IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライトキャスト ディスカバリー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-微小液滴の操作方法 図1
  • 特表-微小液滴の操作方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】微小液滴の操作方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20220316BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546352
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 GB2020050280
(87)【国際公開番号】W WO2020161500
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】19156182.8
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521217482
【氏名又は名称】ライトキャスト ディスカバリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LIGHTCAST DISCOVERY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】トム アイザック
(72)【発明者】
【氏名】バーナビー バルムフォース
(72)【発明者】
【氏名】ジャスミン コンテリオ
(72)【発明者】
【氏名】カー フランシス ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】マチェイ ソスナ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード インガム
(72)【発明者】
【氏名】ギャレス ポッド
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR42
4B063QR56
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
0.5フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有し、少なくとも1つの生物学的成分と、1未満の水分活性aw1を有する第1の水性媒体とを含む微小液滴を操作する方法が提供される。それは、微小液滴を、微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む水非混和性の担体液中に維持するステップを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい。該方法は、例えば、液滴ベースの核酸配列決定装置において調製されるような生物学的細胞を含む微小液滴又は単一ヌクレオシドリン酸を含む微小液滴とともに使用されてもよい。該方法は、例えば、微小液滴又は単一ヌクレオチド核酸配列決定における細胞、化学、若しくは酵素プロセス及び/又は微小液滴サイズの制御に適している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの生物学的成分と、1未満の水分活性aw1を有する第1の水性媒体とを含み、0.5フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有する微小液滴を操作する方法であり、前記微小液滴を、第2の水性媒体を含み、前記微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む水非混和性の担体液中に維持するステップを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい、方法。
【請求項2】
0.5フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有する微小液滴の内容物のサイズ及び/又は化学反応性若しくは酵素反応性を操作する方法であり、前記微小液滴は、少なくとも1つの生物学的成分と、1未満の水分活性aw1を有する生物学的細胞を含まない第1の水性媒体とを含み、前記微小液滴を、第2の水性媒体を含み、前記微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大0.5フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む水非混和性の担体液中に維持するステップを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
4フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有する微小液滴における化学反応性若しくは酵素反応性及び/又は微小液滴サイズを制御する方法であり、前記微小液滴は、少なくとも1つの生物学的細胞と、1未満の水分活性aw1を有する第1の水性媒体とを含み、前記微小液滴を、第2の水性を含み、前記微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む水非混和性の担体液中に維持するステップを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二次液滴がaw1よりも大きい水分活性aw2を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記二次液滴がaw1よりも小さい水分活性aw2を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水分活性aw1及びaw2が同じであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
w1及びaw2が独立して0.9~1の範囲にあることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の水性媒体のイオン強度が、前記第1の水性媒体のイオン強度の1~5倍の範囲にあることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の媒体のイオン強度が、前記第2の水性媒体のイオン強度の1~5倍の範囲にあることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記二次液滴の平均体積が前記微小液滴の平均体積の10%未満であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の水性媒体のうちの少なくとも1つがさらにグリセロールを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的成分が、標的核酸に由来する単一ヌクレオシド三リン酸、細胞のDNA若しくはRNAに由来するオリゴヌクレオチド、酵素、又は細胞から選択されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1及び/又は第2の水性媒体が緩衝液であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
4フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有し、水性緩衝液を含む微小液滴内に含まれる1つ又は複数の細胞型の細胞増殖を引き起こす方法であり、前記液滴内の細胞を適切な環境条件でインキュベートし、その後、各液滴内の細胞数を検出するステップを含み、前記微小液滴が、前記微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む非混和性の担体液に懸濁されていることを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい、方法。
【請求項15】
検討中の細胞の1つ又は複数の表現型形質、遺伝形質、又はタンパク質発現プロファイルを分析又は検出する方法であり、前記細胞は、4フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有し、水性緩衝液を含む微小液滴内に含まれ、前記細胞に由来する標的を標識するステップを含み、前記微小液滴が、前記微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む非混和性の担体液に懸濁されていることを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい、方法。
【請求項16】
配列決定方法であり、核酸分析物をヌクレオシド三リン酸分子の秩序ある流れに加ピロリン酸分解によって次第に消化し、そこから、0.5フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有し、前記ヌクレオシド三リン酸分子の1つと水性緩衝液とを各々含む微小液滴の対応する秩序ある流れを生成するステップと、各微小液滴内の各ヌクレオシド三リン酸分子と核酸塩基に特異的な蛍光プローブとを反応させ、その後、各微小液滴に関連する対応する蛍光を検出し、それにより前記核酸塩基を同定するステップとを含み、前記微小液滴が、前記微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大0.5フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む非混和性の担体液中に懸濁されていることを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい、方法。
【請求項17】
前記微小液滴と前記二次液滴の水分活性の比が0.9:1~1:0.9、好ましくは0.95:1~1:0.95の範囲にあることを特徴とする、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油等の非混和性の担体液において、任意で生物学的細胞を含む水性微小液滴を操作する改良された方法に関する。それは、微小液滴のサイズを制御又は調整することを可能にし、そこで生じる任意の酵素反応又は化学反応を、所定時間の間、維持又は最適化することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
我々の以前の特許出願、例えば、国際公開第2014/167323号、国際公開第2015/121675号、国際公開第2016/012789号、国際公開第2017/140839号、及びPCT/EP2018/066574において、DNA及びRNAの配列決定、並びに細胞及びウイルスの検出及び特徴付けを含む一連の分析を実施する目的で、細胞、酵素、オリゴヌクレオチド、さらには単一ヌクレオチド等の生物学的成分を微小液滴内で操作する方法を記載した。いくつかの実施形態において、これらの方法は、エレクトロウェッティング推進力を用いるか、又は担体液でコーティングされた基板上に微小液滴を直接印刷することによって、分析装置内のマイクロ流体経路に沿って非混和性の担体液中に分散した微小液滴を移動させることを含む。微小液滴の体積分率が比較的低い多くの例において、これらの微小液滴は時間の経過とともに大幅に収縮する傾向にあり、これは、時に、内部で進行する酵素プロセスの一部又はすべてを妨げる可能性があることを我々は見出した。また、他の例では、所与の分析が実行されるときに、デバイスの一部において微小液滴のサイズを意図的に収縮又は拡大させることが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0003】
今回、我々は、これらの問題を克服する微小液滴の操作方法を開発した。それは、例えば、微小液滴の内容物のサイズ及び/又は反応性を操作するために、又はそこで生じる化学反応又は酵素反応を制御するために使用されてもよい。本発明は、添付の特許請求の範囲に定義されるとおりである。本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの生物学的成分と1未満の水分活性aw1を有する第1の水性媒体とを含む0.5フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有する微小液滴を操作する(微小液滴の内容物のサイズ及び/又は化学組成を制御する)包括的な方法であり、微小液滴を、微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの第2の水性媒体の二次液滴をさらに含む水非混和性の担体液中に維持するステップを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、油の水和なしの0時間及び24時間でのベースライン測定に対して、24時間培養後に得られた結果を比較している。
図2図2にヒストグラムとして示されるデータは、水和していない油(「ドライオイル」)、水で水和した油(「水のみ」)、又は液滴の緩衝液濃度の3倍で水和した油(「3×緩衝液」)でインキュベートした6μm液滴の平均蛍光強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の範囲を限定することを望まないが、本発明は、微小液滴の全体的な特性又は微小液滴に適用される任意の検出方法の有効性に悪影響を及ぼすことなく微小液滴と相互作用することができる非常に小さな二次液滴を含む担体液を用いることにより、課題を解決すると考えられる。担体媒体が油である場合、このような複合媒体を「水和油」と称することがある。この点で重要な特徴は、微小液滴と二次液滴との相対的な水分活性が特定のパラメーター内で制御されていることであり、任意で、継続的な監視及び/又はフィードバックループにより制御されている。ここで、水性媒体の水分活性(a)は、STP条件下での純水の部分蒸気圧に対する調査中の水性媒体の部分蒸気圧の比率として定義される。水は、高水分活性から低水分活性への勾配に沿って拡散する傾向があるため、我々のシステムの制約内で、第2の水性媒体の水分活性(aw2)が第1の水性媒体の水分活性(aw1)よりも高い場合、正味の効果は、2つの成分の水分活性が等しくなるまで微小液滴が膨張することであることを我々は見出した。逆に、第2の水性媒体の水分活性が第1の水性媒体の水分活性よりも高い場合、微小液滴は、これらの水分活性が等しくなるまで収縮する傾向にある。1つの有用な実施形態において、第1及び第2の水性媒体の水分活性は、微小液滴が収縮又は膨張する任意の傾向が連続的に打ち消されるように、同じ又は実質的に同じであってもよい。したがって、微小液滴のサイズは常に維持されていてもよい。また、これらの二次液滴を用いることによって、例えば、この方法を採用する任意の装置の1つ又は複数の点で細胞増殖成分を微小液滴に供給するために二次液滴を用いることによって、微小液滴中で生じるあらゆる酵素反応又は化学反応を保存する又はさらに強化するのを補助できることを、我々はこれらの手段により見出した。第1及び第2の水性媒体は、一実施形態では同一である組成物を有していてもよい。
【0006】
したがって、本発明の1つの実施形態において、第1及び第2の水性媒体の水分活性は、独立して、0.9~1の範囲にある。別の実施形態では、第1の水性媒体の水分活性は、0.9以上1未満である。さらに別の実施形態では、第1及び第2の水性媒体の水分活性の比(aw1:aw2)は、0.9:1~1:0.9の範囲にある。
【0007】
操作を行う便利な方法の1つは、緩衝液である第1及び第2の媒体を用いることであり、必要に応じて、2つの相対組成を変えることによって行う。例えば、1つの適用では、第1の水性媒体のイオン強度は、第2の水性媒体のイオン強度から1~5の範囲にあり、好ましくは3~5倍である。別の適用では、第2の水性媒体のイオン強度は、第1の水性媒体のイオン強度の1~5倍の範囲にあり、好ましくは3~5倍である。さらに別の適用では、イオン強度は同じか又は実質的に同じであり、イオン強度の比は3:1~1:3の範囲にある。1つの特に有用な実施形態では、第1及び第2の水性媒体のいずれか又は両方が、成分としてグリセロールを、例えば異なる濃度で含んでいてもよい。別の実施形態では、第1及び第2の水性媒体のpHは同じか又は類似しており、6.5~8の範囲内である。
【0008】
二次液滴に関しては、これらは微小液滴の平均値よりもはるかに小さい平均体積を有し、限界においては、担体液内で乳化され、非イオン性界面活性剤等の相溶性の界面活性剤分子の鞘(sheath)によって安定化された第2の水性媒体のフェムトサイズの液滴又はミセルからなっていてもよい。1つの実施形態において、これらの二次液滴のサイズは、使用される微小液滴の体積の10%未満であり、好ましくは5%未満である。別の実施形態では、二次液滴の平均体積は、微小液滴の平均体積の10~1%の範囲内にある。適切には、二次液滴は、1つの実施形態では非混和性油である担体液中で安定なエマルジョンの一部を形成する。適切には、担体液は、鉱油、シリコーン油、又はフルオロカーボン油から選択される。油には、必要に応じてさらに界面活性剤及び安定剤が含まれていてもよい。適切には、微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比は、3:1より大きく、好ましくは5:1以上である。
【0009】
本発明の方法は、生物学的細胞が分析されているいくつかの用途に有用である。一例は、タンパク質発現又は特定の遺伝形質等の望ましい特性について細胞の個々のクローンコピーをスクリーニングする目的で、不死化された哺乳動物細胞の培養物を微小液滴内で増殖させている場合である。したがって、本発明の第2の態様では、1つの実施形態において、4フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有し、水性緩衝液を含む微小液滴内に含まれる1つ又は複数の細胞型の細胞増殖を引き起こす方法であり、液滴内の細胞を適切な環境条件でインキュベートし、その後、各液滴内の細胞数を検出するステップを含み、微小液滴が、微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む非混和性の担体液に懸濁されていることを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい方法が提供される。
【0010】
別の実施形態では、検討中の細胞の1つ又は複数の表現型形質、遺伝形質、又はタンパク質発現プロファイルを検出する方法であり、細胞は、4フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有し、水性増殖培地を含む微小液滴内に含まれており、細胞に由来する標的を蛍光プローブで標識し、その後、プローブからの出力を検出するステップを含み、細胞含有微小液滴が、微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む非混和性の担体液に懸濁されていることを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい方法も提供される。この目的に適した蛍光プローブ分子はよく知られており、標的タンパク質の存在下で分解される蛍光標識抗体、FRETレポータープローブ、及び酵素標識抗原が挙げられる。
【0011】
別の実施形態では、4フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有し、さらに水性緩衝液を含む微小液滴内に含まれる生物学的細胞に由来するオリゴヌクレオチドを分析する方法であり、オリゴヌクレオチドを蛍光ハイブリダイゼーションプローブで標識し、その後、対応する蛍光を検出するステップを含み、微小液滴が、微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大4フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む非混和性の担体液に懸濁されていることを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい方法が提供される。
【0012】
この目的に使用できる蛍光ハイブリダイゼーションプローブは、当技術分野でよく知られており、分子ビーコン、TaqMan(登録商標)プローブ、Scorpion(登録商標)プローブ、及びLNA(登録商標)プローブが挙げられる。これらすべての実施形態で生じる蛍光を検出するための方法は、当業者によく知られており、例えば、入射電磁放射線源(レーザー、LED等)、及び蛍光光子を検出するための対応する光検出器を使用し、マイクロプロセッサアルゴリズムを用いて分析することができるデータストリームを出力する方法がある。
【0013】
したがって、これらの方法における標的は、細胞自体、それに由来する1つ又は複数のオリゴヌクレオチド、又は微小液滴自体の中で培養されたときに細胞によって発現されるタンパク質等の産物であってもよい。そのようなオリゴヌクレオチドは、溶解によって細胞から生成されてもよい。
【0014】
本発明の方法はまた、非細胞性又は無細胞性である生物学的成分に関連して適切に使用され得るが、1つの実施形態において、以前に生物学的細胞に由来していた核酸又はその成分を操作するために使用されてもよい。したがって、本発明の第3の態様では、0.5フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有する微小液滴の内容物のサイズ及び/又は反応性を操作する方法であり、微小液滴は、少なくとも1つの生物学的成分と、1未満の水分活性aw1を有する生物学的細胞を含まない第1の水性媒体とを含み、微小液滴を、第2の水性を含み、微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大0.5フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む水非混和性の担体液中に維持するステップを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい方法が提供される。
【0015】
本発明の第3の態様の方法は、生物学的成分が単一ヌクレオチド、例えば、単一ヌクレオシド三リン酸又は単一ヌクレオシド一リン酸である多くの用途に有用である。例えば、この方法は、我々が以前に記載した配列決定方法の1つ、例えば、これらに限定されないが、欧州特許出願公開第3013987号明細書又は読者が向けられる他の上記の特許出願に記載されたもの等の1つとともに有利に使用され得る。したがって、第3の態様では、核酸分析物をヌクレオシド三リン酸分子の秩序ある流れに加ピロリン酸分解によって次第に消化し、そこから、0.5フェムトリットルから10ナノリットルの範囲の平均体積を有し、ヌクレオシド三リン酸分子の1つと水性緩衝液とを各々含む微小液滴の対応する秩序ある流れを生成するステップと、各微小液滴内の各ヌクレオシド三リン酸分子と核酸塩基に特異的な蛍光プローブとを反応させ、その後、各微小液滴に関連する対応する蛍光を検出し、それにより核酸塩基を同定するステップとを含み、微小液滴が、微小液滴の平均体積の25%未満の平均体積を有し、最大0.5フェムトリットルまでの二次液滴をさらに含む非混和性の担体液中に懸濁されていることを特徴とし、全体の単位体積あたりの微小液滴の合計体積に対する担体液の体積の比が2:1より大きい方法が提供される。
【0016】
この用途での使用に適した蛍光プローブは、我々の以前の特許出願、例えば、国際公開第2016/012789号及び読者が向けられるその後公開された出願において説明されている。これらのプローブは、(a)未使用の状態では非蛍光性であること、及び(b)単一ヌクレオシド一リン酸に結合した検出可能な状態のフルオロフォアを生成するために一度使用されると、エキソヌクレオリシスを受けることができることを特徴とする。生じる蛍光は、上記のように検出及び分析することができる。
【0017】
本発明のこれらすべてのさらなる態様において、微小液滴及び二次液滴にそれぞれ関連する第1及び第2の水性媒体の水分活性の比は、0.9:1~1:0.9、好ましくは0.95:1~1:0.95の範囲にあり、例えば、1:1であることが好ましい。
【実施例
【0018】
上記のように担体相を水和することの有利な効果は、以下の実施例により示される。
【0019】
実施例1(細胞増殖)
フッ化水素エーテル連続相99部とフッ素化界面活性剤1部とを混合することにより連続油相材料を調製する。等容量の油/界面活性剤混合物と少量のRPMI 1640培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック、英国)とを混合し、混合物を37℃で24時間撹拌して多分散エマルジョンを形成することにより、増殖培地処理担体相を調製する。次いで、このエマルジョンを静置し、それが自発的に分画して、水性増殖培地の大きな液滴及び分散していないプラグを含む上相と、溶解した水性培地で今やさらに飽和されている油相中に懸濁された増殖培地の最小の小胞のみを含む下相とを形成するまで放置する。この下相は、ピペットを用いて容器から取り出し、後で使用するために保管する。
【0020】
Jurkat E6-1 T細胞リンパ腫細胞(ATCC、バージニア州、米国)を、8E6細胞/mLの濃度でRPMI培地に懸濁する。次に、この培地及び細胞を乳化装置に流して直径50μmの液滴を形成し、細胞を液滴全体に分散させる。エマルジョンの外側の担体相は、溶液中の液滴を安定化するために1%の適切な界面活性剤と混合されたフッ化水素エーテル油である。このように形成されたエマルジョンは、自発的に分画して、連続的な油/界面活性剤混合物のカラムの頂部に浮遊する、密に充填された単分散水性液滴の層を形成する。次に、このエマルジョンを穏やかに混合することによって均一に分散させ、液滴と担体相とを含む3つのアリコートに分割する。
【0021】
1つのアリコート(初期の参照)を直ちに血球計算盤フローセルに移し、その中の液滴を20倍の拡大光学顕微鏡を用いて検査する。各液滴の細胞占有率を、各液滴内の別個の細胞の数を数えることによって記録する。空の液滴は無視する。
【0022】
2つ目のアリコートをもう一度分画させ、ピペットを用いて下方の担体相を除去する。除去した未処理の担体相を置換するために、等量の前に処理した担体相をサンプルに導入する。3つ目のアリコートは変化させないままとする。次に、2つ目と3つ目のアリコートをいずれも、容器とその周囲との間の気体透過を可能にする部分的に密閉された容器に移す。両方の容器を、5%のCO2/空気混合物、95%の湿度、37°Cの設定温度を含むように設定した環境制御CO2インキュベーターに配置する。アリコートを24時間インキュベートする。
【0023】
次に、これらのアリコートをインキュベーターから取り出し、参照アリコートと同じ方法で検査及び分析のために血球計算盤に導入する。その後、インキュベーション後の細胞集団分布の変化(細胞増殖の特徴)を、異なる油処理間で比較することができる。
【0024】
図1は、油の水和なしの0時間及び24時間でのベースライン測定に対して、24時間培養後に得られた結果を比較している。ここで、細胞増殖は、複数の細胞を含む液滴の割合として表される。ベースラインの細胞増殖と比較して、油が細胞培養培地で水和されると改善されることが分かるであろう。
【0025】
実施例2(反応性)
99重量部の軽油と1重量部のペグ化界面活性剤とを混合することにより、連続水和油相を調製する。油と界面活性剤とを完全に混合するために、油をローテーターに一晩置く。5部の油と3部の水性水和相とを混合することにより水和油を調製する。水性水和相は、分散エマルジョン相で使用するのと同じ生理食塩水緩衝液又は水のみのいずれかからなる。混合物を50℃で一晩回転させ、その後、70℃で60分間回転させる。エマルジョンを15分間放置する。エマルジョンの上部を分注(aliquoted)し、次いで、アリコートを遠心分離して油の水和レベルを調整する。遠心分離時間が長いほど水和レベルは低くなる。水和レベルを、カールフィッシャー滴定装置を用いて測定する。適正な水和レベル(通常、500~1000ppm)に達したら、アリコートの上清をピペットで新しいチューブに移し、使用するまで凍結する。
【0026】
8体積部の油(水和又は非水和)と1体積部の分散水相とを混合し、続いてボルテックスミキサーで5分間混合し、400RPMで1分間遠心分離することにより、液滴の多分散エマルジョンを製造する。混合物の上半分をピペットで新しいチューブに入れ、5秒間遠心分離する。エマルジョンを、さらなる使用のためにチューブの底からピペットで移す。
【0027】
酵素活性の測定のため、上記の分散水相は、欧州特許出願公開第3013987号明細書に既に記載及び例示されているように、単一ヌクレオチド検出化学からなる。
【0028】
蛍光強度の測定のため、エマルジョンを、平均エマルジョン液滴サイズに対応するスペーサーによって分離された2つの透明基板の間に挟む。適切な波長範囲の光で励起すると、各エマルジョン液滴から放出される蛍光信号が、エマルジョンの明視野画像から収集される液滴の直径とともに測定される。
【0029】
図2にヒストグラムとして示されるデータは、水和していない油(「ドライオイル」)中、水で水和した油(「水のみ」)中、又は液滴の緩衝液濃度の3倍で水和した油(「3×緩衝液」)中でインキュベートした6μm液滴の平均蛍光強度を示す。水和していない油中でインキュベートした液滴は、これらのサンプルでは約1000カウントであるバックグラウンドよりは上の非常に低い強度を示す。水で水和した油中でインキュベートした液滴は、水和していない油中でインキュベートした液滴と比較して、強度の増加を示す。緩衝液濃度の3倍で水和した油中で液滴をインキュベーションすると、平均強度がさらに増加することが分かる。これは、両方の油の水和が、これらの液滴における酵素反応性を維持するために使用できることを示している。
【0030】
実施例3(液滴サイズ効果)
微小液滴は、例えば、読者が向けられる欧州特許出願公開第3008207号明細書に既に記載されるように、連続油相に浸漬された基板上に堆積する。
【0031】
99重量部のパラフィン油と1重量部のペグ化界面活性剤とを混合することにより、連続水和油相を調製する。油と界面活性剤とを完全に混合するために、油をローテーターに一晩置く。5部の油と3部の水性水和相とを混合することにより水和油を調製する。水性水和相は、4%グリセロールを含む又は含まない水のいずれかからなる。混合物を50℃で一晩回転させ、その後、70℃で60分間回転させる。エマルジョンを15分間放置する。エマルジョンの上部を分注し、次いで、アリコートを遠心分離して油の水和レベルを調整する。遠心分離時間が長いほど水和レベルは低くなる。水和レベルを、カールフィッシャー滴定装置を用いて測定する。適正な水和レベル(通常、500~1000ppm)に達したら、アリコートの上清をピペットで新しいチューブに移し、使用するまで凍結する。
【0032】
分散水相は、4%グリセロールを含む又は含まない水からなる。堆積した液滴を、70℃で115分間のインキュベーションサイクルにかける。次に、エマルジョンの液滴の直径を明視野顕微鏡画像から測定し、インキュベーションサイクルの前に測定した直径と比較して、液滴の収縮又は成長を推測する。
【0033】
以下に示すデータは、高温インキュベーションステップでの液滴の平均体積の変化を、それぞれ油の水和物(oil hydration)中及び液滴中のグリセロールのパーセンテージの関数として示す。参照サンプルにおいて、グリセロールが油の水和物にも液滴にも存在しない場合、液滴は平均して収縮する。グリセロールを液滴は含むが油の水和物は含まない場合、液滴へのグリセロールの添加により油中の水分活性が液滴中の水分活性よりも高くなるため、液滴は参照と比較して成長する。グリセロールが油の水和物には添加されているが、液滴には添加されていない場合、逆のことが起こる。油と比較して液滴の水分活性が高いため、液滴は参照と比較して収縮する。これは、特定の含有量の液滴と油の水和物とを用いて、液滴の収縮及び成長を制御できることを示している。
【0034】
【表1】
図1
図2
【国際調査報告】