(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】係留型弁尖デバイスおよび経カテーテルの弁修復のための方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546003
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020016878
(87)【国際公開番号】W WO2020163527
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521348100
【氏名又は名称】オーサス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ORSUS,LLC
【住所又は居所原語表記】14405 21st Avenue North,Suite 120,Plymouth,Minnesota 55447(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ソラッジャ,ポール
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD01
4C097DD04
4C097DD09
4C097DD10
4C097DD12
4C097DD15
4C097EE06
4C097SB02
4C097SB07
4C097SB09
(57)【要約】
ヒトの心臓の心臓弁のための弁尖修復デバイスは、癒合縁を有する植込み型弁尖;癒合縁の近くに一端で接続された修復索;ヒトの心臓の天然の構造に修復索を係留するための索係留具;およびヒトの心臓の天然の構造に弁尖を係留するための少なくとも1つの弁輪係留具を含む。少なくとも1つの実施形態では、弁尖修復デバイスは、嵌合する弁尖と適正な癒合を創出しない、罹病したまたは脱出したまたはその他劣悪な弁尖と重なり合うことがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癒合縁と弁輪縁とを有する植込み型弁尖;
心臓の天然の構造に前記癒合縁を接続するための索であって、近位端と遠位端とを有する索;
心臓の前記天然の構造に前記索の前記遠位端を取り付けるための、前記索に関連する固定機構;
前記心臓弁の弁輪に前記植込み型弁尖の前記弁輪縁を固定するための少なくとも1つの弁輪取付けデバイス
を含む心臓弁修復システム。
【請求項2】
前記心臓の前記天然の構造に前記植込み型弁尖の前記癒合縁を接続するための複数の索をさらに含む、請求項1に記載の心臓弁修復システム。
【請求項3】
前記植込み型弁尖は組織材料を含む、請求項1に記載の心臓弁修復システム。
【請求項4】
前記組織材料は耐石灰化性植込み型生体材料を含む、請求項3に記載の心臓弁修復システム。
【請求項5】
前記組織材料は哺乳類組織を含む、請求項3に記載の心臓弁修復システム。
【請求項6】
前記組織材料は合成材料を含む、請求項3に記載の心臓弁修復システム。
【請求項7】
前記植込み型弁尖に前記索の近位端を取り付けるための固定機構をさらに含む、請求項1に記載の心臓弁修復システム。
【請求項8】
弁輪縁と癒合縁とを有する置換弁尖を取得すること;
機能不全の心臓弁に前記置換弁尖を送出すること;
前記機能不全の心臓弁の弁輪に前記置換弁尖の前記弁輪縁を取り付けること;
前記心臓の天然の構造に前記置換弁尖の前記癒合縁を接続すること
を含む、心臓で弁を修復するための方法。
【請求項9】
前記置換弁尖を送出することは、前記置換弁尖を翼廊的に送出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
弁を修復することは、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、および肺動脈弁からなる心臓弁群のうち1つを修復することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記心臓の天然の構造に前記置換弁の前記癒合縁を接続することは、前記癒合縁と前記心臓の前記天然の構造との間に索を固定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記弁の弁輪に前記置換弁尖の弁輪縁を取り付けることは、前記弁の弁輪に前記弁輪縁を係留することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記弁の天然の弁尖が定位置に留まることが可能になる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記置換弁尖を送出する前に前記弁の天然の弁尖を切除する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記機能不全の心臓弁に前記置換弁尖を送出した後に、複数の索を前記心臓弁に関連する組織に配置して係留する、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記機能不全の心臓弁の前記弁輪において、前記複数の索に沿って固定場所に向かって、前記置換弁尖を推し進める、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記弁の前記弁輪に前記置換弁尖の弁輪縁を係留し、前記複数の索のうち少なくともいくつかを切断する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記置換弁尖の前記癒合縁と前記心臓弁に関連する前記組織との間の張力について、前記複数の索の係留索を評価する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
標的の張力を確立している際に前記係留索を切断する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
複数の係留索を張力について評価する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
可操縦ガイドカテーテル;
送出カテーテル;
前記可操縦ガイドカテーテルを通じた前記送出カテーテル内での送出のために構成された置換弁尖;
前記機能不全の弁に関連する組織内に前記弁尖を固定するための複数の索;
前記複数の索に関連する複数の係留機構;
前記索を配置するための、および前記置換弁尖を配置するための押出器
を含む、心臓の機能不全弁を処置するためのキット。
【請求項22】
前記索を切断するためのカッターをさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記機能不全弁に関連する天然の組織に少なくとも1つの索を接続するのに用いるスペーサをさらに含む、請求項21に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、ここに参照によりその全体を本明細書に組み込まれる「経カテーテルの弁修復のための係留型弁尖デバイス」と題された2019年2月6日出願の米国仮特許出願第62/918,561号への優先権を請求するものである。
【0002】
本発明は、経カテーテル送出型の弁修復に関し、具体的には経カテーテル送出型の弁逆流の修復に関する
【背景技術】
【0003】
コスト、患者の準備時間、手術時間、患者の回復時間、および開心術の侵襲性から、経カテーテル送出型デバイスおよび他の最小侵襲性デバイスは、心臓弁の修復または置換を要する心臓状態の治療に代替のアプローチをもたらす。そのような心臓状態の1つは心臓弁逆流であって、その非限定的な例は僧帽弁逆流であり、これは一般にMRともよばれるが僧帽弁逆流、僧帽弁不全、または僧帽弁不能ともよばれる。
【0004】
僧帽弁逆流(mitral valve regurgitation:MR)とは、患者の僧帽弁が十分に閉じることができず、それゆえに血液を左心房内に異常に逆流させてしまうという心臓状態である。この状態は、未治療で放置されれば、しばしば心不全に至る。
【0005】
僧帽弁は、典型的には2つの弁尖、すなわち後尖および前尖を有する。各弁尖は、左心房と左心室との間で僧帽弁輪に接続されている。弁が開いた位置にあると、後尖と前尖は分かれて僧帽状の開口を作り出し、この開口は血液が左心房から左心室内に流出することを可能にする。健康な僧帽弁では、弁が閉じた位置にあると、後尖の癒合面が前尖の癒合面に境を接して僧帽状の開口を閉じる。しかし、罹患または老化した僧帽弁では、1つまたは複数の弁尖が構造的な欠陥を有することがあり、そのような欠陥は、弁尖の癒合面が他の弁尖の癒合面と十分に境を接して僧帽状の開口を閉じることの妨げとなる。その結果、2つの弁尖の間に隙間が作り出され、この隙間は血液を左心房内に異常に逆流させてしまう。これが僧帽弁逆流である。
【0006】
三尖弁逆流(tricuspid regurgitation:TR)は、MRに類似した状態であるが、三尖弁に見出される。TRとは、三尖弁の弁尖が十分に閉じず、右心房内および周囲の静脈構造(例えば下大静脈またはIVC)内に引き返す血液の異常な流れ(すなわち逆流)へと至る状態である。MRのように、この状態もまた、心不全および生存不良に至る。さらに具体的には、TRは、三尖弁尖(すなわち前尖、後尖、および中隔尖)のうち2つまたは3つの間で不適切に弁尖が並置されることによって起こる。TRの大部分の症例では、癒合の欠陥は前尖と中隔尖との間にあり、後尖と中隔尖との間の逆流も高頻度にある。
【0007】
MRとTRの両方について、従前の経カテーテル修復デバイスは、輪状形成、弁尖の並置、腱索の留置、クリップデバイス、または拡張フレーム内に配置される機能的な置換弁を含んでいた。クリップデバイスまたは弁尖並置療法は、適正に癒合していない弁尖間の距離を埋めることによって、弁尖間の隙間を閉じようとするものである。クリップデバイスまたは弁尖並置療法は、拡張期の間と収縮期の間の両方で永続的に弁尖同士を貼着するものである;そして、これらのアプローチの限界としては、僧帽弁狭窄の可能性があること、ならびに天然の弁尖を切断することなく僧帽弁を置き換えできない可能性があることが挙げられる。輪状形成用の帯または環は、ほぼ全ての外科的修復に用いられる一方で、大部分の患者ではMRでの治療のためのスタンドアロンのデバイスとしては有効ではない。機能的な置換弁は、完全にMRを緩和するが、人工器官に通例付随するリスク、例えば血栓症、感染、および変性、ならびに外科的な留置の必要性などをもたらす。変性疾患を治療するために人工腱索の使用を採用することができ、その場合、腱索が弁尖の高さを低減し癒合を回復させるが、そのような腱索は、機能性逆流、リウマチ性疾患、または弁尖の移動性の制限された他の病理学的状態では用いることができない。
【0008】
十分に機能的な置換弁は、弁を置き換えるデバイスを配置することによって、この癒合の問題を迂回する。しかし、これらの置換弁が十分でないか、またはさらに別の疾患または石灰化が弁に存在する場合およびその際には、患者は、新しい弁を今ある置換弁内に挿入するか、または置換弁を完全に除去して新しい弁を挿入しなければならないかのどちらかとなる。さらに、数多くの患者にとって、この問題を正すための開胸手術は、唯一の選択肢として実行可能な残された経カテーテル修復法ではない。
【0009】
したがって、弁逆流に対処する従前の療法の難点を改善し克服することが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
前述の観点から、本発明の目的は、従前の療法の不都合を改善し対処する、弁逆流の経カテーテル送出型治療のための方法およびデバイスを提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、広範な特許集団に容易に適合可能なシステムを提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、患者内に植え込まれる構造の量を最小にするシステムを提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、医療従事者によって容易に実践される、弁逆流を治療する方法を提供することである。
【0014】
この点について、本発明は、僧帽弁または三尖弁などの弁を修復するためのシステムおよび方法に向けられており、これらのシステムおよび方法は、ヒトの心臓の心臓弁のための弁尖修復デバイスを含み、この弁尖修復デバイスは、癒合縁を有する植込み型弁尖;癒合縁の近くに一端で接続された修復索;ヒトの心臓の天然の構造に修復索を係留するための索係留具;およびヒトの心臓の天然の構造に弁尖を係留するための少なくとも1つの弁輪係留具を有する。少なくとも1つの実施形態では、本デバイスは、2つ以上の弁輪、心筋、または心外膜の係留具を含む。少なくとも1つの実施形態では、植込み型弁尖は組織材料を含む。少なくとも1つの実施形態では、組織材料は、架橋型かつ耐石灰化性の植込み型生体材料を含む。
【0015】
実施形態によっては、心臓弁を修復するための方法は、第1の場所に修復索係留具を送出すること;実質的に弁輪に近い第2の場所に少なくとも1つの弁輪索係留具を送出すること;植込み型弁尖を配置すること;押出器を用いて弁輪係留具に対して植込み型弁尖を押し出すこと;ならびに弁輪係留具に係留鳩目を送出することを含む。
【0016】
実施形態によっては、本方法は、押出器を用いて修復索係留具に向けて植込み型弁尖を押し出すことをさらに含む。実施形態によっては、本方法は、修復索係留具に係留鳩目を送出することをさらに含む。実施形態によっては、索は短くてもよいし、天然の乳頭筋の機能に類似した構造と共に用いられてもよいし、そのような構造に置き換えられてもよい。植込み型弁尖は、組織または合成材料を含むことがある。組織材料は、架橋型かつ耐石灰化性の植込み型生体材料を含むことがある。
【0017】
本開示の様々な実施形態を形成するものと考えられる主題を具体的に指摘し明瞭に特許請求している特許請求の範囲を用いて、本明細書が結論を下している一方で、本発明は、添付の図と併せた以下の記載からより良く理解されるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【0019】
【0020】
【
図3A-3B】本発明の配置された好適な実施形態の断面図である。
【0021】
【
図4】本発明の好適な一実施形態の配置の断面図である。
【0022】
【
図5A-5B】ロック機構を有する本発明の好適な一実施形態の断面図である。
【0023】
【
図6A-6J】本発明の配置の一実施形態を描いた一連の図である。
【0024】
【0025】
【
図7B】本発明の実施形態を含む僧帽弁の断面図である。
【0026】
【
図8A-8B】拡張期の三尖弁逆流を来した三尖弁の断面図である。
【0027】
【
図9A-9B】収縮期の三尖弁逆流を来した三尖弁の断面図である。
【0028】
【
図10A-10B】拡張期および収縮期の三尖弁逆流を来した三尖弁の短軸での断面図である。
【0029】
【
図11A-11B】拡張期の三尖弁における本発明の一実施形態の配置の断面図である。
【0030】
【
図12A-12B】収縮期の三尖弁における本発明の一実施形態の配置の断面図である。
【0031】
【
図13A-13B】拡張期および収縮期それぞれの三尖弁における配置された本発明の一実施形態の短軸像である。
【0032】
【
図14】本発明の好適な一実施形態の断面図である。
【0033】
【
図15】本発明の好適な一実施形態の断面図である。
【0034】
【
図16】本発明の好適な一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、カテーテルを介して配置されたデバイスを用いた心臓弁の修復に関する。この詳細な記載は、患者の僧帽状心臓弁または三尖弁について本明細書の実施形態を考察しているものの、本発明は患者の心臓の任意の弁に適用可能であり、本明細書の開示はそのように解釈されるべきである。明確に言えば、本明細書に記載された実施形態に例示されるような本発明は、ヒトの心臓の他の弁の修復に適用可能であることがある。
【0036】
患者の心臓弁に配置される際に、本発明のデバイスは、他の天然の弁尖と嵌合するための新しい癒合面を作り出し、また、弁尖の係留を再建して弁の収縮期および拡張期の活動を改善することを可能にする。作業者の観点から、本デバイスはリアルタイム評価を用いてエコーガイドされてもよく、本デバイスの配置は可逆的であってもよい。本デバイスはまた、個別の解剖学的構造に基づき、弁尖を患者にカスタマイズする能力を提供する。本開示のデバイスは、逆流の主因と副因の両方、ならびに外傷性の病因に適することがある。重要なこととして、本開示のデバイスは、ステントまたは他の拡張フレームを含まない。
【0037】
下記の詳細な記載では、好適な実施形態の徹底した理解を提供するために、数多くの具体的な詳細が述べられている。しかし、当業者は、これらの具体的な詳細なく一部の実施形態が実践されうることを理解されよう。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、単位などは、考察を不明瞭としないように、詳細に記載されていない。
【0038】
図1は、左心房102、左心室104、および左心房102と左心室104との間の天然の僧帽弁を含む、心臓100の断面を示す。左心室104は、心臓壁108の一部により画定されることがある。左心室104は、心臓壁108に付加された第1の乳頭筋110と、心臓壁108に付加された第2の乳頭筋112とを有する。天然の僧帽弁は、天然の前尖106aと天然の後尖106pとを有し、それらはそれぞれ、心臓壁108の一部を形成する118に概ね示される天然の僧帽弁輪の一部に接続されている。天然の前尖106aは、天然の前部索120により第1の乳頭筋110に接続されている。天然の後尖106pは、天然の後部索122により第2の乳頭筋112に接続されている。
図1に示されるように、天然の後尖106pは、罹患、脱出、拡張、またはその他構造的に変形していることがあり、それゆえに天然の前尖106aと望ましい癒合を作り出すことがなく、結果として僧帽弁逆流を生じる。
【0039】
図1は、少なくとも1つの天然の僧帽弁尖に起因する僧帽弁逆流を低減するかまたは場合によっては取り除くのに十分に展開された位置にある、弁尖修復デバイス200を示す。
図1に示されるように、弁尖修復デバイス200は、天然の後尖106pまたは後部索122を除去することなく設置されてもよい。他の実施形態では、天然の後尖106pが除去されてもよいし、後部索122が切断されてもよい。
図1に示されるように、弁尖修復デバイス200は、天然の後尖106pを覆う位置で設置され十分に展開されてもよく、実施形態によっては、弁尖修復デバイス200は、天然の後尖106pに重なってもよい。本発明の弁尖修復デバイスは、弁の癒合を改善できることがある。実施形態によっては、天然の罹患した弁尖は、他の天然の弁尖との必要な癒合をもたらすように機能しなくても、弁尖修復デバイスと併行して動くことがある。さらに、追加的な弁尖修復デバイスが、罹患した心臓の癒合を改善するように、既に配置された弁尖修復デバイスを覆って配置されてもよい。
【0040】
図1に示されるように、弁尖修復デバイス200は、少なくとも植込み型弁尖202と修復索204とを含む。植込み型弁尖202は、癒合縁206および癒合縁に対向する弁輪縁208により画定された外周を有することがある。癒合縁206は、別の天然の弁尖と閉じた位置で境を接して弁106の癒合を改善することを意図されている。実施形態によっては、植込み型弁尖202は、1つまたは複数の三角部、僧帽弁輪118、もしくは僧帽弁輪118に近い他の心臓壁108の一部で、または実質的にその近くで、心臓壁108に係留されるか、取り付けられるか、またはその他接続されることがある。実施形態によっては、植込み型弁尖202は、少なくとも2つ以上の係留具(図示せず)を用いて係留されてもよく、その1つは、僧帽弁輪118に近い各三角部に位置する。植込み型弁尖202は、癒合縁206に対向する弁輪縁208を有することがあり、弁輪縁208は、十分に展開されている際に天然の弁輪と境を接していてもよい。実施形態によっては、弁輪縁208の一部は、天然の僧帽弁輪118の一部分に対し密着されてもよい。実施形態によっては、植込み型弁尖202は、望ましくは、僧帽弁の天然の構造を補完、修正、または模倣するように形作られてもよい。実施形態によっては、植込み型弁尖202は、個々の患者の僧帽弁の具体的な寸法および特徴に製造された、カスタム形状の弁尖であってもよい。実施形態によっては、植込み型弁尖202は、弁尖の伸展形状として、修復索204を用いず直接的に乳頭筋112または心筋壁108に接続されてもよい。
【0041】
図2は、
図1と同じ様式で植込み型弁尖202を描いているが、罹患した後尖106pに代えて罹患した前尖106aに応じることに関して描かれている。他の全ての物に関して、
図1に関する上記の考察は
図2について当てはまる。
【0042】
植込み型弁尖202は、組織または合成材料を含む。植込み型弁尖202は、実施形態によっては、単一の組織材料片から構築されることがある。他の実施形態では、植込み型弁尖202は、複数の組織材料から構築されることがある。実施形態によっては、組織材料は生体材料であってもよい。実施形態によっては、組織材料は、心血管組織、心臓組織、心臓弁、大動脈根、大動脈壁、大動脈弁尖、心膜組織、結合組織、硬膜、皮膚組織、脈管組織、軟骨、心嚢、靭帯、腱、血管、臍帯組織、骨組織、筋膜、および粘膜下組織、および皮膚からなる群から選択される無細胞性または細胞性の組織を含む、架橋型のコラーゲンベースの生体材料であってもよい。実施形態によっては、組織材料は、参照により本明細書にその全体を組み込まれる「植込み型生体材料およびその生産方法」と題された2005年12月21日出願の米国特許第9,205,172号の開示に記載された、生体材料などの植込み型生体材料である。実施形態によっては、組織材料は、アドメダス社(Admedus Limited.)により製造されたADAPT(登録商標)材料であってもよい。実施形態によっては、組織材料は、組織材料の耐石灰化性および組織材料の耐久性に基づき選択されてもよい。実施形態によっては、組織材料は人工組織であってもよい。実施形態によっては、人工組織は、単一の成型または成形ポリマー片を含んでいてもよい。実施形態によっては、人工組織は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、他のポリマー、および他のポリマー被覆を含んでいてもよい。実施形態によっては、人工組織は、細胞の成長を促す織地または他の被覆と組み合わされてもよい。弁尖202は、これらの材料のうちいずれかから、単独でも組合せでも構築されてよい。弁尖202は、特性の向上のために、被覆、織地、または弁尖内に包埋された他の材料を有していてよい。
【0043】
1つまたは複数の修復索204が、弁尖の動きを支援して弁尖上に張力をもたらすように、植込み型弁尖202に接続されてもよい。この修復索は人工材料を含むことがあり、そのようなものとしては、以下に限定されないが、ワイヤ、金属糸、セラミックス、プラスチック、織地、繊維材、ポリマー、エラストマー、および適した弾性特性を有する材料が挙げられる。実施形態によっては、この索は、生体材料を含むことがあり、そのようなものとしては、以下に限定されないが、コラーゲン、腱、結合組織、および他の繊維を挙げることができる。修復索204は、第1の末端212と第1の末端212に対向する第2の末端210とを有することがある。少なくとも1つの実施形態では、修復索204は、第1の末端212で植込み型弁尖202に接続されていることがある。修復索204は、癒合縁206で、または実質的にその近くで、植込み型弁尖202に接続されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、修復索204は、第2の末端210で心臓壁108の一部分に接続されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、修復索204は、少なくとも1つの係留具214により、心臓壁108の上記一部分に接続される。さらに具体的には、修復索204は、それぞれの乳頭筋に、例えば
図1に示されるように第2の乳頭筋112で、接続されてもよい。代替の実施形態では、修復索204は、第1の末端では植込み型弁尖202に、ならびに第2の末端では依然として乳頭筋に接続されている罹患した弁尖に、接続されてもよい。示されているものではただ1つの修復索204が用いられているが、複数の修復索が利用されてもよい。1つまたは複数の修復索204は、植込み型弁尖202上に張力をもたらし、収縮期と拡張期との間の植込み型弁尖の動きを支援するように、心臓壁108と植込み型弁尖202との間に繋留接続を作り出す。
図1に用いた修復索204に関するこの考察は、罹患した前尖106aに対処する植込み型弁尖を描いた
図2の実施形態について、同様に当てはまる。
【0044】
本開示の弁尖修復デバイスは、弁尖の対称および非対称な配置の柔軟性を提供して、天然の弁における問題に対処する。
図3Aおよび
図3Bは、心臓の断面図を示す。
図3Aは、植込み型弁尖202を有する弁尖修復デバイス200の図であり、植込み型弁尖202は、1つの修復索204から乳頭筋110のうちの1つに繋留され、心臓のある特定の問題および状態に対処するのに必要と思われる非対称なプロファイルの植込み型弁尖202を作り出す。植込み型弁尖202は、繋留された側に向かってさらにいっそう伸展する。
図3Bは、植込み型弁尖202を有して配置された弁尖修復デバイス200の図を示し、植込み型弁尖202は、乳頭筋110の1つに繋留された第1の修復索204aと、異なる方向で乳頭筋112などの心臓の別の一部分に繋留された第2の修復索204bとを用いて、繋留されている。植込み型弁尖202はまた、弁尖の癒合の最適化に繋がる僧帽弁平面からの方向で、心筋壁108内に直接的に植え込むことができる。
図3Bに示される実施形態では、この配置された弁尖修復デバイス200は、
図3Aに示されたデバイスよりも対照的なプロファイルを作り出す。
図3Aは、心臓の一方の側への植込み型弁尖202の係留を示すのに対し、
図3Bは、心室の複数の点での係留を示す。実施形態によっては、乳頭筋110および112の両方ならびに心筋壁108への係留が実施される。
【0045】
本開示の弁尖修復デバイスの実施形態は、経カテーテルの送出システムを用いて、翼廊的に心臓に送出することがある。一例、すなわちそのような心臓への組織の経中隔的な送出は、その全体の内容が本明細書に参照により組み込まれる、心血管の開口の閉鎖のための方法およびシステムと題された2019年5月29日出願かつ2019年12月5日公開のWO2019/232068に見出される。
【0046】
図4を参照すると、送出システムは、カテーテル400、カテーテル内に設けられた1つまたは複数のシース、押出器カテーテル300、植込み型弁尖202、少なくとも1つの修復索402、および少なくとも1つの係留縫合糸402A、鳩目404、および係留部材214を含むことがある。実施形態によっては、経カテーテル送出システムは、ガイドワイヤ(図示せず)をさらに含むことがある。少なくとも1つの実施形態では、このカテーテルは、遠位端と近位端とを有することがある。経カテーテル送出デバイスの少なくとも1つの実施形態では、装填状態において、1つまたは複数の係留部材214がカテーテルの近位端の近くに位置する。一実施形態では、修復索402に係合された1つの係留部材214と、縫合糸402Aに係合された少なくとも2つの弁輪係留具214とが存在する。縫合糸402Aは、装填状態では係留具214から遠位に位置していてもよく、修復索402は、装填状態では係留具214から遠位に位置していてもよい。装填状態では、植込み型弁尖202は、畳まれた構成であって、押出器の近位にかつ縫合糸402Aおよび/または修復索402から遠位に位置していてもよい。
【0047】
本開示の一実施形態では、弁尖修復デバイスを送出するために、まず係留部材214が配置されることがある。索係留具402は、乳頭筋または心筋の1つに、挿入、ステープル留め、縫合、ネジ留め、縫い綴じ、プレジット留め(plegeted)、またはその他固定されてもよい。少なくとも1つの弁輪係留具214が、少なくとも1つの三角部、弁輪の一部、または弁輪に近い心臓壁に、挿入、ステープル留め、縫合、ネジ留め、縫い綴じ、プレジット留め、またはその他接続されてもよい。上記係留具は、従事者がイメージングデバイス上でその係留具の位置を見ることを可能にする、放射線不透過性マーカーまたは他のイメージングマーカーを有することがある。
【0048】
係留具が配置されれば、次いでシースが抜去されて、弁輪係留具214に接続された縫合糸402Aと索係留具214に接続された修復索402とが露出してもよい。実施形態によっては、縫合糸402Aは、植込み型弁尖の縫合糸穴を通じて近位に引っ張られてもよく、一方で、植込み型弁尖202がカテーテル内で遠位に進められる。植込み型弁尖がカテーテル内を左心房へと弁輪近くに進められれば、植込み型弁尖がシースから抜き放たれてもよい。次いで、押出器300を用いて、各弁輪係留具214に対して弁尖202を押し出し、各弁輪係留具について、次いで鳩目404を送出して係留具214に被せ、弁尖をロック機構(図示せず)により弁輪係留具に固定し、縫合糸402Aを切断する。次いで、押出器300を用いて、弁尖202が望ましくは完全に展開された位置で癒合を作り出すよう方位付けられるまで、弁尖202を左心室104内に押し出す。癒合が発生すれば、次いで鳩目404をロック機構(図示せず)により索係留具402に被せて固定し、縫合糸を切断する。送出システムは、次いで、脈管構造を通じて抜去することができる。
【0049】
実施形態によっては、弁尖修復デバイス200の送出は、患者の身体から完全に送出システムを抜去するために、ロック機構400と、縫合糸を切り揃えるための手段とを必要とすることがある。
図5A~
図5Bに示される少なくとも1つの実施形態では、このデバイスは、組織の癒合域に位置するロック機構をさらに含むことがある。ロック機構は、一端でデバイスの修復索に接続され、他端で少なくとも1つの縫合糸に接続されてもよい。ロック機構を付勢し、ロック機構を植込み型組織の左心室側から植込み型組織の開口を通じて植込み型組織の左心房側に引っ張るように、張力が縫合糸に印加されてもよい。付勢されたロック機構は、次いで、植込み型組織の左心室側から左心房側に広がる。
【0050】
本発明で用いるための機構としては、以下に限定されないが管状構造が挙げられ、この構造は、部品204を覆って同心円状にまたは同軸方向に通り、部材204を係合する内径に向かって付勢された部材、例えば小さなかかりなどを有し、この部材は、部材204がぴんと張られた際に、上記のかかりの機能がその指向的な付勢と係合を促す形状とに起因して204の材料を係合するように、管状構造から内側に変形する。別のそのような機構は、部材204上へ圧縮するように付勢されたステント様構造とすることができ、その場合、この構造を送出機構が部材204のための間隙により支持し、所望の位置が得られると、送出デバイスが部材400を放出し、次いで、弾力性を以て付勢された構成体に起因して、全体的にまたはそのかかりの付いた部材と共に縮径して、臨床的な装填状態下でその位置を維持するのに十分な力で204の材料を係合するものとする。
【0051】
ロック機構400は、鳩目440の一部、または鳩目440と索とを係合する別個の機構とすることができる。
【0052】
一実施形態では、ロック機構は、テントや販売の支線を固定するためではない教えられた結びに類似しており、理想的にはユーザがロック機構を係合するまで両方向に調整可能である。
【0053】
別の実施形態では、ロック機構は、一方向に自由に摺動可能であり、反対方向にロックされている。ロック機構の主な目的は、索部材またはガイド縫合糸の長さを変えないように、索部材の周囲を堅く締めて係合することである。
【0054】
図5Aを参照すると、ロック機構400は、ニチノールなど、任意の適した伸縮性の高いおよび/または形状記憶性の材料から作成することができる。ロック機構400はまた、ロープ材、または弁と同じ材料、またはポリマーから構築することができ、これらの材料を用いて、ロック機構は、プレジットまたはオートロック型の結び目のように動作するよう構築されるものとなる。この方法は、当技術分野に周知であり、この摺動可能さらにロック可能である結び目またはプレジットの適用は、心臓外科手術に使用されるものに類似したものとなる。
【0055】
図5Bを参照してaを見ると、索204が、典型的には当技術分野に公知の係留デバイス214、例えばらせんネジ型係留具によって、乳頭筋110、112に取り付けられる。植込み型弁尖202が、植込み型弁尖202に存在する鳩目440を通して索204を覆って導入される。
【0056】
図5Bを参照してbを見ると、索204を介した弁組織202の張力または距離が調整され、ロック機構400を駆動することによって張力/距離が固定される。
【0057】
図5Bを参照してcを見ると、第2のロック機構400が、押出器480を介して索204を覆って導入される。
【0058】
図5Bを参照してdを見ると、第2のロック機構400が、植込み型弁尖202の鳩目440に対して推し進められ、索204を植込み型弁尖202にさらに固定する。
【0059】
図5Cを参照してeを見ると、索204が切断されており、それゆえに植込み型弁尖202から離れており、植込み型弁尖202は、残りの天然の僧帽弁の弁尖との適正な癒合のための乳頭筋110、112からの適正な張力/距離を有する。
【0060】
本発明による植込み型弁尖の経中隔的な送出の別の実施形態では、
図6A~6Jについて言及される。まず
図6Aを参照すると、植込み型弁尖ILが、一次索A1を受け入れるための中央の鳩目E1と、2つの追加的な一次索A2を受け入れるための2つの側部の鳩目E2とをそれぞれ有して示されている。ガイド縫合糸B1、B2、B3、およびB4を用いて植込み型弁尖ILを僧帽弁の弁輪に係留する際に使用するために、周縁の鳩目E3が、植込み型弁尖ILの周縁端を巡って位置する。
【0061】
図6Bを参照すると、可操縦ガイドカテーテル(steerable guide catheter)SGCが、当技術分野に公知の方法で操作されて、左心房LAに配置されて僧帽弁輪MAに対面している。次いで、送出カテーテルDCが、可操縦ガイドカテーテルSGCから伸ばされ、その結果、その遠位端は僧帽弁輪MAを通じて左心室LV内へ延びる。係留具Aを遠位端に有する一次索A1が左心室内へ伸ばされ、係留具が左心室LVの壁に当てられる。
【0062】
図6Cを参照すると、同じく係留具Aを遠位端に有する追加的な一次索A2が、僧帽弁輪MAを通して左心室LV内に伸ばされ、そのそれぞれは乳頭筋PAPに別々に係留されている。同じく係留具Aを遠位端に有するガイド縫合糸B1、B2、B3、およびB4が、可操縦ガイドカテーテルSGCの中から外に伸ばされ、僧帽弁輪の周縁に係留されている。ガイド縫合糸B1およびB4は、僧帽弁後尖PMLおよび僧帽弁前尖AMLの連接領域の近くに位置する。ガイド縫合糸B2およびB3は、僧帽弁後尖PMLの周縁の近くに位置する。
【0063】
図6Dを参照すると、可操縦ガイドカテーテルSGCの内部の弁尖ホルダーLHによって保持された、植込み型弁尖ILの図が示されている。弁尖ホルダーLHは、可操縦ガイドカテーテルSGCを通じて挿入され操作されている押出器Pから遠位に延びている。植込み型弁尖IL上の鳩目E1、E2、E3が、各鳩目を通って延びる一次索A1、第2の一次索A2、およびガイド縫合糸B1~B4と共に示されている。
【0064】
図6Eを参照すると、僧帽弁輪MAおよび左心室LVにおける一次索A1、第2の一次索A2、ガイド縫合糸B1~B4の構成が、押出器Pを介して可操縦ガイドカテーテルSGCから植込み型弁尖ILが配置される直前で示されている。この実施形態では、スペーサSが係留具Aと一次索A1との間および係留具Aと第2の一次索A2との間にそれぞれ配されていることを留意されたい。
【0065】
図6Fを参照すると、植込み型弁尖ILが、可操縦ガイドカテーテルSGCの中から外に配置されており、ガイド縫合糸B1、B2、B3、およびB4により主にガイドされた僧帽弁輪MAに向かって推し進められ、その結果、植込み型弁尖ILの縁は、僧帽弁後尖PMLの基部に隣接する僧帽弁輪MAの一部に嵌合する。
図6Fでガイド縫合糸B1を辿るように今導入されている押出器Pは、ガイド縫合糸B1を覆って圧縮性ロックねじCLSを移動させて、鳩目E3と境を接するものとする。
図6Gを参照すると、ガイド縫合糸B1が、圧縮性ロックねじCLSの少なくとも2つのコイルの間を縫うように通り、その結果、圧縮性ロックねじCLSが押出器Pによって鳩目E3に対して圧縮されると(植込み型弁尖が僧帽弁輪MAに対してぴったり合うと)、ガイド縫合糸B1が圧縮性ロックねじCLSの不変の位置内にロックされる。次いで、ガイド縫合糸B1が切断される。
【0066】
図6Hを参照すると、押出器Pを用いて、ユーザは別々に、各ガイド縫合糸B1、B2、B3、B4を覆って植込み型弁尖ILを僧帽弁輪MAに対し推し進め、次いで、一次索A1および第2の一次索A2に沿って植込み型弁尖ILの癒合縁を推し進める。ガイド縫合糸B1~B4および一次索A1および第2の一次索A2は、次いで、各縫合糸/索に付随する圧縮型ロックねじCLSを用いて、鳩目に対し定位置に固定され、縫合糸/索は次いで、それぞれ切断される。
図6Hは、弁尖が見えるように、僧帽弁輪MAを断面図としてこのプロセスを描いている。
図6Iは、僧帽弁輪MAを示し、植込み型弁尖ILを幻像で示して、このプロセスを描いている。
【0067】
図6Jを参照すると、十分に植え込まれ固定された植込み型弁尖ILが描かれており、再び僧帽弁輪MAが断面で見えている。
【0068】
図7A~7Bは、植込み型弁尖202の配置の前(A)および後ろ(B)の僧帽弁の眺めを示す。
図7Aでは、僧帽弁尖106aと106bとの癒合の欠如により大きな隙間がある。
図7Bでは、係留部材214が僧帽弁輪の周囲に植え込まれ、弁尖が左心室204の内部に係留されて新しい癒合域を作り出している。
【0069】
図8から
図13は、TRの患者の治療のための植込み型弁尖202の使用を説明する。
図8A、
図8Bは、三尖弁の前部(A)、中隔部(S)、および後部(P)、右心房(RA)、右心室(RV)、および大動脈弁(AV)の2つの断面図を示す。三尖弁は拡張期に開いている。
図9A、
図9Bは、癒合域(Z)で弁尖の癒合が失われていることによりTR(星印)が発生した際の、収縮期のこれらの同じ構造の2つの断面図を示す。
図10A、
図10Bは、拡張期および収縮期における三尖弁の断面図を示す。拡張期では、弁尖は正常に開くが;収縮期の間は、上記域(星印)での癒合が失われているために逆流が発生する。記述上の目的で、CSは冠静脈洞である。
【0070】
図11、
図12、および
図13は、植込み型弁尖を定位置に有する三尖弁を示す。弁尖(5)は、係留部材(2)、支持部材(3)、および腱索(4)により、右心室の心筋内に係留される。
図11Aは、大動脈および右心室の短軸像からの弁尖を、拡張期の間に弁尖を保持する複数の係留機構と共に示す。
図11Bは、拡張期の間に開きながら天然の中隔の三尖弁尖(S)を覆って伸展している弁尖を示す。
【0071】
図12Aは、収縮期の間に弁尖を定位置に保持する係留部材および支持部材を示す。
図12Bは、前尖が植込み型弁尖5上で閉じて、新しい癒合域(NZ)を作り出しTRを治療することを示す。
【0072】
図13Aおよび
図13Bは、定位置に植込み型弁尖を有する三尖弁の断面の短軸像を示す。点線は、天然の中隔尖の古い癒合縁OCE(破線)ならびに新しい癒合線NCL(実線)を示す。
図13Aを参照すると、拡張期の間に、植込み型弁尖は自由に動き、右心室が血液で満たされるのを可能にする。
図13Bを参照すると、収縮期の間に、植込み型弁尖は、表面を提供することによって、天然の前尖および天然の後尖と交わる癒合を作り出すかまたは増強する。植込み型弁尖は、三尖弁の弁輪の周囲に係留部材(An)によって定位置で保持され、右心室壁中に配された部材に接続している。僧帽弁における使用と同様に、植込み型弁尖は、腱索を用いてまたは用いずに、ならびに新しい弁尖癒合域を最適化する軌道を作り出すような角度で配された単独または複数の係留具を用いて、心筋に直接的に接続されてもよい。
【0073】
3つの弁尖の構成が最もよくある三尖弁のタイプであることから、植込み型弁尖のこれらの図説および動作の機構では3つの弁尖が記載されていることを認識されたい。しかし、さらに少ない(例えば2つの)またはさらに多い(四尖弁の)三尖弁尖が患者に存在する可能性があり、これらの方法は、弁尖の癒合域を作り出すか改善し逆流を治療するために、同じアプローチで適用される。
【0074】
図14、
図15、および
図16は、単一の置換弁材片の一体型の構成体を有する、修復デバイスの別の実施形態を描いている。この単一部材の構成体は、巻き上げられた縁を有する単一の置換弁材片の一体型の構成体を用いて、植込み型弁尖の修復索を補強しやすいものとすることができる。この巻き上げられた素材は、置換弁の強度を増強し、弁尖本体への円滑な移行を促す。1401は、弁と索の両方を促すように成形された素材の一体型部分を表現する。1402は、弁輪に沿った取付け場所を表現する。1403は、乳頭筋などの筋肉での取付けの取付け場所を表現する。1405は、心室壁を表現する。1406は、心房を表現する。
図15および16は、修復索および植込み型弁尖を促す巻き上げられた縁1504(
図15)および1604(
図16)を有する、単一の置換弁材片の一体型の構成体を用いた修復デバイスの断面図を表現する。
【0075】
一実施形態では、本発明は、キットを含み、そのようなものとしては、以下に限定されないが、可操縦ガイドカテーテル、送出カテーテル、前記送出カテーテル内をまたはそれを通して送出するために構成された置換弁尖、押出器、複数の索、係留機構、およびスペーサが挙げられ、そのそれぞれは本明細書に開示され記載されている。キットの内容の一覧は、包括的または排他的と解釈されるものではない。上記の品目のそれぞれまたは上記の品目のうちいくつかのみを有するキットがあってもよい。本発明の方法を行うのに必要であるものとして挙げられるよりも多くの品目を有するキットがあってもよい。少なくとも、本キットは、置換弁尖と、置換弁尖を送出するのに必要なツールとを含む。
【0076】
本明細書に用いられる際に、用語「実質的に」または「概ね」は、行動、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全またはほぼ完全な程度または度合いを指す。例えば、「実質的に」または「概ね」包含される目的は、その目的が完全に包含されるかまたはほぼ完全に包含されるかのどちらかであることを意味するものとなる。絶対的な完全性からの逸脱の正確かつ許容可能な程度は、いくつかの場合では、具体的なコンテキストに依存することがある。しかし、総じて言えば、完成に近いことは、絶対的かつ全体の完成が得られるのと概ね同じ総体的な結果を有するようになる。「実質的に」または「概ね」の使用は、否定的な意味合いに用いられる際に同様に適用されて、行動、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果が完全にまたはほぼ完全に欠如していることを指す。例えば、成分または構成要素を「実質的に含まない」または「概ね含まない」構成要素、組合せ、実施形態、または組成は、やはり実際にはそのような項目を、その測定しうる影響が概ねない限り含むことがある。
【0077】
本明細書に用いられる際に、任意の「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」という言及は、実施形態に関連して記載された具体的な要素、特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書中の様々な箇所で「一実施形態では」という句が出現することは、必ずしも全て同じ実施形態を指す訳ではない。
【0078】
本明細書に用いられる際に、用語「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、またはそれらの任意の他のバリエーションは、非排他的な包含をカバーすることを意図されている。例えば、構成要素の列挙を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの構成要素のみに限定されないが、明示的に挙げられないかまたはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の、他の構成要素を含むことがある。さらに、明示的に逆の記述のない限り、「または」は、包括的なまたは、および排他的なまたはを指す。例えば、状態AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)Bが真であり(または存在する)、AとBの両方が真である(または存在する)。
【0079】
また、「a」または「an」の使用は、本明細書の実施形態の要素および構成要素を記載するために採用される。これは、利便性のため、およびその記載の一般的な意味を与えるために行われるに過ぎない。この記載は1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、その他意味することが明らかでなければ、単数形は複数形をも含む。
【0080】
さらに、図は、説明のみを目的として好適な実施形態を描いたものである。当業者は、本明細書に説明された構造および方法の代替の実施形態が本明細書に記載の概念から逸脱することなく採用されうることを、本明細書の考察から容易に認識するものとなる。
【0081】
本開示を読めば、当業者は、カスタマイズされたつぼのためのさらに追加的な代替の構造的および機能的な設計を認識するものとなる。そのため、具体的な実施形態および適用が説明および記載される一方で、理解されるべきは、開示された実施形態が本明細書に開示された正確な構成体および構成要素に限定されないということである。当業者に明らかになる様々な改変、変更、およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲に定義された趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された方法および装置の配列、操作、および詳細において作製されてもよい。
【0082】
本明細書に記載されたシステムおよび方法は、いくつかの例示的な実施形態を参照して記載されてきたが、これらの実施形態は、互いを限定せず必ずしも除外せず、想定されるのは、様々な実施形態の具体的な特徴が、本発明の範囲内に留まったまま、他の実施形態の特徴と併せた使用のために省略されることも組み合わされることあるということである。本明細書に記載された任意の実施形態の任意の特徴は、任意の実施形態で、ならびに任意の他の実施形態の任意の特徴と共に、使用されることがある。
【国際調査報告】