IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクアハイドレックス, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-519575閉じ込められた電解質を有する電気化学システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】閉じ込められた電解質を有する電気化学システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20220316BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20220316BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20220316BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20220316BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20220316BHJP
   C25B 9/21 20210101ALI20220316BHJP
   C25B 9/67 20210101ALI20220316BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20220316BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20220316BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/23
C25B15/08 302
C25B9/77
C25B9/21
C25B9/67
C25B15/00 302Z
C25B15/023
H01M8/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544814
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 US2020016135
(87)【国際公開番号】W WO2020160424
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/799,966
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/854,757
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521338916
【氏名又は名称】アクアハイドレックス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AQUAHYDREX, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】セイモアー, エリック
(72)【発明者】
【氏名】クモール, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘレーラ, エリック ティー.
(72)【発明者】
【氏名】バーキル, バイロン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コックス, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ニジャワン, サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】タブナー-スミス, キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ヘムザセク, ウェイン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ナサニエル マーティン
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021BC01
4K021BC03
4K021BC04
4K021BC05
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA10
4K021CA11
4K021CA12
4K021CA13
4K021DB15
4K021DB31
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
5H126AA10
5H126BB10
(57)【要約】
例えば電解槽における、閉じ込められた電気化学セル又は接続された電気化学セルの群(例えばスタック)内での電解質の管理及び制御のためのシステム及び方法を本明細書で述べる。システム及び方法の様々な実施形態は、セル間の寄生伝導経路の排除、及び/又はセル内の流体圧力の正確な受動制御を提供する。いくつかの実施形態では、生成された気体又は他の生成物をセルから効率的に収集及び除去しながら、一定体積の電解質が各セル内に実質的に保持される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質閉じ込め電気化学セルのスタックを具備する電気化学システムであって、各個々の電気化学セルが独立して、
第1の電極と接触する電解質の第1の体積を含む第1の半電池チャンバと、
対電極と接触する第2の半電池チャンバと、
前記第1の半電池チャンバを前記第2の半電池チャンバから分離するセパレータと、
前記第1の半電池と連通する第1の電解質捕捉及び返還システムとを備え、前記第1の電解質捕捉及び返還システムが、前記第1の半電池チャンバから逃げる前記電解質の第1の体積から電解質を捕捉し、前記捕捉された電解質を、電解質返還導管を通して前記第1の半電池チャンバ及び前記第2の半電池チャンバの少なくとも一方に押し流して戻す、
電気化学システム。
【請求項2】
前記スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、前記スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項3】
前記第1の電解質捕捉及び返還システムが、捕捉された電解質を、前記セルスタックの任意の他のセルの電解質との流体連通から流体的に隔離する、請求項1又は2に記載の電気化学システム。
【請求項4】
前記第2の半電池チャンバと連通する第2の電解質捕捉及び返還システムをさらに備え、前記第2の半電池チャンバが、電解質の第2の体積を含み、第2の電解質捕捉及び返還システムが、前記第2の半電池チャンバから逃げる前記電解質の第2の体積から電解質を捕捉し、前記捕捉された電解質を前記第1の半電池チャンバ、前記第2の半電池チャンバ、又はその両方に押し流して戻すように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項5】
前記第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は第2の電解質捕捉及び返還システムのそれぞれが独立して液気分離チャンバを備え、前記液気分離チャンバが、それらが存在するそれぞれの個々の電気化学セルに固有のものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項6】
前記第1の電解質捕捉及び返還システムが第1の気体除去マニホルドと流体連通し、及び/又は前記第2の電解質捕捉及び返還システムが第2の気体除去マニホルドと流体連通し、前記第1の気体除去マニホルド及び存在する場合には前記第2の気体除去マニホルドのそれぞれが、前記スタックの前記電気化学セルのそれぞれと流体連通する、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項7】
前記第1の気体除去マニホルド及び/又は前記第2の気体除去マニホルドが、気体除去液体を含む、請求項6に記載の電気化学システム。
【請求項8】
前記気体除去液体が非導電性液体である、請求項7に記載の電気化学システム。
【請求項9】
気体及び液体電解質が前記第1の半電池チャンバから前記第1の電解質捕捉及び返還システムに逃げる第1の流体逃がし要素、及び/又は気体及び液体電解質が前記第2の半電池チャンバから、存在する場合には前記第2の電解質捕捉及び返還システムに逃げる第2の流体逃がし要素をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項10】
前記流体逃がし要素が、少なくとも0.1barの圧力降下を特徴とする直列流体逃がし要素である、請求項9に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記第1の電解質捕捉及び返還システムが、前記第1の半電池に固有の第1の液気セパレータを備える、及び/又は前記第2の電解質捕捉及び返還システムが、前記第2の半電池に固有の第2の液気セパレータを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項12】
前記第1の液気セパレータ及び/又は前記第2の液気セパレータが、セルフレーム内に含まれ、互いに流体連通して連結された少なくとも2つのチャンバを備える、請求項11に記載の電気化学システム。
【請求項13】
各セルが、前記第1の液気セパレータと前記第1の気体除去マニホルドとの間に第1の一方向弁を備え、及び/又は各セルが、前記第2の液気セパレータと前記第2の気体除去マニホルドとの間に第2の一方向弁を備え、前記第1の一方向弁は、前記第1の液気セパレータ内の気体圧力が前記第1の気体除去マニホルド内の流体圧力を超えるときに、前記第1の液気セパレータから前記第1の気体除去マニホルドへの気体の流れを可能にするように向けられ、前記第2の一方向弁は、前記第2の液気セパレータ内の気体圧力が前記第2の気体除去マニホルド内の流体圧力を超えるときに、前記第2の液気セパレータから前記第2の気体除去マニホルドへの気体の流れを可能にするように向けられる、請求項11又は12に記載の電気化学システム。
【請求項14】
前記第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は前記第2の電解質捕捉及び返還システムが、前記それぞれの電解質捕捉及び返還システムの電解質を維持しながら生成ガスの前記流れを促進するための膜を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項15】
前記第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は前記第2の電解質捕捉及び返還システムが、それぞれ捕捉された電解質をそれぞれ前記第1の半電池チャンバ又は前記第2の半電池チャンバに戻すように構成された1つ又は複数のポンプを備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項16】
前記第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は前記第2の電解質捕捉及び返還システムが、液体、ミスト、又はそれらの組合せとしてそれぞれの半電池から押し出された電解質の少なくとも80質量%を捕捉するように構成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項17】
前記電気化学システムが、電池、フロー電池、又は燃料セルである、請求項1~16のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項18】
前記電気化学システムがアルカリ電解セルであり、前記電解質がアルカリ性水溶液である、請求項1~17のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項19】
前記電気化学セルが、生成ガスとして水素ガス及び酸素ガスを生成する、請求項1~18のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項20】
前記セパレータがプロトン交換膜(PEM)又はアニオン交換膜(AEM)であり、前記電解質が脱イオン水である、請求項19に記載の電気化学システム。
【請求項21】
前記スタックの各電気化学セルが、それぞれの電気化学セルに固有であり、前記それぞれの電気化学セルの前記第1の半電池チャンバ及び前記第2の半電池チャンバと流体連通している膨張チャンバをさらに備え、前記膨張チャンバが、膨張可能及び収縮可能な容積を有し、前記半電池チャンバの一方又は両方での液体及び気体の体積膨張を可能にするように構成された膨張チャンバを備える、請求項1~20のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項22】
前記膨張チャンバが、前記膨張チャンバの容積の膨張及び/又は収縮によって前記第1の半電池チャンバと前記第2の半電池チャンバとの圧力差を低減するように構成されている、請求項21に記載の電気化学システム。
【請求項23】
前記膨張チャンバが、第1の電解質捕捉及び返還システム及び存在する場合には前記第2の電解質捕捉及び返還システムと流体連通している、請求項21又は22に記載の電気化学システム。
【請求項24】
前記スタックの各電気化学セルが、前記膨張チャンバと動作的に連通する膨張抵抗器をさらに備える、請求項21~23のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項25】
前記膨張チャンバが、前記第1の半電池チャンバからの電解質の第1の体積の分離及び前記第2の半電池チャンバからの電解質の第2の体積の分離を維持するための分割器を備える、請求項21~24のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項26】
前記電気化学セルが、前記第1の半電池、前記第2の半電池、又はそれら両方に補給液を提供するために、前記電気化学セルと流体連通する補給液源をさらに備える、請求項1~25のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項27】
前記補給液供給源と前記電気化学セルとの間に配置された一方向弁をさらに備え、前記一方向弁が、前記電気化学セルへの流体の流入を可能にするが前記電気化学セルからの流体の流出を可能にしないように配置されている、請求項26に記載の電気化学システム。
【請求項28】
前記補給液が供給マニホルドによって前記電気化学セルに提供され、前記供給マニホルドが、前記スタックの各電気化学セルと流体連通する、請求項26又は27に記載の電気化学システム。
【請求項29】
前記一方向弁が、前記供給マニホルドと前記電気化学セルとの圧力差に基づいて、前記電気化学セルへの補給液の前記流れを調整する、請求項28に記載の電気化学システム。
【請求項30】
前記補給液が脱イオン水である、請求項27~29のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項31】
前記電気化学セルのそれぞれに動作可能に接続され、捕捉された電解質を前記半電池チャンバの一方又は両方に押し流すように構成されたポンプをさらに備える、請求項1~30のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項32】
前記ポンプが空洞ポンプ又は容積式ポンプである、請求項31に記載の電気化学システム。
【請求項33】
前記スタックが、角柱状の層状構成、円形セルフレームの円筒形スタック、渦巻状のジェリーロール構成、角柱状のジェリーロール構成、若しくは任意の他の丸められたジェリーロール、又は積み重ねられた角柱状構成で配置される、請求項1~32のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項34】
前記第2の半電池チャンバが、前記第2の半電池チャンバで生成された生成ガスを含み、前記第2の半電池チャンバが、前記電気化学システムの動作中に電解質を含まない、請求項1~33のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項35】
各電気化学セルが、液体電解質が前記第2の半電池チャンバに入るのを妨げるのに十分な前記第2の半電池チャンバ内の気体圧力を維持するように構成されたガスインジェクタマニホルドを備え、ガスインジェクタマニホルドが、第2の気体を前記第2の半電池チャンバに注入する、請求項34に記載の電気化学システム。
【請求項36】
前記電気化学システムが、各電気化学セルの前記第2の半電池チャンバからの生成ガスが前記スタックの前記電気化学セルを冷却するために使用されるように構成され、前記スタックが、前記生成ガスを受け取って冷却する少なくとも1つの熱交換器を備え、前記生成ガスが、前記1つ又は複数の熱交換器を通して冷却された後、ガスインジェクタマニホルドを通して各電気化学セルに注入される、請求項34又は35に記載の電気化学システム。
【請求項37】
前記スタックが、隣り合うセル間に双極板を備える双極スタックであり、各双極板が、第1の外層と第2の外層との間に挟まれたフローチャネル層を備え、前記フローチャネル層が、1つ又は複数の冷却剤フローチャネルを画定し、前記フローチャネル層が、前記第1及び第2の外層に封止される、請求項1~36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項38】
電気化学セルのスタックであって、各個々の電気化学セルが独立して、
第1の電極を含み、第1の流体圧力と第2の流体圧力との間で変動する流体体積を含む第1の半電池チャンバと、
第2の電極を含む第2の半電池チャンバと、
前記第1の半電池チャンバを前記第2の半電池チャンバから分離するセパレータと、
前記第1の半電池チャンバへの補給液の流れを提供し、補給液入口を通る前記半電池からの液体の流出を妨げるように配置された一方向弁を含む補給液入口と、
を備える、電気化学セルのスタックと、
前記スタックの全てのセルの前記補給液入口と流体連通している補給液供給マニホルドであって、第3の流体圧力で補給液を含み、前記第3の流体圧力が、前記第1の圧力よりも大きく前記第2の圧力よりも小さい制御された圧力である、補給液供給マニホルドと、
を具備する電気化学システム。
【請求項39】
電気化学システムを動作させる方法であって、前記電気化学システムが、
電気化学セルのスタックであって、各個々の電気化学セルが独立して、
第1の電極を含み、第1の流体圧力と第2の流体圧力との間で変動する流体体積を含む第1の半電池チャンバと、
第2の電極を含む第2の半電池チャンバと、
前記第1の半電池チャンバを前記第2の半電池チャンバから分離するセパレータと、
一方向弁を備える補給液入口と、
を備える電気化学セルのスタックと、
前記スタックの全てのセルの前記補給液入口と流体連通している補給液供給マニホルドであって、第3の流体圧力で補給液を含む補給液供給マニホルドと、
を具備し、
前記方法が、
前記一方向弁によって、前記第1の半電池チャンバへの補給液の流れを提供するステップと、
前記一方向弁によって、前記補給液入口を通る前記半電池からの液体の流出を妨げるステップと、
前記第3の流体圧力を、前記第1の圧力よりも大きく前記第2の圧力よりも小さくなるように制御するステップと、
を含む方法。
【請求項40】
電気化学セルのスタックを具備する電気化学システムであって、各個々の電気化学セルが独立して、
第1の電極と接触する液体の第1の体積を含む第1の半電池チャンバと、
対電極を備える第2の半電池チャンバと、
前記第1の半電池チャンバを前記第2の半電池チャンバから分離するセパレータ膜と、
前記第1の半電池チャンバの外側にあり、第1の流体逃がし要素を介して前記第1の半電池チャンバと流体連通している第1の液気セパレータと、
前記流体逃がし要素とは別の液体返還チャネルを通して前記第1の液気セパレータから前記第1の半電池チャンバに液体を押し流すように構成された第1のポンプと、
を備える、電気化学システム。
【請求項41】
前記ポンプが、平面状の空洞ポンプである、請求項40に記載の電気化学システム。
【請求項42】
各個々のセルが、前記第1の半電池チャンバと流体連通する膨張容積をさらに備える、請求項40又は41に記載の電気化学システム。
【請求項43】
隣り合うセルが双極板を共有する電気化学セルの双極スタックであって、各個々の電気化学セルが独立して、
第1の電極を含む第1の半電池チャンバと、
前記第1の半電池を第1の滴下チャンバに連結する第1の導電性出口チャネル、前記第1の出口チャネルの出口端部と前記第1の滴下チャンバとの間の非導電性ギャップと、
第2の電極を含む第2の半電池チャンバと、
前記第2の半電池を第2の滴下チャンバに連結する第2の導電性出口チャネル、前記第2の出口チャネルの出口端部と前記第2の滴下チャンバとの間の非導電性ギャップと、
前記第1の半電池チャンバを前記第2の半電池チャンバから分離するセパレータ膜と、
双極板に連結された第1の電気リード線と、
前記第1の滴下チャンバに連結された第2の電気リード線と、
前記第2の滴下チャンバに連結された第3の電気リード線と、
を備える、電気化学セルの双極スタックと、
前記第1の電気リード線、前記第2の電気リード線、及び前記第2の電気リード線の対間の電位、電流、又は電圧を監視するように構成された電子制御装置と、
を具備する電気化学システム。
【請求項44】
少なくとも1つの電解質閉じ込め電気化学セルを具備する電気化学システムであって、前記少なくとも1つの電解質閉じ込め電気化学セルが、
前記電解質と、
前記電解質の第1の体積と接触する第1の電極、並びに第1の電解質捕捉及び返還システムを備える第1の半電池と、
前記電解質の第2の体積と接触する第2の電極、並びに第2の電解質捕捉及び返還システムを備える第2の半電池と、
前記第1の半電池を前記第2の半電池から分離するセパレータと、
を備え、
前記第1の電解質捕捉及び返還システムが、前記第1の半電池から逃げる電解質を捕捉し、前記捕捉された電解質の少なくとも一部を、任意の他のセルからの電解質と混合することなく前記第1の半電池に戻すように構成され、
前記第2の電解質捕捉及び返還システムが、前記第2の半電池から逃げる電解質を捕捉し、前記捕捉された電解質の少なくとも一部を、任意の他のセルからの電解質と混合することなく前記第2の半電池に戻すように構成される、
電気化学システム。
【請求項45】
少なくとも1つの生成ガスを生成する方法であって、
電気化学システムを準備するステップであって、前記電気化学システムが、
少なくとも1つの電気化学セルを備え、前記少なくとも1つの電気化学セルが、
電解質と、
前記電解質の第1の体積と連通する第1の電極、並びに第1の電解質捕捉及び返還システムを有する第1の半電池と、
前記電解質の第2の体積と連通する第2の電極を含む第2の半電池と、
前記第1の半電池を前記第2の半電池から分離するセパレータと、
を備える、ステップと、
第1の電解質捕捉及び返還システムによって前記第1の半電池から逃げる電解質を捕捉し、前記捕捉された電解質を前記第1の半電池に戻すステップと、
前記少なくとも1つの電気化学セルで前記電解質を反応させ、以て、少なくとも1つの生成ガスを生成するステップと、
を含む方法。
【請求項46】
前記第2の半電池が、第2の電解質捕捉及び返還システムをさらに備え、前記方法が、第2の電解質捕捉及び返還システムによって前記第2の半電池から逃げる電解質を捕捉し、前記捕捉された電解質を前記第2の半電池に戻すステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
水素ガス及び酸素ガスを生成するための方法であって、
電解槽を提供するステップであって、前記電解槽が、
複数の電気化学セルを備え、前記複数の電気化学セルがそれぞれが独立して、
水性電解質と、
前記水性電解質の第1の部分と連通する第1の電極、第1の電解質捕捉及び返還システム、並びに第1の気体捕捉システムを有する第1の半電池と、
前記水性電解質の第2の部分と連通する第2の電極、及び第2の気体捕捉システムを含む第2の半電池と、
前記第1の半電池を前記第2の半電池から分離するセパレータと、
を備える、ステップと、
第1の電解質捕捉及び返還システムによって前記第1の半電池から押し出された電解質を捕捉し、前記電解質を前記第1の半電池に戻すステップと、
前記電気化学セルそれぞれの前記水性電解質を電気分解し、以て、前記第1の気体及び前記第2の気体を生成し、各第1の気体捕捉システムが互いに流体連通し、各第2の気体捕捉システムが互いに流体連通する、ステップと、
を含む方法。
【請求項48】
前記第2の半電池が、第2の電解質捕捉及び返還システムをさらに備え、前記方法が、第2の電解質捕捉及び返還システムによって前記第2の半電池から押し出された電解質を捕捉し、前記電解質を前記第2の半電池に戻すことをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の気体が酸素であり、前記第1の気体捕捉システムが酸素ガス捕捉システムであり、前記第2の気体が水素であり、前記第2の気体捕捉システムが水素ガス捕捉システムである、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
前記セパレータがプロトン交換膜(PEM)又はアニオン交換膜(AEM)である、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記複数の電気化学セルの各個々の電気化学セルが独立して、前記第1の半電池及び前記第2の半電池と流体連通する膨張容積をさらに備える、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
個々の電気化学セルの任意の電解質捕捉及び返還システムが、前記電解槽の他の各電気化学セルの任意の電解質捕捉及び返還システムから流体的に隔離される、請求項47~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
流体ドライバの第1の側に作動流体を含み、前記第1の側とは反対の前記流体ドライバの第2の側に、押し流された流体を含むポンプチャンバと、
前記流体ドライバの前記第1の側で、押流し流体流入アパーチャを通る前記ポンプチャンバへの流れを可能にするように配置された上流の一方向弁と、
前記流体ドライバの前記第1の側で、押流し流体流入アパーチャを通る前記ポンプチャンバへの流れを可能にするように配置された下流の一方向弁と、
前記流体ドライバの前記第1の側で前記ポンプチャンバと流体連通している作動流体入口と、
前記流体ドライバの前記第1の側で前記作動流体入口及び前記ポンプチャンバにある作動流体と、
前記流体ドライバを少なくとも部分的に偏向させるのに十分な圧縮力及び/又は膨張力を前記作動流体に加えるように構成されたアクチュエータと、
を備える空洞ポンプ。
【請求項54】
前記作動流体が非圧縮性液体である、請求項53に記載の空洞ポンプ。
【請求項55】
前記作動流体が圧縮性気体である、請求項54に記載の空洞ポンプ。
【請求項56】
前記ポンプチャンバが、セルスタックの複数のセルフレームのうちの1つのセルフレームに形成される、請求項53に記載の空洞ポンプ。
【請求項57】
前記作動流体入口が、前記セルスタックを通って延びる作動流体マニホルドと流体連通している、請求項56に記載の空洞ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2019年2月1日出願の「Electrochemical System with Confined Electrolyte」という名称の米国特許仮出願第62/799,966号、及び2019年5月30日出願の「Water Electrolyzers with Thermal Management Systems」という名称の米国特許仮出願第62/854,757号の利益を主張するものであり、上記特許出願それぞれの全体を、本明細書と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、一般に電気化学システムに関連し、いくつかの実施形態では、より詳細には、気体生成物を生成するための電気化学セルのセル、スタック、及び動作に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]何十年にもわたり、分子形態での水素(H)は価値のある商品となっている。その用途には、典型的には、アンモニア製造、炭化水素の接触分解、及び他の工業用途が含まれる。
【0004】
[0004]水素はエネルギー貯蔵媒体として働くこともあり、将来のエネルギー経済において役割を果たすものと認識されている。この用途での水素の使用のために期待される方法の1つは、天然ガスグリッドへの注入によるものであり、天然ガスグリッドでは、水素ガスの形でエネルギーを貯蔵するための膨大な容量がすでに利用可能である。この用途は、パワーツーガス(P2G)又はグリーン水素と呼ばれる。P2G及びグリーン水素技術が普及するにつれて、電解槽によって消費される電力は増加する。
【0005】
[0005]既存の電解槽システムには、効率を低下させ、システムの複雑さを増し、コストの増加につながる多くの欠点がある。
【発明の概要】
【0006】
[0006]添付図面を参照して、様々な実施形態を詳細に述べる。特定の例及び実装形態への言及は、説明のためのものであり、他の実装形態の包含を排除することは意図されていない。様々な実施形態の様々な構成要素、サブシステム、及び変更形態は、他の実施形態の構成要素、サブシステム、又は変更形態と結合し直されて、さらなる実施形態を形成することができる。
【0007】
[0007]水素及び他の気体を生成するための水の電気分解は、現在、2つのタイプのシステムで行われている。ポリマー電解質膜(又はプロトン交換膜、どちらもPEMと略される)電解槽は、固体ポリマー電解質を利用して、正極と負極の間でプロトンを伝導する。そのようなシステムは、一般に、純粋な脱イオン水をセルのスタックに圧送することを含み、各セルが、固体ポリマー電解質を含む。固体ポリマー電解質は、一般に非常に薄く、従来、低抵抗でより高い電流密度の動作を可能にする。さらに、固体ポリマー電解質膜は、膜を通って一方の半電池から他方の半電池に横切る気体の量を実質的に制限する傾向があり、その結果、気体の純度が高くなり、損失が減少する。
【0008】
[0008]しかし、固体ポリマー電解質はまた、液体又はゲル電解質よりもイオン伝導に対する抵抗がより高い傾向がある。より高い抵抗は、より高い効率損失をもたらす。PEM電解槽は、白金族金属触媒及びチタン又は金担体構造などの高価な材料を必要とする傾向もある。その結果、PEM電解槽は、それらの利点にもかかわらず、生成及び動作にかなりのコストがかかることがある。
【0009】
[0009]第2のタイプであるアルカリ電解槽は、アルカリ電解質水溶液を使用して、非導電性セパレータを横切って電極間でイオンを伝導する。アルカリ電解槽は、材料のコストがより低いという利益があり、場合によっては、電解質の高い導電性により、性能の向上を示すことがある。PEM電解槽と比較して、アルカリ電解槽は気体クロスオーバの影響を受けにくい傾向がある。それにもかかわらず、アルカリ電解槽は他の問題の影響を受けやすいままである。アルカリ電解槽の最も重大な欠点の1つは、いわゆる「シャント電流」によって引き起こされる寄生損失である。
【0010】
[0010]従来技術のアルカリ電解槽では、電解反応で分解される水は、セルスタックを通してポンプで圧送される電解質水溶液中の水である。スタックを通して電解質を循環させることは、よく混合された電解質溶液に電極をさらす、溶解された気体をセルの外部に除去することができる、水酸化物(又は他の電解質)濃度を簡単に維持することができるなど、様々な利益を提供する。
【0011】
[0011]そのようなアルカリ電解質システムは、一般に、マニホルド又は他の一般的な電解質フローチャネルを使用して、電解質をスタックの全てのセルに、且つセルを通して送る。導電性電解質を含むこれらの一般的なチャネルは、電流が流れることができるセル間に導電性経路を生成する。これらの「シャント電流」は、セル内の所望の電気化学反応をサポートせず、したがって、寄生損失と呼ばれることもある一種の非効率性を表す。
【0012】
[0012]シャント電流を軽減又は排除するためのほとんどの手法は、効果が最小限でしかない、コストがかかる、又はさらなるシステム非効率性をもたらす傾向がある。それにもかかわらず、シャント電流によって課せられるコスト及び非効率性は、アルカリ電解槽を動作させるための不可避のコストとして広く受け入れられている。
【0013】
[0013]本出願人は、シャント電流を回避するために別の手法を採用し、その過程においていくつかの他の利点を把握した。流動電解質システムアーキテクチャの課題に取り組むのではなく、本出願人は、「プラントのバランス」の機能をセルスタックの各層に統合することによって、セルスタック全体を通して電解質を流す必要性をなくす電気化学セルスタックアーキテクチャを開発した。そのようなシステムでは、各セル又は半電池は、セル又は半電池内に閉じ込められ、任意の他のセルの電解質から流体的に隔離されたある量の電解質を含む。そのように閉じ込められた電解質は、スタック内の他のセルとの望ましくない導電性経路を形成することがない。その結果、寄生シャント電流がなくされる。シャント電流の回避は、従来のアルカリ電解槽で実現可能なよりも多くのセルを単一のスタック内に組み込むことができるなど、従来のアルカリ電解槽では得られない利益を提供し、以て、より高いスタック電圧を実現し、全体的な効率を向上させる。また、流れる電解質がないことにより、(一般に、本明細書では「気体クロスオーバ」又は単に「クロスオーバ」と呼ばれる)一方の半電池で生成された気体を対半電池にクロスオーバさせる傾向がある力を軽減することによって、気体純度の改善が可能になる。
【0014】
[0014]本明細書におけるアルカリ電解システムへの言及にもかかわらず、本明細書で述べるデバイス、システム、及び方法は、様々な化学物質生成電解槽、電池システム、燃料セルシステム、水、材料、又は化学物質を精製するための電気化学システム、及び他の電気化学セルシステムを含む広範な電気化学セル及びシステムに適用することができることを当業者は理解されよう。
【0015】
[0015]本明細書で述べる独自のアーキテクチャは、以下のものを含めたいくつかの構成要素及びサブシステムを備える。各セル又は半電池内に水性電解質を実質的に閉じ込めるための電解質閉じ込めシステム、閉じ込めシステムから逃げる電解質を捕捉するための電解質捕捉システム、セル又は半電池から逃げた電解質をセル又は半電池チャンバに戻すための電解質返還システム、各セル又は半電池に補給液(例えば、いくつかの実施形態では脱イオン水)を供給して、セル内の電気化学反応で消費される液体(例えば水)を、セパレータ膜の両側の圧力差を実質的に最小化しながら補充するための受動圧力駆動型の水供給システム、生成された気体を、外部気体圧縮を必要とせずに高圧で収集するための高圧気体収集システム、及びセル内の流体の容積膨張及び収縮に対応するための容積膨張システム。
【0016】
[0016]上記のサブシステムのいくつかの実施形態はまた、本明細書で「空洞」ポンプと呼ぶ独自のポンプ構成を利用することもある。また、本明細書における電気化学システムの実施形態は、システム内の最小数の点で、能動流体圧力制御の下で様々な圧力領域及び圧力勾配を受動的に、しかし自動的に制御するように構成されることもある。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態では、本明細書で述べる電気化学システムは、様々な圧力領域間の相対的な圧力差を所望の範囲内で維持しながら高い絶対圧力で動作させることができる。気体生成電気化学セルを高い絶対圧力で動作させることにより、特定の用途によって必要とされる圧力まで気体を加圧するための追加の圧縮機を必要とせずに(又はその必要性を減らして)、気体を高圧で生成及び送達することができる。
【0018】
[0018]様々な実施形態において、高圧で(すなわち、大気圧よりも高い絶対圧力で)動作される電気化学システムは、1つ又は複数の圧力容器内に、又は大気圧に対して所望の程度の圧力を保持するように構成されたプレートアンドフレームセルスタックを使用することによって、セルスタック及び/又は他の構造を含むことがある。いくつかの実施形態では、高い絶対圧力での動作は、1つ又は複数のセル領域を不活性又は最小反応性気体(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、又はこれら若しくは他の気体の様々な組合せ)で予圧することによって達成することができる。他の実施形態では、高い動作圧力は、補給液(例えば水)を所望の絶対圧力でセルスタックに圧送することによって最初に確立及び/又は維持されることがある。例えば、いくつかの実施形態では、電気化学システムは、約10bar、20bar、30bar、40bar、50bar、60bar、70bar、80bar、90bar、100bar、10atm、20atm、30atm、40atm、50atm、60atm、70atm、80atm、90atm、100atm、又はそれよりも大きい絶対圧力に予圧されて動作されることがある。
【0019】
[0019]一態様では、電解質閉じ込め電気化学セルのスタックであって、各個々の電気化学セルが独立して、a)第1の電極と接触する電解質の第1の体積を含む第1の半電池チャンバと、b)対電極と接触する電解質の第2の体積を含む第2の半電池チャンバと、c)第1の半電池チャンバを第2の半電池チャンバから分離するセパレータと、d)第1の半電池と連通する第1の電解質捕捉及び返還システムとを備え、第1の電解質捕捉及び返還システムが、第1の半電池チャンバから逃げる電解質の第1の体積から、捕捉された電解質を受け取り、捕捉された電解質を、電解質返還導管を通して第1の半電池チャンバ及び第2の半電池チャンバの少なくとも一方に押し流して戻すように構成された、電解質閉じ込め電気化学セルのスタックが提供される。いくつかの実施形態では、個々の電気化学セルの捕捉及び返還システムは、スタックの他の電気化学セルの捕捉及び返還システムから流体的に隔離されることがある。いくつかの実施形態では、スタックは、隣り合うセルを連結する双極板を備える双極スタックを備えることがある。
【0020】
[0020]電気化学システムは、第2の半電池チャンバと連通する第2の電解質捕捉及び返還システムをさらに備えることがあり、第2の電解質捕捉及び返還システムは、第2の半電池チャンバから逃げる電解質の第2の体積から電解質を捕捉し、捕捉された電解質を第1の半電池チャンバ、第2の半電池チャンバ、又はその両方に押し流して戻すように構成されている。
【0021】
[0021]第1及び第2の電解質捕捉及び返還システムは、液気分離チャンバを備えることがある。液気分離チャンバは、液体電解質の捕捉を可能にするために重力を使用すると共に、生成ガスを含む気体の流れを可能にするヘッドスペースを有することがある。第1及び第2の電解質捕捉及び返還システムは、気体除去マニホルドと流体連通することがあり、気体除去マニホルドは、スタックの各電気化学セルと流体連通する。第1及び第2の電解質捕捉及び返還システムは、気体除去液体を含むことがある。気体除去液体は、所定の流体圧力範囲内に維持されることがある。
【0022】
[0022]電気化学システムは、気体及び液体電解質が第1の半電池チャンバ又は第2の半電池チャンバからそれぞれ第1の電解質捕捉及び返還システム又は第2の電解質捕捉及び返還システムに逃げる流体逃がし要素をさらに備えることがある。流体逃がし要素は、流体の流れへの抵抗を与えるように構成されることがある。流体逃がし要素は、流体の流れに非線形の抵抗を与えるように構成されることがあり、流体は気体と液体との両方を含む。流体逃がし要素は、気体のボーラスと液体のボーラスとが直列にのみ流れることができる出口チャネルを備えることがある。流体逃がし要素は、本明細書で述べる実施形態によれば、1つ若しくは複数の出口チャネル及び/又は1つ若しくは複数の膜を備えることができる。いくつかの実施形態では、流体逃がし要素は、本明細書で述べる実施形態によれば、1つ若しくは複数の出口チャネル及び/又は1つ若しくは複数の膜からなることがある。
【0023】
[0023]電解質捕捉及び返還システムは、電解質捕捉容積を備えることがある。電解質捕捉及び返還システムは、半電池と電解質捕捉容積との間に配置された膜を備えることがある。電解質捕捉及び返還システムは、例えば、生成ガス出口と電解質捕捉容積との間に配置された電解質捕捉及び返還システムの電解質を維持しながら、生成ガスの流れを促進するための膜を備えることがある。電解質捕捉及び返還システムは、電解質を第1の半電池又は第2の半電池に戻すように構成された1つ又は複数のポンプを備えることがある。電解質捕捉及び返還システムは、例えば、電気化学セルの2つの半電池間で電解質の混合を可能にするように構成される。
【0024】
[0024]電気化学システムは、電池、フロー電池、又は燃料セルでもよい。電気化学システムは、アルカリ電解セルでもよい。電気化学セルは、生成ガスとして水素ガス及び酸素ガスを生成する。電解質はアルカリ性水溶液でもよい。電解質は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、又はそれらの任意の組合せを含むことがある。
【0025】
[0025]電気化学セルは、第1の半電池及び第2の半電池と流体連通する膨張チャンバをさらに備えることがあり、膨張チャンバは、電解質中の気泡が混合流体の体積を増加させるときに半電池チャンバの一方又は両方の流体の体積膨張を可能にするように構成される。膨張チャンバは、第1の半電池と第2の半電池との間の圧力勾配を低減するように構成される。膨張チャンバは、第1の半電池と第2の半電池とで実質的に等しい圧力、例えば、2atm未満、1atm未満、0.5atm未満、又は任意選択で0.25atm未満の圧力差を維持することができる。膨張チャンバは、電解質捕捉及び返還システムと流体連通することがある。
【0026】
[0026]電気化学セルは、膨張チャンバと動作的に連通する膨張抵抗器をさらに備えることがある。膨張抵抗器は、ばね、ベローズ、ダイヤフラム、バルーン、膨張チャンバの物理的特性、又はそれらの任意の組合せでもよい。膨張チャンバは、第1の半電池及び第2の半電池からの電解質の分離を維持するための分割器を備えることがある。そのような分割器は、2つの半電池内の流体圧力の平衡を可能にするように構成されることもある。膨張チャンバは、膨張に対する抵抗を与えて、膨張チャンバ容積が閾値容積を超えるときに流体圧力の増加を引き起こすことがある。膨張チャンバは、膨張に対する抵抗を与えて、膨張チャンバ容積の増加と共に流体圧力を線形に、幾何学的に、指数関数的に、段階的に、又は他の形で増加させることがある。
【0027】
[0027]電気化学セルは、電気化学セルと流体連通する補給液供給源をさらに備えて、補給液を第1の半電池、第2の半電池、又はその両方に提供する。電気化学システムは、補給液供給源と電気化学セルとの間に配置された一方向弁をさらに備えることがある。補給液供給源は、スタックの各電気化学セルと流体連通している供給マニホルドによって電気化学セルに提供されることがある。一方向弁は、供給マニホルドと電気化学セルとの圧力差に基づいて、電気化学セルへの補給液の流れを調整することができる。補給液は脱イオン水でもよい。
【0028】
[0028]電気化学システムは、電気化学セルのそれぞれに動作可能に接続され、捕捉された電解質を電解質捕捉容積から半電池チャンバの一方又は両方に押し流すように構成されたポンプ、例えば空洞ポンプ又は容積式ポンプをさらに備えることがある。ポンプは、電解質返還チャネルを通して液体と気体との両方を押し流すことが可能であり得る。ポンプは、作動流体によって取り囲まれた導管の圧縮可能な区域を備えることがある。スタックの各電気化学セルは、電気化学セルの外部のハウジング容積内に少なくとも1つの圧縮可能な導管区域を備えることがある。スタックの各電気化学セルの各半電池チャンバは、ハウジング容積内に圧縮可能な導管区域を備えることがある。作動流体は、全ての電気化学セルの圧縮可能な導管区域を取り囲む連続的なハウジング容積に含まれることがある。
【0029】
[0029]スタックは、角柱状の層状構成(例えばプレートアンドフレーム構成)、円形円筒形構成、渦巻状のジェリーロール構成、角柱状のジェリーロール構成、又は任意の他の丸められたジェリーロール構成で配置されることがある。
【0030】
[0030]一態様では、少なくとも1つの電解質閉じ込め電気化学セルを具備する電気化学システムであって、少なくとも1つの電解質閉じ込め電気化学セルが、a)電解質と、b)電解質の第1の部分と接触する第1の電極、並びに第1の電解質捕捉及び返還システムを備える第1の半電池と、c)電解質の第2の部分と接触する第2の電極、並びに第2の電解質捕捉及び返還システムを備える第2の半電池と、d)第1の半電池を第2の半電池から分離するセパレータと、を備え、第1の電解質捕捉及び返還システムが、第1の半電池から押し出された電解質を捕捉し、押し出された電解質の少なくとも一部を、任意の他のセルからの電解質と混合することなく第1の半電池に戻すように構成され、第2の電解質捕捉及び返還システムが、第2の半電池から押し出された電解質を捕捉し、押し出された電解質の少なくとも一部を、任意の他のセルからの電解質と混合することなく第2の半電池に戻すように構成される、電気化学システムが提供される。
【0031】
[0031]第1の電解質捕捉及び返還システムは、第2の半電池から流体的に隔離されることがあり、第2の電解質捕捉及び返還システムは、第1の半電池から流体的に隔離されることがある。
【0032】
[0032]一態様では、少なくとも1つの生成ガスを生成する方法であって、i)電気化学システムを準備するステップであって、電気化学システムが、少なくとも1つの電気化学セルを備え、少なくとも1つの電気化学セルが、a)電解質と、b)電解質の第1の部分と連通する第1の電極、並びに第1の電解質捕捉及び返還システムを有する第1の半電池と、c)電解質の第2の部分と連通する第2の電極、並びに第2の電解質捕捉及び返還システムを含む第2の半電池と、d)第1の半電池を第2の半電池から分離するセパレータと、を備える、ステップと、ii)第1の電解質捕捉及び返還システムによって第1の半電池から押し出された電解質の少なくとも一部を捕捉し、捕捉された電解質を第1の半電池に戻すステップと、iii)第2の電解質捕捉及び返還システムによって第2の半電池から押し出された電解質の少なくとも一部を捕捉し、捕捉された電解質を第2の半電池に戻すステップと、iv)少なくとも1つの電気化学セルで電解質を反応させ、以て、少なくとも1つの生成ガスを生成するステップと、を含む方法が提供される。
【0033】
[0033]一態様では、水素ガス及び酸素ガスを生成するための方法であって、i)電解槽を準備するステップであって、電解槽が、複数の電気化学セルを備え、複数の電気化学セルがそれぞれが独立して、a)水性電解質と、b)水性電解質の第1の部分と連通する第1の電極、第1の電解質捕捉及び返還システム、並びに酸素ガス捕捉システムを有する第1の半電池と、c)水性電解質の第2の部分と連通する第2の電極、第2の電解質捕捉及び返還システム、及び水素ガス捕捉システムを含む第2の半電池と、d)第1の半電池を第2の半電池から分離するセパレータと、を備える、ステップと、ii)第1の電解質捕捉及び返還システムによって第1の半電池から押し出された電解質の少なくとも一部を捕捉し、捕捉された電解質を第1の半電池に戻すステップと、iii)第2の電解質捕捉及び返還システムによって第2の半電池から押し出された電解質の少なくとも一部を捕捉し、捕捉された電解質を第2の半電池に戻すステップと、iv)電気化学セルそれぞれの水性電解質を電気分解し、以て、水素ガス及び酸素ガスを生成し、各酸素ガス捕捉システムが互いに流体連通し、各水素ガス捕捉システムが互いに流体連通する、ステップと、を含む方法が提供される。いくつかの態様では、捕捉及び返還システムは、液体形態及び/又はミスト形態でいずれかの半電池から押し出された電解質の80%、90%、95%、99%、99.9%、99.99%、又は99%~100%(質量%又は容積%)を捕捉し、少なくとも、捕捉された電解質を、それが捕捉されたセル又は半電池に戻すように構成されることがある。
【0034】
[0034]第1の電解質捕捉及び返還システムは、各電気化学セルの第2の電解質捕捉及び返還システムと流体連通することがある。第1の電解質捕捉及び返還システム並びに第2の電解質捕捉及び返還システムは、個々の電気化学セルに関連付けられ、電解槽内の他の電気化学セルの電解質捕捉及び返還システムから流体的に隔離されることがある。
【0035】
[0035]電気化学システムとして述べる様々な実施形態及び特徴が、本明細書で述べる様々な方法、電解槽、及び他のシステムと統合されることがあることを当業者は理解されよう。
【0036】
[0036]一態様では、a)作動流体を含むハウジングチャンバと、b)複数の導管であって、それぞれハウジングの一部を通って延び、各導管が、ハウジング内に位置し、作動流体によって取り囲まれた圧縮可能な領域を備え、各導管が、圧縮可能な領域の上流に配置された上流の一方向弁と、圧縮可能な領域の下流に配置された下流の一方向弁とを有する、複数の導管と、c)ハウジングチャンバと連通するアクチュエータと、を備える空洞ポンプであって、アクチュエータが、導管の圧縮可能な領域を少なくとも部分的に圧縮するのに十分な圧縮及び/又は膨張力を作動流体に加えるように構成されている、空洞ポンプが提供される。
【0037】
[0037]作動流体は、非圧縮性液体又は圧縮性気体でもよい。上流の一方向弁のいくつか又は全て、及び下流の一方向弁のいくつか又は全ては、ハウジングチャンバの外部に位置することがある。上流の一方向弁のいくつか又は全て、及び下流の一方向弁のいくつか又は全ては、ハウジングチャンバの内部に位置することもある。
【0038】
[0038]導管の圧縮性領域のいくつか又は全ては、圧縮性配管の区域を備えることがある。本明細書で述べる電気化学システム及び方法は、本明細書で述べる空洞ポンプの導管として、電解質返還導管のいくつか又は全てを使用することができる。空洞ポンプハウジングは、電気化学スタックハウジングの一部分を備えることがある。
【0039】
[0039]ハウジングチャンバは、積み重ねられたプレートアンドフレームセルスタック構造の層に複数のアパーチャを含むことがある。空洞ポンプは、ハウジングチャンバ内の作動流体が圧縮性導管区域内の流体を押し流すことを可能にするように構成されたハウジング内に又はハウジングに隣り合って配置された圧縮性導管区域をさらに備えることがある。
【0040】
[0040]以下の詳細な説明において、添付図面を参照して例示的実施形態を述べる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】セル固有の電解質捕捉及び返還システムを有する電気化学システムの概略図である。
図2】セル固有の電解質捕捉及び返還並びに容積膨張システムを有する電気化学システムの概略図である。
図3A】空洞ポンプの概略概念図である。
図3B】セルフレーム構造など平面状の基板に実装された例示的な空洞ポンプの概略分解斜視図である。
図3C図3Bの例示的な空洞ポンプの断面図である。
図4】スタックを利用する電解槽システムの概略図である。
図5A】電解質閉じ込め特徴部を備えた電解槽の特定の動作段階中の流体圧力、流量、及び容積の関係を示す概略図である。
図5B】電解質閉じ込め特徴部を備えた電解槽の特定の動作段階中の流体圧力、流量、及び容積の関係を示す概略図である。
図5C】電解質閉じ込め特徴部を備えた電解槽の特定の動作段階中の流体圧力、流量、及び容積の関係を示す概略図である。
図5D】電解質閉じ込め特徴部を備えた電解槽の特定の動作段階中の流体圧力、流量、及び容積の関係を示す概略図である。
図6】補給液がセルから出ることなくセルに受動的に送達されることがある電気化学システムの概略図である。
図7】補給液が正極と負極との間の電極間空間に受動的に送達される電気化学システムの概略図である。
図8】セル内の電気化学反応によって生成された気体を含む、流れる気体によって冷却されるように構成された電気化学システムの概略図である。
図9】電解質閉じ込め特徴部を備える電気化学システムであって、一方の半電池が電解質及び/又は補給液で満たされ、対半電池が、対半電池で生成された気体及び対半電池チャンバを通って押し流される気体を含めた気体のみを含む、電気化学システムの概略図である。
図10】電解質閉じ込め特徴部を利用する気体冷却式PEM(プロトン交換膜)又はAEM(アニオン交換膜)電気化学セルの概略図である。
図11】プレートアンドフレームセルスタックの電気化学セルの例示的実施形態の構成要素の分解図である。
図12A】双極プレートアンドフレームセルスタックに含まれるように構成された平面状のセルフレームの第1の側における電解質閉じ込め特徴部の例示的な配置を示す平面図である。
図12B図12の平面状セルフレームの第2の側における電解質閉じ込め特徴部の例示的な配置を示す平面図である。
図13図12Aに示される線X-Xを通して取られた、セルスタックの2つの隣り合うセルのセルフレームに統合された膨張容積の断面図である。
図14A】プロセス水構成要素とは独立した熱管理構成要素を有する電解槽システムの例示的実施形態の概略図である。
図14B】プロセス水構成要素とは独立した熱管理構成要素を有する電解槽システムの例示的実施形態の概略図である。
図15】特定の実施形態による、冷却剤を循環させることができる冷却剤導管を有する例示的な多層冷却双極板の概略分解図である。
図16】特定の実施形態による、例示的な低流量PEM電解槽の電気化学セルのいくつかの特徴部の概略図である。
図17】特定の実施形態による、例示的な低流量AEM電解槽の電気化学セルのいくつかの特徴部の概略図である。
図18】特定の実施形態による、LFIE電解槽のいくつかの特徴部の概略図である。
図19】電気化学システムの動作を制御するために本明細書で述べる方法及びプロセスを自動的に実行するために使用することができるコンピュータ又は電子制御装置の構成要素を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[0063]これらのサブシステムそれぞれの原理、実施形態、及び例を、図面を参照して以下に詳細に述べる。図面は、電解質閉じ込め特徴部及び構成要素を示す電気化学システムの様々な例を概略的に示す。図面は、理解及び説明をしやすくするように意図された方法で構成要素を示すという意味で概略的な図示を含むが、そのようなシステムの多くの実際の実装形態は、典型的には、様々な構成要素の非常に異なる相対的な向き、縮尺、及び位置を利用する。
【0043】
[0064]例えば、例示される様々な構成要素の相対的なサイズ及び向きは、そのようなシステムの実際の物理的実装形態におけるそのような構成要素の実際のサイズ又は向きと必ずしも相関しない。具体例として、図1は、セル電極102、104、セパレータ106、電解質捕捉容積110、112、電解質返還チャネル114、116、及び気体除去マニホルド122、124を含む、セル100の全ての構成要素を共通の断面で示す。任意の電解質捕捉容積を、本明細書では交換可能に電解質収集容積と呼ぶことができる。いくつかの実際の実装形態では、セルのセパレータ106及び電極102、104は、それらの2次元表面が図示の断面に平行な平面にあるように、図示の向きに対して直角に向きを定められることがある。多くの可能な配置のなかでもとりわけ図12及び図13を参照して本明細書で述べる例示的な配置を含め、多くの異なる向き及び配置が可能である。
【0044】
[0065]図1のシステムに基づくセルスタックにおいて、セルスタックの各セルは、半電池チャンバ142、132、セパレータ106、電極102、104、流体逃がし要素160、162、164、電解質収集容積110、112、気体収集容積186、188、電解質返還導管114、116を含むことがある。供給マニホルド178及び気体除去マニホルド122、124は、例えば図4を参照して本明細書で述べるように、スタックの全ての他のセル及びさらなる処理機器に連結することができる。いくつかの実施形態では、電解質返還導管114、116での流体の流れは、セルスタックのいくつかの(又は全ての)セルの返還導管に連結された単一のポンプアクチュエータ(例えば、空洞ポンプアクチュエータ)によって押し流されることがある。
【0045】
使用する用語の定義
[0066]本明細書で使用するとき、「セル」又は「全電池」という用語は、イオン伝導経路(例えば、液体電解質、塩橋、固体ポリマー電解質、又はイオン伝導のための他の経路)によってアノード電極がカソード電極に接続される電気化学ユニットを表す。セルは、電解セル(電極間に印加される電圧及び/又は電流によって駆動される)又はガルバニックセル(自発的な反応が電極間に電圧差を生成し、この電圧差により、外部電気回路を通して電流を駆動させることができる)でよい。
【0046】
[0067]本明細書で使用するとき、「半電池」という用語は、セルの単一の電極(カソード若しくはアノード)又はその1つの電極に関連する構造を表すことがある。全電池は、電気化学的に互いに相互作用する2つの電極を必要とするので、特定された半電池と相互作用する電極は、最初に特定された半電池に対する「対電極」又は「対半電池」と呼ばれることがある。半電池の電圧は、「基準電極」に対して測定することができ、以て「半電池電圧」を提供する。全電池電圧は、全電池の両方の半電池電極の半電池電圧の(典型的には絶対値の)和である。
【0047】
[0068]一般に、電気化学セルは、第1の半電池及び第2の半電池を備え、第1の半電池は第1の電極を備え、第2の半電池は第2の電極を備え、第2の電極は、第1の電極とは異なる電位である。一般に、一方の半電池において、他方の半電池と比較して逆極性の反応が生じる。例えば、電気化学セルの動作中、酸化(又は還元)が第1の半電池で生じ、還元(又は酸化)が第2の半電池で生じる。例えば、電気化学セルの動作中、第1及び第2の電極が電気化学セルの動作中に互いに直接的に又は間接的に電気連通しているとき、第1の半電池の第1の電極に電流が流入し、第2の半電池の第2の電極から電流が流出し、又はその逆も同様である。
【0048】
[0069]「半電池チャンバ」は、半電池又はその電極を備えるチャンバ若しくは容積及び/又は構造である。例えば、第1の半電池チャンバは、第1の電極(又は少なくともその一部、例えば第1の電極の表面)、任意選択で電解質、任意選択で反応物種(反応物気体又は液体など)、及び任意選択で生成種(生成された気体)、並びに任意選択で他の構造、例えば柔軟性の導電性気体出口層、フローチャネル、又は他の構造を含むことがある。例えば、半電池チャンバの壁又は容積境界表面は、電極、双極板、セルフレーム、又は他の構造の表面でもよい。半電池チャンバの境界は、物理的な物体の物理的な表面など、物理的な境界に完全に又は部分的に対応することがある。半電池チャンバの境界は、半電池チャンバと別のチャンバ、容積、構造、又は導管との間の空間、平面、仮想面、又は位置など、非物理的な境界に完全に又は部分的に対応することもある。必須ではないが、典型的には、全電池の2つの半電池チャンバ(例えばアノード及びカソードに対応する)は、セパレータによって分離される。典型的には、任意の2つの半電池チャンバは、互いに対して相互排他的な容積(重複しない容積)を有する。
【0049】
[0070]本明細書で使用するとき、「流体」という用語は、流動可能な状態の物質を表す。流体は、液体のみ、気体のみ、又は気体と液体の混合物を含むことがある。いくつかの場合には、流体は、高い粘性の液体又は「ゲル」物質を含むこともある。本明細書で使用するとき、「気体」は、記載するシステムで得られる圧力及び温度条件下において気相での任意の物質を表す。例えば、「気体」は、酸素ガス(O)、水素ガス(H)、塩素ガス(Cl)、水蒸気、又は他の気体若しくは気体混合物を含むことがある。
【0050】
[0071]本明細書で使用するとき、互いに「流体連通」していると表される2つ以上の領域は、それらの領域間を流体が移動することができる経路を示す。そのような経路は、移流、対流、浮力、拡散、流れ、若しくは他の流体輸送機構などによって流体(液体及び/又は気体)が輸送する又は輸送されることがあるチャネル、チューブ、膜、導管、容積、パイプ、ホース、又は他の構造を含むことがある。特に明記しない限り、「流体連通」という用語は、弁又は他の構造によって流れが選択的に又は断続的に遮断されることがある流体経路を含むこともある。流体連通している領域は、直接的な流体連通でも間接的な流体連通でもよい。間接的な流体連通をしている2つの領域は、流体が2つの領域の間を流れることができる中間経路又は構造を含むことがある。また、本明細書では、流体連通している領域を表すために、「流体的に接続された」という用語も使用される。
【0051】
[0072]本明細書で使用するとき、「電解質」という用語は、一般に、電気化学セルの一方又は両方の半電池に存在する任意の液体又は液体のような物質(例えば流動性ゲル)を表すことがある。したがって、「電解質」は、アルカリ電解質、酸性電解質、ブライン若しくは海水など反応物を含む溶液、脱イオン水、又は他の液体若しくは溶液を含むことがある。例示的なアルカリ電解質は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、又はそれらの組合せなどのアルカリ性水溶液を含むことがある。例示的な酸性電解質は、塩酸や硫酸などの酸性水溶液を含むことがある。いくつかの電解質は、未精製水、精製水、脱イオン水、又は高度に精製された水及び/又は高度に脱イオン化された水などの中性pH水溶液を含むことがある。電解質は、イオン液体や溶融塩などを含むこともある。
【0052】
[0073]特定の電気化学システムのための電解質の選択は、他のシステム構成要素に基づくことがある。例えば、アイオノマー層(「固体電解質」層としても知られる)を備えるセパレータ膜が選択される場合、電解質は、実質的に精製水及び/又は脱イオン水のみを含むことがある(しかし、いくつかの実施形態では、AEMなどいくつかのアイオノマー層膜を、アルカリ性又は酸性電解質と共に使用することもできる)。セパレータ膜が多孔質ポリマー、セラミック、又は他の膜を含む場合、電解質は、典型的にはアルカリ性又は酸性溶液を含む。本明細書で述べる様々な実施形態において、「電解質」という用語は、特に明記しない限り、これらの構成の全てを包含するために包括的に使用される。
【0053】
[0074]本明細書で使用するとき、「補給液」という用語は、本明細書で述べるような電気化学セル内での電気化学反応で消費される任意の液体を含むことがある。用語が示唆するように、多くの実施形態では、補給液は、電気化学セルに供給されて、そのセルでの電気化学反応で消費された液体を埋め合わせる(すなわち補充する)。多くの場合、補給液は、高純度の脱イオン水又はより純度の低い水などの水を含むことがある。いくつかの実施形態では、補給液は、電解質溶液を含むことがあり、これは、セルの他の部分で使用されるのと同じ電解質、又は異なる組成を有する電解質溶液でよい。さらなる実施形態では、補給液は、液体の他の混合物(水性又は非水性)を含むことがあり、その少なくともいくつかの成分は、電気化学セルで消費されると予想される。
【0054】
[0075]本明細書で使用するとき、「脱イオン水」という用語は、少なくとも固体微粒子、溶解された又は(気泡として)同伴される気体、及び溶解されたイオンを除去するように処理された水を表すことがある。脱イオン水は、様々な程度に脱イオン化されることがあり、導電率(又は抵抗率)に関して測定又は報告することができる。完全に脱イオン化された水は、典型的には、18メガオームcmを超える電気抵抗、又は約0.05555マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有するものとして報告される。「超純」水とは、典型的には、少なくとも1メガオームcmの電気抵抗(又は1マイクロジーメンス/cm未満の導電率)を有する水を表す。温度が導電率(及び抵抗)に強い影響を与えるので、これらの測定は典型的には25℃で行われる。本明細書におけるシステム及び方法の任意の態様での使用に関して述べる脱イオン水は、(25℃で)約20マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有することがある。いくつかの実施形態又は用途では、約1マイクロジーメンス/cm未満又は約0.06マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有する脱イオン水を使用することができる。いくつかの実施形態又は用途は、約0.055マイクロジーメンス/cmの導電率を有する理論的に「純粋な」水を使用することがある。
【0055】
[0076]本明細書で使用するとき、「セパレータ」又は「セパレータ膜」という用語は、共通の電気化学セルの正極と負極との間に配置され、正極と負極との間のイオン伝導を可能にしながら正極と負極との非導電性分離を形成する機能を行う任意の構造を表すことがある。セパレータは、実質的にゼロのイオン抵抗、若しくはイオン拡散に対する最小の抵抗を生成する開放構造のスペーサ、又はイオン拡散に対するより大きな抵抗を生成する構造、例えば、多孔性、微孔性、若しくはナノ多孔性の膜(例えばポリマー膜)、ゲル、ビーズ、固体の電気的に絶縁性でありイオン伝導性のシート(例えば、アイオノマー、「固体電解質」膜、プロトン交換膜、又はアニオン交換膜)、セラミック、又は本明細書でのさらなる詳細及び例において述べる他の構造又は材料などを含むことがある。いくつかの実施形態では、「PEMセパレータ」という用語は、プロトン交換膜(PEM)アイオノマー層を単独で、又は他の層と組み合わせて備えるセパレータを表す。いくつかの実施形態では、「AEMセパレータ」という用語は、アニオン交換膜(AEM)アイオノマー層を単独で、又は他の層と組み合わせて備えるセパレータを表す。
【0056】
[0077]本明細書で使用するとき、「液気セパレータ」という用語は、液気混合物を別々の液体流と気体流とに分解することが可能な1つ又は複数の構造を表すことがある。様々な例示的な液気セパレータ構造を、本明細書で以下に図示して述べる。
【0057】
[0078]本明細書で使用するとき、「受動制御」という用語は、電子制御装置、センサ、電子制御式アクチュエータ、電気モータ、又はポンプ(若しくは他の制御機構)に依拠せず、エネルギーを消費しない制御方法及び機構を表す。「受動」制御方法及びデバイスは、典型的には、減衰特性、変形特性、弾性特性など、特定の特性を備えた材料又はデバイスを備える自己管理フィードバックループの使用を伴う。受動制御は、本明細書で定義する「能動」制御法とは対照的であり、「能動」制御法は、典型的には、システムの状態若しくは状態変化(温度、圧力、pHなど)を監視するセンサ、及び/又は電子制御装置の制御下でシステム条件を維持する電動アクチュエータを含む。そのような能動制御法は、エネルギーを消費し、したがって、システム全体のエネルギー消費を考慮すると寄生的な性質である。
【0058】
[0079]「捕捉及び返還システム」は、半電池チャンバから出る電解質を収集し、それを半電池チャンバ及び/又は同じセルの対電極半電池チャンバに戻すように構成されたシステム(導管、チャンバ、デバイス、膜、要素などを含む)を表す。一実施形態では、例えば、捕捉及び返還システムは、生成ガスと半電池から逃げた電解質との分離を容易にするために、電解質収集容積(110、112)及び気体分離容積(182、184)を備える。捕捉及び返還システムは、捕捉された電解質を、その電解質が逃げたセルの一方又は両方の半電池チャンバに戻すように配置及び構成された電解質返還導管と、スタックの任意の他のセルからの電解質と混合することなく、捕捉された電解質を電解質返還導管を通して押し流すように配置及び構成された隔離されたポンプ又はポンプ構成要素とをさらに備えることもある。様々な他の有用な構成要素が、捕捉及び返還システムに含まれる、又は捕捉及び返還システムと組み合わせて使用されることがあり、本明細書で述べる。
【0059】
[0080]本明細書では、セル領域、構造、又は容積は、同じセル又は異なるセルの1つ又は複数の他の領域、構造、又は容積から「流体的に隔離されている」と表されることがある。そのような用法では、「流体的に隔離されている」という用語は、構造間の直接の流体(気体及び/又は液体)の流れを妨げる1つ又は複数の恒久的な不透過性の流体障壁によって分離された領域、構造、又は容積を表す。同様に、2つ以上の領域、構造、又は容積は、互いに「電気的に絶縁されている」と表されることがあり、これは、1つ又は複数の非導電性(又は電気絶縁性)材料又は構造が、一方から他方に電流が流れるのを妨げることを示す。いくつかの実施形態では、第1のセル又は半電池から収集された気体が他のセル又は半電池から収集された気体と合流される場合でさえ、且つ補給水が共通の供給源からセル又は半電池に送達される場合でさえ、第1のセル又は半電池の捕捉及び返還システムは、他のセルの捕捉及び返還システムから流体的に隔離及び/又は電気的に絶縁されている。いくつかの実施形態では、2つ以上のセル又は半電池の電解質返還システムは、共通の圧送又は作動流体が両方のセル又は半電池の空洞ポンプを駆動する場合でさえ、互いに流体的に隔離されることがある。システムは、セル間の電気連絡(例えば双極接続)又はスタック間の電気連絡(例えばスタック間の直列又は並列電気接続)を可能にしながら、他のセルから流体的に隔離されることもある。2つの領域が互いに流体的に隔離されているとき、それらは互いに流体連通していない。
【0060】
[0081]「接触」は、例えば、物理的連通、化学的連通、電気化学的連通、及び/又はイオン連通などを含む、電解質と電極との任意の動作的連通を表す。例えば、接触は、電解質が化学種、触媒、又は電極の構造と化学的又は電気化学的に反応することを可能にするような電極と電解質とのイオン連通を表すことがある。電解質は、複数の電極と接触していることがある。電極は、電解質に部分的に若しくは完全に浸漬されることがあり、又は電解質中に存在するイオンは、セパレータ(例えば、湿潤若しくはゲル化セパレータ、若しくは他の湿潤/ウィッキング構造、固体アイオノマー、又は他のイオン伝導構造)を通して伝導されることがある。電極と電解質との接触は、酸化物層又は固体電解質界面層など、界面層又は界面材料などの1つ又は複数の中間構造を含むことがある。
【0061】
[0082]本明細書で使用される「スタック」又は「セルスタック」は、電気的、物理的、及び/又は論理的構造における複数の電気化学セルの任意のグループ分けを表す。スタックは、任意の物理的な幾何形状又は構成を表すことがある。例えば、スタックは、直列、並列、又はより複雑な構成で接続された電気化学セルを表すことがある。スタック内の個々の電気化学セルは、角柱状の層状構成、同心円筒状構成、巻かれた「ジェリーロール」構成(渦巻状、角柱状、又は他の形でのロール)などで構成されることがある。それにもかかわらず、電解質を各セルに閉じ込める利益は、直列接続された双極セルスタック構成で最も有益になる。セルスタックは、フィルタプレス構成で構成することができ、この構成は「プレートアンドフレーム」構成とも呼ばれ、互いに積層された複数の層で構成され、セルスタック内の個々のセルそれぞれに流体を送達する及びそこから流体を除去するためのマニホルドを備える。
【0062】
[0083]電解セルのグループは、双極構成でセルスタックに配置されることがあり、隣り合う電気化学セルが、液体と気体との両方に対して不透過性である導電性双極板を介して電気的に直列に連結される。各双極板は、一方の側に、第1のセルの正の半電池に関連付けられた正電荷を有し、反対側の面に、直に隣り合うセルの負の半電池に関連付けられた負の電荷を有する。
【0063】
[0084]本明細書で使用するとき、「マニホルド」という用語は、一般に、セルスタックを通って延在し、セルスタックの全ての個々のセルに共通である流体搬送チャネルを表す。セルスタックの全てのセルに「共通」なものとして述べるマニホルド又は特徴部は、各セルに流体を送達する又は各セルから流体を除去することができる。共通のマニホルドは、流体的に並列の配置で各セルと流体連通する。本明細書で述べる電解質閉じ込めシステムの1つの主な利益は、導電性流体を含む共通のマニホルドが概してなくされ、以て寄生シャント電流のための経路をなくすことである。
【0064】
[0085]本明細書で使用するとき、いくつかの特徴部若しくは構造は、特定のセル若しくは半電池に「固有」であると述べられる、又はスタックの各セル(若しくは半電池)は、各セルに「固有」の特徴部を有すると表されることがある。セル又は半電池に「固有」のものとして特定される構造又は特徴部は、任意の他のセル又は半電池からの任意の構造、特徴部、気体、又は液体と相互作用することなく、そのそれぞれのセル又は半電池の他の構造又は特徴部のみと相互作用することができる構造又は特徴部である。
【0065】
[0086]本明細書で使用するとき、水の「消費」、又は「消費される」水は、水素ガスと酸素ガスへの水の電気化学的、電解変換又は分解を表す。例えば、プロセス水などの水がセルで消費される速度は、セルで水が水素ガスと酸素ガスとに電気化学的に変換又は分解される速度を表す。セルでの水の消費速度は、限定はしないが、セルに関連する温度(例えば、プロセス水の温度、電極温度、及び/又は他の固体セル構成要素)、セルに関連する圧力(セルの一方又は両方のチャンバ内の流体圧力など)、及び/又はセルに印加される電流、及び電気化学反応が効率的に生じるようにプロセス水で十分に濡らされた電極反応部位の利用可能性を含めた因子に依存する。
【0066】
[0087]「イオン交換電解槽」という用語は、本明細書では、アニオン及び/又はカチオン(プロトンを含む)を交換するように構成された固体ポリマー電解質膜を利用する電解槽を包含する総称として使用される。したがって、「イオン交換電解槽」という用語は、PEM(プロトン交換膜)(CEMと略されるカチオン交換膜としても知られている)、AEM(アニオン交換膜)、又はイオノマー材料を含む、イオノマー材料からなる、若しくは本質的にイオノマー材料からなる他の膜を利用する電解槽を含む。そのような膜は、独立した自立構造(例えば材料のシート)として作製されることがあり、又は、1つ若しくは複数の電極表面をアイオノマー(及び任意選択で他のポリマー)の1つ若しくは複数の層でコーティングすることなどによって正極若しくは負極と統合されることがあり、膜電極接合体(MEA)を形成する。
【0067】
[0088]「アイオノマー」は、一般に、電気的に中性の単位と、ポリマー主鎖に共有結合されたイオン化された単位との交互の繰り返し単位から構成されるポリマーとして定義される。そのようなイオン化された単位は、多くの場合、カルボン酸基である。ポリマー主鎖に化学的に結合されているイオン性基の性質に応じて、イオン性ポリマー(アイオノマー)は、カチオン性物質、アニオン性物質、及びカチオン性基とアニオン性基との両方を含む両性電解質に分けられることがある。市販されているアイオノマー膜は比較的少ないが、例えばM.R. Tant、K.A. Mauritz、及びG.L. Wilkes編「Ionomers; Synthesis, Structure, Properties and Applications」(1997, ISBN-13: 978-0751403923)に記載されているように、広範囲のアイオノマー材料が研究されている。例示的なアイオノマーは、デュポン(DuPont)(登録商標)によってサーリン(SURLYN)(登録商標)及びニュクレル(NUCREL)(登録商標)の商標名で販売されているエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を含む。
【0068】
[0089]例示的なPEM材料は、ナフィオン(NAFION)(登録商標)の商標で知られているデュポン(登録商標)からの膜のカテゴリなどのスルホン化テトラフルオロエチレンベースのフルオロポリマー-コポリマー(例えばパーフルオロスルホン酸、すなわちPFSA)を含む。例示的なAEM膜は、サスタニオン(SUSTANION)(登録商標)の商標名でDioxide Materialsから販売されている様々な膜を含む。FUMATECH BWT GmbH社も、フマペン(FUMAPEM)(登録商標)、フマセプ(FUMASEP)(登録商標)、フミオン(FUMION)(登録商標)、及びフメア(FUMEA)(登録商標)の商標名で様々なアイオノマー膜を販売しており、それらの任意のものを、本明細書で述べるイオン交換電解槽で使用することができる。任意の他のPEM、AEM、又は他のアイオノマー材料を含む膜も、本明細書で述べるイオン交換電解槽で使用することができる。
【0069】
[0090]水素発生触媒や酸素発生触媒などの触媒への本明細書における言及は、特定された反応を触媒することができることが知られている任意の触媒を含むことを意図され、白金族金属、稀少な貴金属(precious metal)、貴金属(noble metal)、卑金属、2つ以上の金属の合金、高表面積炭素、高表面積金属若しくは金属合金構造、導電性ポリマー、又は所望の電気化学若しくは化学反応を触媒することが実証されている他の材料を含むことがある。
【0070】
[0091]様々な実施形態では、本明細書で述べるアーキテクチャ、システム、及び方法を、様々な電気化学システム及びプロセスに適用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で述べる特徴を有する電気化学システムは、水性アルカリ水酸化物電解質(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、又はそれらの組合せ)を使用して電解質中の水を負極で水素ガスに、正極で酸素ガスに分解する、アルカリ電解槽システムでよい。他の実施形態では、本明細書で述べる電気化学システムは、酸性水溶液、中性pH水溶液、イオン液体、溶融塩などの他の液体電解質を使用することができる。
【0071】
[0092]本明細書でのいくつかの実施形態は、水を水素ガスと酸素ガスとに電解分離するために最適化されたシステムを参照して述べるが、本明細書で述べる様々なシステム、方法、構造、及び実施形態は、本明細書で述べるシステムとの構造的又は機能的類似性を有する他の電気化学システムにも適用することができる。
【0072】
電解質閉じ込めシステムの構成要素及び概念の概説
[0093]図1は、電解質をセル100に閉じ込めるように構成された電解槽システムの1つのセル及び他の構成要素を概略的に示す。図示されるセル100は、セパレータ106によって互いに離間された正極104と負極102を含む。正極104は、正の半電池チャンバ132内に示され、ある体積の正の電解質131が正極104を浸漬し、正の気体ヘッドスペース134が、電解質131の液位136の上に示されている。同様に、負極102は、負極102を浸漬するある体積の負の電解質130を含む負の半電池チャンバ142に示され、負の気体ヘッドスペース144が、電解質130の液位146の上に示されている。本明細書の様々な実施形態で述べるように、気体ヘッドスペースは、一方又は両方の半電池チャンバに存在することも、存在しないこともある。
【0073】
[0094]いくつかの実施形態では、ヘッドスペース分割器150は、ヘッドスペースを別々の正のヘッドスペース134(正極性の半電池のヘッドスペース)と負のヘッドスペース144(負極性の半電池のヘッドスペース)とに分離するために存在することがあり、以て、電極104、102によって生成された気体が混合するのを防ぐ。様々な実施形態において、セパレータ106又は他のセル構成要素が、一方の半電池チャンバから他方への気体クロスオーバを最小限に抑える又は妨げるように構成されることもある。
【0074】
[0095]いくつかの実施形態では、負のヘッドスペース領域144は、負の気体除去マニホルド122と連通していることがあり、正のヘッドスペース領域134は、正の気体除去マニホルド124と連通していることがある。いくつかの実施形態では、一方又は両方の気体除去マニホルド122、124は、気体除去液体152を含むことがある。
【0075】
[0096]様々な実施形態において、1つ又は複数の流体逃がし要素160、162、164は、各半電池チャンバ132、142と対応する気体除去マニホルド124、122との間の経路を提供することがある。そのような流体逃がし要素160、162、164は、半電池チャンバ132、142から逃げる液体電解質130、131の量を実質的に制限しながら、半電池チャンバ132、142からの気体の逃げを可能にするように構成されることがある。いくつかの実施形態では、流体逃がし要素は、それぞれの半電池チャンバと対応する気体除去マニホルドとの所望の圧力差を維持するように構成されることもある。例えば、様々な気体逃がし要素は、約0.01mbar~約1bar以上の圧力差を維持するように構成されることがある。図1は、複数の流体逃がし要素の構造及び位置を示しており、それらの詳細は、本明細書で以下にさらに述べる。
【0076】
[0097]いくつかの実施形態では、負の半電池チャンバ142及び正の半電池チャンバ132は、それぞれの電解質収集容積110、112と連通していることもある。各電解質収集容積110、112は、それぞれの電解質返還導管114、116と流体連通していることがあり、電解質返還導管114、116は、1つ又は複数のポンプ172、174の力の下で電解質をそれぞれの半電池チャンバに戻すことができる。
【0077】
[0098]図1はまた、供給マニホルド178からセル100に補給液を送達して、セルから消費される又は他の形で除去される液体を補充するように構成された供給入口176を示し、そのような液体は、電極102、104で1つ又は複数の気体に変換されることによって消費され、気体除去マニホルド122、124を通してセルから除去される液体を含む。補給液は、蒸気形態(例えば水蒸気)で、セルから除去された液体を補充することもできる。水から水素を生成するための水電解槽システムの場合、補給液は、脱イオン水又は特定の用途に十分な純度の他の水など、実質的に純粋な水でよい。他の実施形態では、補給液は、水と混合されたある量の電解質液体又は他の液体を含むことがある。
【0078】
[0099]様々な実施形態において、本明細書で述べる特徴及び利点を含む電気化学システムは、単極又は双極スタック構成で構築することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で述べる特徴部及びサブシステムは、セルスタック内の個々の層及びセルに統合されることがある。いくつかの実施形態では、いくつかの特徴部又はサブシステムがスタック内に統合されることがあり、他の特徴部又はサブシステムがスタックの外部に提供されることがある。例示的な単極及び双極スタック構成は、デンマーク工科大学(Technical University of Denmark)及びデンマークのRISOのJ. O. Jensen、V. Bandur、N. J. Bjerrum、S. H. Jensen、S. Ebbesen、M. Mogensen、N. Trophoj、L. Ydeによる刊行物「Pre-investigation of Water Electrolysis, PSO-F&U 2006-1-6287, Draft 04-02-2008」の33~39ページに記載されており、本明細書では、この文献を「Jensenレポート」と呼ぶ。
【0079】
[00100]水電解槽は従来、単極と双極の2つに分類されてきた。単極電解槽では、同じ極性の電極が互いに並列に電気的に接続される。最も古い形式の水の工業用電気分解は、電解質で一部充填されたタンク内で一連の電極(すなわち交互のアノード及びカソード)が垂直に且つ互いに並列に懸架されているタンク電解槽を使用する。代替電極、通常はカソードは、ある電極区室から別の電極区室への気体の通過を妨げるダイヤフラムによって取り囲まれている。ダイヤフラムは、気体に対して不透過性であるが、セルの電解質に対して透過性である。アセンブリ全体が、一連の気体収集器から吊り下げられる。単一のタンクタイプのセルは通常、複数の電極を含み、同じ極性の全ての電極が電気的に並列に接続される。
【0080】
[00101]双極電解槽では、電極は、電気的に直列に互いに接続される。双極設計の電解槽は、比較的多数の電極の単一の大規模なアセンブリを備えることがあり、各電極は、一方の側がカソードであり、他方の側がアノードである。最近の電解槽設計は、1つのセルの正極が次のセルの負極に直接接続されるようにスタックを使用する。セルの双極アセンブリは、電解質がマニホルド分岐されて各セルを並行して流れ、同様に水素及び酸素の出口ラインがスタックを通ってマニホルド分岐されるので、見かけ上はフィルタプレスに似ている。アセンブリは、プレートアンドフレームフィルタプレスの場合と同様の方法で、複数の重い長手方向締結ボルトによって保持される。各電極は、隣り合う電極から絶縁され、電気的に直列である。電極の各対は、分離ダイヤフラムを伴って、個々のセルユニットを形成する。実際には、フィルタプレスタイプのセルは通常、各セルに個別の電極を有して構成され、それらの電極は、あるセルの水素キャビティを次のセルの酸素キャビティから離して保ちながら、導電体として働く固体金属(又は他の導電性材料)セパレータプレート(「双極板」)を介して電気的に接続される。電流の方向は、「セルスタック」の一端から他端に向かう。したがって、双極電解槽は、直列に10~数百個の個々のセルを含むことがある。フィルタプレスタイプ電解槽のセルは比較的薄くすることができるので、比較的小さい機器から大きい気体出力を実現することができる。
【0081】
[00102]図2に示されるいくつかの実施形態では、電解質返還導管114、116は、一方又は両方の半電池チャンバの内容物の体積膨張を可能にするように構成された膨張容積280と流体連通することもある。いくつかの実施形態では、流体導管は、膨張容積280以外の位置で、正の電解質131と負の電解質130との流体連通を可能にすることがある。他の電解質流体連通領域を備えたいくつかの例示的なセル構成は、図6図9を参照して本明細書で述べる。
【0082】
[00103]図2のシステムに基づくセルスタックにおいて、セルスタックの各セルは、半電池チャンバ242、232、セパレータ206、電極202、204、流体逃がし要素260、261、電解質捕捉容積210、212、電解質返還導管210、216、気体収集容積286、288、及び膨張容積280を含むことがある。供給マニホルド278及び気体除去マニホルド222、224は、例えば図4を参照して本明細書で述べるように、スタックの全ての他のセル及びさらなる処理機器に連結されることがある。いくつかの実施形態では、電解質返還導管214、216の流体の流れは、セルスタックのいくつかの(又は全ての)セルの返還導管に連結された単一のポンプアクチュエータ(例えば空洞ポンプアクチュエータ)によって押し流されることがある。
【0083】
[00104]様々な実施形態において、本明細書で述べる電気化学システムは、様々な圧力領域間の圧力関係を自動的に管理するように構成されることがある。これらの様々な圧力領域を維持及び管理することによって、気体クロスオーバを押し進める傾向があるセパレータ横断圧力差を最小限に抑えることができる。これらの圧力領域は、補給液供給マニホルド、半電池チャンバ、気体分離容積、及び気体除去マニホルドを含む。様々な実施形態において、これらの圧力領域は、センサ入力に基づいて動作する閉ループ電子制御装置によって能動的に維持される、又は急速な圧力振動を減衰させる傾向がある固有の特性を有する構造及び/又はシステム条件に応答して所望の動作を行う構造によって受動的に維持されることがある。
【0084】
[00105]本明細書で述べる電気化学システムの実施形態は、セル内の圧力が気体発生反応によって増加されるように構成されることがあり、気体除去マニホルド及び補給液供給マニホルド内の圧力は、1つ又は複数の能動制御装置によって独立して制御されることがある。以下でさらに述べるように、半電池チャンバは、半電池から出る流体の流れに抵抗するように構成されることがあり、そのような流れ抵抗は、制御される気体除去マニホルドの圧力変動が半電池圧力に及ぼす影響を弱めることができる。
【0085】
電解質閉じ込めシステム
[00106]電解質閉じ込めシステムは、一般に、生成された気体がセル又は半電池チャンバから逃げることを可能にしながら、各セル又は半電池チャンバ内に電解質の大部分を保持するように構成された特徴部及び構造を備える。電解質閉じ込めシステムのいくつかの特徴部は、セルセパレータの両側で最小の圧力差を生成する圧力平衡様式で気体及び電解質がセル又は半電池チャンバから逃げることを可能にするように構成されることがある。
【0086】
[00107]本明細書で使用するとき、「セパレータ横断圧力差」という用語は、(必須ではないが)典型的にはセパレータによって分割された、共通のセルの2つの半電池チャンバ間の流体圧力の差を表す。本明細書で述べるように、多くのセル構成は、セルを半電池に分割し、セルの正極と負極との非導電性分離を形成するセパレータ膜を含むことがある。他方、いくつかのセルは、セパレータ膜を省くことがあり、又は同様の目的を果たす他の構造を含むことがある。「セパレータ横断圧力差」という用語は、必ずしもセパレータ膜がセルに存在していることを示唆することを意図されておらず、単に2つの領域間の圧力差を表す。
【0087】
[00108]図1を参照すると、電解質閉じ込めシステムは、生成された気体が半電池チャンバ132、142から逃げることを可能にするように構成された1つ又は複数の流体逃がし要素160、162、164を有する少なくとも1つの囲まれた半電池チャンバ132又は142を含むことがある。いくつかの場合には、流体逃がし要素160、162、164は、ある量の液体電解質130、131が半電池チャンバ132、142から逃げることを可能にするように構成されることもある。電解質閉じ込めシステムは、正の半電池チャンバ132を負の半電池チャンバ142から分離するように構成されたセル構造を含むこともある。そのような構造は、セパレータ膜106及びヘッドスペース分割器150を含むことがある。
【0088】
[00109]流体逃がし要素160、162、164は、少なくとも気体が半電池チャンバ132、142から逃げることを可能にする構造を備えることがある。いくつかの実施形態では、流体逃がし要素は、流体圧力が閾値を超えたときに気体のみ又は気体と液体との両方が半電池チャンバ132、142から逃げることを可能にするように構成されることがある。この文脈において、「流体圧力」は、液体電解質の圧力、ヘッドスペース気体の圧力、及び/又は分散混合物中の気泡の「泡」及び液体電解質の圧力を表すことがある。
【0089】
[00110]従来の電解槽システムでは、気体除去導管が高い気体圧力で維持されている場合でさえ、正極及び/又は負極で生成された気体は、流れの制限がほとんどない状態で半電池チャンバから気体除去導管に送られる。ほとんどの従来の電解槽では、気体除去導管は、各セルを通って流れる電解質(又はプロセス水)のための流出導管としても機能する。しかし、一方の電極が他方の電極とは異なる様式(例えば、大幅に異なる気泡サイズ、放出速度、体積など)で気泡生成する場合、気体は予想外に異なる速度で電解質と混合する可能性がある。これは、予測不可能な(したがって制御不可能な)過渡的なセパレータ横断圧力差をもたらすことがあり、これにより、液体及び/又は気体が瞬時的に高圧の半電池から瞬時的に低圧の半電池に急速にセパレータを通って横切る可能性がある。この「スロッシング」効果により、生成ガスの気体純度が許容できないほど低くなるおそれがあり、さらに爆発性の気体混合物が生成されるおそれがある。
【0090】
[00111]本明細書で使用するとき、「気体分離容積」、「気体セパレータ」、「気液セパレータ」、又は「気体収集容積」という用語は、気体が、半電池から出る任意の液体(例えば電解質及び/又は補給液)から分離された状態で、気体除去マニホルド122、124に収集されるまでの途中に流入することがある半電池132、142の外部の1つ又は複数の容積を表すことがある。例えば、気液セパレータ184などの気液セパレータは、気体収集容積(複数可)(例えば、186)及び電解質捕捉(収集)容積(複数可)、例えば電解質収集/捕捉容積110を含むことができる。様々な実施形態において、気液セパレータは、1つ又は複数の流体経路によって流体連通して接続され、気体及び液体のための別個の出口を提供する1つ又は複数の容積を備えることがある。例えば、いくつかの実施形態では、気体収集容積は、気体除去マニホルド122、124及びそれらの間の任意の導管又は容積(例えば、186、188)に加えて、電解質捕捉容積110、112(本明細書でさらに述べる)を含むことがある。本明細書で使用するとき、「気液セパレータ」、「液気セパレータ」、「気/液セパレータ」、及び「液/気セパレータ」という用語は交換可能である。いくつかの実施形態では、「気体セパレータ」と「気液セパレータ」という用語は交換可能である。
【0091】
[00112]この項では図1を参照するが、ここでの説明は、本明細書において提案又は記載される任意の他の実施形態にも同様に適用可能である。いくつかの実施形態では、流体逃がし要素160、162、164は、半電池チャンバ132、142と対応する気体除去マニホルド122、124との間の流路での流れに対する抵抗を与えることがある。流れに対するそのような抵抗は、流体逃がし要素160、162、164の前後での圧力降下として測定可能であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、各半電池チャンバ132、142は、半電池チャンバ132、142から流出する流体(気体及び/又は電解質)に対する抵抗を生み出すことによって、そのそれぞれの気液セパレータよりも高い流体圧力で維持されることがある。例えば、いくつかの実施形態では、これは、半電池チャンバ132、142と対応する気液セパレータ182、184との間の流路に流れ制限流体逃がし要素160を配置することによって達成することができる。流体逃がし要素160を通る流体の流量を制限することで、半電池チャンバ132、142から出る流体の流れに対する所望の程度の背圧又は抵抗を維持することができる。そのような流れ抵抗は、半電池チャンバ132、142の内部と対応する気液セパレータ182、184との間の所望の圧力差を有益に維持することができる。そのような流れ抵抗構造は、気液セパレータ186、184が受ける圧力の過渡的な変動が半電池チャンバ132、142に伝達されるのを防ぐことができ、以て、セパレータ膜の両側の圧力差の変動を軽減する。
【0092】
[00113]気体が生成される半電池チャンバ132、142の内部と、生成された気体を収集するように配置された気液セパレータ182、184との流体圧力差を、本明細書では「出口圧力差」と呼ぶ。いくつかの実施形態では、電解質収集容積110、112及び気液セパレータ182、184を、電解質捕捉及び返還システムと呼ぶ。電解質捕捉及び返還システムは、いくつかの実施形態では、ポンプ、返還チャネル、弁などの追加の構成要素を含むこともある。いくつかの実施形態では、電解質捕捉及び返還システムは、1つ又は複数の気液セパレータ、例えば気液セパレータ182及び184と、1つ又は複数の流体逃がし要素、例えば1つ又は複数の出口チャネル(例えば、160、162)と、1つ又は複数のポンプ、好ましくはそれぞれの電気化学セル又は半電池に固有の1つ又は複数のポンプ、例えばポンプ172及び174とを含み、ポンプ172及び174は、図3A~3Cを参照して本明細書で述べる空洞ポンプでもよい。
【0093】
[00114]いくつかの実施形態では、(例えば)図1及び図2におけるように、電解質捕捉容積110は、気体収集容積186、188とは別の容積でもよい。いくつかの実施形態では、例えば(以下でさらに詳細に述べる)図3に示されるように、電解質捕捉容積110、112は、気体収集マニホルド122、124を含む容積と同じ容積でもよい。
【0094】
[00115]流体逃がし要素(例えば、160)の前後での出口圧力差は、半電池圧力が気液セパレータ(又は気体除去マニホルド)圧力を超えている限り、非常に小さいことがある(例えば1psi未満;例えば0.1bar~1psiの範囲から選択される;例えば0.5±0.2bar;例えば0.5bar以下であるが0barよりも大きい)。実際には、より大きな出口圧力差は、制御される気体除去マニホルドの圧力のばらつきをより大きく減衰することを可能にすることがある。様々な実施形態において、半電池チャンバ132、142の内部と気液セパレータ182、184との出口圧力差の大きさは、数分の1psi~1気圧(1atm又は約15psi)以上の任意の値にすることができる。いくつかの特定の実施形態では、出口圧力差は、約0.1bar~約1bar以上にすることができる。いくつかの特定の例では、出口圧力差は、少なくとも0.01bar、少なくとも0.05bar、少なくとも0.1bar、少なくとも0.2bar、少なくとも0.3bar、少なくとも0.4bar、少なくとも0.5bar、少なくとも0.6bar、少なくとも0.7bar、少なくとも0.8bar、少なくとも0.9bar、少なくとも1bar、又は最大2bar以上でもよい。出口圧力差は、0.05atm~0.35atm、0.35atm~0.7atm、1atm~2atm、又はそれよりも大きくてもよい。
【0095】
[00116]したがって、いくつかの実施形態では、流体逃がし要素160は、半電池チャンバ132、134から出る流体の流量を制限するように、及び/又は流体が流体逃がし要素160を通って流れる前に超えなければならない閾値流体圧力を確立するように構成されることがある。本明細書で述べる流体逃がし要素は、一般に、「直列」要素と「並列」要素との2つのカテゴリに分けることができる。
【0096】
[00117]直列流体逃がし要素は、一般に、流体(すなわち、気体、液体、又は両方の混合物)の流出のための単一の制限された経路を提供する。直列要素では、液体と気体とは、高圧端から低圧端まで同じ経路をたどらなければならない。本明細書で使用するとき、直列流体逃がし要素を、広範に「出口チャネル」と呼ぶことがある。図1及び図2は、参照番号160、260、及び261での例示的な出口チャネルの例を概略的に示す。
【0097】
[00118]出口チャネル(直列流体逃がし要素)は、一般に、一端が比較的高圧の領域(例えば、半電池チャンバ132、142、232、又は242)に位置し、他端が比較的低圧の領域(例えば、気液セパレータ182、184、282、又は284)に位置する長くて狭いチャネルを備えることがある。出口チャネルは、それらの全経路長に比べて小さい内部断面積(その流路に垂直な平面内で)を有するという点で「長くて狭い」ことがある。例えば、出口チャネルは、出口チャネルの断面寸法(例えば直径)よりも5倍、10倍、100倍、500倍、1000倍大きい(又はそれよりも大きい)全経路長を有することがある。いくつかの場合には、出口チャネルは、蛇行経路及び/又は機械的に制限された導管を含むこともある。したがって、様々な実施形態において、直列流体逃がし要素(又は「出口チャネル」)は、一方向逆止弁、「皮下(hypodermic)」管、長くて狭いチャネル、アパーチャ(例えばシート若しくはプレート構造の小さい開口部)、又は他の直列流れ制限構造を備えることがある。
【0098】
[00119]いくつかの実施形態では、出口チャネルの形態での流体逃がし要素は、内部断面積よりも数倍長い長さを有する剛性又は可撓性材料の管の区域を備えることがある。流れ制限チャネルは、使用されることがある高温、アルカリ性、酸性、及び/又は他の電解質による劣化など、それらを通って流れる流体の影響を受けない材料から作製されることがある。
【0099】
[00120]流体が液体と気体との混合物であるとき、出口チャネルは、流れに対して非線形の抵抗を有益に実現することがある。例えば、出口チャネルは、液体の流れに対して線形抵抗を適用し、気体の流れに対して異なる線形抵抗を適用することがあるが、出口チャネルを通過する液体と気体とのランダムに分散された混合物は、流れに対して非線形の抵抗を受ける。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、気体と液体との混合物は、ランダムな体積の気体と液体との別々のポケットとして出口チャネルを通過する傾向があると考えられている。液体ポケットは、出口チャネル壁との表面張力相互作用により、流れに対してより大きな抵抗を受ける傾向があり得る一方で、壁との表面張力を直接には受けない圧縮性気体のポケットは、液体ポケットによって維持される傾向があり得る。いくつかの場合には、圧縮性気体ポケットが液体ポケット間で圧縮されることもある。この非線形の流れ抵抗は、少なくとも、半電池チャンバと対応する気液セパレータとの所望の圧力差を維持するのに有益であり得る。
【0100】
[00121]様々な実施形態において、出口チャネルの異なる材料、材料特性、及び/又は形状は、チャネルを通る液体流れ抵抗の程度に影響を及ぼすことがある。例えば、チャネルを通る流れに対する抵抗は、表面張力(又は材料との接触角によって測定される疎水性)に関連することがあり、電解質とのより大きい表面張力(より高い親水性、より小さい接触角)を示す材料は、より低い表面張力(より高い疎水性、より大きい接触角)を示す材料よりも大きい流れ抵抗を及ぼすことがある。90°未満の接触角を示す材料は、一般に特定の流体に対して「親水性」と呼ばれ、90°を超える接触角を示す材料は、一般にその材料に対して「疎水性」と呼ばれる。いくつかの実施形態において、出口チャネル材料は、電解質に対して親水性である(90°未満の接触角を示す)ように選択されることがある。より大きい流れ抵抗が望まれる場合には、電解質に対して疎水性(90°を超える接触角を示す)であるように出口チャネル材料を選択することができる。いくつかの実施形態では、出口チャネルは、管内に静的に位置する電解質によって形成されるメニスカス曲線の直径にほぼ等しい(約10%の差の範囲内の)管内径を有する円形断面の管を備えることがある。非円形断面の場合にも同じ近似関係が成り立つことがある(つまり、正方形又は長方形断面チャネルの辺の長さがメニスカス直径にほぼ等しいことがある)。
【0101】
[00122]いくつかの実装形態では、出口チャネルは、出口チャネルを通って逃げる大量の気体が、半電池チャンバ内の液位の上昇を引き起こす傾向がある(例えば、液体がポンプによって半電池チャンバに押し込まれるとき、及び/又は以下でさらに述べるように補給液が半電池に入るとき)という点で、「自己修正」する非線形の流れ抵抗を生成するように構成されることがある。液位が出口チャネルの入口の高さまで上昇するとき、ある体積の液体が出口チャネルに入ることがあり、これは、チャネルを通る流れ抵抗を瞬時的に増加させる傾向があり、それに応じて、流れ抵抗の上昇前と同じ速度で気体が生成され続けるときに半電池チャンバ内の圧力を増加させる。スタック内の各半電池で生じるこれらの圧力及び液位の変化は非常に小さいことがあり、非常に迅速に(1秒以内に)生じることがあり、すなわち、この自己修正は、スタックレベルで気体除去マニホルド内の圧力を制御するように作用する圧力調整器を用いて、小さすぎて修正することができない圧力変化を自動的に修正することができる。
【0102】
[00123]この同じ挙動は、過渡的な圧力変化を自動的に逆転させることによってセパレータ膜の両側の圧力差を最小化するための受動閉ループ制御システムとして表すこともできる。このようにして、電解質は機械的トランスデューサとして作用し、電解質液位を出口チャネルを通る差圧に変換する。半電池内の液体圧力の低下は液位の上昇に対応するので、電解質液位は圧力センサとして作用する。出口チャネルに入る電解質(電解質が出口チャネルの入口の高さまで上昇するとき)は、出口チャネルを通る流れ抵抗を増加させ、以て、半電池内の圧力を増加させて、半電池チャンバをより高い圧力に戻す。両方の半電池チャンバにそのような特徴及び機能を提供することによって、両方の半電池の過渡的な圧力変化を迅速に平衡状態に戻すことができ、以て半電池間の圧力差を平衡させる。
【0103】
[00124]したがって、他の実施形態では、任意の他の機構(デジタル制御される電気機械デバイス又は他の受動的に操作される制御デバイスを含む)を使用して、その半電池の圧力の低下又は半電池の電解質液位の上昇に応じて、半電池チャンバから出る気体(及び/又は液体)の流れに対する抵抗を増加させることができる。いくつかの実施形態では、そのような制御システムは、電解質が半電池から逃げるのを実質的に妨げながら所望の圧力平衡を実現するように構成されることがある。例えば、一実施形態では、フロート弁は、半電池の液位が上昇したときに流体逃がし要素(例えば、チャネル、膜、又はアパーチャ)を通る圧力降下(流れ抵抗)を増加させる、及び/又は半電池の液位が低下したときに流体逃がし要素を通る圧力降下(流れ抵抗)を減少させるように構成されることがある。他の実施形態では、電気機械的に制御される弁(電磁弁など)は、半電池チャンバ内の流体圧力の降下を示す1つ又は複数の電気的又は機械的センサ信号に応答して流れ抵抗を増加させるようにプログラムされた電子制御装置によって駆動されることがある。いくつかのそのような実施形態では、この圧力平衡機能は、各半電池に関連するポンプを省略して実現することもできる。
【0104】
[00125]いくつかの実施形態では、流体逃がし要素として働くように構成された出口チャネルは、半電池チャンバ壁(例えばセルフレームプレート)、双極板、セル構造要素、又は他の特徴部など、セルの他の構造内に一体的に形成されることがある。いくつかの実施形態では、出口チャネルは、機械加工、レーザ切断、リソグラフィ技法、積層造形技術(例えば3D印刷)、又は他の方法によってセル構造(例えば、セルフレーム、カバーシート、又は他のセルフレーム構造)に形成されることがある。他の実施形態では、出口チャネルは、異なる材料から作製された別個の構造(例えば、管、弁、又はチャネルなど)をセルフレーム構造に固定する(例えば、埋め込む、取り付ける、又はオーバーモールドするなど)ことによって形成されることがある。出口チャネルは、直線線形経路、曲線経路、又は直線経路と曲線経路との組合せを備えることがある。
【0105】
[00126]他の実施形態では、出口チャネルは、曲げられ又は他の方法で所望の形状に形成され、セルフレームプレート、双極板、セル構造要素、又は他の特徴部などのセル構造に埋め込まれる又は取り付けられる配管の区域を備えることがある。例えば、そのような管は、電解質の影響を受けず、電解質に対して所望の程度の疎水性又は親水性を示す材料から作製された円形断面の管でよい。いくつかの特定の例では、そのような管は、ニッケル、チタン、アルミニウムなどの金属、又はそれらの金属を含む金属合金でよい。代替として、そのような管は、ポリアミド(PA)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリビニリジンフルオライド(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)などの1つ又は複数のポリマー材料を含むことがある、又はそれらから作製されることがある。チューブは、オーバーモールド、接着剤、溶剤、溶接、又は他の技法によってセルフレームに埋め込まれることがある。
【0106】
[00127]例えば、いくつかの実施形態では、出口チャネルは、コイル状の管などの渦巻状又は螺旋状区域を有することがある。他の実施形態では、出口チャネルは、湾曲セグメントと直線セグメントの両方、直線セグメントと鋭い角度の曲がり(例えば任意の鋭角又は鈍角の屈曲部)、又は直線セグメントのみを有することがある。出口チャネルは、重力に対して任意の構成で向きを定めることもできる。言い換えると、出口チャネルは、流体が半電池チャンバの内側から半電池チャンバの外側の点まで移動する間に、上方向、下方向、水平方向、又は様々な複合の方向に流れるように向きを定められることがある。いくつかの実施形態では、フィルタは、出口チャネルの入口端に配置されることがある。そのようなフィルタは、多孔質金属(例えば金属メッシュ又は発泡体)、ポリマー、又は多孔質フィルタに固体粒子を捕捉する一方で液体及び気体を通過させるのに適した他の材料を含むことがある。
【0107】
[00128]いくつかの実施形態では、流体逃がし要素は、ダックビル弁、ポペット弁、ボール逆止弁、ダイヤフラム逆止弁、傾斜ディスク逆止弁、フラッパ弁、リフト逆止弁、アンブレラ逆止弁、ピストン逆止弁、スイング逆止弁、デュアルプレート(ダブルドア)逆止弁など、1つ又は複数の一方向逆止弁を備えることがある。一方向逆止弁は、弁に接触する液体電解質及び気体による損傷に耐性があるように選択されたポリマー、金属、セラミック、若しくは他の材料、又は材料の組合せなど、任意の適切な材料から作製することができる。逆止弁は、クラッキング圧力を伴って構成されることがある。クラッキング圧力とは、流体が弁を通って流れる前に超えなければならない、弁の下流側と上流側との閾値圧力差である。いくつかの実施形態では、逆止弁のクラッキング圧力は、半電池チャンバと気液セパレータとの所望の出口圧力差を維持するように選択されることがある。
【0108】
[00129]図1は、負の半電池チャンバ142とそれに対応する電解質捕捉容積110との間にある出口チャネル流体逃がし要素160も示す。出口チャネル要素160は、少量の液体190がチャネルを通過し、電解質捕捉容積110に滴下することを可能にするように示されている。
【0109】
[00130]いくつかの実施形態では、流体逃がし要素は、各半電池がその対半電池と同じ数及び/又は流量容量の流体逃がし要素を有するように対称的に配置されることがある。他の実施形態では、セルは、一方の半電池がその対半電池よりも大きい流体逃げ流量を有するように非対称の流体逃がし要素を有して構成されることがある。
【0110】
[00131]図2は、電解質をセル200に閉じ込めるように構成された1つのセル200の別の実施形態を概略的に示す。各半電池チャンバ232、242は、それぞれの気液セパレータ282、284から分離されて示され、半電池チャンバ232、242から気液セパレータ282、284への唯一の流体連通チャネルを提供する出口チャネル260、261によってのみ連結される。
【0111】
[00132]半電池チャンバから気液セパレータに流体が流れるための唯一の経路を提供する出口チャネル260、261は、出口チャネルの高さが半電池チャンバ242、232内の液位の高さを確立することを可能にすることがあり、以て、各半電池チャンバ242、232内のヘッドスペース244、234の高さ及び容積を定義する。したがって、半電池チャンバ242、232内の出口チャネル開口部262、263の垂直位置は、半電池チャンバ242、232内の電解質液位の所望の概算最大高さとして選択された半電池チャンバ242、232内の高さに位置することがある。電解質液位が出口チャネル262、263の開口部よりも上方に上昇するとき、出口チャネル260、261を通って流れる流体は、完全に又は主に液体の電解質になる傾向がある。液体電解質液位が出口チャネル開口部262、263の高さよりも下に降下するとき、出口チャネル260、261を通って流れる流体は、完全に又は主に気体になる傾向がある。概算最大液体電解質液位を確立することによって最小ヘッドスペースを確立することは、他の利点のなかでもとりわけ、消費可能な補給液を追加するためにヘッドスペースを空けておくことができることが有利であり、電解質が補給液入口276を通って逆流するのを防ぐのに役立つことがある。
【0112】
[00133]いくつかの実施形態では、出口チャネルの出口264、265は、気体が気体除去マニホルド222、224に流れることを可能にしながら、電解質を電解質捕捉容積210、212に滴下するように構成されることがある。
【0113】
[00134]様々な実施形態において、正の半電池での流体逃がし要素構成は、対応する負の半電池での流体逃がし要素構成と同じでもよく、又は流体逃がし要素構成は、共通のセルの反対の半電池において異なっていてもよい。同様に、隣り合うセルは、流体逃がし要素又は他の特徴部に関して、互いに対して同じ又は異なる構成を有することがある。
【0114】
[00135]例えば、正の半電池チャンバ232及び正の気液セパレータ284における出口チャネルの入口263及び出口265は、同じセル200の負の半電池チャンバ242及び負の気液セパレータ282における出口チャネルの入口262及び出口264と実質的に同じ高さに位置することがある。代替として、正の半電池チャンバ232及び正の気液セパレータ284における出口チャネルの入口263及び出口265は、同じセル200の負の半電池チャンバ242及び負の気液セパレータ282と比較して高く又は低く位置することがある。
【0115】
[00136]並列な流体逃がし要素は、膜、フィルタ、メッシュ、多孔質ブロックなどの多孔質構造、又は1つの側から別の側への複数の蛇行又は小径経路を有する他の構造を含むことがある。任意の特定の量の流体が通過することができる並列経路は、多孔質構造の物理的構造、他のセル構成要素の構造、及び/又はセルで発生する作用の物理学的特性によって影響を受ける傾向があり得る。液体及び気体と多孔質流体逃がし要素との物理的相互作用の相違により、液体は(例えば摩擦、表面張力、粘性などにより)いくつかの細孔をよりゆっくりと通過することがあり、いくつかの経路は、少なくとも一時的に液体によってブロックされる(又は液体で充填される)ことがあり、ブロックされていない細孔又は経路を気体が通過する。
【0116】
[00137]いくつかの流体逃がし要素は、物質の1つの相のみ(例えば液体又は気体、しかし両方ではない)が通過することを許されるように「相弁別的」であるように構成されることもある。いくつかの実施形態では、少なくともある程度の相弁別は、高い疎水性の材料で実現されることがある。いくつかの例では、そのような疎水性材料は、液体の透過を妨げながら気体物質の透過を可能にすることができる多孔質膜を含むことがある。図1は、例示的な膜流体逃がし要素を参照番号162及び164で示す。いくつかの実施形態では、必ずしも相弁別的ではない膜を流体逃がし要素として使用することができる。
【0117】
[00138]十分に小さい及び/又は蛇行した疎水性細孔を有する膜は、大量の液体の流れの透過を防ぐことに加えて、液滴又はミストの透過を防ぐこともできる。例えば、適切な膜は、0.1μm以下の孔径を有することがある。適切な流体逃がし要素膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(ePTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニリデンフルオライド、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリアミド、架橋ポリエーテル、ポリプロピレン、又はこれら及び他のポリマーの様々な組合せから作製されることがある。他の例では、並列の流体逃がし要素は、多孔質複合材又はセラミック材料のブロック、シート、又はプレートを含むことがある。そのような材料は、天然で疎水性であることも、疎水性特性を与えるために処理又は添加剤によって変更されることもある。他の実施形態では、疎水性材料を親水性材料と組み合わせて、並列の流体逃がし要素として使用するための複合膜構造を形成することができる。
【0118】
[00139]いくつかの実施形態では、2つ以上の流体逃がし要素構造を組み合わせることができる。例えば、1つ又は複数の一方向弁又はアパーチャを出口チャネルと組み合わせて、互いに直列の2つ以上の直列流体逃がし要素を備えた流体逃がし要素を形成することができる。別の例では、1つ又は複数の直列流体逃がし要素(例えば、出口チャネル、弁、アパーチャなど)を、1つ又は複数の並列の流体逃がし要素(例えば、膜又は多孔質ブロック)と組み合わせることができる。
【0119】
[00140]様々な実施形態において、同じ又は異なるタイプの1つ、2つ、3つ、又は4つ以上の流体逃がし要素が、半電池チャンバと気液セパレータとの間の流体経路に配置されることがある。例えば、図1は、各半電池チャンバをそのそれぞれの気体除去マニホルド122、124から分離する3つの流体逃がし要素を示す。第1の膜タイプの流体逃がし要素164が、負の半電池チャンバ132、142及び電解質捕捉容積110、112(以下でさらに詳細に述べる)と、電解質捕捉容積110、112を気体除去マニホルド122、124から分離する第2の膜タイプの流体逃がし要素164との間に配置されて示されている。様々な実施形態において、一方又は両方の膜162、164は、気体のみを通過させることが可能であり、液体又はミストを集めて高圧チャンバに滴下させる材料及び構造で作製された相弁別的な疎水性の膜にすることができる。いくつかの実施形態では、一方又は両方の膜162、164は、非相弁別的にすることができる。
【0120】
[00141]様々な実施形態において、セル200は、一方の半電池232の気体ヘッドスペース234をその対半電池242の気体ヘッドスペース244から分割するように構成されたヘッドスペース分割器250を含むことがある。そのようなヘッドスペース分割器250は、いずれかの半電池で生成された気体による劣化の影響を受けず、且つ液体電解質による劣化の影響を受けない特性を有するように、任意の適切な材料及び構造で作製することができる。適切な例は、電解質不浸透性ポリマー、金属、金属酸化物、金属水酸化物、セラミック、又は複合材の固体非多孔質シートを含むことがある。いくつかの実施形態では、ヘッドスペース分割器250は、半電池チャンバ内の電解質及び気体を透過しない可撓性材料から作製されることがある。そのような可撓性ヘッドスペース分割器は、分割器界面での流体圧力の差により偏向することがあり、以て、半電池チャンバ間のある程度の受動的自動圧力平衡を可能にする。ヘッドスペース234、244の下で、半電池チャンバ232、242は、セパレータ206によって分割されることがある。
【0121】
[00142]様々な実施形態において、セパレータ(図1の106、図2の206、又は本明細書で述べる電気化学システムにおける任意の他のセパレータ)は、ナイロン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)、ポリアミド(PA)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アスベスト、酸化ジルコニウム布、綿、ポリビニルアルコール又はポリ酢酸ビニル(PVA)、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレンメタクリル酸コポリマー、フッ素化ポリマー、スルホン化ポリマー、カルボン酸ポリマー、織布又は不織布セルロース、NAFIONなど、様々な材料の1つ又は複数から作製されることがある。いくつかの実施形態では、セパレータ材料は、架橋剤の添加によって、又は材料の親水性若しくは疎水性の変更など材料の表面特徴を変更するためのコロナ放電処理などの後処理によって変更することができる。膜材料の親水性及び/又は疎水性の程度は、そのようなパラメータに影響を与える傾向がある1つ又は複数の添加剤材料を含めることによって変更されることもある。例えば、ジルコニア、チタニア、又は他の材料などの親水性添加剤は、ポリマー膜に埋め込まれる、又はポリマー膜と共押出されることがある。いくつかの実施形態では、セラミック膜、サーメット膜、又は複合セラミック/ポリマー膜を使用することもできる。例示的なセラミック及びサーメットセパレータ膜は、米国特許第4898699号、米国特許第4445994号、及び米国特許出願公開第20150118592号に記載されている。
【0122】
[00143]いくつかの実施形態では、セパレータは、実質的に親水性であり、及び/又は1つ若しくは複数の気体に対して不浸透性であるように、適切な材料及び構造で作製されることがある。いくつかの実施形態では、セパレータは、アニオン交換膜及びプロトン交換膜を含む、アイオノマーとして知られる材料クラスからの材料から作製されることがある。アイオノマーは、典型的には、液体又は溶解種の拡散又は直接の流れを可能にすることなくイオンを伝導することが可能な固体非多孔質材料である。アイオノマーの例は、デュポン(登録商標)がサーリン(登録商標)及びニュクレル(登録商標)の商標名で製造しているものなどのエチレン-メタクリル酸コポリマー、デュポン(登録商標)がナフィオン(登録商標)の商標名で製造しているものなどのフルオロポリマー-コポリマーなどを含む。
【0123】
[00144]いくつかの実施形態では、セパレータは、米国特許出願公開第20020012848号、米国特許出願公開第20020010261号、米国特許出願公開第20030099872号、及び米国特許出願公開第20120148899号、米国特許第3953241号、米国特許第6358651号、及び米国特許第6183914号、又は欧州特許第0624283B1号に記載されているセパレータ材料などの固体-ゲル材料又は複合材を含むことがある。例えば、複合材セパレータ膜は、金属酸化物又は金属水酸化物(例えば、ジルコニウム、アルミニウム、リチウム、チタン、マグネシウムなどの金属の酸化物、二酸化物、亜酸化物、又は水酸化物)を含浸させたポリマー膜(例えば、上述した材料の1つ又は複数から作製される)を備えることがある。
【0124】
[00145]様々な実施形態において、電極102、104、202、204は、電気化学セルでの所望の反応を可能にするのに適した任意の構造、材料、及び触媒を備えることがある。電極は、典型的には、導電性基板(例えば、金属、炭素、グラファイト、導電性ポリマー、若しくは他の導電性材料のシート、フェルト、発泡体、メッシュ、又は他の構造)と、導電性基板に直接支持された又は導電性基板に接触する若しくは取り付けられた別個の層に支持された触媒とを備える。いくつかの電極は、疎水性ポリマーを含む気体拡散層を備えることもある。いくつかの例示的な電極構造、触媒、及び材料は、上記のJensenレポートに記載されている。他の例示的な電極構造は、米国特許第9,938,627号、米国特許出願公開第2015/0292094号、及び米国特許第10,026,967号に記載されており、各特許文献の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0125】
[00146]様々な実施形態において、電解質閉じ込めセルから構成されるセルスタックは、最初に、様々な方法の任意のもので電解質で充填されることがある。例えば、セル容積の一部分が、補給液供給マニホルドを通して送達される補給液によって水和及び溶解されることがある乾燥粉末で充填されることがある。他の実施形態では、電解質は、セルスタックの組立て中に含まれる電解質の固体凍結ブロックとして追加されることがある。さらなる他の実施形態では、電解質は、補給供給マニホルド、気体パージマニホルド、又は特別に準備された電解質充填マニホルドを通して、セルスタックの各セル容積に送達されることがある。
【0126】
電解質捕捉及び返還システム
[00147]図1及び図2は、電解質捕捉及び返還システムの一部として本明細書で言及する例示的な特徴部及び構造を示し、各半電池チャンバ132、142、232、242は、電解質捕捉容積110、112、210、212に連結されることがあり、電解質捕捉容積110、112、210、212は、半電池チャンバ132、142、232、242から逃げるある体積の電解質130、131を受け取って保持し、捕捉された液体電解質を半電池チャンバから出る気体から分離し、捕捉された電解質を半電池チャンバの一方又は両方に戻すように配置及び構成される。電解質捕捉容積110、112、210、212は、戻り経路導管114、116に連結された出口導管118、119と、電解質130、131をそれが逃げたセル100に戻すためのポンプ172、174とを備えることがある。
【0127】
[00148]いくつかの実施形態では、電解質捕捉容積110、112、210、212は、気体除去マニホルド122、124、222、224と流体連通することがある気体収集容積186、188、286、288と流体連通して連結されることがある。電解質捕捉容積と気体除去容積とは、半電池チャンバ134、132、242、232から出る流体混合物を、気体収集容積186、188、286、288内の気体と電解質捕捉容積110、112、210、212内の液体電解質とに実質的に分離するように構成されることがある。
【0128】
[00149]いくつかの実施形態では、例えば図1に示されるように、電解質捕捉及び返還システムは、捕捉された電解質130又は131を、それが捕捉された半電池チャンバ132、142に排他的に戻し、対電極半電池チャンバ132、142から捕捉された電解質131又は130との混合を可能にしないように構成されることがある。
【0129】
[00150]いくつかの実施形態では、例えば図2に示されるように、電解質捕捉及び返還システムは、共通のセル200の反対の半電池チャンバ232、242から捕捉された電解質を、膨張容積(以下でさらに詳細に述べる)などの共通の容積で混合できるように構成されることがある。
【0130】
[00151]様々な実施形態において、捕捉容積は、広範囲の適切な構造及び材料で構成されることがある。例えば、いくつかの実施形態では、各半電池チャンバ132、142、232、242に関する捕捉容積は、双極又は単極スタック構成で1つ又は複数のセルフレーム又は構造に統合されることがある。他の実施形態では、捕捉容積及び導管は、セルフレームの外部に提供され、捕捉された電解質をセルに送り戻すように構成されることがある。
【0131】
[00152]いくつかの実施形態では、捕捉容積110、112、210、212は、気体及び/又は液体電解質のみを含む空の容積でもよい。他の実施形態では、捕捉容積110、112、210、212は、関連の半電池から逃げる流体混合物からの液体電解質液滴を凝縮するのに適した1つ又は複数の凝縮材料を含むことがある。凝縮材料は、一般に、電解質による劣化の影響を受けない高表面積の材料を特色とすることがある。そのような凝縮材料は、金属及び/又は非金属材料の多孔質構造、例えば織布若しくは不織布ポリマー若しくは金属メッシュ、シート、発泡体、グリッド、又は三次元構造を有する発泡材料を含むことがある。他の例では、凝縮材料は、緩く高分子結合された又は焼結された構造の1つ又は複数の材料(例えばセラミック、金属、又は金属酸化物)の粒子を含むことがある。液気セパレータ182、184、282、284の捕捉容積110、112、210、212は、液体領域内の液位の上方に気体ポケット領域を備えることがある。
【0132】
[00153]一般に、捕捉容積の体積容量は、半電池チャンバからの最大電解質流出速度に対応するのに十分な電解質を捕捉するのに十分な容積を提供するようなサイズにすることができる。本明細書の他の箇所で述べるように、任意の所与の時点に半電池チャンバから逃げる流体の液体含有量は、その時点でのセルの動作段階に応じて決まることがある。さらに、いくつかの実施形態において、電解質捕捉容積の理想的なサイズは、捕捉された電解質が、それが逃げたセルに戻される流量に応じて決まることがある。電解質が戻される流量は、ポンプ速度に応じて決まることがある。
【0133】
[00154]いくつかの実施形態では、捕捉容積は、例えば、より多くの電解質が捕捉容積110、112、210、212に導入されるにつれて変位又は伸張されることがある可動ピストン、又は伸張可能なダイヤフラム、伸張可能な膜、若しくは弾性の伸張可能な管若しくは導管の使用によって、可変容積を有するように構成することができる。
【0134】
[00155]いくつかの実施形態では、液体電解質のみがポンプ172、174、272、274に引き込まれて半電池チャンバ132、142、232、242に戻されることを保証するために、捕捉容積110、112、210、212の底部220から気体を排除することが望ましいことがある。例えば、いくつかの実施形態では、多孔質親水性材料126、226の区域は、捕捉容積出口118、119、218、219に隣り合う気体ポケットの形成を実質的に制限するように、捕捉容積110、112、210、212の底部の近くに配置されることがある。ポンプ172、174の吸入圧力よりも大きいバブルポイントを有する多孔性親水性材料又は膜126、226を使用することができる。バブルポイントは、気泡が膜を通過する気体圧力であり、水濾過などの産業で使用される膜に関するカタログに列挙されていることが多い規準である。膜又は材料のバブルポイントは、経験的に決定することもできる。
【0135】
[00156]例示的な材料又は膜126、226は、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、スルホン化ポリエーテルスルホン膜、ポリアクリロニトリル膜、ポリビニリデンジフルオライド膜、混合セルロースエステル、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエステル、多孔質セラミック構造、3次元多孔質金属構造、例えばメッシュ、グリッド、又は発泡体(例えばニッケル、チタン、又は他の金属若しくは金属合金)、セラミック、サーメット、複合材、又はこれら若しくは他の材料の組合せから作製された膜を含むことがある。
【0136】
[00157]同様の目的は、捕捉容積110、112、210、212内の任意の電解質130、131の上で浮動するように構成された浮動分割器で実現することもできる。いくつかの実施形態では、浮動分割器は、捕捉容積が液体電解質を含まない又は閾値容積未満の液体電解質を含むときに気体が捕捉容積出口から出るのを妨げるように、捕捉容積出口118、119、218、219を封止するように構成されることがある。さらに他の実施形態では、他の相分離材料又は構造を使用して、実質的に液体電解質のみが、出口118、119、218、219に隣り合う電解質捕捉容積110、112、210、212の底部領域220を占めることを可能にすることができる。
【0137】
[00158]他の実施形態では、気体が出口118、119、218、219を通って捕捉容積110、112、210、212から出ることができるように、親水性膜、フロータ、又は他の構造を省略することもできる。出口118、119、218、219を通って捕捉容積110、112、210、212から出る気体は、一方又は両方の半電池チャンバ132、142、232、242に圧送されることがある。
【0138】
[00159]捕捉容積110、112、210、212のいくつかの実施形態は、返還導管114、116、214、216から電解質捕捉容積110、112、210、212に戻る電解質の逆流を妨げるために、一方向弁221を有する出口118、119、218、219を備えることがある。ダックビル弁、ポペット弁、ボール逆止弁、ダイヤフラム逆止弁、傾斜ディスク逆止弁、フラッパ弁、リフト逆止弁、アンブレラ逆止弁、ピストン逆止弁、スイング逆止弁、デュアルプレート(ダブルドア)逆止弁など、任意のタイプの一方向弁(逆止弁)を使用することができる。一方向逆止弁は、弁に接触する液体電解質及び気体による損傷に耐性があるように選択されたポリマー、金属、セラミック、若しくは他の材料、又は材料の組合せなど、任意の適切な材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、一方向弁は、流体を電解質捕捉容積110、112、210、212から返還導管114、116、214、216を通して半電池チャンバ132、142、232、242に移動させるように構成されたポンプに統合されることがある。
【0139】
[00160]いくつかの実施形態では、電解質捕捉及び返還システム及び/又は補給液供給システムは、液位センサなしで動作することができる。いくつかの従来の電気化学セルでは、液位センサは、典型的には、補給流体添加の速度、セルを通る電解質の流れの速度、及び/又はセルからの気体抽出の速度を制御するために使用される。そうではなく、本明細書で述べるシステム及び方法は、圧力差、流体逃がし要素、及び逆止弁を利用して、電子制御装置、センサ、液位センサなどを必要とせずに、電解質液位及び補給流体添加速度を正確に、しかし受動的に管理する。これは、コストを削減し、センサ、電気機械アクチュエータ、及び電子制御システムに関連する故障モード及びエラーをなくし、以てメンテナンス、ダウンタイム、及び交換の必要性を減らすという点で有利であり得る。
【0140】
[00161]ポンプ172、174、272、274は、電解質捕捉容積110、112、210、212から半電池チャンバ132、142、232、242に流体(例えば電解質、気体、及び/又は他の流体)を輸送するための電解質返還導管に沿って配置されることがある。いくつかの実施形態では、ポンプ172、174、272、274は、1つ又は複数の容積式ポンプタイプ、例えば、ピストンポンプ、蠕動ポンプ、ロータリローブポンプ、プログレッシブキャビティポンプ、スクリューポンプ、ロータリギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、ベーンポンプ、又は他の容積式ポンプ若しくは他のポンプタイプを備えることがある。様々な実施形態において、捕捉された電解質をスタック用のセルに戻すために、任意の数のポンプを使用することができる。いくつかの実施形態では、システムは、セルごとに1つのポンプ、半電池ごとに1つのポンプ、セルのスタック全体に関して1つのポンプ、又はスタックの全ての正の半電池に関して1つのポンプ及びスタック用の全ての負の半電池に関して第2のポンプを使用することができる。他の構成も可能である。
【0141】
[00162]いくつかの実施形態では、ポンプ172、174、272、274は、「圧力平衡」様式で、つまり半電池チャンバ132、142、232、242内の流体圧力を所定の閾値を超えるほどに増加させることなく、電解質をセル又は半電池チャンバに戻すように構成及び配置されることがある。いくつかの実施形態では、これは、センサ及び閉ループ制御システムを使用する能動制御によって達成されることがあり、いくつかの実施形態では、ポンプ/セルシステムの「圧力平衡」は、圧力平衡ポンプタイプを使用することによって受動的に達成されることがある。
【0142】
[00163]本明細書で述べる様々なシステム及び方法での使用によく適した1つのタイプの「圧力平衡」ポンプは、本明細書では「空洞ポンプ」と呼び、その例が図3に示されている。
【0143】
圧力平衡「空洞」ポンプ
[00164]図3Aは、本明細書で述べる電気化学システム実施形態の様々な態様で使用することができる例示的な「空洞ポンプ」300を概略的に示す。空洞ポンプは、圧送される流体の受動圧力調整を可能にし、また、単一の単純な作動機構で、多数の並列又は同時のフローチャネル内の流体の流れを同時に押し流すことができることが有利である。空洞ポンプは、最小限の可動部品を含むこともあり、圧送すべき苛性流体と高度に適合性のある安価な材料から作製されることがあり、双極又は単極セルスタックに統合されることがある。
【0144】
[00165]空洞ポンプは、1つ又は複数の圧縮可能な「ドライバ」要素と接触している作動流体(すなわち圧縮性又は非圧縮性流体)に圧力を加えることによって動作する。加えられた圧力は、圧縮可能なドライバ要素(例えば、圧縮可能なチューブ、ダイヤフラム、又は他の偏向可能な構造)に同時に伝達され、以て、流体を圧縮可能な要素から出し入れする。空洞ポンプを通る流れの方向は、一方向逆止弁によって受動制御することができる。
【0145】
[00166]図3Aは、空洞ポンプ300がハウジング310を備えることがあり、複数の流体駆動管312がハウジング310の内部を通って延び、ハウジング310の内部が、管312を取り囲む作動流体320で充填されている、概略図である。各管312は、ハウジング310の第1の端壁332の外側の上流流体導管324及び第2の端壁334の外側の下流流体導管326に結合することができる。上流の一方向弁342及び下流の一方向弁344が、各管312又は導管324、326に配置されることがある。上流弁342と下流弁344とはどちらも、管を通って第1の方向(例えば、図3Aに示される向きでは下方向)への流体の流れを可能にし、反対方向への流体の流れを妨げるように配置されることがある。空洞ポンプ300は、ハウジング310内に含まれ、管312を取り囲む作動流体320に流体圧力を加えるように配置されたアクチュエータ350を含むこともある。
【0146】
[00167]本明細書で使用するとき、「ドライバ要素」、「流体ドライバ」、又は単に「ドライバ」という用語は、作動流体によって圧縮又は偏向されるときに、輸送される流体を流体搬送導管を通して押し流す圧縮可能又は偏向可能な構造を備える構造的な空洞ポンプ構成要素を表す。図3Aの概略的な例では、管312は、偏向可能な構造(圧縮可能な管壁)と流体搬送導管(管内の管腔容積)との両方を備える。したがって、図3Aの管312は、「ドライバ」、及びドライバの作動(圧縮又は偏向)によって流体が押し流される導管の一部分として表すことができる。「ドライバ」という用語は、「圧縮可能な要素」、「偏向可能な要素」、「圧縮可能な導管区域」などの他の用語、又は同様の構造を示唆する他の用語と同等であることが意図される。
【0147】
[00168]いくつかの実施形態では、図3Aにおいて管312として表される流体ドライバは、硬質プラスチック、金属、セラミックなどの非圧縮性材料から作製されることがあるが、ピストン、ベローズ、ダイヤフラムなどチャンバの圧縮を可能にする構成で配置されることがある。流体ドライバは、導管312内の流体を上流端352から下流端354に押し流すために、アクチュエータ350によって加えられた(正又は負の)圧力を流体搬送導管312に伝達することができる任意の形状又は配置の任意の構造を含むことができる。
【0148】
[00169]空洞ポンプ300は、アクチュエータ350が作動流体320を圧縮するときに、管312並びに対応する上流導管324及び下流導管326によって画定される各フローチャネルの上流端352から下流端354に向かって流体を搬送するように動作することができる。作動流体320に加えられた増加された圧力は、流体内の各圧縮可能な要素312の区域に伝達され、以て、下流の一方向逆止弁344を通してある体積の流体を排出する。管312の流体は、上流の一方向弁342によって逆流するのを防止される。作動流体320及び管312の圧縮圧力が解放されると、上流弁342の上流での流体圧力がハウジング310内(したがって管312内)の低減された圧力よりも大きい場合、流体は、上流弁342を通って対応する内部配管区域312に下流方向に流れることができる。いくつかの実施形態では、上流の流体を配管区域312に引き込むために、作動流体に負圧が加えられることがある。
【0149】
[00170]いくつかの実施形態では、圧縮可能な要素312(又は本明細書で述べる一方向弁、ダイヤフラム、又は他の可撓性構造)は、ゴム状の特性を有する1つ又は複数の弾性圧縮性材料のいずれかで作製されることがあり、そのような材料は、例えば、ラテックスゴム、加硫ゴム、シリコーン、天然ゴム、イソプレン、イソブチレンイソプレン、エピクロロヒドリン、ポリクロロプレン、パーフルオロエラストマースチレンブタジエンゴム(SBR)、他のブチルゴム、エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、他のエチレンプロピレンゴム、ニトリル、ネオプレン(ポリクロロプレン又はpcゴム)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSPE又はHYPALON)、フルオロエラストマーなどである。
【0150】
[00171]図3Aは円形断面の配管を示しているが、配管又は他の圧縮可能な要素は、望みに応じて任意の断面形状にすることができる。いくつかの実施形態では、圧縮可能な要素は、それ自体は実質的に非圧縮性であるが、圧送すべき流体を含む内部容積を減少させるために圧縮又は偏向させることができる断面形状又は他の形状である材料から作製されることがある。他の実施形態では、配管、圧縮可能な要素、又は他の流体駆動要素は、圧縮性材料から作製されることがある。
【0151】
[00172]弾性の圧縮性流体ドライバ材料は、正又は負の作動圧力のいずれかによって作動させることができ、作動圧力の解放時に自己膨張することができるという点で有益であり得るが、流体ドライバは、作動流体320によって圧縮又は偏向することができさえすればよい。弾性は、配管の必須の特性ではない。したがって、ポリテトラフルオロエチレン配管、ポリビニル配管などの他の非弾性又は最小弾性の圧縮性材料を使用することもできる。
【0152】
[00173]空洞ポンプ300によって制御可能な独立した流れ(すなわち、流入及び流出導管324、326並びに導管312の組合せ)の数は、ハウジング310内に適合することがある流体ドライバ及び導管312の数によってのみ制限される。したがって、空洞ポンプ300は、ハウジングのサイズ及び導管又は流体ドライバのサイズを選択することによって、任意の数の並列のポンプ流を保持するように構成されることがある。
【0153】
[00174]様々な実施形態において、ハウジング310は、作動流体320の漏れに対して封止すべきである。したがって、ハウジング310に取り付けられている、又はハウジング310を通って延びる任意の導管312又は導管324、326は、ハウジング310に封止されることがある。いくつかの実施形態では、管312及び/又は導管324、326は、溶接、接着剤、継手、結合機構、又は他の機構若しくは方法などによって、エンドプレートに封止されることがある。例えば、いくつかの実施形態では、ハウジングエンドキャップ332、334は、エンドキャップに取り付けられた又はエンドキャップと一体的に形成された、直線状の、ねじ付きの、又は棘付きのコネクタを有することがある。例えば、コネクタは、エンドキャップ(又は他のハウジング部品)の一部として成形、機械加工、又は3D印刷などを施されることがある。
【0154】
[00175]様々な実施形態において、ハウジング310内の流体ドライバ312は、ハウジング310の外側に位置する流体搬送導管332、334とは異なる材料でもよい。したがって、いくつかの例では、上流の流体搬送導管324は、第1の材料から作製されることがあり、ハウジング区域に取り付けられる又はハウジング区域と一体的に形成されることがある外側結合機構に連結されることがある。対応する流体ドライバ区域312は、内部ハウジング区域に取り付けられる又は一体的に形成されることがある内部結合機構に連結されることがある。いくつかの実施形態では、上流の流体搬送導管324及び/又は下流の流体搬送導管326は、エンドキャップや側壁など、ハウジング310の一部分又はハウジング310に取り付けられた1つ若しくは複数の部品と一体的に形成されることがある。
【0155】
[00176]図3Aは、ハウジング310の両端332、334を通って直線的に延びる流体導管324、326及び流体ドライバ導管(管)312を示すが、これは、全ての実施形態に当てはまる必要はない。いくつかの実施形態では、流入(上流)導管324及び対応する流出(下流)導管326は、互いに同じハウジング壁(例えば、端壁、エンドキャップ、又は側壁)を通過することがある。いくつかの実施形態では、上流の流入導管324及び対応する下流の流出導管326は、互いに垂直に、又は互いに対して任意の他の向きでハウジング壁を通過することがある。そのような実施形態では、圧縮性流体ドライバ導管(例えば管)312又はハウジング内の他の導管構造は、ハウジング310内で湾曲又は屈曲することがある。
【0156】
[00177]いくつかの実施形態では、ハウジング310内の流体ドライバ312の一部分のみが圧縮可能でよく、流体搬送導管の他の部分は、単に流体の流れを送る非圧縮性材料から作製されることがある。いくつかの実施形態では、空洞ポンプは、2つ以上の流れが入口端及び/又は出口端で合流されることを可能にするマニホルド又は他の構成で互いに連結された2つ以上の上流の流入導管324又は下流の流出導管326を有して構成されることがある。
【0157】
[00178]図3Aのハウジング310は、他の構造から独立した円筒形状を有するものとして示されているが、様々な実施形態において、ハウジング310は、球形、又は長方形若しくは他の角柱などの角柱形状など、望みに応じて任意の他の形状でもよい。様々な実施形態において、ハウジングは、プラスチック、金属、セラミック、又は所望の作動流体及び作動圧力に適した複合材を含む任意の材料又は材料の組合せから作製されることがある。
【0158】
[00179]いくつかの実施形態では、ハウジング310は、複数の積み重ねられた層を連結することによってハウジング容積を形成することなどによって、電気化学セルスタックに統合されることがある。例えば、ハウジング310は、複数の個々のセル又は半電池のそれぞれのための作動流体及び流体ドライバ312を含むことがある共通の容積に複数のセルスタック層の一部分を連結するマニホルド、導管、又は他の構造を備えることがある。図3B図3Cを参照して一例を以下に述べる。
【0159】
[00180]様々な実施形態において、空洞ポンプ300の一方向弁342、344は、ダックビル弁、ポペット弁、ボール逆止弁、ダイヤフラム逆止弁、傾斜ディスク逆止弁、フラッパ弁、リフト逆止弁、アンブレラ逆止弁、ピストン逆止弁、スイング逆止弁、デュアルプレート(ダブルドア)逆止弁など、任意の一方向逆止弁を含むことがある。一方向逆止弁は、弁に接触する液体電解質及び気体による損傷に耐性があるように選択されたポリマー、金属、セラミック、若しくは他の材料、又は材料の組合せなど、任意の適切な材料から作製することができる。一方向弁342、344は、ハウジング310の外側に配置されて示されているが、代替として、ハウジング容積内に、又は結合機構、エンドキャップ、若しくはハウジング自体の他の構造内に配置されることもある。図3Aは、導管ごとに1つの上流弁342及び1つの下流弁344のみを示すが、空洞ポンプ300は、単一の管又は導管に任意の数の弁を含むことがある。
【0160】
[00181]図3Aは、単純なピストン356の形態でのアクチュエータ350を示し、このアクチュエータ350は、ピストン356がハウジング310に向かって移動するときに正圧を加えることができ、いくつかの実施形態ではピストン356をハウジング310から離れるように移動させることによって負圧を加えることができる。様々な実装形態において、ピストンの代わりに又はピストンと組み合わせて、任意のタイプのアクチュエータを使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、アクチュエータ350は、ピストンが回転モータ又はリニアモータによって駆動されるピストンポンプを備えることがある。他の実施形態では、アクチュエータ350は、増加された圧力を流体に断続的に加えることができる任意の他のポンプタイプを備えることがある。そのようなポンプのいくつかの例は、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、又は他のタイプの断続的に作動される容積式ポンプを含むことがある。他の実施形態では、アクチュエータ350は、電子制御式ソレノイド、サーボ、又は他の電気機械デバイスを備えることがある。他の実施形態では、アクチュエータ350は、圧縮気体源又は加圧液体源などの高圧(又は低圧)源から作動流体に断続的に圧力を加えるように作動可能な圧力調整器を備えることがある。
【0161】
[00182]様々な実施形態において、作動の頻度(すなわち、単位時間あたりに作動圧力が加えられる回数)は、(例えば、単位時間あたりの流体体積又は質量に関する)所望のポンピング速度に基づいて選択されることがあり、そのポンピング速度は、空洞ポンプによって移動すべき流体の体積に基づいて選択することができる。アクチュエータによって加えられる圧力の大きさは、予想される又は所望の下流圧力など他のシステムパラメータに基づいて選択することもできる。
【0162】
[00183]しかし、各作動中に各流体ドライバ312から押し流される流体の体積は、単に管又は他の圧縮可能若しくは偏向可能なドライバ区域の圧縮可能な内部容積であり得るので、作動圧力を厳密に制御する必要はない。流体ドライバ312の過剰な圧縮は、過剰な圧力に耐えることができる圧縮性材料を選択することによって許容することができる。他方、最大作動圧力は、所望の最大下流圧力に基づいて選択することができる。下流弁344の下流での特定の導管326内の圧力が、作動圧力を受ける流体ドライバ312内の圧力を超える(又は等しい)場合、流体は、その作動中に対応する管から単に流出しない。
【0163】
[00184]いくつかの実施形態では、空洞ポンプは、任意の他のシステム状態から独立して、開ループ制御式に動作されることがある。空洞ポンプの性質は、上流の流体が利用できない(すなわち低圧である)場合に、又は下流の圧力が作動圧力によって引き起こされる流体ドライバ312内の圧力を超える場合に、流体が単純にポンプを通って流れず、ドライバに作動圧力を引き続き加えることによってポンプが必ずしも損傷を受けないようなものである。いくつかの場合には、流体は、いくつかのドライバ/導管312及び導管324、326内を流れることがあるが、同じポンプ300での他のドライバ/導管312及び導管324、326内を流れないことがある。したがって、単一のアクチュエータ350は、ポンプ300又はシステムの他の部品に悪影響を及ぼすことなく、様々なドライバ/導管112及び導管324、326を通して異なる流量で流体を押し流すことができる。
【0164】
[00185]アクチュエータ350は、一般に、「低い」印加作動圧力と「高い」印加作動圧力とで循環するように構成されることがある。「高い」印加作動圧力が下流弁344の下流での流体圧力を超えるとき、流体は流体ドライバ312から排出される。上流弁342の上流での圧力がハウジング310内の作動流体の「低い」圧力よりも大きいとき、流体は流体ドライバ導管312に引き込まれる。「高い」及び「低い」圧力は、絶対的に(すなわち大気条件に対して)正又は負でよく、前述の圧力関係が存在するときに動作可能である。したがって、作動流体に加えられる絶対圧力は、空洞ポンプハウジング310及び/又は流体ドライバ312の上流及び下流での予想又は設計圧力と比較した相対圧力ほど重要ではない。
【0165】
[00186]様々な実施形態において、アクチュエータ350によって作動流体320に加えられる圧力は、絶対正の圧力又は絶対負の圧力でよい。いくつかの実施形態では、加えられる作動圧力は、「低い」正の絶対圧力と「高い」正の絶対圧力との間で循環されることがある。代替として、加えられる作動圧力は、正の絶対圧力と負の絶対圧力との間で循環されることがある。さらなる実施形態では、加えられる作動圧力は、「低い」(より負の)負の絶対圧力と「高い」(ゼロに近い)絶対圧力との間で循環されることがある。
【0166】
[00187]様々な実施形態において、アクチュエータ350は、作動圧力を単一の空洞ポンプハウジング310又は複数の空洞ポンプハウジング310に同時に又は交互に加えるように構成されることがある。例えば、作動圧力の交互の印加は、圧力を交互の導管に送る弁構成によって、又は他の機構によって、ピストンサイクルの両端に作動圧力を印加することを含むことがある。複数の空洞ポンプへの作動圧力の同時印加は、複数の分岐に共通の導管内の作動流体に圧力を印加することによって達成することができ、各分岐は、1つ又は複数の空洞ポンプハウジング及び/又は流体ドライバにつながる。
【0167】
[00188]様々な実施形態において、作動流体は、空気、窒素、アルゴン、若しくは他の気体若しくは気体混合物などの圧縮性流体、又は水、油、若しくは他の非圧縮性液体などの非圧縮性流体でよい。圧縮性作動流体が使用される場合、作動流体への作動圧力の印加中、流体ドライバ312に加えられる圧力は、圧縮又は偏向に対する流体ドライバ312の抵抗を克服するのに必要な圧力量だけ作動圧力よりも低いことがある。したがって、流体ドライバ312に所望の圧力を与えるために、(所望の圧力よりも大きい)余剰圧力を圧縮性流体に加えることができる。
【0168】
[00189]空洞ポンプタイプは、本明細書で述べる電気化学システムにおいていくつかの利点を提供する。ウェアラブル可動部品が非常に少ない低コストのポンプであることに加えて、空洞ポンプは、気液流体混合物を含む流体容積の相対圧力に基づく流体の流れの単純な受動制御を可能にする。さらに、空洞ポンプは多数(例えば数百又は数千)の並列の流れを制御することができるので、単一のポンプを使用して、数百個のセルを含むことがある電気化学セルスタックの個々の半電池など多数の独立した容積での流体の流れを制御することができる。
【0169】
[00190]電気化学システムにおいて空洞ポンプを動作させる一例は、図1及び図2を参照して理解することができる。電解質捕捉容積110、112、210、212内の電解質130、131は、空洞ポンプ300によってセル100、200に圧送されることがある。空洞ポンプ300は、電解質を所望の速度でセル100、200に戻すのに十分な周波数で周期的に作動させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、電解質は、電解質が半電池チャンバ232、242から捕捉容積110、112、210、212に逃げる予想速度にほぼ等しい速度でセル100、200に戻されることがある。捕捉容積110、112、210、212の出口118は、空洞ポンプ300の入口端で導管に連結されることがあり、1つ又は複数の管又は他の流体ドライバ312が、捕捉容積出口導管に連結されることがある。
【0170】
[00191]空洞ポンプ300の各作動時に、捕捉容積出口118の下流での電解質の体積は、流体ドライバの作動によって、返還導管114、116、214、216に向かって下流に押し流されることがある。返還導管114、116、214、216内の流体圧力は、膨張容積280(存在する場合)及び半電池チャンバ232、242内の流体圧力によって影響を及ぼされることがある。返還導管114、116、214、216内の圧力が、空洞ポンプの作動によって与えられる流体圧力よりも低い場合、管312からの流体の体積は、返還導管114、116、214、216に押し流される。空洞ポンプ作動圧力が解放(又は減少)されるとき、捕捉容積110、112、210、212内の流体圧力が流体ドライバ区域172、174、272、274内の「低い」流体圧力を超える場合、ある体積の流体が上流弁221を通って流れて、空洞ポンプ300内の流体ドライバ導管を充填する。
【0171】
[00192]図1及び図2は、各半電池電解質捕捉容積110、112、210、212に関連する単一の空洞ポンプ流体ドライバ172、174、272、274を概略的に示す。しかし、様々な実施形態において、単一の空洞ポンプ流体ドライバは、任意の数の半電池電解質捕捉容量に関連付けられることがある。例えば、いくつかの実施形態では、セルスタック全体における全ての電解質戻りポンプ管が、1つの空洞ポンプ流体ドライバ又は1つの共通のハウジング容積に関連付けられることがある。他の実施形態では、全ての正の半電池電解質返還ポンプ流体ドライバは、1つの空洞ポンプハウジング(第1の共通の流体体積によって作動される)にあってよく、全ての負の半電池返還ポンプ管は、第2のハウジング(第2の共通の流体体積によって作動される)にあってもよい。いくつかの実施形態では、単一のアクチュエータが、正の半電池空洞ポンプを駆動する第1の作動流体と、負の半電池空洞ポンプを駆動する第2の作動流体との両方に作動圧力を加えることができる。他の実施形態では、流体ドライバは、セル又は半電池の様々な他の組合せに束ねられることがある。いくつかの実施形態では、「ポンプ」又はポンプ構成要素は、個々の電気化学セルごとに、又は代替として個々の半電池ごとに、例えば個々の導管又は個々の導管区域として提供されることがある。
【0172】
[00193]様々な実施形態において、空洞ポンプハウジングは、積み重ねられたプレートアンドフレームセルスタック構造の層のアパーチャによって画定される容積を備えることがある。そのような実施形態では、流体ドライバ区域は、ハウジング内の作動流体が流体ドライバの下流での導管区域内の流体を押し流すことを可能にするように、ハウジング内に又はハウジングに隣り合って配置されることがある。
【0173】
[00194]図3B及び図3Cは、図11図12Bを参照して以下でさらに述べるように、積み重ね可能なセルフレームに統合されることがある空洞ポンプの例示的実施形態の平面実装形態を示す。図3B及び図3Cでは基板及びポンプ特徴部が水平面に示されているが、セルスタックの様々な実装形態では、セルフレーム及びポンプ特徴部が垂直面(又は任意の他の面)に向けられることもある。
【0174】
[00195]図3B及び図3Cに示される例示的実施形態では、空洞ポンプ360は、セルスタックのセルフレームの一部分でよい基板364内の特徴部として形成されたポンプチャンバ362(図3Aのハウジング310と同様の機能を実施することができる)を備えることがある。ポンプチャンバ362は、流入(上流)アパーチャ366及び流出(下流)アパーチャ368を備え、各アパーチャが一方向弁367、369を受け入れるように構成される。図3B及び図3Cは、アンブレラタイプの弁として一方向弁を示すが、本明細書で述べるように、任意の他の一方向弁タイプを使用することもできる。流入(上流)アパーチャ366は、基板364の流入(上流)導管370に流体的に接続されることがある。同様に、流出(下流)アパーチャ368は、基板364の流出(下流)導管372に流体的に接続されることがある。
【0175】
[00196]ポンプ360は、可撓性ダイヤフラム374の形態での流体ドライバを備えることもある(しかし、本明細書で述べるように他の流体ドライバタイプを使用することもできる)。図示の実施形態では、カバー376を設けて、アセンブリが圧縮されたときに基板に対してダイヤフラム374の周縁部に圧縮力を伝達することもできる。カバー376は、作動流体がカバー376の周りを流れてダイヤフラム374に接触することを可能にするために、様々な開口部377、チャネル378、又は他の構造を備えることもある。いくつかの実施形態では、カバー376は、作動流体が通過することを可能にするための穴又はスロットを有する固体ディスクなど他の構造を含むことがある。カバー374は、作動流体フローチャネルを維持しながら封止を保証するために、ダイヤフラム374よりも剛性が高い又は圧縮性が低い材料から作製されることがある。
【0176】
[00197]基板364のチャネル381に対して圧縮されたときにポンプチャンバ362を周囲の容積から封止するために、ガスケット又はOリング380を設けることもできる。様々な実施形態において、ガスケット又はOリング380は、カバー376及びOリング380に押し付けられた隣り合うセルフレーム又はカバーシートなど、隣り合う平面構造(図3Bには図示せず)に対して封止することができる。
【0177】
[00198]図3Bは、第1の作動流体導管382及び第2の作動流体導管384も示す。いくつかの実施形態では、作動流体導管382、384は、それぞれ流入(上流)導管及びパージ導管として使用することができる。例えば、第2の作動導管384から出る流れが妨げられた状態で作動流体を第1の導管382に押し流すことによって作動を行うことができ、以て、両方の導管での圧力上昇及びダイヤフラム374の上方のポンプハウジング362での圧力上昇を引き起こす。そのような例では、作動が完了すると、第2の作動流体導管384からの流出を許すことによって圧力を低下させることができる。いくつかの実施形態では、一方又は両方の導管382、384を使用して、ダイヤフラム374の上の作動流体に作動圧力を加えることができ、及び/又はいずれかの導管382、384を通して圧力を解放することができる。いくつかの実施形態では、単一の作動流体導管366又は368が存在し、第2の導管が省略されることがある。
【0178】
[00199]図3Bは、押し流された流体(例えば、本明細書のいくつかの実施形態では電解質)がポンプチャンバ362に流入することができる押流し流体流入(上流)導管370をさらに示す。押し流された流体は、押流し流体流出(下流)導管372を通してポンプチャンバ362から流出することもある。様々な実装形態において、押流し流体流入導管370、押流し流体流出(下流)導管372、流入(上流)アパーチャ370、及び流出(下流)アパーチャ372のうちの1つ又は複数は、ポンプチャンバ362から離れた基板の領域に位置し、導管又はチャネルによってポンプチャンバ362に流体的に接続されることがある。そのような構成の例は、図11図12Bを参照して本明細書で述べる。
【0179】
[00200]図3Cは、図3Bの組み立てられた空洞ポンプ360の断面線C-Cを通る断面図である。図3Cの組み立てられたポンプは、ポンプチャンバ362及び作動流体導管382、384を囲むように、Oリング380に対して封止された上部カバーシート390をさらに含む。底部カバーシート392は、一方向弁367、369、並びに押流し流体流入(上流)導管370及び押流し流体流出(下流)導管372を囲んで収容するために含まれる。いくつかの実施形態では、作動流体導管382、384は、セルスタックの全てのセルフレームを介して連続的に接続されることがある(つまり、導管382、384は、上部カバーシート又は隣り合うセルフレームの開口部を通過することがある)。
【0180】
[00201]作動流体が作動流体導管382内でポンプチャンバ362に向かって押し流されるとき、圧力(及び/又は流体の流れ)は、作動流体導管382を通して、カバー376のチャネル378を通して、ダイヤフラム374の作動側(図示では上面)と接触して伝達されることがある。作動圧力の影響下で、ダイヤフラム374は、一方向弁369、370に向けて下方向に偏向されることがあり、以て、ダイヤフラム374の下のポンプチャンバ362内の流体圧力を増加させる。流出(下流)一方向弁369は、増加された圧力の影響下で開くことがあり、流体が押流し流体流出(下流)導管372を通ってポンプチャンバ362から流出することを可能にする。
【0181】
[00202]作動圧力が解放又は逆転されるとき、押流し流体流入(上流)導管370内の圧力は、ダイヤフラム374の下のポンプチャンバ362内の圧力を超えることがあり、以て、押し流された流体が流入(上流)一方向弁367を通ってポンプチャンバ362に流入することを可能にする。
【0182】
容積膨張システム
[00203]図2に示されるように、本明細書で述べる電気化学システムのいくつかの実施形態では、各セル100、200は、セル圧力を受動制御しながら、セル容積内の流体の体積膨張を可能にするように構成された膨張容積280を有して構成されることがある。いくつかの実施形態では、膨張容積280は、膨張容積及びそれに連結された導管内の高圧流体の圧力を低圧電解質が直接低下させることができるという意味で、セルの正の電解質131と負の電解質132との流体圧力が「連動」される領域を実現するように構成されることもある。
【0183】
[00204]気体発生電気化学反応のために構成された電解セル100、200がアイドル状態から最初に電源投入されるとき、気泡が急速に生成され、液体電解質130、311を押し退ける。不変サイズの容積では、気体状流体のこの増加により、半電池内の流体圧力が急速に増加する。各半電池で気体が生成される速度の相違は、かなりのセパレータ横断圧力差をもたらすことがあり、これは、セパレータ全体にわたって又はシールの周りに液体電解質及び/又は気泡を押し流すことがあり、気体クロスオーバ及び/又は漏れを引き起こす。さらに、セルでの電気化学反応が発熱性である場合、半電池チャンバ内の気体及び液体電解質は膨張する傾向がある。容積が制約されている場合、代わりに、熱膨張が、半電池チャンバ内の流体圧力を増加させる。従来の電解槽では、そのような圧力の揺れは、各セルを通して電解質を流し、以て余剰の流体体積を搬送除去することによって管理されている。
【0184】
[00205]中で流体が膨張することがある膨張容積を各セルに提供することによって、セルに電解質を流す必要なく各半電池内の圧力を受動制御することができる。両方の半電池チャンバからの電解質を共通の体積に膨張させることで、半電池内の圧力の受動的な平衡を可能にすることができ、以て、セパレータ横断圧力差を最小限に抑える。
【0185】
[00206]図2の例では、膨張容積280は、ばね281によって概略的に表される
ばね力による膨張に抵抗する膨張可能なベローズ283として示されている。様々な実装形態において、膨張容積は、膨張を可能にしながら流体体積を収容することができる材料及び構造から作製されることがある。例えば、膨張容積は、バルーン状の構造、1つ若しくは複数の可撓性ダイヤフラム、1つ若しくは複数のベローズ、又は他の構造を備えることがある。
【0186】
[00207]いくつかの実施形態では、膨張容積280は、膨張に対してある程度の抵抗を及ぼすように構成されることがあり、流体体積が膨張するにつれて少なくともいくらかの圧力の増加をもたらす。これは、図2のばね281によって概略的に示されている。様々な実施形態において、膨張に対する抵抗は、ベローズ、ダイヤフラム、バルーンなど膨張可能な部材のばね定数として実装されることがある。いくつかの実施形態では、膨張に対する抵抗は、膨張容積境界(例えばダイヤフラム又はバルーン壁)の反対側での作動流体(液体又は気体)の使用によって制御することができる。いくつかの実施形態では、膨張に対する抵抗は、膨張変位に応じて決まることがあり、以て、容積が膨張するにつれて増加する膨張に対する抵抗を適用する。例えば、膨張に対する抵抗は、膨張の線形、面積、又は体積尺度の線形関数又は非線形関数(例えば、幾何学的、ステップ関数、指数関数など)でもよい。
【0187】
[00208]いくつかの実施形態では、膨張容積は、正の電解質131と負の電解質130との混合を防ぐが、両方の電解質が一緒に膨張することを可能にするように構成された個別の領域又は区室に分割されることがある。例えば、可撓性の膨張可能なダイヤフラムを使用して、正の電解質と負の電解質とを分離することができる。他の例では、膨張容積は、非可撓性の分割器によって2つのチャンバに分割されることがある。そのような実施形態では、各膨張容積チャンバは、1つ又は複数の流体導管によってそれぞれの半電池チャンバに個別に連結されることがある。
【0188】
[00209]さらなる実施形態では、セルは、正の電解質131、231及び負の電解質130、230のための別個の独立した膨張容積を有して構成されることがある。例えば、いくつかの実施形態では、電解質返還導管114、214、116、216は、弾性の膨張可能な配管の一区域などの膨張可能な導管、又は上述したような他の膨張容積構造から作製される又はそれらに連結されることがある。
【0189】
[00210]いくつかの実施形態では、電解質131、130が膨張容積280などの共通の圧力容積に連結されるかどうかにかかわらず、共通の圧力の個別の領域がセル100、200に実現されることがある。例えば、いくつかの実施形態では、正のヘッドスペース134、234は、共通の補給液供給導管179、279又は滴下チャンバ(以下でさらに述べる)によって負のヘッドスペース144、244に連結されることがある。代替として、単一のセルからの正及び負の電解質に共通の圧力領域を、セルの任意の他の領域に実現することができる。様々な実施形態において、共通の圧力領域は、正の電解質と負の電解質との混合を可能にする又は防止するように構成されることがある。以下でさらに詳細に述べる図13は、複数の電気化学セルのセルスタックの構成要素として実質的に平面状のセルフレームに実装された例示的な膨張容積を示す。
【0190】
気体収集システム
[00211]図2を参照すると(しかし他の図での例にも同様に適用可能である)、電気化学システムでの各電気化学半電池232、242は、気体除去流体252が流れることができる気体除去マニホルド222、224と流体連通することがある。1つ又は複数の流体逃がし要素260、261を通って半電池チャンバ232、242から逃げる気体は、気体除去マニホルドと連通する気液セパレータ282、284内に圧力を生成することができ、気体除去マニホルドを、半電池圧力よりも低い、且つ上述した補給液供給マニホルド圧力よりも低い圧力で維持することができる。気体除去液体252に接触する気体は、気体除去液体252に溶解する及び/又は気泡を形成することがあり、次いで、流れる気体除去液体252によってセル200から搬送除去されることがある。
【0191】
[00212]いくつかの実施形態では、気体除去液体252は、セル200内の電気化学反応で消費された液体を補充するために供給マニホルド278を通してセル200に送達されるものと同じ液体でもよい。例えば、電気化学システムがアルカリ電解槽である実施形態では、気体除去液252及び補給液は、(少なくとも主に)脱イオン水でもよい。他の実施形態では、気体除去液体252は、セルに供給される液体とは異なる液体でもよい。気体除去液体は、好ましくは非導電性液体であり、好ましくは本明細書で定義される脱イオン水以下の導電性である。例えば、気体除去液体252は、水溶液、溶融塩、イオン液体、油、非水性電解質溶液などでもよい。任意選択で、気体除去液体は、半電池で使用される任意の電解質と比較して異なる又は実質的に異なる組成を有することがある。任意選択で、例えば、気体除去液体は、セルの電解質で使用されるのと同じ溶媒を含むが、電解質で使用される溶質を含まない又は実質的に含まない。気体除去液体は、1つ又は複数の液体種などの1つ又は複数の化学種、及び任意選択で1つ又は複数の溶解種を含むことができる。一般に、気体除去液体は、気体除去マニホルドなどの領域からの気体の除去に(任意選択、主に、本質的に、又はそのためにのみ)使用される液体の体積に対応し、気体の除去は、例えば、気体除去液体中での気体の溶解及び/又は気泡同伴と、任意選択でそれに続く、前記領域からの気体除去液体の輸送とによって行われる。
【0192】
[00213]いくつかの実施形態では、気体除去マニホルドは、実質的に生成された気体のみを含むことがある(つまり、気体除去液体は省かれることがある)。しかし、気体除去液体媒体(又は気体除去液体)の使用は、いくつかの利点を提供する。例えば、気体と共に移動する電解質ミストは、気体除去液体252に溶解され又は取り込まれ、したがって気体流から除去されることがあり、以て電解質不純物の気体を洗う。また、気体除去液体に入った気泡により、気体除去液体に溶解されたCO又は他の気体不純物などの気体を液体から除去することができる(例えばスパージング効果)。また、気体除去液体は、気体除去マニホルド222、224又は気体除去液体が流れる他のパイピング若しくは導管の壁への電解質堆積物の持続的な蓄積を有益に防止することもできる。
【0193】
[00214]いくつかの実施形態では、気体除去液体252は、脱イオン水などの水でもよい。いくつかの実施形態では、正の気体除去マニホルド224内の気体除去液体と負の気体除去マニホルド222内の気体除去液体とは、共通の供給源からの同じ液体でもよい。いくつかの実施形態では、気体除去液体252は、補給液供給マニホルド278を通してセルに供給される液体と同じ液体でもよい。他の実施形態では、正の気体除去マニホルド224内の補給液は、負の気体除去マニホルド222内の気体除去液体とは異なる組成物でもよい、及び/又は異なる供給源からのものでもよい。同様に、供給マニホルド278に供給される補給液は、正の気体除去マニホルド224及び負の気体除去マニホルド222のいずれか又は両方で使用される補給液とは異なる組成でもよい、及び/又は異なる供給源からのものでもよい。
【0194】
[00215]いくつかの実施形態では、気体除去マニホルド内の流体圧力及び流れは、容積式ポンプ、空洞ポンプ、又は本明細書の他の箇所で述べるものを含む任意の他のポンプタイプなど、1つ又は複数のポンプによって適用又は維持されることがある。いくつかの実施形態では、気体除去マニホルドに気体除去液体を供給するポンプは、気体除去マニホルド内にある又は気体除去マニホルドと連通する圧力センサ又はフローセンサ(又は他のセンサ)に基づいて閉ループ制御システムで動作する1つ又は複数の電子制御装置によって制御されることがある。いくつかの実施形態では、両方の気体除去マニホルドに送達される気体除去液体の圧力は、気体除去液体を電気化学セルのスタックに送達する共通のポンプによって制御することができる。いくつかの実施形態では、気体除去マニホルドの圧力は、セルスタックからの出口の下流の領域にある背圧調整器によって制御することができる。
【0195】
[00216]いくつかの実施形態では、正の気体除去マニホルド124、224の圧力は、負の気体除去マニホルド122、222の圧力とは独立して制御されることがある。いくつかの実施形態では、正の気体除去マニホルドと負の気体除去マニホルドとの両方を実質的に同じ圧力で維持することが望ましいことがある。しかし、実際には、気体除去マニホルド内の実際の圧力は、目標制御圧力からわずかにずれている可能性が高く、これは、正の気体除去マニホルド圧力と負の気体除去マニホルド圧力との間でいくらかのばらつきが予想されることを意味する。上述したように、適切な流体逃がし要素は、そのようなばらつきを抑え、半電池チャンバ内の圧力に対するそれらの影響を最小限に抑えることができる。
【0196】
補給液供給
[00217]様々な実施形態において、補給液は、供給マニホルド278を通してセル200に受動的又は能動的に送達されることがある。例えば、受動送達構成のいくつかの実施形態では、補給供給マニホルド278は、補給液が送達されるセル又は半電池チャンバの定常状態動作圧力にほぼ等しい一定の流体圧力で維持されることがある。補給液供給出口にある一方向逆止弁176、276は、セル又は半電池圧力が供給マニホルド圧力を超えたときに補給液が送達されるのを妨げることができる。セル又は半電池チャンバ内の圧力が(例えば、流体逃がし要素を通して流体が半電池から出ることにより)供給マニホルド圧力を下回るとき、圧力が平衡化されて一方向弁が再び閉じるまで、ある量の補給液が逆止弁176、276を通して送達されることがある。
【0197】
[00218]補給液の組成は、本明細書の他の箇所で述べるように実施される反応の詳細に応じて決まることがある。例えば、水分解アルカリ電解槽の場合、補給液は、本質的に脱イオン水からなることがあり、場合によっては低濃度のアルカリ性水酸化物を含む。説明を簡単にするために、本明細書では補給液を単に「水」と呼ぶことがあるが、水の代わりに又は水に加えて他の補給液組成物を使用することもできる。
【0198】
[00219]図1及び図2に概略的に示されるように、補給液は、一方向弁176、276を含むことがある供給導管179、279を通して、供給マニホルド178、278からセル100、200に供給されることがある。一方向弁176、276は、いくつかの利益を提供することがある。
【0199】
[00220]本明細書の他の箇所で述べるように、セル内の流体圧力は、実質的に動作段階に応じて変化することがある。それにもかかわらず、動作の「定常状態」では、半電池チャンバ内の圧力は最小限にしか変動しないことがある。したがって、「定常状態」動作中の平均セル圧力は、経験的に及び/又は設計によって確立することができる。本明細書で使用するとき、「定常状態」動作は、セルの動作変数(例えば、電圧、圧力、温度など)が最小限だけ又は約10%以下だけ変動する動作段階を表す。
【0200】
[00221]特に、セル又は半電池チャンバの定常状態圧力は、約20%以下、いくつかの実施形態では約10%以下、いくつかの実施形態では約5%以下、いくつかの実施形態では約3%未満、及びいくつかの実施形態では約1%未満だけ変化する圧力である。いくつかの実施形態では、定常状態圧力は、約2bar未満、約1bar未満、約0.5bar未満、約0.3bar未満、約0.2bar未満、約0.15bar未満、約0.1bar未満、又は約0.07bar未満だけ変動する圧力である。いくつかの実施形態では、定常状態半電池圧力は、約5psi未満、いくつかの実施形態では約3psi未満、いくつかの実施形態では約2psi未満、及びいくつかの実施形態では約1psi未満だけ変動することがある。定常状態圧力は、約2atm未満、約1atm未満、約0.5atm未満、0.25atm未満、又は0.05atm未満だけ変動する圧力でもよい。
【0201】
[00222]動作の定常状態では、セル内の流体圧力も最小のばらつきを有する傾向があり、セル又は半電池チャンバの「定常状態圧力」と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、半電池圧力は、定常状態動作中に互いに最小限のばらつきを有することがあり、したがって、定常状態セル圧力は、両方の半電池内の定常状態圧力と実質的に同じでもよい。
【0202】
[00223]動作の「定常状態」に加えて、電気化学システムのいくつかの実施形態は、「アイドル」状態、「始動」状態、及び「停止」状態になることがある。電気化学システムの用途に応じて、システムが始動、定常状態での動作、停止、及びアイドルを循環するのに必要とされる速度又は周波数は、実質的に異なることがある。例えば、エネルギー貯蔵部として水素を生成するために使用される電解槽のいくつかの実施形態は、始動、動作、停止、及びアイドルを1日に数回行われることがある。いくつかの実施形態では、電解槽は、電解槽が設計されている最小動作電流と最大動作電流との間の様々な電流で動作することができる。例えば、ソーラーアレイから電力が供給される電解槽は、雲量の変化や他の条件によりソーラーパネルによって生成される電力が瞬時的に変化するため、供給される電流が急激に変化することがある。そのような電流の変化は、セル又は半電池内の圧力に瞬時的な変化を引き起こすことがある。
【0203】
[00224]いくつかの実施形態では、供給マニホルド178、278内の補給液は、補給液が送達される半電池内の予想される定常状態圧力とほぼ等しい又はわずかに高い圧力で維持されることがある。これは、半電池チャンバ232、242内の圧力が供給マニホルド178、278内で維持されている圧力よりも下に降下したときに、セル100、200への補給液の受動的な送達を可能にする。
【0204】
[00225]他方、半電池チャンバ232、242内の圧力が供給マニホルド178、278内の圧力を超えるとき、気体及び電解質は、一方向弁176、276によって供給マニホルドに逆流するのを妨げられる。本明細書の他の箇所で述べる様々な一方向弁の例を含めた、任意の一方向弁を使用することができる。
【0205】
[00226]様々な実施形態において、供給マニホルド内の圧力は、セル内の定常状態流体圧力の中央値にほぼ等しい圧力に維持されることがある。電気化学システムが大気圧よりも高い絶対圧力で動作される実施形態では、供給マニホルド補給液の圧力は、所望の絶対圧力に、又は予想される、印加される、若しくは測定されるセル圧力を基準として定義される所望の相対圧力に維持されることがある。
【0206】
[00227]図1及び図2は、補給液を負の半電池に送達する供給マニホルド178、278を示すが、補給液は、代替として正の半電池に又は両方の半電池に追加されることもある。代替の構成では、セルは、補給流体が正極と負極102、104、202、204の間の電極間空間に追加されることを可能にするように配置されることがある。
【0207】
[00228]いくつかの実施形態では、供給マニホルド圧力は、容積式ポンプ、空洞ポンプ、又は本明細書の他の箇所で述べるものを含む任意の他のポンプタイプなどのポンプによって印加又は維持されることがある。いくつかの実施形態では、補給液を供給マニホルドに供給するポンプは、圧力センサ又は流量センサに基づいて閉ループ制御システムで動作する電子制御装置によって制御されることがある。さらに他の実施形態では、供給マニホルド圧力は、上昇供給リザーバや圧縮ガスなど、流体に圧力を加えることができる任意の他の機構によって印加又は維持されることがある。いくつかの実施形態では、特定の圧力は、圧縮された気体及び/又は背圧調整器の使用によって維持又は調整されることがある。
【0208】
流体圧力制御
[00229]図4は、セルスタック412の電気化学セル410に補給液を送達し、生成された気体を気体除去液体を用いてセル400から除去するための流体管理システム400の概略図である。図4のシステムでは、補給液と気体除去液体とは、実質的に同じ液体、例えば脱イオン水でもよい。簡単にするために、流体の流れを述べるために「水」という用語を使用するが、本明細書の他の箇所で述べるように、気体除去液体及び/又は補給液の実際の組成は異なることがある。
【0209】
[00230]図4に示されるように、第1のポンプ420は、貯蔵タンク422からセルスタック412の供給マニホルド426の入口424に水を送達することができる。供給マニホルド426は、本明細書で述べるように、セルスタック412の各セル410に水を送達することができる。いくつかの実施形態では、第1のポンプ420は、1つ又は複数のセンサ428からの測定値に基づいて電子制御装置によって制御されることがある。いくつかの実施形態では、センサ428は、1つ又は複数の圧力センサを含むことがあり、制御装置は、スタック供給マニホルド426に入る水を所望の圧力範囲内で維持するためのデジタル又はアナログプログラミングを含むことがある。
【0210】
[00231]代替として、センサ428は、1つ又は複数の流量センサ(例えば体積流量又は質量流量を検出するためのセンサ)を含むことがあり、制御装置は、供給マニホルド426に流入する水の流量を所望の範囲内で維持するためのデジタル又はアナログプログラミングを含むことがある。いくつかの実施形態では、制御装置は、圧力センサと流量センサとの両方に基づいて第1のポンプを制御することができる。さらに他の実施形態では、センサ428は、セルスタック412の下流の点に背圧を加えることによって供給マニホルド426内の圧力を制御するように構成された背圧調整器でもよい、又は背圧調整器を備えることがある。
【0211】
[00232]いくつかの実施形態では、供給マニホルド426から出る水は、第2のポンプ(図示せず)によって気体除去マニホルド432、434に圧送されることがある。代替として、供給マニホルド426から出る水は、第1のポンプ420によって生成された圧力下で気体除去マニホルドに流入することがある。いくつかの実施形態では、水導管は、セルスタック412への入口436で、正の気体除去マニホルド432と負の気体除去マニホルド434とに分割されることがある。いくつかの実施形態では、第2のポンプ(存在する場合)は、気体除去マニホルド432、434への入口にある1つ又は複数のセンサ438(例えば、上述した圧力センサ及び/又は流量センサ)からの測定値に基づいて電子制御装置によって制御されることがある。代替として、センサ438は、気体除去マニホルド内の圧力を所望の圧力範囲内に維持するように構成された背圧制御装置を備えることがある。
【0212】
[00233]気体除去マニホルド432、434を通過する水は、セル410によって生成された気体を収集し、液滴、ミスト、又は蒸気の形での少量の電解質も収集することができる。気体除去マニホルド432、434から出た後、セルスタック412から収集された水と流体との個別の混合物は、生成物分離、濾過、精製、又は他の処理システムに送られることがあり、そこで水が処理されることがあり、その後、貯蔵タンクに送られる及び/又はセルスタック412に戻される。いくつかの実施形態では、貯蔵タンク、処理システム、又は他の要素は省かれることがある。
【0213】
[00234]本明細書で述べる特徴を備える電気化学システムは、主に受動制御下で様々な流体圧力領域間の圧力関係を維持するように構成されることがある。図2を参照して(しかし他の構成にも適用可能である)、セル200内の圧力関係を、4つの圧力領域を参照して述べることができる。第1の圧力領域は、正及び負の半電池チャンバ232、242と、電解質返還導管214、216と、膨張容積280とを含む全電池容積として定義される。第2の圧力領域は、負の気体収集容積282として定義され、負の流体逃がし要素260が、第1の圧力領域と第2の圧力領域との境界を画定する。第3の圧力領域は、正の気体収集容積284として定義され、正の流体逃がし要素261が、第1の圧力領域と第3の圧力領域との境界を画定する。第4の圧力領域は、補給液供給マニホルド278として定義され、供給入口弁276が、第4の圧力領域と第1の圧力領域との境界を画定する。いくつかの実施形態では、追加の圧力領域も存在することがある。例えば、空洞ポンプ作動流体が、第5の圧力領域を画定することができ、膨張容積に対する抵抗を確立する作動流体が、第6の圧力領域を画定することができる。
【0214】
[00235]いくつかの実施形態では、上で画定された圧力領域間の圧力関係は、領域のいくつかのみにおける圧力を能動制御することによって維持されることがあり、圧力差に応答して動作する構成要素が圧力関係を受動的に維持できるようにする。上述したように、補給液供給マニホルド278内の圧力は、全電池200(又は補給液が送達される半電池244)内の定常状態流体圧力とほぼ等しい又はわずかに高い一定の圧力に維持されることがある。正及び負の気体除去マニホルド222、224は、全電池又は半電池内の最小圧力よりも低い圧力に維持されることがあり、以て、上述したように流体が半電池チャンバから流出することを保証する。全電池内の流体圧力は、セル200の動作段階に応じて変動することがある。
【0215】
[00236]図5A図5Dは、供給マニホルド278からセル(例えば、図2の200)に入る補給流体の流量、全電池内の流体の体積(すなわち、膨張容積280の膨張の程度)、及びセルの4つの動作段階における上で定義された4つの圧力領域の相対圧力の概略図を提供する。図5A図5Dのグラフは、相対値(必ずしも一定の縮尺ではない)を示し、したがって数値を含まない。4つの圧力領域の圧力は、左側の垂直軸線を基準にして示され、補給液の流量は、別の右側の垂直軸線を基準にして示されている。4つの圧力領域のそれぞれの圧力及び補給液の流量は、横軸線に表されている全電池流体体積の様々な値で示されている。
【0216】
[00237]図5A図5Dは全て、膨張容積が増加するにつれて増加する全電池圧力を示し、全電池圧力は、ゼロ容積膨張又はその付近の点で補給液供給圧力(全ての膨張容積で一定に維持されることがある)と交差する。正及び負の気体除去マニホルドは、全ての膨張容積で一定の圧力に維持されることもある。いくつかの実施形態では、正の気体除去マニホルド圧力は、負の気体除去マニホルド圧力に実質的に等しく維持されることがある。正及び負の気体除去マニホルド圧力は、意図的に異なる圧力に保持されることもあり、正の気体除去液体又は負の気体除去液体のいずれかが他方よりも高い圧力で保持される。図5A図5Dでは、正及び負の気体除去圧力は、両方の線を明確に示すために異なる線として示されている。
【0217】
[00238]図5Aは、「アイドル」状態での圧力及び補給液流量を表す。「アイドル」状態では、圧力領域は所望の相対(及び/又は絶対)圧力に加圧されているが、電力がセルに送達されておらず、したがって気体が生成されていない。アイドル状態では、電解質返還ポンプ272、274が動作されて、捕捉された電解質を電解質捕捉容積210、212から半電池チャンバ242、232及び/又は膨張容積280に戻すことができる。戻る電解質の流れにより、一方又は両方の半電池内の電解質は、流体逃がし要素260、261を通って、半電池チャンバ242、232から電解質捕捉容積210、212に流れる傾向があり得る。
【0218】
[00239]図5Aに示されるように、アイドル状態では、全電池流体容積はその最小値になり(すなわち、膨張容積280の膨張が最小である又は全くない)、したがって、全電池流体圧力は、補給液供給マニホルド278内の圧力以上であり、したがってセルへの補給液の流量はゼロである。
【0219】
[00240]始動前に、気液セパレータ282、284は、除去マニホルド432、438内の制御された液体圧力よりも高く予圧されることがある。さらに、始動前、半電池チャンバは、所望の最小セル動作圧力に予圧されることがあり、及び/又は他の領域は、所望の圧力に予圧されることがある。
【0220】
[00241]セルが始動されるとき、セルでの気体の生成は、半電池チャンバ内で、膨張容積の偏向によって対処される流体の体積膨張を引き起こし、上述したように膨張容積によって与えられる抵抗による圧力の増加を伴う。流体が膨張容積内へ膨張するにつれてセル内に圧力が蓄積されるが、気体及び電解質が流体逃がし要素を通って逃げるまで、気体が生成されるにつれて圧力が上昇する。気体除去マニホルド内の圧力は、セル内で予想される最小圧力にほぼ等しくなるように制御されることがあり、これは、気体が溶液に入るまで、及び/又は気体除去マニホルドに流入する気体除去流体中に気泡を生成するまで、気液セパレータに気体圧力が生じることを意味する。
【0221】
[00242]図5Bに示される「始動」状態中、一方又は両方の半電池チャンバでの気体生成反応により、(矢印によって示されるように)セル流体体積は増加することがあり、増加された流体体積は、膨張容積内へ膨張することがあり、以て、半電池チャンバ内の液体及び気体の全電池圧力を増加させる。全電池圧力が補給液供給圧力を超えるので、始動期間中に補給液が流れる傾向はない。流体が半電池チャンバ242、232を出て電解質捕捉容積210、212及び気体除去マニホルド222、224に入ると、半電池内の流体の体積及び圧力が低下する。
【0222】
[00243]図5Cに示されるように、セルが定常状態運転動作に達すると、セルの流体体積は最小値に戻り、その時点で補給液が流れることができる。定常状態動作中、セル内の流体の総体積及び/又はセル内の流体圧力は、補給流体が流れることができる低圧点と、全電池圧力が補給液供給圧力を超え、補給液が流れないわずかに高い圧力点との間で振動する傾向がある。
【0223】
[00244]図5Dに示されるように、セルが停止されるとき、気体生成の停止により、全電池圧力及び容積が、図5Aの「アイドル」状態に向かって急速に低下して戻り、流体の流れを可能にする時折の圧力差をもたらす圧力振動が消散するときに補給液の流量はゼロに低下する。
【0224】
[00245]補給液供給マニホルドと半電池容積242とを分離する弁276などの一方向逆止弁は、典型的には、それらが開いて一方向の流体の流れを可能にする前に「クラッキング圧力」を超える圧力差を必要とする。本明細書における様々な例は、ゼロクラッキング圧力を必要とするものとして示されている「理想的な」逆止弁を仮定して述べる。実際の実装形態では、一方向逆止弁は、非ゼロのクラッキング圧力を有し、流体が流れる前に、様々な圧力領域間の圧力差がクラッキング圧力を克服するのに十分である必要がある。いくつかの実施形態では、逆止弁のクラッキング圧力は、所望の性能特性に基づいて選択することができる。
【0225】
[00246]いくつかの実施形態では、本明細書で述べる電気化学システム(低流量イオン交換電解槽(LFIE)及び本明細書で述べる他の電解槽を含む)におけるプロセス水の流れは、システムにおける様々な点での圧力を監視及び管理することによって実質的に完全に制御することができる。例えば、いくつかの実施形態では、電気化学セルスタックを通るプロセス水の流れは、3点で、すなわちプロセス水供給マニホルド、正の気体除去マニホルド、及び負の気体除去マニホルドで、流体圧力に影響を与える圧力調整器によって制御されることがある。
【0226】
[00247]図14A及び図14Bに示されるように、プロセス水供給マニホルド1440内の圧力は、供給マニホルド1440への入口の下流に位置する背圧調整器1464によって制御されることがある。代替実施形態では、供給マニホルド1440内の圧力は、供給マニホルド1440の上流に位置する圧力調整器によって制御されることがある。代替として、供給マニホルド1440内の圧力は、閉ループ又は開ループ制御システムにおけるポンプ1452の動作によって制御されることがある。
【0227】
[00248]他の実施形態では、ポンプ1452は、背圧を調整することによって圧力調整器1464、1466、1642がそれぞれの圧力を制御するために供給マニホルド1440にプロセス水の十分な流れを単に送達することによって、非制御で又は最低限の制御を受けて動作されることがある。
【0228】
[00249]同様に、いくつかの実施形態では、第1の気体除去マニホルド1422内の圧力は、第1の気体除去マニホルド1442の下流に位置する背圧調整器1462によって制御されることがあり、第2の気体除去マニホルド1444内の圧力は、マニホルド1444の下流に位置する背圧調整器1466によって制御されることがある。
【0229】
例示的構成
[00250]上述した様々なシステム及びサブシステムは、電気化学システムの様々な実施形態において修正される、省略される、又は異なる形態で構成されることがある。そのような構成のいくつかの例を、図6図18を参照して以下に述べる。図6図18(又はその一部)の例は、互いに、又は本明細書で述べる他の構成若しくは実施形態と様々に組み合わせることができる。
【0230】
[00251]図6は、補給液が両方の半電池チャンバに同時に受動的に送達される代替構成を表す。図6は、正の半電池チャンバ632と負の半電池チャンバ642とを有する電気化学セル600を概略的に示し、正の半電池チャンバ632と負の半電池チャンバ642とは、セパレータ606によって分離され、セル600又は半電池チャンバ632、642内に電解質630、631を保持するように構成される。図6のシステムは、気体除去容積と電解質捕捉容積とが単一の一致する容積686、684であるという点で図1及び図2のシステムとは異なる。いくつかの実施形態では、流体逃がし要素665、667は、気体除去マニホルド622、624に搬送される気体除去液体652中に気体が逃げることを可能にしながら、液体電解質の透過を実質的に妨げる膜、例えば疎水性の相弁別膜でもよい。液体形態又は蒸気形態のいずれかで膜665、667を通って逃げる電解質630、631は、補給液供給マニホルド678を通してセルに戻すことができる。
【0231】
[00252]図6は、供給マニホルド678によって供給される滴下フィード672を備える修正された補給液供給システム670も概略的に示す。とりわけ、滴下フィード672は、図1及び図2の実施形態の一方向弁を省き、以て、供給マニホルド678から補給液の一定の滴下フィード流を供給する、制御された圧力で補給液671を維持することができる。
【0232】
[00253]図6の補給液供給システム670は、滴下フィード672から供給される滴下リザーバ674も含む。補給液671は、供給導管676によって滴下リザーバ674からセル600に送られることがある。上で示唆したように、補給液671は、セル600から逃げた可能性のある低濃度の電解質を含むことがある。様々な実施形態において、重力(例えば、滴下リザーバ674をセル600の垂直方向上方に配置することによって生成される静水頭圧)によって、1つ若しくは複数のポンプによって、又は供給マニホルド678及び/又はリザーバ674自体の流体圧力によって確立された滴下リザーバ674内の圧力によって、補給液は滴下リザーバ672からセル600に押し流されることがある。
【0233】
[00254]いくつかの実施形態では、図6に示されるように、供給導管676は、負の電解質630と正の電解質631との流体連通を実現するクロスオーバ領域691に隣り合うセル600に連結されることがある。これは、上述したような正の電解質631と負の電解質630との間のある程度の圧力平衡を可能にすることがあり、補給液が両方の半電池チャンバ632、642に等しく送達されることを可能にすることがある。いくつかの実施形態では、クロスオーバ領域691での圧力は、(例えばリザーバ674及び/又は供給マニホルド678内の制御された圧力によって確立される)半電池チャンバ632、642内の定常状態圧力をわずかに超えることがあり、以て、一方の半電池チャンバから他方の半電池チャンバへの電解質のクロスオーバを概して最小限に抑えると共に、半電池チャンバ間の圧力差も最小限に抑える。
【0234】
[00255]図6のシステムに基づくセルスタックにおいて、セルスタックの各セルは、半電池チャンバ642、632、セパレータ606、電極602、604、流体逃がし要素665、667、気体除去/電解質捕捉容積686、684、滴下リザーバ674、滴下フィード672、及び供給導管676を含むことがある。供給マニホルド678及び気体除去マニホルド622、624は、例えば図4を参照して本明細書で述べるように、スタックの他の全てのセル及びさらなる処理機器に連結されることがある。いくつかの実施形態では、補給液供給導管内の流体の流れは、セルスタックのいくつかの(又は全ての)セルでの補給液供給導管に連結された単一のポンプアクチュエータ(例えば空洞ポンプアクチュエータ)によって押し流されることがある。
【0235】
[00256]図7は、補給液771(いくらかの電解質を含むことがある)が負の電極702と正の電極704との間の電極間空間711に押し流されるセル700の代替構成を概略的に示す。図7の構成では、各電極702、704は、電極の外側に取り付けられた気体除去膜723、725を有することがある。各電極702、704は、電極間空間711に面する内側にセパレータ膜706、707を備えることもある。
【0236】
[00257]図1及び図2の場合と同様に、図7のセル700は、別個の電解質捕捉容積710、712及び気体除去容積786、788を含むことがあり、電解質返還導管714、716は、上述したものなど1つ又は複数のポンプ772、774の力の下で、捕捉された電解質を電極間空間に送ることができる。流体逃がし要素は図7には示されていないが、図7に示されるセルなどのセルと組み合わせて任意の流体逃がし要素を使用することができる。
【0237】
[00258]電解質及び補給液が電極間空間711に押し込まれると、圧力が生じることがあり、電解質は、電極間空間から電解質730、731で充填された半電池チャンバ742、732に延びる滴下チューブ760、761を通って滴下することがある。いくつかの実施形態では、滴下チューブ760、761は、本明細書の他の箇所で上述した出口チャネル又は他の直列若しくは並列の流体逃がし要素と同様に構築されることがある。
【0238】
[00259]図7のシステムに基づくセルスタックにおいて、セルスタックの各セルは、半電池チャンバ742、732、セパレータ膜606、707、電極702、704、滴下チューブ760、761、電解質捕捉容積710、712、電解質返還導管714、716、気体除去容量786、788、滴下リザーバ774、滴下フィード772、及び供給導管776を含むことがある。供給マニホルド771及び気体除去マニホルド722、724は、例えば図4を参照して本明細書で述べるように、スタックの全ての他のセル及びさらなる処理機器に連結されることがある。いくつかの実施形態では、補給液供給導管内の流体の流れは、セルスタックのいくつかの(又は全ての)セルでの補給液供給導管に連結された単一のポンプアクチュエータ(例えば空洞ポンプアクチュエータ)によって押し流されることがある。
【0239】
[00260]図8は、図7のセル700の特徴を、セル800の気体冷却を可能にする特徴と組み合わせたセル800を概略的に示す。図8のセル800は、内側にセパレータ膜806及び外側に疎水性膜823を有する負極802と、同様に構成された正極804と、セパレータ膜807と、疎水性膜825とを備える。各電極802、804で生成された気体は、対応する疎水性膜823、825を通過して、気体流空間854、856に入ることができる。
【0240】
[00261]冷却ガス855、857は、流入マニホルド856、858から気体流空間854、856を通して送られることがあり、そこで、対応する電極802、804で生成された気体と合流される。次いで、複合の気体流は、対応する気体除去マニホルド822、824に流入することができる。いくつかの実施形態では、流入マニホルド856、858は、セルスタック又は複数のセルスタックの全てのセルを通して循環される気体を受け入れることができる。
【0241】
[00262]いくつかの実施形態では、気体流空間854、856は、相弁別的な疎水性膜823、825によって、(滴下チューブ860、860を通って流れることができる又は膜823、825を通って浸透することができる液体電解質を除いて)主に液体を含まない状態に維持されることがある。代替として又は追加として、気体流空間854、856は、中間電極空間811内の液体電解質の圧力を超える(又はそれに等しい)気体流空間854、856内の気体圧力を維持することによって、実質的に液体を含まない状態で維持することができる。
【0242】
[00263]図8のセル800は、電極間空間811内から気体流空間854、856まで延びる流体出口チャネル860、861を含むこともある。電解質830は、出口チャネル860、861を通って、又は疎水性膜823、825を通る漏れによって、電極間空間811から気体流空間854、856に逃げることがある。電極間空間811から(いずれかの経路によって)逃げた電解質830は、対応する気体流空間854、856の底部にある電解質捕捉容積810、812に収集されることがある。捕捉された電解質は、上述したような空洞ポンプ又は他のポンプタイプを含むことがある1つ又は複数のポンプ872、874の動力の下で電極間空間811に戻されることがある。
【0243】
[00264]図8のシステムに基づくセルスタックにおいて、セルスタックの各セルは、気体流空間854、856、セパレータ806、807、膜823、825、電極802、804、流体逃がし要素860、861、電解質捕捉容積810、812、滴下チャンバ874、滴下フィード872、供給導管876、及び電解質返還導管を含むことがある。供給マニホルド878、気体流入マニホルド856、857、及び気体除去マニホルド822、824は、例えば図4を参照して本明細書で述べるように、スタックの全ての他のセル及びさらなる処理機器に連結することができる。いくつかの実施形態では、補給液供給導管内の流体の流れは、セルスタックのいくつかの(又は全ての)セルでの補給液供給導管に連結された単一のポンプアクチュエータ(例えば空洞ポンプアクチュエータ)によって押し流されることがある。
【0244】
[00265]図9は、一方の半電池が気体冷却されることがあり、他方の半電池が別の機構(図示せず)によって冷却されるセルを形成するために図1図8の特徴を組み合わせたセル900を概略的に示す。図9の負の半電池942は、図8に示されるものと同様に構成され、内側でセパレータ膜906に当接する負極902に隣り合う疎水性膜923を備える。負の半電池942は、気体流入マニホルド956、気体除去マニホルド922、電解質捕捉容積910に連結された気体流空間954、及び電解質返還導管914も備える。
【0245】
[00266]図9の正の半電池932は、電解質930に浸漬された正極904を備え、電解質930は、正極902と負極904との間のセパレータ膜906を飽和させることがある。正の半電池932は、流体出口チャネル961及び/又は膜962など1つ又は複数の流体逃がし要素によって、電解質捕捉容積912及び気体除去容積988に連結されることがある。電解質捕捉容積910、912は、対応する電解質返還導管914、916に連結されることがあり、電解質返還導管914、916を通して、電解質は、1つ又は複数のポンプ972、974によって押し流されることがある。
【0246】
[00267]図10は、本明細書で述べる特定の特徴を利用する電気化学セルの実施形態を表す。いくつかの実施形態では、図10は、本明細書で述べる特定の特徴を利用する、低流量PEM電気化学セルなどの気体冷却式PEM(プロトン交換膜)電気化学セルの実施形態を表す。いくつかの実施形態では、図10は、本明細書で述べる特定の特徴を利用する、低流量AEM電気化学セルなどの気体冷却式AEM(アニオン交換膜)電気化学セルの実施形態を表す。図10は、気体側電極1002を液体側電極1004から分離するセパレータ膜1006を有するセル1000を概略的に示す。いくつかの実施形態では、セパレータ膜1006は、イオン交換膜(すなわち、プロトン交換膜又はアニオン交換膜)でよい。いくつかの実施形態では、イオン交換膜は、液体不透過性及び/又は気体不透過性でよい。任意選択で、本出願で述べる任意の電気化学セル及び任意のセルスタックは、図10によるセル1000の特徴(本明細書で述べる)を含むことができる。
【0247】
[00268]本明細書において、液体含有半電池及びその構成要素を「右側」構成要素と呼び、気体含有半電池及びその構成要素を「左側」構成要素と呼ぶが、実際の実装形態では多くの他の位置構成を取ることができる。プロトン交換膜(PEM)が使用される場合、液体含有(右側)半電池は正極性の半電池にすることができる。アニオン交換膜(AEM)が使用される場合、液体含有(右側)半電池は負極性の半電池にすることができる。
【0248】
[00269]右側半電池チャンバ1032は、液体1029で満たされることがあり、液体1029は、電解質又は補給液、例えば限定はしないがプロセス水でもよい。液体1029は、セパレータ又は接触膜1006を飽和させて、左側電極1002に又は左側電極1002の内部に三相固体-液体-気体界面を形成することができる。相弁別的な疎水性膜1062(又は他の流体逃がし要素)は、右側半電池チャンバ1032を右側気体収集容積1088及び右側気体除去マニホルド1024から分離することができる。図示の構成では、右側気体除去マニホルド1024は、上述した様々な実施形態に関連して述べた気体除去液体を省く。
【0249】
[00270]図10のセルは、第1の気体を左側半電池チャンバ1042に送る圧力制御されたガスインジェクタマニホルド1056を含むことがある。左側半電池チャンバに注入される第1の気体は、右側対電極1004との電気化学反応中に左側電極1002によって生成される気体と同一でもよい、その気体の成分でもよい、又はその気体と混合可能でもよい。次いで、注入された気体と左側電極で生成された気体との組合せが、気体除去マニホルド1022に収集されることがある。
【0250】
[00271]図10の左側気体除去マニホルド1022も、上述した様々な実施形態に関連して述べた気体除去液体を省く。図10の実施形態では、左側半電池チャンバ1042は、「液体を含まない」又は「気体のみ」である。したがって、左側半電池チャンバ1042から除去される気体混合物は、気体のみとして除去されることがある。左側半電池チャンバの気体のみの状態は、注入マニホルド1056での気体圧力を、液体1029が左側半電池チャンバ1042に滴下するのを防ぐのに十分な圧力に制御することによって維持されることがある。
【0251】
[00272]左側半電池チャンバ1042を通って流れる気体は、セル1000を冷却することができることが有利である。例えば、セルが左側電極1002で水素ガスを生成し、右側電極1004で酸素を生成する水電解槽である実施形態では、水素ガスは、再循環システムから左側半電池を通って流れることがあり、セルから余剰の熱を搬送除去することがある。例えば、図10の気体冷却式PEM構成では、負の半電池チャンバ1042(左側)は「液体を含まない」又は「気体のみ」である。したがって、負の半電池チャンバ1042から除去された気体又は気体混合物は、気体のみとして除去されることがある。負の半電池チャンバの気体のみの状態は、注入マニホルド1056での気体圧力を、液体1029がセパレータ1006を通って又はセパレータ1006の周りで負の半電池チャンバ1042に滴下するのを防ぐのに十分な圧力に制御することによって維持されることがある。気体圧力は、液体を充填された半電池チャンバ内の液体圧力とほぼ等しい又はそれよりも高ければ十分であり得る。他の実施形態では、気体圧力は、それがセパレータ膜1006の湿潤圧力(又は液体入口圧力若しくは「バブルポイント」)以下だけ正の半電池内の液体圧力よりも低ければ十分であり得る。膜の湿潤圧力は、液体が膜に浸透して反対側に通過する際の膜の一方の側から他方の側への液体圧力差として定義される、実験的に決定される膜の特性である(典型的には、いくつかのセパレータ膜材料の材料特性として列挙される)。
【0252】
[00273]様々な実施形態において、図10の構成は、電極の極性を逆にすることによって変更されることがある。したがって、そのような実施形態では、正の(左側)半電池チャンバ1032は液体を含まず、負の(右側)半電池チャンバは、補給液又は電解質(右側)で満たされることがある。例えば、図10の気体冷却式AEM構成では、負の半電池チャンバは、水又は他の補給液1029で充填され、正の半電池チャンバは、生成された酸素ガスを正の半電池チャンバを通して流すことによって冷却されることがある。いくつかの実施形態では、正の半電池チャンバ内の酸素ガスは、補充の酸素ガス又は別の気体若しくは気体混合物を正の半電池チャンバ内に及び半電池チャンバを通して流すことによって希釈することができる。そのような希釈ガスは、窒素やアルゴンなどの非反応性の気体、又は他の実質的に非反応性の気体若しくは気体混合物でよい。
【0253】
[00274]図10のシステムに基づくセルスタックにおいて、セルスタックの各セルは、右側半電池チャンバ1032、右側電極1004、左側半電池チャンバ1042、左側電極1002、流体逃がし要素1062、及びセパレータ1006を含むことがある。供給マニホルド1078及び気体除去マニホルド1022、1024は、例えば図4を参照して本明細書で述べるように、スタックの全ての他のセル及びさらなる処理機器に連結することができる。いくつかの実施形態では、限定はしないがプロセス水供給導管などの補給液供給導管内の流体の流れは、セルスタックのいくつかの(又は全ての)セルでの補給液供給導管に連結された単一のポンプアクチュエータ(例えば空洞ポンプアクチュエータ)によって押し流されることがある。
【0254】
[00275]様々な実施形態において、図の1つを参照して図示して述べる特徴は、別の図に図示して述べる特徴と組み合わせることができ、そのような追加の組合せは、本開示の範囲内にあることが意図される。例えば、図6図9の構成の任意のものを、図1及び図2を参照して述べたような補給液供給構成を含むように変更することができる。
【0255】
[00276]上で提供した様々な例及び実施形態は、水素及び酸素ガスを生成するために水を電気分解するように構成された電気化学システムを述べているが、本明細書で述べるデバイス、システム、方法は、様々な他の電気化学システムに構成及び/又は適用することもできる。いくつかの実施形態では、本明細書で述べる特徴を有する電気化学システムは、1つ又は複数の化学物質を生成する際に使用するように構成された電解槽でよい。
【0256】
[00277]一例は、塩化ナトリウムを含む水性電解質が電気分解されて塩素ガス及び水酸化ナトリウムを生成する塩素アルカリプロセスである。そのような例では、補給液は、塩化ナトリウムを含有する溶液を含むことがあり、生成された化学物質(例えば塩素及び水酸化ナトリウム)は、各セルから、生成物除去導管(例えば上で述べた「気体除去マニホルド」)を通して、気体及び/又は液体の形態で除去されることがある。
【0257】
[00278]別の例では、本明細書で述べる特徴を備える電気化学システムを使用して、塩化カリウムを含む溶液を電気分解して水酸化カリウム及び塩素ガスを生成することができる。そのようなシステムでは、供給マニホルドは、塩化ナトリウムを含有する溶液を含む補給液を送達することがあり、生成された化学物質(例えば塩素及び水酸化カリウム)は、各セルから、生成物除去導管(例えば上で述べた「気体除去マニホルド」)を通して、気体及び/又は液体の形態で除去されることがある。
【0258】
[00279]他の例では、本明細書で述べるデバイス、システム、及び/又は方法を含む電気化学システムは、溶解種として金属を含有する溶液から金属を抽出するために使用される電解採取セルを含むことがある。例えば、いくつかの電解採取セルは、亜鉛、白金、金、又は他の金属を生成するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、そのような電解採取システムは、抽出すべき溶解されている金属を含有する溶液(例えば、酸性又はアルカリ性の水性金属含有溶液)を、供給マニホルドを通して補給液として送達するように構成されることがある。
【0259】
[00280]さらなる例では、本明細書で述べるデバイス、システム、及び/又は方法を有する電気化学システムは、印加電界の下でイオン汚染物質を除去することによって水が精製される電気透析を行うように構成されることがある。電気透析セルは、典型的には、流体的に直列の複数のチャンバを含み、チャンバのそれぞれ又はいくつかは、本明細書で述べる特徴を備えることがある。
【0260】
プレートアンドフレームセルスタックの例
[00281]電解質閉じ込め電解槽システムを可能にする様々な特徴部及び構成要素を概略的に示して上述したが、電解質閉じ込め、電解質捕捉及び返還、容積膨張、及び本明細書で述べる他の特徴を組み込む複数のセルフレームから構成されるプレートアンドフレームセルスタックとして実装することもできる。図11図13は、上述した電解質閉じ込め特徴部のいくつかの平面実装を具現化するいくつかの例示的なプレートアンドフレームセルスタック構成要素を示す。図11図13を参照して述べる電解質閉じ込め特徴部、電解質捕捉及び返還特徴部及びシステム、膨張容積、及び他の特徴部は、図1図10の1つ又は複数を参照して上述した特徴部と機能的に同様であることがある。
【0261】
[00282]次に、セルフレーム構造の様々な例示的な特徴部を、図11図12Bを参照して述べる。図11は、分解図で示される、第2のセル1104の構成要素の下に位置合わせされた、組み立てられる第1のセル1102を示す斜視図である。図12Aは、セルフレーム1200の第1の側1202(図中で見ることができる柔軟性の導電層1112及び柔軟性の層1112の後方の電極1114で部分的に充填された第1の半電池チャンバ1202)を示し、図12Bは、同じセルフレーム1200の反対側1204(図中で見ることができる柔軟性の導電層1122及び柔軟性の層1122の後方の電極1120で部分的に充填された第2の半電池チャンバ1204)を示す。いくつかの特徴部(又は特徴部の一部分)はセルフレーム1106の片側でのみ見ることができ、したがって、様々な特徴を述べる際、単一の図を参照することも、3つの図全てを同時に参照することもある。様々な実施形態において、第1の半電池は負の半電池でよく、第2の半電池は正の半電池でよい。他の実施形態では、図示される半電池の極性を逆にすることができる。
【0262】
[00283]図11は、構成要素の中央アセンブリの上部に双極板1111を有する完全なセル1104のいくつかの構成要素を分解図で示す。本明細書で述べる他の特徴部は、説明を容易にするために、セルフレーム1106に組み立てられて示されている。上側セル1104の分解された構成要素は、双極板1110、第1の柔軟性の導電層1112、第1の電極1114、セパレータ窓1116、セパレータ膜1118、セルフレーム1106(本明細書で述べる様々な他の構成要素を含む)、第2の電極1120、及び第2の柔軟性の導電層1122を含む。組み立てられるとき、様々な構造が、比較的薄いセルアセンブリ1102を形成する。いくつかの実施形態では、柔軟性の導電層1112、1122は、圧縮されるときにわずかに変形されることがあり、以て、電極1114、1120、セパレータ1118、及び双極板1110、1111の表面全体にわたって一貫した圧縮力を加える。柔軟性の導電層1112、1122は、非反応性領域を有益に実現することもあり、気体は、電極表面で生成された後にその非反応性領域を通って各半電池から逃げることができ、したがって、柔軟性の導電層は、本明細書では「気体出口層」とも呼ぶことができる。他の実施形態では、柔軟性の導電性気体出口層1112、1122は省かれることがある。双極セルスタックは、剛性のエンドプレート(図示せず)の間で複数のセルアセンブリ1102を圧縮することによって形成されることがある。
【0263】
[00284]図11図13は、平面状のセルフレーム要素を示し、各要素は、上述したような電気化学的セル構造及び電解質閉じ込め構造を備える。図11図12Bの特徴部は、円盤形の構造で実装されて示されているが、同じ又は同様の特徴部を、楕円形、長円形、正方形、長方形、多角形など任意の外形の平面状要素で実装することもできる。いくつかの実施形態では、セルフレーム1106の内部の圧力を保持するように、保定リング1130が1つ又は複数のセルフレーム1106を取り囲むことがある。例えば、いくつかの実施形態では、セルフレーム1106のセルスタックは、セルフレーム周縁部の外側の圧力に対して数bar~数百bar(すなわち、数百kPa~数千kPa)の圧力で動作されることがある。保定リング1130は、セルフレーム材料自体がそのような圧力を支えることができない場合でさえ、セルフレーム1106内の圧力を保持するのに十分な引張強さの金属、ポリマー、又は複合材から作製されることがある。
【0264】
[00285]いくつかの実施形態では、各セルフレーム1106は、第1及び第2の半電池電極1114、1120並びにチャンバ1202、1204(電極1114、1120及び柔軟性の導電層1112、1122によって充填される)と、両方の半電池チャンバ1202、1204に連結された膨張容積1206と、両方の半電池のための気体除去マニホルド1210、1211と、補給液を少なくとも1つの半電池チャンバ1202に供給する供給入口1214に連結された補給液供給マニホルド1212と、両方の半電池のための電解質捕捉及び返還システムとを含む単一の電気化学セルを支持する特徴部を含むことがある。代替として、各セルフレームは、個別の全電池の半電池のための特徴部を支持することがある。すなわち、全電池は、第1のセルフレームでの第1の半電池と、第2の隣り合うセルフレームでの第2の半電池とによって形成されることがある。
【0265】
[00286]図11を参照すると、単一のセルフレームアセンブリ1202は、セルフレーム1106、正極1120、セパレータ1118、負極1120、及び双極板1110を備えることがある。複数のセルの双極スタックは、隣り合うセルフレーム1106の各対の間に1つの双極板1110、1111を有する複数のセルフレームアセンブリ1102を組み立てることによって作製されることがある。セルスタックは、エンドプレート(図示せず)の間にボルト固定される又は他の方法でクランプされることがあり、セルフレーム1106を互いに対して圧縮して封止する。様々な実施形態において、各双極板1110、1111は、図15を参照して本明細書で述べる多層双極板、又は双極板1110として適した任意の他の利用可能な単層又は多層構造を備えることがある。
【0266】
[00287]図11図12Bに示される例示的実施形態のセルフレームでは、以下にさらに述べるように、カバーシート(図示せず)を使用して、様々なチャネル及び容積を封止することができる。例えば、カバーシートが、図12Bに示されるセルフレーム面に固定されることがあり、様々な構造やマニホルドなどを囲む。Oリング、ガスケット、又は他の構造を使用して、隣り合うセルフレーム層のカバーシート又はセルフレームに対して様々な導管、マニホルド、及び他の構造を封止することもできる。説明する構造を不明瞭にしないように、例示を簡単にするためにカバーシートは図示していない。カバーシートは、様々な構造を封止するために必要に応じて1つ又は複数の材料片を備えることがある。カバーシートは、接着剤(例えば、エポキシ、溶剤、シリコーンなど)、溶接(例えば、超音波溶接、レーザ溶接、溶剤溶接など)、圧縮、又は他の方法によって各セルフレームに固定することができる。
【0267】
[00288]適切なカバーシート材料は、セルフレームを形成する際に使用されるのと同じ材料(又は複数の材料)を含むことがある。セルフレームとカバーシートとのいずれか又は両方は、ポリマー、金属、セラミック、又は本明細書の他の箇所に列挙されている様々な例示的な材料を含む、電解質による劣化に耐性のある他の材料から作製されることがある。例えば、セルフレーム及びカバーシートのいずれか又は両方は、以下のものから作製されることがある。(i)ニッケル、チタン、アルミニウム、又はこれらの任意の組合せを含む金属又は金属合金、(ii)ナイロン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)、ポリアミド(PA)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセテート(PVA)、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリアミド、架橋ポリエーテル、エチレン-メタクリル酸コポリマー、フッ素化ポリマー、スルホン化ポリマー、カルボキシルポリマー、ナフィオン、又はこれらの任意の組合せ、(iii)アスベスト、酸化ジルコニウム布、綿、エチルセルロース、メチルセルロース、織布若しくは不織布セルロース、酢酸セルロース、若しくはこれらの任意の組合せ、又は(iv)これらの任意のもの任意の組合せ。
【0268】
[00289]図12A及び図12Bを参照すると、電解質捕捉及び返還特徴部が示されている。第1の半電池チャンバ1202は、柔軟性の導電層1112が見える中央領域内のセパレータ1118の片側に形成される。第1の半電池チャンバは、柔軟性の導電層及び電極(図では見えない。柔軟性の導電層の後方にある)で部分的に充填されて示されている。第2の半電池チャンバは、(図12Bに示されるように)セルフレームの第2の側に同様に形成される。各半電池に関連する電解質閉じ込め特徴部並びに捕捉及び返還特徴部は、いくらかの幾何学的な変形を伴って、互いに機能的に実質的に同様でよい。したがって、両方の半電池に関連する特徴部が図12A及び図12Bに示されているが、以下の説明は、一方の半電池に関連する特徴部を参照して全般的に行い、反対の半電池に関連する特徴部は、説明する特徴部と機能的に実質的に同様であることがある。出口チャネル1220、ヘッドスペース領域1222、滴下チャンバ1224、主気体分離チャンバ1226、空洞ポンプ1234、電解質返還チャネル1252、1254、1256、気体除去マニホルド1210、気体パージマニホルド1244などはそれぞれ独立して存在し、第1の半電池に関連付けられることがあり、対応する特徴部が第2の半電池に関連付けられることがある。代替として、これら又は他の特徴部の1つ又は複数が存在し、1つの半電池のみに関連付けられ、第2の半電池に関してはそのような構造が省かれることもある。
【0269】
[00290]図12Aに示されるように、第1の出口チャネル1220は、第1の半電池チャンバ1202のヘッドスペース領域1222から延在し、2チャンバ液気セパレータの滴下チャンバ1224に第2の端部を有して図示されている。出口チャネル1220によって第1の半電池チャンバ1202から第1の滴下チャンバ1224に輸送される液体及び気体は、気体セパレータ導管1225(図12Bで見ることができる)によって滴下チャンバ1224から主気体分離チャンバ1226に流れることができる。主気体分離チャンバ1226の上側領域は、気体収集容積1258を形成し、気体出口ポート1228の一方向弁及び導管1229(図12Bで見ることができる)を介して気体除去マニホルド1210につながる。典型的な動作では、気体収集容積内で、主気体分離チャンバでの液位よりも上方に気体ポケットが形成されることがある。
【0270】
[00291]いくつかの実施形態では、滴下チャンバ1224及び主気体分離チャンバ1226は、以下で述べるように複数の目的を果たすことがある金属発泡体又は金属メッシュ凝縮器構造1230、1231で実質的に充填されることがある。主気体分離チャンバ1226の下側領域は、電解質除去ポート1246及び導管1248(図12B)を通して空洞ポンプ1234によって膨張容積1206又は第1の半電池チャンバ1202に送られる液体電解質を収集するために親水性要素1232を備えることがある。膨張容積1206は、導管によって、第1の半電池チャンバ1202及び第2の半電池チャンバ1204に連結されることがある。
【0271】
[00292]第1の半電池チャンバ1202(例えば負の半電池)の出口チャネル1220は、図12Aで見ることができる(小さなカバーシートによって部分的に隠されている)。第2の半電池チャンバ1204(例えば正の半電池)の出口チャネル1236の一部分は図12Bで見ることができ、一部分が、セルフレーム1106の穴を通って、図12Aに示される第1の側まで延びる。図12Bに最も良く見られるように、出口チャネル1220、1236は、細長いスタジアム形状(半円形の端部を有する長方形)を有するものとして示されている。図12A及び図12Bの出口チャネルは、一般に、スタジアム形状の周りに複数回巻かれた長い配管区域であり、半電池チャンバ1202、1204から逃げた後、滴下チャンバ1224に入る前に気体及び電解質が通過することができる湾曲及び直線区域を有する長い経路を作成する。上述したように、出口チャネルを通過する液体及び気体に関する所望の程度の圧力降下を実現するために、出口チャネルの全経路長、蛇行性、断面積、及び材料特性を変えることができる。
【0272】
[00293]いくつかの実施形態では、図12A及び図12Bに示されるように、小さな粒子が出口チャネル1220、1236を詰まらせるのを防ぐために、出口チャネル1220、1236の入口端にフィルタ1238が提供されることがある。存在する場合、そのようなフィルタ1238は、電解質による劣化に対して適切な耐性を有する多孔質材料、例えば金属若しくはポリマーメッシュ、発泡体、又は発泡材料から作製されることがある。
【0273】
[00294]図12A及び図12Bの実施形態では、液気セパレータは、滴下チャンバ1224と主気体分離チャンバ1226とに分割されることがある。いくつかの実施形態では、両方のチャンバ1224、1226は、1つ又は複数の多孔質凝縮器1230、1231によって実質的に充填されることがある。凝縮器1230、1231(複数可)は、多孔質材料(例えば、発泡体、メッシュ、又は発泡材料)から作製されることがある。多孔質凝縮器材料は、液体電解質が凝縮することができる表面を提供し、液体電解質が、重力によって滴下チャンバ1224及び主気体分離チャンバ1226のより低い領域に落ちることを可能にする。滴下チャンバの底部に集まる液体電解質は、導管1225(図12B)によって主気体分離チャンバ1226に流れることができる。気体も同じ経路1225をたどることがあるが、電解質中の気泡として、又は液体電解質中若しくは液体電解質の上方の連続気体チャネルとして浮動する傾向がある。
【0274】
[00295]凝縮器1230、1231は、導電性材料(例えば、金属、炭素、グラファイト、又は導電性ポリマー)から有益に作製することもでき、これは、出口チャネル1220から出て滴下チャンバ1224に入る電解質の各「滴下」の電子的な検出を可能にすることがある。この「滴下検出」動作により、以下でさらに述べるように、セルスタックの各半電池(したがって各全電池)の動作状態の継続的な監視が可能になることがある。様々な実施形態では、凝縮器1230、1231は、単一の連続した材料片で作製されることがあり、又は1つ若しくは複数の導電体を介して互いに物理的及び/又は電気的に直接接触することがある複数の材料片を備えることもある。
【0275】
[00296]主気体セパレータチャンバ1226の下側領域は、空洞ポンプ1235によってセルに圧送されて戻される電解質を収集するための電解質収集容積1240及び電解質出口1246(図12B)を備えることがある。電解質収集容積1240は、図1及び図2を参照して上述した電解質を収集するための概略構造と機能的に同様である。電解質収集容積1240は、電解質出口1246の一方向弁を通る気体流出を実質的に防止又は最小化するために、(本明細書で述べる)セパレータ膜材料の区域などの親水性構造1232(図12Aでの気体分離凝縮器1231の開口部1242を通して部分的に見える)を備えることがある。
【0276】
[00297]図12Aで最も良く見られるように、気体分離チャンバ1226の凝縮器1231は、通常であれば多孔質の材料に、複数の比較的大きい体積の空隙1242を備えることがある。そのような空隙1242は、気体が集まるための領域又は経路を提供することがあり、一方、液体は、空隙1242間の領域内で多孔質凝縮器1231の表面で凝縮する傾向がある。次いで、気体は、一方向弁を備えることがある気体出口ポート1228に隣り合う主気体分離チャンバ1226の最上部領域1224に集まることがある。図12Bで見ることができるように、気体出口ポート1228は、セルフレーム1106の導管チャネル1244によって気体除去マニホルド1210に連結されることがある。気体出口ポート1228の一方向弁は、一般に、気体除去マニホルド1210から主気体分離チャンバ1226への気体又は気体除去液体の逆流を防ぐように構成されることがある。
【0277】
[00298]図示されるいくつかの実施形態では、各半電池は、気体分離チャンバ1226、1227の電解質収集容積1240、1241からの電解質をそのそれぞれの半電池チャンバ1202、1204及び/又は膨張体積1206に圧送するための空洞ポンプ1134、1135を備えることがある。図12Bに示されるように、空洞ポンプ1134、1135の押流し流体入口1246、1247は、それぞれの空洞ポンプ1234、1235のポンプチャンバから離して位置し、セルフレーム1106の導管1248、1249によって接続されることがある。したがって、気体分離チャンバ1226の電解質収集容積1240、1241に捕捉された電解質は、空洞ポンプ1234、1235に引き込まれ、次いで空洞ポンプによってポンプ出口フローチャネル1252、1253へのポンプ出口ポート1250、1251に押し流されることがある。ポンプ出口フローチャネル1252、1253は、電解質が収集された半電池につながる第1の導管セグメント1254、1255と、膨張容積1206につながる第2の導管セグメント1256、1257とに分岐することがある。
【0278】
[00299]図12Bは、膨張容積ポート1286を介して各半電池チャンバ1202、1204を膨張容積1206に接続する例示的な膨張チャネル1255、1257、1254、1256を示す。図12Aで見られる第1の半電池膨張チャネル1254の端部1158は、セルフレーム1106の穴を介して、図12Bで見られる膨張チャネル1254に接続することができる。同様に、図12Bで見られる第2の半電池膨張出口1289は、カバーシート1287(図12A)で覆われたセルフレーム1106を通る2つの穴を介して、膨張チャネル1255の端部1259に接続する。
【0279】
[00300]膨張容積1206は、半電池チャンバ1202、1204の定常状態圧力よりも高い圧力に維持されることがあり、したがってそれにより、電解質は、半電池チャンバ1202、1204内の圧力が膨張容積1206内の圧力と同様にならない限り又はそれよりも大きくならない限り、空洞ポンプ1134、1135から、その電解質が捕捉されたそれぞれの半電池に優先的に押し流される。
【0280】
[00301]図13を参照して以下でさらに述べるように、膨張容積1206の圧力は、作動流体マニホルド1320を通して送達される作動流体によって制御されることがある。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の作動流体パージマニホルド1288(図12A及び図12B)は、セルスタックを通って延在して、膨張容積1206の作動流体側から余剰の作動流体をパージ又は除去することを容易にすることができる。
【0281】
[00302]いくつかの実施形態では、セルフレーム1106及びセルスタックは、半電池の各セットに関して1つ又は複数の気体パージマニホルド1260、1261を備えることがある。気体パージマニホルド1260、1261を使用して、セルスタックの組立て並びに電解質、補給液、及び/又は作動流体(以下でさらに述べる)の初期導入後に各半電池に残っている空気又は他の気体をパージすることができる。気体パージマニホルド1260、1261は、気体パージマニホルド1260、1261から滴下チャンバ1224、1223(図12Bで最も良く見られる)への流体の流れを可能にするように配置された一方向弁1262、1263を介して滴下チャンバ1224、1223に連結されることがある。
【0282】
[00303]気体パージ操作は、セルスタックの初期組立て後、又はいくつかのメンテナンス手順に続く再組立て後に行うことができる。気体パージ操作(第1の半電池1202を参照して述べるが、気体パージマニホルドが存在する任意の半電池に適用可能である)は、気体パージ液体(例えば補給液、電解質、又は脱イオン水などの作動流体)を気体パージマニホルド1260内に、一方向弁1262を通して、滴下チャンバ1224内に、さらに気体分離チャンバ1226内に送る(例えば圧送する又は他の方法で押し流す)ことを含むことがある。空洞ポンプ1234は、気体パージ操作中に動作されることもあり、気体パージ液体を気体分離チャンバ1226から半電池チャンバ1202に押し流す。その結果、半電池チャンバ1202、滴下チャンバ1224、又は気体分離チャンバ1226に存在する気体は、最終的に、気体除去マニホルド1210を通してセルスタックから押し出される傾向がある。いくつかの実施形態では、気体パージ操作を使用して、セルスタックの各半電池を所望の体積の電解質で最初に充填することができる。他の実施形態では、電解質は、気体パージ操作を行う前に、半電池チャンバ(及び/又は膨張容積1206、滴下チャンバ1224、及び気体分離チャンバ1226のうちの1つ又は複数)にすでに存在することがある。
【0283】
[00304]図12A及び図12Bに示されるように、補給液供給マニホルド1212は、セルフレーム1106の第2の側(図12B)の導管チャネル1268によって、第1の半電池チャンバ1202の入口ポート1214に連結されることがある。入口ポート1214は、第1の半電池チャンバ1202内の圧力が補給液供給マニホルド1212内の制御された圧力よりも低く降下したときに、補給液が供給マニホルド1212から第1の半電池チャンバ1202に流れることを可能にするように配置された一方向弁を備えることがある。本明細書で上述したように、他の実施形態では、補給液供給マニホルドは、補給液を一方又は両方の半電池チャンバ1202、1204に送達するように構成されることがある。
【0284】
[00305]いくつかの実施形態では、セルフレーム1106から構成されるセルスタックは、各半電池の一部分を電気的に監視するように構成されることがある。図11図12Bに示される実施形態では、各セルフレーム1106は、セルの様々な構成要素間の電位を監視するように配置された電気リード線1270、1272、1273を備えることがある。いくつかの実施形態では、双極板リード1270は、双極板1110、1111に電気的に(例えば1つ若しくは複数のワイヤ又は他の導電体によって)接続されることがある。例えば、図11で最も良く見られる実施形態では、タブ1176は、双極板1110、1111から、隣り合うセルフレーム1106の電気接点に接続されることがある。第1の半電池リード1272は、(例えば1つ若しくは複数のワイヤ又は他の導電体によって)第1の半電池の滴下チャンバ1224及び/又は気体分離チャンバ1226の凝縮器1230、1231(複数可)に電気的に接続されることがある。同様に、第2の半電池リード1273は、(例えば1つ若しくは複数のワイヤ又は他の導電体によって)第2の半電池の滴下チャンバ1223及び/又は気体分離チャンバ1227の凝縮器1277、1275(複数可)に電気的に接続されることがある。
【0285】
[00306]双極板リード1270と第1の半電池リード1272との間の電位(電圧)の変化が監視されることがある。双極板リード1270と第1の半電池リード1272との間の電気回路は、各出口チャネル1220、1236とそれぞれの滴下チャンバ1224、1223の凝縮器1230、1277との間の物理的ギャップ1278、1279における電気的不連続性により、開回路になる。出口チャネルは、導電性材料から作製される若しくは導電性材料を含むことによって、及び/又は導電性電解質によって、導電性でもよい。導電性電解質の液滴が出口チャネル1220、1236から滴下チャンバ1224、1223の導電性コンデンサ1230、1277に滴下し、以てギャップ1278、1279をブリッジして電気的不連続性を閉じるとき、電気回路は瞬時的に閉じることがある。
【0286】
[00307]これらの閉回路イベント(「滴下」)の頻度、持続時間、電圧、及び他の側面を監視することによって、半電池の健全性又は動作の様々な指標が決定又は推定されることがある。両方の半電池での滴下を監視することによって、セルスタックの各セルの両方の半電池に関してそのような指標を得ることができる。したがって、そのような実施形態では、セルスタック全体の各半電池(したがって各全電池)の「滴下検出器」を個々に監視して、個々のセル又は半電池の障害を識別することができる。
【0287】
[00308]例えば、1つの半電池の滴下チャンバでの連続的に閉じた回路(又は異常に長い持続時間の閉回路)は、不適切に機能している空洞ポンプを示すことがある。同様に、滴下間の異常に長いギャップ又は異常に高い電圧は、不適切に機能している電極(又は触媒)又は誤動作している出口チャネルを示すことがある。別の例では、半電池リード1272又は1273と双極板リード1270との間の異常に高い電圧は、(以下でさらに述べるように)半電池チャンバへの作動流体の漏れを示すことがある。他の多くの測定基準及び指標も同様に、電気リード線から得られた信号又はパターンから導出されることがある。
【0288】
[00309]図13は、セルスタックの2つの隣り合うセルフレーム1106a、1106bの「平面状」膨張容積1300a、1300bを示す。図示の例では、膨張容積1300a、1300bは、膨張容積側1312a、1312b(収縮状態で、すなわちゼロパーセント膨張状態で示されている)を「作動流体」側1314a、1314bから分離するダイヤフラム1310a、1310bを備えることがある。膨張容積1300a、1300bの作動流体側1314a、1314bは、セルスタックの全てのセルフレーム1106に共通の作動流体マニホルド1320(図12A及び図12Bでも見ることができる)を通して作動流体で充填されることがある。様々な実施形態において、作動流体は、脱イオン水、窒素、アルゴンなどの任意の気体又は液体でもよい。作動流体は、所望の作動圧力、典型的にはセルの半電池チャンバの定常状態動作圧力よりも高い圧力で維持されることがある。作動流体圧力は、本明細書で述べるように、各膨張容積1300a、1300bの膨張に対する抵抗を及ぼすように確立され、電気機械的に制御され、維持されることがある。
【0289】
[00310]作動流体は、共通の作動流体マニホルド1320を通って、及び各セルフレーム1106の第2の半電池側に固定されたカバーシート1330a、1330bの開口部1325a、1325bを通って、各膨張容積1300a、1300bの作動流体側に入ることができる。いくつかの実施形態では、各膨張容積1300a、1300bの電解質側1312a、1312bは、ダイヤフラム1310a、1310b、セルフレーム1106a、1106bの一部分、及びカバーシート1330a、1330bによって画定されることがある。他の実施形態では、各膨張容積1300a、1300bの電解質側1312a、1312bは、ダイヤフラム1310a、1310b、及びセルフレーム1106a、1106bのみによって画定されることがある(各セルフレームが膨張容積を横切って延びている場合)。
【0290】
[00311]電解質入口ポート(図12Bの1286、図13の断面では見えない)を通って各膨張容積1300a、1300bの電解質側1312a、1312bに入る電解質及び/又は気体は、電解質及び/又は気体の圧力が設定された作動流体圧力よりも大きい場合に膨張容積1300a又は1300bを膨張させる傾向がある。いくつかの実施形態では、作動流体圧力は、電気化学システムの異なる動作段階中に異なる圧力で制御されることがある。
【0291】
[00312]いくつかの実施形態では、セルフレーム1106は、本明細書におけるいくつかの実施形態で述べるように、双極板構造の冷却剤チャネル内に、冷却剤チャネルを通して、及び冷却剤チャネルから出るように冷却剤を送るように構成された冷却剤流入マニホルド1292及び冷却剤流出マニホルド1294を備えることもある。他の実施形態では、冷却剤マニホルドは省かれる、又は別の形で構成されることがある。様々な実施形態では、冷却剤は、冷却剤チャネルを通っていずれかの方向に流れることがあり、したがって、いくつかの実施形態では、冷却剤の流入1292と流出1294とが逆になることがある。
【0292】
独立した熱管理
[00313]従来の電解槽では、通常、セルを通して電解質を循環させることによってセルを冷却する必要があり、セルから出る電解質が、生成された気体を一緒に搬送する。多くの設計では、電解質からの気体の分離は、電解槽の外部にある分離ドラムで達成される。次いで、気体を含まない電解質がセルを通して再循環される。本明細書で述べる様々な電解質閉じ込めシステムでは、気体と電解質との分離は各セルフレーム内で行われ、電解質はセルから圧送されない。そのようなシステムでは、セルスタックから熱を除去するための別個の機構が有益であり得る。
【0293】
[00314]電解槽などの電気化学システムでの熱管理に関連する実施形態など、この項で述べるシステム及び方法の実施形態は、任意選択で、本出願の他の箇所で述べるシステム及び方法の他の実施形態と組み合わせることができる。例えば、本出願を通して述べる電解質閉じ込め電気化学セルの任意のものは、熱管理構成要素など、この項で述べる様々な実施形態の任意のものを含むことができる又は一緒に使用することができる。
【0294】
[00315]図14A及び図14Bは、プロセス水構成要素から独立した熱管理構成要素を有する電解槽システム1400、1401の例示的実施形態を示す。図14Aでの冷却剤ループ1430は、図14Bでの冷却剤ループ1431と実質的に同様に示されている。
【0295】
[00316]様々な実施形態において、冷却剤ループ1430、1431は、冷却剤導管、及びスタック1410の内部の1つ又は複数の熱交換器1432、並びにスタック1410の外部の1つ又は複数の排熱熱交換器1434を通して冷却流体を押し流すように構成及び配置されたポンプを備えることがある。いくつかの実施形態では、例えば図14Aに示されるように、スタック熱交換器は、隣り合うセル1415間の界面(及び/又はスタック1410の端部)で双極スタック1410を冷却するために冷却剤導管1432を有して構成された双極板構造1416を備えることがある。他の実施形態では、スタック1410の熱交換器は、双極板冷却剤導管1432を通した熱の除去の代わりに又はそれに加えて、スタックの各電気化学セル1410の縁部から熱を除去するように構成されることがある。
【0296】
[00317]図14Aは、双極構成でのセルスタック1410を備える例示的な電解槽システム1400を示す。各セル1415は、第1の半電池チャンバ1422の第1の電極1412と、第2の半電池チャンバ1424の第2の電極1414とを備える。第1の電極1412及び第2の電極1414の極性は、イオン交換膜のタイプ又は本明細書で述べる他の因子に応じて決まることがある。隣り合うセル1415間の双極板1416は、冷却剤導管1432を含むことがある。冷却剤循環ポンプ1436は、双極板1432を通し、外部熱交換器1434を通して冷却剤流体を循環させ、冷却剤を双極板1416に戻すように構成されることがある。これとは別に、プロセス水循環ポンプ1452は、供給マニホルド1440を通して各セル1415にプロセス水を供給し、プロセス水を気体収集マニホルド1442、1444に送るように構成されることがあり、気体収集マニホルド1442、1444は、以下でさらに述べるように、生成された気体をセルから除去することができる。
【0297】
[00318]代替の電解槽システムでは、冷却剤導管は、双極板1416を通るのではなく、セルスタック1410の各セル1415の外部を取り囲む又は隣り合って延びるように配置されることがある。そのような実施形態では、熱は電極内で伝導され、セルの周縁部にある冷却剤導管内の冷却剤流体によって収集されることがある。前の実施形態と同様に、冷却剤循環システムは、冷却剤導管と外部熱交換器との間で冷却剤を循環させるように構成されることがある。いくつかの実施形態では、そのような冷却剤導管は、セルスタックでの1つ若しくは複数のセル及び/又はスタックフレーム構造若しくは他の構造に統合されることがある。
【0298】
[00319]冷却流体は、セルスタックから熱を搬送するのに適した任意の液体又は気体でよい。様々な実施形態において、冷却流体は、水(脱イオン水又はより低い純度の水を含む)などの液体、グリコール(例えばエチレングリコール及び/又はプロピレングリコール)、誘電性流体(例えばパーフルオロカーボン、ポリアルファオレフィン、若しくは油)、又は空気、水素、酸素、窒素、アルゴン、これらの任意の組合せなどの気体でよい。
【0299】
熱管理:双極板熱交換器
[00320]図15は、冷却剤が循環されることがある冷却剤導管1510を有する多層冷却双極板1500の概略分解図の例示を提供する。図示の例では、双極板1500は、導電性材料の3つの層1522、1524、1526を備える。チャネル層1526が、2つの外層1522、1524の間に挟まれることがある。チャネル層1526は、外層1522、1524の間の空間を通して冷却剤を送るように配置された1つ又は複数のフローチャネル1510を備えることがある。いくつかの実施形態では、フローチャネル1510は、外層1522、1524の1つに接触する電極の全ての部分への導電経路を最小化するように選択されたパターンで構成されることがある。他の実施形態では、フローチャネル1510は、チャネル1510を通る冷却剤の流れの流量又は他の特性を最適化するように構成されることがある。
【0300】
[00321]3つの層1522、1524、1526は、少なくとも流入ポート1532及び流出ポート1534を残して、少なくともプレート1522、1524、1526の周縁部の周りの溶接(例えばレーザ溶接、音波溶接、抵抗溶接、又は他の溶接技法)によって封止及び固定されることがある。代替として、層1522、1524、1526は、接着剤、Oリング、又は望みに応じた他の方法など、他の技法又は材料によって封止及び/又は固定されることがある。
【0301】
[00322]少なくとも外層1522、1524、1526は、チャネル1510を通して送られる高純度プロセス水及び/又は冷却剤流体と適合性のある材料から作製されることがある。例えば、層のいくつか又は全ては、電解槽環境において非反応性であるニッケル又は他の導電性材料でコーティングされた、めっきされた、又は他の方法で覆われたニッケル又は他の導電性材料(例えば鋼)から作製されることがある。
【0302】
[00323]代替実施形態では、冷却双極板1500は、2つの層のみから作製されることがあり、層の一方又は両方は、層間に1つ又は複数のフローチャネルを生成するように機械加工される、スタンプされる、又は他の方法で修正される。
【0303】
例示的なイオン交換膜構成:低流量イオン交換電解槽
[00324]セルスタックを冷却する機能を、分解すべき水を供給する機能から切り離すと、プロセス水を循環及び冷却することによって必要とされる高コストのプラント構成要素をなくすことにより、大幅なコスト削減を実現することができる。そのような切り離しを実現するための様々な方法、システム、及び構成要素を本明細書で述べる。いくつかの実施形態では、この切り離しは、第2の別個の冷却剤流体を使用してセル/スタックから熱を除去し、その一方で、実質的に水消費速度以下の流量でプロセス水をセル/スタックに導入することによって実現することができる。そのようなシステムは、本明細書では「低流量イオン交換」(又は「LFIE」)電解槽と呼ばれる。
【0304】
[00325]LFIE電解槽システムの実施形態も、本出願を通して述べる電解槽システムの様々な特徴部又は要素を含むことにより利益を得ることがある。例えば、LFIE電解槽は、補給液供給システム、流体逃がし要素、気体除去マニホルド若しくはチャネル、及び/又は膨張チャンバを備えることがある。これらの要素はそれぞれ、本出願を通して述べる構造及び方法を備えることがある。さらなる実施形態では、本出願を通して述べる任意の他の適合性のある構造又は方法が、本明細書で述べるような1つ又は複数のLFIE電解槽に組み込まれることがある。例えば、いくつかの実施形態では、LFIE電解槽の流体逃がし要素は、各半電池から逃げる液体又は気体に最小又はゼロの流れ抵抗を与えるように構成されることがある。そのような実施形態では、流体出口チャネルは、実質的に開いており、制限されていないことがある。いくつかの実施形態では、流体出口チャネルは、水が半電池チャンバから出る前に、ある液位を克服するために特定の体積の水を必要とするように構成された「ウォーターフォール」を備えることがある。そのような構成では、気体は半電池から自由に出ることができ、水はウォーターフォールの高さを超える速度でのみ出る。したがって、そのような実施形態では、水出口流量は、水供給流量と水消費速度との正の差に等しい。ウォーターフォール流体出口を有するLFIE電解槽において、セルを通る水の流量は、本明細書で述べるように、所望の流量(又は補充流量)だけ予想消費速度を超える流量で水を供給することによって制御されることがある。
【0305】
[00326]いくつかの実施形態では、LFIE電解槽は、補給液供給システムと、成分ガスへの分解によって水が消費される速度よりもわずかに高い流量で、本質的に脱イオン水からなる補給液をセルに供給するように構成された他の要素とを備えることがある。別個の熱管理システムと結合させて、そのようなLFIE電解槽システムは、従来のイオン交換電解槽と比較したときにはるかに低コストで製造して動作させることができる。
【0306】
[00327]図14A及び図14Bは、セルスタック1410を通るプロセス水及び冷却剤の例示的な流れを示す高レベルシステム図を概略的に示す。図14A及び図14BのLFIE電解槽システム1400、1401はそれぞれ、複数の電気化学セル1415から構成されるセルスタック1410を備え、各電気化学セル1415は、それぞれのイオン交換膜1418によって分離された第1の半電池1422及び第2の半電池1424を有する。以下でさらに詳細に述べるように、使用されるイオン交換膜のタイプに応じて、プロセス水及び/又は別の電解質若しくは補給液を、正の半電池又は負の半電池に供給することができる。半電池1422、1424は、ここでは極性に言及せずに全般的に述べるが、PEM及びAEMセパレータ膜の文脈では、電気的極性に言及して以下にさらに述べる。
【0307】
[00328]システム1400、1401はそれぞれ、セルスタック1410から熱を除去するためにセル内熱交換器1432を通して、及び冷却剤流体から低温熱シンクへ熱を排除するために外部熱交換器1434を通して冷却剤流体を送るように構成されたポンプ1436を有する冷却剤ループ1430、1431を備える。とりわけ、冷却剤ループ1430、1431は、プロセス水供給導管1436及び返還導管1438から独立している。LFIE電解槽などの電気化学システムで有用な独立した熱管理システムのさらなる詳細は、本出願において上述し、本出願を通してさらに詳細に述べる。
【0308】
[00329]図14Aは、プロセス水を各セル1415の第1の半電池1422に送るように構成されたプロセス水供給マニホルド1440を示す。次いで、プロセス水が各セルで分解されることがあり、生成された気体は、第1の気体除去マニホルド1442及び第2の気体除去マニホルド1444に収集されることがある。小さい体積の余剰のプロセス水が、第1の半電池1422で生成された気体と共に各セルから出ることがある。セルスタック1410から出る少量の余剰の水は、液気セパレータ1450で、収集された気体から分離されることがある。収集された気体はさらに処理(例えば乾燥や冷却)されることがあり、余剰の水は、ポンプ1452によって、補給水リザーバ1454からの水と共にプロセス水供給マニホルド1440に戻されることがある。
【0309】
[00330]図14Bは、プロセス水を各セル1415の第1の半電池1422に送ると共に、プロセス水の一部を第1の気体収集マニホルド1442を通して流すように構成されたプロセス水供給マニホルド1440を示す。図14Bのシステムでは、第1の半電池で生成された気体は、水流に収集されることがあり、以て、収集された気体がプロセス水によって冷却される。複合の水/気体の流れは、液気セパレータ1450で分離されることがあり、余剰の水は、ポンプ1452によって、補給水リザーバ1454からの水と共にプロセス水供給マニホルド1440に戻されることがある。
【0310】
[00331]図14Bに示されるプロセス水ループ1461は、スタックバイパス導管1456を含むこともあり、ある量のプロセス水が、供給マニホルド1440を出た後にスタックバイパス導管1456を通って流れることができ、第1の気体除去マニホルド1442内の液体体積を維持し、その流体圧力は、圧力調整器1462で調整されることがある。
【0311】
[00332]図14Bのプロセス水ループ1461でのバイパス導管1456は、図14Aに示されるプロセス水ループ1460では省かれている。その結果、供給マニホルドから液気セパレータ1450へのプロセス水のための唯一の経路は、セルスタック1410の第1の半電池1422を通る。したがって、図14Aの構成では、プロセス水ループ1460を通るプロセス水の流量は、第1の半電池122から出る水の流量によって制限される。
【0312】
[00333]とりわけ、図14A及び図14Aによる各システムは、本出願を通してもさらに述べるように、第1の半電池1422に正極性を適用することによってPEMシステムとして、又はプロセス水が供給される第1の半電池1422に負極性を適用することによってAEMシステムとして構成することができる。
【0313】
例示的なイオン交換膜構成:LF-PEMセル構成
[00334]図16は、低流量PEM電解槽での電気化学セル1600の構成要素を概略的に示す。セル1600は、供給マニホルド1610を通して供給されるプロセス水1606(例えば、電解槽で分解すべき脱イオン水)で充填された正の半電池チャンバ1602を含むことがある。酸素発生触媒を含む正極1612は、正の半電池チャンバ1602内に配置され、プロセス水1606に浸漬されることがある。プロトン交換膜(PEM)セパレータ1620は、正の半電池チャンバ1602を負の半電池チャンバ1604から分離することができ、負極1614及び正極1612と接触することができる。負極1614は、水素発生触媒を含むことがある。様々な例示的な正及び負の触媒材料を本出願を通して述べる。典型的なPEM構成では、PEMセパレータ1620は、通常の条件下で負の半電池チャンバ1604に水が入るのを妨げることができるので、負の半電池チャンバ1604は実質的に気体で充填されることがある。
【0314】
[00335]動作中、プロセス水1606は、正の半電池チャンバ1602内で電気化学的に分解されて、正の半電池チャンバ1602内で酸素ガスを生成する。正極1612で生成された酸素ガスは、正の気体除去マニホルド1630を通して正の半電池チャンバ1602から引き出されることがある。いくつかの実施形態では、酸素ガスと余剰なプロセス水との混合流は、正の半電池チャンバ1602と正の気体除去マニホルド1630との間に配置された共通の流体逃がし要素1636を通って正の半電池チャンバ1602から出ることがある。流体逃がし要素1636は、本明細書で述べる「出口チャネル」又は疎水性膜を含む、本出願を通して述べる任意の流体逃がし要素構造を備えることがある。
【0315】
[00336]水分解反応からの水素原子(プロトン)は、PEMセパレータ1620を横切って負極1614に向けて押し流されることがあり、負極1614で電気化学的に結合されて水素ガスを生成する。水素ガスは、負の気体除去マニホルド1640を通して負の半電池チャンバ1604から引き出されることがある。いくつかの実施形態では、負の気体除去マニホルド1640は、圧力調整器1642によって所望の圧力に調整されることがある。様々な実施形態において、圧力調整器1642は、負の気体除去マニホルド1640を最大50bar以上の圧力で維持するように動作されることがある。例えば、負の気体除去マニホルド圧力は、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100barに調整されることがある。
【0316】
[00337]様々な実施形態において、正の気体除去マニホルド1630内の圧力は、圧力調整器1646によって調整されることがある供給マニホルド1610内の流体圧力よりもわずかに低くなるように、圧力調整器1644によって調整されることがある。様々な実施形態において、圧力調整器1644は、負の気体除去マニホルド内の流体(気体除去液体及び/又は気体のみ)を少なくとも10bar、最大30bar、40bar、50bar、60bar、70bar、80bar、90bar、100bar、又はそれよりも高い圧力で維持するように構成されることがある。
【0317】
[00338]いくつかの実施形態では、低流量PEM電解槽スタックの各正の半電池は、流体逃がし要素1636を通って正の半電池から逃げる液体水から気体を捕捉及び分離するための液気セパレータ(例えば、図1又は図11図12Bに示される)を備えることがある。捕捉された液体水は、(例えばとりわけ図3A図3Cに示される)セルに固有の導管及びポンプ(例えば空洞ポンプ)によって、正の半電池に戻されることがある。代替として、液気分離及び水返還は、図14A及び図14Bを参照して本明細書で述べるように、スタックレベル又はシステムレベルで行われることがある。
【0318】
[00339]図16に示されるように、低流量PEM電解槽のいくつかの実施形態は、正の半電池チャンバ1602と流体連通して連結された膨張チャンバ1650を含むこともある。本出願を通して述べるように、膨張チャンバ1650は、流体圧力を所望の範囲内に維持しながら、半電池チャンバ1602内の液/気混合物の体積膨張を可能にするように構成されることがある。低流量PEM電解槽の様々な実施形態において、膨張チャンバ1650は、必要に応じて一方又は両方の半電池チャンバと流体連通するように配置されることがある。膨張チャンバ1650は、膨張に対する抵抗を与えるように構成されることがあり、容積をさらに膨張させるためには圧力の増加を必要とする。代替として、膨張容積は、容積限度まで実質的に無制限の容積膨張を可能にするように構成されることがある。
【0319】
[00340]図14A及び図14Bを参照すると、低流量PEM電解槽システムは、2つの独立した流体循環ループ、すなわちプロセス水ループ1460、1461及び冷却剤ループ1430、1431を備えることがある。プロセス水ループ1460、1461は、セルスタック1410の正の半電池(この場合、正の極性を有する第1の半電池1422)に新鮮なプロセス水を送達するように構成されることがある。余剰のプロセス水と酸素ガスとの混合物が、セルスタック1410の第1の半電池1422の出口から引き出されることがある。酸素ガスは、液/気セパレータ1450において余剰のプロセス水から分離されることがあり、余剰のプロセス水は、補給水源1454(例えば、地方自治体の水源又は他の貯水部によって供給される、水を脱イオン処理するシステム)からの追加の水と共にセルスタック1410に戻されることがある。
【0320】
[00341]いくつかの実施形態では、プロセス水ループ1460、1461は、液/気セパレータ1450及び補給水供給源1454からの両方の余剰のプロセス水を押し流すためのポンプ1452を備えることがある。供給マニホルド1440の下流に位置するポンプ1452及び/又は圧力調整器1464を使用して、セルスタック1410に供給されるプロセス水の圧力を制御することができる。第1の気体収集マニホルド1442の下流に位置する別個の圧力調整器1466は、気体収集マニホルド1442内の圧力をセルスタック1410の出口で制御するように構成されることがある。圧力調整器1462、1464はそれぞれ、背圧調整弁などの用途に利用可能であり適した任意のタイプの圧力調整器でもよい。
【0321】
[00342]水素ガスは、セルスタック1410の第2の半電池1424から出る導管及び気体除去マニホルド1444に収集される。いくつかの実施形態では、第2の気体除去マニホルド1444内の流体圧力は、第2の気体除去マニホルド1444の下流に位置する圧力調整器1466によって調整されることがある。水素ガスは、スタック1410によって生成された水素を処理(例えば、精製、乾燥、圧縮、冷却など)及び貯蔵又は使用するように構成された気体収集システム1470に送られることがある。いくつかの実施形態では、気体収集システム1470は、熱交換器、圧縮機、乾燥機などの追加の気体処理構成要素を備えることもある。
【0322】
[00343]プロセス水ループ1460、1461は、一般に、プロセス水が冷却に使用されるPEM及びAEM電解槽システムと比較したときに非常に遅い流量(例えば、以下参照)でプロセス水を循環させるように構成されることがある。例えば、低流量電解槽では、プロセス水冷却式システムよりも数百倍又は数千倍低い流量で、水をPEMセルスタックに圧送(又は駆動)することがある。LFIE電解槽では、プロセス水は、消費された水を補充し、効果的な3相界面(又は三重点)を維持するのに十分なセル構成要素の濡れを維持するのに十分な流量で電気化学セルスタックに供給されればよい。
【0323】
[00344]メガワットスケールの典型的なPEM水電解槽は、セル当たり毎分1ガロン未満に近い流量でしか水を消費しないにもかかわらず、セル当たり毎分数百ガロンのプロセス水流量で動作することがある。言い換えると、冷却にプロセス水を利用するイオン交換膜電解槽は、分解によってプロセス水が消費される速度の数百倍のプロセス水流量を必要とする。プロセス水によって熱を適切に除去するためには、そのような高い流量が必要とされる。プロセス水とは独立した別個の冷却剤流体を使用することによって、そのような高い流量を不要にすることができる。
【0324】
[00345]対照的に、LFIE電解槽へのプロセス水の流量は、理想的には、分解によってプロセス水が消費される速度にほぼ等しくすることができる。いくつかの場合には、セル構成要素の濡れを維持するため、セル間の消費速度の相違を考慮に入れるため、少なくとも水が消費されるのと同じ速さでスタックの全てのセルが水を受け取っていることを保証するため、又は他の理由のために、プロセス水の流量を消費速度よりもわずかに大きく押し流すことが有益なことがある。流量は、消費速度と一致する又はそれを超えるように制御可能にすることができ、したがって、電極の細孔は、効率的に分解し続けるのに十分な水で湿潤されたままである。
【0325】
[00346]水分解による気体生成の速度は、一般に、水温、圧力、及び印加電流の関数であり、これらはそれぞれ、電解槽システムの制御されたパラメータであり得て、したがって、セルスタックの各セルによる水消費速度は、少なくともこれらの制御可能な因子に基づいて少なくともほぼ既知であり得る。したがって、様々な実施形態において、プロセス水は、水消費速度に対するパーセンテージとして定義される流量でLFIEセルに送達されることがある。例えば、プロセス水は、消費速度よりも約0.01%~約400%高い流量で(すなわち、消費速度の約100.01%~約500%の流量で)送達されることがある。いくつかの特定の実施形態では、プロセス水送達の流量は、予想される消費速度の約101%~約150%の間でも有益となり得る。特定の実施形態では、水は、予想される水の消費速度の約100.01%、100.05%、100.1%、100.5%、101%、105%、110%、125%、150%、175%、200%、300%、400%、又は500%の流量で供給されることがある。他の実施形態では、より高いプロセス水送達流量が使用されることもあるが(例えば、消費速度の100倍又は消費速度の1000%)、それでも、プロセス水を唯一の伝熱流体として使用するときに必要な流量よりも実質的に低い。したがって、いくつかの実施形態では、低流量イオン交換電解槽は、水が消費される速度の1000%以下のプロセス水供給流量を利用することができる。
【0326】
[00347]いくつかの実施形態では、LFIE電解槽に流入するプロセス水の流量は、プロセス水が水分解反応によって消費される速度に基づいて定義及び/又は制御されることがある。例えば、プロセス水の流量は、印加電流の関数として、気体収集速度の関数として、又は水消費速度に関連する他の測定可能な変数の関数として制御することができる。
【0327】
[00348]様々な実施形態において、そのような流量は、セルスタックへのプロセス水送達の流量に基づいて制御されることがある。例えば、流量ベースの制御は、セルスタックへの質量流量又は体積流量の測定のフィードバックに基づいて水送達流量を制御するように構成された閉ループ制御装置によって達成することができる。代替として又は追加として、プロセス水の流量は、セルスタックに水を送達するプロセス水供給マニホルド内のプロセス水の圧力に基づくことがある。例えば、圧力ベースの制御は、1つ又は複数の圧力センサからのフィードバックに基づいて供給マニホルド内の流体圧力を維持するように構成された閉ループ制御装置によって実施されることがある。代替として、流量ベース又は圧力ベースの制御は、フィードバック測定なしの開ループ制御システムを備えることがある。圧力ベースの流れ制御システム及び方法のいくつかの例を以下に述べる。
【0328】
[00349]そのような低い補充流量では、酸素を含有する第2の気体除去マニホルド1444、及びセルスタックから出る関連の導管を通って流れる液体水の体積は非常に小さい。その結果、液気セパレータ1450は非常に小さくて単純でよい。例えば、液気セパレータ1450は、気体を搬送除去するために上向きに流れる垂直脚部と、液体水を収集するために下向きに流れる垂直脚部とを有する垂直T字接続導管を単に備えることがある。いくつかの実施形態では、液気セパレータは、流れる気体から水蒸気を除去するための乾燥剤床などの乾燥機又は水蒸気凝縮器を備えることもある。
【0329】
例示的なイオン交換膜構成:LF-AEMセル構成
[00350]図17は、低流量AEM電解槽の電気化学セル1700の構成要素を概略的に示す。図示されるように、低流量AEM電解槽システムは、低流量PEM電解槽システムのセル1600と実質的に同様でもよいが、主な相違点は、PEMの場合の正の半電池チャンバ1602とは異なり、AEMの場合には負の半電池チャンバ1704にプロセス水1708を導入することである。
【0330】
[00351]図17に示されるように、セル1700は、供給マニホルド1710を通して供給されるプロセス水1708(例えば、電解槽で分解すべき脱イオン水)で充填された負の半電池チャンバ1704を含むことがある。水素発生触媒を含む負極1714は、負の半電池チャンバ1704内に配置され、プロセス水1708に浸漬されることがある。アニオン交換膜(AEM)セパレータ1720は、負の半電池チャンバ1704を正の半電池チャンバ1702から分離することができ、負極1714及び正極1712と接触することができる。正極1712は、酸素発生触媒を含むことがある。AEMセパレータ1720は、通常の条件下で正の半電池チャンバ1702に水が入るのを妨げることができるので、正の半電池チャンバ1702は、実質的に、生成された気体(例えば酸素)で充填されることがある。
【0331】
[00352]動作中、プロセス水1708は、負の半電池チャンバ1704で電気化学的に分解されて、負の半電池チャンバ1704で水素ガスを生成する。負極1714で生成された水素ガスは、負の気体除去マニホルド1740を通して負の半電池1704から引き出されることがある。いくつかの実施形態では、水素ガスと余剰のプロセス水との混合流は、負の半電池チャンバ1704と負の気体除去マニホルド1740との間に配置された流体逃がし要素1736を通って負の半電池チャンバ1704から出ることがある。流体逃がし要素として有用な例示的な構造及び構成を本明細書を通して述べ、それらの任意のものを、図17に示されるようなセルで使用することができる。
【0332】
[00353]水分解反応からの酸素原子は、酸素ガスが生成される正極1712に向かってAEMセパレータ1720を横切る傾向がある。酸素ガスは、正の気体除去マニホルド1730を通して正の半電池チャンバから引き出されることがある。
【0333】
[00354]発生する水素ガスを高圧で生成するために、プロセス水は、所望の水素ガス圧力よりもわずかに高い絶対圧力で注入されることがある。いくつかの実施形態では、圧力調整器1746を使用して、供給マニホルド1710を通して負の半電池チャンバ1704に供給されるプロセス水の圧力を調整することができる。いくつかの実施形態では、プロセス水供給マニホルド1710内の水は、負の半電池チャンバ1704内の高い流体圧力を維持するように高圧で維持されることがあり、以て、水素ガス及び酸素ガスを高圧で生成する。例えば、いくつかの実施形態では、生成された水素(及び/又は酸素)を30bar以上、又はいくつかの場合には100bar以上の圧力で収集することが望ましいことがある。そのような実施形態では、プロセス水は、大気圧から100bar以上までの圧力、例えば、約1bar、10bar、20bar、30bar、40bar、50bar、60bar、70bar、80bar、90bar、100bar、又はそれよりも高い圧力で供給されることがある。そのような圧力で水を分解することによって生成される気体は、0.5barなど、プロセス水圧力よりもわずかだけ低い圧力で収集されることがある。
【0334】
[00355]いくつかの実施形態では、負の気体除去マニホルド1740は、圧力調整器1742によって所望の圧力に調整されることがある。様々な実施形態において、圧力調整器1742は、プロセス水が負の半電池チャンバ1704に供給される、圧力調整器1746によって調整される供給マニホルド1710内の圧力よりもわずかに低い圧力で負の気体除去マニホルド1740を維持するように動作されることがある。
【0335】
[00356]いくつかの実施形態では、正の半電池1702から除去された酸素は、正の気体除去マニホルド1730の圧力調整器1744によって所望の圧力に維持されることがある。様々な実施形態において、圧力調整器1744は、正の気体除去マニホルド内の流体(気体除去液体及び/又は気体のみ)を少なくとも10bar、最大30bar、40bar、50bar、60bar、70bar、80bar、90bar、100bar、又はそれよりも高い圧力で維持するように構成されることがある。
【0336】
[00357]いくつかの実施形態では、低流量AEM電解槽スタックの各負の半電池は、流体逃がし要素1736を通って負の半電池から逃げる液体水から、生成された気体を捕捉及び分離するための液気セパレータ(例えば、図1又は図11図12Bに示される)を備えることがある。捕捉された液体水は、(例えばとりわけ図3A図3Cに示される)セルに固有の導管及びポンプ(例えば空洞ポンプ)によって、負の半電池に戻されることがある。代替として、液気分離及び水返還は、図14A及び図14Bを参照して本明細書で述べるように、スタックレベル又はシステムレベルで行われることがある。
【0337】
[00358]図17に示されるように、低流量AEM電解槽のいくつかの実施形態は、負の半電池チャンバ1704と流体連通して連結された膨張チャンバ1750を含むこともある。本明細書を通して述べるように、膨張チャンバ1750は、流体圧力を所望の範囲内に維持しながら、半電池チャンバ1704内の液体/気体混合物の体積膨張を可能にするように構成されることがある。容積膨張システムの様々な例及び実施形態を、本明細書で以下に述べる。
【0338】
[00359]図14A及び図14Bを参照すると、低流量AEM電解槽システムは、2つの独立した流体循環ループ、すなわちプロセス水ループ1460、1461及び冷却剤ループ1430、1431を備えることがある。プロセス水ループ1460、1461は、セルスタック1410の負の半電池(この場合、負の極性を有する第1の半電池1422)に新鮮なプロセス水を送達するように構成されることがある。余剰のプロセス水と酸素ガスとの混合物が、セルスタック1410の第1の半電池1422の出口から引き出されることがある。酸素ガスは、液/気セパレータ1450において余剰のプロセス水から分離されることがあり、余剰のプロセス水は、補給水源1454(例えば、地方自治体の水源又は他の貯水部によって供給される、水を脱イオン処理するシステム)からの追加の水と共にセルスタック1410に戻されることがある。
【0339】
[00360]いくつかの実施形態では、プロセス水ループ1460、1461は、液/気セパレータ1450及び補給水供給源1454からの両方の余剰のプロセス水を押し流すためのポンプ1452を備えることがある。ポンプ1452及び/又は第1の圧力調整器1464を使用して、セルスタック1410に供給されるプロセス水の圧力を制御することができる。第2の圧力調整162は、第1の気体収集マニホルド1442内の圧力をセルスタック1410の出口で制御するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、圧力調整器1466を使用して、第2の気体除去マニホルド1444内の圧力を調整することができる。圧力調整器1462、1464、1466はそれぞれ、背圧調整弁などの用途に利用可能であり適した任意のタイプの圧力調整器でもよい。
【0340】
[00361]酸素ガスは、セルスタック1410の第2の半電池1424から出る第2の気体除去マニホルド1444及び関連の導管に収集されることがある。酸素ガスは、スタック1410によって生成された水素を処理(例えば、精製、乾燥、圧縮、冷却など)及び貯蔵、使用、又は排気するように構成された気体収集システム1470に送られることがある。いくつかの実施形態では、気体収集システム1470は、熱交換器、圧縮機、乾燥機などの追加の気体処理構成要素を備えることもある。
【0341】
[00362]いくつかの実施形態では、セルスタックから引き出される余剰の酸素ガスは、負の半電池チャンバ1422内のプロセス水の圧力よりもわずかに低い高圧でもよい。そのような実施形態では、高圧酸素ガスを利用して、補給水源1454から引き出されたプロセス水を予圧することができる。例えば、流体圧力交換デバイス(図示せず)を使用して、酸素ガスの高圧を、セルスタック1410に送達すべき補給水1454に移送することができる。適切な流体圧力交換器の例は、米国特許第7,306,437号及びその参考文献によって教示されているものを含むことがある。他の実施形態では、セルスタックから収集された酸素ガスは、大気圧又はその近くでもよく、他の目的に必要とされない場合、単に大気に排気されることがある。
【0342】
[00363]プロセス水ループは、一般に、比較的遅い流量でプロセス水を循環させるように構成されることがある。例えば、水は、PEMシステムに関して上述したのと同じ流量又は補充流量で、AEMセルスタック1410に圧送(又は他の方法で駆動)されることがある。AEMシステムのプロセス水は、より高い絶対圧力で送達されることがあるが、相対圧力及び流量は、上述したのと同じ範囲内及び同じ値でもよい。
【0343】
[00364]様々な実施形態において、プロセス水は、セルスタック1410に送達され、上述したように比較的「低」流量で各セル1415に分配されることがある。いくつかの実施形態では、プロセス水の供給は、補給液供給構造及び方法を参照して本明細書を通して述べるように、水供給導管又はマニホルド内の流体圧力を制御することによって実現することができる。低流量イオン交換電解槽の様々な実施形態において、プロセス水供給入口は、弁の前後の圧力差が所定のクラッキング圧力を超え、以てセル又はスタックへの断続的な水の送達を引き起こすときに、セル(又はセルスタック)に水のボーラスを送達するように構成された1つ又は複数の一方向弁を備えることがある。他の実施形態では、水入口にある図16での一方向弁1660及び図17での一方向弁1760は省かれることがあり、水は、供給マニホルドと半電池チャンバとの間の入口を通って双方向に自由に流れることができる。
【0344】
[00365]LFIE電解槽のいくつかの実施形態は、図18に概略的に示されるように、プロセス水を両方の半電池チャンバ1802、1804に送達するように構成されることがある。そのようなシステムは、PEM又はAEMセパレータのいずれかを備えることがあり、大気圧又はより高い圧力で動作されることがある。図18のシステムは、半電池チャンバ1802、1804と、PEM又はAEMセパレータ膜1820と、気体除去マニホルド1840、1843と、流体逃がし要素1835、1836と、膨張チャンバ1850と、液体電解質1806、1807とを含む。上述したように、水の電気化学的分解は、使用中のイオン交換膜の性質に応じて、一方の半電池で優先的に生じる傾向がある。その結果、一方の半電池での水消費速度は、他方の半電池の消費速度に比べて実質的に低くなる(又はさらにはゼロになる)ことがある。様々な実装形態において、低い消費速度を有する半電池内の水は、(例えば、気体のみが通過することを可能にする相弁別の流体逃がし膜によって)静的に保持されることがあり、又は生成された気体と共に遅い速度で除去されることがある。
【0345】
電子制御装置
[00366]次に図19を参照すると、本明細書におけるシステム及び方法と組み合わせて開示又は使用される電子制御装置の1つ又は複数の態様又は実施形態を実現するために利用することができる電子制御装置の物理的構成要素を示すブロック図が示されている。例えば、本明細書で述べる方法及び操作を指示するために使用される制御装置の態様は、図19の構成要素によって実現されることがある。
【0346】
[00367]図19の概略図において、ディスプレイ部分1912及び不揮発性メモリ1920はバス1922に結合され、バス1922は、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)1924、処理部分(N個の処理構成要素を含む)1926、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)1927、及びN個の送受信機を含む送受信機構成要素1928にも結合される。
【0347】
[00368]図19に示される構成要素は物理的構成要素を表すが、図19は、詳細なハードウェア図であることは意図されていない。したがって、図19に示される構成要素の多くは、共通の構成によって実現される又はさらなる物理的構成要素に分散されることがある。図19のいくつかの構成要素は、いくつかの実装形態では省略されることがある。さらに、他の既存の及びまだ開発されていない物理的構成要素及びアーキテクチャを利用して、図19を参照して述べる機能的構成要素を実装することもできることが企図される。
【0348】
[00369]ディスプレイ部分1912は、本明細書で述べるシステムの操作者のためにユーザインターフェースを提供するように動作することができる。ディスプレイは、例えば液晶ディスプレイやAMOLEDディスプレイによって実現することができ、いくつかの実装形態では、ディスプレイは、操作者が制御態様を変更し、開示される電気化学システムの動作パラメータ値(例えば、セル又はスタック電流、セル又はスタック電圧、無効電力、動作傾向、流量、圧力など)を閲覧できるようにするタッチスクリーンディスプレイによって実現されることがある。一般に、不揮発性メモリ1920は、本明細書で述べる方法の実施に関連する実行可能コードを含む、データ及びプロセッサ実行可能コードを記憶する(例えば、永続的に記憶する)ように機能する非一時的メモリでよい。いくつかの実施形態では、不揮発性メモリ1920は、本明細書で述べる論理及び制御構成要素の機能の実行を促進するために、ブートローダコード、オペレーティングシステムコード、ファイルシステムコード、及び非一時的なプロセッサ実行可能コードを含むことがある。
【0349】
[00370]いくつかの実装形態では、不揮発性メモリ1920は、フラッシュメモリ(例えば、NAND又はONENANDメモリ)によって実現することができるが、他のメモリタイプを利用することもできることが企図される。不揮発性メモリ1920からコードを実行することは可能であり得るが、不揮発性メモリ内の実行可能コードは、典型的には、RAM1924にロードされ、処理部分1926のN個の処理構成要素のうちの1つ又は複数によって実行されることがある。
【0350】
[00371]RAM1924に関連するN個の処理構成要素は、一般に、本明細書に開示される方法の実行を促進するために、不揮発性メモリ1920に記憶された命令を実行するように動作することができる。例えば、本明細書で述べる方法の態様を実施するための非一時的なプロセッサ実行可能命令は、不揮発性メモリ1920に永続的に記憶され、RAM1924に関連するN個の処理構成要素によって実行されることがある。当業者には理解されるように、処理部分1926は、ビデオプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、及び他の処理構成要素を含むことがある。
【0351】
[00372]追加として又は代替として、FPGA1927は、本明細書で述べる方法の1つ又は複数の態様を実施するように構成されることがある。例えば、非一時的なFPGA構成命令は、不揮発性メモリ1920に永続的に記憶され、FPGA1927によって(例えば起動中に)アクセスされて、本明細書で述べる制御及び論理構成要素の1つ又は複数の機能を実施するようにFPGA1927を構成することができる。
【0352】
[00373]本開示に鑑みて当業者には理解されるように、図示される入力及び出力モジュールは、いくつかの異なる目的のために使用することができる。例えば、センサが入力モジュールに結合されることがあり、出力モジュールは、本明細書で述べる様々な電気的、電子的、又は電気機械的構成要素の任意のものを操作するための制御信号を生成することがある。
【0353】
[00374]図示される送受信機構成要素1928は、無線又は有線ネットワークを介して外部デバイスと通信するために使用することができるN個の送受信機チェーンを含むことがある。N個の送受信機チェーンのそれぞれは、特定の通信スキーム(例えば、SCADA、DNP3、WiFi、Ethernet、Modbus、CDMA、Bluetooth、NFCなど)に関連する送受信機でよい。
【0354】
使用する用語
[00375]本明細書における例及び実施形態の多くは、水電解槽を参照して述べているが、同じ一般的な構造、システム、及び方法を、燃料セル(気体が反応してエネルギーを生成する)及びフロー電池(エネルギーが、水溶液又は非水溶液中に1つ又は複数のイオン種の形で貯蔵される)などの電気化学セルスタックを含む他のシステムに適用することもできる。
【0355】
[00376]本発明を、特定の好ましい実施形態及び例の文脈で開示してきたが、本発明は、具体的に開示した実施形態を超えて、本発明の他の代替実施形態及び/又は使用並びにその明らかな修正形態及び等価形態にまで及ぶことを当業者は理解されよう。上述した実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される全般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用することができる。したがって、本明細書に開示される本発明の範囲は、上述した特定の開示した実施形態によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきであることが意図される。
【0356】
[00377]特に、材料及び製造技法は、関連技術の当業者の水準内で採用することができる。さらに、単一の要素への言及は、同じ要素が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「1つの」、「及び」、「前記」、及び「その」は、文脈上明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用するとき、特に明記しない限り、「又は」という用語は、提示された全ての代替の包含であり、「及び/又は」という語句と本質的に同じことを意味する。特許請求の範囲は、任意選択の要素を除外するように草稿されていることがあることにさらに留意されたい。したがって、この言明は、クレーム要素の記載に関連する「単独で」や「のみ」などの排他的な用語の使用、又は「否定的」な制限の使用のための先行詞として働くことを意図されている。本明細書で別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0357】
さらなる実施形態
[00378]さらなる実施形態は、以下のものを含むことがある。
【0358】
[00379]実施形態1:電解質閉じ込め電気化学セルのスタックを具備する電気化学システムであって、各個々の電気化学セルが独立して、第1の電極と接触する電解質の第1の体積を含む第1の半電池チャンバと、対電極と接触する第2の半電池チャンバと、第1の半電池チャンバを第2の半電池チャンバから分離するセパレータと、第1の半電池と連通する第1の電解質捕捉及び返還システムとを備え、第1の電解質捕捉及び返還システムが、第1の半電池チャンバから逃げる電解質の第1の体積から電解質を捕捉し、捕捉された電解質を、電解質返還導管を通して第1の半電池チャンバ及び第2の半電池チャンバの少なくとも一方に押し流して戻す、電気化学システム。
【0359】
[00380]実施形態2:スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、実施形態1に記載の電気化学システム。
【0360】
[00381]実施形態3:第1の電解質捕捉及び返還システムが、捕捉された電解質を、セルスタックの任意の他のセルの電解質との流体連通から流体的に隔離する、実施形態1又は2に記載の電気化学システム。
【0361】
[00382]実施形態4:第2の半電池チャンバと連通する第2の電解質捕捉及び返還システムをさらに備え、第2の半電池チャンバが、電解質の第2の体積を含み、第2の電解質捕捉及び返還システムが、第2の半電池チャンバから逃げる電解質の第2の体積から電解質を捕捉し、捕捉された電解質を第1の半電池チャンバ、第2の半電池チャンバ、又はその両方に押し流すように構成されている、実施形態1~3のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0362】
[00383]実施形態5:第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は第2の電解質捕捉及び返還システムのそれぞれが独立して液気分離チャンバを備え、液気分離チャンバが、それらが存在するそれぞれの個々の電気化学セルに固有のものである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の電気化学システム。実施形態5b:第1の電解質捕捉及び返還システムのそれぞれが液気分離チャンバを備え、液気分離チャンバが、それらが存在するそれぞれの個々の電気化学セルに固有のものである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0363】
[00384]実施形態6:第1の電解質捕捉及び返還システムが第1の気体除去マニホルドと流体連通し、及び/又は第2の電解質捕捉及び返還システムが第2の気体除去マニホルドと流体連通し、第1の気体除去マニホルド及び存在する場合には第2の気体除去マニホルドのそれぞれが、スタックの電気化学セルのそれぞれと流体連通する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の電気化学システム。実施形態6b:第1の電解質捕捉及び返還システムが第1の気体除去マニホルドと流体連通し、第1の気体除去マニホルドが、スタックの電気化学セルのそれぞれと流体連通する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0364】
[00385]実施形態7:第1の気体除去マニホルド及び/又は第2の気体除去マニホルドが、気体除去液体を含む、実施形態6に記載の電気化学システム。実施形態7b:第1の気体除去マニホルドが、気体除去液体を含む、実施形態6に記載の電気化学システム。
【0365】
[00386]実施形態8:気体除去液体が、流体圧力の所定の範囲内に維持される、実施形態7に記載の電気化学システム。
【0366】
[00387]実施形態9:気体除去液体が、非導電性液体である、実施形態7又は8に記載の電気化学システム。
【0367】
[00388]実施形態10:気体及び液体電解質が第1の半電池チャンバから第1の電解質捕捉及び返還システムに逃げる第1の流体逃がし要素、及び/又は気体及び液体電解質が第2の半電池チャンバから、存在する場合には第2の電解質捕捉及び返還システムに逃げる第2の流体逃がし要素をさらに備える、実施形態1~9のいずれか1つに記載の電気化学システム。実施形態10b:気体及び液体電解質が第1の半電池チャンバから第1の電解質捕捉及び返還システムに逃げる第1の流体逃がし要素をさらに備える、実施形態1~9のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0368】
[00389]実施形態11:流体逃がし要素が、少なくとも0.1barの圧力降下を特徴とする直列流体逃がし要素である、実施形態10に記載の電気化学セル。
【0369】
[00390]実施形態12:第1の電解質捕捉及び返還システムが、第1の半電池に固有の第1の液気セパレータを備える、及び/又は第2の電解質捕捉及び返還システムが、第2の半電池に固有の第2の液気セパレータを備える、実施形態1~11のいずれか1つに記載の電気化学システム。実施形態12b:第1の電解質捕捉及び返還システムが、第1の半電池に固有の第1の液気セパレータを備える、実施形態1~11のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0370】
[00391]実施形態13:第1の液気セパレータ及び/又は第2の液気セパレータがセルフレーム内に含まれ、互いに流体連通して連結された少なくとも2つのチャンバを備える、実施形態12の電気化学システム。実施形態13b:第1の液気セパレータがセルフレーム内に含まれ、互いに流体連通して連結された少なくとも2つのチャンバを備える、実施形態12の電気化学システム。
【0371】
[00392]実施形態14:各セルが、第1の液気セパレータと第1の気体除去マニホルドとの間に第1の一方向弁を備え、及び/又は各セルが、第2の液気セパレータと第2の気体除去マニホルドとの間に第2の一方向弁を備え、第1の一方向弁は、第1の液気セパレータ内の気体圧力が第1の気体除去マニホルド内の流体圧力を超えるときに、第1の液気セパレータから第1の気体除去マニホルドへの気体の流れを可能にするように向けられ、第2の一方向弁は、第2の液気セパレータ内の気体圧力が第2の気体除去マニホルド内の流体圧力を超えるときに、第2の液気セパレータから第2の気体除去マニホルドへの気体の流れを可能にするように向けられる、実施形態12又は13に記載の電気化学システム。実施形態14b:各セルが、第1の液気セパレータと第1の気体除去マニホルドとの間に第1の一方向弁を備え、第1の一方向弁は、第1の液気セパレータ内の気体圧力が第1の気体除去マニホルド内の流体圧力を超えるときに、第1の液気セパレータから第1の気体除去マニホルドへの気体の流れを可能にするように向けられる、実施形態12又は13に記載の電気化学システム。
【0372】
[00393]実施形態15:第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は第2の電解質捕捉及び返還システムが、それぞれの電解質捕捉及び返還システムの電解質を維持しながら生成ガスの流れを促進するための膜を備える、実施形態1~14のいずれか1つに記載の電気化学システム。実施形態15b:第1の電解質捕捉及び返還システムが、第1の電解質捕捉及び返還システムの電解質を維持しながら生成ガスの流れを促進するための膜を備える、実施形態1~14のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0373】
[00394]実施形態16:第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は第2の電解質捕捉及び返還システムが、それぞれ捕捉された電解質をそれぞれ第1の半電池チャンバ又は第2の半電池チャンバに戻すように構成された1つ又は複数のポンプを備える、実施形態1~15のいずれか1つに記載の電気化学システム。実施形態16b:第1の電解質捕捉及び返還システムが、捕捉された電解質を第1の半電池チャンバに戻すように構成された1つ又は複数のポンプを備える、実施形態1~15のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0374】
[00395]実施形態17:第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は第2の電解質捕捉及び返還システムが、電解質の混合を可能にするように構成されている、実施形態1~16のいずれか1つに記載の電気化学システム。実施形態17b:第1の電解質捕捉及び返還システムが、電解質の混合を可能にするように構成されている、実施形態1~16のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0375】
[00396]実施形態18:第1の電解質捕捉及び返還システム及び/又は第2の電解質捕捉及び返還システムが、液体として、ミストとして、又はそれらの組合せとしてそれぞれの半電池から押し出された電解質の少なくとも80質量%を捕捉するように構成されている、実施形態1~17のいずれか1つに記載の電気化学システム。実施形態18b:第1の電解質捕捉及び返還システムが、液体として、ミストとして、又はそれらの組合せとしてそれぞれの半電池から押し出された電解質の少なくとも80質量%を捕捉するように構成されている、実施形態1~17のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0376】
[00397]実施形態19:電気化学システムが電池、フロー電池、又は燃料セルである、実施形態1~18のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0377】
[00398]実施形態20:アルカリ電解セルである、実施形態1~19のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0378】
[00399]実施形態21:電気化学セルが、生成ガスとして水素ガス及び酸素ガスを生成する、実施形態1~20のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0379】
[00400]実施形態22:セパレータがプロトン交換膜(PEM)又はアニオン交換膜(AEM)であり、電解質が脱イオン水である、実施形態21に記載の電気化学システム。
【0380】
[00401]実施形態23:電解質がアルカリ性水溶液である、実施形態20又は21に記載の電気化学システム。
【0381】
[00402]実施形態24:電解質が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態23に記載の電気化学システム。
【0382】
[00403]実施形態25:スタックの各電気化学セルが、それぞれの電気化学セルに固有であり、それぞれの電気化学セルの第1の半電池チャンバ及び第2の半電池チャンバと流体連通している膨張チャンバをさらに備え、膨張チャンバが、膨張可能及び収縮可能な容積を有し、半電池チャンバの一方又は両方での液体及び気体の体積膨張を可能にするように構成されている、実施形態1~24のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0383】
[00404]実施形態26:膨張チャンバが、膨張チャンバの体積の膨張及び/又は収縮によって、第1の半電池チャンバと第2の半電池チャンバとの圧力差を低減するように構成されている、実施形態25の電気化学システム。
【0384】
[00405]実施形態27:膨張チャンバの容積が、第1の半電池チャンバ内の圧力及び第2の半電池チャンバ内の圧力に基づいて変化する、実施形態25又は26に記載の電気化学セル。
【0385】
[00406]実施形態28:膨張チャンバが、第1の電解質捕捉及び返還システム及び存在する場合には第2の電解質捕捉及び返還システムと流体連通する、実施形態25~27のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0386】
[00407]実施形態29:スタックの各電気化学セルが、膨張チャンバと動作的に連通する膨張抵抗器をさらに備える、実施形態25~28のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0387】
[00408]実施形態30:膨張抵抗器が、ばね、ベローズ、ダイヤフラム、バルーン、所定の圧力で維持された作動流体の体積、膨張チャンバの物理的特性、又はそれらの任意の組合せである、実施形態29に記載の電気化学システム。
【0388】
[00409]実施形態31:膨張チャンバが、第1の半電池チャンバからの電解質の第1の体積の分離、及び第2の半電池チャンバからの電解質の第2の体積の分離を維持するための分割器を備える、実施形態25~30のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0389】
[00410]実施形態32:電気化学セルが、電気化学セルと流体連通する補給液供給源をさらに備えて、補給液を第1の半電池、第2の半電池、又はそれら両方に提供する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0390】
[00411]実施形態33:補給液供給源と電気化学セルとの間に配置された一方向弁をさらに備え、一方向弁が、電気化学セルへの流体の流入を可能にするが電気化学セルからの流体の流出を可能にしないように配置される、実施形態32に記載の電気化学システム。
【0391】
[00412]実施形態34:補給液が、供給マニホルドによって電気化学セルに提供され、供給マニホルドが、スタック内の各電気化学セルと流体連通する、実施形態32又は33に記載の電気化学システム。
【0392】
[00413]実施形態35:一方向弁が、供給マニホルドと電気化学セルとの圧力差に基づいて、電気化学セルへの補給液の流れを調整する、実施形態34に記載の電気化学システム。
【0393】
[00414]36:一方向弁が、供給マニホルドと電気化学セルとの圧力差のみに基づいて、電気化学セルへの補給液の流れを調整する、実施形態35に記載の電気化学システム。
【0394】
[00415]実施形態37:補給液が脱イオン水である、実施形態32~36のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0395】
[00416]実施形態38:電気化学セルのそれぞれに動作可能に接続され、捕捉された電解質を半電池チャンバの一方又は両方に押し流すように構成されたポンプをさらに備える、実施形態37のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0396】
[00417]実施形態39:電気化学セルのそれぞれに動作可能に接続され、捕捉された電解質を液気セパレータから半電池チャンバの一方又は両方に押し流すように構成されたポンプをさらに備える、実施形態12~38のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0397】
[00418]実施形態40:ポンプが空洞ポンプ又は容積式ポンプである、実施形態38又は37に記載の電気化学システム。
【0398】
[00419]実施形態41:ポンプが、電解質返還チャネルを通して液体と気体との両方を押し流すことができる、実施形態38~40のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0399】
[00420]実施形態42:スタックが、角柱状の層状構成、円形セルフレームの円筒形スタック、渦巻状のジェリーロール構成、角柱状のジェリーロール構成、若しくは任意の他の丸められたジェリーロール、又は積み重ねられた角柱状構成で配置される、実施形態1~41のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0400】
[00421]実施形態43:第2の半電池チャンバが、第2の半電池チャンバで生成された生成ガスを含み、第2の半電池チャンバが、電気化学システムの動作中に電解質を含まない、実施形態1~42のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0401】
[00422]実施形態44:各電気化学セルが、液体電解質が第2の半電池チャンバに入るのを防ぐのに十分な第2の半電池チャンバ内の気体圧力を維持するように構成されたガスインジェクタマニホルドを備える、実施形態43に記載の電気化学システム。
【0402】
[00423]実施形態45:ガスインジェクタマニホルドが、第2の気体を第2の半電池チャンバに注入する、実施形態44に記載の電気化学システム。
【0403】
[00424]実施形態46:第2の気体が生成ガスとは異なる、実施形態45に記載の電気化学システム。
【0404】
[00425]実施形態47:各電気化学セルの第2の半電池チャンバからの生成ガスがスタックの電気化学セルを冷却するために使用されるように構成されている、実施形態43~46に記載の電気化学システム。
【0405】
[00426]実施形態48:スタックが、生成ガスを受け取って冷却する1つ又は複数の熱交換器を備え、生成ガスが、1つ又は複数の熱交換器を通して冷却された後、ガスインジェクタマニホルドを通して各電気化学セルに注入される、実施形態47に記載の電気化学システム。
【0406】
[00427]実施形態49:スタックが双極スタックである、実施形態1~48のいずれか1つに記載の電気化学セル。
【0407】
[00428]実施形態50:スタックが、隣り合うセル間に双極板を備える双極スタックであり、各双極板が、第1の外層と第2の外層との間に挟まれたフローチャネル層を備え、フローチャネル層が、1つ又は複数の冷却剤フローチャネルを画定し、フローチャネル層が、第1及び第2の外層に封止される、実施形態1~48のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0408】
[00429]実施形態51:電気化学セルのスタックであって、各個々の電気化学セルが独立して、第1の電極を含み、第1の流体圧力と第2の流体圧力との間で変動する流体体積を含む第1の半電池チャンバと、第2の電極を含む第2の半電池チャンバと、第1の半電池チャンバを第2の半電池チャンバから分離するセパレータと、第1の半電池チャンバへの補給液の流れを提供し、補給液入口を通る半電池からの液体の流出を妨げるように配置された一方向弁を含む補給液入口と、を備える、電気化学セルのスタックと、スタックの全てのセルの補給液入口と流体連通している補給液供給マニホルドであって、第3の流体圧力で補給液を含み、第3の流体圧力が、第1の圧力よりも大きく第2の圧力よりも小さい制御された圧力である、補給液供給マニホルドと、を具備する電気化学システム。いくつかの実施形態では、流体体積は、気体と液体との混合物でもよい。いくつかの実施形態では、制御される圧力は、電子制御装置によって操作又は制御することができる電気機械的調整器によって制御される。
【0409】
[00430]実施形態52:第3の圧力が、第1の半電池チャンバ内の流体体積の平均定常状態動作圧力の0.5±0.2bar以内である、実施形態51に記載の電気化学システム。
【0410】
[00431]実施形態53:スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、実施形態51に記載の電気化学システム。
【0411】
[00432]実施形態54:電気化学システムを動作させる方法であって、電気化学システムが、電気化学セルのスタックであって、各個々の電気化学セルが独立して、第1の電極を含み、第1の流体圧力と第2の流体圧力との間で変動する流体体積を含む第1の半電池チャンバと、第2の電極を含む第2の半電池チャンバと、第1の半電池チャンバを第2の半電池チャンバから分離するセパレータと、一方向弁を備える補給液入口と、を備える電気化学セルのスタックと、スタックの全てのセルの補給液入口と流体連通している補給液供給マニホルドであって、第3の流体圧力で補給液を含む補給液供給マニホルドと、を具備し、方法が、一方向弁によって、第1の半電池チャンバへの補給液の流れを提供するステップと、一方向弁によって、補給液入口を通る半電池からの液体の流出を妨げるステップと、第3の流体圧力を、第1の圧力よりも大きく第2の圧力よりも小さくなるように制御するステップと、を含む方法。いくつかの実施形態では、流体体積は、例えば気体と液体との混合物でもよい。
【0412】
[00433]実施形態55:スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、実施形態54に記載の方法。
【0413】
[00434]実施形態56:電気化学セルのスタックを具備する電気化学システムであって、各個々の電気化学セルが独立して、第1の電極と接触する液体の第1の体積を含む第1の半電池チャンバと、対電極を備える第2の半電池チャンバと、第1の半電池チャンバを第2の半電池チャンバから分離するセパレータ膜と、第1の半電池チャンバの外側にあり、第1の流体逃がし要素を介して第1の半電池チャンバと流体連通している第1の液気セパレータと、流体逃がし要素とは別の液体返還チャネルを通して第1の液気セパレータから第1の半電池チャンバに液体を押し流すように構成された第1のポンプと、を備える、電気化学システム。いくつかの実施形態では、液体が脱イオン水である。
【0414】
[00435]実施形態57:スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、実施形態56に記載の電気化学システム。
【0415】
[00436]実施形態58:第2の半電池チャンバが、第2の液体容積をさらに含む、実施形態56又は57に記載の電気化学セル。
【0416】
[00437]実施形態59:ポンプが平面状の空洞ポンプである、実施形態56~58のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0417】
[00438]実施形態60:各個々のセルが独立して、第1の半電池チャンバと流体連通する膨張容積をさらに備える、実施形態56~59のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0418】
[00439]実施形態61:隣り合うセルが双極板を共有する電気化学セルの双極スタックであって、各個々の電気化学セルが独立して、第1の電極を含む第1の半電池チャンバと、第1の半電池を第1の滴下チャンバに連結する第1の導電性出口チャネル、第1の出口チャネルの出口端部と第1の滴下チャンバとの間の非導電性ギャップと、第2の電極を含む第2の半電池チャンバと、第2の半電池を第2の滴下チャンバに連結する第2の導電性出口チャネル、第2の出口チャネルの出口端部と第2の滴下チャンバとの間の非導電性ギャップと、第1の半電池チャンバを第2の半電池チャンバから分離するセパレータ膜と、双極板に連結された第1の電気リード線と、第1の滴下チャンバに連結された第2の電気リード線と、第2の滴下チャンバに連結された第3の電気リード線と、を備える、電気化学セルの双極スタックと、第1の電気リード線、第2の電気リード線、及び第2の電気リード線の対間の電位、電流、又は電圧を監視するように構成された電子制御装置と、を具備する電気化学システム。
【0419】
[00440]実施形態62:スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、実施形態61に記載の電気化学システム。
【0420】
[00441]実施形態63:少なくとも1つの電解質閉じ込め電気化学セルを具備する電気化学システムであって、少なくとも1つの電解質閉じ込め電気化学セルが、電解質と、電解質の第1の体積と接触する第1の電極、並びに第1の電解質捕捉及び返還システムを備える第1の半電池と、電解質の第2の体積と接触する第2の電極、並びに第2の電解質捕捉及び返還システムを備える第2の半電池と、第1の半電池を第2の半電池から分離するセパレータと、を備え、第1の電解質捕捉及び返還システムが、第1の半電池から逃げる電解質を捕捉し、捕捉された電解質の少なくとも一部を、任意の他のセルからの電解質と混合することなく第1の半電池に戻すように構成され、第2の電解質捕捉及び返還システムが、第2の半電池から逃げる電解質を捕捉し、捕捉された電解質の少なくとも一部を、任意の他のセルからの電解質と混合することなく第2の半電池に戻すように構成される、電気化学システム。
【0421】
[00442]実施形態64:第1の電解質捕捉及び返還システムが第2の半電池から流体的に隔離され、第2の電解質捕捉及び返還システムが第1の半電池から流体的に隔離されている、実施形態63に記載の電気化学システム。
【0422】
[00443]実施形態65:スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、実施形態63又は64に記載の電気化学システム。
【0423】
[00444]実施形態66:第1及び第2の電解質捕捉及び返還システムのそれぞれが、それぞれの捕捉された電解質を、セルスタックの任意の他のセルの電解質との流体連通から独立して流体的に隔離する、実施形態65に記載の電気化学システム。
【0424】
[00445]実施形態67:少なくとも1つの生成ガスを生成する方法であって、電気化学システムを準備するステップであって、電気化学システムが、少なくとも1つの電気化学セルを備え、少なくとも1つの電気化学セルが、電解質と、電解質の第1の体積と連通する第1の電極、並びに第1の電解質捕捉及び返還システムを有する第1の半電池と、電解質の第2の体積と連通する第2の電極を含む第2の半電池と、第1の半電池を第2の半電池から分離するセパレータと、を備える、ステップと、第1の電解質捕捉及び返還システムによって第1の半電池から逃げる電解質を捕捉し、捕捉された電解質を第1の半電池に戻すステップと、少なくとも1つの電気化学セルで電解質を反応させ、以て、少なくとも1つの生成ガスを生成するステップと、を含む方法。
【0425】
[00446]実施形態68:第2の半電池が第2の電解質捕捉及び返還システムをさらに備え、方法が、第2の電解質捕捉及び返還システムによって第2の半電池から逃げる電解質を捕捉し、捕捉された電解質を第2の半電池に戻すステップをさらに含む、実施形態67に記載の方法。
【0426】
[00447]実施形態69:第1の電解質捕捉及び返還システムが第2の半電池から流体的に隔離され、第2の電解質捕捉及び返還システムが第1の半電池から流体的に隔離されている、実施形態68に記載の電気化学システム。
【0427】
[00448]実施形態70:スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、実施形態67~69のいずれか1つに記載の電気化学システム。
【0428】
[00449]実施形態70:水素ガス及び酸素ガスを生成するための方法であって、電解槽を準備するステップであって、電解槽が、複数の電気化学セルを備え、複数の電気化学セルがそれぞれが独立して、水性電解質と、水性電解質の第1の部分と連通する第1の電極、第1の電解質捕捉及び返還システム、並びに第1の気体捕捉システムを有する第1の半電池と、水性電解質の第2の部分と連通する第2の電極、及び第2の気体捕捉システムを含む第2の半電池と、第1の半電池を第2の半電池から分離するセパレータと、を備える、ステップと、第1の電解質捕捉及び返還システムによって第1の半電池から押し出された電解質を捕捉し、電解質を第1の半電池に戻すステップと、電気化学セルそれぞれの水性電解質を電気分解し、以て、第1の気体及び第2の気体を生成し、各第1の気体捕捉システムが互いに流体連通し、各第2の気体捕捉システムが互いに流体連通する、ステップと、を含む方法。
【0429】
[00450]実施形態72:第2の半電池が第2の電解質捕捉及び返還システムをさらに備え、方法が、第2の電解質捕捉及び返還システムによって第2の半電池から押し出された電解質を捕捉し、電解質を第2の半電池に戻すステップをさらに含む、実施形態71に記載の方法。
【0430】
[00451]実施形態73:第1の気体が酸素であり、第1の気体捕捉システムが酸素ガス捕捉システムであり、又は第1の気体が水素であり、第1の気体捕捉システムが水素ガス捕捉システムである、実施形態70又は72に記載の方法。
【0431】
[00452]実施形態74:第1の気体が酸素であり、第1の気体捕捉システムが酸素ガス捕捉システムであり、第2の気体が水素であり、第2の気体捕捉システムが水素ガス捕捉システムである、実施形態71~73のいずれか1つに記載の方法。
【0432】
[00453]実施形態75:セパレータが、プロトン交換膜(PEM)又はアニオン交換膜(AEM)である、実施形態71~74のいずれか1つに記載の方法。
【0433】
[00454]実施形態76:複数の電気化学セルの各個々の電気化学セルが独立して、第1の半電池及び第2の半電池と流体連通する膨張容積をさらに備える、実施形態71~75のいずれか1つに記載の方法。
【0434】
[00455]実施形態77:電気化学セルそれぞれにおいて第1の電解質捕捉及び返還システムが第2の電解質捕捉及び返還システムと流体連通する、実施形態71~76のいずれか1つに記載の方法。
【0435】
[00456]実施形態78:個々の電気化学セルの任意の電解質捕捉及び返還システムが、電解槽の他の各電気化学セルの任意の電解質捕捉及び返還システムから流体的に隔離される、実施形態71~76のいずれか1つに記載の方法。
【0436】
[00457]実施形態79:スタックの各個々の電気化学セルの電解質が、スタックの他の各個々の電気化学セルの電解質から流体的に隔離されている、実施形態71~78に記載の方法。
【0437】
[00458]実施形態80:流体ドライバの第1の側に作動流体を含み、第1の側とは反対の流体ドライバの第2の側に、押し流された流体を含むポンプチャンバと、流体ドライバの第1の側で、押流し流体流入アパーチャを通るポンプチャンバへの流れを可能にするように配置された上流の一方向弁と、流体ドライバの第1の側で、押流し流体流入アパーチャを通るポンプチャンバへの流れを可能にするように配置された下流の一方向弁と、流体ドライバの第1の側でポンプチャンバと流体連通している作動流体入口と、流体ドライバの第1の側で作動流体入口及びポンプチャンバにある作動流体と、流体ドライバを少なくとも部分的に偏向させるのに十分な圧縮力及び/又は膨張力を作動流体に加えるように構成されたアクチュエータと、を備える空洞ポンプ。
【0438】
[00459]実施形態81:作動流体が非圧縮性液体である、実施形態80に記載の空洞ポンプ。
【0439】
[00460]実施形態82:作動流体が圧縮性気体である、実施形態81に記載の空洞ポンプ。
【0440】
[00461]実施形態83:ポンプチャンバが、セルスタックの複数のセルフレームのうちの1つのセルフレームに形成される、実施形態80に記載の空洞ポンプ。
【0441】
[00462]実施形態84:作動流体入口が、セルスタックを通って延びる作動流体マニホルドと流体連通する、実施形態83に記載の空洞ポンプ。
【0442】
[00463]実施形態85:セルスタックに複数の電気化学セルを備える電解槽システムを動作させる方法であって、各セルが、プロトン交換膜(PEM)によって負の半電池チャンバから分離された正の半電池チャンバを備え、方法が、正の半電池チャンバにおいてプロセス水が水素ガスと酸素ガスとに分解されることによって消費される第2の速度の1000%以下の第1の速度でセルスタックの各電気化学セルの正の半電池チャンバにプロセス水を流入するステップと、セルスタックの1つ又は複数の熱交換器を通して冷却剤を流すステップと、各電気化学セルの負の半電池チャンバから負の気体除去マニホルドを通して気体を引き出すステップと、少なくとも10barの絶対圧力の圧力で負の気体除去マニホルドを維持するステップと、各電気化学セルの正の半電池チャンバから、各電気化学セルの正の半電池チャンバの共通の出口を通して、酸素ガスと液体プロセス水との混合物を引き出すステップと、を含む方法。
【0443】
[00464]実施形態86:プロセス水をセルスタックに送る供給マニホルド内の第1の流体圧力を調整するステップをさらに含む、実施形態85に記載の方法。
【0444】
[00465]実施形態87:酸素ガスとプロセス水との混合物がセルスタックの正の半電池から除去される流体除去マニホルド内の第2の流体圧力を調整するステップをさらに含む、実施形態86に記載の方法。
【0445】
[00466]実施形態88:セルスタックの1つ又は複数の熱交換器のそれぞれが、隣り合う電気化学セル間の双極板構造内に1つ又は複数のフローチャネルを備える、実施形態85~87のいずれか1つに記載の方法。
【0446】
[00467]実施形態89:各双極板構造が、第1の外層と第2の外層との間に挟まれたフローチャネル層を備え、フローチャネル層が、1つ又は複数の冷却剤フローチャネルを画定し、第1及び第2の外層に対して封止されている、実施形態88に記載の方法。
【0447】
[00468]実施形態90:セルスタックからプロセス水を引き出すステップ、及びプロセス水をセルスタックに戻すステップをさらに含み、セルスタックから引き出されたプロセス水が、セルスタックの後、セルスタックに戻される前に、熱交換器を通して送られない、実施形態85に記載の方法。
【0448】
[00469]実施形態91:セルスタックの各電気化学セルが、正の半電池チャンバと流体連通する膨張チャンバを備える、実施形態85~90のいずれか1つに記載の方法。
【0449】
[00470]実施形態92:セルスタックに複数の電気化学セルを備える電解槽システムを動作させる方法であって、各セルが、アニオン交換膜(AEM)によって負の半電池チャンバから分離された正の半電池チャンバを備え、方法が、各電気化学セルの負の半電池チャンバにおいてプロセス水が水素ガスと酸素ガスとに分解されることによって消費される第2の速度の1000%以下の第1の速度でセルスタックの各電気化学セルの負の半電池チャンバにプロセス水を流入するステップと、セルスタックの1つ又は複数の熱交換器を通して冷却剤を流すステップと、各電気化学セルの正の半電池チャンバから正の気体除去マニホルドを通して気体を引き出すステップと、少なくとも10barの絶対圧力の流体圧力で各電気化学セルの負の半電池チャンバを維持するステップと、各電気化学セルの負の半電池チャンバから、各電気化学セルの負の半電池チャンバの共通の出口を通して、酸素ガスと液体プロセス水との混合物を引き出すステップと、を含む方法。
【0450】
[00471]実施形態93:プロセス水をセルスタックに送る供給マニホルド内の第1の流体圧力を調整するステップをさらに含む、実施形態92に記載の方法。
【0451】
[00472]実施形態94:酸素ガスとプロセス水との混合物がセルスタックの正の半電池から除去される流体除去マニホルド内の第2の流体圧力を調整するステップをさらに含む、実施形態93に記載の方法。
【0452】
[00473]実施形態95:セルスタックの1つ又は複数の熱交換器のそれぞれが、隣り合うセル間の双極板構造内に1つ又は複数のフローチャネルを備える、実施形態92~94のいずれか1つに記載の方法。
【0453】
[00474]実施形態96:各双極板構造が、第1の外層と第2の外層との間に挟まれたフローチャネル層を備え、フローチャネル層が、1つ又は複数の冷却剤フローチャネルを画定し、第1及び第2の外層に対して封止されている、実施形態95に記載の方法。
【0454】
[00475]実施形態97:セルスタックからプロセス水を引き出すステップ、及びプロセス水をセルスタックに戻すステップをさらに含み、セルスタックから引き出されたプロセス水が、セルスタックの後、セルスタックに戻される前に、熱交換器を通して送られない、実施形態92~95のいずれか1つに記載の方法。
【0455】
[00476]実施形態98:セルスタックの各電気化学セルが、正の半電池チャンバと流体連通する膨張チャンバを備える、実施形態92~97のいずれか1つに記載の方法。
【0456】
[00477]実施形態99:複数の電気化学セルを備えるセルスタックであって、各セルが、アニオン交換膜(AEM)によって負の半電池チャンバから分離された正の半電池チャンバを備え、各負の半電池チャンバが、水素ガスと水との混合流の流出を可能にするように構成された流体逃がし要素を有する流体出口を備える、セルスタックと、セルスタックの各電気化学セルの負の半電池チャンバと連通する負の流体除去マニホルドであって、第1の調整された流体圧力で水素と水との混合物を含む負の流体除去マニホルドと、セルスタックの各電気化学セルの負の半電池チャンバにプロセス水を送達するように構成された供給マニホルドであって、供給マニホルドのプロセス水が、第1の調整された流体圧力よりも高い第2の調整された流体圧力にある、供給マニホルドと、セルスタックの各正の半電池チャンバと連通する正の流体除去マニホルドであって、第3の流体圧力で酸素ガスを含む正の流体除去マニホルドと、を備える水電解槽システム。
【0457】
[00478]実施形態100:セルスタック内の隣り合うセル間に少なくとも1つの双極板熱交換器をさらに備え、各双極板熱交換器が、導電性外層間に冷却剤チャネルを備える、実施形態99のシステム。
【0458】
[00479]実施形態101:負の流体除去マニホルドの下流に気液セパレータをさらに備え、システムが、気液セパレータから供給マニホルドに水を送る導管を備え、負の流体除去マニホルドと供給マニホルドとの間に熱交換器が存在しない、実施形態99又は100に記載のシステム。
【0459】
[00480]実施形態102:気液セパレータが、気液分離チャンバ内の液位の上に気体ポケット領域を備える、実施形態101に記載のシステム。
【0460】
[00481]実施形態103:各セルの負の半電池チャンバと流体連通する膨張チャンバをさらに備える、実施形態99~102のいずれか1つに記載のシステム。
【0461】
[00482]実施形態104:ある量のプロセス水を供給マニホルドから負の流体除去マニホルドに送るスタックバイパス導管をさらに備える、実施形態99~103のいずれか1つに記載のシステム。
【0462】
[00483]実施形態105:流体逃がし要素の少なくとも1つが、負の半電池チャンバから出る混合流体に非線形の流れ抵抗を与えるように構成された1つ又は複数の出口チャネルを備える、実施形態99~104のいずれか1つに記載のシステム。
【0463】
[00484]実施形態106:流体逃がし要素の少なくとも1つが、1つ又は複数の相弁別膜を備える、実施形態99~10005のいずれか1つに記載のシステム。
【0464】
[00485]実施形態107:複数の電気化学セルを備えるセルスタックであって、各セルが、プロトン交換膜(PEM)によって負の半電池チャンバから分離された正の半電池チャンバを備え、各正の半電池チャンバが、水素ガスと水との混合流の流出を可能にするように構成された流体逃がし要素を有する流体出口を備える、セルスタックと、セルスタックの各電気化学セルの正の半電池チャンバと連通する正の流体除去マニホルドであって、第1の調整された流体圧力で酸素と水との混合物を含む正の流体除去マニホルドと、セルスタックの各電気化学セルの正の半電池チャンバにプロセス水を送達するように構成された供給マニホルドであって、供給マニホルドのプロセス水が、第1の調整された流体圧力よりも高い第2の調整された流体圧力にある、供給マニホルドと、セルスタックの各電気化学セルの負の半電池チャンバと連通する負の流体除去マニホルドであって、第2の流体圧力よりも高い第3の調整された流体圧力で水素ガスを含む負の流体除去マニホルドと、を備える水電解槽システム。
【0465】
[00486]実施形態108:セルスタックの隣り合うセル間に少なくとも1つの双極板熱交換器をさらに備え、各双極板熱交換器が、導電性外層間に冷却剤チャネルを備える、実施形態107に記載のシステム。
【0466】
[00487]実施形態109:正の流体除去マニホルドの下流に気液セパレータをさらに備え、システムが、気液セパレータから供給マニホルドに水を送る導管を備え、正の流体除去マニホルドと供給マニホルドとの間に熱交換器が存在しない、実施形態107又は108に記載のシステム。
【0467】
[00488]実施形態110:各電気化学セルの正の半電池チャンバと流体連通する膨張チャンバをさらに備える、実施形態107~109のいずれか1つに記載のシステム。
【0468】
[00489]実施形態111:ある量のプロセス水を供給マニホルドから正の流体除去マニホルドに送るスタックバイパス導管をさらに備える、実施形態107~110のいずれか1つに記載のシステム。
【0469】
[00490]実施形態112:各流体逃がし要素が、負の半電池チャンバから出る混合流体に非線形の流れ抵抗を与えるように構成された出口チャネルを備える、実施形態107~111のいずれか1つに記載のシステム。
【0470】
[00491]実施形態113:各流体逃がし要素が、1つ又は複数の相弁別膜を備える、実施形態107~112のいずれか1つに記載のシステム。
【0471】
[00492]実施形態114:各電気化学セルの正の半電池チャンバ内の酸素ガスが、それぞれのセルでのプロセス水の消費によって正の半電池チャンバ内で生成される、実施形態85~91のいずれか1つに記載の方法。
【0472】
[00493]実施形態115:各電気化学セルの負の半電池チャンバ内の水素ガスが、それぞれのセルでのプロセス水の消費によって負の半電池チャンバ内で生成される、実施形態92~98のいずれか1つに記載の方法。
【0473】
[00494]実施形態116:負の流体除去マニホルド内の水素ガスが、セルスタックの負の半電池チャンバ内で生成され、正の流体除去マニホルド内の酸素ガスが、複数の電気化学セルでのプロセス水の消費によってセルスタックの正の半電池チャンバ内で生成される、実施形態99~106のいずれか1つに記載のシステム。
【0474】
[00495]実施形態117:上記負の気体除去マニホルドが、各電気化学セルの負の半電池チャンバから気体のみを引き出す、実施形態85~91のいずれか1つに記載の方法。
【0475】
[00496]実施形態118:正の気体除去マニホルドが、各電気化学セルの正の半電池チャンバから気体のみを引き出す、実施形態92~98のいずれか1つに記載の方法。
【0476】
参照による組込みと変形形態に関する言明
[00497]本出願全体にわたる全ての参考文献、例えば、発行又は付与された特許又は等価物を含む特許文書、特許出願公開、及び非特許文献文書又は他の出典資料の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0477】
[00498]本明細書で採用する用語及び表現は、説明のために使用され、限定ではなく、そのような用語及び表現の使用には、図示して述べる特徴又はその一部の等価物を除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な変更が可能であることを理解されたい。したがって、本発明は好ましい実施形態、例示的実施形態、及び任意選択的な特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示される概念の修正及び変形に依拠することもでき、そのような修正及び変形も、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。本明細書で提供される特定の実施形態は、本発明の有用な実施形態の例であり、本明細書に記載されたデバイス、デバイス構成要素、方法ステップの多数の変形形態を使用して本発明を実施することができることが当業者には明らかであろう。当業者には明らかであるように、本発明の方法に有用な方法及びデバイスは、多数の任意選択的な組成、処理要素、及びステップを含むことができる。
【0478】
[00499]1群の代替要素が本明細書に開示される場合、その群の全ての個々の要素及び全てのサブグループが個別に開示されていると理解される。マーカッシュ群又は他の群が本明細書で使用される場合、群の全ての個々の要素、及び群の可能な全ての組合せ及び下位組合せが本開示に個別に含まれることが意図されている。当業者によって同じ化合物が異なる名前で呼ばれることがあることが知られているので、化合物の具体的な名前は例示的であることが意図されている。
【0479】
[00500]特に明記しない限り、本明細書に記載又は例示されている構成要素のあらゆる配合又は組合せを使用して本発明を実施することができる。
【0480】
[00501]本明細書において範囲、例えば、温度範囲、圧力範囲、又は組成若しくは濃度範囲が与えられている場合は常に、全ての中間範囲及び下位範囲、並びに与えられた範囲に含まれる全ての個々の値が本開示に含まれるものと意図されている。本明細書における記載に含まれる範囲又は下位範囲内の任意の下位範囲又は個々の値は、本明細書における特許請求の範囲から除外することもできることを理解されたい。
【0481】
[00502]本明細書に記載されている全ての特許及び公開物は、本発明が関係する技術分野の当業者の技能水準を示している。本明細書で引用する参考文献は、それらの公開日又は出願日現在の従来技術を示すために文献全体を参照により本明細書に組み込み、この情報を本明細書で採用し、必要に応じて、先行技術での特定の実施形態を除外することができることが意図される。例えば、物質の組成が特許請求されるとき、本明細書に引用された参考文献において有効な開示が提供されている化合物を含む、本出願人の発明の前に当技術分野で知られており利用可能な化合物は、本明細書における組成物クレームに含まれることを意図されないことを理解されたい。
【0482】
[00503]本明細書で使用するとき、「備える」は、「含む」、「含有する」、又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的又はオープンエンド(open-ended)であり、記載されていないさらなる要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で使用するとき、「からなる」は、クレーム要素で指定されていない要素、ステップ、又は成分を全て除外する。本明細書で使用するとき、「本質的にからなる」は、特許請求の範囲の基本的且つ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを除外しない。本明細書での各例において、「備える」、「本質的にからなる」、及び「からなる」という用語のいずれかを、他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。本明細書で例示的に述べる本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素(複数可)又は制限(複数可)なしで適切に実施することができる。
【0483】
[00504]「及び/又は」という用語は、ここで、本明細書及び特許請求の範囲では、用語「及び/又は」が現れるリストからの単一の要素のみ又は要素の任意の組合せを表すために使用される。言い換えると、「及び/又は」という用語を有する2つ以上の要素のリストは、個々の要素のいずれかを単独で有する、又はリストされた要素の任意の組合せを有する実施形態を網羅することが意図される。例えば、「要素A及び/又は要素B」という語句は、要素Aのみを有する、要素Bのみを有する、又は要素AとBの両方を有する実施形態を網羅することを意図されている。例えば、「要素A、要素B、及び/又は要素C」という語句は、要素Aのみを有する、要素Bのみを有する、要素Cのみを有する、要素AとBを有する、要素AとCを有する、要素BとCを有する、又は要素A、B、Cを有する実施形態を網羅することを意図されている。
【0484】
[00505]具体的に例示されたもの以外の出発材料、生物学的材料、試薬、合成方法、精製方法、分析方法、アッセイ方法、及び生物学的方法を、過度の実験に頼ることなく本発明の実施において採用することができることを当業者は理解されよう。任意のそのような材料及び方法の全ての当技術分野で知られている機能的等価物は、本発明に含まれることが意図されている。採用されている用語及び表現は、説明のために使用され、限定ではなく、そのような用語及び表現の使用には、図示して述べる特徴又はその一部の等価物を除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な変更が可能であることを理解されたい。したがって、本発明は好ましい実施形態及び任意選択的な特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示される概念の修正及び変形に依拠することもでき、そのような修正及び変形も、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】