(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】携帯用可搬工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20220316BHJP
B25F 3/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 D
B25F5/00 G
B25F3/00 A
B25F5/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529485
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2018082545
(87)【国際公開番号】W WO2020108727
(87)【国際公開日】2020-06-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599130287
【氏名又は名称】ルーカス ヒュードラウリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ザウアービアー、カルステン
(72)【発明者】
【氏名】リットウィン、トーマス
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA05
3C064AA20
3C064AB01
3C064AB03
3C064AC02
3C064AC03
3C064AC05
3C064AC08
3C064AD02
3C064BA11
3C064BA12
3C064BA33
3C064BB02
3C064BB04
3C064BB07
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA07
3C064CA25
3C064CA27
3C064CA28
3C064CA54
3C064CA62
3C064CA86
3C064CA87
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB28
3C064CB63
3C064CB69
3C064CB71
(57)【要約】
本発明は、携帯用の、拡張装置、切断装置、又は、切断及び拡張機能を有する複合装置といった可搬工具1であって、ハウジング12と、前記ハウジング12内に配置された電動機と、前記工具1に設置された充電式電池18又は外部の電気エネルギー源に接続するための接続部の形をした、エネルギー供給部と、作業、より具体的には、拡張作業、及び/又は、切断作業、及び/又は、持ち上げ及び/又は加圧作業を実施するための、機械式又は油圧式に駆動される変位可能なピストン棒5と、電子部品9が配置された少なくとも1つのプリント回路基板8を備える、前記電動機3の開ループ及び/又は閉ループ制御用の電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットと、接続手段11を有し、制御用信号を送信するための制御ケーブル10と、を備える可搬工具1に関する。この工具が、単純な設計を有しながら水中でも動作可能であるために、前記電動機3として、ブラシレス直流電動機3が設けられており、前記プリント回路基板8の前記電子部品9は、水の侵入を妨げるために埋込用樹脂17によって包囲されており、前記制御ケーブル10の接続手段11は、水の侵入に対して保護されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用の、拡張装置、切断装置、又は、切断及び拡張機能を有する複合装置といった可搬工具であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された電動機と、
前記工具に設置された充電式電池又は外部の電気エネルギー源に接続するための接続部の形をした、エネルギー供給部と、
作業、具体的には、拡張作業、及び/又は、切断作業、及び/又は、持ち上げ及び/又は加圧作業を実施するための、機械式又は油圧式に駆動される変位可能なピストン棒と、
電子部品が配置された少なくとも1つのプリント回路基板を有する、前記電動機の開ループ及び/又は閉ループ制御用の電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットと、
前記プリント回路基板に接続するための接続手段を有し、前記制御ユニットに信号を送信するための少なくとも1つの制御ケーブルと、を備える可搬工具において、
前記電動機として、ブラシレス直流電動機が設けられており、
前記プリント回路基板の前記電子部品は、水の侵入を妨げるために埋込用樹脂によって包囲されており、
前記制御ケーブルの前記接続手段は、水の侵入に対して保護されていることを特徴とする、可搬工具。
【請求項2】
前記接続手段として、プラグイン接続部、又は、はんだ接続部が設けられている、請求項1に記載の可搬工具。
【請求項3】
前記埋込用樹脂の前記はんだ接続部は、外部に対して閉鎖されている、請求項1又は2に記載の可搬工具。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記ハウジングが水に浸かった時に前記ハウジングの内部に水が浸入することを防ぐための保護及び/又はシール手段が設けられていない、請求項1~3のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項5】
前記電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットは、電子部品が配置されたさらなるプリント回路基板を有する制御パネル及び/又はディスプレイを備え、前記プリント回路基板の前記電子部品も、水の侵入を防ぐために埋込用樹脂で包囲されている、請求項1~4のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項6】
前記電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットは、電子部品が配置されたさらなるプリント回路基板を有するセンサを備え、前記プリント回路基板の前記電子部品も、水の侵入を防ぐために埋込用樹脂で包囲されている、請求項1~5のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項7】
2つのプリント回路基板が、同一のプリント回路基板基材から成り、一方のプリント回路基板は、他方のプリント回路基板から切り離された領域として構成されており、前記2つのプリント回路基板は、制御ケーブルを介して接続されており、いずれの場合も、はんだ接続部が、両前記プリント回路基板上の接続手段として設けられている、請求項5又は6に記載の可搬工具。
【請求項8】
水から保護されていない、前記電動機と前記エネルギー供給部との電気接点が設けられている、先行する請求項1~7のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項9】
前記電動機にエネルギー供給するための電力ケーブル用の電気接続部が、前記接続部が水で包囲された場合でも、前記工具の電気的動作状態中に電気導通媒体としての水を介した短絡が起こらないことを確保する十分な間隔を置いて設けられている、請求項1~8のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項10】
前記制御パネルは、メンブレンキーボードを含む、請求項5~7のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項11】
前記メンブレンキーボードは、前記さらなるプリント回路基板の領域に設けられている、請求項10に記載の可搬工具。
【請求項12】
前記制御パネル、好ましくは前記メンブレンキーボードの前端は、埋込用樹脂で覆われている、請求項1~11のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項13】
前記制御パネルの前端の領域において、前記制御パネルの全周にわたって延びると共に外側において前記制御パネルの突出部で覆われた隙間が設けられている、請求項12に記載の可搬工具。
【請求項14】
前記充電式電池を収容するために、前記充電式電池との接点を形成するためのオープンコンタクトピンが中に配置された挿入孔が設けられている、請求項1~13のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項15】
前記コンタクトピンは、前記コンタクトピンが水に包囲された場合でも、前記工具の電気的動作状態中に電気導通媒体としての水を介した短絡が起こらないことを確保する十分な間隔をおいて配置されている、請求項14に記載の可搬工具。
【請求項16】
オン/オフスイッチとして、メンブレンスイッチが設けられている、請求項1~15のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項17】
前記埋込用樹脂として、PU、エポキシ、又はシリコーンベースの埋込用樹脂が使用される、請求項1~16のいずれかに記載の可搬工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、例えば、拡張装置、切断装置、若しくは、切断及び拡張機能を有する複合装置、又は、持ち上げシリンダ(救助シリンダ)といった、携帯用の電気機械式又は電気油圧式工具に関する。上記の工具は、好ましくは救助作業に使用される。
【背景技術】
【0002】
ここで述べる種類の、可搬かつモータ駆動型の電気機械式工具や電気油圧式工具又は救助装置は、種々の用途に用いられる。例えば、事故に遭った車両から負傷者を救助したり地震の被災者を救出したりするために救急隊(消防隊)によって使用される、拡張装置、切断装置、又は、いわゆる複合装置(つまり、切断及び拡張機能を有する装置)、及び、救助シリンダが存在する。この場合、工具又は救助装置には多くの種類がある。好ましくは硬化された、切断、拡張、又は、加圧用工具インサートを備える電気油圧駆動若しくは電気機械駆動の工具または救助装置が存在する。このような装置は、使用時に極めて高い機械的要求が課され、使用場所によって多様な環境的影響(熱、寒さ、湿気)に曝される。
【0003】
この場合、特に救助装置は、使用時に極めて高い動作信頼性を確保することが特に重要である。なぜなら、救助作業は常に迅速に実行される必要があり、したがって、運転に突然故障が生じると、致命的な結果を導き得るからである。
【0004】
加えて、例えば、事故に遭った車両が湖、川、又は、水路の中に突っ込んだ場合といった特定の救助状況では、工具を水中で操作する必要がある。このような状況で、閉じ込められた人をその破損車両から助け出すことは、極めて困難であった。また、このような状況では、水が侵入する可能性があるため、救助のための時間もさらに少なくなる。しかしながら、上述の装置は、水中での使用には適していなかった。
【0005】
(先行技術文献)
G 93 10 597.5(ドイツ特許公報)は、例えばポンプの形の、電池駆動型水中用電気装置を開示している。この水中用電気装置は、O型シールリングが円周溝に挿入されたハウジング端部が圧入された防水性の管状ハウジングを備えている。この構造は、極めて複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、一方で、水中での使用が可能であり、他方で、単純な構造手段により実現可能な工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。有効な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0008】
電動機としてブラシレス直流電動機が設けられており、水の侵入を妨げるために、プリント回路基板の電子部品が埋込用樹脂によって包囲されており、制御ケーブルの接続要素が、水の侵入に対して保護されていることにより、比較的単純な構造手段で、水がハウジングの内部に浸透した場合でも可搬工具を操作可能であることが確保される。具体的には、この工具は、必要に応じて水中で操作することが可能である。この追加的な極めて大きな機能的利点を確保するために、従来の工具に対して比較的微小な設計変更しか必要ない。本発明に係る工具を、具体的には、例えば車両が中に人が残された状態で水に包囲された場合に、救助目的で使用することも可能である。この新規の工具によれば、極めて迅速に破損車両から人を救助可能である。
【0009】
プリント回路基板上の制御ケーブル用の接続手段として、プラグイン接続部、又は、はんだ接続部が設けられていることが可能である。はんだ接続部を水の侵入に対して密封することは、はんだ接続部を埋込用樹脂で封入することによって行われる。
【0010】
具体的には、本発明に係る工具では、ハウジングが水に浸かった時にハウジングの内部に水が浸入することを防ぐための保護及び/又はシール手段を、工具のハウジングに設ける必要がない。このような保護又はシール手段は、特に複雑なハウジングの場合、構造が極めて複雑かつ高コストとなる場合が多い。
【0011】
具体的には、本発明に係る工具は、制御線を接続するための接続手段を有しており、接続手段は水の侵入に対して保護されている。制御線自体は、通常、防水性絶縁体を有している。各制御線がこの密封された接続手段を有していることが、都合がよい。各接続手段の一部は、プリント回路基板側に配置されていてもよく、好ましくは部分的にその中に埋め込まれていてもよい。その反対側にある接続手段の部分は、制御線上に位置している。接続手段は、例えばO型リングを用いて密封されたプラグイン接続部又はプラグイン/回転接続部であり得る。
【0012】
ハウジングが水に浸かった時にハウジングの内部に水が浸入することを防ぐための保護及び/又はシール手段を、ハウジングが含んでいなくてもよい点が利点である。
【0013】
電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットが、浸水を防ぐために埋込用樹脂で包囲された電子部品を配置可能なさらなるプリント回路基板を有する、ディスプレイ及び/又は制御パネルを含んでいることが都合がよい。このさらなるプリント回路基板は、ハウジング内に離隔して配置されたメインプリント回路基板に、上述の制御線を介して接続可能である。
【0014】
電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットは、同じく浸水を防ぐために埋込用樹脂で包囲された電子部品が配置されたさらなるプリント回路基板を有するセンサを含んでいることが可能である。このさらなるプリント回路基板は、上述の制御線を介して制御可能、又は、ハウジング内に離隔して配置されたメインプリント回路基板に接続可能である。
【0015】
また、2つのプリント回路基板は同一のプリント回路基板基材、又は、電子部品が搭載されたプリント回路基板ベースプレートから成り、一方のプリント回路基板は、他方のプリント回路基板(残りのプリント回路基板基材又はプリント回路基板ベースプレート)から切り離された領域として規定されており、これら2つのプリント回路基板は、組み立て工程において事前に制御ケーブルを介して接続される。1つまたは複数の制御ケーブルの接続手段として、はんだ接続部を設けることが可能である。これによって、制御ケーブルを備える2つのプリント回路基板を、1つの製造工程で製造可能となり、埋込用樹脂による単純な方法で、電子部品自体だけでなく、両プリント回路基板用の制御線用の接続手段も、水の侵入から保護することが可能になる。
【0016】
電動機とエネルギー供給部の配線との間の電気接点は、水から保護されていないことが都合がよい。これによって、構成を大幅に簡略化できる。
【0017】
具体的には、電動機へのエネルギー供給のための電力ケーブルの電気接続部は、(例えば、公称電圧が24ボルトの)工具が電気的動作状態にある間に接続部が水に包囲された場合でも、電気導通媒体としての水を介した短絡が生じないことを確保する十分な間隔を置いて配置されていることが可能である。
【0018】
電力ケーブルは、合計3連(3相)のケーブルであることが好ましい。
【0019】
さらに、工具には、制御パネルが設けられていることが可能である。この制御パネルは、防水性メンブレンキーボード、つまり、メンブレン層を有していることが可能である。制御パネル又はメンブレンキーボードの領域又は下方に、プリント回路基板が設けられていることが可能である。このさらなるプリント回路基板は、上述の制御線を介して制御可能であり、又は、ハウジング内に離隔して配置されたメインプリント回路基板に接続可能である。
【0020】
制御パネル、好ましくはメンブレンキーボードの前端も、埋込用樹脂によって覆われていることが可能である。したがって、埋込用樹脂は、メンブレン層を横方向に制御パネルの周囲に沿って密封している。
【0021】
特に、制御パネルの前端からこれを包囲するハウジングまでの領域において、埋込用樹脂を収容するために、隙間が、好ましくは制御パネルの全周にわたって設けられていることが可能である。
【0022】
さらに、この隙間は、外側において、制御パネルの突出部によって覆われていること、つまり、当該突出部と重なっていることが可能である。こうして、突出部により埋込用樹脂が「流れ出す」ことが回避されるため、この構造体を逆さまにして埋込用樹脂で鋳造することが可能である。
【0023】
充電式電池を収容するために、充電式電池との接点を形成するための、水から保護されていないオープンコンタクトピンが中に配置された挿入孔が設けられていることが好ましい。
【0024】
コンタクトピンについても、コンタクトピンが水に包囲された場合でも、工具の電気的動作状態中に電気導通媒体としての水を介した短絡が起こらないことを確保する十分な間隔をおいて配置されていることが都合がよい。
【0025】
ここに記載する種類の制御線は、プリント回路基板を互いに接続させることが可能である。
【0026】
オン/オフスイッチとして、メンブレンスイッチが設けられていることが可能である。
【0027】
埋込用樹脂として、好ましくは、PU、エポキシ、又は、シリコーンベースの埋込用樹脂が用いられる。温度が上昇する場合には、シリコーンベースの埋込用樹脂が特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。明瞭にするために、重複する特徴は、1つの参照記号を付して一回のみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明に係る、電気油圧式の電池駆動型切断装置の形をした工具の一例を示す全体図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載の切断装置の流体回路図の一例である。
【
図3】
図3は、
図1に記載の本発明に係る工具のハウジング領域を示す部分断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の範囲において使用するためのプリント回路基板アセンブリの一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明に係る、ディスプレイアレンジメントを有する制御パネルの一例を示す平面図である。
【0030】
(実施の形態)
図1の参照番号1は、本発明に係る工具全体の一例を示している。
図1に示される実施形態では、工具1は、電気油圧式の電池駆動型切断装置(カッター)である。工具1は、ハウジング12を含み、ハウジング12の中には、ブラシレス直流電動機の形の電動機3、油圧ポンプ2、及び、油圧油30が入った油圧タンク19が配置されている(
図2及び
図3も参照)。加えて、工具1の動作中に油圧油の量を補償するための補償装置が設けられている。これは、例えば、柔軟膜又は全体的に柔軟な油圧タンクであり得る。ハウジング12には、ディスプレイ14とオン/オフスイッチ13とを備える制御パネル25が取り付けられている。操作者は、ディスプレイ14上で動作状態を読み取ることが可能である。ハウジングの後部には、充電式電池18用の挿入孔26が設けられている。充電式電池の代わりに、エネルギー供給ユニット(
図1では図示されていない)を、ここに挿入してもよい。この工具を操作するための公称電圧は、例えば24ボルトである。
【0031】
図示される例では、2つの工具半体(
図1に示される実施形態では、切断工具半体)35a及び35bが、工具1の前側に配置されている。2つの切断工具半体11a及び11bは、ピストン棒(
図1では図示されていない)を介して駆動される。ピストン棒は、油圧シリンダ4内に配置されている。第1のハンドル15が、油圧シリンダ4の領域に配置されている。第2のハンドル16が、ハウジング12に設けられている。したがって、工具1を、操作者が両手で案内又は操作することが可能である。手動で操作される油圧弁6を用いて、操作者は、第2のハンドル16に置いた手で、ピストン棒が後退する(工具半体35a及び35bが閉じられる)若しくは前進する(工具半体35a及び35bが開かれる)ように、又は、油圧油が供給回路、すなわち油圧タンクに戻る(バイパス動作)ように油圧流の方向を手動で制御可能である。
【0032】
図1に示される制御弁6の実施形態は、ハンドル16の軸の延長線で回転可能な制御弁であり、操作者が切替位置を制御するために回転させる、いわゆる星形ハンドルを有する制御弁である。ハウジング12は、接続要素7、例えばネジを介して互いに接続された2つのハウジングシェルを含む(
図3を参照)。ハウジング12が水に浸かった時にハウジング12の内部への浸水から保護するためのシールは設けられていない。
【0033】
ここで対象となっている工具は、どんな空間的配置又は配向でも動作可能である。
【0034】
上述の切断装置の代わりに、本発明は、拡張装置、切断及び拡張機能を有する複合装置、又は、持ち上げシリンダ若しくはレスキューシリンダとして設計されていてもよい。シリンダ、例えば油圧シリンダ内を案内されるピストン棒は、これらの全ての装置において使用される。
【0035】
図2は、
図1に記載の工具の流体回路図の一例である。電動機は、偏心軸36を介して2つのピストン圧縮機2a及び2bを駆動するブラシレス直流電動機である。ピストン圧縮機2bは、ピストン圧縮機2aよりも大きい流量を有していることが可能である。ピストン圧縮機2bの送出流は、例えば、圧力切替弁32に通じる。ピストン圧縮機2aの送出流も、制御信号として、圧力切替弁32に通じる。圧力切替弁32は、バネ力によって特定の圧力切替値に設定可能である。ピストン圧縮機2aの制御線における圧力がこの圧力切替値を超えると、圧力切替弁32が開いて、ピストン圧縮機2bの送出流がタンク19の中に流入する。こうして、このシステムが必要とする駆動力は、利用可能な駆動力の範囲内で維持されることが確保される。
【0036】
送出流はさらに、切替弁6の方向と圧力停止弁31の方向とに分岐する。圧力停止弁31は、バネ力によって許容システム圧力に設定される。圧力が設定された許容システム圧力を超えると、圧力停止弁31が開いて、圧力が再び許容圧力以下に低下するまで、送出流がタンクに戻るように流れることが可能になる。
【0037】
制御弁6は、ユーザが星形ハンドルを用いることにより手動で動作される(
図1を参照)。この弁は、中立位置において、バネ補助によるリセット機能を有している。(図示されるような)中立位置では、この弁は中央位置に配置される。この位置において、全ての接続線は、圧力が形成できずシステムが動かないようにタンクに接続されている。制御弁6を、例えば右側に偏向させると、左側の接続線において加圧された送出流が、放出可能なダブル逆止弁28の方向に運ばれる。右側の接続線では、放出可能なダブル逆止弁28の方向から来た油圧油が、タンク19に戻る。制御弁6を左側に偏向させると、上述とは逆のプロセスが行われ、最終的に装置の運動方向が逆になる。放出可能なダブル逆止弁28の左側の接続線に運ばれた送出流は、左側の接続線におけるバネ仕掛けのチェック弁を開くと共に、右側の接続線に導かれる制御線を介して、そこに設けられたチェック弁も開く。これによって、一方では、送出流が、確実にこの装置の油圧シリンダ4に供給可能となる。他方では、油圧シリンダ4によってシリンダから右側に押しやられた油圧油が、右側の接続線の放出可能なダブル逆止弁28を通って、当該システムのタンク19に戻ることが可能になる。
【0038】
油圧シリンダ4は、両接続部において、安全弁29及び30への分岐路を有している。これらの安全弁29及び30は、シリンダチャンバ内の圧力が、許容される以上に高くなり得ないことを確保する。一方又は両方のシリンダチャンバ内の圧力が安全性に関連した許容圧力よりも高くなると、これらの弁は、圧力が再び低下するようにタンク19への接続を開放する。例えば、油圧シリンダ4のピストンに外部から作用する力が油圧油も圧縮するため、油圧シリンダ4の内部の圧力は上昇し得る。油圧シリンダ4のピストン棒5には、例えば刃や拡張器等を動かす装置が取り付けられる。タンク19は、例えば軟質ゴムベローズとして設計することが可能であり、同時に、補償装置としても機能する。
【0039】
図3は、
図1の工具1のハウジング12の領域の内部を示す部分断面図である。開ループ及び閉ループ制御のための電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットは、具体的にはブラシレス直流電動機への電源供給に関連する電子部品9を備えるプリント回路基板8を含む。さらに、オン/オフスイッチ13の領域に、独自のプリント回路基板20を含むディスプレイ14を有する制御パネルが設けられている。ディスプレイ14の制御パネルは、防水性メンブレンキーボードであることが好ましい。このメンブレンキーボードを用いて、必要な操作を行うことが可能である。また、さらなるプリント回路基板22が、制御弁6の領域に設けられており、このプリント回路基板22上には、センサ21、具体的には磁気センサが、制御弁6の星形ハンドルの偏向を検出するための電子部品として配置されている。星形ハンドルを回転させると、制御弁6の油圧位置が変わるだけでなく、星形ハンドルの角度位置を介して、電動機がオン又はオフされる、及び/又は、ターボ機能がオン及び/又はオフされる。センサ21は、プリント回路基板20に制御線10aを介して接続されている。プリント回路基板20は、メインプリント回路基板であるプリント回路基板8に、さらなる制御線10bを介して接続されている。制御線10bは、プリント回路基板20及び/又はプリント回路基板8に、防水性接続手段11を介して接続されている。各接続手段11の一部が、プリント回路基板側に配置されることが可能であり、好ましくは部分的にその中に埋め込まれることが可能である。その反対側にある接続手段11の部分は、制御線10a又は10b上に位置している。接続手段11は、例えばO型リングといった(図示されていない)シール手段によって密封された、プラグイン接続部及び/又は回転接続部である。
【0040】
制御線10a及び/又は10bは、それぞれ、制御信号が送信される線である。
図3に示される実施形態では、プリント回路基板20の電子部品とセンサ21のプリント回路基板22とに対する制御線10aの接続手段11として、例えばはんだ接続を介したプリント回路基板への直接接続が設けられている。
図3では、プリント回路基板8とプリント回路基板20との間の制御線10bの接続手段11として、プラグイン接続部及び/又は回転接続部が設けられている。
【0041】
さらに、プリント回路基板8の領域では、電動機3のエネルギー供給用の電力ケーブルが配置されており、この電力ケーブルは、充電式電池やエネルギー供給ユニット用のコンタクトピン27に電気的に接続されている。図示の例では、3つの電力ケーブル23a、23b、及び、23cによる3相接続が存在する。具体的には、電動機3のエネルギー供給用の電力ケーブル23a、23b、及び、23cの電気接続部24a~24cが、(例えば、公称電圧が24ボルトの)工具が電気的動作状態にある間に接続部24a~24cが水に包囲された場合でも、電気導通媒体としての水を介した短絡が起こらないことを確保する十分な間隔を置いて配置されていることが可能である。電動機3には対応する接続部も設けられているが、
図3では視認できない。
【0042】
挿入孔28の領域には、水から保護されていないオープンコンタクトピン27が、充電式電池(
図4には示されていない)又はエネルギー供給ユニットとの電気コンタクトのために設けられている。コンタクトピン27についても、コンタクトピン27が水に包囲された場合でも、工具の電気的動作状態中に電気導通媒体としての水を介した短絡が起こらないことを確保する十分な間隔をおいて配置されている。コンタクトピン27及びプリント回路基板8は、ハウジング部品12a(電池ホルダ)に取り付けられている。制御線10bは、水から保護された接続手段11を含む。
【0043】
図5の部分拡大図からは、埋込用樹脂17によって包囲された、プリント回路基板20の電子部品9が視認可能である。
図5では、プリント回路基板20用の接続手段11のプリント回路基板側の部分も視認可能である。制御パネル25は、メンブレンキーボードとして設計されている。これは、サンドイッチ型のメンブレン層構造体である。制御パネル25、つまりこの構造体の前端も、埋込用樹脂17によって覆われている。このために、制御パネル25の前端の領域には、好ましくは制御パネル25の全周にわたって延びる、ハウジング12に対する隙間37が設けられているのが分かる。この隙間37は、外側において、制御パネル25又はメンブレンキーボードの突出部38(例えば、ハウジング12の段部39に接着され、先端が突出したメンブレン層の形をした)によって覆われており、円周方向に延びる環状の止まり孔が形成されている。この止まり孔は、埋込用樹脂17で充填可能である。このようにして、全領域を埋込用樹脂17で「オーバーヘッド」式に埋め込み可能である。
【0044】
図6の部分拡大図は、星形ハンドルの偏向を判定するための磁気センサ21を示している。磁気センサ21は、ポケット型の凹部の形をしたセンサホルダ33の中に配置された、当該センサ専用のプリント回路基板22上に配置されている。磁気センサ21及びプリント回路基板22は、センサホルダ33の外側から、埋込用樹脂17で封止されている。したがって、埋込用樹脂17は、センサホルダ33のポケット型の凹部を外部に対して閉鎖している。プリント回路基板22から制御パネル又はディスプレイ14のプリント回路基板20まで延びる制御線10aも、プリント回路基板22に接続されていると共に埋込用樹脂17によって包囲されている。そこでは、制御線10aの端部領域も、埋込用樹脂17によって包囲されている。
【0045】
図7は、電子部品9を備える2つのプリント回路基板20及び22(プリント回路基板22は、例えば磁気センサ21の形の電子部品を備える)の、組み立て前の初期状態を示している。これらは、同一のプリント回路基板基材から成る。プリント回路基板22は、他方のプリント回路基板20から切り離された領域として規定されている。これらの2つのプリント回路基板20及び22は、制御ケーブル10aを介して接続されている。これら両プリント回路基板20及び22上の各接続手段11として、はんだ接続部が設けられている。また、プリント回路基板22を切り離すために破壊する必要がある2つの所定分離点40が設けられており、これによって、配線を有するプリント回路基板22を切り離すことが可能となっている。接続手段11は、後にプリント回路基板20及び22を鋳造する際に、埋込用樹脂17で包囲される。
【0046】
図8は、オン/オフスイッチ13と、様々なディスプレイ及び制御パネルを有するディスプレイ14とを備える制御パネル25を単独で示す拡大図である。制御パネル25は、防水性メンブレンキーボードとして設計されていることが好ましい。
【0047】
本発明は、ハウジング12を密封することなく、水中でも工具1の操作を可能にする。この新規の重要な機能は、複雑な改造を行うことなく、又は、製造費を大幅に増加させることなく実現可能である。
【0048】
プリント回路基板8、20、及び/又は、22の電子部品とは、具体的には、マイクロコントローラ、周波数変換器、メモリモジュール、電子スイッチ、測定装置であり、測定装置とは、例えば、集積半導体温度センサ及び/又はLEDである。
【0049】
ディスプレイ14は、ディスプレイ装置を含み、ディスプレイ装置には、例えば、負荷ディスプレイ及び/又は動作状態ディスプレイ及び/又は温度ディスプレイが含まれ得る。
【0050】
充電式電池18は、1つの防水性ハウジング、又は、少なくとも1つの独立した防水カプセルを含む。
【0051】
オン/オフスイッチ13は、防水性オン/オフスイッチであり、例えば、メンブレンスイッチ又はプッシュボタンスイッチである。
【0052】
埋込用樹脂として、好ましくは、PU、エポキシ、又は、シリコーンベースの埋込用樹脂を用いることができる。工具1の動作中に温度が上昇する場合には、シリコーンベースの埋込用樹脂が特に適している。
【0053】
充電式電池18の代わりに、ネットワークにケーブルを介して接続されたエネルギー供給ユニット(図示されていない)を、挿入孔26に挿入してもよい。
【0054】
なお、個別の特徴及び準特徴の組み合わせも、本発明の本質として見なされ、本願の開示内容に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0055】
1 工具
2a ピストン圧縮機
2b ピストン圧縮機
3 電動機
4 油圧シリンダ
5 ピストン棒
6 制御弁
7 接続要素
8 プリント回路基板
9 電子部品
10 制御ケーブル
11 接続手段
12 ハウジング
12a ハウジング充電式電池ホルダ
13 オン/オフスイッチ
14 ディスプレイ
15 第1のハンドル
16 第2のハンドル
17 埋込用樹脂
18 充電式電池
19 油圧タンク
20 プリント回路基板
21 磁気センサ
22 プリント回路基板
23a 電力ケーブル
23b 電力ケーブル
23c 電力ケーブル
24a 電気接続部
24b 電気接続部
24c 電気接続部
25 制御パネル
26 挿入孔
27 コンタクトピン
28 チェック弁
29a 安全弁
29b 安全弁
30 油圧流
31 圧力停止弁
32 圧力切替弁
33 センサホルダ
34 磁気ホルダ
35a 工具半体
35b 工具半体
36 偏心軸
37 隙間
38 突出部
39 段部
40 所定分離点
【手続補正書】
【提出日】2021-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用の、拡張装置、切断装置、又は、切断及び拡張機能を有する複合装置といった可搬工具であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された電動機と、
前記工具に設置された充電式電池又は外部の電気エネルギー源に接続するための接続部の形をした、エネルギー供給部と、
作業、具体的には、拡張作業、及び/又は、切断作業、及び/又は、持ち上げ及び/又は加圧作業を実施するための、機械式又は油圧式に駆動される変位可能なピストン棒と、
電子部品が配置された少なくとも1つのプリント回路基板を有する、前記電動機の開ループ及び/又は閉ループ制御用の電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットと、
前記プリント回路基板に接続するための接続手段を有し、前記制御ユニットに信号を送信するための少なくとも1つの制御ケーブルと、を備える可搬工具において、
前記電動機として、ブラシレス直流電動機が設けられており、
第1のプリント回路基板の前記電子部品は、水の侵入を妨げるために埋込用樹脂によって包囲されており、
前記制御ケーブルの前記接続手段は、水の侵入に対して保護されて
おり、前記接続手段としてプラグイン接続部が設けられており、
前記ハウジングには、前記ハウジングが水に浸かった時に前記ハウジングの内部に水が浸入することを防ぐための保護及び/又はシール手段が設けられておらず、
前記充電式電池を収容するために、前記充電式電池との接点を形成するための、水から保護されていないオープンなコンタクトピンが中に配置された挿入孔が設けられており、
前記コンタクトピンは、前記コンタクトピンが水に包囲された場合でも、前記工具の電気的動作状態中に電気導通媒体としての水を介した短絡が起こらないことを確保する十分な間隔をおいて配置されていることを特徴とする、可搬工具。
【請求項2】
前記電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットは、電子部品が配置された
第2のプリント回路基板を有する制御パネル及び/又はディスプレイを備え、前記
第2のプリント回路基板の前記電子部品も、水の侵入を防ぐために埋込用樹脂で包囲されている、請求項
1に記載の可搬工具。
【請求項3】
前記電子式開ループ及び閉ループ制御ユニットは、電子部品が配置された
第3のプリント回路基板を有するセンサを備え、前記
第3のプリント回路基板の前記電子部品も、水の侵入を防ぐために埋込用樹脂で包囲されている、請求項
1又は2に記載の可搬工具。
【請求項4】
前記第2のプリント回路基板及び前記第3のプリント回路基板が、同一のプリント回路基板基材から成り、
前記第3のプリント回路基板は、
前記第2のプリント回路基板から切り離された領域として構成されており、前記
第2及び第3のプリント回路基板は、制御ケーブルを介して接続されており、いずれの場合も、はんだ接続部が、
前記第2及び第3のプリント回路基板上の接続手段として設けられている、請求項
2又は3に記載の可搬工具。
【請求項5】
水から保護されていない、前記電動機と前記エネルギー供給部との電気接点が設けられている、請求項1~
4のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項6】
前記電動機にエネルギー供給するための電力ケーブル用の電気接続部が、前記接続部が水で包囲された場合でも、前記工具の電気的動作状態中に電気導通媒体としての水を介した短絡が起こらないことを確保する十分な間隔を置いて設けられている、請求項1~
5のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項7】
前記制御パネルは、メンブレンキーボードを含む、請求項
2~
4のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項8】
前記メンブレンキーボードは、前記
第2のプリント回路基板の領域に設けられている、請求項
7に記載の可搬工具。
【請求項9】
前記制御パネル、好ましくは前記メンブレンキーボードの前端は、埋込用樹脂で覆われている、請求項1~
8のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項10】
前記制御パネルの前端の領域において、前記制御パネルの
好ましくは全周にわたって延びると共に外側において前記制御パネルの突出部で覆われた隙間が設けられている、請求項
9に記載の可搬工具。
【請求項11】
メンブレンスイッチであるオン/オフスイッ
チが設けられている、請求項1~
10のいずれかに記載の可搬工具。
【請求項12】
前記埋込用樹脂として、PU、エポキシ、又はシリコーンベースの埋込用樹脂が使用される、請求項1~
11のいずれかに記載の可搬工具。
【国際調査報告】