(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】シーディングまたは触媒を使わずにパルスレーザー堆積法によって成長させた無転位半導体ナノ構造
(51)【国際特許分類】
H01L 21/203 20060101AFI20220316BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20220316BHJP
H01L 33/04 20100101ALI20220316BHJP
H01S 5/30 20060101ALI20220316BHJP
H01L 51/44 20060101ALI20220316BHJP
H01L 31/0352 20060101ALI20220316BHJP
H01L 31/072 20120101ALI20220316BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20220316BHJP
H01L 51/42 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H01L21/203 Z
H01L21/20
H01L33/04
H01S5/30
H01L31/04 112B
H01L31/04 342B
H01L31/06 400
H01L31/10 A
H01L31/08 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546339
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 IB2020051028
(87)【国際公開番号】W WO2020161685
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521340171
【氏名又は名称】キング・アブドゥッラー・ユニバーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イマン・サレム・ロカン
(72)【発明者】
【氏名】ダイファラー・ラヒム・アルマラウィ
【テーマコード(参考)】
5F103
5F151
5F152
5F173
5F241
5F849
【Fターム(参考)】
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5F103BB22
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(57)【要約】
半導体ナノ構造を基板上に形成するための方法がある。この方法は、基板(105)および半導体材料(110)をパルスレーザー堆積チャンバー(115)内に置くステップ(1300)と、レーザービーム(120)のフルエンス、チャンバー(115)内の圧力P、基板(105)の温度T、半導体材料(110)と基板(105)との間の距離d、およびストランスキー・クラスタノフ核生成の条件が生成されるようにチャンバー(115)内に置かれるべきガス(113)のガス分子直径a0を含むパラメータを選択するステップ(1302)と、選択されたフルエンスを有するレーザービーム(120)を半導体材料(110)に印加して半導体材料(110)のプルームを形成するステップ(1304)とを含む。選択されたパラメータは、プルームから、(1)基板(105)を覆うナノ層(307)、(2)ナノ層(307)の上の多結晶濡れ層(309)、および(3)多結晶濡れ層(309)の上の単結晶ナノフィーチャ(315)の形成を決定し、単結晶ナノフィーチャ(315)は、触媒またはシーディング層なしで成長させられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体ナノ構造を形成するための方法であって、
基板(105)および半導体材料(110)をパルスレーザー堆積チャンバー(115)内に置くステップ(1300)と、
レーザービーム(120)のフルエンス、前記チャンバー(115)内の圧力P、前記基板(105)の温度T、前記半導体材料(110)と前記基板(105)との間の距離d、およびストランスキー・クラスタノフ核生成の条件が生成されるように前記チャンバー(115)内に置かれるべきガス(113)のガス分子直径a
0を含むパラメータを選択するステップ(1302)と、
前記選択されたフルエンスを有する前記レーザービーム(120)を前記半導体材料(110)に印加して前記半導体材料(110)のプルームを形成するステップ(1304)と
を含み、
前記選択されたパラメータは、前記プルームから、(1)前記基板(105)を覆うナノ層(307)、(2)前記ナノ層(307)の上の多結晶濡れ層(309)、および(3)前記多結晶濡れ層(309)の上の単結晶ナノフィーチャ(315)の形成を決定し、
前記単結晶ナノフィーチャ(315)は、触媒またはシーディング層なしで成長させられる、方法。
【請求項2】
前記基板の格子定数と前記単結晶ナノフィーチャの格子定数との間に不整合があるが、前記基板と前記単結晶ナノフィーチャとの間に転位は存在しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板(105)上に前記半導体材料(110)を成長させる間に、前記選択されたパラメータを一定に維持するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体材料(110)の、前記基板(105)上にランディングする種のエネルギーEは、前記レーザービームの前記選択されたフルエンス、前記圧力P、前記温度T、前記距離d、および前記ガス分子直径によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノフィーチャは、ナノワイヤまたはナノロッドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記半導体材料は、III族窒化物材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記III族窒化物材料は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、またはホウ素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板は、Si、またはGaN、またはサファイア、またはMXene、またはグラフェン、またはMoS
2、またはWSe
2から作られる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体材料は、GaNである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ層は、前記チャンバー内に存在する不純物から形成され、10nm未満の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノフィーチャのうちの少なくともいくつかの上にペロブスカイト層を形成し、
前記ペロブスカイト層上に第1の電気接点を形成し、
前記基板上に第2の電気接点を形成すること
によってハイブリッド光検出器または太陽電池を形成するステップ
をさらに含み、
前記ナノフィーチャは、ナノワイヤであり、前記半導体材料は、III族窒化物材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノフィーチャのうちの少なくともいくつかの上にペロブスカイト層を形成し、
前記ペロブスカイト層上に第1の電気接点を形成し、
前記ペロブスカイト層によって覆われていないナノフィーチャ上に第2の電気接点を形成すること
によってハイブリッド光検出器または太陽電池を形成するステップ
をさらに含み、
前記ナノフィーチャは、ナノワイヤであり、前記半導体材料は、III族窒化物材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基板上にIII族窒化物薄膜を直接形成し、前記半導体濡れ層は、前記III族窒化物薄膜上に配置され、
前記ナノフィーチャの下側部分を覆うポリマー層を形成し、
前記ポリマー層と前記ナノフィーチャの上側部分とを覆うインジウムスズ酸化物層を形成し、
前記III族窒化物薄膜上に第1の電気接点を形成し、
前記ポリマー層上に第2の電気接点を形成すること
によって発光ダイオードを形成するステップ
をさらに含み、
前記ナノフィーチャは、ナノワイヤであり、前記半導体材料は、III族窒化物材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
単一または多重量子井戸ベースのレーザーデバイスを、
前記ナノフィーチャの上にn型またはp型層を成長させ、
前記n型またはp型層上に前記多重量子井戸を成長させ、
前記多重量子井戸の上にp型またはn型層を成長させることによって
形成するステップ
をさらに含み、
前記ナノフィーチャは、ナノワイヤであり、前記半導体材料は、III族窒化物材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
半導体デバイス(300)であって、
基板(105)と、
前記基板(105)上に直接形成されたナノ層(307)と、
前記ナノ層(307)上に配置されている半導体、多結晶、濡れ層(309)と、
前記半導体、多結晶、濡れ層(309)上に直接配置されている半導体、単結晶ナノワイヤ(315)と
を備え、
前記半導体、単結晶ナノワイヤ(315)には、貫通転位がない、半導体デバイス(300)。
【請求項16】
前記ナノ層は、前記半導体、多結晶、濡れ層の原子または前記半導体、単結晶ナノワイヤの原子とは異なる原子から作られ、前記半導体、多結晶、濡れ層および前記半導体、単結晶ナノワイヤは、同じ原子から作られる、請求項15に記載の半導体デバイス。
【請求項17】
前記半導体、単結晶ナノワイヤの一部のみを被覆するペロブスカイト層と、
前記ペロブスカイト層上に配置されている第1の電気接点と、
光検出器または太陽電池を得るために、前記基板上に、または前記ペロブスカイト層によって被覆されていない半導体単結晶ナノワイヤ上に配置されている第2の電気接点と
をさらに備える、請求項15に記載の半導体デバイス。
【請求項18】
前記半導体、単結晶ナノワイヤの下側部分を覆うポリマー層と、
前記ポリマー層と前記半導体、単結晶ナノワイヤの上側部分とを覆うインジウムスズ酸化物層と、
前記インジウムスズ酸化物層上に配置されている第1の電気接点と、
前記ポリマー層上に配置されている第2の電気接点と
をさらに備え、
発光ダイオード(1100)を得るために、前記半導体、多結晶、濡れ層は、p型であり、前記半導体、単結晶ナノワイヤは、n型である、請求項15に記載の半導体デバイス。
【請求項19】
前記半導体、単結晶ナノワイヤの上に直接形成されるn型層と、
前記n型層上に形成される単一または多重量子井戸と、
レーザーデバイス(1200)を得るために前記単一または多重量子井戸上に形成されるp型層と
をさらに備える、請求項15に記載の半導体デバイス。
【請求項20】
所与の半導体、単結晶ナノワイヤの側部は、前記単一または多重量子井戸で被覆される、請求項19に記載の半導体デバイス。
【請求項21】
所与の半導体、単結晶ナノワイヤは、前記単一または多重量子井戸を含むように成長させられる、請求項19に記載の半導体デバイス。
【請求項22】
前記濡れ層および前記ナノワイヤの半導体材料は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、またはホウ素を含むIII族窒化物材料であり、前記基板は、Si、またはGaN、またはサファイア、またはMXene、またはグラフェン、またはMoS
2、またはWSe
2から作られる、請求項15に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月10日に出願され、「MANUFACTURE OF GAN AND OTHER SEMICONDUCTOR MATERIAL NANOWIRES/NANOTUBES/NANORODS FOR FABRICATING DEVICES, INVOLVING ABLATING TARGET COMPRISING SEMICONDUCTORS WITH LASER」と題された米国仮特許出願第62/803,515号、および2019年12月17日に出願され、「DISLOCATION-FREE SELF-ASSEMBLY GAN NANOWIRES GROWN ON BULK AND 2D SUBSTRATES FOR HIGH-EFFICIENCY UV EMITTING DEVICES」と題された米国仮特許出願第62/948,998号の優先権を主張し、これらの米国仮特許出願の開示内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
開示されている主題の実施形態は、一般に、ナノワイヤまたはナノロッドまたはナノチューブとしてのナノフィーチャ(nanofeatures)を有する半導体デバイスに関し、これらは、シードまたは触媒を使用せずにパルスレーザー堆積法を用いて基板上に成長させられ、これにより、基板とナノフィーチャとの間の格子不整合効果が排除される。ナノフィーチャと基板との界面において転位は観察されない。さらに、実施形態のうちのいくつかは、高効率紫外線発光を有する半導体ベースのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム、ホウ素、ガリウム、およびインジウムを含む、III族元素は、オプトエレクトロニクスデバイス(たとえば、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオードなど)、および過酷な環境でのセンシング、治療、および産業用途に使用される高出力および/または高周波電力デバイスを含む、様々な半導体デバイスに特に有用であると考えられている。これらのIII族元素は、典型的には、III族化合物(III族酸化物またはIII族窒化物)の形で半導体デバイスに組み込まれる。基板上に、ナノ構造、薄膜などの、高品質のIII族酸化物構造を形成するための技術はしばらく前から知られていた。しかしながら、III族窒化物構造、特にナノ構造を基板上に形成するための現在の技術では、典型的には、高品質のIII族窒化物構造を生産しないか、または法外な費用がかかる。
【0004】
結果としてIII族窒化物構造内に貫通転位(TD)を引き起こす、基板とIII族窒化物構造との間の格子不整合は、基板上に低品質のIII族窒化物構造を形成する主な原因である。実際、異なる基板上に形成された半導体は、基板と成長材料の間に格子不整合を示す。これらの転位は、主に、基板を作る材料とナノ構造を作る材料との間の格子不整合に起因する。歪みは、III族窒化物と格子サイズが似ている基板を採用することによって対処され得るけれども、これらの基板は、典型的には、高価であるため、これらのタイプのデバイスは研究領域に限定され、したがってそのようなデバイスは経済的に製品化され得ない。たとえば、窒化ガリウム基板上に窒化ガリウム構造を形成することで、基板およびナノ構造が両方とも同じ格子を有していることから、これらの層の間の転位が実質的に排除され、したがって、有意な貫通転位が示されず、その上、窒化ガリウム基板は極めて高価である。
【0005】
III族窒化物基板の高コストにより、大量生産および大規模用途のためのシリコン基板など、より費用対効果の高い基板上にIII族窒化物構造を形成するための他の技術が追求されてきた。この点に関して、III族窒化物および他の何らかの半導体の成長は、それらとの大きな格子不整合を有する基板に依存し、それが転位を引き起こすことが知られている。天然基板は、大規模用途には使用できない。天然GaNまたはAlN基板の価格は非常に高く(1インチの基板ウェハの価格は5,000~8,000米ドル)、その成長技術もまた高価であり、それには費用のかかるメンテナンスが必要である。したがって、天然基板では、大量生産または大規模用途を実施することは可能でない。そういうわけで、多くの企業がSiまたはサファイア基板上に半導体を成長させようと四苦八苦している。最も一般的な技術のうちの2つでは、窒化アルミニウムガリウム/窒化ガリウム(AlGaN/GaN)、窒化インジウムガリウム/窒化ガリウム(InGaN/GaN)、AlGaN/AlGaNまたは任意のIII族窒化物系の多重量子井戸(MQW)およびガリウムナイトライド(GaN)ナノワイヤ(NW)構造に焦点を当てており、これらは有機金属化学気相成長法(MOCVD)および分子線エピタキシー法(MBE)を使用して形成され、これらは、技術それ自体が高価であるだけでなく、成長に使用するIII族原材料が高価であるので、コストがかかる。このような高価な技術を用いても、シリコン基板などの一般に使用される基板上に高品質なIII族窒化物構造を形成することは困難である。さらに、MOCVD法やMBE法は高価であり、天然基板は大規模生産および大量生産には適さない。
【0006】
MOCVDおよびMBE法は、また、典型的には、最初に基板上に堆積されるべきシーディング/プレテクスチャー層(pre-textured layer)または金属触媒を使用し、続いてシーディング層上に直接的にナノ構造を形成することを必要とする。シーディング層または金属触媒の目的は、ナノフィーチャ(たとえば、ナノワイヤまたはナノロッド)の成長を円滑にし、基板の格子とナノ構造の格子との間に存在する大きな不整合を減少させることである(たとえば、シーディング層または金属触媒は、基板の格子定数とナノ構造の格子定数との間の格子定数を有するように選択されるか、または特定の成長メカニズムを促進するために所望の表面エネルギーレベルを有するように選択される)。しかしながら、シーディング層または金属触媒を使用する一般的な欠点は、金属シーディング層または触媒が光に対して不透明であるのでナノ構造から基板またはその逆への光の透過が悪影響を受けることである。窒化ガリウムのナノワイヤを形成するために最もよく使用されている金属触媒は、金(Au)およびニッケル(Ni)である。しかしながら、これらの金属触媒は、これらの金属が放出された紫外線(UV)を吸収するので結果として得られる半導体デバイス内の汚染物質として作用し、基板とIII族窒化物構造の間の歪みによる減少以上にデバイスの効率をさらに低下させる。
【0007】
基板上に歪みが低減されたナノ構造を形成するための他の技術は、リフトオフデバイスの犠牲層として働く2次元(2D)基板(たとえば、グラフェン)の使用を伴うものである。しかしながら、実用上の観点からは、製造されたデバイスの破損率が高いので、リフトオフプロセスは非常に非効率である。
【0008】
加えて、これらの技術/方法はすべて、非常に高価であり、どの技術も紫外線領域(λ<365nm)において基板上のIII族窒化物ナノワイヤを含む半導体デバイスの効率を改善することができず、これらの技術はいずれも貫通転位のないIII族窒化物ナノワイヤを生成しない。
【0009】
さらに、これらの技術は、半導体材料の小さなクラスにのみ適用可能であり、半導体材料がいったん選択されると、選択された半導体材料が堆積され得る基板のクラスは、これらの方法の詳細によりさらに小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0222766(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、大規模生産に好適であり得る、任意の半導体ナノ構造(たとえば、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブなど)を考え得る基板のほとんどに形成し、紫外線領域における形成されたデバイスの効率を既存のデバイス以上に改善し、貫通転位のないナノ構造を生産するための、システムおよび方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態によれば、半導体ナノ構造を基板上に形成するための方法がある。この方法は、基板および半導体材料をパルスレーザー堆積チャンバー内に置くステップと、レーザービームのフルエンス、チャンバー内の圧力P、基板の温度T、半導体材料と基板との間の距離d、およびストランスキー・クラスタノフ核生成の条件が生成されるようにチャンバー内に置かれるべきガスのガス分子直径a0を含むパラメータを選択するステップと、選択されたフルエンスを有するレーザービームを半導体材料に印加して半導体材料のプルームを形成するステップとを含む。選択されたパラメータは、プルームから、(1)基板を覆うナノ層、(2)ナノ層の上の多結晶濡れ層、および(3)多結晶濡れ層の上の単結晶ナノフィーチャの形成を決定する。単結晶ナノフィーチャは、触媒またはシーディング層なしで成長させられる。
【0013】
別の実施形態によれば、基板と、基板上に直接形成されたナノ層と、ナノ層上に配置されている半導体、多結晶、濡れ層と、半導体、多結晶、濡れ層上に直接配置されている半導体、単結晶ナノワイヤとを含む半導体デバイスがある。半導体、単結晶ナノワイヤには、貫通転位がない。
【0014】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す、添付の図面は、1つまたは複数の実施形態を例示しており、説明と併せて、これらの実施形態を説明する。図面において:
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】基板上にナノフィーチャを形成するために使用されるパルスレーザー堆積(PLD)チャンバーの概略図である。
【
図2】ナノフィーチャを有する半導体デバイスを形成するための方法の流れ図である。
【
図3A】PLD法で半導体デバイスを形成する際の様々な状態を例示する図である。
【
図3B】PLD法で半導体デバイスを形成する際の様々な状態を例示する図である。
【
図3C】PLD法で半導体デバイスを形成する際の様々な状態を例示する図である。
【
図4A】様々な異なる基板上に成長させたIII族窒化物ナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4B】様々な異なる基板上に成長させたIII族窒化物ナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4C】様々な異なる基板上に成長させたIII族窒化物ナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4D】様々な異なる基板上に成長させたIII族窒化物ナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4E】様々な異なる基板上に成長させたIII族窒化物ナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4F】様々な異なる基板上に成長させたIII族窒化物ナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4G】様々な異なる基板上に成長させたIII族窒化物ナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図5A】様々な基板上に成長させたGaNナノワイヤにより生成された粉末X線回折パターンを例示する図である。
【
図5B】様々な2D基板上に成長させたナノワイヤのラマンスペクトルを例示する図である。
【
図6A】MXene基板上に成長させたナノワイヤサンプルに対する粉末X線回折マップおよび対応する走査型透過電子顕微鏡画像のプロファイルを例示する図である。
【
図6B】MoS
2基板上に成長させたナノワイヤサンプルに対する粉末X線回折マップおよび対応する走査型透過電子顕微鏡画像のプロファイルを例示する図である。
【
図7】様々な基板上に成長させたGaNナノワイヤのフォトルミネッセンスの結果を示す図である。
【
図8A】半導体ナノワイヤベースの光検出器の概略図である。
【
図8B】
図5Aに例示されている光検出器のエネルギーバンド図である。
【
図9A】別の半導体ナノワイヤベースの光検出器の概略図である。
【
図9B】
図9Aに例示されている光検出器のエネルギーバンド図である。
【
図10A】ペロブスカイト層のみに基づく光検出器の吸光度を例示する図である。
【
図10B】ペロブスカイトの層に基づくが、
図3に示されているように作られた半導体ナノワイヤも含むハイブリッド光検出器の吸光度を例示する図である。
【
図11】半導体ナノワイヤベースの発光ダイオード(LED)の概略図である。
【
図12A】様々な半導体ナノワイヤベースのレーザーデバイス(縦型または横型デバイスを含む)を例示する図である。
【
図12B】様々な半導体ナノワイヤベースのレーザーデバイス(縦型または横型デバイスを含む)を例示する図である。
【
図12C】様々な半導体ナノワイヤベースのレーザーデバイス(縦型または横型デバイスを含む)を例示する図である。
【
図13】パルスレーザー堆積法により半導体ナノフィーチャを成長させることに基づいて上述のデバイスのいずれかを作るための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態の次の説明では、添付図面を参照する。異なる図面中の同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を示す。次の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。その代わりに、本発明の範囲は、付属の請求項によって定義される。次の実施形態は、簡単のため、III族窒化物ナノワイヤを有するIII族窒化物半導体デバイスの用語および構造に関して説明されている。しかしながら、当業者であれば、本開示を読んだ後、本明細書において説明されている新規性のあるプロセスが、任意の半導体デバイス、たとえば、GaAs、SiC、InN、GaN、AlNのようなIII-V族またはII-VI族の任意の二元化合物、SiまたはGeのような周期表の第14族からの純粋な元素、およびInGaN、AlGaNのようないくつかの三元化合物、酸化物、または合金に適用可能であることを理解するであろう。さらに、本明細書において説明されるように、この新規性のある方法は、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、ナノピラミッド、および/もしくはナノディスク、ならびに/またはこれらのナノ構造上に形成され得る量子井戸を有する様々な光学および/または半導体デバイスの製造に適用され得る。
【0017】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」と記述されている場合、これは、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、または特性が、開示されている主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「一実施形態では」または「実施形態では」という語句が本明細書全体の様々な箇所に記載されていても、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、好適な任意の方式で1つまたは複数の実施形態に組み合わせられ得る。
【0018】
図1に例示されている実施形態により、III族窒化物半導体デバイスを形成することに関して、パルスレーザー堆積法(PLD)を使用する新規性のある方法が説明されている。しかしながら、上で述べたように、この方法は、任意の種類の半導体材料に適用することができ、多くの可能な基板上に、光学的もしくは電気光学的デバイスもしくはセンサー、フォトニクスデバイスもしくはセンサー、スピントロニクスデバイスもしくはセンサー、磁性半導体デバイスもしくはセンサー、光起電力デバイスもしくはセンサー、または電子デバイスもしくはセンサーを形成することができる。この方法の特徴は、半導体材料を基板上のナノ構造中に成長させるためにシーディング層または触媒が使用されないことである。言い換えると、本明細書において説明されている方法は、シーイング材料(seeing material)を堆積するために基板を事前処理することなく選択された基板上に直接半導体材料を形成することができる。SiまたはGaN基板上に半導体ナノワイヤを堆積する既存の方法は、ナノワイヤの格子定数と基板の格子定数との間の不整合が低減され、NW成長を円滑にするように最初に金(Au)の層で基板をコーティングすることに留意されたい。
【0019】
しかしながら、このような方法は、なおも基板とナノワイヤとの間の多くの貫通転位に直面し、最終製品の品質を低下させる。既存のPLD法を損なうこれらの問題は、
図1の方法では堆積チャンバー内でシーディング層または金属触媒を使用しないことで解決される。次に、この方法は、
図1および
図2に関して説明される。
図1は、基板105(たとえば、Si、GaN、サファイア、Ga
2O
3、ZnO、MXene、グラフェン、遷移金属二カルコゲン化物(TMDC)、いくつか例を挙げるとMoS
2、WSe
2など)およびターゲット110(たとえば、III族窒化物材料)が、パルスレーザー堆積(PLD)チャンバー115内に互いから距離dにおいて配置されている様子を示している。この距離dは、後で説明されているように調整可能であるが、それにもかかわらず、この実施形態では、数センチメートルから数十センチメートルのオーダーである。加熱装置107がチャンバー115内に設けられてもよく、これはたとえば基板を所望の温度Tに加熱するために
図1に示されているように基板105に取り付けられる。加熱装置107は、コンピューティングデバイス118によって制御される。基板105は、商業生産および大規模用途に典型的に使用される4’’ウェハであってよい。一用途では、同じチャンバー115内に置かれた複数の4’’ウェハ上にナノ構造を同時に成長させることが可能である。
【0020】
チャンバー115は、空気の大部分が除去されるように真空引きされる。ガス112(たとえば、成長させられるべき半導体内に見出される成分を含むガス)が、チャンバーに流体的に接続されているガス源114、たとえばガスタンクから、チャンバー115内に導入される。弁116は、チャンバー115内のガス112の量を制御するために、たとえばコンピューティングデバイス118によって調整され得る。基板105上に成長させるべきナノ構造がGaNである場合、ガス112は、Nとして選択される。他のガスも使用され得ることに留意されたい。
【0021】
レーザービーム120が、チャンバー115の壁内に形成されているレーザー透過窓122を通して、III族窒化物ターゲット110に照射され、III族窒化物材料のプルーム125を形成する。レーザービーム120は、コンピューティングデバイス118によって制御される、レーザー124により生成される。コンピューティングデバイス118は、単位面積上にレーザービームによって与えられるエネルギー、すなわちフルエンス、レーザーのパルス周波数fp、パルスの長さ、およびこのプロセスの間にレーザーがオンにされる総時間を選択するように構成される。これらのパラメータは、後で詳細に説明される。
【0022】
次に、
図2および
図3A~
図3Cを参照すると、方法は、ステップ200において、レーザー124のフルエンスおよびパルス周波数、チャンバー115内のターゲットと基板との間の距離d、チャンバー内の温度T、ガス112の圧力p、およびガス112の種類を選択することから始まる。これらの条件に基づき、コンピューティングデバイス118は、ステップ202において、選択されたパラメータをPLDチャンバー115およびレーザー124に適用し、成長プロセスが開始する。選択された後、これらの条件は、ステップ204において、プロセス全体を通して一定に維持され、したがって、この方法は、シングルステップPLD法である。次に、ステップ206において、ナノ構造は、ナノ構造の所望の高さが得られるまで基板の上に成長させられる。
【0023】
図3Aに例示されているように、プルーム125からの原子(III族窒化物半導体材料がGaNである場合、GaおよびN原子)ならびにガス112からの原子(たとえば、N原子)は、ターゲット105の露出された表面に付着し始め、主にプルームの原子から形成される初期層305を形成する。しかしながら、チャンバー内に残っている不純物、たとえば酸素(O)原子113も基板105上に堆積され、初期層305の形成に寄与する。他の不純物、たとえばHまたは/およびCも存在する可能性があり、したがって、それらは初期層305に堆積されている。しかしながら、ナノ構造が形成されるときのUV吸収を防ぐために、チャンバー115内に金属不純物が存在しているべきでない。チャンバー115内の温度Tが加熱装置107によって一定に維持されると、初期層305の一部となった不純物113は、基板105に向かって移動を開始し、Ga原子およびN原子から分離して、基板105に直接接触するin-situナノ層307を形成する。不純物原子113の量は非常に少ないので、この層の厚さtは1から2nmの範囲内であり(一般的には10nmより小さい)、そのような理由から、この層はナノ層または2D層とも呼ばれる。一実施形態において、ナノ層307は2D層であり、酸化物を含む。
【0024】
それと同時に、初期層305は、不純物113が基板105に向かって移動しているので変化しており、この層は、本明細書では濡れ層と呼ばれるGaN多結晶層309を含む。これらのプロセスは、これらの層の各々表面エネルギーによって次のように制御される。一実施形態において、PLDチャンバー115内の条件およびレーザー動作条件は、基板105の表面エネルギーが、基板105上に堆積されているターゲット材料110の表面エネルギーと、基板105と基板105上に堆積されている材料との間の界面エネルギーとの合計に実質的に等しくなるように選択される。このエネルギー収支の結果として、
図3Aに例示されているように、連続層305が形成される。
【0025】
しかしながら、PLDプロセスが継続し、不純物原子113が基板105の方へ移動し、in situ界面ナノ層307を形成すると、多結晶層309の表面エネルギーが変化し、したがって、ストランスキー・クラスタノフ(SK)核生成が開始される、すなわち、現在は層309である、基板の表面エネルギー(γs)が、成長核生成の表面エネルギー(γn)と、新しい基板とナノワイヤの成長するアイランドの間の界面エネルギー(γi)の合計よりも大きいときに開始される。これは、初期層305堆積の初期段階を支配するフランク・ファンデルメルヴェ成長様式とは対照的である。SK核生成が開始された後、上で説明されているチャンバーおよびレーザーの初期条件の下で、濡れ層309上の成長は、ナノワイヤ形成に対して有利になり、その結果、ナノ構造(この場合はナノワイヤ)315の形成が生じる。
図3Aから
図3Cに示されている層は縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。
【0026】
ナノワイヤの分析結果(これについては後述する)は、濡れ層309は多結晶であるが、ナノワイヤは単結晶構造であることを示している。ストランスキー・クラスタノフ核形成を達成することによって、成長因子は、貫通転位のないナノワイヤ形成に有利である。ナノワイヤが
図1に例示されている方法で作られた結果、100と200nmの間の直径を有する1~3μmの高さのワイヤが形成された。
【0027】
大きなウェハ基板にわたってGaNナノワイヤ(NW)成長の均一性を評価するために、この手順は工業規模の生産に適していると考えられるので、高品質の垂直配向GaN NWが4’’ Si基板上に得られ、GaN NWの分布が品質を損なうことなく均一に保たれていることを確認した。欠陥バンドを有しない狭い幅の発光の確証的なPLスペクトルが得られ、多数の可能な基板にわたって高品質の材料であることが実証された。したがって、この費用対効果の高い方法は、1つのターゲットから複数の4’’基板が形成され得るので、高品質半導体NWに基づく広範な用途に適している。得られたNWがこのように高品質であることは、in-situナノ層307、および多結晶層309の形成によるものと考えられ、これらは両方とも、基板の格子定数のサイズを半導体材料の格子定数に滑らかに遷移させる効果を有する。これら2つの層は、ターゲット半導体がレーザービームによってアブレーションされている間に形成されるので、任意の基板上に任意の半導体NWが形成されてもよいが、それというのもこれらの2つの層が選択された基板から選択されたNW材料への格子定数の滑らかな遷移を確実にするからである。
【0028】
次に、方法のステップ200で選択されたパラメータが、Si基板上に形成されたGaNの特定の例について説明される。当業者であれば、半導体材料または基板またはその両方が変更された場合、本明細書において説明されている方法は依然として適用可能であるが、いくつかのパラメータ変更を伴うこと、たとえば、温度が半導体デバイスの融点温度付近になるように調整されることを理解するであろう。
【0029】
方法のステップ200で述べられているパラメータの選択は、多結晶濡れ層309の初期フランク・ファンデルメルヴェ成長様式を達成し、続いて濡れ層309上でSK核生成を行い、単結晶NW315を成長させることに基づく。多結晶層は、様々な欠陥(または結晶粒境界)によって分離される複数の結晶子を含むと本明細書では理解され、一方、単結晶材料は、いかなる欠陥または結晶粒境界も含まない、すなわち、単一の結晶構造を有すると理解される。選択されたパラメータを一定に維持しながらこれらの2つの成長メカニズムをシングルステップPLD堆積で連続的に達成するために、アブレーションプロセスの結果として、ターゲット105に達したときの種を特徴付ける種エネルギーEは、式
【0030】
【0031】
を使用して定義され得、
Eは、単一の種(たとえば、プルームからのGa、またはN、またはO)のエネルギーを表し、このエネルギーによりその種はアブレーションプロセスに続いてターゲット105に到達し、E0は、ターゲット表面から出てくるプルーム中の荷電種の初期エネルギーを表し、dは、ターゲット110と基板105との間の距離であり、λは、PLDチャンバー115内で基板105の方へ移動するアブレーションされた種(プラズマプルーム内)の平均自由行程であり、これはチャンバー内の成長温度(T)およびガス圧力(p)に依存する。種の平均自由行程は、式
【0032】
【0033】
を使用して計算され得、
a0は、気体分子の直径を表し、kは、ボルツマン定数である。したがって、式(2)が式(1)の中に代入されると、種エネルギーEについて式
【0034】
【0035】
が得られる。
【0036】
この式は、ステップ200において、形成されることが望まれている構造、たとえば、1D、2D、または薄膜構造に基づき、種エネルギーを選択するために使用される。この関係に基づき、最適化された圧力pが選択され、この場合、これはターゲットと基板との間の距離d=7~9cmに対する窒素圧力(pN2)≧150mTorrに対応する。また、最適化された初期種エネルギーE0(0.9~1J/cm2のレーザーフルエンスに相当する)も選択され、アブレーションされた種は窒素分子との多数回の衝突により高い散乱を受ける(式(3)の中のa0で表される)。種のエネルギーEが低エネルギーとなるように選択された場合、そのようなエネルギーを有する種のみが基板105上にランディングするので、ストランスキー・クラスタノフ核生成は、ナノワイヤ形成に対して達成され、それにより、基板の種類および成長材料との格子不整合があるにもかかわらず、触媒またはシーディングなしで所望のナノフィーチャ(たとえば、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ)の成長が引き起こされる。この点に関して、式(3)から、種エネルギーEは、ナノワイヤを形成するために使用される基板の種類に依存しないことが観察されており、これは本明細書において提示されている発見によって確認される。
【0037】
この結論を確認するために、窒化ガリウム(GaN)ナノワイヤが、シリコン基板、窒化ガリウム基板、サファイア基板、酸化ガリウム基板、酸化亜鉛基板、MXene基板、グラフェン基板、二硫化モリブデン基板(MoS2)、二セレン化タングステン(WSe2)、および他のバルク(3D)および2D基板を含む、異なる導電体、絶縁体、透明および不透明(ドープまたは非ドープ)の基板上に成長させられた。以下の説明から明らかになるように、これらは半導体ナノワイヤを成長させるために使用できる基板の種類の単なる例に過ぎず、基板はどのようなものでも使用可能である。同様に、窒化ガリウムナノワイヤの例は、すでに説明されているように、アルミニウム、ホウ素、インジウム、および他の種類の半導体を含む、他のIII族元素にも等しく適用可能である。
【0038】
ナノワイヤの成長は、一実施形態において、KrFエキシマレーザー(波長248nm)を備えるPioneer 240 PLDシステム(Neocera)を使用して直径2.5cmの市販のGaNターゲット(純度99.95%)をアブレーションすることによって達成された。NWを成長させるために使用された異なる基板は、片面研磨p型Si(100)、単層グラフェン/90nm SiO2/高(100)p型ドープSiウェハ、a-およびc-サファイア上に成長させたドープ窒化ガリウム層、c-サファイア、ドープおよび非ドープ酸化ガリウム、酸化亜鉛、スプレーコーティングによってガラス上に堆積された粒径~40μmのTi3C2 MXene、ならびに2D遷移金属二カルコゲン化物(TMD)(MoS2およびWSe2)基板である。2D TMD基板以外の基板は、すべて商業チャネルを通じて入手した。2D TMDC基板については、高品質単層遷移金属二カルコゲン化物は、サファイア基板上で、高温壁炉内で典型的な化学気相成長法(CVD)によって合成された。高純度三酸化タングステン(WO3)(たとえば、99.9%)、三酸化モリブデン(MoO3)(たとえば、99.5%)、セレン(Se)(たとえば、99.99%)、および硫黄(S)(たとえば、99.5%)の粉末が前駆体として使用された。WSe2およびMoS2に対する成長温度は、それぞれ、900℃および800℃であった。MoS2およびWSe2の成長に対しては、それぞれ、アルゴン(Ar)およびアルゴン/水素(Ar/H2)の流動気体がキャリアガスとして使用された。成長はすべて、低圧(10~40Torr)で実行された。
【0039】
異なる基板(p-Siおよびグラフェン)上に窒化ガリウムナノワイヤを成長させるために、ターゲットがレーザービームを照射され、以下のTable 1(表1)内のパルスレーザー堆積条件の下で基板の方へ種がアブレーションされた。
【0040】
【0041】
他の基板については、これらの条件は、しかるべく調整される必要がある。たとえば、GaN NWがGaN基板またはサファイア上で成長させられる場合(c方向およびa方向の両方で)、Table 2(表2)に示されている条件が使用される。
【0042】
【0043】
Table 1(表1)およびTable 2(表2)に提示されている両方の例では、レーザーパルスは、10Hzの周波数で照射され得る。当業者であれば、これらの条件のいずれかを2つの表に提示されている値に関して20から30%変化させることによって、それでも、本明細書において説明されている高品質ナノフィーチャを得ることができるであろうことを理解するであろう。
【0044】
異なる基板上に成長させたIII族窒化物ナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)画像が、
図4A~
図4Gに例示されている。特に、
図4Aは、シリコン基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤを例示しており、
図4Bは、窒化ガリウム基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤを例示しており、
図4Cは、サファイア基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤを例示しており、
図4Dは、MXene基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤを例示しており、
図4Eは、グラフェン基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤを例示しており、
図4Fは、二硫化モリブデン基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤを例示しており、
図4Gは、二セレン化タングステン基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤを例示している。MXene、グラフェン、二硫化モリブデン基板、および二セレン化タングステンなどの二次元基板上にPLDで窒化ガリウムナノワイヤが成長させられていることは、今回が初めてだと思われる。したがって、ナノワイヤの半導体と基板との間の格子不整合にかかわらず、ストランスキー・クラスタノフ核生成を達成するために、式(3)に基づきパルスレーザー堆積条件を選択することによって、垂直自己組織化、無貫通転位、半導体ナノワイヤが、シングルステップパルスレーザー堆積プロセスを使用して達成された。
【0045】
また、テストの結果、ナノワイヤの直径および長さは、パルスレーザー堆積条件を調整すること、たとえば、レーザー124のパルス数を制御することによってチューニングされ得ることが明らかになった。パルス数が増えるにつれ、ナノワイヤの長さおよび直径も大きくなる。具体的には、テストの結果、p型シリコン基板上に2つの異なる種類の窒化ガリウムナノワイヤを成長させることが可能であることがわかった。第1の種類は、約900nmの長さ、および126から160nmの範囲内の直径を有し、第2の種類は、2.9μmの長さおよび310から360nmの範囲内の直径を有していた。NWの品質は、パルス数の変化の影響を受けなかった。
【0046】
上で説明されている様々な基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤは、様々な評価を受けた。構造特性の評価では、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、高分解能粉末X線回折(XRD)、ラマン測定法を採用した。エネルギー分散型X線分析(EDX)分光法が、透過型電子顕微鏡(TEM)装置で実行され、ナノワイヤの組成を決定した。透過型電子顕微鏡(TEM)ラメラも調べられた。
【0047】
図5Aは、すべての基板上に成長させたGaN NWsの結晶構造を示している。これらのXRDスペクトルは、32.6°、34.6°、36.9°、57.8°、63.5°においてGaNピークを示しており、これらは、それぞれ、GaNの(100)、(002)、(101)、(110)、(103)面に割り当てられており、したがって、六方晶系ウルツ鉱構造を確認した(ICDD 50-0792)。しかしながら、(002)面は支配的ピークであり、単結晶NWに由来するが、他のピークはNWと基板との間に形成される濡れ層(WL)によって生じる。グラフェン、MoS
2、およびWSe
2の単層は検出するには極薄であるので、対応するピークは、XRDスペクトルから識別することができない。これらの発見は、圧縮歪みによりNWの直径が小さくなるにつれ(002)ピークがより大きい角度にシフトすることをさらに示しており、これは以前の研究で得られた結果と一致している。
【0048】
図5Bは、2D基板上に成長させたGaN NWのラマンスペクトルを示しており、これはGaNに対応する典型的なラマンピーク(142、258、421、565および724cm
-1に位置する)が、NW構造により生じる歪みによりバルク基板と比較してわずかなシフトで得られることを明らかにしており、これはNW直径にも依存する。グラフェンのラマンピークは1366cm
-1(D)および1600cm
-1(G)で観察され、MXeneのピークは1386cm
-1および1590cm
-1で観察されている。TMD基板上に成長させたNWについては、380cm
-1(E2g)および403cm
-1(A1g)におけるMoS
2のラマンピークが図示されており、WSe
2(A1g)のピークは~246.5cm
-1において図示されている。GaN NW成長前後に得られた2D基板のラマンスペクトルにおける有意な差は、文献および裸MoS
2およびWSe
2のラマンスペクトルと比較したときに観察されず、したがって、初期2D基板結晶性が十分に維持されていること、またGaN成長温度が2D材料の性質に影響を与えないことを示している。しかしながら、わずかなシフトが観察されており、これはヘテロ構造形成による2D結合長の変化に関連付けられている。
【0049】
材料光学特性は、325nmの連続波(CW)He-Cdレーザーを使用することによって5Kおよび室温におけるフォトルミネッセンス(PL)測定によって調べられたが、データを収集するために、電荷結合素子カメラに接続されている分光器が使用された。残響時間(RT)吸収測定が、UV分光光度計を使用して実行され、それにより、サンプルに起因する可能性のある吸収限界を識別した。10Kおよび室温(290K)でのパルス電力依存フォトルミネッセンス(PDPL)測定は、266nmレーザーを使用して実行され、得られたフォトルミネッセンス放射信号は、取得時間を30回の積分に対して500msに固定して高感度分光計によって検出された。閉サイクル低温保持装置が、低温フォトルミネッセンス測定に使用された。残響時間カソードルミネッセンス(RT CL)ハイパースペクトルイメージングが、走査型電子顕微鏡(SEM)内の特注の捕捉システムを使用し、5kVおよび100ms/ピクセルの捕捉時間を使用して実行された。
【0050】
すべての基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤに関する広範な走査型透過電子顕微鏡(STEM)およびエネルギー分散型X線(EDX)分光法の測定が実行され、これにより成長メカニズムの理解が進んだ。STEM画像は、厚さ~200nmの多結晶窒化ガリウム濡れ層が、シリコン(100)およびサファイア基板上にそれぞれ成長させた窒化ガリウムナノワイヤの下に形成されていることを示していた。興味深いことに、窒化ガリウムナノワイヤと基板との間の界面から、ワンステップパルスレーザー堆積成長中に、厚さが均一な約2nmのin situナノ層が基板より上に形成されていることが明らかになった。このナノ層は、すべての基板に対して、濡れ層を成長させるのを助ける触媒層として働き、ストランスキー・クラスタノフ核生成法を介したナノワイヤ成長を円滑にする。界面ナノ層の均一性は、均一な窒化ガリウムナノワイヤの形成を助ける。対照的に、III族窒化物ナノワイヤを形成するための以前のパルスレーザー堆積技術は、ナノワイヤを成長させる前に基板上に、デバイスの性能に影響を及ぼす不純物をナノワイヤに持ち込むことになる金属触媒またはシード層を形成することを必要とした。
【0051】
界面ナノ層の性質をさらに確認するために、シリコン上のサンプルの化学組成のEDXマップ作成が実行された。このナノ層は、ガリウム(Ga)、窒素(N)、および酸化ケイ素(SO2)を含む。組成物中に酸化物を含む類似の層が、濡れ層とサファイアおよび窒化ガリウム基板との界面上に成長中に形成された。これらの発見は、このin-situナノ層が、米国特許出願公開第2018/0222766(A1)号に開示されている、パルスレーザー堆積成長中に垂直酸化亜鉛(ZnO)ナノワイヤの下に形成されたガドリニウム(Gd)in-situ層の機能を果たすことを示している。表面エネルギーは、2つの表面間の界面における分子間力と関連していることが知られている。基板の表面エネルギーおよび基板と成長アイランドとの間の界面エネルギーによって支配された異なるプロセス(成長核生成)が、ストランスキー・クラスタノフ核生成を促進するために採用され得る。したがって、成長核生成は、種エネルギーを変調することによって制御され、それによりストランスキー・クラスタノフ法を通じてナノワイヤが得られたと考えられる。
【0052】
MXeneおよびTMD(たとえばMoS
2)基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤは、これまで報告されていないので、以下ではこれらの基板上でのGaN NWsの成長を取り上げる。
図6Aおよび
図6Bは、それぞれMXeneおよびTMD(たとえば、MoS
2)上に成長させたサンプルの断面STEM画像および関係するEDXマップ、さらには元素プロファイルを示しており、2D基板より上に濡れ層が形成され、窒化ガリウムナノワイヤの成長が促進されていることが確認される。グラフェン基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤは、バルク基板および2D基板のすべてについて類似の結果が得られることをさらに明らかにした。したがって、2D基板(グラフェン、MXene、MoS
2、WSe
2)は、垂直ナノワイヤ構造を形成するためにin situナノ層として働き得る。2D基板上に成長させたナノワイヤについては、半導体ナノワイヤの形成は、3D材料と2D基板との間の弱い準ファンデルワールス相互作用に起因していた。
【0053】
上で説明されている方法は、無転位単結晶NWを生成した。この構造を確認するために、STEM測定が実行され、それにより窒化ガリウムサンプルの品質を実証した。これらの測定は、垂直配向窒化ガリウムナノワイヤが高品質であり、単結晶構造を示していることを実証し、これは高速フーリエ変換(FFT)パターンにより確認された。MXene基板およびMoS2基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤのSTEM画像も類似の結果を示し、したがって2D基板上に高品質単結晶窒化ガリウムナノワイヤが成長できることを実証した。単一窒化ガリウム結晶は、他の基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤについて確認されたが、これは窒化ガリウムナノワイヤが任意のバルク基板および2D基板内に形成され得ることをさらに確認している。
【0054】
驚くべきことに、STEMの結果から、窒化ガリウムとそれぞれのバルク基板または2D基板との間の格子整合/不整合の度合いに関係なく、濡れ層および窒化ガリウムナノワイヤの両方において、貫通転位が完全に存在しないことが初めて明らかになっている。窒化ガリウム濡れ層は、ナノグレインを特徴とする多結晶性を有しているので、貫通転位が存在しないのは、濡れ層多結晶性に起因し得る。格子不整合が大きいことによりこれらの基板上に成長させた窒化ガリウムおよび他のIII族窒化物中に貫通転位が常に存在するならば、これは特に窒化ガリウムに対して、また一般に、半導体産業にとって重要な成果である。
【0055】
多結晶(濡れ層内)から単結晶(ナノワイヤ内)への変化を支えるプロセスを調べるために、基板の界面から徐々に垂直方向にさらに遠く離れて行く異なる配置でSTEM測定が実行され、その結果、c軸に沿った距離が基板から増大するにつれて多結晶特性が減少して、窒化ガリウムナノワイヤの方へ移動する一方で、c方向に沿った単結晶はナノワイヤ内に保持されていることが実証された。MXene基板およびMoS2基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤのSTEM画像、ならびに対応するHR-STEM画像およびFFTパターンは、これらの例示的な2D基板が無貫通転位単結晶窒化ガリウムナノワイヤの高品質さを生み出しており、これはバルク基板について示されているものに対する結果および成長メカニズムに類似していることを示している。これらの発見は、開示されている成長方法が広範囲の(導電体、絶縁体、透明または透明でない)バルクおよび2D基板上に成長させた半導体ナノワイヤ内の貫通転位を排除することを実証しており、これは、方法が、任意の光学的またはオプトエレクトロニクス用途を意図した高性能半導体ベースデバイスに採用されることを可能にする。
【0056】
上で説明されている方法で成長させたNWの光学的特性を研究するために、窒化ガリウムナノワイヤに対して吸収およびフォトルミネッセンス(PL)測定(
図7参照)が実行された。これらの測定により、シリコンおよびサファイア基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤは、幅の狭い吸収限界を生じることが確認された。また、上で説明されているすべての基板上に成長させた窒化ガリウムナノワイヤについて、典型的な吸収曲線が得られた。これらの吸収結果により、バンドギャップエネルギーがc-サファイア基板およびシリコン基板上に成長させられたサンプルに対してそれぞれ約3.58eVおよび約3.68eVであることが確認された。異なる基板上で成長させられた窒化ガリウムナノワイヤの吸収限界のわずかなシフトが観察されたが、これは、XRDおよびSEMの結果によって確認されているように、異なる基板上での成長に対してナノワイヤの直径が異なる(すなわち、圧縮歪みが異なる)ことによるものであり得る。得られた窒化ガリウムナノワイヤの光学的品質をさらに確認するために、温度依存および電力依存のPL測定が実施された。
図7に例示されている、室温(RT)フォトルミネッセンススペクトルは、無視できるくらい小さな欠陥バンド(黄色バンド)とともに、すべての基板上に成長させたすべての窒化ガリウムナノワイヤについて346~350nmの幅の狭い支配的な窒化ガリウムの近バンド端(NBE)発光を示しており、したがって優れた光学的品質が確認され、これは幅の狭い吸収限界およびSTEMの結果と一致しており、したがって、開示されている成長方法の成功を示している。
【0057】
黄色バンドが無視できるくらい小さい非常に広く強いフォトルミネッセンス発光の原因を識別するために、室温カソードルミネッセンス(CL)ハイパースペクトルイメージングが実行され、それによって濡れ層およびナノワイヤ領域からの発光を空間的に解決した。異なる基板上の窒化ガリウムナノワイヤの断面構造からカソードルミネッセンスマップが作成された。サファイア基板サンプルに対するカソードルミネッセンスマップは、スペクトル的に積分されたカソードルミネッセンス強度マップを示しており、面積平均カソードルミネッセンススペクトルが抽出された領域が明確にマークされている。窒化ガリウムナノワイヤのみを含む領域上で平均化されたカソードルミネッセンススペクトルは、0.38eVの半値全幅(FWHM)を有する3.6eV(344nm)の狭い幅のピークを示したが、多結晶濡れ層のカソードルミネッセンススペクトルは、多結晶濡れ層から放射される0.43eVのFWHMを有する3.8eV(~326nm)のより広く青方偏移したピークを示した。図示されているサンプルの頂部から底部までの距離の関数としてのカソードルミネッセンススペクトルマップによりこの発見を確認した。濡れ層から発せられた近バンド端の発光ピークは、ナノグレインの結果として青方偏移されており、これにより、濡れ層のSTEM画像に示されているように、平均粒径が10nm未満(励起直径以下)のままなので量子ドットに似た挙動が生じ、それにより、励起子の閉じ込めが生じた。したがって、励起子がこれらのナノグレイン内に封じ込められるか、または局在化されると、両方のプロセスにより、近バンド端発光青方偏移が生じ、放射性再結合率が増大する。このような理由から、濡れ層およびナノワイヤの両方から生じる近バンド端発光は強く、黄色バンドは無視できるくらい小さいが、それは、励起子の局在化/封じ込めが放射性再結合を支配し、材料の効率を高めるからである。異なるサイズのナノグレインから放射されるピークが重なり、欠陥バンドのない幅広い発光を生じるので、濡れ層から発生する近バンド端発光が広くなることが予想される。そのような強いピークの広がりは、内部量子効率を得ることによって実証されるように、高効率LED用途に重要である。
【0058】
窒化ガリウムナノワイヤの温度依存性フォトルミネッセンススペクトルは、近バンド端発光は室温および5Kで強いことを示しており、5Kでの積分強度と室温での強度との比は~45%と推定され、高いUV効率を示唆した。したがって、窒化ガリウムナノワイヤの効率が高いことをさらに確認するために、内部量子効率が、Shockley-Read-Hall(SRH)法を使用して、電力依存フォトルミネッセンス(PDPL)測定を通じて65%と計算されたが、これは室温において内部量子効率を計算するための最も正確で信頼性の高い方法と考えられている。電力依存フォトルミネッセンススペクトルは、カソードルミネッセンス測定に一致して、近バンド端発光が2つの重なり合うピークからなることを示していた。室温での電力密度(注入キャリア密度)の関数としての電力依存内部量子効率が計算された。
【0059】
内部量子効率曲線は、内部量子効率が、生成されたキャリアによる非放射性再結合中心の飽和により励起エネルギー密度とともに急激に上昇し、それによって、その最大値(65%)には~70kW/cm
3で到達したことを示しており、このことで放射性再結合が著しく支配していることが確認された。しかしながら、より高い励起エネルギー密度では、内部量子効率は低下し始め、1.2×10
3kW/cm
3で47%に達し、これは窒化ガリウムUV発光に対しては依然として高いと考えられ、温度依存フォトルミネッセンスで得られる積分強度比と一致している。これらの結果は、当技術分野の技術と比較したときに
図2の方法により成長させたナノワイヤの光学的効率が優れていることを示している。
【0060】
放射性再結合の寄与を決定し、低下の背後にある理由をさらに識別するために、室温および10Kにおいて、log(IPL)がlog(Gopt)(電力密度)の関数としてプロットされた。式(4)によると、放射性再結合の支配性は、I∝G(I∝n2)のときに示され、その結果、寄与の大部分が局在化した励起子に由来するので、内部量子効率が急速に増大する。室温において、電力密度の関数として出力される(log-log)積分フォトルミネッセンス強度は、低励起電力密度の下でk~1.2を示し、これにより、ある程度の欠陥関連非放射性再結合とともに、全再結合プロセスにおける放射性再結合の寄与が著しいことがさらに確認された。その一方で、内部範囲の上限において、電力密度の関数として出力される(log-log)積分フォトルミネッセンス強度は、低下領域の前に高い励起電力密度(≧30kW/cm3)でk=1を示しており、非放射性中心の飽和による完全な放射性再結合プロセスが確認された。しかしながら、効率低下範囲内では、傾きは~0.89(>2/3)であり、これは支配的な放射性再結合は軽微なオージェ再結合の寄与を伴ったことを示しており、オージェ再結合がわずかな内部量子効率低下の背後にある主な理由であり得ることを明らかにした。
【0061】
低温(10K)では、1~1.1のk値から、低励起領域および高励起領域の両方において放射性再結合が完全に支配的であることが明らかになった。これらの結果から、これらの高効率窒化ガリウムナノワイヤは、幅広い用途に使用できる強い潜在的可能性を有していることが確認される。
【0062】
図2の方法は、金属触媒またはシーディングを必要とすることなく、またナノ構造と基板との間の格子不整合に関係なく、任意の2D TMDおよびバルク基板上に成長させられる高品質、無TD、自己組織化、半導体ナノワイヤの、費用対効果の高い普遍的な成長方法の成功を示している。上で説明されているSTEMの研究では、NW内に転位が完全に存在しないことを示しているが、これは高品質多結晶WLに起因するが、NWは単一ウルツ鉱型結晶構造を示している。高品質NW内に転位が存在しないこと、さらにはWL内のナノグレインは(励起子局在化中心として働くことにより)、システムの効率をさらに高めた。すべてのサンプル上のキャリアダイナミクス計測により、UV効率が優れていることが確認されたが、高励起密度でのわずかな低下は、高いキャリア注入率におけるオージェ再結合からのわずかな寄与のせいである。これらの発見は、UV垂直発光レーザーダイオードおよびフレキシブルデバイスを含む、半導体NWベースの発光デバイスが、本明細書において説明されている新規性のある技術に基づき成功裏に製造できることを示唆している。
【0063】
次に、そのようなデバイスのいくつかの例が、
図8A~
図12に関して説明される。具体的には、
図8Aおよび
図9Aは、基板および最適化された構造(横方向および縦方向のデバイス)に応じて、頂部接触または底部接触を可能にする任意の基板内に成長させられるNWを使用してペロブスカイトとハイブリッド化された光検出器を例示しており、
図8Bおよび
図9Bは、
図8Aおよび
図9Aの光検出器のエネルギーバンド図をそれぞれ例示しており、
図11は、発光ダイオードを例示しており、
図12Aは、GaN NWsの上に形成されたIII族窒化物MQWベースのデバイスを例示しており、
図12Bおよび
図12Cは、横方向および縦方向のデバイスとして実装された単一または複数のQWベースのLEDまたはレーザーダイオードを例示している。
【0064】
最初に
図8Aを参照すると、光検出器800は、基板810の底部に結合されている第1の接点805を備える。検出器800は、太陽電池として使用され得ることに留意されたい。基板810は、上で説明されている材料のいずれかから形成されてもよい。明確にするために単一の層815として表されている界面層307および濡れ層309は、成長プロセスの一部として基板810上に形成される。半導体ナノワイヤ820(明確にするためにそのうちの1つだけがラベル付けされている)は、上で説明されている方法に基づき界面層および濡れ層815上に形成される。半導体ナノワイヤ820の少なくともいくつかは、ペロブスカイト層825によって覆われているが、他の半導体ナノワイヤ820は、ペロブスカイト層825によって覆われていない。ペロブスカイト層825の上には、第2の接点830が配置されている。したがって、入射光835がペロブスカイト層825に衝突し、またナノワイヤ820に直接衝突するので、光検出器800からの出力を得るために、第1の接点805と第2の接点830との間の電気的接続が使用され得る。非限定的な例において、第1の接点805は金接点であり、基板810はシリコン基板であり、半導体ナノワイヤ820は窒化ガリウムナノワイヤであり、ペロブスカイト層825は有機CH
3NH
3PbI
3または無機PbCsX
3を含み、第2の接点830はインジウムスズ酸化物(ITO)を含み得る。
【0065】
デバイス800を準備するために、純度99%の有機CH3NH3PbI3または無機PbCsX3ペロブスカイト粉末が使用された。この方法は、任意のABX3ペロブスカイトで動作するように設計されているが、簡単にするために、この方法は、有機ペロブスカイトCH3NH3PbI3に関して特に説明されることに留意されたい。均一なペロブスカイト層を得るために、0.25M(1M=0.619.9g/mL)のCH3NH3PbI3ペロブスカイト粉末が、60℃で1mLのジメチルホルムアミド(DMF)と混合された。次いで、ペロブスカイトは、100℃で10分間アニールされる前に、ブラシから約15cmの距離でホットプレート上に置かれた、GaN NWサンプルに垂直に、1バールの圧力で窒素ガス流を発生させる圧縮空気ブラシによって、GaN NW 820の一部にスプレーコーティングされた。最後に、透明電極830に蒸着するために、アニール手順の後の数分以内に、サンプルがマグネトロンスパッタリング真空チャンバーに直接移送された。接触層については、インジウムスズ酸化物(ITO)層が、シャドウマスクを使用することによって2種類の金属層とともにCH3NH3PbI3ペロブスカイト上に頂部電極として堆積された。具体的には、Auがp-Si基板810上に底部接点805として堆積されたが、Ag層がGaN NWの頂部接点830として使用された。150nmのITOの厚さは、室温(RT)での高周波マグネトロンスパッタリングを、5mTorrの作動圧力のアルゴンプラズマおよび100分間の0.15Aの一定電流とともに使用して達成された。
【0066】
別の実施形態では、無機ペロブスカイトが層825を作るために使用されることが望ましい場合、臭化鉛(II)(PbBr2、99.999%微量金属ベース)、酢酸セシウム(CsAc、99. 99%微量金属ベース)、オクチルアミン(OcAm、99%)、オクタン酸(OcAc、98%)、1-プロパノール(PrOH)、ノルマルヘキサン(Hex、99%)、トルエン(99.8%)を使用してCsPbBr3ペロブスカイトを調製することが可能である。これらの化学物質はすべて、さらに精製することなく利用された。CsPbBr3 NCは次のように合成された。Cs前駆体およびPbBr2前駆体は、別々に調製され、反応は、後者を前者に注入することによって開始された。最初に、Cs前駆体溶液が、室温の空気を入れて撹拌しながら20mLのバイアル内で32mgのCsAcを1mLの1-PrOHに溶解し、その後、6mLのヘキサンと2mLの1-PrOHとを加えることによって調製された。第2に、PbBr2前駆体溶液が、空気中で激しく撹拌しながら90℃で1-PrOH、OcAc、およびOcAmの各々0.45mLの混合溶液に245mgのPbBr2を溶解することによって調製された。第3に、高温のPbBr2前駆体が、室温で激しく撹拌しながらCs前駆体に速やかに注入された。システムはすぐに緑色に変わり、反応は2分で完了した。CsPbBr3 NCは、3000rpmで4分間遠心分離して単離され、そのペレットは、2mLのトルエン中に分散された。ペロブスカイト層825を形成するための他の方法も使用され得た。
【0067】
次に
図9Aを参照すると、光検出器900(太陽電池としても使用できる)は、明確にするために単一の層910として例示されている界面層および濡れ層が成長プロセスの一部として形成される基板905を含む。半導体ナノワイヤ915(明確にするためにそのうちの1つだけがラベル付けされている)は、界面層および濡れ層910上に形成される。ナノワイヤ915の少なくともいくつかは、ペロブスカイト層920によって覆われているが、ナノワイヤ915の他のものは、ペロブスカイト層920によって覆われていない。ペロブスカイト層920に覆われていないナノワイヤ915の上には、第1の接点925が配置され、ペロブスカイト層925の上には、第2の接点930が直接配置されている。したがって、光935がナノワイヤ915およびペロブスカイト層920に衝突するので、光検出器900からの出力を得るために、第1の接点925と第2の接点930との間の電気的接続が使用され得る。非限定的な例では、基板905はシリコンまたはグラフェン基板であり得、ナノワイヤ915は窒化ガリウムナノワイヤであり得、ペロブスカイト層920はCH
3NH
3PbI
3を含み得、第1の接点925は銀を含み得、第2の接点930はインジウムスズ酸化物(ITO)を含み得る。
【0068】
次に、光検出器800および900の両方を参照すると、インジウムスズ酸化物が第2の接点として使用されているが、これは透明であり、光が接点を通過して下層の半導体ナノワイヤに至ることを可能にするからである。さらに、インジウムスズ酸化物は、低い電気抵抗率および構造的均一性を含む、追加の有益な属性を示す。ペロブスカイト層は、電子輸送層として働く。次に、
図8Bのエネルギーバンド図を参照すると、半導体デバイス800のエネルギーバンドアライメントは、電子がペロブスカイト層から窒化ガリウムナノワイヤに注入され、電子が第1の接点805によって収集されることを保証する。
図9Bのエネルギーバンド図を参照すると、価電子帯の正孔は、III族窒化物ナノワイヤを介して第1の接点925に到達する。
【0069】
両方のデバイスにおいて、ナノワイヤ820および915の一部は、次の理由により、ペロブスカイト層によって覆われていない。室温(RT)広帯域光検出器(PD)は、他にも多くの分野があるがとりわけ、宇宙科学、化学検出、光通信、火炎感知、および国防において広く使用されている。UVスペクトル域内で高い応答性および十分な強度を達成することは、可視域に比べて依然として困難である。これにより、研究者らはUV域における検出を改善するために比較的低コストで高性能なデバイスを作製するときに溶液処理した有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト(MAPbX3、XはI、Br、Cl)またはすべての無機ハロゲン化物ペロブスカイト(PbCsX3、Xはハロゲン化物)と広バンドギャップ半導体をハイブリッド化することを検討することを促されている。これらの有機金属ハロゲン化物ペロブスカイトの1つであるCH3NH3PbI3(メチルアンモニウムヨウ化鉛(MAPbI3))は、その好適な直接バンドギャップ、広い吸収領域、および高い電荷キャリア移動度により、特に重要である。ペロブスカイト/ZnOベースの光検出器については、いくつかの研究成果が報告されている。
【0070】
有機部分を含まない全無機型ハロゲン化鉛セシウム(CsPbX3)ペロブスカイトは、ハイブリッドペロブスカイトと比較して優れた安定性を有することから、次世代オプトエレクトロニクス用途の代替候補として浮上している。この材料の1つまたは複数の利点は、高量子収率(最大90%)、狭い線幅を有する可視域全体にわたるチューナブルフォトルミネッセンス(PL)発光スペクトル、抑制されたPLブリンキング、高キャリア移動度、および大きな拡散長である。デバイスの高性能化のために、コンパクトで滑らかなキャリアチャネルが必要であるので、ペロブスカイト活性層が高い結晶品質を有することが不可欠である。
【0071】
しかしながら、ペロブスカイトが大気中の水分および金属酸化物材料中の酸素と相互作用すると、ペロブスカイトが劣化し、したがってデバイスの性能が低下する。したがって、GaNは安定性の良さを特徴とする最良の広バンドギャップ半導体候補の1つであることから、Nの弱い酸化は、結果として、金属酸化物と比較して有機無機ペロブスカイトとハイブリッド化されたときにより良い安定性をもたらし得る。GaNは、室温で、ウルツ鉱型六方晶構造および直接広バンドギャップ(~3.4eV)を有する。そのような広バンドギャップは、
図10Aおよび
図10Bに示されているように、UV域の放射線に対するペロブスカイトベースのPDの応答波長も向上させることができる。より具体的には、
図10Aは、ガラス上のペロブスカイト層のみを含むデバイスに対する、光の波長に関する任意の単位での吸収1000の結果を示しており、一方、
図10Bは、p-Si基板上に成長させたCH
3NH
3PbI
3ペロブスカイト/GaN NWを有するデバイスに対する吸収1010と、グラフェン基板上に成長させたCH
3NH
3PbI
3ペロブスカイト/GaN NWを有するデバイスに対する吸収1012とを示している。純粋なCH
3NH
3PbI
3ペロブスカイトデバイスは、UV域、すなわち400nmより小さい波長では感度がないのに対して、CH
3NH
3PbI
3ペロブスカイト/GaN NWデバイスはUV域、特に250から40nmの波長帯で感度が高くなることに留意されたい。これらのハイブリッドデバイスは、また、優れた熱安定性(2.1W/cm K)と導電性(2.1W/cm K)を示し、オプトエレクトロニクスの高出力および高周波デバイスへの応用に適している。
【0072】
これらのハイブリッド光検出器の応答性を評価するために、0.53mW/cm2の光源からの白色光照射下でI-V特性が測定された。半導体デバイス800の場合、半導体デバイス800に白色光が照射されたときに、印加バイアスは5.0Vであり、暗電流は2.12μAであり、光電流は7.1μAに増大した。半導体デバイス900の場合、p型シリコン基板を採用した半導体デバイス900に白色光が照射されたときに、印加バイアスは5.0Vであり、暗電流は0.55μAであり、光電流は2.6μAに増大した。半導体デバイス900にグラフェン基板を採用し、半導体デバイス900に白色光が照射されたときに、暗電流は0.12μAであり、光電流は0.95μAに増大した。
【0073】
光応答性(R)および検出性(D*)もこれらのデバイスについて計算されたが、それは、光検出器800および900の性能を推定するための2つの重要なパラメータであるからである。5Vの照明下で、半導体デバイス800についてR=94mA/Wが得られたが、グラフェン基板を採用したときには半導体デバイス900についてR=38.7mA/WおよびR=15.8mA/Wが測定された。CH3NH3PbI3ペロブスカイト/GaN薄膜の結果と比較したときに、これらの値は、GaN NW/CH3NH3PbI3ペロブスカイトに基づく初めての光検出器であることを考えると、注目に値する。同様に、検出性の値は、半導体デバイス800に対してはD=1.57×1013ジョーンズ、シリコン基板上の半導体デバイス900に対しては1.27×1013ジョーンズ、グラフェン基板上の半導体デバイス900に対して1.14×1013ジョーンズであり、ペロブスカイト光検出器について報告されている値に匹敵する。200nmの深UV光応答は、窒化ガリウムナノワイヤの組み込みにより改善する。この発見は、CH3NH3PbI3ペロブスカイト/GaN薄膜ベースの光検出器の応答性の結果ともよく一致している。
【0074】
光応答は、光源のオン/オフを何度も行うことによって得られ、5Vの下でUV域におけるデバイス挙動をテストした。単一サイクルの間の光応答時間の変化を決定するために、光検出器800および900の立ち上がり時間および減衰時間が測定された。半導体デバイス800については、立ち上がり時間は90msであり、減衰時間は260msであった。シリコン基板を有する半導体デバイス900については、立ち上がり時間は80msであり、減衰時間は200msであった。グラフェン基板を有する半導体デバイス900については、立ち上がり時間は60msであり、減衰時間は200msであった。これらの値は、以前に報告されているデータと比較して応答特性が速いことを示しており、ITO-Ag電極およびグラフェン基板が高速光検出器に最適であることを示している。しかしながら、シリコン上に作製されたデバイスに対するITO-Au構成は、最もよいR値を示した。これらの結果は、窒化ガリウムナノワイヤが広帯域光検出器に特に有用であることを示している。
【0075】
0.1Vの照明下で、GaN NW/CsPbBr3ペロブスカイト光検出器に対して17.8mA/Wの応答性が測定され、D = 2.24×1013ジョーンズであった。加えて、CH3NH3PbI3ペロブスカイト/GaNデバイスとは対照的に、このGaN NW/CsPbBr3ペロブスカイト光検出器は、GaN(電子キャリアとして)とCsPbBr3ペロブスカイト(正孔キャリア)との間のキャリアフローを妨げる障壁がなくバンドアラインメントが良好であるため、0Vで光電池セルフパワーデバイスとして動作することも可能である。GaN(生成された電子キャリア)とCsPbBr3ペロブスカイト(生成された正孔キャリア)との間の空乏層内に生じた内部電界は、0Vであっても電子正孔分離に関与し、光生成キャリアを生成し、キャリア再結合時間よりも速い過渡応答をもたらす。したがって、129mA/Wおよび0Vでの1.52×1014ジョーンズのDの測定された応答性は、このデバイスが光起電力デバイス(太陽電池)として有望であることを実証している。
【0076】
光検出器の応答を調べるために、53mW/cm2の光源によって提供される白色光照射下でI-V特性が測定された。p-Si/GaN NW/CH3NH3PbI3ペロブスカイトデバイスについては、(-5から5)Vの印加バイアスにおいて、暗電流は3.15μAであり、デバイスが光を照射されたときに光電流は7.4μAに増大した。p-Si/GaN NW/CsPbBr3ペロブスカイトデバイスについては、(-0.1から0.1)Vの印加バイアスにおいて、電流は4.3μAから4.9μAに増大した。各場合において、暗電流および光電流に関係する曲線は、良好な整流挙動を示している。発明者らは、CsPbBr3ペロブスカイトデバイスが動作する最大電圧が0.1Vであることを観察した。
【0077】
紫外線発光ダイオードに窒化ガリウムが商業的に使用されていることが知られている。しかしながら、基板と窒化ガリウムの間の格子不整合に起因する高密度の転位欠陥のせいで、紫外線発光ダイオードの効率は依然として低い(>3%)。したがって、高効率の紫外発光ダイオードに対してGaNナノロッドを成長させることは非常に有利であり、そのような発光ダイオードの概略図が
図11に示されている。
【0078】
LEDである半導体デバイス1100は、基板1105と、基板1105上に形成されたp型ドープ半導体(たとえば、GaN)層1110と、半導体ナノワイヤ1115の成長の結果としてp型ドープ半導体層1110上に形成された界面層および濡れ層1107(
図3の層307および309に対応する)と、ドープ半導体層1110上に形成されたn型ドープ半導体ナノワイヤ1115とを備える。ドープ半導体ナノワイヤの底部は、ポリマー層1120によって被覆され、ドープ半導体ナノワイヤの頂部は、インジウムスズ酸化物層1125によって被覆されている。例示されているように、ドープ半導体ナノワイヤ1115は、基板1105の全体を覆っておらず、ナノワイヤ1115の隣の、この領域内の基板1105の側部に第1の接点1130が直接形成される。第2の接点1135は、インジウムスズ酸化物層1125上に形成される。第2の接点1135は、ITO層1125上に直接形成されたTiの第1の層と、Tiの第1の層上に形成された金の第2の層とを備え得る。半導体層1110のドーピングおよび半導体ナノワイヤ1115のドーピングは、発光ダイオード1100に対して必要なp-n接合を提供する異なる種類のドーピング(すなわち、一方はp型ドーピング、他方はn型ドーピング)である。
【0079】
非限定的な実施形態において、基板1105はサファイア基板であり、ドープ半導体層1110はp型ドープ窒化ガリウム薄膜であり、ドープ半導体ナノワイヤ1115はn型ドープ窒化ガリウムナノワイヤであり、ポリマー層1120はポリメチルメタクリレート(PMMA)層であり、第1および第2の接点1130および1135は、チタン(Ti)の層上に配置された金(Au)の層を含む。第1の接点1130に関して、チタンの層は、基板1105上に直接配置され、第2の接点1135に関して、チタンの層は、インジウムスズ酸化物層1125上に直接配置されている。上で説明されている他の半導体デバイスと同様に、貫通転位のないIII族窒化物ナノワイヤは、従来の発光ダイオードと比較したときに
図11の発光ダイオードの性能を高める。
【0080】
上で説明されている方式で半導体ナノワイヤを使用することに加えて、これらの半導体ナノワイヤは、たとえば多重量子井戸(MQW)ベースのデバイスを形成するために、成長テンプレートとしても使用され得る。典型的には、窒化ガリウム多重量子井戸は、シリコン基板が低コストで広く入手可能なので、シリコン基板上に成長させられる。しかしながら、これらのデバイスは、窒化ガリウムとシリコンとの間に大きな格子不整合があるので比較的不効率であり、その結果、転位密度が著しく高い。これらの転位は、量子井戸(活性層)を貫通したときに、デバイス効率が著しく低下させる。これは、多重量子井戸を形成するためのテンプレートとして上で説明されている方式により基板上に半導体(III族窒化物など)ナノワイヤを成長させることによって対処できる。開示されている方式により半導体ナノワイヤを形成することで、良好な結晶品質を示す、低欠陥バンド発光の非常に高い発光を有するナノワイヤをもたらす。したがって、本明細書において説明されている方法を使用することで、III族窒化物ナノワイヤは、たとえば、III族窒化物多重量子井戸紫外線および可視光線ベースのLEDおよびレーザーダイオード(LD)を成長させるためのテンプレートとしてシリコン基板上に成長させることができる。
【0081】
より具体的には、
図12Aに例示されているように、複数のIII族窒化物MQW1220を含むレーザーデバイス1200が半導体NW315の上に形成された。半導体ナノワイヤ315は、
図2に例示されている方法によって、
図3Aから
図3Cに示されているように、基板105からナノ層307によって分離された濡れ層309の上に形成される。基板および濡れ層および半導体ナノワイヤに使用できる様々な材料については、上で説明されている。この実施形態において、濡れ層はPLDで作られたGaN層であり、ナノワイヤはPLDによってGaNとなるように作られる。
【0082】
GaNナノワイヤのすぐ上に、合体した柱状のGaN層1214が所与の温度で形成された。この層は、n型層になるようにドープされ得る。合体した柱状層は、図に例示されているように、ナノワイヤに対応する、柱として始まり、柱が合体すると徐々に固体層になる層である。
【0083】
合体した柱状GaN層1214の上に、複数のMQW1220が知られている方法によって形成される。一実施形態において、MQW1220は、一緒に量子井戸を形成するInGaN層1222およびGaN層1224として作られる。次いで、接点層1226がMQW1220の上に形成され、金属パッド1228が接点層1226の上に形成される。接点層1214がn型層である場合には、レーザーデバイス1200がp-n接合を必要とするので、接点層1226はp型層に作られる。次いで、第1の金属パッド1228がMQW1220の上の一箇所に形成され、第2の金属パッド(次の図に示されている)が様々な配置に形成され得るが、これは横方向のデバイスが望ましいか、縦方向のデバイスが望ましいかに依存する。当業者であれば、レーザーデバイス1200は例示的であり、その構造は他の知られているレーザーに基づき変更され得ることを理解するであろう。しかしながら、このようなレーザーの新規性は、レーザーの光学系部分(1214、1220、1226)と基板105との間にNW315が存在することであり、これにより、光学系部分の歪みが低減され、したがって、レーザーデバイスの品質が向上する。レーザーデバイス1200は、実際には、UVまたは可視光垂直外部共振器型面発光レーザー(VECSEL)として働き得る。デバイス1200は、発光デバイス(LED)としても使用され得る。
【0084】
前に説明した方法に基づき、様々な基板上に形成された高品質半導体材料は、異なる接点構成を可能にし、縦型および横型デバイスの形成を可能にする。これまでは、転位効果により導電性基板上に形成されるIII族窒化物の品質が低いので導電性基板(縦型LEDや可視VCSELなど)レーザーのすぐ上に成長させられる縦型LEDまたはレーザーはなかった。しかしながら、この問題は、
図2の方法により克服されるが、それは、形成された半導体材料中に転位が存在していないからである。さらに、本明細書において説明されているデバイスは、異なるスペクトル域内の光を放射するように構成されている半導体NWを含み得る。たとえば、現在まで、280から200nmの範囲内の高品質DUV LEDまたはレーザーダイオードはない。しかしながら、本発明の方法を用いれば、この範囲内で発光する半導体材料は、様々な基板上に成長させることができ、それにより、そのような機能を得ることができる。ポリマーなどの他の材料は、NWとハイブリッド化することができる。
【0085】
1つの可能なQWベースのデバイス1250が、
図12Bに示されている。LEDまたはレーザーダイオードであってよい、デバイス1250は、各ナノフィーチャ315の周りに形成された単一または多重QW1220を有していてもよく、接点層1226が、すべてのQW1220の上に形成される。第1の金属接点1228は、
図12Aの実施形態のように、接点層1226上に形成され、一方、第2の金属接点1230は、横型デバイスでは、接点pまたはn型層として働く、濡れ層309上に形成され得るか、または第2の金属接点1232は、縦型デバイスでは、基板105上に直接置かれ得る。代替的に、
図12Cに例示されているように、QWベースのデバイス1260は、単一または多重QW1220を組み込むように成長させられた各ナノフィーチャ315を有する。
【0086】
本明細書において説明されている実施形態のうちの1つまたは複数による、基板上に半導体ナノ構造を形成するための方法は、基板105および半導体材料110をパルスレーザー堆積チャンバー115内に置くステップ1300と、レーザービーム120のフルエンス、チャンバー115内の圧力p、基板105の温度T、半導体材料110と基板105との間の距離d、およびストランスキー・クラスタノフ核生成の条件が生成されるようにチャンバー115内に存在するガス113のガス分子直径a0を含むパラメータを選択するステップ1302と、選択されたフルエンスを有するレーザービーム120を半導体材料110に印加して半導体材料110のプルームを形成するステップ1304とを含む。選択されたパラメータは、ステップ1306において、プルームから、(1)基板105を覆うナノ層307、(2)ナノ層307の上の多結晶濡れ層309、および(3)多結晶濡れ層309の上の単結晶ナノフィーチャ315を形成することを決定し、単結晶ナノフィーチャ315を成長させるために使用されるシーディング層も触媒もない。
【0087】
一応用例において、基板の格子定数と単結晶ナノフィーチャの格子定数との間に不整合があるが、基板と濡れ層および単結晶ナノフィーチャの両方との間に転位は存在しない。この方法は、基板上に半導体材料を成長させる間に、選択されたパラメータを一定に維持するステップをさらに含み得る。一応用例では、半導体材料の、基板上にランディングする種のエネルギーEは、レーザービームの選択されたフルエンス、圧力p、温度T、距離d、およびガス分子直径によって決定される。ナノフィーチャは、ナノワイヤまたはナノロッドである。一応用例では、半導体材料はIII族窒化物材料であり、アルミニウム、ガリウム、インジウム、またはホウ素を含む。半導体材料は、GaNであってもよい。基板は、Si、またはGaN、またはサファイア、またはMXene、またはグラフェン、またはMoS2、またはWSe2から作られてもよい。一応用例では、ナノ層は、チャンバー内に存在する不純物から形成され、2nm未満の厚さを有する。
【0088】
この方法は、ハイブリッド光検出器を形成することを、ナノフィーチャのうちの少なくともいくつかの上にペロブスカイト層を形成することと、ペロブスカイト層上に第1の電気接点を形成することと、基板上に第2の電気接点を形成することとによって行うことをさらに含んでもよく、ここでナノフィーチャは、ナノワイヤであり、半導体材料は、III族窒化物材料である。
【0089】
代替的に、この方法は、ハイブリッド光検出器を形成することを、ナノフィーチャのうちの少なくともいくつかの上にペロブスカイト層を形成することと、ペロブスカイト層上に第1の電気接点を形成することと、ペロブスカイト層によって覆われていないナノフィーチャ上に第2の電気接点を形成することとによって行うことをさらに含んでもよく、ここでナノフィーチャは、ナノワイヤであり、半導体材料は、III族窒化物材料である。
【0090】
なおも別の実施形態において、この方法は、発光ダイオードを形成することを、基板上に直接III族窒化物薄膜を形成することであって、半導体濡れ層は、III族窒化物薄膜上に配置される、III族窒化物薄膜を形成することと、基板の一部分とナノフィーチャの下側部分とを覆うポリマー層を形成することと、ポリマー層とナノフィーチャの上側部分とを覆うインジウムスズ酸化物層を形成することと、III族窒化物薄膜上に第1の電気接点を形成することと、ポリマー層上に第2の電気接点を形成することとによって行うことをさらに含んでもよく、ここでナノフィーチャは、ナノワイヤであり、半導体材料は、III族窒化物材料である。
【0091】
さらに別の実施形態において、この方法は、多重量子井戸ベースのレーザーデバイスを形成することを、ナノフィーチャの上にn型またはp型層を成長させることと、n型またはp型層上に多重量子井戸を成長させることと、多重量子井戸の上にp型またはn型層を成長させることとによって行うことを含んでもよく、ここでナノフィーチャは、ナノワイヤであり、半導体材料は、III族窒化物材料である。
【0092】
上で説明されているように、開示されている成長方法は、垂直自己組織化III族窒化物ナノワイヤが貫通転位なしで形成されるので、特に有利であり、その結果得られるレーザーデバイスの性能を改善する。高品質III族窒化物ナノワイヤ内に転位が存在しないこと、さらには濡れ層内のナノグレインは(励起子局在化中心として働くことにより)、レーザーデバイスの効率をさらに高めた。本明細書において説明されているすべてのデバイス上のキャリアダイナミクス計測により、紫外線効率が優れていることが確認されたが、高励起密度でのわずかな低下は、高いキャリア注入率におけるオージェ再結合からのわずかな寄与のせいである。
【0093】
開示されている実施形態は、PLDによって基板上に成長させられた、転位のない、シーディングまたは触媒のない、半導体ナノ構造を提供し、そのようなデバイスの紫外線感度を向上させる。本明細書は、本発明を限定することを意図されていないことは理解されるべきである。それどころか、これらの例示的な実施形態は、付属の請求項において定義されているように本発明の精神および範囲内に収まる、代替例、変形例、および均等物を対象とすることを意図されている。さらに、例示的な実施形態の詳細な説明において、請求されている発明を包括的に理解できるように多数の具体的詳細が述べられている。しかしながら、当業者であれば、そのような具体的詳細がなくても様々な実施形態が実施され得ることを理解するであろう。
【0094】
例示的な実施形態の特徴および要素は、特定の組合せで実施形態において説明されているけれども、各特徴または要素は、実施形態の他の特徴および要素なしで単独で、または本明細書において開示されている他の特徴および要素との様々な組合せで、またはそれらなしで使用することができる。
【0095】
本明細書では、任意のデバイスまたはシステムを製作して使用すること、および任意の組み込まれた方法を実行することを含む、当技術者が実施することを可能にするように開示されている主題の例を使用している。主題の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者であれば思い付く他の例を含み得る。そのような他の例は、特許請求の範囲の範囲内に収まることを意図されている。
【符号の説明】
【0096】
105 基板
107 加熱装置
110 ターゲット
112 ガス
113 酸素(O)原子、不純物、不純物原子
114 ガス源
115 チャンバー
116 弁
118 コンピューティングデバイス
120 レーザービーム
122 レーザー透過窓
124 レーザー
125 プルーム
305 初期層、連続層
307 in-situナノ層
309 GaN多結晶層、濡れ層
315 ナノ構造(この場合はナノワイヤ)
800 光検出器、デバイス
805 第1の接点、底部接点
810 基板
815 層
820 半導体ナノワイヤ
825 ペロブスカイト層
830 第2の接点、透明電極、頂部接点
835 入射光
900 光検出器
905 基板
910 単一の層
915 半導体ナノワイヤ
920 ペロブスカイト層
925 第1の接点
930 第2の接点
935 光
1000、1010、1012 吸収
1100 半導体デバイス、発光ダイオード
1105 基板
1107 界面層および濡れ濡れ層
1110 p型ドープ半導体(たとえば、GaN)層
1115 半導体ナノワイヤ
1115 n型ドープ半導体ナノワイヤ
1120 ポリマー層
1125 インジウムスズ酸化物層
1130 第1の接点
1135 第2の接点
1200 レーザーデバイス
1214 合体した柱状GaN層
1220 III族窒化物MQW
1222 InGaN層
1224 GaN層、接点層
1226 接点層
1228 金属パッド
1228 第1の金属接点
1230 第2の金属接点
1232 第2の金属接点
1250 QWベースのデバイス
1260 QWベースのデバイス
【国際調査報告】