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特表2022-519680修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/12 20060101AFI20220316BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20220316BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
C12N9/12 ZNA
C12P19/34 Z
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545969
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 GB2020050247
(87)【国際公開番号】W WO2020161480
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】1901501.5
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521345741
【氏名又は名称】ニュークレラ・ニュークリークス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】チェン,マイケル・チュン・ハオ
(72)【発明者】
【氏名】マッキンロイ,ゴードン・ロス
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シホン
(72)【発明者】
【氏名】クック,イアン・ハストン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD11
4B050LL05
4B064AF27
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA16
(57)【要約】
本発明は、操作された末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素、または任意の種のPolμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同アミノ酸配列、または任意の種のXファミリーポリメラーゼの相同アミノ酸配列、および核酸合成の方法におけるその使用に関し、核酸を合成する方法に関し、そして核酸合成法における前記酵素を含むキットの使用に関する。本発明はまた、テンプレート非依存性核酸合成法における、新規末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼおよび3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型配列、配列番号1またはその一部切除型、あるいは他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列、あるいは任意の種のPolμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同アミノ酸配列、あるいは任意の種のXファミリーポリメラーゼの相同アミノ酸配列に比較した際、アミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、アミノ酸が、アミノ酸:
【化1】
の1つまたはそれより多くで修飾されている、前記酵素。
【請求項2】
野生型配列またはその一部切除型に比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、請求項1記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV、VAIF、MGA、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDP、または他の種における相同領域、または任意の種のPolμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同領域、または任意の種のXファミリーポリメラーゼの相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素。
【請求項3】
野生型配列、配列番号1または他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、請求項1記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDI、VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素。
【請求項4】
少なくとも配列:
【化2】
または他の種における相同領域、または任意の種のPolμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同領域、または任意の種のXファミリーポリメラーゼの相同領域を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、該配列が、配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPの1つまたはそれより多くで1つまたはそれより多くのアミノ酸修飾を有する、前記酵素。
【請求項5】
野生型配列、配列番号1、または他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、少なくとも2つのアミノ酸修飾を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって;
a. 第一の修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIVまたは他の種における相同領域内であり;そして
b. 第二の修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される
前記酵素。
【請求項6】
アミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV中の修飾が、野生型配列に比較して、酵素溶解度を改善し、そしてVAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPにおける修飾(単数または複数)が3’位に修飾を有するヌクレオチドの取り込みを改善する、請求項5記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、野生型配列が
gi|768 ウシ(Bos taurus)
gi|460163 セキショクヤケイ(Gallus gallus)
gi|494987 アフリカツメガエル(Xenopus laevis)
gi|1354475 ニジマス(Oncorhynchus mykiss)
gi|2149634 ハイイロジネズミオポッサム(Monodelphis domestica)
gi|12802441 マウス(Mus musculus)
gi|28852989 メキシコサンショウウオ(Ambystoma mexicanum)
gi|38603668 トラフグ(Takifugu rubripes)
gi|40037389 ラジャ・エグランテリア(Raja eglanteria)
gi|40218593 コモリザメ(Ginglymostoma cirratum)
gi|46369889 ゼブラフィッシュ(Danio rerio)
gi|73998101 イヌ(Canis lupus familiaris)
gi|139001476 ワオキツネザル(Lemur catta)
gi|139001490 ハイイロネズミキツネザル(Microcebus murinus)
gi|139001511 ガーネットガラゴ(Otolemur garnettii)
gi|148708614 マウス
gi|149040157 ラット(Rattus norvegicus)
gi|149704611 ウマ(Equus caballus)
gi|164451472 ウシ
gi|169642654 ネッタイツメガエル(Xenopus(Silurana) tropicalis)
gi|291394899 アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)
gi|291404551 アナウサギ
gi|301763246 ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)
gi|311271684 イノシシ(Sus scrofa)
gi|327280070 グリーンアノール(Anolis carolinensis)
gi|334313404 ハイイロジネズミオポッサム
gi|344274915 アフリカゾウ(Loxodonta africana)
gi|345330196 カモノハシ(Ornithorhynchus anatinus)
gi|348588114 モルモット(Cavia porcellus)
gi|351697151 ハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)
gi|355562663 アカゲザル(Macaca mulatta)
gi|395501816 タスマニアデビル(Sarcophilus harrisii)
gi|395508711 タスマニアデビル
gi|395850042 ガーネットガラゴ
gi|397467153 ボノボ(Pan paniscus)
gi|403278452 ボリビアリスザル(Saimiri boliviensis boliviensis)
gi|410903980 トラフグ
gi|410975770 イエネコ(Felis catus)
gi|432092624 ミオティス・ダヴィディー(Myotis davidii)
gi|432113117 ミオティス・ダヴィディー
gi|444708211 ツパイア・チネンシス(Tupaia chinensis)
gi|460417122 イベリアトゲイモリ(Pleurodeles waltl)
gi|466001476 オルカ(Orcinus orca)
gi|471358897 フロリダマナティ(Trichechus manatus latirostris)
gi|478507321 ミナミシロサイ(Ceratotherium simum simum)
gi|478528402 ミナミシロサイ
gi|488530524 ココノオビアルマジロ(Dasypus novemcinctus)
gi|499037612 メイランディア・ゼブラ(Maylandia zebra)
gi|504135178 アメリカナキウサギ(Ochotona princeps)
gi|505844004 ヨーロッパトガリネズミ(Sorex araneus)
gi|505845913 ヨーロッパトガリネズミ
gi|507537868 ヒメミユビトビネズミ(Jaculus jaculus)
gi|507572662 ヒメミユビトビネズミ
gi|507622751 デグー(Octodon degus)
gi|507640406 ヒメハリテンレック(Echinops telfairi)
gi|507669049 ヒメハリテンレック
gi|507930719 ホシバナモグラ(Condylura cristata)
gi|507940587 ホシバナモグラ
gi|511850623 フェレット(Mustela putorius furo)
gi|512856623 ネッタイツメガエル
gi|512952456 ハダカデバネズミ
gi|524918754 ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)
gi|527251632 セキセイインコ(Melopsittacus undulatus)
gi|528493137 ゼブラフィッシュ
gi|528493139 ゼブラフィッシュ
gi|529438486 ハヤブサ(Falco peregrinus)
gi|530565557 西部ニシキガメ(Chrysemys picta bellii)
gi|532017142 プレーリーハタネズミ(Microtus ochrogaster)
gi|532099471 ジュウサンセンジリス(Ictidomys tridecemlineatus)
gi|533166077 チンチラ(Chinchilla lanigera)
gi|533189443 チンチラ
gi|537205041 チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)
gi|537263119 チャイニーズハムスター
gi|543247043 ガラパゴスフィンチ(Geospiza fortis)
gi|543351492 ヒメサバクガラス(Pseudopodoces humilis)
gi|543731985 カワラバト(Columba livia)
gi|544420267 カニクイザル(Macaca fascicularis)
gi|545193630 ウマ
gi|548384565 プンダミリア・ニエレレイ(Pundamilia nyererei)
gi|551487466 サザンプラティフィッシュ(Xiphophorus maculatus)
gi|551523268 サザンプラティフィッシュ
gi|554582962 ウスリホオヒゲコウモリ(Myotis brandtii)
gi|554588252 ウスリホオヒゲコウモリ
gi|556778822 チベットカモシカ(Pantholops hodgsonii)
gi|556990133 ラティメリア・カルムナエ(Latimeria chalumnae)
gi|557297894 ヨウスコウアリゲーター(Alligator sinensis)
gi|558116760 シナスッポン(Pelodiscus sinensis)
gi|558207237 トビイロホオヒゲコウモリ(Myotis lucifugus)
gi|560895997 フタコブラクダ(Camelus ferus)
gi|560897502 フタコブラクダ
gi|562857949 ツパイア・チネンシス
gi|562876575 ツパイア・チネンシス
gi|564229057 アメリカアリゲーター(Alligator mississippiensis)
gi|564236372 アメリカアリゲーター
gi|564384286 ラット
より選択される、前記酵素。
【請求項8】
アミノ酸領域LLNRLINRLQNQLLYYDV内の修飾が下線のアミノ酸の1つまたはそれより多くでのものである、請求項1~7のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項9】
アミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV内の修飾が、QLLPKVINLWEKKGLLLYYDLVへのものである、請求項8記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項10】
修飾が、アミノ酸領域VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPの1つまたはそれより多くより選択される、請求項1~9のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項11】
修飾が、アミノ酸
【化3】
の1つまたはそれより多くより選択される、請求項1~9のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項12】
修飾が、アミノ酸
【化4】
の1つまたはそれより多くより選択される、請求項1~9のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項13】
修飾が、アミノ酸領域FRA、ADNA、EAA、APARHEKMLDHA、およびYIPの下線で示すアミノ酸の1つまたはそれより多くより選択される、請求項10記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項14】
修飾が、以下の配列FRRA、QADKA、EADA、MPPVDN、FARHERKMLLDRHA、およびYIPPの1つまたはそれより多くより選択される、請求項13記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項15】
修飾が、以下の配列FRRA、QADKA、EADA、MPPVDN、FARHERKMLLDRHA、およびYIPPの2つまたはそれより多くより選択される、請求項13記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項16】
修飾が、以下の配列FRRA、QADKA、EADA、MPPVDN、FARHERKMLLDRHA、およびYIPPの各々を含有する、請求項15記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項17】
配列番号4~配列番号173またはその一部切除型より選択される配列を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項18】
配列番号174~配列番号343より選択される配列を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項19】
配列番号344~727より選択される配列を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素。
【請求項20】
核酸合成法であって:
(a)イニシエーターオリゴヌクレオチドを提供し;
(b)請求項1~19のいずれか一項に定義されるような末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)の存在下で、イニシエーターオリゴヌクレオチドに3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸を付加し;
(c)イニシエーターオリゴヌクレオチドからすべての試薬を除去し;
(d)切断剤の存在下でブロッキング基を切断し;そして
(e)切断剤を除去する
工程を含む、前記方法。
【請求項21】
工程(b)~(e)を反復することによって、1つより多いヌクレオチドを付加する、請求項20において定義されるような方法。
【請求項22】
3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸が、3’-O-アジドメチル、3’-アミノオキシ、3’-O-(N-オキシム)、3’-O-アリル3’-O-シアノエチル、3’-O-アセチル、3’-O-ナイトレート、3’-ホスフェート、3’-O-アセチルレブリン酸エステル、3’-O-tertブチルジメチルシラン、3’-O-トリメチル(シリル)エトキシメチル、3’-O-オルト-ニトロベンジル、または3’-O-パラ-ニトロベンジルより選択される基でブロッキングされている、請求項20または請求項21に定義されるような方法。
【請求項23】
3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸が3’-O-アジドメチル、3’-アミノオキシまたは3’-O-アリル基のいずれかによってブロッキングされている、請求項22に定義されるような方法。
【請求項24】
イニシエーターオリゴヌクレオチドおよび1つまたはそれより多くの3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸と組み合わせて、請求項1~19のいずれか一項に定義されるような末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸合成の方法における、特異的末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素、または任意の種のPolμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同アミノ酸配列、または任意の種のXファミリーポリメラーゼの相同アミノ酸配列の使用に関し、核酸を合成する方法に関し、そして核酸合成法における前記酵素を含むキットの使用に関する。本発明はまた、テンプレート非依存性核酸合成法における、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼまたは相同酵素、および3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
核酸合成は、現代バイオテクノロジーには極めて重要である。バイオテクノロジー分野での迅速なペースの発展は、科学コミュニティが人工的にDNA、RNAおよびタンパク質を合成可能になったことによって可能になってきている。
【0003】
人工的DNA合成によって、バイオテクノロジー企業および製薬会社は広範囲のペプチド療法剤、例えば糖尿病治療用のインスリンを開発することが可能になっている。これによって、研究者らは細胞タンパク質を特徴づけて、現代の高齢化しつつある集団が直面する疾患、例えば心臓病および癌の治療のための新規小分子療法を開発することが可能になっている。この技術は、ベンター研究所が2010年に人工的に合成したゲノムを細菌細胞に入れた際に立証したように、生命を作り出す道すら開いている。
【0004】
しかし、現代のDNA合成技術は、バイオテクノロジー産業の要求を満たしていない。成熟した技術であるにもかかわらず、長さ200ヌクレオチドより長いDNA鎖を合成することは事実上不可能であり、そして大部分のDNA合成企業は、120ヌクレオチドまでしか提供しない。これに比較して、平均的なタンパク質コード遺伝子は、2000~3000の連続ヌクレオチド程度であり、染色体は、長さ少なくとも100万の連続したヌクレオチドであり、そして平均的な真核ゲノムは合計数十億ヌクレオチドになる。長さ数千塩基対の核酸鎖を調製するため、今日の主要な遺伝子合成企業はすべて、多様な「合成およびスティッチ」技術に頼り、重複する40~60量体の断片を合成して、そして酵素でのコピーおよび伸長によってともに縫い合わせ(stitched)ている。現在の方法は、一般的に、ルーチンの製造で、長さ最大3kbを可能にする。
【0005】
DNAが一度に120~200ヌクレオチドを超えて合成不能である理由は、DNAを作製するために、一度に1つずつヌクレオチドをカップリングする合成化学反応(すなわちホスホラミダイト技術)を用いる、現在のDNA生成方法論のためである。各ヌクレオチドカップリング工程の効率が99%有効であっても、許容されうる収率で200ヌクレオチドより長いDNAを合成することは、数学的に不可能である。ベンター研究所は、この労力がかかるプロセスを、4年および2000万USドルを費やして、細菌の比較的小さいゲノムを合成することによって説明した。
【0006】
DNA配列決定の既知の方法は、テンプレート依存性DNAポリメラーゼを用いて、成長しつつある二本鎖基質に、3’-可逆的終結(reversibly terminated)ヌクレオチドを付加する。「合成による配列決定(sequencing-by-synthesis)」プロセスにおいて、付加されるヌクレオチドは各々、色素を含有し、使用者がテンプレート鎖の正確な配列を同定することを可能にする。二本鎖DNA上ではあるが、この技術は、長さ500~1000bpの間の鎖を産生可能である。しかし、この技術は、テンプレートとして作用する核酸鎖の存在を要するため、デノボ核酸合成には適していない。
【0007】
デノボ一本鎖DNA合成のため、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを用いる、多様な試みがなされてきている。制御されたものとは対照的に、制御されないデノボ一本鎖DNA合成は、例えば次世代配列決定ライブラリー調製のため、ホモポリマーアダプター配列を生成するために、一本鎖DNAに対するTdTのデオキシヌクレオシド5’-三リン酸(dNTP)3’-テール付加特性を利用する。制御された伸長において、成長しつつあるDNA鎖の3’端へのdNTPの制御されない付加を防止するために、可逆的デオキシヌクレオシド5’-三リン酸終結技術を使用する必要がある。TdTを通じた制御された一本鎖DNA合成プロセスの発展は、無水環境の必要性を取り除き、そして有機溶媒と不適合である多様なポリマーの使用を可能にするため、遺伝子組み立てまたはハイブリダイゼーションマイクロアレイのためのin situ DNA合成には非常に有益である。
【0008】
しかし、TdTは、デノボ合成サイクルに必要な新生一本鎖DNA鎖の構築のため、3’-O-可逆的終結部分を含有するヌクレオシド三リン酸を効率的に付加することが示されてきていない。3’-O-可逆的終結部分は、TdTのような末端トランスフェラーゼが、成長しつつあるDNA鎖の3’端および入ってくるヌクレオシド三リン酸の5’-三リン酸の間のヌクレオチドトランスフェラーゼ反応を触媒するのを妨げる。
【0009】
したがって、3’-O-可逆的終結ヌクレオチドを容易に取り込む修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを同定する必要がある。前記修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを用いて、現在利用可能な方法に関連する問題を克服可能である改善された核酸合成法を提供するため、バイオテクノロジーおよび一本鎖DNA合成プロセスに有用な方式で、3’-O-可逆的終結ヌクレオチドを取り込んでもよい。
【発明の概要】
【0010】
修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素、または任意の種のPolμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同アミノ酸配列、または任意の種のXファミリーポリメラーゼの相同アミノ酸配列を本明細書に記載する。末端トランスフェラーゼ酵素は、天然に遍在性であり、そして多くの種に存在する。多くの既知のTdT配列がNCBIデータベースhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/中に報告されてきている。
【0011】
GI番号 種 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
gi|768 ウシ(Bos taurus)
gi|460163 セキショクヤケイ(Gallus gallus)
gi|494987 アフリカツメガエル(Xenopus laevis)
gi|1354475 ニジマス(Oncorhynchus mykiss)
gi|2149634 ハイイロジネズミオポッサム(Monodelphis domestica)
gi|12802441 マウス(Mus musculus)
gi|28852989 メキシコサンショウウオ(Ambystoma mexicanum)
gi|38603668 トラフグ(Takifugu rubripes)
gi|40037389 ラジャ・エグランテリア(Raja eglanteria)
gi|40218593 コモリザメ(Ginglymostoma cirratum)
gi|46369889 ゼブラフィッシュ(Danio rerio)
gi|73998101 イヌ(Canis lupus familiaris)
gi|139001476 ワオキツネザル(Lemur catta)
gi|139001490 ハイイロネズミキツネザル(Microcebus murinus)
gi|139001511 ガーネットガラゴ(Otolemur garnettii)
gi|148708614 マウス
gi|149040157 ラット(Rattus norvegicus)
gi|149704611 ウマ(Equus caballus)
gi|164451472 ウシ
gi|169642654 ネッタイツメガエル(Xenopus(Silurana) tropicalis)
gi|291394899 アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)
gi|291404551 アナウサギ
gi|301763246 ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)
gi|311271684 イノシシ(Sus scrofa)
gi|327280070 グリーンアノール(Anolis carolinensis)
gi|334313404 ハイイロジネズミオポッサム
gi|344274915 アフリカゾウ(Loxodonta africana)
gi|345330196 カモノハシ(Ornithorhynchus anatinus)
gi|348588114 モルモット(Cavia porcellus)
gi|351697151 ハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)
gi|355562663 アカゲザル(Macaca mulatta)
gi|395501816 タスマニアデビル(Sarcophilus harrisii)
gi|395508711 タスマニアデビル
gi|395850042 ガーネットガラゴ
gi|397467153 ボノボ(Pan paniscus)
gi|403278452 ボリビアリスザル(Saimiri boliviensis boliviensis)
gi|410903980 トラフグ
gi|410975770 イエネコ(Felis catus)
gi|432092624 ミオティス・ダヴィディー(Myotis davidii)
gi|432113117 ミオティス・ダヴィディー
gi|444708211 ツパイア・チネンシス(Tupaia chinensis)
gi|460417122 イベリアトゲイモリ(Pleurodeles waltl)
gi|466001476 オルカ(Orcinus orca)
gi|471358897 フロリダマナティ(Trichechus manatus latirostris)
gi|478507321 ミナミシロサイ(Ceratotherium simum simum)
gi|478528402 ミナミシロサイ
gi|488530524 ココノオビアルマジロ(Dasypus novemcinctus)
gi|499037612 メイランディア・ゼブラ(Maylandia zebra)
gi|504135178 アメリカナキウサギ(Ochotona princeps)
gi|505844004 ヨーロッパトガリネズミ(Sorex araneus)
gi|505845913 ヨーロッパトガリネズミ
gi|507537868 ヒメミユビトビネズミ(Jaculus jaculus)
gi|507572662 ヒメミユビトビネズミ
gi|507622751 デグー(Octodon degus)
gi|507640406 ヒメハリテンレック(Echinops telfairi)
gi|507669049 ヒメハリテンレック
gi|507930719 ホシバナモグラ(Condylura cristata)
gi|507940587 ホシバナモグラ
gi|511850623 フェレット(Mustela putorius furo)
gi|512856623 ネッタイツメガエル
gi|512952456 ハダカデバネズミ
gi|524918754 ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)
gi|527251632 セキセイインコ(Melopsittacus undulatus)
gi|528493137 ゼブラフィッシュ
gi|528493139 ゼブラフィッシュ
gi|529438486 ハヤブサ(Falco peregrinus)
gi|530565557 西部ニシキガメ(Chrysemys picta bellii)
gi|532017142 プレーリーハタネズミ(Microtus ochrogaster)
gi|532099471 ジュウサンセンジリス(Ictidomys tridecemlineatus)
gi|533166077 チンチラ(Chinchilla lanigera)
gi|533189443 チンチラ
gi|537205041 チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)
gi|537263119 チャイニーズハムスター
gi|543247043 ガラパゴスフィンチ(Geospiza fortis)
gi|543351492 ヒメサバクガラス(Pseudopodoces humilis)
gi|543731985 カワラバト(Columba livia)
gi|544420267 カニクイザル(Macaca fascicularis)
gi|545193630 ウマ
gi|548384565 プンダミリア・ニエレレイ(Pundamilia nyererei)
gi|551487466 サザンプラティフィッシュ(Xiphophorus maculatus)
gi|551523268 サザンプラティフィッシュ
gi|554582962 ウスリホオヒゲコウモリ(Myotis brandtii)
gi|554588252 ウスリホオヒゲコウモリ
gi|556778822 チベットカモシカ(Pantholops hodgsonii)
gi|556990133 ラティメリア・カルムナエ(Latimeria chalumnae)
gi|557297894 ヨウスコウアリゲーター(Alligator sinensis)
gi|558116760 シナスッポン(Pelodiscus sinensis)
gi|558207237 トビイロホオヒゲコウモリ(Myotis lucifugus)
gi|560895997 フタコブラクダ(Camelus ferus)
gi|560897502 フタコブラクダ
gi|562857949 ツパイア・チネンシス
gi|562876575 ツパイア・チネンシス
gi|564229057 アメリカアリゲーター(Alligator mississippiensis)
gi|564236372 アメリカアリゲーター
gi|564384286 ラット
gi|573884994 スポッテッドガー(Lepisosteus oculatus)
多様な記載される末端トランスフェラーゼの配列は、異なる種間で、非常に保存された配列のいくつかの領域、および非常に多様であるいくつかの領域を示す。選択した種からの配列に関する配列整列を図2に示す。
【0012】
本発明者らは、スポッテッドガーTdT(spotted gar)(配列番号1として示す)由来の末端トランスフェラーゼを修飾した。しかし、図2に示すものまたはその一部切除(truncated)型を含め、多様なNCBIエントリーで上に列挙する配列を含めて、任意の他の種由来の類似の末端トランスフェラーゼ配列内に、対応する修飾を導入してもよい。
【0013】
スポッテッドガー(Lepisosteus oculatus)のアミノ酸配列を以下に示す(配列番号1)
【0014】
【化1】
【0015】
この配列の操作された変異体は、以前、公報WO2016/128731に配列番号8として同定された。この公表配列に対するさらに操作された改善を本明細書に記載する。本明細書に開示する修飾配列は、先行技術に開示される配列番号8とは異なる。WO2016/128731の配列番号2は、「誤注釈(mis-annotated)」野生型ガー配列である。
【0016】
公報WO2016/128731中の配列番号8を、操作された突然変異が同定された形で以下に示す:
【0017】
【化2】
【0018】
本発明者らは、改善された特性を有するアミノ酸配列中に多様なアミノ酸修飾を同定している。特定の領域は、酵素の溶解度および取り扱いを改善する。特定の他の領域は、修飾を含むヌクレオチドを取り込む能力を改善する;これらの修飾には、糖の3’位での修飾および塩基への修飾が含まれる。
【0019】
野生型配列、配列番号1またはその一部切除型、あるいは他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列、あるいは任意の種のPolμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同アミノ酸配列、あるいは任意の種のXファミリーポリメラーゼの相同アミノ酸配列に比較した際、アミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、アミノ酸が、アミノ酸:
【0020】
【化3】
【0021】
の1つまたはそれより多くで修飾されている、前記酵素を本明細書に記載する。
溶解度を改善する修飾には、以下の配列で強調して示されるアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV内の修飾が含まれる。
【0022】
【化4】
【0023】
修飾ヌクレオチドの取り込みを改善する修飾は、以下に示す選択される領域の1つまたはそれより多くでのものであってもよい。突然変異データ(図1および3)、配列整列(図2)、ならびにDNAおよび3’-修飾dNTPと共結晶したスポッテッドガーTdTから得られた構造データ(図4~14)にしたがって領域を選択した。以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域VAIF、MGA、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、YYDIV、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPの1つまたはそれより多くから、第二の修飾を選択してもよい。
【0024】
【化5】
【0025】
修飾ヌクレオチドの取り込みを改善する特定の修飾は、以下に示す選択される領域の1つまたはそれより多くでのものであってもよい。以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPの1つまたはそれより多くから、第二の修飾を選択してもよい。
【0026】
【化6】
【0027】
野生型配列、配列番号1または他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV、VAIF、MGA、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素を本明細書に記載する。
【0028】
特定の配列への言及には、その一部切除が含まれる。野生型配列、配列番号1またはその一部切除型、あるいは他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV、VAIF、MGA、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素が本明細書に含まれる。
【0029】
一部切除タンパク質には、少なくとも以下に示す領域が含まれてもよい。
【0030】
【化7】
【0031】
少なくとも配列:
【0032】
【化8】
【0033】
または他の種における相同領域を含む修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、該配列が、配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDI、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPの1つまたはそれより多くにおける1つまたはそれより多くのアミノ酸修飾を有する、前記酵素を本明細書に記載する。
【0034】
【化9】
【0035】
野生型配列に比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDI、VAIF、MGA、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素を本明細書に開示する。
【0036】
野生型配列に比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDI、VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素を本明細書に開示する。
【0037】
野生型配列、配列番号1または他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDI、VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素が本明細書に含まれる。
【0038】
相同は、同じ生物種におけるスーパーファミリー由来のタンパク質、ならびに異なる種由来の相同タンパク質を含む、共通の進化起源を所持する2つまたはそれより多くのタンパク質の間のタンパク質配列を指す。こうしたタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、同一性パーセントに関するか、または特定の残基またはモチーフおよび保存された位の存在によってのいずれかでの、配列類似性によって反映されるように、配列相同性を有する。多様なタンパク質(およびそれらをコードする核酸)配列整列ツールを用いて、配列相同性を決定してもよい。例えば、欧州分子生物学研究所(EMBL)によって提供されるClustal Omega多数配列整列プログラムを用いて、配列相同性または相同領域を決定してもよい。
【0039】
本明細書に記載するような改善された配列は、以下の両方の修飾を含有してもよく、すなわち
a. 第一の修飾は、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIVまたは他の種における相同領域内であり;そして
b. 第二の修飾は、配列番号1の配列のアミノ酸領域VAIF、MGA、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される。
【0040】
配列は一部切除されていてもよい。
本明細書に記載するような改善された配列は、以下の両方の修飾を含有してもよく、すなわち
a. 第一の修飾は、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIまたは他の種における相同領域内であり;そして
b. 第二の修飾は、配列番号1の配列のアミノ酸領域VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される。
【0041】
他の種との比較として、ウシ(Bos taurus)TdTの配列を以下に示す:
【0042】
【化10】
【0043】
配列中の相同領域を以下に強調する。
溶解度を改善する修飾には、以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域QLLPKVINLWEKKGLLLYYDLV内の修飾が含まれる。
【0044】
【化11】
【0045】
修飾ヌクレオチドの取り込みを改善する修飾は、以下に示す選択される領域の1つまたはそれより多くでのものであってもよい。第二の修飾は、以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域LVLF、MGA、LNNYNHI、NEVSYVTFMRA、FTIISM、DKVKC、MGFRS、MSDKT、KFTKMQK、VSCVTR、EAEA、AVWAFL、GKKI、SPGSAE、YYDLV、DHFQK、MCPYENR、YATHERKMMLDNHALYDKTKR、およびDYIEPの1つまたはそれより多くより選択されてもよい。
【0046】
【化12】
【0047】
修飾ヌクレオチドの取り込みを改善する修飾は、以下に示す選択される領域の1つまたはそれより多くでのものであってもよい。以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域LVLF、MGA、NNYNH、FMRA、FTI、VKC、FRS、MSDKT、MQK、EAEA、AVW、KKI、SPGSAE、DHFQ、MCPYEN、YATHERKMMLDNHA、およびYIEPの1つまたはそれより多くから、第二の修飾を選択してもよい。
【0048】
【化13】
【0049】
他の種との比較として、マウス(Mus musculus)TdTの配列を以下に示す:
【0050】
【化14】
【0051】
溶解度を改善する修飾には、以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域QLLHKVTDFWKQQGLLLYCDIL内の修飾が含まれる。
【0052】
【化15】
【0053】
修飾ヌクレオチドの取り込みを改善する修飾は、以下に示す選択される領域の1つまたはそれより多くでのものであってもよい。以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域LVLF、MGA、LNNYNQL、NEGSCLAFMRA、FPITSM、DKVKS、MGFRT、QSDKS、RFTQMQK、VSCVNR、EAEA、AVVTFL、GKMT、SPEATE、DHFQK、SGQ、MCPYDRR、YATHERKMMLDNHALYDRT、R、およびDYIEPの1つまたはそれより多くから、第二の修飾を選択してもよい。
【0054】
【化16】
【0055】
修飾ヌクレオチドの取り込みを改善する修飾は、以下に示す選択される領域の1つまたはそれより多くでのものであってもよい。以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域LVLF、MGA、LNNYNQ、NEGSCLAFMRA、FPI、VKS、FRT、SKIQSDKS、MQK、VSCVNR、EAEA、AVV、KMT、SPEATE、DHFQK、MCPYDR、YATHERKMMLDNHA、およびYIEPの1つまたはそれより多くから、第二の修飾を選択してもよい。
【0056】
【化17】
【0057】
修飾ヌクレオチドの取り込みを改善する修飾は、以下に示す選択される領域の1つまたはそれより多くでのものであってもよい。以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域LVLF、MGA、NNYNQ、FMRA、FPI、VKS、FRT、QSDKS、MQK、VSCVNR、EAEA、AVV、KMT、SPEATE、DHFQ、MCPYDR、YATHERKMMLDNHA、およびYIEPの1つまたはそれより多くから、第二の修飾を選択してもよい。
【0058】
【化18】
【0059】
したがって、配列を整列するプロセスによって、他の種由来の末端トランスフェラーゼの配列中のどの領域が、配列番号1に示すスポッテッドガー配列に関して、本明細書に記載する配列に対応するかは直ちに明らかである。
【0060】
配列相同性は、ファミリーXポリメラーゼ、例えばDNA Polμ(DNAポリメラーゼミューまたはPOLMとしてもまた知られる)、DNA Polβ(DNAポリメラーゼベータまたはPOLBとしてもまた知られる)、およびDNA Polλ(DNAポリメラーゼラムダまたはPOLLとしてもまた知られる)のすべての修飾または野生型メンバーにも拡張される。TdTがメンバーであるファミリーXメンバーポリメラーゼはすべて、末端トランスフェラーゼ活性を有するか、または末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(Biochim Biophys Acta. 2010 May; 1804(5): 1136-1150)と類似の末端トランスフェラーゼ活性を獲得するように操作されてもよいことが周知である。例えば、以下のヒトTdTループ1アミノ酸配列
【0061】
【化19】
【0062】
で、以下のヒトPolμアミノ酸残基
【0063】
【化20】
【0064】
を置換するよう操作した際、ヒトTdTループ1を含有するキメラヒトPolμは、ロバストな末端トランスフェラーゼ活性を獲得した(Nucleic Acids Res. 2006 Sep; 34(16): 4572-4582)。
【0065】
さらに、米国特許出願第2019/0078065号において、ファミリーXポリメラーゼは、TdTループ1キメラを含有するように操作された際、ロバストな末端トランスフェラーゼ活性を獲得しうることが、一般的に立証された。さらに、TdTが、ループ1モチーフ中の特定の突然変異を通じて、テンプレート依存性ポリメラーゼに変換可能であることが立証された(Nucleic Acids Research, Jun 2009, 37(14):4642-4656)。当該技術分野に示されている通り、ファミリーXポリメラーゼはテンプレート依存性またはテンプレート非依存性ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性のいずれかを示すように自明に修飾可能である。したがって、本特許において示されるすべてのモチーフ、領域、および突然変異は、修飾Xファミリーポリメラーゼが3’-修飾ヌクレオチド、可逆的終結ヌクレオチド、および修飾ヌクレオチド一般を取り込んで、核酸合成法を達成可能になるように修飾されたXファミリーポリメラーゼに自明に拡張されうる。
【0066】
他のファミリーXポリメラーゼとの比較として、ヒトPolμ配列を以下に示す:
【0067】
【化21】
【0068】
溶解度を改善する修飾には、以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域GLLPRVMCRLQDQGLILYHQHQ内の修飾が含まれる。
【0069】
【化22】
【0070】
修飾ヌクレオチドの取り込みを改善する修飾は、以下に示す選択される領域の1つまたはそれより多くでのものであってもよい。以下の配列中で強調して示されるアミノ酸領域VAIY、LGA、LTHHNTG、SEGRLLTFCRAA、SPVTTL、EHSSR、EGLRT、REQP、KLTQQQKA、STPVLR、DVDA、AVGQA、GKLQ、HPKEGQ、YHQHQ、DAFER、VAPVSQ、FSRKEKGLWLNSHGLFDPEQK、およびEYLPPの1つまたはそれより多くから、第二の修飾を選択してもよい。
【0071】
【化23】
【0072】
したがって、配列を整列するプロセスによって、任意の種由来のすべてのファミリーXポリメラーゼの配列中のどの領域が、配列番号1に示すスポッテッドガー配列に関して、本明細書に記載する配列に対応するかは直ちに明らかである。
【0073】
さらに、Aファミリーポリメラーゼ、DNA Polθ(DNAポリメラーゼ・シータまたはPOLQとしてもまた知られる)は、ロバストな末端トランスフェラーゼ能を示すことが立証された(eLife. 2016; 5: e13740)。DNA Polθはまた、核酸合成法においても有用であることが立証された(英国特許出願第2553274号)。米国特許出願第2019/0078065号において、DNA PolθおよびファミリーXポリメラーゼのキメラは、ロバストな末端トランスフェラーゼ活性を獲得するように操作可能であり、そして核酸合成法に適格であるようにすることが可能であることが立証された。したがって、本特許に示すすべてのモチーフ、領域、および突然変異は、修飾Aファミリーポリメラーゼが3’-修飾ヌクレオチド、可逆的終結ヌクレオチド、および修飾ヌクレオチド一般を取り込んで、核酸合成法を達成可能になるように修飾されたAファミリーポリメラーゼ、特にDNA Polθに自明に拡張されうる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)、配列番号1~173による3’-O-CH-Nヌクレオシド5’-三リン酸の取り込み。1分あたり、TdT 1ナノグラムあたりの一本鎖DNA分子の3’端への可逆的終結ヌクレオシド5’-三リン酸取り込みの量(pmol)によって、取り込み速度を定義する。y軸=0近傍の点線によって、野生型ウシTdT活性を示す。アッセイのダイナミックレンジは、1分あたり、TdT 1ナノグラムあたりの2.0pmolの取り込みで飽和する。
図2】欧州分子生物学研究所(EMBL)多数配列整列サイトによって提供されるClustal Omega多数配列整列プログラムを用いた、野生型末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼの選択したオルソログの配列整列。
図3】上部パネル:塩基修飾基質A、C、G、およびTを、単一ヌクレオチド取り込みアッセイにおいて、操作された変異体に供給した。Aは3’-アミノオキシ6-アジド2’-デオキシアデノシン5’-三リン酸を示し;Cは3’-アミノオキシ4-アジド5-メチル2’-デオキシシチジン5’-三リン酸を示し;Gは3’-アミノオキシ2-アジド2’-デオキシグアノシン5’-三リン酸を示し;Tは3’-アミノオキシ5-(-ヒドロキシ-1-ブチニル)2’-デオキシウリジン5’-三リン酸を示す。縮重端を持つDNAイニシエーターのプールを固体支持体に固定し、そして(1)TdT変異体、(2)中性pH緩衝剤、(3)一価塩、(4)塩化コバルト、および(5)3’-ONH-dXTP、式中、XはA、C、G、またはTを生じる修飾核酸塩基である、を含有するヌクレオチド付加混合物(NAM)溶液に曝露した。インキュベーション温度は37℃であり、そして反応時間は2.5分間であった。次いで、固体支持体を中性pHの高塩溶液で洗浄した後、中性pHの低塩溶液で洗浄した。イニシエータープールを配列決定ライブラリーに変換し、そしてPE30読み取りを伴うIllumina NextSeq500上で、次世代配列決定(NGS)によって分析した。Illuminaのbcl2fastq変換ソフトウェアでBclファイルをfastqファイルに変換し、そしてRにおいて分析した。取り込み効率([N+1産物を含有する読み取り]/{[Nイニシエーターを含有する読み取り]+[N+1産物を含有する読み取り]})を、すべてのありうるイニシエーター背景に対する、各修飾塩基の付加に関して計算した。すべての背景に渡る平均取り込み効率を図3に示す(上部パネル)。塩基修飾可逆的終結ヌクレオチドA、C、G、およびTの、野生型ウシおよび野生型スポッテッドガーTdTによる単一ヌクレオチド取り込みを、点線によって示す。該アッセイにおいて、野生型ウシまたはスポッテッドガーTdTはこれらの塩基修飾可逆的終結ヌクレオチドを取り込むことが不可能であるため、点線はy=0に存在する。TdT変異体における提示した突然変異はすべて、野生型ウシおよび野生型スポッテッドガーTdTに比較して、TdTにおいて、修飾塩基取り込みの改善を生じた。 下部パネル:3’-ONHヌクレオシド5’-三リン酸と末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)、配列番号1および344~727を用いた、8nt核酸配列の固体支持体合成。固体支持体に結合したDNAイニシエーターを、(1)TdT、(2)中性pH緩衝剤、(3)一価塩、(4)塩化コバルト、および(5)3’-ONH-dNTP、式中、Nはアデニン、チミン、シトシン、またはグアニンより選択される、を含有するヌクレオチド付加混合物(NAM)溶液に反復して曝露することによって、DNA配列5’-ATCGATCG-3’を合成した。サイクルは、以下からなる:(A)明記するA、T、C、またはGの可逆的終結ヌクレオチドを含むNAM溶液を、固体支持体上、37℃で5分間インキュベーションした;(B)次いで、固体支持体を中性pHの高塩溶液で洗浄した;(C)次いで、固体支持体を酸性水性亜硝酸ナトリウムに曝露した;そして(D)次いで、固体支持体を(B)と同じ中性pHの高塩溶液で洗浄した。次いで、(A)~(D)をさらに7回反復して、所望の8nt配列を合成した。変性ポリアクリルアミドゲル上で反応を泳動することによって、合成したDNAを分析し、そしてDNAイニシエーターに共有結合したフルオロフォアによって定量化した。8ntバンドの蛍光強度を測定し、そして総レーン強度で割ることによって、全長(8nt種)の率を決定した。全長の率に関するような野生型ウシおよびスポッテッドガーTdT活性を点線で示す。TdT変異体に含まれるすべての突然変異は、野生型ウシおよびスポッテッドガーTdTに比較して、TdTの改善を生じた。
図4】DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPに結合した、好ましい操作されたNuclera TdT変異体の共結晶構造に基づく、スポッテッドガーTdT相同性構造。BRCTドメイン一部切除を含む操作されたTdT変異体を、大腸菌(Escherichia coli)中で発現させ、そして固定金属アフィニティクロマトグラフィ後、サイズ排除クロマトグラフィを通じて精製した。次いで、以下のリザーバー溶液:それぞれ、Bis-Tris HCl(100mM)、NaCl(27mM)、22%w/v PEG3350またはBis-Tris HCl(10mM)および27.5%w/v PEG MME500中、dATP-ONH(1mM)の非存在下(上部)または存在下(下部)で、DNAオリゴヌクレオチド(5’-TTTTT[ddC]-3’;120マイクロモル)、塩化コバルト(1mM)を用い、19℃でのシッティングドロップ蒸気拡散によって、前述のTdT(60マイクロモル)を共結晶化した。平面様の結晶が現れ、そして1週間に渡って400x50x5μmの最大寸法まで成長し、そしてそれぞれ2.6および2.5オングストロームに回折し、空間群はP2であり、そして単位格子寸法は、それぞれ、a=56.5Å、b=80.0Å、c=88.2Å、およびa=55.6Å、b=79.1Å、c=88.6Åであった。Diamond Light Sourceで、自動化ソフトウェアパイプラインを用いて、データをインデックス化し、統合し、そしてスケーリングした。Lepisosteus oculatus(スポッテッドガー)の相同性モデルで分子置換した後、剛体が散在する手動モデル構築、アニーリングシミュレーション、エネルギー最小化および個々の等方性D因子のサイクルを行い、完全構造モデルを生じた(Rfree=それぞれ27.8%および28.6%)。異常分散によって、コバルトイオンを同定した。BRCTドメイン一部切除を含むスポッテッドガーTdT野生型配列(>95%配列同一性)を2つの構造上にモデリングした。
図5】黒で強調された、ENHNQモチーフを含むMENHNQIモチーフを持つ、図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造上にモデリングされたスポッテッドガーTdT相同性構造の表面提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、MENHNQIおよびENHNQモチーフは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位へのアクセスを制御し、そして本特許に示す突然変異は、このモチーフを突然変異させると、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じることを立証する。
図6】黒で強調された、FMRAモチーフを含むSEGPCLAFMRAを持つ、図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造上にモデリングされたスポッテッドガーTdT相同性構造の表面提示(右は左の図を180度回転した図)。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、SEGPLCLAFMRAおよびFMRAモチーフは、(1)立体効果および静電相互作用を通じて、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への可逆的終結ヌクレオチドのアクセスを制御し、そして(2)非常に重要なTGSRモチーフに対して直接パッキングし、該モチーフは可逆的終結ヌクレオチドと直接接触する。特にTGSRモチーフに関して、SEGPLCLAFMRAおよびFMRAモチーフは直接接触し、そしてR438の配置を調節し、該残基が可逆的終結ヌクレオチドと直接接触する。本特許に示す突然変異は、これらのモチーフを突然変異させると、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じることを立証する。
図7】黒で強調された、MQKモチーフを含むHFTKMQKモチーフを持つ、図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造上にモデリングされたスポッテッドガーTdT相同性構造の表面提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、HFTKMQKおよびMQKモチーフは、核酸イニシエーターに結合し、そして入ってくるヌクレオチドに対する求核攻撃のため、イニシエーターの3’端の配置を補助する。本特許に示す突然変異は、このモチーフを突然変異させると、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じることを立証する。
図8】黒で強調されたSAAVCKモチーフを持つ、図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造上にモデリングされたスポッテッドガーTdT相同性構造の表面提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、SAAVCKモチーフは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への可逆的終結ヌクレオチドのアクセスを制御する。本特許に示す突然変異は、このモチーフを突然変異させると、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じることを立証する。
図9】黒で強調された、KECモチーフを含むGKECモチーフを持つ、図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造上にモデリングされたスポッテッドガーTdT相同性構造の表面(左)および漫画/球体(右)提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、GKECおよびKECモチーフは、可逆的終結ヌクレオチドのヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位へのアクセスを制御し、そしてその結合を導く。本特許に示す突然変異は、このモチーフを突然変異させると、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じることを立証する。
図10】黒で強調された、DHFQモチーフを含むDHFQKモチーフを持つ、図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造上にモデリングされたスポッテッドガーTdT相同性構造の表面提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、DHFQKおよびDHFQモチーフは、核酸イニシエーターに立体的に作用することによって、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への核酸イニシエーターのアクセスを制御する。本特許に示す突然変異は、このモチーフを突然変異させると、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じることを立証する。
図11】黒い球体で強調されたFARHERKMLLDNHAモチーフを持つ、DNAイニシエーターおよびdATP-ONHに結合した図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造の漫画提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、FARHERKMLLDNHAモチーフは、ヌクレオチドおよびイニシエーターに立体的に作用することによって、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位におけるヌクレオチドおよび核酸イニシエーター結合を制御する。さらに、モチーフFARHERKMLLDHAは、FARHERKMLLDHAに突然変異される。AsnからArgへの突然変異は、触媒性コバルトイオンの2つのうち1つに直接結合したArg残基を生じ、これは活性に必要とされる。本特許に示す突然変異は、このモチーフ内の残基を突然変異させると、Co2+、可逆的終結ヌクレオチド、および/または核酸イニシエーターのいずれかと接触する非常に重要なアミノ酸の配置が調節されて、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じることを立証する。
図12】黒い球体で強調されたFARHERKMLLDNHALYDKTKKモチーフを持つ、DNAイニシエーターおよびdATP-ONHに結合した図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造の漫画提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、FARHERKMLLDNHALYDKTKKモチーフは、ヌクレオチドおよびイニシエーターに立体的に作用することによって、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位におけるヌクレオチドおよび核酸イニシエーター結合を制御する。さらに、モチーフFARHERKMLLDHALYDKTKKは、FARHERKMLLDHALYDKTKKに突然変異される。AsnからArgへの突然変異は、触媒性コバルトイオンの2つのうち1つに直接結合したArg残基を生じ、これは活性に必要とされる。本特許に示す突然変異は、このモチーフ内の残基を突然変異させると、Co2+、可逆的終結ヌクレオチド、および/または核酸イニシエーターのいずれかと接触する非常に重要なアミノ酸の配置が調節されて、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じることを立証する。
図13】黒い球体で強調された、YIDPモチーフを含有するDYIDPモチーフを持ち、DNAイニシエーターおよびdATP-ONHに結合した図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造の漫画提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、DYIDPおよびYIDPモチーフは、活性部位内のA494の配置を調節することによって、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位におけるヌクレオチド結合を制御する。この最もC末端の残基(Ala494)は、入ってくるヌクレオチドに立体的に作用する。YIDPモチーフを突然変異させると、最もC末端のAla残基の配置が調節され、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じる。
図14】黒い球体で強調されたYYDIVモチーフを持つ、DNAイニシエーターおよびdATP-ONHに結合した図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造の漫画提示。TdTは、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位への2つの入口を含有し、この中に、DNAイニシエーターおよび可逆的終結dNTPが進入し、そして結合しうる。活性部位のモデリングおよび視覚的検査によって決定されるように、YYDIVモチーフは、核酸イニシエーター中の端から三番目(III)、端から二番目(II)、および最も端の(I)3’-ヌクレオチドに立体的に作用することによって、核酸イニシエーターの配置を制御する。特に、このモチーフは、ピリミジン(左、結晶化した場合、球体提示で示されるIおよびII)に作用するが、特にプリン(右、プリンとして構造内にモデリングされるII)に作用する。YYDIVモチーフを突然変異させると、ヌクレオチドトランスフェラーゼ活性部位内への核酸イニシエーターの配置およびアクセスが調節され、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加が生じる。
図15】黒い球体で強調された、APPVDNモチーフを含有するAPPVDNFモチーフを持ち、DNAイニシエーターおよびdATP-ONHに結合した図4に記載したような操作されたTdT変異体の結晶構造の漫画提示。該構造において、AlaからMetへの突然変異でPPVDNFになる、PPVDNFモチーフが示される。モデリングを通じて、APPVDNFおよびAPPVDNモチーフは、どちらも明るい灰色の球体で示されるYYDIV(上部右)およびFARHERKMLLDNHALYDKTKK(下部左)モチーフに対して直接パッキングすることによってこれらのモチーフの配置を制御する。さらに、モデリングを通じて決定されるように、APPVDNFおよびAPPVDNモチーフは、どちらも明るい灰色の球体で示される、ヌクレオチドトランスフェラーゼ機構に非常に重要である、TGSRモチーフ(上部左)およびアスパラギン酸の触媒性3つ組(下部右)のループコンホメーションを決定することによって、これらのモチーフの配置を制御する。APPVDNFおよびAPPVDNモチーフを突然変異させると、前述の非常に重要なタンパク質モチーフが、可逆的終結ヌクレオチドおよび核酸イニシエーターとの接触を調節する方式に直接影響がある。本特許に示されているAPPVDNFおよびAPPVDNモチーフ中の突然変異は、可逆的終結ヌクレオチドのTdT取り込み活性の増加を生じる。
【発明を実施するための形態】
【0075】
修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素を本明細書に記載する。末端トランスフェラーゼ酵素は、天然に遍在性であり、そして多くの種に存在する。多くの既知のTdT配列が、NCBIデータベースに報告されてきている。本明細書に記載する配列は、スポッテッドガーの配列から修飾されているが、対応する変化を、他の種由来の相同配列内に導入してもよい。Polμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同アミノ酸配列、またはXファミリーポリメラーゼの相同アミノ酸配列もまた、末端トランスフェラーゼ活性を所持する。末端トランスフェラーゼへの言及にはまた、こうした配列が末端トランスフェラーゼ活性を所持する場合、Polμ、Polβ、Polλ、およびPolθの相同アミノ酸配列、またはXファミリーポリメラーゼの相同アミノ酸配列が含まれる。
【0076】
野生型配列と比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV、VAIF、MGA、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素を本明細書に開示する。
【0077】
少なくとも配列番号729:
【0078】
【化24】
【0079】
または他の種における同等の相同領域を含む修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、配列が、該配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV、MENHNQI、SEGPCLAFMRA、HAISSS、DQTKA、KGFHS、QADNA、HFTKMQK、SAAVCK、EAQA、TVRLI、GKEC、TPEMGK、DHFQK、LAAG、APPVDNF、FARHERKMLLDNHALYDKTKK、およびDYIDPの1つまたはそれより多くに1つまたはそれより多くのアミノ酸修飾を有する、前記酵素を本明細書に記載する。355アミノ酸の上記配列を、酵素の機能に影響を及ぼすことなく、他のアミノ酸に付着させてもよい。例えば、プロテアーゼ切断部位として単に取り込まれるさらなるN末端配列、例えば配列MENLYFQGが存在してもよい。
【0080】
野生型配列、配列番号1、または他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDI、VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される、前記酵素を開示する。
【0081】
野生型配列、配列番号1、または他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、少なくとも2つのアミノ酸修飾を含む修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって;
a. 第一の修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIVまたは他の種における相同領域内であり;そして
b. 第二の修飾が、配列番号1の配列のアミノ酸領域VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される
前記酵素をさらに開示する。
【0082】
ウシTdT;配列番号2の配列に比較した際、
a. 第一の修飾は、配列番号2の配列のアミノ酸領域QLLPKVINLWEKKGLLLYYDLVまたは他の種における相同領域内であり;そして
b. 第二の修飾は、配列番号2の配列のアミノ酸領域LVLF、MGA、NNYNH、FMRA、FTI、VKC、FRS、MSDKT、MQK、EAEA、AVW、KKI、SPGSAE、MCP、YATHERKMMLDNHA、およびYIEPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される。
【0083】
マウスTdT;配列番号3の配列に比較した際、
a. 第一の修飾は、配列番号3の配列のアミノ酸領域QLLHKVTDFWKQQGLLLYCDILまたは他の種における相同領域内であり;そして
b. 第二の修飾は、配列番号3の配列のアミノ酸領域LVLF、MGA、NNYNQ、FMRA、FPI、VKS、FRT、QSDKS、MQK、VSCVNR、EAEA、AVV、KMT、SPEATE、DHFQ、MCPYDR、YATHERKMMLDNHA、およびYIEPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択される。
【0084】
修飾は、野生型配列と異なる任意のアミノ酸から選択可能である。アミノ酸は天然存在アミノ酸であってもよい。修飾アミノ酸は、ala、arg、asn、asp、cys、gln、glu、gly、his、ile、leu lys、met、phe、pro、ser、thr、trp、val、およびsecより選択されてもよい。
【0085】
簡潔にするため、修飾は、配列番号1に関連してさらに記載されるが、修飾は、他の種由来の配列、例えばNCBIデータベース中の配列を有する、上に列挙する配列に適用可能である。配列修飾はまた、配列番号1の一部切除型に適用可能である。
【0086】
記載する領域に加えた位で配列を修飾してもよい。本発明に対する態様には、こうした配列が末端トランスフェラーゼ活性を保持する限り、例えば、定義する位の外側のアミノ酸に対する修飾を有する配列が含まれてもよい。本発明の態様には、こうした配列が末端トランスフェラーゼ活性を保持する限り、例えば、定義する位の外側のアミノ酸の一部切除を有する配列が含まれてもよい。例えば、配列は、活性を保持するかまたは改善しつつ、N末端からアミノ酸が除去されている、出願WO2018215803に記載されるように一部切除されたBRCTであってもよい。請求する領域外のアミノ酸位に対する改変、付加、挿入または欠失または一部切除は、したがって、定義するように請求する領域が請求するように修飾されている限り、本発明の範囲内である。本明細書に記載する配列は、典型的には長さ少なくとも300アミノ酸である、TdT酵素を指す。本明細書に記載するすべての配列は、少なくとも300アミノ酸を有することがわかる。請求項は、末端トランスフェラーゼ酵素として機能しないペプチド断片または配列を含まない。
【0087】
領域WLLNRLINRLQNQGILLYYDIVまたは他の種由来の対応する領域内の修飾は、酵素の溶解度の改善を補助する。アミノ酸領域LLNRLINRLQNQLLYYDV内の修飾は、1つまたはそれより多くの下線で示すアミノ酸でのものであってもよい。
【0088】
特定の変化は、W-Q、N-P、R-K、L-V、R-L、L-W、Q-E、N-K、Q-KまたはI-Lより選択されてもよい。
配列WLLNRLINRLQNQGILLYYDIVはQLLPKVINLWEKKGLLLYYDLVに改変されてもよい。
【0089】
第二の修飾は、野生型配列に比較して、3’位での修飾を有するヌクレオチドの取り込みを改善する。第二の修飾は、配列番号1の配列のアミノ酸領域VAIF、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の1つまたはそれより多くより選択されてもよい。第二の修飾は、以下の配列で強調して示される配列番号1の配列のアミノ酸領域VAIF、EDN、MGA、ENHNQ、FMRA、HAI、TKA、FHS、QADNA、MQK、SAAVCK、EAQA、TVR、KEC、TPEMGK、DHFQ、LAAG、APPVDN、FARHERKMLLDNHA、およびYIDPまたは他の種における相同領域の2つまたはそれより多くより選択されてもよい。
【0090】
【化25】
【0091】
同定される位は、位、V32、M108、F182、T212、D271、M279、E298、A421、L456、Y486で始まる。本明細書に開示する修飾は、定義される位で少なくとも1つの修飾を含有する。
【0092】
以下の配列において、修飾領域を以下のように番号付ける。
【0093】
【化26】
【0094】
WLLNRLINRLQNQGILLYYDIV、349~370
VAIF、32~35
MGA、108~110
MENHNQI、152~158
SEGPCLAFMRA、175~185
HAISSS、194~199
DQTKA、210~214
KGFHS、260~264
QADNA、269~273
HFTKMQK、275~281
SAAVCK、291~296
EAQA、298~301
TVRLI、309~313
GKEC、328~331
TPEMGK、341~346
DHFQK、388~392
LAAG、403~406
APPVDNF、421~427
FARHERKMLLDNHALYDKTKK、447~467
DYIDP、485~489
修飾アミノ酸は、領域FMRA中にあってもよい。修飾アミノ酸は、領域QADNA中にあってもよい。修飾アミノ酸は、領域EAQA中にあってもよい。修飾アミノ酸は、領域APP中にあってもよい。修飾アミノ酸は、領域LDNHA中にあってもよい。修飾アミノ酸は、領域YIDP中にあってもよい。領域FARHERKMLLDNHAは、修飾における基質バイアスを除去するために好適である。FARHERKMLLDNHA領域は、種に渡って非常に保存されているようである。
【0095】
アミノ酸領域、FRA、QADA、EAA、PP、FARHERKMLLDHA、およびYIPの1つまたはそれより多くより選択される修飾は、下線アミノ酸(単数または複数)でのものであってもよい。
【0096】
定義されるドメインにおける修飾によって記載される発明ではなく、特定の定義されたアミノ酸での修飾によって、配列を定義してもよい。野生型配列、配列番号1またはその一部切除型、あるいは他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、アミノ酸修飾を含む修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、アミノ酸が、アミノ酸
【0097】
【化27】
【0098】
の1つまたはそれより多くで修飾されている、前記酵素を本明細書に記載する。
野生型配列、配列番号1または他の種における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素の相同アミノ酸配列に比較した際、アミノ酸修飾を含む、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素であって、アミノ酸が、アミノ酸
【0099】
【化28】
【0100】
の1つまたはそれより多くで修飾されている、前記酵素を本明細書に提供する。
特定のアミノ酸変化には
【0101】
【化29】
【0102】
のいずれか1つが含まれてもよい。
アミノ酸変化には
【0103】
【化30】
【0104】
のいずれか2つまたはそれより多くが含まれる。
QADNAからKADKA、QADKA、KADNA、QADNS、KADNT、またはQADNTへの修飾は、核酸の3’端への3’-O修飾ヌクレオシド三リン酸の取り込みおよび修飾ヌクレオシド三リン酸の取り込み中の基質バイアスの除去に好適である。APPVDNからMCPVDN、MPPVDN、ACPVDR、VPPVDN、LPPVDR、ACPYDN、LCPVDN、またはMAPVDNへの修飾は、核酸の3’端への3’-O修飾ヌクレオシド三リン酸の取り込みおよび修飾ヌクレオシド三リン酸の取り込み中の基質バイアスの除去に好適である。FARHERKMLLDRHAからWARHERKMILDNHA、FARHERKMILDNHA、WARHERKMLLDNHA、FARHERKMLLDRHA、またはFARHEKKMLLDNHAへの修飾もまた、核酸の3’端への3’-O修飾ヌクレオシド三リン酸の取り込みおよび修飾ヌクレオシド三リン酸の取り込み中の基質バイアスの除去に好適である。
【0105】
修飾は、以下の配列FRRA、QADKA、EADA、MPP、FARHERKMLLDRHA、およびYIPPの1つまたはそれより多くより選択されてもよい。第二の修飾が、以下の配列FRRA、QADKA、EADA、MPP、FARHERKMLLDRHA、およびYIPPの2つまたはそれより多くから選択される、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素が含まれる。第二の修飾が、以下の配列FRRA、QADKA、EADA、MPP、FARHERKMLLDRHA、およびYIPPの各々を含有する、修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素が含まれる。
【0106】
本明細書に示す結晶構造は、以下のドメインを示し、これらは修飾するドメインとして好ましい可能性もある:
図5. ENHNQモチーフを含むMENHNQIモチーフ(152~158)
図6. 黒で強調された、FMRAモチーフを含むSEGPCLAFMRA(175~185)
図7. 黒で強調された、MQKモチーフを含むHFTKMQKモチーフ(275~281)
図8. 黒で強調されたSAAVCKモチーフ(291~296)
図9. 黒で強調された、KECモチーフを含むGKECモチーフ(328~331)
図10. 黒で強調された、DHFQモチーフを含むDHFQKモチーフ(388~392)
図11. 黒い球体で強調されたFARHERKMLLDNHAモチーフ(447~460)。さらに、モチーフFARHERKMLLDHAは、FARHERKMLLDHAに突然変異された。
【0107】
図12. 黒い球体で強調されたFARHERKMLLDNHALYDKTKKモチーフ(447~467)。さらに、モチーフFARHERKMLLDHALYDKTKKは、FARHERKMLLDHALYDKTKKに突然変異された。
【0108】
図13. 黒い球体で強調された、YIDPモチーフを含有するDYIDPモチーフ(485~489)。
図14. 黒い球体で強調されたYYDIVモチーフ(366~370)。
【0109】
図15. 黒い球体で強調された、APPVDNモチーフ(421~427)を含有するAPPVDNFモチーフ。該構造において、AlaからMetへの突然変異でPPVDNFになる、PPVDNFモチーフが示される。
【0110】
発現された配列の精製を補助するため、アミノ酸をさらに修飾してもよい。例えば、アミノ酸配列は、末端に1つまたはそれより多いさらなるヒスチジン残基を含有してもよい。配列番号4~173またはその一部切除型の任意の1つを含む修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素が含まれる。配列4~173は、スポッテッドガー由来の全長配列である。配列番号174~343のいずれか1つを含む修飾末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)酵素が含まれる。配列174~343は、スポッテッドガー/ウシキメラとしてのN-一部切除配列である。配列344~727は、一部切除型のスポッテッドガー配列である。さらに、これらの配列に関して、単にプロテアーゼ切断部位として取り込まれるN末端配列(MENLYFQG...)がある。
【0111】
核酸合成法であって:
(a)イニシエーターオリゴヌクレオチドを提供し;
(b)本明細書に定義するような末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)の存在下で、前記イニシエーターオリゴヌクレオチドに3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸を付加し;
(c)イニシエーターオリゴヌクレオチドからすべての試薬を除去し;
(d)切断剤の存在下でブロッキング基を切断し;そして
(e)切断剤を除去する
工程を含む、前記方法もまた開示する。
【0112】
工程(b)~(e)を反復することによって、1つより多いヌクレオチドを付加してもよい。
本明細書において、「ヌクレオシド三リン酸」への言及は、3つのリン酸基に結合したヌクレオシド(すなわちデオキシリボースまたはリボース糖分子に付着した塩基)を含有する分子を指す。デオキシリボースを含有するヌクレオシド三リン酸の例は:デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)またはデオキシチミジン三リン酸(dTTP)である。リボースを含有するヌクレオシド三リン酸の例は:アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)、シチジン三リン酸(CTP)またはウリジン三リン酸(UTP)である。他のタイプのヌクレオシド、例えば天然存在修飾ヌクレオシドおよび人工ヌクレオシドが三リン酸に結合して、ヌクレオシド三リン酸を形成してもよい。
【0113】
したがって、本明細書において、「3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸」への言及は、さらなるヌクレオチドの付加を防止する、すなわち3’-OH基を保護基で置換することによってさらなる付加を防止する、さらなる基を3’端に有するヌクレオシド三リン酸(例えば、dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)を指す。
【0114】
本明細書において、「3’-ブロック」、「3’-ブロッキング基」または「3’-保護基」への言及は、さらなるヌクレオチド付加を防止する、ヌクレオシド三リン酸の3’端に付着される基を指す。本方法は、切断によって除去されてさらなるヌクレオチドの付加を可能にしうる、可逆的3’-ブロッキング基を用いる。対照的に、不可逆的3’-ブロッキング基は、3’-OH基が切断によって曝露されないかまたは現れないかいずれかでありうるdNTPを指す。
【0115】
3’-ブロッキングされたヌクレオシド5’-三リン酸は、アンマスクされて3’-OHを現しうる、任意の化学基によってブロッキングされてもよい。3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸は、3’-O-アジドメチル、3’-アミノオキシ、3’-O-(N-オキシム)(3’-O-N=CR、式中、RおよびRは、各々、C1~C3アルキル基、例えばCHであり、したがって、オキシムはO-N=C(CH(N-アセトンオキシム)であってもよい)、3’-O-アリル基、3’-O-シアノエチル、3’-O-アセチル、3’-O-ナイトレート、3’-O-ホスフェート、3’-O-アセチルレブリン酸エステル、3’-O-tertブチルジメチルシラン、3’-O-トリメチル(シリル)エトキシメチル、3’-O-オルト-ニトロベンジル、および3’-O-パラ-ニトロベンジルによってブロッキングされてもよい。
【0116】
3’-ブロッキングされたヌクレオシド5’-三リン酸はまた、化学連結、例えば銅触媒されるかまたは銅不含アジド-アルキンクリック反応およびテトラジン-アルケンクリック反応において直接利用されうる任意の化学基によってブロッキングされてもよい。3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸には、アジド、アルキン、アルケン、およびテトラジンを含有する化学部分が含まれてもよい。
【0117】
本明細書において、「切断剤」への言及は、3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸から3’-ブロッキング基を切断可能である物質を指す。1つの態様において、切断剤は化学的切断剤である。代替態様において、切断剤は、酵素的切断剤である。切断は、単一工程で行われてもよいし、または多工程でもよく、例えばオキシム(例えば3’-O-(N-オキシム)、3’-O-N=C(CH)を、アミノオキシ(O-NH)に変換し、その後、アミノオキシを切断してOHにしてもよい。
【0118】
当業者には、切断剤の選択は、用いる3’-ヌクレオチドブロッキング基のタイプに応じることが理解されるであろう。例えば、tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)またはtris(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THPP)を用いて3’-O-アジドメチル基を切断してもよく、パラジウム錯体を用いて3’-O-アリル基を切断してもよく、または亜硝酸ナトリウムを用いて3’-アミノオキシ基を切断してもよい。したがって、1つの態様において、切断剤は:tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、パラジウム錯体または亜硝酸ナトリウムより選択される。
【0119】
1つの態様において、変性剤、例えば尿素、塩化グアニジウム、ホルムアミドまたはベタインを含む切断溶液の存在下で、切断剤を添加する。変性剤の添加は、DNA中のいかなる望ましくない二次構造も破壊可能であるという利点を有する。さらなる態様において、切断溶液は、1つまたはそれより多い緩衝剤を含む。緩衝剤の選択は、正確な切断化学反応および必要な切断剤に応じることが当業者には理解されるであろう。
【0120】
本明細書において、「イニシエーターオリゴヌクレオチド」または「イニシエーター配列」への言及は、3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸を付着させてもよい未結合(free)3’端を持つ短いオリゴヌクレオチドを指す。1つの態様において、イニシエーター配列はDNAイニシエーター配列である。別の態様において、イニシエーター配列はRNAイニシエーター配列である。
【0121】
本明細書において、「DNAイニシエーター配列」への言及は、3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸を付着させてもよいDNAの小分子配列を指し、すなわちDNAはDNAイニシエーター配列の末端から合成されるであろう。
【0122】
1つの態様において、イニシエーター配列は、長さ5~50ヌクレオチドの間、例えば長さ5~30ヌクレオチドの間(すなわち10~30の間)、特に長さ5~20ヌクレオチドの間(すなわち長さおよそ20ヌクレオチド)、より具体的には長さ5~15ヌクレオチド、例えば長さ10~15ヌクレオチド、特に長さ12ヌクレオチドである。
【0123】
1つの態様において、イニシエーター配列は一本鎖である。別の態様において、イニシエーター配列は二本鎖である。当業者には、3’-オーバーハング(すなわち未結合3’端)が効率的な付加を可能にすることが理解されるであろう。
【0124】
1つの態様において、イニシエーター配列を固体支持体上に固定する。これにより、合成された核酸を洗い流すことなく、TdTおよび切断剤を取り除くことが可能になる(それぞれ工程(c)および(e)において)。イニシエーター配列を、水性条件下で安定な固体支持体に付着させて、方法が流動セットアップを通じて容易に実行可能であるようにしてもよい。
【0125】
1つの態様において、イニシエーター配列は、可逆的相互作用部分、例えば化学的切断可能リンカー、抗体/免疫原性エピトープ、ビオチン/ビオチン結合タンパク質(例えばアビジンまたはストレプトアビジン)、またはグルタチオン-GSTタグを通じて、固体支持体上に固定される。したがって、さらなる態様において、該方法は、例えばプロテイナーゼKとインキュベーションすることによって、イニシエーター配列中の可逆的相互作用部分を除去することによって、生じた核酸を抽出する工程をさらに含む。
【0126】
1つの態様において、イニシエーター配列は、酵素によって認識可能である塩基または塩基配列を含有する。酵素、例えばグリコシラーゼによって認識される塩基を除去して、化学的または酵素的手段によって切断可能である無塩基部位を生成してもよい。塩基配列は、制限酵素によって認識され、そして切断されることも可能である。
【0127】
さらなる態様において、イニシエーター配列を、化学的切断可能リンカー、例えばジスルフィド、アリル、またはアジドマスク化ヘミアミナールエーテルリンカーを通じて、固体支持体上に固定する。したがって、1つの態様において、該方法は、ジスルフィドリンカーに関してはtris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)またはジヒドロスレイトール(DTT);パラジウム錯体またはアリルリンカー;あるいはアジドマスク化ヘミアミナールエーテルリンカーに関してはTCEPの添加を通じて、化学的リンカーを切断することによって、生じた核酸を抽出する工程をさらに含む。
【0128】
1つの態様において、テンプレートとして、固体支持体に結合した核酸を用いて、生じた核酸を抽出し、そしてポリメラーゼ連鎖反応によって増幅する。したがって、イニシエーター配列は、適切な順方向プライマー配列を含有し、そして適切な逆方向プライマー配列を合成してもよい。
【0129】
1つの態様において、1つまたはそれより多い緩衝剤(例えばTrisまたはカコジル酸塩)、1つまたはそれより多い塩(例えば、すべて適切な対イオン、例えばClとともに、Na、K、Mg2+、Mn2+、Cu2+、Zn2+、Co2+等)、および無機ピロホスファターゼ(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)相同体)を含む伸長溶液の存在下で、本発明の末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)を添加する。緩衝剤および塩の選択は、最適な酵素活性および安定性に応じることが理解されるであろう。無機ピロホスファターゼの使用は、TdTによるヌクレオシド三リン酸加水分解によるピロリン酸の蓄積の減少を補助する。したがって、無機ピロホスファターゼの使用は、(1)逆方向反応および(2)TdT鎖不均化の率を減少させる利点を有する。
【0130】
1つの態様において、工程(b)を5~10の間のpH範囲で行う。したがって、pH5~10の緩衝範囲を持つ任意の緩衝剤、例えばカコジル酸塩、Tris、HEPESまたはTricine、特にカコジル酸塩またはTrisを用いてもよいことが理解されるであろう。
【0131】
1つの態様において、工程(d)を99℃未満、例えば95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、または30℃未満の温度で実行する。最適温度は、利用する切断剤に応じることが理解されるであろう。用いる温度は、ヌクレオチド付加中に形成されるいかなる二次構造の切断および破壊の補助も助ける。
【0132】
1つの態様において、工程(c)および(e)を、洗浄溶液を適用することによって実行する。1つの態様において、洗浄溶液は、本明細書に記載する伸長溶液中で用いるものと同じ緩衝剤および塩を含む。これは、方法工程を反復する際、工程(c)の後に、洗浄溶液を収集し、そして工程(b)における伸長溶液としてリサイクルすることを可能にするという利点を有する。
【0133】
イニシエーター配列および1つまたはそれより多くの3’-ブロッキングされたヌクレオシド三リン酸と組み合わせて、本明細書に定義するような末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)を含むキットもまた開示する。
【0134】
本発明には、修飾末端トランスフェラーゼを発現するために用いられる核酸配列が含まれる。修飾末端トランスフェラーゼを発現するコドン最適化cDNA配列が本発明に含まれる。タンパク質変異体(配列番号4~727)の各々に関してコドン最適化されたcDNA配列が含まれる。
【0135】
核酸配列は以下の配列(配列番号728)であってもよい:
【0136】
【化31】
【0137】
本発明には、修飾末端トランスフェラーゼを産生する細胞株が含まれる。
【実施例
【0138】
TdT変異体の発現
簡潔には、末端トランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子を含有するプラスミドを、BL21大腸菌コンピテント細胞に形質転換した。スターター・ルリアブロス(LB)培養を37℃で一晩増殖させて、そしてLB発現培養内に接種した。発現培養を600nmで0.6の光学密度まで増殖させ、そしてIPTGを1mMまで添加することによって誘導した。培養を誘導し、そして25℃で一晩増殖させた。翌朝、界面活性剤溶解溶液中で培養を溶解し、そして固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)によって均一に精製した。
【0139】
TdT変異体による可逆的ターミネーターの取り込みのアッセイ
173の末端トランスフェラーゼ酵素を発現させ、精製し、そして野生型ウシTdT(配列番号2)に対して比較した。次いで、以下のアッセイで、精製操作TdTを用いた:蛍光標識15nt ssDNAプライマーを、1xTdT緩衝液(Thermo Fisher Scientific)、酵母無機ピロホスファターゼ(Sigma-Aldrich、0.1mU/μl)、3’-アジドメチルdTTPまたは3’-アミノオキシdATP、および操作されたTdT(24μg/μl)と、37℃で10分間インキュベーションした。次いで、反応を停止するためにホルムアミド(Fisher Scientific)を用い、そして試料を直接、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動に装填し、そして分析した。ゲルを画像化し、そして生じたゲルバンドをTyphoonスキャナ(GE)で定量化した。
【0140】
173のTdT酵素(配列番号1~173)からの結果を図1に示す。
TdT変異体による塩基修飾された可逆的ターミネーターの取り込みのアッセイ
【0141】
【化32】
【0142】
は3’-アミノオキシ6-アジド2’-デオキシアデノシン5’-三リン酸を示し;Cは3’-アミノオキシ4-アジド5-メチル2’-デオキシシチジン5’-三リン酸を示し;Gは3’-アミノオキシ2-アジド2’-デオキシグアノシン5’-三リン酸を示し;Tは3’-アミノオキシ5-(-ヒドロキシ-1-ブチニル)2’-デオキシウリジン5’-三リン酸を示す。
【0143】
上述のように、192の末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)変異体を発現させ、そして精製した。発現された変異体は配列番号:
【0144】
【化33】
【0145】
を有した。
単一ヌクレオチド取り込みアッセイにおいて、塩基修飾された可逆的ターミネーターA、C、G、およびTを基質として、操作された変異体に供給した。縮重端を持つDNAイニシエーターのプール(・・・NNN、式中、N=A、C、G、T)を固体支持体に固定し、そして(1)TdT変異体、(2)中性pH緩衝剤、(3)一価塩、(4)塩化コバルト、および(5)3’-ONH-dXTP、式中、XはA、C、G、またはTを生じる修飾核酸塩基である、を含有するヌクレオチド付加混合物(NAM)溶液に曝露した。インキュベーション温度は37℃であり、そして反応時間は2.5分間であった。次いで、固体支持体を中性pHの高塩溶液で洗浄した後、中性pHの低塩溶液で洗浄した。イニシエータープールを配列決定ライブラリーに変換し、そして対末端30サイクル読み取り(PE30読み取り)を伴うIllumina NextSeq500上で、次世代配列決定(NGS)によって分析した。Illuminaのbcl2fastq変換ソフトウェアでBclファイルをfastqファイルに変換し、そしてRにおいて分析した。取り込み効率([N+1産物を含有する読み取り]/{[Nイニシエーターを含有する読み取り]+[N+1産物を含有する読み取り]})を、すべてのありうるイニシエーター背景に対する、各修飾塩基の付加に関して計算した。すべての背景に渡る平均取り込み効率を図3に示す(上部パネル)。塩基修飾可逆的終結ヌクレオチドA、C、G、およびTの、単一ヌクレオチド取り込みに関する、野生型ウシおよびスポッテッドガーTdTの活性を、点線によって示す。本発明者らのアッセイにおいて、野生型ウシまたはスポッテッドガーTdTはこれらの塩基修飾可逆的終結ヌクレオチドを取り込むことが不可能であるため、点線はy=0に存在する。TdT変異体における提示した突然変異はすべて、野生型ウシおよび野生型スポッテッドガーTdTに比較して、TdT修飾塩基取り込みの改善を生じた。
【0146】
TdT変異体のマルチサイクリング能のアッセイ
3’-ONHヌクレオシド5’-三リン酸と末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)配列番号1および344~727を用いた8nt核酸配列の固体支持体合成。上述のようにTdT変異体を発現させ、そして精製した。固体支持体結合DNAイニシエーターを、(1)TdT変異体、(2)中性pH緩衝剤、(3)一価塩、(4)塩化コバルト、および(5)3’-ONH-dNTP、式中、Nはアデニン、チミン、シトシン、またはグアニンより選択される、を含有するヌクレオチド付加混合物(NAM)溶液に反復して曝露することによって、DNA配列5’-ATCGATCG-3’を合成した。サイクルは、以下からなる:(A)明記するA、T、C、またはGの可逆的終結ヌクレオチドを含むNAM溶液を、固体支持体上、37℃で5分間インキュベーションした;(B)次いで、固体支持体を中性pHの高塩溶液で洗浄した;(C)次いで、固体支持体を酸性水性亜硝酸ナトリウムに曝露した;そして(D)次いで、固体支持体を(B)と同じ中性pHの高塩溶液で洗浄した。次いで、(A)~(D)をさらに7回反復して、所望の8nt配列を合成した。変性ポリアクリルアミドゲル上で反応を泳動することによって、合成したDNAを分析し、そしてDNAイニシエーターに共有結合したフルオロフォアによって定量化した。8ntバンドの蛍光強度を測定し、そして総レーン強度で割ることによって、全長(8nt種)の率を決定した。全長の率に関するような野生型ウシおよびスポッテッドガーTdT活性を、y=0で、点線で示し、これは、これらのTdTがいかなる8nt産物も合成不可能であることを示す。TdT変異体に含まれるすべての突然変異は、野生型ウシおよびスポッテッドガーTdTに比較して、TdTの改善を生じた。結果を図3(下部パネル)に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2022519680000001.app
【国際調査報告】