(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-23
(54)【発明の名称】グラフェン系一次化学電流源
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20220315BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220315BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220315BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/58
H01M4/48
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543491
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 RU2019050254
(87)【国際公開番号】W WO2020162789
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329213
【氏名又は名称】シェグラコフ, アンドレイ ヴァレレヴィッチ
(71)【出願人】
【識別番号】521329224
【氏名又は名称】コルニロフ, デニス ユレヴィッチ
(71)【出願人】
【識別番号】521329235
【氏名又は名称】ゲラー, マーク ミクハジロヴィッチ
(71)【出願人】
【識別番号】521329246
【氏名又は名称】ドゥダコフ, ヴァレリー ボリソヴィッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】シェグラコフ, アンドレイ ヴァレレヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】コルニロフ, デニス ユレヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ゲラー, マーク ミクハジロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】グビン, セルゲイ パヴロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】トカチョフ, セルゲイ ヴィクトロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シュプロフ, パベル ニコラエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ルィチャゴフ, アレクセイ ユレヴィッチ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050BA06
5H050CA01
5H050CA10
5H050CA14
5H050CA29
5H050CB12
5H050FA16
5H050FA17
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA09
(57)【要約】
本発明は、電気工学の分野に関する。一次化学電流源は、金属酸化された炭素電気化学システムにおいて、新しい種類のグラフェン系エネルギー飽和型非充電式化学電流源であり、電流形成進行(放電)中、アノード(たとえば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム)の活物質のイオンとの不可逆結合を形成しうる様々な酸素含有官能基の存在により、放電容量が増加したグラフェン様材料系ナノ構造材料をカソードの電流形成成分として使用する。技術的効果は、一次化学電流源のエネルギー容量特性の向上である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つのカソードと、少なくとも1種の電解質と、集電体と、セパレータとを含むハウジングからなり、カソード電流形成成分としてグラフェン様材料系のナノ構造材料の使用によって区別される一次化学電流源。
【請求項2】
グラフェン様材料として酸化グラフェンを使用することにより区別される請求項1に記載の一次化学電流源。
【請求項3】
グラフェン様材料としてグラフェンフッ化物を使用することを特徴とする請求項1に記載の一次化学電流源。
【請求項4】
グラフェン様材料から造られるグラフェン塩化物である請求項1に記載の一次化学電流源。
【請求項5】
グラフェン臭化物としてグラフェン様材料の利用によって区別される請求項1に記載の一次化学電流源。
【請求項6】
グラフェン様材料としてグラフェン硝酸塩を使用することを特徴とする請求項1に記載の一次化学電流源。
【請求項7】
グラフェン様物質としてグラフェン硫酸塩の使用により区別される請求項1に記載の一次化学電流源。
【請求項8】
グラフェン様材料として請求項2~7に記載の化合物の混合物を使用する請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項9】
グラフェン様材料は、請求項2~7に特定される1種以上の化合物およびカーボンナノチューブに基づく複合体である請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項10】
請求項2~7に特定される1種以上の化合物とカーボンナノチューブの酸化生成物との複合体から造られるグラフェン様材料の利用により区別される請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項11】
請求項2~7に記載される1種以上の化合物の複合体から造られるグラフェン様材料の使用により区別される請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項12】
請求項2~7に記載される1種以上の化合物に基づく複合体から造られるグラフェン様材料の使用を特徴とする請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項13】
請求項2~7に特定される1種以上のカーボン量子ドット化合物に基づく複合体から造られるグラフェン様材料の使用により規定される請求項1に記載の一次化学電流源。
【請求項14】
請求項2~7に特定される1種以上の化合物の複合体から造られるグラフェン様材料の利用を特徴とする請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項15】
請求項2~7に記載される1種以上の化合物の複合体から造られるグラフェン様材料の使用により区別される請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項16】
請求項2~7に記載される1種以上の化合物に基づく複合体から造られるグラフェン様材料の使用により規定される、請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項17】
請求項2~7に記載される1種以上の化合物の複合体から造られるグラフェン様材料の使用により区別される請求項1に記載の一次化学電流源。
【請求項18】
請求項2~7に記載される1種以上の薬品に基づく複合体から造られるグラフェン様材料の使用を特徴とする請求項1に記載の主要な化学電流源。
【請求項19】
前記ナノ構造材料が、粒径が0.05~300mの粉末、空隙率が15~99.1%のゲルおよびエアロゲルまたはこれらの混合物、厚さが0.01~500mのフィルム、長さが0.05~50mおよび直径が0.01~5mの繊維、直径が0.02~200mおよび壁厚が0.002~0.04mの中空球、またはこれらの混合物の形態で使用されることを特徴とする請求項1に記載の一次化学電流源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工学に関し、新しい種類のグラフェン系エネルギー集約型一次(非充電式)化学電流源(CPS)をもたらす。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の一次化学電流源が従来技術で知られており(表1)(化学電流源:Handbook/N.V.KorovinaおよびA.M.Skundina-M.:MPDI Publishing House2003年、第138頁)、その主な欠点は、650Wh/kg以下と、比電力容量が低いことであり、これによりこの種類の電流源の適用分野が狭められている。
【0003】
炭素含有カソード材料、一般式(CF)nで表されるポリモノフルオロカーボンを有する一次化学電流源(I.A.Kedrinskyら、Lithium power sources.M.、1992年、第143頁)。
【0004】
リチウムフルオロカーボン(CF)n系のこの一次化学電流源の欠点は、400Wh/kg以下と、エネルギー放電容量が低いことである。Li|LiBr,AH|SO2
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】化学電流源:Handbook/N.V.KorovinaおよびA.M.Skundina-M.:MPDI Publishing House2003年、第138頁
【非特許文献2】I.A.Kedrinskyら、Lithium power sources.M.、1992年、第143頁
【発明の概要】
【0006】
一次化学電流源は、金属酸化された炭素電気化学システムにおける、新しい種類のグラフェン系非充電式エネルギー飽和型の化学電流源であり、グラフェン様材料系のナノ構造材料をカソードの電流形成成分として使用し、電流形成進行(放電)中に、アノード(たとえば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム)の活物質のイオンとの不可逆化合物を形成しうる様々な酸素含有官能基の存在により、放電容量が増加する。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い比エネルギー性能を有する一次化学電流源を造り出すことである。本発明の技術的効果は、一次化学電流源のエネルギー性能の向上である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
クレームされた一次化学電流源は、金属酸化された炭素電気化学システムにおける新しい種類のグラフェン系エネルギー飽和型非充電式の化学電流源であり、様々な酸素含有イオンの存在に起因して放電容量が増加したグラフェン様材料系ナノ構造材料により、特定の技術的効果(放電)が達成される。
【0009】
特定の技術的効果は、グラフェン系一次化学電流源が、少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つのカソードと、少なくとも1種の電解質と、集電体と、セパレータとが中に設置された本体からなり、ここで、本発明によれば、グラフェン様材料系ナノ構造材料を、カソードの電流形成成分として使用するという事実によって達成される。
【0010】
グラフェン様材料は、グラフェン、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラフェンフッ化物、還元されたグラフェンフッ化物、グラフェン塩化物、還元されたグラフェン塩化物、グラフェン臭化物、還元されたグラフェン臭化物、グラフェン硝酸塩、還元されたグラフェン硝酸塩、グラフェン硫酸塩、還元されたグラフェン硫酸塩、列挙した化合物の混合物を挙げることができる。
【0011】
グラフェン様材料として、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ酸化生成物、黒鉛、黒鉛酸化生成物、カーボン量子ドット、カーボン量子ドット酸化生成物、カーボンブラック、カーボンブラック酸化生成物、活性炭、活性炭酸化生成物を用いた上記化合物の1種以上に基づく複合体を使用してもよい。
【0012】
グラフェン様材料として、アノードの活物質のイオンと不可逆結合を形成しうる、金属のミクロおよびナノ粒子と上記化合物の1種以上とに基づく複合体を使用することができる。
【0013】
粒径が0.05~300mの範囲の粉末、空隙率が15~99.1%の範囲のゲルおよびエアロゲルまたはこれらの混合物、厚さが0.01~500mの範囲のフィルム、長さが0.05~50mおよび直径が0.01~5mの範囲の繊維、直径が0.02~200mの範囲および球壁厚が0.002~0.04mの範囲の中空球、またはこれらの混合物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】グラフェン球体の光学デジタル顕微鏡検査の顕微鏡写真を示す。
【
図1b】グラフェン球体の走査型電子顕微鏡検査の顕微鏡写真を示す。
【
図2a】還元グラフェン酸化物フィルムの外観図である。
【
図2b】還元グラフェン酸化物フィルムの走査型電子顕微鏡検査のスライス顕微鏡写真を示す。
【
図3】還元グラフェン酸化物薄片の表面上のスズナノ粒子の走査型電子顕微鏡検査の顕微鏡写真を示す。
【
図4】エアロゲルグラフェンミクロ粒子の走査型電子顕微鏡検査の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
クレームする発明の実際的な実現可能性を以下の代表的な実施例によって実証する。
【実施例1】
【0016】
グラフェン酸化物粉末(粒径15~30ミクロン)およびカーボンブラック(粒径25~50ミクロン)質量比%2:1に基づく高度に分散させた複合材料を、一次化学電流源カソードの電流形成成分として使用し、これを界面活性剤(ドデシル硫酸塩、混合物1g当たり0.5g)および水(2ml)と混合し、次いで、超音波ユニット(USU)を使用して分散した。カソード電流形成成分を、バインダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(電流形成成分の質量に対して5重量%)と混合し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して厚さ100~300ミクロンの層とし、続いて乾燥し、厚さ60~180ミクロンまで圧延した。次に、2.5×1.5cmの電極を切り出した。得られたカソードを、電解質が炭酸エチレン/炭酸ジメチル(1:1)溶液中の1MのLiPF6溶液であり、アノードがリチウム金属であり、セパレータが空隙率30%および厚さ15mのポリプロピレンフィルムであり、本体が積層アルミニウムである標準一次化学電流源組立品に組み込んだ。3.5~1.5Vの動作電圧範囲の0.02~0.2mAの放電電流で、電池は6~14mAhの容量を示し、HITカソードの電流形成成分の質量に換算すると、容量は400~5500mAh/gであった。
【実施例2】
【0017】
主要な化学電流源カソードの電流形成成分として、直径が10~100mの範囲および壁厚が0.005~0.02mの範囲の中空グラフェン球体の粉末(
図1参照)を利用した。中空グラフェン球体を、N-メチル-2-ピロリドンに予め溶解したポリビニリデンフッ化物(電流形成成分の質量に対して5%)と混合し、HITカソードを作製した。次いで、得られたペーストをアルミニウム箔に置き、厚さ100~300ミクロンの層とし、乾燥し、60~180ミクロンの厚さに圧延した。次いで、2.5×1.5cmの電極を切り出した。得られたカソードを、電解質が炭酸エチレン/炭酸ジメチル(1:1)溶液中の1MのLiPF
6溶液であり、リチウム金属がアノードとして機能し、セパレータが空隙率30%および厚さ15mのポリプロピレンフィルムであり、本体が積層アルミニウムで作られている標準一次化学電流源組立品に組み込んだ。3.5~1.5Vの動作電圧範囲の0.02~0.2mAの放電電流で、電池は7~16mAhの容量を示し、HITカソードの通電成分の質量に換算すると、容量は400~5500mAh/gであった。
【実施例3】
【0018】
厚さ0.1~1mの範囲の還元グラフェン酸化物シート(
図2a参照)を、主要な化学電流源カソードの電流形成成分として使用した(
図2b参照)。HITの製造のため、還元グラフェン酸化物のカソードフィルムをアルミニウム箔の表面に塗布し、続いて水素媒体中70~180℃の温度で熱処理した。HITカソードの製造では、バインダーを使用しなかった。次いで、2.5×1.5cmの電極を切り出した。このようにして得られたカソードを、炭酸エチレン/炭酸ジメチル(1:1)中の1MのNaClO
4溶液を電解質として使用し、金属ナトリウムをアノードとして使用し、セパレータは空隙率30%および厚さ15mのポリプロピレンフィルムであり、本体は積層アルミニウムで作られている標準組立品、一次化学電流源に組み込んだ。放電電流0.02~0.2mA、および動作電圧範囲3.5~1.5Vで、電池の容量は3~9mAhであり、HITカソードの電流形成成分の質量に換算すると、容量は450~4800mAh/gであった。
【実施例4】
【0019】
主要な化学電流源カソードの電流形成成分として、還元グラフェン酸化物およびスズナノ粒子に基づく高度に分散した複合材料を利用した。粒径200~250mの粉末を、粒径0.005~0.01mのスズナノ粒子を塗布した還元グラフェン酸化物薄片で構成した(
図3参照)。電流形成成分を、N-メチル-2-ピロリドン(電流形成成分の5%w/w質量)に溶解したポリビニリデンフッ化物バインダーと混合し、HITカソードを作製した。アルミニウム箔上にペーストを厚さ100~200ミクロンの層として置き、次いで水素雰囲気中70~180℃で熱処理し、60~120ミクロンの厚さに圧延した。次いで、2.5×1.5cmの電極を切り出した。得られたカソードを、電解質が炭酸エチレン/炭酸ジメチル(1:1)溶液中の1MのLiPF
6溶液であり、リチウム金属をアノードとして使用し、セパレータが空隙率30%および厚さ15mのポリプロピレンフィルムであり、ハウジングが積層アルミニウムである標準一次化学電流源組立品に組み込んだ。3.5から1.5Vの動作電圧範囲の0.01~0.1mAの放電電流で、電池は4~16mAhの容量を示し、HIT電流形成成分の質量に換算すると、容量は650~5,500mAh/gであった。
【実施例5】
【0020】
一次化学電流源のカソードの電流形成成分として、平均粒径2mのグラフェンエアロゲルミクロ粒子を使用した(
図4参照)。電流形成成分を、N-メチル-2-ピロリドンに溶解したポリビニリデンフッ化物バインダーと混合し、HITカソード(電流形成成分の5重量%)を作製した。アルミニウム箔上にペーストを厚さ100~200ミクロンの層として置き、次いで乾燥し、60~120ミクロンの厚さに圧延した。次いで、2.5×1.5cmの電極を切り出した。得られたカソードを、電解質が炭酸エチレン/炭酸ジメチル(1:1)溶液中の1MのLiPF
6溶液であり、アノードがリチウム金属であり、セパレータが空隙率30%および厚さ15mのポリプロピレンフィルムであり、本体が積層アルミニウムである標準一次化学電流源組立品に組み込んだ。3.5~1.5Vの動作電圧範囲の0.02~0.2mAの放電電流で、電池は9~24mAhの容量であり、電流形成成分の質量に換算すると、容量は650~5500mAh/gであった。
【0021】
すなわち、クレームされる発明の技術的効果は、650Wh/kgを超える高い比エネルギー密度を有する一次化学電源である。
【0022】
関連技術分析により、特許請求の範囲に記載されているような重要な特徴のクレームされた組み合わせは公知ではないことが明らかである。これにより、クレームされた技術的解決策は、「新規」という特許性要件を満たすという結論に至る。
【0023】
比較研究により、従来技術にはクレームされた発明の特有の特徴と特徴を共有する解決策は見つかっておらず、これらの品質が技術的効果を変えることも証明されていないことは明らかである。したがって、クレームされた技術的解決策は、特許性の要件「進歩性」を満たす。
【0024】
【産業上の利用可能性】
【0025】
上記の情報により、クレームしたグラフェン系一次化学電流源の用途が検証され、本発明が、電気工学の分野で使用することができ、したがって「産業上の利用可能性」の特許性基準を満たすことが示されている。
【国際調査報告】