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特表2022-519426フレキシブルで生分解性かつ生体適合性のスーパーコンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】フレキシブルで生分解性かつ生体適合性のスーパーコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/52 20130101AFI20220316BHJP
   H01G 11/48 20130101ALI20220316BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20220316BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20220316BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20220316BHJP
【FI】
H01G11/52
H01G11/48
H01G11/42
H01G11/36
H01G11/62
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530199
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 IB2018059391
(87)【国際公開番号】W WO2020109841
(87)【国際公開日】2020-06-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519100354
【氏名又は名称】バイオ-オン エス.ピー.エイ
【氏名又は名称原語表記】BIO-ON S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】パオロ サエットネ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ チフェリ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ ミグリオリニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ ゼネラリ
(72)【発明者】
【氏名】トマッソ サンタニエッロ
(72)【発明者】
【氏名】イラリア モナコ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ミラーニ
(72)【発明者】
【氏名】マウロ コメス フランチーニ
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078BA13
5E078BA15
5E078BA18
5E078BA29
5E078CA06
5E078CA12
5E078DA05
5E078DA13
(57)【要約】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び少なくとも1つの電解質を含む少なくとも1つのセパレータによって分離された少なくとも2つの電極を具えたスーパーコンデンサ、及び関連する製造プロセスを開示する。このスーパーコンデンサは、フレキシブルで生分解性かつ生体適合性であり、製造コストを低減して作製することができ、例えば生物有機体の内部で使用しなければならない電子デバイス内に集積することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのセパレータによって分離された少なくとも2つの電極を具えたスーパーコンデンサであって、該セパレータは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び少なくとも1つの電解質を含むスーパーコンデンサ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの電極は導電材料を含み、該導電材料は、好適には金、銀、アルミニウム、炭素繊維、活性炭繊維、活性炭、カーボンゲル、メソカーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ポリアニリン、(PANI)、ポリピロール(PPY)、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)(PPV)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、または他のポリチオフェン誘導体から選択される、請求項1に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項3】
前記PHAが、化学式(I):
-O-CHR1-(CH2)n-CO- (I)
の複数の繰り返し単位を含有するポリマーであり、
1は、C1-C12アルキル、C4-C16シクロアルキル、C2-C12アルケニルから選択され、任意で、ハロゲン(F、Cl、Br)、-CN、-OH、-OOH、-OR、-COOR(R=C1-C4アルキル、ベンジル)から選択した少なくとも1つの基で置換され、
nは0または1から6までの整数であり、好適には1または2である、請求項1または2に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項4】
前記PHAが、ホモポリマー、またはコポリマー、またはターポリマーであり、好適にはホモポリマーであり、より好適にはポリヒドロキシブチラート(PHB)である、請求項3に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項5】
前記セパレータが、10重量%から90重量%まで、好適には30重量%から80重量%までの前記PHA、及び10重量%から90重量%まで、好適には20重量%から70重量%までの前記電解質を含み、これらの百分率は前記セパレータの重量に対して表される、請求項1~4のいずれかに記載のスーパーコンデンサ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電解質がイオン液体であり、好適には、天然アミノ酸の誘導体、天然リグニンの誘導体、合成起源のイオン液体から選択される、請求項1~5のいずれかに記載のスーパーコンデンサ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの電解質が、テトラブチルアンモニウム・L-プロリン(TBA・L-Pro)、塩素ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(塩素(Tf2N))、テトラエチルアンモニウム・L-プロリン(TEA・L-Pro)、N-エチル-N-(フラン-2-yl-メチル)エタナミンのリン酸([FurEt2NH][H2PO4])、N-エチル-N-(4-メトキシベンジル)エタナミンのリン酸([p-AnisEt2NH][H2PO4])、N-4-((ジエチルアミン)メチル)-2-メトキシフェノールのリン酸([VanEt2NH][H2PO4])、テトラフルオロホウ酸1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM(BF4))、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIM(Tf2N))、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMIM(Tf2N))から選択される、請求項6に記載のスーパーコンデンサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のスーパーコンデンサを製造する方法であって、
少なくとも2つの電極を用意するステップと、
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び電解質を含む少なくとも1つのセパレータを用意するステップと、
前記電極の各々を前記セパレータの対応する表面に接触するように配置するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのセパレータを用意するステップが、溶媒キャスト法またはエレクトロスピニング法またはエレクトロスプレー法によって前記PHAを前記電解質と混合するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記PHAを前記電解質と混合するステップを溶媒キャスト法により実行し、前記PHAを前記電解質と混合するステップが、
前記PHAを溶媒中に溶解させるステップであって、該溶媒は、好適にはHFIP、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アニリン、及び酢酸から選択されるステップと、
前記溶解させるステップで得られた溶液に、前記電解質、好適にはイオン液体を添加するステップと、
前記電解質を添加した前記溶液をモールド内に注入して、前記溶媒が蒸発するまで前記溶液を置いたままにするステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電解質を添加した前記溶液が、前記PHAを3重量%~20重量%に含まれる濃度で含み、前記電解質を1重量%~20重量%に含まれる濃度で含み、これらの百分率は前記溶液の重量に対して表される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PHAを前記電解質と混合するステップをエレクトロスピニング法により実行し、前記PHAを前記電解質と混合するステップが、
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、好適にはPHBを溶媒中で可溶化させ、少なくとも1つの前記電解質、好適にはイオン液体を前記溶媒中で可溶化させることにより、スピニング溶液を用意するステップであって、前記溶媒は、好適にはHFIP、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アニリン、酢酸から選択されるステップと、
前記スピニング溶液にエレクトロスピニング・プロセスを施し、これによりPHAファイバを得るステップと、
前記PHAファイバをコレクタ上に堆積させて前記セパレータを得るステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記スピニング溶液が、前記PHAを4重量%~10重量%に含まれる濃度で含み、前記電解質を1重量%~25重量%に含まれる濃度で含み、これらの百分率は前記スピニング溶液の重量に対して表される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記PHAを前記電解質と混合するステップをエレクトロスプレー法により実行し、前記PHAを前記電解質と混合するステップが、
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、好適にはPHBを溶媒中で可溶化させ、少なくとも1つの前記電解質、好適にはイオン液体を前記溶媒中で可溶化させることにより、スプレー溶液を用意するステップであって、前記溶媒は、好適にはHFIP、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アニリン、酢酸から選択されるステップと、
前記スピニング溶液にエレクトロスピニング・プロセスを施し、これによりPHA粒子を得るステップと、
前記PHA粒子をコレクタ上に堆積させて前記セパレータを得るステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記スプレー溶液が、前記PHAを4重量%~10重量%に含まれる濃度で含み、前記電解質を1重量%~25重量%に含まれる濃度で含み、これらの百分率は前記スプレー溶液の重量に対して表される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのセパレータを用意するステップが、前記セパレータをエレクトロスピニング法により製造するステップを含み、該エレクトロスピニング法は、前記PHA、好適にはPHB、及び溶媒を含むスピニング溶液から始まり、該溶媒は、好適にはHFIP、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アニリン、酢酸から選択され、少なくとも1つの前記電解質、好適にはイオン液体を前記セパレータに含侵させる、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーコンデンサ(電気二重層コンデンサ、ウルトラコンデンサ、超コンデンサ)に関するものである。特に、本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA:polyhydroxyalkanoate)及び電解質を含むセパレータによって分離された少なくとも2つの電極を具えたスーパーコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
「スーパーコンデンサ」とは電気化学コンデンサを参照し、より低い動作電圧を可能にし、高周波による用途ではいくつかの欠点を有するといえども、その大容量の電荷を蓄積する容量は、従来型コンデンサの電荷を蓄積する容量よりもずっと(約10~100倍)高いことが知られている。
【0003】
エネルギー蓄積容量の観点からは、スーパーコンデンサは、従来型の電解コンデンサと再充電可能な電荷蓄積器(または蓄電池、充電池、バッテリ)との中間にある。後者と比べると、スーパーコンデンサは、ずっと高いピーク電流を有し、製造コストがより低く、過負荷の恐れがなく、かつ腐食性で毒性のあり得る電解質を含有しない。
【0004】
従来型コンデンサと同様に、スーパーコンデンサは、大量の電荷を短時間に充電/放電する必要のある電気工学及び電子工学の全分野で利用され、例えば、自動車分野におけるエンジン始動システム、太陽光発電分野における電圧安定装置、無停電電源、写真用フラッシュ、街路照明用のLED(light emitting diode:発光ダイオード)システム、容量性メモリのようなスタティックRAM(random access memory:ランダムアクセスメモリ)、あるいは医療分野における除細動器において利用されている。
【0005】
スーパーコンデンサは、実質的に、少なくとも2つの電極と、セパレータと、電解質(液体または固体)と、絶縁体とを具えている。これら2つの電極はセパレータによって分離され、セパレータは電解質イオンにとって透過性の膜であるのに対し、絶縁体は2つの電極の一方の外側に配置されている。これらの電極が分極すると、電解質イオンがセパレータを通過して反対電荷の電極に向けて移動する。このことは一対の容量性の二重層の形成を可能にする。
【0006】
コンデンサの容量(即ち、電極上に蓄積される電荷Qと電極間の電位差ΔVとの一定の比率)は、電極の交換表面積に正比例し、最大数の電解質イオンを有する二重層を形成する目的で、高い比表面積及び適切な幾何学的形状を有する電気化学的に不活性の材料を電極として用いることが好ましい。これらの特性を有する材料のうち、最も興味深いものは炭素(カーボン)及び特定の金属酸化物である。
【0007】
電解質は、固体型のものとすることも、有機溶液中または水溶液中のものとすることもできる。有機電解質は、通常、第四級塩を有機溶媒中に溶解させることによって得られ、その電離電圧は2.5Vよりも高くすることができる。代表的な水溶性電解質はKOH、H2SO4であり、これらは約1.2Vの電離電圧を有する。選択した電解質の種類にかかわらず、電解質は、スーパーコンデンサが最大限可能な電圧で動作することを可能にするために、高い伝導度及び適切な電気化学的安定性を有さなければならない。現在、アセトニトリル(CH3CN)系中のテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム(TEATFB:tetraethylammonium tetrafluoroborate)が、スーパーコンデンサ内で用いるのに最良の有機電解質として示されている。この系は、60mS/cmまでの電気伝導度値に達することを可能にする。しかし、アセトニトリルの高い毒性が、この電解質の使用における欠点である。近年発見されたものは、いわゆる「イオン液体」電解質であり、腐食性がないこと、8mS/cmの代表的伝導度(アセトニトリル中に溶解した場合には60mS/cmの伝導度)、150℃までの動作温度を特徴とする。
【0008】
セパレータの目的は、電解質イオンが通過することを可能にすると同時に、過大な量の電流が一方の電極から他方の電極へ通過することを防止(し、これにより、スーパーコンデンサの短絡を回避)することにある。有機電解質を使用する場合、通常は、セパレータは、ポリマー型のもの(ポリプロピレンが代表的)またはセルロース繊維のもの(紙が代表的)であり;その代わり、水溶性電解質の場合には、セラミックまたはガラス繊維のセパレータから選定する。
【0009】
スーパーコンデンサは、2つの主要な下位カテゴリ、即ち:二重層コンデンサと疑似コンデンサに再分類される。両方のサブクラスの特性を有するスーパーコンデンサも存在し、ハイブリッド・コンデンサと称される。
【0010】
これらのうちで、二重層コンデンサはより単純な構造を有するものである。これらは、いわゆる「ヘルムホルツ二重層効果」により発生する静電荷の蓄積を利用する。この効果は、電極が電解質と接触すると、固体でも液体でも、ナノメートルまたはピコメートルの厚さを有する誘電体界面が形成され、結果的にこの界面の両端に自由電荷が蓄積されるという原理に基づく。
【0011】
その代わりに、疑似コンデンサは、電荷のさらなる蓄積を誘発する金属電極の使用が関与する異なる原理を利用し、電荷移動効果(マーカス(Marcus’s)理論)により、界面における可逆の酸化物還元反応の進行が続く。
【0012】
ハイブリッド・コンデンサは、代わりに、両方の原理の利用を目論み、二重層コンデンサが利用する原理及び疑似コンデンサが利用する原理を共に利用する。
【0013】
性能の観点から、電荷を蓄積する能力に加えて、スーパーコンデンサは、長時間にわたって蓄積/供給することができるエネルギー(Wh/kg)及び長時間にわたって吸収/供給することができる電力(W/kg)により区別される(重量の測定単位kgは、電解質との界面を形成するために使用される電極の質量を参照する)。
【0014】
スーパーコンデンサは、電気エネルギーの長期蓄積用の電荷蓄積器(またはバッテリ)の代用品として考えるべきでない。スーパーコンデンサは、高電力を短期間に必要とする際の理想的な解決策になる。低速放電の電気エネルギーシステム(バッテリ)をスーパーコンデンサと組み合わせることによって、両方のエネルギー需要を満たすことができるハイブリッドシステムを作り出すことができる。
【0015】
初期には、スーパーコンデンサは、高速列車を設計するに当たり、その有用性を実証した。実際に、その急速充電される能力のおかげで、列車では、スーパーコンデンサは、制動中に大量のエネルギーを回収することができ、次の加速段階中にこのエネルギーを供給することができる。
【0016】
スーパーコンデンサは建物の設計にも用途を見出す。日本では、スーパーコンデンサが実際に建物の屋上に設置されて、電気利用のピーク時間帯にエネルギー効率を改善する。
【0017】
近年、スーパーコンデンサはハイブリッド電気自動車に含まれつつあり、例えば、急速給電システム内または制動中のエネルギー回収システム内に含まれる。
【0018】
家庭用電子機器の分野では、スーパーコンデンサは、コンピュータ内部メモリの保護用のバッファ素子として、バックアップ動作用の内部エネルギー源として、外部電源がない場合の電源の一時的維持用の内部無停電電源として追加されることが多い。
【0019】
従って、スーパーコンデンサは、多用途性が大きいこと、異なる分野の用途において有用であることが証明されている。
【0020】
しかし、現在市場に出ているスーパーコンデンサは、非フレキシブルで非生体適合性または非生分解性の材料製であるという欠点を有する。こうした態様は、スーパーコンデンサを利用する可能性を制限して、生物学的用途及び生態学的に持続可能な用途を排除する。
【0021】
従って、出願人は、製造コストを低減し、特に生物有機体内で使用しなければならない電子デバイス内に集積することができる、フレキシブルで生分解性かつ生体適合性のスーパーコンデンサを開発する課題を提起した。
【0022】
今日まで、スーパーコンデンサと統合されて電荷蓄積を可能にする電流源が存在する。しかし、これらのデバイスは、それに固有の剛性、及びこれらのデバイスを作製する材料と生物組織との不適合性により、生医学的分野で利用することが困難である。生医学的分野で効果的に利用されるためには、電子デバイスは実際に生体適合性でフレキシブルでなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
出願人は、今回、この問題、及び以下でより良く説明する他の問題は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び電解質を含むセパレータによって分離されたすくなくとも2つの電極を具えたスーパーコンデンサによって解決することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0024】
従って、第1の態様では、本発明はスーパーコンデンサに関するものであり、このスーパーコンデンサは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び電解質を含むセパレータによって分離された少なくとも2つの電極を具えている。
【0025】
これら少なくとも2つの電極は導電材料を含むことが好ましく、この導電材料は:金、銀、アルミニウム、炭素繊維、活性炭繊維、活性炭、カーボンゲル、メソカーボン、グラファイト(黒鉛)、カーボンナノチューブ、カーボンブラックから選択することが好ましい。その代わりに、この導電材料は、導電性ポリマー、特にポリアニリン(PANI:polyaniline)、ポリピロール(PPY:polypyrrole)、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)(PPV:poly(p-phenylene-vinylene))、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:poly(3,4-ethylenedioxythiophene))、または一般に他のポリチオフェン誘導体を有する導電性ポリマーから選択することができる。
【0026】
上述した電極は、100nm~500nmに含まれる厚さを有することが好ましく、150nm~300nmに含まれる厚さを有することがより好ましい。
【0027】
各電極はフレキシブルであることが好ましい。
【0028】
知られているように、PHAは、自然環境から隔離された微生物によって製造されるポリマーであり、さらには、遺伝子組み換え微生物によって製造されるポリマーであり、高い生分解性を有する。
【0029】
PHAは、化学式(I)の複数の繰り返し単位を含有するポリマーである:
-O-CHR1-(CH2)n-CO- (I)
ここに、R1は:C1-C12アルキル、C4-C16シクロアルキル、C2-C12アルケニルから選択され、これらは任意で:ハロゲン(F、Cl、Br)、-CN、-OH、-OOH、-OR、-COOR(R=C1-C4アルキル、ベンジル)から選択した少なくとも1つの基で置換され;
nは0または1から6までの整数であり、1または2であることが好ましい。
【0030】
1はメチルまたはエチルであり、nは1または2であることが好ましい。
【0031】
PHAは、ホモポリマー(単独重合体)、コポリマー(共重合体)、またはターポリマー(三元重合体)のいずれにもすることができる。コポリマーまたはターポリマーの場合、これらは化学式(I)の異なる繰り返し単位で構成することができ、あるいは、化学式(I)の少なくとも1つの繰り返し単位と、ヒドロキシアルカン酸、例えばラクトンまたはラクタムと共重合することができるコモノマーから誘導される少なくとも1つの繰り返し単位との組合せで構成することができる。後者の場合、化学式(I)の繰り返し単位は、繰り返し単位の総モル数に対して少なくとも10%のモル数に等しい量だけ存在する。
【0032】
式(I)の特に好適な繰り返し単位は:3-ヒドロキシブチラート、3-ヒドロキシバレラート、3-ヒドロキシヘキサノエート、3-ヒドロキシオクタノエート、3-ヒドロキシウンデック-10-エノエート、4-ヒドロキシバレラートから誘導されるものである。
【0033】
特に好適なPHAは:ポリヒドロキシブチラート(PHB:polyhydroxybutyrate)、ポリ-3-ヒドロキシバレラート(PHV:poly-3-hydroxyvalerate)、ポリ-3-ヒドロキシヘキサノエート(PHH:poly-3-hydroxyhexanoate)、ポリ-3-ヒドロキシオクタノエート(PHO:poly-3-hydroxyoctanoate)、ポリ(3-ヒドロキシブチラート-co-3-ヒドロキシバレラート)(PHBV:poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyvalerate))、ポリ(3-ヒドロキシブチラート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH:poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate))、ポリ(3-ヒドロキシブチラート-4-ヒドロキシブチラート)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエート-co-3-ヒドロキシウンデセン-10-エノエート)(PHOU:poly(3-hydroxyoctanoate-co-3-hydroxyundecen-10-enoate))、ポリ(3-ヒドロキシブチラート-co-3-ヒドロキシバレラート-co-4-ヒドロキシバレラート)(PHBVV:poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyvalerate-co-4-hydroxyvalerate))、ポリヒドロキシブチラート-ヒドロキシバレラートのコポリマー、またはその混合物である。
【0034】
本発明の目的によれば、特に好適なPHAはポリヒドロキシブチラート(PHB)である。
【0035】
セパレータは、10重量%から90重量%までのPHA、及び10重量%から90重量%までの電解質を含むことが好ましく、30重量%から80重量%までのPHA、及び20重量%から70重量%までの電解質を含むことがより好ましく、これらの百分率はセパレータの重量に対して表される。
【0036】
本発明によるセパレータは、10μm~2000μmに含まれる厚さを有する膜状層であることが好ましい。
【0037】
セパレータはフレキシブルであることが好ましい。
【0038】
本発明によれば、上記少なくとも1つの電解質がイオン液体であることが好ましい。このイオン液体は:テトラブチルアンモニウム・L-プロリン(TBA・L-Pro:tetrabutylammonium L-proline)、塩素ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(塩素(Tf2N))、テトラエチルアンモニウム・L-プロリン(TEA・L-Pro:tetraethylammonium L-Proline)のような天然アミノ酸誘導体;N-エチル-N-(フラン-2-yl-メチル)エタナミン(エタンアミン)のリン酸([FurEt2NH][H2PO4])、N-エチル-N-(4-メトキシベンジル)エタナミンのリン酸([p-AnisEt2NH][H2PO4])、N-4-((ジエチルアミン)メチル)-2-メトキシフェノールのリン酸([VanEt2NH][H2PO4])のような天然リグニン(木質素)誘導体;テトラフルオロホウ酸1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM(BF4))、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIM(Tf2N))、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMIM(Tf2N))のような合成起源のイオン液体、から選択されることがさらに好ましい。
【0039】
本発明によるスーパーコンデンサは電極及びセパレータを含み、これらはフレキシブルであるという特性を与えられているので、スーパーコンデンサ自体もフレキシブルであるという特性を有する、という結果になる。
【0040】
こうしたフレキシブル性は非常に多数の応用上の利点を与える。実際に、フレキシブルなスーパーコンデンサは、剛性のスーパーコンデンサの(上述した)従来の応用分野、及び剛性のスーパーコンデンサの使用が不可能であるか不利益であろう分野の両方で有利に用いることができる。時として、特に医学生物学分野(例えば心臓弁の分野)では、このスーパーコンデンサは、実際に、当該スーパーコンデンサが置かれる表面によって、あるいは表面上でもたらされるあらゆる移動を促進するために、屈曲することができなければならない。
【0041】
本発明によるスーパーコンデンサは、生分解性かつ生体適合性のスーパーコンデンサであるという追加的な利点も有する。実際に、上記電極、セパレータ、及び電解質は、生分解性かつ生体適合性の要素で構成される。従って、この特徴は、特に医学生物学分野では非常に多数の応用上の利点ももたらし、こうした分野では、生体(生物由来)材料を有する生分解性かつ生体適合性のスーパーコンデンサを使用する必要性が、使用するスーパーコンデンサの種類の選定を時として制限する制約を表す。
【0042】
本発明によるスーパーコンデンサは、実際に、次の応用分野で有利に使用することができる。
【0043】
(A)エネルギー集積システム。本発明によるスーパーコンデンサを圧電膜(必ずしもPHAではない)に結合させて、より長時間にわたって生成される電荷を維持して、システムの出力電圧を増加させることができる。これらの結合されたシステムは、自動車分野で用いて例えばタイヤ内部に配置された圧力及び/または温度センサに給電することができ、あるいはいわゆるウェアラブルデバイス(着用型装置)内で例えば衣服と一体化された内部加温システムとして用いることができる。
【0044】
(B)ペースメーカー装置。この場合にも、本発明によるスーパーコンデンサを圧電膜に結合してシステムを作り出すことができる。一旦、システムが心臓に接触するように配置されると、このスーパーコンデンサは、心拍による圧電膜の刺激に追随して充電される。その後に、集積されたセンサが、特定閾値を下回る拍動の低速化のような心臓疾患の状態を検出すると、このスーパーコンデンサは、蓄積された電流を放電することによって心筋の鼓動を刺激する。この用途は血管にも拡張することができる。実際に、本発明によるスーパーコンデンサを管形状に作製して、このスーパーコンデンサを血管に巻き付けることによって、このスーパーコンデンサは血管自体の筋肉壁の収縮によるエネルギーを蓄積することができる。
【0045】
(C)生体適合性かつ生分解性のRAMメモリ。コンピュータのRAMメモリは、記憶されるデータビットを含むように機能する何百万個もの、そうでなくても何千個もの容量性素子で構成される。これらの素子を本発明によるスーパーコンデンサに置き換えることによって、いわゆる使い捨てコンピュータを作り出すことができる。
【0046】
本発明によるスーパーコンデンサの代案の好適例によれば、上記電極が、PHA、好適にはPHBと、このPHA中に分散した少なくとも1つの伝導性電荷を含む。この伝導性電荷は、有機導電材料であることが好ましく:ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPY)、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)(PPV)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)から選択されることがさらに好ましく、あるいは、一般に他のポリチオフェン誘導体を有することが好ましい。
【0047】
この有機導電材料は、1%~25%に含まれる濃度で存在することが好ましい。この濃度は、少なくとも1019(cm-3)の伝導帯内の密度、及び0.1S/cmよりも高い導電率を有する。
【0048】
この好適例では、各層に共通のPHAマトリクス、及びPHAに固有の高い多孔度(空隙率、孔隙率、ボロシティ)を考慮すれば、境界面との結合が特に大きい接触面積を有して、完全な生分解性及び生体適合性を有するスーパーコンデンサのさらに効率的な製造を可能にする。
【0049】
本発明の第2の態様は、上記の説明によるスーパーコンデンサを製造するプロセスに関するものであり、このプロセスは:
-少なくとも2つの電極を用意するステップと;
-ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び電解質を含む少なくとも1つのセパレータを用意するステップと;
-各電極をセパレータの対応する表面に接触するように配置するステップとを含む。
【0050】
少なくとも1つのセパレータを用意するステップは、溶媒キャスト法またはエレクトロスピニング(電界紡糸)法またはエレクトロスプレー(電界噴霧)法によってPHAを電解質と混合するステップを含む。
【0051】
溶媒キャスト法によりPHAを電解質と混合するステップは:
-PHAを溶媒中に溶解させるステップであって、溶媒は:HFIP(hexafluoro-2-propanol:ヘキサフルオロ-2-プロパノール)、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アニリン、酢酸から選択されることが好ましく、酢酸がさらに好ましいステップと;
-こうして得られた溶液に電解質を添加するステップであって、この電解質は上述したイオン液体であることが好ましいステップと;
-電解質を添加した溶液をモールド(型)内に注入して、溶媒が蒸発するまで溶液を置いたままにするステップとを含む。
【0052】
本発明によれば、電解質を添加したこの溶液は、3重量%~20重量%に含まれる濃度でPHAを含み、1重量%~20重量%に含まれる濃度で電解質を含むことが好ましく、これらの百分率は溶液の重量に対して表される。
【0053】
本明細書及び添付した特許請求の範囲の関係では、「エレクトロスピニング法」は現在技術において既知のスピニング法を意図し、ポリマー溶液と外部電解との間で生成される相互作用を利用する。エレクトロスピニング法は、一般に何十または何百ミクロンのオーダーの非常に小さい直径を有するフィラメントを、高速かつ正確なプロセス制御で製造することを可能にし、押し出しスピニングによる一般的なファイバ製造技術ではほとんど実現できない結果である。
【0054】
エレクトロスピニング・システムは、主に、ポリマー溶液を包含するシリンジと、このシリンジに接続されたスピナレット(紡糸口、噴射ノズル)と、高電圧源と、コレクタ(捕集器)とを具えている。ポンプの動作により、ポリマー溶液がシリンジ外に押し出されてコレクタに向かい、制御可能な一定の流量でスピナレットを通過する。高い電位差(通常は1~30kV)がスピナレットとコレクタとの間に印加されると、ポリマーの滴がスピナレットの先端に発生する。電位差が増加するに連れて、テイラーコーン(テイラー円錐、Taylor’s cone)として一般に知られているコーンの形成により滴自体が変形するまで、滴は、その表面電荷と外部電解によって加わる静電力との間の増加する反発力(斥力)を受ける。電界がポリマー溶液毎に特有の臨海値を超え次第、静電力が表面張力に勝り、ポリマーワイヤまたはポリマーファイバの形成に至る。
【0055】
PHAを電解質と混合するステップをエレクトロスピニング法により実行する際に、次のステップが含まれる:
-ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、好適にはPHBを溶媒中で可溶化させ、少なくとも1つの電解質、好適には上述したイオン液体を溶媒中で可溶化させることにより、スピニング溶液を用意するステップ;
-このスピニング溶液にエレクトロスピニング・プロセスを施し、これによりPHAファイバを得るステップ;
-このPHAファイバをコレクタ上に堆積させてセパレータを得るステップ。
【0056】
エレクトロスピニング法によって得られたこのPHAファイバは、0.1μm~5μmに含まれる直径を有することが好ましい。
【0057】
上記溶媒は:HFIP、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アニリン、酢酸から選択することが好ましい。上記溶媒が酢酸であることが、さらに好ましい。
【0058】
本発明によれば、このスピニング溶液は、PHAを4重量%~10重量%に含まれる濃度で含み、電解質を1重量%~25重量%に含まれる濃度で含むことが好ましく、これらの百分率は溶液の重量に対して表される。
【0059】
上述したように、エレクトロスピニング・プロセス中には、スピニング溶液が非常に強い電界によってスピナレットに強制的に通される。このようにして、連続したジェットが得られて、ファイバの形態でコレクタ上に捕集される。溶媒の蒸発後に、ファイバは使用可能な状態になる。
【0060】
しかし、溶液のレオロジー(流動学的)特性(粘弾性)及び電気特性(導電率)に影響を与えることによって、ファイバの形成の代わりに、滴(噴霧されたジェット)の形成があり得る。これらの滴は溶媒の蒸発後に粒子を生じさせる。この場合に、このプロセスをエレクトロスプレー法と称する。
【0061】
従って、本明細書及び添付した特許請求の範囲内では、「エレクトロスプレー法」はエレクトロスピニング法と類似の製造プロセスを意図し、この製造プロセスでは、溶液は、処理される際に噴霧されるジェットを生成し、連続したファイバのジェットではない。
【0062】
エレクトロスプレー法では、PHAのポリマー鎖、溶媒、及び電解質の間の相互作用は、ファイバの製造を可能にするようなものではなく、従って、一組の粒子がコレクタ上に堆積され、このことは堆積の増加に伴い膜を生じさせる。こうして形成された膜は、エレクトロスピニングによって得られるものよりも小型で不規則である。
【0063】
従って、PHAを電解質と混合するステップをエレクトロスプレー法により実行する際に、次のステップが含まれる:
-ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、好適にはPHBを溶媒中で可溶化させ、少なくとも1つの電解質、好適には上述したイオン液体を溶媒中で可溶化させることにより、スプレー溶液を用意するステップ;
-このスプレー溶液にエレクトロスプレー・プロセスを施し、これによりPHA粒子を得るステップ;
-このPHA粒子をコレクタ上に堆積させて、セパレータを得るステップ。
【0064】
エレクトロスプレー法によって得られたこれらのPHA粒子は、0.1μm~5μmに含まれる平均粒径を有することが好ましい。
【0065】
エレクトロスプレー法によって得られた上記セパレータは膜状セパレータである。
【0066】
上記溶媒は:HFIP、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アニリン、及び酢酸から選定することが好ましい。上記溶媒が酢酸であることが、さらに好ましい。
【0067】
本発明によれば、上記スプレー溶液は、PHAを4重量%~10重量%に含まれる濃度で含み、電解質を1重量%~25重量%に含まれる濃度で含むことが好ましく、これらの百分率は溶液の重量に対して表される。
【0068】
本発明の代案の好適例では、セパレータをエレクトロスピニング法によって製造し、このエレクトロスピニング法を、PHA、好適にはPHB及び溶媒を含むスピニング溶液から開始し、溶媒は:HFIP、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アニリン、及び酢酸から選定することが好ましい。一旦、セパレータが得られると、上記少なくとも1つの電解質、好適には上述したイオン液体をこのセパレータに含侵させる。
【0069】
本発明によるプロセスの追加的な好適例によれば、電極及びセパレータを共にエレクトロスピニング法によって得る。このエレクトロスピニング法は、PHA及び溶媒を含む溶液から始まり、この溶液に電解質を添加してセパレータを得る、あるいは伝導性電荷を付加して電極を得る。このスーパーコンデンサの製造プロセスはシームレスに実行することが好ましく、即ち、順次に、(伝導性電荷を含有するPHA溶液を用いて)電極を堆積させ、(電解質を含有するPHA溶液を用いて)セパレータを堆積させ、(伝導性電荷を含有するPHA溶液を再度用いて)他方の電極を堆積させることによって実行する。このプロセスは、ほぼ全体がPHA製のスーパーコンデンサの作製を可能にする。上記PHA膜の、各層に共通のPHAマトリクス、及びPHAに固有の高い多孔度を考えれば、(電極及びセパレータの)層間の境界面への結合が、面積を最大にして、完全な生分解性及び生体適合性によって特徴付けられる高性能スーパーコンデンサの作製を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下の実施形態は、本発明を説明する目的で提供するに過ぎず、添付した特許請求の範囲によって規定される保護の範囲を限定する意味で理解するべきでない。
【0071】
例1:いくつかのイオン液体の製造。
a)テトラブチルアンモニウム・L-プロリン(TBA・L-Pro)。
【0072】
43mmol(ミリモル)のL-プロリンを50mLの水中に溶解させることによって水溶液を用意した。43mmolのテトラブチルアンモニウム・ヒドロキシド(水酸化物)(40v/v(体積/体積)%水溶液)を添加した。
【0073】
結果的な溶液を60℃まで2時間加熱した。必要な時間が経過した後に、減圧下で温度を80℃に維持する蒸発によって水分を除去した。その後に、残留化合物をアセトニトリル(CH3CN)中に溶解させ、濾過して過剰なアミノ酸を除去した。得られた溶液に無水硫酸マグネシウム(MgSO4)を添加して、あらゆる水分の痕跡を除去して、最終的に、この溶液を乾燥させて、減圧下での蒸発によってアセトニトリルを除去した。
【0074】
b)テトラエチルアンモニウム・L-プロリン(TEA・L-Pro)。
【0075】
43mmolのL-プロリンを50mLの水中に溶解させることによって水溶液を用意した。43mmolのテトラエチルアンモニウム・ヒドロキシド(40v/v%の水溶液)を添加した。
【0076】
結果的な溶液を60℃まで2時間加熱した。必要な時間が経過した後に、減圧下で温度を80℃に維持する蒸発によって水分を除去した。その後に、残留化合物をアセトニトリル(CH3CN)中に溶解させ、濾過して過剰なアミノ酸を除去した。得られた溶液に無水硫酸マグネシウム(MgSO4)を添加して、あらゆる水分の痕跡を除去して、最終的に、この溶液を乾燥させて、減圧下での蒸発によってアセトニトリルを除去した。
【0077】
c)N-エチル-N-(フラン-2-yl-メチル)エタナミンのリン酸([FurEt2NH][H2PO4])。
【0078】
第三級アミンのN-エチル-N-(フラン-2-yl-メチル)エタナミンを合成した。この目的で、104mmolのフルフラールを無水ジクロロエタン(360mL)中に0℃の不活性雰囲気中で溶解させることによって溶液を用意した。121mmolのジエチルアミンを添加して、得られた溶液を攪拌下で15分間放置した。この期間後に、146mmolのトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを滴下して、反応混合物を攪拌下で一晩中不活性雰囲気中に置いたままにして室温まで加温した。その後に、反応生成物に相当する沈殿物の形成が水相中に得られるまで、3M(3規定)塩酸の水溶液を添加することによって反応を停止させた。
【0079】
得られた懸濁液の酸性のpH値を、3M水酸化ナトリウムを添加することによって塩基性にした。エチルアセテート(酢酸エチル)での抽出、硫酸ナトリウム(Na2SO4)での無水物化、及び溶媒の蒸発後に、反応生成物が、暗色を有する油脂の形態で、80%の収率で得られた。
【0080】
一旦、第3級アミンのN-エチル-N-(フラン-2-yl-メチル)エタナミンが得られると、65mmolの後者を33mLのメタノール中に溶解させることによって溶液を用意した。この溶液を0℃に至らせた。その後に、リン酸(H3PO4、65mmol)を一滴ずつ添加した。得られた反応混合物を、3時間の攪拌下で室温に至らせた。その後に、溶媒を蒸発させて、イオン液体を結晶性固体の形態で、95%の収率で得た。
【0081】
例2:溶媒キャスト法によるスーパーコンデンサの製造。
【0082】
100mgのPHBを、2mlの酢酸(AcOH)中に、110~115℃で7分間の攪拌により溶解させた。90μlの1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIM(Tf2N))を添加し、その後に40μmolのTBAFを添加した。こうして得られた溶液をアルミニウム・モールド内に注入して、溶媒が完全に蒸発するまで、105℃で15~25分間置いたままにし、次に、真空下で24時間置いたままにし、次に70℃で30分間置いたままにして、約35~75μmの厚さを有する膜の形態のセパレータを得た。次に、セパレータの互いに反対側の2面を電極に接触するように配置し、これらの電極は、99.9%純金の層を含み、約150~200nmの厚さを有する。
【0083】
例3:エレクトロスピニング法によるスーパーコンデンサの製造。
【0084】
PHB及びBMIM(BF4)をHFIP中に溶解させて、PHB及びBMIM(BF4)を29.2:70.8の重量比で含有するスピニング溶液を得た。この溶液を、加熱プレート上で、800rpmで、25℃の温度で、約2時間攪拌して、このポリマーの完全な溶解を促進した。
【0085】
その後に、この溶液を室温で冷却し、10mLのプラスチック・シリンジ内に注入し、エレクトロスピニング・システムの内部に配置して処理した。コレクタ上へのPHBフィラメントの堆積は、約30~100μmの厚さを有する膜の形成を可能にした。
【0086】
以下のパラメータをエレクトロスピニング・プロセス用に用いた。
処理される溶液の流量:2~10ml/時;
処理温度:室温;
スピンドル回転速度:200~300rpm;
電界強度:10~20kV;
スピナレット-スピンドルの距離:10~40cm;
スピンドルの直径:0.3~160mm。
【0087】
次に、セパレータの互いに反対側の2面を電極に接触するように配置し、これらの電極は、99.9%純金の層を含み、約150~200nmの厚さを有する。
【0088】
例4:エレクトロスプレー法によるスーパーコンデンサの製造。
【0089】
PHB及びEMIM(TF2N)をHFIP中に溶解させて、PHB及びEMIM(TF2N)を25.6:74.4の重量比で含有するスプレー溶液を得た。この溶液を、加熱プレート上で、800rpmで、25℃の温度で、約2時間攪拌して、このポリマーの完全な溶解を促進した。
【0090】
その後に、この溶液を室温で冷却し、10mlのプラスチック・シリンジ内に注入して、エレクトロスプレー・システムの内部に配置して処理した。コレクタ上へのPHB粒子の堆積は、約30~100μmの膜の厚さを有する膜の形成を可能にした。
【0091】
以下のパラメータをエレクトロスプレー・プロセス用に用いた。
処理される溶液の流量:10ml/時;
処理温度:室温;
スピンドル回転速度:200rpm;
電界強度:10kV;
スピナレット-スピンドルの距離:10cm;
スピンドルの直径:50mm。
【0092】
次に、セパレータの互いに反対側の2面を電極に接触するように配置し、これらの電極は、99.9%純金の層を含み、約150~200nmの厚さを有する。
【0093】
例5:エレクトロスピニング及びその後の電解質の含侵によるスーパーコンデンサの製造。
【0094】
PHBをクロロホルム中に溶解させて、6v/v%のPH濃度を有するスピニング溶液を得た。この溶液を、加熱プレート上で、800rpmで、25℃の温度で、約2時間攪拌して、このポリマーの完全な溶解を促進した。
【0095】
その後に、この溶液を室温で冷却し、10mLのプラスチック・シリンジ内に注入し、エレクトロスピニング・システムの内部に配置して処理した。コレクタ上へのPHBフィラメントの堆積は、約500~600μmの厚さを有するPHB膜の作製を可能にした。
【0096】
セパレータの作製のために、エレクトロスピニングによって生成されたPHB膜を、BMIM(Bf4)の溶液中に室温で約1~10秒間浸漬させることにより、このPHB膜にBMIM(Bf4)を含侵させた。
【0097】
次に、セパレータの互いに反対側の2面を電極に接触するように配置し、これらの電極は、99.9%純金の層を含み、約150~200nmの厚さを有する。
【0098】
例6:例2~5により得られたスーパーコンデンサの分析
【0099】
製造されたスーパーコンデンサを試験して、次のパラメータを評価した:
-電位走査速度を変化させた際の、スーパーコンデンサの最大動作電位及び容量(サイクロボルタンメトリー:CV(cyclovoltammetry)によって測定した);
-容量(C)及び等価直列抵抗(ESR:equivalent series resistance)(電気化学インピーダンス分光法(EIS:electronic impedance spectroscopy)によって測定した);
-電極の単位重量当たりのエネルギー密度(Wh/kg)及び電力密度(kW/kg)を測定するための、及び効率を計算するための、異なる定電流値における周期的な(サイクリック)充電-放電プロセス(CCD:cyclic charge-discharge process)(Gamry社の600+ポテンショスタット(定電位電解装置)により測定した)これらの量は次式により定まる:
エネルギー(Wh)=0.5×C×V2
電力(W)=(0.25/ESR)×V2
【0100】
kgで表される電極の重量を推定し、この推定は、多孔度で正規化した金の密度から始まり、ガスの物理吸着(BET:Brunauer-Emmett-Teller法)の測定値に堆積した体積を乗算することによって定まる;
【0101】
以下の表は得られた結果を要約する:
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
現在市場で入手可能なスーパーコンデンサは、500nFから約3000Fまでの範囲の容量を有し、工業用途のアレイ構造の複合システム用では160Vにも達し得る動作電圧を有するが、一般に1.4V~2.7Vである。エネルギー-重量比(Wh/kg)及び電力-重量比(W/kg)に関しては、代表値は通常、それぞれ5Wh/kg及び10000W/kgである。一般に、市販のデバイスのESR値は0.08mΩから10mΩまでである。
【0107】
各表中の測定値は、実験的観点から、測定量の変動性を強調するために、正確な値としてではなく区間として報告し、この変動性は種々の要因により、これらの要因は、測定の設定(測定器とデバイスとの電気接触)、及び堆積した電極の厚さ及びPHB膜の厚さの許容誤差を含む。表に示す区間は、同じ公称の作業条件下で製造したサンプルの代表的な統計的集合を測定することによって得られた両極端を表す。
【0108】
これらの値を、上記の例のスーパーコンデンサに対して実行した試験から得られた結果と比較すれば、本発明によるスーパーコンデンサは、市場に存在するスーパーコンデンサと同程度の容量、ESR、電力-重量比、及び重量密度を有することは明らかであり、、従って、効率的かつ機能的なスーパーコンデンサであることが証明されている。
【国際調査報告】