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  • 特表-ハリケーン耐性遮音グレージング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】ハリケーン耐性遮音グレージング
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220316BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220316BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20220316BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220316BHJP
   E06B 5/20 20060101ALI20220316BHJP
   E06B 5/12 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C03C27/12 F
C03C27/12 D
C03C27/12 Z
B32B27/32 101
B32B7/022
B32B17/10
E06B5/20
E06B5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545396
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020016537
(87)【国際公開番号】W WO2020163296
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/800,646
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ エル. スミス
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ジェイ. ベニソン
【テーマコード(参考)】
2E239
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
2E239BB07
4F100AG00E
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK24A
4F100AK24B
4F100AK24C
4F100AK24J
4F100AK70A
4F100AK70B
4F100AK70C
4F100AL07A
4F100AL07B
4F100AL07C
4F100BA03
4F100EC032
4F100EH202
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100GB07
4F100GB31
4F100JD10
4F100JH01B
4F100JK04
4F100JK10
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4G061AA03
4G061AA11
4G061AA20
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA29
4G061DA30
(57)【要約】
本明細書では、アイオノマーおよび音響減衰組成物を含む多層ポリマー中間層、ならびにこれらから作製されたガラス積層体が提供され、これによって、ハリケーン耐性、音響減衰特性、および任意選択的に日射遮蔽性能の改善された組み合わせが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの層を含む多層ポリマー中間層であって、前記中間層が、層A/層B/層Cの構造を有し、
(1) 層Aが、第1のアイオノマー樹脂組成物の層であり、
(2) 層Cが、第2のアイオノマー樹脂組成物の層であり、
(3) 層Bが、層Aと層Cとの間の音響減衰層である、
多層ポリマー中間層において、
(i) 層Bが、1つ以上の層を含み、そのうちの少なくとも1つが、音響減衰樹脂組成物の層であり、
(ii) 層Aおよび層Cの厚さがそれぞれ、個別に0.5mm~2.5mmであり、
(iii) 層Bの厚さが、0.01mm~4mmであり、かつ
(iv) 多層ポリマー中間層の厚さが、2mm~5mmである
ことを特徴とする、多層ポリマー中間層。
【請求項2】
層Bが、少なくとも3つの層を含み、前記少なくとも3つの層が、同じであっても異なっていてもよいアイオノマー樹脂組成物を含む少なくとも2つの層に挟まれた音響減衰樹脂組成物を含む少なくとも1つの層を含む、請求項1記載の多層ポリマー中間層。
【請求項3】
層Bが、層B1/層B2/層B3の三層構造であり、層B1および層B3が、それぞれ、第3のアイオノマー樹脂組成物および第4のアイオノマー樹脂組成物を含み、層B2が、音響減衰樹脂組成物を含む、請求項2記載の多層ポリマー中間層。
【請求項4】
層B2の厚さが、0.01mm以上0.5mm以下であり、かつ/または層B1および層B3の厚さが、それぞれ個別に、0.25mm~1.0mmであり、かつ/または層B1+層B2+層B3の合計厚さが、0.5mm以上2mm以下である、請求項3記載の多層ポリマー中間層。
【請求項5】
前記第3のアイオノマー樹脂組成物および前記第4のアイオノマー樹脂組成物が、それぞれ個別に、以下:
(A)
(i) エチレンと、
(ii) 10質量%~30質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
が共重合した単位から実質的になるジポリマーであって、
前記共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、前記共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%である、
ジポリマー、および
(B)
(i) エチレンと、
(ii) 10質量%~30質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
(iii) 2質量%~15質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸エステルと、
(iv) 任意選択的に、(iii)+(iv)が15質量%以下となるような量の、(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸誘導体と、
が共重合した単位から実質的になるターポリマーであって、
前記共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、前記共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%である、
ターポリマー、
から選択される部分的に中和されたエチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーであるアイオノマー樹脂を含む、請求項3または4記載の多層ポリマー中間層。
【請求項6】
前記第1のアイオノマー樹脂組成物および前記第2のアイオノマー樹脂組成物が、それぞれ個別に、以下:
(A)
(i) エチレンと、
(ii) 10質量%~30質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
が共重合した単位から実質的になるジポリマーであって、
前記共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、前記共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%であり、α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成している、
ジポリマー、および
(B)
(i) エチレンと、
(ii) 10質量%~30質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
(iii) 2質量%~15質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸エステルと、
(iv) 任意選択的に、(iii)+(iv)が15質量%以下となるような量の、(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体と、
が共重合した単位から実質的になるターポリマーであって、
前記共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、前記共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%である、
ターポリマー、
から選択される部分的に中和されたエチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーであるアイオノマー樹脂を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項7】
前記第1のアイオノマー樹脂組成物および前記第2のアイオノマー樹脂組成物が同じであるか;または前記第3のアイオノマー樹脂組成物および前記第4のアイオノマー樹脂組成物が同じであるか;または前記第1のアイオノマー樹脂組成物、前記第2のアイオノマー樹脂組成物、前記第3のアイオノマー樹脂組成物、および前記第4のアイオノマー樹脂組成物が同じである、請求項5または6記載の多層ポリマー中間層。
【請求項8】
前記音響減衰樹脂組成物の層が、1,000Hzおよび20℃で、ASTM D4065-12 - Shear Geometryによって測定して、10MPa~100MPaの弾性率および1.0~2.0のタンジェント・デルタ(tanδ)(減衰)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項9】
前記音響減衰樹脂が熱可塑性エラストマーである、請求項1から8までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマーが、
(i) 芳香族ビニルポリマーブロック(a)であって、前記芳香族ビニルポリマーブロックを基準として60mol%以上の芳香族ビニルモノマー単位を含む、芳香族ビニルポリマーブロック(a)と、
(ii) 脂肪族不飽和ポリマーブロック(b)であって、前記脂肪族不飽和ポリマーブロックを基準として60mol%以上の共役ジエンモノマー単位を含む、脂肪族不飽和ポリマーブロック(b)と
を有するブロックコポリマーの水素化生成物であり、
前記脂肪族不飽和ポリマーブロック(b)が、合計50モル%以上のイソプレン単位およびブタジエン単位を前記共役ジエンモノマー単位として含み、かつ
共役ジエンモノマー単位に由来する前記脂肪族不飽和ポリマーブロックの残留炭素-炭素二重結合の量が2~40mol%である
、請求項11記載の多層ポリマー中間層。
【請求項11】
前記音響減衰樹脂組成物が、tanδの異なるピーク温度をそれぞれ有する2つ以上の熱可塑性エラストマー樹脂を含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項12】
前記音響減衰樹脂組成物が、可塑剤を実質的に含まない、請求項1から11までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項13】
1つ以上の赤外線および/またはUV吸収材料をさらに含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項14】
前記多層ポリマー中間層の厚さが、2mm~4mm、または2mm~3mm、または2mm~2.3mmである、請求項1から13までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項15】
可塑剤を実質的に含まない、請求項1から14までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項16】
ASTM E90-2016に従って測定して少なくとも40の少なくとも音響透過クラス(STC)の防音性能を呈し、かつASTM E1996-2017に従って測定される大型飛翔体衝撃および圧力サイクルハリケーン耐性試験に合格する、ガラス積層体。
【請求項17】
ASTM E90-2016に従って測定およびASTM E413-10に従って分析して少なくとも40の音響透過クラス(STC)を呈し、かつASTM E1996-2017に従って測定して6.22kPaのピーク圧力でハリケーン耐性試験の正圧セクションに合格する、請求項17記載のガラス積層体。
【請求項18】
STCが55までである、請求項17または18記載のガラス積層体。
【請求項19】
請求項1から15までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層を含む、請求項17から19までのいずれか1項記載のガラス積層体。
【請求項20】
総厚が8mm~25mmである、請求項16から20までのいずれか1項記載のガラス積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、多層中間層、およびそのような中間層を含むガラス積層体に関する。より具体的には、本発明は、少なくとも1つのアイオノマー層、少なくとも1つの遮音中間層を含み、任意選択的に日射遮熱特性を有する多層中間層に関し、そのような中間層を含むガラス積層体は、音響減衰および関連する防音特性、曲げ強度、曲げ剛性および光学特性、ならびに任意選択的に日射遮熱特性の望ましい組み合わせを有し、これによって、風で運ばれる破片およびハリケーンの強風からの保護が可能になる。
【背景技術】
【0002】
積層ガラスは、多くの場合、建築および輸送関連の最終用途のための窓ガラスなどに使用される。これは、通常、2枚のガラスをポリマー中間層に積層することによって作製される。単板ガラスシートに対する積層ガラスの1つの特定の利点は、中間層材料が衝撃時にガラスの破片を保持するため、耐衝撃性および飛散抵抗が改善されることである。さらに、中間層は、比較的厚いガラスシートと比較して、積層体の音響減衰および防音性能も改善することができる。
【0003】
多くの異なる材料がポリマー中間層として使用されてきた。例えば、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール)と可塑剤とを含有するシートが、ガラス接着性に優れていることから、積層ガラス用の中間層として広く利用されている。これらの積層体はまた、良好な透明性、機械的強度および柔軟性、ならびに飛散抵抗を伴って作製され得る。
【0004】
さらに、少なくとも部分的に中和されたエチレンと酸のコポリマー(一般に「アイオノマー」および「アイオノプラスト」と呼ばれる)もまた、例えば、米国特許第3404134号明細書、米国特許第3344014号明細書、米国特許第7297407号明細書、米国特許第7445683号明細書、米国特許第7763360号明細書、米国特許第7951865号明細書、米国特許第7960017号明細書、米国特許第8399097号明細書、米国特許第8399098号明細書、米国特許出願公開第2015/0158986号明細書、米国特許出願公開第2016/0167348号明細書、国際公開第2016/076336号、国際公開第2016/076337号、国際公開第2016/076338号、国際公開第2016/076339号、国際公開第2016/076340号、米国特許出願公開第2017/0320297号明細書、および米国特許出願公開第20190030863号明細書に開示されているように、積層安全ガラスを調製するための中間層として使用されてきた。
【0005】
アイオノマーベースの中間層は、ハリケーン耐性グレージングにおいて優れた性能を呈することが示されている。アイオノマー中間層を用いて作製されたガラス積層体は、風で運ばれる破片による損傷を効果的に軽減し、ハリケーンに伴う高速の風に耐えることができる(例えば、米国特許第7951865号明細書を参照)。アイオノマーベースの中間層の重要な物理的特性は、積層体に良好な強度を付与する高い剛性、および風で運ばれる破片によってガラスが破壊された後の風荷重に対する優れた耐久性である。しかしながら、ポリマーの剛性が高いと、より柔軟なポリマー中間層と比較して、音響減衰および防音性能が低下する。当然のことながら、より柔軟なポリマーは、ハリケーングレージングのアイオノマーと同じレベルでは機能しないため、良好なハリケーン耐性および高い防音性能を可能にする中間層製品を開発する必要がある。
【0006】
改善された遮音特性を有する特定のアイオノマーベースの多層中間層は、一般に、文献(例えば、先に援用された米国特許第7297407号明細書、米国特許出願公開第2015/0158986号明細書、米国特許出願公開第2016/0167348号明細書、米国特許出願公開第2017/0320297号明細書、米国特許出願公開第2018/0117883号明細書、国際公開第2016/076336号、国際公開第2016/076337号、国際公開第2016/076338号、国際公開第2016/076339号、および国際公開第2016/076340号を参照)に開示されているが、例示されている中間層は、ハリケーン耐性積層ガラスにおける使用に適するほど十分な特性の組み合わせを有してはいない。
【0007】
さらに、ハリケーン耐性グレージングは、通常、高温および強い日射を呈する気候帯で使用される。したがって、建物内部の熱負荷を減らすためには、グレージングを透過する赤外線日射量を減らす追加の機能をポリマー中間層に提供することが有益である。
【0008】
ハリケーンの強風からの改善された耐衝撃性および飛散抵抗、改善された遮音特性、ならびに任意選択的に太陽熱抵抗を呈する、アイオノマーおよび熱可塑性エラストマーを含む多層中間層シートを有するガラス積層体を作製することができることが、この度見出された。
発明の概要
【0009】
本発明は、2枚のガラス板の間に積層される場合に、遮音性、曲げ強度、剛性および光学的特性、ならびに任意選択的に遮熱特性の望ましい組み合わせを有するガラス積層体を提供する多層ポリマー中間層を提供し、これによって、風で運ばれる破片およびハリケーンの強風からの保護が可能になる。
【0010】
第1の実施形態によると、本発明は、少なくとも3つの層を含む多層ポリマー中間層であって、該中間層が、層A/層B/層Cの構造を有し、
(1) 層Aが、第1のアイオノマー樹脂組成物の層であり、
(2) 層Cが、第2のアイオノマー樹脂組成物の層であり、
(3) 層Bが、層Aと層Cとの間の音響減衰層であり、
ここで、
(i) 層Bが、1つ以上の層を含み、そのうちの少なくとも1つが、音響減衰樹脂組成物の層であり、
(ii) 層AおよびCの厚さがそれぞれ、個別に約0.5mm~約2.5mmであり、
(iii) 層Bの厚さが、約0.01mm~約4.0mmであり、かつ
(iv) 多層ポリマー中間層の厚さが、約2mm~約5mmである、
多層ポリマー中間層を提供する。
【0011】
第2の実施形態では、層Bは、層B1/層B2/層B3の三層構造であり、層B1およびB3は、それぞれ、第3のアイオノマー樹脂組成物および第4のアイオノマー樹脂組成物を含み、層B2は、音響減衰樹脂組成物を含む。
【0012】
一実施形態では、中間層は、実質的に3次元の長方形(非くさび形)である。
【0013】
別の実施形態では、第1のアイオノマー樹脂組成物、第2のアイオノマー樹脂組成物、第3のアイオノマー樹脂組成物、および第4のアイオノマー樹脂組成物はそれぞれ、個別に、互いに同じであっても異なっていてもよいか;または第1のアイオノマー樹脂組成物および第2のアイオノマー樹脂組成物は同じであるか;または第3のアイオノマー樹脂組成物および第4のアイオノマー樹脂組成物は同じであるか;または第1のアイオノマー樹脂組成物、第2のアイオノマー樹脂組成物、第3のアイオノマー樹脂組成物、および第4のアイオノマー樹脂組成物は同じである。
【0014】
別の実施形態では、音響減衰樹脂組成物および/もしくは層Bは、可塑剤を実質的に含まないか、もしくは可塑剤を含まず;かつ/または層B(単層として)および/もしくは層B2は、エチレン-酢酸ビニル樹脂組成物および熱可塑性エラストマー樹脂組成物からなる群から選択されるか、もしくは熱可塑性エラストマー樹脂組成物である。
【0015】
ポリマー中間層がガラス積層体に使用される場合、本発明は、以下でさらに詳細に説明されるように、ASTM E90-2016に従って測定して少なくとも40の少なくとも音響透過クラス(STC)の防音性能を呈し、かつASTM E1996-2017に従って測定される大型飛翔体衝撃および圧力サイクルハリケーン耐性試験に合格する、ガラス積層体を提供する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、以下でさらに詳細に説明されるように、ASTM E90-2016に従って測定およびASTM E413-10に従って分析して少なくとも40の音響透過クラス(STC)を呈し、かつASTM E1996-2017に従って測定して6.22kPaのピーク圧力でハリケーン耐性試験の正圧セクションに合格する、ガラス積層体を提供する。
【0017】
任意選択的に、赤外線および/またはUV吸収材料を多層中間層の1つ以上の層に含めることができる。
【0018】
したがって、本発明による積層体は、例えばハリケーン耐性遮音グレージングのような、様々な高衝撃の最終用途における使用に適した、遮音性、曲げ強度、剛性および光学的特性、ならびに望ましくは日射遮熱特性の望ましい組み合わせを提供する。
【0019】
本発明のこれらおよび他の実施形態、特徴、および利点は、以下の詳細な説明を読むことによって当業者により容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態を表す図である。ガラス-中間層積層体(10)は、ポリマー層が間にあるガラス(100)の複数の層を含む。層A(200)および層C(400)は、「硬質」材料(例えば、第1のアイオノマー樹脂組成物および第2のアイオノマー樹脂組成物)を含む。層B(300)は、音響減衰材料(例えば、音響減衰樹脂組成物)を含む。
図2】本発明の第2の実施形態を表す図である。ガラス-中間層積層体(20)は、ポリマー層が間にあるガラス(100)の複数の層を含む。層A(200)および層C(400)は、「硬質」材料(例えば、第1のアイオノマー樹脂組成物および第2のアイオノマー樹脂組成物)を含む。層B1(325)および層B3(375)もまた、「硬質」材料(例えば、第3のアイオノマー樹脂組成物および第4のアイオノマー樹脂組成物)を含み、層B2(375)は、音響減衰材料(例えば、音響減衰樹脂組成物)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、多層中間層、そのような多層中間層を含むガラス積層体、およびそのようなガラス積層体の様々な最終用途に関する。さらなる詳細を以下に記載する。
【0022】
以下の定義は、特定の事例において特に制限されていない限り、本明細書全体にわたって使用される用語に適用される。
【0023】
本明細書の文脈において、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、他に示されていない限り、完全に記載されているかのように、あらゆる目的のためにその全体が参照によって本明細書に明示的に援用される。
【0024】
特に定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合、定義を含め、この明細書が優先される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「を含む(comprises、comprising、includes、including、containing)」、「を特徴とする」、「を有する(has、having)」、またはそれらの任意の他の変化形は、非排他的包含を含むことを意図している。例えば、列挙された要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されるわけではなく、明示的には列挙されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含み得る。
【0026】
「からなる」という移行句は、請求項に指定されていないあらゆる要素、ステップ、または成分を除外し、通常関連する不純物を除いて、列挙されているもの以外の材料を包含しないよう請求項を限定する。「からなる」という句が、プレアンブルの直後ではなく、請求項のボディの句に現れる場合、これは、その句に記載されている要素のみを制限し、他の要素は、請求項全体から除外されない。
【0027】
「から実質的になる」という移行句は、請求項の範囲を、特定の材料またはステップ、および特許請求される発明の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。「から実質的になる」の請求項は、「からなる」の形式で記載されたクローズドクレームと「を含む」の形式で書かれた完全にオープンなクレームの中間的な位置を占める。本明細書で定義される任意選択的な添加剤(そのような添加剤に適した程度で)、および少量の不純物は、「から実質的になる」という用語によっては組成物から除外されない。
【0028】
組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセスもしくは構造の一部が、本明細書において、「含む」のようなオープンエンドの用語を使用して説明される場合、特に明記しない限り、この説明はまた、組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセスもしくは構造の一部の要素「から実質的になる」または「からなる」実施形態も含む。
【0029】
「実質的に含まない」または「実質的に追加なし」という用語は、組成物および成分に関して本明細書で使用される場合、当該成分を偶発的な量含むにすぎない組成物を指す。別の言い方をするなら、組成物は、追加量の成分を含まず、組成物が製造される原材料に一般に存在する量のみを含む。いくつかの市販の材料では、偶発的な成分のレベルは、市販の材料の質量を基準として、約0.5質量%未満または約0.1質量%未満である。
【0030】
冠詞「1つの(a、an)」は、本明細書に記載されている組成物、プロセス、または構造の様々な要素および成分に関連して使用され得る。これは単に便宜的なものにすぎず、組成物、プロセス、または構造の一般的な意味を与えるためのものである。そのような記載は、当該要素または成分の「1つまたは少なくとも1つ」を含む。さらに、本明細書で使用される場合、単数形の冠詞はまた、特定の文脈から複数が除外されることが明らかでない限り、複数の要素または成分の説明も含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、包括的であり、すなわち、句「AまたはB」は、「A、B、またはAとBの両方」を意味する。より具体的には、条件「AまたはB」は、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真(または存在する)かつBが偽(または存在しない)であるか、Aが偽(または存在しない)かつBが真(または存在する)であるか、またはAとBの両方が真(または存在する)である。排他的な「または」は、本明細書では、例えば「AまたはBのいずれか」および「AまたはBのうちの1つ」のような用語によって指定される。
【0032】
「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、ならびに他の量および特徴が正確ではなく、また正確である必要がなく、必要に応じて、許容誤差、変換率、四捨五入、測定誤差など、および当業者に知られている他の要素を反映して、近似値であっても、かつ/またはそれより大きくても、もしくはそれより小さくてもよいことを意味する。通常、量、サイズ、配合、パラメータ、または他の量もしくは特徴は、そうであると明示的に述べられているかどうかにかかわらず、「約」または「およそ」である。
【0033】
「欠乏した」または「減少した」という用語は、元々存在していたものから減少したことと同義である。例えば、流れから材料の大部分を除去すると、その材料が実質的に欠乏した材料欠乏流が生成されることになる。逆に、「富化された」または「増加した」という用語は、元々存在していたよりも多いことと同義である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2つ以上のコモノマーの共重合から得られる共重合した単位を含むポリマーを指す。これに関連して、コポリマーは、例えば「エチレンと15質量%のアクリル酸とを含むコポリマー」との記載、または同様の記載により、その構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量に関連して本明細書に記載され得る。そのような記載は、コモノマーを共重合後の単位として言及していないという点で;コポリマーの従来の命名法、例えば国際純正・応用化学連合(IUPAC)の命名法を含んでいないという点で;プロダクト・バイ・プロセスの用語を使用しないという点で;または別の理由で、非公式であると見なされる場合がある。しかしながら、本明細書で使用される場合、その構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量に関するコポリマーの記載は、コポリマーが特定のコモノマーの共重合した単位を(特定されている場合は当該特定量で)を含むことを意味する。必然的に、コポリマーは、限定的な状況でそのように明示的に述べられていない限り、所与のコモノマーを所与の量で含む反応混合物の生成物ではないということになる。
【0035】
「ジポリマー」という用語は、2つのモノマーから実質的になるポリマーを指し、「ターポリマー」という用語は、少なくとも3つのモノマーを含むポリマーを指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「酸のコポリマー」という用語は、α-オレフィン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、および任意選択的にα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステルのような他の適切なコモノマーの共重合した単位を含むコポリマーを指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」という用語は、単独で、または「(メタ)アクリレート」のような組み合わされた形態で、例えば「アクリル酸もしくはメタクリル酸」または「アルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレート」のような、アクリルまたはメタクリルを指す。
【0038】
本明細書で使用される場合「アイオノマー」という用語は、カルボン酸塩、例えば、カルボン酸アンモニウム、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、遷移金属カルボン酸塩、および/またはそのようなカルボン酸塩の組み合わせであるイオン性基を含むポリマーを指す。そのようなポリマーは、通常、例えば塩基との反応によって、本明細書で定義される酸のコポリマーである前駆体または親ポリマーのカルボン酸基を部分的または完全に中和することによって製造される。本明細書で使用されるアルカリ金属アイオノマーの例は、ナトリウムアイオノマー、例えば共重合されたメタクリル酸単位のカルボン酸基の全てまたは一部がカルボン酸ナトリウムの形態にあるエチレンとメタクリル酸とのコポリマーである。本明細書で使用される混合金属アイオノマーの例は、亜鉛/ナトリウムアイオノマー(または亜鉛/ナトリウム中和混合アイオノマー)、例えば共重合されたメタクリル酸単位のカルボン酸基の全てまたは一部がカルボン酸亜鉛およびカルボン酸ナトリウムの形態にあるエチレンとメタクリル酸とのコポリマーである。アイオノマーはまた、文献ではアイオノプラストと呼ばれることもある。
【0039】
さらに、本明細書に記載されている範囲は、特に明記しない限り、それらの端点を含む。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、範囲、1つ以上の好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値の列挙として与えられている場合、これは、そのような対が個別に開示されているかどうかにかかわらず、任意の範囲上限または好ましい値と任意の範囲下限または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解すべきである。本発明の範囲は、範囲を定義する際に列挙される具体的な値に限定されることはない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「エチレン酢酸ビニル」という用語は、約4質量%~約70質量%が酢酸ビニルであり、残りが、エチレンおよび任意選択的に少量の1つ以上の他のコモノマーである、コポリマーを指す。これは、熱可塑性エチレン酢酸ビニルコポリマーとも呼ばれる。
【0041】
「膜」および「シート」という用語は、互換的であり、決まった業界標準はないが、それぞれそれらの厚さに関して定義され得る。本明細書で時々使用されるように、「膜」という用語は、約10ミル(0.25mm)以下の厚さを有する構造を指し得て、「シート」という用語は、約10ミル(0.25mm)超の厚さを有する構造を指し得る。他の意味(厚さ)が、特定の実施形態の文脈で与えられ得る。
【0042】
「実質的に3次元の長方形の形状」という用語は、関連技術の当業者によって理解されている(例えば、米国特許出願公開第2018/0117883号明細書を参照)ような「くさび」を意味しておらず、すなわち、この場合、一般に全てのエッジが実質的に直角である。関連技術の当業者によって理解されるように、いかなる差異も、通常は従来の製造公差内である。
【0043】
材料、方法、または機械が、本明細書において、「当技術分野の技術者に知られている」、「従来の」、または同義の語もしくは句を用いて記載されている場合、この用語は、本願を出願した時点で従来的である材料、方法、および機械がこの明細書に包含されることを意味する。また、現在は従来的ではないが、同様の目的に適していると当技術分野で認識されるようになるであろう材料、方法、および機械も包含される。
【0044】
特に明記しない限り、全てのパーセンテージ、部、比、および同様の量は、質量基準で定義される。
【0045】
本明細書に記載されているものと類似または等価の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を本明細書に記載する。したがって、本明細書の材料、方法、および例は、単なる例にすぎず、具体的に述べられている場合を除き、限定することを意図するものではない。
【0046】
層A/層B/層Cの構造を有する少なくとも3つの層を含むポリマー中間層であって、層AおよびCが、比較的「硬質な」特性および「良好な」靭性を呈するポリマーを含み、層Bが、「良好な」遮音特性を呈するポリマーを含む、ポリマー中間層が、本明細書で提供される。本明細書で使用する場合、「硬質な」特性という用語は、ISO-527によって測定される少なくとも100MPaのヤング率を意味する。本明細書で使用される場合、「良好な」靭性という用語は、(ISO-527によって測定される)a)少なくとも15MPaの降伏応力、b)少なくとも30MPaの極限引張強度、およびc)200%超の破断伸びを有するポリマーを意味する。本明細書で使用される場合、「良好な」遮音特性という用語は、1,000Hzおよび20℃で測定して、100MPa未満の貯蔵剪断弾性率および1超のタンジェント・デルタ(tanδ)(減衰)(ASTM D4065-12 -Shear Geometryによって測定)を意味する。
【0047】
「硬質な」特性および「良好な」靭性を呈するポリマーとしては、アイオノマーが挙げられるが、これに限定されることはない。これらのポリマーがガラス積層体の多層において使用されると、積層体は、ASTM E1996-2017に従って測定されるハリケーン耐性試験に合格することが可能になる。
【0048】
良好な遮音特性を呈するポリマーとしては、ポリビニルブチラール(PVB)のようなポリビニルアセタール、熱可塑性エラストマー、およびエチレン酢酸ビニル(EVA)が挙げられるが、これらに限定されることはない。これらの遮音ポリマーが、厚さ6mmのガラス2枚を有するガラス積層体の多層において使用されると、積層体は、ASTM E90-2016に従って測定し、かつASTM E413-2010を使用して分析した場合に、40以上の音響透過クラスを達成することが可能になる。STCの実際的な上限は、通常、約55、または約51、または約50である。
【0049】
本発明での使用に適した「硬質」および遮音ポリマー、それらの特性、ならびにそれらを含むガラス積層体の特性に関する追加の情報は、以下に見られる。
【0050】
本明細書では、同じであっても異なっていてもよい少なくとも2つのアイオノマー層に挟まれた音響減衰層を含む、特定の最小および最大の厚さの多層ポリマー中間層がさらに提供される。
【0051】
一実施形態では、音響減衰層は、同じであっても異なっていてもよいアイオノマー樹脂組成物を含む少なくとも2つの層に挟まれた音響減衰樹脂組成物を含む少なくとも1つの層を含む少なくとも3つの層からなる。
【0052】
別の実施形態では、層Bは、それ自体が、互いに同じであっても異なっていても、また任意の他のアイオノマー層とは異なっていてもよい少なくとも2つの追加のアイオノマースキン層に挟まれた少なくとも1つの音響減衰層を有する多層構造であり、少なくとも5つの層を含む多層ポリマー中間層を形成する。
【0053】
本発明の多層ポリマー中間層は、総厚が、約2mm~約5mm、もしくは約2mm~約4mm、もしくは約2mm~約3mm、もしくは約2mm~約2.3mmであり、かつ/または望ましくは(先に定義したような)実質的に3次元の長方形である。
【0054】
先に概略的に記載されており、かつ以下により十分に記載される多層ポリマー中間層はまた、1つ以上の赤外線および/またはUV吸収材料、ならびに遮熱性微粒子も含んでよい。これらの材料は、改善された日射遮蔽特性を有する積層体を提供する。
【0055】
本発明はまた、多層ポリマー中間層を含む積層体も提供する。通常、これらの積層体は、既知の積層プロセスによって形成されたガラス積層体であり、約3mm~約12mmまたは約5mm~約12mmの厚さを有する(無機または有機)ガラスを使用する。典型的な厚さは、約6mmである。このようにして形成された積層体の総厚は、約8mm以上、または約10mm以上、または約12mm以上であり、約25mm以下、または約20mm以下、または約15mm以下である。典型的な総厚は、約14.3mmである。
【0056】
本発明の一実施形態では、図1に示されるように、層Bは、通常、優れた音響減衰特性を有する1つの層(300)からなる。
【0057】
通常、音響減衰樹脂組成物の層は、1,000Hzおよび20℃で、ASTM D4065-12 -Shear Geometryによって測定して、望ましくは、約10MPa~約100MPaの弾性率および約1.0~約2.0のタンジェント・デルタ(tanδ)(減衰)を有する。
【0058】
音響減衰層は、音響減衰樹脂と1つ以上の任意選択的な添加剤とを含む音響減衰樹脂組成物を含む。適切な音響減衰樹脂の非限定的な例としては、中間層において架橋または非架橋であってよいエチレン酢酸ビニル(EVA);ポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラール(PVB);ならびに例えばポリスチレンエンドブロックおよびビニル結合リッチポリジエンミッドブロックを有するトリブロックコポリマーのような熱可塑性エラストマー、例えばHybrar(商標)熱可塑性エラストマー(株式会社クラレ、日本国東京都から市販)が挙げられる。
【0059】
図1の実施形態では、層Bの厚さは、好ましくは、約0.01mm以上、または約0.02mm以上、または約0.025mm以上、または約0.3mm以上、または約0.05mm以上、または約0.1mm以上である。さらに、層Bの厚さは、好ましくは、約0.5mm以下、または約0.4mm以下、または約0.3mm以下である。
【0060】
図1の実施形態では、層A(200)および層C(400)の総厚は、多層ポリマー中間層の総厚から層B(300)の厚さを差し引いたものである。各層Aおよび層Cの厚さは、層A+層B+層Cの組み合わせが合計で多層ポリマー中間層の望ましい総厚になる限り、個々で、約0.25mm以上、または約0.5mm以上であってよく、約4mm以下、または約3mm以下、または約2.5mm以下であってよい。
【0061】
層Aおよび層Cは、通常良好な剛性および靭性を示し、したがって、改善されたハリケーンレベルの衝撃およびサイクルをもたらす、同じまたは異なるポリマーからなっていてよい。これらのポリマーは、ISO-527で測定して約100MPa~約1000MPaの弾性率を有する。
【0062】
本発明の別の実施形態によると、図2に示されるように、ポリマー中間層は、少なくとも5つの層からなる。この実施形態では、層B(300)は、本質的に多層であり、層B1(325)+層B2(350)+層B3(375)によって表される構造を有する。
【0063】
層B2は、望ましくは、概して先に記載されているような音響減衰ポリマー組成物を含む。図2の実施形態では、層B2の厚さは、好ましくは、約0.01mm以上、または約0.02mm以上、または約0.025mm以上、または約0.3mm以上、または約0.05mm以上、または約0.1mm以上である。さらに、層Bの厚さは、好ましくは、約0.5mm以下、または約0.4mm以下、または約0.3mm以下である。一実施形態では、層B2は、約0.01mm~約0.03mmの厚さ、典型的には約0.02mmの厚さである。
【0064】
具体的には、層B1および層B3はそれぞれ、第3のアイオノマー樹脂および第4のアイオノマー樹脂と任意選択的に1つ以上の添加剤とをそれぞれ含む第3のアイオノマー樹脂組成物および第4のアイオノマー樹脂組成物である。層B1および層B3の厚さは、それぞれ個別に、通常、約0.25mm~約1.0mmであり、同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
層B1+層B2+層B3の合計厚さは、通常、約0.5mm以上、または約0.6mm以上であり、約2mm以下、または約1.5mm以下、または約1.25mm以下、または約1mm以下である。
【0066】
図2の実施形態では、層Aおよび層Cの合計厚さは、多層ポリマー中間層の総厚から層Bの合計厚さを差し引いたものである。各層Aおよび層Cの厚さは、層A+層B全体+層Cの組み合わせが合計して多層ポリマー中間層の所望の総厚になる限り、個別に、約0.25mm以上、または約0.5mm以上であり、約4mm以下、または約3mm以下、または約2.5mm以下である。
【0067】
一実施形態では、音響減衰層は、多層ポリマー中間層の実質的に中心にある。別の実施形態では、音響減衰層は、中心から縁の1つに向かってずらされている。
【0068】
望ましくは、音響減衰層(および全体としての多層ポリマー中間層)は、そのような層で使用される樹脂について、可塑剤を実質的に含有すべきではない、または可塑剤を含有すべきではない。したがって、音響減衰層の場合、熱可塑性エラストマー樹脂およびEVA樹脂が好ましく、これらの樹脂について以下のようにより詳細に記載する。
【0069】
[熱可塑性エラストマー]
熱可塑性エラストマーは、上記の多層ポリマー中間層において使用されてよい。これらの材料は、通常、米国特許出願公開第2017/0320297号明細書に記載されているように、改善された遮音特性を有するポリマー中間層シートおよびこれらのシートを含む積層体を提供する。一般的に言うなら、これらの材料は、「エラストマー」とも呼ばれ、通常、ソフトおよびハードセグメントを有する材料、例えば、ポリスチレン系エラストマー(ソフトセグメント:ポリブタジエン、ポリイソプレン/ハードセグメント:ポリスチレン)、ポリオレフィン系エラストマー(ソフトセグメント:エチレンプロピレンゴム/ハードセグメント:ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル系エラストマー(ソフトセグメント:ポリ塩化ビニル/ハードセグメント:ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン系エラストマー(ソフトセグメント:ポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネート/ハードセグメント:ポリウレタン)、ポリエステル系エラストマー(ソフトセグメント:脂肪族ポリエステル/ハードセグメント:芳香族ポリエステル)、ポリエーテルエステル系エラストマー(ソフトセグメント:ポリエーテル/ハードセグメント:ポリエステル)、ポリアミド系エラストマー(ソフトセグメント:ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステル、またはポリエーテル/ハードセグメント:ポリアミド(ナイロン樹脂など))、ポリブタジエン系エラストマー(ソフトセグメント:非晶質ブチルゴム/ハードセグメント:シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン樹脂)、アクリルエラストマー(ソフトセグメント:ポリアクリレートエステル/ハードセグメント:ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。上記の熱可塑性エラストマーは、単独で使用されても、またはその2つ以上の組み合わせで使用されてもよいことに留意されたい。
【0070】
熱可塑性エラストマー中のハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、好ましくは、約5質量%以上、または約7質量%以上、または約8質量%以上、または約10質量%以上、または約14質量%以上、または約16質量%以上、または約18質量%以上である。ハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、好ましくは約40質量%以下、または約30質量%以下、または約20質量%以下である。ハードセグメントの含有量が約5質量%未満である場合、層Bの成形が困難になる傾向にあるか、tanδのピーク高さが低くなるか、積層体の曲げ剛性が小さくなるか、または高周波数域での遮音性が低下する。ハードセグメントの含有量が約40質量%超である場合、熱可塑性エラストマーの特性がほとんど発揮されなくなる傾向にあるか、遮音性能の安定性が低下するか、または室温付近の遮音性が低下する。
【0071】
熱可塑性エラストマーのソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、好ましくは約60質量%以上、または約70質量%以上、または約80質量%以上である。ソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、好ましくは、約95質量%以下、または約92質量%以下、または約90質量%以下、または約88質量%以下、または約86質量%以下、または約84質量%以下、または約82質量%以下である。ソフトセグメントの含有量が約60質量%未満である場合、熱可塑性エラストマーの特性は、ほとんど発揮されない傾向にある。ソフトセグメントの含有量が約95質量%超である場合、層Bの成形が困難になる、tanδのピーク高さが低くなる、積層体の曲げ剛性が小さくなる、または高周波数域での遮音性が低下する傾向がある。ここで、複数の熱可塑性エラストマーが混合される場合、熱可塑性エラストマー中のハードセグメントおよびソフトセグメントの含有量はそれぞれ、混合物の平均値であると見なされる。
【0072】
成形性と遮音性との両方を互いに両立させるという観点から、ハードセグメントおよびソフトセグメントを有するブロックコポリマーを熱可塑性エラストマーとして使用することがより好ましい。さらに、遮音性をさらに向上させるという観点から、ポリスチレン系エラストマーを使用することが好ましい。
【0073】
さらに、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムなどの架橋ゴムが熱可塑性エラストマーとして使用されてよい。
【0074】
熱可塑性エラストマーは、好ましくは、芳香族ビニルモノマーと、ビニルモノマーもしくは共役ジエンモノマーとのコポリマー、または当該コポリマーの水素化生成物である。遮音性を呈するゴムとしての機能とプラスチックとしての機能とを互いに両立させるという観点から、コポリマーは、好ましくは、芳香族ビニルポリマーブロックと脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックとを有するブロックコポリマー、例えば、ポリスチレン系エラストマーである。
【0075】
芳香族ビニルポリマーブロックと、ビニルポリマーブロックまたは共役ジエンポリマーブロックとを有するコポリマー、例えば、芳香族ビニルポリマーブロックと脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックとを有するブロックコポリマーが熱可塑性エラストマーとして使用される場合、これらのポリマーブロックの結合形態は、特に限定されておらず、線状の結合形態、分岐状の結合形態、放射状の結合形態、およびその2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれかであってよい。そのなかでも、線状の結合形態が好ましい。
【0076】
芳香族ビニルポリマーブロックが「a」で表され、脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックが「b」で表される場合、線状の結合形態の例としては、a-bで表されるジブロックコポリマー、a-b-aまたはb-a-bで表されるトリブロックコポリマー、a-b-a-bで表されるテトラブロックコポリマー、a-b-a-b-aまたはb-a-b-a-bで表されるペンタブロックコポリマー、(a-b)Xタイプのコポリマー(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)、およびそれらの混合物が挙げられる。そのなかでも、ジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマーが好ましく、トリブロックコポリマーは、より好ましくは、a-b-aで表されるトリブロックコポリマーである。
【0077】
ブロックコポリマー中の芳香族ビニルモノマー単位と脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位との合計は、全モノマー単位に対して、好ましくは、約80質量%以上、または約95質量%以上、または約98質量%以上である。ブロックコポリマー中の脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックの一部または全体が水素化されていてよいことに留意されたい。
【0078】
ブロックコポリマー中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーの全モノマー単位に対して、好ましくは、約5質量%以上、または約7質量%以上、または約8質量%以上、または約14質量%以上、または約16質量%以上、または約18質量%以上である。芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーの全モノマー単位に対して、好ましくは、約40質量%以下、または約30質量%以下、または約25質量%以下、または約20質量%以下である。
【0079】
ブロックコポリマー中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量が約5質量%未満である場合、層Aの成形が困難になる、熱によるガラスの偏差が生じる、tanδのピーク高さが低くなる、積層板の曲げ剛性が小さくなる、または高周波領域での遮音性が低下する傾向がある。ブロックコポリマー中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量が約40質量%超である場合、熱可塑性エラストマーとしての特性がほとんど発揮されない、または遮音性能の安定性が低下する傾向がある。
【0080】
ブロックコポリマー中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーを合成する際の各モノマーの仕込み比、またはブロックコポリマーのH-NMRなどの測定結果から決定され得る。ここで、複数のブロックコポリマーが混合される場合、ブロックコポリマー中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、混合物の平均値であると見なされる。
【0081】
芳香族ビニルポリマーブロックにおいて、少量であれば、芳香族ビニルモノマー以外のモノマーを共重合させてもよい。芳香族ビニルポリマーブロック中の芳香族ビニルモノマー単位の割合は、芳香族ビニルポリマーブロック中の全モノマー単位に対して、好ましくは、約80質量%以上、または約95質量%以上、または約98質量%以上である。
【0082】
芳香族ビニルポリマーブロックを構成する芳香族ビニルモノマーの例としては、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、および4-ドデシルスチレンのようなアルキルスチレン;2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、および2-ビニルナフタレンのようなアリールスチレン;ハロゲン化スチレン;アルコキシスチレン;ビニル安息香酸エステル;などが挙げられる。これらの芳香族ビニルモノマーは、単独で使用されても、またはその2つ以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0083】
ブロックコポリマー中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーの全モノマー単位に対して、好ましくは、約60質量%以上、または約70質量%以上、または約75質量%以上、または80質量%以上である。ブロックコポリマー中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーの全モノマー単位に対して、好ましくは、約95質量%以下、または約92質量%以下、または約90質量%以下、または約88質量%以下、または約86質量%以下、または約84質量%以下、または約82質量%以下である。
【0084】
ブロックコポリマー中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量が約60質量%未満である場合、熱可塑性エラストマーとしての特性がほとんど発揮されない、または遮音性能の安定性が低下する傾向がある。ブロックコポリマー中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量が約95質量%超である場合、層Bの成形が困難になる、tanδのピーク高さが低くなる、積層体の曲げ剛性が小さくなる、または高周波数域での遮音性が低下する傾向がある。
【0085】
ブロックコポリマー中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロックコポリマーを合成する際の各モノマーの仕込み比、またはブロックコポリマーのH-NMRなどの測定結果から決定され得る。ここで、複数のブロックコポリマーが混合される場合、ブロックコポリマー中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、混合物の平均値であると見なされる。
【0086】
脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックにおいて、少量であれば、脂肪族不飽和炭化水素モノマー以外のモノマーを共重合させてもよい。脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロック中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の割合は、脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロック中の全モノマー単位に対して、好ましくは、約80質量%以上、または約95質量%以上、または約98質量%以上である。
【0087】
脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックを構成する脂肪族不飽和炭化水素モノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-フェニル-1-ブテン、6-フェニル-1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、5-メチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2-フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、3-フルオロプロペン、トリフルオロエチレン、3,4-ジクロロ-1-ブテン、ブタジエン、イソプレン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、アセチレンなどが挙げられる。これらの脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、単独で使用されても、またはその2つ以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0088】
入手し易さおよび取り扱い性の観点から、脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、好ましくは、2個以上の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素、または4個以上の炭素原子を有する脂肪族炭化水素であり、かつ好ましくは、12個以下の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素、または8個以下の炭素原子を有する脂肪族炭化水素である。そのなかでも、ブタジエン、イソプレン、およびブタジエンとイソプレンとの組み合わせが好ましい。
【0089】
さらに、入手し易さおよび取り扱い性ならびに合成のし易さの観点から、脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、好ましくは共役ジエンである。熱安定性を改善する観点から、脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックの構成単位として共役ジエンを使用する場合、共役ジエンは、好ましくは、その一部または全てを水素化して得られる水素化生成物である。その際、水素化率は、好ましくは80%以上または90%以上である。本明細書で言及される水素化率とは、水素化反応の前後のブロックコポリマーのヨウ素価を測定することによって得られる値である。
【0090】
機械的特性および成形加工性の観点から、ブロックコポリマーの重量平均分子量は、好ましくは、約30,000以上または約50,000以上であり、かつ好ましくは、約400,000以下または約300,000以下である。ブロックコポリマーの重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、好ましくは約1.0以上であり、かつ好ましくは約2.0以下または約1.5以下である。ここで、重量平均分子量とは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定によって求められるポリスチレン換算の重量平均分子量を指し、数平均分子量とは、GPC測定によって求められるポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
【0091】
ブロックコポリマーの製造方法は特に限定されないが、ブロックコポリマーは、例えば、アニオン重合法、カチオン重合法、ラジカル重合法などによって製造することができる。例えば、アニオン重合の場合、その具体例としては、
(i) アルキルリチウム化合物を開始剤として使用することによって、芳香族ビニルモノマー、共役ジエンモノマー、続いて芳香族ビニルモノマーを逐次重合させる方法;
(ii) アルキルリチウム化合物を開始剤として使用することによって、芳香族ビニルモノマーおよび共役ジエンモノマーを逐次重合させ、続いてカップリング剤を添加してカップリングする方法;
(iii) ジリチウム化合物を開始剤として使用することによって、共役ジエンモノマー、続いて芳香族ビニルモノマーを逐次重合させる方法;
などが挙げられる。
【0092】
共役ジエンを脂肪族不飽和炭化水素モノマーとして使用する場合、アニオン重合の際に有機ルイス塩基を添加することによって、熱可塑性エラストマーの1,2-結合量および3,4-結合量を増加させることができ、また有機ルイス塩基の添加量によって、熱可塑性エラストマーの1,2-結合量および3,4-結合量を容易に制御することができる。結合量を制御することによって、tanδのピーク温度またはピーク高さを調節することができる。
【0093】
有機ルイス塩基の例としては、酢酸エチルのようなエステル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、およびN-メチルモルホリンのようなアミン;ピリジンのような窒素含有複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミドのようなアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、およびジオキサンのようなエーテル;エチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールエーテル;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド;アセトンおよびメチルエチルケトンのようなケトン;などが挙げられる。
【0094】
非水素化ポリスチレン系エラストマーを水素化反応に供する場合、得られた非水素化ポリスチレン系エラストマーを水素化触媒に対して不活性な溶媒に溶解させるか、または非水素化ポリスチレン系エラストマーを反応液から単離せずに水素化触媒の存在下で水素と直接反応させることによって水素化反応を行うことができる。水素化率は、好ましくは、約60%以上、または約80%以上、または約90%以上である。
【0095】
水素化触媒の例としては、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、および/またはNiのような金属が、炭素、アルミナ、および/または珪藻土のような担体上に担持されている不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物および/またはアルキルリチウム化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒;などが挙げられる。水素化反応は、通常、約0.1MPa以上約20MPa以下の水素圧および約20℃以上約250℃以下の反応温度の条件下で、約0.1時間以上約100時間以下の反応時間にわたって行われ得る。
【0096】
好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントブロックが島成分として含まれ、かつソフトセグメントブロックが海成分として含まれる、海島相分離構造(sea-island phase separated structure)を有する。積層ガラス用の中間層に使用すべき層では、島成分の相分離サイズが増加することがあり、結果として、積層ガラスの製造時に積層ガラスの中間層が収縮したり、または積層ガラスのヘイズが減少したりすることが見出されており、また、特定の構造を有する積層ガラス用の中間層を使用した積層ガラスは、厚みを薄くしても優れた遮音性を有し、かつ収縮率も低いことが見出されている。
【0097】
より具体的には、この実施形態では、熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントブロックおよびソフトセグメントブロックを含み、層Bは、ハードセグメントブロックが島成分として含まれ、かつソフトセグメントブロックが海成分として含まれる、海島相分離構造を有し、小角X線散乱測定によって層Aに関して得たハードセグメントブロックまたはソフトセグメントブロックによる周期的散乱または干渉性散乱の方位角強度分布において強度が最大になる方位角を含む、180°の任意の方位角範囲における最大強度値および最小強度値に基づいて配向度(1)が以下の式(I)で定義されるとき、配向度(1)は、約0.9以下である。
【0098】
配向度(1)=(最大強度値-最小強度値)/(最大強度値+最小強度値) (I)
以下の式(II)で定義される配向度(2)は、約10以下であることが好ましい。
【0099】
配向度(2)=最大強度値/最小強度値 (II)
層Bと実質的に平行な面に沿って層Bの厚さ方向の中心領域をスライスすることによって得られた切片面上の任意の5箇所で200nm×200nmの範囲の領域を原子間力顕微鏡で観察することによって得られる各相画像において、実質的に楕円形状または実質的に連続線形状を有する島成分から長軸サイズが最も大きい島成分を選択したとき、選択された島成分の長軸サイズの平均が約100nm以下であることも好ましい。
【0100】
適切な熱可塑性エラストマーの具体例は、例えば、米国特許出願公開第2010/239802号明細書を参照することによって見出すことができる。
【0101】
1つの好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは、主に芳香族ビニル化合物単位から構成されるポリマーブロック(A)と、主に1,3-ブタジエン単位から構成される、または主にイソプレン単位および1,3-ブタジエン単位から構成されるポリマーブロック(B)とを少なくとも含むブロックコポリマーを水素化することによって形成される水素化ブロックコポリマーであって、ポリマーブロック(A)の含有量が、水素化ブロックコポリマーの総量を基準として、約5質量%~約40質量%であり、ポリマーブロック(B)が、約70%以上の水素化率を有し、水素化ブロックコポリマーが、約-45℃~約30℃のガラス転移温度を有する、水素化ブロックコポリマーである。
【0102】
別の好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは、主に芳香族ビニル化合物単位から構成されるポリマーブロック(C)と、主に1,3-ブタジエン単位から構成される、または主にイソプレン単位および1,3-ブタジエン単位から構成されるポリマーブロック(D)とを少なくとも含むブロックコポリマーを水素化することによって形成される水素化ブロックコポリマーであって、ポリマーブロック(C)の含有量が、水素化ブロックコポリマーの総量を基準として、約10質量%~約40質量%であり、ポリマーブロック(D)が、約80%以上の水素化率を有し、水素化ブロックコポリマーが、約-45℃未満のガラス転移温度を有する、水素化ブロックコポリマーである。
【0103】
上記の2つの好ましい実施形態では、望ましくは、芳香族ビニル化合物はスチレンであり、かつ/またはポリマーブロック(B)および(D)は、主にイソプレン単位および1,3-ブタジエン単位から構成され、かつ/または水素化ブロックコポリマーは、A1-B-A2またはC1-D-C2タイプの構造を有するトリブロックコポリマーである。
【0104】
一実施形態では、音響減衰樹脂組成物は、tanδの互いに異なるピーク温度(tanδが最大になるピーク温度)を有する2つ以上の熱可塑性エラストマーを含む。
【0105】
[エチレン酢酸ビニル(EVA)]
本発明では、音響減衰層は、米国特許出願公開第2016/0167348号明細書に開示されているようなエチレン酢酸ビニル(EVA)タイプの材料であってもよい。好ましくは、EVA材料は、酢酸ビニル含有量が約25質量%超、または約30質量%以上、かつ約40質量%以下、または約35質量%以下、または約33質量%以下であり;初期メルトフローインデックスが、少なくとも約14g/10分であり;材料が関連技術の当業者に知られている1つ以上の方法によって架橋(例えば、過酸化物架橋剤を用いて熱的に架橋)された後の最終メルトフローインデックスが、約2g/10分以下または約1.5g/10分以下であるエチレン酢酸ビニルを含む。
【0106】
[アイオノマー]
本発明によると、アイオノマー樹脂は、部分的に中和されたエチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーであり、これは、エチレンに由来する構成単位と、α,β-不飽和カルボン酸に由来する構成単位と、任意選択的に以下に記載されている他の構成単位とを含む樹脂を含み、α,β-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の少なくとも一部は、イオンで中和されている。
【0107】
ベースポリマーとして機能するエチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーにおいて、α,β-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有割合は、典型的には、(コポリマーの総質量を基準として)2質量%以上または5質量%以上である。さらに、α,β-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有割合は、典型的には、(コポリマーの総質量を基準として)30質量%以下である。
【0108】
アイオノマーを構成するα,β-不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびその2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。一実施形態では、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物から選択される。別の実施形態では、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。
【0109】
エチレンと酸のコポリマーは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステルのような1つ以上の追加のコモノマーの共重合した単位をさらに含んでよい。存在する場合、典型的には、3~10個または3~8個の炭素を有するアルキルエステルが使用される。不飽和カルボン酸の適切なエステルの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ウンデシルアクリレート、ウンデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルフマレート、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、およびその2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。一実施形態では、追加のコモノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル、およびその2つ以上の混合物から選択される。別の実施形態では、追加のコモノマーは、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、およびイソブチルメタクリレートのうちの1つ以上である。別の実施形態では、追加のコモノマーは、n-ブチルアクリレートおよびイソブチルアクリレートのうちの一方または両方である。
【0110】
適切なエチレンと酸のコポリマーは、190℃および2.16kgでASTM D1238-89の方法に準拠して決定した際に、約1g/10分以上、または約2g/10分以上であり、約4000g/10分以下、または1000g/10分以下、または約400g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0111】
最後に、適切なエチレンと酸のコポリマーは、例えば、米国特許第3404134号明細書、米国特許第5028674号明細書、米国特許第6500888号明細書、米国特許第6518365号明細書、米国特許第8334033号明細書、および米国特許第8399096号明細書に記載されているように合成されてよい。
【0112】
一実施形態では、米国特許第8399096号明細書に記載されている方法が使用され、十分に高レベルの相補量の第2のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体が反応混合物中に存在する。
【0113】
アイオノマーを得るために、エチレンと酸のコポリマーは、1つ以上の塩基との反応によって部分的に中和される。エチレンと酸のコポリマーを中和するのに適切な手順の例は、米国特許第3404134号明細書および米国特許第6518365号明細書に記載されている。中和後に、エチレンと酸のコポリマー中に存在するカルボン酸基の水素原子の約1%以上、または約10%以上、または約15%以上、または約20%以上、かつ約90%以下、または約60%以下、または約55%以下、または約30%以下が他のカチオンで置き換えられる。別の言い方をするなら、エチレンと酸のコポリマー中に存在するカルボン酸基の総含有量の約1%以上、または約10%以上、または約15%以上、または約20%以上、かつ約90%以下、または約60%以下、または約55%以下、または約30%以下が中和される。別の代替的な表現をするなら、酸基は、中和されていないエチレンと酸のコポリマーについて計算または測定したときのエチレンと酸のコポリマー中に存在するカルボン酸基の総含有量を基準として、約1%以上、または約10%以上、または約15%以上、または約20%以上、かつ約90%以下、または約60%以下、または約55%以下、または約30%以下のレベルで中和される。中和レベルは、具体的な最終用途に合わせて調整されてよい。
【0114】
アイオノマーは、カルボン酸アニオンに対する対イオンとしてカチオンを含む。適切なカチオンとしては、アイオノマー組成物が合成、加工、および使用される条件下で安定した任意の正荷電種が挙げられる。適切なカチオンを2つ以上の組み合わせで使用してもよい。いくつかの好ましいアイオノマーでは、カチオンは金属カチオンであり、これは、一価、二価、三価、または多価であってよい。有用な一価金属カチオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されることはない。有用な二価金属カチオンとしては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されることはない。有用な三価金属カチオンとしては、アルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウムなどのカチオンが挙げられるが、これらに限定されることはない。有用な多価金属カチオンとしては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されることはない。金属カチオンが多価である場合、米国特許第3404134号明細書に記載されているように、ステアレート、オレエート、サリチレート、およびフェノレートラジカルのような錯化剤が含まれてよい。別の好ましい組成物では、使用される金属カチオンは、一価または二価の金属カチオンである。好ましい金属カチオンは、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム、およびこれらの金属カチオンの1つ以上の組み合わせである。より好ましい組成物では、カチオンは、ナトリウムカチオン、マグネシウムカチオン、亜鉛カチオン、およびそれらの組み合わせである。
【0115】
一実施形態では、アイオノマー中のカルボン酸アニオンに対する対イオンはナトリウムカチオンであり、ナトリウムカチオン以外の対イオンは、アイオノマー中のカルボキシレート基の総当量を基準として、任意選択的に、5当量%未満、または3当量%未満、または2当量%未満、または1当量未満%の少量で存在する。一実施形態では、対イオンは、実質的にナトリウムイオンである。
【0116】
一実施形態では、ナトリウム以外の対イオンは、関連技術の当業者によって認識されるように、工業的な状況で典型的に見られるように、多くても「汚染」量で存在する。
【0117】
得られた中和エチレンと酸のコポリマーは、ASTM D1238-89の方法に準拠して190℃および2.16kgで決定した際に、対応するエチレンと酸のコポリマーのメルトインデックスよりも低いメルトインデックスを有する。アイオノマーのメルトインデックスは、エチレンと酸のコポリマーのメルトインデックス、共重合した酸の量、中和レベル、カチオンの同一性およびその価数を含む多くの要因に応じて異なる。さらに、アイオノマーのメルトインデックスの望ましい値は、その意図される最終用途によって決定され得る。しかしながら、典型的には、アイオノマーは、ASTM D1238-89の方法に準拠して190℃および2.16kgで決定した際に、約1000g/10分以下、または約750g/10分以下、または約500g/10分以下、または約250g/10分以下、または約100g/10分以下、または約50g/10分以下、または約25g/10分以下、または約20g/10分以下、または約10g/10分以下、または約7.5g/10分以下のメルトインデックスを有する。
【0118】
一実施形態では、アイオノマーは、
(i) エチレンと、
(ii) 約10質量%以上、または約15質量%以上、または約18質量%以上、または約20質量%以上、かつ約30質量%以下、または約25質量%以下、または約23質量%以下、または約22質量%以下の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
の共重合した単位を含む(から実質的になる)少なくとも部分的に中和されたエチレン酸ジポリマーであって、
共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%であり、α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成している、
エチレン酸ジポリマーである。
【0119】
一実施形態では、アイオノマーは、
(i) エチレンと、
(ii) 約10質量%以上、または約15質量%以上、または約18質量%以上、または約20質量%以上、かつ約30質量%以下、または約25質量%以下、または約23質量%以下、または約22質量%以下の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
(iii) 約2質量%以上、または約3質量%以上、または約4質量%以上、または約5質量%以上、かつ約15質量%以下、または約12質量%以下、または約11質量%以下、または約10質量%以下の3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸エステルと、
(iv) 任意選択的に、(iii)+(iv)が、約15質量%以下、または約12質量%以下、または約11質量%以下となるような量の、(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸エステルの誘導体と、
の共重合した単位を含む少なくとも部分的に中和されたエチレン酸ターポリマーであって、
共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%であり、α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成している、
エチレン酸ターポリマーである。
【0120】
そのようなターポリマーアイオノマー(ターアイオノマー)は、一般に、国際公開第2015/199750号および国際公開第2014/100313号、ならびに先に援用した米国特許出願公開第2017/1320297号明細書に開示されている。
【0121】
上記のジポリマーまたはターポリマーの一実施形態では、α,β-不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。
【0122】
上記のターポリマーの一実施形態では、α,β-不飽和カルボン酸エステルは、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、またはそれらの混合物である。
【0123】
上記のターポリマーの一実施形態では、コポリマーは、(i)、(ii)、および(iii)の共重合した単位から実質的になる。
【0124】
[添加剤]
米国特許出願公開第2010/0108125号明細書、米国特許出願公開第2011/0105681号明細書、および米国特許出願公開第2019/0030863号明細書に開示されているようなシランが、接着修飾剤として使用されてよい。
【0125】
前述のシランおよび他の接着修飾剤以外に、本発明の組成物は、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料および/または染料のような着色剤、遮熱材(赤外線吸収剤)など、またはそれらの混合物を含む1つ以上の他の添加剤を含有してよい。そのような他の添加剤は、一般的な意味で、関連技術の当業者によく知られている。
【0126】
酸化防止剤の例としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。そのなかでも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0127】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレートおよび2,4-ジ-t-アミル-6-(1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートのようなアクリレート系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、3,9-ビス(2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、およびトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート)のようなアルキル置換フェノール系化合物;1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、および2-オクチルチオ-4,6-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキシアニリノ)-1,3,5-トリアジンのようなトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0128】
リン系酸化防止剤の例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、および10-デシルオキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレンのようなモノホスファイト系化合物;4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(ジフェニルモノアルキル(C12~C15)ホスファイト)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、およびテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスファイトのようなジホスファイト系化合物;などが挙げられる。そのなかでも、モノホスファイト系化合物が好ましい。
【0129】
硫黄系酸化防止剤の例としては、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリトリトール-テトラキス-(3-ラウリル-チオプロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0130】
これらの酸化防止剤は、単独で使用されても、またはその2つ以上の組み合わせで使用されてもよい。最終的な樹脂組成物において、用いられる酸化防止剤は、アイオノマー樹脂100質量部を基準として、典型的には、約0.001質量部以上または約0.01質量部以上である。さらに、用いられる酸化防止剤の量は、アイオノマー樹脂100質量部を基準として、典型的には、約5質量部以下または約1質量部以下である。
【0131】
紫外線吸収剤の例としては、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(1,1’-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、および2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)トリアゾールのようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、および4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンのようなヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートおよびヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートのようなベンゾエート系紫外線吸収剤;などが挙げられる。
【0132】
これらの紫外線吸収剤は、単独で使用されても、またはその2つ以上の組み合わせで使用されてもよい。最終的な樹脂組成物において、用いられる紫外線吸収剤の量は、アイオノマー樹脂の質量を基準として、典型的には、約10質量ppm以上または約100質量ppm以上である。さらに、用いられる紫外線吸収剤の量は、アイオノマー樹脂の質量に応じて、典型的には、約50,000ppm以下または約10,000ppm以下である。
【0133】
いくつかの実施形態では、2つ以上の種類のUV吸収剤を組み合わせて使用することも可能である。
【0134】
他の実施形態では、UV吸収剤が添加されないか、または積層体がUV吸収剤添加剤を実質的に含まない。
【0135】
光安定剤の例としては、Adeka Corporation製の「ADEKA STAB LA-57」(商標名)およびCiba Specialty Chemicals Inc.製の「TINUVIN 622」(商標名)のようなヒンダードアミン系材料が挙げられる。
【0136】
[日射熱/赤外線耐性材料]
積層板に遮熱機能を与えるために遮熱材としての遮熱性微粒子または遮熱性化合物を本発明の中間層に組み込むことによって積層ガラスを作製する場合、太陽の赤外線放射の透過率を調節することができる。
【0137】
適切な遮熱性微粒子は、例えば、米国特許出願公開第2017/0320297号明細書に開示されている。
【0138】
遮熱性微粒子の具体例としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)のような金属ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)のような金属ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)のような金属ドープ酸化亜鉛、一般式:MWO(Mは金属元素を表し、mは約0.01以上約1.0以下であり、nは約2.2以上約3.0以下である)で表される金属元素複合酸化タングステン、アンチモン酸亜鉛(ZnSb)、六ホウ化ランタンなどが挙げられる。そのなかでも、ITO、ATO、および金属元素複合酸化タングステンが好ましく、金属元素複合酸化タングステンがより好ましい。金属元素複合酸化タングステンにおいてMで表される金属元素の例としては、Cs、Tl、Rb、Na、Kなどが挙げられ、特にCsが好ましい。遮熱性の観点から、mは、好ましくは、約0.2以上または約0.3以上であり、かつ好ましくは、約0.5以下または約0.4以下である。
【0139】
極限積層体の透明性の観点から、遮熱性微粒子の平均粒径は、好ましくは約100nm以下または約50nm以下である。本明細書で言及される遮熱性粒子の平均粒径は、レーザー回折装置によって測定されたものを意味することに留意されたい。
【0140】
最終的な樹脂組成物において、遮熱性微粒子の含有量は、アイオノマー樹脂の質量に対して、好ましくは、約0.01質量%以上、または約0.05質量%以上、または約0.1質量%以上、または約0.2質量%である。さらに、遮熱性微粒子の含有量は、好ましくは、約5質量%以下または約3質量%以下である。
【0141】
遮熱性化合物の例としては、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物などが挙げられる。遮熱性をさらに改善する観点から、遮熱性化合物が金属を含有することが好ましい。金属の例としては、Na、K、Li、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、V、Ca、Alなどが挙げられ、Niが特に好ましい。
【0142】
遮熱性化合物の含有量は、アイオノマー樹脂の質量を基準として、好ましくは、約0.001質量%以上、または約0.005質量%以上、または約0.01質量%以上である。さらに、遮熱性化合物の含有量は、好ましくは、約1質量%以下または約0.5質量%以下である。
【0143】
[着色された中間層]
当技術分野で一般に知られているように、着色された中間層を形成してもよい。
【0144】
例えば、米国特許出願公開第2008/0302461号明細書に一般に開示されているように、1つ以上の顔料を1つ以上のアイオノマー樹脂組成物に添加してもよい。
【0145】
1つ以上の無機粒子と1つ以上の染料とのブレンドも使用することができる。
【0146】
場合によっては、半透明の中間層を形成して、例えば米国特許第7261943号明細書に開示されているようなエッチングまたはサンドブラストされたガラスの審美的品質を有する、または米国特許出願公開第2013/0225746号明細書に開示されているような半透明の白色の外観を有する積層体を製造することが望ましい場合がある。
【0147】
画像を有する装飾ガラス積層体も、例えば、米国特許第7232213号明細書に記載されているように調製することができる。
【0148】
[ガラス]
本発明のポリマー中間層の構成をガラス内部に組み込むと、優れたハリケーン損傷耐性を有する積層ガラス、優れた遮音性、特に高周波数域での優れた遮音性を有する積層ガラス、優れた遮音性と遮音性能安定性とを有する積層ガラス、および広い温度範囲にわたって優れた遮音性を有する積層ガラスを得ることができる。
【0149】
そのため、本発明の積層ガラスは、窓、壁、屋根、サンルーフ、遮音壁、陳列窓、バルコニー、手すり壁などのための建築部材の一部;会議室の仕切りガラス部材;などとして使用することが適切であり得る。
【0150】
通常、本発明の積層ガラスには2枚のガラスが使用される。本発明の積層ガラスを構成するガラスの厚さは特に限定されていないものの、好ましくは約3mm~約12mm、典型的には約6mmである。
【0151】
使用されるガラスは、本質的に無機または有機であってよい。無機ガラスとしては、窓ガラス、板ガラス、ケイ酸塩ガラス、シートガラス、低鉄ガラス、強化ガラス、強化CeOフリーガラス、およびフロートガラスのみならず、着色ガラス、特殊ガラス(例えば、日射熱を制御する成分を含むもの)、コーティングガラス(例えば、日射制御のために金属(例えば、銀またはインジウムスズ酸化物)でスパッタリングされたもの)、E-ガラス、Toroglass、Solex.R(商標)ガラス(PPG Industries、ペンシルベニア州ピッツバーグ)が挙げられる。そのような特殊ガラスは、例えば、米国特許第4615989号明細書、米国特許第5173212号明細書、米国特許第5264286号明細書、米国特許第6150028号明細書、米国特許第6340646号明細書、米国特許第6461736号明細書、および米国特許第6468934号明細書に開示されている。特定の積層体について選択すべきガラスの種類は、意図される用途に応じて異なる。
【0152】
有機ガラスとしては、ポリカーボネート、アクリル、ポリアクリレート、環状ポリオレフィン(例えば、エチレンノルボルネンポリマー)、ポリスチレン(好ましくは、メタロセン触媒ポリスチレン)、ポリアミド、ポリエステル、フルオロポリマーなど、およびその2つ以上の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されることはない。
【0153】
さらに、従来的に知られている方法によって、メルトフラクチャーおよび/またはエンボス加工のような凹凸構造を本発明の中間層の表面に形成することが好ましい。メルトフラクチャーまたはエンボス加工の形状は特に限定されておらず、従来的に知られているものを採用することができる。
【0154】
好ましくは、積層ガラスの中間層の少なくとも片面(およびより好ましくは両方の表面)が成形される。積層ガラスの中間層の少なくとも片面を成形することによって、積層ガラスを製造する際に、積層ガラス用の中間層とガラスとの間の界面に存在する気泡が積層ガラスの外側に抜け易くなるため、積層ガラスの外観を良好にすることができる。エンボスロール法、メルトフラクチャーなどによって積層ガラス用の中間層の少なくとも片面を成形することが好ましい。積層ガラス用の中間層の表面を成形することによって、積層ガラス用の中間層の表面に凹部および/または凸部が形成される。
【0155】
積層ガラス用の中間層の表面を成形する方法の例としては、従来的に知られているエンボスロール法、異形押出法、およびメルトフラクチャーを利用する押出リップエンボス加工法が挙げられる。そのなかでも、均一かつ微細な凹凸部が形成された積層ガラス用の中間層を安定して得るためには、エンボスロール法が好ましい。
【0156】
エンボスロール法で使用されるエンボスロールは、例えば、所望の凹凸パターンを有する彫刻ミル(マザーミル)を使用し、凹凸パターンを金属ロール表面に転写することによって製造され得る。さらに、エンボスロールは、レーザーエッチングを使用して製造することもできる。さらに、上記のように金属ロール表面に微細な凹凸パターンを形成した後に、微細な凹凸パターンを有する表面を、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、またはガラスビーズのような研磨材を使用してブラスト処理に供し、それによって、より微細な凹凸パターンを形成することもできる。
【0157】
さらに、エンボスロール法で使用すべきエンボスロールは、好ましくは離型処理に供される。離型処理に供されていないエンボスロールを使用した場合、積層ガラス用の中間層をエンボスロールから離型することが困難になる。離型処理の方法の例としては、シリコーン処理、Teflon(登録商標)処理、およびプラズマ処理のような既知の方法が挙げられる。
【0158】
エンボスロール法などによって成形された積層ガラス用の中間層の表面の凹部の深さおよび/または凸部の高さ(以下、「エンボス部の高さ」と呼ぶ場合もある)は、好ましくは、約5μm以上、または約10μm以上、または約20μm以上である。エンボス部の高さが約5μm以上であると、積層ガラスを製造する際に、積層ガラス用の中間層とガラスとの界面に存在する気泡が残りにくくなるため、積層ガラスの外観が改善される傾向にある。
【0159】
エンボス部の高さは、好ましくは、約150μm以下、または約100μm以下、または約80μm以下である。エンボス部の高さが約150μm以下であると、積層ガラスを製造する際に、積層ガラス用の中間層とガラスとの接着性が良好になるため、積層ガラスの外観が改善される傾向にある。
【0160】
本発明において、エンボス部の高さとは、JIS B 0601(2001)に定義されている最大高さ粗さ(Rz)を指す。エンボス部の高さは、例えば、レーザー顕微鏡などの共焦点原理を利用して測定され得る。なお、エンボス部の高さ、すなわち、凹部の深さまたは凸部の高さは、本発明の要旨から逸脱しない範囲で変更してもよい。
【0161】
エンボスロール法などによって付与される形状の形態の例としては、格子、斜め格子、斜め楕円、楕円、斜め溝、および溝が挙げられる。そのなかでも、気泡がより良好に抜けるという観点から、その形態は、好ましくは、斜め格子、斜め溝などである。傾斜角は、好ましくは、膜の流れ方向(MD方向)に対して10°~80°である。
【0162】
エンボスロール法などによる成形は、積層ガラス用の中間層の片面で実施されても、または両面で実施されてもよいが、より好ましくは両面で実施される。さらに、成形パターンは、規則的なパターンであっても、またはランダムなマットパターンのような不規則なパターンであっても、または米国特許第7351468号明細書に開示されているようなパターンであってもよい。
【0163】
[一般的な遮音性/音響特性]
積層ガラスの遮音性は、ASTM E90-2016に指定されているような音響透過損失(STL)法を使用して直接測定することができる。この方法では、2つの隣接する残響室が、試験試料が設置される開口部を挟んで配置される。ほぼ拡散した音場が、音源室である一方の部屋に生成される。試験パーティションに音が入射すると、試験パーティションが振動し、第2の部屋である受信室に音場が生成される。2つの部屋の空間および時間平均音圧レベルが決定される。さらに、試験片が配置された状態で、受信室における吸音率が決定される。2つの部屋の音圧レベル、受信室における吸音率、および試験片の面積を使用して、音響透過損失を計算する。これは、試料の防音特性から得られる音圧の変化の尺度である。透過損失は周波数の関数であるため、測定は一連の周波数帯で行われる。
【0164】
ある範囲の試験周波数にわたる音響透過損失の挙動が複雑になる場合がある。異なる積層ガラス構造間の比較を迅速化するために、音響遮蔽性能を、音響透過クラス(STC)と呼ばれる単一の数値のクラス評価で単純に表すことができる。STCクラスは、ASTM E413-10に指定されている手順に従って、標準参照曲線をSTL測定値にフィッティングすることによって決定される。STCの値が高いほど、優れた音響遮蔽性能を表す。
【0165】
以下のように測定する場合、好ましくは、STCは少なくとも40である。STLは、50Hz~10,000Hzの周波数範囲にわたって1/3オクターブバンドで測定された。34インチ×76インチの試料サイズを用い、全ての測定をASTM E90-09に準拠して20℃で実施した。STCは、ASTM E413-10に指定されている分析手順に従って、STL測定から決定した。
【0166】
[遮熱性/日射耐性特性]
本発明の積層ガラスが遮熱材を含む場合、波長1500nmでの透過率は、好ましくは、約50%以下または約20%以下である。波長1500nmでの透過率が約50%以下である場合、赤外線の遮蔽率が高くなる傾向にあり、積層ガラスの遮熱性能が改善される。
【0167】
熱遮蔽および日射耐性はまた、例えば米国特許第7291398号明細書に開示されているように、関連技術の当業者に一般に知られているようなlow-Eガラスおよび/またはIR反射技術を使用することによって提供することもできる。
【0168】
[ヘイズ]
ヘイズとは、特定の角度で散乱される光束のパーセンテージである。
【0169】
一実施形態では、本発明の積層ガラスにおいて、多層中間層をそれぞれ6mmの厚さの2枚のガラス板の間に積層して積層体を製造する場合、そのヘイズは、ASTM D1003-61(方法A)に準拠して、積層体を通過する非散乱光の経路によって規定される軸から2.5°より大きい角度で測定したとき(米国メリーランド州コロンビアのBYK-Gardner USAから入手可能なHazegard-iヘイズメーターを使用)、好ましくは、約0.6%以下、または約0.55%以下、または約0.5%以下である。
【0170】
[積層ガラスの製造方法]
本発明の積層ガラスは、従来的に知られている方法で製造することができる。その例としては、真空ラミネータを使用する方法、真空バッグを使用する方法、真空リングを使用する方法、ニップロールを使用する方法などが挙げられる。さらに、仮圧着の後に、得られた積層体を最終的な接合のためにオートクレーブに入れる方法を使用することができる。
【0171】
例えば、真空ラミネータを使用する場合、例えば、太陽電池の製造に使用される既知の装置を使用して、約1×10-6MPa以上約3×10-2MPa以下の減圧下にて、約100℃以上または約130℃以上、かつ約200℃以下または約170℃以下の温度で集合体を積層する。真空バッグまたは真空リングを使用する方法は、例えば、欧州特許出願公開第1235683号明細書(カナダ国特許出願公開第2388107号明細書)の明細書に記載されており、例えば、集合体は、約2×10-2MPaの圧力下にて、約130℃以上約145℃以下で積層される。
【0172】
積層ガラスを調製する方法について、ニップロールを用いる場合には、例えば、スキン樹脂の流動開始温度以下の温度で最初の仮圧着を行った後に、流動開始温度に近い条件下でさらに仮圧着を行う方法が例示されている。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどによって約30℃以上約100℃以下で集合体を加熱した後に、ロールで脱気し、さらに約50℃以上約150℃以下で加熱し、続いて、ロールによる圧着を行って、接合または仮接合を達成する方法が例示されている。
【0173】
さらに、積層ガラスは、本発明の積層体の構成が積層ガラス内部に含まれるように層Bが層Aの両面にコーティングされているガラスを集めて積層することによって調製することもできる。
【0174】
仮圧着後に付加的に行われるオートクレーブプロセスは、積層体の厚さまたは構成に応じて異なるが、例えば、約1MPa以上約15MPa以下の圧力、約120℃以上約160℃以下の温度で、約0.5時間以上約2時間以下にわたって実施される。
【0175】
[ハリケーン衝撃および圧力サイクル試験]
沿岸地域での建築用途の場合、ガラス/中間層/ガラス積層体は、破片の衝撃および風圧サイクルに対する積層体の耐久性を測定するハリケーン衝撃および圧力サイクル模擬試験に合格しなければならない。現在許容可能な試験は、ASTM 1996-2017に従って実施される。この試験は、厳しい気候、例えばハリケーン時の風力および空中の破片の衝撃をシミュレートするものである。
【0176】
この試験は、積層体への2つの衝撃からなる(1つは積層体試料の中央であり、続いて2つ目は積層体の角である)。これらの衝撃は、公称2インチ(5cm)×4インチ(10cm)および長さ8フィート(2.43メートル)の9ポンド(4.1キログラム)の板を、50フィート/秒(15.2メートル/秒)で空気圧砲から発射することによって生じる。積層体が上記の衝撃シーケンスに耐えた場合に、これを空気圧サイクル試験に供する。この試験では、積層体はチャンバーにしっかりと固定されている。正圧試験では、衝撃側を外側にして積層体をチャンバーに固定し、チャンバーに真空を適用し、次いで、以下の表1に記載されているサイクルシーケンスに対応するように変化させる。以下の表1に示されるように、圧力サイクルのスケジュールは、最大圧力Pの分数として指定される。最初の3500サイクルおよび後続のサイクルの各サイクルは、約1~3秒で完了する。6.22kPaの圧力での正(+)圧試験シーケンスの完了時に、例えば、試験の負圧部分のために、衝撃側がチャンバーの内側を向くように積層体を反転させ、以下のサイクルシーケンスに相応して真空を適用してもよい。次いで、これらの値を負の値(-)として表す。
【0177】
長さ5インチ(12.7cm)にわたる幅1/16インチ(0.16cm)以下の裂け目または開口部がない場合、積層体は、衝撃およびサイクル試験に合格する。
【0178】
全てのガラス積層体は、ガラスパネル間に中間層を配置することによって調製される。各ガラスパネルは脱イオン水で洗浄される。各ガラスパネルは脱イオン水で洗浄される。積層体は、135℃で90分間にわたって160PSIG(1.1MPa)の圧力の空気オートクレーブに入れられる。衝撃試験用の積層体は、幅31.5インチ(80cm)×高さ72インチ(183cm)である。次いで、Neoprene(登録商標)圧力ガスケットを使用して、積層体をアルミニウムフレームに固定した。次いで、このフレームを鋼製の支持フレームに取り付けて、グレージング全体の動きを最小限に抑えるようなやり方で衝撃試験を実施した。試験される、表2に示されている積層体に衝撃試験を行い、木材飛翔体に対する衝撃「靭性」を測定した。表2の積層体は、フロリダ衝撃に従って試験され、次いで、空気圧サイクル試験シーケンスの正部分にのみ供された。衝撃試験では、公称2インチ(5cm)×4インチ(10cm)および長さ8フィート(2.43メートル)の9ポンド(4.1キログラム)の松材板の飛翔体を、50フィート/秒(15.2メートル/秒)で空気圧砲から積層体に向かって推進させ、積層体に対してその表面に「垂直」に衝突させる。各積層体は、積層体の2つの異なる位置で、ガラスを破砕する2つの衝撃を受ける。以下で、圧力サイクル試験の衝撃および正部分の結果を以下の表2に示す。
【0179】
[具体的な実施形態]
本発明の具体的な実施形態は、それぞれ厚さ6mmの2枚のガラス板の間に積層されて積層体が製造される場合に、得られる積層体が以下の組み合わせを有する多層中間層である:a)40以上の音響透過クラス(STC)(上記のASTM E90-2016およびASTM E413-2010に準拠)、b)約0.6未満の積層体のヘイズ(上記のASTM D1003-61(方法A)に準拠して決定)、c)上記のASTM E1996-2017に準拠したハリケーン大型飛翔体(レベルD)衝撃および6.22kPa正圧サイクル耐久性、およびd)太陽の赤外線放射の透過率を調節することによる日射遮蔽保護。
【0180】
[実施例]
本発明は、積層ガラスの特性の以下の具体例からさらに理解されるであろう。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を何ら限定するものとして解釈されるべきではないと理解されたい。
【0181】
試料を以下のように調製した。多層中間層を以下の開示に従って調製した。これは以下の表2に記載されている。単層中間層も表2に記載されている。
【0182】
識別される中間層が挟まれている6mmの2枚の熱強化ガラスを使用して積層体を構築した。上記の真空バッグ積層プロセスを使用して積層体を調製した。ASTM E1996-2017によるハリケーン試験に供する場合、積層体サイズは800mm×1829mmであり、アルミニウム製の窓枠にドライグレージングを行った。ピーク圧力は6.22kPaであった。ASTM E90-2016による遮音試験に供する場合、積層体サイズは864mm×1930mmであった。
【0183】
以下の実施例E1~E2、比較例CE1~CE2、および対照例C1~C4で得られた積層ガラスについて、以下の物理特性評価を行った。
【0184】
[材料]
以下の実施例で使用される材料は以下の通りである。
【0185】
メルトインデックス(MI)を、ASTM D1238に従って、ポリマー溶融温度190℃および質量2.16kgで測定した。
【0186】
実施例で使用される厚さ6mm以上のソーダ石灰シリカフロートガラスは、Dolphin Glass, Inc.(米国フロリダ州)から得た。
【0187】
CI1 - E.I. du Pont de Nemours & Co.(米国デラウェア州ウィルミントン)から得た少なくとも部分的に中和されたエチレン-酸ジポリマーアイオノマー(21.7%のメタクリル酸、Na26%中和、MI=1.8)。
【0188】
CI2 - E.I. du Pont de Nemours & Co.(米国デラウェア州ウィルミントン)から得た少なくとも部分的に中和されたエチレン-酸ターポリマーアイオノマー(21.7%のメタクリル酸、6.5%イソブチルアクリレート、Na25%中和、MI=3.8)。
【0189】
I1 - 「SENTRYGLAS(登録商標)」という商標でKuraray America, Inc.(米国デラウェア州ウィルミントン)によって販売されている単層アイオノマー中間層(CI1から作製)。
【0190】
I2 - 「SENTRYGLAS(登録商標)XTRA(商標)」という商標でKuraray America, Inc.(米国デラウェア州ウィルミントン)によって販売されている単層ターアイオノマー中間層(CI2から作製、米国特許出願公開第2019/0030863号明細書に記載)。
【0191】
TPE1 - 1,2-結合および3,4-結合の含有量が75%である水素化ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロックコポリマー熱可塑性エラストマー。ハードブロック/ソフトブロック比[Mw(A1)/Mw(A2)]は1.00であり、ガラス転移温度は-15℃であり、スチレン含有量は21質量%であり、水素化率は84%であり、質量平均分子量は120,000である。株式会社クラレ(日本国東京都)から「HYBRAR(商標)H7125」として市販されている。
【0192】
TPE2 - 水素化ポリスチレン-ポリイソプレン/ポリブタジエン-ポリスチレントリブロックコポリマー熱可塑性エラストマー。ハードブロック/ソフトブロック比[Mw(A1)/Mw(A2)]は0.30であり、ガラス転移温度は-30℃であり、スチレン含有量は13質量%であり、水素化率は85%であり、質量平均分子量は130,000である。株式会社クラレ(日本国東京都)から「HYBRAR(商標)H7311」として市販されている。
【0193】
TPE - TPE1およびTPE2を1:1の比でブレンドし、均質な単層に押し出すことによって作製された単層(以下の多層膜の調製を参照)。
【0194】
PVB1 - Kuraray America, Inc.、米国テキサス州ヒューストンから市販されているTROSIFOL(商標)Clear標準PVB単層シート。
【0195】
PVB2 - TROSIFOL(商標)SC+中間層(三層PVBシート) - Kuraray Europe GmbH、独国フランクフルトから市販されている、米国特許第8314848号明細書に記載されているようなポリビニルブチラール三層。
【0196】
PVB3 - TROSIFOL(商標)ESシート - Kuraray Europe GmbH、独国フランクフルトから市販されている「硬質」PVB単層。
【0197】
[多層膜の調製]
CI2|TPE|CI2構造(0.265mm|0.196mm|0.235mm)からなる三層膜を以下のように製造した。アイオノマー(C12)樹脂ペレットおよび添加剤(マスターバッチ中)をスキン層押出機に供給した。ポリマーを、押出機のゾーンを通して溶融および加熱し、約196℃の溶融温度で吐出した。アイオノマー溶融物を加熱溶融ラインによってフィードブロックに搬送し、そこでアイオノマー流を分割して、中間層構造の2つの外層(AおよびC)を形成した。
【0198】
熱可塑性エラストマー樹脂(TPE1およびTPE2)ペレットおよび添加剤(マスターバッチ中)をコア層押出機に供給した。エラストマーポリマーを、押出機を通して溶融および加熱し、約213℃の溶融温度で吐出した。エラストマー溶融物を、加熱溶融ラインによって、約204℃に維持されたフィードブロックに搬送した。エラストマー溶融物はフィードブロックを通って流れ、分割されたアイオノマー層が上下でエラストマーと接触して、三層シート構造を形成した。
【0199】
溶融相を、約204℃に維持された押出ダイに送り、ダイリップを通して押し出した。スキン(アイオノマー)押出機およびコア(エラストマー)押出機からの流速は、最終シートにおいてスキン対コア層の厚さの所望の比が得られるように調整した。各ポリマー相の溶融粘度が良好に適合するように各押出機の溶融温度を調整し、流動の不安定性およびシートの光学的歪みを防止した。シートの幅全体にわたり厚み(キャリパー)の均一性を調整および改善することができるように、ダイリップ上のアジャスターを開閉した。所望の総シートキャリパー(シート厚さ)が得られるようにライン速度を調整した。
【0200】
押出ダイから出た溶融物を一連の冷却ロールに通して溶融物を冷却し、シート製品を形成した。加熱されていない搬送ローラー一式を通してシートを搬送し、シートをさらに冷却した。固体シートを、一定のライン速度を制御および維持するように設定されたニップロールに通過させた。次いで、ニップロールと巻取部との間で、巻取部(シート内に一定の張力を維持するように設定されている)のコアにシートを巻き取った。
【0201】
[ガラス積層体の調製]
ポリマー中間層積層体膜およびガラスを室温で所望の順序に重ねた予備圧着集合体を使い捨て真空バッグに入れ、25~30水柱インチの真空下で60分間にわたって保持し、予備圧着集合体の層間に含まれる空気を除去した。バッグに真空を適用しながら、予備圧着集合体を空気オートクレーブ内に入れた。試料およびバッグを、0.7MPaの静水圧をかけた状態で135℃に加熱した。135℃に達した後に、バッグへの真空を取り除き、静水圧0.7MPaがかけられた空気オートクレーブ内に積層体を90分間にわたって保持した。次いで、試料を一定の圧力下でおよそ4℃/分の速度で冷却した。約25分の冷却後に、空気温度が約50℃未満になったら、過剰な圧力を排出し、積層体を室温まで冷却して、オートクレーブから取り出した。
【0202】
実施例で使用されるプロセスは、積層ガラスを製造するための多くの標準的な工業プロセスに類似するものであり、高い透明度および最小限の欠陥(気泡など)を有する材料をもたらした。
【0203】
[積層体の構造]
全ての積層体を6mmの熱強化(HS)ガラスで作製した。
【0204】
[C1-対照]
6mmのHSガラス|2.3mmのI1|6mmのHSガラス。Kuraray SentryGlas(登録商標)アイオノプラスト中間層を使用した一般に使用されている市販のハリケーン耐性積層体。これは、アイオノマー中間層の単層であることに留意されたい。
【0205】
[C2-対照]
6mmのHSガラス|2.3mmのI2|6mmのHSガラス。Kuraray SentryGlas(登録商標)XTRA(商標)アイオノプラスト中間層を使用した市販のハリケーン耐性積層体。これは、増強された接着性能を有するテリオノマー中間層の単層であることに留意されたい。
【0206】
[C3-対照]
6mmのHSガラス|2.3mmのPVB1|6mmのHSガラス。標準PVBを使用した市販のハリケーン耐性積層体。中間層キャリパー全体(2.3mm)は、積層体製造中に3×0.76mmのPVB1の膜を重ねることによって達成した。積層サイクルのオートクレーブ部分では、全ての膜が融合して1つの均質な中間層を形成する。
【0207】
[C4-対照]
6mmのHSガラス|2.3mmのPVB3|6mmのHSガラス。強化された剛性PVBを使用した市販のハリケーン耐性積層体。中間層キャリパー全体(2.3mm)は、積層体製造中に3×0.76mmのPVB3の膜を重ねることによって達成した。積層サイクルのオートクレーブ部分では、全ての膜が融合して1つの均質な中間層を形成する。
【0208】
[CE1-比較例]
6mmのHSガラス|2.3mm(PVB1/PVB2/PVB1)|6mmのHSガラス。中間層キャリパー全体(2.3mm)は、積層体製造中に3×0.76mmの膜を重ねることによって達成した。PVB2は、強化された音響コア層を有する三層膜を含むことに留意されたい。積層サイクルのオートクレーブ部分では、全ての膜が融合する。しかしながら、明確な音響中心層が残る。
【0209】
[CE2-比較例]
6mmのHSガラス|2.3mm(PVB3/PVB2/PVB3)|6mmのHSガラス。中間層キャリパー全体(2.3mm)は、積層体製造中に3×0.76mmの膜を重ねることによって達成した。積層サイクルのオートクレーブ部分では、全ての膜が融合する。しかしながら、PVB2の膜による明確な音響中心層が残る。
【0210】
[E1-実施例]
6mmのHSガラス|2.3mm(I1|CI2/TPE/CI2|I1)|6mmのHSガラス。中間層キャリパー全体(2.3mm)は、積層体製造中に3×0.76mmの膜を重ねることによって達成した。積層サイクルのオートクレーブ部分では、全ての膜が融合する。しかしながら、明確な音響中心層(TPE)が残る。
【0211】
[E2-実施例]
6mmのHSガラス|2.3mm(I2|CI2/TPE/CI2|I2)|6mmのHSガラス。中間層キャリパー全体(2.3mm)は、積層体製造中に3×0.76mmの膜を重ねることによって達成した。積層サイクルのオートクレーブ部分では、全ての膜が融合する。しかしながら、明確な音響中心層(TPE)が残る。アイオノマーI2は、アイオノマーI1と比較して接着性が増強されている。
【0212】
[物理特性評価]
以下の特性を、積層ガラスの実施例、対照、および比較例それぞれについて測定した。
【0213】
ハリケーン性能(ASTM E1996-2017)-大型飛翔体衝撃(レベルD)、続いて6.22kPaのピーク圧力までの圧力サイクル(4,500の正サイクルのみ)。
【0214】
音響遮蔽特性-ASTM E90-2016により音響透過損失(STL)特性を生成し、次いで、ASTM E413-2010を使用して音響透過クラス(STC)を抽出。
【0215】
積層体のヘイズ-上記のASTM D1003-61(方法A)に従って決定。
【0216】
積層構造および測定結果を表2に要約する。これらの結果から分かるように、本発明に準拠した中間層を使用することによってのみ、音響遮蔽性能、ハリケーン耐性、日射遮蔽性能、およびヘイズ特性の全体的に望ましい組み合わせを有する積層体が提供された。
【0217】
【表1】
【0218】
【表2】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの層を含む多層ポリマー中間層であって、前記中間層が、層A/層B/層Cの構造を有し、
(1) 層Aが、第1のアイオノマー樹脂組成物の層であり、
(2) 層Cが、第2のアイオノマー樹脂組成物の層であり、
(3) 層Bが、層Aと層Cとの間の音響減衰層である、
多層ポリマー中間層において、
(i) 層Bが、1つ以上の層を含み、そのうちの少なくとも1つが、音響減衰樹脂組成物の層であり、
(ii) 層Aおよび層Cの厚さがそれぞれ、個別に0.5mm~2.5mmであり、
(iii) 層Bの厚さが、0.01mm~4mmであり、かつ
(iv) 多層ポリマー中間層の厚さが、2mm~5mmである
ことを特徴とする、多層ポリマー中間層。
【請求項2】
層Bが、少なくとも3つの層を含み、前記少なくとも3つの層が、同じであっても異なっていてもよいアイオノマー樹脂組成物を含む少なくとも2つの層に挟まれた音響減衰樹脂組成物を含む少なくとも1つの層を含む、請求項1記載の多層ポリマー中間層。
【請求項3】
層Bが、層B1/層B2/層B3の三層構造であり、層B1および層B3が、それぞれ、第3のアイオノマー樹脂組成物および第4のアイオノマー樹脂組成物を含み、層B2が、音響減衰樹脂組成物を含む、請求項2記載の多層ポリマー中間層。
【請求項4】
層B2の厚さが、0.01mm以上0.5mm以下であり、かつ/または層B1および層B3の厚さが、それぞれ個別に、0.25mm~1.0mmであり、かつ/または層B1+層B2+層B3の合計厚さが、0.5mm以上2mm以下である、請求項3記載の多層ポリマー中間層。
【請求項5】
前記第3のアイオノマー樹脂組成物および前記第4のアイオノマー樹脂組成物が、それぞれ個別に、以下:
(A)
(i) エチレンと、
(ii) 10質量%~30質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
が共重合した単位から実質的になるジポリマーであって、
前記共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、前記共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%である、
ジポリマー、および
(B)
(i) エチレンと、
(ii) 10質量%~30質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
(iii) 2質量%~15質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸エステルと、
(iv) 任意選択的に、(iii)+(iv)が15質量%以下となるような量の、(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸誘導体と、
が共重合した単位から実質的になるターポリマーであって、
前記共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、前記共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%である、
ターポリマー、
から選択される部分的に中和されたエチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーであるアイオノマー樹脂を含む、請求項3または4記載の多層ポリマー中間層。
【請求項6】
前記第1のアイオノマー樹脂組成物および前記第2のアイオノマー樹脂組成物が、それぞれ個別に、以下:
(A)
(i) エチレンと、
(ii) 10質量%~30質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
が共重合した単位から実質的になるジポリマーであって、
前記共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、前記共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%であり、α,β-不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、ナトリウム対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成している、
ジポリマー、および
(B)
(i) エチレンと、
(ii) 10質量%~30質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸と、
(iii) 2質量%~15質量%の、3~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,β-不飽和カルボン酸エステルと、
(iv) 任意選択的に、(iii)+(iv)が15質量%以下となるような量の、(iii)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体と、
が共重合した単位から実質的になるターポリマーであって、
前記共重合した単位の質量百分率が、エチレンと酸のコポリマーの総質量を基準としており、前記共重合した単位の質量百分率の合計が100質量%である、
ターポリマー、
から選択される部分的に中和されたエチレンα,β-不飽和カルボン酸コポリマーであるアイオノマー樹脂を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項7】
前記音響減衰樹脂組成物の層が、1,000Hzおよび20℃で、ASTM D4065-12 - Shear Geometryによって測定して、10MPa~100MPaの弾性率および1.0~2.0のタンジェント・デルタ(tanδ)(減衰)を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項8】
前記音響減衰樹脂が、
(i) 芳香族ビニルポリマーブロック(a)であって、前記芳香族ビニルポリマーブロックを基準として60mol%以上の芳香族ビニルモノマー単位を含む、芳香族ビニルポリマーブロック(a)と、
(ii) 脂肪族不飽和ポリマーブロック(b)であって、前記脂肪族不飽和ポリマーブロックを基準として60mol%以上の共役ジエンモノマー単位を含む、脂肪族不飽和ポリマーブロック(b)と
を有するブロックコポリマーの水素化生成物であり、
前記脂肪族不飽和ポリマーブロック(b)が、合計50モル%以上のイソプレン単位およびブタジエン単位を前記共役ジエンモノマー単位として含み、かつ
共役ジエンモノマー単位に由来する前記脂肪族不飽和ポリマーブロックの残留炭素-炭素二重結合の量が2~40mol%である
、請求項1から7までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項9】
前記多層ポリマー中間層の厚さが、2mm~4mm、または2mm~3mm、または2mm~2.3mmである、請求項1からまでのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項10】
可塑剤を実質的に含まない、請求項1からまでのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の多層ポリマー中間層を含む、ガラス積層体。
【請求項12】
ASTM E90-2016に従って測定して少なくとも40の少なくとも音響透過クラス(STC)の防音性能を呈し、かつASTM E1996-2017に従って測定される大型飛翔体衝撃および圧力サイクルハリケーン耐性試験に合格する、請求項11記載のガラス積層体。
【請求項13】
ASTM E90-2016に従って測定およびASTM E413-10に従って分析して少なくとも40の音響透過クラス(STC)を呈し、かつASTM E1996-2017に従って測定して6.22kPaのピーク圧力でハリケーン耐性試験の正圧セクションに合格する、請求項11または12記載のガラス積層体。
【請求項14】
STCが55までである、請求項11から13までのいずれか1項記載のガラス積層体。
【請求項15】
総厚が8mm~25mmである、請求項11から14までのいずれか1項記載のガラス積層体。
【国際調査報告】