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特表2022-519539少なくとも2つのレーザビームを結合するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】少なくとも2つのレーザビームを結合するための装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20220316BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544598
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2019085523
(87)【国際公開番号】W WO2020156730
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】102019102488.9
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509334642
【氏名又は名称】ラインメタル ヴァッフェ ムニシオーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Rheinmetall Waffe Munition GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルーデヴィヒト、クラウス
【テーマコード(参考)】
2H249
5F172
【Fターム(参考)】
2H249AA12
2H249AA55
5F172DD06
5F172NN05
5F172NR14
(57)【要約】
本発明は、異なるスペクトル成分を有する少なくとも2つの入力レーザビーム(16; 16-1、・・・、16-n)を組み合わせるための装置(18)であって、少なくとも2つの入力レーザビーム(16)のための少なくとも1つの前置補償ユニット(20)であって、入力レーザビーム(16)を、夫々割り当てられた中間ビーム束(22)であって波長(λ、λ、λ)が増加する順に前記スペクトル成分が互いに隣り合うように配置された中間ビーム束(22)に拡幅する少なくとも1つの回折光学系(28)を有する前置補償ユニット(20)と、少なくとも2つの中間ビーム束(22)のための結合ユニット(24)であって、少なくとも第1の回折光学素子(48)と前記ビーム経路の下流に配置された第2の回折光学素子(50)とを備える結合ユニット(24)と、を備え、結合ユニット(24)は、それぞれの場合において第1の回折光学素子(48)が中間ビーム束(20)をビームウェスト(54)を有する収束ビーム束(52)に変換するように前置補償ユニット(20)と位置合わせされ、ここで、ビームウェスト(54)は前記第2の回折素子(50)上に位置し、且つ第2の回折光学素子(50)は、全ての入射スペクトル成分が共通の放射方向(26)に回折されるように設計される装置に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトル帯域幅を有し、従って、各々が異なる波長(λ、λ、λ)を有する異なるスペクトル成分を含む少なくとも2つの入力レーザビーム(16; 16-1、・・・、16-n)を結合するための装置(18)であって、
前記少なくとも2つの入力レーザビーム(16)のための少なくとも1つの前置補償ユニット(20)であって、前記入力レーザビーム(16)を、夫々割り当てられた中間ビーム束(22)であって波長(λ、λ、λ)が増加する順に前記スペクトル成分が互いに隣り合うように配置された中間ビーム束(22)に拡幅する少なくとも1つの回折光学系(28)を有する前置補償ユニット(20)と、
少なくとも2つの中間ビーム束(22)のための結合ユニット(24)であって、少なくとも第1の回折光学素子(48)とビーム経路における下流に配置された第2の回折光学素子(50)とを備える結合ユニット(24)と、を備え、
前記結合ユニット(24)は、それぞれの場合において第1の回折光学素子(48)が中間ビーム束(20)をビームウェスト(54)を有する収束ビーム束(52)に変換するように前置補償ユニット(20)と位置合わせされ、ここで、ビームウェスト(54)は前記第2の回折光学素子(50)上に位置し、且つ
前記第2の回折光学素子(50)は、全ての入射スペクトル成分が共通の放射方向(26)に回折されるように設計される
装置(18)。
【請求項2】
前置補償ユニット(20)は、中間ビーム(22)内の全てのスペクトル成分が互いに平行に走るように設計されている請求項1に記載の装置(18)。
【請求項3】
前置補償ユニット(20)は、少なくとも1つの第1の回折光学素子(30)を有するとともに、ビーム経路における下流に第2の回折光学素子(32)を有する請求項1又は2に記載の装置(18)。
【請求項4】
前記前置補償ユニット(20)の前記第1の回折光学素子(30)は、入力レーザ光(16)の異なるスペクトル成分が、異なる方向であって且つ前記第1の回折光学素子(30)と前記第2の回折光学素子(32)との間のビーム経路において、発散ビーム束(36)を形成するように設計及び配置される請求項3に記載の装置(18)。
【請求項5】
前記前置補償ユニット(20)の前記第2の回折光学素子(32)は、前記発散ビーム束(36)の異なるスペクトル成分がすべて同じ方向に回折されるように設計及び配置される請求項4に記載の装置(18)。
【請求項6】
前置補償ユニット(20)は、入力レーザビーム(16)の帯域幅が大きくなると、中間ビーム束(22)がより大きい空間幅を有するように設計される請求項1~5の何れか1項に記載の装置(18)。
【請求項7】
前記前置補償ユニット(20)の前記第1の回折光学素子(30)及び前記第2の回折光学素子(32)は、対応する角度分散(w)を有する請求項3~6の何れか1項に記載の装置(18)。
【請求項8】
前記第1の回折光学素子(30)及び前記第2の回折光学素子(32)は、反射グリッド又は透過グリッドとして設計される請求項3~7の何れか1項に記載の装置(18)。
【請求項9】
前記第1の回折光学素子(30)及び前記第2の回折光学素子(32)は、整合されたグリッド定数によって特徴付けられる請求項8に記載の装置(18)。
【請求項10】
前記第1の回折光学素子(30)及び前記第2の回折光学素子(32)は、前記第1の回折光学素子(30)における入力レーザ光(16)の回折の際に、前記入力レーザ光(16)のスペクトル成分の一次回折次数が前記第2の回折光学素子(32)によって検出されるように設計及び配置される請求項3~9の何れか1項に記載の装置(18)。
【請求項11】
前記前置補償ユニット(20)の回折光学素子(30,32)及び前記結合ユニット(24)の回折光学素子(48,50)が、対応する角度分散(w)を有する、請求項3~10の何れか1項に記載の装置(18)。
【請求項12】
前置補償ユニット(20)の回折光学素子(30、32)及び結合ユニット(24)の回折光学素子(48、50)は、互いに異なる角度分散を有し、前記前置補償ユニット(20)及び/又は前記結合ユニット(24)は、収束特性及び/又は発散特性及び/又はビーム幅を変化させるための適応光学系(42)を備える、請求項3~10の何れか1項に記載の装置(18)。
【請求項13】
前記適応光学系(42)は、少なくとも1つ、特に複数の平面偏向ミラー(44)を有する、請求項12に記載の装置(18)。
【請求項14】
前記適応光学系(42)は、少なくとも2つのレンズ手段(46)を有する少なくとも1つの望遠鏡を有する、請求項12又は13に記載の装置(18)。
【請求項15】
各々が回折(28)光学系を有する幾つかの前置補償ユニット(20-1、・・・、20-n)を含み、各入力レーザビーム(16-1、・・・16-n)は前置補償ユニット(20-1、・・・、20-n)を有する、請求項1~14の何れか1項に記載の装置(18)。
【請求項16】
複数の前記前置補償ユニット(20-1、・・・、20-n)は、異なる前置補償ユニット(20-1、・・・、20-n)によって生成される中間ビーム束(22-1、・・・、22-n)が互いに平行に走るように配置される、請求項15に記載の装置(18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの入力レーザビームを組み合わせて、高出力かつ高ビーム品質の有効ビームを形成する課題に関連する。このような技術は、例えば、材料加工の目的で高出力レーザ放射を生成するために使用される。
【背景技術】
【0002】
個々のビームを結合するための種々の技術が知られている。波長の異なる個々のビームをスペクトル結合の原理を用いて一つの出力ビームに結合できる。この目的のために、スペクトル選択効果を有し、異なる波長を有する別々に入射する入力ビームを結合して共通の出力ビームを形成する光結合素子を使用することができる。特に、回折光学素子上の光の波長依存性回折(すなわち、回折角の回折光学素子上の波長依存性)を使用することができる。次に、出力ビームは広帯域であり、入力ビームの波長をスペクトル成分として含む。これは、特に、出力ビームのパワー密度及び/又は強度が主に関連している場合には、多くの適用分野に対して何らかの欠点をもたらさない。しかし、出力ビームが有用であるためにはビーム品質が重要であることが屡々である。可能であれば、入力ビームのビーム品質は、出力ビームと組み合わせたときに、大きく保持されるべきである。
【0003】
例えば、ファイバレーザは、取り扱いが非常に容易なレーザ源である。これらは、活性媒体が適切に設計された光伝導ファイバ(例えば、ドープされたガラスファイバ)によって提供される固体レーザである。このようなファイバレーザは、高ビーム品質でレーザ放射を送達することができる。単一モード動作(特に基本モード)では、1.2以下のビーム品質Mを達成できる。ファイバレーザは、長い耐用年数と鈍感化された構造、ならびに活性媒体の有利な性質と良好な冷却性及び連続動作の可能性にも特徴がある。
【0004】
原理上の理由から、レーザ光源は実際にはある帯域幅を有する。言及したファイバレーザの場合、特にこの帯域幅はかなり大きく、基本モードでの動作においても利用可能である。ファイバレーザでは、発生する放射の帯域幅は、出力の増加とともに増加する。これには様々な効果、特に増幅器ファイバにおける非線形相互作用(例えば、誘導Brillouin散乱、誘導Raman散乱又は自己位相変調)が寄与し得る。
【0005】
非理想的な帯域幅は、最初に述べたスペクトル結合によって、ビーム結合における出力ビームのビーム品質を損なうことになる。これは、とりわけ、回折光学素子が、散乱の波長依存性により付加的な発散を有する帯域幅を有する入力ビームを提供するという事実に起因する。この点において、ゼロ以外の帯域幅は、この場合、変形したビーム断面に繋がり、このことは、補償手段がない場合、出力ビームのビーム品質を悪化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、いくつかの入力ビームを組み合わせることによって、非常に良好なビーム品質を有する高強度レーザ照射の発生を可能にすることを意図しており、特に、非理想的な帯域幅を有するレーザ照射源の使用が可能であるべきであり、なお良好なビーム品質を有する出力ビームが達成可能であるべきである。特に、入力レーザビーム源としてのファイバレーザの使用も可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する少なくとも2つの入力レーザビームを組み合わせるための装置によって解決される。入力レーザビームの各々は、スペクトル帯域幅を有し、従って、各々が異なる波長を有する異なるスペクトル成分を含む。入力レーザビームの波長は、帯域幅によって特徴付けられる波長範囲においてこの通りである。装置は、少なくとも1つの前置補償ユニット(特に、複数の前置補償ユニット)と、ビーム経路内の下流に配置された結合ユニットとを備える。
【0008】
少なくとも1つの前置補償ユニットは、1つ又は複数の入力レーザビームを検出する。前置補償ユニットは、少なくとも1つの回折(すなわち、曲げ効果を有する)光学系を有し、この光学系は、それぞれの入力レーザビームを、割り当てられ、拡幅された中間ビーム束に拡張する。
【0009】
結合ユニットは、入力レーザビームによって供給された中間ビーム束を検出するように配置される。結合ユニットは、少なくとも1つの第1の回折光学素子(DOE)及び第2の回折光学素子(DOE)を有し、第2の回折光学素子は、ビーム経路内の第1の回折光学素子の下流に配置される。結合ユニットは、第1の回折光学素子が、回折によって中間ビーム束を、ビームウェストを有する収束ビーム束に変換するように、少なくとも1つの前置補償ユニットに整合される。さらに、回折光学素子は、前記ビームウェストが第2の回折光学素子上に存在する(すなわち、第2の回折光学素子によって検出される)ように配置され、設計される。次いで、第2の回折光学素子は、次に、すべての入射スペクトル成分が共通の放射方向に偏向されるように設計され、配置される。
【0010】
この点において、前置補償ユニットは、それぞれの入力レーザビームのスペクトル帯域幅の関数として空間ビーム拡幅を生成し、個々の波長成分は、波長の増加に伴って拡大方向に沿ってソートされた方法で配置される。この点において、中間ビーム束は、入力レーザ光と比較して空間的に広がり、その広がりは、スペクトル成分が空間的にソートされ、波長の増加に伴い、異なるスペクトル成分が互いに隣接するように空間的に配置されるように行われる。換言すれば、中間ビーム束内の種々のスペクトル成分は、互いからのスペクトル距離の関数として空間ビームオフセットを有する。特に、ビームのスペクトル成分は、1つの平面内で互いに隣り合って走る。すなわち、ビームは、好ましくは、スペクトル成分が展開方向に沿って引き離され、波長の増加と共にソートされた方法で配列されるように拡大される。この点で、短波長成分は中間ビーム束の片側に、長波長成分は中間ビーム束の反対側に位置する傾向がある。
【0011】
次いで、結合ユニットは、互いに隣接して走るスペクトル成分を検出するように設計及び配置され、全てのスペクトル成分は、第1の回折光学素子(DOE)によって共通のビームウェストに向かって回折される。この限りにおいて、ビームウェストは、様々なスペクトル成分の束の収束の領域である。前置補償ユニットと結合ユニットとを互いに適切に適合させることにより、このことは、基礎となる回折効果を介して達成することができる。異なるスペクトル成分が、中間ビーム束内の空間的拡大のために、異なる位置で結合ユニットの第1の回折光学素子(DOE)に当たるのは確かである。しかし、次に、第1の回折光学素子は、特に、異なる位置で回折されたスペクトル成分がビームウェスト内で再び収束するように、波長依存の偏向が正確に行われるように設計される。
【0012】
次いで、結合ユニットの第2の回折光学素子(DOE)は、好ましくは、異なるスペクトル成分が全て同じ方向(すなわち放射方向)に回折されるように、前置補償ユニット及び第1の回折光学素子と位置合わせされる。異なるスペクトル成分が異なる角度で結合ユニットの第2の回折光学素子に当たるのは確かである。しかしながら、収束スペクトル成分のビームウェストは、第2の回折光学素子上に存在する。その結果、すべてのスペクトル成分が再び1つの出力ビームに結合される。これは、少なくとも2つの入力レーザビームのスペクトル成分に対して全体的に行われ、その結果、全ての入力レーザビームが共通の出力ビームに結合される。
【0013】
全体として、前置補償ユニットと結合ユニットの相互作用は、スペクトル帯域幅に応じてビーム拡幅を反転させることができる。この原理は回折効果を用い、ビームパラメータ積即ちビーム品質Mは実質的に影響を受けないままである。特に、出力ビームは、入力レーザビームのビーム品質に本質的に対応するビーム品質を有してよい。レーザビームの固有の(回折限界の)発散に加えて、付加的なビームの広がりや発散は導入されない。
【0014】
したがって、本発明は、たとえ理想的な帯域幅を有していなくても、幾つかの入力レーザビームによって高出力の有効ビームを供給することを可能にする。したがって、入力レーザビームは、高出力でもファイバレーザによって供給することができる。関係する光学素子は、特に、グリッド(回折グリッド)及び場合によっては平面ミラーによって構成され得る。このような構成要素は、高精度で製造することができ、連続動作における高放射出力にも適している。
【0015】
前置補償ユニットは、中間ビーム束内の全てのスペクトル成分が主方向に沿って互いに平行に走るように設計され、且つ入力レーザビームの波長に整合されるのが有利である。成程、入力レーザビーム、従って、各スペクトル成分は、通常、回折による固有の発散を有し、これは、ビーム品質即ちビームパラメータ積によって特徴付けられる。スペクトル成分の有効伝搬方向は、例えば、様々なスペクトル成分の局所Poyntingベクトルの全ての方向成分にわたる積分として定義することができる。前置補償ユニットは、全てのスペクトル成分の好ましい方向が互いに平行に走るように、すなわち、中間ビーム束が空間的に隣接したスペクトル成分と平行になるように設計されるのが好ましい。
【0016】
前置補償ユニットは、特に1つ以上の回折光学素子(DOE)を含む。前置補償ユニットが少なくとも1つの第1及び第2の回折光学素子を有する場合、特に有利である。
【0017】
特に、第1の回折光学素子は、第1及び第2の回折光学素子の間のビーム経路内に発散ビーム束が形成されるように、入力レーザビームの異なるスペクトル成分が異なる方向に回折されるように設計される。この点に関し、第1の回折光学素子は、広帯域入力レーザビームをそのスペクトル成分に広げる(fan out)。第1の回折光学素子は、特に、各分光成分に対して、中間バンドルの供給に用いられる特定の回折次数(好ましくは一次回折次数)が異なる回折角を有するように設計される。
【0018】
更なる改良のために、次いで、前置補償ユニットの第2の回折光学素子は、発散ビームの異なるスペクトル成分が全て同じ方向(すなわち、上述の主方向)に偏向又は回折されるように設計され、配置される。第2の回折光学素子の前の発散経路のために、異なるビーム成分は、異なる位置及び異なる角度で第2の回折光学素子に当たる。しかしながら、回折効果は波長依存性であるため、回折光学素子は、第2の回折中間素子上の回折方向が全てのスペクトル成分について同じであるように、互いに整列させることができる。スペクトル成分は、着弾位置が異なるため、互いに空間的にオフセットして、中間バンドル内で平行に走る。
【0019】
本発明の一般的な態様によれば、前置補償ユニットは、中間ビームが、より大きい空間的幅を有するように設計され、入力レーザビームの帯域幅はより大きくなる。特に、空間幅は、入力レーザビームの帯域幅に比例し、これは、例えば、小さな角度の範囲のグリッド上の回折で達成され得る。本文脈では、空間幅は、主方向に垂直な中間ビーム束の広がりを規定する(上記参照)。入力レーザビームの固有のビーム発散も、ビーム経路に沿ったビーム断面の広がりをもたらすが、これは、上述の特徴群を解釈する目的のためには考慮されない。
【0020】
前置補償ユニットの回折光学素子又はその中に含まれる回折光学素子、並びに結合ユニットの回折光学素子は、一般に、回折の結果、波長に依存したビーム偏向を発生する光学回折素子である。有利な一実施形態によれば、前置補償ユニットの第1の回折光学素子及び第2の回折光学素子は、対応する角度分散を有する。角度分散とは、特に、回折角の波長依存性、又は波長に応じた回折角の変化を指す。角度分散は、回折光学素子による多色波の波長分割の尺度を示す。特に、角分散は、波長(λ)による回折角(α)の変化として定義される。角分散w=dα/dλ。
【0021】
第1の回折光学素子及び第2の回折光学素子は、例えば、反射グリッドとして設計することができる。しかし、透過グリッドとしての構成も考えられる。ここでは、反射グリッドと透過グリッドのさまざまな組み合わせが有利になる場合がある。例えば、両方のグリッドを同じタイプ(反射又は透過)にすることができる。2つの反射グリッドを使用することにより、折り畳まれたビーム経路、したがって小さな全長、又は一般的には小さな空間が可能になる。2つの回折光学素子又は両方の回折光学素子のうちの1つが透過グリッドとして設計される場合、装置の調整は、おそらく単純化され得る。
【0022】
グリッドを使用する場合、第1の回折光学素子及び第2の回折光学素子が整合グリッド定数を有する場合、特に有利である。回折角度は一般にグリッド定数及び波長に依存するので、整合角度分散を有する回折光学素子をこのように設けることができる。
【0023】
前置補償ユニットにおいて、第1の回折光学素子及び第2の回折光学素子は、入力レーザ光が第1の回折光学素子で回折されたときに、入力レーザ光の全てのスペクトル成分に対する第2の回折光学素子の一次回折次数が検出される(すなわち、第2の回折光学素子に当たる)ように、互いに整合され、設計されるのが好ましい。この目的のために、特に回折光学素子の程度及び相対的な配置は、入力レーザ光線及びその帯域幅に適合される。
【0024】
入力レーザ光は、特に照射方向に沿って第1の回折光学素子に照射され、そこで回折される。種々のスペクトル成分について、それぞれの場合における一次回折次数は、異なる回折角での角度分散のために第2の回折光学素子に当たる。次いで、第2の回折光学素子は、全てのスペクトル成分の一次回折を拾い上げ、それを中間ビーム束に回折するように、好ましくは、寸法調整され、位置合わせされる。
【0025】
更なる改良のために、結合ユニットの第1及び第2の回折光学素子も、中間束が第1の回折光学素子で回折されたときに、全ての分光成分に対する一次回折次数が結合ユニットの第2の回折光学素子によって検出されるように、互いに関連して位置合わせされ、設計される。その結果、あらかじめ補償され拡大されたビーム(中間ビーム束)が自動的に再び高ビーム品質と小ビーム断面を有するビームに合体するように、種々の回折光学素子の回折角度が互いに自動的に整合される。
【0026】
有利な実施形態は、前置補償ユニット及び結合ユニットの回折光学素子が、特に、整合角度分散を有する整合分散特性を有するという事実から生じる。この点において、装置の全ての回折光学素子が整合分散特性を有する場合には有利である。これは、例えば、前置補償ユニットと結合ユニットのグリッドが同じグリッド定数を有するという点で達成することができる。本実施の形態は、例えば、結合ユニットを有する前置補償ユニットによるビームの拡大が容易に逆転するという利点を有する。この点において、次いで、本装置は、特別な適応を行わなくても、異なる帯域幅に対して使用することができる。全体的には、これは対称的な構造となる。
【0027】
しかし、前置補償ユニットの回折光学素子と結合ユニットの回折光学素子とが互いに異なる角度分散を有する場合も有利であり得る。特に、前置補償ユニット(特に、第2の回折光学素子の後のビーム経路)及び/又は結合ユニット(特に、第1の回折光学素子の前のビーム経路)は、適応光学系を含む。適応光学系は、特に、収束特性及び/又は発散特性及び/又はビーム幅を変化させるように設計される。このような設定では、非整合光学グリッドを使用し、レンズ及び/又はミラーによって必要な光学調整(光束の拡大又は収束)を行うことが可能である。例えば、適応光学系は、1つ以上の平面偏向ミラーを含むことができる。また、適合光学系は、少なくとも2つのレンズ手段を有する望遠鏡を有することも考えられる。望遠鏡は、例えば、アナモルフィック望遠鏡として設計することができ、例えば、不均一なビーム拡大を発生させるために、又は前置補償ユニットの後のビーム拡大を結合ユニットの特性に適合させるために設計することができる。
【0028】
本発明の基本的に有利な態様によれば、この装置は、各々が回折光学系を有するいくつかの前置補償ユニットを含む。前置補償ユニットが、好ましくは、各入力レーザビームに割り当てられる。これにより、出力ビームを複数の場合によっては広帯域入力レーザビームで送ることが可能になる。
【0029】
しかし、前置補償ユニットが幾つかの入力レーザビームに対して有効であることも有利である。これにより、コンパクトな構造が可能になる。更なる改良のために、複数の前置補償ユニットは、種々の前置補償ユニットによって生成された中間ビーム束が全て互いに平行に走るように設計され、配置される。この点において、上記で定義された主方向は、好ましくは、互いに平行である。このようにして、種々の中間ビーム束を全て互いに平行に結合ユニットに供給することができる。
【0030】
原理的には、本発明はまた、入力レーザビームをそれぞれ出力するための少なくとも2つの入力レーザ源を含むレーザビーム(すなわち、上記の出力ビーム)を生成するための装置に関し、また、入力レーザビームを本明細書に記載される方法で結合するための装置を含む。これらの実施形態では、別々のレーザ分岐がそれによって組み合わされて、出力ビームが形成される。
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、前置補償ユニット(略図)及び結合ユニット(略図)を含む、複数の広帯域入力レーザビームを組み合わせるための装置の略図である。
図2図2は、前置補償ユニット及び結合ユニットを有する装置のための実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面及び以下の説明において、同一又は対応する特徴は、同一の参照符号を付して示されている。
【0034】
図1は、その全体が参照番号10で示されている、特に高エネルギーのレーザビーム(出力ビーム12)を生成するための装置を略図で示す。装置10は、各々が入力レーザビーム16-1、16-2、・・・を放射する複数のn個の入力レーザ源14-1、14-2、・・・14-n-1、14-nを含む。
【0035】
それぞれの入力レーザビーム16-1、16-2、・・・は、あるスペクトル帯域幅を有し、この点において、異なる波長λを有する異なるスペクトル成分を含む。装置10は、特に、個々の入力レーザ源14-1、14-2、・・・のビーム品質Mにできるだけ類似している、又は対応するビーム品質Mを有する高エネルギー出力ビーム12を提供する目的で機能する。入力レーザ源14は、例えば、放射のために特にそれらの基本モードで動作し、従って、高いビーム品質を有するファイバレーザとして設計することができる。それぞれの入力レーザビーム16-1、16-2、・・・は、回折による一定の固有発散を常に有し、これは、より長い距離にわたって伝搬するときに、自然にビーム拡幅をもたらす。ただし、本発明を説明する目的で、本明細書ではこの効果は無視する。
【0036】
入力レーザ源14-1、・・・、14-nからの放射光は、幾つかの入力レーザビーム16-1、16-2、・・・を組み合わせるための装置18内に入る。装置18については、以下、より詳細に説明する。
【0037】
図示の例では、入力レーザビーム16-1, 16-2, 16-2、・・・を結合するための装置は、複数の前置補償ユニット20-1、20-2、・・・、20-nを備え、ここで、前置補償ユニット20の1つは、図示の例では入力レーザビーム16に割り当てられ、それぞれ割り当てられた入力レーザビーム16のみが検出される。ただし、この構成は必須ではなく、前置補償ユニット20が複数の入力レーザ光16を検出することも考えられる。
【0038】
以下に詳細に説明するように、各前置補償ユニット20-1、20-2、・・・は、検出された入力レーザビーム16-1、16-2、・・・を、それぞれ割り当てられた、拡幅された中間ビーム束22-1、22-2、・・・に変換する。中間ビーム束22では、それぞれ割り当てられた入力レーザビーム16のスペクトル成分は、もはや共通ビームとして重畳されず、むしろ波長の増加とともに互いに隣接するように空間的に配置される(下記参照)。
【0039】
中間ビーム束22-1、22-2、・・・は、次いで、可能であれば追加の適応光学系(下記参照)を介して、結合ユニット24に向かって走行する。結合ユニット24は、以下でより詳細に説明する方法で、中間ビーム束22-1、22-2、・・・を一緒にもたらし、その結果、それらが共通の放射方向26に走り、出力ビーム12を形成する。出力ビーム12では、入力レーザビーム16-1、16-2、・・・の放射パワーが結合され、出力ビーム12は、入力レーザビーム16と同様に広帯域である(すなわち、入力レーザビーム16の全てのスペクトル帯域幅を含むスペクトル帯域幅を有する)。
【0040】
図2は、装置18の一実施形態を説明するための略図を示す。しかしながら、明瞭にするために、図2には、前置補償ユニット20と、ビーム経路において前置補償ユニット20の下流側に配置された組合せユニット24のみが描かれている。
【0041】
前置補償ユニット20は、回折光学系28を有し、この回折光学系は、図示の例では、2つの回折光学素子(DOE)、すなわち、ビーム経路内に続く第1の回折光学素子30及び第2の回折光学素子32を含む。回折光学素子30、32は、例えば、回折グリッドとして設計することができる。図示の例では、両方の回折光学素子は、反射において作用し、特に反射グリッドが関与する。
【0042】
回折光学素子30、32は、それぞれ割り当てられた角度分散wを特徴とする。角度分散は、入力レーザビーム16に対する回折角α又はβの変化を、その波長λの関数として反映する。この点において、第1の回折光学素子30の角度分散は、w= dα/dλとして定義することができる。これに対応して、第2の回折光学素子32の角度分散は、w= dβ/dλとして定義される。
【0043】
入力レーザビーム16は、第1の回折光学素子30に当たる前に、照射方向34に沿って伝搬し、論じた例では、高ビーム品質Mを有する(上述したように、本例では、固有の回折関連発散は考慮されていない)。入力レーザ光16は広帯域であり、スペクトル成分を含み、そのうちの3つの波長λ、λ、λは、一例として図2に示されている。
【0044】
入力レーザビーム16は、そのスペクトル成分(波長λ、λ、λ)を以て照射方向34に沿って第1の回折光学素子30に当たる。角度分散のために、波長(λ、λ、λ)を有する異なるスペクトル成分は、第1の回折光学素子30において異なって回折される。以下では、一例として一次回折を考え、ここで示した例では放射強度の大部分が通過するものとする。したがって、照射方向34に関して、波長λ、λ、λを有する分光成分は、異なる回折角α(λ)で回折される。したがって、第1の回折光学素子は、回折によって入力レーザビーム16を発散ビーム束36に変換する。発散ビーム束36では、そのため、スペクトル成分(λ、λ、λ)を有するスペクトルは、もはや単一のレーザビームと符号せず、空間的にファンアウトされる。小さな波長を有するスペクトル成分は発散ビーム36の片側に存在し、大きな波長を有するスペクトル成分は発散ビーム36の反対側に存在する。
【0045】
第1の回折光学素子30及び第2の回折光学素子32は、互いに関連して配置され、波長λ、λ、λを有するスペクトル成分が第2の回折光学素子32によって検出されるように設計される。発散ビーム束36における広がり(faning out)のために、異なるスペクトル成分は、一方では異なる位置で、他方では異なる入射角(例えば、第2の回折光学素子32の表面上の表面法線に対して測定される)で、第2の回折光学素子32に当たる。
【0046】
ここで、第2の回折光学素子32は、第2の回折光学素子32における回折後の波長λ、λ、λを有する様々なスペクトル成分が、全て主方向38において互いに平行に走るように設計される。第2の回折光学素子32での回折の後、スペクトル成分は、従って、中間ビーム束22を形成し、この中間ビーム束では、波長λ、λ、λを有する種々のスペクトル成分が空間的に離れて延在され、互いに平行に延在される。図示の例では、中間ビーム束22において種々のスペクトル成分が波長の増加に伴って拡大方向40に沿って互いに隣接してソートされる。
【0047】
中間ビーム束22における種々のスペクトル成分の平行コースは、例えば、第1の回折光学素子30の角度分散dα/dλが第2の回折光学素子32の角度分散dβ/dλと同じであるという点で達成することができる。次いで、中間ビーム束22は、特に、拡大方向40に沿って、幅(小さな角度の領域で)を入力レーザビーム16のスペクトル帯域幅に本質的に比例させる。
【0048】
示される例では、中間ビーム束22は、第2の回折光学素子32の後のビーム経路内の適応光学系42を通過し、これは、(例としてのみ)ビーム特性を成形するための1つ又は複数の偏向ミラー44(例えば、平面ミラー)及び/又は1つ又は複数のレンズ手段46を有し得る。
【0049】
次いで、中間ビーム22は、結合ユニット24によって検出される。結合ユニット24は、大多数の中間ビーム束22(図1参照)を組み合わせて共通出力ビーム12を形成する役割を果たす。結合ユニット24は、拡大された中間ビーム束22が互いに組み合わされるだけでなく、入力レーザビームのビーム品質が出力ビーム12に大きく保持されるように、前置補償ユニット20と調整される。図2では、中間ビーム1本のみを例に、組合せユニット24の動作モードを説明している。
【0050】
結合ユニット24は、次に、ビーム経路内に続く第1の回折光学素子48と第2の回折光学素子50とを含む。前置補償ユニット20の回折光学素子30,32に対応して、結合ユニット24の回折光学素子48,50は、角度分散を特徴としている。図示の例では、γは第1の回折光学素子48上の回折角度を、φは第2の回折光学素子50上の回折角度を示している。これに対応して、角度分散w= dγ/dλ及びw= dδ/dλは、それぞれ、第1の回折光学素子48及び第2の回折光学素子50によって規定される。
【0051】
結合ユニット24の第1の回折光学素子48は、波長の異なるスペクトル成分(λ、λ、λ)が回折によって収束ビーム束52に変換され、これがビームウェスト54を形成するように設計される。中間ビーム束22の波長(λ、λ、λ)を有するスペクトル成分は、異なる位置で第1の回折光学素子48に当たるので、第1の回折光学素子48の角度分散の適当な位置合わせによって所望の収束ビーム束52を達成することができる。特に、この目的のために、第1の回折光学素子48の角度分散は、前置補償ユニット20の回折光学素子30、32の角度分散に適合するように選択することができる。結合ユニット24の第2の回折光学素子50は、ビームウェスト54が実質的に第2の回折光学素子50の有効面上に存在するように設計され、配置される。次いで、異なる角度で入射するスペクトル成分(波長λ、λ、λ)が全て放射方向26で回折され、したがって組み合わされて出力ビーム12を形成するように、第2の回折光学素子50が設計される。
【0052】
このことは、例えば、同様に、第2の回折光学素子の角度分散が、前置補償ユニット20の回折光学素子30、32の角度分散と、組み合わされたユニット24の第1の回折光学素子48の角度分散とに整合するように選択されるという点で達成され得る。

図1
図2
【国際調査報告】