(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】養子細胞移植療法における使用のためのカルシニューリン阻害剤耐性免疫細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20220316BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220316BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220316BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220316BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220316BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220316BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220316BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220316BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220316BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220316BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20220316BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20220316BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20220316BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220316BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220316BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220316BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P31/00
A61P29/00
A61P7/00
A61K45/00
A61K35/17 A
A61P43/00 121
A61K38/13
A61K31/706
A61K38/17
C12N15/113 Z
C12N15/09 110
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544820
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2020052454
(87)【国際公開番号】W WO2020157288
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518375937
【氏名又は名称】ウニベルシテート バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イェーカー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】デルツ,マリアンネ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA41
4C084BA44
4C084DA11
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA511
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4C084ZB071
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4C084ZB261
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4C084ZB322
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4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA04
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZA51
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087MA02
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZA51
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB32
4C087ZC75
(57)【要約】
養子細胞移植療法における使用のためのカルシニューリン阻害剤耐性免疫細胞
本発明は、miR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性が増加しており、カルシニューリン阻害剤耐性を与える免疫細胞に関する。特に、前記免疫細胞は、miR-17~92クラスターまたはそのパラログのうち少なくとも1つのmiRNAを過剰発現するか、または少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子を不活性化し、カルシニューリン阻害剤耐性を与えるように設計されている。特に、本発明は、それを必要とする患者の養子細胞移植療法における、カルシニューリン阻害剤と組み合わせたカルシニューリン阻害剤耐性免疫細胞の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシニューリン阻害剤(CNI)耐性免疫細胞であって、
miR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性が増加しており、
それを必要とする対象の養子細胞移植療法において使用され、ここで、前記免疫細胞は、前記対象にCNIと組み合わせて投与される、
CNI耐性免疫細胞。
【請求項2】
前記免疫細胞は、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20a、miR-19b-1およびmiR-92a-1、miR106a、miR-18b、miR-19b-2、miR-20b、miR-92a-2、miR-363、miR-106b、miR-93、miR-25からなる群より選択される少なくとも1つのmiRNA、好ましくはmiR-17またはmiR19を過剰発現するように設計されている、
請求項1に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項3】
前記免疫細胞は、前記免疫細胞に対して、配列番号17~46からなる群より選択される少なくとも1つのmiRNA配列を含む核酸構築物を導入することによって、設計されている、
請求項2に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項4】
前記核酸構築物は、配列番号1~16からなる群より選択される少なくとも1つのpre-miRNA配列を含む、
請求項2に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項5】
前記核酸構築物は、エレクトロポレーションによって、前記免疫細胞に対して導入されている、
請求項3または4に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項6】
前記免疫細胞は、少なくとも1つのmiR-1792クラスター標的遺伝子、好ましくはRcan3遺伝子の発現を不活性化するように設計されている、
請求項1に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項7】
前記免疫細胞は、前記免疫細胞に対して、Rcan3遺伝子を標的とすることができるCas9/CRISPR複合体を導入するように設計されている、
請求項6に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項8】
前記カルシニューリン阻害剤は、シクロスポリンA、FK506およびCTLA-4Igからなる群より選択される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項9】
前記免疫細胞は、T細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球、NK細胞、マクロファージおよび制御性T細胞からなる群より選択される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項10】
前記免疫細胞は、前記対象またはドナー由来である、
請求項9に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項11】
前記免疫細胞は、組み換え抗原レセプター、好ましくはキメラ抗原レセプターをさらに発現する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項12】
前記養子細胞移植療法は、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染性疾患、造血幹細胞移植(HSCT)を必要とする疾患の治療、または、臓器拒絶反応、好ましくは移植片対宿主病、血液悪性腫瘍もしくは移植後リンパ増殖性疾患、自己免疫性疾患からなる群より選択される疾患の予防のために使用される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のためのCNI耐性免疫細胞。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のCNI耐性免疫細胞と、
カルシニューリン阻害剤と、
薬学的に許容可能なキャリアと、
を含む薬学的組成物。
【請求項14】
それを必要とする対象の養子細胞移植療法における使用のための、
請求項13に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、miR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性が増加しており、カルシニューリン阻害剤耐性を与える免疫細胞に関する。特に、当該免疫細胞は、miR-17~92クラスターまたはそのパラログのうち少なくとも1つのmiRNAを過剰発現するか、または少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子を不活性化し、カルシニューリン阻害剤耐性を与えるように設計されている。特に、本発明は、それを必要とする患者の養子細胞移植療法における、カルシニューリン阻害剤と組み合わせたカルシニューリン阻害剤耐性免疫細胞の使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
適応的免疫反応に必須なCD4 T細胞は、異なる転写因子およびサイトカインの発現を特徴とする異なるT細胞サブセットに分化する。CD4 T細胞はまた、B細胞が胚中心(GC)反応を起こすことを補助する。CD4 T細胞の活性化は、T細胞レセプター(TCR)に強く依存している。T細胞レセプターは、共刺激レセプターCD28と相乗的に作用する。同様に、CD8T細胞および他のタイプのT細胞は、共刺激分子と共同の、そのTCRを介した活性化に依存している。CD28を介するシグナル伝達は、増殖および膨張のために重要である(Levine, B.L., et al. J Immunol, 1997. 159(12):5921-30)だけでなく、IL-2産生を調節するためにも重要である(Sanchez-Lockhart, M., et al. J Immunol, 2004. 173(12):7120-4)。さらに、CD28発現は、T細胞活性化の間の解糖スイッチに必須である(Frauwirth, K.A., et al. Immunity, 2002. 16(6):769-77;Jacobs, S.R., et al. J Immunol, 2008. 180(7):4476-86)。プライミングとは別に、CD28刺激は、ウイルス感染に対する応答の間のT細胞ヘルパー1型(TH1)および濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の分化および維持のために必要とされ(Linterman, M.A., et al. Elife, 2014. 3)、ならびに、GC応答の形成のために必要とされる(Ferguson, S.E., et al. J Immunol, 1996. 156(12):4576-81)。それにもかかわらず、CD28の機能についての広域研究が実現した場合でも(Esensten, J.H., et al. Immunity, 2016. 44(5):973-88)、このレセプターによって開始される経路の完全な理解には依然として及ばない。
【0003】
T細胞活性化の間、全体的なRNA転写は増加するが、miRNAは全体的にダウンレギュレートされる(Bronevetsky, Y., et al. J Exp Med, 2013. 210(2):417-32)。miRNAの転写は、長い一次転写産物(pri-miRNA)をもたらし(Lee, Y., et al. EMBO J, 2004. 23(20):4051-60)。この一次転写産物は、核においてDroshaおよびDGCR8によって処理される(pre-miRNA)(Gregory, R.I., et al. Nature, 2004. 432(7014):235-40)。このpre-miRNAは、サイトゾルに出され、ここで、RNAseIIIエンドヌクレアーゼであるDicerがpre-miRNAを二本鎖RNA複製物へと加工する。この複製物は、miRNAおよびそのアンチセンス鎖である(Hutvagner, G., et al. Science, 2001. 293(5531):834-8)。次に、この成熟miRNAは、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)をその標的mRNAへとガイドすることができる。この過程は、標的遺伝子3’UTRに結合するmiRNAのシード領域によって、主に決定される(Bartel, D.P. Cell, 2004. 116(2):281-97;Kim, V.N. Nat Rev Mol Cell Biol, 2005. 6(5):376-85)。mRNAを標的化すると、タンパク質発現は、通常、mRNA切断、mRNA崩壊または翻訳抑制によって、ダウンレギュレートされる(aek, D., et al. Nature, 2008. 455(7209):64-71;Selbach, M., et al. Nature, 2008. 455(7209):58-63)。
【0004】
全体的なmiRNAダウンレギュレーションとは対照的に、miR-17~92、ならびに2つのパラログクラスターmiR-106a~363およびmiR-106b~25の発現は、T細胞活性化の間、維持されるか、またはアップレギュレートさえされる。miR-17~92は、CD28共刺激で誘導される(de Kouchkovsky, D., et al. J Immunol, 2013. 191(4):1594-605)。miR-17~92クラスターは、6つのマイクロRNA(miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20a、miR-19b、およびmiR-92)をコードする。これら6つのマイクロRNAは、その4つのシードファミリー(miR17ファミリー、miR18ファミリー、miR19ファミリー、およびmiR92ファミリー)にしたがって、グループに分類される(Xiao, C. and K. Rajewsky. Cell, 2009. 136(1):26-36)。機能的には、miR-17~92は、増殖に重要である(Jiang, S., et al. Blood, 2011. 118(20):5487-97)だけでなく、TFHを含む種々のTヘルパーサブセットへの分化にも重要である(Baumjohann, D. Cancer Lett, 2018. 423:147-152; Baumjohann, D., et al. Nat Immunol, 2013. 14(8):840-8;Jeker, L.T. and J.A. Bluestone. Immunol Rev, 2013. 253(1):65-81)。このmiRNAクラスターの多くの標的、例えばPTEN(Xiao, C., et al. Nat Immunol, 2008. 9(4):405-14)だけでなくKLF-2(Serr, I., et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2016. 113(43):E6659-E6668)およびRorα(Baumjohann, D., et al. Nat Immunol, 2013. 14(8):840-8)がこれまでに報告され、検証されているとはいえ、これらの標的はいずれも、クラスター発現が変化したときに観察される表現型を十分には説明できていない。このことは、細胞運命を変化させるためには、小さな変化をもたらす多くの標的の集合が必要とされ得ることを示唆する(Jeker, L.T. and J.A. Immunol Rev, 2013. 253(1):65-81)。miR-17~92の発現は、増殖(Baumjohann, D., et al. Nat Immunol, 2013. 14(8):840-8;Xiao, C., et al. Nat Immunol, 2008. 9(4):405-14)、代謝(Izreig, S., et al. Cell Rep, 2016. 16(7):1915-28)、ならびにTFHおよびGC B細胞の分化(Baumjohann, D., et al. Nat Immunol, 2013. 14(8):840-8)などの、CD28発現によっても影響されるT細胞活性化の態様のために重要である。
【0005】
養子細胞移植は、免疫細胞の移植を伴い、ウイルス感染、自己免疫疾患および癌を治療するための有望な戦略である。合成生物学の原理を使用して、免疫学および遺伝子工学の進歩は、所望の特異性および増強された機能性を示すヒトT細胞を生成することを可能にした。
【0006】
免疫能が正常な患者において、移植された細胞または臓器がレシピエントとは異なるドナー個人に由来する場合、移植された細胞または臓器は宿主の免疫系により速やかに拒絶される。免疫学的には、このような細胞は異質遺伝子型と呼ばれ、免疫学的拒絶反応は異質遺伝子型拒絶反応と呼ばれる。例外は遺伝学的に同一である双生児間の移植である。したがって、異質遺伝子型移植片の拒絶反応を防止するためには、対象の免疫系を抑制しなければならない。免疫系の異なる経路を標的とする免疫抑制剤は、免疫抑制のための治療に広く用いられている。1つの例は、シクロスポリンA(CsA)またはFK506(タクロリムス)によるカルシニューリンの標的化である。これらは、T細胞の活性化を防ぐ。別の薬物であるCTLA-4-Igは、CD28共刺激の活性化を防ぎ、その結果同様にT細胞の活性化を抑制する。しかし、養子細胞移植(ACT)療法の場合、免疫抑制剤を使用すると、移植された免疫細胞に有害な影響を及ぼす可能性がある。したがって、これらの条件において養子免疫療法アプローチを効果的に使用するために、免疫抑制剤治療に対して耐性がある免疫細胞を開発する必要性が依然として残っている。
【0007】
〔発明の概要〕
CD4cre.miR1792tg.CD28koマウスを使用して、miR-17~92のトランスジェニック発現がin vitroおよびin vivoでのCD28シグナル伝達を補い、CD28ko細胞のトランスクリプトームを補正できることを、本発明者らは示した。さらに、miR-17~92がカルシニューリン/NFAT活性、NFAT核移行を促進し、NFAT依存性遺伝子発現シグネチャーを駆動することの証拠を本発明者らは提供する。さらに、本発明者らは、miR-17~92クラスターがカルシニューリン-NFAT軸のリプレッサーであるRcan3を標的とすることを実証する。さらに、本発明者らは、この生物学的カルシニューリン阻害剤の発現の減少は、同時に化学的カルシニューリン阻害剤に対してより高い耐性を有する細胞を伝達することを実証する。また、本発明者らは、強制的なmiR-17~92発現は、CD28欠失T細胞における共刺激機能を回復させ、それらの細胞におけるCNI耐性を付与するだけでなく、野生型、すなわちCD28十分なT細胞にもCNI耐性を伝達することを実証した。また、本発明者らは、miR-17~92クラスター標的遺伝子であるRcan3遺伝子の不活性化がCNI耐性を免疫細胞に伝達することを示した。
【0008】
本発明は、カルシニューリン阻害剤(CNI)耐性免疫細胞に関する。当該免疫細胞において、miR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性、好ましくは発現が増加しているか、またはmiR-17~92標的遺伝子が減少しており、それを必要とする対象の養子細胞移植療法において使用され、ここで、前記免疫細胞は、前記対象にCNIと組み合わせて投与される。
【0009】
特定の実施形態において、前記免疫細胞は、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20a、miR-19b-1、miR-92a-1、miR-106a、miR-18b、miR-19b-2、miR-20b、miR-92a-2、miR363、miR-106b、miR-93、miR-25からなる群より選択される少なくとも1つのmiRNA、好ましくはmiR-17またはmiR-19を過剰発現するように設計されている。好ましい実施形態において、前記免疫細胞は、前記免疫細胞に対して、配列番号17~46からなる群より選択される少なくとも1つのmiRNA配列、より好ましくは配列番号1~16からなる群より選択される少なくとも1つのpre-miRNA配列を含む核酸構築物を導入することによって、設計されている。より好ましい実施形態において、前記核酸構築物は、エレクトロポレーションによって、導入されている。
【0010】
別の特定の実施形態において、前記免疫細胞は、少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子、好ましくはRcan3遺伝子の発現を不活性化または抑制するように設計されており、好ましくは、前記免疫細胞は、前記免疫細胞に対して、Rcan3遺伝子を標的とすることができるCas9/CRISPR複合体を導入することによって、設計されている。
【0011】
特定の実施形態において、前記カルシニューリン阻害剤は、シクロスポリンA、FK506およびCTLA-4Igからなる群より選択される。
【0012】
別の特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球、NK細胞、マクロファージおよび制御性T細胞からなる群より選択され、前記対象またはドナー由来である。好ましい実施形態において、前記免疫細胞は、組み換え抗原レセプター、好ましくはキメラ抗原レセプターをさらに発現する。
【0013】
特定の実施形態において、養子細胞移植療法は、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染症、造血幹細胞移植(HSCT)を必要とする疾患の治療、または、臓器拒絶反応、好ましくは移植片対宿主病、血液悪性腫瘍および移植後リンパ増殖性疾患からなる群より選択される疾患の予防のために使用される。本発明はまた、上述のCNI耐性免疫細胞と、カルシニューリン阻害剤と、を含む薬学的組成物に関し、特に、それを必要とする対象の養子細胞移植療法における使用するための、薬学的組成物に関する。
【0014】
〔図面の簡単な説明〕
図1.miR-17~92欠損はCD28欠損を表現型模写する。miR1792lox(灰色、左)、wt(黒)、miR1792tg(灰色、右 A)PMA/Iono/BFAで3時間刺激したCD4
+細胞におけるフローサイトメトリー細胞内IL-2染色の定量;B)ELISAにより測定した48時間における培養上清中のIL-2分泌;C)プレート結合αCD3/αCD28mAbで48時間活性化したCFSE標識T
1792Δ/Δ(灰色、左)、wt(黒)、およびT
1792tg/tg(灰色、右)CD4
+T細胞の増殖。エラーバーは平均±SDを表す、Dunnの多重比較検定、p値:ns=有意ではない、
*<0.05
**<0.002
***<0.0002
****<0.0001。データは、1グループあたり3~4回の生物学的反復を用いた2~3回の独立した実験を表す。
【0015】
図2.miR-17~92の発現は活性化CD4 T細胞における代謝を改変する。T
1791Δ/Δ(明灰色)、wt(黒)、T
1792/tg/tg(灰色)由来のCD4
+T細胞を、seahorseマシンを用いたミトコンドリアストレス試験によってそれらの代謝活性について評価した。A)ミトコンドリアストレス試験は、ナイーブCD4
+T細胞において96ウェルseahorseを用いて測定した。1グループあたり3~4回の生物学的反復を用いた2つの実験および実験を示す。左:細胞外酸性化速度、右:酸素消費速度。両パラメータは3つの遺伝子型で重複している。B)ナイーブCD4
+T細胞における基礎呼吸およびATP共役呼吸。C)48時間活性化したCD4
+T細胞において測定したミトコンドリアストレス試験、ならびにD)活性化したCD4
+T細胞における基底呼吸とATP共役呼吸。4つの実験からのプールされた3~8回の生物学的反復を示す。Tukeyの多重比較検定、p値:
*<0.05 E)RNA配列データは、TCAに関連する遺伝子のエンリッチメントを示す。活性化後24時間、48時間のナイーブなT
1792Δ/ΔおよびT
1792tg/tgの間で異なって発現する遺伝子に基づく遺伝子セット:リアクトーム_TCA_サイクル_および_呼吸_エレクトロン_輸送(REACTOME_TCA_CYCLE_AND_RESPIRATORY_ELECTRON_TRANSPORT)のエンリッチメントを示す。色は、灰色の左側がT
1792Δ/Δでアップレギュレートされ(増加)、灰色の右側がダウンレギュレートされた(減少)、倍率変化(fold change)の方向を示す。
【0016】
図3.トランスジェニックmiR-17~92の発現は、in vitroでCD28欠損T細胞の共刺激を回復させる。wt(黒)、CD28
-/-(暗灰色、中央)、miR1792tg(=レスキュー)を伴うCD28
-/-(明灰色、右側)。A)PMA/Iono/BFAで3時間刺激したCD4
+T細胞におけるフローサイトメトリー細胞内IL-2染色の定量。B)増殖をCFSE希釈により測定し、生存CD4
+T細胞上でゲートした。αCD28なし(空白)またはあり(灰色)で活性化された各遺伝子型の代表的なヒストグラム。C)CD4
+T細胞の芽球化は、リンパ球ゲートのFSC-AのMFIとして示された。D-E)CD4
+T細胞を、αCD28を含む(+)または含まない(-)プレート結合αCD3で48時間刺激し、発現について、初期活性化マーカーCD25/CD69発現(D)ならびにCD44/CD62L発現(E)を調べた。1グループあたり3~4回の生物学的反復を含む3回の独立した実験からのデータ。エラーバーは平均±SDを表す、TukeyまたはHom-Sidakの多重比較検定;p値:ns=有意ではない、
*<0.05
**<0.002
***<0.0002
****<0.0001。
【0017】
図4.トランスジェニックmiR-17~92発現は、in vitro分化中のCD28シグナルを部分的に補うことができる。ナイーブCD4 T細胞を、TH1(T細胞培地1mlあたり50U IL-2、5ng/ml IL12および10μg/ml αIL4)、TH17(T細胞培地1mlあたり50ng/ml IL6、3ng/ml TGFβ、5μg/ml αIFNγおよび10μg/ml αIL4)、およびiTreg(250U IL-2、0.75ng/ml TGFβ、10μg/ml αIFNγおよび10μg/ml αIL4に加えて0.9mMレチノイン酸)の生成のためのスキューイング条件(skewing condition)の存在下で、プレート結合抗体(0.2μg/ml αCD28、0.5μg/ml αCD3)24時間、48時間、および72時間活性化した。wt(黒、左)、CD28ko(暗灰色、左から2番目)、レスキュー(灰色、右から2番目)およびmiR1792tg(明灰色、右)。2つの独立した実験からのデータを、各時点および遺伝子型の代表的なFACSプロットと共に示す。A)TH1分化は、生存CD4 T細胞においてIFNγおよびTbx21(Tbet)で染色された。miR-17~92の人工発現はIFNγ産生をさせる。B)TH17は生存CD4 T細胞中でIL-17AおよびRorγTについて染色され、RorγT
+は2つの上象限であったが、Rorγt
+IL17A
+細胞は右上象限のみであった。C)iTregをCD25およびFoxp3で染色し、データ要約は%Foxp3
+CD25集団を示した。
【0018】
図5.トランスジェニックmiR-17~92発現は、in vivoでCD28欠損細胞の共刺激を回復させる。6-8週齢のマウスにLCMV Armstrongを感染させ、感染後8日目に脾臓を分析した。wt(黒)、CD28
-/-(暗灰色)、レスキュー(明灰色)。A-D)生存CD4
+CD3
+または生存CD19
+B220
+細胞上でプレゲーティング(pre-gating)した、1グループあたり4匹のマウスを用いた4つの独立した実験からのデータを表す。A)CD44の発現。B)Bcl6
+ICOS
+集団(TFH)の相対数。C)CXCR5
+PD-1
+集団(TFH)の相対数。D)Fas
+GL7
+集団(GC B細胞)の相対数。E)Tbx21およびIFNγ発現の代表的なコンタープロット。F)Tbx21
+IFNγ
+CD3
+CD4
+細胞の定量。G)総Tbx21
+細胞に対するTbx21
+IFNγ
+の比率。エラーバーは平均SDを表す、Dunnの多重比較検定;p値:ns=有意ではない、
*<0.05、
**<0.002、
***<0.0002、
****<0.0001。
【0019】
図6.miR-17~92発現の消失は、LCMV感染時にin vivoでCD28欠損を表現型模写し、miR-17~92のヘテロ接合体発現はCD28koを部分的にレスキューできる。6-8週齢のマウスを2
*10
5PFU LCMV Armstrong i.p.に感染させ、感染後8日目に、
図5のように脾臓を分析した。wt(左)、T
1792Δ/Δ(左から2番目)、CD28
-/-(左から3番目)、ヘテロ接合トランスジェニックmiR-17~92発現のCD28
-/-=ヘトレスキュー(hetrescue)(右から3番目)、トランスジェニックmiR-17~92発現のCD28
-/-=レスキュー(右から2番目)、T
1792tg/tg(右)。A-D)生存CD4
+CD3
+または生存CD19
+B220
+細胞上でゲートされた1グループあたり3~4匹のマウスを用いた4つの独立した実験からのデータを表す。A)CD44発現 B)%Bc16
+ICOS
+(TFH)C)%CXCR5
+PD-1
+(TFH)およびD)%Fas
+GL7
+(GC B細胞)の定量。エラーバーはSDの平均を表す、Dunnの多重比較検定、p値:ns=有意ではない、
*<0.0332,
**<0.0021,
***<0.0002,
****<0.0001。E-G)脾細胞をGP-64およびBFAで4時間再刺激し、生存CD3+CD4+細胞上でプレゲートしたTH1表現型について調べた。1グループあたり3~4回の生物学的反復による2~3回の独立した実験を示す。E)Tbx21およびIFNγ発現の代表的なコンタープロット。F)Tbx21
+IFNγデータ要約。G)総Tbx21
+細胞に対するTbx21
+IFNγ
+の比率。
【0020】
図7.miR-17~92によるCD28機能の回復は細胞内在である。ナイーブSMARTA
+ CD4
+ T細胞のCD28
-/-宿主への養子移植、その後のLCMV-Armstrong感染、および感染後d8の臓器の分析。ドナー遺伝子型wt(黒、左側)、CD28
-/-(灰色、中央)、レスキュー(灰色、右側)。点線は、非移植コントロール宿主で測定されたレシピエント固有のVα2
+Vβ8.3
+集団を示す。A)生存CD3
+CD4
+細胞上でプレゲートした末梢リンパ節(LN)由来のVα2
+Vβ8.3
+細胞;B)末梢LN由来のVα2
+Vβ8.3
+集団におけるCD44発現。2回の独立実験、グループあたり4レシピエント。エラーバーは平均±SD、Dunnの多重比較検定を表す、p値:ns=有意ではない、
*<0.05、
**<0.002、
***<0.0002。C-D)脾臓(C)および腸間膜LN(D)由来の生存CD4+集団におけるVα2+Vβ8.3+細胞;E-F)脾臓(E)および腸間膜LN(F)由来のVα2+Vβ8.3+集団におけるCD44発現。2回の独立した実験、グループあたり4レシピエント。エラーバーは平均±SDを表す、Dunnの多重比較検定、p値:ns=有意ではない、
*<0.05、
**<0.002、
***<0.0002。
【0021】
図8 miR-17~92はT細胞活性化後にトランスクリプトームを形作り、NFAT依存遺伝子発現を促進する。T
1792Δ/Δ(明灰色)、T
1792tg/tg(灰色)またはwt(黒)由来のナイーブCD4+ T細胞を、プレート結合αCD28およびαCD3で0、24時間および48時間活性化した。全RNAをバルクRNA配列決定のために抽出した。A)25%の最も変動の大きい遺伝子に基づくPCA(PC1対PC2)。B)T
1792tg/tg対T
1792Δ/Δ比較の、abs(log2FC)>1および調整済みP値(adj.P.Val)<0.001で選択された遺伝子のセットの24時間での階層的クラスタリング。ヒートマップは、百万当たりのカウントの中心ログを表示する。注釈「DE」は倍率変化方向を示し、「DEイントロン」はEISA分析において顕著な変化が観察されるかどうかを示し、「TS」はシードマッチの存在(灰色)または非存在(空白)およびその位置を示し、「AHC」は、HITS-CLIPデータにおける3’UTRシグナル強度を示す。ボックスI~IVbは遺伝子クラスターを示す。C)火山プロットは、レギュロン解析からの絶対log2倍率変化および-log10 p値を示す。1%FDRの閾値を適用した。ドットサイズは各レギュロン内の遺伝子の数を示し、色は倍率変化方向を示す。D)NFATC2_DおよびNFATC3_Dレギュロン下にある遺伝子のヒートマップに加えて、CD4細胞(Il10、Il12a、Il6、Rorc、Il23a)におけるいくつかの既知の活性化遺伝子。階層的クラスタリングを遺伝子に適用した。百万当たりのカウントの中央ログを表示する。E-F)各遺伝子の遺伝子発現比のlog2値対ナイーブ(E)および24h活性化(F)における全log2比の累積画分(cumulative fraction)として示した、ゲノムワイドなトランスクリプトーム解析。T
1792tg/tg対wtおよびT
1792Δ/Δ対の比較のためのmiR-17シードファミリーを示す。黒い曲線:シードマッチを持たず、5つ以下のAHC読み取り(read)を示したデータセットのすべての遺伝子、灰色:シードファミリーについてシード配列を有し、AHCにおいて5以上の読み取りを有する遺伝子のサブセット。
【0022】
図9.miR-17~92の発現はCD28ko細胞のトランスクリプトームを部分的にレスキューする。T
1792Δ/Δ(灰色)、wt(黒)、T
1792tg/tg(明灰色)、CD28
-/-(暗灰色)、およびレスキュー(灰色)マウス由来のCD4
+T細胞を24時間活性化した。全RNAを配列決定のために抽出した。A)25%の最も変動の大きい遺伝子に基づくPCA(PC1対PC2)B)各遺伝子に対する遺伝子発現比のlog2値対全log2比の累積画分として示した、ゲノムワイドなトランスクリプトーム解析。示されているのは、CD28
-/-対wtおよびレスキュー対wt比較についての、miR-17シードファミリーによって分離された活性化サンプル間のコントラストである。黒い曲線:シードマッチを持たない、<5 AHCリードを持たないおよび2回目のRNA配列決定において発現差異を示さない遺伝子。灰色:miR-17シードファミリー(TS)のための保存された結合部位を有しており、>5 AHC読み取り、およびAHC発現差異を示さない遺伝子、灰色:miR-17シードファミリー(TS)のための保存された結合部位を有し、およびAHC中の>5読み取りならびに2回目のRNA配列決定データセットで発現差異を示す遺伝子。
【0023】
図10.Rcan3発現およびシクロスポリンA感度はmiR-17~92およびCD28発現により改変される。A)HITS-CLIPによって検出されたRcan3の3’UTRにおけるArgonaute2の結合部位、およびフラッグによって示される示される予測されたmiR-17標的部位。B)活性化の24時間後にqPCRで検出されたRcan3 mRNA発現、wt.T
1792Δ/Δ(左)、wt(黒)、T
1792tg/tg(右)に正規化した3つの独立した実験からのプールされたデータで示す。mRNA発現は18SリボソームRNAに正規化した。値は平均±SD、Dunnの多重比較検定、p値:ns=有意ではない、
*<0.05、
****<0.0001。C)活性化の24時間後に標的プロテオミクスで測定されたRcan3タンパク質存在量。CD28
-/(左)、T
1792Δ/Δ(左から2番目)、レスキュー(中)、およびT
1792tg/tg(右)をwt(右から2番目)と比較する。Rcan3の標的プロテオミクスおよび全RNA配列決定のために、同じ細胞からタンパク質を単離した。数字は、T検定からのp値を示す。D)CD4
+ wt(黒)、CD28
-/-(暗灰色)およびレスキュー(明灰色)細胞を、示すように増加する濃度のシクロスポリンA(CsA)の存在下で48時間活性化し、CD25およびCD69について染色した。左:生存CD4 T細胞のCD25/CD69発現の代表プロット(48h用、6.25ng/ml CsAなし)。右:CD25+CD69+集団のうち、左側にゲートがあるものの割合。2つの独立した実験を示し、エラーバーは平均±SDを表す。Tukeyの多重比較、p値:
**<0.002、
****<0.0001は、CD28
-/-とwtとの間の有意差を指す。E)生存CD4+細胞の芽球化(リンパ球ゲートのFSC-A)に対する6.25ng/mlのCsAの影響。F)6.25ng/mlシクロスポリンAの存在下で48時間活性化したCD4
+ T細胞のimagestream解析を行い、DAPIおよびNFATc2で染色した。CD28
-/-サンプル中の細胞質(上部)および核(底部)NFATc2の例。G)類似性拡張(similarity dilate)のヒストグラム、NFATc2およびDAPIシグナルの共局在化の表示、ゲートは転座集団(高い類似性拡張)および細胞質集団(低い類似性拡張)を示す。
【0024】
図11:wt CD4+およびCD8+ T細胞におけるトランスジェニックmiR-17~92の発現は、カルシニューリン阻害剤(CsAおよびFK506)に対するより高い耐性を細胞に与える。A、B)miR1792tg(灰色)またはwt(黒)マウス由来のCD4 T細胞を、(A)で示すように、シクロスポリンA(CsA)またはFK506(B)の漸増濃度の存在下で48時間活性化し、それらのCD25およびCD69の発現について染色した。2つの独立した実験を示し、エラーバーは平均±SDを表す。Holm-Sidaksの多重比較、p値:ns>0.1234
*<0.0332
**<0.0021、
***<0.0002
****<0.0001はmiR1792tgとwtとの間の有意差を指す。C,D)miR1792tg(灰色)またはwt(黒)マウス由来のCD8+ T細胞を、示されているようにCsA(C)またはFK506(D)の漸増濃度の存在下で48時間活性化し、それらのCD25およびCD69の発現について染色した。2つの独立した実験を示し、エラーバーは平均±SDを表す。Holm-Sidaksの多重比較、p値:ns>0.1234
*<0.0332
**<0.0021、
***<0.0002
****<0.0001はmiR1792tgとwtとの間の有意差を指す。
【0025】
図12:miR-17~92の標的遺伝子であるCRISPR/Cas9を介したRcan3欠失は、CsAに対する耐性を付与する。コントロールgRNAまたはRcan3を標的とするgRNA(CICドメインまたはエキソン2(crRNA 1119、crRNA1558))でエレクトロポレーションしたCD4 T細胞を、示したように、漸増濃度のCsAの存在下で48時間活性化した。T細胞活性化のマーカーとしてのCD44発現を、フローサイトメトリーによって定量した。MFI:平均蛍光強度。
【0026】
〔発明の詳細な説明〕
免疫能が正常な患者では、(養子)移植された臓器または細胞は、宿主免疫系により急速に拒絶される。さらに、異質遺伝子型HSCTとの関連において、移植された免疫系は宿主を攻撃し得、移植片対宿主病(GvHD)と呼ばれる疾患を引き起こす。移植片合併症を予防するために、移植後にカルシニューリン阻害剤などの免疫抑制剤を投与する。残念ながら、病原性免疫細胞を選択的に阻害し、同時に有益な免疫応答をそのまま残すことは今のところ不可能である。結果として、感染症や腫瘍に対する免疫反応を含め、すべての免疫反応が防がれる。このことは、免疫抑制された有益な応答に代わるさらなる細胞導入の潜在的必要性を持ち込む。しかしながら、GvHDの移植拒絶を防止するためには免疫抑制を維持しなければならないので、移植された細胞は、そうでなければCNIによって阻害されるので、カルシニューリン阻害剤のような免疫抑制剤に対する耐性を必要とする。
【0027】
本発明者らは、miR-17~92クラスターおよびCD28を介したシグナルがシクロスポリンAに対する感受性に影響を及ぼすことを示した。したがって、miR-17~92クラスターの発現が増加しているか、または少なくとも1つのmiR-17~92標的遺伝子、例えばRcan3(内因性カルシニューリン阻害剤)が欠失している免疫細胞を、カルシニューリン阻害剤と組み合わせて、対象における養子細胞移植治療に用いることができる。
【0028】
「免疫抑制剤」により、いくつかの作用機序の1つによって免疫機能を抑制する薬剤を意味する。言い換えれば、免疫抑制剤は、免疫応答の程度および/または貪食性(voracity)を減少させる能力によって示される化合物によって果たされる役割である。本発明によるカルシニューリン阻害剤は、カルシニューリン/NFAT経路を直接的または間接的に遮断することによって機能する免疫抑制剤である。カルシニューリン阻害剤はシクロスポリンAまたはFK506であり得、タクロリムスとも呼ばれる。本発明によれば、カルシニューリン阻害剤はCTLA4-Igであってもよい。カルシニューリン(PP2B)は多くの生物学的プロセスに含まれ、遍在的に発現されるセリン/トレオニンプロテインホスファターゼであり、そして、これはT細胞活性化の中心である。カルシニューリンは触媒サブユニット(CnA;3つのアイソフォーム)および調節サブユニット(CnB;2つのアイソフォーム)からなるヘテロ二量体である。T細胞レセプターが関与した後、カルシニューリンは転写因子NFATを脱リン酸化し、核への移行を可能にし、他の転写因子と共に二量化し、IL-2のような主要標的遺伝子の転写を開始する。ある種の遺伝子はNFATの結合によって活性化されるが、他の遺伝子は阻害される。FKBP12との複合体のFK506、またはCyPAとの複合体のシクロスポリンA(CsA)は、NFATがカルシニューリンの活性部位に接近するのを阻害し、その脱リン酸化を妨げ、それによってT細胞の活性化を阻害する(Brewin, Mancao et al. 2009)。CTLA-4-Igは、T細胞CD28共刺激の阻害を通してNFAT活性を遮断する(Diehn M. et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002, 99(18):11796-11801;Wang CJ. Et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015;112(2):524-9)。
【0029】
本発明によれば、miR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性を増大させることにより、カルシニューリン阻害剤耐性が免疫細胞に付与される。「miRNAの調節活性」により、標的転写産物の結合および分解を介して、またはmRNAが翻訳されるのを妨げることによって、標的遺伝子抑制を誘導することを意味している。
【0030】
特に、本発明によれば、miR17~92クラスターまたはそのパラログの少なくとも1つのmiRNAは、標的転写物の結合およびその後の分解を通して、またはmRNAが翻訳されるのを妨げることによって、少なくとも1つの標的遺伝子の遺伝子抑制の増加を誘導する。miR17~92の標的遺伝子は表1の遺伝子のリストを含むが、これらに限定されない。
【0031】
【0032】
特定の実施形態において、miR17~92クラスターまたはそのパラログの少なくとも1つのmiRNAは、カルシニューリン遺伝子(例えば、RCAN1、RCAN2およびRCAN3遺伝子、好ましくはRCAN3遺伝子)のレギュレーターの遺伝子抑制の増加を誘導する。
【0033】
miR-17~92クラスターの調節活性の増加は、miR-17~92クラスターまたはそのパラログの標的遺伝子の発現レベルを測定することによって決定され得る。特定の実施形態において、標的遺伝子は、表1の遺伝子のリストにおいて選択される。より特定の実施形態では、標的遺伝子はRCAN3遺伝子、Cast遺伝子、Cyld遺伝子およびZbtb4遺伝子からなる群より選択され、より好ましくはRCAN3遺伝子である。miR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性は、標的遺伝子、好ましくはRCAN3遺伝子、Cast遺伝子、Cyld遺伝子およびZbtb4遺伝子からなる群から選択され、より好ましくはRCAN3遺伝子、の発現レベルが非設計免疫細胞よりも少なくとも1.5倍低いか、または2、3、4、5倍低い場合に、設計された免疫細胞において増加する。
【0034】
mRNAの発現レベルは、当業者に公知の任意の適切な方法によって決定され得る。通常、これらの方法は、mRNAの量を測定することを含む。mRNAの量を決定するための方法は、当該分野で公知である。例えば、サンプルに含まれる核酸は最初に、標準的な方法に従って、例えば、溶解酵素または化学溶液を使用して抽出されるか、または製造業者の説明書に従って核酸結合樹脂によって抽出される。次いで、抽出されたmRNAはハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット分析)および/または増幅(例えば、RT-PCR)によって検出される。定量的または半定量的RT-PCRが好ましい。
【0035】
標的遺伝子タンパク質のレベルはまた、当業者に公知の任意の適切な方法によって決定され得る。通常、これらの方法は、細胞サンプル、好ましくは細胞溶解物を、サンプル中に存在する標的遺伝子タンパク質と選択的に相互作用することができる結合パートナーと接触させることを含む。結合パートナーは一般に、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、好ましくはモノクローナル抗体である。タンパク質の量は例えば、半定量的ウェスタンブロット分析か、ELISA、ビオチン/アビジン型アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫電気泳動もしくは免疫沈降などの酵素標識および媒介イムノアッセイによって、またはタンパク質もしくは抗体アレイによって測定することができる。反応には、一般に、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、酵素標識もしくは色素分子などの標識を明らかにすることが含まれ、または抗原と抗体との間の複合体の形成、もしくは、それらとともに反応した抗体を検出するための他の方法が含まれる。好ましい実施形態において、細胞溶解物は、分画されたタンパク質を受け取るために、特定の酵素、例えばトリプシンで消化される。次いで、サンプルをスパイクペプチドと混合する。スパイクペプチドは、同位体標識を有する、目的のタンパク質に由来する短いペプチドとして定義される。その後、質量分析による測定は、質量シフトを検出し、目的のタンパク質の存在量を定量化することを可能にする。
【0036】
別の特定の実施形態において、miR-17~92クラスターの調節活性の増加は、miR-17~92クラスターおよびそのパラログのmiRNAの少なくとも1つの発現レベルを測定することによって決定され得る。miR-17~92クラスターの調節活性は、miR-17~92クラスターおよびそのパラログの少なくとも1つのmiRNAの発現レベルが非設計免疫細胞よりも少なくとも1.5倍高いか、または2、3、4、5倍高い場合に、設計された免疫細胞において増加する。miRNAの発現レベルは、上記のように当業者に公知の任意の適切な方法によって決定され得る。
【0037】
miR-17~92クラスターおよびパラログの調節活性または量は、化学物質、抗生物質、遺伝子発現を改変することが知られている化合物、修飾または非修飾ポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチドを含む)、ポリペプチド、ペプチド、低分子RNAおよびmiRNAを含むがこれらに限定されない薬剤によって増加させることができる。
【0038】
特定の実施形態において、miR-17~92クラスター化およびそのパラログの調節活性は、設計された免疫細胞によって増加され、miR-17~92クラスター化およびそのパラログの少なくとも1つのmiRNAを過剰発現する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「過剰発現(overexpress、overexpression)」は、正規化後に、非改変免疫細胞における発現レベルよりも少なくとも1.5倍高い、または2、3、4、5倍高い発現レベルを指す。発現レベルは、リボソーム18S、GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ)またはβ-アクチンなどの安定な発現を有することが知られているmRNAの発現レベルを使用することによって、正規化することができる。
【0040】
免疫細胞におけるmiR17~92クラスターの過剰発現は、当業者に公知の任意の方法、例えば、MIR17HG遺伝子またはそのパラログの転写を増加させること(例えば、エンドヌクレアーゼ活性を有さないdCas9を有するCRISPR活性化システムおよびdCas9またはガイドRNA上に付加された転写活性化因子を用いることによる)によって得られ得る。免疫細胞におけるmiR17~92クラスターの過剰発現はまた、miR17~92クラスターおよびそのパラログの少なくとも1つのmiRNAをコードする核酸配列を含む核酸構築物またはベクターを導入すること、および/または当該miRNAの分解を減少させることによっても得られ得る。
【0041】
用語「miRNA」または「マイクロRNA」または「miR」は、一本鎖および二本鎖miRNAを包含する。好ましくは、miRNAは二本鎖形態である。miRNAはそれらの標的mRNAに部分的に相補的であり、10~25ヌクレオチド、好ましくは20~25ヌクレオチドのサイズを有する。
【0042】
本発明に従って使用されるmiRNAは、一本鎖もしくは二本鎖形態、またはこれら2つの混合物であり得る。それらは、例えば、ヌクレアーゼに対するそれらの耐性を増大させ、したがって細胞中でのそれらの寿命を増大させることを可能にする、修飾ヌクレオチドまたは化学修飾を含有することができる。それらは、特に、例えば、イノシン、メチル-5-デオキシシチジン、ジメチルアミノ-5-デオキシウリジン、デオキシウリジン、ジアミノ-2,6-プリン、ブロモ-5-デオキシウリジン、またはハイブリダイゼーションを可能にする任意の他の修飾塩基などの、修飾塩基を有するヌクレオチドなどの、少なくとも1つの修飾または非天然ヌクレオチドを含むことができる。本発明に従って使用される干渉RNAはまた、ヌクレオチド間結合、例えばホスホロチオエート、H-ホスホネートもしくはアルキルホスホネートで、または主鎖において、例えばアルファ-オリゴヌクレオチド、2’-O-アルキルリボースもしくはPNA(ペプチド核酸)で修飾され得る(M. Egholm et al., 1992)。
【0043】
干渉RNAは、天然RNA、合成RNA、または組換え技術によって産生されたものであり得る。これらのmiRNAは、当業者に公知の任意の方法、例えば、化学合成、データベースのスクリーニング、転写in vivoもしくは組み換えDNAまたは増幅技術によって調製され得る。
【0044】
miR-17~92クラスターは、C13orf25とも呼ばれるMIR17HG遺伝子によってコードされるポリシストロン性転写物(配列番号1;GenBank:AB176708.1)である。miR-17~92クラスターは、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20、miR-19bおよびmiR-92の6つのmiRNAの群からなる。
【0045】
miR-17~92クラスターの2つのパラログ、miR-106a-363およびmiR-106b-25クラスターが同定された。miR-106a-363クラスターは染色体X上に位置し、miR-106a、miR-18b、miR-19b-2、miR-20b、miR-92a-2、miR-363の6つのmiRNAをコードしている。クラスターmiR106b-25は、miR-106b、miR-93、miR-25の3つのmiRNAをコードする。
【0046】
本発明によれば、「miR-17~92クラスター」とは、miR-17~92クラスターおよびそのパラログ(miR-106a-363およびmiR-106b-25クラスターなど)を意味する。本明細書で使用する「パラログ」という用語は、1つの種における遺伝子(または他のコード配列)の別々の出現を示す。別々の出現は、類似しているが、同一ではない配列を有し、配列類似性の程度は、部分的には別々の出現を引き起こす遺伝子重複事象からの進化的距離に依存する。したがって、「パラログ」という用語は天然に存在する変異体を指す。
【0047】
本発明に従って使用されるmiRNAは、前駆体の形態で投与され得る。miRNAは特に、pre-miRNAまたはpri-miRNAの形態で投与することができる。pri-miRNAはmiRNAの前駆体であり、細胞の核内で切断されてpre-miRNAとなる。pri-miRNAは、1つ以上のpre-miRNAを含み得る。pre-miRNAもmiRNAの前駆体である。それらは60~80ヌクレオチドを含み、不完全なステム-ループ構造に折り畳まれる。これらのpre-miRNAは細胞質で切断されて二本鎖miRNAとなり、次にArgonauteファミリーのタンパク質と相互作用できる一本鎖miRNAとなってRISC複合体を形成する。これは標的mRNAが分解されるか、あるいはこのmRNAの翻訳が抑制されるためである。pre-miRNAが成熟miRNAに処理されると、miR-XXX-5pとmiR-XXX-3pと名づけられた2つの19~23ntの長いmiRNAが生じる。成熟miR-XXX-5p miRNAは5’末端に由来し、miR-XXX-3pはpre-miRNAの3末端に由来する。用語「miRNA」は、Pri-miRNA、pre-mRNA、5p-miRNaおよび3p-miRNAへの言及を含む。
【0048】
本開示で使用することができるmiR-17~92クラスターおよびパラログの前駆体miRNAを表2に挙げる。
【0049】
【0050】
従って、miR-17~92の前駆体miRNAは、pre-miR-17(配列番号2;NCBI参照:NR_029487.1)、pre-miR-18a(配列番号3;NCBI参照:NR_029488.1)、pre-miR-19a(配列番号4;NCBI参照:NR_029489.1)、pre-miR-20a(配列番号5;NCBI参照:NR_029492.1)、pre-miR-19b-1(配列番号6;NCBI参照:NR_029490.1)およびpre-miR-92a-1(配列番号7;NCBI参照:NR_029508.1)からなる群より選択される。
【0051】
miR17~92クラスターパラログの前駆体miRNAは、pre-miR-106a(配列番号8、GenBank:LM608196.1)、pre-miR-18b(配列番号9、NCBI参照配列:NR_029949.1)、pre-miR-19b-2(配列番号10、GenBank:LM608164.1)、pre-miR-20b(配列番号11、NCBI参照配列:NR_029950.1)、pre-miR-92a-2(配列番号12、NCBI参照配列:NR_029509.1)、pre-miR-363(配列番号13、NCBI参照配列:NR_029852.1)、pre-miR-106b(配列番号14、GenBank:LM608661.1)、pre-miR-93(配列番号15、NCBI参照配列:NR_029510.1)およびpre-miR-25(配列番号16、NCBI参照配列:NR_029498.1)からなる群より選択される。
【0052】
miR-17~92クラスターおよびそのパラログは、以下の表3のリストから選択される少なくとも1つのmiRNAを含む。
【0053】
【0054】
miR-17~92クラスターおよびそのパラログは、miR-17-5p(配列番号17)、miR-17-3p(配列番号18)、miR-18a-5p(配列番号19)、miR18a-3p(配列番号20)、miR-19a-5p(配列番号21)、miR-19a-3p(配列番号22)、miR-20a-5p(配列番号23)、miR-20a-3p(配列番号24)、miR-19b-1-5p(配列番号25)およびmiR-19b-1-3p(配列番号26)およびmiR-92a-1-5p(配列番号27)、miR-92a-1-3p(配列番号28)、miR-106a-5p(配列番号29)、miR-106a-3p(配列番号30)、miR-18b-5p(配列番号31)、miR-18b-3p(配列番号32)、miR-19b-2-5p(配列番号33)、miR-19b-2-3p(配列番号34)、miR-20b-5p(配列番号35)、miR-20b-3p(配列番号36)、miR-92a-2-5p(配列番号37)、miR-92a-2-3p(配列番号38)、miR-363-5p(配列番号39)、miR-363-3p(配列番号40)、miR-106b-5p(配列番号41)、miR-106b-3p(配列番号42)、miR-93-5p(配列番号43)、miR-93-3p(配列番号44)、miR-25-5p(配列番号45)およびmiR-25-3p(配列番号46)からなる群から選択される1つ以上のmiRNAを含む。
【0055】
好ましい実施形態において、免疫細胞は、配列番号17~46、好ましくは配列番号17、18、21、22、25および26からなる群より選択される、少なくとも1つのmiRNA配列、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30のmRNA配列を含む核酸構築物を免疫細胞に導入することによって遺伝子操作される。特定の実施形態において、前記核酸構築物は、配列番号1~16、好ましくは配列番号2、4および6からなる群より選択される、少なくとも1つのpre-miRNA配列、より好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16のpre-miRNA配列を含む。
【0056】
用語「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」は、モノマーヌクレオチドから構成されるか、またはモノマーヌクレオチドを含む任意の分子を指すために、互換的に使用され得る。核酸は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり得る。ヌクレオチド配列は、DNAまたはRNAであり得る。ヌクレオチド配列は、化学的に修飾されていても、人工的であってもよい。ヌクレオチド配列には、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノおよびロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)およびトレオース核酸(TNA)が含まれる。これらの配列の各々は、分子の主骨格の変化によって、天然に存在するDNAまたはRNAと区別される。また、ホスホロチオエート型ヌクレオチドが使用され得る。他のデオキシヌクレオチドアナログには、メチルホスホネート、ホスホラミデート、ホスホロジチオエート、N3’P5’-ホスホラミデートおよびオリゴリボヌクレオチドホスホロチオエート、ならびにそれらの2’-0-アリルアナログおよび2’-0-メチルリボヌクレオチドメチルホスホネートが含まれ、これらは本発明のヌクレオチドに使用することができる。
【0057】
「核酸構築物」という用語は、本明細書中で使用される場合、組換えDNA技術の使用から生じる人工核酸分子を指す。核酸構築物は、核酸配列のセグメントを含むように修飾された、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸分子であり、そうでなければこれらは天然には存在しない様式で組み合わされ、そして並置される。核酸構築物は通常、「ベクター」、すなわち、外因的に作製されたDNAを宿主細胞内に送達するために使用される核酸分子である。
【0058】
一般に、核酸構築物は、コード配列ならびに選択された遺伝子産物の発現に必要なコード配列の前(5’非コード配列)および後(3’非コード配列)の調節配列を含む。従って、核酸構築物は、典型的にはプロモーター配列、コード配列、ならびに通常ポリアデニル化部位および/または転写ターミネーターを含有する3’非翻訳領域を含む。核酸構築物はまた、さらなる調節エレメント、例えば、エンハンサー配列、ベクター内のDNAフラグメントの挿入を容易にするポリリンカー配列および/またはスプライシングシグナル配列などを含み得る。
【0059】
一実施形態において、核酸構築物はプロモーターを含む。前記プロモーターは、宿主細胞への導入時に導入遺伝子発現を開始する。本明細書で使用する「プロモーター」という用語は、それが作動可能に連結されている核酸の転写を指示する調節エレメントを指す。プロモーターは、作動可能に連結されている核酸の転写の速度および効率の両方を調節することができる。プロモーターはまた、核酸のプロモーター依存性転写を増強する(「エンハンサー」)または抑制する(「リプレッサー」)他の調節エレメントに作動可能に連結されていてもよい。これらの調節エレメントは、転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位、ならびにプロモーターからの転写の量を調節するために直接的または間接的に作用することが当業者に公知のヌクレオチドの任意の他の配列、例えば、アテニュエーター、エンハンサー、およびサイレンサーが含まれる、を含むが、これらに限定されない。プロモーターは、機能的に連結されている遺伝子またはコード配列の転写開始部位の近く、DNA配列の同じ鎖および上流(センス鎖の5’領域に向かって)に位置する。プロモーターは、約100~1000塩基対の長さであり得る。プロモーター中の位置は、特定の遺伝子についての転写開始部位に対して指定される(すなわち、上流の位置は-1から数えて負の数であり、例えば、-100は100塩基対上流の位置である)。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結されている」は、機能的関係にあるポリヌクレオチド(またはポリペプチド)エレメントの連結を指す。核酸が別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、核酸は「作動可能に連結されている」。例えば、プロモーターまたは転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されているとは、連結されているDNA配列が典型的には連続していることである;2つのタンパク質をコードする領域を連結しなければならない場合、それらは連続しており、リーディングフレーム内にある。
【0061】
別の特定の実施形態において、前記核酸構築物はベクターである。適切なベクターの例としては、組換え組込み型または非組込み型ウイルスベクター、および組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNAに由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ベクターは組換え組込み型または非組込み型ウイルスベクターである。組換えウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ関連ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)のような負鎖RNAウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスのような正鎖RNAウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘およびカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。他のウイルスには、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが含まれる。
【0062】
本発明による核酸分子または核酸構築物、発現カセットまたはベクターは、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラントランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ウイルス感染またはリポソーム媒介トランスフェクションを含むが、これらに限定されない、任意の公知の技術を使用して、免疫細胞に移植され得る。好ましい実施形態において、RNA、好ましくはmiRNAは、例えばin vitro転写によってin vitroで産生することができる。次いで、RNAはエレクトロポレーションによって免疫細胞に導入され得る(例えば、Almasbak et al., Cytotherapy 2011,13:629-640;Rabinovich et al., Hum Gene Ther, 2009,2:51-60;and Beatty et al., Cancer Immunol Res 2014, 2, 1:12-120に記載されるように)。あるいは、RNAは他の手段、例えば、リポソームまたはカチオン性分子などによって導入され得る。別の実施形態において、細胞に導入された核酸構築物またはベクターは、エピソーム的に発現され得るか、または細胞のゲノムに組み込まれ得る。
【0063】
別の特定の実施形態において、miR-17~92クラスターおよびそのパラログの調節活性は、免疫細胞を設計して、少なくとも1つのmiR-17~92標的遺伝子活性を減少させることによって増加する。前記標的遺伝子には上記表1に列挙した遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。特に、前記標的遺伝子は、RCAN1、RCAN2、RCAN3遺伝子、Cast遺伝子、Cyld遺伝子およびZbtb4遺伝子からなる群から選択され、好ましくはRCAN3遺伝子である。
【0064】
特定の実施形態において、前記免疫細胞は、少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子の発現を不活性化または抑制するように設計される。前記標的遺伝子の不活性化はゲノム修飾によって行われることが望ましく、より特に、miR-17~92の標的遺伝子の産生に直接または間接的に関与する遺伝子座を標的とすることができる、特異的な希切断エンドヌクレアーゼの免疫細胞における導入を通して行われる。メガヌクレアーゼ、TAL-ヌクレアーゼ、zing-fingerヌクレアーゼ(ZFN)、またはCas9/CRISPRもしくはArgonauteのようなRNA/DNA誘導エンドヌクレアーゼなどの、異なる種類の希切断エンドヌクレアーゼを使用することができる。
【0065】
標的遺伝子を不活性化することにより、目的の遺伝子が機能性タンパク質形態で発現されないか、または少なく発現されることが意図される。特定の実施形態において、この方法の遺伝子改変は、設計するために提供される細胞における1つの希切断エンドヌクレアーゼの導入に依存する。このような前記希切断エンドヌクレアーゼは1つの標的遺伝子における切断を特異的に触媒し、それによって、前記標的遺伝子を不活性化する。
【0066】
「希切断エンドヌクレアーゼ」という用語は、DNAまたはRNA分子、好ましくはDNA分子内の核酸間の結合の加水分解(切断)を触媒することができる野生型または変異体酵素を指す。特定の実施形態において、本発明による前記希切断エンドヌクレアーゼはCas9/CRISPR複合体などのRNA誘導エンドヌクレアーゼ(RNA-guided endonuclease)である。RNA誘導エンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼがRNA分子と結合する遺伝子操作のツールである。このシステムにおいて、RNA分子ヌクレオチド配列は標的特異性を決定し、エンドヌクレアーゼを活性化する(Gasiunas, Barrangou et al. 2012;Jinek, Chylinski et al. 2012;Cong, Ran et al. 2013;Mali, Yang et al. 2013)。
【0067】
好ましい実施形態において、前記免疫細胞は、好ましくは少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子を標的とすることができるCas9/CRISPR複合体を前記免疫細胞に導入することによって、より好ましくはCas9ヌクレアーゼおよびガイドRNA(本明細書ではシングルガイドRNAとも呼ばれる)を前記免疫細胞に導入することによって、少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子の発現を不活性化するように設計される。前記シングルガイドRNAは、好ましくは少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子、より好ましくはRCAN1、RCAN2、RCAN3遺伝子、Cast遺伝子、Cyld遺伝子およびZbtb4遺伝子からなる群より選択されるクラスター標的遺伝子、さらに好ましくはRcan3遺伝子を標的とすることができる。より好ましい実施形態において、前記シングルガイドRNAはRcan3遺伝子を標的とすることができる。
【0068】
前記標的遺伝子の不活性化はまた、部位特異的塩基エディターの使用によって、例えば、早期終止コドンを導入すること、開始コドンを欠失させること、またはRNAスプライシングを変化させることによって、実施され得る。塩基編集は、DNAの二本鎖切断を起こすことなく、DNAに正確な点突然変異を直接生じさせる。特定の実施形態において、塩基編集は、触媒的に損なわれたCasヌクレアーゼと、一本鎖DNA上で機能する塩基修飾酵素との間の融合を含むDNA塩基エディターを使用することによって行われる(総説については、Rees H.A. et al. Nat Rev Genet. 2018. 19(12):770-788を参照のこと。
【0069】
別の実施形態において、前記免疫細胞は、miR-17~92クラスター標的遺伝子の発現を抑制するように設計される。miR-17~92クラスターによって媒介される抑制は、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築物、低分子阻害RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNAに基づき得る。アンチセンスRNA分子およびアンチセンスDNA分子を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、miR-17~92標的遺伝子mRNAへの結合により、その翻訳を阻害し、従ってタンパク質翻訳を妨げるか、またはmRNAの分解を増加させることにより、細胞内でのmiR-17~92標的遺伝子のレベル、ひいては活性を減少させるように直接作用するであろう。例えば、少なくとも約15塩基であり、mRNA転写配列のユニークな領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは例えば、従来のホスホジエステル技術によって合成され得、そして例えば、静脈内注射または注入によって投与され得る。その配列が公知である遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するための、アンチセンス技術を使用するための方法は、当該分野で周知である(例えば、米国特許第6,566,135号;同第6,566,131号;同第6,365,354号;同第6,410,323号;同第6,107,091号;同第6,046,321号;および同第5,981,732号を参照のこと)。
【0070】
別の実施形態において、低分子阻害RNA(siRNA)もまた、本発明においてmiR-17~92クラスター標的遺伝子発現レベルを低下させるために使用され得る。miR-17~92クラスター標的遺伝子発現は、miR-17~92クラスター標的遺伝子発現が特異的に阻害されるような(すなわち、RNA干渉またはRNAi)、低分子二本鎖RNA(dsRNA)、または低分子二本鎖RNAの産生を引き起こすベクターもしくは構築物を、細胞内に導入することにより減少させることができる。適切なdsRNAまたはdsRNAをコードするベクターを選択するための方法は、その配列が公知である遺伝子について当該分野で周知である(例えば、Tuschl, T. et al. (1999);Elbashir, S. M. et al. (2001);Hannon, GJ. (2002);McManus, MT. et al. (2002);Brummelkamp, TR. et al. (2002);米国特許番号第6,573,099号および第6,506,559号;ならびに国際特許公開番号WO01/36646、WO99/32619、およびWO01/68836を参照のこと)。
【0071】
別の実施形態において、ショートヘアピンRNA(shRNA)もまた、本発明においてmiR-17~92クラスター標的遺伝子発現レベルを低下させるために使用され得る。ショートヘアピンRNA(shRNA)はRNAの配列であり、RNA干渉(RNAi)を介して標的遺伝子発現をサイレンシングするために使用できるタイトヘアピンターンを作る。細胞におけるshRNAの発現は、典型的には、プラスミドの送達によって、またはウイルスもしくは細菌ベクターを介して達成される。強固なshRNA発現を達成するためには、プロモーターの選択が不可欠である。当初、U6およびHIなどのポリメラーゼIIIプロモーターが用いられたが、これらのプロモーターは空間的および時間的制御を欠いている。そのため、ポリメラーゼIIプロモーターを用いてshRNAの発現を調節する転換があった。
【0072】
別の実施形態において、CRISPR干渉もまた、本発明においてmiR-17~92クラスター標的遺伝子発現レベルを低下させるために使用され得る。CRISPR干渉は、エンドヌクレアーゼ活性を欠くが、転写リプレッサーと共役し、RNA誘導抑制を用いて特定の遺伝子をダウンレギュレートする、触媒的に活性のないCas9タンパク質を用いる。標的特異性は、ゲノム遺伝子座に対するシングルガイドRNA(sgRNA)の相補的塩基対形成により決定される。好ましくは、エンドヌクレアーゼ活性を欠くCas9タンパク質または他のCasをコードする核酸構築物と、好ましくはRCAN1、RCAN2、RCAN3遺伝子、Cast遺伝子、Cyld遺伝子およびZbtb4遺伝子からなる群より選択されるmiR17~92クラスター標的遺伝子、好ましくはRCAN3遺伝子に特異的なシングルガイドRNAとを免疫細胞に導入することによって、免疫細胞が設計される。
【0073】
好ましい実施形態において、免疫細胞は、前記ヌクレアーゼ、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築物、低分子阻害RNA(siRNA)またはショートヘアピンRNAを含む、上記のような核酸構築物を免疫細胞に導入することによって遺伝子操作される。より好ましい実施形態において、前記核酸構築物は上記のベクターである。
【0074】
より好ましい実施形態において、免疫細胞は、Cas9ヌクレアーゼと、少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子、好ましくはRCAN1、RCAN2、RCAN3遺伝子、Cast遺伝子、Cyld遺伝子およびZbtb4遺伝子からなる群より選択される標的遺伝子、より好ましくはRcan3遺伝子を標的とすることができる、本明細書ではシングルガイドRNAとも呼ばれるガイドRNAとを免疫細胞に導入することによって、設計される。前記Cas9ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼをコードするベクターもしくはmRNAなどの核酸構築物を導入することによって、またはCas9タンパク質を前記細胞に直接導入することによって、前記細胞に導入することができる。本明細書中で使用される場合、用語「免疫細胞」は、造血起源であり、そして免疫応答において役割を果たす細胞を含む。免疫細胞には、B細胞およびT細胞などのリンパ球、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球、および顆粒球などの骨髄細胞が含まれる。
【0075】
本明細書中で使用される場合、用語「T細胞」は、T細胞レセプター(TCR)を有する細胞を含む。本発明によるT-細胞は炎症性T-リンパ球、細胞毒性T-リンパ球、調節性T-リンパ球、腫瘍浸潤リンパ球またはヘルパーTリンパ球からなる群より選択することができる。ヘルパーT細胞は1型および2型ヘルパーT細胞およびTh17ヘルパー細胞の両方を含む。別の実施形態において、前記細胞は、CD4+Tリンパ球及びCD8+ T-リンパ球、又はMR1拘束性T細胞、MAIT細胞、MR1T細胞、ガンマデルタT細胞又は自然発生様T細胞のような非古典的T細胞からなるグループに由来することができる。前記免疫細胞は、健康なドナーまたは対象に由来し得る。
【0076】
免疫細胞は、血液から抽出され得るか、または幹細胞に由来し得る。幹細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、より詳細には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であり得る。代表的なヒト細胞はCD34+細胞である。
【0077】
T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む多くの非限定的な供給源から得ることができる。特定の実施形態において、T細胞は、FICOLL(商標)分離のような当業者に公知の任意の数の技術を使用して、対象から収集された血液のユニットから得られ得る。一実施形態において、対象の循環血液からの細胞がアフェレーシスによって得られる。特定の実施形態において、T細胞は、PBMCから単離される。PBMCは、全血の密度勾配遠心分離、例えば、LYMPHOPREP(商標)勾配、PERCOLL(商標)勾配またはFICOLL(商標)勾配による遠心分離によって得られるバフィーコートから単離され得る。T細胞は、単球の枯渇によって、例えばCD14 DYNABEADS(登録商標)を用いることによって、PBMCから単離され得る。いくつかの実施形態において、赤血球は、密度勾配遠心分離の前に溶解され得る。
【0078】
別の実施形態において、前記細胞は、健康なドナー、癌もしくは自己免疫疾患と診断された対象、または感染していると診断された対象に由来し得る。
【0079】
一般に、免疫細胞は、活性化されそして増殖させて、ACT治療において利用される。本発明の免疫細胞は、in vivoまたはex vivoで増殖させることができる。免疫細胞、特にT細胞は、当技術分野で公知の方法を一般に使用して活性化および増殖させることができる。一般に、T細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤、およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドを付着させた表面と接触させることによって増殖させられる。
【0080】
養子細胞移植治療における使用のために、特定の実施形態において、免疫細胞は、所望の特異性および増強された機能性を示すように改変され得る。特に、免疫細胞は、特定の標的に向けられるように改変され得る。特定の実施形態において、前記免疫細胞は、その細胞表面上に組換え抗原レセプターを発現し得る。「組換え~」とは、その天然の状態で細胞によってコードされない、すなわち、異種性、非内因性である抗原レセプターを意味する。したがって、組換え抗原レセプターの発現は、免疫細胞に新たな抗原特異性を導入し、細胞にこれまで認識されていなかった抗原を認識させ、結合させることがわかる。抗原レセプターは、任意の有用な供給源から単離され得る。
【0081】
特定の実施形態において、前記組換え抗原レセプターは組換えT細胞レセプター(TCR)である。TCRはT細胞の表面に存在し、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合したペプチドとして抗原の断片を認識する役割を担っている。ほとんどのTCRはα鎖およびβ鎖を含み、これらは両方とも可変領域および定常領域からなる。可変領域は鎖のN末端に位置し、完全に細胞外にある。定常領域は鎖のC末端に位置し、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび短い細胞質ドメインからなる。TCR鎖は、N末端シグナル(またはリーダー)配列を有する未成熟形態でコードされ、合成される。この配列は、それが合成される場合、αまたはβTCR鎖の可変領域のN末端を形成する。TCR鎖の合成に続いて、シグナル配列は切断され、細胞表面にある成熟TCRには提示しない。
【0082】
α鎖またはβ鎖の可変領域は、3つの超可変な相補性決定領域(CDR)を含む。これらのCDRはTCRの特異性を決定し、CDR3(すなわち、N末端から3番目のCDR)は、TCR特異性を決定する際に最も重要なCDRである。TCRは特異的なMHC-抗原複合体を認識する。TCRがその同族のMHC-抗原複合体に結合すると、T細胞は増殖するように刺激され、そのエフェクター機能が活性化される。このように、T細胞は組換えTCRを発現するように改変することにより、容易にリダイレクトできる。医学的に興味深い多くのTCRが知られており、臨床試験および治療に使用されている。
【0083】
本発明において有用な別の組換え抗原レセプターは、キメラ抗原レセプター(CAR)である。CARは、TCR複合体のシグナル伝達ドメインに連結された、典型的には抗体に由来する抗原結合ドメインを含む融合タンパク質である。CARは、適切な抗原結合ドメインが選択される場合、標的抗原に対してT細胞またはNK細胞のような免疫細胞を誘導するために使用され得る。
【0084】
CARの抗原結合ドメインは、典型的には抗体に由来するscFv(一本鎖可変断片)に基づく。N末端の細胞外抗体結合ドメインに加えて、CARは典型的には、抗原結合ドメインをそれが発現される免疫エフェクター細胞の原形質膜から離れて伸長させるためのスペーサーとして機能するヒンジドメイン、膜貫通(TM)ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、TCR複合体のCD3分子(CD3ζ)のゼータ鎖からのシグナル伝達ドメイン、または同等物)、および場合によりCARを発現する細胞のシグナル伝達または機能性を補助し得る1つ以上の共刺激ドメインを含み得る。CD28、OX-40(CD134)、および4-1BB(CD137)を含む共刺激分子からのシグナル伝達ドメインを、単独(第2世代)または組み合わせ(第3世代)で添加し、CAR修飾T細胞の生存を増強し、増殖を増加させることができる。
【0085】
当業者は、本発明に従って使用される免疫細胞をリダイレクトするための適切な抗原レセプターを選択することができる。特定の実施形態において、本発明の方法において使用するための免疫細胞は、リダイレクトされたT細胞、例えばリダイレクトされたCD8+ T細胞またはリダイレクトされたCD4+ T細胞である。
【0086】
組換え抗原レセプターまたは表面タンパク質を発現するように免疫細胞を遺伝的に改変することができる方法は、当技術分野で周知である。抗原レセプターまたは表面タンパク質をコードする核酸分子は、例えば、ベクターまたは任意の他の適切な核酸構築物の形態で細胞に導入され得る。ベクターおよびそれらに必要な成分は、当技術分野で周知である。抗原レセプターをコードする核酸分子は、当該分野で公知の任意の方法、例えばPCRを使用する分子クローニングを使用して生成され得る。抗原レセプター配列は、部位特異的突然変異誘発のような、一般的に使用される方法を使用して改変され得る。
【0087】
特定の実施形態において、免疫細胞は、癌抗原に対してリダイレクトされる。「癌抗原」とは、癌に関連する任意の抗原(すなわち、免疫応答を誘導することができる分子)を意味する。本明細書で定義される抗原は、免疫応答を誘導する任意の種類の分子であり得、例えば、それは多糖類または脂質であり得るが、最も好ましくはペプチド(またはタンパク質)である。ヒト癌抗原は、ヒトまたはヒト由来であり得る。がん抗原は、腫瘍特異的抗原であってもよく、これは健康な細胞には存在しない抗原を意味する。腫瘍特異的抗原は、一般的に突然変異、特に、健康なヒトプロテオームには見られない全く新しいアミノ酸配列を生成するフレームシフト突然変異に起因する。
【0088】
癌抗原には腫瘍関連抗原も含まれ、腫瘍関連抗原は、その発現または生産が腫瘍細胞に関連する(限定されるわけではない)抗原である。腫瘍関連抗原の例としては、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD99、CDl17、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グロス嚢胞性疾患液タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球によって認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-Dl、筋肉特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィジス(synaptophysis)、サイログロブリン、甲状腺転写因子1、ピルビン酸キナーゼアイソザイムタイプM2(腫瘍M2PK)の二量体形、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(上皮増殖因子変異体III)、精子タンパク質17(Spl7)、メソテリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞レセプターガンマ交互リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(前立腺1の六重膜上皮抗原)、異常なrasタンパク質、または異常なp53タンパク質などが含まれる。別の具体的な実施形態において、前記腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、インテグリンανβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2カーステンラット肉腫ウイルス性癌遺伝子)、またはRal-Bである。
【0089】
特定の実施形態において、免疫細胞は、下記から選択される表面タンパク質に対して向けられる:
CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3、CD3d、CD3e、CD3g、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8a、CD8b、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDwl2、CD13、CD14、CD15、CD15u、CD15s、CD15su、CD16、CD16b、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD45、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RO、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD60a、CD60b、CD60c、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD75s、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85a、CD85d、CD85j、CD85k、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD99R、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CD108、CD109、CD110、CD111、CD112、CD113、CD114、CD115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120a、CD120b、CD121a、CD121b、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CD129、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD136、CD137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CDw149、CD150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156a、CD156b、CD156c、CD157、CD158e、CD158i、CD158k、CD159a、CD159c、CD160、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166、CD167a、CD167b、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172a、CD172b、CD172g、CD173、CD174、CD175、CD175s、CD176、CD177、CD178、CD179a、CD179b、CD180、CD181、CD182、CD183、CD184、CD185、CD186、CD191、CD192、CD193、CD194、CD195、CD196、CD197、CDw198、CD199、CD200、CD201、CD202b、CD203c、CD204、CD205、CD206、CD207、CD208、CD209、CD210、CDw210b、CD212、CD213a1、CD213a2、CD215、CD217a、CD218a、CD218b、CD220、CD221、CD222、CD223、CD224、CD225、CD226、CD227、CD228、CD229、CD230、CD231、CD232、CD233、CD234、CD235a、CD235b、CD236、CD236R、CD238、CD239、CD240CE、CD240DCE、CD240D、CD241、CD242、CD243、CD244、CD245、CD246、CD247、CD248、CD249、CD252、CD253、CD254、CD256、CD266、CD267、CD268、CD269、CD270、CD271、CD272、CD273、CD274、CD275、CD276、CD277、CD278、CD279、CD280、CD281、CD282、CD283、CD284、CD286、CD289、CD290、CD292、CDw293、CD294、CD295、CD296、CD297、CD298、CD299、CD300a、CD300c、CD300e、CD301、CD302、CD303、CD304、CD305、CD306、CD307a、CD307b、CD307c、CD307d、CD307e、CD308、CD309、CD312、CD314、CD315、CD316、CD317、CD318、CD319、CD320、CD321、CD322、CD324、CD325、CD326、CD327、CD328、CD329、CD331、CD332、CD333、CD334、CD335、CD336、CD337、CD338、CD339、CD340、CD344、CD349、CD350、CD351、CD352、CD353、CD354、CD355、CD357、CD358、CD360、CD361、CD362、CD363、CD364、CD365、CD366、CD367、CD368、CD369、CD370、CD371、BCMA、免疫グロブリン軽鎖(ラムダまたはカッパ)、HLAタンパク質、およびβ2-ミクログロブリン。
【0090】
他の実施形態において、免疫エフェクター細胞は、感染に関連する抗原、例えば、細菌、ウイルス、寄生虫または真菌由来の抗原に対してリダイレクトされ得る。免疫細胞は、別法として、自己免疫疾患に関連する抗原、または臓器拒絶反応に関連する抗原、特にHLAクラスIおよびHLAクラスIIに対してリダイレクトされ得る。
【0091】
さらなる態様において、本発明はまた、1つ以上の薬学的または生理学的に許容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、上記のCNI耐性免疫細胞を含む薬学的組成物を提供する。特定の実施形態において、薬学的組成物はシクロスポリンA、FK506、CTLA-4 IgおよびCD28遮断剤などの上記のカルシニューリン阻害剤をさらに含むことができる。
【0092】
薬学的組成物は、投与経路に従って薬学的に許容可能なキャリア中に製剤化される。好ましくは、組成物は静脈内注入によって投与されるように製剤化される。このような投与に適した薬学的組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、溶質または懸濁剤もしくは増粘剤を含有し得る、使用直前に滅菌注射溶液または分散液に再構成され得る、1つ以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液(例えば、平衡塩溶液(BSS))、分散液、懸濁液もしくは乳濁液、または無菌粉末と組み合わせて、免疫細胞を含み得る。
【0093】
必要に応じて、免疫細胞を含む組成物は、細胞の保存に適切な任意の温度での保存のために凍結され得る。例えば、細胞は、約-20℃、-80℃または任意の他の適切な温度で凍結され得る。低温凍結細胞は、適切な容器に保存され、保存のために調製されて、細胞損傷の危険性を減少させ、細胞が解凍を生き延びる可能性を最大化し得る。もしくは、細胞はまた、例えば約4℃で冷蔵された室温で維持されてもよい。
【0094】
投与される免疫細胞の量は、当業者に周知の標準的な手順によって決定され得る。適切な用量を決定するために、患者の生理学的データ(例えば、年齢、サイズ、および重量)、ならびに処置される疾患の型および重篤度が考慮されなければならない。本発明の薬学的組成物は、単回用量または複数回用量として投与することができる。各々の単位投薬量は例えば、104~109細胞/kg体重、好ましくは105~106細胞/kg体重の投薬量を含み得る。
【0095】
薬学的組成物は、コルチコステロイド、抗生物質、鎮痛剤、免疫抑制剤、栄養因子、またはそれらの任意の組合せなどの、1つまたはいくつかの追加の活性化合物をさらに含むことができる。本発明に従って使用される免疫細胞の全ての実施形態もまた、この態様において企図される。
【0096】
本発明によれば、本発明によるCNI耐性免疫細胞は、カルシニューリン阻害剤治療を受けている対象における養子細胞移植治療に使用される。本発明による養子細胞移植療法は、癌、自己免疫疾患、感染症、造血幹細胞移植(HSCT)を必要とする疾患と診断された対象を治療、または臓器拒絶反応を予防するために使用することができる。
【0097】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」または「患者」は動物、好ましくはヒト、ブタ、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウシ、マウス、ウサギまたはラットを含む、免疫応答が誘発され得る哺乳動物を指す。より好ましくは、対象は成人、子供および出生前段階のヒトを含むヒトである。
【0098】
本明細書中で使用される場合、用語「処置(treatment)」、「処置する(treat)」または「処置している(treating)」は、疾患の治療、予防(prevention)、予防処置(prophylaxis)および遅延のような、患者の健康状態を改善することが意図される任意の行為を指す。特定の実施形態において、このような用語は、疾患または疾患に関連する症状の改善または根絶を指す。他の実施形態において、この用語は、このような疾患を有する対象への1つ以上の治療薬の投与から生じる、疾患の広がりまたは悪化を最小限にすることを指す。
【0099】
治療され得る癌には、血管新生されていない腫瘍、またはまだ実質的に血管新生されていない腫瘍、ならびに血管新生腫瘍が含まれる。癌は非固形腫瘍(例えば、再発を含む白血病およびリンパ腫、ならびに造血幹細胞移植(HSCT)後の二次性悪性腫瘍などの治療関連腫瘍などの血液腫瘍)を含み得るか、または固形腫瘍を含み得る。本発明の免疫細胞で処理される癌のタイプは、限定されるものではないが、癌腫、芽腫、および肉腫、およびある種の白血病またはリンパ系悪性腫瘍、良性および悪性腫瘍、ならびに悪性腫瘍、例えば肉腫、癌腫、および黒色腫を含む。成人の腫瘍/癌および小児の腫瘍/癌も含まれる。抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光線療法および放射線療法のグループから選択される、癌に対する1つ以上の療法と組み合わせた治療法であることができる。特に興味深いのは、免疫抑制患者に起こる移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)である。例えば、養子移植されたEBV特異的細胞傷害性Tリンパ球(EBV-CTL)は、固形臓器移植レシピエントにおけるEBV関連PTLSの治療に有効である。さらに、免疫抑制患者は一般に癌発生のリスクが高いため、他の新生物も同様に対象となる。
【0100】
本明細書で使用される用語「自己免疫疾患」は、自己免疫応答から生じる障害として定義される。自己免疫疾患は、自己抗原に対する不適切かつ過剰な応答の結果である。自己免疫疾患の例にはとりわけ、アジソン病、大脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫肝炎、自己免疫耳下腺炎、クローン病、糖尿病(Iタイプ)、栄養障害性表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン-バー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、血管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本開示による自己免疫疾患は、CNIおよびCTLA4-Igを含む免疫抑制薬で治療される自己免疫障害である。例えば、B細胞を含む自己反応性細胞の細胞療法ベースの枯渇は、免疫抑制薬と組み合わせてCAR-T細胞またはCAAR-T細胞を用いて達成することができ、同種HSCT後に生じ得る移植片対宿主病(GvHD)は例えば、Treg、CAR-Tregもしくは他の抑制性免疫細胞と免疫抑制との組み合わせで細胞性T細胞療法を用いて達成することができ、または病原性同種反応性T細胞枯渇は、免疫抑制と組み合わせてT細胞ベースの療法を用いて達成することができる。
【0101】
感染症は、細菌、ウイルス、寄生虫または真菌などの病原微生物によって引き起こされる疾患である。特定の実施形態において、本開示における感染は、免疫抑制患者、例えばHSCT後の患者または固形臓器移植を受けた患者において生じる。CNIまたはCTLA4-Igの使用または他の免疫抑制を必要とするあらゆる疾患は、時に重篤または致死的な感染症に罹患しやすくする。T細胞に基づく治療法は、例えばHSCT後のリンパ球減少症および好中球減少症患者に対する有望な治療法である。例えば、病原体特異的、例えばウイルス特異的T細胞を濃縮または設計し、患者に適用することができる。患者がCNIとCTLA4-Igを含む免疫抑制薬を同時に投与されている場合、抗病原体T細胞CNIを耐性にすることは特に重要である。
【0102】
炎症性疾患は、慢性炎症性疾患、自己免疫起源の慢性炎症性疾患、癌の場合の炎症誘発性および炎症状態からなる群から選択される。
【0103】
造血幹細胞移植(HSCT)は、先天性と後天性の両方の多くの病態の治療に用いられることがある。HSCTを必要とする後天性疾患には急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫(カーラー病)、神経芽腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、ユーイング肉腫、絨毛癌、骨髄異形成、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH;重症再生不良症)、再生不良性貧血、後天性赤芽球癆、真性赤血球増加症、多血球増加症、本態性血小板増加症、骨髄線維症、アミロイドーシス、アミロイドL鎖(AL)アミロイドーシス、放射線中毒、HTLV、HIVが含まれるが、これらに限定されない。HSCTを必要とする先天性疾患には、リピドーシス、ニューロン性セロイドリポフスチノーシス、新生児神経セロイドリポフスチン症、ヤンスキー-ビエルシュスキー病、スフィンゴリピドーシス、ニーマン-ピック病、ゴーシェ病、白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、異染性白質萎縮症、クラッベ病、ムコ多糖症、ハーラー症候群、シェイエ症候群、ハーラー-シェイエ症候群、ハンター症候群、イズロニダーゼ硫酸塩欠乏症、サンフィリポ症候群、モルキオ症候群、マロテオー-ラミー症候群、スリー症候群、グリコプロテイノーシス、ムコリピドーシスII、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、アルファ-マンノシドーシス、ウォルマン病、毛細血管拡張性運動失調症、ディジョージ症候群、重症複合免疫不全症(SCID)、ヴィスコット・オールドリッチ症候群、Kostmann症候群、シュワッハマン・ダイアモンド症候群、グリセリ症候群、II型、NF-カッパ-B必須モジュレーター(NEMO)欠損症、鎌状赤血球病、βサラセミアメジャー、再生不良性貧血、ダイアモンド-ブラックファン貧血、ファンコニ貧血、血球減少症、無巨核球性血小板減少症、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
「臓器拒絶反応」という用語は、移植された臓器または組織がレシピエントの身体によって受容されない状態を意味する。拒絶反応は、レシピエントの免疫系が移植された臓器や組織を攻撃することによって起こる。拒絶反応は、移植後数日から数週間(急性)、または移植後数カ月から数年(慢性)に起こりうる。例えば、Treg、CAR-Tregまたは他の抑制性免疫細胞を用いて、免疫抑制と組み合わせて臓器拒絶反応を予防または治療する細胞性T細胞療法は特に興味深い。同種固形臓器グラフトを受けている患者は、同じ同種ドナーからのHSCと同時に移植されれば、耐性にすることができる。しかし、この治療法はGvHDのリスクを負い、免疫抑制薬を伴う。
【0105】
別の実施形態において、本発明は、癌、自己免疫疾患、感染性疾患を処置するための、またはそれを必要とする対象における臓器拒絶反応の予防のための方法であって、miR-17~92クラスターもしくはそのパラログの調節活性が増加する、治療的に有効な量のCNI耐性免疫細胞、好ましくはmiR-17~92クラスターもしくはそのパラログの少なくとも1つのmiRNAを過剰発現するように設計されたCNI耐性免疫細胞、または本発明の薬学的組成物を、免疫抑制剤としてのカルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリンA、FK506(タクロリムスまたはCTLA4-Igとも呼ばれる)と組み合わせて(例えば、前に、同時に、または後に)投与することを含む、方法に関する。
【0106】
「治療的に有効な量」とは、上記で定義した治療を構成するのに十分な、対象に投与されるCNI耐性免疫細胞の量を意味する。
【0107】
特定の実施形態において、ACT治療において利用される免疫細胞は、CNIの存在下で予め培養されて、miR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性が増加するCNI耐性免疫細胞を選択する。CNIの存在下では、miR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性を有するCNI耐性免疫細胞のみが、好ましくはmiR-17~92クラスターもしくはそのパラログの少なくとも1つのmiRNAを過剰発現するように上記のように設計されるか、または少なくとも1つのmiR-1792クラスター標的遺伝子の発現を不活性化または抑制するように設計される。従って、本開示は、先に記載されるようなCNI耐性免疫細胞を調製する方法であって、i)miR-17~92クラスターもしくはそのパラログの標的遺伝子の少なくとも1つのmiRNAを過剰発現するように、または上記のような少なくとも1つのmiR-17~92クラスター標的遺伝子の発現を不活性化するように免疫細胞を設計する工程、ii)CNIの存在下で前記免疫細胞を培養する工程、iii)CNI耐性免疫細胞を選択する工程、を包含する方法に関する。
【0108】
任意に、CNI耐性は、選択の工程の後に、例えば、miR-17~92クラスターの少なくとも1つのmiRNAの発現を不活性化することによって、または少なくとも1つのmiR-1792クラスター標的遺伝子を発現することによって、除去され得る。この特定の場合において、細胞に付与されたCNI耐性は、好ましくはACT治療において利用される前に、ex vivoで正しく標的化された細胞を選択するためのレポーター遺伝子として使用される。
【0109】
別の特定の実施形態において、前記CNI耐性免疫細胞は、したがって、それを必要な対象におけるACT治療に利用することができる。したがって、特定の実施形態において、本開示は以下を含む、癌、自己免疫疾患、感染性疾患を処置するための、またはそれを必要とする対象における臓器拒絶反応の予防のための方法に関する:i)先に記載されるようにCNI耐性免疫細胞を調製する工程、およびii)治療的に有効な量のCNI耐性免疫細胞を、免疫抑制剤としてのカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンA、FK506(これはまた、タクロリムスまたはCTLA4-Igと呼ばれる)と組み合わせて(例えば、前に、同時に、または後に)投与する工程。
【0110】
本発明による免疫細胞または薬学的組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、移植または注入を含む任意の好都合な様式で実施され得る。本明細書に記載の組成物は、患者に皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、静脈内もしくはリンパ管内注射によって、または腹腔内投与することができる。別の実施形態において、本発明の免疫細胞または薬学的組成物は、好ましくは静脈内注射によって投与される。本発明の免疫細胞または薬学的組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射され得る。
【0111】
細胞または細胞の集団の投与は、体重kg当たり104-109細胞、好ましくは105から107細胞/体重kgであり、これらの範囲内の細胞数の全ての整数値を含む。細胞または細胞の集団は、1つまたは複数の用量で投与することができる。別の実施形態において、前記有効な量の細胞は、単回用量として投与される。別の実施形態において、前記有効な量の細胞はある期間にわたって1回より多い用量として投与される。投与のタイミングは管理医師の判断の範囲内であり、対象の臨床状態に依存する。細胞または細胞の集団は、血液バンクまたはドナーなどの任意の供給源から得ることができる。個々の必要性は変化するが、特定の疾患または状態についての所与の細胞型の有効な量の最適範囲の決定は当業者の技術範囲内である。有効な量は、治療的または予防的利益を提供する量を意味する。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康および体重、もしあれば同時治療の種類、治療の頻度ならびに所望の効果の性質に依存する。別の実施形態において、細胞またはそれらの細胞を含む組成物の前記有効な量は、非経口的に投与される。
【0112】
CNI耐性免疫細胞または薬学的組成物は、免疫抑制剤としてのカルシニューリン阻害剤、例えばタクロリムスまたはCTLA4-Igとも呼ばれるシクロスポリンAまたはFK506と組み合わせて(例えば、前、同時または後に)対象に投与される。
【0113】
本発明の特定の実施形態において、本発明によるCNI耐性免疫細胞はまた、免疫チェックポイント経路阻害剤、例えばPD-1阻害剤、PDL-1阻害剤またはCTLA-4阻害剤、好ましくはPD-1阻害剤、特に抗PD1抗体と組み合わせて(例えば、前、同時または後に)対象に投与され得る。
【0114】
以下の実施例は例示の目的で与えられるものであり、限定の目的で与えられるものではない。
【0115】
〔実施例〕
〔1.材料および方法〕
〔1.1 マウス〕
C57BL/6-Gt(ROSA)26Sortm3(CAG-MIR17-92,-EGFP)Rsky/J(miR1792Tg)(Xiao, C., et al., Nat Immunol, 2008. 9(4):405-14)およびMirc1tm1.1Tyj/J(miR1792lox)(Ventura, A., et al., Cell, 2008. 132(5):875-86)マウスを、B6.Cg-Tg(Cd4-cre)1Cwi/BfluJ(CD4cre)(Lee, P.P., et al. Immunity, 2001. 15(5):763-74)と交配させた。Creネガティブ同腹子をwtコントロールとした。B6.CD4cre.R26miR1792tg株を、レスキューモデルのためにCd28koマウス(Shahinian, A., et al. Science, 1993. 261(5121):609-12)とさらに交配させ、ここではcreネガティブ同腹子をCD28koとして使用した。雄マウスおよび雌マウスを、実験の開始日に5~6週齢で使用した。動物は、大学病院バーゼルの生物医学部の施設指針に従って、特別な病原体のない条件下で飼育した。
【0116】
〔1.2 臓器・血液分離〕
臓器はCO2安楽死後に採取し、処理中氷上に保管した。腸間膜リンパ節(LN)、鼠径部LN、腋窩LN、上腕LN、頸部LNおよび脾臓を大部分の実験のために採取した。脾臓に、処理前に赤血球溶解のために0.5mlのACK溶解緩衝液を注射した。器官を0.4μmフィルターでメッシュし、単細胞懸濁液を得、次いでこれをFACS緩衝液で洗浄した。ELISA用の血液は、安楽死させた直後に心臓穿刺で採取した。血液を室温で30分間ワックスチューブ中でインキュベートし、次いで10分間7000rpmで遠心分離して血清を分離した。次いで、血清を新鮮なチューブに移し、分析まで-20℃で凍結した。
【0117】
〔1.3 ナイーブCD4 T細胞単離〕
リンパ節および脾臓をプールした細胞懸濁液からナイーブCD4 T細胞を単離した。StemCellマウスナイーブCD4 T細胞単離キットを用いて、製造業者の説明書に従って単離を行った。次いで、得られた非接触ナイーブCD4 T細胞をFACS緩衝液で洗浄し、純度を、CD4、CD44についての染色および生存率で日常的にチェックした。
【0118】
〔1.4 細胞トレースバイオレット(CTV)による増殖アッセイ〕
新たに単離したナイーブCD4 T細胞をPBSで洗浄した。次いで、10×106細胞について、1mlのPBS当たり1μlのセルトレースストック溶液(製造業者の説明書に従ってDMSOに溶解した)を使用した。細胞を37℃で20分間インキュベートし、次いで、元の染色体積の5倍の正常T細胞培養培地を5分間添加して、残留色素を除去した。次いで、細胞を再び洗浄し、完全培養培地中にプレーティングした。
【0119】
〔1.5 プレート結合CD4 T細胞活性化〕
ほとんどの実験(低刺激(Baumjohann, D., et al. Nat Immunol, 2013. 14(8):840-8))のために、1mlのPBSあたり0.2μgのαCD28および0.5μgのαCD3でプレートを一晩コーティングした。プレートをPBSで洗浄した後、1ウェルあたり2×105細胞を、1mLあたり50U IL-2を含む200μl培地中の96ウェル平底に平板培養した。24ウェルプレートについては、培地1mL当たり2×106細胞をプレーティングした。
【0120】
〔1.6 in vitro分化〕
TH1分化条件を、50U IL-2、5ng/ml IL12および10μg/ml αIL4/ml T細胞培地を用いて生成した。TH2分化条件は、50U IL-2、50ng/ml IL4、5μg/ml αIFNγおよび10μg/ml αIL12/IL23で達成された。iTregは、レチノイン酸(0.9mM)の有無にかかわらず、常に250U IL-2、0.75ng/ml TGFβ、10μg/ml αIFNγおよび10μg/ml αIL4で分化した。TH17は、1mLあたり50ng/ml IL6、3ng/ml TGFβ、5μg/ml αIFNγおよび10μg/ml αIL4のT細胞培地を用いて生成した。分化のために、2×105のナイーブCD4 T細胞を、予めコーティングした96ウェル平底プレート(1mLあたり0.2μg aCD28、0.5μg aCD3のPBSで一晩コーティング)上にプレーティングし、プレーティングの24時間、48時間または72時間後に回収した。次に、T細胞サブセットを顕著なサイトカイン/転写因子の組み合わせ:TH1(Tbet/IFNγ)、TH17(Rorγt/IL17A)およびiTreg(FoxP3/CD25)について染色した。
【0121】
〔1.7 Seahorse〕
キャリブレーションプレートを200μlのキャリブラントで一晩コーティングした。細胞プレートを、18μlの0.1M NaHCO3 pH8.0 6.67% CellTak(Seahorse XF96 flux pack、Bucher Biotech、CH)でコーティングした。翌日、細胞プレートをH2Oで洗浄し、細胞調製中に乾燥させるために放置した。化合物を、オリゴマイシンについては1μM、FCCPについては2μM、およびロテノンについては11μMの最終インウェル濃度で調製した。無グルコースRPMI中で細胞を調製し、洗浄し、多数回カウントした後、無グルコースRPMI中でウェル当たり3×105細胞を平板培養した。ミトコンドリア摂動を、グルコース(80mMストック)、オリゴマイシン、FCCPおよびロテノンの連続注入によって行った。酸素消費速度(OCR、pMoles/分)および細胞外酸性化速度(ECAR;mpH/分)の測定を、Seahorse XF96フラックス分析器(Seahorse Bioscience、米国)を用いて行った。Prism(Version7.0d)を用いてデータ分析を行い、Gubserら(Gubser, P.M., et al. Nat Immunol, 2013. 14(10):p. 1064-72)に記載されているようにミトコンドリアパラメータを計算した。
【0122】
〔1.8 FACS染色〕
サイトカイン染色のために、細胞を染色前に、37℃で3時間、50ng/ml PMA、500ng/ml イオノマイシンおよび10μg/ml BFAで刺激した(LCMV実験におけるPMA/Ionoの代わりにGP-64、LCMV項を参照のこと)。次いで、細胞を、まず、4℃で20分間、PBS中のviability dye780で生存能力について染色し、次いで、PBSで洗浄した。非特異的結合は、10分間氷上でaCD16/aCD32 0.5mg/mlでブロックした。表面染色を、FACS緩衝液中、4℃で20~30分間行った。細胞固定は、Fix-Permを用いて4℃で少なくとも20分間行った(LCMV実験では1時間)。細胞内染色は、4℃で1時間、透過処理緩衝液中で行った。データはFortessaで入手し、FlowJo(version10.4.1)で分析した。
【0123】
〔1.9 qPCR用のRNA抽出〕
細胞をPBSで洗浄した後、計数し、RNAを氷上に保持した。次に、5×105細胞を400μlのTRI試薬に再懸濁した。次いで、RNA単離を、TRI試薬供給者(SIGMA)からの単離プロトコルに従って行った。簡単に述べると、TRI試薬1ml当たり0.1mlの1-ブロモ-3-クロロプロパンを添加し、サンプルを混合し、室温で15分間インキュベートし、次いで、相分離のために4℃で15分間12’000gで遠心分離した。次いで、水相を、使用したTRI試薬1ml当たり0.5mlのイソプロパノールと混合し、再びRNA沈殿のために10分間遠心分離した。次いで、RNAを75%エタノールで洗浄し、最後にRNAseを含まない水に再懸濁した。その後、RNA濃度および純度をNanodropで測定した。
【0124】
〔1.10 RNA配列決定のためのRNA抽出、プロテオミクスのためのタンパク質抽出および消化〕
抽出のための全ての手順は、設備の専門家の材料、プロトコルおよび監督によって設備で実施した。配列決定のためのRNAを、DNAse処置を含むZymo Direct-zolキットを用いてTrizolサンプルから抽出した。Bioanalyzerを用いて品質管理を行った。タンパク質を抽出し、Lys-Cおよびトリプシンによる質量分析のために消化した。
【0125】
〔1.11 逆転写および定量PCR〕
Rcan3 qPCRについては、1μg RNAについてSIGMA MMLVキットを用いてcDNAを生成した。qPCRは、Rcan3を観察する実験の参考として18Sを用いて行った。qPCRは、Applied Biosystems(登録商標) Real-Time PCRシステム上でTaqMan FAST Universal PCRマスターミックスを用いて行った。
【0126】
〔1.12 2-NBDGによるグルコース取込み染色〕
2×105のナイーブCD4 T細胞を培地で洗浄し、次いで、50μMの2-NBDGを加えた培地と共に37℃で30分間インキュベートした。次いで、元の染色量の5倍の標準T細胞培養培地を5分間添加して、残留色素を除去した。次いで、細胞を再び洗浄し、FACS分析の前に生存率および表面マーカーについて染色した。
【0127】
〔1.13 ELISA法〕
IL-2 ELISAは、BioLegend ELISA MAXマウスIL-2セットを用いて、製造業者の説明書に従って行った。
【0128】
〔1.14 LCMV-Armstrong実験〕
マウスに2×105 PFU LCMV-Armstrong株を腹腔内感染させた。ウイルスは、Recher Laboratoryによって提供された。感染の8日後、動物をCO2で安楽死させ、脾臓を回収した。脾細胞の再刺激を、ポリクローナル50ng/mlのPMA、500ng/mlのイオノマイシンで刺激との比較として、LCMV特異的ペプチド1μg/mlのGP-64を用いて平底96ウェルプレート中で1時間行った後、10μg/mlのブレフェルジンAを染色前にさらに3時間添加した。
【0129】
〔1.15 シクロスポリンA滴定〕
カルシニューリン阻害剤、シクロスポリンAまたはFK506の増加量を培養物に添加した:2×105細胞を、予めコーティングした96ウェルプレート中の100μlの完全T細胞培地にプレーティングした。次いで、カルシニューリン阻害剤の連続希釈物100μlを添加して、異なる濃度のインウェルを得た。次いで、細胞を、これらのカルシニューリン阻害剤濃度の存在下で48時間活性化し、その後、採取し、そして生存率および活性化マーカーについて染色した。
【0130】
〔1.16 Imagestream〕
ナイーブCD4 T細胞を単離し、上述の通りに48時間活性化した。次に、それらを採取し、PBSで洗浄した後、4℃で20分間固定した。NFATc2の細胞内染色は、透過処理緩衝液中のaNFATc2を用いて室温(RT)で最初の1時間、続いて透過処理緩衝液中のヤギ抗マウスIgG1を用いて室温(RT)で1時間の、二工程染色で行った。核を、インキュベーションの最後の5分間にDAPIで染色した。取得をImageStreamX Mark2画像フローサイトメーターで行い、データ分析をIDEASソフトウェアで行った。
【0131】
〔2.結果〕
〔2.1 miR-17~92はCD4 T細胞の活性化および増殖の下流イベントに影響する〕
CD28共刺激は、例えば、サイトカイン産生(Sanchez-Lockhart, M., et al. J Immunol, 2004. 173(12):7120-4)、増殖(Levine, B.L., et al. 1997. 159(12):5921-30)、胚中心形成(Wang, C.J., et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2015. 112(2):524-9.)および解糖スイッチ(Frauwirth, K.A., et al. Immunity, 2002. 16(6):769-77)を含むCD4 T細胞機能に重要である。また、miR-17~92発現も誘導し(de Kouchkovsky, D., et al. 2013. 191(4):1594-605)、同様のプロセスに影響を及ぼすことが報告されている(Baumjohann, D., et al. Nat Immunol, 2013. 14(8):840-8 ;Xiao, C., et al. Nat Immunol, 2008. 9(4):405-14)。
【0132】
miR-17~92を欠いたか過剰表現するCD4 T細胞が活性化にどのように反応するかを直接比較するために、本発明者らは以前に公表されたマウスモデルCD4cre.miR1792lox(miR1792lox)およびCD4cre.R26miR1792tg(miR1792tg)(Xiao, C., et al. Nat Immunol, 2008. 9(4):405-14 ;Ventura, A., et al. Cell, 2008. 132(5):875-86 ;Lee, P.P., et al. Immunity, 2001. 15(5):763-74)を利用し、CD4creネガティブ同腹子をwtコントロールとして用いた。脾臓、末梢および腸間膜リンパ節由来のナイーブCD4 T細胞を単離し、その後の活性化に用いた。
【0133】
PMA/イオノマイシン/BFAで3時間活性化すると、本発明者らは、トランスジェニックmiR-17~92発現を伴うIL-2産生の~1.7倍の増加(
図1A)、およびmiR1792lox細胞における染色の減少を見出した。これは、48時間活性化されたT細胞の培養上清でELISAによって測定されたIL-2分泌においても真であり(
図1B)、miR1792lox細胞は、wt細胞によって分泌されたIL-2の半分だけを分泌した。増殖能力はクラスター発現に比例し(
図1C)、これは以前の報告(Baumjohann, D., et al. Nat Immunol, 2013. 14(8):840-8)と一致する。
【0134】
ナイーブ細胞の代謝活性は遺伝子型間で類似していた(
図2A)。一方、miR1792loxマウスからの活性化CD4 T細胞は、それらの代謝においてわずかに減少した活性を持っていた(
図2C、D)。加えて、本発明者らはメタボロミクスによって細胞のメタボロームを分析した結果、miR1792tg細胞における特定の代謝産物の発生量がわずかに増加していることがわかった(データは示していない)が、具体的な経路は明らかにされていない。本発明者らはさらに、代謝経路の発現に関連する遺伝子についてのRNA配列決定データを調査し、wtと比較してmiR1792tg細胞におけるTCAおよび電子伝達鎖に関与する遺伝子のわずかに高い発現を検出した(
図2E)。本発明者らはこのデータから、マイクロRNAクラスターmiR-17~92はT細胞活性化において重要なプロセスに影響を及ぼし、miR-17~92発現の増加は「より活性化された」細胞表現型をもたらし、その結果、より活性な代謝表現型にも至ると結論付けた。
【0135】
〔2.2 トランスジェニックmiR-17~92の発現はin vitroでCD28欠損をレスキューする〕
miR-17~92の発現を枯渇させると、CD28シグナル伝達の低下と同様の表現型が得られることから、本発明者らは、miR-17~92のトランスジェニック発現がCD28ko細胞の表現型を部分的にレスキューできるのではないかという仮説を立てた。それらはCD4cre.R26miR1792tgをCD28koマウス(Shahinian, A., et al. Science, 1993. 261(5121):609-12)と後輩し、CD4cre.R26miR1792tg.CD28koマウス(レスキュー)を得て、および以前と同様の単離ナイーブCD4 T細胞を得た。CD28ko CD4 T細胞は、3時間のPMA/イオノマイシン刺激で、wt細胞で見られたIL-2量の半分を産生したが、レスキュー細胞はwtより約2.5倍多く産生した(
図3A)。次に、本発明者らは、CD28共刺激の有無にかかわらず、aCD3による48時間のin vitro活性化後のCD4 T細胞の挙動を調査した。増殖能はαCD28共刺激なしでは活性化で低下したが、トランスジェニックmiR-17~92発現によりレスキューされた(
図3B)。FSC-A(
図3C)として示される芽細胞のサイズは、CD28シグナルの欠失により減少したが、トランスジェニックmiR-17~92発現によりレスキューされた。αCD28共刺激の有無にかかわらず、48時間の活性化(
図3D)後、すべての遺伝子型は類似のCD69
+CD25
+集団を発達させた。
【0136】
しかし、CD25のMFIはCD28シグナルに依存し、トランスジェニックmiR-17~92発現によりレスキューされた。これとは対照的に、TCRシグナル伝達に依存することが知られているCD69発現(Testi, R., J.H. Phillips, and L.L. Lanier. J Immunol, 1989, 142(6):1854-60.)は、全ての条件の間で無関係であった。また、後期活性化マーカーCD44(
図3E)について、本発明者らは、CD28またはmiR-17~92シグナルに対する強い依存性を観察した。
【0137】
miR-17~92クラスターは、TH1(Wu, T., et al. J Immunol, 2015. 195(6):2515-9 ;Jiang, S., et al. Blood, 2011. 118(20):5487-97)、TH2(Simpson, L.J., et al. Nat Immunol, 2014. 15(12):1162-70)、TH17(Liu, S.Q., et al. J Biol Chem, 2014. 289(18):12446-56)およびTregsの分化に影響を及ぼすことが報告されている。したがって、本発明者らはCD28koおよびレスキュー細胞を用いて分化アッセイを実施し、TH1、TH17およびiTregスキューイングを調べた(
図4)。Tbet(Tbx21)誘導はCD28ko細胞では遅延したが、miR-17~92発現でレスキューされ、IFNγ産生はトランスジェニックmiR-17~92発現でさらに過剰に補償された(
図4A)。CD28ko細胞におけるRorγt誘導およびIL17a生産の低下は部分的にレスキューされた(
図4B)。iTreg誘導は、wtレベルにレスキューされた全ての時点において、CD28koサンプル中のFoxP3+CD25+集団の減少した集団をもたらした(
図4C)。全体として、試験したT細胞サブセットはCD28koにより影響され、トランスジェニックmiR-17~92発現によりある程度レスキューされた。しかし、レスキューのタイミングと範囲はサブセット間で異なり、これは相対的寄与も可変であることを主張する。
【0138】
まとめると、これらのデータは、CD28ko細胞におけるCD4 T細胞活性化の既知の欠陥がin vitroでのトランスジェニックmiR-17~92の発現によってレスキューされ得ることを示している。さらに、in vitro分化アッセイで観察されたレスキュー効果は、分化決定経路の上流の機構を示唆した。
【0139】
〔2.3 トランスジェニックmiR-17~92発現はin vivoでCD28欠損をレスキューする〕
胚中心(GC)およびTH1応答の生成をin vivoで調べるために、本発明者らは、レスキューマウスモデルをLCMV Armstrongで感染させ、感染後8日目に脾臓を分析した。In vitroデータと一致して、本発明者らはCD28ko CD4 T細胞におけるCD44発現の減少を観察し、これは、トランスジェニックmiR-17~92発現によってレスキューされた(
図5A)。主要なマーカーであるBcl6、ICOS(
図5B)、CXCR5およびPD-1(
図5C)で染色したTFHは、CD28マウスにおいて5倍減少した集団を示し、これはトランスジェニックmiR-17~92によってレスキューされた。miR1792loxとCD28koとの比較(
図6)は、同じ表現型を示している。CD28共刺激シグナルが欠損している場合には存在しないことが知られている、GL-7
+Fas
+胚中心(GC)B細胞(Wang, C.J., et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 2015. 112(2):524-9)を、トランスジェニックmiR-17~92発現でレスキューした(
図5D)。GP-64で再刺激すると(Oxenius, A., et al. Eur J Immunol, 1995. 25(12):3402-11;Wolint, P., et al. J Exp Med, 2004. 199(7):925-36)、Tbet(Tbx21)発現はCD28ko細胞では2倍減少したが、レスキュー細胞では有意に増加しなかった。しかし、IFNγ産生はCD28koで5倍減少し、トランスジェニックmiR-17~92発現により完全に回復した。総Tbet発現細胞に対するIFNγ産生細胞の比率はすべての遺伝子型の間で中立であり、これは転写因子では阻害されるが、サイトカイン産生レベルでは阻害されないことを主張している(
図5E-G)。
【0140】
まとめると、in vivoトランスジェニックmiR-17~92発現もCD28ko細胞をレスキューする。導入遺伝子のホモ接合性発現はTFHおよびGCならびにTH1形成をレスキューし、ヘテロ接合性発現はまた、TFHおよびGC B細胞のレスキューには十分であったが、TH1形成には十分ではなかった(
図6)。
【0141】
〔2.4 miR-17~92によるCD28機能の回復は細胞固有のものである〕
CD28の主な機能はT細胞に関するものであるが、本発明者らはmiR-17~92-仲介レスキュー効果が細胞固有のものであるか否かを正式に試験しようと試みた。本発明者らは、LCMVに特異的なMHCクラスII制限CD4
+ TCR遺伝子導入マウス(SMARTA、Vα2
+Vβ8.3
+)を、wt、CD28
-/-およびレスキューマウスに交雑させた。本発明者らはCD28
-/-宿主マウスに(AT)ナイーブCD4
+ T細胞を養子移植し、続いて急性LCMV感染を行った。感染8日後、本発明者らは脾臓、腸間膜および末梢リンパ節(LN)を単離した。3つの臓器すべてにおいて、Vα2
+Vβ8.3
+ CD28
-/-細胞の頻度および絶対数は、Vα2
+Vβ8.3
+ CD28
wt/wt細胞と比較して強く減少した。対照的に、miR-17~92導入遺伝子は、Vα2
+Vβ8.3
+ CD28
-/- T細胞の相対数および絶対数を回復した(
図7A、CおよびD))。さらに、Vα2
+Vβ8.3
+ T細胞のうち、少数のCD28
-/細胞はwt細胞よりもCD44をアップレギュレーションしたが、これはレスキュー細胞において完全に回復した欠損である(
図7B、EおよびF)。したがって、これらのデータは、トランスジェニックmiR-17~92細胞が本質的にCD28欠損を置換することを明らかに示している。まとめると、本発明者らは、非コードRNA miR-17~92が共刺激機能を媒介し得ると結論付けている。
【0142】
〔2.5 miR-17~92の低発現または過剰発現はT細胞の活性化に重要な転写変化を誘導する〕
本発明者らは、T細胞活性化のプロセスに対するmiR-17~92発現の強い効果を観察したため、これらの現象を説明し得るこのmiRNAクラスターの標的遺伝子に興味を持った。これまでのところ、例えばPTENまたはRorαのような既知の標的遺伝子のいずれも、報告された表現型を完全に説明することができなかった。miR1792lox、wtおよびmiR1792tgマウス由来のナイーブCD4 T細胞を24時間または48時間で活性化し、その後、配列決定のために全RNAを分離した。
【0143】
主成分解析(PCA)は、3つのすべての遺伝子型からのナイーブT細胞のトランスクリプトームが、特にwtおよびT
1792Δ/Δ遺伝子型について非常に類似していることを明らかにした(
図8A)。T細胞活性化は遺伝子発現の大きな変化を誘導し(PC1、説明された分散の56.7%、およびPC2、説明された分散の14%)、また遺伝子型を活性化後24時間で分離し、48時間でさらに明確にした(
図8A)(PC1およびPC3、説明された分散の7.2%)。miRNAはしばしば、個々の遺伝子を穏やかにしか抑制しないので(Bartel, D. P. et al. Cell, 2018. 173(1):20-51)、本発明者らは最も極端な遺伝子型、すなわち、T
1792Δ/ΔをT
1792tg/tgと比較して、それぞれの時点で、遺伝子発現差異解析の能力を増大させた。1%の偽発見率(FDR)で、差異的発現遺伝子(DEG)の数は経時的に増加した(0時間で830遺伝子がアップレギュレート(増加)および789遺伝子がダウンレギュレート(減少)し、24時間で2,493増加および2,370減少し、48時間で3,173増加および3,242減少した)。活性化24時間後のDEGの教師なし階層クラスタリングは、遺伝子クラスターの微妙なパターンを明らかにした(
図8B)。PCAから予想されるように(
図8A)、ナイーブT細胞では遺伝子型を越えた遺伝子発現は非常に類似しており、活性化後に発現の差の大きさが増加した(
図8B)。それらの発現プロファイルに従って、本発明者らは遺伝子の4つの異なったグループを定義した(
図8B):クラスターI遺伝子は経時的に誘導され、wtと比較してT
1792tg/tgで増強されたが、T
1792Δ/Δで減少または遅延した。クラスターII遺伝子は経時的に減少し、miR-17~92はその抑制を支持した。全クラスターIII遺伝子発現は活性化後に増加したが、1時点あたりの発現は遺伝子型と逆相関した(T
1792Δ/Δ>T
1792tg/tg)。このように、miR-17~92は、時間とともに誘発されるにもかかわらず、このグループの遺伝子の最初の、あるいは最後の最大発現を制限した。最後に、遺伝子型と最も明らかな逆相関を示す遺伝子をクラスターIVaおよびIVbに分類した。要約すると、クラスターIは間接的に調節された遺伝子を表している可能性が最も高く、クラスターIVaおよびIVbは直接的なmiR-17~92標的遺伝子の大部分を含む可能性が最も高い。
【0144】
異なるクラスターの遺伝子調節様式を分析するために、本発明者らは、転写調節と転写後調節とを識別することを目的とするエキソン-イントロン分割分析(EISA)アプローチを用いた。この方法は、成熟したmRNAおよびmRNA前駆体のイントロンおよびエキソンの読み数の違いに依存している。RNA-seq実験において、これらの変化は転写速度変化の良好な予測因子である(Gaidatzis D. L. et al. Nat Biotechnol, 2015. 33(7):722-9)。さらに、本発明者らはTargetscan(「TS」)データベース(Agarwal V. et al. Elife, 2015.33(7):722-9)からのmiR-17~92クラスターの各シードファミリーについての標的遺伝子コンピューター予測を用いた。Targetscanは、miRNAシードファミリーに対応する進化的に保存された8mer、7mer、および6merの同定を可能にした。さらに、本発明者らは、架橋免疫沈降によって単離されたRNAのArgonaute2ハイスループット配列決定(「AHC」)(Gagnon J. D. et al. Cell Rep, 2019,28(8):2169-2181)によって定義される、生化学的に検出されたT細胞における直接的なmiRNA/mRNA相互作用のデータセットを用い、miR-17~92クラスターシードファミリーのそれぞれについてのTSシードマッチの読み取り範囲をそれぞれの遺伝子において定量化した。転写調節(「DE.イントロン」)および転写後調節(「TS」、「AHC」)のこれらの予測因子は、ヒートマップ上で注釈され(
図8B)、その発現が経時的に増加し、miR-17~92遺伝子型と正に相関する遺伝子を明らかにした。それらは転写調節のために濃縮され、少数のTS部位またはAHC読み取りを示した(
図8B、ボックスI)。このように、クラスターIは主に遺伝子転写の増加により誘導され、miR-17~92はこの転写活性を促進した。対照的に、クラスターIVaおよびIVb由来の遺伝子(
図8B、ボックスIVa、IVb)は、24時間および48時間で、miR-17~92投与量(T
1792Δ/Δ>wt>T
1792tg/tg)と逆相関する、遺伝子型にわたる発現レベルの一貫した同一直線上の減少を示した。重要なことに、これらのクラスターには転写調節遺伝子はほとんど含まれていなかったが、TS部位については濃縮されており(p値=0.001037;フィッシャー検定)、実験的にAHC読み取り値を決定した(p値=0.003598;フィッシャー検定)(
図8B)。このように、これらのクラスターは主に転写後に調節され、経験的に検証された直接miR-17~92標的遺伝子について濃縮された。要約すると、miR-17~92はT細胞活性化後に機能的に関連するようになり、複雑な方法でトランスクリプトームを形成した。本発明者らは、miR-17~92が間接的に遺伝子誘導を促進し、遺伝子サイレンシングを間接的に、および誘導された遺伝子の直接的な抑制または減衰発現を介して支持し得ると結論した。
【0145】
miR-17~92クラスターの直接標的候補は、より多くのクラスターが発現され、miR-17~92クラスターの少なくとも1つの部材に対する結合部位を有するほど、ダウンレギュレートされるべきである。目的の遺伝子のリストをさらに絞り込むために、本発明者らは、データをAgo-HITSCLIP RNA配列決定からのデータセットと比較した。この方法では、塩基配列決定の時点で3’UTRがArgonauteに結合している遺伝子が明らかになり、RISC複合体による分解の標的となる遺伝子が見つかる。この比較により、Targetscanによって予測されるように、それらの3’UTRにおいてシードマッチを有する遺伝子が、本発明者らのデータセットにおいて、またHITS-CLIPデータセットにおいてダウンレギュレートされることが確認された。
【0146】
本発明者らは、RNA配列決定に基づく遺伝子セットエンリッチメント分析において、上位25の有意に変化した遺伝子セットにおけるサイトカイン発現と関連する遺伝子セットのエンリッチメントに注目した(表4参照)。
【0147】
【0148】
TH2およびTH17サイトカイン発現だけでなく、TH1もmiR1792tg細胞において増加した(
図8C)。これは、これらすべてのサブセットの差別化に関連するマスターレギュレーター経路を主張したものである。
【0149】
どの分子経路がmiR-17~92によって調節されたかを同定するために、本発明者らは、T
1792tg/tgとT
1792Δ/Δとの間で差異的に発現される遺伝子について濃縮された、キュレートされた遺伝子セットを分析した。24時間で、統計的有意性が最も高く、平均倍率変化が最も大きかった遺伝子セットは、サイトカイン、炎症およびT細胞分化に関連していた。次に、本発明者らはDoRothEAレギュロン(Garcia-Alonso L. et al. Genome Res. 2019. 29(8):1363-1375)についてエンリッチメント分析を行い、調節された経路を説明することができる転写因子(TF)活性を同定した。24時間で、最も高い倍率変化を有する5つの最も有意に濃縮されたTFレギュロンは、2つのNFATメンバー(NFATC2、NFATC3)ならびにRELA、NF-κB1およびGATA3を含んでいた(
図8C)。NFAT TFはT細胞の活性化および分化に重要であるが、miR-17~92はT細胞におけるNFAT活性を促進することは知られていないので、本発明者らはカルシニューリン/NFAT軸に焦点を当てた。レギュロンNFATC2およびNFATC3に属する遺伝子には、T細胞系列を規定するTF、サイトカインおよびサイトカインレセプターが多く含まれ、そのほとんどはmiR-17~92により高度に調節されていた(Fig.8D)。このことから、miR-17~92がT細胞活性化の中央レギュレーターを構成していることが確認され、トランスジェニックmiR-17~92は標準的な経路を介して作用し、in vivoでTFHとTh1の分化のためにCD28を機能的に代替できることが示唆される(Fig.5)。
【0150】
メカニズム解明を深めるために、本発明者らは直接的なmiR-17~92標的遺伝子を分析しようと試みた。以前の観察(
図8A、B)に基づいて、本発明者らは、ナイーブT細胞と、間接的効果がこの時点の後に増加した可能性が高いため24時間後の時点とに焦点を当てた。個々のmiR-17~92クラスターmiRNAがその標的遺伝子に及ぼす影響を可視化するために、本発明者らはTSによって予測される遺伝子の発現を比較し、各miRNAシードファミリーについてのAHC>5読み取りを、そのファミリーについてシードマッチを持たない全ての遺伝子と比較した。miR-17シードファミリーによって示されているように、miR-17~92導入遺伝子はナイーブT細胞のmiR-17標的遺伝子を抑制したが(
図8E、左図)、miR-17~92の欠如はmiR-17標的遺伝子の発現に影響を及ぼさなかった(
図8E、右図)。対照的に、T細胞活性化後、miR-17標的遺伝子は、T
1792tg/tg T細胞において抑制され(
図8F、左側パネル)、T
1792Δ/Δ T細胞において抑制が解除された(
図8F、右側パネル)。同様の効果はmiR-18シードファミリーでは少なかったが、全てのシードファミリーで観察された。最後に、本発明者らは遺伝子が以下の基準を満たす場合、遺伝子を経験的に検証されたmiR-17~92標的として定義した:i)T
1792Δ/Δ対wtにおける有意な抑制の解除、および24時間でのT
1792tg/tg対wtにおける有意な抑制、ii)予想されるTSマッチ、iii)>5 AHC読み取り、ならびにiv)EISAに基づく転写後調節。miR-17~92から得られた4つのシードファミリーにわたってこれらの基準を適用することにより、経験的に裏付けられた直接的なmiR-17~92標的遺伝子のセットが定義された(表1)。これらの遺伝子は、T細胞において検証されたPhlpp2(Kang S. G. et al. Nat Immunol. 2013. 14(8):849-57)およびB細胞において検証されたCyldのような、以前に記載されたmiR-17~92標的を含み、解析の妥当性が確認されている(Jin H.Y. et al. EMBO J. 2013. 32(17):2377-91)。さらに、この手法により、T細胞のmiR-17~92標的として、あまり研究されていない多くの遺伝子が同定された。注目すべきことに、これらの遺伝子のいくつかは負のレギュレーターであり、いくつかは様々な細胞型において既知または示唆されている腫瘍抑制因子である。
【0151】
要約すると、本発明者らは、T細胞におけるmiR-17~92標的遺伝子のセットを厳密に定義した。miR-17~92はナイーブT細胞の標的遺伝子を抑制しなかったが、トランスジェニックmiR-17~92は抑制した。しかし、この抑制はナイーブT細胞のトランスクリプトーム全体には実質的に影響しなかった。対照的に、T細胞活性化後、miR-17~92は直接的に標的遺伝子を抑制し、主要なT細胞シグナル伝達経路を増強する重要な結果をもたらした。このように、miR-17~92-仲介遺伝子による抑制は、T細胞の活性化の際にT細胞のトランスクリプトームを形作るのに非常に強力である。そのカルシニューリン/NFAT増強活性は、トランスジェニックmiR-17~92によるCD28-/- T細胞の表現型レスキューに寄与するだろう。
【0152】
〔2.6 miR-17~92標的はCD28ko細胞でアップレギュレートされ、トランスジェニックmiR-17~92発現によりwtレベルまで抑制される〕
本発明者の仮説に従い、本発明者らはCD28ko、wt、レスキュー、miR1792tgおよびmiR1792loxマウス由来のナイーブおよび24時間活性化CD4 T細胞からRNAを単離し、CD28ko細胞における遺伝子シグネチャーがmiR-17~92のトランスジェニック発現によってレスキューされるかどうかを調べた。バイアスなしPCA分析は、PC1上の時点を分離した。遺伝子発現はナイーブサンプルで重複しており、PC2は遺伝子型で活性化サンプルを分割し、CD28koサンプルは他のサンプルと最も異なっていた。レスキュー細胞は他のサンプルにより類似しており、miR1792tgサンプルは、CD28koサンプルと最も異なっていた(
図9A)。このことはCD28koとwtサンプルの間で異なる遺伝子発現の部分のみが、強制miR-17~92発現によってレスキューできることを主張している。次いで、本発明者らは、遺伝子の異なるサブセットを見てデータセットを分析した:異なるコントラストにおける全てのlog2の倍率変化に対するlog2(倍率変化)の比を比較した。彼らはさらに、miR17(または表示されていないmiR-17~92の他のメンバー、データは示さない)の結合サイトを持つ彼らのデータセットの遺伝子のセットを明灰色で表示し、この遺伝子セットが比較対象miR1792lox対wtで右にシフトされていることを確認した(
図9B)。これは、miR-17の結合サイトを有するすべての遺伝子の合計が、クラスターを表現しない細胞において実際に増加していることを示す。同じ遺伝子のセットは、miR1792tg対wtの比較において、より低い発現であるように左にシフトされる(データは示さない)。さらに、彼らは、miR1792loxで表現が増加し、miR1792tgで減少し、targetscanに従ってmiR-17の結合サイトを含み、エクソンレベルでのみ変化するが、イントロンレベルでは変化しない、遺伝子のサブセットに注目した。miR1792lox対wtにおけるmiR17結合部位をもつ遺伝子の遺伝子発現が増大する方向へのシフト(データは示さない)と同様に、CD28ko対wtにおいても遺伝子発現が高い発現にシフトした(
図9C)。このことは、miR-17~92によって調節された遺伝子はCD28によっても調節されていることを示唆している。このシフトは、レスキュー細胞におけるmiR-17~92発現のトランスジェニック発現で完全に消失した(
図9B)。このことは、CD28ko細胞で見られるいくつかの調節不全がmiR-17~92の欠損によって説明され得、したがって、それらの発現はトランスジェニックmiR-17~92発現によって調節され得ることを示している。これはmiR-17を標的とした遺伝子について真であったが、miR-17~92クラスターの他のメンバーについても同様であった(データは示さない)。
【0153】
〔2.7 Rcan3 3’UTRはmiR-17によって標的化され、発現レベルはCD28またはmiR-17~92の発現に依存する〕
2番目のRNA配列データセットは、wtと比較して、CD28ko細胞におけるRcan3 RNAの~0.5倍の増加を示したが、これはmiR1792lox対wt細胞に類似している。これはレスキュー細胞中ではwtレベルまで低下した。Rcan3のタンパク質発現は、wtと比較してCD28koおよびmiR1792lox細胞で2倍に増加し、これはレスキュー細胞におけるトランスジェニックmiR-17~92発現によってwtまで低下した。しかしながら、miR1792tg細胞のRNA発現レベルがwt細胞に比べて低下したとしても、タンパク質レベルは実際には大きな変化はなかった。このことは、wt細胞で到達した内因性miR-17~92発現レベルが活性化中のRcan3の調節に十分である可能性を示唆する。
【0154】
〔2.8 シクロスポリンAに対する感受性はCD28の影響を受け、トランスジェニックmiR-17~92発現によりレスキューされる〕
以前の項で述べたように、データは、全てのTヘルパーサブセットがmiR-17~92またはCD28シグナル伝達の喪失によって影響され、異なるサブセットにおいても同様にレスキュー効果があることを示した。この表現型を説明できる1つの経路は、カルシニューリン-NFAT軸である。従って、本発明者らは、この経路を負に調節し得、それによってNFAT経路の発現が減少した場合、NFAT経路のシグナル伝達を増加させる候補について、潜在的な標的遺伝子のリスト(表1)をマイニングした。このための1つの候補はカルシニューリン3のレギュレーター(Rcan3)であり、これは、カルシニューリンと相互作用し、これを阻害することが報告されている(Mulero, M.C., et al. Biochim Biophys Acta, 2007. 1773(3):330-41)。
【0155】
HITSCLIPのデータから、Rcan3の3’UTRのmiR-17結合部位は、配列決定の時に実際にArgonauteに結合していることが示され(
図10A)、これが真の標的遺伝子である可能性が高まった。Rcan3 mRNA発現は、miR1792lox細胞ではwtと比較して増加し(
図10B)、miR1792tg細胞では減少した。また、タンパク質発現も、CD28koおよびmiR1792lox細胞ではwtより高くなり、レスキュー細胞ではRcan3タンパク質発現が低かった。さらに、Rcan3の3’UTRは、保存されたmiR-17-5p 8mer結合部位(chr4:135416232-135416240)を含み、AHCはこの場所で単一の分離したピークを確認し、一次T細胞におけるRcan3 3’UTRとmiR-17-5pとの直接相互作用の証拠である(
図10AおよびLoeb. G.B. et al. Molecular Cell. 2012 and Gagnon J.D. et al. Cell Rep. 2019. 28(8):2169-2181)。
【0156】
次いで、本発明者らは、Rcan3発現の増加が、カルシニューリン阻害剤であるシルコスポリンA(CsA)に対する細胞の感受性を増加させ得、したがって、増加する濃度のCsAの存在下で細胞を活性化させたと仮定した。
図3に示されるように、全てのサンプルはCD25
+CD69
+発現の同様のパーセンテージから開始したが、CD28ko細胞は増加するCsA濃度に対してより感受的に反応し(
図10D)、一方、レスキュー細胞はさらにより耐性であった。これは、FSC-A(
図10E)として示される細胞サイズを見る場合にも当てはまった。通常、カルシニューリンはT細胞活性化の際にNFATを脱リン酸化し、その後にのみNFATが核に移行して重要な転写プログラムを開始できる。カルシニューリンの阻害により、この移行は減少する。本発明者らは、これをimagestream技術を用いて
図10Fに示す。彼らは低用量シクロスポリン(6.25ng/ml、9日目においてCD28koは反応するが、wtまたはレスキュー細胞は反応しないことが示された)の存在下で細胞を活性化し、NFATの転座を調べた。CD28koサンプルのみが、より低い類似性拡張を有する細胞の集団を示し(
図10G)、これは転座がより少ないことを示す。
【0157】
〔2.9 野生型細胞におけるカルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリンA、FK506)に対する感受性は、miR-17~92のトランスジェニック発現、またはmiR-17~92標的遺伝子、例えばRcan3の欠失によって低下させることができる〕
CD28ko細胞のシクロスポリンAに対する高い感受性はmiR-17~92のトランスジェニック発現により回復したことから、本発明者らは、miR-17~92のトランスジェニック発現は一般的にCD28十分な細胞においてもこの免疫抑制剤に対する耐性を増加させ得ると仮定した。したがって、彼らは、シクロスポリンA(
図11A、C)およびFK506(
図11B、D)のようなカルシニューリン抑制剤の増加する濃度の存在下で、野生型からのCD4+ T細胞およびCD8+ならびにmiR1792tg細胞を活性化し、正常な共刺激を有する細胞CD4+およびCD8+ T細胞において本当にトランスジェニックmiR-17~92発現が、シクロスポリンAおよびFK506に対する抵抗性の増加をもたらすことを見出した(
図11)。
【0158】
以前のデータは、CD28共刺激がmiR17-5pを巻き込んでRcan3を抑制することを示唆しているため、本発明者らは、Rcan3発現の抑制または排除が、miR-17~92発現を変化させずにも、T細胞におけるカルシニューリン阻害剤に対する抵抗性を増大させうるという仮説を立てた。CD4 T細胞を、コントロールgRNAまたはRcan3を標的とする2つの異なるgRNA(GAGAAATACGAACTGCACGC;crRNA1119、配列番号47およびGATGGTCTTCGGTGAAAATG、crRNA1558、配列番号48)でエレクトロポレーションした。細胞をin vitroで休止させ、次いで種々のCsA濃度の存在下で再活性化した。予想通り、CD44のアップレギュレーション(T細胞活性化のマーカー)は、野生型細胞においてより高いCsA濃度で阻害された。対照的に、CRISPR/Cas9を介した欠失またはRcan3は、Rcan3 KO細胞をCsA耐性にした(
図12)。このように、miR-17~92標的遺伝子を欠失させると、miR-17~92を過剰発現させた場合と同じ治療効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【
図1】miR-17~92欠損はCD28欠損を表現型模写する。
【
図2-1】(A~B)miR-17~92の発現は活性化CD4 T細胞における代謝を改変する。
【
図2-2】(C~D)miR-17~92の発現は活性化CD4 T細胞における代謝を改変する。
【
図2-3】(E)miR-17~92の発現は活性化CD4 T細胞における代謝を改変する。
【
図3-1】(A~B)トランスジェニックmiR-17~92の発現は、in vitroでCD28欠損T細胞の共刺激を回復させる。
【
図3-2】(C~D)トランスジェニックmiR-17~92の発現は、in vitroでCD28欠損T細胞の共刺激を回復させる。
【
図3-3】(E)トランスジェニックmiR-17~92の発現は、in vitroでCD28欠損T細胞の共刺激を回復させる。
【
図4】トランスジェニックmiR-17~92発現は、in vitro分化中のCD28シグナルを部分的に補うことができる。
【
図5-1】(A~C)トランスジェニックmiR-17~92発現は、in vivoでCD28欠損細胞の共刺激を回復させる。
【
図5-2】(D~G)トランスジェニックmiR-17~92発現は、in vivoでCD28欠損細胞の共刺激を回復させる。
【
図6-1】(A~C)miR-17~92発現の消失は、LCMV感染時にin vivoでCD28欠損を表現型模写し、miR-17~92のヘテロ接合体発現はCD28koを部分的にレスキューできる。
【
図6-2】(D~G)miR-17~92発現の消失は、LCMV感染時にin vivoでCD28欠損を表現型模写し、miR-17~92のヘテロ接合体発現はCD28koを部分的にレスキューできる。
【
図7-1】(A~B)miR-17~92によるCD28機能の回復は細胞内在である。
【
図7-2】(C~F)miR-17~92によるCD28機能の回復は細胞内在である。
【
図8-1】(A)miR-17~92はT細胞活性化後にトランスクリプトームを形作り、NFAT依存遺伝子発現を促進する。
【
図8-2】(B)miR-17~92はT細胞活性化後にトランスクリプトームを形作り、NFAT依存遺伝子発現を促進する。
【
図8-3】(C~D)miR-17~92はT細胞活性化後にトランスクリプトームを形作り、NFAT依存遺伝子発現を促進する。
【
図8-4】(E~F)miR-17~92はT細胞活性化後にトランスクリプトームを形作り、NFAT依存遺伝子発現を促進する。
【
図9】miR-17~92の発現はCD28ko細胞のトランスクリプトームを部分的にレスキューする。
【
図10-1】(A~C)Rcan3発現およびシクロスポリンA感度はmiR-17~92およびCD28発現により改変される。
【
図10-2】(D~G)Rcan3発現およびシクロスポリンA感度はmiR-17~92およびCD28発現により改変される。
【
図11】wt CD4+およびCD8+ T細胞におけるトランスジェニックmiR-17~92の発現は、カルシニューリン阻害剤(CsAおよびFK506)に対するより高い耐性を細胞に与える。
【
図12】miR-17~92の標的遺伝子であるCRISPR/Cas9を介したRcan3欠失は、CsAに対する耐性を付与する。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養子細胞移植療法を必要とする対象の養子細胞移植療法において使用さ
れる組成物であって、
前記組成物はカルシニューリン阻害剤(CNI)耐性免疫細胞
を含むものであり、
前記免疫細胞のmiR-17~92クラスターまたはそのパラログの調節活性
は増加しており、
前記免疫細胞は、前記対象にCNIと組み合わせて投与される、
組成物。
【請求項2】
前記免疫細胞は、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20a、miR-19b-1およびmiR-92a-1、miR106a、miR-18b、miR-19b-2、miR-20b、miR-92a-2、miR-363、miR-106b、miR-93、miR-25からなる群より選択される少なくとも1つのmiRN
Aを過剰発現するように設計されている、
請求項1に記載の使用のための
組成物。
【請求項3】
前記免疫細胞は、前記免疫細胞に対して、配列番号17~46からなる群より選択される少なくとも1つのmiRNA配列を含む核酸構築物を導入することによって、設計されている、
請求項2に記載の使用のための
組成物。
【請求項4】
前記核酸構築物は、配列番号1~16からなる群より選択される少なくとも1つのpre-miRNA配列を含む、
請求項
3に記載の使用のための
組成物。
【請求項5】
前記核酸構築物は、エレクトロポレーションによって、前記免疫細胞に対して導入されている、
請求項3または4に記載の使用のための
組成物。
【請求項6】
前記免疫細胞は、少なくとも1つのmiR-1792クラスター標的遺伝
子の発現を不活性化するように設計されている、
請求項1に記載の使用のための
組成物。
【請求項7】
前記免疫細胞は、前記免疫細胞に対して、Rcan3遺伝子を標的とすることができるCas9/CRISPR複合体を導入するように設計されている、
請求項6に記載の使用のための
組成物。
【請求項8】
前記カルシニューリン阻害剤は、シクロスポリンA、FK506およびCTLA-4Igからなる群より選択される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための
組成物。
【請求項9】
前記免疫細胞は、T細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球、NK細胞、マクロファージおよび制御性T細胞からなる群より選択される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための
組成物。
【請求項10】
前記免疫細胞は、前記対象またはドナー由来である、
請求項9に記載の使用のための
組成物。
【請求項11】
前記免疫細胞は、組み換え抗原レセプタ
ーをさらに発現する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための
組成物。
【請求項12】
前記養子細胞移植療法は、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染性疾患、造血幹細胞移植(HSCT)を必要とする疾患の治療、または、臓器拒絶反
応の予防のために使用される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための
組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に
定義されるCNI耐性免疫細胞と、
カルシニューリン阻害剤と、
薬学的に許容可能なキャリアと、
を含む薬学的組成物。
【請求項14】
それを必要とする対象の養子細胞移植療法における使用のための、
請求項13に記載の薬学的組成物。
【国際調査報告】