(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】圧縮手段を備える燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/248 20160101AFI20220316BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20220316BHJP
【FI】
H01M8/248
H01M8/2465
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546333
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 IB2020050962
(87)【国際公開番号】W WO2020161668
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521007377
【氏名又は名称】エーホー・グループ・エンジニアリング・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルディト・マティアン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・シャイーニョ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA25
5H126AA28
5H126EE11
5H126FF08
(57)【要約】
燃料電池は、外部保持キットを使用して圧縮される複数のセルの上部および底部においてエンドプレートを備える複数の組み立てセルを備える。エンドプレートは、アセンブリの上部または底部に配置され、アクティブ領域とセルの周囲のシーラントとに圧縮力を分散させる。エンドプレートは、他の構成要素とアクティブ領域とが干渉することなく、アセンブリ内の特定の領域にかかる圧縮力を正確に調整するための自由度および柔軟性をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池(1)であって、アクティブ領域(22)とマニホルド(12)領域とを備える少なくとも1つのセル(2)と、上部エンドプレート(3)と、底部エンドプレート(4)と、上部カバー(5)と、圧縮手段(9)と、を備えており、
前記上部エンドプレートは、第1の上部エンドプレート(20)および第2の上部エンドプレート(21)を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記第1の上部エンドプレートおよび/または前記第2の上部エンドプレートは、圧縮手段(23、24)を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記第1の上部エンドプレート(20)は、前記燃料電池(1)の前記マニホルド(12)領域をカバーすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記第2の上部エンドプレート(21)は、前記燃料電池(1)の前記アクティブ領域(22)をカバーすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記圧縮手段は、ばね(23、24)を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記第1の上部エンドプレート(20)および前記第2の上部エンドプレート(21)の前記ばね(23、24)は、同じばねであるか、または異なるばねであることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記燃料電池(1)は、圧縮ボルト(25)をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記マニホルド(12)領域と前記アクティブ領域(22)の周囲とにかかる圧縮力は、前記第1の上部エンドプレート上の専用のばね(26、27)によって達成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記燃料電池は、外部圧縮手段(6)をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項10】
外部圧縮手段は、ベルトまたはロッドを備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記燃料電池は、少なくともアセンブリの底部、側面、または上部に配置されたガス入口および出口マニホルドをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記アクティブ領域にかかる圧縮力は、組み立て前または組み立て後に調整できることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項13】
圧縮システムは、スタックの組み立て前または組み立て後にシーリング材料を硬化するために使用されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記燃料電池は、高温または低温で動作するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、EH GROUP Engineering SAの名で2019年2月7日付で出願された先のスイス出願番号CH00146/19に対して優先権を主張するものであり、この先の出願の内容は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、燃料電池モジュールおよび当該燃料電池モジュールを製造しかつ組み立てるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多層スタックを圧縮して負荷をかけた状態で維持する構造または方法を公表するいくつかの特許出願が公開されている。例えば特許文献1では、動作中にスタックを圧縮した状態で維持するために、スタックをその両側面において封入する少数の金属フレームが提案されている。特許文献2では、ワイヤーがスタックの周りに巻き付けられた新しい圧縮機構が設計されている。いくつかの他の特許文献として、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12などがあり、同じ目標へ向けてさまざまな構想が提案されている。
【0004】
上記特許文献のすべてにおいて、スタックの上部および底部に2つのエンドプレートが設けられており、いくつかの圧縮ばねがエンドプレートと最後のスタックセルとの間に組み込まれており、当該圧縮ばねは外部圧縮キットを使用して圧縮される。セル間の接触抵抗を最小限に抑えさらにアセンブリの漏出をなくすために、エンドプレートに加えられた力は、セルのアクティブ領域およびその周囲のマニホルドに分散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/025701号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/316039号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/093890号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/145713号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/311457号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/305380号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/086199号明細書
【特許文献8】特開2010-19886号公報
【特許文献9】特開2012-028194号公報
【特許文献10】独国特許出願公開第2509152号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2006/046127号明細書
【特許文献12】国際公開第2017/131569号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
提案された設計では、組み立てられたスタックに適用されかつ同時にアクティブ領域とさらにまたマニホルド領域とに分配される1セットの圧縮メカニズムが存在する。なお、重要な課題は、アクティブ領域とさらにまたマニホルドとに独立して圧縮を加えることを可能にし、かつ加えられる力を正確に調整できるようにすることである。使用される設計および材料に基づいて、セル自体と比べて、さまざまな圧縮力をアクティブ領域の周囲のシーリングに加えることが必要とされる場合がある。例えば射出成形、スクリーン印刷、または分注によって調製されるシーリング材料が存在しており、その設計に応じて必要とされる圧縮力は変動する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外部圧縮キットの設計に関係なく、この問題を克服する新しい解決策を提案する。新しい発明の主な利点の1つは、組み立て前にアクティブ領域またはセルの周囲のシーリングのいずれかに加えられる圧力を正確に調整できるアセンブリに完全な柔軟性のある方法を提供することである。
【0008】
別の利点は、組み立て後にアクティブ領域に加えられる負荷を微調整できることである。
【0009】
別の利点は、シーリング材料の厚さを最適化するのに役立つことであり、これによって、アセンブリ内のプレートの設計を簡略化できる。
【0010】
別の利点は、とりわけガスマニホルドに近接するセル縁部の周囲において、アクティブ領域での均一な圧力分布を保証することである。
【0011】
さらに、提案された解決法は、PEMなどの低温燃料電池だけでなく、シーラントに加えられる圧力が重要となるSOFCを含む他のタイプの低温/高温燃料電池にも使用できる。
【0012】
実施形態では、本発明は、アクティブ領域およびマニホルド領域を伴う少なくとも1つのセル、好ましくはいくつかのそうしたセルと、上部エンドプレートと、底部エンドプレートと、上部カバーと、圧縮手段とを備える燃料電池に関し、当該上部エンドプレートは、第1の上部エンドプレートと第2の上部エンドプレートとを備える。
【0013】
実施形態では、第1の上部エンドプレートおよび/または第2の上部エンドプレートの各々は、圧縮手段を備えてもよい。
【0014】
実施形態では、第1の上部エンドプレートは、燃料電池のマニホルド領域をカバーしてもよい。
【0015】
実施形態では、第2の上部エンドプレートは、燃料電池のアクティブ領域をカバーしてもよい。
【0016】
実施形態では、圧縮手段はばねを備えてもよい。当然のことながら他の同等の手段も実現可能である。
【0017】
実施形態では、第1および第2の上部エンドプレートのばねは、同じばねであってもよく、あるいは異なるばねであってもよい。
【0018】
実施形態では、燃料電池は、圧縮ボルトまたは他の同等の手段をさらに備えてもよい。
【0019】
実施形態では、シーラント(マニホルド領域)とアクティブ領域の周囲とにかかる圧縮力は、第1の上部エンドプレート上の専用のばねによって達成されてもよい。実施形態では、第2の上部エンドプレートは、圧縮されず、そのままにされてもよい。
【0020】
実施形態では、燃料電池は、外部圧縮手段をさらに備えてもよい。
【0021】
実施形態では、外部圧縮手段は、ベルトまたはロッドもしくは他の同等の手段を備えてもよい。
【0022】
実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるような、提案された圧縮システムおよび手段を備える燃料電池スタックに関する。
【0023】
実施形態では、本発明は、アクティブ領域にかかる圧縮力と、シーラントを備えるマニホルドにかかる圧縮力とが異なり得る燃料電池スタックに関する。
【0024】
実施形態では、本発明は、シーラントに加えられる圧縮力をアクティブ領域に加えられる力から独立させることができる燃料電池スタックに関する。
【0025】
実施形態では、本発明は、組み立て前または組み立て後にアクティブ領域にかかる圧縮力を調整することができる燃料電池スタックに関する。
【0026】
実施形態では、本発明は、スタックの組み立て前または組み立て後に様々なシーリング材料を硬化させるために圧縮システムを使用することができる燃料電池スタックに関する。
【0027】
実施形態では、本発明は、熱または圧力をセルの周囲のシーラントにのみ集中することができる圧縮システムに関する。
【0028】
実施形態では、本発明は、燃料電池を形成するセルのスタックに組み込むことができる、本明細書で提案されるような圧縮システムに関し、当該スタックは、ベルト、ロッド、サイドパネル、または他の構成もしくは同等の手段で圧縮される。
【0029】
実施形態では、提案された圧縮システムを備える燃料電池スタックアセンブリは、少なくとも、アセンブリ/燃料電池の底部、側面、または上部に配置され得るガス入口および出口マニホルドをさらに備える。
【0030】
実施形態では、アクティブ領域にかかる圧縮力は、燃料電池の組み立ての前または組み立て後に調整されてもよい。
【0031】
実施形態では、圧縮システムは、例えばマニホルド領域において、スタックの組み立て前または組み立て後に(様々な)シーリング材料を硬化させるために使用されてもよい。
【0032】
実施形態では、本発明は、さまざまなタイプの燃料電池、例えばPEM:プロトン交換膜燃料電池、SOFC:固体酸化物形燃料電池、DMFC:直接メタノール燃料電池などの高温または低温動作燃料電池に使用することができる、本出願で定義される圧縮システムに関する。
【0033】
実施形態では、本発明は、本出願の開示として少なくとも1つの燃料電池を備える製品、デバイス、およびシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】
図1はさまざまな圧縮システムを備えるスタックアセンブリの例を示している:
図1Aは、外部ベルトを用いた圧縮を示す図である。
【
図1C】サイドパネルを用いた圧縮を示す図である。
【
図2】スタックアセンブリでの圧縮構想の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に基づくスタックアセンブリを示す図である。
【
図4】アクティブ領域およびシーラント/マニホルド領域のための個別の圧縮ばねの一例を示す図である。
【
図5】アクティブ領域の圧縮の実施形態を示す図である。
【
図6】アクティブ領域における圧縮ばねとマニホルド/シーラント領域における圧縮ばねとの一実施形態を示す図である。
【
図7A】本発明の実施形態に基づく燃料電池の完成したアセンブリの実施形態を示す図である。
【
図7B】本発明の実施形態に基づく燃料電池の完成したアセンブリの実施形態を示す図である。
【
図8】高温燃料電池のための圧縮手段の実施形態を示す図である。
【
図9A】組み立てられた燃料電池のガス供給部およびマニホルドの実施形態を示す図である。
【
図9B】組み立てられた燃料電池のガス供給部およびマニホルドの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、圧縮手段を備える従来の最先端のスタックアセンブリ1を示す。燃料電池を形成するアセンブリは、互いに重なり合って組み立てられた複数のセル2を備えており、これらセル2は、上部および底部において2つのエンドプレート3、4(上部プレート3および底部プレート4)とカバー5とを用いて封入されている。上述のように、アセンブリを圧縮形式で維持するためのいくつかの技術が存在しており、
図1にはさまざまな解決法が図示されており、
図1Aにはベルト6を用いた圧縮(例えば特許文献3)、
図1Bにはロッド7およびばねを用いた圧縮(例えば米国特許第2002/110722号明細書)、
図1Cにはサイドパネル8を用いた圧縮(例えば特開2012-181996号公報)が図示される。
【0036】
図2は、
図1のスタックアセンブリ1を、非圧縮状態でかつ分解図で示す。圧縮のために組み込まれた圧縮ばね9の形状および構造は、燃料電池の設計および用途に応じて異なってもよい;なお組み立てにおける主な原理は同じである。上部エンドプレート3と上部カバー5との間に配置されるいくつかの圧縮ばね9が存在するか、またはロッド7の場合はスタックの上部または底部に存在する(
図1B)。ばね9の数および当該ばねによって加えられる力は、セル2に必要な圧力に基づいて評価される。例えば1~2[MPa]の圧力をエンドプレート3、4の表面に加えることができる。必要に応じてまたは別の分布に従って、異なる圧縮力を有するさまざまなばね9をアセンブリの中央または側方で使用することができる。
【0037】
すべての上述の場合において、スタックに加えられた圧力は、セル2のアクティブ領域と、マニホルド11およびシーリング12が配置される当該領域の周囲とに分散される。何らかの理由でシーリング11/マニホルド12の領域にかかる圧力を増加させる必要がある場合、シーリング11/マニホルド12をさらに圧縮してこの目標を達成するために、外部圧縮キットを当該領域でさらに締めることが望ましく、あるいはより厚手のシーリング材料を使用することが望ましい。
【0038】
当業者は、抵抗率を低下させるようにアクティブ領域にかかる圧力を増加させることの利点を理解するであろう;しかしながら、アクティブ領域の過度な圧縮はチャネルの損傷および/または詰まりを引き起こし得るため、圧力を変更できる量には制限がある。
【0039】
さらに、セルの動作中に、スタックは、多くの場合にシーリング材料の膨張よりも大きい熱膨張を経る;その結果、シーラントにかかる圧縮力が低下し、続いて長期的には漏出が引き起こされる可能性がある。
【0040】
したがって、本発明の目的は、公知のデバイスおよびシステムを改善することである。
【0041】
本発明のさらなる目的は、燃料電池、そうしたアセンブリおよび同様の製品の適切な圧縮を可能にする単純でありかつ効率的な解決策を提案することである。
【0042】
本発明の実施形態は、公知の燃料電池の上記課題および問題を克服する新しい設計構造(例えば
図3から
図9を参照)を導入する。
【0043】
本発明の実施形態におけるエンドプレート3、4は、本質的にかつ好ましくはそれだけでマニホルド領域12およびシーラントと接触する第1の別個のエンドプレート20(「外側または第1の上部エンドプレート」)と、第2のエンドプレート21(「内側または第2の上部エンドプレート」)と、が存在するように構成されており、第2のエンドプレート21は好ましくは第1のエンドプレート20によって包囲されている。第2のエンドプレート21は、本質的にかつ好ましくはそれだけで、セルのアクティブ領域22;ひいては集電体22と接触している。当然のことながら、上部エンドプレートを2つ以上のプレート、例えば3つ以上のプレートに分離することも可能である。例えば第2の上部エンドプレートは、互いに取り付けられているかどうかにかかわらず、2つのプレートから形成されてもよい。
【0044】
本発明の実施形態では、燃料電池は、各エンドプレート20、21に別々に配置された圧縮ばね23、24を備えており、ばね23はプレート20上に、ばね24はプレート21上に配置される。
【0045】
この構成は、マニホルド(シーラント)領域12とアクティブ領域22とに加えられる力全体を、独立した様式で使用されるばね23、24の数およびタイプに基づいて調整可能にする。例えば、シーラント/マニホルド領域12にかかる力全体は、約2[MPa]に調整することができ、かつアクティブ領域22にかかる力全体は、部品間(例えばシーラント領域)の干渉を伴わずに、約1[MPa]にのみ調整することができる。ばね23は、すべて同じ特性を有してもよくあるいは異なる特性を有してもよく、同じ原理がアクティブ領域のばね24にも適用される。また示されている値は非限定的な例である。
【0046】
別の利益は、本発明に基づく実施形態の現在の設計を用いてアセンブリの総重量を大幅に減らすことができることである。例えば、上部カバー5および2つの一体型エンドプレート20、21は、変形に打ち勝つのに十分な剛性を有する強化プラスチックを用いた射出成形によって製造できる。中央にあるプレート21は、外部フレーム(すなわちプレート20)の内部にすでに封入されているので、より軽い材料から作ることができる。当然のことながら、他の同等の適切な材料も利用可能である。
【0047】
本発明の実施形態に基づく現在の設定の別の利点は、燃料電池の最終組み立ての後であっても、アクティブ領域22に加えられる圧力を調整する可能性を与えることである。
【0048】
図5および
図6に一例が示されている:マニホルド領域/シーラント12とアクティブ領域22の周囲とにかかる圧縮力は、専用のばね26、27によって達成され、かつ上部カバー5および中央にあるエンドプレート21は圧縮手段を伴わず、そのままにされる。なお、中央部分/エンドプレート21に圧縮力を提供するために、エンドプレート5の上部にいくつかの付加的な圧縮ボルト25が追加される。ボルト25は、中央にあるエンドプレート21に直接接触しており、かつボルト25を締めることによって、燃料電池のアクティブ領域22に加えられる圧縮力を、使用されるばねに基づいて徐々に増加できる。加えられた力の総量は、プレート21が下方に移動する距離によって容易に評価できる。加えられた力を評価するための他のいくつかの手段:例えば本発明の実施形態に基づくセンサまたは感圧フィルムもしくは他の同等の手段の使用が存在している。
【0049】
本発明の実施形態の別の利点は、アクティブ領域22の周囲(マニホルド領域12内)のシーラント12が、活性化のためにいくつかの特別な処理を必要としてもよいことである;例えばシーラントが感圧材料から作られる場合、活性化して最良のシーリング結果を達成するために十分な圧力を提供することが必要とされ得る。これは、本発明の原理を用いて達成することができかつ簡単である。
【0050】
本発明の実施形態は、アクティブ領域22に力を加えることなく、この目標を実現する機会を提供する。シーラント/マニホルド領域12で十分な力および結果が達成された後、中央部分21での圧縮は、
図5および
図6に図示されている圧縮と同様に加えることができる。アクティブ領域10専用のばね27は、上部カバー5におけるボルト25によって加えられる力に基づいて圧縮される。
【0051】
本発明の実施形態の別の利点は、様々な外部圧縮機構;例えば(
図1に例示されるような)ベルトまたはロッドもしくは他の設計とともに使用できることである。
図7には、圧縮ベルト6がすべてのアセンブリをまとめて保持しておりかつ本明細書で説明される実施形態で提案されるエンドプレート20、21の構成がスタック内に組み込まれている例が示されている。スタックの上部に外部ボルト25を追加することは任意選択であり、当業者は、動作中に当該外部ボルト25がそうした柔軟性を有する必要あるかどうかを、ひいてはそうしたボルトを使用するかどうかを判断できる。
【0052】
本発明の実施形態の別の利点は、これら実施形態を、SOFC(固体酸化物燃料電池)などのより高温で動作する燃料電池1にも使用できることである。それによって、例えばガラスシーラントを用いて組み立てられたアノード支持セルに基づくSOFCスタックでは、スタックの気密性に関する柔軟性および信頼性が提供される。スタックは、外部ばねを備える
図1Bと同様の圧縮機構を用いて組み立てることができ、高温によるクリープおよび変形を最小限に抑えるために接続ロッドを延長することができ、さまざまな圧力でアクティブ領域を圧縮するためにエンドプレート21、22の中央に付加的な圧縮バーを追加することができ、-一例を
図8に示す。外部接続ロッドは、アセンブリのマニホルドとシーラントとを圧縮し、かつ中央における(単一または複数の)接続ロッド28は、アクティブ領域12への圧縮を提供する。
【0053】
本発明の実施形態は、ガス供給部およびマニホルド29に付加的な複雑さまたは制限をもたらさない。一対の例が
図9に示される。(例として)ガスコネクタ29は、これらガスコネクタ29をエンドプレート4の底部に配置できるようにするために、底部エンドプレートの左側または右側に配置されてもよい。また、
図9には示されていないが、上部エンドプレートにガスコネクタ29を組み込むこともできる(例えば特許文献5)。
【0054】
本説明は、本発明の限度および範囲全体を代表するものとして意図されておらず、またそのように解釈されるべきではない。本発明は、本明細書ならびに添付の図面および発明の詳細な説明においてさまざまな詳細度で記載されており、本発明の範囲に関して、要素や構成要素などを含むかまたは含まないかの制限をする意図はない。本発明の付加的な態様は、特に図面とともに解釈される際に詳細な説明からより容易に明らかとなろう。
【0055】
さらに、例示的な実施形態は、本明細書に開示されるシステムの構造、機能、製造、および使用ならびに方法の原理の全体的な理解を提供するために記載されている。これら実施形態の1つ以上の例は、添付の図面に例示されている。当業者は、本明細書に具体的に記載されかつ添付の図面に示されるシステムおよび方法が非限定的な例示的な実施形態であり、本発明の範囲が特許請求の範囲によって厳しく定義されないことを理解するであろう。例示的な実施形態に関連して例示されるかまたは開示された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。そうした修正および変更は、本発明の範囲内に含まれるよう意図されている。従来の方法およびシステムに関する多くの問題が本明細書で言及されており、かつ本明細書に開示される方法およびシステムは、これら問題の1つ以上に対処し得る。これら問題を説明することによって当業者の知識を認める意図はない。本発明の実施形態に関して特定の方法およびシステムが本明細書に記載されているが、当業者は本発明の範囲はそれほど限定されないことを理解するであろう。さらに、本発明は多くの実施形態を用いて説明されてきたが、多くの代替例、修正例、および変更例が当業者に理解され得るかまたは理解されることは明らかである。したがって、本発明は、本発明の趣旨および範囲内にあるそうしたすべての代替例、修正例、同等物、および変更例を包含するよう意図されている。
【符号の説明】
【0056】
1 燃料電池
2 セル
3 上部エンドプレート
4 底部エンドプレート
5 上部カバー
9 圧縮手段
12 シーラント/マニホルド領域
20 第1の上部エンドプレート
21 第2の上部エンドプレート
22 アクティブ領域
23、24 ばね
【国際調査報告】