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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】織布細胞培養基材
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/04 20060101AFI20220316BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20220316BHJP
【FI】
C12M3/04 A
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545834
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 US2020016576
(87)【国際公開番号】W WO2020163329
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/801,325
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/910,696
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フェリー,アン ミージン
(72)【発明者】
【氏名】ゴラール,ヴァシリー ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ロメオ,ロリ イー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC10
4B029CC11
4B029DC07
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC42
4B065CA44
4B065CA45
(57)【要約】
基材を有する細胞培養マトリクスが提供され、上記基材は:第1の側部;上記第1の側部の反対側の第2の側部;上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さ;及び上記基材内に形成された、上記基材の上記厚さを通過する、複数の開口を備える。上記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、上記基材の上記厚さを通る流れを可能とし、また細胞播種、増殖、及び培養のための、均一かつ効率的で拡張可能なマトリクスを提供する。上記基材は、細胞のための高い表面積/体積比と、マトリクスを通る良好な流体流とを提供する、織布ポリマーメッシュ材料から形成できる。上記細胞培養マトリクスを組み込んだバイオリアクターシステム、及び関連する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養マトリクスであって、
前記細胞培養マトリクスは:
多層基材であって、上記多層基材の各基材層は、第1の側部と、前記第1の側部の反対側の第2の側部と、前記第1の側部と前記第2の側部とを隔てる厚さと、前記基材層に形成されて、前記基材層の前記厚さを通過する、複数の開口とを備える、基材
を含み、
前記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、前記基材の前記厚さを通る流れを可能とするように構成される、細胞培養マトリクス。
【請求項2】
前記多層基材は、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項3】
前記多層基材は、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シート、及び織布メッシュシートのうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項4】
前記多層基材は、1つ以上の繊維を含む前記織布メッシュを含む、請求項3に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項5】
前記1つ以上の繊維は、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの繊維直径を有し;
前記複数の開口は、約100μm~約1000μm、約200μm~約900μm、又は約225μm~約800μmの開口直径を有する、請求項4に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項6】
前記複数の開口は規則的なパターンに配列されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項7】
前記多層基材は、少なくとも1つの第1の基材層及び少なくとも1つの第2の基材層を備え、
前記第1の基材層は、前記第2の基材層に対して所定の位置合わせを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項8】
前記多層基材は、積層構成の複数の前記基材層を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項9】
前記多層基材は、異なるジオメトリの織布メッシュを含む複数の前記基材層を含み、前記異なるジオメトリは、繊維直径、開口直径、又は開口ジオメトリのうちの少なくとも1つにおいて異なっている、請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項10】
前記多層基材は官能化表面を備え、前記官能化表面は、前記ポリマーメッシュ材料に対する前記付着細胞の付着を改善するために、物理的又は化学的に修飾される、請求項1~9のいずれか1項に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項11】
前記細胞培養マトリクスは、前記ポリマーメッシュ材料の表面上にコーティングを備え、前記コーティングは、前記付着細胞の付着を促進するよう構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞培養マトリクス。
【請求項12】
前記官能化表面はプラズマ処理される、請求項11に記載の細胞培養マトリクス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第120条の下で、2019年10月4日出願の米国仮特許出願第62/910,696号、及び2019年2月5日出願の米国仮特許出願第62/801,325号の優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は依拠され、その全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は一般に、細胞を培養するための基材、並びに細胞を培養するためのシステム及び方法に関する。特に本開示は、細胞培養基材、上記基材が組み込まれたバイオリアクターシステム、及び上記基材を用いて細胞を培養する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオプロセッシング業界では、ホルモン、酵素、抗体、ワクチン、及び細胞療法の製造を目的として、細胞の大規模培養が実施される。細胞及び遺伝子療法市場は急速に成長しており、有望な治療が臨床試験に移され、そして迅速に商業化に向かっている。しかしながら、1回の細胞療法の実施には、数十億個の細胞及び数兆個のウイルスが必要となる場合がある。従って、大量の細胞産物を短時間で提供できることは、臨床的成功のために重要である。
【0004】
バイオプロセッシングで使用される細胞の大部分は足場依存性(anchorage dependent)であり、これは即ち、これらの細胞が、成長して機能するために、付着する表面を必要とすることを意味している。伝統的に、付着細胞の培養は、Tフラスコ、ペトリ皿、細胞ファクトリー、セルスタック容器、ローラーボトル、及びHYPERStack(登録商標)容器といった多数の容器フォーマットのうちの1つに組み込まれた、2次元(2D)細胞付着表面上で実施される。これらのアプローチは、療法又は細胞の大規模製造を可能とするために十分な高さの細胞密度を達成するのが困難であることを含む、重大な欠点を有する場合がある。
【0005】
培養された細胞の体積密度を高めるために、代替的な方法が提案されている。上記代替的な方法としては、撹拌タンク内で実施されるマイクロキャリア培養が挙げられる。このアプローチでは、マイクロキャリアの表面に付着させた細胞を、一定のせん断応力に供し、増殖及び培養性能に大きな影響を与える。高密度細胞培養システムの別の例は、中空繊維バイオリアクターであり、ここでは、細胞が、繊維間の空間内で増殖するにつれて、巨大な3次元凝集体を形成できる。しかしながら、細胞の成長及びパフォーマンスは、栄養の不足によって大きく阻害される。この問題を軽減するために、これらのバイオリアクターは小型化されており、大規模製造に適していない。
【0006】
足場依存性細胞の高密度培養システムの別の例は、充填層(packed‐bed)バイオリアクターシステムである。このタイプのバイオリアクターでは、細胞基材を用いて、付着細胞の付着のための表面を提供する。培地は上記表面に沿って、又は半多孔質基材を通って灌流され、これによって、細胞成長に必要な栄養素及び酸素が供給される。例えば、細胞を捕捉するための支持体又はマトリクスシステムの充填層を内包する充填層バイオリアクターシステムが、既に特許文献1~3に開示されている。充填層マトリクスは通常、基材としての多孔質粒子、又はポリマーの不織布マイクロファイバで作製される。このようなバイオリアクターは、再循環フロースルーバイオリアクターとして機能する。このようなバイオリアクターの重要な問題の1つは、充填層内部の細胞の分布の不均一性である。例えば充填層は、細胞を主に入口領域で捕捉する深さフィルタとして機能して、接種ステップ中に細胞分布の勾配を生み出す。更に、ランダムな繊維の充填によって、充填層の断面の流れ抵抗及び細胞捕捉効率は均一でなくなる。例えば培地は、細胞充填密度が低い領域を通るときには速く流れ、捕捉される細胞の数が多いことによって抵抗が高くなる領域を通るときにはゆっくりと流れる。これにより、栄養素及び酸素が、細胞体積密度が低い領域には効率的に送達され、かつ細胞密度が高い領域が最適以下の培養条件のまま保持される、チャネリング効果が生成される。
【0007】
従来技術で開示されている充填層システムの別の重要な欠点は、培養プロセスの終了時に無傷の生存細胞を効率的に採取できないことである。最終産物が細胞である場合、又はある容器内で細胞集団を成長させた後、更なる集団の成長のために別の容器に移す「シードトレイン(seed train)」の一部として、バイオリアクターを使用する場合、細胞の採取は重要である。特許文献4は、細胞採取ステップ中の充填層からの細胞の回収の効率を改善するための、バイオリアクターの設計を開示している。これは、充填層マトリクスを緩め、充填層粒子を揺動又は撹拌して、多孔質マトリクスを衝突させることにより、細胞を分離させることに基づいている。しかしながら、このアプローチは面倒であり、また重大な細胞損傷を引き起こして、全体的な細胞生存率を低下させる恐れがある。
【0008】
現在市販されている充填層バイオリアクターの一例は、Pall Corporation製のiCellis(登録商標)である。iCellisは、不織布構成のランダムな配向の繊維からなる細胞基材材料の小さなストリップを使用する。これらのストリップを容器に詰めて、充填層を生成する。しかしながら、市場にある同様のソリューションと同様に、このタイプの充填層基材には欠点がある。具体的には、基材ストリップの不均一な充填により、充填層内に視認可能なチャネルが形成され、これは、充填層を通る優先的かつ不均一な培地流及び栄養素の分布につながる。iCellisの研究には、「細胞の個数が固定床の上部から底部に向かって増大する、細胞の全体的に不均質な分布」、並びに「細胞成長及び生産の制限につながる、栄養素の勾配」が記載されており、これらは全て、「トランスフェクション効率を損なう可能性がある、細胞の不均等な分布」につながる(非特許文献1)。また研究には、充填層の揺動は分散を改善させることができるが、他の欠点も有することが記載されている(即ち「接種及びトランスフェクション中の、より良好な分散のために必要な揺動は、せん断応力の増大を誘発することになり、これは細胞生存率の低下につながる」;同上)。別の研究には、iCellisに関して、細胞の不均一な分布により、バイオマスセンサを用いた細胞集団の監視が困難になることが記載されている(「…細胞が不均一に分布していると、トップキャリアの細胞からのバイオマスシグナルは、バイオリアクターの全体像を示さない可能性がある」;非特許文献2)。
【0009】
更に、基材ストリップ内での繊維のランダムな配置、及びiCellisの充填層毎のストリップの充填のばらつきにより、基材が培養毎に変動するため、顧客が細胞培養の性能を予測するのが困難になる場合がある。更に、iCellisの充填された基材により、細胞の効率的な採取が極めて困難又は不可能になる。というのは、細胞が充填層に捕捉されると考えられるためである。
【0010】
ローラーボトルは、取り扱いが容易であること、及び付着面上で細胞を監視できることといったいくつかの利点を有する。しかしながら、製造の観点からすると、主な欠点は、ローラーボトル構成が大面積の製造フロアスペースを占有するにもかかわらず、表面積/体積比が小さいことである。ローラーボトルフォーマットにおいて付着細胞が利用できる表面積を増大させるために、様々なアプローチが使用されてきた。いくつかの解決策が市販製品において実装されているが、ローラーボトルの生産性を更に向上させるための改善の余地がある。伝統的に、ローラーボトルは、吹込み成形プロセスによって単一の構造体として製造される。このような製造の単純さにより、ローラーボトルはバイオプロセッシング産業において経済的な面で利用可能となっている。細胞培養のために利用可能な表面積を増大させるための、いくつかのローラーボトルの修正は、製造プロセスを変更せずに達成可能であるが、修正後のローラーボトルの表面積の増大はわずかしか得られない。ローラーボトルの設計の他の修正により、製造プロセスは大幅に複雑になり、これにより、ローラーボトルがバイオプロセッシング産業において経済的な面で利用できなくなる。従って、ローラーボトルの製造に同一の吹込み成形プロセスを使用しながら、表面積及びバイオプロセッシングの生産性の増大をローラーボトルに提供することが望ましい。
【0011】
初期段階の臨床試験のためのウイルスベクターの製造は、既存のプラットフォームで可能であるが、後期の商業的製造規模に到達するためには、より多数の高品質の製品を製造できるプラットフォームが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,833,083号
【特許文献2】米国特許第5,501,971号
【特許文献3】米国特許第5,510,262号
【特許文献4】米国特許第9,273,278号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Rational plasmid design and bioprocess optimization to enhance recombinant adeno‐associated virus (AAV) productivity in mammalian cells. Biotechnol. J. 2016, 11, 290‐297
【非特許文献2】Process Development of Adenoviral Vector Production in Fixed Bed Bioreactor: From Bench to Commercial Scale. Human Gene Therapy, Vol. 26, No. 8, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
細胞分布が均一であり、また採取が容易であり、かつ採取量が増大した、高密度フォーマットでの細胞の培養を可能とする、細胞培養マトリクス、システム、及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示のある実施形態によると、細胞培養マトリクスが提供される。上記細胞培養マトリクスは基材を含み、上記基材は:第1の側部;上記第1の側部の反対側の第2の側部;上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さ;及び上記基材に形成されて、上記基材の上記厚さを通過する、複数の開口を有する。上記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、上記基材の上記厚さを通る流れを可能とするように構成される。上記基材は、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シート、及び織布メッシュシートのうちの少なくとも1つとすることができる。上記基材は規則的で整然とした構造を有し、細胞の付着、成長、及び最終的な細胞の放出のための表面を提供する。
【0016】
本開示のある実施形態によると、細胞培養のためのバイオリアクターシステムが提供され、上記システムは:少なくとも1つのリザーバを有する、細胞培養容器;及び上記少なくとも1つのリザーバ内に配置された細胞培養マトリクスを含み、上記細胞培養マトリクスは、細胞を付着させるために構成された表面を有する複数の織り合わされた繊維を有する、織布基材を含む。
【0017】
1つ以上の実施形態によると、細胞培養システムが提供され、上記システムは、バイオリアクター容器と、上記バイオリアクター容器内に配置され、細胞を培養するために構成された、細胞培養マトリクスとを含む。上記細胞培養マトリクスは基材を含み、上記基材は:第1の側部;上記第1の側部の反対側の第2の側部;上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さ;及び上記基材に形成されて、上記基材の上記厚さを通過する、複数の開口を備え、上記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、上記基材の上記厚さを通る流れを可能とするように構成される。
【0018】
1つ以上の実施形態によると、細胞を培養するためのバイオリアクターシステムが提供される。上記システムは:第1の端部と、第2の端部と、上記第1の端部と上記第2の端部との間の少なくとも1つのリザーバとを有する、細胞培養容器;及び上記少なくとも1つのリザーバ内に配置された、細胞培養マトリクスを含む。上記細胞培養マトリクスは、複数の織布基材を有し、各上記織布基材は、細胞を付着させるために構成された表面を有する、複数の織り合わされた繊維を含む。上記バイオリアクターシステムは、材料を、上記少なくとも1つのリザーバを通して、上記第1の端部から上記第2の端部への流れ方向に流すように構成され、また上記複数の織布基材は、各上記織布基材が他の各上記織布基材に対して略平行となり、また上記流れ方向に対して略垂直となるように、積層される。
【0019】
1つ以上の実施形態によると、細胞を培養するためのバイオリアクターシステムが提供される。上記システムは:第1の端部と、第2の端部と、上記第1の端部と上記第2の端部との間の少なくとも1つのリザーバとを有する、細胞培養容器;及び上記少なくとも1つのリザーバ内に配置された、細胞培養マトリクスを含み、上記細胞培養マトリクスは、複数の織布基材を含み、各上記織布基材は、細胞を付着させるために構成された表面を有する、複数の織り合わされた繊維を有する。上記バイオリアクターシステムは、材料を、上記少なくとも1つのリザーバを通して、上記第1の端部から上記第2の端部への流れ方向に流すように構成され、また上記複数の織布基材は、各上記織布基材が他の各上記織布基材に対して略平行となり、また上記流れ方向に対して略平行となるように、積層される。
【0020】
1つ以上の実施形態によると、細胞を培養するためのバイオリアクターシステムが提供される。上記システムは:第1の端部と、第2の端部と、上記第1の端部と上記第2の端部との間の少なくとも1つのリザーバとを有する、細胞培養容器;及び上記少なくとも1つのリザーバ内に配置された、細胞培養マトリクスを含む。上記細胞培養マトリクスは、織布基材を含み、上記織布基材は、細胞を付着させるために構成された表面を有する、複数の織り合わされた繊維を備え、上記織布基材は、上記少なくとも1つのリザーバ内に、巻かれた構成で配置され、これにより、円筒状細胞培養マトリクスが提供され、上記織布基材の表面が、上記円筒状細胞培養マトリクスの長手方向軸に対して平行となる。
【0021】
別の実施形態によると、バイオリアクター内で細胞を培養する方法が提供される。上記方法は、中に細胞培養チャンバを有するバイオリアクター容器と、上記細胞培養チャンバ内に配置された細胞培養マトリクスとを提供するステップを含む。上記細胞培養マトリクスは、上記細胞培養マトリクス上で細胞を培養するために提供される。上記細胞培養マトリクスは基材を含み、上記基材は:第1の側部;上記第1の側部の反対側の第2の側部;上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さ;及び上記基材に形成されて、上記基材の上記厚さを通過する、複数の開口を有する。上記方法は更に:細胞を上記細胞培養マトリクス上に播種するステップ;上記細胞を上記細胞培養マトリクス上で培養するステップ;及び上記細胞を培養する上記ステップの産物を採取するステップを含む。上記基材の上記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、上記基材の上記厚さを通る流れを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本開示の1つ以上の実施形態による、細胞培養基材の3次元モデルの斜視図
図1B図1Aの基材の2次元平面図
図1C図1Bの基材の先A‐Aに沿った断面図
図2A】いくつかの実施形態による細胞培養基材の例
図2B】いくつかの実施形態による細胞培養基材の例
図2C】いくつかの実施形態による細胞培養基材の例
図3A】1つ以上の実施形態による多層細胞培養基材の斜視図
図3B】1つ以上の実施形態による多層細胞培養基材の平面図
図4】1つ以上の実施形態による、図3Bの多層細胞培養基材の線B‐Bに沿った断面図
図5】1つ以上の実施形態による、図4の多層細胞培養基材の線C‐Cに沿った断面図
図6】1つ以上の実施形態による細胞培養システムの概略図
図7】1つ以上の実施形態による細胞培養システムの概略図
図8】1つ以上の実施形態による、巻かれた円筒構成の細胞培養マトリクス
図9】1つ以上の実施形態による、巻かれた円筒構成の細胞培養マトリクスを組み込んだ細胞培養システム
図10A】1つ以上の実施形態による細胞培養システムの概略図
図10B】1つ以上の実施形態による細胞培養システムの詳細概略図
図11A】1つ以上の実施形態による、細胞培養システムで細胞を培養するためのプロセスフローチャート
図11B】1つ以上の実施形態による、細胞培養システムの灌流流量を制御するための操作
図12】1つ以上の実施形態による、細胞培養基材上の染色済みHEK293T細胞の顕微鏡写真
図13A図12の基材上のHEK293T細胞の細胞成長及び増殖データを示すグラフ
図13B図12及び13Aからの細胞の生存率を示す棒グラフ
図14A】静止条件下で播種されたバイオリアクターからの染色済みHEK293T細胞を含む細胞培養基材の層の写真
図14B】細胞タンブリング法(cell tumbling method)で播種されたバイオリアクターからの染色済みHEK293T細胞を含む細胞培養基材の層の写真
図15】1つ以上の実施形態による、広がった細胞培養基材を含む細胞培養システムの概略断面図
図16】1つ以上の実施形態による、多層細胞培養基材を含むローラーボトルスタイルの細胞培養容器の断面図
図17A】1つ以上の実施形態による、細胞播種中に低い回転速度を用いた、ローラーボトルスタイルの細胞培養システムでの播種の後の、染色済み細胞を含む細胞培養基材の写真
図17B】1つ以上の実施形態による、細胞播種中に比較的高い回転速度を用いた、ローラーボトルスタイルの細胞培養システムでの播種の後の、染色済み細胞を含む細胞培養基材の写真
図18A】1つ以上の実施形態による、播種及び成長後であるが細胞の採取の前の、染色済み細胞を含む細胞培養マトリクスからのディスクの写真
図18B】1つ以上の実施形態による、細胞の採取後の図18Aからのディスクの写真
図19A】HYPERflaskと比較した、本開示の実施形態による2つの例に関する、採取された全細胞の実験結果
図19B】HYPERflaskと比較した、本開示の実施形態による2つの例に関する、容器あたりの全ゲノムコピーの実験結果
図19C】HYPERflaskと比較した、本開示の実施形態による2つの例に関する、表面積あたりのゲノムコピーの実験結果
図20A】本開示の1つ以上の実施形態による、密に充填された構成における、モデル化された多層織布メッシュ細胞培養基材の平面図
図20B】本開示の1つ以上の実施形態による、図20Aの多層織布メッシュ細胞培養基材の側面断面図
図21A】本開示の1つ以上の実施形態による、緩く充填された構成における、モデル化された多層織布メッシュ細胞培養基材の平面図
図21B】本開示の1つ以上の実施形態による、図21Aの多層織布メッシュ細胞培養基材の側面断面図
図22A図20A及び20Bに示されている点線容積内の、モデル化された空の空間
図22B図21A及び21Bに示されている点線容積内の、モデル化された空の空間
図23】本開示の1つ以上の実施形態による、表5からの様々なメッシュ試料A~Fの写真
図24図23からの織布メッシュ試料A~Fの透過率の棒グラフ
図25図23からの試料A~Cを用いた圧力降下試験の結果
図26】本開示の1つ以上の実施形態による、シードトレインプロセスの概略図
図27A】本開示の1つ以上の実施形態による、織布メッシュ基材を用いたバイオリアクターの流れ均一性モデル
図27B図27Aの流れ均一性モデルの拡大図
図28】織布及び不織布細胞培養基材の透過率測定値の棒グラフ
図29A】流れ方向に対して90°で整列された不織布メッシュ基材片の周囲の、シミュレーションされた流速
図29B】流れ方向に対して45°で整列された不織布メッシュ基材片の周囲の、シミュレーションされた流速
図30A】全ての近隣の基材片との間に1mmの空隙を有する不織布メッシュ基材片の周囲の、シミュレーションされた流速
図30B】全ての近隣の基材片との間に1mmの空隙を有する粗織布メッシュの周囲の、シミュレーションされた流速
図31】異なる複数の細胞培養基材試料の滞留時間分布を測定するための実験設定の概略図
図32】織布及び不織布細胞培養基材に関して、染料濃度の変化を、滞留時間分布測定中の時間に対して示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の様々な実施形態を、図面が存在する場合は図面を参照して、詳細に説明する。様々な実施形態に対する言及は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。更に、本明細書に記載のいずれの例は限定的なものではなく、ただ単に、請求対象の発明の多数の可能な実施形態の一部を説明するものである。
【0024】
本開示の実施形態は:細胞培養基材;並びに上記基材を組み込んだ細胞培養又はバイオリアクターシステム;並びに上記基材及びバイオリアクターシステムを用いて細胞を培養する方法に関する。
【0025】
従来の大規模細胞培養バイオリアクターでは、様々なタイプの充填層バイオリアクターが使用されてきた。これらの充填層は通常、付着又は懸濁細胞を保持し、成長及び増殖をサポートするための、多孔質マトリクスを内包する。充填層マトリクスは、高い表面積/体積比を提供し、従って細胞密度を他のシステムよりも高くすることができる。しかしながら、充填層は多くの場合深さフィルタとして機能し、細胞がマトリクスの繊維内に物理的に捕捉されるか、又は引っかかる。よって、充填層を通る細胞接種材料の直線状の流れにより、細胞は充填層内で不均質に分布することになり、これは、充填層の深さ又は幅を通る細胞密度のばらつきにつながる。例えば、細胞密度は、バイオリアクターの入口領域では高く、バイオリアクターの出口に近づくほど有意に低くなる可能性がある。このような充填層内での細胞の不均一な分布は、バイオプロセス製造におけるこのようなバイオリアクターの拡張性及び予測可能性を著しく妨げ、細胞の成長又はウイルスベクターの産生に関して、充填層の単位面積又は体積あたりの効率の低下をもたらす可能性さえある。
【0026】
従来技術において開示されている充填層バイオリアクターに見られる別の問題は、チャネリング効果である。充填された不織布繊維のランダムな性質により、充填層のいずれの所与の断面における局所的な繊維密度は均一にならない。培地は、繊維密度が低い(充填層透過率が高い)領域を迅速に流れ、繊維密度が高い(充填層透過率が低い)領域をはるかにゆっくりと流れる。このようにしてもたらされる、充填層にわたる不均一な培地の灌流は、チャネリング効果を生成し、これは、栄養素及び代謝物の有意な勾配として出現し、全体的な細胞培養及びバイオリアクターの性能に悪影響を及ぼす。培地の灌流が少ない領域に位置する細胞は、飢餓状態となり、栄養素の欠乏又は代謝物中毒によって死に至ることも多い。細胞の採取は、不織布繊維質足場を充填したバイオリアクターを使用する場合に見られる更に別の問題である。充填層が深さフィルタとして機能するため、細胞培養プロセスの最後に放出された細胞は、充填層内に捕捉され、細胞の回収率が極めて低くなる。これにより、生きた細胞が産物となるバイオプロセスにおける、このようなバイオリアクターの利用が制限される。このように、上記不均一性によって、複数のエリアの、流れ及びせん断への曝露が異なるものとなり、これは使用可能な細胞培養エリアを効果的に減少させて、不均一な培養を引き起こし、トランスフェクションの効率及び細胞の放出を妨げる。
【0027】
既存の細胞培養ソリューションのこれらの及びその他の問題に対処するために、本開示の実施形態は、足場依存性細胞のための効率的で高収率の細胞培養、及び細胞産物(例えばタンパク質、抗体、ウイルス粒子)の産生を可能とする、細胞成長基材、上記基材のマトリクス、及び/又は上記基材を用いた充填層システムを提供する。実施形態は、均一な細胞の播種及び培地/栄養素の灌流、並びに効率的な細胞の採取を可能とする、多孔質基材材料の整然とした規則的なアレイから作製された、多孔質細胞培養マトリクスを含む。実施形態はまた、実施形態の均一なパフォーマンスを犠牲にすることなく、細胞の播種及び成長、並びに/又は細胞産物の採取が可能な基材及びバイオリアクターを用いた、プロセス開発規模から完全な生産の規模へ拡張可能な細胞培養ソリューションを可能とする。例えばいくつかの実施形態では、バイオリアクターは、プロセス開発規模から生産の規模へ容易に拡張でき、この生産の規模全体にわたって、基材の単位表面積あたりのウイルスゲノム数(VG/cm)は同等である。本明細書に記載の実施形態は、採取及び拡張が容易であるため、同一の細胞基材上で複数の規模で細胞集団を成長させるための効率的なシードトレインにおいて使用できる。更に、本明細書に記載の実施形態は、表面積が大きな細胞培養マトリクスを提供し、この大きな表面積は、本明細書に記載の他の特徴と共に、高収率細胞培養ソリューションを可能とする。いくつかの実施形態では、例えば本明細書に記載の細胞培養基材及び/又はバイオリアクターは、バッチあたり1016~1018個のウイルスゲノム(VG)を産生できる。
【0028】
一実施形態では、マトリクスは、細胞を付着させて増殖させるための、構造的に定義された表面積を備え、これは良好な機械的強度を有し、また充填層又は他のバイオリアクターに組み付けたときに、極めて均一な、相互接続された多数の流体ネットワークを形成する。特定の実施形態では、機械的に安定した非分解性の織布メッシュを、付着細胞の産生をサポートするための基材として使用できる。本明細書で開示される細胞培養マトリクスは、高体積密度フォーマットでの、足場依存性細胞の付着及び増殖をサポートする。このようなマトリクスの均一な細胞播種は、細胞又はバイオリアクターの他の産物の効率的な採取と同様に達成可能である。更に、本開示の実施形態は、接種ステップ中の均一な細胞分布を提供して、本開示のマトリクス上での付着細胞のコンフルエントな単層又は多層を達成するために、細胞培養をサポートし、また、栄養素の拡散の制限及び代謝物濃度の上昇を伴う、大型の及び/又は制御できない3D細胞凝集物の形成を回避できる。よって、上記マトリクスは、バイオリアクターの動作中の拡散の制限を排除する。更に上記マトリクスにより、バイオリアクターからの細胞の採取を容易かつ効率的にすることができる。1つ以上の実施形態の、構造的に定義されたマトリクスは、バイオリアクターの充填層からの、完全な細胞回収及び一貫した細胞採取を可能にする。
【0029】
いくつかの実施形態によると、治療用タンパク質、抗体、ウイルスワクチン、又はウイルスベクターのバイオプロセッシング産生のためのマトリクスを有するバイオリアクターを用いた、細胞培養の方法も提供される。
【0030】
細胞培養バイオリアクターに使用されている既存の細胞培養基材(即ちランダムに並べられた繊維の不織布基材)とは対照的に、本開示の実施形態は、定義され整然とした構造を有する細胞培養基材を含む。この定義され整然とした構造により、一貫した、また予測可能な、細胞培養結果を実現できる。更に、基材は粗い(open)多孔質構造を有し、これにより、細胞の捕捉が防止され、充填層を通る均一な流れが可能となる。この構造により、細胞の播種、栄養素の送達、細胞の成長、及び細胞の採取を改善できる。1つ以上の特定の実施形態によると、上記マトリクスは、薄いシート状の構造を有する基材材料で形成され、上記構造は、比較的小さな厚さによって隔てられた第1の側部及び第2の側部を有し、従ってシートの厚さは、基材の第1及び第2の側部の幅及び/又は長さに比べて小さい。更に、複数の孔又は開口が、基材の厚さを通って形成される。開口と開口の間の基材材料は、細胞を基材材料の表面に、略2次元(2D)表面であるかのように接着させることができる一方で、基材材料の周囲の、及び開口を通る、適切な流体流を可能とするような、サイズ及びジオメトリのものである。いくつかの実施形態では、基材はポリマー系材料であり:成形ポリマーシート;厚さを通るようにパンチングされた開口を有するポリマーシート;融合してメッシュ状層となった多数のフィラメント;3D印刷された基材;又は織られてメッシュ層となった複数のフィラメントとして形成できる。マトリクスの物理的構造は、足場依存性細胞の培養のために、高い表面/体積比を有する。様々な実施形態によると、マトリクスは、均一な細胞の播種及び成長、均一な培地の灌流、並びに効率的な細胞の採取のために、本明細書に記載の特定の方法で、バイオリアクター内に配設又は充填できる。
【0031】
本開示の実施形態は、バッチあたり約1014個超のウイルスゲノム、バッチあたり約1015個超のウイルスゲノム、バッチあたり約1016個超のウイルスゲノム、バッチあたり約1017個超のウイルスゲノム、又はバッチあたり約g1016個超のウイルスゲノムという規模でウイルスゲノムを産生できる実用的なサイズの、ウイルスベクタープラットフォームを達成できる。いくつかの実施形態では、産生は、バッチあたり約1015~約1018個以上のウイルスゲノムである。例えばいくつかの実施形態では、ウイルスゲノムの収量は、バッチあたり約1015~約1016個のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1016~約1019個のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1016~1018個のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1017~約1019個のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1018~約1019個のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1018個以上のウイルスゲノムとすることができる。
【0032】
更に、本開示の実施形態は、細胞培養基材への細胞の付着及び成長だけでなく、培養した細胞の、生存状態での採取も可能にする。生存細胞を採取できないことは、現行のプラットフォームの重大な欠点であり、これにより、生産能力のために十分な数の細胞の構築及び維持が困難となる。本開示の実施形態のある態様によると、80%~100%、又は約85%~約99%、又は約90%~約99%の生存率での、細胞培養基材からの生存細胞の採取が可能である。例えば、採取される細胞のうち、少なくとも80%が生存しているか、少なくとも85%が生存しているか、少なくとも90%が生存しているか、少なくとも91%が生存しているか、少なくとも92%が生存しているか、少なくとも93%が生存しているか、少なくとも94%が生存しているか、少なくとも95%が生存しているか、少なくとも96%が生存しているか、少なくとも97%が生存しているか、少なくとも98%が生存しているか、又は少なくとも99%が生存している。細胞は、例えばトリプシン、TrypLE、又はAccutaseを用いて、細胞培養基材から放出させることができる。
【0033】
図1A及び1Bはそれぞれ、本開示の1つ以上の実施形態の一例による細胞培養基材100の、3次元(3D)斜視図及び二次元(2D)平面図を示す。細胞培養基材100は、第1の方向に延在する第1の複数の繊維102と、第2の方向に延在する第2の複数の繊維104とからなる、織布メッシュ層である。基材100の織られた繊維は、複数の開口106を形成し、これは1つ以上の幅又は直径(例えばD、D)によって画定できる。上記開口のサイズ及び形状は、織りのタイプ(例えばフィラメントの数、形状、及びサイズ;交差するフィラメント間の角度等)に基づいて変更できる。織布メッシュは、マイクロスケールでは、2次元シート又は層として特性決定できる。しかしながら、織布メッシュを綿密に検査すると、メッシュの交差する繊維の上下による3次元構造が明らかになる。よって図1Cに示されているように、織布メッシュ100の厚さTは、単一の繊維の厚さ(例えばt)よりも厚くなり得る。本明細書中で使用される場合、厚さTは、織布メッシュの第1の側部108と第2の側部110との間の最大厚さである。理論によって束縛されることを望むものではないが、基材100の3次元構造は、付着細胞の培養のための大きな表面積を提供し、またメッシュの構造的剛性により、均一な流体流を可能とする、一貫した予測可能な細胞培養マトリクス構造を提供できるため、有利であると考えられる。
【0034】
図1Bでは、開口106は、対向する繊維102の間の距離として定義される直径D、及び対向する繊維104の間の距離として定義される直径Dを有する。D及びDは、織りのジオメトリに応じて、等しくても等しくなくてもよい。D及びDが等しくない場合、大きい方を大直径、小さい方を小直径と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、ある開口の直径は、該開口の最も幅が広い部分を指してよい。特段の記載がない限り、本明細書中で使用される開口直径は、ある開口の対向する側部にある平行な繊維の間の距離を指すことになる。
【0035】
複数の繊維102のうちのある所与の繊維は、厚さtを有し、複数の繊維104のうちのある所与の繊維は、厚さtを有する。図1Aに示されているような円形断面、又は他の3次元断面を有する繊維の場合、厚さt及びtは、繊維断面の最大直径又は厚さである。いくつかの実施形態によると、複数の繊維102は全て同一の厚さtを有し、複数の繊維104は全て同一の厚さtを有する。更に、t及びtは等しくてもよい。しかしながら1つ以上の実施形態では、複数の繊維102が複数の繊維104とは異なる場合等には、t及びtは等しくない。更に、複数の繊維102及び複数の繊維104がそれぞれ、2つ以上の異なる厚さ(例えばt1a、t1b等、及びt2a、t2b等)の繊維を含んでいてもよい。実施形態によると、厚さt及びtは、その上で培養される細胞のサイズに比べて大きいため、繊維は、細胞を基準に考えるとほとんど平坦に近い表面を提供し、これにより、繊維のサイズが小さな(例えば細胞の直径のスケールである)他のいくつかのソリューションに比べて、良好な細胞の付着及び成長を実現できる。図1A~1Cに示されているような、織布メッシュの3次元的性質により、細胞の付着及び増殖に利用可能な繊維の2D表面積は、同等の平坦な2D表面上での付着のための表面積よりも大きくなる。
【0036】
1つ以上の実施形態では、繊維は:約50μm~約1000μm;約100μm~約750μm;約125μm~約600μm;約150μm~約500μm;約200μm~約400μm;約200μm~約300μm;又は約150μm~約300μmの直径を有してよい。マイクロスケールレベルでは、細胞と比較した場合の繊維のスケール(例えば繊維直径が細胞より大きいこと)により、モノフィラメント繊維の表面が、付着細胞が付着して増殖するための2D表面に近いものとして提示される。繊維を織って、約100μm×100μm~約1000μm×1000μmの開口を有するメッシュとすることができる。いくつかの実施形態では、上記開口は:約50μm~約1000μm;約100μm~約750μm;約125μm~約600μm;約150μm~約500μm;約200μm~約400μm;又は約200μm~約300μmの直径を有してよい。フィラメント直径及び開口直径のこれらの範囲は、いくつかの実施形態の例であり、全ての実施形態によるメッシュの、可能な特徴部分のサイズを制限することを意図したものではない。繊維直径と開口直径との組み合わせは、例えば細胞培養マトリクスが多数の隣接するメッシュ層(例えば個別の複数の層の積層体、又は巻かれた1つのメッシュ層)を含む場合に、基材を通る効率的で均一な流体流を提供するように選択される。
【0037】
繊維直径、開口直径、及び織りのタイプ/パターンといった因子は、細胞の付着及び成長に利用可能な表面積を決定することになる。更に、細胞培養マトリクスが、重なった基材の積層体、ロール、又は他の構成を含む場合、細胞培養マトリクスの充填密度は、充填層マトリクスの表面積に影響を及ぼすことになる。充填密度は、基材材料の充填厚さ(例えば1層の基材に必要な空間)によって変化し得る。例えば、細胞培養マトリクスのある積層体が、ある特定の高さを有する場合、この積層体の各層は、該積層体全体の高さを該積層体内の層の数で除算することによって決定される充填厚さを有する、と言うことができる。充填厚さは、繊維直径及び織りに基づいて変化するが、積層体内の隣接する層の位置合わせに基づいても変化し得る。例えば、織られた層の3次元的な性質により、隣接する層が互いに対する位置合わせに基づいて適応できる、ある程度の量の相互連結又は重なりが存在する。第1の位置合わせでは、隣接する層を密に並べることができるが、第2の位置合わせでは、上側の層の最下点と下側の層の最上点とが直接接触している場合等には、隣接する層の重なりがゼロになる場合がある。特定の用途において、細胞培養マトリクスを、(例えば高い透過率が優先される場合に)低い密度での層の充填、又は(例えば基材の表面積の最大化が優先される場合に)高い密度での充填によって、提供することが望ましい場合がある。1つ以上の実施形態によると、充填厚さは:約50μm~約1000μm;約100μm~約750μm;約125μm~約600μm;約150μm~約500μm;約200μm~約400μm;約200μm~約300μmとすることができる。
【0038】
上述の構造因子は、細胞培養マトリクスの表面積(単層の細胞培養基材であるか、又は基材の複数の層を有する細胞培養マトリクスであるか)を決定できる。例えばある特定の実施形態では、円形の形状及び6cmの直径を有する織布メッシュ基材の単層は、約68cmの有効表面積を有することができる。本明細書中で使用される場合、「有効表面積(effective surface area)」は、細胞の付着及び成長に利用できる基材材料の部分における、繊維の全表面積である。特段の記載がない限り、「表面積(surface area)」に対する言及は、この有効表面積を指す。1つ以上の実施形態によると、直径6cmの単一の織布メッシュ基材層は:約50cm~約90cm;約53cm~約81cm;約68cm;約75cm;又は約81cmの有効表面積を有してよい。これらの有効表面積の範囲は単なる例として提供されており、いくつかの実施形態は、異なる有効表面積を有してよい。細胞培養マトリクスはまた、本明細書中の実施例において記載されるように、多孔率に関して特性決定することもできる。
【0039】
基材メッシュは、例えばポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、酸化ポリエチレン、ポリピロール、及び酸化ポリプロピレンを含む、細胞培養用途に適合したポリマー材料の、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維から製造できる。メッシュ基材は、例えば編み、経編み、又は織り(例えば平織り、綾織り、畳織り、5本針織り(five needle weave))を含む、様々なパターン又は織りを有してよい。
【0040】
メッシュフィラメントの表面の化学的性質は、所望の細胞付着特性を提供するために改変する必要があり得る。このような改変は、メッシュのポリマー材料の化学処理によって、又は細胞接着分子をフィラメント表面にグラフト重合することによって、行うことができる。あるいは、メッシュを、例えばコラーゲン又はマトリゲル(登録商標)を含む、細胞付着特性を示す生体適合性ハイドロゲルの薄層でコーティングすることができる。あるいは、メッシュのフィラメント繊維の表面に、当該業界で公知の様々なタイプのプラズマ、プロセスガス、及び/又は化学物質を用いた処理プロセスによって、細胞付着特性を与えることができる。しかしながら、1つ以上の実施形態では、メッシュは、表面処理を行わなくても、効率的な細胞成長表面を提供できる。
【0041】
図2A~2Cは、本開示のいくつかの考えられる実施形態による織布メッシュの異なる複数の例を示す。これらのメッシュの繊維直径及び開口サイズを、同等の2D表面に対する、各メッシュの単層によって提供される細胞培養表面積の増大のおおよその大きさと共に、以下の表1にまとめる。表1では、メッシュAは図2Aのメッシュを指し、メッシュBは図2Bのメッシュを指し、メッシュCは図2Cのメッシュを指す。表1の3つのメッシュのジオメトリは単なる例であり、本開示の実施形態はこれらの具体例に限定されない。メッシュCが最大の表面積を提供するため、細胞の付着及び増殖において高い密度を達成するのに有利となり得、従って細胞培養のための最も効率的な基材を提供できる。しかしながら、いくつかの実施形態では、例えば培養チャンバ内での所望の細胞分布又は流れ特性を達成するためには、細胞培養マトリクスが、表面積がより小さなメッシュ、例えばメッシュA若しくはメッシュB、又は表面積が異なる複数のメッシュの組み合わせを含むことが有利となり得る。
【0042】
【表1】
【0043】
上の表に示されているように、メッシュの3次元的品質によって、同等のサイズの平坦な2D表面に比べて、細胞の付着及び増殖のための表面積が増大する。この表面積の増大は、本開示の実施形態によって達成される拡張可能なパフォーマンスの助けとなる。プロセス開発研究及びプロセス検証研究のためには、試薬コストを削減して実験スループットを向上させるために、小規模バイオリアクターが必要となることが多い。本開示の実施形態は、このような小規模研究にも適用可能であるが、産業又は生産規模にも拡張できる。例えば、直径2.2cmの円の形状のメッシュCの100個の層を、内直径2.2cmの円筒形充填層に充填し、細胞の付着及び増殖に利用できる総表面積を約935cmとする。このようなバイオリアクターを10倍拡張するためには、内直径7cmの円筒形充填層、及び同一のメッシュの100個の層の、同様の設定を使用できる。このような場合、総表面積は9,350cmとなる。いくつかの実施形態では、利用可能な表面積は約99,000cm/L以上である。充填層内でのプラグタイプの灌流により、ml/分/充填層断面表面積(cm)を単位として表される同一の流量を、小規模バージョン及び大規模バージョンのバイオリアクターに使用できる。表面積が大きいほど、播種密度及び細胞成長密度を高くすることができる。1つ以上の実施形態によると、本明細書に記載の細胞培養基材は、最高22,000個/cm以上の細胞播種密度を示した。参考までに、Corning HyperFlask(登録商標)の播種密度は、2次元表面上で20,000個/cm程度である。
【0044】
表面積が大きく、細胞播種又は成長密度が高いことの別の利点は、本明細書で開示される実施形態のコストを、競合ソリューションに対して同等以下とすることができることである。具体的には、細胞産物あたりの(例えば細胞あたり、又はウイルスゲノムあたりの)コストを、他の充填層バイオリアクター以下とすることができる。
【0045】
以下に記載の本開示の更なる実施形態では、織布メッシュ基材を、バイオリアクター内に、円筒状ロールフォーマットで充填できる(図8及び9を参照)。このような実施形態では、充填層バイオリアクターのスケーラビリティは、メッシュストリップの全長及びその長さを増大させることによって達成できる。この円筒状ロール構成で使用されるメッシュの量は、充填層の所望の充填密度に基づいて変化させることができる。例えば、円筒状ロールを、緊密なロールで密に充填することも、緩いロールで緩く充填することもできる。充填の密度は多くの場合、所与の用途又は規模に必要な細胞培養基材の表面積によって決定されることになる。一実施形態では、メッシュの必要な長さは、以下の式:
【0046】
【数1】
【0047】
を用いて、充填層バイオリアクターの直径から計算でき、ここでLは、バイオリアクターの充填に必要なメッシュの全長(即ち図8のH)であり、Rは、充填層培養チャンバの内半径であり、rは、メッシュが周りに巻きつけられる内部支持体(図9の支持体366)の半径であり、tは、メッシュの1つの層の厚さである。このような構成では、バイオリアクターのスケーラビリティは、充填層の円筒状ロールの直径若しくは幅(即ち図8のW)を増大させ、及び/又は充填層の円筒状ロールの高さHを増大させて、付着細胞の播種及び成長のためにより多くの基材表面積を提供することによって、達成できる。
【0048】
構造的に定義された十分な剛性の培養マトリクスを使用することにより、マトリクス又は充填層にわたる、高い流れ抵抗の均一性(high‐flow‐resistance uniformity)が達成される。様々な実施形態によると、マトリクスは、単層又は多層フォーマットで展開できる。これにより、拡散の制限が柔軟に排除され、マトリクスに付着した細胞への栄養素及び酸素の均一な送達が提供される。更に、粗いタイプのマトリクスは、充填層構成内に細胞捕捉領域を含まず、これにより、培養の終了時に、高い生存率で細胞を完全に採取できる。マトリクスはまた、充填層に充填の均一性をもたらし、プロセス開発ユニットから大規模産業バイオプロセッシングユニットへの直接のスケーラビリティを実現できる。充填層から細胞を直接採取できることにより、マトリクスを撹拌又は機械的振盪容器内で再懸濁する必要がなくなる。この再懸濁は、複雑さを増し、また細胞に有害なせん断応力を与える可能性があるものであった。更に、細胞培養マトリクスの高い充填密度は、産業規模で管理可能な量で、高いバイオプロセス生産性をもたらす。
【0049】
図3Aは、多層基材200を有するマトリクスの実施形態を示し、図3Bは、同じ多層基材200の平面図である。多層基材200は、第1のメッシュ基材層202、及び第2のメッシュ基材層204を含む。第1の基材層202と第2の基材層204との重なりにもかかわらず、メッシュのジオメトリ(例えば繊維直径に対する開口直径の比)は、図3Bのフィラメントを含まない開口206によって示されているように、第1の基材層202及び第2の基材層204の開口が重なり、多層基材200の厚さ全体を通って流体が流れるための経路を提供するようなものである。
【0050】
図4は、図3Bの線B‐Bにおける多層基材200の断面図を示す。矢印208は、第2の基材層204の開口を通った後、第1の基材層202内のフィラメントの周りを通る、可能な流体流路を示す。メッシュ基材層のジオメトリは、1つ又は複数の基材層を通る効率的で均一な流れを可能とするように設計される。更に、マトリクス200の構造は、マトリクスを通る複数の配向の流体流を収容できる。例えば図4に示されているように、(矢印208によって示されているような)バルク流体流の方向は、第1の基材層202及び第2の基材層204の大面に対して垂直である。しかしながら、基材層のこれらの面がバルク流方向に対して平行となるように、マトリクスを流れに対して配向することもできる。図5は、図4の線C‐Cに沿った多層基材200の断面図を示し、マトリクス200の構造は、多層基材200内の複数の流体経路を通る流体流(矢印210)を可能とするものである。流体流が、メッシュ層の第1及び第2の側部に対して垂直又は平行となることに加えて、マトリクスは、複数の中間角度の複数の基材片によって、又は流体流に対してランダムな配置で、構成される。このような配向の柔軟性は、織布基材の、基本的に等方性の流れ挙動によって可能となる。対照的に、既存のバイオリアクターにおける付着細胞用の基材は、この挙動を示さず、代わりにその充填層は、優先的な流れチャネルを形成する傾向を有し、異方性の透過率を備えた基材材料を有する。本開示のマトリクスの柔軟性により、バイオリアクター容器全体を通して更に良好で更に均一な透過率を実現しながら、様々な用途、及びバイオリアクター又はコンテナの設計においてこのマトリクスを使用できるようになる。
【0051】
本明細書中で記載されているように、細胞培養基材は、1つ以上の実施形態によると、バイオリアクター容器内で使用できる。例えば上記基材は、充填層バイオリアクター構成内で使用でき、又は他の構成では、3次元培養チャンバ内で使用できる。しかしながら、実施形態は3次元培養空間に限定されず、2次元培養表面構成とみなすことができる基材の使用も考えることができ、この場合は、基材の1つ以上の層を、例えば平底培養皿の中に平坦に配置して、細胞のための培養基材を提供する。汚染に関する懸念から、容器は使用後に廃棄可能な単回使用容器とすることができる。
【0052】
1つ以上の実施形態によると、細胞培養マトリクスをバイオリアクター容器の培養チャンバ内で使用する、細胞培養システムが提供される。図6は、バイオリアクター容器302を含む細胞培養システム300の一例を示し、このバイオリアクター容器302は内部に細胞培養チャンバ304を有する。細胞培養チャンバ304内には、基材層308の積層体からなる細胞培養マトリクス306が存在する。基材層308は、ある1つの基材層の第1又は第2の側部が、隣接する1つの基材層の第1又は第2の側部と対面する状態で積層される。バイオリアクター容器302は、一方の端部に、培地、細胞、及び/又は栄養素を培養チャンバ304内に入れるための入口310を有し、また反対側の端部に、培地、細胞、又は細胞産物を培養チャンバ304から取り出すための出口312を有する。基材層をこのように積層することにより、システムは、構造が画定されており、積層された基材を通る流体流が効率的であるため、細胞の付着及び増殖に悪影響を与えることなく容易に拡張できる。容器302は一般に、入口310及び出口312を有するものとして説明され得るが、いくつかの実施形態は、入口310及び出口312のうちの一方又は両方を、培地、細胞、又は他の内容物を培養チャンバ304内へ及び培養チャンバ304から外に流すために使用してよい。例えば、入口310は、細胞播種、灌流、又は培養段階の間は、培地又は細胞を培養チャンバ304内へと流すために使用できるが、採取段階においては、培地、細胞、及び細胞産物のうちの1つ以上を、入口310を通して取り出すためにも使用できる。用語「入口(inlet)」及び「出口(outlet)」は、これらの開口の機能を制限することを意図したものではない。
【0053】
1つ以上の実施形態では、充填層の流れ抵抗及び体積密度は、異なるジオメトリの基材層を交互配置することによって制御できる。特に、メッシュサイズ及びジオメトリ(例えば繊維直径、開口直径、及び/又は開口ジオメトリ)は、充填層フォーマットの流体の流れ抵抗を定義する。異なるサイズ及びジオメトリのメッシュを交互配置することにより、バイオリアクターの1つ以上の特定の部分において、流れ抵抗を制御又は変更できる。これにより、充填層内での液体の灌流の均一性を改善できる。例えば、10層のメッシュA(表1)、続いて10層のメッシュB(表1)、更に続いて10層のメッシュC(表1)を積層して、所望の充填層特性を達成できる。別の例としては、充填層を10層のメッシュBで始めることができ、続いて50層のメッシュC、更に続いて10層のメッシュBとすることができる。このような反復パターンを、バイオリアクター全体にメッシュが充填されるまで継続してよい。これらは単なる例であり、可能な組み合わせを制限する意図なく、説明のために使用されている。実際には、細胞成長表面の体積密度及び流れ抵抗の様々なプロファイルを得るために、異なるサイズのメッシュの様々な組み合わせが可能である。例えば、異なるサイズのメッシュを交互配置することによって、様々な体積細胞密度の複数のゾーン(例えば低/高/低/高等の密度のパターンを形成する一連のゾーン)を有する、充填層コラムを組み立てることができる。
【0054】
図6では、バルク流方向は、入口310から出口312への方向であり、この例では、基材層308の第1及び第2の大面は、バルク流方向に対して垂直である。対照的に、図7に示されている例は、システム320が、バイオリアクター容器322と、培養チャンバ324内の基材328の積層体とを含み、培養チャンバ324はバルク流方向に対して平行な第1及び第2の側部を有し、バルク流方向は、入口330に入る流れ線及び出口332から出る流れ線によって示されている方向に対応する、実施形態のものである。よって、本開示の実施形態のマトリクスは、いずれの構成で採用できる。システム300及び320のそれぞれにおいて、基材308、328は、培養チャンバ304、324によって画定される内部空間を充填するようにサイズ設定及び成形され、これにより、細胞成長表面が単位体積あたりの細胞数に関して効率を最大化するために、各容器内の培養空間が充填される。図7は複数の入口330及び複数の出口332を図示しているが、システム320は、単一の入口によって供給を受け、また単一の出口を有することも考えられる。しかしながら、本明細書中の様々な実施形態によると、分配プレートを用いて、培地、細胞、又は栄養素の、充填層の断面にわたる分配を補助でき、またこれによって、充填層を通る流体流の均一性を改善できる。従って、複数の入口330は、より均一な流れを形成するために、充填層の断面にわたる複数の孔を分配プレートにどのように設けることができるかを示すものである。
【0055】
図8は、基材が円筒状ロール350へと成形されている、マトリクスの一実施形態を示す。例えば、メッシュ基材352を含むマトリクス材料のシートを、中心長手方向軸yの周りに巻いて円筒とする。円筒状ロール350は、中心長手方向軸yに対して垂直な寸法に沿った幅Wと、中心長手方向軸yに対して平行な方向に沿った高さHとを有する。1つ以上の好ましい実施形態では、円筒状ロール350は、中心長手方向軸yが、円筒状ロールを格納するバイオリアクター又は培養チャンバを通る流体のバルク流Fの方向に対して平行になるように、バイオリアクター容器内に置かれるように設計される。図9は、このような円筒状ロール構成の細胞培養マトリクス364を格納したバイオリアクター容器362を有する、細胞培養システム360を示す。図8の円筒状ロール350と同様に、細胞培養マトリクス364は中心長手方向軸を有し、これは図9では紙面に向かって延在する。システム360は更に中心支持部材366を含み、その周りに細胞培養マトリクス364が位置決めされる。中心支持部材366は、細胞培養マトリクス364の物理的支持及び/又は位置合わせのためだけに設けることができるが、いくつかの実施形態によると、他の機能を提供することもできる。例えば中心支持部材366は、マトリクスの長さHに沿って細胞培養マトリクス364に培地を供給するための、1つ以上の開口を備えることができる。他の実施形態では、中心支持部材366は、細胞培養マトリクス364の1つ以上の部分を円筒状ロールの内側部分に保持するための、1つ以上の取り付け部位を含んでよい。これらの取り付け部位は、フック、クラスプ、ポスト、クランプ、又はメッシュシートを中心支持部材366に取り付ける他の手段であってよい。
【0056】
図10Aは、1つ以上の実施形態による細胞培養システム400を示す。システム400は、本明細書で開示される1つ以上の実施形態の細胞培養マトリクスを格納する、バイオリアクター402を含む。バイオリアクター402は、培地調質用容器404に流体接続でき、上記システムは、調質用容器404内の細胞培養培地406をバイオリアクター402に供給できる。培地調質用容器404は、浮遊培養、流加培養、又は灌流培養のためにバイオプロセッシング産業で使用される典型的なバイオリアクターに見られる、センサ及び制御部品を含むことができる。これらは、DOセンサ、pHセンサ、酸素供給器/ガス散布ユニット、温度プローブ、並びに栄養素添加及び塩基添加ポートを含むが、これらに限定されない。散布ユニットに供給されるガス混合物は、N、O、及びCOガスに関するガス流コントローラによって制御できる。培地調質用容器404はまた、培地の混合のための羽根車を内包する。上述のセンサによって測定された全ての培地パラメータは、培地調質制御ユニット418によって制御でき、これは培地調質用容器404と通信しており、細胞培養培地406の状態の測定、及び/又は所望のレベルへの調整を行うことができる。図10Aに示されているように、培地調質用容器404は、バイオリアクター容器402とは別個の容器として設けられる。これは、細胞が培養されている場所から離れて培地を調質でき、その後で、調質済みの培地を細胞培養空間に供給できるという点で、有利であり得る。しかしながらいくつかの実施形態では、培地の調質をバイオリアクター容器402内で実施できる。
【0057】
培地406の調質用容器404からの培地は、入口408を介してバイオリアクター402へと送達され、入口408は、細胞接種材料を播種して細胞の培養を開始するための注入ポートを含んでもよい。バイオリアクター容器402は1つ以上の出口410も含んでよく、細胞培養培地406はこれを通って容器402を出る。更に、細胞又は細胞産物を、出口410を通して出すこともできる。バイオリアクター402から出る流れの内容物を分析するために、1つ以上のセンサ412をライン内に設けてよい。いくつかの実施形態では、システム400は、バイオリアクター402内への流れを制御するための流れ制御ユニット414を含む。例えば、流れ制御ユニット414は、1つ以上のセンサ412(例えばOセンサ)から信号を受信でき、この信号に基づいて、バイオリアクター402への入口408の上流のポンプ416(例えば蠕動ポンプ)に信号を送信することによって、バイオリアクター402への流れを調整できる。よって、センサ412によって測定される因子のうちの1つ、又はこれらの因子の組み合わせに基づいて、ポンプ416は、所望の細胞培養条件が得られるように、バイオリアクター402への流れを制御できる。
【0058】
培地の灌流速度は、信号処理ユニット414によって制御され、これは、培地調質用容器404、及び充填層バイオリアクターの出口410に配置されたセンサから、センサ信号を収集して比較する。充填層バイオリアクター402を通る培地の灌流の流れの特性を原因として、栄養素、pH、及び酸素勾配が、充填層に沿って発生する。バイオリアクターの灌流流量は、図11のフローチャートに従って、蠕動ポンプ416に動作可能に接続された流れ制御ユニット414によって自動的に制御できる。
【0059】
本開示の1つ以上の実施形態は、従来の方法とは異なる細胞接種ステップを提供する。従来の方法では、従来のマトリクスによる充填層を、培養培地で満たし、濃縮した接種材料を培地循環ループに注入する。細胞懸濁液を、高流量でバイオリアクターを通してポンピングすることにより、従来の充填層マトリクス上での捕捉による細胞播種の不均一性を低減する。このような従来の方法では、循環ループ内での細胞の高流量でのポンピングは、充填層バイオリアクターに細胞の大半が捕捉されるまで、おそらく数時間にわたって継続される。しかしながら、従来の充填層バイオリアクターの、深層ろ過が不均一であるという性質により、細胞は充填層内で不均一に分布し、バイオリアクターの入口領域の細胞密度が高く、バイオリアクターの出口領域の細胞密度が低くなる。
【0060】
対照的に、本開示の実施形態によると、バイオリアクターの培養チャンバの空隙容積と等しい体積の細胞接種材料を、バイオリアクター402の入口408の細胞接種材料注入ポートを通して、充填層に直接注入する(図10A)。続いて、本明細書に記載の細胞培養マトリクス中に存在する均一で連続した流体経路により、細胞懸濁液が充填層内に均一に分布する。初期播種段階における重力による細胞の沈降を防止するために、接種材料注入の直後に培地の灌流を開始できる。灌流流量は、重力とのバランスを取るため、及び細胞が充填層バイオリアクターから洗い落とされるのを防止するために、事前にプログラムされた閾値未満に維持される。よって、初期の細胞付着段階では、細胞は充填層内で緩やかに転がされ、利用可能な基材表面に対する均一な細胞の分布及び付着が達成される。
【0061】
図10Bは、1つ以上の実施形態による、細胞培養システム420の更に詳細な概略図を示す。システム420の基本的な構造は図10Aのシステム400と同様であり、充填層バイオリアクター422は、PET織布メッシュ等の細胞培養材料の充填層を内包した容器と、別個の培地調質用容器424とを有する。しかしながら、システム400とは対照的に、システム420は、センサ、ユーザインタフェース及びコントロール、並びに培地及び細胞用の様々な入口及び出口を含む、システムの細部を示している。いくつかの実施形態によると、培地調質用容器424は、適切な温度、pH、O、及び栄養素を提供するために、コントローラ426によって制御される。いくつかの実施形態では、バイオリアクター422もコントローラ426によって制御できるが、他の実施形態では、バイオリアクター422は別個の灌流回路428内に設けられ、ここでは、ポンプを用いて、灌流回路428を通る培地の流量を、バイオリアクター422の出口又はその付近のOの検出に基づいて制御する。
【0062】
図10A及び10Bのシステムは、1つ以上の実施形態によるプロセスステップに従って動作させることができる。図11Aに示されているように、これらのプロセスステップは、プロセスの準備(S1)、細胞の播種及び付着(S2a、S2b)、細胞の増殖(S3)、トランスフェクション(S4a、S4b)、ウイルスベクターの産生(S5a、S5b)、並びに採取(S6a、S6b)を含むことができる。
【0063】
図11は、図10A又は10Bのシステム400等の灌流バイオリアクターシステムの流れを制御するための方法450の例を示す。方法450によると、ステップS21において、システム400の特定のパラメータを、バイオリアクター最適化用運転によって事前に決定する。これらの最適化用運転から、pH、pO、[グルコース]、pH、pO、[グルコース]、及び最大流量の値を決定できる。pH、pO、及び[グルコース]の値は、ステップS22においてバイオリアクター402の細胞培養チャンバ内で測定され、pH、pO、及び[グルコース]は、ステップS23においてバイオリアクター容器402の出口でセンサ412によって測定される。S22及びS23におけるこれらの値に基づいて、灌流ポンプ制御ユニットは、S24において、灌流流量を維持又は調整するための決定を行う。例えば、pH≧pH2min、pO≧pO2min、及び[グルコース]≧[グルコース]2minのうちの少なくとも1つであれば、細胞培養チャンバへの細胞培養培地の灌流流量を現在の流量で継続してよい(S25)。現在の流量が、細胞培養システムの事前に決定された最大流量以下である場合、灌流流量を増大させる(S27)。更に、現在の流量が、細胞培養システムの事前に決定された最大流量より多い場合、細胞培養システムのコントローラは:(1)pH2min、pO2min、及び[グルコース]2min;(2)pH、pO、及び[グルコース];並びに(3)バイオリアクター容器の高さ、のうちの少なくとも1つを再評価できる(S26)。
【0064】
細胞培養マトリクスは、所望のシステムに応じて、培養チャンバ内に複数の構成で配設できる。例えば1つ以上の実施形態では、システムは、培養チャンバ内の所定の細胞培養空間の幅にわたって延在する幅を有する、基材の1つ以上の層を含む。基材の複数の層を、所定の高さまでこのようにして積層してよい。上述のように、基材層は、1つ以上の層の第1及び第2の側部が、培養チャンバ内の所定の培養空間を通る培養培地のバルク流方向に対して垂直となるように配設されていてよく、又は1つ以上の層の第1及び第2の側部は、上記バルク流方向に対して平行であってよい。1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、バルク流に対して第1の配向の、1つ以上の基材層と、上記第1の配向とは異なる第2の配向の、1つ以上の他の層とを含む。例えば、様々な層は、バルク流方向に対して平行又は垂直であるか、あるいはこれらの間の何らかの角度を有する、第1の及び第2の側部を有してよい。
【0065】
1つ以上の実施形態では、細胞培養システムは、細胞培養基材の複数の別個の片を、充填層構成内に含み、これらの基材の片の長さ及び幅は、培養チャンバに比べて小さい。本明細書中で使用される場合、「基材の片(piece of substrate)」は、基材の片の長さ及び/又は幅が培養空間の長さ及び/又は幅の約50%以下である場合に、培養チャンバに比べて小さな長さ及び/又は幅を有するものとみなされる。よって、細胞培養システムは、培養空間内に所望の配置で充填された、基材の複数の片を含んでよい。基材片の配置は、ランダム若しくはセミランダムであってよく、又は複数の片が略同様の配向(例えばバルク流方向に対して水平、垂直、若しくは0°~90°のある角度)で配向されている等の、所定の秩序若しくは整列を有してよい。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「所定の培養空間(defined culture space)」は、細胞培養マトリクスに占有され、細胞の播種及び/又は培養が行われることになる、培養チャンバ内の空間を指す。所定の培養空間は、培養チャンバの略全体を占めることができ、又は培養チャンバ内の空間の一部分を占めてもよい。本明細書中で使用される場合、「バルク流方向(bulk flow direction)」は、細胞の培養中、及び/又は培養チャンバに対する培養培地の流入若しくは流出中に、細胞培養マトリクスを通る、又は細胞培養マトリクスを越える、流体又は培養培地のバルク質量流の方向として定義される。
【0067】
1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、固定機構によって培養チャンバ内で固定される。上記固定機構は、細胞培養マトリクスの一部分を、上記マトリクスを取り囲む培養チャンバの壁に、又は培養チャンバの一方の端部のチャンバ壁に、固定できる。いくつかの実施形態では、固定機構は、細胞培養マトリクスの一部分を、培養チャンバの長手方向軸に対して平行に延在する部材等の、培養チャンバを通って延在する部材に、又は上記長手方向軸に対して垂直に延在する部材に、付着させる。しかしながら、1つ以上の他の実施形態では、細胞培養マトリクスは、チャンバ又はバイオリアクター容器の壁に固定して取り付けられることなく、培養チャンバ内に内包されていてよい。例えば、マトリクスは、培養チャンバの境界又は他の構造部材によって内包されていてよく、これにより、マトリクスをこれらの境界又は構造部材に固定せずに、マトリクスがバイオリアクター容器の所定のエリア内に保持される。
【0068】
いくつかの実施形態の一態様は、ローラーボトル構成のバイオリアクター容器を提供する。培養チャンバは、本開示に記載された実施形態のうちの1つ以上による細胞培養マトリクス及び基材を内包できる。ローラーボトル構成では、バイオリアクター容器は、バイオリアクター容器をこの容器の中心長手方向軸の周りで動かすための手段に、動作可能に取り付けることができる。例えば、バイオリアクター容器は、中心長手方向軸の周りで回転させることができる。この回転は、連続的(例えば一方向に連続するもの)であっても、不連続(例えば単一方向若しくは交互の方向の間欠的回転、若しくは前後回転方向の振動)であってもよい。動作時、バイオリアクター容器の回転により、チャンバ内の細胞及び/又は流体の運動が引き起こされる。この運動は、チャンバの壁に対して相対的なものと考えることができる。例えば、バイオリアクター容器がその中心長手方向軸の周りで回転する際、重力は、流体、培養培地、及び/又は付着していない細胞を、チャンバの下部に向かわせ続けることができる。しかしながら、1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは容器に対して基本的に固定されており、従って容器と共に回転する。1つ以上の他の実施形態では、細胞培養マトリクスを取り付けずに、容器が回転する際に容器に対して所望の程度だけ自由に移動できるようにすることができる。容器の運動によって、細胞を、細胞培養培地又は液体と、培養チャンバ内の酸素又は他のガスとに曝露しながら、細胞を細胞培養マトリクスに付着させることができる。
【0069】
織布又はメッシュ基材を含むマトリクスといった、本開示の実施形態による細胞培養マトリクスを使用することによって、付着細胞の付着、増殖、及び官能化に利用可能な表面積が増大した、ローラーボトル容器が提供される。特に、モノフィラメントポリマー材料の織布メッシュの基材をローラーボトル内で使用すると、表面積を、標準的なローラーボトルの約2.4~約4.8倍、又は約10倍まで増大させることができる。本明細書に記載されているように、メッシュ基材のモノフィラメントの線はそれぞれ、付着細胞が付着するための2D表面として、それ自体を提示できる。更に、複数のメッシュの層をローラーボトル内に配置できるため、利用可能な総表面積が、標準的なローラーボトルの約2~20倍に増大する。よって、細胞の播種、培地の交換、及び細胞の採取を含む、既存のローラーボトル設備及び処理を、既存の動作インフラストラクチャ及び加工ステップに対する影響を最小限に抑えながら、本明細書で開示される改良された細胞培養マトリクスの追加によって改変できる。
【0070】
バイオリアクター容器は任意に、入口及び/又は出口手段に取り付けることができる1つ以上の出口を含む。上記1つ以上の出口を通して、液体、培地、又は細胞を、チャンバに供給する、又はチャンバから取り出すことができる。容器の単一のポートを、入口及び出口の両方として機能させてもよく、又は複数のポートを、入口及び出口専用に設けてもよい。
【0071】
1つ以上の実施形態の充填層細胞培養マトリクスは、織布細胞培養メッシュ基材からなるものとすることができ、細胞培養マトリクス内に他のいずれの形態の細胞培養基材も配置されず、又は散在しない。即ち、本開示の実施形態の織布細胞培養メッシュ基材は、既存のソリューションで使用される不規則な不織布タイプの基材を必要としない、効果的な細胞培養基材である。これにより、設計及び構造が簡略化された細胞培養システムを実現できると同時に、高密度細胞培養基材に、流れの均一性、採取のしやすさ等に関して本明細書に記載されている他の利点を提供できる。
【0072】
本明細書に記載されているように、ここで提供される細胞培養基材及びバイオリアクターシステムは、多数の利点を提供する。例えば、本開示の実施形態は、AAV(全血清型)及びレンチウイルスといった多数のウイルスベクターのうちのいずれの産生をサポートでき、また、インビボ及びエクスビボ遺伝子治療用途に適用できる。均一な細胞の播種及び分布により、容器あたりのウイルスベクターの収率が最大化され、またこれらの設計により、生存細胞の採取が可能となり、これは、同一のプラットフォームを用いた複数の増殖期間からなるシードトレインのために有用となり得る。更に、本明細書中の実施形態は、プロセス開発規模から生産規模へと拡張可能であり、これにより最終的に、開発時間及びコストが節約される。本開示の方法及びシステムはまた、細胞培養プロセスの自動化及び制御を可能にすることにより、ベクター収率を最大化し、再現性を改善する。最後に、ウイルスベクターの生産レベル規模に到達するために必要な容器の個数(例えばバッチあたり1016~1018個のAAV VG)を、他の細胞培養ソリューションに比べて大幅に削減できる。
【0073】
実施形態は、中心長手方向軸の周りで回転する容器に限定されない。例えば容器は、容器に対して中心以外に位置する軸の周りで回転してよい。更に、回転軸は水平又は垂直軸であってよい。
【実施例
【0074】
本開示の細胞培養マトリクス、細胞培養システム、及びこれらに関連する方法の有効性を実証するために、以下の実施例に従って、細胞の播種及び培養に関する研究を実施した。
【0075】
実施例1
実施例1では、ポリエチレンテレフタレート(PET)織布メッシュ基材を有する細胞培養マトリクス(図12を参照)を、静止細胞培養条件において試験した。PETメッシュをエタノールで洗浄し、酸素RFプラズマ中でプラズマ処理した。細胞の付着を促進するために、メッシュのフィラメントの表面にゼラチンを吸着させた。メッシュのディスク状の片をCorning(登録商標)ultra‐low attachment(ULA)6ウェルプレートに入れた。HEK293T細胞を、異なる複数の播種密度(50K/cm、75K/cm、100K/cm)でメッシュディスク上に播種し、細胞培養を3日間実施した。フィラメント表面上の細胞を、蛍光グリーン細胞トラッカー染料で染色した。図12は、フィラメント表面上の細胞をこのように可視化した結果を示す。細胞のサイズに対するメッシュフィラメントのサイズにより、モノフィラメント繊維は、細胞の付着及び増殖のための2次元表面として有効に作用できる。メッシュから細胞を採取し、Beckman Coulter製のVi‐Cell(登録商標)細胞カウンタで計数することによって、細胞の増殖を測定した。結果は、静止細胞培養条件下における、細胞培養マトリクス上での良好な細胞の付着及び増殖を示していた。例えば図13Aは、24、48、及び72時間後における、播種済みの各メッシュに関する1ウェルあたりの総細胞数を示す。細胞の個数に加えて、細胞の生存率が図13Bに示されており、この図は、複数の播種密度にわたって極めて高い生存率を実証している。
【0076】
実施例2
実施例2では、本開示の一実施形態の一例による、図6に示されているもののような充填層バイオリアクターシステムで、細胞を培養した。充填層は円筒状であり、それぞれ円形又はディスク状の複数の細胞培養機材の積層体で作製されている。具体的には、実施例2において、充填層は約25mmの高さを有し、また直径がそれぞれ約20mmの100個のPET織布メッシュ基材を含んでいた。使用したメッシュは、表1のメッシュCに対応する。細胞の付着に利用できる2次元表面積の合計は、約760cmであったと推定される。バイオリアクターに接種を行うために、8mlのHEK293T細胞懸濁液(細胞200万個/ml)を充填層に直接注入した。培地の灌流を、細胞懸濁液の導入の直後に開始し、灌流流量は3ml/分に設定した。この流量での灌流を24時間継続し、その後、流量を1ml/分まで減少させた。その後、灌流流量を調整して、バイオリアクターの出口において、pO≧50%飽和、及びpH≧7を維持した。2~3日後、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、バイオリアクターを分解して、マトリクス内での細胞の付着の均一性を確認した。図14A及び14Bは、クリスタルバイオレット染料で染色されたHEK293T細胞が付着した充填層マトリクスのディスクを3枚に1枚ずつ示す。図14Aは、静止条件下で播種されたバイオリアクターからの結果を示す。染色のばらつきに基づいて、3日の培養の後に、不均一な細胞の付着が存在することが観察された。具体的には、(図14Aの画像の底部のディスクに対応する)充填層の底部では細胞の濃度が高く、(図14Aの画像の上部のディスクに対応する)充填層の上部では細胞が少なかった。図14Bは、ある好ましい実施形態による播種方法で播種されたバイオリアクターからの結果を示し、この播種方法では、初期付着段階中、細胞を充填層内で連続的に転がした。その結果、反応器の上部から底部まで(及び図14Bの画像の上部から底部まで)の複数のディスクにおける細胞の一貫した染色によって証明されるように、2日間の細胞培養後に、充填層の全ての部分において均一な細胞分布が観察される。これは、細胞播種段階においてバイオリアクターを連続的に灌流した場合に、均一な細胞分布が達成されたことを示す。
【0077】
実施例3
実施例3では、細胞を充填層バイオリアクターシステムで培養し、バイオリアクター内でのアデノ関連ウイルス(adeno‐associated virus:AAV)産生のために、HEK293T細胞のトランスフェクションを実施した。実施例2と同一のバイオリアクターの設定を実施例3で使用した(例えば図6を参照)。充填層は、PETメッシュ(表1のメッシュC)の100個のディスクを内包していた。各ディスクの直径は約20mmであり、充填層の高さは約25mmであり、細胞の付着及び増殖に利用可能な2次元表面積は合計約760cmであった。バイオリアクターに接種を行うために、8mlのHEK293T細胞懸濁液(細胞200万個/ml)を充填層に直接注入した。約50mlの培地を内包した培地貯蔵容器を、バイオリアクター容器に流体接続した。72時間にわたって、細胞を、10%のFBS及び6mMのL‐グルタミンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium:DMEM)ATCC(登録商標)培地で培養した。貯蔵容器内の培地のpHが7未満に降下した場合、培地を新鮮な培地供給分に交換した。これに伴って灌流流量を調整して、バイオリアクターの出口において、pO≧50%飽和、及びpH≧7を維持した。72時間後、細胞培地を、10%のFBS及び6mMのL‐グルタミンを含む50mlのCorning DMEM(15‐018)に交換し、トランスフェクション試薬を、1mlのAAV2及びPEIpro(1:2の比)につき2μgという最終濃度になるまで添加した。これに続く72時間の間に、貯蔵ボトル内のpHが7未満に降下した場合、細胞培地を新鮮な供給分に交換した。これに伴って灌流流量を調整して、バイオリアクターの出口において、pO≧50%飽和、及びpH≧7を維持した。5X TrypLEを用いて細胞を採取した。トランスフェクション効率を、蛍光フローサイトメーターで分析し、ウイルス粒子及びウイルスゲノム力価を、ELISA及びPCRアッセイで分析した。細胞培養結果を表2に示す。ここで「VP」は「ウイルスタンパク質(viral protein)」を表し、「GC」は「ゲノムコピー(genome copy)」を表す。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例4
実施例4では、ローラーボトル細胞培養システムの一実施形態を試験した。Corningローラーボトル#430195を使用し、表面積は490cmであった。細胞が組織培養処理表面に付着するのを防止するために、ローラーボトルをBSAの0.5%溶液で最低16時間処理し、水で洗浄してから、各実験を実施した。細胞を標準的な2D表面(Tフラスコ)上で成長させ、標準的なプロトコルを用いて採取した。この標準的なプロトコルでは、トリプシン/EDTA溶液を用いて細胞を表面から放出させた後で、ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)を含有する完全培地の添加によってトリプシン/EDTA溶液を不活性化する。次に上記細胞を、細胞カウンタで計数し、細胞を、総容積200mLの中で細胞約5×10個/cmの濃度で、細胞培養メッシュを含む及び含まないローラーボトル内に播種した。図15及び16に示されているように、細胞培養メッシュ502を含むローラーボトル500に関して、上記メッシュは、ボトルの口501を通して挿入できるように密な円筒状ロール503へと巻かれており、ボトルの内部への挿入後、細胞培養メッシュの巻きを部分的に解いて、ローラーボトルの壁に向かって(矢印504によって示されているように)広げた。細胞培養メッシュの長さは、ローラーボトル内で広げた後に、図15及び16に示されているように、細胞培養メッシュの二重層がローラーボトルの内周を巡るように設けられるよう、十分に長かった。細胞を、16+時間にわたって、5%のCO及び95%の相対湿度を有する37℃のインキュベータ内で、様々な回転速度(0.5~4rpm)の表面に付着させた。細胞の付着後、速度は、ローラーボトル内の細胞の標準的な成長に関して約1rpmに減少した。培地の測定を周期的に実施し、培地の交換が必要な時点を決定した。ローラーボトル内において、メタノール及びパラホルムアルデヒドを含有する溶液中のクリスタルバイオレットを用いて、メッシュ表面に付着した細胞の可視化を実施した。細胞の染色後、メッシュをローラーボトルから取り外して撮像した。
【0080】
図17A及び17Bは、実施例4のローラーボトルから取り外されたメッシュを示し、ローラーボトル内の二重層メッシュに付着した、染色されたHEK293細胞の存在を実証している。付着細胞が付着のために利用できる総表面積は、本開示のある実施形態によるローラーボトルでは2450cmであり、その一方で、メッシュ基材を含まないローラーボトルでは490cmであった。図17Aは、ローラーボトル内で2層構造に自己整列したPETメッシュ(表1のメッシュCに対応)に付着した細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。細胞は、ローラーボトルの速度が0.5rpmである状態で、播種された。なお、ボトルの壁に面するメッシュの外側層に、主に細胞が播種されていた。図17Bは、ローラーボトル内で2層構造に自己整列したPETメッシュ(表1のメッシュCに対応)に付着した細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。細胞は、4rpmのローラーボトル速度で播種された。なお、2つのメッシュ層に均一に細胞が播種された。図17A及び17Bから確認できるように、細胞の播種の均一性は、播種ステップ中のローラーボトルの回転速度に依存していた。通常のローラーボトル播種プロトコルとは対照的に、メッシュの利用可能な付着表面上に細胞を均一に播種するためには、速い回転速度が必要であった。
【0081】
本開示の実施形態は、細胞培養及びウイルスベクター産生のための既存のプラットフォームを上回る利点を有する。なお、本開示の実施形態は、例えば付着又は半付着細胞、ヒト胎児腎臓(Human embryonic kidney:HEK)細胞(例えばHEK23)(トランスフェクトされた細胞を含む)、レンチウイルス(幹細胞、CAR‐T)及びアデノ関連ウイルス(AAV)等のウイルスベクターを含む、多数のタイプの細胞及び細胞副産物の産生に使用できる。これらは、本明細書で開示されるバイオリアクター又は細胞培養基材のいくつかの一般的な用途の例であるが、本開示の実施形態の使用又は用途に対する限定を意図したものではなく、当業者であれば、これらの実施形態を他の使用のために適用できることを理解するだろう。
【0082】
実施例5
上述のように、本開示の実施形態の1つの利点は、細胞培養基材を通る流れの均一性である。理論によって束縛されることを望むものではないが、細胞培養基材の規則的な又は均一な構造が、それを通して培地を流すことができる一貫した均一な物体を提供すると考えられる。対照的に、既存のプラットフォームは、主に不規則又はランダムな基材、例えばフェルト状又は不織布繊維材料に依存するものである。本開示の基材の均一な特性は、この基材において達成される均一で一貫した細胞の播種を検査することによって説明できる。例えば図18Aは、本開示のいくつかの実施形態による、実施例5からの基材材料の3つのディスク(1801、1802、1803)を示す。図18Aのディスクは、本明細書に記載の織布PETメッシュ材料であり、それぞれ約60mmの直径を有する。10~300個の同様のディスクの層が充填されたバイオリアクターに関する表面積は、約678~20,300cmとなる。この例では、細胞の培養を、100個のディスクの積層体を用いて実施した。第1のディスク1801は、バイオリアクター内のこのようなディスクの積層体の一番上のディスクであり、第2のディスク1802は、積層体の真ん中のディスクであり、第3のディスク1803は積層体の底部のディスクであった。積層体内の異なる位置に配置されているにもかかわらず、図18Aの染色は、極めて一貫した細胞の付着を示している。
【0083】
図18A及び18Bの画像を生成した実験において、バイオリアクターを細胞培養培地で事前に満たし、この系を一晩にわたって予備調質して、pH7.2、D.O.100%、及び37℃の定常状態を達成した。400mlのATCC DMEM培地+10%のFBS+6mMのL‐グルタミンを用いて、バイオリアクターシステム全体を満たした。30mlの懸濁液中のHEK293T細胞(細胞500万個/mL)を、3方向ポートを通して充填層に直接注入し、接種を行った。最初の48時間にわたって、予備調質された培地を30mL/分の速度でバイオリアクターに灌流して、充填層内での均一な細胞分布、付着、及び初期成長を実現した。48時間の培養の後、200mlの新鮮な完全ATCC DMEM培地をシステムに添加して、グルコースレベルを1g/Lより高く維持した。灌流流量を自動的に調整して、バイオリアクターの出口においてDOexternal≧培地の飽和の45%を維持した。接種の72時間後、培養培地を500mlのCorning DMEM(15-018)+10%FBS+6mMのL‐グルタミンに交換し、2時間灌流させた。トランスフェクション混合物(プラスミドDNA及びPEIの1:2の比での複合体;細胞100万個あたり0.8μgの合計DNA)を、トランスフェクションの24時間後の培地1mlあたり2μgの合計DNAという最終濃度になるまで添加し、培養培地を、500mlの新鮮な完全Corning DMEM(15‐018)培地に交換して、消費された栄養素を補充した。灌流流量を自動的に調整して、バイオリアクターの出口においてDOexternal≧45%飽和を維持した。これに続く48時間の培養の間、グルコースレベルを監視し、必要に応じて培地の添加又は交換によって供給して、0.3g/Lより高いレベルを維持した。トランスフェクションの72時間後、細胞をDPBSで洗浄し、1X Accutase溶液を用いて採取した。トランスフェクション効率を、蛍光フローサイトメトリーで分析し、ウイルス粒子及びウイルスゲノム力価を、ELISA及びqPCRアッセイで分析した。
【0084】
クリスタルバイオレット染色を用いて、図18Aのディスクの表面全体にわたる細胞の均一な成長を強調した。第1のディスク1801、第2のディスク1802、及び第3のディスク1803は、細胞培養マトリクスの積層体全体に広がっているにも関わらず、3つのディスク全てにわたって細胞の成長は一貫している。図18Aの画像は、72時間の培養の後、細胞を基材から採取する前に撮影された。図18Bは、細胞を採取した後の、同じ3つのディスク(1801’、1802’、及び1803’)を示す。図18Bにおいてクリスタルバイオレット染色が相対的に少ないことによって示されているように、細胞は、各ディスクの表面にわたって、及び細胞培養マトリクス積層体のこれら3つのディスクにわたって、均一に採取されている。分析に基づくと、細胞の95%超がバイオリアクターから回収された。6780cmの総表面積を有する直径60mmのこれらの基材積層体/容器における、AAV産生の細胞培養結果を、以下の表3に示す。これは、トランスフェクトされた細胞の収率、トランスフェクション効率、及び収量1cmあたりのウイルスゲノム数を示す。ここでもまた、基材の均一な構造、及び均一な流れ特性が、この効率的で均一な成長、及び採取しやすさに寄与していると考えられる。
【0085】
【表3】
【0086】
以下の表4は、異なる直径(29mm及び60mm)の複数のバイオリアクター容器を含む複数の実験の文脈での、上述の結果を示す。データは、小さい方(例えば直径29mm、表面積1600cm)と大きい方(例えば直径60mm、表面積6780cm)の容器及び/又は充填層マトリクスの間での、良好なスケーラビリティを示す。
【0087】
【表4】
【0088】
上述のように、本開示の実施形態は、比較的小さい実用的なフットプリントで、高密度の細胞の培養を可能にする、充填層細胞培養マトリクス及び/又はバイオリアクターを提供できる。例えば、上述の表3及び4の例の中の、60mmの細胞培養マトリクスは、約6870cmの表面積を有する。参考までに、Corning HYPERflask(登録商標)は、約1720cmの表面積を有している。表3及び4の、直径60mmの細胞培養マトリクスは、HYPERflaskよりも小さなバイオリアクターに格納できるにもかかわらず、採取時の細胞数をより多く、また容器1つあたりの総ゲノムコピー(GC)又はウイルスゲノム(VG)数をより多くすることができる。図19は、HYPERflaskと比較した、表3及び4からの直径60mmの基材を含む2つのバイオリアクター容器に関するこれらの数を示し、同時に1cmあたりのGCも示しており、この1cmあたりのGCはHYPERflaskよりは低いものの、それをより大きな表面積で補っている。
【0089】
実施例6
本開示の基材の流れの均一性又は透過率を更に調べるために、モデリングを用いて、3次元細胞培養マトリクスの多孔率を理解した。織布PETメッシュ基材のシートを、密に充填した構成、及び緩く充填した構成でモデリングした。これらは、モデリングされている特定のメッシュシートに関する、基材積層体の充填密度の上限及び下限を表す。特に、図20Aは、密に充填した構成の平面図を示し、図20Bは、同じ積層体の断面側面図を示す。図21A及び21Bはそれぞれ、緩く充填した構成の平面図及び断面図を示す。モデリングした構成それぞれに関して、サンプルセル600、602を画定した。サンプルセルは、サンプルセル600、602の単位体積あたりの多孔率を分析するために、同一体積のメッシュ材料を内包する。各セル内の開放空間の、モデリングした体積を、(密に充填した積層体について)図22A及び(緩く充填した積層体について)図22Bに示す。開放空間のパーセンテージとしての多孔率は、緩く充填したセルについて約40.8%であり、密に充填したセルについて61.4%であった。図20A~21Bのモデリングした積層体は、所与のメッシュ材料の、最も密に充填した構成、及び最も緩く充填した構成を表しているため、40.8%及び61.4%という多孔率は、この特定のメッシュ材料に関する多孔率の上限及び下限である。このメッシュ材料を使用する場合の、位置合わせ、及び現実での充填密度に応じて、多孔率はこれらの極値の間に入ることができる。しかしながら、本開示の実施形態はこの多孔率範囲に限定されない。というのは、細胞培養容器内の基材のメッシュ寸法及び配置の変化が、異なる範囲の多孔率をもたらす可能性があるためである。
【0090】
モデリングした多孔率範囲に加えて、実際のPET織布メッシュ基材の充填層を用いて、多孔率を測定した。この測定は、ランダムな位置合わせで積層した、それぞれ直径が22.4mmである100個のディスクを用いて行われた。100個のディスクの積層体の総重量は、5.65±0.2gであった。この積層体のPET材料の体積を、PET密度を1.38g/cmと仮定して、以下の式:
【0091】
【数2】
【0092】
を用いて計算した。これにより、(直径22.4mmの100個のディスクに関する)5.65gのPETについてのPET体積VPETは、4.1mlであるものと計算された。次に、PET体積VPETと、積層体内の開放空間の体積とを含む、積層体の総体積Vtotalを、以下の式:
【0093】
【数3】
【0094】
を用いて計算した。100個のディスクの積層体は、25±1mmの積層体高さを有していた。よって、ディスクの直径が22.4mmであることにより、Vtotalは9.85mlであることが分かった。従って、積層された充填層の多孔率は、以下の式:
【0095】
【数4】
【0096】
を用いて計算できる。式4及び上述の複数の値を用いて、多孔率は58.4%であるものと計算された。これはモデルによって予測された範囲内である。
【0097】
実施例7
実施例7では、様々なPET織布メッシュ基材材料の透過率を比較した。表5は、この比較に使用したPETメッシュ試料を示す。
【0098】
【表5】
【0099】
メッシュ試料A~Fの写真が図23に示されている。各メッシュ試料A~Fの透過率の結果は、図24に示されている。図25は、試料A~Cに関する圧力降下試験の結果を示し、ここで圧力降下試験は、試料Aに関して、異なる構成及び充填密度の複数の積層体で実施された。点線は、メッシュ試料Aに関する密な及び緩い充填密度を表し、試料Aは、Aに比べて緩く充填された積層体である。センチメートルあたりの圧力の変化(Pa)に関する圧力降下が、Q/Aに対してプロットされている。
【0100】
実施例8
本明細書に記載されているように、本開示の実施形態は、拡張可能であり、かつ細胞集団を漸増させるための細胞シードトレインを提供するために使用できる、細胞培養基材、バイオリアクターシステム、及び細胞又は細胞副産物の培養方法を提供する。既存の細胞培養溶液の1つの問題は、所与のバイオリアクターシステムの技術をシードトレインの一部とすることができない点である。その代わり、細胞集団は通常、様々な細胞培養基材上で拡張される。これは細胞集団に悪影響を及ぼす可能性がある。というのは、細胞は特定の表面に順応し、異なるタイプの表面に移されることが非効率性につながり得るためである。よって、複数の細胞培養基材又は技術の間でのこのような移動を、最小限に抑えることが望ましい。本開示の実施形態によって実現できるように、シードトレインにわたって同一の細胞培養基材を使用することによって、細胞集団の拡張の効率が向上する。図26は、1つ以上の実施形態の一例を示し、ここでは、本出願の織布細胞培養基材をシードトレインの一部として使用することにより、比較的小さなバイオリアクターが、比較的大きなバイオリアクターに播種できるようにする。具体的には、図26に示されているように、シードトレインは開始細胞のバイアルを用いて開始でき、これは第1の容器(例えばCorning製のT175フラスコ)、次に第2の容器(例えばCorning製のHyperFlask(登録商標))、次に本発明の実施形態によるプロセス開発規模のバイオリアクターシステム(基材の有効表面積=約20,000cm)、そして本発明の実施形態による比較的大きなバイオリアクターパイロットシステム(基材の有効表面積=約300,000cm)へと播種される。このシードトレインの最後には、細胞を、本開示の実施形態による製造規模のバイオリアクター容器に播種でき、これは例えば約5,000,000cmの表面積を有する。その後、細胞培養の完了時に採取及び精製ステップを実施できる。図26に示されているように、採取は、界面活性剤(Triton X‐100等)を用いたインサイチュでの細胞溶解によって、又は機械的溶解によって、達成でき、更に必要に応じて下流の処理を実施できる。
【0101】
シードトレイン内で(例えばプロセス開発レベルからパイロットレベルまで、又は更に製造レベルまで)同一の細胞培養基材を使用する利点としては:シードトレイン及び製造段階中、細胞が同一の表面に適応していることによって得られる効率;シードトレインの複数のフェーズの間の手動の自由操作の数の削減;本明細書に記載されているような均一な細胞分布及び流体流による、充填層のより効率的な使用;並びにウイルスベクターの採取中の機械的又は化学的溶解の使用の柔軟性が挙げられる。
【0102】
実施例9
本開示の基材のウイルス産生収率の潜在的な改善を理解するために、PET織布メッシュ基材の性能を、iCellisで使用される基材の性能と比較した。表6は、これらの基材を簡略化されたバイオリアクター内で使用して産生されるウイルス粒子の総数をまとめたものである。
【0103】
【表6】
【0104】
表6の結果から、特定の個数のウイルス粒子を産生するために必要な基材材料の体積を計算できる。例えば、製造規模のウイルスベクター産生の目標が、表7に示されているように、3.00E+18のウイルス粒子である場合、必要なPET織布メッシュの体積は、必要なiCellis基材の量の約1/7である。
【0105】
【表7】
【0106】
実施例10
本開示の粗メッシュ基材を通る均一な流れを実証するために、充填層バイオリアクターを通る流体の流速をモデリングした。図27Aは、PET織布メッシュディスクの充填層領域622を有する容器620に関する、モデリング結果を示し、上記充填層領域622は、6cmの直径及び10cmの充填層高さを有し、PET織布メッシュ基材の357個のディスクからなる。流体速度の大きさを、図示されているスケールに従って示す。流速は入口624及び出口626の付近で高いが、この速度は、充填層領域622全体を通して、例えば充填層の高さに沿って、及び充填層の幅にわたって、一定である。点線628が示す領域を図27Bに拡大して示すが、これは、流体が細胞培養マトリクスの均一な粗い構造に入ると、速度が比較的一定となることを示している。この実施例の充填層は、約24,214cmの総表面積に相当する。モデルで示される所与の均一な流れについて、(平均速度から2.5%超の偏差として定義される)均一でない流れに曝露されるこの表面積のパーセンテージは0%であった。
【0107】
容器のサイズを拡張してもこの均一な流れが持続する程度を実証するために、図27Aと同様に、ただし幅が漸増する複数の容器(充填層の幅も広くなる)を用いて、更なるモデリングを実施した。これらのより大きな容器からの不均一な流れのパーセンテージを表8にまとめる。図示されているように、反応器を直径60cmまで拡張した場合であっても、不均一な流れの量は、基材の表面積の約1/2パーセント以下のままである。これは、本明細書に記載の均一な粗織布メッシュが、既存の細胞培養基材とは異なり、充填層全体にわたる均一な流れを実現できることを示している。
【0108】
【表8】
【0109】
実施例11
本開示の織布メッシュ基材と、既存の市場にある不織布の不規則な基材との間の透過率の差を、より良好に理解するために、これらの材料の透過率を測定するための実験を実施した。特に、PET織布メッシュを、iCellisで使用される不織布基材、及び市販の同様の不織布の、整然とした構成ではない基材と比較した。積層されたディスクの充填層の織布メッシュ基材総に対して垂直な流れ、不織布基材のランダムな充填層を通る流れ、及び不織布基材材料の固定されたシートを通る流れについて、透過率の測定を実施した。不織布メッシュは、約20μmの繊維直径、約0.18mmの厚さ、及び91%の多孔率を有していた。織布メッシュ基材は、約160μmの直径、及び250μmの開口直径を有していた。
【0110】
メッシュの透過率に関して、細胞培養培地をシミュレートするための試験に水を使用した。
バイオリアクター内で基材が典型的に受ける流れ条件をシミュレートするために、蠕動ポンプを用いて、流量を15~50ml/cm/分となるように制御した。試験条件下で試料が受ける圧力降下が小さいため、試料間の圧力差を測定するために圧力計を使用した。基材のタイプ及び充填方法が異なるため、基材はわずかに異なる方法で保持された。
【0111】
不織布メッシュを横断する流れを測定するために、試料を直径12mmのディスクに切断し、Oリングで封止された2つの開放円筒状チャンバの間に、10段のメッシュを保持した。圧力計を上記開放チャンバに直接接続して、圧力降下を測定した。
【0112】
ランダムに充填された不織布メッシュを通る流れを測定するために、メッシュを5mm×25mmのストリップに切断し、直径29mmの円筒状チャンバに充填した。合計3gのメッシュストリップを、30ml、及び充填層の高さ約45mmとなるように、充填した。充填されたストリップの各側では、2つの粗織布メッシュのディスクを用いて充填層を閉じ込めた。充填層の各側には厚さ約3mmの開放空間が存在し、厚さ10mmの2つの多孔質材料の片を用いて、入口及び出口において流れを再分配した。
【0113】
粗織布メッシュを通る流れを測定するために、メッシュを、円筒状チャンバにフィットするように、直径29mmのディスクに切断した。合計170個のディスクを1層ずつ、充填層の高さが45mmとなるように充填した。メッシュの各段の繊維の配向は、互いに整列されていなかった。流れはメッシュディスクを横断する(即ちディスク表面に対して垂直な)ものであった。充填層の各側には厚さ約3mmの開放空間が存在し、厚さ10mmの2つの多孔質材料の片を用いて、入口及び出口において流れを再分配した。
【0114】
透過率は、式(5):
【0115】
【数5】
【0116】
を用いて計算され、ここで:Q=流量であり;K=透過率であり;A=試料又は充填層の断面積であり;dP=試験試料又は充填層にわたる圧力降下であり;μ=水の粘度であり;dL=全体としての試料の厚さ又は充填層の高さである。
【0117】
最終的に計算された透過率を図28にまとめる。これらの結果は、不織布メッシュが、粗織布メッシュを横断する透過率の約1/50である、約7.5×10-12という極めて低い透過率を有していたことを示す。不織布メッシュを小さなストリップに切断してランダムに充填すると、その透過率は大幅に上昇し、粗織布メッシュと同程度となった。この透過率の上昇は、上述のチャネリング効果によって、流れのほとんどがメッシュストリップの周りを迂回した結果であると考えられる。
【0118】
測定された透過率に基づいて、不織布メッシュ及び粗織布メッシュを通る、並びにこれらの周りの、流れをシミュレートした。シミュレーションは、ANSYS Fluent v19.2ソフトウェアパッケージを用いて実施した。例示を目的として、図29A及び29Bに示されているように、基材材料の表面を流れ方向に対して(i)90°及び(ii)45°に整列させた2つのシナリオを研究した。いずれの場合においても、同一段の近隣のメッシュの間の間隔が5mmである場合、流れのほとんどはメッシュの周りにあり、流れの約0.02~0.005%しかメッシュを通過しなかった。これにより、メッシュの背後に相当なデッドゾーンが形成され、充填層を通る不均一な流れが発生する。この不均一性は、不織布メッシュ片が流れ方向に対して完璧に垂直に位置合わせされていない場合に、より重度になる。
【0119】
粗織布メッシュの場合、粗い構造によって、流れがメッシュを容易に通ることができるようになり、粗メッシュ層の背後にデッドゾーンが形成されなかった。織布メッシュの規則的な構造も、各段を通る均一な流れの分布に寄与したと考えられる。そしてこれにより、充填層全体を通るより均一な流れを実現できる。図30A(不織布メッシュ片)及び30B(粗織布メッシュ基材)に比較が明確に示されており、これらの図は、基材材料の縁部付近における流れの拡大図を示す。図30A及び30Bの場合、6方向全てにおける近隣のメッシュ片との間の空隙は、1mmに縮められており、このような1つのメッシュ片の周期的なドメインのみがシミュレートされている。図30Aは、不織布メッシュが極めて低い透過率を有することを示しており、これは、流れのほとんどが基材を迂回し、ごくわずかな流れしか基材自体を通らないためである。全質量流の0.17%しか、不織布メッシュを通過しない。対照的に、粗織布メッシュははるかに高い透過率を有し、従って図30Bに示されているように、より多くの流れが粗織布メッシュを通過する。上記空隙を通ってショートカットする流れは、上記2つのケースのカラーバーを比較すると弱くなっている。粗織布メッシュに関しては、総質量流量の10.7%もが基材を通過しており、これは粗織布メッシュが、空隙を伴って充填された場合であっても優れた透過率を有することを実証している。
【0120】
本明細書に記載されているように、複数の織布メッシュディスクを、ディスク間の位置合わせについて無数のバリエーションで、ランダムに充填できる。しかしながら、可能な位置合わせの範囲は、充填密度(即ち最も密な充填及び最も緩い充填)に基づく、2つの理論上の限界へと削減できる。これら2つの理想的な又は限界の状態により、大きな充填層を小さな周期的ドメインへと簡略化できる。このモデルを用いると、基材を通る透過率が、最も密な充填の限界から最も緩い充填の限界までで、およそ10倍異なることが分かった。実験によって測定された上述の透過率データは、この範囲内に十分収まっており、良好な検証ポイントとして機能した。またモデルは、いずれの充填条件においても、流れ方向における透過率が横断方向における透過率と同等であることも示した。これは、本開示の織布メッシュが、本発明者らが不織布基材において観察したほどには流れ方向を変化させず、基材の配向にかかわらず、流れをより均一にすることを示唆している。本開示の基材の流れの均一性の改善は、以下の実施例における滞留時間分布(residence time distribution:RTD)測定によって更に実証された。
【0121】
実施例12
滞留時間分布(RTD)は、容器内の流れの研究に有用である。その理論、測定、及び分析については、教科書:Levenspiel, O. Chemical Reaction Engineering. 3ed. 1999. Wiley. New Yorkで見ることができる。図5は、RTDを測定するための設定の概略図である。チャンバは、29mmの直径及び合計36mlの充填層容積を有する円筒状であり、3.6gの不織布メッシュ又は200層の粗織布メッシュを容器のチャンバに満たした。1:2000希釈済みMcCormick Green Food Colorを、測定のトレーサーとして使用した。FlowcellによるUV‐visを用いて、トレーサーの濃度の変化を監視した。22.5ml/mlの流量を全ての実験に使用した。チャンバをまず水で満たした。緑色染料に切り替えた後、ODの変化を記録した。結果を図32に示す。
【0122】
以下の式を用いて、平均滞留時間t(式(6))及び分散σ(式(7))を計算した:
【0123】
【数6】
【0124】
【数7】
【0125】
ここでFは、ステップトレーサー応答における正規化された濃度である。表9は、測定から計算された平均滞留時間及び偏差をまとめたものである。粗織布メッシュは比較的短い平均滞留時間を示し、これは、低い多孔率及びデッドゾーンの減少によるものと思われた。粗織布メッシュの充填層では多孔率は約60%であり、その一方で、不織布メッシュは約93%という比較的高い多孔率を有している。不織布メッシュの充填層で検出される正規化済みの偏差が極めて大きいことは、不織布メッシュの均一性が低かった、又は不織布メッシュが理想から遠かったことを示唆している。
【0126】
【表9】
【0127】
以上の透過率及び滞留時間の実験から、現行のバイオリアクターで使用されている不織布の不規則なタイプの細胞培養基材が、本開示の基材より低い透過率を有することが示されている。これらの不織布基材はまた、該不織布基材に対する流れの方向に応じて異なる透過率又は流量を有するが、本開示の基材は、基本的に等方性の流れ挙動を示す。上記不織布基材の不規則な流れ及び短い滞留時間を理由として、栄養素及びトランスフェクション試薬が、基材表面又は基材層の他の側部上の細胞に到達するまでに、本開示の均一な織布メッシュ基材に比べて長い時間がかかる可能性がある。これに加えて、ランダムに充填された不織布基材の透過率は高く、これは強いチャネリング効果と、これに伴う細胞又は栄養素の不均一な送達とを示唆する。
【0128】
例示的な実装形態
以下は、本開示の主題の実装形態の様々な態様の説明である。各態様は、本開示の主題の様々な特徴部分、特徴、又は利点のうちの1つ以上を含み得る。これらの実装形態は、本開示の主題のいくつかの態様を例示することを意図したものであり、全ての可能な実装形態の包括的又は網羅的説明として解釈してはならない。
【0129】
態様1は細胞培養マトリクスを対象とし、上記細胞培養マトリクスは:基材であって、上記基材は、第1の側部と、上記第1の側部の反対側の第2の側部と、上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さと、上記基材に形成されて、上記基材の上記厚さを通過する、複数の開口とを備える、基材を含み、上記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、上記基材の上記厚さを通る流れを可能とするように構成される。
【0130】
態様2は、上記基材が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様1に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0131】
態様3は、上記基材が、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シート、及び織布メッシュシートのうちの少なくとも1つを含む、態様1又は態様2に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0132】
態様4は、上記基材が、1つ以上の繊維を含む上記織布メッシュを含む、態様3に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0133】
態様5は、上記1つ以上の繊維が、平坦、円形、長方形、及び多角形のうちの少なくとも1つの断面形状を有する、態様4に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0134】
態様6は、上記1つ以上の繊維が、モノフィラメント繊維及びマルチフィラメント繊維のうちの少なくとも1つを含む、態様4又は態様5に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0135】
態様7は、上記1つ以上の繊維が、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第1の繊維直径を有する第1の繊維を含む、態様4~6のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0136】
態様8は、上記1つ以上の繊維が更に、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第2の繊維直径を有する第2の繊維を含む、態様7に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0137】
態様9は、上記第2の繊維直径が上記第1の繊維直径と異なる、態様8に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0138】
態様10は、上記複数の開口が、約100μm~約1000μm、約200μm~約900μm、又は約225μm~約800μmの開口直径を有する、態様1~9のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0139】
態様11は、上記繊維直径が約250μm~約300μmであり、上記開口直径が約750μm~約800μmであるか;又は上記繊維直径が約270μm~約276μmであり、上記開口直径が約785μm~約795μmである、態様10に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0140】
態様12は、上記繊維直径が約200μm~約230μmであり、上記開口直径が約500μm~約550μmであるか;又は上記繊維直径が約215μm~約225μmであり、上記開口直径が約515μm~約530μmである、態様10に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0141】
態様13は、上記繊維直径が約125μm~約175μmであり、上記開口直径が約225μm~約275μmであるか;又は上記繊維直径が約150μm~約165μmであり、上記開口直径が約235μm~約255μmである、態様10に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0142】
態様14は、上記繊維直径に対する上記開口直径の比が、約1.0~約3.5、約1.25~約3.25、約1.4~約3.0、約1.5~約2.9、約1.5~約2.4、又は約2.4~約2.9である、態様10~13のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0143】
態様15は、上記複数の開口が、正方形、長方形、菱形、偏菱形、円形、又は楕円形の形状を有する開口を含む、態様1~14のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0144】
態様16は、上記複数の開口が規則的なパターンに配列されている、態様1~15のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0145】
態様17は、上記細胞培養マトリクスが単層基材を含む、態様1~16のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0146】
態様18は、上記細胞培養マトリクスが、少なくとも1つの第1の基材層及び少なくとも1つの第2の基材層を備える多層基材を含み、上記第1の基材層が、第1の側部と、上記第1の側部の反対側の第2の側部とを備え、上記第2の基材層が、第3の側部と、上記第3の側部の反対側の第4の側部とを備え、上記第2の側部が上記第3の側部と対面する、態様1~17のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0147】
態様19は、上記多層基材が、上記第1の基材層が上記第2の基材層に対して所定の位置合わせを有するように構成される、態様18に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0148】
態様20は、上記多層基材が、上記第1の基材層の繊維の交点が上記第2の基材層の開口と対面するように構成される、態様19に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0149】
態様21は、上記第1の基材層の開口が、上記第2の基材層の上記開口と少なくとも部分的に重なる、態様19又は態様20に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0150】
態様22は、上記第1の基材層及び上記第2の基材層の上記開口が位置合わせされる、態様21に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0151】
態様23は、上記多層基材が、上記第1の基材層が上記第2の基材層に対するランダムな位置合わせを有するように構成される、態様18に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0152】
態様24は、上記細胞培養マトリクスが複数の上記基材を含み、上記複数の基材はそれぞれ、上記複数の基材のうちの他の上記基材に対してランダムに配向される、態様1~23のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0153】
態様25は、上記細胞培養マトリクスが、積層構成の複数の上記基材を含む、態様1~23のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0154】
態様26は、上記複数の基材のうちの1つの、上記第1の側部及び上記第2の側部が、上記積層構成内の他の上記基材の上記第1の側部及び上記第2の側部に対して、略平行である、態様25に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0155】
態様27は、上記基材が円筒状ロール構成である、態様1~23のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0156】
態様28は、上記円筒状ロールが、上記培養チャンバ内に配置されたときに上記円筒状ロールが部分的に解けることによって、上記バイオリアクター容器内の培養チャンバの形状へと広がるよう構成される、態様27に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0157】
態様29は、上記円筒状ロールが、上記円筒状ロールが収縮状態にある間に上記培養空間に挿入され、上記培養空間内に配置されると上記培養空間内で広がるように構成される、態様28に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0158】
態様30は、上記細胞培養マトリクスが、異なるジオメトリの織布メッシュを含む複数の基材を含み、上記異なるジオメトリは、繊維直径、開口直径、又は開口ジオメトリのうちの少なくとも1つにおいて異なっている、態様1~29のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0159】
態様31は、異なるジオメトリの上記織布メッシュが、上記バイオリアクター容器内での所望の流れ特性に基づいて、所定の配置で並べられる、態様30に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0160】
態様32は、上記所望の流れ特性が、上記細胞培養マトリクスにわたる液体培地の均一な灌流、及び上記細胞培養マトリクスにわたる細胞成長の分布のうちの少なくとも1つを含む、態様31に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0161】
態様33は、異なるジオメトリの上記織布メッシュが、第1のジオメトリを有する第1のメッシュ、及び第2のジオメトリを有する第2のメッシュを含み、上記所定の配置が、上記第1のメッシュを、上記細胞培養マトリクスを通る細胞培養培地の所望のバルク流方向に関して上記第2のメッシュの上流とすることを含む、態様31又は32に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0162】
態様34は、上記所定の配置が、上記第1のメッシュの積層体を上記第2のメッシュの積層体の上流に配置することを含む、態様33に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0163】
態様35は、上記所定の配置が、上記第1のメッシュの複数の積層体と、上記第2のメッシュの複数の積層体との、上記バルク流方向に沿った交互配置を含む、態様33又は態様34に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0164】
態様36は、上記細胞培養マトリクスが、細胞、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(virus‐like particle:VLP)、微小胞、エクソソーム、及び多糖類のうちの少なくとも1つの、培養及び/又は採取のために構成される、態様1~35のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0165】
態様37は、上記基材が官能化表面を備え、上記官能化表面は、上記ポリマーメッシュ材料に対する上記付着細胞の付着を改善するために、物理的又は化学的に修飾される、態様1~36のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0166】
態様38は、上記細胞培養マトリクスが、上記メッシュの上記表面への上記培養培地中の成分の吸着又は吸収のために構成された、表面を備える、態様1~37のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0167】
態様39は、上記細胞培養マトリクスが、上記ポリマーメッシュ材料の表面上にコーティングを備え、上記コーティングは、上記付着細胞の付着を促進するよう構成される、態様1~38のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0168】
態様40は、上記細胞が上記コーティングに付着する、態様39に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0169】
態様41は、上記コーティングが、上記細胞培養マトリクスへの細胞の付着を促進するよう構成された、生物分子又は合成生体活性分子である、態様39又は態様40に記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0170】
態様42は、上記コーティングが、ヒドロゲル、コラーゲン、Matrigel(登録商標)、生体活性分子又はペプチド、及び生物タンパク質のうちの少なくとも1つである、態様39~41のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0171】
態様43は、上記官能化表面がプラズマ処理される、態様39~42のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0172】
態様44は、上記細胞が、上記織布メッシュに付着する、付着細胞、浮遊細胞、及び弱付着細胞のうちの少なくとも1つを含む、態様1~43のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0173】
態様45は、バイオリアクターシステムを対象とし、上記バイオリアクターシステムは:少なくとも1つのリザーバを備える細胞培養容器;及び上記少なくとも1つのリザーバ内に配置された細胞培養マトリクスを備え、上記細胞培養マトリクスは、細胞を付着させるために構成された表面を有する複数の織り合わされた繊維を有する、織布基材を含む。
【0174】
態様46は、上記織布基材が、上記複数の織り合わされた繊維の均一な配置を含む、態様45に記載のシステムを対象とする。
【0175】
態様47は、上記織布基材が、上記複数の繊維の間に配置された複数の開口を備える、態様45又は態様46に記載のシステムを対象とする。
【0176】
態様48は、上記複数の繊維がポリマー繊維を含む、態様45~47のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0177】
態様49は、上記ポリマー繊維が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様48に記載のシステムを対象とする。
【0178】
態様50は、上記細胞培養マトリクスが複数の織布基材を含む、態様45~49のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0179】
態様51は、上記複数の基材それぞれが:第1の側部;上記第1の側部の反対側の第2の側部;上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さを備え、上記複数の開口が上記基材の上記厚さを通過する、態様50に記載のシステムを対象とする。
【0180】
態様52は、上記複数の基材が互いに隣接して配設されることにより、ある上記基材の上記第1の側部及び上記第2の側部のうちの一方が、隣接する基材の上記第1の側部及び上記第2の側部のうちの他方と隣接する、態様50又は態様51に記載のシステムを対象とする。
【0181】
態様53は、上記複数の基材の少なくとも一部分が、スペーサ材料又はバリアによって隔てられていない、態様50~52のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0182】
態様54は、上記複数の基材の少なくとも一部分が、互いに物理的に接触している、態様50~53のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0183】
態様55は、上記細胞培養容器が少なくとも1つのポートを備え、上記少なくとも1つのポートは、上記少なくとも1つのポートを通して、上記少なくとも1つのリザーバに対して材料を供給又は除去するよう構成される、態様45~54のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0184】
態様56は、上記少なくとも1つのポートが、上記少なくとも1つのリザーバに材料を供給するための少なくとも1つの入口、及び上記少なくとも1つのリザーバから材料を除去するための少なくとも1つの出口を備える、態様55に記載のシステムを対象とする。
【0185】
態様57は、上記材料が、培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つを含む、態様56に記載のシステムを対象とする。
【0186】
態様58は:バイオリアクター容器と;上記バイオリアクター容器内に配置され、細胞を培養するために構成された、細胞培養マトリクスとを備える、細胞培養システムを対象とし、上記細胞培養マトリクスは:基材であって、上記基材は、第1の側部と、上記第1の側部の反対側の第2の側部と、上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さと、上記基材に形成されて、上記基材の上記厚さを通過する、複数の開口とを備える、基材を含み、上記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、上記基材の上記厚さを通る流れを可能とするように構成される。
【0187】
態様59は、上記基材が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様58に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0188】
態様60は、上記基材が、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シート、及び織布メッシュシートのうちの少なくとも1つを含む、態様58又は態様59に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0189】
態様61は、上記基材が、1つ以上の繊維を含む上記織布メッシュを含む、態様60に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0190】
態様62は、上記1つ以上の繊維が、平坦、円形、長方形、及び多角形のうちの少なくとも1つの断面形状を有する、態様61に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0191】
態様63は、上記1つ以上の繊維が、モノフィラメント繊維及びマルチフィラメント繊維のうちの少なくとも1つを含む、態様61又は態様62に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0192】
態様64は、上記1つ以上の繊維が、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第1の繊維直径を有する第1の繊維を含む、態様61~63のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0193】
態様65は、上記1つ以上の繊維が更に、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第2の繊維直径を有する第2の繊維を含む、態様64に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0194】
態様66は、上記第2の繊維直径が上記第1の繊維直径と異なる、態様65に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0195】
態様67は、上記複数の開口が、約100μm~約1000μm、約200μm~約900μm、又は約225μm~約800μmの開口直径を有する、態様58~64のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0196】
態様68は、上記繊維直径が約250μm~約300μmであり、上記開口直径が約750μm~約800μmであるか;又は上記繊維直径が約270μm~約276μmであり、上記開口直径が約785μm~約795μmである、態様67に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0197】
態様69は、上記繊維直径が約200μm~約230μmであり、上記開口直径が約500μm~約550μmであるか;又は上記繊維直径が約215μm~約225μmであり、上記開口直径が約515μm~約530μmである、態様67に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0198】
態様70は、上記繊維直径が約125μm~約175μmであり、上記開口直径が約225μm~約275μmであるか;又は上記繊維直径が約150μm~約165μmであり、上記開口直径が約235μm~約255μmである、態様67に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0199】
態様71は、上記繊維直径に対する上記開口直径の比が、約1.0~約3.5、約1.25~約3.25、約1.4~約3.0、約1.5~約2.9、約1.5~約2.4、又は約2.4~約2.9である、態様67~70のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0200】
態様72は、上記複数の開口が、正方形、長方形、菱形、偏菱形、円形、又は楕円形の形状を有する開口を含む、態様58~71のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0201】
態様73は、上記複数の開口が規則的なパターンに配列されている、態様58~72のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0202】
態様74は、上記細胞培養マトリクスが単層基材を含む、態様58~73のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0203】
態様75は、上記細胞培養マトリクスが多層基材を含み、上記多層基材が、少なくとも1つの第1の基材層及び少なくとも1つの第2の基材層を備え、上記第1の基材層が、第1の側部と、上記第1の側部の反対側の第2の側部とを備え、上記第2の基材層が、第3の側部と、上記第3の側部の反対側の第4の側部とを備え、上記第2の側部が上記第3の側部と対面する、態様58~74のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0204】
態様76は、上記多層基材が、上記第1の基材層が上記第2の基材層に対して所定の位置合わせを有するように構成される、態様75に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0205】
態様77は、上記多層基材が、上記第1の基材層の繊維の交点が上記第2の基材層の開口と対面するように構成される、態様76に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0206】
態様78は、上記第1の基材層の開口が、上記第2の基材層の上記開口と少なくとも部分的に重なる、態様76又は態様77に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0207】
態様79は、上記第1の基材層及び上記第2の基材層の上記開口が位置合わせされる、態様78に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0208】
態様80は、上記多層基材が、上記第1の基材層が上記第2の基材層に対するランダムな位置合わせを有するように構成される、態様75に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0209】
態様81は、上記バイオリアクター容器を通る培地のバルク流方向が、上記第1の側部及び上記第2の側部に対して平行又は垂直となるように、上記細胞培養マトリクスが上記バイオリアクター容器内に配置される、態様58~80のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0210】
態様82は、上記細胞培養マトリクスが、上記バイオリアクター容器内にランダムに充填された複数の上記基材を含む、態様58~81のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0211】
態様83は、上記バイオリアクター容器が充填層バイオリアクターである、態様58~82のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0212】
態様84は、上記バイオリアクター容器が:上記バイオリアクター容器内に配置され、上記細胞培養マトリクスを内包する、培養空間;上記培養空間に対して流体を供給又は除去するよう構成された1つ以上の開口を備える、態様58~83のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0213】
態様85は、上記1つ以上の開口が、上記培養空間の内部に流体を供給するよう構成された入口と、上記バイオリアクター容器の上記培養空間から流体を除去できるように構成された出口とを含む、態様84に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0214】
態様86は、上記バイオリアクター容器が、上記入口を備える第1の端部と、上記第1の端部の反対側の、上記出口を備える第2の端部とを備え、上記培養空間が上記第1の端部と上記第2の端部との間に配置される、態様85に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0215】
態様87は、上記細胞培養マトリクスが上記培養空間の形状に対応する形状を有する、態様86に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0216】
態様88は、上記細胞培養マトリクスが、円筒状ロール構成の上記ポリマーメッシュ材料を含む、態様58~87のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0217】
態様89は、上記円筒状ロールの中心長手方向軸が、上記培地の流れ方向に対して平行である、態様88に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0218】
態様90は、上記円筒状ロールが、上記円筒状ロールが解けることによって、上記バイオリアクター容器内の上記培養空間の形状へと広がるよう構成される、態様88又は態様89に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0219】
態様91は、上記円筒状ロールが、上記円筒状ロールが収縮状態にある間に上記培養空間に挿入され、上記培養空間内に配置されると上記培養空間内で広がるように構成される、態様88~90のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0220】
態様92は、上記ポリマーメッシュ材料と上記培養空間の壁との間の摩擦力によって、上記ポリマーメッシュ材料が上記培養空間内の所定の位置に保持されるように、上記円筒状ロール及び上記培養空間が構成される、態様88~91のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0221】
態様93は、上記円筒状ロールが、上記バイオリアクター容器の開口を通って上記培養空間に挿入されるよう構成される、態様91に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0222】
態様94は、上記開口が、上記バイオリアクター容器の上記入口及び上記出口のうちの一方である、態様93に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0223】
態様95は、上記バイオリアクター容器が、上記培養空間内に基材支持体を備え、上記基材支持体は、上記細胞培養マトリクスを、上記培養空間内でガイドする、整列させる、又は固定するよう構成される、態様88~94のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0224】
態様96は、上記基材支持体が、上記第1の端部及び上記第2の端部のうちの一方から上記第1の端部及び上記第2の端部のうちの他方に向かって延在する支持部材を備え、上記円筒状ロールが、上記支持部材が上記円筒状ロールの上記中心長手方向軸に対して平行となるように、上記支持部材を取り囲むよう構成される、態様95に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0225】
態様97は、上記バイオリアクター容器が、細胞培養中に上記バイオリアクター容器の中心長手方向軸の周りで回転するよう構成される、態様58~96のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0226】
態様98は、上記中心長手方向軸が、細胞培養中に、重力の方向に対して垂直となる、態様97に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0227】
態様99は、上記バイオリアクター容器の上記回転中に上記基材が細胞培養流体を通って移動するように、上記細胞培養システムが構成される、態様97又は態様98に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0228】
態様100は、上記細胞培養システムが回転手段を更に備え、上記回転手段は、上記バイオリアクター容器に動作可能に連結され、また上記バイオリアクター容器を上記中心長手方向軸の周りで回転させるよう構成される、態様97~99のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0229】
態様101は、上記細胞培養マトリクスが、異なるジオメトリの織布メッシュを含む複数の基材を含み、上記異なるジオメトリは、繊維直径、開口直径、又は開口ジオメトリのうちの少なくとも1つにおいて異なっている、態様58~100のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0230】
態様102は、異なるジオメトリの上記織布メッシュが、上記バイオリアクター容器内での所望の流れ特性に基づいて、所定の配置で上記バイオリアクター容器内に配置される、態様101に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0231】
態様103は、上記所望の流れ特性が、上記細胞培養マトリクスにわたる液体培地の均一な灌流、及び上記細胞培養マトリクスにわたる細胞成長の分布のうちの少なくとも1つを含む、態様102に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0232】
態様104は、異なるジオメトリの上記織布メッシュが、第1のジオメトリを有する第1のメッシュ、及び第2のジオメトリを有する第2のメッシュを含み、上記所定の配置が、上記第1のメッシュを、上記バルク流方向に関して上記第2のメッシュの上流とすることを含む、態様102又は103に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0233】
態様105は、上記所定の配置が、上記第1のメッシュの積層体を上記第2のメッシュの積層体の上流に配置することを含む、態様104に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0234】
態様106は、上記所定の配置が、上記第1のメッシュの複数の積層体と、上記第2のメッシュの複数の積層体との、上記バルク流方向に沿った交互配置を含む、態様104又は態様105に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0235】
態様107は、上記付着細胞又は細胞副産物を採取するための手段を更に備える、態様58~106のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0236】
態様108は、上記細胞副産物が、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、微小胞、エクソソーム、及び多糖類のうちの少なくとも1つを含む、態様107に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0237】
態様109は、上記基材が官能化表面を備え、上記官能化表面は、上記ポリマーメッシュ材料に対する上記付着細胞の付着を改善するために、物理的又は化学的に修飾される、態様58~108のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0238】
態様110は、上記細胞培養マトリクスが、上記メッシュの上記表面への上記培養培地中の成分の吸着又は吸収のために構成された、表面を備える、態様58~109のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0239】
態様111は、上記細胞培養マトリクスが、上記ポリマーメッシュ材料の表面上にコーティングを備え、上記コーティングは、上記付着細胞の付着を促進するよう構成される、態様58~110のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0240】
態様112は、上記細胞が上記コーティングに付着する、態様111に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0241】
態様113は、上記コーティングが、上記細胞培養マトリクスへの細胞の付着を促進するよう構成された、生物分子又は合成生体活性分子である、態様111又は態様112に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0242】
態様114は、上記コーティングが、ヒドロゲル、コラーゲン、Matrigel、生体活性分子又はペプチド、及び生物タンパク質のうちの少なくとも1つである、態様111~113のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0243】
態様115は、上記官能化表面がプラズマ処理される、態様110~113のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0244】
態様116は、上記細胞が、上記織布メッシュに付着する、付着細胞、浮遊細胞、及び弱付着細胞のうちの少なくとも1つを含む、態様58~115のいずれか1つに記載の細胞培養マトリクスを対象とする。
【0245】
態様117は、培地を上記バイオリアクター容器の上記入口に供給するよう構成された、培地調質用容器を更に備える、態様58~116のいずれか1つに記載の細胞培養システムを対象とする。
【0246】
態様118は、バイオリアクターシステムを対象とし、上記バイオリアクターシステムは:第1の端部と、第2の端部と、上記第1の端部と上記第2の端部との間の少なくとも1つのリザーバとを備える、細胞培養容器;及び上記少なくとも1つのリザーバ内に配置された、細胞培養マトリクスを備え、上記細胞培養マトリクスは、複数の織布基材を備え、各上記織布基材は、細胞を付着させるために構成された表面を有する、複数の織り合わされた繊維を含み、上記バイオリアクターシステムは、材料を、上記少なくとも1つのリザーバを通して、上記第1の端部から上記第2の端部への流れ方向に流すように構成され、また上記複数の織布基材は、各上記織布基材が他の各上記織布基材に対して略平行となり、また上記流れ方向に対して略垂直となるように、積層される。
【0247】
態様119は、各上記基材が:第1の側部;上記第1の側部の反対側の第2の側部;上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さを備え、複数の開口が、上記基材の上記厚さを通過する、態様118に記載のシステムを対象とする。
【0248】
態様120は、上記基材が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様118又は態様119に記載のシステムを対象とする。
【0249】
態様121は、上記複数の織り合わされた繊維が、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第1の繊維直径を有する第1の繊維を含む、態様118~120のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0250】
態様122は、上記複数の織り合わされた繊維が更に、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第2の繊維直径を有する第2の繊維を含む、態様121に記載のシステムを対象とする。
【0251】
態様123は、上記第2の繊維直径が上記第1の繊維直径以下である、態様122に記載のシステムを対象とする。
【0252】
態様124は、上記複数の開口が、約100μm~約1000μm、約200μm~約900μm、又は約225μm~約800μmの開口直径を有する、態様119~123のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0253】
態様125は、上記繊維直径に対する上記開口直径の比が、約1.0~約3.5、約1.25~約3.25、約1.4~約3.0、約1.5~約2.9、約1.5~約2.4、又は約2.4~約2.9である、態様119~124のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0254】
態様126は、上記複数の開口が規則的なパターンに配列されている、態様119~125のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0255】
態様127は、上記細胞培養マトリクスが、異なるジオメトリの織布メッシュを含む複数の基材を含み、上記異なるジオメトリは、繊維直径、開口直径、又は開口ジオメトリのうちの少なくとも1つにおいて異なっている、態様118~126のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0256】
態様128は、異なるジオメトリの上記織布メッシュが、上記バイオリアクター容器内での所望の流れ特性に基づいて、所定の配置で並べられる、態様127に記載のシステムを対象とする。
【0257】
態様129は、上記細胞培養マトリクスが、細胞、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、微小胞、エクソソーム、及び多糖類のうちの少なくとも1つの、培養及び/又は採取のために構成される、態様118~128のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0258】
態様130は、上記基材が官能化表面を備え、上記官能化表面は、上記ポリマーメッシュ材料に対する上記付着細胞の付着を改善するために、物理的又は化学的に修飾される、態様118~129のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0259】
態様131は、上記複数の織り合わされた繊維が、互いに対して、整然としたランダムでない配置で配置される、態様118~130のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0260】
態様132は、上記複数の基材の少なくとも一部分が、スペーサ材料又はバリアによって隔てられていない、態様118~131のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0261】
態様133は、上記複数の基材の少なくとも一部分が、互いに物理的に接触している、態様118~132のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0262】
態様134は、態様118~133のいずれか1つに記載のバイオリアクターシステム内で細胞を培養する方法を対象とし、上記方法は:細胞を上記細胞培養マトリクス上に播種するステップ;上記細胞を上記細胞培養マトリクス上で培養するステップ;及び上記細胞の上記培養の産物を採取するステップを含み、上記基材の上記複数の開口は、上記基材の上記厚さを通る、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの流れを可能とするように構成される。
【0263】
態様135は、上記播種するステップが、上記細胞を上記基材に付着させるステップを含む、態様134に記載の方法を対象とする。
【0264】
態様136は、上記播種するステップが、細胞接種材料を上記細胞培養マトリクスに直接注入するステップを含む、態様135に記載の方法を対象とする。
【0265】
態様137は、上記細胞接種材料を注入する上記ステップの後、上記培養チャンバを通して細胞培地を灌流させるステップを更に含む、態様134~136のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0266】
態様138は:上記バイオリアクター容器に流体接続された培地調質用容器を提供するステップ;及び上記細胞培養培地を上記培地調質用容器から上記バイオリアクター容器に供給するステップを更に含む、態様134~137のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0267】
態様139は、培養中又は培養後に、上記培地の少なくとも一部分が、上記バイオリアクター容器から除去されて、上記培地調質用容器に戻される、態様138に記載の方法を対象とする。
【0268】
態様140は、上記細胞培養チャンバへの上記細胞培養培地の上記流れを制御するステップを更に含み、上記細胞培養培地が、細胞、細胞培養用栄養素、及び酸素のうちの少なくとも1つを含む、態様134~139のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0269】
態様141は、バイオリアクターシステムを対象とし、上記バイオリアクターシステムは:第1の端部と、第2の端部と、上記第1の端部と上記第2の端部との間の少なくとも1つのリザーバとを備える、細胞培養容器;及び上記少なくとも1つのリザーバ内に配置された、細胞培養マトリクスを備え、上記細胞培養マトリクスは、複数の織布基材を備え、各上記織布基材は、細胞を付着させるために構成された表面を有する、複数の織り合わされた繊維を含み、上記バイオリアクターシステムは、材料を、上記少なくとも1つのリザーバを通して、上記第1の端部から上記第2の端部への流れ方向に流すように構成され、また上記複数の織布基材は、各上記織布基材が他の各上記織布基材に対して略平行となり、また上記流れ方向に対して略平行となるように、積層される。
【0270】
態様142は、各上記基材が:第1の側部;上記第1の側部の反対側の第2の側部;上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さを備え、複数の開口が、上記基材の上記厚さを通過する、態様141に記載のシステムを対象とする。
【0271】
態様143は、上記基材が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様141又は態様142に記載のシステムを対象とする。
【0272】
態様144は、上記複数の織り合わされた繊維が、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第1の繊維直径を有する第1の繊維を含む、態様141~143のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0273】
態様145は、上記複数の織り合わされた繊維が更に、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第2の繊維直径を有する第2の繊維を含む、態様144に記載のシステムを対象とする。
【0274】
態様146は、上記第2の繊維直径が上記第1の繊維直径以下である、態様145に記載のシステムを対象とする。
【0275】
態様147は、上記複数の開口が、約100μm~約1000μm、約200μm~約900μm、又は約225μm~約800μmの開口直径を有する、態様142~146のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0276】
態様148は、上記繊維直径に対する上記開口直径の比が、約1.0~約3.5、約1.25~約3.25、約1.4~約3.0、約1.5~約2.9、約1.5~約2.4、又は約2.4~約2.9である、態様142~147のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0277】
態様149は、上記複数の開口が規則的なパターンに配列されている、態様142~148のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0278】
態様150は、上記細胞培養マトリクスが、異なるジオメトリの織布メッシュを含む複数の基材を含み、上記異なるジオメトリは、繊維直径、開口直径、又は開口ジオメトリのうちの少なくとも1つにおいて異なっている、態様141~149のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0279】
態様151は、異なるジオメトリの上記織布メッシュが、上記バイオリアクター容器内での所望の流れ特性に基づいて、所定の配置で並べられる、態様150に記載のシステムを対象とする。
【0280】
態様152は、上記細胞培養マトリクスが、細胞、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、微小胞、エクソソーム、及び多糖類のうちの少なくとも1つの、培養及び/又は採取のために構成される、態様141~151のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0281】
態様153は、上記基材が官能化表面を備え、上記官能化表面は、上記ポリマーメッシュ材料に対する上記付着細胞の付着を改善するために、物理的又は化学的に修飾される、態様141~152のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0282】
態様154は、上記複数の織り合わされた繊維が、互いに対して、整然としたランダムでない配置で配置される、態様141~153のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0283】
態様155は、上記複数の基材の少なくとも一部分が、スペーサ材料又はバリアによって隔てられていない、態様141~154のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0284】
態様156は、上記複数の基材の少なくとも一部分が、互いに物理的に接触している、態様141~155のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0285】
態様157は、態様141~156のいずれか1つに記載のバイオリアクターシステム内で細胞を培養する方法を対象とし、上記方法は:細胞を上記細胞培養マトリクス上に播種するステップ;上記細胞を上記細胞培養マトリクス上で培養するステップ;及び上記細胞の上記培養の産物を採取するステップを含み、上記基材の上記複数の開口は、上記基材の上記厚さを通る、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの流れを可能とするように構成される。
【0286】
態様158は、上記播種するステップが、上記細胞を上記基材に付着させるステップを含む、態様157に記載の方法を対象とする。
【0287】
態様159は、上記播種するステップが、細胞接種材料を上記細胞培養マトリクスに直接注入するステップを含む、態様158に記載の方法を対象とする。
【0288】
態様160は、上記細胞接種材料を注入する上記ステップの後、上記培養チャンバを通して細胞培地を灌流させるステップを更に含む、態様157~159のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0289】
態様161は:上記バイオリアクター容器に流体接続された培地調質用容器を提供するステップ;及び上記細胞培養培地を上記培地調質用容器から上記バイオリアクター容器に供給するステップを更に含む、態様157~160のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0290】
態様162は、培養中又は培養後に、上記培地の少なくとも一部分が、上記バイオリアクター容器から除去されて、上記培地調質用容器に戻される、態様161に記載の方法を対象とする。
【0291】
態様163は、上記細胞培養チャンバへの上記細胞培養培地の上記流れを制御するステップを更に含み、上記細胞培養培地が、細胞、細胞培養用栄養素、及び酸素のうちの少なくとも1つを含む、態様157~162のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0292】
態様164は、バイオリアクターシステムを対象とし、上記バイオリアクターシステムは:第1の端部と、第2の端部と、上記第1の端部と上記第2の端部との間の少なくとも1つのリザーバとを備えた、細胞培養容器;及び上記少なくとも1つのリザーバ内に配置された、細胞培養マトリクスを備え、上記細胞培養マトリクスは、織布基材を含み、上記織布基材は、細胞を付着させるために構成された表面を有する、複数の織り合わされた繊維を備え、上記織布基材は、上記少なくとも1つのリザーバ内に、巻かれた構成で配置され、これにより、円筒状細胞培養マトリクスが提供され、上記織布基材の表面が、上記円筒状細胞培養マトリクスの長手方向軸に対して平行となる。
【0293】
態様165は、上記織布基材が、上記バイオリアクター容器の上記中心長手方向軸を少なくとも部分的に取り囲む円筒状基材として、上記少なくとも1つのリザーバ内に配置される、態様164に記載のシステムを対象とする。
【0294】
態様166は、上記バイオリアクターシステムが、材料を、上記少なくとも1つのリザーバを通して、上記第1の端部から上記第2の端部への流れ方向に流すよう構成される、態様164又は態様165に記載のシステムを対象とする。
【0295】
態様167は、上記円筒状基材の中心長手方向軸が、上記培地の流れ方向に対して平行である、態様166に記載のシステムを対象とする。
【0296】
態様168は、上記円筒状基材が、巻かれた織布基材を含み、上記巻かれた織布基材は、上記巻かれた織布基材を解くことによって、広がって、上記少なくとも1つのリザーバの壁に接触するよう構成される、態様164~167のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0297】
態様169は、上記巻かれた織布基材が、上記細胞培養容器内の上記少なくとも1つのリザーバの内部の形状へと広がるよう構成される、態様164~168のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0298】
態様170は、上記巻かれた織布基材が、上記巻かれた織布基材が収縮ロール状態にある間に上記培養空間に挿入され、上記リザーバ内に配置されると上記リザーバ内で広がるように構成される、態様169に記載のシステムを対象とする。
【0299】
態様171は、上記巻かれた基材と上記リザーバの壁との間の摩擦力によって、上記巻かれた基材が上記リザーバ内の略所定の位置に保持されるように、上記巻かれた織布基材及び上記リザーバが構成される、態様169又は態様170に記載のシステムを対象とする。
【0300】
態様172は、上記巻かれた織布基材が、上記細胞培養容器の開口を通って上記リザーバに挿入されるよう構成される、態様169~171のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0301】
態様173は、上記開口が、上記細胞培養容器の上記入口及び上記出口のうちの一方である、態様172に記載のシステムを対象とする。
【0302】
態様174は、上記細胞培養容器が、上記リザーバ内に基材支持体を備え、上記基材支持体は、上記織布基材を、上記培養空間内でガイドする、整列させる、又は固定するよう構成される、態様164~173のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0303】
態様175は、上記基材支持体が、上記第1の端部及び上記第2の端部のうちの一方から上記第1の端部及び上記第2の端部のうちの他方に向かって延在する支持部材を備え、上記円巻かれた織布基材が、上記支持部材が上記巻かれた織布基材の上記中心長手方向軸に対して平行となるように、上記支持部材の周の少なくとも一部分を取り囲むよう構成される、態様174に記載のシステムを対象とする。
【0304】
態様176は、上記中心長手方向軸が、細胞培養中に、重力の方向に対して垂直となる、態様164~175のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0305】
態様177は、上記リザーバ及び上記細胞培養マトリクスのうちの少なくとも一方が、細胞培養中に上記バイオリアクター容器の中心長手方向軸の周りで回転するよう構成される、態様164~175のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0306】
態様178は、上記細胞培養容器の上記回転中に上記基材が細胞培養流体を通って移動するように、上記バイオリアクターシステムが構成される、態様177に記載のシステムを対象とする。
【0307】
態様179は、上記バイオリアクターシステムが回転手段を更に備え、上記回転手段は、上記細胞培養容器に動作可能に連結され、また上記細胞培養容器を上記中心長手方向軸の周りで回転させるよう構成される、態様177又は態様178に記載の細胞培養システムを対象とする。
【0308】
態様180は、上記円筒状細胞培養マトリクスが織布細胞培養基材を含み、上記細胞培養基材の隣接する表面の間に他のいずれの固体材料も含まない、態様164~179のいずれか1つに記載のシステムを対象とする。
【0309】
態様181は、バイオリアクター内で細胞を培養する方法を対象とし、上記方法は:バイオリアクター容器を提供するステップであって、上記バイオリアクター容器は、上記バイオリアクター容器内の細胞培養チャンバと、上記細胞培養チャンバ内に配置され、その上で細胞を培養するために構成された、細胞培養マトリクスとを備え、上記細胞培養マトリクスは基材を含み、上記基材は、第1の側部と、上記第1の側部の反対側の第2の側部と、上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さと、上記基材に形成されて、上記基材の上記厚さを通過する、複数の開口とを備える、ステップ;細胞を上記細胞培養マトリクス上に播種するステップ;上記細胞を上記細胞培養マトリクス上で培養するステップ;及び上記細胞を培養する上記ステップの産物を採取するステップを含み、上記基材の上記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、上記基材の上記厚さを通る流れを可能とするよう構成される。
【0310】
態様182は、上記基材が、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シート、及び織布メッシュシートのうちの少なくとも1つを含む、態様181に記載の方法を対象とする。
【0311】
態様183は、上記基材がポリマー材料を含む、態様181又は態様182に記載の方法を対象とする。
【0312】
態様184は、上記ポリマー材料が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つである、態様183に記載の方法を対象とする。
【0313】
態様185は、上記播種するステップが、上記細胞を上記基材に付着させるステップを含む、態様181~184のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0314】
態様186は、上記播種するステップが、細胞接種材料を上記細胞培養マトリクスに直接注入するステップを含む、態様181~185のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0315】
態様187は、上記細胞接種材料が、上記バイオリアクター容器の細胞接種材料注入ポートを通して注入される、態様186に記載の方法を対象とする。
【0316】
態様188は、上記細胞接種材料の体積が、上記細胞培養チャンバの空隙容積と概ね等しい、態様186又は態様187に記載の方法を対象とする。
【0317】
態様189は、上記細胞接種材料を注入する上記ステップの後、上記培養チャンバを通して細胞培地を灌流させるステップを更に含む、態様186~188のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0318】
態様190は、培養中に、細胞培養培地及び酸素のうちの少なくとも一方を上記細胞に供給するステップを更に含む、態様181~189のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0319】
態様191は、上記細胞培養培地を供給する上記ステップが、上記細胞培養培地を、上記細胞培養チャンバを通るように、及び上記基材を横断するように、流すステップを含む、態様190に記載の方法を対象とする。
【0320】
態様161は、上記細胞培養培地を供給する上記ステップが:上記バイオリアクター容器に流体接続された培地調質用容器を提供するステップ;及び上記細胞培養培地を上記培地調質用容器から上記バイオリアクター容器に供給するステップを含む、態様190又は191に記載の方法を対象とする。
【0321】
態様193は、培養中又は培養後に、上記培地の少なくとも一部分が、上記バイオリアクター容器から除去されて、上記培地調質用容器に戻される、態様192に記載の方法を対象とする。
【0322】
態様194は、上記細胞培養チャンバへの上記細胞培養培地の上記流れを制御するステップを更に含み、上記細胞培養培地が、細胞、細胞培養用栄養素、及び酸素のうちの少なくとも1つを含む、態様181~193のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0323】
態様195は、上記バイオリアクター容器内の、又は上記バイオリアクター容器から出た、上記細胞培養培地、上記細胞、及び/又は上記細胞産物を分析するステップを更に含む、態様181~194のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0324】
態様196は、上記分析するステップが、pH、pO、[グルコース]、pH、pO、[グルコース]、及び流量のうちの少なくとも1つを測定するステップを含み、pH、pO、及び[グルコース]は上記細胞培養チャンバ内で測定され、pH、pO、及び[グルコース]は、上記細胞培養チャンバ又は上記バイオリアクター容器の出口で測定される、態様195に記載の方法を対象とする。
【0325】
態様197は、上記細胞培養チャンバへの上記細胞培養培地の上記流れが、上記細胞培養培地、上記細胞、及び/又は上記細胞産物を分析する上記ステップの結果に少なくとも部分的に基づいて制御される、態様195又は態様196に記載の方法を対象とする。
【0326】
態様198は、pH≧pH2min、pO≧pO2min、及び[グルコース]≧[グルコース]2minのうちの少なくとも1つである場合に、上記細胞培養チャンバへの上記細胞培養培地の灌流流量が現在の流量で継続され、pH2min、pO2min、及び[グルコース]2minは上記細胞培養システムの設計に基づいて事前に決定される、態様196又は態様197に記載の方法を対象とする。
【0327】
態様199は、上記現在の流量が、上記細胞培養システムの所定の最大流量以下である場合、上記灌流流量を増大させる、態様196~198のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0328】
態様200は、上記現在の流量が上記細胞培養システムの上記所定の最大流量より大きい場合、上記細胞培養システムのコントローラが:pH2min、pO2min、及び[グルコース]2min;pH、pO、及び[グルコース];並びに上記バイオリアクター容器のうちの少なくとも1つを再評価する、態様196~199のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0329】
態様201は、上記細胞が、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、又は少なくとも約72時間にわたる培養後に、約90%超又は約95%超の生存率を有する、態様181~200のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0330】
態様202は、上記細胞が、上記細胞培養マトリクスに付着する付着細胞、浮遊細胞、及び弱付着細胞のうちの少なくとも1つを含む、態様181~201のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0331】
態様203は、上記細胞を培養する上記ステップの上記産物が、細胞、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、微小胞、エクソソーム、及び多糖類のうちの少なくとも1つを含む、態様181~202のいずれか1つに記載の方法を対象とする。
【0332】
態様204は、上記細胞を培養する上記ステップの上記産物が、少なくとも80%生存可能、少なくとも85%生存可能、少なくとも90%生存可能、少なくとも91%生存可能、少なくとも92%生存可能、少なくとも93%生存可能、少なくとも94%生存可能、少なくとも95%生存可能、少なくとも96%生存可能、少なくとも97%生存可能、少なくとも98%生存可能、又は少なくとも99%生存可能な細胞を含む、態様203に記載の方法を対象とする。
【0333】
態様205は、細胞培養マトリクスを対象とし、上記細胞培養マトリクスは、織り合わされた複数の繊維と、上記複数の繊維の間に配置された複数の開口とを含む、織布基材を含み、上記繊維はそれぞれ、細胞を付着させるよう構成された表面を備える。
【0334】
態様206は、上記繊維の上記表面が、細胞を着脱可能に付着させるよう構成される、態様205に記載のマトリクスを対象とする。
【0335】
態様207は、上記複数の繊維がポリマー繊維を含む、態様205又は態様206に記載のマトリクスを対象とする。
【0336】
態様208は、上記ポリマー繊維が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様207に記載のマトリクスを対象とする。
【0337】
態様209は、上記細胞培養マトリクスが更に複数の織布基材を含む、態様205~208のいずれか1つに記載のマトリクスを対象とする。
【0338】
態様210は、上記複数の基材それぞれが:第1の側部;上記第1の側部の反対側の第2の側部;上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さを備え、上記複数の開口が上記基材の上記厚さを通過する、態様209に記載のマトリクスを対象とする。
【0339】
態様211は、上記複数の基材が互いに隣接して配設されることにより、ある上記基材の上記第1の側部及び上記第2の側部のうちの一方が、隣接する基材の上記第1の側部及び上記第2の側部のうちの他方と隣接する、態様209又は態様210に記載のマトリクスを対象とする。
【0340】
態様212は、上記複数の基材の少なくとも一部分が、スペーサ材料又はバリアによって隔てられていない、態様209~211のいずれか1つに記載のマトリクスを対象とする。
【0341】
態様213は、上記複数の基材の少なくとも一部分が、互いに物理的に接触している、態様205~212のいずれか1つに記載のマトリクスを対象とする。
【0342】
定義
「完全合成(wholly synthetic、又はfully synthetic)」は、全体が合成原材料で構成され、いずれの動物由来材料若しくは動物をソースとする材料を含まない、マイクロキャリア又は培養容器の表面といった細胞培養物品を指す。本開示の完全合成細胞培養物品は、異種間の汚染のリスクを排除する。
【0343】
「…を含む(include、includes)」等の用語は、対象を含むがそれに限定されないこと、即ち包括的であって排他的ではないことを意味する。
【0344】
「ユーザ(user)」は、本明細書で開示されるシステム、方法、物品、又はキットを使用する人を指し、細胞若しくは細胞産物の採取のために細胞を培養する人、又は本明細書中の実施形態に従って培養及び/若しくは採取される細胞若しくは細胞産物を使用する人を含む。
【0345】
本開示の実施形態の説明において使用される、例えば組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、粘度等の値、及びその範囲、又は構成部品の寸法等の値、及びその範囲を修飾する、「約(about)」は、例えば:材料、組成物、複合体、濃縮物、構成部品、製造物品、又は使用配合物(use formulation)の調製に使用される典型的な測定及び取り扱い手順によって;これらの手順における偶発的なエラーによって;方法の実施に使用される開始材料又は成分の製造、ソース、又は純度の違いによって;並びに他の考慮事項によって生じ得る、数量の変動を指す。用語「約」はまた、組成物又は配合物の経年劣化を原因とする、特定の初期濃度又は混合とは異なる量、及び組成物又は配合物の混合又は加工を原因とする、特定の初期濃度又は混合とは異なる量も包含する。
【0346】
「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」は:その後に説明されるイベント又は状況が発生してもしなくてもよいこと;並びにこの記述が、該イベント又は状況が発生した場合、及び発生しなかった場合を含むことを意味する。
【0347】
不定冠詞「a」又は「an」、及びこれに対応する定冠詞「the」は、本明細書中で使用される場合、特段の記載がない限り、少なくとも1つ、又は1つ以上を意味する。
【0348】
当業者に公知の略語を使用する場合がある(例えば時間に関する「h」又は「hrs」、グラムに関する「g」又は「gm」、ミリリットルに関する「mL」、室温に関する「rt」、ナノメートルに関する「nm」、及び同様の略語)。
【0349】
構成要素、成分、添加物、寸法、状態等といった側面に関して開示される具体的な好ましい値、及びその範囲は、単なる例示であり、他の定義された値、又は定義された範囲内の他の値を排除するものではない。本開示のシステム、キット、及び方法は、本明細書中に記載のいずれの値、又はこれらの値、具体的な値、更に具体的な値、及び好ましい値の組み合わせ(明示された又は含意されている中間値及び中間範囲を含む)を含むことができる。
【0350】
特段の記載がない限り、本明細書に記載のいずれの方法は、その複数のステップをある特定の順序で実施することを要求するものとして解釈されることを、全く意図していない。従って、ある方法クレームが、その複数のステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、又はこれらのステップがある特定の順序に限定されることが、特許請求の範囲若しくは説明において具体的に述べられていない場合、いずれの特定の順序を暗示することは全く意図されていない。
【0351】
本開示の実施形態の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を実施できることは、当業者には明らかであろう。本開示の実施形態の精神及び実体を組み込んだ、これらの実施形態の修正、組み合わせ、部分的組み合わせ、及び変更は、当業者に想起され得るものであるため、本開示の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある全てを含むものと解釈されるものとする。
【0352】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0353】
実施形態1
細胞培養マトリクスであって、
上記細胞培養マトリクスは:
基材であって、上記基材は、第1の側部と、上記第1の側部の反対側の第2の側部と、上記第1の側部と上記第2の側部とを隔てる厚さと、上記基材に形成されて、上記基材の上記厚さを通過する、複数の開口とを備える、基材
を含み、
上記複数の開口は、細胞培養培地、細胞、及び細胞産物のうちの少なくとも1つの、上記基材の上記厚さを通る流れを可能とするように構成される、細胞培養マトリクス。
【0354】
実施形態2
上記基材は、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、及びポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0355】
実施形態3
上記基材は、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シート、及び織布メッシュシートのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0356】
実施形態4
上記基材は、1つ以上の繊維を含む上記織布メッシュを含む、実施形態3に記載の細胞培養マトリクス。
【0357】
実施形態5
上記1つ以上の繊維は、平坦、円形、長方形、及び多角形のうちの少なくとも1つの断面形状を有する、実施形態4に記載の細胞培養マトリクス。
【0358】
実施形態6
上記1つ以上の繊維は、モノフィラメント繊維及びマルチフィラメント繊維のうちの少なくとも1つを含む、実施形態4に記載の細胞培養マトリクス。
【0359】
実施形態7
上記1つ以上の繊維は、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第1の繊維直径を有する第1の繊維を含む、実施形態4に記載の細胞培養マトリクス。
【0360】
実施形態8
上記1つ以上の繊維は更に、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μm、又は約150μm~約275μmの第2の繊維直径を有する第2の繊維を含む、実施形態7に記載の細胞培養マトリクス。
【0361】
実施形態9
上記第2の繊維直径は上記第1の繊維直径と異なる、実施形態8に記載の細胞培養マトリクス。
【0362】
実施形態10
上記複数の開口は、約100μm~約1000μm、約200μm~約900μm、又は約225μm~約800μmの開口直径を有する、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0363】
実施形態11
上記繊維直径は約250μm~約300μmであり、上記開口直径は約750μm~約800μmであるか;又は
上記繊維直径は約270μm~約276μmであり、上記開口直径は約785μm~約795μmである、実施形態10に記載の細胞培養マトリクス。
【0364】
実施形態12
上記繊維直径は約200μm~約230μmであり、上記開口直径は約500μm~約550μmであるか;又は
上記繊維直径は約215μm~約225μmであり、上記開口直径は約515μm~約530μmである、実施形態10に記載の細胞培養マトリクス。
【0365】
実施形態13
上記繊維直径は約125μm~約175μmであり、上記開口直径は約225μm~約275μmであるか;又は
上記繊維直径は約150μm~約165μmであり、上記開口直径は約235μm~約255μmである、実施形態10に記載の細胞培養マトリクス。
【0366】
実施形態14
上記繊維直径に対する上記開口直径の比は、約1.0~約3.5、約1.25~約3.25、約1.4~約3.0、約1.5~約2.9、約1.5~約2.4、又は約2.4~約2.9である、実施形態10に記載の細胞培養マトリクス。
【0367】
実施形態15
上記複数の開口は、正方形、長方形、菱形、偏菱形、円形、又は楕円形の形状を有する開口を含む、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0368】
実施形態16
上記複数の開口は規則的なパターンに配列されている、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0369】
実施形態17
上記細胞培養マトリクスは単層基材を含む、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0370】
実施形態18
上記細胞培養マトリクスは、少なくとも1つの第1の基材層及び少なくとも1つの第2の基材層を備える多層基材を含み、
上記第1の基材層は、第1の側部と、上記第1の側部の反対側の第2の側部とを備え、上記第2の基材層は、第3の側部と、上記第3の側部の反対側の第4の側部とを備え、上記第2の側部は上記第3の側部と対面する、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0371】
実施形態19
上記多層基材は、上記第1の基材層が上記第2の基材層に対して所定の位置合わせを有するように構成される、実施形態18に記載の細胞培養マトリクス。
【0372】
実施形態20
上記多層基材は、上記第1の基材層の繊維の交点が上記第2の基材層の開口と対面するように構成される、実施形態19に記載の細胞培養マトリクス。
【0373】
実施形態21
上記第1の基材層の開口は、上記第2の基材層の上記開口と少なくとも部分的に重なる、実施形態19又は20に記載の細胞培養マトリクス。
【0374】
実施形態22
上記第1の基材層及び上記第2の基材層の上記開口は位置合わせされる、実施形態21に記載の細胞培養マトリクス。
【0375】
実施形態23
上記多層基材は、上記第1の基材層が上記第2の基材層に対するランダムな位置合わせを有するように構成される、実施形態18に記載の細胞培養マトリクス。
【0376】
実施形態24
上記細胞培養マトリクスは複数の上記基材を含み、上記複数の基材はそれぞれ、上記複数の基材のうちの他の上記基材に対してランダムに配向される、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0377】
実施形態25
上記細胞培養マトリクスは、積層構成の複数の上記基材を含む、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0378】
実施形態26
上記複数の基材のうちの1つの、上記第1の側部及び上記第2の側部は、上記積層構成内の他の上記基材の上記第1の側部及び上記第2の側部に対して、略平行である、実施形態25に記載の細胞培養マトリクス。
【0379】
実施形態27
上記基材は円筒状ロール構成である、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0380】
実施形態28
上記細胞培養マトリクスは、異なるジオメトリの織布メッシュを含む複数の前記基材を含み、上記異なるジオメトリは、繊維直径、開口直径、又は開口ジオメトリのうちの少なくとも1つにおいて異なっている、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0381】
実施形態29
異なるジオメトリの上記織布メッシュは、上記バイオリアクター容器内での所望の流れ特性に基づいて、所定の配置で並べられる、実施形態28に記載の細胞培養マトリクス。
【0382】
実施形態30
上記所望の流れ特性は、上記細胞培養マトリクスにわたる液体培地の均一な灌流、及び上記細胞培養マトリクスにわたる細胞成長の分布のうちの少なくとも1つを含む、実施形態29に記載の細胞培養マトリクス。
【0383】
実施形態31
異なるジオメトリの上記織布メッシュは、第1のジオメトリを有する第1のメッシュ、及び第2のジオメトリを有する第2のメッシュを含み、
上記所定の配置は、上記第1のメッシュを、上記細胞培養マトリクスを通る細胞培養培地の所望のバルク流方向に関して上記第2のメッシュの上流とすることを含む、実施形態29に記載の細胞培養マトリクス。
【0384】
実施形態32
上記所定の配置は、上記第1のメッシュの積層体を上記第2のメッシュの積層体の上流に配置することを含む、実施形態31に記載の細胞培養マトリクス。
【0385】
実施形態33
上記所定の配置は、上記第1のメッシュの複数の積層体と、上記第2のメッシュの複数の積層体との、上記バルク流方向に沿った交互配置を含む、実施形態31に記載の細胞培養マトリクス。
【0386】
実施形態34
上記細胞培養マトリクスは、細胞、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、微小胞、エクソソーム、及び多糖類のうちの少なくとも1つの、培養及び/又は採取のために構成される、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0387】
実施形態35
上記基材は官能化表面を備え、上記官能化表面は、上記ポリマーメッシュ材料に対する上記付着細胞の付着を改善するために、物理的又は化学的に修飾される、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0388】
実施形態36
上記細胞培養マトリクスは、上記メッシュの上記表面への上記培養培地中の成分の吸着又は吸収のために構成された、表面を備える、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0389】
実施形態37
上記細胞培養マトリクスは、上記ポリマーメッシュ材料の表面上にコーティングを備え、上記コーティングは、上記付着細胞の付着を促進するよう構成される、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【0390】
実施形態38
上記細胞は上記コーティングに付着する、実施形態37に記載の細胞培養マトリクス。
【0391】
実施形態39
上記コーティングは、上記細胞培養マトリクスへの細胞の付着を促進するよう構成された、生物分子又は合成生体活性分子である、実施形態37に記載の細胞培養マトリクス。
【0392】
実施形態40
上記コーティングは、ヒドロゲル、コラーゲン、Matrigel、生体活性分子又はペプチド、及び生物タンパク質のうちの少なくとも1つである、実施形態37に記載の細胞培養マトリクス。
【0393】
実施形態41
上記官能化表面はプラズマ処理される、実施形態37に記載の細胞培養マトリクス。
【0394】
実施形態42
上記細胞は、上記織布メッシュに付着する、付着細胞、浮遊細胞、及び弱付着細胞のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の細胞培養マトリクス。
【符号の説明】
【0395】
100 細胞培養基材
102 第1の複数の繊維
104 第2の複数の繊維
106 開口
108 第1の側部
110 第2の側部
200 多層基材、マトリクス
202 第1のメッシュ基材層
204 第2のメッシュ基材層
206 開口
300、320、360、400、420 細胞培養システム
302、322、362、402 バイオリアクター容器
304、324 細胞培養チャンバ
306、364 細胞培養マトリクス
308、328 基材層、基材
310、330、408 入口
312、332、410 出口
350 円筒状ロール
352 メッシュ基材
366 支持体、中心支持部材
404、424 培地調質用容器
406 細胞培養培地
412 センサ
414 流れ制御ユニット、信号処理ユニット
416 ポンプ、蠕動ポンプ
418 培地調質制御ユニット
422 充填層バイオリアクター、バイオリアクター
426 コントローラ
428 灌流回路
500 ローラーボトル
501 ボトルの口
502 細胞培養メッシュ
503 円筒状ロール
600、602 サンプルセル
620 容器
622 充填層領域
624 入口
626 出口
1801、1801’ 第1のディスク
1802、1802’ 第2のディスク
1803、1803’ 第3のディスク
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図23F
図24
図25
図26
図27A
図27B
図28
図29A
図29B
図30A
図30B
図31
図32
【国際調査報告】