(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】固体金属リチウムを含む電気電池からリチウムを抽出するための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20220316BHJP
【FI】
H01M10/058
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546244
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020053209
(87)【国際公開番号】W WO2020161339
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513306615
【氏名又は名称】ブルー ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】デシャン,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ボドネ,ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ16
(57)【要約】
本発明は、リチウム金属ポリマー電池などの固体金属リチウムを含む電気電池の少なくとも1つのセルのアセンブリからリチウムを抽出するための方法(300)に関し、前記方法(300)は、以下のステップ:
そこから1つまたは複数の負極が延在する前記アセンブリの第1の縁部が、前記第1の縁部とは反対側であり、そこから1つまたは複数の正極が延在する前記アセンブリの第2の縁部よりも下に位置する配向に前記アセンブリを位置決めするステップ(308)と、
前記固体金属リチウムの溶融温度以上の処理温度に前記アセンブリを加熱するステップ(310)と
を含む抽出段階(306)を含む。
本発明はまた、そのような方法を実施する設備に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属ポリマー電池などの固体金属リチウムを含む電気電池の少なくとも1つのセル(100)のアセンブリ(200)からリチウムを抽出するための方法(300、400)であって、前記方法(300、400)は、以下のステップ:
そこから1つまたは複数の負極(102)が延在する前記アセンブリ(200)の第1の縁部(110)が、前記第1の縁部(110)とは反対側(112)であり、そこから1つまたは複数の正極(104)が延在する前記アセンブリ(200)の第2の縁部(112)よりも下に位置する配向に前記アセンブリ(200)を位置決めするステップ(308)と、
処理温度と呼ばれる、前記固体金属リチウムの溶融温度以上の温度に前記アセンブリを加熱するステップ(310)と
を含む抽出段階(306)を含む、方法(300、400)。
【請求項2】
前記位置決めステップ(308)は、前記第1の縁部(110)が下方に位置する前記セルのアセンブリ(200)の垂直位置決めを行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法(300、400)。
【請求項3】
前記セルのアセンブリ(200)を加熱する前記ステップ(310)は、不活性ガス下で行われることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法(300、400)。
【請求項4】
前記セルのアセンブリ(200)を加熱する前記ステップ(310)は、真空下で行われることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法(300、400)。
【請求項5】
前記抽出段階(306)の前に、前記セルのアセンブリ(200)を充電するステップ(402)をさらに含み、前記抽出段階(306)は、前記充電されたアセンブリ(200)に適用されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(400)。
【請求項6】
前記抽出段階(306)は、さらに前記セルのアセンブリ(200)を圧縮するステップ(312)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(300、400)。
【請求項7】
前記圧縮ステップ(312)は、前記第2の縁部(112)から前記第1の縁部(110)に前記アセンブリ(200)の表面を掃引することによって、圧縮を前記アセンブリ(200)の前記表面に加えることを特徴とする、請求項6に記載の方法(300、400)。
【請求項8】
前記抽出段階(306)の前に、少なくとも1つのセル(100)から少なくとも1つの電気コネクタを取り外すステップ(302)を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法(300、400)。
【請求項9】
リチウム金属ポリマー電池などの固体金属リチウムを含む電気電池の少なくとも1つのセル(100)のアセンブリ(200)からリチウムを抽出するための設備(500)であって、前記設備(500)は、
そこから1つまたは複数の負極(102)が延在する前記アセンブリ(200)の第1の縁部(110)が、前記第1の縁部(110)とは反対側であり、そこから1つまたは複数の正極(104)が延在する前記アセンブリの第2の縁部(112)よりも下に位置する配向に前記アセンブリを位置決めするための手段(504)と、
前記固体金属リチウムの溶融温度以上の処理温度に前記アセンブリ(200)を加熱するように構成された加熱手段(502)と
を備える、設備(500)。
【請求項10】
前記加熱手段は、不活性ガスで充填されたオーブン(502)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の設備(500)。
【請求項11】
前記セルのアセンブリ(200)の圧縮手段(508)を備えることを特徴とする、請求項9または10に記載の設備(500)。
【請求項12】
前記圧縮手段は、前記セルのアセンブリが間を通過する2つのローラ(508)を備えることを特徴とする、請求項11に記載の設備(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体金属リチウムを含む電池からリチウムを抽出するための方法に関する。
【0002】
本発明の分野は、固体金属リチウムベースの電池の分野、特に、リチウム金属ポリマー電池の分野、さらにより詳細には、これらの電池のリサイクルの分野である。
【背景技術】
【0003】
例えばリチウム金属ポリマー(LMP(登録商標))電池など、固体金属リチウムベースの電池が知られている。これらの電池は、例えば電気自動車または充電ステーションでますます使用されている。したがって、LMP(登録商標)電池の数は、数年にわたって増加し続けている。
【0004】
LMP(登録商標)電池の寿命は無限ではなく、これらの電池をリサイクルする必要があると考えられている。現在、寿命末期であっても、LMP(登録商標)電池は他の電池または他の分野で再使用することができる固体金属リチウムを依然として含んでおり、その価値は重要ではない。
【0005】
しかしながら、電池から固体金属リチウムを良好に回収することが可能な技術は、現在のところ存在しない。
【0006】
本発明の目的は、この欠点を克服することである。
本発明の別の目的は、少なくとも1つの電気エネルギー蓄電セルのアセンブリから固体金属リチウムを回収するための方法を提案することである。
【0007】
本発明の別の目的は、簡単な方式で少なくとも1つの電気エネルギー蓄電セルのアセンブリから固体金属リチウムを回収するための方法を提案することである。
【0008】
本発明の別の目的は、リサイクル中の潜在的短絡の影響を制限および管理しながら、効率的な方式で少なくとも1つの電気エネルギー蓄電セルのアセンブリから固体金属リチウムを回収するための方法を提案することである。
【発明の開示】
【0009】
本発明によって提案される第1の解決策
第1の解決策によれば、本発明は、リチウム金属ポリマー電池などの固体金属リチウムを含む電気電池の少なくとも1つのセルのアセンブリからリチウムを抽出するための方法によってこれらの目的の少なくとも1つを達成することを可能にし、前記方法は、以下のステップ:
そこから1つまたは複数の負極が延在する前記アセンブリの第1の縁部が、前記第1の縁部とは反対側であり、そこから1つまたは複数の正極が延在する前記アセンブリの第2の縁部よりも下に位置する配向に前記アセンブリを位置決めするステップと、
処理温度と呼ばれる、前記固体金属リチウムの溶融温度以上の温度に前記アセンブリを加熱するステップと
を含む抽出段階を含む。
【0010】
本発明による方法は、固体リチウムを含む電池を構成するセルを個々にまたは共に処理することによって、前記電池からリチウムを回収することを提案する。
【0011】
加えて、本発明による方法は、リチウムが液体状態にある少なくとも1つのセルのアセンブリから、固体金属リチウムの溶融温度よりも高い処理温度にセルの前記アセンブリを加熱することによって、金属リチウム(好ましくは固体)を回収することを提案する。一旦溶融すると、金属リチウムは、重力の影響下で、全体的または部分的に各セルから自然に排出される。
【0012】
したがって、本発明による方法は、固体金属リチウムの単純であまり複雑でない回収を可能にする。
【0013】
さらに、本発明による方法は、そこから負極が延在する第1の縁部が、第1の縁部とは反対側であり、そこから正極が延在する第2の縁部の高さよりも下に位置するように、最小傾斜を有する各セルの特定の配向を提案する。各セルのこのような配向は、一方では重力によるセルからの溶融リチウムの流れを容易にすることを可能にし、他方では溶融リチウムと正極または正極の集電体との間の接触を回避することを可能にし、そのような接触は、電気的短絡または電気アークを引き起こすことが可能であり、そのような短絡は、火災を引き起こすことが可能である。
【0014】
本出願において、「電気エネルギー蓄電セル」とは、少なくとも、
固体金属リチウムの層によって形成された、または固体金属リチウムの層を含む負極と、
正極と、
正極と負極との間に配置された、特にリチウム塩を含む固体電解質と、
正極側の集電体と
を備えるアセンブリを意味する。
【0015】
本出願において、「固体金属リチウム」は、
純金属リチウム、または
少なくとも1つの金属リチウム合金の組み合わせ、または
純金属リチウムと少なくとも1つの金属リチウム合金の組み合わせ
を含むことができる。
【0016】
「固体金属リチウム」が、異なる溶融温度を有する、上記に示したものなどの異なる形態のリチウムの組み合わせを含む場合、加熱ステップは、
前記異なる溶融温度の最低温度、および
好ましくは、前記異なる溶融温度の最高温度
以上の処理温度にセルのアセンブリを加熱することを行う。
【0017】
非限定的な実施形態の例によれば、処理温度は、180.5℃以上である。
【0018】
一実施形態の例によれば、処理温度は、最大温度、例えば300℃以下である。
【0019】
アセンブリは、単一または唯一のセルを備えることができる。
アセンブリは、組み立て方向に組み立てられた、または特に積み重ねられたいくつかのセルを備えることができる。組み立て方向は、各セルによって形成された平面に直角であり得る。
【0020】
特に、アセンブリは、セルが直列に接続された電池に対応することができる。
【0021】
好ましい実施形態によれば、位置決めステップは、第1の縁部が下方に位置するセルのアセンブリの垂直位置決めを行うことができる。
【0022】
したがって、各セルからの溶融リチウムの重力流が改善される。
加えて、溶融リチウムと1つまたは複数の正極との間の接触の危険性が低減され、すなわちゼロになる。
【0023】
好ましくは、セルのアセンブリを加熱するステップは、不活性ガス下で行うことができる。
したがって、本発明による方法は、事故の危険性、特に、火災の危険性を低減する。
【0024】
加えて、本発明による方法は、リチウムの抽出中の望ましくないまたは制御されていない物理化学反応によって生成され得る汚染化合物の形成を回避することを可能にする。
【0025】
非限定的な例によれば、不活性ガスは、以下のガス:ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)のうちのいずれか1つであるか、またはそれを含むことができる。
【0026】
別の実施形態によれば、セルのアセンブリを加熱するステップは、真空下で行うことができる。
【0027】
特に有利な特徴によれば、本発明による方法はまた、抽出段階の前に、セルのアセンブリを充電するステップを含むことができ、前記抽出段階は、前記充電されたアセンブリに適用される。
【0028】
1つまたは複数のセルを充電し、充電されたセルに対して抽出段階を行うという事実は、リチウム抽出収率を高めることを可能にする。実際、セルの充電により、リチウムイオンを負極に向けて変位させることが可能になり、リチウムの回収可能量を増加させることができる。
【0029】
各セルは、個々に、またはセルのアセンブリの充電によって充電することができる。
【0030】
特に有利な実施形態によれば、抽出段階はまた、セルのアセンブリを圧縮するステップを含むことができる。
【0031】
したがって、溶融リチウムが各セルから排出され、回収されるリチウムの量が増加する。
圧縮ステップは、抽出段階全体を通して、連続的に行うことができる。この場合、各セルは、抽出段階の全期間にわたって、部分的または全体的に圧縮を受ける。
【0032】
あるいは、圧縮ステップは、抽出段階中に1回または数回、別々に行うことができる。この場合、抽出段階は、セルのアセンブリが圧縮を受けない瞬間を含む。
【0033】
有利には、圧縮ステップは、第2の縁部から第1の縁部にセルのアセンブリの表面を掃引することによって、圧縮を前記アセンブリの表面に加えることができる。したがって、溶融リチウムは、そこから1つまたは複数の負極が延在する第1の縁部に向かって徐々に搬送/案内されることで、回収されるリチウムの量を増加させ、リチウムと1つまたは複数の正極との間の接触の危険性を低減する。
【0034】
例えば、圧縮ステップは、2つのローラの間にセルのアセンブリを通過させることによって行うことができる。
【0035】
別の例によれば、圧縮ステップは、軸受面に対してセルのアセンブリを圧縮する圧縮ローラによって行うことができる。
【0036】
圧縮は、連続するパスによって加えることができ、各パスは、第2の縁部から開始して第1の縁部まで、セルのアセンブリの表面を掃引する。
【0037】
圧縮ローラの間、それぞれ圧縮ローラと軸受面との間のギャップは、セルのアセンブリの厚さから1つまたは複数の固体金属リチウム層の厚さを引いたものに対応することができる。これにより、固体リチウムがセルアセンブリ内に依然として残っている間に、圧縮を加えることが可能になる。
【0038】
2つの圧縮ローラの間、またはそれぞれ圧縮ローラと軸受面との間のギャップは、セルのアセンブリに対して依然として圧縮を加えるように、連続するパスにより低減することができる。
【0039】
それぞれの圧縮ローラの圧縮ローラの間の通過速度、より一般的には掃引速度は、毎秒数mm~数十mmの間に含まれ得る。
【0040】
さらに、本発明による方法は、抽出段階の前に、少なくとも1つのセルから「圧着コネクタ」としても知られる少なくとも1つの電気コネクタを取り外すステップを含むことができる。
これにより、セルのアセンブリの処理を容易にすることが可能になる。
【0041】
さらに、本発明による方法は、抽出段階の前に、セルのアセンブリの少なくとも1つ、特に各縁部の高さにおける過剰な材料を除去するステップを含むことができる。
【0042】
同じ発明の別の態様によれば、リチウム金属ポリマー電池などの固体金属リチウムを含む電気電池の少なくとも1つのセルのアセンブリからリチウムを抽出するための設備が提案され、前記設備は、
そこから1つまたは複数の負極が延在する前記アセンブリの第1の縁部が、前記第1の縁部とは反対側であり、そこから1つまたは複数の正極が延在する前記アセンブリの第2の縁部よりも下に位置する配向に前記アセンブリを位置決めするための手段と、
前記固体金属リチウムの溶融温度以上の処理温度に前記アセンブリを加熱するように構成された加熱手段と
を備える。
【0043】
一般に、設備は、簡潔にするために本明細書では詳細に説明しないが、上述の特徴の少なくとも1つの任意の組み合わせを実装するように構成された手段を備える。
【0044】
特に、加熱手段は、オーブンを備えることができる。
有利には、オーブンは、不活性ガスで充填することができ、または真空下に置くことができる。
【0045】
本発明による設備はまた、セルのアセンブリを圧縮するための手段を備えることができる。
圧縮手段は、少なくとも1つのローラを備えることができる。
【0046】
特に、圧縮手段は、軸受面に対してセルのアセンブリを圧縮する単一のローラを備え得る。軸受面を加熱し、セルのアセンブリの温度上昇を加速することができる。
【0047】
あるいは、圧縮手段は、セルのアセンブリが間を通過する2つのローラを備えてもよい。
【0048】
一般に、圧縮手段は、抽出段階全体を通して、連続的な圧縮を加えるように構成することができる。
【0049】
あるいは、圧縮手段は、抽出段階中に1回または数回、経時的に不連続的に圧縮を加えるように構成されてもよい。この場合、抽出段階は、セルのアセンブリが圧縮を受けない瞬間を含む。
【0050】
有利には、圧縮ステップは、第2の縁部から第1の縁部まで、徐々にまたはセルのアセンブリの表面上を掃引することによって、一定または可変の値で圧縮を加えるように構成することができる。したがって、溶融リチウムは、低い位置に位置する第1の縁部に向かって徐々に搬送/案内されることで、回収されるリチウムの量を増加させ、リチウムと1つまたは複数の正極との間の接触の危険性を低減する。
【0051】
1つまたは2つの圧縮ローラを使用する場合、連続するパスによってセルのアセンブリに圧縮を加えることができる。各パスは、第2の縁部から第1の縁部にセルのアセンブリの表面上を掃引することによって圧縮を加える。各パスの終わりに、ローラを引き出すことによって、または軸受面からローラを引き出すことによって、圧縮を停止して第2の縁部に戻り、新たなパスを開始することができる。
【0052】
それぞれ圧縮ローラと軸受面との間のローラの間の距離は、連続するパス、特に2つの連続するパスの間で縮小することができる。
【0053】
本発明による方法は、いくつかのセルのアセンブリ、特に電池パックを形成し、前記電池パック内で並列に互いに接続されたいくつかのセルのアセンブリを処理するために実施することができる。
【0054】
セルの少なくとも2つのアセンブリは、例えば第1の縁部に平行な方向に、重なり合うことなく並べて整列させることができる。
【0055】
この場合、圧縮は、1つの同じ圧縮手段、すなわちローラのセット、または軸受面と協働する1つのローラによってセルの少なくとも2つのアセンブリに加えることができる。
【0056】
本発明によって提案される第2の解決策
第2の解決策によれば、本発明は、リチウム金属ポリマー電池などの固体金属リチウムを含む電気電池の少なくとも1つのセルのアセンブリからリチウムを抽出するための方法によってこれらの目的の少なくとも1つを達成することを可能にし、前記方法は、以下のステップ:
そこから1つまたは複数の負極が延在する前記アセンブリの第1の縁部が、前記第1の縁部とは反対側であり、そこから1つまたは複数の正極が延在する前記アセンブリの第2の縁部よりも上に位置する配向に前記アセンブリを位置決めするステップと、
液体リチウムよりも高密度で電気絶縁性の液体中にセルのアセンブリを浸漬するステップと、
処理温度と呼ばれる、前記固体金属リチウムの溶融温度以上の温度に前記アセンブリを加熱するステップと
を含む抽出段階を含む。
【0057】
本発明による方法は、リチウムを含む電池を構成するセルを個々にまたは共に処理することによって、前記電池からリチウムを回収することを提案する。
【0058】
加えて、本発明による方法は、リチウムが液体状態にされた少なくとも1つのセルのアセンブリから、固体金属リチウムの溶融温度よりも高い処理温度にセルの前記アセンブリを加熱することによって、金属リチウムを回収することを提案する。一旦溶融すると、金属リチウムは、密度の差の影響下で各セルから自然に排出される。したがって、本発明による方法は、固体金属リチウムの単純であまり複雑でない回収を可能にする。
【0059】
さらに、本発明による方法は、そこから負極が延在する第1の縁部が、第1の縁部とは反対側であり、そこから正極が延在する第2の縁部の高さよりも上に位置するように、最小傾斜を有する各セルの特定の配向を提案する。各セルのこのような配向は、一方では密度の差によるセルからの溶融リチウムの流れを容易にすることを可能にし、他方では溶融リチウムと正極または正極の集電体との間の接触を回避することを可能にし、そのような接触は、電気的短絡を引き起こすことが可能であり、そのような短絡は、火災を引き起こすことが可能である。加えて、液体中にセルのアセンブリを浸漬することにより、特に短絡中のセルからのカロリーの放散を改善することが可能になり、したがってその影響を著しく制限することが可能になる。
【0060】
本出願において、「電気エネルギー蓄電セル」とは、少なくとも、
固体金属リチウムの層によって形成された、または固体金属リチウムの層を含む負極と、
正極と、
正極と負極との間に配置された、特にリチウム塩を含む固体電解質と、
正極側の集電体と
を備えるアセンブリを意味する。
【0061】
本出願において、「密度」とは、当の液体の質量密度と水の質量密度との間の比を意味する。
【0062】
本出願において、「固体金属リチウム」は、
純金属リチウム、または
少なくとも1つの金属リチウム合金の組み合わせ、または
純金属リチウムと少なくとも1つの金属リチウム合金の組み合わせ
を含むことができる。
【0063】
「固体金属リチウム」が、異なる溶融温度を有する、上記に示したものなどの異なる形態のリチウムの組み合わせを含む場合、加熱ステップは、
前記異なる溶融温度の最低温度、または好ましくは、前記異なる溶融温度の最高温度、または
例えば、異なる温度の組み合わせ、または第1の縁部から第2の縁部に延在する温度勾配全体
以上の処理温度にセルのアセンブリを加熱することを行う。
【0064】
非限定的な実施形態の例によれば、処理温度は、純金属リチウムを利用する場合、180.5℃以上である。
【0065】
一実施形態の例によれば、処理温度は、最大温度、例えば300℃以下である。
【0066】
アセンブリは、単一または唯一のセルを備えることができる。
アセンブリは、組み立て方向に組み立てられた、または特に積み重ねられたいくつかのセルを備えることができる。組み立て方向は、各セルによって形成された平面に直角であり得る。
【0067】
特に、アセンブリは、セルが直列に接続された電池に対応することができる。
【0068】
好ましい実施形態によれば、位置決めステップは、第1の縁部が上方に位置するセルのアセンブリの垂直位置決めを行うことができる。
【0069】
したがって、密度の差による各セルからの溶融リチウムの流出が改善される。
加えて、溶融リチウムと1つまたは複数の正極との間の接触の危険性が低減され、すなわちゼロになる。
【0070】
好ましくは、浸漬ステップは、液体中に完全にセルのアセンブリを浸漬することによって行われる。
【0071】
したがって、本発明による方法は、事故の危険性、特に、火災の危険性を低減する。加えて、本発明による方法は、特にリチウムまたはリチウム合金のみを抽出することができるように処理温度および液体の密度を制御することによって、リチウムの抽出中の望ましくないまたは制御されていない物理化学反応によって生成され得る汚染化合物の形成を回避することを可能にする。
【0072】
特に有利な特徴によれば、本発明による方法はまた、抽出段階の前に、セルのアセンブリを充電するステップを含むことができ、前記抽出段階は、前記充電されたアセンブリに適用される。
【0073】
1つまたは複数のセルを充電し、充電されたセルに対して抽出段階を行うという事実は、リチウム抽出収率を高めることを可能にする。実際、セルの充電により、リチウムイオンを負極に向けて変位させることが可能になり、リチウムの回収可能量を増加させることができる。
【0074】
各セルは、個々に、またはセルのアセンブリの充電によって充電することができる。
【0075】
特に有利な実施形態によれば、抽出段階はまた、セルのアセンブリを圧縮するステップを含むことができる。
【0076】
したがって、溶融リチウムが各セルから排出され、回収されるリチウムの量およびプロセスの反応速度が増加する。
【0077】
圧縮ステップは、抽出段階全体を通して、連続的に行うことができる。この場合、各セルは、抽出段階の全期間にわたって、部分的または全体的に圧縮を受ける。
【0078】
あるいは、圧縮ステップは、抽出段階中に1回または数回、別々に行うことができる。この場合、抽出段階は、セルのアセンブリが圧縮を受けない瞬間を含む。
【0079】
有利には、圧縮ステップは、第2の縁部から第1の縁部にセルのアセンブリの表面を掃引することによって、圧縮を前記アセンブリの表面に加えることができる。したがって、溶融リチウムは、そこから1つまたは複数の負極が延在する第1の縁部に向かって徐々に搬送/案内されることで、回収されるリチウムの量を増加させ、リチウムまたはリチウム合金と1つまたは複数の正極との間の接触の危険性を低減する。
【0080】
例えば、圧縮ステップは、2つのローラの間にセルのアセンブリを通過させることによって行うことができる。
【0081】
別の例によれば、圧縮ステップは、軸受面に対してセルのアセンブリを圧縮する圧縮ローラによって行うことができる。
【0082】
圧縮ステップは、連続するパスによって加えることができ、各パスは、第2の縁部から開始して第1の縁部まで、セルのアセンブリの表面を掃引する。
【0083】
圧縮ローラの間、それぞれ圧縮ローラと軸受面との間のギャップは、セルのアセンブリの厚さから1つまたは複数の固体金属リチウム層の厚さを引いたものに対応することができる。これにより、固体リチウムがセルのアセンブリ内に依然として残っている間に、圧縮を加えることが可能になる。
【0084】
プラテンとも呼ばれる、2つの圧縮ローラの間、それぞれ圧縮ローラと軸受面との間のギャップは、セルのアセンブリに対して依然として圧縮を加えるように、連続するパスにより低減することができる。
【0085】
圧縮ローラの間の、またはプラテンと協働するそれぞれの圧縮ローラの間の通過速度、より一般的には掃引速度は、毎秒数mm~数十mmの間に含まれ得る。
【0086】
さらに、本発明による方法は、抽出段階の前に、セルから「圧着コネクタ」としても知られる少なくとも1つの電気コネクタを取り外すステップを含むことができる。
これにより、セルのアセンブリの処理を容易にすることが可能になる。
【0087】
さらに、本発明による方法は、抽出段階の前に、セルのアセンブリの少なくとも1つ、特に各縁部の高さにおける過剰な材料を除去するステップを含むことができる。
【0088】
同じ発明の別の態様によれば、リチウム金属ポリマー電池などの固体金属リチウムを含む少なくとも1つの電気電池セルのアセンブリからリチウムを抽出するための設備が提案され、前記設備は、
そこから1つまたは複数の負極が延在する前記アセンブリの第1の縁部が、前記第1の縁部とは反対側であり、そこから1つまたは複数の正極が延在する前記アセンブリの第2の縁部よりも上に位置する配向に前記アセンブリを位置決めするための手段と、
液体リチウムよりも高密度で電気絶縁性の液体が充填されたオーブンと、
前記固体金属リチウムの溶融温度以上の処理温度に前記アセンブリを加熱するように構成された加熱手段と
を備える。
【0089】
一般に、設備は、簡潔にするために本明細書では詳細に説明しないが、上述の特徴の少なくとも1つの任意の組み合わせを実装するように構成された手段を備える。
【0090】
液体は、以下の物理化学的特性を含む、天然または合成油であり得る:
・リチウムに対して疎水性かつ非反応性、
・電気絶縁性、
・リチウムよりも高い密度、
・リチウムの溶融温度、すなわち180.5℃を超えても熱的に安定、
・可能な限り高い引火点、ならびに自己発火点。
【0091】
本発明による設備はまた、セルのアセンブリを圧縮するための手段を備えることができる。
圧縮手段は、少なくとも1つのローラを備えることができる。
【0092】
特に、圧縮手段は、軸受面に対してセルのアセンブリを圧縮する単一のローラを備え得る。軸受面を加熱し、セルのアセンブリの温度上昇を加速することができる。
【0093】
あるいは、圧縮手段は、セルのアセンブリが間を通過する2つのローラを備えてもよい。
【0094】
一般に、圧縮ステップは、抽出段階全体を通して、連続的な圧縮を加えるように構成することができる。
【0095】
あるいは、圧縮手段は、抽出段階中に1回または数回、経時的に不連続的に圧縮を加えるように構成されてもよい。この場合、抽出段階は、セルのアセンブリが圧縮を受けない瞬間を含む。
【0096】
有利には、圧縮手段は、第2の縁部から第1の縁部まで、徐々にまたはセルのアセンブリの表面上を掃引することによって、一定または可変の値で圧縮を加えるように構成することができる。したがって、溶融リチウムは、低い位置に位置する第1の縁部に向かって徐々に搬送/案内されることで、回収されるリチウムの量を増加させ、リチウムと1つまたは複数の正極との間の接触の危険性を低減する。
【0097】
1つまたは2つの圧縮ローラを使用する場合、連続するパスによってセルのアセンブリに対して圧縮を加えることができる。各パスは、第2の縁部から第1の縁部にセルのアセンブリの表面上を掃引することによって圧縮を加える。各パスの終わりに、ローラを引き出すことによって、または軸受面からローラを引き出すことによって、圧縮を停止して第2の縁部に戻り、新たなパスを開始することができる。
【0098】
それぞれ圧縮ローラと軸受面との間のローラの間の距離は、連続するパス、特に2つの連続するパスの間で縮小することができる。
【0099】
本発明による方法は、いくつかのセルのアセンブリ、特に電池パックを形成し、前記電池パック内で並列に互いに接続されたいくつかのセルのアセンブリを処理するために実施することができる。
【0100】
セルの少なくとも2つのアセンブリは、例えば第1の縁部に平行な方向に、重なり合うことなく並べて整列させることができる。
【0101】
この場合、圧縮は、1つの同じ圧縮手段、すなわちローラのセット、または軸受面と協働する1つのローラによってセルの少なくとも2つのアセンブリに加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
他の利点および特徴は、決して限定的ではない実施形態の詳細な説明を検討すること、および添付の図面から明らかになるであろう。
【
図1】本発明の意味における、セルの非限定的な実施形態の例の概略図である。
【
図2】本発明の意味における、セルのアセンブリの非限定的な実施形態の例の概略図である。
【
図3】提案された第1の解決策に適合する、本発明による方法の第1の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【
図4】提案された第1の解決策に適合する、本発明による方法の第2の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【
図5】提案された第1の解決策に適合する、本発明による設備の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【
図6】提案された第2の解決策に適合する、本発明による方法の第1の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【
図7】提案された第2の解決策に適合する、本発明による方法の第2の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【
図8】提案された第2の解決策に適合する、本発明による設備の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
以下に説明される実施形態は決して限定的なものではないことが、十分に理解される。本発明の変形例は、記載された他の特徴とは別に、この特徴の選択が技術的利点を与えるか、または従来技術に対して本発明を区別するのに十分である場合、以下に説明される特徴の選択のみを含むことが想定され得る。この選択は、構造的詳細なしで、または構造的詳細の一部のみが技術的利点を与えるか、または従来技術に対して本発明を区別するのに十分である場合、この部分のみを含む少なくとも1つの、好ましくは機能的な特徴を含む。
【0104】
図において、いくつかの図に共通する要素は、同じ参照番号を保持している。
本出願において、「密度」とは、当の液体の質量密度と水の質量密度との間の比を意味する。
【0105】
液体は、以下の物理化学的特性を含む、天然または合成油であり得る:
・リチウムに対して疎水性かつ非反応性、
・電気絶縁性、
・リチウムよりも高い密度、
・リチウムの溶融温度、すなわち180.5℃を超えても熱的に安定、
・可能な限り高い引火点、ならびに自己発火点。
【0106】
図1は、2つの提案された解決策のいずれが実施されるかにかかわらず、本発明の意味における、セルの非限定的な実施形態の例の概略図である。
【0107】
図1に示すセル100は、固体金属リチウムの層によって形成された、または固体金属リチウムの層を含む負極102を備える。
【0108】
セル100はまた、正極104を備える。正極104は、一般に、ポリマーおよび活物質に基づく複合材料の層によって形成される。
【0109】
負極102と正極104との間には、固体電解質の層106が配置される。この固体電解質の層106は、例えばリチウム塩を含むことができる。
【0110】
セル100はまた、正極104の側に集電体108を備える。集電体108は、一般に、アルミニウムから製造される。
【0111】
従来、セル100の負極102は、セル100の第1の縁部110の側でセル100の他の要素を越えて、ここでは図の右側に延在し、セル100の正極104および/または集電体108(前記集電体108は正極104に接続される)は、第1の縁部110とは反対側の第2の縁部112の側でセル100の他の要素を越えて延在する。図示の例では、集電体108のみが、その第2の縁部112上でアセンブリ100を越えて、ここでは図の左側に延在する。他の例では、延長部は、正極104のみ、または正極104および集電体108も含んでもよい。
【0112】
当然のことながら、
図1に示すセル100は、非限定的な例示として与えられる、実現の非常に単純化されたバージョンである。本発明の意味におけるセルは、示されたもの以外の層、またはより多くの層、またはその組成が非限定的な例としてここに与えられる組成とは異なる層を備えることができる。
【0113】
図2は、2つの提案された解決策のいずれが実施されるかにかかわらず、本発明の意味における、セルのアセンブリの非限定的な実施形態の例の概略図である。
【0114】
図2に示すセルアセンブリ200は、本発明の意味における1つまたは複数のセルを備える。
【0115】
特に、セルアセンブリ200は、各セル100iの層の平面に直角な方向202に組み立てられた、いくつかの同一のセル1001~100nを備える。
【0116】
各セル100
iは、
図1のセル100と同一であってもよい。
加えて、2つの隣接するセル100
i~100
i+1(i<n)の間には、正極204
i、およびそれに接続された集電体206
iが配置される。
【0117】
提案された第1の解決策による実施形態の例
図3は、提案された第1の解決策に適合する、本発明による方法の第1の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【0118】
図3に示す方法300は、第1の任意選択のステップ302を含み、その間にセルのアセンブリの電気コネクタ、特に「圧着コネクタ」としても知られる電流コンセントレータが取り外される。
【0119】
任意選択のステップ304の間、セルのアセンブリの各側縁部の高さにおける過剰な材料、特に固体金属リチウムが除去される。
【0120】
次いで、方法300は、セルからの金属リチウムの抽出の段階306を含む。
【0121】
抽出段階306は、そこから1つまたは複数の負極が延在する第1の縁部が、そこから1つまたは複数の正極および集電体が延在する第2の縁部よりも低い高さに位置する配向にセルのアセンブリを位置決めするステップ308を含む。特に、ステップ308は、垂直配向、すなわち重力ベクトルに平行にセルのアセンブリを位置決めし、縁部から1つまたは複数の負極が下方に延在する。好ましくは、しかし決して限定的ではなく、セルのアセンブリは、抽出段階306全体を通して、この配向に保持される。
【0122】
抽出段階306はまた、セルのアセンブリに存在する固体金属リチウムの溶融温度以上の処理温度、例えば180.5℃の温度にセルのアセンブリを加熱するステップ310を含む。この温度は、重力の影響下での自然排出によって固体金属リチウムの溶融および各セルからの固体金属リチウムの抽出を引き起こす。好ましくは、しかし決して限定的ではなく、セルのアセンブリは、抽出段階306全体を通して、この温度に維持される。
【0123】
有利には、加熱ステップは、不活性ガスで充填された密閉エンクロージャ内で行われる。
【0124】
抽出段階306はまた、各セルから溶融リチウムを洗い流すためにセルのアセンブリを圧縮する任意選択のステップ312を含んでもよい。圧縮は、抽出段階306の全部または一部にわたって連続的に行うことができる。あるいは、圧縮ステップ312は、抽出段階306中に不連続的に数回繰り返すことができる。好ましくは、圧縮ステップ312は、そこから1つまたは複数の正極が延在する第2の縁部から開始し、そこから1つまたは複数の負極が延在する第1の縁部に向かって移動しながら、徐々にまたはセルのアセンブリの表面上を掃引することによって圧縮の適用を行う。
【0125】
図4は、提案された第1の解決策に適合する、本発明による方法の別の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【0126】
図4に示す方法400は、
図3の方法300のすべてのステップを含む。
【0127】
方法400はまた、方法300のステップの前に、処理されたセルの再充電を行うステップ402を含む。
【0128】
各セルは、部分的または完全に再充電され得る。
各セルを充電するという事実は、再充電がセルの負極へのリチウムイオンの移行を引き起こすので、抽出に利用可能なリチウムの量を増加させることを可能にする。
【0129】
図5は、提案された第1の解決策に適合する、本発明による設備の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【0130】
図5に示す設備500は、本発明による方法、特に
図3および
図4の方法300および400を実施するために使用することができる。
【0131】
設備500は、例えば
図1のセル100などの固体金属リチウムを含む電池セルから、または
図2のアセンブリ200などのセルのアセンブリから、リチウムの一部または全部を抽出および回収することを可能にする。
【0132】
設備500は、セルに存在する固体金属リチウムの溶融温度以上の処理温度、例えば180.5℃または181℃にセルを加熱するように構成された、不活性ガスで充填された、または真空下に置かれたオーブン502を備える。
【0133】
設備500は、第1の縁部110が第2の縁部112の高さよりも下に位置決めされる垂直位置、または少なくとも傾斜した位置にセル100またはセルアセンブリ200を保持するための一対の顎部504を備える。各顎部504は、垂直にセルまたはセルのアセンブリ200を変位させるように垂直レール506上に可動式に取り付けられる。
【0134】
設備500はまた、セル100またはセルのアセンブリ200の厚さから金属リチウムの固体層の厚さを引いたものに対応するギャップをそれらの間に有する、一対のローラ508を備える。一対のローラは、顎部504が上方に変位されると、セル100、それぞれセルのアセンブリ200が、第2の縁部112から開始して、ローラ508の間を通過するように位置決めされる。したがって、ローラは、第2の縁部112から開始して第1の縁部110に向かって移動しながら、徐々に圧縮をセル100に、セルアセンブリ200にそれぞれ加える。
【0135】
設備はまた、重力の影響下で各セルから流出する溶融金属リチウムを回収するための容器510を備える。容器510は、リチウムに対して不活性でなければならない。
【0136】
提案された第2の解決策による実施形態の例
図6は、提案された第2の解決策に適合する、本発明による方法の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【0137】
図6に示す方法600は、第1の任意選択のステップ602を含み、その間に各電池セルの「圧着コネクタ」としても知られる電気コネクタが取り外される。
【0138】
任意選択のステップ604の間、セルのアセンブリの各側縁部の高さにおける過剰な材料が除去される。
【0139】
次いで、方法600は、セルからの金属リチウムの抽出の段階606を含む。
【0140】
抽出段階606は、そこから1つまたは複数の負極102が延在する第1の縁部110が、そこから1つまたは複数の正極104および集電体が延在する第2の縁部112よりも垂直方向において高い高さに位置する配向にセルのアセンブリを位置決めするステップ608を含む。特に、ステップ608は、垂直配向、すなわち重力ベクトルに平行にセルのアセンブリを位置決めし、縁部から1つまたは複数の負極102が上方に延在する。好ましくは、しかし決して限定的ではなく、セルのアセンブリは、抽出段階606全体を通して、この配向に保持される。
【0141】
抽出段階606は、液体850(
図8参照)中にセルのアセンブリを浸漬するステップ609を含む。例えば、
図8に示す実施形態では、液体850は、以下の物理化学的特性を含む天然または合成油、例えばパラフィン油である:
・リチウムに対して疎水性かつ非反応性、
・電気絶縁性、
・リチウムよりも高い密度、
・リチウムの溶融温度、すなわち180.5℃を超えても熱的に安定、
・可能な限り高い、例えば600℃を超える温度、最低でもセルの処理温度を超える引火点、ならびに自己発火点。
【0142】
浸漬ステップ609は、液体850がセルのアセンブリ200を完全に覆うように、液体850中にセルのアセンブリ200を浸漬することによって行われる。
【0143】
この浸漬ステップ609は、セルと液体850との間の著しい熱交換を促進するのに特に有利であり、これは、短絡中にセルの過熱の危険性および生成されたカロリーの排出を制限し、加熱速度を改善する。
【0144】
抽出段階606はまた、セルのアセンブリに存在する固体金属リチウムの溶融温度以上の処理温度、例えば180.5℃の温度にセルのアセンブリを加熱するステップ610を含む。提示される実施形態では、液体850はオーブンによって加熱され、熱をセルのアセンブリに伝達する。リチウムの溶融温度を超えると、温度は、重力の影響下での自然排出によって固体金属リチウムの溶融および各セルからの固体金属リチウムの抽出を引き起こす。好ましくは、しかし決して限定的ではなく、セルのアセンブリは、抽出段階606全体を通して、この温度に維持される。処理温度は、液体850がそれを超えて分解する、各液体850に固有の液体850の分解温度を超えてはならない。換言すれば、液体850は、閾値温度を超えると特性を変化させ、その結果、前述の特性はもはや満たされない。理想的には、液体の分解温度は、リチウムの溶融温度に対して+40℃よりも高くなければならない(例えば、+60℃~+60℃の間)。
【0145】
したがって、電池からリチウムを抽出するための方法は、そこから1つまたは複数の負極102が延在する第1の縁部110を介してリチウムを流すことによって短絡電位の影響を制限することを可能にし、リチウムと反応しない液体中にセルのアセンブリを浸漬し、特に短絡中、セルのアセンブリからのカロリーの放散を改善することによって短絡を制御することを可能にする。
【0146】
抽出段階606はまた、各セルからの溶融リチウムの抽出を加速するためにセルのアセンブリを圧縮する任意選択のステップ612を含んでもよい。圧縮は、抽出段階606の全部または一部にわたって連続的に行うことができる。あるいは、圧縮ステップ612は、抽出段階606中に不連続的に数回繰り返すことができる。好ましくは、圧縮ステップ612は、そこから1つまたは複数の正極104が延在する第2の縁部112から開始し、そこから1つまたは複数の負極102が延在する第1の縁部110に向かって移動しながら、徐々にまたはセルのアセンブリの表面上を掃引することによって圧縮の適用を行う。
【0147】
図7は、提案された第2の解決策に適合する、本発明による方法の別の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【0148】
図7に示す方法700は、
図6の方法600のすべてのステップを含む。
【0149】
方法700はまた、方法600のステップの前に、処理された1つまたは複数のセルの再充電を行うステップ702を含む。
【0150】
各セルは、部分的または完全に再充電され得る。
各セルを充電するという事実は、再充電がセルの負極へのリチウムイオンの移行を引き起こすので、抽出に利用可能なリチウムの量を増加させることを可能にし、抽出されるリチウムの量ならびに動作の反応速度を改善する。
【0151】
図8は、提案された第2の解決策に適合する、本発明による設備の非限定的な実施形態の例の概略図である。
【0152】
図8に示す設備800は、本発明による方法、特に
図6および
図7の方法600および700を実施するために使用することができる。
【0153】
設備800は、例えば
図1のセル100などの固体金属リチウムを含む電池セルから、または
図2のアセンブリ200などのセルのアセンブリから、リチウムの一部または全部を抽出および回収することを可能にする。
【0154】
設備800は、セルに存在する固体金属リチウムの溶融温度以上の処理温度、例えば180.5℃または181℃にセルを加熱するように構成された、液体850で充填されたオーブン802を備える。提示される実施形態では、液体850はオーブン802によって加熱され、熱をセルのアセンブリに伝達する。
【0155】
設備800は、第1の縁部110が第2の縁部112の高さよりも上に位置決めされる垂直位置、または少なくとも傾斜した位置にセル100またはセルアセンブリ200を保持するための一対の顎部804を備える。各顎部804は、垂直にセル100またはセルのアセンブリ200を変位させるように垂直レール806上に可動式に取り付けられる。
【0156】
液体850は、第1の縁部110が液体850の高さよりも下に位置するように、セルのアセンブリを完全に覆う。
【0157】
設備800はまた、セル100またはセルのアセンブリ200の厚さから金属リチウムの1つまたは複数の固体層の厚さを引いたものに対応するギャップをそれらの間に有する、一対のローラ808を備える。一対のローラは、顎部804が上方に変位されると、セル100、それぞれセルのアセンブリ200が、第2の縁部112から開始して、ローラ808の間を通過するように位置決めされる。したがって、ローラは、第2の縁部112から開始して第1の縁部110に向かって移動しながら、徐々に圧縮をセル100に、セルアセンブリ200にそれぞれ加える。
【0158】
当然のことながら、本発明は、上に詳述した例に限定されない。
例えば、固体金属リチウムを含む電気電池セルの組成は、
図1に示すものとは異なり得る。
【0159】
加えて、本発明による設備は、
図5~
図7に示されている装置以外の装置、例えば、セルから電気コネクタを切り離すための手段、縁部の一方または各々の過剰な部分を切り離すための手段などを備えることができる。
【0160】
例えば、顎部504および804はそれぞれ固定することができ、ローラ508および808はそれぞれ可動式であり得、実施形態によれば、セルのアセンブリを上から下に、下から上にそれぞれ圧縮することができる。
【0161】
加えて、1つのセルまたはセルのアセンブリ専用の単一のオーブンおよびいくつかの対のローラを使用することが可能である。
【0162】
一対のローラは、セルのいくつかの隣接するアセンブリを同時に処理するために動作することができる。
【0163】
例として、ステップ609は、液体850中にセル100またはセルのアセンブリ200を沈めることによって、または液体850がセルのアセンブリ200、セル100をそれぞれ覆うようにオーブン802を液体850で充填することによって行うことができる。
【0164】
そこから1つまたは複数の負極102が延在するアセンブリの第1の縁部110の配向は、セル100またはセルのアセンブリ200が浸漬される流体の密度の関数であることに留意されたい。流体が本発明によって提案された第1の解決策によってカバーされるガスである場合、ガスはリチウムよりも低い密度を有するので、第1の縁部110は、そこから1つまたは複数の正極104が延在する第2の縁部112よりも下に位置する。流体が本発明によって提案された第2の解決策によってカバーされるリチウムよりも高密度の液体である場合、第1の縁部110は、第2の縁部112よりも上に位置する。
【0165】
流体がリチウムよりも低密度の液体である場合、第1の縁部110の配向は、第1の実施形態に示すように、第2の縁部112の下になる。
【0166】
加えて、ローラ508、808それぞれによるセル100の圧縮の方向は、第2の縁部112から第1の縁部110にセルを圧縮するのにより有利である。したがって、流体の密度に応じて、
図5および
図8に示す例に見られるように、圧縮の方向は同一ではない。
【0167】
第1の縁部110は、リチウムが液体状態になると、リチウムが流れなければならない側を画定するという事実を特徴とすることができる。
【国際調査報告】