(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】BINIMITINIBとDMSOとの結晶性溶媒和物及びBINIMITINIBとクエン酸との共結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 235/06 20060101AFI20220316BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20220316BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220316BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C07D235/06 CSP
A61K31/4184
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540591
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 GB2020050301
(87)【国際公開番号】W WO2020165565
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ブィスト、アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ボンナウド、ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】エドワード、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】パッターソン、アダム
(72)【発明者】
【氏名】ライト、マーク
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC39
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、ビニメチニブの分子複合体、及び分子複合体の調製方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ビニメチニブDMSO溶媒和物である、ビニメチニブの分子複合体。
【請求項2】
約5.8、7.9、8.9、12.5、13.4、14.5、15.1、17.1、17.6、17.9、18.8、19.7、20.1、20.3、21.0、21.8、22.2、22.7、22.8、23.3、23.5、24.2、24.5、25.2、25.8、26.1、26.8、27.0、27.7、27.8、28.4、28.7、29.0、29.2、29.8、30.1、30.3、及び30.7度2シータ±0.2度2シータからなる群から選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項3】
約5.8、8.9、14.5、17.6、18.8、20.1、23.5、及び25.8度2シータ±0.2度2シータにピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項2に記載の分子複合体。
【請求項4】
実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有する、請求項3に記載の分子複合体。
【請求項5】
約133.9℃にピークを有する吸熱事象と、約221.3℃にピークを有する別の吸熱事象と、を含むDSCサーモグラムを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の分子複合体。
【請求項6】
実質的に
図3に示すようなDSCサーモグラムを有する、請求項5に記載の分子複合体。
【請求項7】
約100℃から約175℃まで加熱されたときに約15.1%の第1の質量損失と、約175℃から約280℃まで加熱されたときに約11.5%の第2の質量損失と、を含むTGAサーモグラムを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の分子複合体。
【請求項8】
実質的に
図3に示すようなTGAプロットを有する、請求項7に記載の分子複合体。
【請求項9】
ビニメチニブDMSO溶媒和物を調製するための方法であって、
(a)ビニメチニブをDMSOと接触させる工程と、
(b)ビニメチニブのDMSO溶液を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項10】
ビニメチニブDMSO溶媒和物を結晶性固体として回収する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ビニメチニブ及びクエン酸の結晶性分子複合体である、分子複合体。
【請求項12】
約6.5、7.3、7.8、11.4、12.3、12.9、13.6、14.2、14.5、14.8、15.1、16.2、17.1、17.9、18.2、18.6、19.0、19.5、20.1、21.0、21.3、21.8、22.3、22.7、23.7、24.2、24.5、24.9、25.2、25.9、26.4、27.0、27.2、27.6、27.8、28.3、29.2、29.5、29.8、30.3、及び30.9度2シータ±0.2度2シータからなる群から選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項11に記載の分子複合体。
【請求項13】
約7.3、11.4、12.3、13.6、14.2、14.5、17.9、18.2、20.1、21.8、及び24.9度2シータ±0.2度2シータにピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項12に記載の分子複合体。
【請求項14】
実質的に
図5に示すようなX線粉末回折パターンを有する、請求項13に記載の分子複合体。
【請求項15】
約160.3℃にピークを有する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有する、請求項11~14のいずれか一項に記載の分子複合体。
【請求項16】
実質的に
図6に示すようなDSCサーモグラムを有する、請求項15に記載の分子複合体。
【請求項17】
約100℃から約250℃まで加熱されたときに約25%の質量損失を含むTGAサーモグラムを有する、請求項11~16のいずれか一項に記載の分子複合体。
【請求項18】
実質的に
図6に示すようなTGAサーモグラムを有する、請求項17に記載の分子複合体。
【請求項19】
ビニメチニブ及びクエン酸の結晶性分子複合体を調製するための方法であって、低エネルギーボールミリング又は低エネルギー粉砕を使用して前記結晶性分子複合体を形成することを含む、方法。
【請求項20】
ビニメチニブ及びクエン酸の結晶性分子複合体を調製するための方法であって、二重非対称遠心力をビニメチニブとクエン酸との混合物に適用して、前記結晶性分子複合体を形成する工程を含む、方法。
【請求項21】
ビニメチニブ及びクエン酸の結晶性分子複合体を調製するための方法であって、
(a)ビニメチニブとクエン酸との混合物を提供する工程と、
(b)押出機を通して前記混合物を供給して、ビニメチニブクエン酸分子複合体を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項22】
請求項1~8のいずれか一項に記載の分子複合体と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項23】
請求項11~18のいずれか一項に記載の分子複合体と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項24】
患者におけるMEK活性を阻害するための方法であって、治療有効量の請求項1~8のいずれか一項に記載の分子複合体を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項25】
患者におけるMEK活性を阻害するための方法であって、治療有効量の請求項11~18のいずれか一項に記載の分子複合体を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項26】
患者における過剰増殖性障害の治療のための方法であって、治療有効量の請求項1~8のいずれか一項に記載の分子複合体を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項27】
患者における過剰増殖性障害の治療のための方法であって、治療有効量の請求項11~18のいずれか一項に記載の分子複合体を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項28】
MEK活性の阻害に使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の分子複合体。
【請求項29】
MEK活性の阻害に使用するための、請求項11~18のいずれか一項に記載の分子複合体。
【請求項30】
過剰増殖性障害の治療に使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の分子複合体。
【請求項31】
過剰増殖性障害の治療に使用するための、請求項11~18のいずれか一項に記載の分子複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニメチニブの分子複合体、及び分子複合体の調製方法に関する。本発明はまた、MEK活性の阻害、又は過剰増殖性障害の治療に使用するための分子複合体に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ビニメチニブは、5-[(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)アミノ]-4-フルオロ-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-メチル-1H-1,3-ベンゾジアゾール-6-カルボキシイミドのIUPAC名を有し、以下に示す化学構造を有する。
【化1】
【0003】
国際公開第2016/131406号(Crystal Pharmatech Co.,Ltd)には、ビニメチニブA型及びB型が記載されている。A型はビニメチニブの無水結晶多形である。
【0004】
化合物ビニメチニブは多くの多形形態で存在する場合があり、これらの形態の多くは、医薬的に許容される組成物を製造するのに望ましくない場合がある。これは、低安定性、高吸湿性、低水溶性、及び取り扱いの困難さを含む様々な理由のためであり得る。
【0005】
定義
用語「約(about)」又は「およそ(approximately)」は、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。ある特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、1、2、3、又は4標準偏差の範囲内を意味する。ある特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、所与の値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0.5%以内を意味する。ある特定の実施形態では、X線粉末回折2シータピークを参照すると、用語「約」又は「およそ」は、±0.2°2θ以内を意味する。
【0006】
用語「周囲温度」は、約15℃~約30℃、例えば約15℃~約25℃の1つ以上の室温を意味する。
【0007】
用語「貧溶媒」は、第2の溶媒に添加されて、第2の溶媒中の化合物の溶解度を低下させる第1の溶媒を指す。第1及び第2の溶媒の組み合わせからの化合物の沈殿が生じるように、溶解度を十分に低減することができる。
【0008】
用語「からなる(consisting)」は、限定的であり、特許請求される本発明における追加の、列挙されていない要素又は方法工程を除外する。
【0009】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、半限定的でありであり、「からなる」と「含む(comprising)」との間の中間点を占める。「から本質的になる」は、特許請求される本発明の本質的な特性(複数可)に重大な影響を及ぼさない追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0010】
用語「含む(comprising)」は、包括的又は非限定的であり、特許請求される発明における追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。この用語は、「含むが、これらに限定されない」と同義である。用語「含む(comprising)」は、3つの代替語、すなわち、(i)「含む(comprising)」、(ii)「からなる(consisting)」、及び(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0011】
本明細書で使用される用語「結晶性」及び関連する用語は、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物を記載するために使用される場合、特に指定がない限り、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物がX線回折によって決定されるように実質的に結晶性であることを意味する。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st edition,Lippincott,Williams and Wilkins,Baltimore,Md.(2005);米国薬局方、第23版、1843-1844(1995)を参照されたい。
【0012】
用語「分子複合体」は、明確な単相結晶構造を有する2つ以上の異なる構成成分から構成される結晶性材料を表すために使用される。構成成分は、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、π-π相互作用などの非共有結合によって一緒に保持される。用語「分子複合体」は、溶媒和物、塩、共結晶、及び塩/共結晶ハイブリッドを含む。一実施形態では、分子複合体は溶媒和物である。一実施形態では、分子複合体は塩である。別の実施形態では、分子複合体は、共結晶である。別の実施形態では、分子複合体は、塩/共結晶ハイブリッドである。
【0013】
理論に束縛されるものではないが、分子複合体が共結晶である場合、共結晶は、結晶化及び生物学的利用能の特性などの改善された特性を示すと考えられる。
【0014】
分子複合体は、当業者に周知の標準的な分析手段、例えば、X線粉末回折(XRPD)、単結晶X線回折、又は示差走査熱量測定(DSC)によって、ビニメチニブとクエン酸などの選択された分子複合体形成剤との混合物から区別され得る。分子複合体の構成成分のモル比は、例えば、HPLC又は1H-NMRを使用して決定され得る。
【0015】
本明細書における用語「多形(polymorph)」、「多形形態(polymorphic form)」又は関連する用語は、ビニメチニブの1つ以上の分子の結晶形を指すか、又は多形の結晶格子内の分子(複数可)の異なる配置若しくは配座の結果として、2つ以上の形態で存在し得るビニメチニブ分子複合体の結晶形を指す。
【0016】
用語「医薬組成物」は、本発明の医薬的に有効な量のビニメチニブと、医薬的に許容される賦形剤とを包含することを意図する。本明細書で使用するとき、用語「医薬組成物」は、錠剤、丸剤、粉剤、液剤、懸濁液、エマルション、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、又は注射製剤などの医薬組成物を含む。
【0017】
用語「賦形剤」は、医薬的に許容される有機又は無機担体物質を指す。賦形剤は、有効な活性成分を含有する製剤を増量する目的で含まれる(したがって、しばしば「増量剤」、「充填剤」又は「希釈剤」と呼ばれる)、又は薬物吸収若しくは溶解性を促進するなど、最終剤形中の活性成分に対して治療的強化を付与するために含まれる、薬剤の活性成分と共に配合された天然又は合成物質であってよい。賦形剤はまた、予想される貯蔵寿命にわたる変性の防止などのインビトロ安定性の補助に加えて、粉末流動性又は非付着特性を促進することなどによって、活性物質の取り扱いを補助するために、製造方法において有用であり得る。
【0018】
用語「患者」は、治療、観察、又は実験の対象である動物、好ましくは患者、最も好ましくはヒトを指す。好ましくは、患者は、治療及び/又は予防される疾患又は障害の少なくとも1つの症状を経験及び/又は呈している。更に、患者は、治療及び/予防される障害、疾患又は病状のいずれの症状も呈していない場合があるが、医師、臨床医、又は他の医療専門家により、該障害、疾患、又は病状を発症するリスクがあると見なされている。
【0019】
用語「溶媒和物」は、溶質、例えばビニメチニブの1つ以上の分子、及び溶媒の1つ以上の分子によって形成される組み合わせ又は凝集体を指す。溶媒の1つ以上の分子は、溶質の1つ以上の分子に対して化学量論的又は非化学量論的量で存在してもよい。
【0020】
用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」は、疾患若しくは障害の根絶若しくは寛解、又は疾患若しくは障害に関連する1つ以上の症状の根絶又は寛解を指す。ある特定の実施形態では、これらの用語は、このような疾患若しくは障害を有する患者に1つ以上の治療剤を投与することに起因する疾患若しくは障害の蔓延又は悪化を最小限に抑えることを指す。いくつかの実施形態では、これらの用語は、疾患の症状の発症後に、他の追加の活性剤の有無にかかわらず、本明細書で提供される分子複合体を投与することを指す。
【0021】
用語「一晩」とは、1つの手順工程の終了と手順における次の工程の開始との間で約12~約18時間の時間枠が経過した、1就業日の終了から次の就業日までの期間を指す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書に記載される実施形態のある特定の態様は、図面を参照することによってより明確に理解することができ、図面は、本発明を例示することを意図するが、限定することを意図するものではない。
【
図1】
図1は、実施例6に記載のビニメチニブDMSO溶媒和物についての代表的なX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【
図2】
図2は、原子番号付けスキームを示す、単結晶構造からのビニメチニブDMSO溶媒和物の図を示す。非水素原子の異方性原子変位楕円体は、50%の確率レベルで示される。水素原子は、任意の小さい半径で表示される。
【
図3】
図3は、ビニメチニブDMSO溶媒和物の代表的なTGAサーモグラム及びDSCサーモグラムを示す。
【
図4】
図4は、ビニメチニブDMSO溶媒和物の代表的
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図5】
図5は、実施例11に記載のビニメチニブクエン酸分子複合体についての代表的なX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【
図6】
図6は、ビニメチニブクエン酸分子複合体の代表的なTGAサーモグラム及びDSCサーモグラムを示す。
【
図7】
図7は、ビニメチニブクエン酸分子複合体の代表的
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図8】
図8は、保管前のビニメチニブクエン酸(下部)、40℃/75%RH(相対湿度)で10日間保管した後のビニメチニブクエン酸(中間部)、及び25℃/97%RHで10日間保管した後のビニメチニブクエン酸(上部)の代表的なXRPDを重ねて示す。
【
図9】
図9は、(a)ビニメチニブクエン酸分子複合体、(b)ビニメチニブ遊離塩基、及び(c)クエン酸無水物の代表的なFT-IRを重ねて示す。
【
図10】
図10は、(a)ビニメチニブクエン酸分子複合体、(b)ビニメチニブ遊離塩基、及び(c)クエン酸無水物の代表的なラマンを重ねて示す。
【
図11A】
図11Aは、Speedmixer(商標)内の粒子に遠心力がどのように適用されるかを示す。
図11Aは、ベースプレート及びバスケットを示す上から見た図である。ベースプレートは時計回り方向に回転する。
【
図11B】
図11Bは、Speedmixer(商標)内の粒子に遠心力がどのように適用されるかを示す。
図11Bは、ベースプレート及びバスケットの側面図である。
【
図11C】
図11Cは、Speedmixer(商標)内の粒子に遠心力がどのように適用されるかを示す。
図11Cは、
図11Bの線Aに沿った上から見た図である。バスケットは反時計回り方向に回転する。
【
図12】
図12は、Rondol Microlab 10mmホットメルト押出機を示す代表的な写真である。
【
図13】
図13は、搬送及び混合要素を有するホットメルト押出機のスクリュー設計を示す代表的な写真である。
【
図14】
図14は、ホットメルト押出機のための溶媒添加機構(set up)を示す代表的な写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、先行技術に関連する欠点を克服することを目的とする。本発明は、ビニメチニブジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒和物であるビニメチニブの分子複合体を提供する。ある特定の実施形態では、分子複合体は精製可能である。ある特定の実施形態では、また時間、温度及び湿度に応じて、分子複合体は安定である。ある特定の実施形態では、分子複合体は単離及び取り扱いが容易である。ある特定の実施形態では、分子複合体を調製する方法は、大規模に実現可能である。
【0024】
本発明の目的はまた、ビニメチニブとクエン酸との結晶性分子複合体であるビニメチニブの分子複合体を提供することである。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体は精製可能である。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体は安定である。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体は単離及び取り扱いが容易である。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体を調製する方法は、大規模に実現可能である。
【0025】
本明細書に記載の結晶形は、単結晶X線回折、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法(溶液及び固体NMRを含む)が含まれる当業者に既知の多数の方法を使用して特性評価され得る。本明細書で提供される結晶形の純度は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び質量分析(MS)などの標準的な分析方法によって決定することができる。
【0026】
ビニメチニブDMSO溶媒和物
一態様では、本発明は、結晶性ビニメチニブDMSO溶媒和物であるビニメチニブの分子複合体を提供する。溶媒和物は、ビニメチニブの1つの分子とDMSOの1つの分子とからなる。
【0027】
溶媒和物は、約5.8、7.9、8.9、12.5、13.4、14.5、15.1、17.1、17.6、17.9、18.8、19.7、20.1、20.3、21.0、21.8、22.2、22.7、22.8、23.3、23.5、24.2、24.5、25.2、25.8、26.1、26.8、27.0、27.7、27.8、28.4、28.7、29.0、29.2、29.8、30.1、30.3、及び30.7度2シータ±0.2度2シータからなる群から選択される1つ以上のピーク(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8個のピーク)を含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、溶媒和物は、約5.8、8.9、14.5、17.6、18.8、20.1、23.5、及び25.8度2シータ±0.2度2シータにピークを含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、溶媒和物は、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有し得る。溶媒和物の非対称単位は、ビニメチニブの1つの完全に秩序化された分子と、DMSOの1つの完全に秩序化された分子とを含有するように見える(
図2を参照されたい)。
【0028】
溶媒和物は、約129.4℃の開始温度を有する吸熱事象と、約219.2℃の開始温度を有する別の吸熱事象と、を含むDSCサーモグラムを有し得る。溶媒和物は、約133.9℃にピークを有する吸熱事象と、約221.3℃にピークを有する別の吸熱事象と、を含むDSCサーモグラムを有し得る。一実施形態では、溶媒和物は、実質的に
図3に示すようなDSCサーモグラムを有し得る。
【0029】
溶媒和物は、約100℃から約175℃まで加熱されたときに約15.1%の第1の質量損失と、約175℃から約280℃まで加熱されたときに約11.5%の第2の質量損失と、を含むTGAサーモグラムを有し得る。一実施形態では、溶媒和物は、実質的に
図3に示すようなTGAプロットを有し得る。
【0030】
ビニメチニブDMSO溶媒和物は、以下の工程:
(a)ビニメチニブをDMSOと接触させる工程と、
(b)ビニメチニブのDMSO溶液を形成する工程と、を含む方法によって調製することができる。
【0031】
DMSOの量は、ビニメチニブを実質的に溶解させて溶液を形成するのに十分なDMSOが存在する限り、特に限定されない。ビニメチニブをDMSOと接触させた際に懸濁したままである場合、溶液が形成されるまで第2の量又は更なる量のDMSOを添加してもよい。ビニメチニブとDMSO溶媒との比は、約1gのビニメチニブ:約0.5ml~約25mlのDMSO、例えば、約1gのビニメチニブ:約1.5ml~約20mlのDMSOの範囲であってもよい。
【0032】
ビニメチニブは、周囲温度以下でDMSOと接触させることができる。あるいは、ビニメチニブを、周囲温度よりも高い温度で、すなわち30℃よりも高く反応混合物の沸点よりも低い温度で接触させてもよい。反応混合物の沸点は、接触工程が行われる圧力に応じて変化し得る。DMSOは、大気圧(すなわち、1.0135×105Pa)で189℃の沸点を有する。一実施形態では、接触工程は、≧約30℃~約<189℃の範囲の1つ以上の温度で実施されてもよい。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧40℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧50℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧60℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦150℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦125℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦115℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦110℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦105℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦100℃の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧70℃~≦100℃の範囲の1つ以上の温度で実施される。
【0033】
ビニメチニブの溶解は、撹拌、振盪、及び/又は超音波処理などの補助を用いることを通して促進され得る。
【0034】
方法は、ビニメチニブDMSO溶媒和物を結晶性固体として回収する工程を更に含んでもよい。結晶性DMSO溶媒和物の回収は:
(c)工程(b)で得られた溶液を、水、アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される貧溶媒で処理する工程と、
(d)ビニメチニブDMSO溶媒和物を結晶性固体として回収する工程と、を含むことができる。
【0035】
DMSOと混和性の任意の好適な貧溶媒を使用することができる。貧溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール(n-又はi-)、ブタノール(n-、i-又はt-)、ペンタノール異性体、シクロペンタノール、ヘキサノール異性体、シクロヘキサノール、又はこれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、貧溶媒は水である。別の実施形態では、貧溶媒はイソプロパノールである。
【0036】
ビニメチニブDMSO溶媒和物の沈殿が生じるまで、十分な貧溶媒を添加する。
【0037】
貧溶媒の添加後、反応混合物は、スラリー又は懸濁液が形成されるまでの一定時間、例えば一晩、周囲温度で撹拌又は振盪することができる。
【0038】
DMSO溶媒和物の回収は、周囲温度下でDMSO溶媒を蒸発させることを含み得る。
【0039】
あるいは、工程(b)の反応混合物は、周囲温度以下で貧溶媒で(例えば、DMSOと貧溶媒との特定の混合物で)処理される前に、任意に濾過され(例えば、ポリッシュ濾過され)、約70℃に約5分間加熱され、一定時間(例えば1時間未満)周囲温度まで冷却されてもよい。
【0040】
あるいは、工程(c)の反応混合物を一定時間(例えば、約80分)撹拌し、次いで約1℃/分で約5℃に冷却してもよい。反応混合物を約5℃で約36時間撹拌してもよい。
【0041】
どのようにして結晶性DMSO溶媒和物が回収された場合でも、分離した溶媒和物をアルコールで洗浄し、乾燥させてよい。乾燥は、既知の方法、例えば約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば約20℃~約40℃で、例えば周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。乾燥条件は、DMSO溶媒和物が脱溶媒和する点より低く維持されることが好ましく、したがって溶媒和物が上記の温度又は圧力範囲内で脱溶媒和することが知られているとき、乾燥条件は、脱溶媒和温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0042】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のビニメチニブDMSO溶媒和物と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0043】
別の態様では、本発明は、治療有効量の本明細書に記載のビニメチニブDMSO溶媒和物を患者に投与することを含む、患者におけるMEK活性を阻害するための方法に関する。
【0044】
別の態様では、本発明は、治療有効量のビニメチニブDMSO溶媒和物を患者に投与することを含む、患者における過剰増殖性障害の治療のための方法に関する。
【0045】
別の態様では、本発明は、MEK活性の阻害に使用するための、本明細書に記載のビニメチニブDMSO溶媒和物に関する。
【0046】
別の態様では、本発明は、過剰増殖性障害の治療に使用するための、本明細書に記載のビニメチニブDMSO溶媒和物に関する。
【0047】
ビニメチニブクエン酸分子複合体
別の態様では、本発明は、ビニメチニブとクエン酸との結晶性分子複合体を提供する。
【0048】
分子複合体は、約6.5、7.3、7.8、11.4、12.3、12.9、13.6、14.2、14.5、14.8、15.1、16.2、17.1、17.9、18.2、18.6、19.0、19.5、20.1、21.0、21.3、21.8、22.3、22.7、23.7、24.2、24.5、24.9、25.2、25.9、26.4、27.0、27.2、27.6、27.8、28.3、29.2、29.5、29.8、30.3、及び30.9度2シータ±0.2度2シータからなる群から選択される1つ以上のピーク(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11個のピーク)を含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、約7.3、11.4、12.3、13.6、14.2、14.5、17.9、18.2、20.1、21.8、及び24.9度2シータ±0.2度2シータにピークを含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に
図5に示すようなX線粉末回折パターンを有し得る。理論に束縛されるものではないが、ビニメチニブとクエン酸との比は、ビニメチニブの約1分子:クエン酸の約0.5~約2分子、例えば、ビニメチニブの約1分子:クエン酸の約1分子であると考えられる。
【0049】
分子複合体は、約156.9℃の開始温度を有する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有し得る。分子複合体は、約160.3℃にピークを有する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に
図6に示すようなDSCサーモグラムを有し得る。
【0050】
分子複合体は、約100℃から約250℃まで加熱したときに約25%の質量損失を含むTGAサーモグラムを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に
図6に示すようなTGAプロットを有し得る。
【0051】
ビニメチニブクエン酸の分子複合体は、低エネルギーボールミリング又は低エネルギー粉砕を使用して、ビニメチニブとクエン酸とを反応させることを含む方法によって調製することができる。
【0052】
低エネルギーボールミリングが利用されるとき、ミリングプロセスは、ミリングが行われる速度、ミリング時間の長さ、及び/又はミリング容器が充填されるレベルを含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0053】
ミリングが行われる速度は、約200rmp~約5000rpmであってよい。一実施形態では、速度は約75rpm~約750rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は約80rpm~約600rpmであってもよい。一実施形態では、速度は約500rpmであってもよい。
【0054】
低エネルギー粉砕は、粉砕容器内で材料を振盪することを伴い得る。この場合、粉砕は、容器内の材料の衝撃及び摩擦を介して生じる。このプロセスは、粉砕が行われる速度、粉砕時間の長さ、及び/又は容器が充填されるレベルを含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0055】
粉砕が行われる周波数は、約1Hz~約100Hzであってもよい。一実施形態では、周波数は、約10Hz~約70Hzであってもよい。別の実施形態では、周波数は、約20Hz~約50Hzであってもよい。一実施形態では、周波数は約30Hzであってもよい。
【0056】
ミリング又は粉砕媒体を使用して、反応を支援することができる。この場合、硬質で非汚染性の媒体の組み込みは、例えば、製造方法の結果、又は輸送中に凝集が生じた粒子の破壊を更に支援することができる。このような凝集体の破壊は、ビニメチニブとクエン酸との反応を更に強化する。ミリング/粉砕媒体の使用は、粉末加工の分野内で周知であり、安定化ジルコニア及び他のセラミックなどの材料が、十分に硬質であるか、又はボールベアリング、例えばステンレスボールベアリングである場合に適している。
【0057】
あるいは、低エネルギー粉砕は、乳棒及び乳鉢での手粉砕を含んでもよい。
【0058】
ミリング又は粉砕が使用されるかどうかにかかわらず、プロセスの改善は、当業者によく知られているように、粒子比、ミリング/粉砕媒体のサイズ、及び他のパラメータを制御することによって行うことができる。
【0059】
ミリング又は粉砕時間の長さは、約1分~約2日、例えば、約10分~約5時間、例えば約20分~3時間であってもよい。ミリング又は粉砕時間の長さは、連続した時間又は合計した時間であってもよい。「連続した」及び「合計した」は、以下に定義される。
【0060】
プロセスは、湿潤環境で行われてもよい。例えば、メタノール及び/又はエタノールなどのアルコール溶媒を、ビニメチニブとクエン酸との混合物に添加してもよい。アルコール溶媒(例えば、メタノール及び/又はエタノール)は、粒子の溶接を最小化するように作用することができる。アルコール溶媒(例えば、メタノール及び/又はエタノール)の添加は、使用前にビニメチニブ及び/又はクエン酸が凝集した場合に特に有用であり得、この場合、アルコール溶媒(例えば、メタノール及び/又はエタノール)は、凝集体を破壊するのを補助することができる。
【0061】
添加される溶媒の量は、混合物を湿らせる(すなわち、「湿潤」)ために十分な溶媒が添加される限りにおいて特に制限されないが、混合物が液状になり過ぎるほどに多い量ではない。添加される全溶媒に対する全固形分(ビニメチニブ及びクエン酸)の重量/体積(w/v)比は、約1gの全固形分:約0.1~約2mlの添加される全溶媒、例えば約1gの全固形分:約0.5ml~約1.5mlの全溶媒、例えば、約1gの全固形分:約0.75ml~約1.25mlの全溶媒、の範囲であってもよい。一実施形態では、全固形分(ビニメチニブ及びクエン酸)の全溶媒に対する重量/体積比は、約1gの全固形分:約1mlの全溶媒であってもよい。溶媒は、1つの部分又は2つ以上の部分(例えば、1、2、3、4、又は5つの部分)で添加されてもよい。
【0062】
ビニメチニブは、遊離塩基、無水物として、又はビニメチニブDMSO溶媒和物などの溶媒和物として存在してもよい。
【0063】
クエン酸は、遊離酸、無水物又は水和物、例えば一水和物として存在してもよい。
【0064】
クエン酸は、ビニメチニブに対して化学量論的に又は過剰なモル当量で存在してもよい。一実施形態では、クエン酸は化学量論的量で存在する。
【0065】
あるいは、ビニメチニブクエン酸分子複合体は、二重非対称遠心力をビニメチニブとクエン酸との混合物に適用して分子複合体を形成する工程を含む方法によって調製されてもよい。
【0066】
ビニメチニブクエン酸の分子複合体は、二重非対称遠心力を使用して形成される。「二重非対称遠心力」とは、2つの遠心力が互いにある角度で粒子に同時に印加されることを意味する。効率的な混合環境を作り出すために、遠心力は、好ましくは反対方向に回転する。HauschildによるSpeedmixer(商標)(http://www.speedmixer.co.uk/index.php)は、この二重回転法を利用し、それにより、Speedmixer(商標)のモータが混合ユニットのベースプレートを時計回り方向に回転させ(
図11Aを参照)、バスケットを反時計回り方向に回転させる(
図11B及び
図11Cを参照)。
【0067】
プロセスは、プロセスが行われる回転速度、処理時間の長さ、混合容器が充填されるレベル、粉砕媒体の使用、及び/又はミリングポット内の構成要素の温度の制御を含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0068】
二重非対称遠心力は、連続した期間にわたって適用されてもよい。「連続した」とは、中断されない期間を意味する。期間は、約1秒~約10分、例えば約5秒~約5分、例えば約10秒~約200秒、例えば2分であってよい。
【0069】
あるいは、二重非対称遠心力は、合計した期間にわたって適用されてもよい。「合計した」とは、2つ以上の期間(例えば、2、3、4、5又はそれ以上の時間)の総計又は合計を意味する。遠心力を段階的に適用する利点は、粒子の過剰な加熱を回避することができることである。二重非対称遠心力は、約1秒~約20分、例えば約30秒~約15分、及び約10秒~約10分、例えば6分の集計期間にわたって適用されてもよい。一実施形態では、二重非対称遠心力は、それらの間の冷却期間と共に段階的に適用される。別の実施形態では、二重非対称遠心力は、1つ以上の異なる速度で段階的に適用されてもよい。
【0070】
二重非対称遠心力の速度は、約200rpm~約4000rpmであってもよい。一実施形態では、速度は、約300rpm~約3750rpm、例えば約500rpm~約3500rpmであってよい。一実施形態では、速度は約3500rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は約2300rpmであってもよい。
【0071】
混合容器が充填されるレベルは、当業者には明らかとなる様々な要因によって決定される。これらの要因としては、ビニメチニブ及びクエン酸の見かけ密度、混合容器の容積、及びミキサー自体に課される重量制限が挙げられる。
【0072】
上記のミリング媒体を使用して、反応を支援することができる。ある特定の実施形態では、二重非対称遠心力は、ミリング媒体が全ての期間ではなく一部の期間に使用され得る段階的な方法で適用されてもよい。
【0073】
プロセスは、湿潤環境で行われてもよい。例えば、メタノール及び/又はエタノールなどのアルコール溶媒を、ビニメチニブとクエン酸との混合物に添加してもよい。アルコール溶媒(例えば、メタノール及び/又はエタノール)は、粒子の溶接を最小化するように作用することができる。アルコール溶媒(例えば、メタノール及び/又はエタノール)の添加は、使用前にビニメチニブ及び/又はクエン酸が凝集した場合に特に有用であり得、この場合、アルコール溶媒(例えば、メタノール及び/又はエタノール)は、凝集体を破壊するのを補助することができる。
【0074】
添加される溶媒の量は、混合物を湿らせる(すなわち、「湿潤」)ために十分な溶媒が添加される限りにおいて特に制限されないが、混合物が液状になり過ぎるほどに多い量ではない。添加される全溶媒に対する全固形分(ビニメチニブ及びクエン酸)の重量/体積(w/v)比は、約1gの全固形分:約0.1~約2mlの添加される全溶媒、例えば約1gの全固形分:約0.5ml~約1.5mlの全溶媒、例えば、約1gの全固形分:約0.75ml~約1.25mlの全溶媒、の範囲であってもよい。一実施形態では、全固形分(ビニメチニブ及びクエン酸)の全溶媒に対する重量/体積比は、約1gの全固形分:約1mlの全溶媒であってもよい。溶媒は、1つの部分又は2つ以上の部分(例えば、1、2、3、4、又は5つの部分)で添加されてもよい。
【0075】
二重非対称遠心力が合計した期間で適用されるとき、湿潤環境又は乾燥環境は、各期間にわたって変更され得る。例えば、プロセスは、環境が乾燥している第1の期間(すなわち、ビニメチニブ及びクエン酸が、任意に溶媒の非存在下でミリング媒体と一緒に反応させられる)と、溶媒の添加後に環境が湿潤する第2の期間とを含んでもよい。
【0076】
ビニメチニブは、遊離塩基、無水物として、又はビニメチニブDMSO溶媒和物などの溶媒和物として存在してもよい。
【0077】
クエン酸は、遊離酸、無水物又は水和物、例えば一水和物として存在してもよい。
【0078】
クエン酸は、ビニメチニブに対して化学量論的に又は過剰なモル当量で存在してもよい。一実施形態では、クエン酸は化学量論的量で存在する。
【0079】
ビニメチニブクエン酸分子複合体は、以下の工程:
(a)ビニメチニブとクエン酸との混合物を提供する工程と、
(b)押出機を通して混合物を供給して、ビニメチニブクエン酸分子複合体を形成する工程と、を含む、方法によって調製することができる。
【0080】
混合物は、ビニメチニブとクエン酸とのブレンドである。混合物は、例えば、ビニメチニブとクエン酸を、任意の好適な手段によって、例えば管状ブレンダーを使用することによって、好適な期間、例えば約30分間混合することによって、調製することができる。ビニメチニブとクエン酸との均質ブレンドを調製することが望ましいが、必須ではない。
【0081】
ビニメチニブは、遊離塩基、無水物として、又はビニメチニブDMSO溶媒和物などの溶媒和物として存在してもよい。
【0082】
クエン酸は、遊離酸、無水物又は水和物、例えば一水和物として存在してもよい。
【0083】
クエン酸は、ビニメチニブに対して化学量論的に又は過剰なモル当量で存在してもよい。一実施形態では、クエン酸は化学量論的量で存在する。
【0084】
分子複合体は、混合物を調製する際には形成されない。ビニメチニブ及びクエン酸は共結晶化して、押出機を通して混合物を供給する際に分子複合体を形成する。
【0085】
押出機は、典型的には、バレルの一端に配置されたダイを備えた静止バレル内に1又は複数の回転スクリューを含む。スクリューの全長に沿って、混合物の共結晶化は、バレル内のスクリューの回転によってもたらされる。押出機は、少なくとも3つのセクション:供給セクションと、加熱セクションと計量セクションと、に分割することができる。供給セクションでは、混合物は押出機に供給される。混合物は、溶媒を必要として、又は必要とせずに、供給セクションに直接添加することができる。加熱セクションでは、混合物がそのセクションを横断する際に、ビニメチニブ及びクエン酸が共結晶化して分子複合体を形成する。溶媒が、加熱セクションに任意に添加されてもよい。加熱セクションの後に、任意の計量セクションがあり、計量セクションでは、分子複合体が、ダイを通って特定の形状、例えば顆粒に押し出され得る。押出機は、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、又は噛合スクリュー押出機であってもよい。一実施形態では、押出機は、二軸押出機(例えば、共回転二軸押出機)である。
【0086】
混合物は、任意の好適な速度で供給セクションに供給され得る。例えば、供給セクションの速度は、約1rpm~約100rpmであってもよい。一実施形態では、速度は約5rpm~約80rpmであってもよい。一実施形態では、速度は約10rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は約20rpmであってもよい。
【0087】
ある特定の実施形態では、混合物が供給セクションに供給されるとき、溶媒が混合物に添加される。代替的に又は追加的に、溶媒は、混合物が加熱セクションを横断する際に、加熱セクションの1つ以上のゾーン(例えば、1、2、3、4、又は5つのゾーン)に1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)添加されてもよい。これは、材料が加熱セクションを通って移動する際に、混合物の乾燥を防止するのに有利であり得る。溶媒は、メタノール及び/又はエタノールなどのアルコール溶媒であってもよい。一実施形態では、アルコール溶媒はメタノールである。
【0088】
添加される溶媒の量は、混合物を湿らせる(すなわち、「湿潤」)ために十分な溶媒が添加される限りにおいて特に制限されないが、混合物が液状になり過ぎるほどに多い量ではない。押出機が二軸押出機である場合、添加される全溶媒に対する全固形分(ビニメチニブ及びクエン酸)の重量/体積(w/v)比は、約1gの全固形分:約0.1~約2mlの添加される全溶媒、例えば約1gの全固形分:約0.5ml~約1.5mlの全溶媒、例えば、約1gの全固形分:約0.75ml~約1.25mlの全溶媒、の範囲であってもよい。一実施形態では、全固形分(ビニメチニブ及びクエン酸)の全溶媒に対する重量/体積比は、約1gの全固形分:約1mlの全溶媒である。
【0089】
加熱セクションは、その長さにわたって単一の温度まで加熱されてもよく、又は、それぞれが他のゾーンとは独立して加熱されてもよい、2つ以上の(例えば、2、3、4、又は5つの)ゾーンに分割されてもよい。加熱セクションを出る際、ビニメチニブ及びクエン酸が共結晶化されて分子複合体を形成し、ビニメチニブ、クエン酸、及び/又は分子複合体のいずれも実質的に劣化しない又は実質的に分解されない限りにおいて、加熱セクション又は各ゾーンの温度は特に制限されない。
【0090】
押出機が二軸押出機である場合、加熱セクションは、上記のように2つ以上のゾーンに分割されてもよく、各ゾーンは、約≧周囲温度(例えば、約≧25℃)~約≦115℃の範囲の温度まで独立して加熱されてもよい。
【0091】
押出機がスクリューを含む場合、スクリュー(単数又は複数)及び加熱セクションは一致してもよく、すなわち、スクリュー(単数又は複数)も加熱セクションであってもよい。
【0092】
スクリュー(単数又は複数)が回転する速度は、任意の好適な速度であり得る。例えば、スクリュー(単数又は複数)の速度は、約1rpm~約500rpmであってもよい。一実施形態では、速度は約5rpm~約400rpm、例えば約10rpm~約100rpmであってもよい。一実施形態では、速度は約25rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は約50rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は約75rpmであってもよい。
【0093】
ビニメチニブクエン酸分子複合体は、それが調製される方法にかかわらず、結晶性固体として回収される。結晶性分子複合体は、結晶性生成物を濾過、デカント、遠心分離、又は採集することによって、直接回収することができる。所望であれば、溶媒(存在する場合)のある割合を、結晶性固体の回収前に蒸発させてもよい。
【0094】
どのようにして結晶性分子複合体が回収された場合でも、分離した分子複合体を乾燥させてよい。乾燥は、既知の方法、例えば約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。あるいは、結晶性分子複合体は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、分子複合体が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって分子複合体が上記の温度又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0095】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のビニメチニブクエン酸分子複合体と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0096】
別の態様では、本発明は、治療有効量の本明細書に記載のビニメチニブクエン酸分子複合体を患者に投与することを含む、患者におけるMEK活性を阻害するための方法に関する。
【0097】
別の態様では、本発明は、治療有効量のビニメチニブクエン酸分子複合体を患者に投与することを含む、患者における過剰増殖性障害の治療方法に関する。
【0098】
別の態様では、本発明は、MEK活性の阻害に使用するための、本明細書に記載のビニメチニブクエン酸分子複合体に関する。
【0099】
別の態様では、本発明は、過剰増殖性障害の治療に使用するための、本明細書に記載のビニメチニブクエン酸分子複合体に関する。
【0100】
本発明の実施形態及び/又は所望による特徴は、上記で説明されている。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の実施形態又は所望による特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせで、組み合わせることができる。
【0101】
以下の実施例を参照して、本発明を更に説明し、実施例は例示することを意図するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0102】
全般事項
XRPD法
XRPDディフラクトグラムを、CuKα放射線(40kV、40mA)及びGeモノクロメータを取り付けたθ-2θゴニオメーターを使用して、Bruker D8回折計で収集した。入射ビームは、2.0mmの発散スリット、続いて0.2mmの散乱防止スリット及びナイフエッジを通過する。回折ビームは、2.5°ソーラスリット備えた8.0mm受光スリットを通過し、続いて、Lynxeye検出器を通過する。データ収集及び分析に使用されるソフトウェアは、それぞれ、Diffrac Plus XRD Commander及びDiffrac Plus EVAであった。
【0103】
試料は、受け取ったままの粉末を使用して、フラットプレート試験片として、周囲条件で実施した。試料を、平坦な表面上に穏やかに押圧することによって、又は切断された空洞内に充填することによって、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェハ上で調製した。試料を、それ自体の面内で回転させた。
【0104】
標準的な収集方法の詳細は以下の通りである。
角度範囲:2~42°2θ
ステップサイズ:0.05°2θ
収集時間:0.5秒/ステップ(総収集時間:6.40分)
【0105】
DSC法
DSCデータを、50位置オートサンプラーを装備したTA Instruments Q2000又はDiscovery TGA上で収集した。典型的には、ピンホールアルミニウムパン中の各試料0.5~3mgを、10℃/分で25℃から300℃まで(ビニメチニブDMSO溶媒和物について)又は10℃/分で25℃から235℃まで(ビニメチニブクエン酸分子複合体について)に加熱した。50ml/分の乾燥窒素のパージを、試料上に維持した。
【0106】
測定器制御ソフトウェアはTRIOSであって、データは、TRIOS又はUniversal Analysisを使用して分析した。
【0107】
TGA法
16位置オートサンプラーを装備したTA Instruments Q500又はDiscovery TGAでTGAデータを収集した。典型的には、各試料5~10mgを予め秤量したアルミニウムDSCパンに載せ、周囲温度から350℃まで10℃/分で加熱した。60ml/分の窒素のパージを、試料上に維持した。
【0108】
測定器制御ソフトウェアはAdvantage for Q Series及びThermal Advantageであって、データは、TRIOS又はUniversal Analysisを使用して分析した。
【0109】
溶液NMR
オートサンプラーを装備し、DRX400コンソールによって制御されたBruker 400MHz機器上で1H NMRスペクトルを収集した。別途記載のない限り、試料は、MeOH-d4溶媒中(ビニメチニブDMSO溶媒和物)又はDMSO-d6溶媒中(ビニメチニブクエン酸分子複合体)で調製した。Bruker搭載の標準実験(1H)を使用して、Topspinソフトウェア内のICON-NMR構成を使用して自動実験を取得した。ACD Spectrus Processorを使用してオフライン分析を行った。
【0110】
FT-IR法
ユニバーサル減衰全反射(ATR)サンプリングアクセサリーを装備したPerkin-Elmer Spectrum One上で、4000~650cm-1で16スキャンにわたって、データを収集した。Spectrumソフトウェアを使用してデータを収集し、ACD Spectrus Processorを使用して処理した。
【0111】
ラマン法
データを、Renishaw inVia Qontorで収集した。測定器制御及びバックグラウンド減算処理は、WiREを使用して完了した。データ提示は、ACD Spectrus Processorを使用して完了した。
【0112】
方法:励起源、λex=785nmレーザー;ラマンシフト範囲:150~1900cm-1;曝露時間:30秒;累積数:3回
【0113】
単結晶X線回折(SCXRD)
データを、Oxford Cryosystems Cobra冷却装置を装備したRigaku Oxford Diffraction Supernova Dual Source,Cu at Zero,Atlas CCD回折計で収集した。実験表に記載のように、CuKα放射線を使用してデータを収集した。Bruker AXS SHELXTLスイート又はOLEX2結晶学ソフトウェアを使用して構造を解き、精密化した。完全な詳細は、CIFにおいて見出すことができる。特に明記しない限り、炭素に結合した水素原子を幾何学的に配置し、ライディング等方性変位パラメータで精密化した。ヘテロ原子に結合した水素原子は、差フーリエ合成に位置し、等方性変位パラメータで自由に再精密化させた。結晶構造の基準ディフラクトグラムグラムを、水銀を使用して生成した。
【0114】
HPLCによる化学的純度の測定
純度分析は、ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent HP1100/Infinity II 1260シリーズシステムで、ChemStation又はOpenLABソフトウェアを使用して実施した。完全な方法の詳細を、以下に提供する。
【0115】
【0116】
略語
DMSO ジメチルスルホキシド
eq. 当量
HME ホットメルト押出
IPA イソプロパノール
MeOH メタノール
min 分
【0117】
実施例1-ビニメチニブDMSO溶媒和物
DMSOのアリコートを、増加させながら、溶解が観察されるまで(合計300μl)、周囲温度でビニメチニブ(15mg、純度97.5%)に添加した。添加と添加との間に、試料を周囲温度で約30秒間振盪した。溶媒を周囲条件で蒸発させた。
【0118】
実施例2-ビニメチニブDMSO溶媒和物
ビニメチニブ(約50mg、純度97.5%)をDMSO(合計20容量;全体で1ml)中に懸濁させ、周囲温度で15分間撹拌して、透明な溶液を得た。選択された貧溶媒(IPA又は水)のアリコートを、増加させながら添加し(合計60容量;全体で3ml)、試料を周囲温度で撹拌した。一晩撹拌した後、懸濁液のアリコートを濾過し、XRPD分析前に数分間、吸引下で乾燥させた。バルク試料を濾過し、真空下で約1時間乾燥させた。
【0119】
実施例3-ビニメチニブDMSO溶媒和物
ビニメチニブ(約2g、純度97.5%)をDMSO(15容量;合計30ml)で処理し、70℃で15分間撹拌した。溶液を研磨濾過し、70℃で5分間攪拌した後、1℃/分で25℃まで冷却した。透明な溶液をIPA(60容量;全体で120ml)で処理し25で攪拌した。4時間後、懸濁液を得た。アリコートを濾過し、特性評価の前に数分間、吸引下で乾燥させた。
【0120】
バルク試料を濾過し、吸引下で20分間乾燥させ、真空オーブン中で25℃で4時間乾燥させた。
【0121】
実施例4-ビニメチニブDMSO溶媒和物
ビニメチニブ(約8g、純度97.5%)をDMSO(1容量;8ml)中に懸濁させ、100℃で70分間撹拌した。サンプルが懸濁液のままであったため、追加のDMSO(0.5容量;4ml)を添加した。25分後、透明な溶液を得た。
【0122】
溶液を、1℃/分で、25℃まで冷却した。IPA(9容量;72ml)を、得られた懸濁液に25分かけて添加した。試料を25℃で80分間攪拌し、次いで、1℃/分で5℃まで冷却し、5℃で約36時間攪拌した。試料を濾過し、1容量のIPA(全体で16ml)で2回洗浄した。試料を1分間未満の吸引下で乾燥させ、周囲温度で真空下で1時間乾燥させた。収率:80%
【0123】
実施例5-ビニメチニブDMSO溶媒和物の特性評価
ビニメチニブDMSO溶媒和物の結晶構造を100Kで決定し、構造データの要約を表1及び表2に見出すことができる。ビニメチニブDMSO溶媒和物は直方晶系、最終R1[I>2σ(I)]=3.06を有する空間群P2
12
12
1に結晶化する。構造を
図1に示すように同定し、非対称単位は、
図2に示されるように、ビニメチニブの1つの完全に秩序化された分子と、DMSOの1個の完全に秩序化された分子とを含有することが見出された。
【0124】
【0125】
【0126】
表3は、ビニメチニブ DMSO溶媒和物のXRPDピークリストを提供する。
【0127】
【0128】
ビニメチニブDMSO溶媒和物もまた、以下のように特性評価された。
TGA及びDSC分析(
図3を参照)、と、
1H-NMR分光法(
図4を参照)。
【0129】
実施例6-ビニメチニブクエン酸分子複合体
ビニメチニブ(約30mg)及び1.0当量(約13mg)のクエン酸を、HPLCバイアル瓶に分注し、2つのステンレス鋼粉砕ボール(直径3mm)を添加した。溶媒を添加し(MeOH、10μl)、試料を、Fritsch遊星ミルでの粉砕にかけた(500rpm、2時間持続時間)。得られた固形物をXRPDにより分析し、ビニメチニブクエン酸分子複合体として同定した。
【0130】
実施例7-ビニメチニブクエン酸分子複合体
ビニメチニブ(500mg)及び1.0当量のクエン酸(約218mg)を、1つのジルコニア粉砕ボール(直径20mm)備えた粉砕ジャー(25ml)に分配した。メタノールを添加し(90μl)、試料をRetschミル上での粉砕にかけた(30Hz、30分)。得られた固形物をXRPDにより分析し、ビニメチニブクエン酸分子複合体として同定した。
【0131】
実施例8-ビニメチニブクエン酸分子複合体
ビニメチニブDMSO溶媒和物(60mg)及び2.0当量のクエン酸(約44mg)を、HPLCバイアル瓶に分配し、2つのステンレス鋼粉砕ボール(直径3mm)を添加した。MeOHを添加し(30μl)、試料を、Fritsch遊星ミルでの粉砕にかけた(500rpm、20分)。粉砕後に得られた固形物をXRPDにより分析し、ビニメチニブクエン酸分子複合体として同定した。
【0132】
実施例9-ビニメチニブクエン酸分子複合体
ビニメチニブ(699mg)及び1.0当量のクエン酸(305mg)をプラスチック容器(PP10)に添加し、Speedmixer(商標)からDAC150-FV2-Kミキサー上で3500rpmで2分間混合した。混合物に10個のボールベアリング(直径3mm)を加え、MeOH(235μl)を添加し、2300rpmで2分間混合した。ボールベアリングを取り出し、試料を3500rpmで1分間再混合し、凝集体の混合物を得た。ボールベアリングを再度加え、3500rpmで1分間ミリングして、粉末及び粉末の凝集体を得た。得られた固形物をXRPDにより分析し、ビニメチニブクエン酸分子複合体として同定した。
【0133】
実施例10-ビニメチニブクエン酸分子複合体の特性評価
表4は、ビニメチニブクエン酸分子複合体のXRPDピークリストを提供する。
【0134】
【0135】
ビニメチニブクエン酸分子複合体はまた、以下のようにしても特性評価した。
TGA及びDSC分析(
図6を参照)、と、
1H-NMR分光法(
図7を参照)。
3つの保管条件における安定性試験。
図8は、保管前(下部)、40℃/75%RTで10日間保管した後(中間部)、及び25℃/97%RHで10日間保管した後(上部)のビニメチニブクエン酸のXRPDを重ねて示す。分子複合体は、2つの異なる温度及び湿度条件下で少なくとも10日間安定したままである。
FT-IR分析(
図9を参照)。
図9は、(a)ビニメチニブクエン酸分子複合体、(b)ビニメチニブ遊離塩基、及び(c)クエン酸無水物のFT-IRを重ねて示す。
ラマン分析(
図10を参照)。
図10は、(a)ビニメチニブクエン酸分子複合体、(b)ビニメチニブ遊離塩基、及び(c)クエン酸無水物のラマンを重ねて示す。
ビニメチニブクエン酸を
、1H、
13C及び
15N固体MAS NMR、DFT及び機械学習計算分析により分析した。得られたデータ(図示せず)は、
ビニメチニブ分子のメチルイミダゾール部分中の窒素が、ビニメチニブ:クエン酸中でプロトン化されていないことを示す。したがって、ビニメチニブ:クエン酸試料は、塩ではなく共結晶であることと一致する。
ビニメチニブ:クエン酸試料中で、長いO-H結合長(約1.1Åと推定)を有する水素結合カルボン酸プロトンが観察された。
2つの結晶学的に等価ではないビニメチニブ分子が、ビニメチニブ:クエン酸単位セル中に存在する。
【0136】
乳棒と乳鉢の実施例
均質な混合を確実にするために、メタノール又はエタノールのいずれかで湿らせたビニメチニブとクエン酸との混合物に対して、手粉砕を用いた。
【0137】
実施例11-ビニメチニブクエン酸分子複合体
ビニメチニブ(4.0g)及びクエン酸(1.74g)を大きな大理石の乳棒に加え、乳鉢を用いて手で粉砕し、メタノール(2ml)の存在下で10分間混合した。次いで、構成成分を、更にメタノール合計5.7mlで湿潤させ、手で10分間粉砕した。この後、湿潤ペーストを10分間空気乾燥させた後、10分間再粉砕した。乾燥固体が得られるまでこのプロセスをもう一度繰り返し、乾燥固体は乳棒に付着した。固形物をビーカーに掻き落とし、50℃で一晩、真空下で乾燥させた。得られた固形物をXRPD、1H NMR及び熱技術によって分析して、分子複合体の形成を確認した。
【0138】
実施例12-ビニメチニブクエン酸分子複合体
ビニメチニブ(1.00g)及びクエン酸一水和物(0.48g)を大きな乳棒に加え、エタノール(1容量、1.5ml)の存在下で、10分間手で粉砕することで混合した。この後、湿潤ペーストを10分間空気乾燥させた後、10分間再粉砕した。乾燥固体が得られるまでこのプロセスをもう一度繰り返し、乾燥固体は乳棒に付着した。固形物を20mlのバイアル瓶に掻き落とし、簡単に風乾させた。得られた固形物をXRPDによって分析して、分子複合体の形成を確認した。
【0139】
ホットメルト押出(HME)の実施例
Rondol Microlab 10mmホットメルト押出機(この場合、二軸押出機)(
図12を参照)を全ての実験に使用した。記載の押出機の構成要素は、フィーダー、混合された出発材料を押出機に供給するフィーダーフィルタ、及び共回転二軸を収容するバレルである。押出機のバレルは、4つの制御可能な温度ゾーン(ダイゾーンを除く)を有する。これらの実験では、ダイは使用しなかった。
【0140】
押出機のバレルの温度は、25℃から115℃までで変化した。出発成分の化学量論的(モル)ブレンドを調製し、押出機に充填する前に30分間管状ブレンダーを使用して混合した。フィーダー速度は、10rpmから80rpmまで変化させることができ、スクリュー速度を最大400rpmまで増加させることができる。スクリュー構成を
図13に示す。スクリュー設計は、搬送及び混合のために交互に10mmのセグメントで設定した。ゾーン1は、最小限の混合能力を有する純粋な搬送ゾーンである。ゾーン2は、高混合要素である。この搬送及び混合要素は、それぞれ、ゾーン3及びゾーン4に対して繰り返される。各実験では、3g~10gの材料を処理した。
【0141】
溶媒添加を伴うHME実験の場合、機械的シリンジポンプを使用して、溶媒添加速度を正確に制御した。溶媒添加は、ゾーン1で行った。これを
図14に示す。
【0142】
HME試験
HME温度実験
手順
ビニメチニブ(3.00g)及びクエン酸一水和物(1.42g)を物理的に混合して、管状ブレンダー上で30分間ブレンドすることによって均質な試料を得た。混合物を、複数の温度でホットメルト押出機(HME)に通過させた。
【0143】
結果及び考察
いくつかのHME実験は、溶媒を使用せずに、ビニメチニブ/クエン酸一水和物物理混合物(1:1)を使用して実施した。これらの試験では、材料の物理的外観及び一貫性に対する温度の影響、並びに、溶媒を含まない手順を使用して分子複合体の結晶化を達成できるかどうかを検討した。加えて、HPLC分析を行って、化学的完全性(純度)に対する温度の影響を試験した。
【0144】
これらの試験では、スループット(又は供給速度)は、20rpmで一貫して維持された。しかしながら、スクリュー速度は、器具を通過する材料の一貫性に明確な影響を有していることが見出された。より低いスクリュー速度では、材料は、色又は物理的外観の変化なしに器具を通過することが見出された。しかしながら、より高いスクリュー速度では、増加した機械的応力は、材料上にある程度の変色を引き起こすように見えた。
【0145】
材料への温度影響に関して、材料は、バレルが25℃に維持されたときに器具を通過することが見出された。しかしながら、XRPD分析は、所望の分子複合体への変換は生じないことを明らかにした。115℃での押出も実施したが、なぜなら、この温度において、クエン酸一水和物が脱水されることが予想され、結晶化を促進し得るいくつかの水溶媒を提供するからである。
【0146】
しかしながら、押出機に出た材料は、溶融し、色が灰色であることが観察された。この材料のXRPD分析は、ビニメチニブクエン酸分子複合体と一致した。HPLCは、有意な分解が生じたことを示した(純度の測定値は89.1%)。
【0147】
これらの結果を以下の表5に要約する。
【0148】
【0149】
メタノールを用いた湿式押出
ビニメチニブ(3.00g)及びクエン酸一水和物(1.42g)を物理的に混合して、管状ブレンダー上で30分間ブレンドすることによって均質な試料を得た。ゾーン1にMeOHを滴下しながら、混合物を押出機に通した。
【0150】
結果及び考察
ビニメチニブ及びクエン酸を、1:1比で押出機フィーダーに添加した。フィーダー速度を10~20rpmに調整し、スクリュー速度を50rpmに維持した一連のスクリーニング実験を行った。スクリーニングパラメータは、押出機の温度と溶媒添加速度との関係に焦点を合わせた。これらの実験のために選択した溶媒は、MeOHであった。
【0151】
2つの実験を、2つの異なる溶媒添加速度で低温(25℃)で実施した。MeOH添加速度が高い(10μl/秒)押出は、バレルを出る材料が湿潤し過ぎた結果となった。MeOHの添加速度を2.5μl/秒に減少させることで、物理的混合物は良好な固体一貫性に維持された。2.5μl/秒のMeOH添加(25℃)からの押出材料は、XRPD及びHPLCによって特性評価した。XRPDは、ビニメチニブクエン酸分子複合体と一致した。
【0152】
MeOH添加速度を5μl/秒に増加させ、温度をそれぞれ50℃及び60℃に上昇させた2つの追加のスクリーニング実験を実施した。押出成形された材料の特性評価から、ビニメチニブクエン酸分子複合体の生成を確認した。加えて、MeOH添加部位での凝集の低減が観察された。
【0153】
これらの結果を以下の表6に要約する。
【0154】
【手続補正書】
【提出日】2021-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ビニメチニブDMSO溶媒和物である、ビニメチニブの分子複合体。
【請求項2】
約5.8、7.9、8.9、12.5、13.4、14.5、15.1、17.1、17.6、17.9、18.8、19.7、20.1、20.3、21.0、21.8、22.2、22.7、22.8、23.3、23.5、24.2、24.5、25.2、25.8、26.1、26.8、27.0、27.7、27.8、28.4、28.7、29.0、29.2、29.8、30.1、30.3、及び30.7度2シータ±0.2度2シータからなる群から選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項3】
約5.8、8.9、14.5、17.6、18.8、20.1、23.5、及び25.8度2シータ±0.2度2シータにピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項2に記載の分子複合体。
【請求項4】
約133.9℃にピークを有する吸熱事象と、約221.3℃にピークを有する別の吸熱事象と、を含むDSCサーモグラムを有する、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項5】
ビニメチニブDMSO溶媒和物を調製するための方法であって、
(a)ビニメチニブをDMSOと接触させる工程と、
(b)ビニメチニブのDMSO溶液を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項6】
ビニメチニブDMSO溶媒和物を結晶性固体として回収する工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ビニメチニブ及びクエン酸の結晶性分子複合体である、分子複合体。
【請求項8】
約6.5、7.3、7.8、11.4、12.3、12.9、13.6、14.2、14.5、14.8、15.1、16.2、17.1、17.9、18.2、18.6、19.0、19.5、20.1、21.0、21.3、21.8、22.3、22.7、23.7、24.2、24.5、24.9、25.2、25.9、26.4、27.0、27.2、27.6、27.8、28.3、29.2、29.5、29.8、30.3、及び30.9度2シータ±0.2度2シータからなる群から選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項7に記載の分子複合体。
【請求項9】
約7.3、11.4、12.3、13.6、14.2、14.5、17.9、18.2、20.1、21.8、及び24.9度2シータ±0.2度2シータにピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項8に記載の分子複合体。
【請求項10】
約160.3℃にピークを有する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有する、請求項7に記載の分子複合体。
【請求項11】
ビニメチニブ及びクエン酸の結晶性分子複合体を調製するための方法であって、低エネルギーボールミリング又は低エネルギー粉砕を使用して前記結晶性分子複合体を形成することを含む、方法。
【請求項12】
ビニメチニブ及びクエン酸の結晶性分子複合体を調製するための方法であって、二重非対称遠心力をビニメチニブとクエン酸との混合物に適用して、前記結晶性分子複合体を形成する工程を含む、方法。
【請求項13】
ビニメチニブ及びクエン酸の結晶性分子複合体を調製するための方法であって、
(a)ビニメチニブとクエン酸との混合物を提供する工程と、
(b)押出機を通して前記混合物を供給して、ビニメチニブクエン酸分子複合体を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の分子複合体と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項15】
請求項7に記載の分子複合体と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項16】
MEK活性の阻害に使用するための、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項17】
MEK活性の阻害に使用するための、請求項7に記載の分子複合体。
【請求項18】
過剰増殖性障害の治療に使用するための、請求項1に記載の分子複合体。
【請求項19】
過剰増殖性障害の治療に使用するための、請求項7に記載の分子複合体。
【国際調査報告】