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特表2022-519518精子関連タンパク質Catsperに基づく避妊ワクチン
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  • 特表-精子関連タンパク質Catsperに基づく避妊ワクチン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】精子関連タンパク質Catsperに基づく避妊ワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/37 20060101AFI20220316BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220316BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 15/16 20060101ALI20220316BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220316BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C12N15/37
A61K47/64
A61K38/16
A61K39/00 H
A61P15/16
C12N7/01 ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544400
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 US2020017449
(87)【国際公開番号】W WO2020163853
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/802,922
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/970,249
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502263411
【氏名又は名称】レンセラール ポリテクニック インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビストロフ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ジーン-ジュ,ルチア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA45
4C076AA95
4C076CC17
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA18
4C084CA35
4C084NA14
4C084ZA86
4C085AA03
4C085CC03
4C085EE01
(57)【要約】
組成物は、抗原キャリアドメインと、抗原キャリアドメイン中の精子細胞由来の1つ以上の抗原領域とを含む避妊キメラウイルス様粒子を含み、抗原キャリアドメインは、ヒトパピローマウイルス由来のL1を含み、抗原領域は、Catsperイオンチャネル複合体の1つ以上の構造要素を含む。患者に投与されると、避妊ワクチンは、抗精子抗体の産生を刺激し、精子と結合すると、精子細胞の運動を阻害し、精子細胞が卵細胞に貫通できなくなる。組成物の誘導された免疫不妊症は、抗原キャリアドメインはないが、抗精子抗体を隔離するための、1つ以上の抗原領域と実質的に同一のタンパク質配列を有する拮抗薬を患者に過剰投与することにより、短期又は長期にわたって拮抗させることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原キャリアドメインと、
前記抗原キャリアドメイン中の精子細胞由来の1つ以上の抗原領域と
を含む、避妊キメラウイルス様粒子。
【請求項2】
前記抗原キャリアドメインは、1つ以上のカプシドタンパク質を含む、請求項1に記載のキメラウイルス様粒子。
【請求項3】
前記1つ以上のカプシドタンパク質は、ヒトパピローマウイルス由来のL1を含む、請求項2に記載のキメラウイルス様粒子。
【請求項4】
CGPアミノ酸残基は、前記1つ以上の抗原領域のN端末に隣接し、GPCアミノ酸残基は、前記1つ以上の抗原領域のC端末に隣接する、請求項1に記載のキメラウイルス様粒子。
【請求項5】
前記1つ以上の抗原領域は、Catsperイオンチャネル複合体の構造要素を含む、請求項1に記載のキメラウイルス様粒子。
【請求項6】
前記構造要素は、Catsperイオンチャネル複合体の膜貫通ヘリックスセグメント間に位置する1つ以上のループの少なくとも一部を含む、請求項5に記載のキメラウイルス様粒子。
【請求項7】
前記構造要素は、Catsper1 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper2 s5とCatsper2 p-ループとの間のループ、Catsper1 s3とCatsper1 s4との間のループ、Catsper2 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper3 s1とCatsper3 s2との間のループ、Catsper1 s5とCatsper1 p-ループとの間のループ、Catsper2 p-ループとCatsper2 s6との間のループ、Catsper3 s3とCatsper3 s4との間のループ、Catsper3 s5とCatsper3 p-ループとの間のループ、Catsper3 p-ループとCatsper3 s6との間のループ、Catsper4 s1とCatsper4 s2との間のループ、Catsper4 p-ループとCatsper4 s6との間のループ、Catsperδ ループ785-805、Catsperε ループ331~348、又はその組み合わせの少なくとも一部を含む、請求項6に記載のキメラウイルス様粒子。
【請求項8】
前記ウイルス様粒子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又はその組み合わせを含む、請求項7に記載のキメラウイルス様粒子
【請求項9】
抗原キャリアタンパク質の遺伝子をプラスミドに挿入し、
前記抗原キャリア及び精子細胞由来の1つ以上の抗原領域のキメラ遺伝子のための重複プライマーを調製し、
ポリメラーゼ連鎖反応を実施して、前記キメラ遺伝子を増幅し、
前記キメラ遺伝子からウイルス様粒子を合成することを含む、避妊キメラウイルス様粒子を作製する方法。
【請求項10】
前記1つ以上の抗原領域は、Catsperイオンチャネル複合体の構造要素を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記構造要素は、Catsperイオンチャネル複合体の膜貫通螺旋セグメント間に配置された1つ以上のループの少なくとも一部を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記構造要素は、Catsper1 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper2 s5とCatsper2 p-ループとの間のループ、Catsper1 s3とCatsper1 s4との間のループ、Catsper2 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper3 s1とCatsper3 s2との間のループ、Catsper1 s5とCatsper1 p-ループとの間のループ、Catsper2 p-ループとCatsper2 s6との間のループ、Catsper3 s3とCatsper3 s4との間のループ、Catsper3 s5とCatsper3 p-ループとの間のループ、Catsper3 p-ループとCatsper3 s6との間のループ、Catsper4 s1とCatsper4 s2との間のループ、Catsper4 p-ループとCatsper4 s6との間のループ、Catsperδ ループ785-805、Catsperε ループ331~348、又はその組み合わせの少なくとも一部を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルス様粒子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又はその組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗原キャリアドメインと、前記抗原キャリアドメイン中の精子細胞由来の1つ以上の抗原領域とを含む避妊キメラウイルス様粒子を含む組成物を調製し、
前記組成物を患者に投与して、前記1つ以上の抗原領域に対する前記患者の免疫応答を高めることを含む、患者に避妊処置を提供する方法。
【請求項15】
前記抗原キャリアドメインは、ヒトパピローマウイルス由来のL1を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数の抗原領域は、Catsperイオンチャネル複合体の構造要素を含み、前記構造要素は、Catsper1 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper2 s5とCatsper2 p-ループとの間のループ、Catsper1 s3とCatsper1 s4との間のループ、Catsper2 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper3 s1とCatsper3 s2との間のループ、Catsper1 s5とCatsper1 p-ループとの間のループ、Catsper2 p-ループとCatsper2 s6との間のループ、Catsper3 s3とCatsper3 s4との間のループ、Catsper3 s5とCatsper3 p-ループとの間のループ、Catsper3 p-ループとCatsper3 s6との間のループ、Catsper4 s1とCatsper4 s2との間のループ、Catsper4 p-ループとCatsper4 s6との間のループ、Catsperδ ループ785-805、Catsperε ループ331~348、又はその組み合わせの少なくとも一部を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の抗原領域は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22又はその組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物は、皮下、静脈内、鼻腔内、又はそれらの組み合わせで投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記患者に補助組成物を投与して、前記組成物の効果を拮抗させることをさらに含み、前記補助組成物は、前記1つ以上の抗原領域のものと実質的に同一のタンパク質配列を有する拮抗薬を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記拮抗薬は、1つ以上のペプチドを含み、前記1つ以上のペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22又はその組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2019年2月8日出願の米国仮出願第62/802,922号及び2020年2月5日出願の米国仮出願第62/970,249号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
世界中の妊娠のほぼ半分は、望まないもの、あるいはタイミングの合わないものである。現在の長期作用性の可逆的避妊技術は、ホルモン法又は手術が主である。全般的な有効性はあるものの、女性と男性に利用可能な避妊技術には無数の欠点がある。一例を挙げると、一部の女性はホルモン避妊法に耐えられない。さらに、ホルモン法は、患者にかなり自己管理を必要としたり、不快感を与えることが多い。例えば、錠剤又はパッチの投薬は、避妊効果が所望される時間にわたって一定間隔で服用又は適用される必要がある。埋込式又は子宮内避妊具は、軽度から重度の副作用及び合併症を引き起こす可能性があり、再建又は再埋込のために再度来院を必要とすることがある。
【0003】
したがって、避妊効果を望む患者の処置に関連する負担を軽減する、使用し易い、効果的で、長期間持続する、可逆的な避妊処置が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本開示のいくつかの実施形態は、抗原キャリアドメイン及び抗原キャリアドメイン中の精子細胞由来の1つ以上の抗原領域を含む避妊キメラウイルス様粒子に関する。いくつかの実施形態において、抗原キャリアドメインは、1つ以上のカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のカプシドタンパク質は、ヒトパピローマウイルス由来のL1を含む。いくつかの実施形態において、CGPアミノ酸残基は、1つ以上の抗原領域のN端末に隣接し、GPCアミノ酸残基は、1つ以上の抗原領域のC端末に隣接する。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原領域は、Catsperイオンチャネル複合体の構造要素を含む。いくつかの実施形態において、構造要素は、Catsperイオンチャネル複合体の膜貫通螺旋セグメント間に配置された1つ以上のループの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、構造要素は、Catsper1 s1とCatsper1 s2との間のループ、Catsper2 s5とCatsper2 p-ループとの間のループ、Catsper1 s3とCatsper1 s4との間のループ、Catsper2 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper3 s1とCatsper3 s2との間のループ、Catsper1 s5とCatsper1 p-ループとの間のループ、Catsper2 p-ループとCatsper2 s6との間のループ、Catsper3 s3とCatsper3 s4との間のループ、Catsper3 s5とCatsper3 p-ループとのループ、Catsper3 p-ループとCatsper3 s6との間のループ、Catsper4 s1とCatsper4 s2との間のループ、Catsper4 p-ループとCatsper4 s6との間のループ、Catsperδ ループ785~805、Catsperε ループ331~348又はその組み合わせの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、ウイルス様粒子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又はその組み合わせを含む。
【0005】
本開示のいくつかの実施形態は、抗原キャリアタンパク質の遺伝子をプラスミドに挿入すること、抗原キャリア及び精子細胞由来の1つ以上の抗原領域のキメラ遺伝子のための重複プライマーを調製すること、キメラ遺伝子を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応を実施すること、及びキメラ遺伝子からウイルス様粒子を合成することを含む、避妊キメラウイルス様粒子を作製する方法に関する。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原領域は、Catsperイオンチャネル複合体の構造要素を含む。いくつかの実施形態において、構造要素は、Catsperイオンチャネル複合体の膜貫通螺旋セグメント間に配置された1つ以上のループの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、構造要素は、Catsper1 s1とCatsper2との間のループ、Catsper2 s5とCatsper2 p-ループとの間のループ、Catsper1 s3とCatsper1 s4との間のループ、Catsper2 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper3 s1とCatsper3 s2との間のループ、Catsper1 s5とCatsper 1p-ループとの間のループ、Catsper2 p-ループとCatsper2 s6との間のループ、Catsper3 s3とCatsper3 s4との間のループ、Catsper3 s5とCatsper3 p-ループとの間のループ、Catsper3 p-ループとCatsper3 s6との間のループ、Catsper4 s1とCatsper4 s2との間のループ、Catsper4 p-ループとCatsper4 s6との間のループ、Catsperδ ループ785~805、Catsperεループ331~348又はその組み合わせの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、ウイルス様粒子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又はそれらの組み合わせを含む。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態は、抗原キャリアドメインと、抗原キャリアドメイン中の精子細胞由来の1つ以上の抗原領域とを含む避妊キメラウイルス様粒子を含む組成物を調製すること、及び1つ以上の抗原領域に対する患者の免疫応答を高めるために組成物を患者に投与することを含む、患者に避妊処置を提供する方法に関する。いくつかの実施形態において、抗原キャリアドメインは、ヒトパピローマウイルス由来のL1を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原領域は、Catsperイオンチャネル複合体の構造要素を含み、構造要素は、Catsper1 s1とCatsper1 s2との間のループ、Catsper2 s5とCatsper1 p-ループとの間のループ、Catspe1 s3とCatsper1 s4との間のループ、Catsper2 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper3 s1とCatsper3 s2との間のループ、Catsper1s5とCatsper1pループとの間のループ、Catsper2 p-ループとCatsper2 s6との間のループ、Catsper3 s3とCatsper3 s4との間のループ、Catsper3 s5とCatsper3 p-ループとの間のループ、Catsper3 p-ループとCatsper3 s6との間のループ、Catsper4 s1とCatsper4 s2との間のループ、Catsper4 p-ループとCatsper4 s6との間のループ、Catsperδループ785-805、Catsperε ループ331-348、又はその組み合わせの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原領域は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、皮下、静脈内、鼻腔内、又はその組み合わせで投与される。いくつかの実施形態において、本方法は組成物の効果を拮抗させるために、補助組成物を患者に投与することをさらに含み、補助組成物は、1つ以上の抗原領域のものと実質的に同一のタンパク質配列を有する拮抗薬を含む。いくつかの実施形態において、拮抗薬は1つ以上のペプチドを含み、1つ以上のペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又はその組み合わせを含む。
【0007】
図面は、本発明を説明する目的で、開示された主題の実施形態を示す。ただし、本出願は、図面に示された正確な配置及び手段に限定されないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態による避妊キメラウイルス様粒子の概略図である。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態による、避妊キメラウイルス様粒子を作製する方法のチャートである。
図3A図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、患者に避妊治療を提供する方法のチャートである。
図3B図3Bは、本開示のいくつかの実施形態による、患者に避妊治療を提供する方法のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで図1を参照すると、本開示のいくつかの実施形態は、個体、使用者、患者などに避妊処置を提供するためのワクチンに関する。いくつかの実施形態において、避妊ワクチンは、従来のホルモン避妊薬、埋込式避妊薬、物理的避妊薬などと実質的に同等の有効性で、使用者に避妊効果を提供するものである。いくつかの実施形態において、避妊ワクチンは、精子細胞上に存在する構造に対する使用者の免疫応答を高める。いくつかの実施形態において、避妊ワクチンは、精子細胞上に存在するタンパク質又はタンパク質の組み合わせの構造に対する使用者の免疫応答を高める。いくつかの実施形態において、避妊ワクチンは、使用者における抗精子抗体の産生を刺激する。いくつかの実施形態において、避妊ワクチンは、精子細胞に結合すると、卵細胞を受精させる精子細胞の能力を阻害する抗精子抗体の産生を刺激する。いくつかの実施形態において、避妊ワクチンは、精子細胞に結合すると、精子細胞の運動性を阻害する抗精子抗体の産生を刺激する。理論に拘束されることは望まないが、女性に投与された場合、避妊ワクチンは、例えば、膣粘膜において、抗精子抗体の産生を刺激し、これが精子と結合し、精子の過活動運動を防止し、精子が卵に貫通できなくなる。これも理論に拘束されることは望まないが、男性に投与すると、避妊ワクチンは、精子を実質的に不活性にする、例えば、エピジジミスにおいて、抗精子抗体の産生を刺激する。
【0010】
いくつかの実施形態において、避妊ワクチンは、避妊キメラウイルス様粒子(VLP)100を含む。いくつかの実施形態において、VLP100は、2つ以上のドメイン102を含む。いくつかの実施形態において、VLP100は、抗原キャリアドメイン104を含む。いくつかの実施形態において、抗原キャリアドメイン104は、1つ以上のカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のカプシドタンパク質は、ヒトパピローマウイルス由来のL1を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、VLP100は、抗原ドメイン106を含む。いくつかの実施形態において、抗原ドメイン106は、1つ以上の抗原領域106Aを含む。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、抗原キャリアドメイン104内に位置する。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、精子細胞外表面上又はその周りに露出し、精子細胞中にのみ存在し、ヒトの体の他の組織中には存在せず、そして精子機能のために必要なものである、といううちの1つ以上を満たすものである。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、精子細胞由来の構造的特徴又は構造的特徴の部分を含む。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、精子細胞上に存在するタンパク質又はタンパク質の組み合わせの構造要素を含む。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、精子細胞べん毛上に存在する。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、Catsperイオンチャネル複合体の構造要素を含む。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、Catsperイオンチャネル複合体の膜貫通ヘリックスセグメント間に位置する1つ以上のループの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、Catsper1 s1とCatsper1 s2との間のループ、Catsper2 s5とCatsper2 p-ループとの間のループ、Catsper1 s3とCatsper1 s4との間のループ、Catsper2 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper3 s1とCatsper3 s2との間のループ、Catsper1 s5とCatsper1 p-ループの間のループ、Catsper2 p-ループとCatsper2 s6との間のループ、Catsper3 s3とCatsper3 s4との間のループ、Catsper3 s5とCatsper3 p-ループとの間のループ、Catsper3 p-ループとCatsper3 s6との間のループ、Catsper4 s1とCatsper4 s2との間のループ、Catsper4 p-ループとCatsper4 s6との間のループ、Catsperδ ループ785-805、Catsperε ループ331-348、又はその組み合わせの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、抗原領域106Aは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又はその組み合わせを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、CGPアミノ酸残基は、抗原領域106AのN端末に隣接する。いくつかの実施形態において、GPCアミノ酸残基は、1つ以上の抗原領域106AのC末端に隣接する。理論に拘束されることは望まないが、これらの追加の残基は、抗原キャリアドメイン104内の抗原領域106Aを安定化するのに役立つ。いくつかの実施形態において、VLP100は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又はそれらの組み合わせを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、VLP100は組成物に含まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、充填剤などを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、皮下、静脈内、鼻腔内、又はそれらの組み合わせを、使用者に投与するように構成される。
【0014】
ここで図2を参照すると、本開示のいくつかの実施形態は、避妊キメラVLPを作製する方法200に関する。202で、抗原キャリアタンパク質の遺伝子をプラスミドに挿入する。204で、抗原キャリア及び精子細胞由来の1つ以上の抗原領域のキメラ遺伝子のための重複プライマーを調製する。上述のように、いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原領域は、Catsperイオンチャネル複合体の構造要素を含み、例えば、構造要素は、複合体の膜貫通ヘリックスセグメント間に位置する1つ以上のループの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、構造要素は、Catsper1 s1とCatsper2との間のループ、Catsper2 s5とCatsper2 p-ループとの間のループ、Catsper1 s3とCatsper1 s4との間のループ、Catsper2 s1とCatsper2 s2との間のループ、Catsper3 s1とCatsper3 s2との間のループ、Catsper1 s5とCatsper1 p-ループとの間のループ、Catsper2 p-ループとCatsper2 s6との間のループ、Catsper3 s3とCatsper3 s4との間のループ、Catsper3 s5とCatsper3 p-ループとの間のループ、Catsper3 p-ループとCatsper3 s6との間のループ、Catsper4 s1とCatsper4 s2との間のループ、Catsper4 p-ループとCatsper4 s6との間のループ、Catsperδループ785~805、Catsperεループ331~348、又はその組み合わせの少なくとも一部を含む。206で、ポリメラーゼ連鎖反応を行って、キメラ遺伝子を増幅する。208で、キメラ遺伝子からVLPが合成される。いくつかの実施形態において、VLPは、細菌又は酵母細胞培養物中で合成される。いくつかの実施形態において、VLPは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又はその組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、VLPは自然に折り畳まれる。いくつかの実施形態において、VLPは、上述のVLP100の1つ以上である。
【0015】
ここで、図3Aを参照すると、本開示のいくつかの実施形態は、患者に避妊処置を提供するための方法300に関する。302で、抗原キャリアドメインと抗原キャリアドメイン中の精子細胞由来の1つ以上の抗原領域とを含む避妊キメラVLPを含む組成物が調製される。いくつかの実施形態において、キメラVLPは、上述のVLP100の1つ以上である。304で、組成物を患者に投与して、1つ以上の抗原領域に対する患者の免疫応答を高める。いくつかの実施形態において、組成物は、皮下、静脈内、鼻腔内、又はその組み合わせで患者に投与される。理論に拘束されることは望まないが、HPVに対する免疫を付与された女性についての過去の経験に基づくと、避妊免疫は約1~約9年間続くと期待される。
【0016】
ここで図3Bを参照すると、いくつかの実施形態において、306で、補助組成物を患者に投与して、組成物の効果を拮抗させる。いくつかの実施形態において、補助組成物は、1つ以上の抗原領域のタンパク質配列と実質的に同一のタンパク質配列を有する拮抗薬を含む。いくつかの実施形態において、補助組成物は、抗原キャリアタンパク質を含まない。いくつかの実施形態において、拮抗薬は、1つ以上のペプチドを含み、1つ以上のペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又はその組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、補助組成物は、1つ以上の防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、充填剤などを含む。理論に拘束されることは望まないが、組成物の誘導された免疫不妊症は、補助組成物での過剰投与を使用して抗精子抗体を隔離することによって拮抗する。いくつかの実施形態において、精子免疫を持った個体が、短期間の間、受精能を回復することを望む場合、受精能は、拮抗薬の適用によって与えられる。
【0017】
実施例
キメラL1の設計
一例として、精子カチオン性イオンチャネルCatsperからの短い抗原セグメントを含むキメラL1VLP形成タンパク質を調製した。相同モデルを用いて細胞外ループを同定することにより、Catsperの抗原セグメントを予測した。ホモログパピローマウイルスL1配列の多重整列により、L1遺伝子への挿入部位を同定した。3つの候補挿入部位を、天然の挿入/欠失部位として同定した。ブラケットCGP..GPCシーケンスを添加して、挿入されたループを安定化させた。DNA配列は、DNAWorksを用いて設計した。
【0018】
キメラL1のクローニング
アセンブリPCR法を用いてHPV11型L1の遺伝子を合成した。この遺伝子をNdeI及びEcoRIクローニング部位でpET28a+ベクターに挿入した。このプラスミドを増殖させ、大腸菌株DH5αを用いて細胞培養から精製した。所望の抗原領域の配列を含む重複オリゴを用いてプラスミドを増幅することによって(逆PCR)、キメラ構築物を作製した。アンプリコンをプラスミド増幅のためにDH5α細胞に形質転換し、タンパク質発現のためにBL21(DE3)pLysS細胞に移した。
【0019】
封入体(IB)の分離
HPV11型(L1)の組換えタンパク質L1タンパク質、Catsper ループS3-S4(P1)のL1タンパク質、及びCatsper-Epsilon ループ331-348(C5)のL1を大腸菌で発現させた。組換えタンパク質(L1、P1及びC5)を、プラスミド構築物pET28a-L1-P1及びpET28a-L1-C5によって形質転換された大腸菌Bl21(DE3)から単離された封入体(IB)から精製した。組換えタンパク質合成のための誘導後、形質転換大腸菌細胞の500ml培養物から細胞を回収した。およそ重量1gの湿潤細胞バイオマスを緩衝液(50mM Tris、50mM NaCl、pH9.5)25ml中で穏やかに撹拌することによって懸濁した。懸濁液を超音波処理(15周期、氷中で10秒オン及び10秒オフ)に供し、次いで12,000g、4℃で20分間遠心分離してIBをペレット化した。回収したIBを洗浄緩衝液50mM Tris(pH9.5)で2回洗浄した。
【0020】
可溶化及びリフォールディング
比較で精製したIBを5mlの可溶化緩衝液(50mM Tris(pH9.5)、50mM NaCl、50mM NaCl、8M尿素)に可溶化し、室温で2時間穏やかに撹拌した。得られた懸濁液を、25℃、11000rpmで36分間遠心分離し、全可溶性タンパク質を回収した。可溶化されたIBを、約0.1ml/分のレートでパルス希釈法を使用して、10容量の氷冷リフォールディング緩衝液(50mM Tris、50mM NaCl、5%β-メルカプトエタノール及び100mM L-アルギニン(pH9.5))中でリフォールディングした。リフォールディングされたタンパク質を、11000rpmで45分間、4℃で遠心分離した。
【0021】
ウイルス様粒子(VLP)の透析及びインビトロアセンブリ
リフォールディングしたタンパク質を、0.2μmフィルター(VWR)を通して濾過し、12~14kDaカットオフ透析膜(Spectra/Por、VWR)を用いて4℃で透析緩衝液(50mM Tris、100mM NaCl、pH9.5)に対して透析した。3時間隔で透析緩衝液を3回交換した後、NaCl濃度を500mMまで段階的に増加させた。最終透析を、高塩緩衝液(50mM Tris、500mM NaCl、pH9.5)に対して2時間行った。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態による方法及びシステムは、長期間持続するが可逆的な避妊効果を提供するための避妊ワクチンに関する。避妊ワクチンの構造は、精子細胞にのみ存在する抗原に対する免疫応答を刺激し、その結果生じる抗精子抗体は精子に結合し、それらの細胞を受精不能にするのに有効である。避妊ワクチンの製造と使用は簡単である。本開示の組成物の利点を実現するために、ワクチン接種以外の行動は必要ないので、ホルモン処置及び/又は外科手術の必要性は回避される。最後に、避妊免疫は容易かつ即座に可逆的であり、免疫は時間とともに自動的に避妊状態に戻る。
【0023】
本発明はその例示的な実施形態に関して説明され、例示されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、前述及び様々な他の変更、省略、及び追加がその中で行われ得ることは、当業者であれば理解されるものとする。
図1
図2
図3A
図3B
【配列表】
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【国際調査報告】