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特表2022-519614早期着火を防止するための潤滑油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】早期着火を防止するための潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 139/00 20060101AFI20220316BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20220316BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20220316BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20220316BHJP
   C10M 133/12 20060101ALI20220316BHJP
   C10M 143/10 20060101ALI20220316BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20220316BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220316BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
C10M139/00 A
C10M101/02
C10M107/02
C10M129/10
C10M133/12
C10M143/10
C10N10:04
C10N30:00 Z
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545443
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2020052397
(87)【国際公開番号】W WO2020161008
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】1901052
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514170019
【氏名又は名称】トタル マーケティング セルヴィス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ・フォール
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディン・パピン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB31A
4H104BB41A
4H104BE07C
4H104BJ05C
4H104CA04A
4H104CA07C
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104FA02
4H104LA20
4H104PA41
(57)【要約】
本発明は、(i)少なくとも1つのホウ素誘導体と、(ii)少なくとも1つの基油とを含む潤滑油組成物の、車両エンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するための使用に関し、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間使用され、潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのホウ素誘導体と、
(ii)少なくとも1つの基油と
を含む潤滑油組成物の、車両のエンジン、好ましくは自動車のエンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するための使用であって、
前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、前記車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用され、
前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである、潤滑油組成物の使用。
【請求項2】
前記ホウ素誘導体は、ホウ酸誘導体、ボロン酸誘導体、ボロン酸塩、ホウ酸塩、ホウ酸塩化分散剤、例えばホウ素スクシンイミド誘導体、特にホウ酸塩化ポリイソブテンスクシンイミド、ホウ酸塩化洗浄剤、単純オルトホウ酸塩、ホウ酸エポキシド、ホウ酸エステル、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ホウ素の含有量は150質量ppm~300質量ppm、好ましくは150質量ppm~260質量ppmの範囲である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記基油は、III群の油、IV群の油、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記潤滑油組成物は、少なくとも1つの酸化防止添加剤、特に、ジフェニルアミン、フェノール、フェノールエステル、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸化防止添加剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記潤滑油組成物は、前記潤滑油組成物の全質量に対して酸化防止添加剤を0.05質量%~2質量%、好ましくは0.5質量%~1質量%含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記潤滑油組成物は、請求項1又は2に定義したホウ素誘導体と異なり、アルカリ土類金属塩から、好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1つの洗浄添加剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記潤滑油組成物は、水素化又は非水素化ホモポリマー又はコポリマー、スチレン、ブタジエン、及びイソプレンから選択され、好ましくは、水素化スチレン/イソプレンコポリマーである、少なくとも1つの粘度指数向上添加剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記潤滑油組成物は、前記潤滑油組成物の全質量に対して粘度指数向上添加剤を2質量%~15質量%含む、請求項8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
少なくとも1つの基油を含む潤滑油組成物における、少なくとも1つのホウ素誘導体、特に請求項2に定義したホウ素誘導体の使用であって、
前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmであり、
車両のエンジン、好ましくは自動車のエンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するための使用であり、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、前記車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用される、使用。
【請求項11】
少なくとも1つの基油を含む潤滑油組成物における、少なくとも1つのホウ素誘導体、特に請求項2に定義したホウ素誘導体の使用であって、
前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は、150質量ppm~350質量ppmであり、
新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、前記車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用された後の前記潤滑油組成物の、車両のエンジン、好ましくは自動車のエンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減する観点から性能の劣化を抑制するための、使用。
【請求項12】
少なくとも1つのホウ素誘導体、特に請求項2に定義したホウ素誘導体の使用であって、
高圧示差走査熱量測定によって測定される潤滑油組成物の着火温度を、ホウ素誘導体化合物を含まない使用済み潤滑油組成物と比べて、特に、少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%上昇させる目的のための使用であり、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、前記車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用され、前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである、使用。
【請求項13】
車両のエンジン、好ましくは自動車のエンジンにおける早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減する方法であって、少なくとも以下の工程:
a)前記エンジンを少なくとも1つの基油及び少なくとも1つのホウ素誘導体を含む潤滑油組成物に接して設置し、前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである工程;
b)前記エンジンを、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、前記車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって作動させる工程を備える、方法。
【請求項14】
前記潤滑油組成物が請求項2~9のいずれか一項に定義したものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
潤滑油組成物の使用であって、
前記潤滑油組成物は、
(i)前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量が150質量ppm~350質量ppmである、少なくとも1つのホウ素誘導体と、
(ii)少なくとも1つの基油と
を含み、車両のエンジン、好ましくは自動車のエンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するための使用であり、
前記潤滑油組成物は、GFC Lu-43A-11法に従って、150℃を超える温度、好ましくは150℃~170℃で、少なくとも110時間の間、好ましくは120時間~150時間、鉄触媒による反応を受けた、潤滑油組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両エンジンにおいてとりわけ使用され得る潤滑油の分野、特にエンジンにおける早期着火を防止又は低減するための潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火エンジンにおける正常燃焼は、理想的な条件下では、可燃性混合物、とりわけ燃料と空気との混合物が、点火プラグからスパークが生成されることによってシリンダ内部の燃焼室で点火される場合に起こる。そのような正常燃焼は、一般的に、秩序立って制御された様式で燃焼室を通る火炎面の膨張が特徴である。
【0003】
しかし、空気/燃料混合物は、ある特定の場合には、点火プラグからのスパークによる点火の前に発火源によって早期に点火され得、それは早期着火として知られる現象に結びつく。
【0004】
ここで、早期着火を低減又は更には除去することが好ましい。なぜならば、これは一般的に、燃焼室の温度及び圧力の大きな上昇に反映され、従って、エンジンの効率及び総合的性能に重大な悪影響を及ぼすからである。更に、早期着火は、シリンダ、ピストン、点火プラグ、及びエンジン内のバルブに重大な損傷を引き起こす可能性があり、ある特定の場合には、更に、エンジンの機能停止又は更にはエンジンの故障をもたらす可能性がある。
【0005】
最近になって、低速早期着火(LSPI)は、とりわけ、自動車製造者によって、小型エンジンについての潜在的な問題として確認されている。LSPIは、一般的には低速及び高負荷で起こり、ピストン及び/又はシリンダへの深刻な損傷につながる可能性がある。
【0006】
加えて、早期着火、特にLSPIの防止及び/又は低減は、経時的に、つまり、潤滑油組成物の長期間の使用の間、例えば、2回のオイル交換の間、又は所定のキロメートルを運転した後に、維持されなければならない。
【0007】
先行技術
この複雑な現象について説明しようと、いくつかの理論が提唱されている。燃焼室内に少量の潤滑油が存在すると、燃料と混ざり、早期着火を悪化させる場合があることがとりわけ観察されている。また、燃焼室内の堆積物の存在とLSPIの発生との関連を確立することができている。最後に、エンジン自体の設計は早期着火に影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
従って、この現象は非常に複雑で、予測するのが困難であることが分かる。上記のように、潤滑油の性質は甚だ、その現象の一因となり、早期着火、特にLSPIの危険を防止又は低減することができる潤滑油組成物が既に提案されている。
【0009】
従って、国際公開第2015/023559号パンフレットには、潤滑油組成物に点火を遅らせるための添加剤を添加することによって早期着火を低減する方法であって、前記添加剤は少なくとも1つの芳香核を含む有機化合物から選択される方法が記載されている。
【0010】
しかし、これらの軽質有機化合物は、潤滑油の揮発性の過度の増加を引き起こす可能性がある。
【0011】
従って、また、国際公開第2017/021521号パンフレットに記載されているように、ポリアルキレングリコールを添加すること、又はこれに代えて、国際公開第2017/021523号パンフレットに従って潤滑油組成物にモリブデンジチオフォスフェート及び無硫黄モリブデン錯体から選択される有機モリブデン化合物を組み込んで、エンジンにおける早期着火を防止又は低減することも提案されている。
【0012】
カルシウム系洗浄剤の含有量がLSPIを引き起こすことに強い影響力を及ぼすことも知られている。従って、車両エンジンにおけるLSPIを低減するために意図した潤滑油組成物において、カルシウム系洗浄剤をマグネシウム系洗浄剤で置き換えることが提案されている。
【0013】
本発明者らは、早期着火が潤滑油組成物の長期間の使用の間に増大することを観察している。従って、早期着火は、「使用済み」潤滑油組成物の場合には特に悪化する。
【0014】
特に、とりわけ文献「Low-speed preignition」、Engine Technology International、2018年9月において、新品のときにLSPIの低減を示す潤滑油組成物は、使用済みのときにそれらの特性が悪化することが既に実証されている。
【0015】
最後に、先行技術において新品の潤滑油組成物のために推奨された解決法は、使用済み組成物の場合には不十分であることが分かる。
【0016】
文献米国特許出願公開第2015/322367(A1)号明細書には、基油及び有機酸のアルカリ土類金属を含む洗浄剤を含む組成物で潤滑化されるエンジンにおいてLSPIを防止又は低減する方法が記載されている。
【0017】
しかし、前記文献は、ホウ素誘導体によって、それを含む潤滑油組成物に与えられやすい具体的な特性について全く言及がなく、具体的なホウ素含有量の存在についても言及がない。
【0018】
更に、少なくとも1つのモリブデン誘導体及び少なくとも1つのホウ素誘導体の組み合わせは、潤滑油組成物の燃費特性を保つ目的で、国際公開第2017/013238号パンフレットに既に記載されている。
【0019】
しかし、前記文献は、いかなる方法においても、エンジンにおいて発生し得る早期着火への、この組み合わせの又は添加剤のうちの1つの単独でのいかなる効果も示唆していない。
【0020】
本発明の目的のために、用語「使用済み潤滑油組成物」は、少なくとも1回のオイル交換間隔の間に、つまり、車両が走行する10,000km~30,000km、好ましくは15,000km~30,000kmの距離にわたって使用される潤滑油組成物を示すことを意図する。
【0021】
本発明に従って使用される表現「長期にわたる」又は「長期での」は、潤滑油組成物の使用が使用済み潤滑油組成物まで及ぶことを意味する。
【0022】
本発明の目的において、用語「新品の潤滑油組成物」は、エンジンにおいてまだ使用されていない潤滑油組成物を示すことを意図する。
【0023】
本発明の目的において、用語「劣化した潤滑油組成物」は、エンジンにおける潤滑油組成物の使用条件のシミュレーションによって、人工劣化を受けた潤滑油組成物を示すことを意図する。この人工劣化は、オイル交換間隔の間にエンジンにおいて使用されるときの油の劣化を加速度的に再現することを可能にする。特に、それは、GFC Lu-43A-11法に従って、150℃を超える温度、好ましくは150℃~170℃で、少なくとも110時間の間、好ましくは120時間~150時間、鉄触媒による酸化反応を受ける潤滑油組成物である。
【0024】
使用済み潤滑油組成物について本発明に従って定義する実施形態はすべて、劣化した潤滑油組成物に適用可能である。
【0025】
上述のように、早期着火は、潤滑油組成物の使用の間により悪化する傾向を有し、従って、潤滑油組成物は新品の場合に限り実際に効果的である。明白な理由で、早期着火を防止するための解決法で長続きするものを提案することが必要である。
【0026】
従って、その使用の間において長期的に、より正確には、一旦潤滑油組成物が使用済みとなっても、エンジン、特に自動車エンジンの早期着火、特にLSPIを防止及び/又は低減する能力を有する潤滑油組成物の必要性が残っている。
【0027】
先行技術において支持されている解決法は、エンジンで起こる早期着火を低減する役割を果たすことができる特定の添加剤を選択することを推奨している。しかし、潤滑油組成物は、多くの異なる添加剤を組み込んで、潤滑油組成物に特に有利な特性を与え得るが、早期着火を防止することにどの添加剤が有益な影響を及ぼすかを予測することは可能ではなく、長期となれば尚一層可能ではない。
【0028】
従って、潤滑油組成物で使用された場合に、エンジンでのその長期間の使用の間に生じ得る早期着火を防止及び/又は低減することができる添加剤を提案する必要性が残っている。
【0029】
最後に、長期間の使用の間、とりわけエンジンのオイル交換間隔の間に、エンジンへの新品の潤滑油組成物の添加を必要としない早期着火を防止するための解決法を提案することが必要である。
【0030】
従って、各エンジンオイル交換間隔の間に潤滑油組成物を添加する必要がない、エンジンでのその使用の間に早期着火を防止及び/又は低減するための潤滑油組成物を提案する必要性がまだ残っている。
【0031】
更に、エンジンにおける潤滑油組成物の長期間の使用の間にわたって、潤滑油組成物は酸化する傾向がある。これは、潤滑油組成物の粘度の変動、潤滑油組成物中の酸化反応残渣の存在又は潤滑油組成物に接している部分での堆積物の形成をもたらし得る。これらの現象は、潤滑油組成物の特性のすべて、とりわけ作業性に悪影響があり、従って、その耐用年数及び/又はオイル交換間隔を低減する傾向にある。
【0032】
従って、また、耐酸化性を有し、特に、長期間の使用の間にわたって、とりわけエンジンのオイル交換間隔の間に、特に、酸化に関連がある有害な現象によってより影響を受けない潤滑油組成物を提案する必要性もまだ残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】国際公開第2015/023559号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2017/021521号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2017/021523号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/322367(A1)号明細書
【特許文献5】国際公開第2017/013238号パンフレット
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】「Low-speed preignition」、Engine Technology International、2018年9月
【非特許文献2】American Petroleum Institute 1509「Engine Oil Licensing and Certification System」17版、2012年9月
【非特許文献3】「The ATIEL Code of Practice」、No. 18、2012年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明は、これらの必要性を満たすことを具体的に対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
従って、その第1の態様によれば、本発明は、潤滑油組成物は、
(i)少なくとも1つのホウ素誘導体と、
(ii)少なくとも1つの基油と
を含む潤滑油組成物の、車両、好ましくは自動車のエンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するための使用であって、
前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用され、
潤滑油組成物中に存在するホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである。
【0037】
本発明の目的において、用語「自動車」は、エンジン、とりわけ、燃焼及び爆発機関、特に、往復運動ピストン又はロータリーピストン、ディーゼル又は火花点火式内燃機関によって推進される少なくとも一輪、好ましくは少なくとも二輪を備える車両を示すことを意図する。そのようなエンジンは、例えば、2サイクル若しくは4サイクルガソリン又はディーゼルエンジンであってもよい。
【0038】
本発明によれば、早期着火の防止及び/又は低減は、使用済み潤滑油組成物について、新品の潤滑油組成物と比較して優先的に測定される。
【0039】
下記の実施例から明らかになるように、すべての予想に反して、本発明者らは、劣化した潤滑油組成物において少なくとも1つのホウ素誘導体を使用することによって、前記潤滑油組成物の着火温度を著しく改善することができ、その結果として、エンジンでのその使用の間に生じ得る早期着火、特にLSPIを遅らせることができることを実証した。着火温度は、ここでは、温度上昇の間の発熱ピークの開始温度を示し、HPDSC(高圧示差走査熱量測定)によって測定される。
【0040】
本発明による潤滑油組成物中に存在するホウ素誘導体は、従って、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用される間に、早期着火、特にLSPIを有利に防止することが可能である。
【0041】
更に、以下の実施例によって示すように、潤滑油組成物中のホウ素含有量は、早期着火、特にLSPIを防止する際に有利な効果を得るために、少なくとも150質量ppmであることが必要とされる。
【0042】
更に、発明者らは、また、潤滑油組成物中のホウ素含有量が350質量ppm以下で、新品の潤滑油組成物に少なくとも1つのホウ素誘導体を添加することによって、前記潤滑油組成物の十分な耐酸化性を有利に維持できることも示した。従って、本発明に従って使用される潤滑油組成物は、エンジンでのその長期間の使用の間にわたって、とりわけオイル交換間隔の間にわたって酸化が制限されることを有利に示す。
【0043】
その結果、早期着火、特に低速早期着火の効率的な防止及び/又は低減を一定に保つために、潤滑油組成物をその使用の間、例えば、2回のエンジンのオイル交換の間で新しくする必要はない。
【0044】
別の態様によれば、本発明の主題は、また、少なくとも1つの基油を含む潤滑油組成物における少なくとも1つのホウ素誘導体、特に以下に定義するホウ素誘導体の使用であって、潤滑油組成物中に存在するホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmであり、車両、好ましくは自動車のエンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するための使用であり、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用される。
【0045】
別の態様によれば、本発明の主題は、また、少なくとも1つの基油を含む潤滑油組成物における少なくとも1つのホウ素誘導体、特に下記に定義するホウ素誘導体の使用であって、潤滑油組成物中に存在するホウ素の含有量は、150質量ppm~350質量ppmであり、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用された後の前記潤滑油組成物の、車両、好ましくは自動車のエンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減する観点から、性能の劣化を抑制するための使用である。
【0046】
発明の主題は、また、好ましくは長期での、車両、好ましくは自動車のエンジンにおける早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減する方法であって、少なくとも以下の工程:
a)エンジンを少なくとも1つの基油及び少なくとも1つのホウ素誘導体を含む潤滑油組成物に接して設置し、潤滑油組成物中に存在するホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである工程;
b)エンジンを、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって作動させる工程を備える、方法である。
【0047】
本発明は、また、潤滑油組成物の使用にも関し、潤滑油組成物は、
(i)少なくとも1つのホウ素誘導体と、
(ii)少なくとも1つの基油と
を含み、車両、好ましくは自動車のエンジンにおける早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するための使用であり、
前記潤滑油組成物は、GFC Lu-43A-11法に従って、150℃を超える温度、好ましくは150℃~170℃で、少なくとも110時間の間、好ましくは120時間~150時間、鉄触媒による酸化反応を受け、
潤滑油組成物中に存在するホウ素の含有量が150質量ppm~350質量ppmである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
組成物
ホウ素誘導体
上述したように、本発明に従って使用される潤滑油組成物は、(i)少なくとも1つのホウ素誘導体を含む。
【0049】
ホウ素誘導体は、ホウ酸誘導体、ボロン酸誘導体、ボロン酸塩、ホウ酸塩、ホウ酸塩化分散剤、例えばホウ素スクシンイミド誘導体、特にホウ酸塩化ポリイソブテンスクシンイミド、ホウ酸カルボン酸塩等のホウ酸塩化洗浄剤、単純オルトホウ酸塩、ホウ酸エポキシド、ホウ酸エステル、及びこれらの混合物からとりわけ選択されてもよい。
【0050】
より好ましくは、ホウ素誘導体は、ホウ酸塩のC10~C24脂肪酸エステル、ホウ酸塩化分散剤、例えばホウ素スクシンイミド誘導体、特にホウ酸塩化ポリイソブテンスクシンイミド、及びこれらの混合物からとりわけ選択されてもよい。
【0051】
本発明に従って使用され得るホウ素誘導体は、当業者に周知の化合物であり、当業者に公知の任意の方法に従って得られ得る。
【0052】
ホウ素誘導体は、エンジンにおいて良好なレベルの燃費を保つために潤滑油組成物でのそれらの使用でより具体的に知られている。
【0053】
これらの化合物は、また、潤滑油組成物中の分散剤又は洗浄剤としてのそれらの使用でも知られている。
【0054】
挙げることのできる市販のホウ素誘導体の一例は、Oronite社製ホウ酸塩化エステルOloa(登録商標)17503である。
【0055】
本発明に従って使用される潤滑油組成物中に存在するホウ素の含有量は、150質量ppm~350質量ppmである。
【0056】
ホウ素誘導体は、潤滑油組成物中のホウ素の合計含有量が150質量ppm~350質量ppmである限り、潤滑油組成物の全質量に対して0.01質量%~3質量%、好ましくは0.05質量%~2.5質量%、より優先的には0.1質量%~2%に及ぶ含有量で本発明に従って使用される潤滑油組成物中に存在していてもよい。
【0057】
一実施形態によれば、本発明に従って使用される潤滑油組成物は、ホウ素を150質量ppm~300質量ppm、好ましくは、ホウ素を160質量ppm~260質量ppm含む。
【0058】
基油
前述のように、本発明に従って使用される潤滑油組成物は、(ii)少なくとも1つの基油を含む。
【0059】
基油は、当業者に公知の鉱物油、合成又は天然油、動物又は植物由来の油であってもよい。
【0060】
特に、潤滑油組成物において一般的に使用される鉱物油又は合成油は、以下のTable 1(表1)にまとめられるようにAPI分類に定義する種類に従うI群~V群(又はATIEL分類に従うその均等物)のうちの1つに属する。
【0061】
API分類は、American Petroleum Institute 1509「Engine Oil Licensing and Certification System」17版、2012年9月に定義されている。
【0062】
ATIEL分類は、「The ATIEL Code of Practice」、No. 18、2012年11月に定義されている。
【0063】
【表1】
【0064】
本発明に従って使用される潤滑油組成物を調製するための種々の基油の使用については、それらの基油が、エンジン、特に車両エンジンでの使用に適した特性、とりわけ、粘度、粘度指数、硫黄含有量、又は耐酸化性に関する特性を有さなければならない事実は別として、一般的に制限はない。
【0065】
鉱物基油は、原油の常圧及び減圧蒸留、その後の溶媒抽出、脱歴、溶媒脱パラフィン、水素化処理、水素化分解、水素異性化、及び水素化仕上げ等の精製操作によって得られた任意の種類の基材を含む。
【0066】
合成基油は、エステル、シリコーン、グリコール、ポリブテン、ポリ-α-オレフィン(PAO)、アルキルベンゼン、又はアルキルナフタレンから選択されてもよい。
【0067】
基油は、また、天然由来、例えば、アルコール及びカルボン酸のエステルの油であってもよく、それらは、ヒマワリ油、菜種油、ヤシ油、大豆油等の天然資源から得られてもよい。
【0068】
基油は、より具体的には、合成油、鉱物油、及びこれらの混合物から選択されてもよい。
【0069】
一つの実施形態によれば、本発明に従って使用される潤滑油組成物は、III群の油、IV群の油、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの基油を含む。
【0070】
添加剤
本発明に従って使用される組成物は、また、上記で定義するホウ素誘導体と異なる、以下の本文でより正確に定義する1つ又は複数の添加剤も含んでいてもよい。
【0071】
本発明による組成物に組み込むことができる添加剤は、酸化防止剤、上記で定義するホウ素誘導体と異なる洗浄剤、粘度指数向上剤、摩擦調整剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、上記で定義するホウ素誘導体と異なる分散剤、流動点向上剤、消泡剤、及びこれらの混合物から選択されてもよい。
【0072】
使用された添加剤の性質は、特に、エンジンにおける早期着火、とりわけLSPIを防止及び/又は低減することに関して、潤滑油組成物の特性に影響しないように選択されることが理解される。
【0073】
これらの添加剤は、ACEA (Association des Constructeurs Europeens d'Automobiles)及び/又はAPI (American Petroleum Institute)によって定義されるパフォーマンスレベルで、車両エンジン用の潤滑油配合物のために販売され既に利用可能なもの等を個々に及び/又は混合物の形態で導入してもよく、それらは当業者に周知である。
【0074】
特定の実施形態によれば、本発明に従って使用される組成物は、また、少なくとも1つの酸化防止添加剤を含んでいてもよい。
【0075】
酸化防止添加剤は、一般的に、稼働中に組成物の劣化を遅らせることを可能にする。この劣化は、堆積物の形成、スラッジの存在、又は組成物の粘度の増加にとりわけ反映され得る。酸化防止添加剤は、とりわけ、フリーラジカル抑制剤又はヒドロペルオキシドデストロイヤーとして機能する。
【0076】
一般的に用いられる酸化防止添加剤の中でも、フェノール型の酸化防止添加剤、アミン型の酸化防止添加剤、及びリン-硫黄系酸化防止添加剤を挙げることができる。これらの酸化防止添加剤、例えば、リン-硫黄系酸化防止添加剤のうちのいくつかは、灰生成剤であってもよい。フェノール系酸化防止添加剤は、灰分を含まないものであってよく、又は中性若しくは塩基性の金属塩類の形態であってもよい。
【0077】
酸化防止添加剤は、立体障害フェノール、立体障害フェノールエステル、及びチオエーテル架橋を含む立体障害フェノール、ジフェニルアミン、少なくとも1つのC1~C12アルキル基で置換されたジフェニルアミン、N,N'-ジアルキル-アリール-ジアミン、並びにこれらの混合物からとりわけ選択されてもよい。
【0078】
好ましくは、本発明によれば、立体障害フェノールは、アルコール官能基を有する炭素に隣接する少なくとも1つの炭素が、少なくとも1つのC1~C10アルキル基、好ましくはC1~C6アルキル基、好ましくはC4アルキル基、好ましくはtert-ブチル基で置換されたフェノール基を含む化合物から選択される。
【0079】
アミン化合物は、フェノール系酸化防止添加剤と任意選択で組み合わせて使用され得るその他の種類の酸化防止添加剤である。
【0080】
アミン化合物の例は、芳香族アミン、例えば、式NR4R5R6の芳香族アミンであり、式中、R4は任意選択で置換された脂肪族又は芳香族基を表し、R5は任意選択で置換された芳香族基を表し、R6は水素原子、アルキル基、アリール基、又は式R7S(O)zR8の基を表し、式中、R7はアルキレン基又はアルケニレン基を表し、R8はアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表し、zは0、1、又は2を表す。
【0081】
硫化アルキルフェノール、又はそのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩は、また、酸化防止添加剤としても使用され得る。
【0082】
その他の種類の酸化防止添加剤は、銅化合物、例えば、チオリン酸又はジチオリン酸銅、カルボン酸の銅塩、並びにジチオカルバミン酸銅、スルホン酸銅、銅フェネート、及び銅アセチルアセトナートである。銅(I)塩及び(II)塩、並びにコハク酸又は無水物塩も使用され得る。
【0083】
本発明に従って使用される組成物は、当業者に公知の任意の種類の酸化防止添加剤を含んでいてもよい。
【0084】
有利には、本発明に従って使用される組成物は、ジフェニルアミン、フェノール類、フェノールエステル、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸化防止添加剤を含む。
【0085】
本発明に従って使用される組成物は、少なくとも1つの酸化防止添加剤を、組成物の全質量に対して0.05質量%~2質量%、好ましくは0.5質量%~1質量%含んでいてもよい。
【0086】
別の実施形態によれば、本発明に従って使用される組成物は、また、本発明に従って必要とされるホウ素誘導体と異なる少なくとも1つの洗浄添加剤も含んでいてもよい。
【0087】
洗浄添加剤は、一般的に、酸化及び燃焼副産物を溶解することによって、金属部品の表面上の堆積物の形成を低減することを可能にする。
【0088】
本発明に従って使用される組成物で使用され得る洗浄添加剤は、当業者に一般的に公知である。洗浄添加剤は、親油性炭化水素系長鎖及び親水性頭部を含むアニオン性化合物であってもよい。会合カチオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属カチオンであってもよい。
【0089】
洗浄添加剤は、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、スルホン酸塩、サリチル酸塩、及びナフテン酸塩、また、フェネート塩からも優先的に選択される。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、優先的にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、又はバリウムである。
【0090】
これらの金属塩は一般的に、金属を化学量論的量で、又は過剰に、従って化学量論的量よりも多くの量で含む。そのとき、それら金属塩は、過塩基性洗浄添加剤であり、洗浄添加剤に過塩基性の性質を与える過剰の金属は、一般的に、油に溶解しない金属塩の形態、例えば、炭酸塩、水酸化物、蓚酸塩、酢酸塩、又はグルタミン酸塩であり、優先的には炭酸塩である。
【0091】
本発明に従って使用される組成物は、当業者に公知の任意の種類の洗浄添加剤を含有していてもよい。
【0092】
有利には、本発明に従って使用される組成物は、アルカリ土類金属塩から、好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの洗浄添加剤を含む。
【0093】
特に、洗浄剤がアルカリ土類金属塩から選択される場合、洗浄添加剤は、含有量が150ppm~2,000ppm、好ましくは250ppm~1,500ppmに及ぶ金属元素をもたらすように組成物に添加されてもよい。
【0094】
更に別の実施形態によれば、本発明に従って使用される組成物は、また、粘度指数向上添加剤も含んでいてもよい。
【0095】
粘度指数向上添加剤の例として、ポリマーエステル、水素化若しくは非水素化ホモポリマー若しくはコポリマー、スチレン、ブタジエン及びイソプレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(PMA)、又はオレフィンコポリマー、とりわけエチレン/プロピレンコポリマーを挙げることができる。
【0096】
有利には、本発明に従って使用される組成物は、水素化又は非水素化ホモポリマー又はコポリマー、スチレン、ブタジエン、及びイソプレンから選択される少なくとも1つの粘度指数向上添加剤を含む。好ましくは、粘度指数向上添加剤は、水素化スチレン/イソプレンコポリマーである。
【0097】
本発明に従って使用される組成物は、例えば、粘度指数向上添加剤を、組成物の全質量に対して2質量%~15質量%含んでいてもよい。
【0098】
耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤は、摩擦面上に吸着された保護膜の形成によって摩擦面を保護する。
【0099】
多種多様な耐摩耗性添加剤が存在する。好ましくは、本発明による潤滑油組成物については、耐摩耗性添加剤は、金属アルキルチオホスフェート、特に亜鉛アルキルチオホスフェート、より詳細には亜鉛ジアルキルジチオホスフェート又はZnDTP等のリン-硫黄系添加剤から選択される。好ましい化合物は、式Zn(SP(S)(OR2)(OR3))2の化合物であり、式中、R2及びR3は同一又は異なっていてもよく、独立してアルキル基、優先的に炭素数1~18のアルキル基を表す。
【0100】
リン酸アミンは、また、本発明による組成物で使用され得る耐摩耗性添加剤である。しかし、これらの添加剤は灰生成剤であるので、これらの添加剤によって誘導されるリンは、自動車の触媒系の毒として機能する可能性がある。これらの影響は、リン酸アミンを、リン、例えば多硫化物、とりわけ硫黄系オレフィンを導入しない添加剤で部分的に置き換えることによって最小化することができる。
【0101】
本発明に従って使用される組成物は、耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤を、組成物の全質量に対して0.01質量%~6質量%、優先的には0.05質量%~4質量%、より優先的には0.1質量%~2質量%含んでいてもよい。
【0102】
本発明に従って使用される組成物は、耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤を含まないことが好ましい。特に、本発明に従って使用される組成物はリン酸系添加剤を含まなくてもよい。
【0103】
本発明に従って使用される組成物は、少なくとも1つの摩擦調整用添加剤を含んでいてもよい。摩擦調整用添加剤は、金属元素をもたらす化合物及び灰分を含まない化合物から選択されてもよい。金属元素をもたらす化合物の中で、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、又はZn等の遷移金属の錯体を挙げることができ、それらの配位子は、酸素、窒素、硫黄、又はリンの原子を含む炭化水素系化合物であってもよい。灰分を含まない摩擦調整用添加剤は、一般的に有機由来のものであり、ポリオール類の脂肪酸モノエステル、アルコキシル化アミン、アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、又はグリセロールの脂肪酸エステルから選択されてもよい。本発明によれば、脂肪族化合物は、炭素数10~24の少なくとも1つの炭化水素系基を含む。
【0104】
本発明に従って使用される組成物は、摩擦調整用添加剤を、組成物の全質量に対して0.01質量%~2質量%又は0.01質量%~5質量%、優先的には0.1質量%~1.5質量%又は0.1質量%~2質量%含んでいてもよい。
【0105】
有利には、本発明に従って使用される組成物は摩擦調整用添加剤を含まない。
【0106】
本発明に従って使用される組成物は、また、少なくとも1つの流動点降下添加剤も含んでいてもよい。
【0107】
パラフィン結晶の形成を遅くすることによって、流動点降下添加剤は、一般的に、組成物の低温挙動を改善する。
【0108】
言及することのできる流動点降下添加剤の例としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、及びポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0109】
また、本発明に従って使用される組成物は、本発明に従って必要とされるホウ素誘導体と異なる少なくとも1つの分散剤を含んでいてもよい。
【0110】
分散剤は、マンニッヒ塩基、スクシンイミド、及びそれらの誘導体から選択されてもよい。
【0111】
本発明に従って使用される組成物は、本発明に従って必要とされるホウ素誘導体と異なる分散剤を、組成物の全質量に対して、例えば、0.2質量%~10質量%含んでいてもよい。
【0112】
用途
本発明による潤滑油組成物は、エンジン、とりわけ車両エンジン、特にガソリン車両エンジンで使用されることをより具体的に意図する。
【0113】
従って、潤滑油組成物は、とりわけ粘度、粘度指数、硫黄含有量、及び耐酸化性に関する特性を有利に有し、それらは、エンジン、特に車両エンジンでの使用に適している。
【0114】
従って、好ましくは、潤滑油組成物は、標準規格ISO 3104に従って100℃で測定して、5~20mm2/s、好ましくは5~15mm2/s、より具体的には6~13mm2/sの動粘度を有する。
【0115】
前述したように、これまで説明してきた潤滑油組成物は、エンジンでのその使用によって、それが長期にわたって、とりわけ、少なくとも1回のオイル交換間隔に対応する期間の間の使用後に、前記エンジンで起こる早期着火を防止及び/又は低減することが可能であるという点で有利である。
【0116】
従って、本発明は、車両、好ましくは自動車のエンジンにおいて、早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するための、前記で定義する組成物の使用に関し、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用される。
【0117】
特に、早期着火は、エンジンにおいて低速で観察され(LSPI)、直噴エンジン、特に小型エンジンで更に悪化する。
【0118】
従って、本特許出願は、また、潤滑油組成物の使用にも関し、潤滑油組成物は、
(i)少なくとも1つのホウ素誘導体と、
(ii)少なくとも1つの基油と
を含み、車両、好ましくは自動車のエンジンにおいて、低速早期着火(LSPI)を防止及び/又は低減するための使用であり、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用され、
潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである。
【0119】
特に驚くべきことに、本発明者らは、劣化した潤滑油組成物中にホウ素誘導体が存在すると、エンジンにおける早期着火の発生を著しく低減することが可能となることが分かった。
【0120】
従って、本発明は、また、少なくとも1つの基油を含む潤滑油組成物における、特に上記で定義するような、少なくとも1つのホウ素誘導体の使用にも関し、潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmであり、前記潤滑油組成物は、車両、好ましくは自動車のエンジンにおいて早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減するために、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用される。
【0121】
以下の実施例において実証するように、特定の添加剤、すなわちホウ素誘導体を選択すると、新品の潤滑油組成物を添加することなく、エンジンでのその長期間の使用の間に生じ得る早期着火を防止及び/又は低減するための潤滑油組成物を提案することが可能となった。
【0122】
従って、更に、実施例において実証するように、本発明による潤滑油組成物の着火温度は、いかなるホウ素誘導体も含まない又は本発明に従って必要とされるホウ素誘導体と異なる更なる添加剤を含む潤滑油組成物について得られる着火温度より高い。
【0123】
言いかえれば、ホウ素誘導体の性質は、以前から知られ得たその機能から明らかには推論できなかった。
【0124】
上記に定義する潤滑油組成物は、従って、エンジンにおけるその長期間の使用によって、エンジンにおける早期着火を防止及び/又は低減する利点を有する。
【0125】
従って、本発明は、また、好ましくは長期での、車両、好ましくは自動車のエンジンにおける早期着火、特に低速早期着火を防止及び/又は低減する方法にも関し、少なくとも以下の工程:
a)エンジンを少なくとも1つの基油及び少なくとも1つのホウ素誘導体を含む潤滑油組成物に接して設置し、潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである工程;
b)エンジンを、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって作動させる工程を備える。
【0126】
上記のように、本発明に従って使用される使用済み潤滑油組成物の着火温度は、この定義に従わない使用済み潤滑油組成物の着火温度より高い。ここで、着火温度は、HPDSC(高圧示差走査熱量測定)によって測定される発熱反応の開始温度を示す。
【0127】
特に、温度上昇は、実施例に詳述する手順に従って測定して、基油を含むがホウ素誘導体を含まない潤滑油組成物の着火温度に比べて少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%、より優先的には少なくとも5%である。
【0128】
従って、本発明は、また、高圧示差走査熱量測定によって測定される潤滑油組成物の着火温度を、いかなるホウ素誘導体化合物も含まない使用済み潤滑油組成物に比べて、特に少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%上昇させる目的のための、特に上記に定義するような少なくとも1つのホウ素誘導体の使用に関し、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間、好ましくは、車両が走行する10,000km~30,000kmの距離にわたって使用され、潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである。
【0129】
本発明によれば、本発明による潤滑油組成物の特定の、有利な、又は好ましい特徴は、特定の、有利な、又は好ましい本発明による使用を定義することも可能にする。
【0130】
明細書全体にわたって、請求の範囲を含めて、表現「を含む(including a)」は、別段の指定がない限り、「少なくとも1つを含む(including at least one)」と同義であると理解されるべきである。
【0131】
用語「・・・と・・・との間(between... and...)」、「・・・から・・・を含む(comprises from... to...)」、「・・・から・・・まで形成された(formed from... to...)」、及び「・・・から・・・に及ぶ(ranging from... to...)」は、特に断りのない限り、限界値を含むと理解されるべきである。
【0132】
明細書及び実施例において、特に指示のない限り、パーセントは質量パーセントである。従って、パーセントは、潤滑油組成物の全質量に対する質量パーセントとして表される。温度は、特に断りのない限り、摂氏で表され、圧力は、特に指示のない限り、大気圧である。
【0133】
次に、本発明を以下の実施例により説明するが、言うまでもなく、以下の実施例は本発明の非限定的な例示として提示される。
【実施例
【0134】
方法
潤滑油を劣化させる方法
以下の実施例で使用する油を模擬劣化にかけた。このシミュレーションは、GFCLu43A-11法に従って、170℃で144時間、鉄100ppmで触媒された油の酸化反応によって行われる。
【0135】
早期着火傾向の実験室測定
以下に詳述する実施例において、早期着火傾向を発熱反応の開始温度に関して決定する。発熱反応の開始温度は、HPDSC(高圧示差走査熱量測定)によって測定する。
【0136】
この測定を、以下に詳述する手順に従ってメトラー・トレド社のLG3300 machineを使用して行う。
- 分析するサンプル2±0.05mgをタンクに量り取る;
- オープンサンプル及び対照を検知器の表面に置く;
- セルを機械的に密閉する;
- 1~20barの圧力をセルに加える;
- 20℃~80℃、好ましくは30℃~70℃の測定開始温度にてサンプル温度を平衡に保ち、1~15分間、好ましくは2~10分間維持する;
- 少なくとも1つの温度傾斜を、開始温度と100℃~400℃、好ましくは150℃~350℃、より優先的には200℃~300℃の温度との間でサンプルに適用する。
【0137】
STAReソフトウェア等のソフトウェアによって、サンプルと対照との間の熱交換の差を視覚化することが可能となる。
【0138】
このようにして得られた曲線上の発熱の発生温度は、LSPI等の早期着火の現象に関連している。
【0139】
この温度は時間に相関する。従って、温度がより高いほど、潤滑油組成物の使用の間の燃焼室内での早期着火はより遅くなる。
【0140】
酸化反応の測定
上述した手順(潤滑油を劣化させる方法)に従って、潤滑油組成物の耐酸化性を、鉄媒介劣化の間に評価することができる。
【0141】
潤滑油組成物の劣化の間に、潤滑油組成物のサンプル20mLを72時間、96時間、120時間で得る。144時間の終了時に最終サンプル125mLを得る。
【0142】
サンプル採取時に方法ISO 3104又はASTM D445に従って100℃で測定した動粘度値(KV100i)を劣化前のその初期値(KV1000)と比較することによって、各サンプルを、その粘度摩擦(RKV100)によってキャラクタリゼーションする。行った計算は以下のとおりである:
【0143】
【数1】
【0144】
RKV100の値が0に近いことは、潤滑油組成物の粘度が各回収時にほとんど変化しないことを意味し、それは低い酸化を示す。
【0145】
(実施例1)
潤滑油組成物の調製
潤滑油組成物A0~A3を調製した。
【0146】
それらの潤滑油組成物の100℃での動粘度を、標準規格ISO 3104に従って決定し、自己着火に対する潤滑油組成物の特性の素因を測定した。
【0147】
組成物の詳細を以下のTable 2(表2)に示す。表において、様々な化合物の割合は、質量パーセントとして示されている。
【0148】
【表2】
【0149】
Table 2(表2)に詳述した化合物を30~40℃程度の温度で混合することによって、組成物を調製する。
【0150】
このように調製した潤滑油組成物の100℃での動粘度値は、エンジン、特に車両エンジンでのそれらの使用に適している。
【0151】
その後、潤滑油組成物を、上記で詳述した手順(劣化方法)に従って劣化させる。
【0152】
(実施例2)
潤滑油組成物のLSPI性能の評価
上記で定義する測定法(実験室早期着火傾向方法)に従って、発熱反応開始温度(着火温度)を、対照油及び実施例1の潤滑油組成物について測定した。
【0153】
結果を以下のTable 3(表3)に示す。
【0154】
【表3】
【0155】
本発明による組成物A1~A3は、少なくとも1つのホウ素誘導体を含み、それらの潤滑油組成物の着火温度は、本発明に従って必要とされるいかなるホウ素誘導体も含まない同一の潤滑油組成物(対照潤滑油組成物A)の着火温度よりも高い。
【0156】
従って、これらの測定によって、劣化した潤滑油組成物に少なくとも1つのホウ素誘導体を添加することによって、潤滑油組成物の劣化をシミュレーションする条件下で、エンジンでのその使用の間に、早期着火、特にLSPIを著しく遅らせることが可能となることを実証することが可能となる。
【0157】
以下の実施例において、潤滑油組成物を調製し、いかなるホウ素誘導体も含まない対照潤滑油組成物と比較してテストした。
【0158】
この対照組成物について、100℃での動粘度を標準規格ISO 3104に従って決定した。その後、組成物を、上記で詳述した手順に従って劣化の間に酸化反応測定を行いながら、上記触媒劣化手順に従って劣化させた。最後に、発熱反応開始温度(着火温度)を、上記で定義する測定法(実験室早期着火傾向方法)に従って測定した。
【0159】
対照組成物の詳細(質量パーセント)及び得られた結果を以下のTable 4(表4)に示す。
【0160】
【表4】
【0161】
(実施例3)
潤滑油組成物の調製
潤滑油組成物B0~B2を調製した。
【0162】
それらの潤滑油組成物の100℃での動粘度を、標準規格ISO 3104に従って決定した。
【0163】
組成物の詳細を、以下のTable 5(表5)に示す。表において、様々な化合物の割合は、質量パーセントとして示されている。
【0164】
【表5】
【0165】
Table 5(表5)に詳述した化合物を30~40℃程度の温度で混合することによって、組成物を調製する。
【0166】
このように調製した潤滑油組成物の100℃での動粘度値は、エンジン、特に車両エンジンでのそれらの使用に適している。
【0167】
その後、潤滑油組成物を、上記で詳述した手順(劣化方法)に従って劣化させる。
【0168】
(実施例4)
潤滑油組成物の性能の評価
上記で定義する測定法(実験室早期着火傾向方法)に従って、発熱反応開始温度(着火温度)を、実施例1の潤滑油組成物について測定した。
【0169】
更に、各潤滑油組成物の酸化も、潤滑油組成物の劣化の全体にわたって、上述した手順(酸化の測定)に従って100℃で測定した動粘度の変動(RKV100)を測定することによって評価した。
【0170】
結果を、以下のTable 6(表6)に示す。
【0171】
【表6】
【0172】
本発明による組成物B0は、少なくとも1つのホウ素誘導体を150質量ppm~350質量ppmの含有量で含み、対照組成物について測定した着火温度より高い着火温度及び極めて満足のいく耐酸化性の両方を有する。
【0173】
対照的に、組成物B1は、ホウ素を150質量ppm未満含み、着火温度はより低く、所望の要求レベルを達成することができない。
【0174】
組成物B2については、着火温度はより高いが、その酸化安定性が長期でのエンジンでの使用に全く不適切である。
【0175】
従って、これらの測定によって、劣化した潤滑油組成物に少なくとも1つのホウ素誘導体を添加することによって、組成物にホウ素を150質量ppm~350質量ppm添加すると、良好な耐酸化性を有しながら、潤滑油組成物の劣化をシミュレーションする条件下で、エンジンでのその使用の間に、早期着火、特にLSPIを著しく遅らせることが可能となることを実証することが可能となる。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのホウ素誘導体と、
(ii)少なくとも1つの基油と
を含む潤滑油組成物の、車両のエンジンにおいて、早期着火を防止及び/又は低減するための使用であって、
前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間にわたって使用され、
前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである、潤滑油組成物の使用。
【請求項2】
前記ホウ素誘導体は、ホウ酸誘導体、ボロン酸誘導体、ボロン酸塩、ホウ酸塩、ホウ酸塩化分散剤、ホウ酸塩化洗浄剤、単純オルトホウ酸塩、ホウ酸エポキシド、ホウ酸エステル、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ホウ素の含有量は150質量ppm~300質量ppmの範囲である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記基油は、III群の油、IV群の油、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記潤滑油組成物は、少なくとも1つの酸化防止添加剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記潤滑油組成物は、前記潤滑油組成物の全質量に対して酸化防止添加剤を0.05質量%~2質量%含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記潤滑油組成物は、請求項1又は2に定義したホウ素誘導体と異なり、アルカリ土類金属塩から選択される、少なくとも1つの洗浄添加剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記潤滑油組成物は、水素化又は非水素化ホモポリマー又はコポリマー、スチレン、ブタジエン、及びイソプレンから選択される、少なくとも1つの粘度指数向上添加剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記潤滑油組成物は、前記潤滑油組成物の全質量に対して粘度指数向上添加剤を2質量%~15質量%含む、請求項8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
少なくとも1つの基油を含む潤滑油組成物における、少なくとも1つのホウ素誘導体の使用であって、
前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmであり、
両のエンジンにおいて、早期着火を防止及び/又は低減するための使用であり、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間にわたって使用される、使用。
【請求項11】
少なくとも1つの基油を含む潤滑油組成物における、少なくとも1つのホウ素誘導体の使用であって、
前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は、150質量ppm~350質量ppmであり、
新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間にわたって使用された後の前記潤滑油組成物の、車両のエンジンにおいて、早期着火を防止及び/又は低減する観点から性能の劣化を抑制するための、使用。
【請求項12】
少なくとも1つのホウ素誘導体の使用であって、
高圧示差走査熱量測定によって測定される潤滑油組成物の着火温度を、ホウ素誘導体化合物を含まない使用済み潤滑油組成物と比べて上昇させる目的のための使用であり、前記潤滑油組成物は、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間にわたって使用され、前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである、使用。
【請求項13】
車両のエンジンにおける早期着火を防止及び/又は低減する方法であって、少なくとも以下の工程:
a)前記エンジンを少なくとも1つの基油及び少なくとも1つのホウ素誘導体を含む潤滑油組成物に接して設置し、前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量は150質量ppm~350質量ppmである工程;
b)前記エンジンを、新品の潤滑油組成物を添加することなく、少なくとも1回のオイル交換間隔の間にわたって作動させる工程を備える、方法。
【請求項14】
前記潤滑油組成物が請求項2~9のいずれか一項に定義したものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
潤滑油組成物の使用であって、
前記潤滑油組成物は、
(i)前記潤滑油組成物中のホウ素の含有量が150質量ppm~350質量ppmである、少なくとも1つのホウ素誘導体と、
(ii)少なくとも1つの基油と
を含み、車両のエンジンにおいて、早期着火を防止及び/又は低減するための使用であり、
前記潤滑油組成物は、GFC Lu-43A-11法に従って、150℃~170℃で、120時間~150時間、鉄触媒による反応を受けた、潤滑油組成物の使用。
【国際調査報告】