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  • 特表-潤滑性添加剤を含む燃料組成物 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】潤滑性添加剤を含む燃料組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/14 20060101AFI20220316BHJP
   C10M 129/74 20060101ALI20220316BHJP
   C10M 105/68 20060101ALI20220316BHJP
   C10M 129/40 20060101ALI20220316BHJP
   C10L 10/08 20060101ALI20220316BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220316BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220316BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20220316BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
C10L1/14
C10M129/74
C10M105/68
C10M129/40
C10L10/08
C10N30:06
C10N40:25
C10N20:00 Z
C10N30:12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544614
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020053038
(87)【国際公開番号】W WO2020161262
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/802,229
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス,ヤジュナナーラーヤナ・ハルマター
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ,ジョセフ・マイケル
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB17C
4H104BB34C
4H104BE11C
4H104EA01C
4H104EB02
4H104EB08
4H104EB10
4H104LA03
4H104LA06
4H104PA41
(57)【要約】
燃料と、潤滑性添加剤とを含む燃料組成物であって、潤滑性添加剤が、(1)1-ラウロイル-rac-グリセロール、(2)ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、または(3)2-エチルヘキサン酸から選択され、燃料が、ガソリンである、燃料組成物。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と、
潤滑性添加剤とを含み、
前記潤滑性添加剤が、(1)1-ラウロイル-rac-グリセロール、(2)ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、または(3)2-エチルヘキサン酸から選択される、燃料組成物。
【請求項2】
前記燃料が、ガソリンである、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項3】
前記潤滑性添加剤の濃度が、燃料組成物の総重量に基づいて、約5重量ppm~約100重量ppmの範囲である、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項4】
前記潤滑性添加剤が、前記燃料に可溶性である、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項5】
1-ラウロイル-rac-グリセロールが、前記潤滑性添加剤である場合、0.390~0.500の範囲の摩擦係数をさらに含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項6】
ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-が、前記潤滑性添加剤である場合、0.360~0.515の範囲の摩擦係数をさらに含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項7】
1-ラウロイル-rac-グリセロールが、前記潤滑性添加剤である場合、755μm~795μmの範囲の摩耗痕径をさらに含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項8】
ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-が、前記潤滑性添加剤である場合、675μm~757μmの範囲の摩耗痕径をさらに含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項9】
2-エチルヘキサン酸が、前記潤滑性添加剤である場合、0.385~0.465の範囲の摩擦係数および約692μmの摩耗痕径をさらに含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項10】
燃料組成物の潤滑性を改善するための方法であって、前記方法が、
燃料を提供することと、
前記燃料組成物を製造するために前記燃料に潤滑性添加剤を添加することとを含み、
前記燃料が、ガソリンであり、
前記潤滑性添加剤が、(1)1-ラウロイル-rac-グリセロール、(2)ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、または(3)2-エチルヘキサン酸から選択される、方法。
【請求項11】
前記潤滑性添加剤の濃度が、燃料組成物の総重量に基づいて、約5重量ppm~約100重量ppmの範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記燃料組成物が、前記潤滑性添加剤を前記燃料に添加した後、0.360~0.515の範囲の摩擦係数を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記燃料組成物が、前記潤滑性添加剤を前記燃料に添加した後、675μm~795μmの範囲の摩耗痕径を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
直噴エンジンの燃料性能を改善するための方法であって、前記方法が、
燃料および潤滑性添加剤を含む燃料組成物で前記直噴エンジンに燃料を供給することと、
前記直噴エンジンを作動することとを含み、
前記燃料が、ガソリンであり、
前記潤滑性添加剤が、(1)1-ラウロイル-rac-グリセロール、(2)ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、または(3)2-エチルヘキサン酸から選択される、方法。
【請求項15】
前記燃料組成物が、前記潤滑性添加剤を前記燃料と混合した後、0.360~0.515の範囲の摩擦係数および675μm~795μmの範囲の摩耗痕径を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース燃料と、潤滑性添加剤とを含む燃料組成物、より詳細には、内燃エンジンでの使用に好適なベース燃料と、潤滑性添加剤とを含む燃料組成物、燃料組成物の潤滑性を改善する方法、および直噴エンジンの燃料性能を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンメーカーは、特に内燃エンジンを設計する際に、エンジン効率の改善および出力の最大化に絶えず挑戦している。このようなエンジンは、燃焼した燃料の一部が有用なエネルギーに変換されないが、摩擦力を克服するために使用されるため、効率が低いことが既知である。より典型的には、燃焼した燃料から利用可能なエネルギーのかなりの部分が、相互に接触している可動エンジン部品の表面間に発生した摩擦力を克服するために使用される。このような摩擦力を克服するために費やされるエネルギーは、エネルギー損失または摩擦損失と見なされる。このような損失を克服するためにより高いエネルギー要件が必要な場合、エンジンを作動するために利用可能な有用なエネルギーの量が低減することがよくある。エンジンおよび燃料効率を改善するために、現在の傾向には、エンジンの摩擦損失を低減するために、摩擦低減添加剤、摩擦低減燃料添加剤、または表面コーティングなどを使用することが含まれる。
【0003】
摩擦調整剤としても既知である摩擦低減添加剤は、エンジンおよび燃料の両方の効率を改善するための潤滑剤における添加剤として使用され得る。潤滑剤は、可動面間の摩擦を低減することが理解されているが、潤滑剤組成物への摩擦低減添加剤の添加は、粘度、密度、流動点などのような他の潤滑剤の物理的特性を変更することなく摩擦損失をさらに低減し得る。さらに、より燃料効率の高い車両に対する高まる需要を満たすために、摩擦低減添加剤が、燃料組成物に組み込まれ得る。例えば、摩擦低減添加剤を含む燃料組成物を使用して、摩擦が高いがその領域に流入する潤滑剤の量が少ないエンジンのピストンリング-シリンダー壁界面に摩擦調整特性を送達し得る。
【0004】
米国特許第6,866,690号は、飽和カルボン酸塩とアルキル化アミンとを組み合わせて調製され、かつ可燃性燃料組成物で使用するための摩擦調整剤を記載する。摩擦調整剤は、例えば、(i)分岐飽和カルボン酸またはそれらの混合物を、(ii)モノ-および/もしくはジアルキル化モノアミン、ならびに/またはモノ-および/もしくはジアルキル化ポリアミンと約1:1のモル比で混合することによって作製することができる。記載された摩擦調整剤についての境界摩擦係数は、PCS Instruments高周波往復リグを使用して測定され、このリグでは、直径6ミリメートル(mm)のANSI 52100鋼球とANSI 52100平綱との間に4ニュートン(N)の荷重を加えた。
【0005】
米国特許第9,011,556号は、摩擦調整量でヒドロカルビル-置換スクシンイミドを含有する中間留分燃料組成物を記載する。中間留分燃料組成物を、ASTM方法D6079に記載されている高周波往復リグ(HFRR)に供し、平均HFRR摩耗痕径を記録した。
【0006】
米国特許第6,835,217号は、炭化水素燃料および少なくとも1つの天然油または合成油と少なくとも1つのアルカノールアミンとの反応生成物である摩擦調整成分を含有する燃料組成物を記載する。潤滑性試験は、ASTM方法D6079-97に記載されている高周波往復リグ(HFRR)を使用して実行し、摩耗痕径の測定値は、長軸および短軸に基づいて計算した。
【0007】
米国特許公開第2011/0146143号は、内燃エンジンで使用するための摩擦低減成分を含有する燃料組成物を記載する。摩擦低減成分は、飽和脂肪酸アミン、不飽和脂肪酸アミン、およびそれらの混合物を含む、少なくとも1つのC~C30脂肪族アミンを含む。SRV試験リグを利用して、成分の摩擦係数および摩耗痕の性能を測定した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料ポンプおよびインジェクターなどの多くの内部エンジンコンポーネントは、摩擦力による過度の摩耗および金属の損傷(すなわち、腐食、侵食)を起こしやすい傾向がある。過度の摩擦は、エンジンを作動するためにより多くの燃料が必要となるため、エンジン寿命の短縮、エンジン交換コストの高さ、および非効率的な燃料経済に役立つことがよくある。しかし、前述の摩擦低減添加剤は、このような課題ならびに他のエンジンおよび燃料性能に関連する問題を克服する上でわずかな改善しか生み出さない。したがって、向上した摩擦低減に対する継続的な要求を満たすために、例示的な潤滑特性ならびにエンジンの摩擦損失、摩耗、堆積物、および腐食に対する優れた保護を提供する燃料組成物が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、改善された燃料組成物に関する。より具体的には、本発明の各燃料組成物は、炭化水素ベース燃料と、潤滑性添加剤とを含有する。本発明によれば、燃料組成物は、ベース燃料としてのガソリンと、1-ラウロイル-rac-グリセロール、ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、または2-エチルヘキサン酸から選択される潤滑性添加剤とを具体的に含む。
【0010】
本発明はさらに、燃料組成物の潤滑性を改善するための方法に関する。特に、この方法は、可溶性潤滑性添加剤を炭化水素ベース燃料に添加して、改善された潤滑特性を含む燃料組成物を形成することを含む。本発明によれば、この方法は、具体的には、1-ラウロイル-rac-グリセロール、ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、または2-エチルヘキサン酸から選択される潤滑性添加剤を、好ましいベース燃料として選択されるガソリンに添加することを含む。
【0011】
本発明はまた、直噴エンジンの燃料性能を改善する方法に関する。より具体的には、本発明は、炭化水素ベース燃料と、潤滑性添加剤とを含む燃料組成物で直接噴射エンジンに燃料を供給する方法を記載する。本発明によれば、直噴エンジンで使用されるような燃料組成物は、ベース燃料としてガソリンと、1-ラウロイル-rac-グリセロール、ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、または2-エチルヘキサン酸のうちの1つから選択される潤滑性添加剤とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
特定の例示的な実施形態を、以下の詳細な説明および図面を参照して説明する。
【0013】
図1A】0~4500秒の試行運転中の50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物についての摩擦係数のグラフ表示である。
図1B】900~4500秒の試験運転中の50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物についての摩擦係数のグラフ表示である。
図2】900~4500秒の試験運転中の50ppm(wt/v)の処理速度および25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物についての摩擦係数を比較するグラフ表示である。
図3】50ppm(wt/v)での燃料組成物についての摩耗痕値のグラフ表示である。
図4】50ppm(wt/v)の処理速度および25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物についての摩耗痕値を比較するグラフ表示である。
図5】各燃料組成物についての摩耗痕および摩擦係数データのグラフ比較である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
内燃エンジンなどの可動機械アセンブリは、エンジンの非効率性の大部分を構成する摩擦損失を起こしやすい。摩擦損失は、クランクシャフト、ベアリング、ピストン、ピストンリング、ピストンスカート、バルブおよびバルブガイド、プーリー、タイミングベルト、ならびにコネクティングロッドなどのエンジンコンポーネント間で生じる。例えば、ピストンおよびピストンリングなどの往復部品は、様々なエンジンコンポーネント間のすべての摩擦損失の最大50%を占める最大の要因である。エンジン作動中に発生した摩擦を完全に排除することは不可能であるが、摩擦損失を低減するために、典型的には潤滑剤、表面コーティング、および燃料などの用途が使用される。潤滑剤は、一般に、表面接触時のその挙動および/または可動エンジンコンポーネントに粘性せん断応力を課すその能力に基づいて摩擦を低減する。一部の自動車メーカーによる現在の傾向には、摩擦係数も低減するための表面コーティングの開発が含まれる。加えて、特定の燃料組成物は、可動コンポーネント間の摩擦損失を下げるように配合されている。
【0015】
本発明は、各燃料組成物が個別の潤滑性添加剤を含むいくつかの燃料組成物に関する。具体的には、燃料組成物の各実施形態は、炭化水素ベース燃料と、組成物が可動エンジン部品と接触するときの表面吸着による摩擦を低減するための選択された潤滑性添加剤とを含む。例えば、本発明の燃料組成物の潤滑性添加剤は、燃焼室に入ると、燃焼室のエンジン壁上にある油膜に吸着して、可動部品間の減摩層として作用し、金属同士の接触を防止し、したがって、表面接触時の摩擦損失を低減する。
【0016】
エンジンのベアリング区画などの、潤滑油が接液している、または潤滑油と直接接触するエンジンの領域がある。しかしながら、潤滑特性の向上から恩恵を受ける可能性のある、潤滑剤ではなく燃料組成物と接触するエンジンコンポーネント(すなわち、非潤滑性の接液コンポーネント)がある。本実施形態では、本発明の燃料組成物は、潤滑剤が接液しているものおよび潤滑剤が接液していないものの両方である内部エンジンコンポーネント用の潤滑源として挙動する。例えば、本発明の燃料組成物の潤滑性添加剤は、燃焼室からオイルサンプに変化せずに流れて、時間とともに蓄積し、オイルサンプ内でエンジン潤滑剤、すなわちエンジンオイルと混合し得る。これに関して、本発明の燃料組成物は、カムシャフト、クランクシャフト、および吸気弁などの潤滑剤接液コンポーネントのための追加の潤滑剤源として作用する。加えて、ポート燃料噴射(PFI)エンジンでは、吸気バルブは、燃焼室に入る直前に燃料に曝露される。したがって、現在の燃料組成物への曝露は、堆積物の形成を除去するのを助けるだけでなく、バルブガイド中のバルブステムを潤滑するのにも役立つ。それでも、燃料インジェクターおよび燃料ポンプなどのエンジンのいくつかの領域があり、本発明の燃料組成物は、潤滑剤の量を意図的に最小レベルに維持しながら、摩擦を低減する潤滑性添加剤を送達する。全体として、潤滑性添加剤を含む本発明の燃料組成物は、特に潤滑剤の化学的性質が枯渇してもはや効果がないときのオイル排出間隔の終わりに向かって、広範囲の可動エンジン部品間の摩擦を実質的に低減する。
【0017】
驚くべきことに、本発明の燃料組成物を使用するエンジンは、従来の摩擦低減添加剤を含有するまたはベース燃料のみを含有する燃料組成物を使用するエンジンよりも、摩擦損失の低減および耐摩耗性の改善を含む大幅なエンジン改善を示したことが分かった。例えば、本発明の燃料組成物ごとの試験データは、典型的な燃料のものと比較して、摩擦係数および摩耗痕値が低減することによって示されるように、説得力のある潤滑性の改善を示した。潤滑性添加剤を含有する本発明の各燃料組成物はまた、より低いエンジン堆積物および腐食挙動を含む改善されたエンジン保護に関して相乗的挙動を示した。摩擦損失の低減が、より高いエンジン出力およびより良い燃料効率につながることがよくあることは当業者に周知である。したがって、本発明の燃料組成物によって提供されるような別の利点には、燃料性能の増加および燃料経済性の改善が含まれる。
【0018】
使用される場合、本明細書において「潤滑性」という用語は、エンジンコンポーネント部品間の摩擦を低減する燃料組成物の能力または特性を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「潤滑性添加剤」または「潤滑性向上剤」という用語は、潤滑特性を改善するためにベース燃料組成物に添加される添加剤を指し、したがって、エンジンコンポーネント部品間の摩擦、摩耗、堆積物、および腐食の低減をもたらす。
【0020】
本燃料組成物のベース燃料は、自動車エンジンならびにオフロードおよび航空エンジンなどの他のタイプのエンジンを含む、当技術分野で既知であるスパーク点火(ペトロール)タイプの内燃エンジンでの使用に好適な炭化水素ベース燃料を含む。好ましくは、ベース燃料は、本明細書で「ガソリン」と呼ばれるガソリンまたはガソリンベースの燃料を含む。例えば、ベース燃料は、15%のガソリンおよび85%のエタノールを含むE85燃料などのガソリンとエタノールとの一般的なブレンドを含み得る。燃料中のガソリンの量は、地理的な地域および季節に基づいて変動する可能性があり(典型的には、15体積%~90体積%)、それによってE10~E85の範囲のエタノール含有量が含まれる。
【0021】
ガソリンには、約25℃(77°F)~約220℃(428°F)の範囲で沸騰する揮発性炭化水素を含むことができ、直鎖ナフサ、ポリマーガソリン、天然ガソリン、接触分解もしくは熱分解された炭化水素、触媒的に改質されたストック、またはそれらの混合物から誘導することができる。また、生物源から誘導されるガソリンブレンド成分も使用に好適である。
【0022】
揮発性炭化水素は、飽和炭化水素、オレフィン炭化水素、芳香族炭化水素、酸素化炭化水素、およびそれらの混合物を含む、以下の基のうちの1つ以上から選択することができる。ガソリンのオクタン価は、一般に約85を超える。ベース燃料の特定の炭化水素組成およびオクタン価は、本実施形態では重要ではない。
【0023】
典型的には、ガソリンの飽和炭化水素含有量は、40体積%~約80体積%の範囲であり、酸素化炭化水素含有量は、0体積%~約35体積%の範囲である。ガソリンが酸素化炭化水素を含むとき、非酸素化炭化水素の少なくとも一部が、酸素化炭化水素に置き換えられる。ガソリンの酸素含有量は、ガソリンに基づいて最大35重量%(EN1601)(例えば、エタノール自体)であり得る。例えば、ガソリンの酸素含有量は、最大25重量%、好ましくは最大10重量%であり得る。便宜的には、酸素化物濃度は、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、および1.2重量%のうちのいずれか1つから選択される最小濃度、ならびに5、4.5、4.0、3.5、3.0、および2.7重量%のうちのいずれか1つから選択される最大濃度を有する。
【0024】
典型的には、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有量は、ガソリン(ASTM D1319)に基づいて0体積%~40体積%の範囲である。好ましくは、オレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて0体積%~30体積%の範囲であり、より好ましくは、オレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて0体積%~20体積%の範囲である。ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリン(ASTM D1319)に基づいて0体積%~70体積%の範囲である。例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて10体積%~60体積%の範囲である。好ましくは、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて10体積%~50体積%の範囲であり、より好ましくは、芳香族炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて10体積%~50体積%の範囲である。
【0025】
ガソリンはまた、鉱物キャリアオイル、合成キャリアオイル、それらの混合物、および/または溶媒を含有し得る。好適な鉱油キャリアオイルの例には、ブライトストックまたは基油などの原油処理で得られる留分、およびハイドロクラック油などの鉱油の精製で得られる留分が含まれる。好適な合成キャリアオイルの例には、ポリオレフィン(ポリ-アルファ-オレフィンまたはポリ(内部オレフィン))、(ポリ)エステル、(ポリ)アルコキシレート、ポリエーテル、脂肪族ポリエーテルアミン、アルキルフェノール開始ポリエーテル、アルキルフェノール開始ポリエーテルアミン、および長鎖アルカノールのカルボン酸エステルが含まれる。
【0026】
好適なポリオレフィンの例は、オレフィンポリマー、特にポリブテンまたはポリイソブテン(水素化または非水素化)に基づくオレフィンポリマーである。好適なポリエーテルまたはポリエーテルアミンの例は、好ましくは、C~C60-アルカノール、C~C30-アルカンジオール、モノ-もしくはジ-C~C30-アルキルアミン、C~C30-アルキルシクロヘキサノール、またはC~C30-アルキルフェノールを、ヒドロキシル基またはアミノ基1つあたり1~30molのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドと反応させることによって、ならびにポリエーテルアミンの場合には、その後のアンモニア、モノアミン、またはポリアミンとの還元的アミノ化によって得ることができるポリオキシ-C~C-アルキレン部分を含む化合物である。
【0027】
長鎖アルカノールのカルボン酸エステルの例は、特にモノ-、ジ-、またはトリカルボン酸と長鎖アルカノールもしくはポリオールとのエステルである。使用されるモノ-、ジ-、またはトリカルボン酸は、脂肪族酸または芳香族酸であってよく、好適なエステルアルコールまたはポリオールは、特に、例えば、6~24個の炭素原子を有する長鎖の代表物である。エステルの典型的な代表物は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、およびイソトリデカノールのアジペート、フタレート、イソフタレート、テレフタレート、およびトリメリテート、例えば、ジ-(n-またはイソトリデシル)フタレートである。
【0028】
好適な合成キャリアオイルの他の例は、例えば、プロピレンオキシド、n-ブチレンオキシド、およびイソブチレンオキシド単位、またはそれらの混合物から選択される、約5~35のC~C-アルキレンオキシド単位を有するアルコール開始ポリエーテルである。好適な開始アルコールの非限定的な例は、長鎖アルキルラジカルが特定の直鎖状もしくは分岐状C~C18-アルキルラジカルである、長鎖アルキルによって置換された長鎖アルカノールまたはフェノールであり、好ましい例には、トリデカノールおよびノニルフェノールが含まれる。
【0029】
ガソリンのベンゼン含有量は、ガソリンに基づいて、多くとも10体積%、より好ましくは多くとも5体積%、最も好ましくは多くとも1体積%である。ガソリンは、例えば、多くとも1000ppmw(重量百万分率)、好ましくは500ppmw以下、より好ましくは100以下、さらにより好ましくは50以下、および最も好ましくはさらに10ppmw以下の低いまたは非常に低い硫黄含有量を有することが好ましい。また、ガソリンは、好ましくは多くとも0.005グラム/リットル(g/l)などの低い総鉛含有量を有し、最も好ましくは鉛を含んでいない、したがって、鉛化合物がガソリンに添加されていない(すなわち、無鉛)。本発明で使用されるガソリンは、水が円滑な燃焼を妨げる可能性があるため、実質的に水を含まない場合がある。
【0030】
本発明の各燃料組成物は、1つのタイプの潤滑性添加剤のみを含む。この点に関して、潤滑性添加剤は、市販の1-ラウロイル-rac-グリセロール、ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-または2-エチルヘキサン酸から個々の成分として選択され、各添加剤は、潤滑性を効果的に改善するその能力に基づいて選択された。本実施形態では、各潤滑性添加剤は、燃料組成物を製造するためにベース燃料に十分に可溶し、好ましくは完全に可溶し、組成物に任意選択で添加され得る他の添加剤との負の相互作用を妨害または課さない。各個々の潤滑性添加剤は、燃料組成物の総重量に基づいて、約5ppm(百万分の1)~約100重量ppmの濃度でそれぞれのベース燃料とブレンドされる。
【0031】
各潤滑性添加剤の分子には、極性頭基および非極性尾基が含まれる。分子の極性頭基は、金属表面に引き付けられるため、比較的強く結合するが、このような表面には可逆的である、すなわち、持ち上げる、および移動することができる。表面改質または含浸セラミックファイバーを用いると、極性頭基がアルミナ表面などの他の表面に引き付けられ得る。分子の非極性尾基は、ベース燃料の分子よりもわずかに長く、すなわち、15原子より長くすることができ、分子パッキングおよび流体の流れを可能にするために、非線形、分岐、または曲がった構成を含むことができる。非極性尾基は、炭化水素であるため、分子全体を炭化水素ベースの燃料に可溶化することができる。各潤滑性添加剤の極性頭基の性質および非極性尾基の構造により、本発明の燃料組成物は、エンジンコンポーネント間の摩擦を低減することにより、エンジン効率および性能に驚くほど影響を与える。
【0032】
1-ラウロイル-rac-グリセロールは、(1)に示すように、グリセロールエステル(極性頭基)およびラウリン酸誘導体(非極性尾基)によって形成される。グリセロールエステルは、多機能であり、典型的には、酸にグラフトするときに安定している。ラウリン酸誘導体には、典型的には、ベース燃料分子よりも大きいが、従来の摩擦調整剤の分子よりも小さい分子が含まれる。
【化1】
【0033】
ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-は、(2)に示すように、N-ヒドロキシアミド誘導体であり、N-ヒドロキシアミド(極性頭基)およびラウリン酸誘導体(非極性尾基)によって形成される。N-ヒドロキシアミドの適合性は、その多機能挙動およびコンパクトな分子に基づく。ラウリン酸誘導体には、典型的には、ベース燃料分子よりも大きいが、従来の摩擦調整剤の分子よりも小さい分子が含まれる。
【化2】
【0034】
2-エチルヘキサン酸は、(3)に示すように、カルボン酸(極性頭基)および2-エチルヘキサン酸誘導体(非極性尾基)によって形成される。カルボン酸は、典型的には、提案された非極性尾基で利用可能である。2-エチルエキサン酸誘導体には、ベース燃料の分子とサイズが類似した分岐分子が含まれる。
【化3】
【0035】
表面吸着により、潤滑性添加剤は、金属間界面の摩擦特性を低減する。具体的には、柔軟で多機能な頭基とわずかに長い尾基との組み合わせにより、1-ラウロイル-rac-グリセロール、ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、2-エチルヘキサン酸を含む選択された潤滑性添加剤が、複数の部位に付着するか、または金属表面上に吸着することを可能にし、したがって、例示的な表面接着を示す。
【0036】
本発明にとって重要ではないが、本発明の燃料ガソリン組成物は、上記の選択された潤滑性添加剤に加えて、1つ以上の任意選択の燃料添加剤をさらに含み得る。本発明における任意選択の燃料添加剤の濃度および性質は、重要ではないことに留意されたい。しかしながら、燃料組成物中に存在する任意選択の任意の燃料添加剤の濃度は、好ましくは全燃料組成物の最大1重量%、より好ましくは5~2000ppmwの範囲、最も好ましくは90~1000ppmwなどの90~1500ppmwの範囲であり得る。任意選択の燃料添加剤の非限定的な例には、酸化防止剤、腐食防止剤、洗浄剤、デヘイザー、アンチノック添加剤、金属不活性化剤、バルブシート後退保護化合物、染料、溶媒、担体流体、希釈剤、およびマーカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明される。特に、各実施例は、3つの異なる潤滑性向上剤のうちの1つをベース燃料とブレンドして、3つの異なる燃料組成物を製造することを含む。3つの潤滑性向上剤は、50百万分率(ppm)体積重量(wt/v)および25ppm(wt/v)の処理速度でそれぞれのベース燃料に添加した。3つの燃料組成物および従来のベース燃料は、ガソリン用の改質された高周波往復リグ(HFRR)試験方法(ASTM D6079-11)を使用して、摩擦および摩耗痕の性能を評価した。実施例は、例示のためにのみ提供されており、いかなる方法でも本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0038】
実施例1
実施例1は、表1に示すように、各々が個別の潤滑性添加剤を含有する、ベース燃料および3つの異なる燃料組成物についての摩擦係数データを示す。各燃料組成物に使用されるベース燃料は、ほとんどの自動車および小型車の内燃エンジンでエンジンまたは燃料システムを変更せずに使用できる90%のガソリンと10%のエタノールとの混合燃料であるE10を含んでいた。それぞれのベース燃料に添加された個々の潤滑性添加剤は、1-ラウロイル-rac-グリセロール、ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-または2-エチルヘキサン酸を含んでいた。添加剤などは添加していない。したがって、試験されたような燃料組成物ごとの配合物は、(1)ベース燃料のみ、(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびベース燃料、(3)ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-およびベース燃料、ならびに(4)2-エチルヘキサン酸およびベース燃料を含んでいた。それぞれのベース燃料に添加された各潤滑性添加剤の量は、ベース燃料の総量に基づいて50ppm(wt/v)を含んでいた。
【0039】
燃料組成物ごとの摩擦係数は、0~4500秒の試験運転の1秒ごとにHFRR(高周波往復リグ)試験方法を使用して決定した。0~4500秒の試験運転の最初の900秒は、摩擦係数のスパイクを示し、その直後に係数の減少が続いた。耐摩耗膜、金属酸化物膜の形成、または金属表面上の凹凸の平滑化が、最初のスパイクに寄与する場合がある。最初の900秒後、試験運転の残りの900~4500秒の間に、より安定した摩擦係数を記録し、これにより、比較のためにより安定したプラットフォームが保証された。したがって、表1に示すように、摩擦係数の結果には、4500秒全体(すなわち、0~4500秒)についての結果および試験運転の残りの900~4500秒(すなわち、900~4500秒)の結果が含まれる。本実施形態のHFRR試験は、25℃で実施したが、様々な温度で実施することができ、試験される燃料組成物の特定の用途に適合するようにプログラムすることができる。
【表1】
【0040】
図1Aは、0~4500秒の試験運転中の50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物についての摩擦係数のグラフ表示を示す。潤滑性添加剤を含有する各燃料組成物は、試験運転の最初の900秒の間に摩擦係数がスパイクした場合でも、0~4500秒の試験運転中に添加剤を含まないベース燃料よりも低い摩擦係数を示した。表1に提供され、かつ図1Aに示されるように、ベース燃料は、約0.701の平均摩擦係数を示した。しかしながら、燃料組成物番号2(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)は、約0.489の摩擦係数を示し、燃料組成物番号3(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)は、約0.444の摩擦係数を示し、燃料組成物番号4(2-エチルヘキサン酸+塩基性燃料)は、約0.464の摩擦係数を示した。HFRR試験方法を使用して決定した場合、燃料組成物の各々は、ベース燃料の摩擦係数と比較してより低い摩擦係数を提供することにより、摩擦特性の改善を提供した。
【0041】
図1Bは、900~4500秒の試験運転中の50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物の摩擦係数のグラフ表示を示す。表1に提供され、かつ図1Bに示されるように、潤滑性添加剤を含有する各燃料組成物は、900~4500秒の試験運転中に、添加剤を含まないベース燃料よりも低い摩擦係数を示した。特に、ベース燃料は、約0.587の平均摩擦係数を示した。しかしながら、燃料組成物番号2(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)は、約0.393の摩擦係数を示し、燃料組成物番号3(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)は、約0.361の摩擦係数を示し、燃料組成物番号4(2-エチルヘキサン酸+塩基性燃料)は、約0.385の摩擦係数を示した。燃料組成物の各々は、ベース燃料の摩擦係数と比較してより低い摩擦係数を提供することにより、摩擦特性の改善を提供した。
【0042】
実施例2
実施例2は、表2に示されるように、50ppm(wt/v)の潤滑性処理速度と比較して25ppm(wt/v)のより低い潤滑性処理速度での個々の潤滑性添加剤を含有する燃料組成物についての比較摩擦係数データを示す。実施例2で使用されるベース燃料は、実施例1に関して記載した通りである。ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、および1-ラウロイル-rac-グリセロールを含む選択された潤滑性添加剤は、それぞれのベース燃料に個別に添加した。添加剤などは添加していない。したがって、試験された配合物は、50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号1(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)を、25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号2(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)と比較することを含んだ。加えて、50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号3(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)を、25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号4(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)と比較した。燃料組成物ごとの摩擦係数は、900~4500秒の試験運転の1秒ごとにHFRR試験方法を使用して決定した。
【表2】
【0043】
図2は、900~4500秒の試験運転中の50ppm(wt/v)の処理速度および25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物についての摩擦係数を比較するグラフ表示を示す。線量率が摩擦係数パラメータに与える影響は、より低い潤滑性の添加剤処理速度で様々な燃料組成物を試験することによってさらに理解することができる。表2に提供され、かつ図2に示されるように、50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号1(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)は、約0.361の摩擦係数を示したが、25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号2(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)は、約0.382の摩擦係数を示した。加えて、50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号3(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)は、約0.393の摩擦係数を示したが、25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号4(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)は、約0.432の摩擦係数を示した。それぞれの場合において、50ppm(wt/v)の処理速度で潤滑性添加剤を含む燃料組成物は、25ppm(wt/v)の処理速度で潤滑性添加剤を含む燃料組成物よりも低い摩擦係数を示した。しかしながら、実施例2に関して記載されたように、すべての燃料組成物についての摩擦係数は、実施例1に提供されたように、ベース燃料についての約0.587の摩擦係数よりも低かった。したがって、実施例2の燃料組成物のそれぞれは、ベース燃料の摩擦係数と比較してより低い摩擦係数を提供することにより、摩擦特性の改善を提供した。
【0044】
実施例3
実施例3は、表3に示すように、ベース燃料および個別の潤滑性添加剤を含有する3つの異なる燃料組成物についての摩耗痕値を示す。ベース燃料は、実施例1に関して記載されている。それぞれのベース燃料に添加された個々の潤滑性添加剤には、1-ラウロイル-rac-グリセロール、ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-および2-エチルヘキサン酸が含まれていた。添加剤などは添加していない。したがって、試験されたような燃料組成物ごとの配合物は、(1)ベース燃料のみ、(2)1-ラウロイル-rac-グリセロールおよびベース燃料、(3)ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-およびベース燃料、ならびに(4)2-エチルヘキサン酸およびベース燃料を含んでいた。それぞれのベース燃料に添加された各潤滑性添加剤の量は、ベース燃料の総量に基づいて50ppm(wt/v)を含んでいた。燃料組成物ごとの摩耗痕値は、マイクロメートル(μm)で提供されるHFRR試験方法を使用して決定した。
【表3】
【0045】
図3は、50ppm(wt/v)での燃料組成物についての摩耗痕データのグラフ表示を示す。表3に提供され、かつ図3に示されるように、潤滑性添加剤を含有する各燃料組成物は、添加剤を含まないベース燃料よりも低い摩耗痕を示した。特に、ベース燃料は、約818.9μmの摩耗痕を示した。しかしながら、燃料組成物番号2(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)は、約758.0μmの摩耗痕を示し、燃料組成物番号3(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)は、約677.0μmの摩耗痕を示し、燃料組成物番号4(2-エチルヘキサン酸+ベース燃料)は、約692.5μmの摩耗痕を示した。実施例3によって提供される結果は、潤滑性添加剤を含む3つの燃料組成物と比較して、ベース燃料のみの組成物について、より大きな摩耗痕、すなわち、不十分な潤滑性性能を示す。
【0046】
実施例4
実施例4は、50ppm(wt/v)の処理速度と比較して25ppm(wt/v)のより低い処理速度で、表4に示されるように、個々の潤滑性添加剤を含有する燃料組成物についての比較摩耗痕データを示す。実施例4で使用されるベース燃料は、実施例1に関して記載した通りである。ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-、および1-ラウロイル-rac-グリセロールを含む選択された潤滑性添加剤は、それぞれのベース燃料に個別に添加した。添加剤などは添加していない。したがって、試験された配合物は、50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号1(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)を、25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号2(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)と比較することを含んだ。加えて、50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号3(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)を、25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号4(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)と比較した。実施例4に提供されるように、燃料組成物ごとの摩耗痕値は、HFRR試験方法を使用して決定した。
【表4】
【0047】
図4は、50ppm(wt/v)の処理速度および25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物についての摩耗痕データを比較するグラフ表示を示す図である。線量率が摩耗痕データに与える影響は、より低い潤滑性の添加剤処理速度で様々な燃料組成物を試験することによってさらに理解することができる。表4に提供され、かつ図4に示されるように、50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号1(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)は、約677.0の摩耗痕値を示したが、25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号2(ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料)は、約756.0の摩耗痕値を示した。加えて、50ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号3(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)は、約758.0の摩耗痕値を示したが、25ppm(wt/v)の処理速度での燃料組成物番号4(1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料)は、約792.5の摩耗痕値を示した。それぞれの場合において、50ppm(wt/v)の処理速度で潤滑性添加剤を含む燃料組成物は、25ppm(wt/v)の処理速度よりも低い摩耗痕値を示した。しかしながら、実施例4に関して記載されたように、すべての燃料組成物についての摩耗痕値は、実施例3に提供されたように、ベース燃料についての約818.9の摩耗痕値よりも低かった。したがって、実施例4の燃料組成物のそれぞれは、ベース燃料の摩耗痕値と比較して摩耗痕値の低減を提供することによって摩耗の改善を提供する。
【0048】
図5は、燃料組成物ごとの摩耗痕および摩擦係数データのグラフ比較を示す。組成物は、ベース燃料のみの組成物、ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-+ベース燃料組成物、1-ラウロイル-rac-グリセロール+ベース燃料組成物、および2-エチルヘキサン酸+ベース燃料組成物を含む。本発明の燃料組成物ごとの摩耗痕および摩擦係数を、ベース燃料のみの組成物についての摩耗痕および摩擦係数に対してプロットした。このようなデータを1つのプロットに組み合わせると、当業者は、ベース燃料および潤滑性添加剤を含む燃料組成物が、ベースのみの燃料組成物と比較した場合、摩耗痕および摩擦低減の両方を提供することを容易に確認することができる。
【0049】
本発明の目的は、ガソリン燃料に添加されたときにその潤滑特性を増加させるであろう様々な潤滑性添加剤を評価することを含んだ。潤滑性添加剤は、様々な極性および非極性基を含むそれらの独自の添加剤の化学的性質に基づいて選択され、ガソリン燃料に個別に添加されて燃料組成物を形成し、後でその潤滑性のレベルを決定するために試験した。実施例1~4の結果は、潤滑性添加剤を含む各燃料組成物が、改善された潤滑特性を実証したという目的が達成されたことを示す。1-ラウロイル-rac-グリセロールを潤滑性添加剤としてベース燃料に添加すると、摩擦損失および摩耗痕の改善を示し、摩擦係数データは、0.390~0.500の範囲であり、摩耗痕データは、755~795μmの範囲であった。ドデカンアミド、N-ヒドロキシ-を潤滑性添加剤としてベース燃料に添加すると、摩擦損失および摩耗痕の改善を示し、摩擦係数データは、0.360~0.515の範囲であり、摩耗痕データは、675~757μmの範囲であった。2-エチルヘキサン酸を潤滑性添加剤としてベース燃料に添加すると、摩擦損失および摩耗痕の改善を示し、摩擦係数データは、0.385~0.465の範囲であり、摩耗痕データは、約692μmであった。
【0050】
ガソリンベース燃料と選択された潤滑性添加剤との組み合わせから示されるこの相乗的挙動は、ベース燃料のみを使用するよりもエンジン効率および性能が改善していることを実証している。摩擦損失の低減および摩耗痕を含むこのような潤滑性の改善は、高圧燃料ポンプおよびインジェクターなどの直噴エンジンの様々な成分に対する改善された保護を提供する。別の驚くべき恩恵では、潤滑性添加剤を含む各燃料組成物を使用して、直接噴射エンジンまたはガソリンの使用に好適なエンジンの任意の時間の燃料性能を改善することもできる。
【0051】
本発明の技術は、様々な修正および代替の形態が可能であるが、上述した例示的な例は、例示としてのみ示されている。この技術は、本明細書に開示されている特定の例に限定されることを意図するものではないことを理解されたい。実際、本実施形態は、本技術の範囲内にあるすべての代替、修正、および同等物を含む。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】