(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-23
(54)【発明の名称】生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20220315BHJP
A61M 1/38 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
A61M1/02 125
A61M1/02 180
A61M1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519915
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2019041298
(87)【国際公開番号】W WO2020090542
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2018206645
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507114521
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】10811 West Collins Avenue, Lakewood, Colorado 80215, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】デービス ベンツ
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 政嗣
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA12
4C077BB04
4C077CC04
4C077DD07
4C077DD13
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH13
4C077NN03
(57)【要約】
【課題】回路内圧を精度よく測定することができる生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法を提供する。
【解決手段】血液成分採取システム10の遠心分離装置14は、カセット装着状態で、血液成分採取が行われる前に、初期データAを取得するデータ取得部106と、初期データAに基づいて予測データBを算出する予測データ算出部112と、血液成分採取中に、予測データBに基づいて第1被荷重測定部60の反力を算出する反力算出部116と、血液成分採取中に、反力算出部116で算出された反力と第1荷重検出部88により検出された荷重とに基づいて第1被荷重測定部60の内圧を算出する内圧算出部118とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムであって、
前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材を有し、
前記分離装置は、
前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出部と、
前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取が行われる前に、前記荷重検出部により検出された荷重を用いて前記被荷重測定部の反力の時間変化を示す初期データを取得するデータ取得部と、
前記初期データに基づいて前記生体成分採取中に時間に応じて変化する前記被荷重測定部の反力を予測するための予測データを算出する予測データ算出部と、
前記生体成分採取中に、前記予測データに基づいて前記反力を算出する反力算出部と、
前記反力算出部で算出された反力と前記荷重検出部により検出された荷重とに基づいて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出部と、を有する、生体成分採取システム。
【請求項2】
請求項1記載の生体成分採取システムであって、
前記データ取得部は、前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されてから所定時間経過後に所定のデータ取得時間の間、前記初期データを取得する、生体成分採取システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生体成分採取システムであって、
前記予測データ算出部は、前記初期データに基づいて最小二乗法を用いて前記予測データを算出する、生体成分採取システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の生体成分採取システムであって、
前記分離装置は、
前記生体成分採取用デバイスが取り付けられる取付ベースと、
前記取付ベースに対して前記生体成分採取用デバイスを保持するための蓋体と、を有し、
前記生体成分採取用デバイスは、前記取付ベースに前記生体成分採取用デバイスが取り付けられた状態で前記蓋体が閉められることによって前記分離装置に対して装着される、生体成分採取システム。
【請求項5】
生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムを用いた回路内圧取得方法であって、
前記生体成分採取用デバイスは、軟質材料で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材を有し、
前記分離装置は、前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出部を有し、
前記回路内圧取得方法では、
前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取が行われる前に、前記荷重検出部により検出された荷重を用いて前記被荷重測定部の反力の時間変化を示す初期データを取得するデータ取得ステップと、
前記初期データに基づいて前記生体成分採取中に時間に応じて変化する前記被荷重測定部の反力を予測するための予測データを算出する予測データ算出ステップと、
前記生体成分採取中に、前記予測データに基づいて前記反力を算出する反力算出ステップと、
前記反力算出ステップで算出された反力と前記荷重検出部により検出された荷重とに基づいて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出ステップと、を行う、回路内圧取得方法。
【請求項6】
請求項5記載の回路内圧取得方法であって、
前記データ取得ステップでは、前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されてから所定時間経過後に所定のデータ取得時間の間、前記初期データを取得する、回路内圧取得方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の回路内圧取得方法であって、
前記予測データ算出ステップでは、前記初期データに基づいて最小二乗法を用いて前記予測データを算出する、回路内圧取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置に装着可能に構成された生体成分採取用デバイスを備えた生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の献血においては、供血者から全血を採取する全血採血の他に、供血者の身体への負担が軽い成分採血(アフェレーシス)が行われている。成分採血は、血液成分採取システム(アフェレーシスシステム)を使用し、全血から特定の血液成分だけを採取し、残りの成分を供血者の体内に再び戻す採血方法である。
【0003】
特許文献1には、供血者から取り出した全血を遠心分離して血小板を採取する血液成分採取システムが開示されている。この血液成分採取システムは、処理される血液または血液成分が流れる回路を形成する採血回路セットと、この採血回路セットが装着される遠心分離装置(血液成分分離装置)とを備える。
【0004】
採血回路セットは、採血針を有する採血ライン、全血が導入される帯状のチャネル(分離器)、血液成分などを収容するための複数のバッグと、複数のチューブを介してこれらに接続されたカセットとを備える。カセットには、供血者からの血液を導入するライン、バッグへと血液成分を移送するライン、採取しない血液成分を供血者へと戻す返血ラインなどを含む複数の流路が形成されている。使用に際し、カセットは、血液成分分離装置に設けられた取付部に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような血液成分採取システムでは、血液成分分離装置が適正に動作しているか否かを確認するために、採血回路内の圧力(回路内圧)を測定して監視することが必要である。血液成分採取システム以外の生体成分採取システムにおいても、同様の課題がある。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、回路内圧を精度よく測定することができる生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムであって、前記生体成分採取用デバイスは、軟質素材で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材を有し、前記分離装置は、前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出部と、前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取が行われる前に、前記荷重検出部により検出された荷重を用いて前記被荷重測定部の反力の時間変化を示す初期データを取得するデータ取得部と、前記初期データに基づいて前記生体成分採取中に時間に応じて変化する前記被荷重測定部の反力を予測するための予測データを算出する予測データ算出部と、前記生体成分採取中に、前記予測データに基づいて前記反力を算出する反力算出部と、前記反力算出部で算出された反力と前記荷重検出部により検出された荷重とに基づいて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出部と、を有する、生体成分採取システムである。
【0009】
本発明の他の態様は、生体液から生体成分を分離するための分離装置と、前記分離装置に装着可能に構成されて生体液中の所望の生体成分を採取する生体成分採取用デバイスと、を備えた生体成分採取システムを用いた回路内圧取得方法であって、前記生体成分採取用デバイスは、軟質材料で構成され、生体液または生体成分が流通する生体液ラインを形成するライン形成部材を有し、前記分離装置は、前記生体成分採取用デバイスが前記分離装置に装着されたデバイス装着状態で、前記ライン形成部材の一部を構成する被荷重測定部にかかる荷重を検出する荷重検出部を有し、前記回路内圧取得方法では、前記デバイス装着状態で、前記生体液ラインに生体液または生体成分を流通させる生体成分採取が行われる前に、前記荷重検出部により検出された荷重を用いて前記被荷重測定部の反力の時間変化を示す初期データを取得するデータ取得ステップと、前記初期データに基づいて前記生体成分採取中に時間に応じて変化する前記被荷重測定部の反力を予測するための予測データを算出する予測データ算出ステップと、前記生体成分採取中に、前記予測データに基づいて前記反力を算出する反力算出ステップと、前記反力算出ステップで算出された反力と前記荷重検出部により検出された荷重とに基づいて前記被荷重測定部の内圧を算出する内圧算出ステップと、を行う、回路内圧取得方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、経時的に変化する生体成分採取中の被荷重測定部の反力を予測データに基づいて算出することができるため、回路内圧を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る血液成分採取システムの概略図である。
【
図4】血液成分採取用カセットを載せた状態のカセット取付部の斜視図である。
【
図5】クランプの動作を説明する第1説明図である。
【
図6】クランプの動作を説明する第2説明図である。
【
図7】クランプの動作を説明する第3説明図である。
【
図8】クランプの動作を説明する第4説明図である。
【
図9】クランプの動作を説明する第5説明図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る回路内圧取得方法を説明するためのフローチャートである。
【
図11】予測データを説明するためのグラフである。
【
図12】検量線の傾きの補正を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1において、本発明に係る生体成分採取システムの一形態である血液成分採取システム10は、供血者(ドナー)から血液(全血)を連続的に取り出して体外で遠心分離することにより、特定の血液成分(本実施形態では、血漿(乏血小板血漿:PPP))を採取し、残りの血液成分を供血者に戻す血液アフェレーシスシステムとして構成されている。本実施形態において、血液成分は生体成分であり、血液は生体液(少なくとも1つの生体成分を含有する液体)である。
【0014】
まず、
図1に示す血液成分採取システム10の概略を説明する。この血液成分採取システム10は、血液成分を貯留および流動するための採血回路セット12と、採血回路セット12に遠心力を付与する遠心分離装置14(分離装置)とを備える。採血回路セット12は、供血者から取り出された全血を複数の血液成分に遠心分離する血液処理部16(生体液処理部)を有する。遠心分離装置14は、血液処理部16に遠心力を付与するためのロータ18aを有する遠心部18を備える。血液処理部16は、遠心部18に装着可能である。
【0015】
採血回路セット12は、汚染防止や衛生のため、1回の使用毎に使い捨てされる。採血回路セット12は、採血針20および初流血採取バッグ21を有する採血・返血部22と、血液処理部16と、複数のバッグ24と、これらの要素にチューブを介して接続された生体成分採取用デバイスとしての血液成分採取用カセット28(以下、「カセット28」と略称する)とを備える。複数のバッグ24は、抗凝固剤であるACD液を収容したACD液用バッグ24aと、血漿(乏血小板血漿)を貯留するためのPPP用バッグ24bとを含む。
【0016】
採血・返血部22は、チューブコネクタ30を介してACD液用バッグ24aおよびカセット28に接続されている。ACD液用バッグ24aは、ACD液移送チューブ23を介してチューブコネクタ30に接続されている。
【0017】
カセット28は、ドナー側チューブ32を介して採血・返血部22に接続されるとともに、処理部側チューブ34を介して血液処理部16に接続されている。血液処理部16は、遠心分離装置14の遠心部18(ロータ18a)に装着され、血液が導入、流動および流出するように容器状に構成されている。血液処理部16には、PPP移送チューブ36を介してPPP用バッグ24bが接続されている。
【0018】
図2において、カセット28は、血液または血液成分が流通する血液ライン42(生体液ライン)が形成されたカセット本体40を備える。カセット本体40は、平面視で長方形状に構成されている。カセット本体40は、軟質素材で形成されている。カセット本体40を構成する軟質素材は、カセット本体40の全体に亘って同一の素材が用いられている。なお、カセット本体40は、異なる複数の素材で構成されていてもよい。具体的に、カセット本体40は、軟質素材で形成された第1シート40aおよび第2シート40bを有する。第1シート40aと第2シート40bとは厚さ方向に重ねられかつ互いに接合されている。
【0019】
第1シート40aおよび第2シート40bを構成する軟質素材としては、例えば、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタンなどが挙げられる。塩化ビニルの可塑剤としては、例えば、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、フタル酸ビス-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0020】
第1シート40aと第2シート40bとの間に血液ライン42が形成されている。本実施形態において、第1シート40aと第2シート40bとの接合手段は、融着(高周波融着、熱融着など)である。第1シート40aと第2シート40bとは、他の接合手段(接着など)により接合されていてもよい。また、カセット本体40の外周縁部40cには、硬質素材(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど)で構成された第1ポート部材44および第2ポート部材46が設けられている。
【0021】
第1ポート部材44は、長方形状のカセット本体40の長軸方向一端部である第1端部45aに設けられ、血液ライン42の一端側に設けられた第1のポート43aに接続されている。第2ポート部材46は、カセット本体40の長軸方向他端部である第2端部45bに設けられ、血液ライン42の他端側に設けられた第2のポート43bに接続されている。第1ポート部材44にはドナー側チューブ32が接続され、第2ポート部材46には処理部側チューブ34が接続されている。
【0022】
本実施形態では、第1ポート部材44と第2ポート部材46とは、長方形状のカセット本体40の長軸方向に沿った同一直線上に配置されている。なお、第1ポート部材44と第2ポート部材46とは、上記同一直線上に配置されていなくてもよい。
【0023】
カセット本体40に形成された血液ライン42は、採血時に血液を流通させるための採血ライン42a(採取ライン)と、返血時に血液成分を流通させるための返血ライン42b(返還ライン)とを有する。採血ライン42aの一端部42a1と、返血ライン42bの一端部42b1とは、第1結合部48を介して互いに結合している。採血ライン42aの他端部42a2と、返血ライン42bの他端部42b2とは、第2結合部50を介して互いに結合している。
【0024】
採血ライン42aと返血ライン42bとは、少なくとも部分的に並列して延在している。第1結合部48および第2結合部50は、それぞれ血液ライン42の一部を構成している。
【0025】
カセット本体40では、血液ライン42の両側に、融着箇所であるシール部55が血液ライン42に沿って形成されている。また、カセット本体40の外周縁部40cには、シール部57が当該外周縁部40cに沿って形成されている。カセット本体40(血液ライン42を形成する凸状部を除く)において、シール部55、57以外の箇所は、第1シート40aと第2シート40bとが互いに融着されていない非シール部である。シール部55は、形成時に加圧されているため、非シール部よりも厚みが小さく、非シール部に対して凹んでいる。換言すれば、非シール部は、シール部55に対して厚さ方向に突出している。
【0026】
カセット本体40のうち血液ライン42を形成する壁部は、血液ライン42内に陽圧が作用していないときでも、カセット本体40の両面側において、カセット28の厚さ方向に凸状に膨らんでいる。したがって、血液ライン42は、自然状態で開いている流路である。外力によって押圧された際には、押圧された箇所の血液ライン42を閉じる方向に弾性変形可能である。
【0027】
カセット本体40は、血液ライン42を形成するライン形成部材53を備える。ライン形成部材53は、採血ライン42aを形成する第1ライン形成部材54を有する。第1ライン形成部材54には、カセット28が遠心分離装置14に装着されたカセット装着状態(デバイス装着状態)で遠心分離装置14に搭載された後述する第1荷重検出部88(
図3参照)によって押圧される第1被荷重測定部60(第1被押圧部)が設けられている。第1被荷重測定部60は、採血ライン42aの壁部の一部を構成している。したがって、第1被荷重測定部60は、カセット本体40のシート面41(ベース面)からカセット本体40の厚さ方向に膨出している。
【0028】
ライン形成部材53は、返血ライン42bを形成する第2ライン形成部材64を有する。第2ライン形成部材64には、カセット装着状態で遠心分離装置14に搭載された後述する第2荷重検出部90(
図3参照)によって押圧される第2被荷重測定部62(第2被押圧部)が設けられている。第2被荷重測定部62は、返血ライン42bの壁部の一部を構成している。したがって、第2被荷重測定部62は、カセット本体40のシート面41からカセット本体40の厚さ方向に膨出している。
【0029】
第2被荷重測定部62は、フィルタ収容部65を構成する。フィルタ収容部65には、血液成分に含まれる所定成分(血液凝集塊)を分離するためのフィルタ部材70が収容されている。
【0030】
第2被荷重測定部62は、第1被荷重測定部60よりも変形しやすい。本実施形態では、第2被荷重測定部62の幅が第1被荷重測定部60の幅よりも大きいことにより、第2被荷重測定部62が第1被荷重測定部60よりも変形しやすい。第1被荷重測定部60の幅に対する第2被荷重測定部62の幅の割合は、例えば、300%以上に設定され、好ましくは500%以上に設定され、より好ましくは800%以上に設定される。
【0031】
なお、第2被荷重測定部62を構成する壁部の厚さが第1被荷重測定部60を構成する壁部の厚さよりも薄く設定されることにより、第2被荷重測定部62が第1被荷重測定部60よりも変形しやすくなっていてもよい。あるいは、第2被荷重測定部62が第1被荷重測定部60よりも柔軟な材料で構成されることにより、第2被荷重測定部62が第1被荷重測定部60よりも変形しやすくなっていてもよい。
【0032】
カセット28には、遠心分離装置14に備えられた流路開閉機構である複数のクランプ72(72a~72c)(
図3参照)が作用する複数のクランプ作用部76(76a~76c)が設けられている。カセット28を遠心分離装置14に装着すると、クランプ作用部76は、対応するクランプ72に当接または対向する。具体的に、クランプ作用部76aは、カセット28における採血ライン42aの第1ポート部材44側を形成する箇所に設けられている。クランプ作用部76b、76cは、返血ライン42bのうち第2被荷重測定部62の両側を形成する箇所にそれぞれ設けられている。
【0033】
なお、カセット28に形成される流路構成や、設けられるバッグ24の個数および配置は、上述および図示した構成に限られず、採取する血液成分の種類や使用方法などに応じて改変がなされてもよい。
【0034】
図1において、遠心分離装置14は、血液成分採取において繰り返し使用される機器であり、例えば、医療施設や採血用車両などに備えられる。遠心分離装置14は、ロータ18aを有する遠心部18と、採血回路セット12のカセット28が取り付け可能に構成されたカセット取付部78とを備える。
【0035】
図3に示すように、カセット取付部78は、カセット装着溝82が形成された取付ベース84と、閉じたときに取付ベース84を覆うように構成された開閉可能な蓋体86と、カセット28の第1被荷重測定部60(
図2参照)を押圧可能な第1荷重検出部88と、カセット28の第2被荷重測定部62(
図2参照)を押圧可能な第2荷重検出部90と、カセット28のクランプ作用部76(
図2参照)を押圧可能に構成された複数のクランプ72とを備える。
【0036】
取付ベース84の外周部には、カセット28の第1ポート部材44を配置可能な第1ポート配置溝84bと、カセット28の第2ポート部材46を配置可能な第2ポート配置溝84cとが設けられている。第1ポート配置溝84bおよび第2ポート配置溝84cは、カセット装着溝82に連通している。
【0037】
蓋体86は、取付ベース84にヒンジ部85を介して回動可能に連結されている。カセット28が取付ベース84のカセット装着溝82に保持された状態で蓋体86を閉じると、カセット28は、取付ベース84と蓋体86との間に挟まれる。取付ベース84および蓋体86には、それぞれカセット28のフィルタ収容部65を受容可能な凹部84a、86aが設けられている。これにより、取付ベース84と蓋体86との間でカセット28を適切に保持しつつ、フィルタ収容部65が潰れることが防止される。また、凹部84a、86aにより、フィルタ収容部65が過剰に膨らむことが防止される。
【0038】
第1荷重検出部88は、取付ベース84に設けられた第1貫通孔92aに挿入されるとともに、カセット装着溝82に露出している。第1荷重検出部88の上面は、カセット装着溝82の底面82aから突出している。第2荷重検出部90は、凹部84aの底面87に設けられた第2貫通孔92bに挿入されるとともに、凹部84a内に露出している。第2荷重検出部90の上面は、凹部84aの底面87から突出している。第1荷重検出部88および第2荷重検出部90は、例えば、ロードセルにより構成される。
【0039】
複数のクランプ72(72a~72c)は、カセット装着溝82に保持された状態のカセット28の厚さ方向に進退動作可能であり、カセット28に設けられた複数のクランプ作用部76(76a~76c)の配置に対応するように配置されている。複数のクランプ72は、カセット装着溝82の底面82aに開口する複数の孔部94を介して、複数のクランプ作用部76をそれぞれ押圧可能である。蓋体86において、閉じたときに複数の孔部94(クランプ72)に対応する位置には、複数の突起96が設けられている。
【0040】
カセット取付部78にカセット28が装着された状態でクランプ作用部76がクランプ72によって押圧されていないときは、クランプ作用部76内の流路は開通している。クランプ72が孔部94から突出してクランプ作用部76を押圧すると、クランプ作用部76内の流路が閉塞される。そして、クランプ72が後退すると、カセット本体40(クランプ作用部76)の弾性復元力により、クランプ作用部76は元の形状に戻り、クランプ作用部76内の流路が開通する。
【0041】
図1に示すように、遠心分離装置14は、ACD液移送チューブ23に作用するACD液移送ポンプ98と、カセット28に接続された処理部側チューブ34に作用する採取・返還ポンプ100とを有する。ACD液移送ポンプ98は、ACD液用バッグ24aからACD液移送チューブ23を介してカセット28および血液処理部16へとACD液を移送するポンプである。採取・返還ポンプ100は、血液または血液成分を移送するためのポンプである。換言すれば、採取・返還ポンプ100は、供血者側から血液処理部16へと血液を移送するとともに、血液処理部16から供血者側へと血液成分を移送するポンプである。ACD液移送ポンプ98および採取・返還ポンプ100は、例えば、ローラポンプ、フィンガーポンプにより構成される。
【0042】
遠心分離装置14は、さらに、制御部102を有する。制御部102は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM、RAM、などを有しており、CPUがROMに記憶されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)として機能する。なお、各種機能実現部は、ハードウエアとしての機能実現器により構成することもできる。
【0043】
制御部102は、上述した複数のクランプ72の動作を制御する。制御部102は、記憶部104、データ取得部106、温度取得部110、予測データ算出部112、反力算出部116および内圧算出部118を備える。
【0044】
データ取得部106は、カセット装着状態で、血液ライン42に血液または血液成分を流通させる血液成分採取が行われる前に、第1被荷重測定部60の反力の時間変化を示す初期データA(
図11参照)を取得する。温度取得部110(情報取得部)は、ライン形成部材53の温度(第1被荷重測定部60の反力に影響を及ぼす影響情報)を取得する。
【0045】
予測データ算出部112は、初期データAに基づいて血液成分採取中の第1被荷重測定部60の反力を予測するための予測データB(
図11参照)を算出する。具体的には、予測データ算出部112は、初期データAに基づいて最小二乗法を用いて予測データBを算出する。反力算出部116は、血液成分採取中に、予測データBに基づいて第1被荷重測定部60の反力を算出する。
【0046】
内圧算出部118は、血液成分採取中に、反力算出部116で算出された第1被荷重測定部60の反力と第1荷重検出部88によって検出された荷重とに基づいて第1被荷重測定部60の内圧(回路内圧)を算出する。具体的に、内圧算出部118は、第1被荷重測定部60の内圧を算出する際に、温度による第1被荷重測定部60の反力の変化を反映した計算を行う。
【0047】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る血液成分採取システム10の作用を説明する。
【0048】
図1に示す血液成分採取システム10を用いて供血者から血液成分採取を行うための準備(セットアップ)として、採血回路セット12が遠心分離装置14に装着される。具体的には、カセット28がカセット取付部78に取り付けられるとともに、血液処理部16がロータ18aに装着される。一方、採血針20は、供血者に穿刺される。
【0049】
カセット28がカセット取付部78に取り付けられる際、
図4に示すように、カセット28は、まず、カセット装着溝82に装着される。そして、蓋体86が閉じられることで、取付ベース84と蓋体86との間にカセット28が保持された状態となる。この結果、カセット28の第1被荷重測定部60および第2被荷重測定部62が、第1荷重検出部88および第2荷重検出部90に押圧されて若干だけ弾性変形した状態となる。また、カセット28の複数のクランプ作用部76が、複数のクランプ72に対向配置された状態となる。
【0050】
図1に示した遠心分離装置14に対して、ユーザの操作により動作開始が指示されると、遠心分離装置14では、ACD液移送ポンプ98の作用下に、ACD液によるプライミングが実行される。具体的に、プライミングでは、カセット28外に配置された図示しないラインセンサで第1のポート43aの直近までACD液が来るのを検知した段階で、ACD液によるプライミングを終了する。
【0051】
次に、遠心分離装置14は、ロータ18aを回転させることによりロータ18aに装着された血液処理部16に遠心力を付与するとともに、採取・返還ポンプ100を作動させることにより供血者から血液(全血)を取り出して血液処理部16内に血液を導入する(採取動作)。血液処理部16内に導入された血液は、ロータ18aの回転に伴う遠心力によって、赤血球(濃厚赤血球)、バフィーコートおよび血漿(乏血小板血漿)に分離される。
【0052】
血液処理部16内で分離された血漿は、PPP移送チューブ36を介してPPP用バッグ24bへと導入される。残りの血液成分(赤血球およびバフィーコート)は、遠心分離処理後に供血者へと戻される(返還動作)。このとき、残りの血液成分に含まれる血液凝集塊などの異物は、カセット28の返血ライン42bに設けられたフィルタ部材70によりトラップされるため、異物が供血者に戻ることで生じるリスクを低減することができる。上述した採取動作と返還動作のサイクルは、複数回行われる。
【0053】
血液成分採取システム10の稼働時において、遠心分離装置14のクランプ72(
図3)は以下のように動作する。
【0054】
図5に示すように、ACD液によるプライミングを行う際には、クランプ72a、72b、72cが開けられる。そして、この状態で、第1のポート43a直近のカセット28外の図示しないラインセンサで第1のポート43aの直近までACD液が来るのを検知した段階で、ACD液によるプライミングを終了する。
【0055】
次に、初回の採血を行う際には、
図6に示すように、クランプ72a、72b、72cが開けられた状態が維持される。そして、この状態で、供血者からの血液がカセット28の血液ライン42に導入され、血液によってカセット28の回路内の空気がすべて血液処理部16へと押し出される。
【0056】
初回の採血の途中で、
図7に示すように、クランプ72b、72cが閉じられることで、返血ライン42bが閉鎖される。これにより、フィルタ収容部65に陰圧が作用してフィルタ収容部65が閉塞することが防止される。
【0057】
次に、供血者への血液成分の返血を行う際には、
図8に示すように、クランプ72aが閉じられ、クランプ72b、72cが開けられることで、採血ライン42aが閉鎖される一方、返血ライン42bが開放される。したがって、血液成分がフィルタ部材70を通過する際に、血液成分に含まれる血液凝集塊がフィルタ部材70にトラップされる。採血ライン42aは閉鎖されているため、異物が採血ライン42aを介して供血者に戻されることはない。
【0058】
次に、2回目以降の採血を行う際には、
図9のように、クランプ72b、72cが閉じられ、クランプ72aが開けられることで、返血ライン42bが閉鎖される一方、採血ライン42aが開放される。したがって、血液は、採血ライン42aおよび返血ライン42bのうち採血ライン42aのみを介して血液処理部16側(遠心部18側)へと移送される。その後、返血(
図8)が再び行われる。このような採血と返血のサイクルが複数回行われる。
【0059】
そして、最終の返血を行う際には、
図8に示すように、クランプ72aが閉じられ、クランプ72b、72cが開けられる。
【0060】
次に、血液成分採取システム10を用いた回路内圧取得方法について
図10に示すフローチャートにしたがって説明する。
【0061】
図10のステップS1において、制御部102は、カセット28がカセット取付部78に装着されたか否かを判定する。具体的には、制御部102は、取付ベース84のカセット装着溝82にカセット28が取り付けられた状態で蓋体86を閉じた時にカセット28がカセット取付部78に装着されたと判定する。
【0062】
カセット28がカセット取付部78に装着されていないと制御部102によって判定された場合(ステップS1:NO)には、カセット取付部78にカセット28が装着されたと判定されるまでステップS1に留まる。
【0063】
カセット28がカセット取付部78に装着されたと制御部102によって判定された場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部102は、カセット28がカセット取付部78に装着されたと制御部102が判定した時からの第1経過時間の計測を開始する。続いて、ステップS3において、制御部102は、第1経過時間が所定時間t1(
図11参照)に到達したか否かを判定する。ここで、所定時間t1は、任意に設定可能であるが、例えば、5分に設定される。
【0064】
第1経過時間が所定時間t1に到達していないと制御部102によって判定された場合(ステップS3:NO)、第1経過時間が所定時間t1に到達したと判定されるまでステップS3に留まる。第1経過時間が所定時間t1に到達したと制御部102によって判定された場合(ステップS3:YES)、ステップS4においてデータ取得ステップを行う。
【0065】
図11に示すように、データ取得ステップにおいて、データ取得部106は、血液成分採取が行われる前に、所定のデータ取得時間t2の間、第1荷重検出部88により検出された荷重を用いて第1被荷重測定部60の反力の時間変化を示す初期データAを取得する。ここで、データ取得時間t2は、任意に設定可能であるが、例えば、5分間に設定される。
【0066】
続いて、
図10のステップS5において、予測データ算出ステップを行う。
図11に示すように、予測データ算出ステップにおいて、予測データ算出部112は、初期データAに基づいて血液成分採取中に時間に応じて変化する第1荷重検出部88の反力を予測するための予測データB(ベースライン)を算出する。具体的には、予測データ算出部112は、初期データAに基づき最小二乗法を用いて得られた結果と温度の関数である補正変数とを用いて予測データBを算出する。補正変数は、実験または解析によりあらかじめ取得することができる。これにより、血液成分採取中に時間に応じて変化する第1被荷重測定部60の反力をリアルタイムに精度よく算出することができる。算出された予測データBは、記憶部104に保存(記憶)される。
【0067】
ただし、予測データ算出ステップにおいて、予測データ算出部112によって算出される予測データBには、温度の関数である補正変数が含まれていなくてもよい。この場合、後述するステップS10の温度取得ステップについても削除することができる。
【0068】
次に、ステップS6の較正ステップにおいて、第2荷重検出部90によって検出された荷重を用いて内圧算出用データである検量線L(
図12参照)の傾きを補正する。これにより、傾きが補正された検量線Laが得られる。なお、検量線Lは、実験または解析によりあらかじめ取得することができる。
【0069】
第2被荷重測定部62は、第1被荷重測定部60よりも変形しやすいため、第2荷重検出部90により検出する荷重と、荷重に対応する圧力との関係が、非常に安定している。したがって、第2荷重検出部90を、第1荷重検出部88の参照用センサとして利用し、較正ステップで回路内圧を算出する際に利用する検量線Lの傾きを補正することにより、精度の高い回路内圧の測定が可能となる。
【0070】
較正ステップは、第1経過時間が所定時間t1に到達するまでの間(ステップS2とステップS3の間)に行ってもよい。この場合、血液成分採取が開始されるまでの準備時間を短縮することができる。
【0071】
続いて、
図10のステップS7において、ACD液移送ポンプ98を駆動して、ACD液をカセット28の血液ライン42の直前まで満たす上述したプライミングを実施する。その後、ステップS8において、カセット28の血液ライン42に血液を導入する。この際、ステップS9において、制御部102は、採血ライン42aに対する血液の流通が開始されてからの第2経過時間の計測を開始する。
【0072】
続いて、ステップS10の温度取得ステップ(情報取得ステップ)において、温度取得部110は、第2経過時間と時間・温度線(温度算出用データ)とに基づいてライン形成部材53(第1被荷重測定部60)の温度を算出する。時間・温度線は、血液ライン42に血液の導入を開始してからの第2経過時間とライン形成部材53の温度との関係を示すデータであって、記憶部104に保存(記憶)されている。時間・温度線は、実験または解析によりあらかじめ取得することができる。
【0073】
なお、温度取得ステップでは、時間・温度線を記憶した外部データベースにアクセスして、時間・温度線を参照してもよい。また、温度取得ステップでは、図示しない温度センサを用いてライン形成部材53の温度(血液ライン42の壁部の温度)を取得してもよい。
【0074】
その後、ステップS11の反力算出ステップにおいて、反力算出部116は、血液成分採取中に、予測データBに基づいて第1被荷重測定部60の反力を算出する。具体的には、温度取得ステップで取得された第1被荷重測定部60の温度と第1経過時間とを予測データBの計算式に代入することによって反力が算出される。
【0075】
そして、ステップS12の内圧算出ステップにおいて、内圧算出部118は、血液成分採取中に、第1荷重検出部88により検出された荷重から反力算出ステップで算出された反力を引いた差分荷重を算出し、その差分荷重と傾きが補正された検量線Laとに基づいて第1被荷重測定部60の内圧(回路内圧)を算出する。
【0076】
この場合、本実施形態に係る血液成分採取システム10および回路内圧取得方法は、以下の効果を奏する。
【0077】
血液成分採取中(採血動作中または返血動作中)に採取・返還ポンプ100が作動している場合、第1荷重検出部88により、血液が流れる採血ライン42aの内圧(回路内圧)と、第1被荷重測定部60の反力(第1被荷重測定部60の変形に伴う復元力)とを合計した荷重が検出される。すなわち、回路内圧が陽圧である場合、
図13Aに示すように、第1荷重検出部88により検出される荷重(第1被荷重測定部60からの押圧力)は、回路内圧と反力を単純加算することにより得られる。一方、回路内圧が陰圧である場合、
図13Bに示すように、第1荷重検出部88により検出される荷重は、反力から回路内圧の絶対値を引くことにより得られる。
【0078】
しかしながら、
図14に示すように、第1被荷重測定部60の反力は経時的に減少する。
図14では、カセット28をカセット取付部78に装着した時の第1被荷重測定部60の反力を0とした場合の、第1被荷重測定部60の反力の時間変化のイメージを示している。このように第1被荷重測定部60の反力が経時的に減少するのは、第1被荷重測定部60が第1荷重検出部88に押圧される状態が継続することに伴ってクリープ変形するためである。したがって、第1被荷重測定部60の反力として経時的に変化しない固定値を用いると、第1被荷重測定部60の内圧の測定精度が低下する。
【0079】
そこで、血液成分採取システム10は、データ取得部106、予測データ算出部112、反力算出部116、および、内圧算出部118を備える。そして、データ取得部106は、カセット装着状態で、血液成分採取が行われる前に、第1被荷重測定部60の反力の時間変化を示す初期データAを取得する。予測データ算出部112は、初期データAに基づいて血液成分採取中の第1被荷重測定部60の反力を予測するための予測データBを算出する。反力算出部116は、血液成分採取中に、予測データBに基づいて第1被荷重測定部60の反力を算出する。内圧算出部118は、反力算出部116で算出された反力と第1荷重検出部88により検出された荷重とに基づいて第1被荷重測定部60の内圧(回路内圧)を算出する。
【0080】
これにより、経時的に変化する血液成分採取中の第1被荷重測定部60の反力を予測データBに基づいて算出することができるため、回路内圧を精度よく測定することができる。なお、回路内圧は、例えば、-300mmHg~500mmHgである。
【0081】
生体成分採取用デバイス(カセット28)が分離装置(遠心分離装置14)に装着された直後では、被荷重測定部(第1被荷重測定部60)が比較的大きくクリープ変形するため、被荷重測定部(第1被荷重測定部60)の反力は変動しやすい。しかしながら、データ取得部106は、生体成分採取用デバイス(カセット28)が分離装置(遠心分離装置14)に装着されてから所定時間t1経過後にデータ取得時間t2の間、初期データAを取得している。そのため、予測データBの精度を向上させることができる。
【0082】
予測データ算出部112は、初期データAに基づいて最小二乗法を用いて予測データBを算出している。これにより、予測データBを容易に算出することができる。
【0083】
分離装置(遠心分離装置14)は、生体成分採取用デバイス(カセット28)が取り付けられる取付ベース84と、取付ベース84に対して生体成分採取用デバイス(カセット28)を保持するための蓋体86とを有する。生体成分採取用デバイス(カセット28)は、取付ベース84に生体成分採取用デバイス(カセット28)が取り付けられた状態で蓋体86が閉められることによって分離装置(遠心分離装置14)に対して装着される。これにより、生体成分採取用デバイス(カセット28)を分離装置(遠心分離装置14)に対して容易に装着することができる。
【0084】
生体成分採取用デバイスは、カセット28の形態に限らない。したがって、生体成分採取用デバイスは、採血ライン42aを有する第1軟質チューブ部材と、返血ライン42bを有する第2軟質チューブ部材とを備え、第1軟質チューブ部材と第2軟質チューブ部材の両端部同士がそれぞれコネクタを介して連結されている構成であってもよい。
【0085】
第1荷重検出部88により検出した荷重を用いて回路内圧を算出する際に利用する内圧算出用データは、検量線Lに限らず、あらかじめ用意されたテーブルであってもよい。第1荷重検出部88および第2荷重検出部90は、第1被荷重測定部60および第2被荷重測定部62を押圧することなく(非接触で)荷重を測定するように構成されていてもよい。
【0086】
情報取得部で取得される影響情報は、ライン形成部材53の温度に限定されず、生体液ライン(血液ライン42)に生体液が流通されてからの経過時間またはライン形成部材53(第1被荷重測定部60)の硬度であってもよい。
【0087】
本発明の適用範囲は、血液成分採取システム10に限らず、流路を介して液体を流動させる種々のシステム、例えば、全血献血システムや患者やドナーから採取され、あるいは、培養された各種細胞の培養装置、あるいは、薬液投与システムなどに適用することができる。したがって、生体成分採取用デバイス(生体成分採取システム)に流す液体は、血液に限らない。
【0088】
本発明に係る生体成分採取システムおよび回路内圧取得方法は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0089】
10…血液成分採取システム(生体成分採取システム)
14…遠心分離装置(分離装置) 28…血液成分採取用カセット(生体成分採取用デバイス)
42…血液ライン(生体液ライン) 53…ライン形成部材
60…第1被荷重測定部(被荷重測定部) 88…第1荷重検出部(荷重検出部)
106…データ取得部 112…予測データ算出部
116…反力算出部 118…内圧算出部
A…初期データ B…予測データ
【国際調査報告】