(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】水酸化リチウムの回収
(51)【国際特許分類】
C01D 15/02 20060101AFI20220316BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20220316BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20220316BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C01D15/02
C22B26/12
C22B3/44 101A
C22B3/44 101Z
C22B3/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545986
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 AU2020050090
(87)【国際公開番号】W WO2020160615
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521345925
【氏名又は名称】ブライト ミンツ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRIGHT MINZ PTY LTD
【住所又は居所原語表記】23 Belmont Avenue,Belmont,Western Australia 6104,Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルバーニ,マーク ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バインズ,ニコラス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ガリー ドナルド
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA34
4K001BA19
4K001DB22
4K001DB23
(57)【要約】
【解決手段】
硫酸リチウム含有溶液から水酸化リチウムを回収するための方法であって、当該方法は、以下の方法ステップ:一次エトリンガイト沈殿ステップ(100)において、硫酸リチウム含有溶液からエトリンガイトを沈殿させ;引き続き、水酸化リチウムを含有する液(7、11)を回収し;水酸化リチウム液(7、11)から水酸化リチウム一水和物生成物(22)を生成するを特徴とする、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸リチウム含有溶液から水酸化リチウムを回収するのための方法であって、
当該方法は、以下の方法ステップ:
一次エトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫酸リチウム含有溶液からエトリンガイトを沈殿させ;
引き続き、水酸化リチウムを含有する液を回収し;かつ、
前記の水酸化リチウム液から水酸化リチウム一水和物生成物を生成する
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記硫酸リチウム含有溶液中の硫酸リチウムを、石灰と、水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物との添加によって、水酸化リチウムに変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物を、精製ギブサイトまたはボーキサイト鉱石の形態で供給する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エトリンガイトの沈殿から生じるスラリーを、固液分離ステップおよび洗浄に供して、リチウムを前記液または溶液へと回収する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エトリンガイトおよびいくらかのリチウムを含有する前記固液分離ステップの残渣を、前記硫酸リチウム含有溶液の生成に利用するための先行ステップにおいて中和剤として使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固液分離および洗浄からの前記液または溶液が、水酸化リチウムおよびいくらかの微量不純物を含有する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記微量不純物が、カルシウムおよびアルミニウムを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微量不純物を沈殿によって最終的に除去して、精製溶液を得る、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
固液分離および洗浄からの前記溶液を、二次エトリンガイト沈殿ステップに送る、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記二次エトリンガイト沈殿ステップが、石灰と、水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物との添加を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物を、精製ギブサイトまたはボーキサイト鉱石の形態で供給する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記二次エトリンガイト沈殿ステップの生成物を、固液分離ステップに送って、水酸化リチウムを含有する液を得る、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
固液分離からの前記固体または残渣を、前記一次エトリンガイト沈殿ステップへ向けて再利用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水酸化リチウムを含有する液を晶出ステップに供して、粗水酸化リチウム一水和物を回収する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記晶出ステップにおいて生成したスラリーを固液分離に供して、そこからの固体を不純物沈殿ステップに送る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
固液分離からのろ液を前記一次エトリンガイト沈殿ステップへ向けて再利用する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記不純物沈殿ステップが、前記粗水酸化リチウム一水和物の水中への第1の再溶解であって、引き続く不純物の沈殿に先立つ第1の再溶解を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
不純物の沈殿を、石灰および水酸化バリウムの添加によって成し遂げる、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記の沈殿させる不純物が、カルシウム、アルミニウム、硫黄、および炭素の1つまたは複数を含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記不純物沈殿ステップの生成物を、不純物残渣および水酸化リチウム一水和物を含有する液を得る固液分離ステップに送る、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記水酸化リチウムを含有する液を晶出ステップに送って、水酸化リチウム一水和物を晶出させ、水酸化リチウム一水和物を、次いで、好ましくは洗浄をさらに含む固液分離ステップに送る、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記固液分離ステップから、ろ液を前記一次エトリンガイト沈殿段階へ向けて再利用して、前記晶出した水酸化リチウム一水和物を乾燥させてひとまとめにして、最終水酸化リチウム一水和物生成物を得る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記のエトリンガイト沈殿ステップを、周囲温度~約100℃の温度範囲内でかつ大気圧で操作する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記のエトリンガイト沈殿ステップを、50℃超でかつ大気圧で操作する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記のエトリンガイト沈殿ステップを、化学量論的レベル以上の試薬添加で行う、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記の又は各々のエトリンガイト沈殿ステップが、
a.最大約6時間、
b.約15分から6時間の間、または、
c.約1時間から2時間の間
の保持時間を有する、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のエトリンガイト沈殿ステップで、硫黄沈殿反応進行度が約60%を超え、かつ、前記第2のエトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫黄沈殿進行度が約70%を超える、請求項9~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
得られる水酸化リチウム一水和物生成物が電池グレードのものである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
硫酸リチウム含有溶液から水酸化リチウムを回収するのための方法であって、
当該方法は、以下の方法ステップ:
(i)石灰と水酸化アルミニウムとの添加を介して硫酸リチウムを含有する溶液からエトリンガイトを一次沈殿させること;
(ii)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく前記沈殿させたエトリンガイトを固液分離し洗浄すること;
(iii)反応進行度を高めるべく、石灰と水酸化アルミニウムとの添加を介して、ステップ(ii)から回収された液からエトリンガイトを二次沈殿させること;
(iv)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく固液分離し、かつ、その固体をステップ(i)へ向けて再利用すること;
(v)エバポレーションを介して、ステップ(iv)の液からの粗水酸化リチウム一水和物を晶出させ、引き続き固液分離すること;
(vi)粗水酸化リチウムを水中へと再溶解させ、かつ、石灰と水酸化バリウムとを用いて、カルシウム、アルミニウム硫黄、および炭素などの不純物を沈殿させること;
(vii)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく固液分離すること;
(viii)エバポレーションを介して前記液から水酸化リチウム一水和物を晶出させ、引き続き固液分離、洗浄乾燥、およびひとまとめすること;並びに
(ix)前記固液分離ステップ(ii)およびステップ(viii)からのろ液または液を前記エトリンガイト沈殿段階、ステップ(i)に向けて再利用すること
を特徴とする、方法。
【請求項30】
前記液からの前記沈殿させたエトリンガイトの分離を、ろ過またはデカンテーションによって成し遂げ、かつ、生じたろ液が、前記硫酸リチウム中に含有されていたリチウムを60%超で水酸化リチウムとして含有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記液からの前記晶出した水酸化リチウム一水和物の分離をろ過またはデカンテーションによって成し遂げ、この際、生じたろ液をエトリンガイト沈殿に向けて再利用する、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記晶出した水酸化リチウム一水和物を洗浄することにより、同伴不純物が実質的に除去される、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記のエトリンガイト沈殿ステップを、周囲温度~約100℃の温度範囲内でかつ大気圧で操作する、請求項29~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記のエトリンガイト沈殿ステップを、50℃超でかつ大気圧で操作する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記のエトリンガイト沈殿ステップを、化学量論的レベル以上の試薬添加で行う、請求項29~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記の又は各々のエトリンガイト沈殿ステップが、
a.最大約6時間、
b.約15分から6時間の間、または、
c.約1時間から2時間の間
の保持時間を有する、
請求項29~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のエトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫黄沈殿反応進行度が約60%を超え、かつ、前記第2のエトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫黄沈殿進行度が約70%を超える、請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記沈殿ステップで除去された微量不純物が、カルシウムおよびアルミニウムの一方または両方を含む、請求項29~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
本発明の方法を使用して得られる水酸化リチウム一水和物生成物が電池グレードのものである、請求項29~38のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸リチウムを含有する溶液からの水酸化リチウムの回収の方法に関する。より具体的には、本発明の方法は、苛性化試薬としての水酸化ナトリウムを必要とせずに、水酸化リチウムの回収を可能にすることを意図している。
【背景技術】
【0002】
商業的に採掘されるリチウムの主な源は、歴史的には、ブライン溶液や、硬岩リシア輝石を含有している鉱石であった。硬岩鉱石からリチウムを回収する方法に関して、従来のアプローチは、高温(>800℃)か焼(decrepitation)によってアルファリシア輝石をベータリシア輝石に変換することである。斯かる変換により、最も一般的には硫酸を使用した化学的攻撃およびその後のリチウムの抽出が可能となる。
【0003】
一連の不純物除去段階の後、可溶性硫酸リチウムとして溶液中に存在するリチウムは、続いて苛性化試薬としての水酸化ナトリウムの添加によって水酸化リチウムとして回収される。水酸化ナトリウムの添加により、リチウムイオン、ナトリウムイオン、硫酸イオンおよび水酸化物イオンを含有する溶液が生成される。
【0004】
硫酸ナトリウムは、二重晶出法によって溶液から回収される。水酸化リチウムからの硫酸ナトリウムの分離は、低温での含水硫酸ナトリウムのより低い溶解度によってもたらされる。この方法には、硫酸ナトリウムの回収が必要であり、これは、第1に、当該方法中のナトリウムの出口を提供するため、また、第2に、溶液中に水酸化リチウムとして残存するリチウムの回収を可能にするために必要である。
【0005】
第1段階は、一般にグラウバー塩と呼ばれる含水硫酸ナトリウムの晶出、および溶液の急速冷却を伴う。硫酸ナトリウムの許容可能な回収を得るためには、溶液を一般に10℃未満に冷却しなければならない。生じたスラリーは、溶液中のリチウムの回収を可能にするために、固液分離および洗浄に供される。第2段階は、高温でのグラウバー塩の融解および無水硫酸ナトリウムの晶出を伴う。生じたスラリーを固液分離に供し、残渣を乾燥させてひとまとめにする(packaged)。
【0006】
水酸化リチウムおよびいくらかの硫酸ナトリウムを含有するグラウバー塩の晶出後の溶液を加熱し、蒸発晶出に供して、粗水酸化リチウム一水和物生成物を生成する。この生成物は、硫酸ナトリウムで汚染されており、さらなる精製を必要とする。
【0007】
粗水酸化リチウム一水和物を水に溶解し、再晶出させる。生じたスラリーを固液分離に供し、残渣を乾燥させてひとまとめにする。硫酸ナトリウムを含有する溶液は、上流で再利用される。
【0008】
この方法を用いた水酸化リチウムの回収は、操作コストと資本コストの両方を要する。より懸念されるのは、リチウム化学物質の需要が増加するにつれて硫酸ナトリウムが過剰供給される可能性である。非常に水溶性である硫酸ナトリウムを貯蔵することができないことは、水酸化リチウムのための苛性化試薬としての水酸化ナトリウムの使用を阻害し得る。
【0009】
硫酸カルシウムで飽和した廃液からの、エトリンガイトの沈殿を介した硫酸塩のいくらかの除去は、以前に実証されている。Hydrometrics社由来の良コスト効率硫酸塩除去法(CESR法)では、水和硫酸カルシウムアルミニウム化合物である特殊かつ独自の粉末セメント(試薬)、および約11.3のpHの石灰がエトリンガイト沈殿のために使用される(Reinsel,M.A.,A New Process for Sulfate Removal from Industrial Waters,In:Mining and Reclamation for the Next Millenium.Proceedings of the 16th Annual National Meeting of the American Society for Surface Mining and Reclamation,Scottsdale,AZ(US),by Bengson,SA and Bland,DMを参照されたい)。この方法は、硫酸カルシウムの溶解度よりも著しく低い硫酸塩濃度を達成することができる。
【0010】
SAVMIN(登録商標)法は、酸性鉱山排水を処置するためにMintekによって開発された。エトリンガイトは、CESR法におけるように、方法全体のいくつかの段階のうちの1つで沈殿し、水酸化アルミニウムの再利用を介して得られる。この方法により、硫酸塩レベルを200mg/L未満に低下させることができる。
【0011】
CESR法およびSAVMIN(登録商標)法の両方は、可溶性硫酸塩濃度を低レベルに低下させる目的で、硫酸カルシウムで飽和した溶液を処置するために開発されたことが知られている。いずれの方法も、高一価硫酸塩濃度を含有する溶液を処理するために開発されたのではなく、かつ、それら方法は、一価水酸化物塩の生成のために開発されたものでもない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の回収方法は、その1つの目的として、先行技術に関連する問題を実質的に克服するか、または少なくともそれに対する有用な代替法を提供しなければならない。
【0013】
背景技術の前述の考察は、本発明の理解を容易にすることのみを意図している。考察は、言及された材料のいずれも、本出願の優先日におけるオーストラリアまたは他の国もしくは地域における共通の一般知識の一部であったことの認定または承認ではないことを理解されたい。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された完全態様(integer)または完全態様の群を包含するが、任意の他の完全態様または完全態様の群を除外しないことを暗示すると理解されることになる。
【0015】
発明の開示
本発明によれば、硫酸リチウム含有溶液から水酸化リチウムを回収するための方法であって、当該方法は、以下の方法ステップ:
一次エトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫酸リチウム含有溶液からエトリンガイトを沈殿させ;
引き続き、水酸化リチウムを含有する液を回収し;かつ
水酸化リチウム液から水酸化リチウム一水和物生成物を生成する
を特徴とする、方法が提供される。
【0016】
好ましくは、硫酸リチウム含有溶液中の硫酸リチウムを、石灰と、水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物との添加によって、水酸化リチウムに変換する。
【0017】
水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物を、精製ギブサイト、ボーキサイト鉱石などの形態で供給してもよい。
【0018】
エトリンガイトの沈殿の化学は、以下の通りであると理解される。
3Li2SO4(aq)+2Al(OH)3(s)+6Ca(OH)2(s)+26H2O→Ca6Al2(SO4)3(OH)12.26H2O(s)+6LiOH(aq)
【0019】
好ましくは、エトリンガイトの沈殿から生じるスラリーを、固液分離ステップおよび洗浄に供して、リチウムを液または溶液へと回収する。エトリンガイトおよびいくらかのリチウムを含有する残渣を、硫酸リチウム含有溶液の生成に利用するための先行ステップにおいて中和剤として使用してもよい。
【0020】
好ましくは、固液分離および洗浄からの溶液は、水酸化リチウムおよびいくらかの微量不純物を含有する。さらに好ましくは、微量不純物は、カルシウムおよびアルミニウムを含み得る。微量不純物を、沈殿によって最終的に除去して、精製溶液を得てもよい。
【0021】
さらに好ましくは、固液分離および洗浄からの溶液を、二次エトリンガイト沈殿ステップに送る。二次エトリンガイト沈殿ステップは、好ましくは、石灰と、水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物との添加を含む。水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物を、好ましくはまた、精製ギブサイト、ボーキサイト鉱石などの形態で供給してもよい。
【0022】
二次エトリンガイト沈殿ステップの生成物を、好ましくは、固液分離ステップに送って、水酸化リチウムを含有する液を得る。固液分離からの固体または残渣を、好ましくは、一次エトリンガイト沈殿ステップへ向けて再利用する。
【0023】
水酸化リチウムを含有する液を、好ましくは、晶出ステップに供して、粗水酸化リチウム一水和物を回収する。生じたスラリーを、固液分離に供して、そこからの固体を、不純物沈殿ステップに送る。固液分離からのろ液を、一次エトリンガイト沈殿ステップへ向けて再利用する。
【0024】
不純物沈殿ステップは、粗水酸化リチウム一水和物の水中への第1の再溶解であって、引き続き不純物の沈殿に先立つ第1の再溶解を含む。不純物の沈殿を、好ましくは、石灰および水酸化バリウムの添加によって成し遂げる。沈殿させる不純物は、好ましくは、カルシウム、アルミニウム、硫黄、および炭素の1つまたは複数を含む。
【0025】
不純物沈殿ステップの生成物を、好ましくは、不純物残渣および水酸化リチウム一水和物を含有する液を得る固液分離ステップに送る。水酸化リチウムを含有する液を、好ましくは、晶出ステップに送られて、水酸化リチウム一水和物を晶出させ、水酸化リチウム一水和物を、次いで、好ましくは洗浄をさらに含む固液分離ステップに送る。この固液分離ステップから、ろ液を、好ましくは、第1のエトリンガイト沈殿段階へ向けて再利用して、晶出した水酸化リチウム一水和物を、好ましくは、乾燥させてひとまとめにして、最終水酸化リチウム一水和物生成物を得る。
【0026】
本発明によれば、硫酸リチウム含有溶液から水酸化リチウムを回収するための方法であって、当該方法は、以下の方法ステップ:
(i)石灰と水酸化アルミニウムとの添加を介して硫酸リチウムを含有する溶液からのエトリンガイトを一次沈殿させること;
(ii)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく沈殿させたエトリンガイトを固液分離し洗浄すること;
(iii)反応進行度を高めるべく、石灰と水酸化アルミニウムとの添加を介して、ステップ(ii)から回収された液からエトリンガイトを二次沈殿させること;
(iv)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく固液分離し、かつ、その固体をステップ(i)へ向けて再利用すること;
(v)エバポレーションを介してステップ(iv)の液からの粗水酸化リチウム一水和物を晶出させ、引き続き固液分離すること;
(vi)粗水酸化リチウムを水中へと再溶解させ、かつ、石灰と水酸化バリウムとを用いて、カルシウム、アルミニウム硫黄、および炭素などの不純物を沈殿させること;
(vii)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく固液分離すること;
(viii)エバポレーションを介して液から水酸化リチウム一水和物を晶出させ、引き続き固液分離、洗浄乾燥、およびひとまとめすること;並びに
(ix)固液分離ステップ(ii)およびステップ(viii)からのろ液または液をエトリンガイト沈殿段階、ステップ(i)へ向けて再利用すること
を特徴とする、方法がさらに提供される。
【0027】
液からの沈殿させたエトリンガイトの分離を、好ましくは、ろ過またはデカンテーションによって成し遂げ、かつ、生じたろ液は、好ましくは、硫酸リチウム中に含有していたリチウムの大部分を水酸化リチウムとして含有する。本発明の一形態では、斯かる大部分とは、硫酸リチウム中に含有していたリチウムの約60%超を水酸化リチウムとして含有すると理解される。
【0028】
液からの晶出した水酸化リチウム一水和物の分離を、ろ過またはデカンテーションによって成し遂げ、この際、生じたろ液をエトリンガイト沈殿に向けて再利用する。晶出した水酸化リチウム一水和物を洗浄することにより、同伴不純物は実質的に除去される。
【0029】
好ましくは、前記のエトリンガイト沈殿ステップ(steps)を、周囲温度~約100℃の温度範囲内でかつ大気圧で操作する。
【0030】
さらに好ましくは、前記のエトリンガイト沈殿ステップ(steps)を、50℃超でかつ大気圧で操作する。
【0031】
好ましくは、前記のエトリンガイト沈殿ステップ(steps)を、化学量論的レベル以上の試薬添加で行う。
【0032】
前記の又は各々のエトリンガイト沈殿ステップは、
(i)最大約6時間、
(ii)約15分から6時間の間、または、
(iii)約1時間から2時間の間
の保持時間を有する。
【0033】
好ましくは、第1のエトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫黄沈殿反応進行度が約60%を超え、かつ、第2のエトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫黄沈殿進行度が約70%を超える。
【0034】
沈殿ステップで除去された微量不純物は、好ましくは、カルシウムおよびアルミニウムの一方または両方を含む。
【0035】
さらに好ましくは、本発明の方法を使用して得られる水酸化リチウム一水和物生成物は、電池グレードのものである。
【0036】
ここで、本発明の方法を、その一実施形態および添付の図面を参照して、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明による硫酸リチウム含有溶液からの水酸化リチウムの回収の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、硫酸リチウム含有溶液から水酸化リチウムを回収するための方法であって、当該方法は、以下の方法ステップ:
硫酸リチウム含有溶液からエトリンガイトを沈殿させること;
引き続き、水酸化リチウムを含有する液を回収すること;
水酸化リチウム液から水酸化リチウム一水和物生成物を生成すること
を特徴とする、方法を提供する。
【0039】
硫酸リチウム含有溶液中の硫酸リチウムを、石灰と、水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物との添加によって、水酸化リチウムに変換する。水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物を、精製ギブサイト、ボーキサイト鉱石などの形態で供給してもよい。
【0040】
エトリンガイトの沈殿の化学は、以下の通りであると理解される。
3Li2SO4(aq)+2Al(OH)3(s)+6Ca(OH)2(s)+26H2O→Ca6Al2(SO4)3(OH)12.26H2O(s)+6LiOH(aq)
【0041】
エトリンガイトの沈殿から生じるスラリーを、固液分離ステップおよび洗浄に供して、リチウムを液または溶液へと回収する。エトリンガイトおよびいくらかのリチウムを含有する残渣を、硫酸リチウム含有溶液の生成に利用するための先行ステップにおいて中和剤として使用してもよい。
【0042】
固液分離および洗浄からの溶液は、水酸化リチウムおよびいくらかの微量不純物を含有する。微量不純物は、カルシウムおよびアルミニウムを含み得る。微量不純物を、沈殿によって最終的に除去して、精製溶液を得てもよい。
【0043】
固液分離および洗浄からの溶液を、二次エトリンガイト沈殿ステップに送る。二次エトリンガイト沈殿ステップは、石灰と水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物との添加を含む。水酸化アルミニウム含有試薬または鉱物を、また、精製ギブサイト、ボーキサイト鉱石などの形態で供給してもよい。
【0044】
二次エトリンガイト沈殿ステップの生成物を、固液分離ステップに送って、水酸化リチウムを含有する液を得る。固液分離からの固体または残渣を、第1のエトリンガイト沈殿ステップへ向けて再利用する。
【0045】
水酸化リチウムを含有する液を、晶出ステップに供して、粗水酸化リチウム一水和物を回収する。生じたスラリーを、固液分離に供して、そこからの固体を、不純物沈殿ステップに送る。固液分離からのろ液を、一次エトリンガイト沈殿ステップへ向けて再利用する。
【0046】
不純物沈殿ステップは、粗水酸化リチウム一水和物の水中への第1の再溶解であって、引き続く不純物の沈殿に先立つ第1の再溶解を含む。不純物の沈殿を、石灰および水酸化バリウムの添加によって成し遂げる。沈殿させる不純物は、カルシウム、アルミニウム、硫黄、および炭素の1つまたは複数を含む。
【0047】
不純物沈殿ステップの生成物を、不純物残渣および水酸化リチウム一水和物を含有する液を得る固液分離ステップに送る。水酸化リチウムを含有する液を、晶出ステップに送って、水酸化リチウム一水和物を晶出させ、水酸化リチウム一水和物を、次いで、好ましくは洗浄をさらに含む固液分離ステップに送る。この固液分離ステップから、ろ液を一次エトリンガイト沈殿段階へ向けて再利用して、晶出した水酸化リチウム一水和物を乾燥させてひとまとめにして、最終水酸化リチウム一水和物生成物を得る。
【0048】
本発明の方法は、以下の非限定的な例を参照してよりよく理解され得る。
【実施例】
【0049】
本発明の方法の一実施例では、硫酸リチウム含有溶液からの水酸化リチウムの回収のための方法であって、当該方法は、以下の方法ステップ:
(i)石灰と水酸化アルミニウムとの添加を介して硫酸リチウムを含有する溶液からエトリンガイトを一次沈殿させること;
(ii)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく、沈殿させたエトリンガイトを固液分離し洗浄すること;
(iii)反応進行度を高めるべく、石灰と水酸化アルミニウムとの添加を介して、ステップ(ii)から回収された液からエトリンガイトを二次沈殿させること; (iv)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく固液分離し、かつ、その固体をステップ(i)へ向けて再利用すること;
(v)エバポレーションを介して、ステップ(iv)の液から粗水酸化リチウム一水和物を晶出させ、引き続き固液分離すること;
(vi)粗水酸化リチウムを水中へと再溶解させ、かつ、石灰と水酸化バリウムとを用いて、カルシウム、アルミニウム硫黄、および炭素などの不純物を沈殿させること;
(vii)水酸化リチウムを含有する液を回収すべく固液分離すること;
(viii)エバポレーションを介して、液から水酸化リチウム一水和物を晶出させ、引き続き固液分離、洗浄乾燥、およびひとまとめすること;並びに
(ix)固液分離ステップ(ii)およびステップ(viii)からのろ液または液をエトリンガイト沈殿ステップ(i)に向けて再利用すること
を特徴とする、方法が提供される。
【0050】
液からの沈殿させたエトリンガイトの分離を、ろ過またはデカンテーションによって成し遂げ、かつ、生じたろ液は、硫酸リチウム中に含有していたリチウムの大部分、例えば約60%超を水酸化リチウムとして含有する。
【0051】
液からの晶出された水酸化リチウム一水和物の分離を、ろ過またはデカンテーションによって成し遂げ、この際、生じたろ液をエトリンガイト沈殿に向けて再利用する。晶出した水酸化リチウム一水和物を洗浄することにより、同伴不純物が実質的に除去される。
【0052】
前記のエトリンガイト沈殿ステップ(steps)を、周囲温度~約100℃の温度範囲内、例えば50℃超で、かつ大気圧で操作する。
【0053】
第1のエトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫黄沈殿反応進行度が約60%を超え、かつ、第2のエトリンガイト沈殿ステップにおいて、硫黄沈殿進行度が約70%を超える。
【0054】
前記のエトリンガイト沈殿ステップ(steps)を、化学量論的レベル以上の試薬添加で行う。
【0055】
前記の又は各々のエトリンガイト沈殿ステップは、
(i)最大約6時間、
(ii)約15分から6時間の間、または、
(iii)約1時間から2時間の間
の保持時間を有する。
【0056】
硫酸リチウム溶液は、
図1に示すように本発明に従って処理される。
【0057】
図1には、本発明によるフローチャートが示されており、図示の実施形態は、特に、水酸化リチウム一水和物22としてリチウムを回収するための硫酸リチウム含有液の処理を意図している。
【0058】
硫酸リチウム含有溶液1、石灰スラリー2および水酸化アルミニウムスラリー3を、約50~100℃および大気圧で動作する一次エトリンガイト沈殿ステップ100に導き、エトリンガイトを沈殿させる。一次エトリンガイト沈殿ステップ100は、約2時間の保持時間にわたって進行し、硫酸塩沈殿の約60%を超える沈殿進行度を達成する。
【0059】
生じたエトリンガイトスラリー4を、例えば、プレートおよびフレーム圧力フィルタを使用して行うろ過ステップ110に導き、これによりスラリー4をろ過することができる。固体、例えば、圧力フィルタからのろ過ケークを、水5で洗浄して、ろ過ケークに同伴するリチウムをろ液7に回収する。
【0060】
圧力フィルタからのエトリンガイト残渣6を、テーリングに送るか、またはアルカリ性特性を利用するために上流で、例えば、硫酸リチウム溶液の生成に先行し得るステップで遊離酸を中和するために、再利用することができる。そうすることで、エトリンガイトろ過ケークに同伴するリチウムを、本発明の方法の残りの部分を介して回収することができる。
【0061】
水酸化リチウム含有ろ液7、石灰スラリー8、および水酸化アルミニウムスラリー9を、二次エトリンガイト沈殿ステップ120に導いて、硫酸塩沈殿進行度を約70%超まで高める。二次エトリンガイト沈殿ステップ120は、一次エトリンガイト沈殿ステップ100と同じ条件で動作する。生じたエトリンガイトスラリーを、例えば、増粘剤を使用して行われる固液分離ステップ130に導き、これにより、増粘剤アンダーフローとして増粘スラリー10が生じる。増粘スラリーを、一次沈殿ステップ100に導く。
【0062】
固液分離ステップ130からの増粘剤オーバーフロー11は、水酸化リチウムおよびごく少量の不純物を含有する。本方法でのこの時点で残っている不純物は、典型的には、約6gplのS、約20ppmのCa、約100ppmのAl、ならびに約2gpl未満のNaおよびKを含む。増粘剤オーバーフロー11を、水酸化リチウム晶析装置140に導く。この段階では、水を蒸発させて液を濃縮し、粗水酸化リチウム一水和物を晶出させる。
【0063】
晶析装置140からのリチウムスラリー12を、例えば、遠心分離機を使用して行うろ過ステップ150に導く。生じた遠心分離機ケーキ15を、水13で洗浄して不純物を除去する。
【0064】
ろ過ステップ150からのろ液11は、溶液中に水酸化リチウムおよび硫酸塩を含有する。この液を、一次エトリンガイト沈殿ステップ100に導く。これにより、水酸化リチウム一水和物生成物22へのリチウムの高い回収が可能になる。
【0065】
この時点で約3000ppmのS、CaおよびAl、ならびに低レベルの炭素を含有する「粗」水酸化リチウム一水和物ケーキ15を遠心分離機から取り外し、不純物沈殿段階160に導く。ケーキ15を水16中で再パルプ化し、試薬石灰17および水酸化バリウム18を使用して、溶解した水酸化リチウムから不純物を沈殿させる。
【0066】
生じた不純物沈殿スラリーを、スラリーのろ過を可能にする固液分離ステップ170、例えばフィルタに導く。ろ液20を、水酸化リチウム晶析装置180に導く。この段階では、水を蒸発させて液を濃縮し、水酸化リチウム一水和物を晶出させる。
【0067】
晶析装置180からのリチウムスラリーを、例えば、遠心分離機を使用して行うろ過ステップ190に導く。ろ過ステップ190からの遠心分離機ケーキを、水で洗浄して不純物を除去する。ろ過ステップ190からのろ液21を、一次エトリンガイト沈殿ステップ100に戻す。
【0068】
水酸化リチウム一水和物を含有するろ過ステップ190からのケーキを、遠心分離機から取り出し、乾燥およびひとまとめのプラント200に導き、それによって最終水酸化リチウム一水和物生成物22を得る。
【0069】
本発明の方法の1つの形態は、単一のエトリンガイト沈殿段階のみを使用して操作され得ることが想定されるが、硫酸塩沈殿レベルは、任意のそのような決定によって影響を受けることが理解されるであろう。
【0070】
本発明の方法は、電池グレードの水酸化リチウム一水和物生成物を提供することがさらに想定される。「電池グレード」という用語は、約99%以上の純度を有する生成物を指す。
【0071】
当業者に明らかであるような修正および変形は、本発明の範囲内にあると考えられる。
【国際調査報告】