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特表2022-519342抗ベータ1インテグリンヒト化抗体及びこれを含む癌治療用薬学組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-23
(54)【発明の名称】抗ベータ1インテグリンヒト化抗体及びこれを含む癌治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220315BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220315BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220315BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220315BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220315BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P35/00
A61P1/04
A61P11/00
A61P15/00
G01N33/574 A
C12P21/08
C12Q1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540155
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 KR2020000353
(87)【国際公開番号】W WO2020145669
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0003213
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0002048
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521302906
【氏名又は名称】エスジー メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ソン-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヒョン ソン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA14
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QS05
4B063QS33
4B063QS38
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC03
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC24
4B064CD21
4B064CE12
4B064DA05
4B064DA14
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB25
4B065BC03
4B065BC07
4B065BD14
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA811
4C084ZB261
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ベータ1インテグリンを抗原として認識してそれに特異的に結合する単一クローン抗体又はその断片に関する。また、本発明は、前記単一クローン抗体又はその断片を含む癌の予防又は治療用薬剤学的組成物に関する。本発明の単一クローン抗体は、癌細胞の増殖及び血管新生を抑制し、細胞自滅死を効果的に誘導するので、癌の予防又は治療に有用に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベータ1インテグリン(beta1integrin)を抗原として認識してそれに特異的に結合する単一クローン抗体又はその断片であって、該単一クローン抗体又はその断片は、カバットナンバリングシステム(Kabat EU numbering system)による下記のアミノ酸置換を含むことを特徴とする単一クローン抗体又はその断片:
a)配列目録第1配列の重鎖可変領域(heavy chain variable region,VH)においてA9S、I20V、T25S、S30T、K66R、S75T、N76D及びQ81Eのアミノ酸置換;及び
b)配列目録第2配列の軽鎖可変領域(light chain variable region,VL)においてV11L、F36Y及びR39Kのアミノ酸置換。
【請求項2】
前記単一クローン抗体又はその断片は、配列目録第3配列の重鎖可変領域及び配列目録第4配列の軽鎖可変領域を含むことを特徴とする、請求項1に記載の単一クローン抗体又はその断片。
【請求項3】
前記単一クローン抗体又はその断片は、単一鎖抗体(single-chain variable fragment,scFv)であることを特徴とする、請求項1に記載の単一クローン抗体又はその断片。
【請求項4】
請求項1の単一クローン抗体又はその断片を含む多重特異抗体(multispecific antibody)又は抗体-薬物接合体(Antibody-drug conjugate,ADC)。
【請求項5】
請求項1の単一クローン抗体又はその断片をコードする核酸分子。
【請求項6】
請求項5の核酸分子を含むベクター。
【請求項7】
請求項6のベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
請求項1の単一クローン抗体又はその断片、請求項5の核酸分子又は請求項6のベクターを含む、癌の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項9】
前記癌は、細胞毒性化学療法(cytotoxic chemtherapy)に耐性ができたことを特徴とする、請求項8に記載の薬剤学的組成物。
【請求項10】
前記癌は、肺癌、乳癌又は大腸癌であることを特徴とする、請求項8に記載の薬剤学的組成物。
【請求項11】
請求項1の単一クローン抗体又はその断片を処理する段階を含む、サンプル中に含まれたベータ1インテグリン(beta1integrin)の定量方法。
【請求項12】
下記の段階を含むベータ1インテグリン(beta1integrin)の過発現による疾患の診断のための情報を提供する方法:
(a)被検者から体外に分離されたサンプルを取得する段階;
(b)請求項1の単一クローン抗体又はその断片を前記サンプルに処理する段階;及び
(c)前記被検者のサンプル中に含まれたベータ1インテグリンの発現量が、正常群サンプル中に含まれたベータ1インテグリンの発現量よりも高いか否か確認する段階。
【請求項13】
前記ベータ1インテグリンの過発現による疾患は癌であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1の単一クローン抗体又はその断片を含むベータ1インテグリン(beta 1 integrin)定量キット。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、癌細胞の成長、分化、侵入及び転移に関連した生化学的信号を伝達するベータ1インテグリンに特異的に結合する抗体に関し、より詳細には、本発明の抗体は、ベータ1インテグリンの信号伝達機能を抑制させることによって、ベータ1インテグリンが過発現する様々な癌(例えば、非小細胞肺癌)の診断及び治療用途に用いることができる。
【0002】
[背景技術]
2018年度の世界癌発病は1,800万件であり、死亡は900万件と推算される。男性の5人に1人及び女性の6人に1人が生涯で癌にかかることがあり、男性の8人に1人と女性の11人に1人が癌で死亡すると知られている。全世界の癌診断後5年以内の生存者総数は4,380万人と推算される(Press ReleaseN゜263,WHO,Internal Agency for Research on Cancer,12 September 2018)。肺癌は、乳癌及び大腸癌とともに発病率が最も高い3大癌である。2018年世界的癌統計(Global cancer statistics)によれば、全世界の肺癌発生者は210万人、死亡者は180万人であり、全体癌死亡者の1/5である18.4%と予測される(World Health Organization Global Health Observatory Geneva 2018 who.int/gho/database/en/.Accessed June 21,2018)。
【0003】
肺癌は、大きく、小細胞肺癌(small cell lung cancer)と非小細胞性肺癌(non-small cell lung cancer;NSCLC)とに区分する。NSCLCは、癌細胞のサイズと形態によって扁平上皮細胞癌(squamous cell lung cancer)、腺癌(adenocarcinoma)、大細胞癌(large-cell lung cancer)に分類される。2018年国家癌情報センターによれば、2017年肺癌全体発生件数24,235件中に癌腫(carcinoma)が86.6%、肉腫(sarcoma)が0.2%を占めており、癌腫ではNSCLCが78%を占める程度にその比率が高かった。
【0004】
NSCLCは、非常にヘテロジニアスな癌形態(cancer type)であって、抗癌剤に対する反応性が非常に低いため、現在も治療剤開発のニーズがある癌腫である。1950年代から肺癌に対する遺伝学的、組織学的研究があったにもかかわらず、2000年代初期まではプラチナ(platinum)ベースの細胞毒性薬物(cytotoxic drug)の併用治療(doublet therapy)を主に用いた。これは、シスプラチンとパクリタキセル、ゲムシタビン、ドセタキセルのいずれか一つとの複合剤、又はカルボプラチンとパクリタキセルとの複合剤を使用するものである。このような治療方法は、全身的な副作用の他に薬剤耐性も伴い、効果的でなかった。
【0005】
その後に登場した薬物が、EGFR、RAS、ALKの遺伝的変異体に対して特異的に作用する標的治療剤である。EGFR変異体を有する患者群に対してはエルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR tyrosine kinase inhibitor,TKI)があるが、RAS変異体については、このようなEGFR TKIに抵抗性を示すことが知られた。ALK変異体の場合も同様にEGFR TKIに抵抗性を示すか、ザーコリ(クリゾチニブ)が効果を示すことが知られている。抗体治療剤の場合、既存に他の適応症に用いられていたセツキシマブ(EGFRターゲット)、ベバシズマブ(VEGFターゲット)、Ado-トラスツズマブ(HER2)などが肺癌治療剤として許可を受けたが、大きな効果が得られておらず、最近に台頭するPD-1又はPD-L1をターゲットとする免疫抗癌剤の場合、その反応性が約20~30%にしか至らず、依然として新規な治療剤開発のニーズがある。
【0006】
EGFR TKIの場合、EGFR変異体患者群に対して約70%の高い反応率を示すが、その殆どが1年以内に薬物抵抗性を示す。その原因としては、抵抗性突然変異(resistant mutation)、選択的スプライシング(alternative splicing)、遺伝子増殖(gene amplification)、by-pathwayの活性化などを挙げることができる。すなわち、EGFR TKIによってEGFR T790Mなどの突然変異(mutation)が新しく発生するか、或いはHER2又はMET増幅などの様々な信号伝達体系の異常が発生する方式で薬物抵抗性が誘発される。
【0007】
他の重要な薬物抵抗性の原因は、べータ1インテグリン(beta 1 integrin)過発現である。べータ1インテグリンは、細胞外環境、特に、成長、分化、侵入及び悪性細胞の転移潜在力と関連した生化学的信号を伝達する物質として知られてきた(Juliano RL.The role of beta 1 integrins in tumors[J].Semin Cancer Biol,1993;4(5):277-283.)。しかし、べータ1インテグリンの異常発現は、腫瘍抑制及び進行に影響を及ぼし、べータ1インテグリンの増加は、腫瘍細胞の生存を促進し、種々の腫瘍細胞類型において化学療法に耐性を付与することが知られており(Hodkinson PS,Elliott T,Wong WS,et al.ECM overrides DNA damage-induced cell cycle arrest and apoptosis in small-cell lung cancer cells through beta1 integrin-dependent activation of PI3-kinase[J].Cell Death Differ,2006;13(10):1776-1788.;Aoudjit F,Vuori K.Integrin signaling inhibits paclitaxel-induced apoptosis in breast cancer cells[J].Oncogene,2001;20(36):4995-5004.;Morozevich GE,Kozlova NI,Preobrazhenskaya ME,et al.The role of beta1 integrin subfamily in anchorage-dependent apoptosis of breast carcinoma cells differing in multidrug resistance[J].Biochemistry(Mosc),2006;71(5):489-495.)、放射能治療に対する抵抗性に関連した物質として知られている(Park CC,Zhang HJ,Yao ES,Park CJ,Bissell MJ.Beta1 integrin inhibition dramatically enhances radiotherapy efficacy in human breast cancer xenografts.Cancer Res,2008;68(11):4398-405.)。また、ベバシズマブを使用する血管形成を抑制する癌治療に対する抵抗と関連があると知られている(Carbonell WS,DeLay M,Jahangiri A,Park CC,Aghi MK.β1 integrin targeting potentiates antiangiogenic therapy and inhibits the growth of bevacizumab-resistant glioblastoma.Cancer Res,2013;73(10):3145-54.)。べータ1インテグリンスライス細胞(Beta 1 integrin silenced cell)の場合、プラチン系列のシスプラチン及びEGFR TKI薬物であるゲフィチニブに対する敏感度が高くなったという報告がある(Morello V,Cabodi S,Sigismund S,Camacho-Leal MP,Repetto D,Volante M,Papotti M,Turco E,Defilippi P.β1 integrin controls EGFR signaling and tumorigenic properties of lung cancer cells.Oncogene 2011;30:4087-4096.)。
【0008】
したがって、既存の肺癌治療剤の抵抗性の解決という医学的未充足需要を解決するために、その原因物質を初期に無力化させるような新しい薬物の必要性が台頭しており、その薬物は既存の薬物治療剤と併用する使用法が必要な状況である。
【0009】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に関する理解を増進させるためのものに過ぎず、この技術分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に該当することを認めるものとして理解してはならない。
【0010】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明者らは、ベータ1インテグリンに特異的に結合して癌細胞自滅能が極大化した新規抗体を発掘しようと鋭意努力した。その結果、P5抗体の一部のアミノ酸配列を他のアミノ酸配列に置換して最適化することによって抗癌活性を極大化できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ベータ1インテグリンを抗原として認識し、それに特異的に結合する単一クローン抗体又はその断片を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記単一クローン抗体又はその断片を含む多重特異抗体(multispecific antibody)又は抗体-薬物接合体(Antibody-drug conjugate,ADC)を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記単一クローン抗体又はその断片をコードする核酸分子を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記核酸分子を含むベクターを提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記ベクターを含む宿主細胞を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、前記単一クローン抗体、核酸分子又はベクターを含む組成物を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、前記単一クローン抗体又はその断片を処理する段階を含む、サンプル中に含まれたベータ1インテグリンの定量方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、前記単一クローン抗体又はその断片を含むベータ1インテグリン定量キットを提供することにある。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、ベータ1インテグリンの過発現による疾患の診断のための情報を提供する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってさらに明確になる。
【0021】
[課題を解決するための手段]
本発明の一態様によれば、本発明は、ベータ1インテグリン(beta 1 integrin)を抗原として認識してそれに特異的に結合する単一クローン抗体又はその断片を提供する。
【0022】
本発明者らは、ベータ1インテグリンに特異的に結合して信号伝達過程を阻害する新規抗体を発掘しようと鋭意努力した結果、既存抗体の一部のアミノ酸配列を他のアミノ酸配列に置換して最適化することによって、抗癌活性の極大化した新規抗体を発掘した。
【0023】
ベータ1インテグリンは、細胞外環境、特に、成長、分化、侵入及び悪性細胞の転移潜在力と関連した生化学的信号を伝達する物質として知られており、ベータ1インテグリンの異常発現は、腫瘍抑制及び進行に影響を及ぼす。また、ベータ1インテグリンの増加は、腫瘍細胞の生存を促進し、種々の腫瘍細胞類型において化学療法に耐性を付与すると知られている(Hodkinson PS,Elliott T,Wong WS,et al.ECM overrides DNA damage-induced cell cycle arrest and apoptosis in small-cell lung cancer cells through beta1 integrin-dependent activation of PI3-kinase[J].Cell Death Differ,2006;13(10):1776-1788.;Aoudjit F,Vuori K.Integrin signaling inhibits paclitaxel-induced apoptosis in breast cancer cells[J].Oncogene,2001;20(36):4995-5004.;Morozevich GE,Kozlova NI,Preobrazhenskaya ME,et al.The role of beta1 integrin subfamily in anchorage-dependent apoptosis of breast carcinoma cells differing in multidrug resistance[J].Biochemistry (Mosc),2006;71(5):489-495)。
【0024】
本明細書において、用語“抗体”とは、免疫グロブリン分子のいずれかの類型の抗体(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、又はIgY)でよく、いずれかの下位類型の抗体(例えば、ヒトにおいてIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4;及びマウスにおいてIgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3)でよい。免疫グロブリン(例えば、IgG1)は、様々なアロタイプ(allotype)が存在してよく、本明細書において用語“抗体”は、一般に知られたアイソタイプ(isotype)及びアロタイプ(allotype)を含む。また、本明細書において用語“抗体”は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4であるか、そのハイブリッド(hybrid)類型であってよい(例えば、IgG2及びIgG4のハイブリッド)。
【0025】
本明細書において用語“単一クローン抗体”又は“モノクローナル抗体”とは、特定エピトープに対する単一結合特異性(single binding specificity)及び親和度(affinity)を示す抗体を意味する。
【0026】
本明細書において前記単一クローン抗体は、その断片を含む意味で使われ、前記断片は、好ましくは、抗原結合断片(antigen binding fragment)を意味する。前記断片は、当業界に知られた様々な方法を用いて製造可能である。例えば、パパイン(Fab断片の生産)又はペプシン(F(ab’)2)のような酵素を用いて免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断(proteolytic cleavage)により、Fab及びF(ab’)2断片を製造することができる。
【0027】
本明細書において、用語“断片”は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv(単一鎖抗体、single-chain variable fragment)、又はモノマーのVH又はVLドメインを含むsdAbでよく、前記断片については当業界によく知られている。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記単一クローン抗体又はその断片は、単一鎖抗体(single-chain variable fragment,scFv)である。
【0029】
本発明の単一クローン抗体又はその断片は、好ましくは、配列目録第3配列の重鎖可変領域(heavy chain variable region,VH)及び/又は配列目録第4配列の軽鎖可変領域(light chain variable region,VL)を含むことができる。
【0030】
VHドメイン、又は1つ又はそれ以上のCDRは、重鎖(heavy chain)を形成するために定常ドメインに連結されてよい。また、VLドメイン、又は1つ又はそれ以上のCDRは、軽鎖(light chain)を形成するために定常ドメインに連結されてよい。全長(full length)重鎖及び全長軽鎖が結合して全長抗体を構成する。
【0031】
本発明の他の様態によれば、本発明は、前記単一クローン抗体又はその断片を含む多重特異抗体(multispecific antibody)又は抗体-薬物接合体(Antibody-drug conjugate,ADC)を提供する。
【0032】
多重特異抗体(multispecific antibody)は、二重特異抗体(bispecific antibody)及び三重特異抗体(trispecific antibody)を含む2個以上の抗原を標的とする抗体又はその断片を意味する。例えば、二重特異抗体は、抗体の2個のアーム(arm)のうち、一つのアーム(arm)は、本発明に係るベータ1インテグリン(beta 1 integrin)に対する抗体又はその抗原結合断片を含み、他のアーム(arm)は、ベータ1インテグリン以外の抗原を含む形態を意味する。
【0033】
抗体-薬物接合体(Antibody-drug conjugate,ADC)は、前記抗体又はその断片と薬物との結合体を意味し、ターゲット細胞に薬物を伝達するまでに薬物が抗体に安定的に結合していなければならず、ターゲットに伝達された後、薬物は抗体から遊離していなければならない。本発明において、前記抗体又はその断片と薬物(抗癌剤など)とが結合(例えば、共有結合、ペプチド結合など)し、接合体(conjugate)又は融合タンパク質(薬物がタンパク質である場合)の形態で使用されてよい。
【0034】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記単一クローン抗体又はその断片をコードする核酸分子、前記核酸分子を含むベクター又は前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0035】
本発明の核酸分子は、単離したもの又は組み換えられたものであってよく、単一鎖及び二重鎖形態のDNA及びRNAの他、対応する相補性配列も含まれる。“単離した核酸”は、天然生成源泉から単離した核酸の場合、核酸が単離した個体のゲノムに存在する周辺遺伝配列から分離された核酸である。鋳型から酵素的に又は化学的に合成された核酸、例えば、PCR産物、cDNA分子、又はオリゴヌクレオチドの場合、このような手順から生成された核酸が単離した核酸分子と理解できる。単離した核酸分子は、別個断片の形態又はより大きい核酸構築物の成分としての核酸分子を意味する。核酸は、他の核酸配列と機能的関係で配置されるときに“作動可能に連結”される。例えば、前配列又は分泌リーダ(leader)のDNAはポリペプチドが分泌される前の形態である前タンパク質(preprotein)として発現するとき、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され、プロモーター又はエンハンサーはポリペプチド配列の転写に影響を与えるとき、コーディング配列に作動可能に連結され、又はリボソーム結合部位は翻訳を促進するように配置されるときにコーディング配列に作動可能に連結される。一般に、“作動可能に連結された”とは、連結されるDNA配列が隣接して位置することを意味し、分泌リーダの場合、隣接して同一リーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは隣接して位置する必要はない。連結は、便利な制限酵素部位においてライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを通常の方法によって使用する。
【0036】
本明細書において用語“ベクター”とは、核酸配列を複製できる細胞への導入のために核酸配列を挿入できる伝達体を意味する。核酸配列は、外生(exogenous)又は異種(heterologous)であってよい。ベクターとしては、プラスミド、コスミド及びウイルス(例えば、バクテリオファージ)を挙げることができるが、これに制限されない。当業者は、標準的な組換え技術によってベクターを構築することができる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及びAusubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc,NY,1994など)。
【0037】
本明細書において用語“発現ベクター”とは、転写される遺伝子産物のうち少なくとも一部分をコードする核酸配列を含むベクターを意味する。一部の場合には、その後、RNA分子がタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドに翻訳される。発現ベクターには様々な調節配列を含むことができる。転写及び翻訳を調節する調節配列と共に、ベクター及び発現ベクターには、さらに他の機能も提供する核酸配列が含まれてもよい。
【0038】
本明細書において、用語“宿主細胞”とは、真核生物及び原核生物を含み、前記ベクターを複製できるか、ベクターによってコードされる遺伝子を発現できる任意の形質転換可能な生物を意味する。宿主細胞は、前記ベクターによって形質感染(transfected)又は形質転換(transformed)されてよく、これは、外生の核酸分子が宿主細胞内に伝達されたり導入される過程を意味する。
【0039】
本発明の宿主細胞は、好ましくは、細菌(bacteria)細胞、イースト(yeast)、動物又はヒト細胞(CHO細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、BHK-21細胞、COS7細胞、COP5細胞、A549細胞、NIH3T3細胞など)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記単一クローン抗体又はその断片、前記核酸分子又は前記ベクターを含む組成物を提供する。
【0041】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、癌の予防又は治療用薬剤学的組成物である。
【0042】
本発明の薬剤学的組成物は、(a)前記抗体又はその断片、前記核酸分子又は前記核酸分子を含むベクター;及び、(b)薬剤学的に許容される担体を含むことができる。
【0043】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記薬剤学的組成物を投与する段階を含む癌の予防又は治療方法を提供する。
【0044】
本発明が予防又は治療しようとする癌の種類は制限されず、好ましくは、白血病(leukemias)及び急性リンパ球白血病(acute lymphocytic leukemia)、急性非リンパ球白血病(acute nonlymphocytic leukemias)、慢性リンパ球白血病(chronic lymphocytic leukemia)、慢性骨髄白血病(chronic myelogenous leukemia)、ホジキン病(Hodgkin’s Disease)、非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin’s lymphomas)及び多発骨髄腫(multiple myeloma)などのようなリンパ腫(lymphomas)、脳腫瘍(brain tumors)、膠芽細胞腫(glioblastoma)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)、横紋筋肉腫(Rhabdomyosarcoma)、網膜芽細胞腫(retinoblastoma)、ウィルムス腫瘍(Wilms Tumor)、骨腫瘍(bone tumors)及び軟部組織肉腫(soft-tissue sarcomas)などのような小児固形腫瘍(childhood solid tumors)、肺癌(lung cancer)、乳癌(breast cancer)、前立腺癌(prostate cancer)、尿路癌(urinary cancers)、子宮癌(uterine cancers)、口腔癌(oral cancers)、膵癌(pancreatic cancer)、黒色腫(melanoma)及びその他皮膚癌(skin cancers)、胃癌(stomach cancer)、大腸癌(colon cancer)、卵巣癌(ovarian cancer)、脳腫瘍(brain tumors)、肝癌(liver cancer)、喉頭癌(laryngeal cancer)、甲状腺癌(thyroid cancer)、食道癌(esophageal cancer)及び精巣癌(testicular cancer)などのような成人における通常の固形腫瘍(common solid tumors)を含め、多数の癌を治療するように投与されてよく、より好ましくは、ベータ1インテグリンを過発現する癌細胞による癌の治療のために投与されてよい。
【0045】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、これらの成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などもさらに含むことができる。好適な薬剤学的に許容される担体及び製剤がRemington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0046】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、好ましくは、非経口投与であり、例えば、静脈内注入、局所注入及び腹腔注入などで投与できる。
【0047】
本発明の薬剤学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、通常の熟練した医師は、所望の治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、0.0001~100mg/kgである。
【0048】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量の形態で製造されたり、或いは多回容量容器内に内入させて製造されてよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0049】
本発明の薬剤学的組成物は、単独の療法で用いられてもよく、他の通常の細胞毒性化学療法(cytotoxic chemtherapy)又は放射療法と共に用いられてもよいが、このような併用療法を実施する場合には、より効果的に癌治療ができる。特に、ベータ1インテグリンは、様々な癌において細胞毒性化学療法に対する耐性の原因になると知られているので(Park CC et al.Cancer Res,2006,66(3):1526-35)、前記細胞毒性化学療法に耐性ができた癌の治療においてより有意な結果を得ることができる。
【0050】
本発明の組成物と共に使用されてよい細胞毒性化学療法剤は、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、アファチニブ(afatinib)、ラパチニブ(lapatinib)、ダコミチニブ(dacomitinib)、カネルチニブ(canertinib)、ネラチニブ(neratinib)、イコチニブ(icotinib)、ペリチニブ(Pelitinib)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、プロカルバジン(procarbazine)、メクロレタミン(mechlorethamine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、メルファラン(melphalan)、クロラムブシル(chlorambucil)、ブスルファン(busulfan)、ニトロソウレア(nitrosourea)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ブレオマイシン(bleomycin)、プリカマイシン(plicomycin)、マイトマイシン(mitomycin)、エトポシド(etoposide)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキソール(taxol)、トランスプラチン(transplatinum)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、ビンクリスチン(vincristin)、ビンブラスチン(vinblastin)及びメトトレキサート(methotrexate)などを含む。
【0051】
本発明の組成物と共に利用可能な放射療法は、X線照射及びγ線照射などである。
【0052】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、単一クローン抗体又はその断片を処理する段階を含む、サンプル中に含まれたベータ1インテグリン(beta 1 integrin)の定量方法を提供する。
【0053】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記単一クローン抗体又はその断片を含むベータ1インテグリン(beta1integrin)定量キットを提供する。
【0054】
本発明の単一クローン抗体又はその断片は、ベータ1インテグリンに特異的に結合するため、これを利用すれば、サンプル中に含まれたベータ1インテグリンの量が正確に測定可能である。
【0055】
本発明の定量方法及び/又はキットによれば、抗原抗体結合反応を用いて前記抗体に対する抗原を分析することによってベータ1インテグリンの量を定量することができ、前記抗原抗体結合反応は、通常のELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)、RIA(Radioimmnoassay)、サンドウィッチ測定法(Sandwich assay)、ポリアクリルアミドゲル上のウェスタンブロット(Western Blot)、免疫ブロット分析(Immunoblot assay)及び免疫組織化学染色方法(Immnohistochemical staining)からなる群から選ばれるものを用いることが好ましいが、これに制限されない。
【0056】
抗原-抗体結合反応のための固定体としては、ニトロセルロース膜、PVDF膜、ポリビニル(Polyvinyl)樹脂又はポリスチレン(Polystyrene)樹脂で合成されたウェルプレート(Well plate)、及びガラスでできたスライドガラス(Slide glass)からなる群から選ばれるものを用いることができるが、これに制限されない。
【0057】
前記2次抗体は、発色反応をする通常の発色剤で標識されることが好ましく、HRP(Horseradish peroxidase)、アルカリ性リン酸分解酵素(Alkaline phosphatase)、コロイドゴールド(Coloid gold)、FITC(Poly L-lysine-fluorescein isothiocyanate)、RITC(Rhodamine-B-isothiocyanate)などの蛍光物質(Fluorescein)及び色素(Dye)からなる群から選ばれるいずれか一つの標識体を用いることができる。発色を誘導する基質は、発色反応をする標識体に応じて使用することが好ましく、TMB(3,3’,5,5’-tetramethyl bezidine)、ABTS[2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid)]及びOPD(ophenylenediamine)からなる群から選ばれるいずれか一つを使用することが好ましいが、これに制限されない。
【0058】
本発明のさらに他の態様によれば、下記の段階を含むベータ1インテグリン(beta1integrin)の過発現による疾患の診断のための情報を提供する方法を提供する:
(a)被検者から体外に分離されたサンプルを取得する段階;
(b)前記単一クローン抗体又はその断片を前記サンプルに処理する段階;及び
(c)前記被検者のサンプル中に含まれたLPA2の発現量が正常群サンプル中に含まれたベータ1インテグリンの発現量よりも高いか否か確認する段階。
【0059】
前記ベータ1インテグリンの過発現による疾患の診断のための情報を提供する方法に関する説明のうち、上述した本発明の定量方法及び/又はキットに関する説明と同じ部分はその部分を参考するものとする。
【0060】
ベータ1インテグリンの変形された発現は、腫瘍抑制及び進行に影響を及ぼし、ベータ1インテグリンの増加は、腫瘍細胞の生存を促進し、種々の腫瘍細胞類型において化学療法に耐性を付与するため(Hodkinson PS,Elliott T,Wong WS,et al.ECM overrides DNA damage-induced cell cycle arrest and apoptosis in small-cell lung cancer cells through beta1 integrin-dependent activation of PI3-kinase[J].Cell Death Differ,2006;13(10):1776-1788.;Aoudjit F,Vuori K.Integrin signaling inhibits paclitaxel-induced apoptosis in breast cancer cells[J].Oncogene,2001;20(36):4995-5004.;Morozevich GE,Kozlova NI,Preobrazhenskaya ME,et al.The role of beta1 integrin subfamily in anchorage-dependent apoptosis of breast carcinoma cells differing in multidrug resistance[J].Biochemistry (Mosc),2006;71(5):489-495.)、前記ベータ1インテグリンの発現量を正常人のそれと比較することによって、ベータ1インテグリンの過発現による疾患の診断のための情報を提供することができる。
【0061】
本発明の好ましい具現例によれば、前記ベータ1インテグリンの過発現による疾患は、癌である。
【0062】
[発明の効果]
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである:
(i)本発明は、ベータ1インテグリンを抗原として認識してそれに特異的に結合する単一クローン抗体又はその断片を提供する。
【0063】
(ii)また、本発明は、前記単一クローン抗体又はその断片を含む癌の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0064】
(iii)本発明の単一クローン抗体は、癌細胞の増殖及び血管新生を抑制し、細胞自滅死を効果的に誘導するので、癌の予防又は治療に有用に用いることができる。
【0065】
[図面の簡単な説明]
図1]本発明のGP5単クローン抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0066】
図2]本発明のGP5単クローン抗体の純度(図2A)及び均質性(図2B)を確認した結果である。
【0067】
図3]本発明のGP5単クローン抗体の組換えヒトベータ1インテグリンに対する結合力(図3A)、組換えマウスベータ1インテグリンに対する結合力(図3B)及びベータ1インテグリンに対する特異度(図3C)を示す結果である。
【0068】
図4]非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116の表面からベータ1インテグリンの発現を確認した結果である。
【0069】
図5]本発明のGP5単クローン抗体の細胞自滅能(図5A)、細胞成長抑制能(図5B)及びGP5単クローン抗体が抑制する信号経路(signal pathway)を示す結果である。
【0070】
図6]本発明のGP5単クローン抗体が癌細胞表面のベータ1インテグリンの内在化誘導を確認した結果である(図6A:120分;図6B:A549細胞株において時間帯別確認結果)。
【0071】
図7]ゲフィチニブ耐性非小細胞肺癌細胞株であるPC9GRにおいて本発明のGP5単クローン抗体がゲフィチニブと併用されたとき、ゲフィチニブの反応性を、親細胞であるPC9に現れるレベルに向上させる結果である(図7A:PC9とPC9GRの表面からベータ1インテグリンの発現を確認した結果;図7B:PC9とPC9GRにおいてゲフィチニブとGP5単クローン抗体が併用された時に誘導される細胞自滅能の程度を示す結果)。
【0072】
図8]非小細胞肺癌細胞株が移植されたマウスモデルにおいて本発明のGP5抗体の抗癌活性を示す結果である(図8A:腫瘍容積(tumor volume)比較;図8B:腫瘍サイズ(tumor size)比較)。
【0073】
図9]本発明のGP5抗体の腫瘍細胞増殖抑制能(図9A)、腫瘍内新生血管形成抑制能(図9B)及び腫瘍の細胞自滅死誘導能(図9C)を測定した結果である。
【0074】
[発明を実施するための形態]
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0075】
〔実施例〕
<実施例1>P5の癌細胞殺傷能改良及びヒト化
本発明者らは、P5(Kim MY et al.J Biomed Res,2016,30(3):217-24)に比べて癌細胞殺傷能の増加したヒト化抗体を開発するために次のような実験を行った。
【0076】
P5の改良のために、重鎖可変領域の4個のFR(HFR1、HFR2、HFR3、HFR4)と軽鎖可変領域の4個のFR(LFR1、LFR2、LFR3、LFR4)に、次のような方式で突然変異を導入した:
1)具体的に、HFR1はIGHV7-4-1*03、HFR2はIGHV4-30-4*06、HFR3はIGHV1-69-2*01、HFR4はIGHJ6*01の配列を利用し、アミノ酸の物理化学的性質の類似性又は非類似性を考慮して親抗体と異なるアミノ酸を置換した。このような方法で置換されたアミノ酸は、IGHV7-4-1*03ではI20V、T25S、S30T;IGHV4-30-4*06ではR40H、H43K;IGHV1-69-2*01ではK66R、A67V、F69I、S75T、N76D、S79Y、Q81E、T83R、S87T;及びIGHJ6*01ではS108Tであった。このように置換された重鎖可変領域をさらにIGHV1-2*02を用いてアラインメントを行った後、最も性能に優れると予想される突然変異を選別した。
【0077】
2)また、LFR1はIGKV2-18*01、LFR2はIGKV2-18*01、LFR3はIGKV2-28*01、LFR4はIGKJ2*01を用いてアミノ酸を次のように置換した:IGKV2-18*01ではA8P、V11L、T14N、S18P、V19A;IGKV2-18*01ではR39K;IGKV2-28*01では存在しなく;IGKJ2*01ではL106I。このように置換された軽鎖可変領域をさらにIGKV2D-29*02を用いてアラインメントを行った後、最も性能に優れると予想される突然変異を選別した。
【0078】
3)上記のような過程により選別された突然変異位置は、次の通りである:
1.重鎖可変領域:A9S、I20V、T25S、S30T、K66R、S75T、N76D、Q81E
2.軽鎖可変領域:V11L、F36Y、R39K
(抗体ドメインのアミノ酸残基番号は、当業界において通常用いられるカバットナンバリングシステム(Kabat EU numbering system,Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,5th Ed.,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,1991では同一のEU指数番号に従う。)によってナンバリングした。)
ヒト化重鎖可変領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3)と結合し、ヒト化軽鎖可変領域は、ヒト軽鎖定常領域(Ckappa)と結合して最終的にヒト化を完了した。
【0079】
最終的にヒト化された抗体をGP5と命名し、その塩基配列を表1に、置換された塩基配列に関する内容は図1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
P5及びGP5重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列
前記表で、太字はアミノ酸置換位置を表す(カバットナンバリングシステムに従うA9S、I20V、T25S、S30T、K66R、S75T、N76D、Q81E、V11L、F36Y、R39K)
<実施例2>GP5クローンの完全抗体転換及び発現/精製
実施例1で開発したGP5可変領域のDNAをscFv形態に合成し(Cosmogenetech、韓国)、PCR方法によって完全抗体(full IgG)に転換した。まず、scFvを含むpUCベクター(Cosmogenetech、韓国)から重鎖及び軽鎖の可変領域と定常領域の切片を、下記表2のV、C及びV、Cプライマー組合せを用いてPCRで得た。得られた抗体の可変領域と定常領域を使用し、下記表2のHC及びLCプライマー組合せを用いてPCRを行ってGP5の重鎖及び軽鎖を確保した。重鎖は、EcoRIとNotI(New England Biolab、英国)酵素で処理し、同様に同一の制限酵素で処理された動物細胞発現用ベクターであるpCMVベクター(Thermo Fisher SCIENTIFIC、米国)にライゲーションした。また、軽鎖は、XbaI(New England Biolab、英国)酵素で処理し、同様に同一の制限酵素でpCMVベクターにライゲーションした。ライゲーションされたプラスミドは、DH5α大腸菌コンピテントセル(competent cell)(New England Biolab、英国)に熱衝撃を加えて形質転換し、コロニーを得た後、大量培養してプラスミドを得た。
【0082】
【表2】
【0083】
GP5完全抗体クローニング時に用いられるプライマーリスト
完全抗体に転換させた重鎖と軽鎖のそれぞれのプラスミドを、PEI(Polyethylenimine)(Polysciences、米国)と150mM NaClを用いてHEK293F細胞(Invitrogen、米国)に形質感染(transfection)させ、フリースタイル293発現培地(Freestyle 293 expression medium)(Invitrogen、米国)で37℃の温度、8%COそして55%湿度の条件で7日間培養した。発現した細胞培養液を4,000rpm、10分間遠心分離した後、上澄液を取って0.22μmフィルターで濾過した。濾過された上澄液は4℃でプロテインA(GenScript、中国)レジン1mlに結合誘導した。結合したレジンは、10cv(column volume)のPBS溶液で洗浄後に、100mMグリシン-HCl(pH 2.7)溶液を溶出した後、1Mトリス-HCl(pH 9.0)で中和させた。pH 7.2~7.4のPBSにバッファ交換(buffer change)を行った後、SDS-PAGEにより、精製された抗体の軽鎖及び重鎖のサイズ及び純度を確認し、その結果を図2Aに示した。精製されたGP5単クローン抗体は、軽鎖及び重鎖の理論的計算値と一致する分子量及び高い純度が確認できた。また、SEC(Size Exclusion Chromatography)(GE Healthcare、米国)により、精製された抗体の均質性(homogeneity)を確認した結果、95%の均質性を示し、その結果を図2Bに示した。
【0084】
<実施例3>GP5単クローン抗体のべータ1インテグリン(beta 1 integrin)に対する結合力分析
前記実施例2で製作したGP5単クローン抗体のべータ1インテグリンに対する結合力を直接ELISA(direct ELISA)で確認した。GP5単クローン抗体がヒト化抗体で、P5がマウス抗体であることから、直接の結合力比較のためにペロキシダーゼラベリングキットNH(Peroxidase Labeling Kit-NH)(Dojindo、日本)を用いて各抗体にHRPを標識した。直接ELISAは、50μlのPBSに1μg/mlで組換えヒトベータ1インテグリン(Sino biological、中国)及び組換えマウスベータ1インテグリン(MyBioSource、米国)を希釈して96ウェル免疫プレート(Corning、米国)に入れ、4℃で一晩保管して吸着させた。3%ウシ血清アルブミン(Milipore、米国)が含まれた緩衝溶液で37℃で1時間反応させた後、逐次濃度(0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、100、300、1000nM)に希釈したそれぞれのHRPが標識された抗体を、ウェル当たり50μlずつ処理した。抗原に抗体が結合し得るように37℃で2時間反応させた後、0.5%ツイン20(Amresco、米国)が含まれた緩衝溶液で3回洗浄した後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)(Life technologies、米国)を50μlずつ各ウェルに分注して30分間発色させた。分光光度計(Biotek、米国)を用いて450nmで吸光度を測定し、その結果を図3A及び図3Bに示した。
【0085】
その結果、本発明によって開発されたGP5単クローン抗体は、組換えヒトベータ1インテグリン及び組換えマウスベータ1インテグリンに対してP5と同等レベルの優れた結合力を示すことが確認できた(図3A及び図3B)。
【0086】
また、GP5単クローン抗体のべータ1インテグリンに対する特異性を確認するために、様々なインテグリンに対する結合力を直接ELISAで確認した。50μlのPBSに1μg/mlで組換えヒトαVβ1インテグリン(R&D Systems、米国)、αVβ3インテグリン(R&D Systems、米国)、αVβ5(R&D Systems、米国)、αVβ6(R&D Systems、米国)、αVβ8(R&D Systems、米国)、α5β1(R&D Systems、米国)及びα2bβ3(R&D Systems、米国)をそれぞれ希釈して96ウェル免疫プレート(Corning、米国)に入れ、4℃で一晩保管して吸着させた。3%ウシ血清アルブミン(Milipore、米国)が含まれた緩衝溶液で37℃で1時間反応させた後、逐次濃度(0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、100、300、1000nM)に希釈したGP5単クローン抗体を、ウェル当たり50μlずつ処理した。抗原に抗体が結合し得るように37℃で2時間反応させ、0.5%ツイン20(Amresco、米国)が含まれた緩衝溶液で3回洗浄した後、PBSで1:3000の比率に希釈したHRPが標識された抗ヒトFc IgGをウェル当たり50μlずつ二次抗体で処理した。37℃で1時間反応させた後、0.5%ツイン20(Amresco、米国)が含まれた緩衝溶液で3回洗浄した後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)(Life technologies、米国)を50μlずつ各ウェルに分注し、30分間発色させた。分光光度計(Biotek、米国)を用いて450nmで吸光度を測定し、その結果を図3Cに示した。
【0087】
その結果、本発明によって開発されたGP5単クローン抗体は、インテグリンのα鎖とは関係なくβ鎖がベータ1であるインテグリンにのみ特異的に結合した(図3C)。
【0088】
以上のように、前記方法で改良したGP5単クローン抗体は、通常の抗体ヒト化時に発生する結合力低下が見られず、べータ1インテグリンに対する特異性を示した。したがって、親抗体と同様に、非小細胞肺癌を含む様々な癌治療用抗体の性能が期待できる。
【0089】
<実施例4>非小細胞肺癌を含む様々な癌細胞株においてべータ1インテグリンの発現確認
本発明者らは、非小細胞肺癌を含む様々な癌細胞株においてべータ1インテグリンの発現を確認するために下記のように実験を行った。
【0090】
サンプル当たり5×10個の非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116を、10μg/ml濃度のGP5単クローン抗体が含有又は非含有されたPBSで懸濁し、4℃で1時間培養した。培養液を3,500rpmで5分間遠心分離後に、PBS200μlで洗浄し、3,000rpmで5分間さらに遠心分離した。PBSを用いて1:200の比率に希釈したヤギ抗ヒトIgG抗体、Alexa Fluor 488(ThermoFisher Scientific、米国)を細胞に処理し、遮光した状態で4℃で30分間培養した。蛍光染色された細胞をPBSで洗浄後にPBS500μlで懸濁し、FACS分析装備であるAttune NxT(ThermoFisher Scientific、米国)を用いて分析し、その結果を図4に示した。
【0091】
FACS評価の結果、非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116の細胞の表面にべータ1インテグリンが過発現していることが確認できた(図4)。
【0092】
<実施例5>GP5単クローン抗体の癌細胞株において細胞自滅死、細胞成長抑制能及び抗癌効果機序分析
本発明者らは、P5と本発明のGP5単クローン抗体が、べータ1インテグリンが発現している非小細胞肺癌を含む様々な癌細胞株において細胞自滅死を誘発できるかどうかを調べるために下記のように実験を行った。
【0093】
まず、実験前日に24ウェルプレートに10%ウシ血清(GIBCO、米国)が含まれたRPMI培地(WELGENE、韓国)に、非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116をウェル当たり5×10個ずつ1mlとなるように分注し、37℃、5%CO条件で一晩培養した。
【0094】
翌日、培養液を取り除き、RPMI培地(WELGENE、韓国)にP5及びGP5単クローン抗体をそれぞれ10又は20μg/mlとなるように処理した後、48時間37℃、5%CO条件で反応させた。陰性対照群には新鮮なRPMI培地(WELGENE、韓国)のみを満たした。反応が終わるとPBSで洗浄し、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco、米国)で細胞をはがした後、EPチューブに入れてPBSでさらに洗浄した。その後、3,500rpmで5分間遠心分離し、集められた細胞ペレットを、7-AADを用いるFITC Annexin Vアポトーシス検出キット(FITC Annexin V Apoptosis Detection Kit with 7-AAD)(BioLegend、米国)により、流細胞分析装備であるAttune NxT(ThermoFisher Scientific、米国)で流細胞分析を行い、その結果を図5に示した。
【0095】
その結果、本発明のGP5単クローン抗体はP5に比べて優れた細胞自滅能があることが確認でき、非小細胞肺癌細胞株A549では濃度依存的に細胞自滅能効果を示した(図5A)。
【0096】
また、本発明者らは、本発明のGP5単クローン抗体がべータ1インテグリンが発現している非小細胞肺癌を含む様々な癌細胞株において細胞成長を抑制できるかどうかを調べるために下記のように実験を行った。
【0097】
まず、実験前日に、12ウェルプレートに、10%ウシ血清(GIBCO、米国)が含まれたRPMI培地(WELGENE、韓国)で非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116をウェル当たり1×10個ずつ1mlとなるように分注し、37℃、5%CO条件で一晩培養した。
【0098】
翌日、培養液を取り除き、RPMI培地(WELGENE、韓国)にGP5単クローン抗体をそれぞれ10、20又は50μg/mlとなるように処理した後、48時間、37℃、5%CO条件で反応させた。陰性対照群には新鮮なRPMI培地(WELGENE、韓国)のみを満たした。反応が終わると培養液を取り除き、PBSで洗浄後に、4%パラホルムアルデヒド(Biosesang、韓国)をウェル当たり200μl処理し、4℃で10分間反応して細胞を固定した。固定された細胞をPBSで洗浄し、0.5%クリスタルバイオレット(Sigma、米国)をウェル当たり300μl処理した後、オービタルシェーカーで30分間反応した。その後、3次蒸留水を用いて洗浄液に紫色が出ない時まで洗浄した後、乾燥させた。乾燥したプレートに1%ドデシル硫酸ナトリウム(amresco、米国)をウェル当たり300μl処理して細胞を溶かした。分光光度計(Biotek、米国)を用いて570nmで吸光度を測定し、その結果を図5Bに示した。
【0099】
その結果、本発明のGP5単クローン抗体は、優れた細胞成長抑制能があることが確認でき、非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116において濃度依存的に細胞成長抑制能効果を示した(図5B)。
【0100】
そして、本発明者らは、GP5単クローン抗体の抗癌機序を確認するために、下記のような実験を行った。
【0101】
べータ1インテグリンは、癌細胞の生存及び成長と関係するAkt経路及びERK経路を活性化させると知られているので(Blandin AF,Renner G,Lehmann M,et al.β1 integrin as therapeutic targets to disrupt hallmarks of cancer.Front Pharmacol,2015;6:279.)、べータ1インテグリンが誘導する信号経路に対するGP5単クローン抗体の抑制能を免疫ブロット分析で確認した。まず、GP5単クローン抗体20μg/mlが48時間処理された又は非処理されたA549細胞ペレットを確保した後、文献(Lee MS,Lee JC,Choi CY et al.Production and characterization of monoclonal antibody to botulinum neurotoxin type B light chain by phage display.Hybridoma(Larchmt)、2008;27(1):18-24)に記載された過程によってウェスタンブロットを行った。このとき、一次抗体として、AKT、pAKT、ERK、pERK(1:1000希釈;Cell Signaling Technology、米国)及びβ-アクチン(1:3000希釈;Santa Cruz Biotechnology)抗体を使用し、二次抗体として、HRPが標識された抗ウサギIgG(1:5000希釈;Abcam、英国)又はHRPが標識された抗マウスIgG(1:5000希釈;Abcam、英国)を使用した。前記ブロットを、増強した化学発光システム(ThermoFisher Scientific、米国)を用いてメーカーの指針に従って視角化し、その結果を図5Cに示した。図5Cに見られるように、GP5単クローン抗体で処理されたA549細胞においてpAKT及びpERKの発現が顕著に減少した。
【0102】
その結果、本発明のGP5単クローン抗体は、べータ1インテグリンが活性化させる癌細胞の生存及び成長と関係するAKT経路及びERK経路を抑制することによって細胞自滅能効果及び細胞成長抑制能効果を奏することができる。
【0103】
したがって、上記の結果から、本発明のGP5単クローン抗体は、非小細胞肺癌を含む様々な癌に対して治療効果があることが分かった。GP5単クローン抗体の細胞自滅能効果がP5に比べて優れている結果は、効率的な改良がなされたことを意味する。
【0104】
<実施例6>GP5単クローン抗体の癌細胞におけるべータ1インテグリンの内在化(internalization)分析
本発明者らは、P5と本発明のGP5単クローン抗体が、非小細胞肺癌を含む様々な癌細胞株においてべータ1インテグリンの内在化を誘導する効果を確認するために、下記のような実験を行った。0.05%トリプシン-EDTA(Gibco、米国)を処理してT75フラスコ(SPL、韓国)からはがした非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116を5×10個ずつEPチューブに入れて3500rpmで5分間遠心分離後に、PBSで洗浄した。その後、PBSを用いてP5又はGP5単クローン抗体を10μg/mlとなるように希釈した後、100μlを処理した。4℃で1時間反応させた後、37℃で非小細胞肺癌細胞株A549は0、40、60、80、90、120及び150分ずつそれぞれ反応を持続し、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116は、120分間反応を持続した。反応が終わった後、PBSで洗浄し、P5が処理されたEPチューブには、FITCが標識され抗マウス抗体(Sigma、米国)を1:100の比率にPBSで希釈して100μl処理し、GP5単クローン抗体が処理されたEPチューブには、FITCが標識された抗ヒト抗体(Life technologies、米国)を1:200の比率にPBSで希釈して100ulを処理した。30分間遮光して4℃で反応後に、PBSで洗浄し、流細胞分析装備であるAttune NxT(ThermoFisher Scientific、米国)で流細胞分析を行い、その結果を図6に示した。図6Aは、37℃で非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116を120分反応させた結果であり、図6Bは、非小細胞肺癌細胞株A549を37℃で反応させた時間帯別結果をグラフで示したものである。その結果、P5が処理されたA549、MDA-MB-231及びHCT116細胞に比べて、GP5単クローン抗体が処理されたA549、MDA-MB-231及びHCT116細胞の表面においてべータ1インテグリンが大きく減少した(図6)。
【0105】
これは、べータ1インテグリンに対するGP5単クローン抗体の結合が細胞膜のべータ1インテグリン内在化を誘導することを意味する。また、このような結果は、GP5単クローン抗体が、非小細胞肺癌細胞の他にべータ1インテグリンが過発現した細胞にも結合して内在化できることを提示する。P5と比較してGP5単クローン抗体が示す優れた抗癌活性は、このような内在化効果によるものと説明でき、これは本発明による改良の効果である。
【0106】
<実施例7>GP5単クローン抗体のゲフィチニブ耐性細胞株において細胞自滅死分析
べータ1インテグリンが様々な癌において細胞毒性化学療法(cytotoxic chemtherapy)に対する耐性の原因になると知られているので(Park CC et al.Cancer Res,2006,66(3):1526-35)、本発明者らは、細胞毒性化学療法に使用されるゲフィチニブに対する耐性が現れた非小細胞肺癌細胞株においてGP5単クローン抗体の単独又はゲフィチニブとの併用使用時に細胞自滅死誘導の程度を確認するために下記のように実験を行った。
【0107】
まず、ゲフィチニブ耐性非小細胞肺癌細胞株PC9GRと親細胞である非小細胞肺癌細胞株PC9のべータ1インテグリンの発現を確認するために、実施例4のような方法で実験を行った。
【0108】
FACS評価の結果、親細胞である非小細胞肺癌細胞株PC9に比べて、ゲフィチニブ耐性非小細胞肺癌細胞株PC9GRにおいて、GP5単クローン抗体がべータ1インテグリンに結合して現れるピークが右にさらに移動した。このことから、親細胞であるPC9に比べてPC9GRにおいてべータ1インテグリンがより多く発現することが確認できた(図7A)。
【0109】
PC9細胞株とPC9GR細胞株においてGP5単クローン抗体単独又はゲフィチニブとの併用使用時に細胞自滅死誘導能を確認するために、実験前日に、12ウェルプレートに10%ウシ血清(GIBCO、米国)が含まれたRPMI培地(WELGENE、韓国)にPC9細胞株及びPC9GR細胞株をそれぞれウェル当たり1×10個ずつ1mlとなるように分注し、37℃5%CO条件で一晩培養した。
【0110】
翌日、培養液を取り除き、RPMI培地(WELGENE、韓国)にゲフィチニブ(Sigma、米国)及びGP5単クローン抗体をそれぞれ2又は10μg/mlとなるように処理した後、24時間、37℃、5%CO条件で反応させた。陰性対照群には新鮮なRPMI培地(WELGENE、韓国)のみを満たした。反応が終わるとPBSで洗浄し、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco、米国)で細胞をはがした後、EPチューブに入れ、PBSでさらに洗浄した。その後、3500rpmで5分間遠心分離し、集められた細胞ペレットを、7-AADを用いるFITC Annexin Vアポトーシス検出キット(BioLegend、米国)を用いて、流細胞分析装備であるAttune NxT(ThermoFisher Scientific、米国)で流細胞分析を行い、その結果を図7Bに示した。図7Bに見られるように、親細胞であるPC9においてゲフィチニブによる細胞自滅死が50%以上現れたが、PC9GRでは30%程度と示された。また、PC9GRでGP5単クローン抗体がゲフィチニブと併用される時、細胞自滅死が50%程度と示された。
【0111】
その結果、親細胞であるPC9に比べて、ゲフィチニブ耐性細胞株であるPC9GRにおいてゲフィチニブの反応性が低くなっていることが確認でき、ゲフィチニブとGP5単クローン抗体の併用時に、PC9GRで低くなったゲフィチニブに対する反応性が、PC9細胞株レベルへと回復することが確認できた(図7B)。
【0112】
このような結果は、本発明のGP5単クローン抗体が、抗癌剤耐性の原因となるべータ1インテグリンの遮断によって抗癌剤に対する耐性を抑制できることを意味する。
【0113】
<実施例8>非小細胞肺癌細胞株A549異種移植モデル(human A549 non-small cell lung cancer xenograft model)におけるGP5単クローン抗体抗癌活性分析
本発明者らは、P5と本発明のGP5単クローン抗体が、非小細胞肺癌細胞株の移植されたヌードマウスにおいて抗癌活性を示すか否かを調べるために下記のように実験を行った。
【0114】
非小細胞肺癌細胞株A549を1匹当たりに5×10個ずつ雌Balb/cヌードマウス(SLC、日本)の横腹皮下に接種した。1週当たりに2回ずつマウスの重さを測定し、‘幅×幅×長さ/2’の式を用いて腫瘍体積を計算した。癌細胞接種7日後に腫瘍体積が約80mmに達したとき、マウスを群当たりに6匹ずつ無作為抽出した。群当たりPBS(陰性対照群)、P5又はGP5単クローン抗体1mg/kg、シスプラチン(Sigma、米国)2.5mg/kgの容量でマウスの腹腔に週2回、5週間投与した。併用処理群は、P5又はGP5単クローン抗体1mg/kgとシスプラチン(Sigma、米国)2.5mg/kgをマウスの腹腔に週に2回、5週間投与した。その後、3週間は抗体及びシスプラチン投与無しで週に2回ずつ腫瘍のサイズ及び体重を測定した。各薬物投与による腫瘍体積を算出し、その結果を図8Aに示した(矢印(↓):投与時点、*:陰性対照群とのスチューデントのt検定(student’s t test)による比較の結果、P<0.05、***:陰性対照群とのスチューデントのt検定による比較の結果、P<0.001)。また、実施例9のためにマウスを犠牲死させて摘出した癌組織写真を、図8Bに示した。
【0115】
図8A及び図8Bに示すように、本発明のGP5単クローン抗体は、単独投与時にP5に比べて優れた抗癌活性があることが確認でき、既存の非小細胞肺癌の治療剤として知られているシスプラチンに比べても優れた抗癌活性を示した。また、GP5単クローン抗体とシスプラチンを併用投与したとき、単独投与したときに比べて抗癌活性に優れることが確認でき、薬物投与が中断された後にも腫瘍の体積が増加しなかった。したがって、GP5単クローン抗体は、単独投与又は併用投与のいずれにおいても、P5及びシスプラチン単独投与に比べて抗癌効能が増加することを確認した。
【0116】
<実施例9>免疫組織化学染色(immunohistochemistry)による組織病理学的研究(Histopathological studies)
免疫組織化学染色はロクウォンバイオ融合研究財団で行い、組織病理学的分析はエスジーメディカル(株)で行った。実験終了時点(Day 60)に全てのマウスは組織処理及び免疫組織化学染色、組織学的分析のために犧牲死させた。実験動物を深く麻酔させた状態で改服して心臓から採血した後、組織を摘出し、摘出した組織は4%ホルムアルデヒド溶液に固定した後、パラフィンで包埋した。組織切片は、腫瘍の最も大きい部分で4μm厚に薄切りし、パラフィンを除去した後、再水和した。免疫ペロキシダーゼ標識のために細胞内のペロキシダーゼを0.3% Hに15分間露出して抑制した。その後、抗原復旧のために抗原復旧液(antigen retrieval solution;TE pH 9.0)(Sigma、米国)に入れ、圧力クッカー(pressure cooker)(Bio SB、米国)で30分間加熱した。非特異性免疫反応排除のためにブロッキング溶液に20分間露出させた。
【0117】
腫瘍の細胞増殖(proliferation)程度を評価するために、ヒトKi67に対する一次ウサギ抗体(Abcam、英国)を使用してKi67の免疫組織化学染色を行った。ブロッキング溶液を処理した組織切片上に希釈した一次抗体を1時間常温で反応させて抗原-抗体反応複合体を形成した。EnVision+System-HRP標識ポリマー抗ウサギ(EnVision+ System-HRP Labelled Polymer Anti-Rabbit)(Dako、米国)を用いて抗原-抗体反応複合体にHRP標識された2次抗体を結合させた後、液体DAB+基質発色システム(Liquid DAB+ Substrate Chromogen System)(Dako、米国)を用いて3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)を基質として発色した。ヘマトキシリン(Hematoxylin)(Sigma、米国)染色は、DAB染色の対照染色として行った。イメージは、ix71光学顕微鏡(Olympus、日本)を用いて観察した。Ki67染色部位の比率は、Image Jソフトウェア(NIH、米国)を用いて計算し、その結果を図9Aに示した(*:陰性対照群とのスチューデントのt検定による比較の結果、P<0.05、***:陰性対照群とのスチューデントのt検定による比較の結果、P<0.001)。
【0118】
腫瘍血管の変化を評価するために、マウスCD31に対する一次ウサギ抗体(Abcam、英国)を用いてCD31の免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色は、上のKi67染色と同じ過程で行った。イメージは、ix71光学顕微鏡(Olympus、日本)を用いて観察した。CD31染色部位の比率は、Image Jソフトウェア(NIH、米国)を用いて計算し、その結果を図9Bに示した(*:陰性対照群とのスチューデントのt検定による比較の結果、P<0.05、***:陰性対照群とのスチューデントのt検定による比較の結果、P<0.001)。
【0119】
腫瘍の細胞自滅死(apoptosis)程度を評価するために、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(terminal deoxynucleotidyl transferase)dUTPニック末端ラベリング(nick-end labeling)(TUNEL)染色をApopTagペルオキシダーゼインサイチュ・アポトーシス検出キット(ApopTag Peroxidase In Situ Apoptosis Detection Kit)(Chemicon、米国)を用いて行った。発色は、液体DAB+基質発色システム(Dako、米国)を用いて行った。ヘマトキシリン(Hematoxylin)染色は、DAB染色の対照染色として行った。イメージは、ix71光学顕微鏡(Olympus、日本)を用いて観察した。細胞自滅死部位の比率は、Image Jソフトウェア(NIH、米国)を用いて計算し、その結果を図9Cに示した(*:陰性対照群とのスチューデントのt検定による比較の結果、P<0.05)。
【0120】
免疫化学組織染色の結果、陰性対照群においてKi67及びCD31発現が最も高く(図9A及び図9B)、TUNEL染色された細胞はほとんど観察されなかった(図9C)。これは、陰性対照群において癌細胞増殖及び新生血管増殖が活発になされていることを意味する。GP5単クローン抗体単独投与群において、P5単クローン抗体単独投与群に比べてKi67及びCD31の発現は低く(図9A及び図9B)、TUNEL染色されたた細胞はより多く観察された(図9C)。これは、GP5単クローン抗体はP5に比べて癌細胞増殖及び血管新生を抑制し、細胞自滅死を誘導する効果がより大きいということを意味する。また、このような効果は、GP5単クローン抗体とシスプラチンの単独投与時に比べて併用投与時に一層大きくなることが確認できた(図9A図9B及び図9C)。これは、GP5単クローン抗体は癌細胞増殖を抑制し、血管新生を抑制し、細胞自滅死を誘導して抗癌効果を示すことを意味する。また、シスプラチンとの併用によって増加した抗癌活性は、このような効果が極大化しながら現れることを意味する。
【0121】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい具現例に過ぎず、それに本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付した請求項とその等価物によって定義されるといえよう。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1】本発明のGP5単クローン抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
図2A】本発明のGP5単クローン抗体の純度(図2A)及び均質性(図2B)を確認した結果である。
図2B】本発明のGP5単クローン抗体の純度(図2A)及び均質性(図2B)を確認した結果である。
図3A】本発明のGP5単クローン抗体の組換えヒトベータ1インテグリンに対する結合力(図3A)、組換えマウスベータ1インテグリンに対する結合力(図3B)及びベータ1インテグリンに対する特異度(図3C)を示す結果である。
図3B】本発明のGP5単クローン抗体の組換えヒトベータ1インテグリンに対する結合力(図3A)、組換えマウスベータ1インテグリンに対する結合力(図3B)及びベータ1インテグリンに対する特異度(図3C)を示す結果である。
図3C】本発明のGP5単クローン抗体の組換えヒトベータ1インテグリンに対する結合力(図3A)、組換えマウスベータ1インテグリンに対する結合力(図3B)及びベータ1インテグリンに対する特異度(図3C)を示す結果である。
図4】非小細胞肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MDA-MB-231及び大腸癌細胞株HCT116の表面からベータ1インテグリンの発現を確認した結果である。
図5A】本発明のGP5単クローン抗体の細胞自滅能(図5A)、細胞成長抑制能(図5B)及びGP5単クローン抗体が抑制する信号経路(signal pathway)を示す結果である。
図5B】本発明のGP5単クローン抗体の細胞自滅能(図5A)、細胞成長抑制能(図5B)及びGP5単クローン抗体が抑制する信号経路(signal pathway)を示す結果である。
図5C】本発明のGP5単クローン抗体の細胞自滅能(図5A)、細胞成長抑制能(図5B)及びGP5単クローン抗体が抑制する信号経路(signal pathway)を示す結果である。
図6A】本発明のGP5単クローン抗体が癌細胞表面のベータ1インテグリンの内在化誘導を確認した結果である(図6A:120分;図6B:A549細胞株において時間帯別確認結果)。
図6B】本発明のGP5単クローン抗体が癌細胞表面のベータ1インテグリンの内在化誘導を確認した結果である(図6A:120分;図6B:A549細胞株において時間帯別確認結果)。
図7A】ゲフィチニブ耐性非小細胞肺癌細胞株であるPC9GRにおいて本発明のGP5単クローン抗体がゲフィチニブと併用されたとき、ゲフィチニブの反応性を、親細胞であるPC9に現れるレベルに向上させる結果である(図7A:PC9とPC9GRの表面からベータ1インテグリンの発現を確認した結果;図7B:PC9とPC9GRにおいてゲフィチニブとGP5単クローン抗体が併用された時に誘導される細胞自滅能の程度を示す結果)。
図7B】ゲフィチニブ耐性非小細胞肺癌細胞株であるPC9GRにおいて本発明のGP5単クローン抗体がゲフィチニブと併用されたとき、ゲフィチニブの反応性を、親細胞であるPC9に現れるレベルに向上させる結果である(図7A:PC9とPC9GRの表面からベータ1インテグリンの発現を確認した結果;図7B:PC9とPC9GRにおいてゲフィチニブとGP5単クローン抗体が併用された時に誘導される細胞自滅能の程度を示す結果)。
図8A】非小細胞肺癌細胞株が移植されたマウスモデルにおいて本発明のGP5抗体の抗癌活性を示す結果である(図8A:腫瘍容積(tumor volume)比較;図8B:腫瘍サイズ(tumor size)比較)。
図8B】非小細胞肺癌細胞株が移植されたマウスモデルにおいて本発明のGP5抗体の抗癌活性を示す結果である(図8A:腫瘍容積(tumor volume)比較;図8B:腫瘍サイズ(tumor size)比較)。
図9A】本発明のGP5抗体の腫瘍細胞増殖抑制能(図9A)、腫瘍内新生血管形成抑制能(図9B)及び腫瘍の細胞自滅死誘導能(図9C)を測定した結果である。
図9B】本発明のGP5抗体の腫瘍細胞増殖抑制能(図9A)、腫瘍内新生血管形成抑制能(図9B)及び腫瘍の細胞自滅死誘導能(図9C)を測定した結果である。
図9C】本発明のGP5抗体の腫瘍細胞増殖抑制能(図9A)、腫瘍内新生血管形成抑制能(図9B)及び腫瘍の細胞自滅死誘導能(図9C)を測定した結果である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
【配列表】
2022519342000001.app
【国際調査報告】