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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】注射器の針の深さセンサー
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/46 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
A61M5/46
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021525592
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 US2019060740
(87)【国際公開番号】W WO2020102084
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/760,628
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518123372
【氏名又は名称】ウェスト ファーマ サービシーズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】ヘズキアフ・ラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンストーン・ロス
(72)【発明者】
【氏名】ファリス・ジェイソン・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】プラット・スペンサー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066LL15
4C066QQ53
4C066QQ82
(57)【要約】
【課題】注射器に皮膚の表面からの針の深さを監視させ、針が最低限必要な深さには十分に達している場合にのみ、物質を投与させる。
【解決手段】注射器はハウジングと注射針とを備えている。ハウジングは皮膚接触面を含む。注射針はハウジングの中に支持され、退避位置から注射位置へ移動可能である。ハウジングの中には回路基板が支持され、注射針と共に移動可能である。回路基板は通電の遮断されている回路を含み、その回路は接触面を含む。ハウジングの中には電気機械式センサーも支持され、注射針と共に移動可能である。電気機械式センサーは導電部分を含む。この導電部分は、注射針が退避位置にあるときには回路の接触面から解放され、注射針が注射位置にあるときには回路の接触面と結合して回路への通電を可能にする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の皮膚の表面の下、少なくとも所定の深さへ物質を送り込むための注射器であって、
皮膚接触面を含むハウジングと、
前記ハウジングの中に支持され、前記皮膚接触面に対して退避位置から注射位置まで移動可能な注射針と、
前記ハウジングの中に支持され、前記注射針と共に移動可能な回路基板と、
前記ハウジングの中に支持され、前記注射針と共に移動可能な電気機械式センサーと
を備え、
前記注射針が前記退避位置にあるとき、少なくとも前記注射針の先端が前記ハウジングの中に収まり、
前記注射針の先端は、前記注射針が前記注射位置にあるとき、前記使用者の皮膚の表面の下、前記所定の深さに、またはそれよりも深くに位置するように構成されており、
前記回路基板が通電の遮断されている回路を含み、前記回路には接触面があり、
前記電気機械式センサーが、
前記注射針が前記退避位置にあるときには前記回路の接触面から解放され、前記注射針が前記注射位置にあるときには前記回路の接触面と結合して前記回路への通電を可能にする導電部分
を含む
ことを特徴とする注射器。
【請求項2】
前記導電部分が前記回路の接触面から解放されているときには、前記電気機械式センサーの方向が、付勢されていない状態における方向であり、
前記導電部分が前記回路の接触面と結合しているときには、前記電気機械式センサーの方向が、付勢されている状態における方向である、
請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記注射針が前記退避位置にあるときには、前記電気機械式センサーが前記ハウジングの中の回収位置にあり、
前記注射針が前記注射位置にあるときには、前記電気機械式センサーが前進位置にあって、前記電気機械式センサーの少なくとも一部が前記ハウジングの皮膚接触面を越え、前記使用者の皮膚の表面に接触している、
請求項1または請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
前記注射針が前記注射位置から前記退避位置へ向かって移動すると、前記電気機械式センサーの導電部分が前記回路の接触面から解放され、前記回路への通電を遮断する、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の注射器。
【請求項5】
前記回路と通信するコントローラーであって、前記回路への通電が遮断されているときには前記注射器に動作をさせないように、かつ、前記回路への通電が可能であるときには前記注射器に動作を開始させ、または再開させるように構成されているコントローラー
を更に備えた、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の注射器。
【請求項6】
前記ハウジングが、
前記皮膚接触面を含む底部と、
前記底部に対して移動可能なシャーシと
を含む、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の注射器。
【請求項7】
前記シャーシが前記底部に回転可能に取り付けられている、請求項6に記載の注射器。
【請求項8】
前記注射針、前記回路基板、および前記電気機械式センサーが、前記シャーシによって支持されている、請求項6に記載の注射器。
【請求項9】
前記電気機械式センサーが、弾性的な屈曲の可能なアームを含み、
前記アームが、
外力を受けると、自然な形状から前記回路の接触面へ向かって屈曲し、
前記外力が弱まると、前記回路の接触面から離れて前記自然な形状へ戻る
ように構成されている、
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の注射器。
【請求項10】
前記アームが、前記回路基板から伸びている片持ち梁の形状である、請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
前記アームが、
前記使用者の皮膚の表面に接触すると、当該接触で加えられる外力によって前記アームが前記回路の接触面へ向かって屈曲するのに伴い、前記皮膚の表面に沿って摺動するように構成されている自由端
を含む、請求項10に記載の注射器。
【請求項12】
前記アームが、
前記自由端とは反対側に位置し、前記アームを前記回路の接触面へ向かって弾性的に屈曲させることができるように構成されている、実質的に水平なU字部分
を含む、請求項11に記載の注射器。
【請求項13】
前記自由端が、
前記皮膚の表面に沿って摺動する、湾曲した幅広部分
を含む、請求項12に記載の注射器。
【請求項14】
前記所定の深さが約3.5mmである、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の注射器。
【請求項15】
前記回路基板がPCBである、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注射器の技術分野に関し、特に、針が所定の深さに達したか否かを検出するための深さセンサーを含む注射器に関する。
[関連出願の相互参照]
【0002】
この出願は、2018年11月13日を出願日とする米国特許仮出願第62/760,628号(発明の名称「針の深さセンサー」)に対する優先権主張を伴うものであり、その開示内容の全体がこの明細書には参照によって組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
従来の注射器は、使用者の皮膚の表面を突き抜け、その使用者へ1回分の物質を投与するように構成されている。一般には、その物質、たとえば薬剤が体に上手く吸収されるように、その物質を、皮膚の表面の下に位置する特定の組織層へ送り込むことが望ましく、または求められている。自動注射器等、従来の注射器の多くには次の欠点がある。注射針が皮膚の表面の下、少なくとも、所望量が吸収されて注射が成功したとみなすのに最低限必要な深さ、すなわち最小深度まで突き刺さったか否かを、検知等によって判断することができない。したがって、注射器が注入した物質の全部または一部が所望の組織層から外れているにもかかわらず、上手く送り込まれたかのような誤った手応えを使用者に与えかねない。これは、医学的には有害な結果をもたらすかも知れない。
【0004】
それ故、注射器に針の深さセンサーを設けてその注射器を、皮膚の表面からの針の深さを監視し、針が最小深度には十分に届いている場合にのみ物質の注入を開始し、または続行するように構成することは有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
簡単に言えば、本発明の1つの側面は、使用者の皮膚の表面の下、少なくとも所定の深さへ物質を送り込むための注射器を対象とする。この注射器はハウジングと注射針とを備えている。ハウジングは皮膚接触面を含む。注射針はハウジングの中に支持され、ハウジングの皮膚接触面に対して退避位置から注射位置まで移動可能である。注射針が退避位置にあるとき、少なくとも注射針の先端がハウジングの中に収まる。注射針の先端は、注射針が注射位置にあるとき、使用者の皮膚の表面の下、所定の深さに、またはそれよりも深くに位置するように構成されている。ハウジングの中には回路基板が支持され、注射針と共に移動可能である。この回路基板は通電の遮断されている回路を含み、この回路には接触面がある。ハウジングの中には電気機械式センサーも支持され、注射針と共に移動可能である。電気機械式センサーは導電部分を含む。この導電部分は、注射針が退避位置にあるときには回路の接触面から解放され、注射針が注射位置にあるときには回路の接触面と結合して回路への通電を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下に述べる本発明の側面についての詳細な説明は、添付の図面に関連付けて読まれれば、更によく理解されるであろう。ただし、図示されている配置と手段との詳細に本発明が限定されるわけではないことは、理解されるべきである。
【0007】
図1】本発明の実施形態による注射器の側面図である。この図では、注射針が退避位置にある。
図2A図1の線分2-2に沿った、図1の注射器の断面図である。この図では、注射針が退避位置にある。
図2B図2Aの注射器が含む、弾性的な屈曲が可能なアームの拡大斜視図である。
図3A図1の線分2-2に沿った、図1の注射器の断面図である。この図では、注射針が注射位置にある。
図3B図3Aの注射器が含む、弾性的な屈曲が可能なアームの拡大斜視図である。
図4A図1の線分2-2に沿った、図1の注射器の断面図である。この図では、注射針が最終到達位置にある。
図4B図4Aの注射器が含む、弾性的な屈曲が可能なアームの拡大斜視図である。
図5図1の注射器が含むシャーシと、それに実装された回路基板との底面と側面とが見える斜視図である。
図6図1の注射器が含む回路とコントローラーとの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明ではある用語が使用されるが、これらは便宜を図ることのみを目的とし、発明を限定するものではない。“下側”、“底部”、“上側”、“上部”という語は、参照される図面における方向を示す。“内側へ”、“外側へ”、“上方へ”、“下方へ”という語は、本発明による注射器とその特定の部分との幾何学的中心へ向かう方向、または、その中心から離れる方向を意味する。以下、特に断らない限り、冠詞“a”、“an”、“the”は、1つの要素に限定するものではなく、“少なくとも1つ”を意味するものとして読まれるべきである。これらの用語には、上記の語の他、それらの派生語、および語源が同様な語も含まれる。
【0009】
以下、本発明の要素の寸法または特性に言及する際に使用される、“約”、“ほぼ”、“一般に”、“実質的に”等の語が示すのは、説明される寸法/特性が厳密な境界またはパラメーターではないことであり、それらの語が、機能的には同様である些細な変動を排除するものではないことも理解されるべきである。数値パラメーターを含む言及は、少なくとも、当該技術分野で許容されている数学的、工学的な原理(たとえば、丸め誤差、測定誤差、またはその他の系統誤差、製造公差)を用いて、最下位の数字を変えないであろうと評価された変動を含むであろう。
【0010】
図面の全体にわたり、同様な参照番号は同様な要素を示す。図面を詳細に参照すると、図1図6には、本発明のある実施形態による注射器が示されている。この注射器は一般に10で示されている。図示されている実施形態では注射器10が装着型薬用注射器等、身体に装着可能な注射器(パッチ型注射器)である。ただし、本発明による注射器がそれに限定されるわけではない。注射器10はハウジング12を含む。ハウジング12は底部14とカバー部16とを含む(図1参照)。カバー部16は、少なくとも一部が底部14の上方に配置され、底部14に対して移動可能であるように底部14に取り付けられている。たとえば、カバー部16は、ある軸のまわりに回転可能であるように、底部14に取り付けられてもよいし、他の種類の相対運動も考えられる。底部14は、患者等、使用者の皮膚の表面1に接触するように構成された表面18を含む。この皮膚接触面18には、それを貫通する穴18aがある。図示されている実施形態では、皮膚接触面18がハウジング12の底面を含む。しかし、本発明がこの構造に限定されるわけではない。ハウジング12は底部14とカバー部16とで構成されていると説明されているが、他の実施形態では、ハウジング12の構成要素がそれらよりも多いことも、少ないことも考えられる。
【0011】
シャーシ22は、たとえば、ポリマー材、金属材、またはそれらの組み合わせで構成されており、ハウジング12の中に、すなわちカバー部16と底部14との間に実装され、底部14に移動可能に取り付けられている。図示されている実施形態ではシャーシ22が底部14に回転可能に取り付けられ、底部14に対して移動可能であり、シャーシ22の後端が底部14に近接している。ただし、本発明はこの構造に限定されるわけではない。さらに、シャーシ22はカバー部16に回転可能に結合している。図示されている実施形態ではシャーシ22がカートリッジ用スロットを含む。カートリッジ26に収容された物質が注射器10により、このスロットを通して使用可能であるように、このスロットは構成され、すなわちその形とサイズとが設計されている。たとえば、スロットの上にカートリッジ26が載せられる。
【0012】
注射針24はハウジング12の中に、シャーシ22によって支持されている。図2Aに示されているように、注射針24はカートリッジ26の前端から伸びて、カートリッジ26の長軸に対して約90度に折れ曲がっている。ただし、本発明はこの構造に限定されるわけではない。その他に、注射針24がシャーシ22に間接的に、または直に固定されていてもよいし、ハウジング12の中に固定されていてもよい。スロットにカートリッジ26が挿入されると、カートリッジ26に注射針24が連通し、カートリッジ26から注射針24へ流体を流すことが可能になる。なお、理解されるであろうように、注射針24が異なる形状に曲がっていてもよいし、注射針24が曲がっていなくてもよい。注射針24は、シャーシ22と共に、皮膚接触面18に対して退避位置(図2Aに最もよく示されている。)から注射位置(図3Aに最もよく示されている。)へ移動可能である。注射針24が退避位置にあるとき、少なくとも注射針24の先端がハウジングの底部14の中に収まっている。注射針24の先端は、注射針24が注射位置にあるとき、使用者の皮膚の表面1の下、少なくとも所定の最小深度に位置するように構成されている。注射針24はまた、注射が開始可能な時点では、注射位置を越えて最終到達位置(図4Aに最もよく示されている。)まで移動するように構成されていてもよい。
【0013】
先に述べた所定の最小深度は、カートリッジ26内の物質が送り込まれることが想定され、または要求されている組織層が位置する、皮膚の表面1からの深さの最小値に相当する。たとえば、薬剤の中には、身体に上手く吸収させるには、皮膚の表面1から少なくとも約0mm(すなわち、皮膚の表面1の直下で十分である。)から約12mmまでの間の深さ、たとえば少なくとも約3.5mmの深さへ送り込まれることが想定され、または必要なものがある。なお、本発明はこれには限定されない。したがって、所定の最小深度が約0mmから約12mmまでの間、たとえば約3.5mmである。注射針24は、注射位置へ到達することにより、ハウジングの底部14から皮膚接触面18の穴18aを通って突出し、使用者の皮膚の表面1を突き抜けて所定の最小深度まで、またはそれよりも深く突き刺さる。
【0014】
起動ボタン28はハウジング12に移動可能に実装されており、非起動位置(図2A参照。)から起動位置(図3A図4A参照。)への(手動による)並進/押し込みが可能である。ここで、起動ボタン28の非起動位置が注射針24の退避位置に対応付けられていてもよく、起動ボタン28の起動位置が注射針24の注射位置、最終到達位置、またはそれらの間の位置に対応付けられていてもよい。注射器10が皮膚の表面1の上に設置された後、起動ボタン28が起動位置へ押し込まれると、シャーシ22(と、それを覆うハウジングのカバー部16)と、それに続いて注射針24とを、ハウジングの底部14へ向かって下方へ回転させ、または並進させる。これにより、注射針24の先端が穴18aを通過し、使用者の皮膚の表面1を突き抜けて所定の最小深度へ到達し、またはそれを超えて突き刺さる。
【0015】
図5を見ると、回路基板30がハウジング12の中に支持されており、注射針24と共に移動させる目的で注射針24に接続されている。たとえば、回路基板30がハウジング12の中で、注射針24と同じ構成要素に実装されていてもよい。ハウジング12の中に支持され、注射針24と共に移動させる目的で注射針24に接続されているものには、電気機械式センサー37もある。図示されている実施形態では、回路基板30が印刷回路基板(PCB)31である。ただし、発明はそれに限定されるわけではない。図示されている実施形態では、PCB31がシャーシ22の下側に取り付けられている。その他に、PCB31がシャーシ22により、またはハウジング12の中に支持されていてもよい。図示されている実施形態(たとえば、図2B参照。)では電気機械式センサー37が、弾性的な屈曲の可能なアーム36である。このアーム36はPCB31の下側に実装されており、そこから片持ち梁状に伸びている。ただし、発明はこれには限定されない。図示されているように、センサー37はPCB31から注射器10の皮膚接触面18へ向かって伸びている。
【0016】
PCB31は、注射器10のコントローラー34(図6に模式的に示されている。)と通信する回路32を含む。図6に最もよく示されているように、回路32は、それへの通電が遮断されており、ある接触面を形成する自由端32aを含む。図2Aに最もよく示されているように、注射針24が退避位置にあるとき、アーム36はハウジング12内の回収位置にある。アーム36に加わる外力がない(すなわち、アーム36の方向が、付勢されていない状態における方向である)場合、たとえばアーム36が回収位置にある場合、アーム36は回路32の接触面32aから解放されている。すなわち、アーム36は、自然な形状では、回路32の接触面32aから解放されている。
【0017】
図示されている実施形態では、アーム36が一体構造の単一要素として構成され、予め特定の形状に整えられている。ただし、発明はこれには限定されない。たとえば、アーム36が複数の要素の統合体として構成されていてもよい。図2B図3B、および、図4Bに最もよく示されているように、アーム36は脚36aにより、回路32に実装されている。図示されている実施形態ではアーム36が3本の脚36aを含む。ただし、本発明はそれには限定されない。図示されている実施形態ではアーム36がまた、U字部分36b、実質的に正弦曲線状である部分36c、および実質的に真っ直ぐなアーム36dも含む。U字部分36bは脚36aからほぼ水平に、すなわちPCB31に対してほぼ平行に伸びている。正弦曲線状の部分36cはU字部分36bからほぼ水平に伸びている。真っ直ぐなアーム36dは正弦曲線状の部分36cから皮膚接触面18へ向かって傾斜している。真っ直ぐなアーム36dの自由端36eは湾曲した幅広部分36eであり、後で詳細に説明するように、使用者の皮膚の表面1に接触すると、その表面1に沿って摺動するように構成されている。図5に最もよく示されているように、正弦曲線状の部分36cは少なくとも一部が、回路32の接触面32aとほぼ一直線上に並んでいる。アーム36は少なくとも一部が導電性物質で構成されている。ただし、発明はこれには限定されない。図示されている実施形態では、たとえば、正弦曲線状の部分36cの一部36c’が導電性物質で構成されていてもよい。ただし、発明はこれには限定されない。アーム36はその全体または一部が、金属材、ポリマー材、またはそれらの組み合わせ等で構成されていてもよく、その材質により、この明細書で説明されるアーム36の機能、たとえば弾性的な屈曲と導電性とが実現している。それに加えて、またはそれとは別に、アーム36の少なくとも一部に導電性のめっき/コーティングが施されていてもよい。
【0018】
U字部分36bは、アーム36が持つ弾性的な屈曲の能力に寄与する。すなわち、アーム36に加わる外力が、少なくとも(U字部分36bに対する)ある方向に沿った成分を含む場合、アーム36を(図2B図3B図4Bに示されているように)U字部分36bの対称軸のまわりに屈曲させ、正弦曲線状の部分36cを回路32の接触面32aに向かって弾性的に屈曲させる。上記の方向に沿って十分に大きな外力がアーム36に加わると(すなわち、アーム36の方向が、付勢されている状態における方向であると)正弦曲線状の部分36cを屈曲させ、(図2B図3Bに示されているように)少なくとも導電部分36c’を回路32の接触面32aに結合させる。これにより、後で詳細に説明するように、回路32への通電が可能になる。たとえば、外力が約0.02Nから約8Nまでの範囲内であれば、アーム36を弾性的に屈曲させて接触面32aと結合させるのには十分であってもよい。ただし、発明はこれには限定されない。
【0019】
注射器10は使用の際、注射針24が退避位置にあり、かつアーム36が回収位置にある状態で、使用者の皮膚の表面1に設置される。ある実施形態では、注射器10が危険防止用のラッチ17を含んでいてもよい。ラッチ17はハウジングの底部14に回転可能に取り付けられており、第1位置(図1図2A図3A図4A参照。)と第2位置(図示せず。)との間で移動可能である。第1位置のラッチ17は注射器10の皮膚接触面18とほぼ同一の平面上に広がっている。第2位置のラッチ17は皮膚接触面18から離れる方向、すなわち下方へ回転している。注射器10が皮膚の表面1に設置されたとき、ラッチ17は第1位置へ移動する。
【0020】
その後、使用者が起動ボタン28を押し、シャーシ22を皮膚接触面18へ移動させ始め、続いて注射針24を注射位置へ移動させる。シャーシ22が皮膚接触面18へ向かって移動することにより、アーム36も前進位置(図3A参照。)へ向かって移動する。前進位置のアーム36はその少なくとも一部、たとえば端部36eを注射器10の皮膚接触面18の穴18aから皮膚接触面18を越えて突出させ、アーム36の湾曲した幅広の自由端36eを使用者の皮膚の表面1へ向かって前進させる。ラッチ17が採用されている場合、アーム36がラッチ17のスロット(図示せず。)を通して回収位置から前進位置へ移動してもよいし、別の通路を経由して皮膚の表面1へ前進してもよい。
【0021】
ある実施形態では、たとえば図3Aに示されているように、注射針24が皮膚の表面1の下、所定の深さ、たとえば約1-2mmまで突き刺さるとアーム36が皮膚の表面1に接触するように、アーム36のサイズが設計されている。その他に、注射針24が皮膚の表面1に接触するのとほぼ同時にアーム36が皮膚の表面1に接触するように、アーム36のサイズが設計されていてもよい。アーム36が皮膚の表面1に接触した後、注射針24が注射位置へ向かって皮膚の表面1の下、更に深くまで突き刺さり続けると、皮膚の表面1がアーム36に上記の方向の外力を加えて、アーム36を回路32の接触面32aへ向かって、たとえばU字部分36bの対称軸のまわりに弾性的に屈曲させる。アーム36は、図3Aに示されているように、注射針24が注射位置に到達したとき、すなわち皮膚の表面1の下、所定の最小深度に到達したとき、回路32の接触面32aと結合することにより、回路32を閉じて回路32への通電を可能にするように構成されている。たとえば、注射針24が皮膚の表面1の下、3.5mmまで突き刺さると、アーム36が皮膚の表面1によって付勢され、すなわち屈曲させられて接触面32aと結合するように、アーム36が構成されていてもよい(すなわち、アーム36の形状とサイズとが設計されていてもよい)。
【0022】
シャーシ22が注射針24を皮膚の表面1の下、更に深くへ突き刺し続けて最小深度を超えさせ、図4Aに示されているように、カートリッジ26内の物質の注射を成功させるのに必要な最終到達位置まで進めてもよい。注射針24がそのように更に突き刺され続ける間、アーム36が接触面32aと接触し続け、回路32への通電が可能な状態を維持する。アーム36、特に自由端36eには外力が加わり続け、アーム36の実質的に真っ直ぐな部分36dの傾斜を、皮膚の表面1に沿うように変化させる(図4B参照)。すなわち、アーム36の実質的に正弦曲線状である部分36cの山と谷とにより、真っ直ぐな部分36dが皮膚の表面1に沿って、皮膚の表面1に対してほぼ平行な方向へ曲がり、その傾斜角を鈍角まで広げることができる。真っ直ぐな部分36dの端には湾曲した幅広部分36eが位置するので、真っ直ぐな部分36dは、その傾斜角を鈍角へ広げる間、皮膚の表面に沿ってほぼ滑らかに摺動することができる。
【0023】
回路32はコントローラー34と、それによって操作されるように接続され、(当業者にはよく理解されている方法により)コントローラー34に対してフィードバックを与える。コントローラー34は、その意思決定用論理回路によって回路32の接続状態を把握するように構成されている。たとえば、ある構成では電気回路32がバイナリであり、すなわち、通電が可能な状態と遮断された状態とのいずれかにある。通電が可能な状態では回路32がコントローラー34へ信号を送ることができる一方、通電が遮断された状態では回路32がコントローラー34へ何の信号も送ることができない。好ましくは、回路32への通電が可能な状態は、注射針24が皮膚の表面1の下の適切な位置にあること、すなわち、カートリッジ26内の物質の注射を成功させる(その物質を身体に正しく吸収させる)ことが十分に可能な深さにあることを示す。逆に、回路32への通電が遮断された状態は、注射針24がカートリッジ26内の物質の注射を成功させるのに適した位置にはないことを示す。したがって、コントローラー34は、回路32への通電が遮断されているときには注射器10に動作をさせないように、たとえばカートリッジ26内の物質の注射をさせず、または中断させるように構成されている。たとえばコントローラー34が、カートリッジ26からの物質の排出に関与する駆動機構21(図2A図3A図4A参照。)を中断させ、または停止させるように構成されていてもよい。ただし、発明はこれには限定されない。必要に応じてコントローラー34が、たとえばエラーメッセージを音声、および/または視覚的なもの等として出力するようにも構成されていてもよい。回路32が閉じていることは、注射針24が皮膚の表面1の下、少なくとも所望の深さにあることを示す。コントローラー34は、回路32への通電が可能であることを示すフィードバックを受けると、注射器10に動作、たとえば、注射針24によるカートリッジ26内の物質の注射を開始させ、または再開させるように構成されている。
【0024】
さらに好ましくは、アーム36が弾性的に屈曲可能であるので、皮膚の表面1から受ける外力が弱まると、アーム36が回路32の接触面32aから離れて自然な形状へ戻るように構成されている。したがって、たとえば、注射器10と皮膚の表面1との間で注射針24が移動することにより、注射針24がもはや最小深度、またはそれよりも深くまでは皮膚の表面1を突き抜けていない状態になることは、皮膚の表面1によってアーム36に加えられる外力がもはや、アーム36を接触面32aと結合するように付勢するのには不十分であることに相当する。したがって、アーム36が接触面32aから解放され、回路32への通電を遮断する。それ故、コントローラー34は、先に説明されたとおり、適切な動作を行う。このようにアーム36は、注射器10と皮膚の表面1との間で相対的に移動することにより、皮膚の表面1の下における注射針24の深さに相関する動的なフィードバックを、ほぼリアルタイムで返す。
【0025】
弾性的に屈曲可能なアーム36の他の利点には、ヒステリシス効果がないことが含まれる。さらに、使用者には、使用前においてアーム36に対し、何らの校正をも加える必要がない。注射器10が使用されるまではアーム36がハウジング12内に収められているので、アーム36がダメージを受ける可能性が抑えられる。その上、アーム36の屈曲が弾性的であるので、注射針の深さの監視にアーム36を、たとえば注射が行われる時間の全体にわたって使い続けることができる。
【0026】
本発明の広い概念から逸脱することなく、上記の実施形態に変更が加えられてもよいことは、当業者には理解されるであろう。それ故、本発明が、開示された特定の実施形態には限定されず、添付の請求の範囲によって定義されているような本発明の精神と範囲との中で行われる修正にも及ぶことを意図していることは、理解される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】