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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】安定化Fc融合タンパク質溶液
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220316BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220316BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220316BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220316BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K9/08
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P35/00
A61P17/06
A61P1/04
A61P17/00
A61P37/08
A61P11/06
A61P11/00
A61P37/06
A61P29/00
A61K38/02
A61K47/02
A61K39/395 Y
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/18
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544796
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 GB2020050255
(87)【国際公開番号】W WO2020161487
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】1901547.8
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519111280
【氏名又は名称】アレコル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェゼク
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ジェリング
(72)【発明者】
【氏名】サラ ハウエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB17
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4C076DD67D
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4C076FF36
4C076FF39
4C076FF61
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4C084AA02
4C084AA03
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4C085EE07
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4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
特に、(i)Fc融合タンパク質;及び(ii)該Fc 融合タンパク質を安定化させるための濃度5~200 mMの硫酸イオンを含み、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、水溶液製剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液製剤であって:
(i)Fc融合タンパク質;及び
(ii)該Fc 融合タンパク質を安定化させるための濃度5~200 mMの硫酸イオン、
を含み、
アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【請求項2】
前記Fc融合タンパク質が、リガンド結合性である異種ポリペプチド、及び免疫グロブリン、特にIgG1のFc部分を含む融合タンパク質である、請求項1記載の水溶液製剤。
【請求項3】
前記Fc融合タンパク質が、エタネルセプト、アバタセプト、又はベラタセプトから選択される、請求項1記載の水溶液製剤。
【請求項4】
前記Fc融合タンパク質がエタネルセプトである、請求項3記載の水溶液製剤。
【請求項5】
前記硫酸イオンが濃度25~150 mM、例えば25~100 mM、より好適には50~100 mMで製剤中に存在する、請求項1~4のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項6】
前記硫酸イオンの供給源が例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、及び硫酸アンモニウムから選択される硫酸塩である、請求項1~5のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項7】
前記融合タンパク質が、濃度1~400 mg/ml、好適には20~100 mg/ml、より好適には約50 mg/mlで製剤中に存在する、請求項1~6のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項8】
さらなる安定化成分として硫酸以外の多価陰イオンも含む、請求項1~7のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項9】
前記多価陰イオンが有機多価陰イオンである、請求項8記載の水溶液製剤。
【請求項10】
前記有機多価陰イオンがクエン酸である、請求項9記載の水溶液製剤。
【請求項11】
前記有機多価陰イオンがコハク酸、リンゴ酸、及びマレイン酸、特にマレイン酸から選択される、請求項9記載の水溶液製剤。
【請求項12】
有機多価陰イオンとしてクエン酸及びマレイン酸を含む、請求項9記載の水溶液製剤。
【請求項13】
前記多価陰イオンが無機多価陰イオン、例えばリン酸である、請求項8記載の水溶液製剤。
【請求項14】
前記硫酸以外の多価陰イオンの濃度が1~100 mM、好適には1~60 mM又は1~50 mM、より好適には5~60又は5~50 mM、より好適には10~60又は10~50 mM、例えば30~50 mMである、請求項8~13のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項15】
前記製剤の浸透圧が200~500 mOsm/l、例えば約300 mOsm/lである、請求項1~14のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項16】
前記製剤が等張である、請求項1~15のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項17】
非荷電の浸透圧調整剤を含む、請求項1~16のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項18】
前記非荷電浸透圧調整剤がスクロース、トレハロース、マンニトール、ラフィノース、ラクトース、デキストロース、ソルビトール、ラクチトール、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールから選択される、請求項17記載の水溶液製剤。
【請求項19】
前記非荷電浸透圧調整剤が濃度10~1000 mM、好適には50~300 mMで製剤中に存在する、請求項17又は18記載の水溶液製剤。
【請求項20】
荷電浸透圧調整剤を含む、請求項1~19のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項21】
前記荷電浸透圧調整剤が塩化ナトリウムである、請求項20記載の水溶液製剤。
【請求項22】
前記荷電浸透圧調整剤が濃度25~500 mM、好適には50~250 mMで製剤中に存在する、請求項20又は21記載の水溶液製剤。
【請求項23】
前記製剤のpHが約pH 4.0~約pH 7.0である、請求項1~22のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項24】
前記製剤のpHが約pH 6.0~約pH 7.0、例えば約pH 6.0~pH 6.5、例えば約pH 6.3である、請求項23記載の水溶液製剤。
【請求項25】
緩衝剤をさらに含む、請求項1~24のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項26】
前記緩衝剤が濃度約0.5 mM~約50 mM、例えば約1 mM~約20 mM、例えば約1 mM~約10 mM、例えば1 mM~約5 mM、例えば約2 mM~約5 mMで存在する、請求項25記載の水溶液製剤。
【請求項27】
非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1~26のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項28】
前記非イオン性界面活性剤が、濃度約10 μg/mL~約2000 μg/mL、例えば約50 μg/mL~約1000 μg/mL、例えば約100 μg/mL~約500 μg/mLで存在する、請求項27記載の水溶液製剤。
【請求項29】
防腐剤をさらに含む、請求項1~28のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項30】
前記防腐剤がフェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される、請求項29記載の水溶液製剤。
【請求項31】
前記防腐剤が濃度約0.01~約100 mMで存在する、請求項29又は30記載の水溶液製剤。
【請求項32】
全てのアミノ酸を含まない、特に20個の天然アミノ酸の、L及びD異性体形態のいずれも含まない、請求項1~31のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項33】
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)該融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのクエン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の浸透圧調製剤;
を含み、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【請求項34】
前記製剤のpHが約pH 6.0~約pH 7.0、例えば約pH 6.0~pH 6.5、例えば約pH 6.3である、請求項33記載の水溶液製剤。
【請求項35】
医薬組成物である、請求項1~34のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項36】
療法における使用のための、請求項1~35のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項37】
前記製剤を、皮下若しくは筋肉内注射により、又は静脈内注射若しくは輸液による投与用とする、請求項1~36のいずれか1項記載の水溶液製剤。
【請求項38】
請求項1~37のいずれか1項記載の水溶液製剤を含む、注射用の充填済み注射器。
【請求項39】
請求項1~37のいずれか1項記載の水溶液製剤を含む、注射用の充填済み複数回用量ペン。
【請求項40】
Fc融合タンパク質を安定化させる方法であって、製剤に濃度5~200 mMの硫酸イオンを追加することにより、該融合タンパク質を安定化させる工程を含む、前記方法。
【請求項41】
保存中の前記Fc融合タンパク質の高分子量種の形成を阻害するための方法である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
保存中の前記Fc融合タンパク質の低分子量種の形成を阻害するための方法である、請求項40記載の方法。
【請求項43】
保存中の前記Fc融合タンパク質の関連種の形成を阻害するための方法である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
水溶液製剤中でFc融合タンパク質を保存用に安定化するための、濃度5~200 mMの硫酸イオンの使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
Fc融合タンパク質を水溶液として製剤化すると、保存中に構造的分解が起こりやすくなる。タンパク質分解に関わるプロセスは、物理的プロセス(例えば、4次、3次、又は2次構造の喪失、凝集、粒子形成)及び化学的プロセス(すなわち、脱アミド化、アスパラギン酸異性化、酸化、加水分解刈り込みなどの共有結合の変化を伴うプロセス)に分けることができる。各分解物(例えば、可溶性凝集種、不溶性凝集種、及び化学修飾バリアント)は、Fc融合タンパク質の生物活性、毒性、又は免疫原性に影響を及ぼし得る。
【0002】
そのため、全ての分解物のレベルは、各Fc融合タンパク質産物について設定されている厳しい仕様の範囲内に維持されなくてはならない。分解プロセスの速度は温度に依存し、Fc融合タンパク質は一般的に低温でより安定である。結果として、市販のFc融合タンパク質製品は典型的に、冷蔵保存しなければならない。しかしながら、患者が自己投与できる皮下投与用製品の趨勢の高まりとともに、少なくともある期間、例えば2週間、例えば4週間、例えば12週間、又はそれ以上の期間にわたって、コールドチェーンの外で使用することができるFc融合タンパク質製品を開発することが強く要望されている。コールドチェーンの外で製品を保存することができれば、しばしば使用期間中に患者の利便性が大幅に向上する。また、コールドチェーン外での流通(excursion)が可能となれば、発送品の物流が顕著に改善され得る。
【0003】
本発明は、Fc融合タンパク質の不安定性の問題、特にFc融合タンパク質の分解、とりわけ凝集の問題に対処する。
【0004】
WO2003/072060(Immunex)には、Fcドメインを含み、凝集阻害剤としてのL-アルギニンを含むタンパク質製剤が開示されている。
【0005】
WO2012/143418(Sandoz)には、安定性を向上させる助剤としてのリシン及びプロリンから選択されるアミノ酸を含む、エタネルセプトの製剤が開示されている。
【0006】
WO2013/006454(Biogen)には、1 mM未満のL-アルギニンを含み、かつエタネルセプトの凝集を防止するのに十分な量の塩を含む、エタネルセプトの製剤が開示されている。
【発明の概要】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、Fc融合タンパク質の不安定性の問題に対処する。一実施態様において、本発明は、
(i)Fc融合タンパク質;及び
(ii)該Fc 融合タンパク質を安定化させるための濃度5~200 mMの硫酸イオン、
を含み、
アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、水溶液製剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、Fc融合タンパク質の水溶液が、濃度5~200 mMの硫酸イオンによって安定化され得るという発見に関する。
【0009】
本明細書で使用する「水溶液製剤」という用語は、水、好ましくは蒸留水、脱イオン水、注射用水、注射用滅菌水、又は注射用静菌水の溶液を指す。本発明の水溶液製剤は、溶解されたFc融合タンパク質、硫酸イオン、任意に1以上の添加剤及び/又は賦形剤を含み、かつアルギニン、リシン、及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない。また、水溶液製剤は、1以上の成分、例えば一部溶解し、又は不溶性の添加剤又は賦形剤を含み得る。そのような1又は複数の成分の存在により、多相製剤、例えば懸濁液又は乳剤を得る。好ましくは、本発明の水溶液製剤は、目視又は光散乱によって決定される均一な溶液である。
【0010】
本明細書で使用する「Fc融合タンパク質」という用語は、免疫グロブリンのFc部分に遺伝学的に結合された異種ポリペプチド又はその誘導体を含むタンパク質を指す。「異種ポリペプチド」とは、天然にはFc部分と遺伝学的に結合していることが見いだされず、典型的に抗体由来ポリペプチドではないポリペプチドを意味する。2つのタンパク質/ポリペプチドに関して「遺伝学的に結合されている」とは、2つのタンパク質/ポリペプチドがペプチド結合によって結合され、単一の核酸分子によりコードされ得ることを意味する。例えば、異種ポリペプチドはリガンド、好ましくは特定のリガンドと結合することができる。異種ポリペプチドは、別のタンパク質、例えばヒトの体内における役割を有するタンパク質(例えば限定はされないが、サイトカイン)と相互作用し得る。より一般的には、異種ポリペプチドは治療上有用であり得る。そのような例示的な異種ポリペプチドには、限定されることなく、サイトカイン、血液凝固因子、若しくは増殖因子、又はそれらの機能的断片若しくは機能的ドメインがある。さらなる例は、GLP-1アゴニストである。誘導体の例には、例えば別の部分にコンジュゲートされたFc融合タンパク質などのコンジュゲート誘導体がある。そのような部分には、PEGなどの化学的に不活性な多量体がある。
【0011】
ある実施態様において、2つのFc融合タンパク質は、例えばジスルフィド結合を介して会合し、二量体タンパク質を形成し得る。
【0012】
ある実施態様において、免疫グロブリンのFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4を含むIgG、IgM、IgA1又はIgA2などのIgA、IgD、IgE、又はIgYのFc領域である。免疫グロブリンの最も好適なFc領域は、IgG、特にIgG1のFc領域である。
【0013】
いくつかの実施態様において、Fc融合タンパク質は、Fc融合タンパク質の1以上の特性、例えば血清半減期、補体固定、 Fc受容体結合、及び/又はエフェクター機能(例えば、抗原依存性細胞傷害性)を変化させるFc領域中の1以上の修飾を含む。
【0014】
一実施態様において、Fc融合タンパク質はリガンドと結合可能な、すなわちリガンド結合性の異種ペプチドを含む。
【0015】
一実施態様において、異種ポリペプチドは、腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNFαと結合することができ、例えばTNF受容体、例えばTNF受容体2、特にその可溶性形態を含み得る。
【0016】
一実施態様において、異種ポリペプチドはCD80又はCD86と結合することができ、例えばCLTA-4の細胞外ドメイン又はその一部を含む。
【0017】
一実施態様において、異種ポリペプチドはVEGFと結合することができ、例えばVEGFR1及び/若しくはVEGR2の細胞外ドメイン又はそれらの一部を含む。
【0018】
一実施態様において、異種ポリペプチドはIL-1と結合することができ、例えばIL-1R11及び/若しくはIL-1RAcPの細胞外ドメイン、又はそれらの一部を含む。
【0019】
一実施態様において、異種ポリペプチドは、c-Mplなどのトロンボポエチン受容体と結合することができる。
【0020】
一実施態様において、異種ポリペプチドは、第VIII因子若しくは第IX因子などの血液凝固因子又はその一部である。
【0021】
一実施態様において、異種ポリペプチドは、hActRIIbタンパク質又はその誘導体である。
【0022】
一実施態様において、異種ポリペプチドは、GLP-1アゴニスト、例えばデュラグルチドである。
【0023】
Fc融合タンパク質の例には、エタネルセプト、アバタセプト、及びベラタセプトがある。エタネルセプトに対する関心は特に高い。
【0024】
さらなる例には、アフリベルセプト、リロナセプト、ロミプロスチム、イロクテイト、ラスパテルセプト、及びオルプロリクスがある。
【0025】
ある実施態様において、Fc融合タンパク質は実質的に純粋である。すなわち、製剤は単一のFc融合タンパク質を含み、実質的な量の追加のタンパク質を何ら含まない。好ましい実施態様において、Fc融合タンパク質は製剤の全タンパク質含量の少なくとも99%、好ましくは少なくとも99.5%、及びより好ましくは少なくとも約99.9%含む。好ましい実施態様において、Fc融合タンパク質は医薬製剤中での使用に十分なだけ純粋である。
【0026】
Fc融合タンパク質は、好ましくは治療用Fc融合タンパク質である。そのようなFc融合タンパク質は、望ましい治療上又は予防上の活性を有し、疾患又は医学的障害の治療、阻害、又は予防に適応する。
【0027】
Fc融合タンパク質は、好適には約1~400 mg/ml、好適には20~100 mg/ml、より好適には約50 mg/mlの濃度で存在する。
【0028】
上述の通り、本発明者らは、水溶液製剤中のFc融合タンパク質の安定性が、硫酸イオンの存在下で改善されることを発見した。好適には、硫酸イオンは25~150 mM、例えば25~100 mM、又は25~90 mM、より好適には50~100 mM、又は50~90 mM、例えば50~75 mMの濃度で製剤中に存在する。関心対象とするもう1つの範囲は、50~125 mM、例えば75~125 mMである。
【0029】
硫酸イオンの供給源は、好適には例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、及び硫酸アンモニウムから選択される硫酸塩である。硫酸イオンの供給源は硫酸マグネシウムとすべきではない。
【0030】
また、本発明者らは、水溶液製剤中のFc融合タンパク質の安定性が、硫酸以外の多価陰イオン(又は2種以上の多価イオン)の存在によってさらに改善され得ることを発見した。従って、本発明の水溶液製剤は、好適にはさらなる安定化成分として硫酸以外の多価陰イオン(又は2以上の)を含む。
【0031】
(硫酸以外の)多価陰イオンは、少なくともマイナス2の電荷を有する(同様に、「-2」又は「マイナス2」とも表記し得る)。例えば、多価陰イオンは、マイナス2(「二価陰イオン」)、マイナス3(「三価陰イオン」)、又はマイナス4(四価陰イオン)の電荷を有し得る。一実施態様において、多価陰イオンはマイナス2の電荷を有し、二価陰イオンである。別の実施態様において、多価陰イオンはマイナス3の電荷を有し、三価陰イオンである。さらなる実施態様において、多価陰イオンはマイナス2の電荷を有する陰イオン及びマイナス3の電荷を有する陰イオンの混合物であり、すなわち二価陰イオン及び三価陰イオンの混合物である。別の実施態様において、多価陰イオンは二価陰イオン、三価陰イオン、又はそれらの混合物である。多価陰イオンは、25℃、pH 4~7の範囲で(例えば、プロトン化による)正電荷を形成し得る基を一切含まない種である。従って、多価陰イオンには塩基性窒素中心、すなわちプロトン化され得る窒素中心を含まない。特に、多価陰イオンは4級アンモニウム基(すなわち、正に荷電した四置換窒素原子)を含まない。多価陰イオンは、25℃、pKa 5~8又は3~9で、プロトン化され得る窒素中心を含まない。多価陰イオンはアミノ酸ではなく、特にL又はD異性体形態の20種の天然アミノ酸の1つでも、それらの任意の混合物(ラセミ混合物を含む)でもない。従って、多価陰イオンはグルタミン酸、アスパラギン酸、又はそれらの混合物ではない。多価陰イオンは、ペプチド又はタンパク質(すなわち、2以上のアミノ酸残基を含む分子)ではない。一実施態様において、多価陰イオンは窒素原子を含まない。多価陰イオンは、含窒素キレート剤ではなく、特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)ではない。好適には、多価陰イオンは500 Da未満、例えば400 Da未満、300 Da未満、又は200 Da未満の分子量を有する。
【0032】
例えば、多価陰イオンは有機多価陰イオンである。有機多価陰イオンの一例は、クエン酸である。さらなる例には、コハク酸、リンゴ酸、及びマレイン酸、特にマレイン酸がある。また、多価陰イオンは、硫酸以外の無機多価陰イオン、例えばリン酸でもあり得る。多価陰イオンに対する対イオンの例には、ナトリウム、カリウム、アンモニウムイオン、特にナトリウムイオン及びカリウムイオンがある。対イオンはマグネシウムとすべきではない。例えば、多価陰イオンはクエン酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、又はリン酸ナトリウムとして利用し得る。
【0033】
一実施態様において、多価陰イオン(複数可)は有機多価陰イオンからなる。すなわち、製剤中には無機多価陰イオンは存在しない。一実施態様において、製剤はリン酸イオンを含まない。
【0034】
多価陰イオンの混合物(例えば、有機及び無機多価陰イオン又は2つの有機多価陰イオン)も使用可能である。従って、例えば、2以上の(例えば、2つ又は3つの)硫酸以外の異なる多価陰イオンを利用することができる。好ましい実施態様において、多価陰イオンとしてクエン酸及びマレイン酸を利用する。一実施態様において、多価陰イオンとしてリン酸、クエン酸、及びマレイン酸を利用する。
【0035】
溶液製剤中の硫酸以外のその(又は各)多価陰イオンの濃度は、例えば約1~100 mM、好適には1~60 mM又は1~50 mM、より好適には約5~100 mM、5~60、又は5~50 mM、より好適には約10~60、10~50 mM、10~30 mM、10~20 mM、又は30~50 mMであり得る。
【0036】
2以上の多価イオン(硫酸以外)を利用する場合、好適には多価イオンの総濃度は約1~100 mM、好適には約1~60 mM又は1~50 mM、より好適には約5~100 mM、又は5~60、又は5~50 mM、より好適には約10~60、又は10~50 mM、又は10~30 mM、又は10~20 mM、又は30~50 mMである。
【0037】
本発明の水溶液製剤は、低張、等張、及び高張水溶液を含む幅広い浸透圧をカバーし得る。好適には、本発明の水溶液製剤は実質的に等張である。一実施態様において、本発明の水溶液製剤は等張である。好適には、水溶液製剤の浸透圧を選択し、投与経路による、例えば注射時の疼痛を最小限に抑える。好適な水溶液製剤は、約200 mOsm/L~約 500 mOsm/Lの範囲の浸透圧を有する。好適には、浸透圧は約250 mOsm/L~約350 mOsm/Lの範囲である。より好適には、浸透圧は約300 mOsm/Lである。
【0038】
水溶液製剤の浸透圧は、浸透圧調整剤を使用して調整することができる。浸透圧調整剤は、荷電又は非荷電とし得る。
【0039】
好適には、本発明の水溶液製剤は等張である。
【0040】
一実施態様において、浸透圧は非荷電浸透圧調整剤が製剤中に存在することによって調整される。浸透圧調整剤の濃度は、製剤中に存在する硫酸イオン及び任意の多価陰イオンの浸透圧調整効果に応じて適合される。例えば、これらが好適な浸透圧調整効果を提供する場合、それ以上の浸透圧調整剤は要求されない。
【0041】
非荷電の浸透圧調整剤の例には、糖、糖アルコール、及びその他の多価アルコール、例えばスクロース、トレハロース、マンニトール、ラフィノース、ラクトース、デキストロース、ソルビトール、若しくはラクチトール、又はグリセロール、プロピレングリコール、若しくはポリエチレングリコール、例えばPEG300若しくはPEG400がある。一実施態様において、非荷電の浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、PEG300、及びPEG400から選択される。そのような非荷電浸透圧調整剤は利用時に、例えば約10~1000 mM、例えば約50~500 mM、例えば約50~300 mM、例えば約10~300 mM、例えば約10~100 mM、例えば約10~50 mMの濃度で存在し得る。
【0042】
一実施態様において、水溶液製剤はキシリトールを含まない。
【0043】
あるいは、浸透圧は荷電浸透圧調整剤が製剤中に存在することによって調整され得る。荷電浸透圧調整剤は、硫酸以外の荷電物質又は多価陰イオンである。荷電浸透圧調整剤の例には、塩、例えばナトリウム又はカリウムイオンの、塩化物、硝酸、又は酢酸イオンとの組み合わせ、特に塩化ナトリウムがある。荷電浸透圧調整剤は利用時に、例えば約25~500 mM、好適には約50~250 mM、例えば約150 mM;又は約10~250 mM、例えば約10~100 mM、例えば約10~50 mMの濃度で製剤中に存在し得る。
【0044】
本発明の一実施態様において、水溶液製剤は荷電浸透圧調整剤を含まず、特に塩化ナトリウムを5 mM未満、例えば1 mM未満含む。例えば水溶液製剤は塩化ナトリウムを含まない。
【0045】
本発明の一実施態様において、水溶液製剤は非荷電の浸透圧調整剤を含まない。
【0046】
好適には、水溶液製剤のpHは、約pH 4.0~約pH 7.0である。一実施態様において、pHは約pH 4.0~約pH 6.0、例えば約pH 5.0~約 pH 6.0、例えば約pH 5.0~約pH 5.7、例えば約pH 5.3である。より好ましい実施態様において、pHは約pH 6.0~約pH 7.0、例えば約pH 6.0~約pH 6.5、例えば約pH 6.3である。
【0047】
一実施態様において、本発明の水溶液製剤は、製剤のpHを安定化させるための、同時にFc融合タンパク質の安定性を増強するように選択され得る緩衝剤をさらに含む。緩衝剤は典型的に、製剤のpH(特に、25℃で決定された値)からpKaが2 pH単位以内(例えば、1.5 pH単位以内、特に1 pH単位以内)にある、少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である。好適には、緩衝剤は濃度約0.5 mM~約50 mM、例えば約1 mM~約20 mM、例えば約1 mM~約10 mM、例えば1 mM~約5 mM、例えば約2 mM~約5 mMで存在する。例示的緩衝剤は酢酸である。ある例示的緩衝剤は多価陰イオンである。緩衝剤が多価陰イオン(例えば、リン酸又はクエン酸)である場合、緩衝剤は多価陰イオンとして取り扱い、製剤の成分の量を決定する目的の緩衝剤としては取り扱わない。
【0048】
一実施態様において、製剤は多価陰イオンではない緩衝剤は一切含まない。
【0049】
本発明の水溶液製剤は、任意に界面活性剤を含み得る。一実施態様において、界面活性剤は非イオン性界面活性剤、例えばアルキルグリコシド、例えばドデシルマルトシド;ポリソルベート界面活性剤、例えばポリソルベート80若しくはポリソルベート20;例えばポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル、及びポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテルから選択される、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、例えばポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー171、若しくはポロキサマー185;又はポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、例えば4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである。27。好適には、界面活性剤は、濃度約10 μg/mL~約2000 μg/mL、例えば約50 μg/mL~約1000 μg/mL、例えば約100 μg/mL~約500 μg/mLで存在する。
【0050】
本発明の水溶液製剤は、任意にフェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムから好適に選択された防腐剤を含み得る。存在する場合、防腐剤は濃度約0.01 mM~約100 mMとする。フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベンから選択される防腐剤は、例えば濃度約10 mM~約100 mM、例えば約20 mM~約80 mM、例えば25 mM~約 50 mMで存在し得る。塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムから選択される防腐剤は、例えば濃度約0.01 mM~約1 mM、例えば約 0.05 mM~約 0.5 mM、例えば約0.05 mM~約0.2 mMで存在し得る。
【0051】
一実施態様において、本発明の水溶液製剤は、全てのアミノ酸(すなわち、ペプチド結合を一切含まない遊離アミノ酸)を含まず、特にそのL異性体形態若しくは対応するD異性体形態にある20種の天然アミノ酸のいずれか又はそれらの異性体の任意の混合物(ラセミ混合物を含む)を含まない。
【0052】
本明細書で使用する「高分子量種」という用語は、親の活性型Fc融合タンパク質の分子量の少なくとも約2倍の見かけの分子量を有するFc融合タンパク質内容物の任意の成分を指す。すなわち、高分子量種は親のFc融合タンパク質の多量体凝集物である。多量体凝集物は、コンフォメーションが大幅に変化した親Fc融合タンパク質分子を含み得るものであり、又は多量体凝集物は、ネイティブ又はネイティブに近いコンフォメーションの親タンパク質ユニットの集合体であり得る。高分子量種の決定は、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、分析的超遠心分離/沈降速度、光散乱、動的光散乱、及びフィールド・フロー・フラクショネーションを含む当該技術分野で公知の方法を用いて実施することができる。
【0053】
本明細書で使用する「低分子量種」という用語は、親の活性型Fc融合タンパク質の分子量未満の見かけの分子量を有するFc融合タンパク質内容物の任意の成分を指す。すなわち、低分子量種は親のFc融合タンパク質の断片である。高分子量種の決定は、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、分析的超遠心分離/沈降速度、光散乱、動的光散乱、及びフィールド・フロー・フラクショネーションを含む当該技術分野で公知の方法を用いて実施することができる。
【0054】
本明細書で使用する「関連種」という用語は、親Fc融合タンパク質の化学修飾によって形成されるFc融合タンパク質内容物の任意の成分、例えば脱アミド化種又は酸化種を指す。関連種は、好適には陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、又はキャピラリー電気泳動によって検出される。
【0055】
好適には、本発明の水溶液製剤は、少なくとも1、2、又は3ヶ月にわたり25℃、30℃、又は40℃で保存した後も、可視粒子が実質的に存在しないままでいるのに十分に安定である。可視粒子は、好適には2.9.20. 欧州薬局方モノグラフ(微粒子汚染:可視粒子)を使用して検出する。
【0056】
好適には、本発明の水溶液製剤は、関連種の濃度が保存期間を延長しても低くあり続けるのに十分に安定である。
【0057】
一実施態様において、本発明の水溶液製剤は、1、2、又は3ヶ月にわたり25℃、30℃、又は40℃で保存した後も、(全Fc融合タンパク質の重量で)少なくとも 94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の親Fc融合タンパク質を保持する。(全Fc融合タンパク質の重量での)Fc融合タンパク質のパーセンテージは、サイズ排除クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、又はキャピラリー電気泳動によって決定できる。
【0058】
好適には、本発明の水溶液製剤は、少なくとも1、2、又は3ヶ月にわたり25℃、30℃、又は40℃で保存した後も、(全タンパク質の重量で)6%以下の高分子量種を含む。一実施態様において、高分子量種の量は、少なくとも1、2、又は3ヶ月にわたり25℃、30℃、又は40℃で保存した後も、(全Fc融合タンパク質の重量で)5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下増加する。高分子量種の定量化は、水溶液製剤中の全Fc融合タンパク質の重量パーセントで表す。
【0059】
好適には、本発明の水溶液製剤は、少なくとも1、2、又は3ヶ月にわたり25℃、30℃、又は40℃で保存する間に、高分子量種の増加を示すはずであるが、当該増加は、同じ条件及び時間にわたり保存した後の、5~200 mM硫酸イオンを欠くが他は同一である対応する水溶液製剤よりも、少なくとも10%低く、好ましくは少なくとも25%低く、より好ましくは少なくとも50%低い。
【0060】
好適には、本発明の水溶液製剤は、少なくとも1、2、又は3ヶ月にわたり25℃、30℃、又は40℃で保存する間に、高分子量種の増加を示すはずであるが、当該増加は、同じ条件及び時間にわたり保存した後の、5~200 mM硫酸イオン及び硫酸以外の1~100 mM多価陰イオンを欠くが他は同一である、対応する水溶液製剤よりも、少なくとも10%低く、好ましくは少なくとも25%低く、より好ましくは少なくとも50%低い。
【0061】
一実施態様において、本発明の水溶液製剤は、それを必要とする対象に治療用Fc融合タンパク質を投与するのに好適な医薬製剤である。そのような製剤は、対象にFc融合タンパク質を投与する方法で使用することができる。好適には、水溶液製剤は、皮下若しくは筋肉内注射により、又は静脈内注射若しくは輸液により投与する。より好適には、製剤は皮下注射によって投与する。
【0062】
Fc融合タンパク質がエタネルセプトである場合、本発明の水溶液製剤は、関節リウマチなどの関節炎、強直性脊椎炎、肉芽腫症、乾癬、クローン病、 炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、喘息、 及びCOPDを含む自己免疫性疾患及び炎症性疾患の治療に有用である。
【0063】
別の実施態様において、本発明は、それを必要とする対象への投与に好適な、包装された医薬製剤を提供する。医薬製剤は、本発明の水溶液製剤を含む。医薬製剤は、好ましくは溶液を移転するための針の導入に好適なバイアルで包装する。バイアルは単回用量又は複数回用量であり得る。複数回用量バイアル用の医薬製剤は好適には防腐剤を含む。一実施態様において、医薬製剤はゴム製ストッパ付きガラス製バイアルで包装する。包装医薬製剤はキットとして提供され、使用説明書及び任意に筋肉内又は皮下投与に好適な注射器をさらに含む。あるいは、包装医薬製剤は、筋肉内又は皮下投与に好適な、充填済みの単回使用使い捨て注射器の形態で提供し得る。また、充填済み自動注射装置は、筋肉内投与又は皮下投与に好適である。本発明のさらなる態様は、本発明の水溶液製剤を含む注射用充填済み単回使用注射器である。
【0064】
あるいは、包装医薬製剤は、筋肉内又は皮下投与に好適な、充填済みの複数回用量ペン(例えば、使い捨てペン)の形態で提供し得る。従って、本発明のさらなる態様は、本発明の水溶液製剤を含む注射用の充填済み複数回用量ペンである。そのような複数回用量ペン用の医薬製剤は好適には防腐剤を含む。
【0065】
本発明の水溶液製剤の成分は、好適には医薬として許容し得る。本明細書で使用する「医薬として許容し得る」という用語は、不都合な有害結果、例えば毒性、過敏症、及びアレルギー反応を伴わずに、合理的なリスク/ベネフィット比を有する、意図する用途及びヒト又は動物、例えば哺乳動物の体への投与様式に好適な医薬製剤の成分を指す。
【0066】
本発明のさらなる態様は、水溶液製剤中のFc融合タンパク質を安定化させる方法であって、製剤に濃度5~200 mMの硫酸イオンを追加することにより、融合タンパク質を安定化させる工程を含む、前記方法である。本発明のさらなる態様は、水溶液製剤中のFc融合タンパク質を安定化させる方法であって、製剤に濃度5~200 mMの硫酸イオン及び濃度1~100 mMの硫酸以外の多価陰イオンを追加することにより、融合タンパク質を安定化する工程を含む、前記方法である。上述の方法は、例えば、保存中のFc融合タンパク質の高分子量種の形成を阻害する方法、低分子量種の形成を阻害する方法、又は保存中にFc融合タンパク質の関連種の形成を阻害する方法であり得る。
【0067】
本発明はまた、Fc融合タンパク質を水溶液製剤中での保存に対し安定化させるための、濃度5~200 mMでの硫酸イオンの使用を提供する。
【0068】
本発明はまた、Fc融合タンパク質を水溶液製剤中での保存に対し安定化させるための、濃度5~200mMの硫酸イオン及び濃度1~100 mMの硫酸以外の多価陰イオンの混合物の使用を提供する。
【0069】
本発明の更に具体的な態様は、以下を含む。
(A)(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度1~100 mM、例えば10~50又は10~60 mMの硫酸以外の多価陰イオン、例えばクエン酸、マレイン酸、及びリン酸イオンから選択される多価陰イオン;
(iii)任意に1以上の防腐剤;及び
(iv)任意に1以上の非荷電浸透圧調整剤;
を含む水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0070】
(B)(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~60 mMのクエン酸イオン;
(iii)濃度1~10 mM、例えば1~5 mM、例えば3~5 mMのリン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の非荷電浸透圧調製剤;
を含む水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0071】
(C)(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~60 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度1~10 mM、例えば1~5 mM、例えば3~5 mMのリン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の非荷電浸透圧調製剤;
を含む水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0072】
(D)(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのクエン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の非荷電浸透圧調製剤;
を含む水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0073】
(E)本質的に
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度1~100 mM、例えば10~50又は10~60 mMの硫酸以外の多価陰イオン、例えばクエン酸、マレイン酸、及びリン酸イオンから選択される多価陰イオン;
(iii)任意に1以上の防腐剤;及び
(iv)任意に1以上の非荷電浸透圧調整剤;
からなる水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0074】
(F)本質的に
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~60 mMのクエン酸イオン;
(iii)濃度1~10 mM、例えば1~5 mM、例えば3~5 mMのリン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の非荷電浸透圧調整剤;
からなる水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0075】
(G)本質的に
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~60 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度1~10 mM、例えば1~5 mM、例えば3~5 mMのリン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の非荷電浸透圧調整剤;
からなる水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0076】
(H)本質的に
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのクエン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の非荷電浸透圧調整剤;
からなる水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0077】
(I)非荷電浸透圧調整剤が濃度約50~500 mM、例えば50~300 mMで存在する、水溶液製剤(A)~(H)のいずれか。
【0078】
(J)(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度1~100 mM、例えば10~50又は10~60 mMの硫酸以外の多価陰イオン、例えばクエン酸、マレイン酸、及びリン酸イオンから選択される多価陰イオン;
(iii)任意に1以上の防腐剤;及び
(iv)任意に1以上の荷電浸透圧調整剤;
を含む水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0079】
(K)(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~60 mMのクエン酸イオン;
(iii)濃度1~10 mM、例えば1~5 mM、例えば3~5 mMのリン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の荷電浸透圧調整剤;
を含む水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0080】
(L)(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~60 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度1~10 mM、例えば1~5 mM、例えば3~5 mMのリン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の荷電浸透圧調整剤;
を含む水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0081】
(M)本質的に
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度1~100 mM、例えば10~50又は10~60 mMの硫酸以外の多価陰イオン、例えばクエン酸、マレイン酸、及びリン酸イオンから選択される多価陰イオン;
(iii)任意に1以上の防腐剤;及び
(iv)任意に1以上の荷電浸透圧調整剤;
からなる水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0082】
(N)本質的に
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~60 mMのクエン酸イオン;
(iii)濃度1~10 mM、例えば1~5 mM、例えば3~5 mMのリン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の荷電浸透圧調整剤;
からなる水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0083】
(O)本質的に
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~60 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度1~10 mM、例えば1~5 mM、例えば3~5 mMのリン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の荷電浸透圧調整剤;
からなる水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0084】
(P)(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのクエン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の荷電浸透圧調整剤;
を含む水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0085】
(Q)本質的に
(i)Fc融合タンパク質、例えばエタネルセプト;
(i)融合タンパク質を安定化させるための、濃度5~200 mM、例えば50~100 mM、又は50~90 mMの硫酸イオン;
(ii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのマレイン酸イオン;
(iii)濃度5~60 mM、例えば10~30、例えば10~20 mMのクエン酸イオン;
(iv)任意に1以上の防腐剤;及び
(v)任意に1以上の荷電浸透圧調整剤;
からなる水溶液製剤であって、アルギニン、リシン及びプロリン、並びにそれらの塩から選択されるアミノ酸を含まず、かつマグネシウムイオンを含まない、前記水溶液製剤。
【0086】
(R)塩化ナトリウムなどの荷電浸透圧調整剤が濃度約50~250 mMで存在する、水溶液製剤(J)~(Q)のいずれか。
(S)約5.0~約6.0、例えば約5.0~約5.7、例えば約5.3のpHでの水溶液製剤(A)~(R)のいずれか。
(T)約6.0~約7.0、例えば約6.0~約6.5、例えば約6.3のpHでの水溶液製剤(A)~(R)のいずれか。
【0087】
(略語)
PEG ポリエチレングリコール
HMWS 高分子量種
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
CEX 陽イオン交換クロマトグラフィー
【実施例
【0088】
(実施例)
(材料)
EDTA二ナトリウム塩(Mw 372 Da)、1,2- プロパンジオール(Mw 76 Da)、グリセロール(Mw 92 Da)、マンニトール(Mw 182 Da)、NaCl(Mw 58 Da)、トレハロース(Mw 342 Da)は、Sigma Aldrichから入手した。
【0089】
(Fc融合タンパク質の安定性を評価する方法)
(a)視覚的評価
可視粒子は、好適には2.9.20. 欧州薬局方モノグラフ(微粒子汚染:可視粒子)を使用して検出する。必要とされる装置は、以下のものを含むビューイングステーションからなる:
・垂直位置に保持された適当なサイズの艶消し黒色パネル
・黒色パネルの隣に垂直位置に保持された適当なサイズの反射防止白色パネル
・好適な笠付白色光源及び好適な散光器が装着された調整可能なランプホルダー(各々長さ525mmの2本の13W蛍光管を含むビューイングイルミネーターが好適である)。ビューイングポイントにおける照明の強度は、2000ルクス~3750ルクスに維持される。
【0090】
いかなる接着ラベルも容器から除去し、外側を洗浄し、乾燥させる。気泡が確実に入らないようにしながら、容器を穏やかに旋回又は反転させて、白色パネルの前で約5秒間観察する。この手順を黒色パネルの前で繰り返す。いかなる粒子の存在も記録する。
視覚的スコアを次のように順位付ける:
視覚的スコア1:粒子をほとんど含まない透明な溶液
視覚的スコア2:~5個の非常に小さい粒子
視覚的スコア3:~10から20個の非常に小さい粒子
視覚的スコア4:巨大粒子を含む20~50個の粒子
視覚的スコア5:巨大粒子を含む>50個の粒子
視覚的スコア4及び5を有する試料中の粒子は、普通光下での随時の視覚的評価で明らかに検出可能であるが、視覚的スコア1~3を有する試料は、通常、同じ評価で透明な溶液に見える。視覚的スコア1~3を有する試料は「合格」とみなされ;視覚的スコア4~5を有する試料は「不合格」とみなされる。
【0091】
(b)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
高分子量種(HMWS)及び低分子量種(LMWS)の量を、ガードカラムを伴う300×7.8 mm S3000(又は同等品)サイズ排除カラムを使用して測定する。移動相はリン酸カリウムpH 6.5とし、流量を0.4 ml/分、注入体積を1 μlとし、210及び280 nmで検出する。結果は、主ピーク(すなわち、ネイティブタンパク質)の%、HMWSの%、及びLMWSの%で表す。
【0092】
(c)陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)
関連種の量は、Protein-Pak Hi Res SPカラムを使用して測定する。移動相Aは20 mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)とし、移動相Bは20 mMのリン酸ナトリウム+0.5 M NaCl(pH 6.0)とする。以下のグラジエント溶出を使用する:0分―100% A、4分―80% A、10分―55% A、12分―0% A。流量1.0 ml/分。注入体積は3 μlであり、UV検出は214 nmである。結果は、主ピーク(すなわち、ネイティブタンパク質)の%、酸性種の%、及び塩基性種の%で表す。関連種の%=酸性種の%+塩基性種の%。
【0093】
(実施例1)
(エタネルセプト製剤の安定性)
SEC法を使用した、以下の表に示す製剤(製剤F1-1~F1-6)中でのエタネルセプト(50 mg/mL)の安定性を試験した。試験した全ての製剤のpHを6.3に調整した。製剤F1-1~F1-3はほぼ等張となるように調製した。その結果、試験した鍵となる賦形剤の濃度は、その浸透圧への相対的寄与度に応じて変化した。製剤F1-4~F1-6は賦形剤を組み合わせたもので、高張である。
【0094】
【表1】
【0095】
製剤F1-1~F1-6の安定性を以下の表に示す。表は、25℃及び40℃で保存した後に、SECクロマトグラム上で主ピークが保持されることを示す。
【0096】
【表2】
【0097】
結果から、浸透圧調整剤としてスクロースを使用すると、塩化ナトリウムを使用した場合と比較してわずかに安定性が向上することが示される(F1-1対F1-2)。しかしながら、硫酸ナトリウムを使用することで、塩化ナトリウム又はスクロースを使用した場合と比較して顕著に優れた安定性を得た。
【0098】
硫酸ナトリウムを塩化ナトリウム又はスクロースと組み合わせても、硫酸ナトリウム単独を使用した場合に比べてあまり大きくは安定性が向上しなかった(F1-4対F1-3)。しかしながら、硫酸ナトリウムをクエン酸ナトリウムと組み合わせることにより、さらにより顕著に安定性が向上することが見いだされた(F1-6対F1-3)。
【0099】
(実施例2)
(エタネルセプト製剤の安定性)
SEC法を使用した、以下の表に示す製剤(製剤F2-1~F2-9)中での硫酸ナトリウム存在下でのエタネルセプト(50 mg/mL)の安定性に対する多価陰イオンの影響をさらに調べた。試験した全ての製剤のpHを6.3に調整した。
【0100】
【表3】
【0101】
製剤F2-1~F2-9の安定性を以下の表に示す。表は、25℃及び40℃で保存した後に、SECクロマトグラム上で主ピークが保持されることを示す。
【0102】
【表4】
【0103】
結果から、低濃度の硫酸塩(50 mM)は、高濃度の硫酸塩(100 mM)を使用した場合よりも、安定化効果が小さいことが示される(F2-1対F2-2)。
【0104】
両方の場合で、クエン酸ナトリウムの追加により安定性がさらに向上した(F2-4対F2-2及びF2-3対F2-1)。また、クエン酸ナトリウムの影響は、100 mM硫酸ナトリウムの存在下で濃度依存的であることが見いだされた(F2-5対F2-4)。
【0105】
また、マレイン酸ナトリウム(50 mM又は10 mM)を硫酸ナトリウム(100 mM)に追加することで、濃度依存的に安定性がさらに向上した(F2-6及びF2-7対F2-2)。
【0106】
同様に、クエン酸ナトリウムとマレイン酸ナトリウムの混合物を追加することで、濃度依存的に安定性がさらに向上した(F2-8対F2-6及びF2-9対F2-7)。
【0107】
本明細書及び以下に続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈上、別段の解釈を要する場合を除き、「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変化形は、記載された整数、工程、整数の群、又は工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数、工程、整数の群、又は工程の群の除外を意味するものではないと理解されるであろう。
【0108】
本発明は、特に、その好ましい実施態様に関して示され、記載されているが、形態及び詳細の様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を逸脱することなく、その中で行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。本明細書に記載される実施態様が相互排他的でないこと及び様々な実施態様由来の特徴を本発明に従って全体的に又は部分的に組み合わせ得ることも理解されるべきである。
【0109】
引用された刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、及びアクセッション番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列の両方を含む)は全て、あたかも各々の個々の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、又はアクセッション番号/データベース配列が引用によりそのように組み込まれることが具体的かつ個別的に示されるのと同じ程度まで、あらゆる目的のために、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【国際調査報告】