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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】非同時針捕捉による縫合糸送達
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
A61B17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544808
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 US2020016103
(87)【国際公開番号】W WO2020160407
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】16/263,569
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502156504
【氏名又は名称】テルモ メディカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ファン・チュン-チア
(72)【発明者】
【氏名】ウェン・ユ-シー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB01
4C160BB18
4C160MM33
(57)【要約】
縫合糸を運ぶ針を有する針配備組立体と、安定器と、を支持する、細長い配備シャフト。遠位端部にキャッチャー組立体を有する、シャフト上のキャッチャーチューブは、組織を通過してキャッチャー組立体と係合するとき、針の一部を保持することができる。キャッチャー組立体および針配備組立体は、キャッチャー組立体を越えて遠位に移動されると、複数の針に非同時的に係合するように構成される。キャッチャーチューブ上のシースは、拡張されると、組織を安定器に接して挟むことができる。第1のアクチュエータは、キャッチャーチューブを遠位に移動させ、安定器の近位端部と遠位端部との間の距離を減少させて、それを拡張させることができ、また、シースを遠位に移動させ、組織を挟むことができる。第2のアクチュエータは、針を外方に偏向させて、組織を通して近位に移動させ、キャッチャーと係合させ、キャッチャーによって保持されていないそれぞれの一部を遠位位置に戻すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織上の開口部を縫合するための縫合糸送達装置であって、
細長い配備シャフトと、
遠位位置において挿入プロファイルを有し、前記シャフトに対して近位に移動されると半径方向外方へと穿刺角度まで偏向するように構成された、縫合材料を運ぶ複数の針を含む、前記シャフトによって支持された針配備組立体と、
前記針配備組立体の近位の場所で前記シャフトによって支持された安定器であって、前記安定器は、非拡張挿入プロファイルと拡張プロファイルとの間で再構成可能である、安定器と、
遠位端部にキャッチャー組立体を有する、前記シャフト上に同軸かつスライド可能に配置されたキャッチャーチューブであって、前記キャッチャー組立体および前記針配備組立体は、前記針が、縫合される前記組織を通って、前記キャッチャー組立体を越えて近位位置まで移動し、その後、遠位に戻るときに、前記縫合材料を運ぶ前記複数の針のそれぞれの少なくとも一部に非同時的に係合してこれを保持するように構成されている、キャッチャーチューブと、
前記キャッチャーチューブ上に同軸かつスライド可能に配置されたシースであって、前記シースの遠位端部は、拡張時に、縫合される組織を前記安定器に接して挟むように構成されている、シースと、
を含む、縫合糸送達装置。
【請求項2】
前記針配備組立体の遠位移動によって、前記針の第1のサブセットが第1の時間に前記キャッチャー組立体に係合し、前記針配備組立体の遠位移動が続けられると、前記針の第2のサブセットが前記第1の時間に続く第2の時間に前記キャッチャー組立体に係合する、請求項1に記載の縫合糸送達装置。
【請求項3】
前記針の前記第1のサブセットの係合に関連する作動力および前記針の前記第2のサブセットの係合に関連する作動力はそれぞれ、すべての前記針に同時に係合するのに必要な作動力より小さい、請求項1に記載の縫合糸送達装置。
【請求項4】
前記キャッチャー組立体は、前記複数の針のそれぞれの取り外し可能な針先端部に係合するように構成されている、請求項1に記載の縫合糸送達装置。
【請求項5】
捕捉組立体は、複数の捕捉点を含む、請求項1に記載の縫合糸送達装置。
【請求項6】
前記複数の捕捉点は、互いに対して長手方向に離間されている、請求項5に記載の縫合糸送達装置。
【請求項7】
前記複数の捕捉点はそれぞれ、キャッチ要素によって作られている、請求項5に記載の縫合糸送達装置。
【請求項8】
各キャッチ要素は、前記針の異なるサブセットのみに係合するように構成されている、請求項7に記載の縫合糸送達装置。
【請求項9】
各キャッチ要素は、ディスク構成を有する、請求項7に記載の縫合糸送達装置。
【請求項10】
各キャッチ要素は、皿状構成を有する、請求項7に記載の縫合糸送達装置。
【請求項11】
前記キャッチャー組立体は、入れ子式の皿状キャッチ要素を含む、請求項10に記載の縫合糸送達装置。
【請求項12】
単一のキャッチ要素が前記複数の捕捉点を画定する、請求項5に記載の縫合糸送達装置。
【請求項13】
前記キャッチ要素は、椅子形状の構成を有する、請求項12に記載の縫合糸送達装置。
【請求項14】
前記キャッチャー組立体は、単一の捕捉点を有し、前記複数の針は、第1の長さを有する針の第1のサブセット、および第2の長さを有する針の第2のサブセットを含み、前記第2の長さは、前記第1の長さよりも短い、請求項1に記載の縫合糸送達装置。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2019年1月31日に出願された米国特許出願第16/263,569号の優先権を主張するものであり、これは、2018年9月10日に出願された米国仮特許出願第62/729,312号の優先権および利益を主張し、かつ2015年6月1日に出願された米国特許出願第14/726,963号、現在の米国特許第10,194,901号の一部継続出願であり、これは、2014年6月2日に出願された米国仮特許出願第62/006,709号の優先権および利益を主張し、かつ2014年2月14日に出願された米国特許出願第14/186,246号の一部継続出願であり、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔本開示の分野〕
本開示は、一般に、患者の脈管構造または他の身体管腔の開口部を閉鎖するための技術および装置に関する。例えば、本開示は、外科的処置後に必要とされ得るような、開口部の周囲の組織を接合するために動脈および静脈の穿刺部位を縫合するためのシステム、装置、および方法に関する。
【0003】
〔背景〕
回復時間を改善するため、患者の身体内の所望の場所にアクセスすることによって、さまざまな介入および診断処置を低侵襲的に実施することができる。カテーテルまたは他の細長い装置を、都合の良い入口点で脈管構造内に導入することによって、そのような処置は、身体管腔を通して装置を所望の位置にガイドすることによって、離れた場所で実施され得る。これらの技術は、従来の開放処置よりも患者への影響が少ないが、脈管構造へのアクセスには、後に修復しなければならない、動脈または静脈における開口部を形成する必要がある。
【0004】
さまざまな方法を使用して、アクセス開口部を閉鎖することができる。従来、止血は、開口部を通る血液の流れを実質的に減少させ、血塊形成を可能にするために、用手圧迫によって達成され得る。一般に成功しているが、圧迫にはかなりの時間がかかる場合があり、また、かなりの患者の不快感を伴うことがある。さらに、虚血または血栓症を引き起こす可能性のある、意図しない管腔の完全閉塞などの合併症が起こることがある。これらの状況は、装置を導入するために必要な開口部のサイズ、抗凝固剤が使用されるかどうか、および患者の状態に応じて悪化し得る。
【0005】
これらの問題を改善するために、止血を達成し、歩行までの時間を短縮するために開口部を縫合する技術が開発されている。処置の最小侵襲性を維持するために、これらの技術の多くは、実施されるように適応される。例えば、縫合糸送達装置は、処置を行うために使用される同じ開口部を通して導入され得る。典型的には、1つ以上の針が、縫合糸送達装置によって配備されて、血管壁を貫通し、縫合材料を引っ張り、縫合糸は、外膜表面上に固定され、開口部を閉鎖することができる。
【0006】
縫合糸送達装置の使用に関連する利点にもかかわらず、いくつかの課題が存在する。具体的には、1つまたは複数の針が、血管壁に対して正確に位置付けられて、組織を開口部から十分に離れたところで貫通し、縫合のための十分に強固な場所をもたらすことが望ましい。また、操作者に要求されるスキルの量を最小限にするために、再現可能な方法で針を配備し作動させるように構成された装置を提供することが望ましい。前述したような、参照により組み込まれた米国特許出願第14/726,963号には、縫合材料を運ぶ複数の針が組織を通過した後に縫合糸送達装置によって捕捉される実施形態が開示されている。開示された実施形態は、その出願に記載されているようにこれらの課題に対処するが、作動力は、針に係合し、それによって針を捕捉することに関連する。理解されるように、この作動力は、捕捉されている針の数のほぼ倍数であり、作動力の各成分は、針のうちの1つに係合するのに必要な力の量に対応する。したがって、本開示は、組織を縫合するために針を再現可能に配備すると共に、必要な作動力も減少させることを含む、所望の利点を保持する、身体管腔の開口部を縫合するためのシステムおよび方法に関する。
【0007】
〔概要〕
本開示は、組織を縫合するための縫合糸送達装置を含む。縫合糸送達装置は、細長い配備シャフトと、遠位位置において挿入プロファイルを有し、シャフトに対して近位に移動されると半径方向外方へと穿刺角度まで偏向するように構成された、縫合材料を運ぶ複数の針を含む、シャフトによって支持された針配備組立体と、針配備組立体の近位の場所でシャフトによって支持された安定器であって、安定器は、非拡張挿入プロファイルと拡張プロファイルとの間で再構成可能である、安定器と、遠位端部にキャッチャー組立体を有する、シャフト上に同軸かつスライド可能に配置されたキャッチャーチューブであって、キャッチャー組立体および針配備組立体は、針が、縫合される組織を通って、キャッチャー組立体を越えて近位位置まで移動し、その後、遠位に戻るときに、縫合材料を運ぶ複数の針のそれぞれの少なくとも一部に非同時的に係合してこれを保持するように構成されている、キャッチャーチューブと、キャッチャーチューブ上に同軸かつスライド可能に配置されたシースであって、シースの遠位端部は、拡張時に、縫合される組織を安定器に接して挟むように構成されている、シースと、を含み得る。
【0008】
一態様では、針配備組立体の遠位移動によって、針の第1のサブセットが第1の時間にキャッチャー組立体に係合することができ、針配備組立体の遠位移動が続けられると、針の第2のサブセットが第1の時間に続く第2の時間にキャッチャー組立体に係合することができる。
【0009】
一態様では、針の第1のサブセットの係合に関連する作動力および針の第2のサブセットの係合に関連する作動力はそれぞれ、すべての針に同時に係合するのに必要な作動力より小さくてよい。
【0010】
一態様では、キャッチャー組立体は、複数の針のそれぞれの取り外し可能な針先端部に係合するように構成され得る。
【0011】
一態様では、捕捉組立体は、複数の捕捉点を有し得る。複数の捕捉点は、互いに対して長手方向に離間され得る。複数の捕捉点はそれぞれ、キャッチ要素によって作られ得る。各キャッチ要素は、針の異なるサブセットに係合するように構成され得る。
【0012】
一態様では、各キャッチ要素は、ディスク構成を有し得る。あるいは、各キャッチ要素は、皿状構成を有し得る。キャッチャー組立体は、入れ子式の皿状キャッチ要素を有し得る。
【0013】
一態様では、単一のキャッチ要素が複数の捕捉点を画定し得る。キャッチ要素は、椅子形状の構成を有し得る。
【0014】
一態様では、複数の針は、第1の長さを有する針の第1のサブセット、および第2の長さを有する針の第2のサブセットであってよく、第2の長さは、第1の長さよりも短い。
【0015】
本開示は、縫合糸を送達するための方法も含む。例えば、適切な方法は、細長い配備シャフトと、縫合材料を運ぶ複数の針を含む、シャフトによって支持される針配備組立体と、針配備組立体の近位の場所でシャフトによって支持される安定器と、遠位端部にキャッチャー組立体を有する、シャフトの上に同軸かつスライド可能に配置されるキャッチャーチューブと、キャッチャーチューブの上に同軸かつスライド可能に配置されるシースとを提供することと、細長い配備シャフトを患者内の所望の位置まで前進させることと、安定器を非拡張挿入プロファイルから拡張プロファイルに再構成することと、シースの遠位端部と拡張した安定器との間に、縫合される組織を挟むことと、シャフトに対する近位移動により遠位位置における挿入プロファイルから穿孔角度まで複数の針を半径方向外方に偏向させることと、縫合される組織を通過することによって、キャッチャー組立体を越えて近位位置まで複数の針を移動させることと、近位位置から遠位に移動されたときに第1の時間にキャッチャー組立体を複数の針の第1のサブセットと係合させることと、さらなる遠位移動後、第1の時間に続く第2の時間にキャッチャー組立体を複数の針の第2のサブセットと係合させることと、キャッチャー組立体によって、縫合材料を運ぶ複数の針のそれぞれの少なくとも一部を保持することと、キャッチャー組立体によって保持されていない複数の針のそれぞれの一部を遠位位置における挿入プロファイルに戻すことと、を含み得る。
【0016】
一態様では、針の第1のサブセットの係合に関連する作動力および針の第2のサブセットの係合に関連する作動力はそれぞれ、すべての針に同時に係合するのに必要な作動力よりも小さくてよい。
【0017】
一態様では、キャッチャー組立体は、複数の捕捉点を有し得、針の第1のサブセットは第1の捕捉点のみに係合し、第2のサブセットは第2の捕捉点のみに係合する。
【0018】
一態様では、複数の針は、第1の長さを有する針の第1のサブセット、および第2の長さを有する針の第2のサブセットであってよく、第2の長さは、第1の長さよりも短い。キャッチャー組立体は、第1の時間に針の第1のサブセットに係合することができ、第2の時間に針の第2のサブセットに係合することができる。
【0019】
一態様では、キャッチャー組立体を複数の針と係合させることにより、各針の取り外し可能な針先端部を保持することができる。
【0020】
さらなる特徴および利点は、添付の図面に例示されているように、本開示の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。図面中、同様の参照符号は、概して、図面全体にわたって同じ部品または要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態による、非同時的な針捕捉による縫合糸の送達のための適切なルーチンを表すフローチャートを示す。
図2】一実施形態による、図1の縫合糸送達装置の概要を概略的に示す。
図3】一実施形態による、縫合糸送達装置の針配備組立体、安定器、およびキャッチャー組立体の詳細図を概略的に示す。
図4】一実施形態による、針先端部および針基部を概略的に示す。
図5】一実施形態による、ディスクキャッチ要素を有するキャッチャー組立体を概略的に示す。
図6図5のキャッチャー組立体との針先端部の非同時係合を概略的に示す。
図7図5のキャッチャー組立体との針先端部の非同時係合を概略的に示す。
図8図5のキャッチャー組立体との針先端部の非同時係合を概略的に示す。
図9】一実施形態による、皿状キャッチ要素を有するキャッチャー組立体を概略的に示す。
図10】一実施形態による、皿状キャッチ要素を有するキャッチャー組立体を概略的に示す。
図11図9および図10のキャッチャー組立体との針先端部の係合を概略的に示す。
図12図9および図10のキャッチャー組立体との針先端部の係合を概略的に示す。
図13】一実施形態による、単一のキャッチ要素を有するキャッチャー組立体を概略的に示す。
図14】一実施形態による、種々の長さの針を特徴とする針配備組立体を概略的に示す。
【0022】
〔詳細な説明〕
最初に、本開示は、特に例示された材料、構造、ルーチン、方法または構造に限定されるものではなく、それ自体は変化し得ることを理解されたい。したがって、本明細書に記載されたものと類似または同等のいくつかのそのようなオプションが、本開示の実施または実施形態において使用され得るが、好ましい材料および方法が本明細書に記載されている。
【0023】
また、本明細書で使用される用語は、本開示の特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0024】
添付図面に関連して以下に示される詳細な説明は、本開示の例示的な実施形態の説明となることが意図され、本開示が実施され得る唯一の例示的な実施形態を表すことを意図するものではない。この説明全体にわたって使用される用語「例示的な」は、「実施例、例、または例示として役立つ」ことを意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好ましいかまたは有利であると解釈されるべきではない。詳細な説明は、本明細書の例示的な実施形態の完全な理解を提供する目的で特定の詳細を含む。本明細書の例示的な実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。いくつかの例では、本明細書に提示される例示的な実施形態の新規性を不明瞭にすることを回避するために、周知の構造および装置がブロック図形式で示される。
【0025】
便宜上および明確性の目的のためだけに、上(top)、底、左、右、上(up)、下(down)、上(over)、上(above)、下(below)、下(beneath)、後部(rear)、後部(back)、および前部(front)などの方向を示す用語が、添付の図面に関して使用され得る。これらおよび類似の方向を示す用語は、いかなる方法によっても、本開示の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0026】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本開示が関係する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、用語「縫合」は、穿刺創、開口部、または他の創傷を閉鎖するために、可撓性材料と共に2つの表面または縁部を引っ張ることを含み、縫合糸は、合成もしくは天然であり得る材料、例えば、ポリマー、ガット、金属ワイヤ、または他の適切な等価物である。
【0027】
最後に、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容に明らかに他の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0028】
本開示によれば、介入処置後に止血を促進するために縫合糸を適用するための装置は、患者の脈管構造に装置を位置付けること、縫合糸配備のため組織を安定化させるように装置の拡張部分を用いて組織を挟むこと、縫合材料を運ぶ針を、安定化された組織に通過させるために、穿孔角度で配備すること、および挟まれた組織を解放して装置を引き出すことができるように装置を非拡張状態に戻すこと、に関連する一連の動作を実行するように構成され得る。具体的には、以下に説明するように、本開示の態様は、これらの動作の少なくとも一部を、再現可能な様式で装置にそれらの動作を実行させるアクチュエータを用いて、自動化するための技術を詳述する。例えば、第1のアクチュエータを使用して装置の遠位部分を拡張し、組織を挟むことができ、第2のアクチュエータを使用して、縫合材料を運ぶ針を穿孔角度で配備し、挟まれた組織を通してそれらを駆動して、針の貫通端部を捕捉し、装置の遠位部分をその非拡張状態に戻すことができる。さらに、開示された実施形態はまた、縫合材料を運ぶ針に非同時的に係合することによって、針の捕捉に関連する作動力を低減するように構成される。
【0029】
ここで図1を参照すると、本開示の装置を使用して縫合糸を配備するための例としてのルーチンは、そのために、一般に、100から開始して、装置の遠位端部におけるポートを備えるブリードバック内腔(bleed back lumen)を使用するなどして、所望の場所に装置を位置付け、ポートが血管内に配置されたときに、血液はポートに入り、内腔を通って流れ、装置の近位部分において視覚的表示を提供することを含むことができる。位置付けに続いて、102において、所望の縫合部位における軟組織は、装置の遠位部分上で安定器を拡張させ、安定器と相対的により近位にある装置の部分との間に組織を挟むことによって安定化される。遠位の拡張可能な安定器は、縮小された挿入プロファイルと、縫合糸の送達中に組織を安定化するための拡張プロファイルと、を示す。安定器の相対的な移動により、組織が安定器と相対的により近位の部分との間に固定され、装置によって運ばれる、針が配備した縫合糸のための標的を提供することができる。以下の議論から理解されるように、この相対的な移動は、近位部分に向かう安定器の移動、安定器に向かう近位部分の移動、またはその両方を含み得る。挟まれた組織は、閉鎖されている穿刺創を囲む血管壁の部分を含み得る。
【0030】
次に、104において、挟まれた組織の遠位に配置された、縫合材料を運ぶ複数の針が穿孔角度で配備され、その結果、106における近位位置への針の移動で、挟まれた組織を貫通する。挟まれた組織が針によって貫通された後、複数の針は近位位置から遠位に移動される。針の第1のサブセット、例えば針のうちの少なくとも1つは、第1の時間に108において近位で捕捉される。いくつかの実施形態では、これは、後述するように縫合材料を運ぶ取り外し可能な針先端部などの針の少なくとも一部を捕捉することを含むことができる。第2のその後の時間に、第1のサブセットとは異なる針の第2のサブセットが、110において遠位で捕捉される。以下に記載される実施形態における非同時捕捉は、一般に、第1の時間に針の約半分を含むサブセットを捕捉し、第2の時間に針の残りを含むサブセットを捕捉することなどによって、第1の時間または第2の時間のいずれかに針のすべてに係合し、それらを捕捉することを含む。しかしながら、本開示の範囲内で他の実施形態が可能であり、任意の数の非同時捕捉時間が使用され得ることが理解されるであろうし、実際、いくつかの実施形態では、各針は、それ自体の別々の時間に捕捉され得る。装置の引き抜きに備えるために、112において、安定器および針配備機構は、それらの送達構成に戻される。本開示の技術によれば、これらの動作の一部または全部を自動化することが望ましい場合がある。例えば、一実施形態では、第1のアクチュエータを使用して102を実行することができ、第2のアクチュエータを使用して104~112を実行することができる。押しボタン、スライドスライダ、プルレバーおよび/またはプッシュプランジャを含む任意の適切なアクチュエータ構成を使用することができる。任意の所望の数およびシーケンスの動作が、動作を単一のアクチュエータにリンクさせることによって調整および/または自動化され得る。
【0031】
本開示の態様を説明するのを助けるために、図2は、一実施形態による縫合糸送達装置200の概略概要である。装置200は、スライダ204として構成された第1のアクチュエータと、プランジャ206として構成された第2のアクチュエータと、を有するハンドル202を含む。装置200の細長い遠位部分は、患者の血管内に配備されるカテーテル208を含む。ガイドワイヤ交換ポート210が、既知の技術を使用して患者の脈管構造内に既に位置付けられたガイドワイヤ上でのカテーテル208の前進を容易にするために使用され得る。カテーテル208の近位には、針配備組立体212および安定器214がある。安定器214は、挿入のための図示された縮小されたプロファイルと拡張構成との間で再構成され得る。その拡張構成にある間、シース216の遠位端部と安定器214との間の相対的な動きは、縫合糸送達の準備において組織を挟むために使用され得る。この実施形態では、スライダ204を作動させて安定器214を拡張させ、シース216と安定器214との間の相対的な動きを発生させることができる。さらに、プランジャ206は、針配備組立体212内の複数の針が、最初に、それらの挿入プロファイルから穿孔角度まで持ち上げられ、次いで、安定器214とシース216との間に挟まれた組織を貫通するように駆動されるように、作動され得る。プランジャ206を作動させ続けると、針の少なくとも一部をシース216内に捕捉させることができる。次に、安定器214および針配備組立体212は、それらの挿入プロファイルに戻され、装置200の引き抜きを容易にする。図示のように、装置200は、ハンドル202上にブリードバックインジケータ218を含むことができ、これは、安定器214に隣接して位置付けられたポートと連通し、安定器214が患者の血管内に位置付けられたときに血流の形で視覚的フィードバックを提供する。さらに、装置200は、針および縫合材料を配備せずに処置を中止することが望ましい場合には、プランジャ206を作動させること、および関連する動作を実行することなしに、安定器214をその挿入プロファイルに戻すために、解放トリガ220を含み得る。
【0032】
一実施形態では、装置200は、ガイドワイヤ交換ポート210の近位のカテーテル止血弁を含み得る。弁は、カテーテル208内に位置付けられ得、延長体を有する1つ以上の可撓性弁を含んで、弁とガイドワイヤ交換ポート210との間に内腔を形成し、内腔への移行を容易にする傾斜部により、ガイドワイヤの導入を容易にすることができる。弁上のストッパーが、接着剤、クリンプリング、摩擦、または任意の他の適切な方法を使用することなどによって、カテーテル208内に弁を固定するのを助けることができる。可撓性弁は、ガイドワイヤを通過させ、ガイドワイヤが引き抜かれるときに血流を遮断するように構成され得る。
【0033】
この実施形態に関するさらなる詳細は、図3に示されており、図3は、針配備組立体212および安定器214を概略的に示す。針配備組立体212は、ピストンまたは他の適切な構造体として実施することができる、針プッシュ要素224から近位に突出する複数の針基部222を含み、各針は取り外し可能な針先端部226を有する。縫合材料は、針先端部226の開口(明瞭にするために不図示)を通されるか、または別様にこれに固定され得る。トリガーワイヤ228は、ピストン224に固定され、以下でさらに詳細に説明するように、プランジャ206による作動のためにハンドル202まで近位に延びる。送達のため、針基部222および先端部226は、シャフト232の遠位端部に形成された、対応する傾斜部230の遠位に位置付けられる。トリガーワイヤ228は、シャフト232内に同軸にスライド可能に配置されており、トリガーワイヤ228の相対的な近位移動によって、針基部222および先端部226が傾斜部230によって半径方向外方に偏向されて穿孔角度になる。安定器214は、少なくとも1つの偏向可能な翼部238によって結合された近位バンド234および遠位バンド236によって形成される。近位バンド234は、キャッチャーチューブ242に固定され、キャッチャーチューブは、シャフト232上に同軸に配置され、シャフト232上をスライド可能である。対応して、遠位バンド236はシャフト232に固定される。次に、キャッチャーチューブ242に固定されたキャッチャー組立体240は、シース216内に同軸に配置され、シース216内をスライド可能である。キャッチャーチューブ242およびキャッチャー組立体240をシャフト232に対して遠位に移動させることによって、近位バンド234と遠位バンド236との間の距離を減少させることができ、偏向可能な翼部238を半径方向外方に突出させて安定器214をその挿入プロファイルから拡張させる。
【0034】
この実施形態では、キャッチャー組立体240は、スペーサ248によって分離された、2つのキャッチ要素、すなわち、遠位キャッチャーディスク244および近位キャッチャーディスク246を含む。針先端部226などの複数の針の少なくとも一部が、縫合される組織を近位に通過して、遠位キャッチャーディスク244および近位キャッチャーディスク246に対して近位位置に位置すると、複数の針は、遠位方向に戻され得、複数の針のそれぞれの少なくとも一部が非同時的に捕捉される。以下にさらに詳細に説明するように、近位キャッチャーディスク246は、針先端部226のサブセットのみによって係合されるように構成され、一方、遠位キャッチャーディスク244は、針先端部226の残りのサブセットのみに係合するように構成される。近位キャッチャーディスク246は第1の捕捉点を作り、それが係合する針先端部226が第1の時間に捕捉され、スペーサ248は、遠位キャッチャーディスク244を第2の捕捉点に位置付け、残りの針先端部226が第2の時間にこれに係合する。したがって、針先端部226は、第1の時間に針先端部226の第1のサブセットに係合するために必要とされる作動力と、第2の時間に針先端部226の第2のサブセットに係合するために必要とされる同様の作動力と、により、非同時的に捕捉される。キャッチャー組立体240によって複数の針先端部226を捕捉すると、針先端部226と針基部222との間に係合解除力が発生する。この係合解除力は、ユーザが針プッシュ要素224に加える作動力と相関している。比較のために、本実施形態において任意の1つの時間に必要とされる作動力は、針先端部が同時に係合される、組み込まれる米国特許出願第14/726,963号に開示された実施形態で必要とされる作動力の約半分である。理解されるように、任意の1つの時間に必要とされる作動力のさらなる低減は、任意の所与の時間に係合される針が少なくなるように追加の捕捉点を有するキャッチャー組立体を使用することによって達成され得る。
【0035】
針組立体212に関する詳細は、図4に示されており、これは、針基部222と針先端部226との間の相互作用を概略的に示す。図示のように、各針基部222は、針先端部226の凹部252内に嵌合するように構成されたポスト250を含むことができる。針先端部226を針基部222に対して特定の回転配向に位置付けることが望ましくなり得る。一態様では、ポスト250および対応する凹部252の非対称構成により、針先端部226を所望の回転配向に固定することができる。例えば、ポスト250上のリブまたは他の同様の特徴部は、凹部252の相補的な特徴部と噛み合うことができる。針先端部226を針基部222に固定する他の手段、例えば、針先端部上のポストおよび基部内の凹部の使用が、必要に応じて使用され得る。縫合材料252は、クリンプ、加熱、結び目形成、または接着剤もしくはプラグの使用などの任意の適切な方法を用いて、針先端部226の開口227内に保持され得る。上述のように、針先端部226は、針基部222から取り外し可能とすることができる。針先端部226と基部222との間で所望の程度の保持を達成するために、種々の技術を用いることができる。例えば、針先端部226は、ポスト250上への配置の前もしくは後にクリンプされ得、または何らかの他の形態の構造的相互作用が生成され得る。他の実施形態では、接着剤が使用され得るか、または凹部252がポスト250よりも幾分小さいサイズにされ得、針先端部226が裂け目を有し得、先端部材料の弾性によって、これを所定の位置に保持することを可能にする。ポスト250の表面品質およびコーティングもまた、針先端部226の保持に影響し得る。例えば、針基部222および針先端部226の一方または両方は、超弾性および形状記憶特性を有するニチノール(登録商標)などのニッケル-チタン合金またはステンレス鋼から形成され得る。一態様では、針基部222および針先端部226のいずれかまたは両方が、適切な保持力を有するようにニチノール酸化物の層を有し得る。実施形態は、4つの針に関連して論じられるが、任意の適切な数の針を所望に応じて使用することができる。
【0036】
次に図5の概略詳細図を参照すると、キャッチャー組立体240の遠位キャッチャーディスク244および近位キャッチャーディスク246は、各ディスクが針先端部226の一方のサブセットまたは他方のサブセットのみに選択的に係合する構成を有し得ることが分かる。例えば、完全に円形の輪郭を示すのではなく、遠位キャッチャーディスク244は、対向するギャップ245を有し、1つ以上の針先端部226が、遠位キャッチャーディスク244と係合することなく、このギャップを通過し得る。遠位キャッチャーディスク244の周囲の残りの部分は、シース216の内径に密接に適合するようなサイズにされており、針先端部226は、縁部を越えて近位に前進された後で、遠位に移動されたときに捕捉される。したがって、遠位キャッチャーディスク244は、針先端部226の一方のサブセットと係合するが、他方のサブセットとは係合しない。近位キャッチャーディスク246は、対向するギャップ247を有する同様の構成を有する。ギャップ245およびギャップ247が互いに対して約90°回転するように、遠位キャッチャーディスク244および近位キャッチャーディスク246を配向することによって、遠位キャッチャーディスク244は針先端部226の一方のサブセットと係合し、近位キャッチャーディスク246は他方のサブセットと係合する。図示された実施形態は、4つの針先端部226と共に使用されるように構成され、各針先端部は、針組立体212の周りで互いに対して約90°離間している。異なる数の針を有する他の実施形態では、本開示の非同時捕捉特性を実現するために、いくつかの針先端部のみが異なるキャッチャーディスクのそれぞれによって係合されるように、異なる相対的配向を有する異なる数のキャッチャーディスクおよび/またはギャップが使用され得ることが理解されよう。
【0037】
前述のように、針配備組立体212による縫合糸送達は、挟まれた組織を遠位から近位方向に貫通するように構成された穿孔角度への針の外方の半径方向偏向を含み得、その後、縫合材料254を運ぶ針先端部226などの針の少なくとも一部の非同時捕捉が続く。これらの動作の態様に関する詳細は、図6および図7のシーケンスに概略的に示されている。配備前に、針先端部226およびそれらの関連する針基部222は、(図3に示すような)凹部内に位置することなどによって、シャフト232に適合することによって、挿入のための縮小されたプロファイルを示す。針先端部226および針基部222が、(やはり図3を参照して説明したように)針プッシュ要素224およびトリガーワイヤ228によって近位に駆動されたら、針先端部226および針基部222は、傾斜部230によって外方に偏向され、縫合される組織を通過した後、シース216とキャッチャー組立体240との間の半径方向空間に入る。
【0038】
図6から始めて、この実施形態の4つの針が、第1のサブセットの針先端部226aおよび第2のサブセットの針先端部226bと共に、示されている。この段階で、すべての針先端部は、キャッチャー組立体240の遠位に位置付けられる。次に、図7は、針先端部226がキャッチャー組立体240に対して近位位置まで駆動された後の構成を示す。この図では、明確にするために、各針先端部サブセットの1つのみを示している。具体的には、遠位キャッチャーディスク244および近位キャッチャーディスク246が、針先端部226の異なるサブセットに選択的に係合し、それを捕捉することが分かるであろう。例えば、複数の針が、キャッチャー組立体240を越えて近位位置から遠位方向に戻される場合、針先端部226aは、ギャップ247と整列しているので、近位キャッチャーディスク246に係合しない。逆に、針先端部226bは、ギャップ245との整列により遠位キャッチャーディスク244を越えて実質的に自由に移動することができるが、この第1の捕捉点で近位キャッチャーディスク246の縁部によって係合され捕捉される。対応して、作動力は、サブセットの針先端部226bに係合し、それらをそれぞれの針基部から移動させるのに十分であればよい。次に、図8において、針先端部226bは、近位キャッチャーディスク246の縁部によって捕捉されており、さらなる遠位移動の後、針先端部226aは、上述のギャップ247との整列により、近位キャッチャーディスク246を越えて自由に移動した後、遠位キャッチャーディスク244の縁部によって係合される(ここでも、明確にするために、各針先端部サブセットの1つのみを示している)。同様に、この後続の時間における作動力は、サブセットの針先端部226aに係合するのに十分であればよい。これにより、遠位キャッチャーディスク244および近位キャッチャーディスク246の長手方向の間隔は、針先端部226の非同時捕捉を引き起こし、針先端部226bは第1の時間に捕捉され、針先端部226aは後続の第2の時間に捕捉される。必要に応じて、キャッチャー組立体240の遠位部分は、針先端部を適切にガイドするのに役立つ円錐形状の構成を有し得る。それぞれの針先端部226が遠位に移動されると、捕捉ディスク244および246の縁部ならびにシース216の内側表面は、協働して針先端部226を保持し、その結果、針基部の遠位移動により、先端部が基部から係合解除され、先端部は、それらの関連する縫合材料(やはり明確にするためにこの図には示されていない)と共に捕捉されたままである。ギャップ245および247の相対的な配置により、各捕捉ディスク244および246は、複数の針の一方のサブセットまたは他方のサブセットに係合するように構成される。
【0039】
シース216は、針移動経路の外側境界を画定し、その結果、シース216の内側に同軸に配置された、キャッチャー組立体240は、内側境界を画定する。シース216は、キャッチャー組立体240の遠位キャッチャーディスク244および近位キャッチャーディスク246と共に、小さな半径方向空間を画定するか、またはギャップ245および247によって画定される特定の領域以外の一点もしくはそれ以上で半径方向に接触するように、互いに対してサイズ決めされ、位置付けられ得る。したがって、針先端部226は、シース216とキャッチャー組立体240との間を長手方向に通過することができる。一実施形態では、小さな半径方向空間が、キャッチャーディスク244、246の縁部とシース216との間に存在することができ、十分な摩擦によりキャッチャー組立体240とシース216との間で針の少なくとも一部が保持されるまで、針の通過を可能にするようなサイズである。針の捕捉および保持は、針配備組立体212が遠位方向に後退されたときに、針先端部226を針基部222から係合解除するのに十分な力を有するキャッチャーディスク244、246およびシース216に対する摩擦によって生じ得る。代替的に、キャッチャーディスク244、246の近位縁部は、空間が存在しないか、または(ギャップ245および247を除くところに)針先端部226の寸法より小さい空間が存在するようにシース216と接触していてよいが、一方または両方の材料は、変形して針先端部226の通過を可能にするのに十分に適合している。一態様では、針先端部226は、針基部222よりも寸法が広くてよく、係合を容易にするために、図4に示すような近位縁部252を形成する。例えば、針先端部および針基部は、外径がそれぞれ0.5mmおよび0.4mmであってよい。したがって、キャッチャーディスク244および246は、この近位縁部において針先端部226に係合することができる。代替的に、針先端部226は、凹部、ノッチなどといった、針先端部の係合および捕捉を容易にするように構成された任意の他の適切な特徴を使用してもよい。シース216とキャッチャー組立体240との間に半径方向のギャップを示す実施形態では、空間は、装置に沿って長手方向に実質的に一定であってよく、またはテーパ状であってもよく、その結果、空間は、遠位端部付近で幅広くなって針先端部226の進入を容易にし、近位端部に向かって狭くなって針先端部226の保持のための摩擦を増大させる。摩擦は、キャッチャー組立体240および/またはシース216について所望の特性を有する材料を選択することによって高められ得る。同様に、機械的デザインによって摩擦を増加させることもできる。他の実施形態では、針先端部226と針基部222との間の著しい摩擦は必要とされない場合がある。針の係合解除はまた、相対的に近位に移動されるときに針が通過する湾曲経路を、キャッチャー組立体240とシース216との間に設けることによって容易にすることができる。
【0040】
次に、図9図12を参照すると、入れ子式の皿状キャッチ要素260および264を使用する別の実施形態の態様が示されている。図9では、近位皿状キャッチ要素260は、先に説明したギャップ245および247と同様の機能性を提供する対向するチャネル262と共に示されている。対応して、遠位皿状キャッチ要素264も、対向するチャネル266を特徴とし、また、近位皿状キャッチ要素260に対して配向され得、各チャネル262および266は、4つの針の実施形態では互いに対して約90°回転されている。図10に概略的に示すように、皿状キャッチ要素260および264は、互いに入れ子にされて、図11においてシース216内に同軸に配置されて示されるキャッチャー組立体268を形成することができる。この段階で、針先端部226は、近位に駆動されており、これらは、シース216内に延びるが、依然としてキャッチャー組立体268の遠位にある。図12に示されるようにさらに近位に移動すると、すべての針先端部226は、キャッチャー組立体268を越えて近位位置まで前進されている。したがって、針が遠位に戻されるとき、第1のサブセットの針先端部226bは、第1の捕捉点272において近位皿状キャッチ要素260によって係合され、一方、第2のサブセットの針先端部226aは、チャネル262と整列し、近位皿状キャッチ要素260によって係合されない。同様に、第1のサブセットの針先端部226bは、それらがチャネル266と整列しているので、遠位皿状キャッチ要素264によって係合されないが、第2のサブセットの針先端部226aは、第2の捕捉点270まで遠位に移動した後、遠位皿状キャッチ要素264によって係合される。したがって、第1の時間に、針先端部226bは、第1の捕捉点272において近位皿状キャッチ要素260によって係合され、針先端部226aは、その後の第2の時間に、第2の捕捉点270において遠位皿状キャッチ要素264によって係合され、この非同時捕捉は、上述のように減少した作動力を表す。
【0041】
さらに別の実施形態が図13に概略的に示されており、これは、シース216内に適合し、かつ第2の捕捉点276より相対的に近位にある第1の捕捉点278を形成するようにサイズ決めされた単一の椅子形状のキャッチ要素を特徴とする、キャッチャー組立体274を備えている。この構成では、捕捉点は、対向する針先端部ではなく隣接するする針先端部に係合する。例えば、針がキャッチャー組立体274を越えて近位に前進された後に遠位に戻されると、針先端部226bが、第1の捕捉点278によって係合され捕捉されることが分かるであろう。対応して、針先端部226aは、次に、第2の捕捉点276において、針のさらなる遠位移動の後に捕捉される。繰り返しになるが、この非同時捕捉は、針が同時に捕捉される設計と比較して、必要な作動力の減少をもたらす。
【0042】
上記から、キャッチャー組立体の複数の構成は、本開示の範囲内にあり、2つ以上の捕捉点を特徴とすることができ、捕捉点のそれぞれは、針先端部を捕捉することなどによって、針のサブセットのみと係合するように構成されることが理解されるであろう。同様に、1つ以上のキャッチ要素の適切な構成によって、異なる数の針に対応することもできる。長手方向に転置した捕捉点を有するキャッチャー組立体を使用することによって、最初に、キャッチャー組立体の近位にある位置まで、縫合される組織を通って近位に駆動され、次いで、互いに対して同じ長手方向位置に維持されている間に遠位に戻される針は、記載されるように、異なる時間に捕捉される。しかしながら、針を非同時的に捕捉するための他のメカニズムもまた、本開示の範囲内である。例えば、図14は、安定器インターフェース286の近位に位置付けられたキャッチャー皿284の縁部によって形成された単一の円周方向捕捉点282を有するキャッチャー組立体280を概略的に示す。キャッチャー皿284と安定器インターフェース286の両方は、キャッチャーチューブ242によって支持され得る。この実施形態では、非同時捕捉は、異なる相対長を有する針基部を使用することを含むことができる。例えば、1つ以上の針基部222aは、1つ以上の針基部222bよりも相対的に長くてよい(明瞭にするために、この図ではそれぞれの針基部のうち1つだけを示しているが、任意の適切な数を使用することができる)。その結果、すべての針先端部226がキャッチャー組立体280を越えて近位に前進され、(図14には示されていない)針配備組立体212が遠位に戻された後、相対的に短い針基部222bを有する針先端部226bは、第1の時間にキャッチャー皿284に係合し、相対的に長い針基部222aを有する針先端部226aは、第1の時間の後の第2の時間にキャッチャー皿284に係合する。上記の実施形態と同様に、針の非同時捕捉は、すべての針を同時に捕捉するために必要とされるものと比較して、作動力の減少を表す。この実施形態では、針の1つのサブセットは第1の長さを有し得、別のサブセットは第2の異なる長さを有し得るが、他の修正が、3つ以上の異なる長さを使用することによって、または異なる長さを示す各針を有することによってさえ、可能である。
【0043】
安定器インターフェース286の材料は、安定器214との剛性接続を形成するように選択することができ、一方、キャッチャー皿284の材料は、針先端部226が近位方向に通過することを可能にするが、遠位方向に引っ込むのに抵抗するように、上述の弾性または摩擦特性を示すように選択することができる。一態様では、キャッチャー皿284は、チタン合金、例えばTi6Al4V、ステンレス鋼、または他の同様の材料から形成され得る。一態様では、キャッチャー皿284は、針先端部226が材料を貫通することを可能にするように構成され得、その結果、針基部222が引き抜かれるときに、針先端部226を保持するのに十分な係合が生じる。同様に、キャッチャー皿284は、近位位置まで移動されるときに針先端部226が通過するスリットを有し得る。針先端部226が近位側から遠位側に移動するときのスリットの周りの材料の近位偏向は、針先端部226の保持を容易にするためのインターフェースを形成し得る。安定器インターフェース286は、ガイド288または同様の構造的特徴を含んで、針先端部226が近位方向に移動する際にそれらをガイドするのを助けることができる。一態様では、キャッチャー皿284は、シース216に軽い外向きの力を及ぼすことができる。キャッチャー皿284の円錐形状は、シース216とキャッチャー組立体280との間の空間を通して針先端部226をガイドするように作用し得る。キャッチャー皿284がシース216に接触するところでは、材料はわずかに内方に変形して針先端部226の貫通を可能にすることができる。針先端部226が、シース216の内側表面に隣接するキャッチャー皿254の縁部を完全に通過すると、材料は、シース216に向かってはね返り、遠位方向への移動に対抗する機械的停止部として機能し得る。したがって、針配備組立体212が後退されると、針先端部226は、針基部222から取り外され得る。キャッチャー皿284とシース216との間の任意のギャップは、針基部222が一旦後退されると実質的に閉じる。次いで、縫合材料250(明確にするためにここには示されていない)を運ぶ針先端部226をキャッチャー皿284の近位に保持することができる。
【0044】
本明細書では、特定の例示的な実施形態が説明されている。しかしながら、本実施形態に関連する分野の当業者であれば、本開示の原理は、適切な修正により、他の適用に容易に拡張できることを理解するであろう。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) 組織上の開口部を縫合するための縫合糸送達装置であって、
細長い配備シャフトと、
遠位位置において挿入プロファイルを有し、前記シャフトに対して近位に移動されると半径方向外方へと穿刺角度まで偏向するように構成された、縫合材料を運ぶ複数の針を含む、前記シャフトによって支持された針配備組立体と、
前記針配備組立体の近位の場所で前記シャフトによって支持された安定器であって、前記安定器は、非拡張挿入プロファイルと拡張プロファイルとの間で再構成可能である、安定器と、
遠位端部にキャッチャー組立体を有する、前記シャフト上に同軸かつスライド可能に配置されたキャッチャーチューブであって、前記キャッチャー組立体および前記針配備組立体は、前記針が、縫合される前記組織を通って、前記キャッチャー組立体を越えて近位位置まで移動し、その後、遠位に戻るときに、前記縫合材料を運ぶ前記複数の針のそれぞれの少なくとも一部に非同時的に係合してこれを保持するように構成されている、キャッチャーチューブと、
前記キャッチャーチューブ上に同軸かつスライド可能に配置されたシースであって、前記シースの遠位端部は、拡張時に、縫合される組織を前記安定器に接して挟むように構成されている、シースと、
を含む、縫合糸送達装置。
(2) 前記針配備組立体の遠位移動によって、前記針の第1のサブセットが第1の時間に前記キャッチャー組立体に係合し、前記針配備組立体の遠位移動が続けられると、前記針の第2のサブセットが前記第1の時間に続く第2の時間に前記キャッチャー組立体に係合する、実施態様1に記載の縫合糸送達装置。
(3) 前記針の前記第1のサブセットの係合に関連する作動力および前記針の前記第2のサブセットの係合に関連する作動力はそれぞれ、すべての前記針に同時に係合するのに必要な作動力より小さい、実施態様1に記載の縫合糸送達装置。
(4) 前記キャッチャー組立体は、前記複数の針のそれぞれの取り外し可能な針先端部に係合するように構成されている、実施態様1に記載の縫合糸送達装置。
(5) 捕捉組立体は、複数の捕捉点を含む、実施態様1に記載の縫合糸送達装置。
【0046】
(6) 前記複数の捕捉点は、互いに対して長手方向に離間されている、実施態様5に記載の縫合糸送達装置。
(7) 前記複数の捕捉点はそれぞれ、キャッチ要素によって作られている、実施態様5に記載の縫合糸送達装置。
(8) 各キャッチ要素は、前記針の異なるサブセットのみに係合するように構成されている、実施態様7に記載の縫合糸送達装置。
(9) 各キャッチ要素は、ディスク構成を有する、実施態様7に記載の縫合糸送達装置。
(10) 各キャッチ要素は、皿状構成を有する、実施態様7に記載の縫合糸送達装置。
【0047】
(11) 前記キャッチャー組立体は、入れ子式の皿状キャッチ要素を含む、実施態様10に記載の縫合糸送達装置。
(12) 単一のキャッチ要素が前記複数の捕捉点を画定する、実施態様5に記載の縫合糸送達装置。
(13) 前記キャッチ要素は、椅子形状の構成を有する、実施態様12に記載の縫合糸送達装置。
(14) 前記キャッチャー組立体は、単一の捕捉点を有し、前記複数の針は、第1の長さを有する針の第1のサブセット、および第2の長さを有する針の第2のサブセットを含み、前記第2の長さは、前記第1の長さよりも短い、実施態様1に記載の縫合糸送達装置。
(15) 縫合糸を送達するための方法であって、
細長い配備シャフトと、縫合材料を運ぶ複数の針を含む、前記シャフトによって支持される針配備組立体と、前記針配備組立体の近位の場所で前記シャフトによって支持される安定器と、遠位端部にキャッチャー組立体を有する、前記シャフトの上に同軸かつスライド可能に配置されるキャッチャーチューブと、前記キャッチャーチューブの上に同軸かつスライド可能に配置されるシースとを提供することと、
前記細長い配備シャフトを身体内の所望の位置まで前進させることと、
前記安定器を非拡張挿入プロファイルから拡張プロファイルに再構成することと、
前記シースの遠位端部と拡張した前記安定器との間に、縫合される組織を挟むことと、
前記シャフトに対する近位移動により遠位位置における挿入プロファイルから穿孔角度まで前記複数の針を半径方向外方に偏向させることと、
前記縫合される組織を通過することによって、前記キャッチャー組立体を越えて近位位置まで前記複数の針を移動させることと、
前記近位位置から遠位に移動されたときに第1の時間に前記キャッチャー組立体を前記複数の針の第1のサブセットと係合させることと、
さらなる遠位移動後、前記第1の時間に続く第2の時間に前記キャッチャー組立体を前記複数の針の第2のサブセットと係合させることと、
前記キャッチャー組立体によって、前記縫合材料を運ぶ前記複数の針のそれぞれの少なくとも一部を保持することと、
前記針によって保持されていない前記複数の針のそれぞれの一部を前記遠位位置における前記挿入プロファイルに戻すことと、
を含む、方法。
【0048】
(16) 前記針の前記第1のサブセットの係合に関連する作動力および前記針の前記第2のサブセットの係合に関連する作動力はそれぞれ、すべての前記針に同時に係合するのに必要な作動力よりも小さい、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記キャッチャー組立体は、複数の捕捉点を含み、前記針の第1のサブセットは第1の捕捉点のみに係合し、前記第2のサブセットは第2の捕捉点のみに係合する、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記複数の針は、第1の長さを有する針の第1のサブセット、および第2の長さを有する針の第2のサブセットを含み、前記第2の長さは、前記第1の長さよりも短く、前記キャッチャー組立体は、前記第1の時間に前記針の第1のサブセットに係合し、前記第2の時間に前記針の第2のサブセットに係合する、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記キャッチャー組立体を前記複数の針と係合させることにより、各針の取り外し可能な針先端部を保持することができる、実施態様15に記載の方法。
図1
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【国際調査報告】