と共に製剤化されている。凍結防止剤は、薬学的に許容可能な任意の凍結防止剤であってよい。一般的な凍結防止剤の例としては、ヒスチジン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリジン、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびポリオールが挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態において、化合物は等張化剤と共に製剤化されている。等張化剤は、薬学的に許容可能な任意の等張化剤であってよい。「等張化剤」は、本技術分野では等浸透圧剤と互換的に使用され、医薬品に添加することにおり浸透圧を高める化合物として知られている。例えば、いくつかの実施形態においては、ヒト細胞外液(血漿など)と等浸透圧である0.9%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧を高める。好ましい等張化剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、デキストロースおよびグリセロールである。
【0128】
医薬品は、必要に応じて防腐剤を含んでいてもよい。一般的な防腐剤の例としては、クロロブタノール、パラベン、チメロサール、ベンジルアルコールおよびフェノールからなる群から選択されるものが挙げられる。好適な防腐剤としては、クロロブタノール(0.3~0.9%w/v)、パラベン(0.01~5.0%)、チメロサール(0.004~0.2%)、ベンジルアルコール(0.5~5%)、フェノール(0.1~1.0%)などが挙げられる(ただし、これらには限定されない)。
【0129】
いくつかの実施形態において、化合物は湿潤剤と共に製剤化されており、これにより口腔適用において心地よい口当たりが提供される。本技術分野で周知の湿潤剤の例としては、コレステロール、脂肪酸、グリセリン、ラウリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ペンタエリスリトールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態において、製剤には乳化剤が含まれている。これにより、例えば、あらゆる賦形剤(特に、ベンジルアルコールなどの疎水性成分)を完全に溶解させられる。多くの乳化剤が本技術分野で周知である(例えば、ポリソルベート60)。
【0131】
経口投与に関するいくつかの実施形態において、薬学的に許容可能な矯味剤および/または甘味料を添加することが望ましい場合がある。サッカリン、グリセリン、単シロップおよびソルビトールなどの化合物は、甘味料として有用である。
【0132】
〔測定方法およびアッセイ方法〕
種々の実施形態においては、様々な技術および観察可能なものを利用してデータを収集する。これにより、例えば、被験体に関するベースラインを測定する、および/または、治療の有効性をモニタリングする。例えば、いくつかの実施形態は、イメージングに基づいて被験体を評価する工程を含む。いくつかの特定の実施形態において、イメージング技術は、コンピュータ断層撮影(CT)を含む。いくつかの特定の実施形態において、イメージング技術は、磁気共鳴映像法(MRI)を含む。いくつかの実施形態においては、CTおよび/またはMRIにより、標的病変を測定するための正確かつ再現可能な方法が提供される。いくつかの実施形態においては、スライス厚が10mm以下の連続した断面を用いて、CTおよびMRIを実施する。いくつかの実施形態においては、5mmの連続再構成アルゴリズムを用いてスパイラルCTを実施する(例えば、胸部、腹部および骨盤の腫瘍に対して)。
【0133】
いくつかの実施形態においては、腫瘍マーカーを測定する。例えば、いくつかの実施形態においては、PSAを測定する。いくつかの実施形態において、異なる時点におけるPSA動態を報知するためにPSA値を収集する。いくつかの実施形態において、被験体のPSA値が0.2ng/mL未満に低下した場合には、PSA応答は完全である。いくつかの実施形態においては、血清中のPAPおよび/またはARを測定する。いくつかの実施形態において、PAPおよび/またはPSAの血清濃度は、ワクチン接種後に安定化および/または低下する。これにより、ワクチンの有効性を評価する。いくつかの実施形態においては、血清PAPまたは血清ARに対する血清PSAの比率を計算することにより、ワクチンの有効性を評価する。いくつかの実施形態においては、治療によってPSA:PAP比率が上昇する。これは、治療により、PAP産生細胞がPSA産生細胞よりも選択的に枯渇させられ、それゆえ、PAP濃度がPSA濃度よりも速く低下するからである。ただし、理論に拘束されるものではなく、作用機序または理論を理解しなくとも本技術は実施できる。
【0134】
いくつかの実施形態においては、被験体に対して臨床試験を行う。いくつかの実施形態において、病変が表在性(例えば、皮膚の結節や、触知可能なリンパ節)である場合には、臨床的に検出された病変は測定可能であると見做される。いくつかの実施形態において、カラー写真によって皮膚の病変を記録し、この写真には病変の大きさを推定するためのスケールバーが含まれている。
【0135】
〔病理組織学的評価〕
いくつかの実施形態においては、治療前および治療後に、転移性病変(例えば、患者については同じ病変)から組織生検を得る(例えば、治療の開始から1~24週間後において;例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、14週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間または24週間の期間)。いくつかの実施形態においては試験を行い、腫瘍におけるPD-L1発現に免疫化がどのように影響するかを評価する。IFNγを分泌する腫瘍抗原特異的T細胞を誘発することによって、免疫化は腫瘍におけるPD-L1発現に影響を及ぼしていると考えられる。ただし、理論に拘束されるものではなく、作用機序または理論を理解しなくとも本技術は実施できる。さらに試験を行って、抗PD-1mAbとの併用治療によりCD8+T細胞の浸潤が増加するか否かと、処理がT細胞または腫瘍における他のT細胞調節リガンド(前者においては、PD-1、CTLA-4、TIM-3、BTLA、LAG-3;後者においては、例えば、HVEM、ホスファチジルセリン、PD-L2)の発現が治療により増加するか否かと、を評価する。次に、CD3、CD4、CD8、FoxP3、PD-1、CTLA-4、TIM3、BTLA、LAG-3、PD-L1、PD-L2、ホスファチジルセリンおよび/またはHVEMおよび/または他のマーカーに特異的な抗体を用いて、治療前および治療開始後に得られた生検標本を染色する。治療群について盲検化した病理医が染色および定量を検討して、1視野あたりのCD8+T細胞、CD4+FoxP3+(Treg):CD8+T細胞比、PD-L1発現(例えば、1視野あたり5個以上のPD-L1陽性細胞によって示される)を決定する。治療前後に測定したこれらのパラメータを比較して、治療の結果として変化した何らかの測定値または計算されるパラメータを同定する。
【0136】
〔循環腫瘍細胞(CTC)の評価〕
いくつかの実施形態においては、CTCを計数し、特徴付ける。例えば、いくつかの実施形態においては、免疫評価と同じ時点においてこれを行う(例えば、治療前および治療後1~6週間(例えば、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、または6週間後))。評価の間隔は、最大で1年間である(例えば、毎月、四半期ごと)。CTCの計数および特徴づけには、フローサイトメトリーを用いる。例えば、いくつかの実施形態においては、これらの時点で得たPBMCを染色する(例えば、CD45、EpCAM、PD-1、PD-L1、CTLA-4およびDAPIのうちの1つ以上に特異的な蛍光色素標識抗体を用いて染色する)。CTCとは、CD45-EpCAM+DAPI-細胞として定義される。全ての生細胞事象におけるこれらの事象の割合を、異なる時点において決定する。PD-1、PD-L1、ARまたはCTLA-4を発現しているCTCの割合も決定する。異なる時点における結果が報告され、一般的な傾向を評価する。いくつかの実施形態において、結果は定量的である。いくつかの実施形態において、結果は定性的である(例えば、いくつかの実施形態においては、複数の複製を得て標準偏差を決定することができない)。本技術には、CTCを捕捉し計数するの他の方法も含まれている。
【0137】
〔被験体〕
いくつかの実施形態においては、被験体に併用治療を施す。例えば、いくつかの実施形態において、被験体は癌患者である(例えば、前立腺癌患者、例えば、非転移性、ホルモン感受性、生物化学的に再発性の前立腺癌を患っている患者、または転移性、去勢抵抗性の前立腺癌を患っている患者)。いくつかの実施形態において、被験体は成人である(例えば、18歳以上である)。いくつかの実施形態において、被験体は、組織学的に確認された前立腺癌を患っている。いくつかの実施形態において、被験体は転移性疾患を患っている(例えば、画像化技術(CT(例えば、腹部CT/骨盤CT)、骨シンチグラフィーなど)によって検出される、軟組織および/または骨への転移が存在している)。いくつかの実施形態において、被験体は去勢抵抗性疾患を患っている。例えば、いくつかの実施形態において、被験体はアンドロゲン遮断療法を受けている(例えば、外科的去勢、GnRHアナログ療法または拮抗剤療法)。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の併用治療(例えば、DNAワクチン、AR拮抗剤およびPD-1阻害剤)による治療の間に、GnRHアナログまたは拮抗剤を被験体に投与する。いくつかの実施形態において、被験体は、非ステロイド性抗アンドロゲンを用いた治療を事前に受けている。いくつかの実施形態において、被験体は、非ステロイド性抗アンドロゲンを用いた治療を事前に受けていない。被験体が抗アンドロゲンによる治療を事前に受けているいくつかの実施形態において、当該被験体は、本明細書に記載の併用治療による治療を施すに先立って、4週間以上(フルタミドの場合)または6週間以上(ビカルタミドまたはニルタミドの場合)にわたって抗アンドロゲンの使用を停止する。さらに、いくつかの実施形態においては、被験体におけるPSAをモニタリングする。例えば、抗アンドロゲン離脱応答(非ステロイド性抗アンドロゲンを停止してから4~6週間以内にPSAが25%超低下するなど)を示した被験体対して、PSAをモニタリングする。被験体のPSAが抗アンドロゲン離脱後に観察される最低値を超えて上昇した場合に、本明細書に記載の併用治療を実施する。いくつかの実施形態において、テストステロンの去勢レベルは、治療の開始から6週間以内に50ng/dL未満となる。
【0138】
いくつかの実施形態において、被験体は、アビラテロンまたはエンザルタミドを用いた治療を事前に受けている。いくつかの実施形態において、被験体は、コルチコステロイド治療に先立つ3箇月間以上にわたって、治療を受けていない(例えば、停止している)。いくつかの実施形態において、被験体のECOGパフォーマンス段階は、0、1または2である。いくつかの実施形態において、被験体は、充分な血液機能、腎機能および肝機能を有している(例えば、WBC>2000/mm、ANC>1000/mm、HgB>9.0gm/dL;、血小板>100,000/mm、クレアチニン<2.0mg/dL、および/または、ASTおよびALT<2.5×組織正常上限)。いくつかの実施形態において、被験体の病歴には、HIV1およびHIV2、HTLV-1、または活動性のB型肝炎もしくはC型肝炎がない。いくつかの実施形態において、被験体は、4週間以上に及んで他の治療を受けておらず、治療前の時点で、急性毒性から回復している(グレード2未満まで回復している)。いくつかの実施形態において、被験体は生検を受けている。
【0139】
いくつかの実施形態においては、被験体におけるPD-1、PD-L1および/またはARのレベルを測定して、治療を評価または変更する。いくつかの実施形態において、レベルの測定およびDNAワクチンの投与は、特に限定されない任意の順序および頻度で行う(測定/投与、投与/測定、測定/投与/測定、投与/測定/投与、測定/投与/測定/投与、測定/投与/測定/投与/測定、測定/投与/投与/測定/投与/投与など)。
【0140】
いくつかの実施形態においては、治療スケジュールまたは投与量を、測定(例えば、PD-1、PD-L1および/またはARの標的レベルを得る測定)に応じて変更する。
【0141】
〔投与、治療、投与量および投与スケジュール〕
いくつかの実施形態において、本技術は、DNAワクチンおよびPD-1阻害剤とAR拮抗剤との組合せを被験体に投与する方法に関する。いくつかの実施形態において、AR拮抗剤は、DNAワクチンおよびPD-1阻害剤とは異なる投薬スケジュールで投与される。
【0142】
いくつかの実施形態において、本技術は、DNAワクチンおよびPD-1阻害剤を被験体に投与する方法に関する。この方法は、本技術に従ってDNAワクチンおよびPD-1阻害剤を被験体に投与する一般的な工程を含む。いくつかの実施形態においては、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を、薬学的に有効な量で投与する。いくつかの実施形態においては、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を、治療上有効な用量で投与する。
【0143】
投与量および頻度は、有害な影響を実質的に生じさせることなく、化合物の有効レベルを与えられるように選択する。経口投与、皮内投与、経皮投与または静脈内投与の場合、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤の投与量は、一般的に、0.001~10,000mg/kg/日(またはmg/kg/1回用量)である。例えば、0.01~1000mg/kg/日(またはmg/kg/1回用量)、0.1~100mg/kg/日(またはmg/kg/1回用量)である。
【0144】
薬学的に有効な量を投与する方法の例としては、非経口投与、経口投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、局所投与、舌下投与、直腸投与および膣投与の形態が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。非経口投与経路の例としては、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、静脈内経路、皮内経路、経皮経路および注入経路が挙げられる。いくつかの実施形態においては、化合物、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を経口投与する。
【0145】
いくつかの実施形態においては、化合物または関連化合物の単回用量を被験体に投与する。他の実施形態においては、時間、日、週などによって隔てられた2つ以上の時点において、複数の用量を投与する。いくつかの実施形態においては、化合物を長期間にわたって(例えば、慢性的に)投与する。例えば、数週間、数箇月間または数年間にわたって投与する(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間またはそれ以上;1箇月間、2箇月間、3箇月間、4箇月間、5箇月間、6箇月間、7箇月間、8箇月間、9箇月間、10箇月間、11箇月間、12箇月間またはそれ以上;1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、11年間、12年間またはそれ以上)。このような実施形態においては、化合物を長期間にわたり定期的なスケジュールで投与してもよい(毎日、毎週、毎晩など)。
【0146】
本技術はまた、DNAワクチンおよびPD-1阻害剤を用いて、被験体を治療する方法にも関する。本技術の他の態様によれば、有効量のDNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤(または、その1種類以上の塩)を用いて、治療を必要とする被験体を治療する方法が提供される。この方法は、有効量のDNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤(または、その塩)を、本明細書において上述した、本項目で詳述しているおよび/または特許請求の範囲に記載した医薬品のいずれか1つにおいて、被験体に投与する工程を含む。被験体は、このような治療を必要とする任意の被験体であってよい。上述の説明において、本技術は、化合物またはその塩に関連する。このような塩の例としては、臭化物塩、塩化物塩、ヨウ化物塩、炭酸塩および硫酸塩が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。しかし、ここで理解されたいことには、上述の化合物は化合物群の一要素であり、当該化合物群に包含される関連誘導体を含んでいる医薬品、方法およびキットも、本技術に包含されることが意図される。それゆえ、本技術の他の態様は上述の概要を包含しているが、いずれの態様においても、「化合物」と表記されている箇所はこのような誘導体に置換えて読まれる。
【0147】
いくつかの実施形態においては、被験体を試験して、疾患および/または状態(前立腺癌など)の存在、非存在またはレベルを評価する。このような試験を実施するには、例えば、バイオマーカー、代謝産物、身体症状、徴候などをアッセイまたは測定して、疾患または状態のリスクまたは存在を決定する。いくつかの実施形態においては、試験の結果に基づいて、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤により被験体を治療する。いくつかの実施形態においては、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤により被験体を治療し、サンプルを得て、検出可能な薬剤のレベルを測定し、その後、測定された検出可能な薬剤のレベルに基づいてDNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤により被験体を再び治療する。いくつかの実施形態においては、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤により被験体治療し、サンプルを得て、検出可能な薬剤のレベルを測定し、測定された検出可能な薬剤のレベルに基づいてDNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤により被験体を再び治療し、その後、別のサンプルを得て、検出可能な薬剤のレベルを測定する。いくつかの実施形態においては、他の試験を実施する(例えば、検出可能な薬剤のレベルの測定に基づかない試験)。他の試験は、様々な段階において実施する(例えば、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤を用いた最初の治療の前に実施し、最初の用量を決定する指標とする)。いくつかの実施形態においては、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤による治療の後の治療を、試験結果に基づいて調節する(例えば、投薬量、投薬スケジュール、薬物の種類などを変更する)。
【0148】
いくつかの実施形態においては、患者を試験し治療し、次に再び試験して、治療に対する応答をモニタリングしたり、治療を変化させたりする。いくつかの実施形態において、試験および治療のサイクルは、試験および治療のパターン、周期性、または試験フェーズと治療フェーズとの間隔に制限されることなく設計してよい。このように、本技術は、試験および治療の特に限定されない種々の組合せを意図している。例えば、試験/治療、治療/試験、試験/治療/試験、治療/試験/治療、試験/治療/試験/治療、試験/治療/試験/治療/試験、試験/治療/試験/試験/治療/治療/治療/試験、治療/治療/試験/治療、試験/治療/治療/試験/治療/治療などである。
【0149】
本技術において、DNAワクチンおよびPD-1阻害剤の投与における用量および投与スケジュールは、特に限定されない。例えば、いくつかの実施形態においては、DNAワクチンを1日目に開始して週2回、全6回皮内投与する。DNAワクチンの例としては、交互投与されるpTVG-HP(例えば、100μg)およびrhGM-CSF(例えば、208μg);pTVG-HP(例えば、100μg)およびGM-CSF(例えば、208μg);pTVG-AR(例えば、100μg)およびrhGM-CSF(例えば、208μg)が挙げられる。このとき、PD-1阻害剤は、1日目に開始して3週間ごとに4回静脈内投与する。PD-1阻害剤の例としては、約200mgの固定用量のペンブロリズマブまたはニボルマブが挙げられる。いくつかの実施形態においては、DNAワクチン(例えば、pTVG-HP(例えば、100μg)およびrhGM-CSF(例えば、208μg))を、1日目に開始して週2回、全6回皮内投与する。この実施形態においては、PD-1阻害剤(例えば、約200mgの固定用量のペンブロリズマブまたはニボルマブ)を、2週間ごと、3週間ごとまたは4週間ごとに静脈内投与する(例えば、必要に応じて3~6回投与する)。この実施形態では、PD-1阻害剤の最初の投与は、pTVG-Hの最後の投与から2週間後に行う。
【0150】
したがって、いくつかの実施形態において、DNAワクチン(例えば、pTVG-HP)の投与量は、約100μgである(例えば、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1000μgまたはそれ以上)。いくつかの実施形態においては、DNAワクチンと、GM-CSF(例えば、rhGM-CSF)などのアジュバントとを組合せて投与する。投与量は、例えば、約200μgである(例えば、100~500μg。例えば、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg(例えば、いくつかの実施形態においては208μg)、210μg、220μg、230μg、240μg、250μg、260μg、270μg、280μg、290μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1000μg、またはそれ以上)。上述した通り、いくつかの実施形態においては、DNAワクチンを皮内投与する(例えば、側腕の三角筋領域)。いくつかの実施形態において、DNAワクチンの投与量は、約0.25mLである。(例えば、100~500μL。例えば、100μL、110μL、120μL、130μL、140μL、150μL、160μL、170μL、180μL、190μL、200μL、210μL、220μL、230μL、240μL、250μL、260μL、270μL、280μL、290μL、300μL、400μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1000μLまたはそれ以上)。いくつかの実施形態においては、上述の量のDNAワクチンを、互いに隣接する2箇所に投与する。いくつかの実施形態においては、DNAワクチンを隔週で投与する(例えば、約2週間ごと。例えば、約14日ごと(例えば、14±3日ごと(例えば、11~17日ごと)))。いくつかの実施形態においては、DNAワクチンを6回投与する(例えば、3~9回。例えば、3回、4回、5回、6回、7回、8回または9回)。
【0151】
さらに、いくつかの実施形態においては、PD-1経路阻害剤(例えば、ペンブロリズマブまたはニボルマブ)を、2mg/kgの用量で投与する(例えば、1~5mg/kg。例えば、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kgまたは5mg/kg)。最も好ましくは、約200mgの固定用量で投与される。いくつかの実施形態においては、PD-1経路阻害剤を静脈内投与する。いくつかの実施形態においては、PD-1経路阻害剤を、30分間にわたって(例えば、15分~2時間にわたって。例えば、15分間、30分間、45分間、60分間、75分間、90分間、105分間または120分間にわたって)静脈内などに投与する。いくつかの実施形態においては、PD-1経路阻害剤は、3週間ごとに投与する(例えば、1週間ごと、1.5週間ごと、2週間ごと、2.5週間ごと、3週間ごと(例えば、21±3日ごと(例えば、18~228日ごと))、3.5週間ごと、4週間ごと、または5週間ごと)。いくつかの実施形態においては、PD-1経路阻害剤を4回投与する(例えば、2~9回。例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回または9回)。いくつかの実施形態においては、PD-1経路阻害剤をDNAワクチンと併用投与する(例えば、DNAワクチンによる最初のワクチン接種の1日前、ワクチン接種と同日、ワクチン接種の1日後)。PD-1経路阻害剤およびDNAワクチンを併用投与するいくつかの実施形態においては、PD-1経路阻害剤を第1組成物にて投与し、DNAワクチンを第1組成物とは異なる第2組成物にて投与する。PD-1経路阻害剤およびDNAワクチンを併用投与するいくつかの実施形態においては、PD-1経路阻害剤およびDNAワクチンを同じ組成物にて投与する。他の例示的な実施形態においては、DNAワクチンの投与に引き続いてPD-1経路阻害剤を投与する(例えば、DNAワクチンによる最後のワクチン接種の1週間後、2週間後、3週間後、4週間後またはそれ以上後に投与する)。
【0152】
いくつかの実施形態において、本技術は、スケジュールに従ってDNAワクチンおよびPD-1経路阻害剤を投与する工程を含む。例えば、いくつかの実施形態においては、DNAワクチン(例えば、pTVG-HP)およびPD-1経路阻害剤を被験体に同日に投与して、治療を開始する(例えば、1日目とする)。例えば、DNAワクチンの投与後0~0.5時間から5時間の間に(最長で24時間後に)PD-1経路阻害剤を投与する。次に、いくつかの実施形態においては、治療の開始から数日後の期間にDNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤を投与する。例えば、いくつかの実施形態においては、以下の日程でDNAワクチンを投与する。15日目(例えば、DNAワクチンおよびPD-1阻害剤の1日目の投与から15±3日後(例えば、12~18日目));29日目(例えば、DNAワクチンの15日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後));43日目(例えば、DNAワクチンの29日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後));57日目(例えば、DNAワクチンの43日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後));71日目(例えば、DNAワクチンの57日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後))。また、以下の日程でPD-1阻害剤を投与する。22日目(例えば、DNAワクチンの15日目の投与から7±3日後(例えば、4~10日後));43日目(例えば、DNAワクチンの43日目の投与後、0~0.5時間から5時間経過後);64日目(例えば、DNAワクチンの57日目の投与から7±3日後(例えば、4~10後))。
【0153】
いくつかの好適な実施形態においては、ワクチンおよびPD-1阻害剤を、重複投与スケジュールにおいて複数回投与する。いくつかの実施形態においては、最初にワクチンおよびPD-1阻害剤を併用投与し(すなわち、治療スケジュールの1日目の24時間以内に投与する)、その後、ワクチンを10~20日または21日ごと(好ましくは約14日ごと)に投与し、PD-1阻害剤を17~24日ごと(好ましくは約21日ごと)に投与し、投与期間は最長90日間にわたる。いくつかの実施形態において、この方法は、ワクチンを10~20日または21日ごと(好ましくは約14日ごと)に投与し、PD-1阻害剤を17~24日ごと(好ましくは約21日ごと)に投与し、投与期間は91~365日間である工程をさらに含む。いくつかの実施形態においては、90日後にPSAの減少または腫瘍の縮小を示す患者を選択して、ワクチンを10~20日または21日ごとに投与し、PD-1阻害剤を17~24日ごとに投与し、投与期間を91~365日間とする。いくつかの実施形態において、この方法は、ワクチンを10~20日または21日ごと(好ましくは約14日ごと)に投与し、PD-1阻害剤を17~24日ごと(好ましくは約21日ごと)に投与し、投与期間を366~730日間とする工程をさらに含む。いくつかの実施形態においては、365日後にPSAの減少または腫瘍の縮小を示す患者を選択して、ワクチンを10~20日または21日ごとに投与し、PD-1阻害剤を17~24日ごとに投与し、投与期間は366~730日間とする。いくつかの実施形態においては、ワクチンおよびPD-1阻害剤を、10~28日ごと(好ましくは10~20日もしくは21日もしくは21日ごと、または10~24日ごと;最も好ましくは約14日ごとまたは約21日ごと)に投与し、投与期間を最長90日間とする重複スケジュールで投与する。いくつかの実施形態において、この方法は、ワクチンおよびPD-1阻害剤を10~28日ごと(好ましくは10~20日または21日ごと、または10~24日ごと;最も好ましくは約14日ごと)に投与し、投与期間を91~365日間とする重複スケジュールで投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態においては、90日後にPSAの減少または腫瘍の縮小を示す患者を選択して、ワクチンおよびPD-1阻害剤を10~28日ごと(好ましくは10~20日または21日ごと、または10~24日ごと;最も好ましくは約14日ごと)に投与し、投与期間を91~365日間とする重複スケジュールで投与する。いくつかの実施形態において、この方法は、ワクチンおよびPD-1阻害剤を10~28日ごと(好ましくは10~20日または21日ごと、または10~24日ごと;最も好ましくは約14日ごと)に投与し、投与期間を366~730日間とする重複スケジュールで投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態においては、365日後にPSAの減少または腫瘍の縮小を示す患者を選択して、ワクチンおよびPD-1阻害剤を10~28日ごと(好ましくは10~20日または21日ごと、または10~24日ごと;最も好ましくは約14日ごと)に投与し、投与期間を366~730日間とする併用投与を行う。いくつかの実施形態において、重複投与スケジュール内において、ワクチンおよびPD-1阻害剤を併用投与する。併用投与には、ワクチンおよびPD-1阻害剤を同じ組成物(例えば、溶液)にて投与することが含まれる。あるいは、薬剤を別々に投与する場合は、同日に投与することも含まれる(好ましくは、約1分間~約5時間もしくは24時間以内に投与する、または、約30分間~約5時間もしくは24時間以内に投与する)。
【0154】
投薬スケジュールの他の実施形態においては、被験体にDNAワクチン(例えば、pTVG-HP)を投与して治療を開始し(例えば、1日目とする)、1日目にはPD-1阻害剤を投与しない。次に、DNAワクチンおよび/またはPD-1阻害剤を、治療の開始から数日後に投与する。例えば、いくつかの実施形態においては、DNAワクチンを以下のスケジュールで投与する。15日目(例えば、DNAワクチンの1日目の投与から15±3日後(例えば、12~18日後));29日目(例えば、DNAワクチンの15日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後));43日目(例えば、DNAワクチンの29日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後));57日目(例えば、DNAワクチンの43日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後));71日目(例えば、DNAワクチンの57日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後))。このとき、DNAワクチンの一連の投与の後に、PD-1阻害剤を投与する。例えば、85日目(例えば、DNAワクチンの71日目の投与から14±3日後(例えば、11~17日後));106日目(例えば、DNAワクチンの85日目の投与から21±3日後(例えば、18~24日後));127日目(例えば、DNAワクチンの106日目の投与から21±3日後(例えば、18~24日後));148日目(例えば、DNAワクチンの127日目の投与から21±3日後(例えば、18~24日後))に投与する。例えば、図1を参照。
【0155】
いくつかの実施形態においては、投薬スケジュールの任意の時点で、被験体に対して(または、被験体から得られたサンプルを使用して)1つ以上の試験を実施してもよい。試験の例としては、化学物質、バイオマーカー、代謝産物など(例えば、ナトリウム、カリウム、重炭酸塩、BUN、クレアチニン、グルコース、ALT、AST、ビリルビン、アルカリ性ホスファターゼ、アミラーゼ、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、LDH、血清前立腺特異抗原(PSA)、血清PAP、血清テストステロン)のレベルを測定する試験;血液試験(例えば、CBC。いくつかの実施形態においては、血小板数も含む);他の試験(例えば、CTスキャン、骨スキャン、身体検査、白血球除去療法、抗体パネル、CTC計数、組織生検、パルス、血圧、呼吸数、体温、T細胞応答、PETスキャン、質問表などを含む)が挙げられる。
【0156】
いくつかの実施形態においては、上述の投薬スケジュールに、間隔を空けた頻度でのAR拮抗剤の投与を加える。例えば、いくつかの実施形態においては、AR拮抗剤を数週間または数箇月間投与する(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、18週間、20週間またはそれ以上の間、1日1回以上を投与する)。次に、投与を中断する(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、18週間、20週間またはそれ以上期間中断する)。AR拮抗剤の投与を中断している間には、本明細書に記載のスケジュールにて、DNAワクチンおよびPD-1阻害剤を投与する。例えば、いくつかの実施形態においては、治療期間の間は(例えば、1箇月間、6箇月間、1年間またはそれ以上)、AR拮抗剤を90日ごとに90日間投与する(例えば、90日間毎日投与し、90日間投与を中断する)。ただし、他のスケジュールも特に意図されている。
【0157】
〔治療およびモニタリングに対する応答〕
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の併用療法による治療に対する応答の例としては、腫瘍性病変の縮小、被験体の生物学的腫瘍負荷の減少が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態においては、被験体の測定可能な病変を、治療前、治療中および治療後に同定し、モニタリングする。いくつかの実施形態においては、初期治療後における被験体の腫瘍負荷を評価して、治療の経過をモニタリングするためのベースラインを設定する(例えば、後の測定値と比較するための測定値を得る)。いくつかの実施形態においては、ベースラインとなる腫瘍負荷を、被験体をイメージングして決定する。本明細書において用いられるとき、1つ以上の測定可能な病変を被験体が有しているならば、当該被験体は測定可能な疾患を患っている。本明細書において用いられるとき、「測定可能な病変」とは、1つ以上の寸法(記録される長径)が正確に測定できる病変である。具体的には、従来の技術では、長径が20mm(2.0cm)超であり、スパイラルCTスキャンでは長径が10mm(1.0cm)超である。リンパ節転移の場合の「測定可能な病変」とは、スパイラルCTまたは従来の技術によって測定した長径が2.0cm以上である病変である。いくつかの実施形態において、以前に放射線治療した領域にある腫瘍病変は、測定可能とは見做されない。本明細書において用いられるとき、「測定不能な」病変とは、測定可能ではない病変である。例えば、小さな病変(従来の技術では長径が20mm(2.0cm)未満であり、またはスパイラルCTスキャンでは長径が10mm(1.0cm)未満である病変);2.0cm未満のリンパ節の病変;信頼できる測定値が得られない病変(例えば、骨病変、軟膜疾患、腹水、胸水/心膜滲出液、皮膚リンパ管炎/肺リンパ管炎、腹部腫瘤(確認されないため、その後にイメージング技法が行われる)、および嚢胞性病変)と、が含まれる、他の全ての病変である。
【0158】
いくつかの実施形態においては、陽電子放出断層撮影(PET)(例えば、18F NaF PET)を用いて病変を測定する。18F NaF PETは、3次元の測定値を得る際に使用される(例えば、組織の3次元の測定値)。したがって、病変の体積を定量化し、全体的な腫瘍体積を測定できる。
【0159】
いくつかの実施形態においてを、関連する臓器に表れる測定可能な病変の大きさをモニタリングすることによって、治療に対する応答をモニタリングする。いくつかの実施形態においては、RECIST1.1を使用して、X線撮影データを評価する。いくつかの実施形態においては、WHO基準に基づく免疫関連応答の基準(irRC)を使用して、免疫腫瘍学的評価を下す。例えば、irRECIST基準を使用する。この基準は、RECIST1.1、irRC、およびNishino (2013) "Developing a common language for tumor response to immunotherapy: immune-related response criteria using unidimensional measurements.", Clin Cancer Res. 19(14): 3936-43(参照により本明細書中に組込まれる)に基づいている。
【0160】
いくつかの実施形態においては、大きさ(例えば、直径が最大の病変)および正確な測定の繰り返しやすさ基づいて標的病変を選択する。いくつかの実施形態においては、全ての標的病変の長径を合計した合計長径を与えることにより、治療に対する応答をモニタリングする。いくつかの実施形態においては、合計長径を使用して、腫瘍応答を特徴付ける。2次元または3次元で測定可能な病変については、それぞれの評価時における長径を使用する。さらに、いくつかの実施形態においては、例えば、RECIST1.1および/またはirRECISTによる短軸の測定を使用して、リンパ節を測定する。
【0161】
いくつかの実施形態においては、治療に対する被験体応答に基づいたクラスに被験体を分類する。例えば、全ての標的病変が焼失したならば、「完全応答(CR)」クラスに被験体を分類する。いくつかの実施形態においては、完全応答の状態を決定するために、応答の基準を最初に満たしてから4週間以上経過後に行う反復評価によって、腫瘍測定値の変化を確認する。いくつかの実施形態において、PSAは、0.2ng/mL未満である。いくつかの実施形態においては、1.0cm未満に縮小したリンパ節を正常と見做す。ベースラインの合計長径を参照値として、標的病変の合計長径が30%以上減少したならば、「部分応答(PR)」クラスに被験体を分類する。いくつかの実施形態においては、部分応答の状態を決定するために、応答の基準が最初に満たされてから4週間以上経過後に行われる反復評価によって、腫瘍測定値の変化を確認せねばならない。いくつかの実施形態においては、新たな病変が存在しない。ベースラインの測定以降に記録された合計長径の最小値を参照値として、標的病変の合計長径が20%以上増加(および、絶対値が0.5cm以上増加)したならば、あるいは1個以上の新しい病変が出現したならば、「進行性疾患(PD)」クラスに被験体を分類する。部分奏効と見做されるだけの縮小も、進行性疾患とみなされるだけの増加もないならば、「安定疾患(SD)」クラスに被験体を分類する。いくつかの実施形態において、安定疾患の状態を決定するためには、最短で12週間の間隔を空けて試験を行った後に、少なくとも1回の測定値が安定疾患基準を満たしている。
【0162】
いくつかの実施形態において、治療に対する応答をモニタリングする工程は、非標的病変(例えば、標的病変ではない全ての病変または疾患部位)をモニタリングする工程を含む。いくつかの実施形態においては、例えば、骨シンチグラフィーによって非標的病変をモニタリングする。いくつかの実施形態においては、非標的病変のモニタリングに基づいて、被験体を被験体クラスに分類する。例えば、全ての非標的病変の消失しPSA腫瘍マーカーレベルが検出不能となったならば、「完全奏効(CR)」クラスに被験体を分類する。いくつかの実施形態においては、完全奏効の状態を決定するために、応答の基準が最初に満たされてから4週間以上経過後に行われる反復評価によって、腫瘍測定値の変化を確認する。いくつかの実施形態において、1つ以上の非標的病変が持続するか、および/または、検出可能な血清PSA腫瘍マーカーレベルが持続するならば、「不完全奏効/安定疾患(SD)」クラスに被験体を分類する。いくつかの実施形態において、安定疾患の状態を決定するためには、最短12週間の間隔を空けて試験を行った後に、1回以上測定値が安定疾患基準を満たしている。いくつかの実施形態において、1つ以上の新しい病変が出現するか、および/または、存在していた非標的病変が明確な進行したならば、「進行性疾患(PD)」クラスに被験体を分類する。いくつかの実施形態において、骨スキャンによってのみ検出可能な病変については、症状を伴う新しい病変が2個超出現したならば、疾患進行である。症状がなく、疾患進行の他の証拠がないならば(例えば、PSAまたは測定可能な疾患基準による疾患の進行がないならば)、いくつかの実施形態においては、骨シンチグラフィーで進行を記録して(例えば、6週間以上後に新しい病変2個超の病変を確認して)、骨スキャンで見られるフレア応答の可能性を排除する。
【0163】
いくつかの実施形態においては、(例えば、PSAの量および/または動態に基づく)PSA進行をモニタリングして、治療に対する被験体の応答をモニタリングする。いくつかの実施形態において、PSAが0.2ng/mL未満まで低下したならば、「PSA完全奏効」に被験体を分類する。いくつかの実施形態において、「PSA完全奏効」クラスへの分類は、後にPSA測定をすることにより確認する(例えば、(PSA完全奏効が確認されてから)4週間以上経過後のPSA測定)。いくつかの実施形態において、「PSA完全奏効」への分類は、X線所見による進行の証拠がないことにさらに基づいている。いくつかの実施形態において、ベースラインPSAが50%以上低下したならば、「PSA部分奏効」クラスに被験体を分類する。いくつかの実施形態において、「PSA部分奏効」クラスへの分類は、X線所見による進行の証拠がないことをさらに含む。いくつかの実施形態においては、PSA進行の時間を使用して、治療に対する被験体の応答をモニタリングする。本明細書において用いられるとき、PSA進行とは、PSAが最低値から50%および2ng/mL超増加することを意味する。このことは、(例えば、上昇傾向が確認された時点から)3週間以上経過後に測定した第2の値によって確認する。試験中に減少が起こらなかった場合、最低値はベースライン値である(例えば、治療前の値)。
【0164】
いくつかの実施形態において、被験体の免疫系をモニタリングする。このモニタリングは、例えば、以下のように行う。PAPまたはAR特異的CD8+T細胞エフェクター免疫を評価する;PAPまたはAR特異的記憶T細胞免疫を評価する;PAPまたはAR特異的T細胞を評価する;抗原特異的抗体(例えば、PAPまたはAR特異的抗体)を評価する;抗原特異的調節免疫応答を評価する;他の前立腺関連抗原への抗原拡散を評価する。いくつかの実施形態においては、循環腫瘍細胞を計数し特徴付けることによって、被験体を評価する。いくつかの実施形態においては、組織学的に被験体を評価する(例えば、組織生検を検査することによって評価する)。いくつかの実施形態においては、PETおよび/またはCT(例えば、NaF PET/CT)を使用する定量的な全骨イメージングによって、被験体を評価する。
【0165】
いくつかの実施形態においては、NaF PET/CTを使用する全骨イメージング(例えば、定量的全骨イメージング;QTBI)を使用して、被験体を評価する。例えば、いくつかの実施形態においては、QTBIを使用して、体積が小さい骨転移性疾患および腫瘍増殖速度を評価する。例えば、いくつかの実施形態において、被験体は、標準的な骨シンチグラフィーによっては検出されない骨疾患を患っている。いくつかの実施形態においては、様々な時点において患者を評価する(例えば、治療の1箇月前、ベースライン、および治療から3箇月後)。いくつかの実施形態においては、機能的NaF PET取込みと、CTスキャンから得られる解剖学的情報とに基づいて、骨における転移性前立腺癌病変を位置付け同定する。いくつかの実施形態においては、自動セグメンテーション方法を使用して(例えば、固定SUV閾値を使用して)セグメンテーションを実行し、医師の指導の下に調整する。いくつかの実施形態においては、関節登録技術を用いて異なる時点におけるスキャンを位置合わせする。関節登録技術は、CTによる骨格要素(例えば、骨)の剛体位置合わせと、それに続くNaF PET/CTによる骨および病変の非剛体位置合わせとを組合せることにより、位置合わせを最適化している。いくつかの実施形態においては、治療前スキャンと追跡スキャンとの間の病変を適合させて、病変の長期的な対応を確立させる。いくつかの実施形態においては、各患者についての包括的な治療応答の測定基準が計算される。この基準には、例えば、SUVtotal(全疾患負担)、SUVmax(最大強度病変)、SUVmean(平均強度)、病変の数、および骨病変の総体積が含まれる。さらに、いくつかの実施形態においては、個々の病変ごとに画像応答距離を計算する。いくつかの実施形態においては、経時的な変化を評価することにより(例えば、治療前からベースラインまでの変化をベースラインから3箇月までに得られた測定値と比較する)、この方法を使用して骨転移性疾患の成長速度を評価する。
【0166】
〔キット〕
いくつかの実施形態において、本技術は、前立腺癌を患っている被験体または前立腺癌のリスクがある被験体を治療するキットを提供する。例えば、いくつかの実施形態は、例えば、PAP遺伝子および/またはAR遺伝子由来のヌクレオチド配列を有する核酸を含有している核酸ワクチン(例えば、DNAワクチン)を含んでいる第1組成物(例えば、第1医薬組成物)と;PD-1阻害剤を含んでいる第2組成物(例えば、第2医薬組成物)と;AR拮抗剤を含んでいる第3組成物と;を提供する。さらに、いくつかのキットの実施形態は、添付文書をさらに備えている。添付文書により、核酸ワクチン、PD-1阻害剤およびAR拮抗剤の投与に関する指示を含む投薬スケジュールが提供される。
【0167】
いくつかの実施形態において、核酸ワクチンはpTVG-HPをふくんでおり、PD-1阻害剤はPD-1のモノクローナル抗体阻害剤である。いくつかの実施形態において、核酸ワクチンはpTVG-HPを含んでおり、PD-1阻害剤はペムブロリズマブである。いくつかの実施形態において、核酸ワクチンはpTVG-HPを含んでおり、PD-1阻害剤はニボルマブである。いくつかの実施形態において、DNAワクチンはアジュバントを含んでいる(例えば、GM-CSF)。いくつかの実施形態において、AR拮抗剤は、エンザルタミドまたはアパルタミドである。
【0168】
いくつかの実施形態において、DNAワクチン、PD-1阻害剤およびAR拮抗剤は、すぐに使用できる医薬組成物として提供される。いくつかの実施形態において、DNAワクチン、PD-1阻害剤およびAR拮抗剤は、乾燥状態(例えば、凍結乾燥)で提供される。例えば、薬学的に適切な溶液により、投与前に可溶化および/または再懸濁する。
【0169】
いくつかの実施形態において、キットは、容器(バイアル、アンプル、ボトルなど)に格納されているDNAワクチン、PD-1阻害剤およびAR拮抗剤を備えている。いくつかの実施形態において、DNAワクチン、PD-1阻害剤およびAR拮抗剤は、容器(バイアル、アンプル、ボトルなど)中において、単回投与量にて提供される。例えば、いくつかのキットの実施形態は、以下を以下を備えている。(1)約100μgのDNAワクチン(例えば、pTVG-HP)および約208μgのGM-CSFを含む医薬組成物が格納されている第1バイアル(DNAワクチンは、例えば、PAPおよびARを標的とする単回投与用または複数回投与用のDNAワクチンである)。(2)10~1000mgのPD-1阻害剤が格納されている第2バイアル。(3)エンザルタミドまたはアパルタミドが格納されている第3バイアル。いくつかの実施形態において、第1バイアルniは、約200~300μLの医薬組成物が格納されている。いくつかの実施形態において、キットは、DNAワクチンのバイアルを2個備えており、2回分の投与量のDNAワクチンが提供される。
【0170】
キットのいくつかの実施形態は、DNAワクチン、PD-1阻害剤およびAR拮抗剤の複数回投与を提供する。例えば、本明細書に記載の投薬スケジュールを完了させるのに充分な回数の投与量を提供する。例えば、キットのいくつかの実施形態は、DNAワクチンを5~20バイアル備えている。また、キットのいくつかの実施形態は、PD-1阻害剤およびAR拮抗剤を2~10バイアル備えている。
【実施例
【0171】
〔実施例1:臨床試験のプロトコル〕
この実施例では、前立腺癌における併用治療を試験するための臨床試験のプロトコルについて説明する。この試験で検証する仮説は、「1または2種類の前立腺癌抗原を標的とする免疫化とPD-1阻害およびアパルタミドとを組合せることにより、有効な抗腫瘍免疫が得られる」というものである。抗腫瘍免疫は、アパルタミドの停止後にもPSA完全奏効が持続することによって示される。アンドロゲン遮断療法が必要になる前に、PSAを検出不能なレベルまで低下させ、前立腺癌を治癒させるか転移性再発を有意に遅延させる能力は、前立腺癌の治療において重要かつ臨床的に意義のある革新的な進歩であると言える。
【0172】
この試験は、前立腺癌患者の集団を対象に、無作為化第2相多施設試験として実施する。具体的に、この試験で評価するのは、それぞれ異なる抗原(PAPおよびAR)を標的とする、1種類のDNAワクチンの使用と2種類のDNAワクチンの使用との比較である。DNAワクチンは、PD-1阻害剤(JNJ-63723283)と同時に送達する。レジメンにおいて、アパルタミドは12週間使用し、試験全体は6箇月間に及ぶ。
【0173】
図2に試験のプロトコルを示す。この試験で評価するのは、D0/M0前立腺癌を患っている患者における、MVI-118DNAワクチン(または、MVI-118DNAワクチンおよびMVI-816DNAワクチン)と、JNJ-63723283(Janssen, Raritan, NJ)と、アパルタミドとの安全性および忍容性である。1年のPSA完全奏効(PSA<0.2ng/mL)率を測定する。
【0174】
加えて、この試験においては、2年の無転移生存率およびX線所見における無増悪生存の中央値も評価する。さらなる実験により、抗原特異的T細胞および/またはIgG応答が治療によって誘発されるか否かと、NaF PET/CTを用いて腫瘍応答をモニタリングできるか否かを判断する。
【0175】
〔実施例2:ARに対する免疫応答〕
図5は、被験体における無増悪生存を示す。(A)は、ARペプチドに対する免疫応答ありおよび免疫応答なしを示している。(B)は、ARタンパク質に対する免疫応答ありおよび免疫応答なしを示している。図6は、ARワクチンとADTとの組合せのデータを示している。このデータが示すところによると、ARに対する患者免疫応答とPSA進行までの遅延時間との間には正の相関がある。図7は、PD-1阻害剤とARワクチン(または、ARワクチンおよびADT)との組合せにより、マウス腫瘍モデルにおける有効性が改善されたことを示している。
【0176】
表1は、PSA進行を示している。具体的には、試験実施日からPSA進行が認められた日または試験終了日(PSA進行が認められなかった場合)までの日数を示している。ここで言うPSA進行とは、PSAが治療前より25%超増加した場合、または絶対量が2ng/mL増加した場合と定義される。
【0177】
【表1】
【0178】
〔参考文献〕
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上記の明細書において言及した全ての刊行物および特許(参考文献の節にて引用したものを含むが、これらには限定されない)は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。記載されている組成物、方法および技術の使用に種々の設計変更を加えたり、変形例としたりすることは、当業者にとって明白であり、記載されている技術的範囲および技術的思想から逸脱することはない。特定の例示的な実施形態に関連して本技術を説明してきた。しかし、ここで理解されたいことには、クレームされている本発明は、このような特定の実施形態に過度に限定されるべきではない。実際には、本発明を実施するための記載された形態の種々の設計変更は当業者にとって明白であり、以下の特許請求の範囲に含まれていることが意図される。
図1A
図1B-1】
図1B-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図4-7】
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【配列表】
2022519328000001.app
【国際調査報告】