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特表2022-519755繊維生成のための交流電界電極システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】繊維生成のための交流電界電極システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20220316BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20220316BHJP
【FI】
D01D5/04
D04H1/728
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546730
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2020018407
(87)【国際公開番号】W WO2020168272
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/805,431
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301044015
【氏名又は名称】ザ ユーエイビー リサーチ ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタニシェブスキ,アンドレイ,ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブレイエ,ウィリアム,アンソニー
【テーマコード(参考)】
4L045
4L047
【Fターム(参考)】
4L045AA01
4L045AA08
4L045BA03
4L045CB01
4L045CB21
4L047AB08
4L047BA08
4L047EA22
(57)【要約】
AC電界紡糸プロセスにおいて使用するための電極システムは、帯電コンポーネント電極と、AC電界減衰コンポーネントおよび前駆体液体減衰コンポーネントのうちの少なくとも一方とを含む。帯電コンポーネント電極は、AC源に電気的に結合されており、このAC源は、帯電コンポーネント電極に所定のAC電圧を印加する。電極システムがAC電界減衰コンポーネントを含む場合は、AC電界減衰コンポーネントは、帯電コンポーネント電極によって生成されたAC電界を減衰させて、繊維フローの方向をより良好に成形および制御する。電極システムが前駆体液体減衰コンポーネントを含む場合は、前駆体液体減衰コンポーネントは、液体前駆体の上面が理想的な形状ではないか、または帯電コンポーネント電極上に液体を含有するリザーバのリムまたはリップより低い場合であっても、繊維生成を増加させる役割を果たす。
【選択図】図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流(AC)電界紡糸システムで使用するための電極システムであって、
帯電コンポーネント電極であって、前記帯電コンポーネント電極がAC源に電気的に結合され、前記AC源は、前記帯電コンポーネント電極にAC信号を送達し、前記帯電コンポーネント電極に所定のAC電圧を印加する、帯電コンポーネント電極と、
AC電界減衰コンポーネントおよび前駆体液体減衰コンポーネントのうちの少なくとも一方と、を備えている、電極システム。
【請求項2】
前記電極システムが、前記AC電界減衰コンポーネントを備えるが、前記前駆体液体減衰コンポーネントを備えず、前記所定のAC電圧が前記AC電界減衰コンポーネントにも印加され、前記AC電界減衰コンポーネントは、前記所定のAC電圧を前記帯電コンポーネント電極に前記印加することによって作り出されるAC電界を減衰させる、請求項1に記載の電極システム。
【請求項3】
前記帯電コンポーネント電極がドーナツ形状である、請求項2に記載の電極システム。
【請求項4】
前記帯電コンポーネント電極が円盤形状である、請求項2に記載の電極システム。
【請求項5】
前記帯電コンポーネント電極が、上面およびリムまたはリップを有し、これらが一緒になって、前駆体液体を保持するためのリザーバを画定し、前記帯電コンポーネント電極の前記上面が前記リザーバの底部として機能するようになっている、請求項2に記載の電極システム。
【請求項6】
前記AC電界減衰コンポーネントがリングである、請求項2に記載の電極システム。
【請求項7】
前記リングが円形である、請求項6に記載の電極システム。
【請求項8】
前記リングが矩形である、請求項6に記載の電極システム。
【請求項9】
前記帯電コンポーネント電極に対する前記AC電界減衰コンポーネントの位置、配向、および傾斜のうちの少なくとも1つが、調整可能である、請求項6に記載の電極システム。
【請求項10】
前記電極システムが、前記前駆体液体減衰コンポーネントを備えるが、前記AC電界減衰コンポーネントを備えず、前記帯電コンポーネント電極は、上面およびリムまたはリップを有し、これらが一緒になって、前駆体液体を保持するためのリザーバを画定し、前記帯電コンポーネント電極の前記上面が前記リザーバの底部として機能するようになっており、前記前駆体液体減衰コンポーネントは、前記帯電コンポーネント電極上の前記前駆体液体の水面が前記帯電コンポーネント電極の前記リップまたはリムより低い場合であっても、繊維生成を促進する、請求項1に記載の電極システム。
【請求項11】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが円筒形状である、請求項10に記載の電極システム。
【請求項12】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが円盤形状である、請求項10に記載の電極システム。
【請求項13】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが球形状である、請求項10に記載の電極システム。
【請求項14】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが、比較的低い誘電率を有する非導電性材料で作製されている、請求項10に記載の電極システム。
【請求項15】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが、前記前駆体液体と接触し、前記帯電コンポーネント電極の前記上面と接触する、請求項10に記載の電極システム。
【請求項16】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが、前記前駆体液体と接触し、前記帯電コンポーネント電極の前記上面と接触するか、または離間している、請求項10に記載の電極システム。
【請求項17】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが、前記前駆体液体に接触するときに回転させられる、請求項16に記載の電極システム。
【請求項18】
前記帯電コンポーネント電極に対する前記前駆体液体減衰コンポーネントの位置が、調整可能である、請求項16に記載の電極システム。
【請求項19】
前記電極システムが、前記前駆体液体減衰コンポーネントおよび前記AC電界減衰コンポーネントを備え、前記所定のAC電圧が前記AC電界減衰コンポーネントにも印加され、前記帯電コンポーネント電極は、上面およびリムまたはリップを有し、これらが一緒になって、前駆体液体を保持するためのリザーバを画定し、前記帯電コンポーネント電極の前記上面が前記リザーバの底部として機能するようになっており、前記前駆体液体減衰コンポーネントは、前記帯電コンポーネント電極上の前駆体液体の水面が前記帯電コンポーネント電極の前記リップまたはリムより低い場合であっても、繊維生成を促進する、請求項1に記載の電極システム。
【請求項20】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが円筒形状である、請求項19に記載の電極システム。
【請求項21】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが円盤形状である、請求項19に記載の電極システム。
【請求項21】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが球形状である、請求項19に記載の電極システム。
【請求項22】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが、比較的低い誘電率を有する非導電性材料で作製されている、請求項19に記載の電極システム。
【請求項23】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが、前記前駆体液体と接触し、前記帯電コンポーネント電極の前記上面と接触する、請求項19に記載の電極システム。
【請求項25】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが、前記前駆体液体と接触し、前記帯電コンポーネント電極の前記上面と接触するか、または離間している、請求項19に記載の電極システム。
【請求項26】
前記前駆体液体減衰コンポーネントが、前記前駆体液体に接触するときに回転させられる、請求項25に記載の電極システム。
【請求項27】
前記帯電コンポーネント電極に対する前記前駆体液体減衰コンポーネントの位置が、調整可能である、請求項25に記載の電極システム。
【請求項28】
前記帯電コンポーネント電極、前記前駆体液体減衰コンポーネント、および前記AC電界減衰コンポーネントのうちの2つ以上が、前記電極システムの迅速かつ容易な組み立ておよび再構成を促進するための磁石を備えている、請求項19に記載の電極システム。
【請求項29】
交流(AC)電界紡糸を実施するための方法であって、
帯電コンポーネント電極と、AC電界減衰コンポーネントおよび前駆体液体減衰コンポーネントのうちの少なくとも一方と、を備える電極システムのリザーバ内に前駆体液体を配置することと、
前記帯電コンポーネント電極に電気的に結合されたAC源から前記帯電コンポーネント電極にAC信号を送達して、前記帯電コンポーネント電極に所定のAC電圧を印加することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維生成に関し、より詳細には、電界紡糸によって繊維を生成する際に使用するための交流電界電極システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界紡糸は、マイクロファイバーとナノファイバーを作製するために使用されるプロセスである。電界紡糸では、繊維は、通常、伝搬ポリマージェットを形成するために、電界(DCまたはAC)を印加しながら、ポリマーベースの溶融物もしくは溶液をキャピラリーニードルから押し出すことによって作製されるか、または電極表面上の液体前駆体の層の表面から作製される。高電圧は、溶液にコーンを形成させ、このコーンの先端から流体ジェットが噴出され、コレクターに向かって加速される。伸縮ジェットは、溶媒が蒸発するにつれて細くなり、連続した固体繊維となる。次いで、繊維はコレクターに収集される。
【0003】
非キャピラリー(ニードルなし、自由表面、スリット、ワイヤ、シリンダ)繊維生成電極の利用は、複数のジェットの同時生成によってプロセス生産性を向上させるが、プロセスに必要とされるより高い電圧を犠牲にする。一般的な静電界(DC電界紡糸)の代わりに、周期的な交流電界(AC電界紡糸)を印加することにより、生成された繊維を効率的に運び去る「コロナ」または「イオン」風現象の効果が増加するため、繊維生成の条件が改善される。AC電界紡糸は、DC電界紡糸と比較して、電極面積当たりの繊維生成速度が高く、プロセス生産性が高く、繊維の取り扱いが容易である。しかしながら、AC電界紡糸の周期的性質は、より強い磁場が繊維生成電極に限定され、前駆体の特性が変化することに起因して、多くの前駆体溶液の紡糸特性を強く制限することがある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、AC電界紡糸システムおよびAC電界紡糸法において使用するための電極システムに関する。電極システムは、帯電コンポーネント電極と、AC電界減衰コンポーネントおよび前駆体液体減衰コンポーネントのうちの少なくとも一方とを備える。帯電コンポーネント電極は、AC源に電気的に結合されており、このAC源は、帯電コンポーネント電極にAC信号を送達し、帯電コンポーネント電極に所定のAC電圧を印加する。
【0005】
一つの実施形態によれば、電極システムは、AC電界減衰コンポーネントを備えるが、前駆体液体減衰コンポーネントは備えず、所定のAC電圧は、AC電界減衰コンポーネントにも印加される。AC電界減衰コンポーネントは、帯電コンポーネント電極に所定のAC電圧を印加することによって作り出されるAC電界を減衰させる。
【0006】
一つの実施形態によれば、帯電コンポーネント電極は、ドーナツ形状である。別の実施形態によれば、帯電コンポーネント電極は、円盤形状である。
【0007】
一つの実施形態によれば、帯電コンポーネント電極は、上面およびリムまたはリップを有し、これらが一緒になって、前駆体液体を保持するためのリザーバを画定し、帯電コンポーネント電極の上面がリザーバの底部として機能するようになっている。
【0008】
一つの実施形態によれば、AC電界減衰コンポーネントは、リングである。一つの実施形態によれば、リングは円形である。一つの実施形態によれば、リングは矩形である。
【0009】
一つの実施形態によれば、帯電コンポーネント電極に対するAC電界減衰コンポーネントの位置、配向、および傾斜のうちの少なくとも1つが、調整可能である。
【0010】
一つの実施形態によれば、電極システムは、前駆体液体減衰コンポーネントを備えるが、AC電界減衰コンポーネントを備えず、帯電コンポーネント電極は、上面およびリムまたはリップを有し、これらが一緒になって、前駆体液体を保持するためのリザーバを画定し、帯電コンポーネント電極の上面がリザーバの底部として機能するようになっている。前駆体液体減衰コンポーネントは、帯電コンポーネント電極上の前駆体液体の水面が帯電コンポーネント電極のリップまたはリムより低い場合でも、繊維生成を促進する。
【0011】
一つの実施形態によれば、前駆体液体減衰コンポーネントは円筒形状である。一つの実施形態によれば、前駆体液体減衰コンポーネントは円盤形状である。別の実施形態によれば、前駆体液体減衰コンポーネントは球形である。
【0012】
一つの実施形態によれば、前駆体液体減衰コンポーネントは、比較的低い誘電率を有する非導電性材料で作製されている。
【0013】
一つの実施形態によれば、前駆体液体減衰コンポーネントは、前駆体液体および帯電コンポーネント電極の上面と接触する。別の実施形態によれば、前駆体液体減衰コンポーネントは、前駆体液体と接触し、帯電コンポーネント電極の上面と接触しているか、または離間している。前駆体液体減衰コンポーネントは、前駆体液体に接触するときに回転させられる。
【0014】
一つの実施形態によれば、帯電コンポーネント電極に対する前駆体液体減衰コンポーネントの位置は、調整可能である。
【0015】
一つの実施形態によれば、電極システムは、前駆体液体減衰コンポーネントおよびAC電界減衰コンポーネントを備え、所定のAC電圧がAC電界減衰コンポーネントにも印加される。帯電コンポーネント電極は、上面およびリムまたはリップを有し、これらが一緒になって、前駆体液体を保持するためのリザーバを画定し、帯電コンポーネント電極の上面がリザーバの底部として機能するようになっている。前駆体液体減衰コンポーネントは、帯電コンポーネント電極上の前駆体液体の水面が帯電コンポーネント電極のリップまたはリムより低い場合でも、繊維生成を促進する。
【0016】
本方法は、
【0017】
帯電コンポーネント電極と、AC電界減衰コンポーネントおよび前駆体液体減衰コンポーネントのうちの少なくとも一方を備える電極システムのリザーバ内に前駆体液体を配置することと、
【0018】
帯電コンポーネント電極に電気的に結合されたAC源から帯電コンポーネント電極にAC信号を送達して、帯電コンポーネント電極に所定のAC電圧を印加することと、を含む。
【0019】
これらおよび他の特徴および利点は、以下の説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A-1B】それぞれ、プロセス開始後1分以内および10分以内に、基礎となる「一般的」電極デザインを用いた既知のAC電界紡糸プロセスによって生成された繊維を撮影した高速カメラスナップショットを示す。
【0021】
図2A図1Aおよび図1Bに示されたタイプの既知のAC電界紡糸プロセスにおいて使用されると紡糸特性に乏しい前駆体Xを使用した代表的な実施形態による、AC電界紡糸プロセス中の繊維生成の高速カメラスナップショットを示す。
【0022】
図2B図1Aおよび図1Bに示されたタイプの既知のAC電界紡糸プロセスにおいて使用されると紡糸特性に乏しい前駆体Yを使用した代表的な実施形態による、AC電界紡糸プロセス中の繊維生成の高速カメラスナップショットを示す。
【0023】
図3-6】コンポーネントA、B、およびCの様々な配置を使用した、いくつかの可能性のある電極システム構成の実施例を示す。
【0024】
図7A-7B】図3図6に示された電極システム構成のうちの1つを使用した、AC電界紡糸プロセス中の繊維生成の高速カメラスナップショットを示す。
【0025】
図8A-8B】代表的な実施形態による、コンポーネントAおよびBを備える2つの異なる電極システム構成の側面斜視図である。
【0026】
図9A-9B】代表的な実施形態による、コンポーネントAおよびコンポーネントBを用いて構成され得る2つの異なる電極システム構成の平面図を示す。
【0027】
図10】代表的な実施形態による、コンポーネントAおよびコンポーネントBを備える電極システム構成の側面斜視図であり、コンポーネントBが電極システム構成の軸に対して傾斜されている。
【0028】
図11A】代表的な実施形態による、コンポーネントAおよびコンポーネントBを備える電極システム構成の側面斜視図である。
【0029】
図11B-11C】図11Aに示された電極システムの写真であり、AC電界減衰コンポーネントが液体前駆体流体層と一直線に、またはそのわずかに下方に移動された場合に、AC電界減衰コンポーネントが繊維生成に及ぼす影響を示している。
【0030】
図12A】代表的な実施形態による、コンポーネントA電極、および前駆体液体減衰コンポーネントであるコンポーネントCを備える電極システム構成の側面斜視図である。
【0031】
図12B-12C】図12Aに示された構成を有するが、繊維生成プロセス中に3つの回転同軸コンポーネントC円盤を有する電極システムの写真である。
【0032】
図13-15】代表的な実施形態による、電極システムの異なる構成およびコンポーネントA電極に対する前駆体流体の異なる条件についてのAC電界紡糸中の繊維生成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書において、上記の制限および制約を低減または除去するAC電界紡糸において使用するための電極システムの例示的な実施形態が開示され、これにより、AC電界紡糸プロセスの生産性を著しく向上させ、AC電界紡糸プロセスの適用可能性を拡大する。電極システムは、帯電コンポーネント電極と、AC電界減衰コンポーネントおよび前駆体液体減衰コンポーネントのうちの少なくとも一方とを備える。帯電コンポーネント電極は、AC源に電気的に結合されており、このAC源は、帯電コンポーネント電極にAC信号を送達し、帯電コンポーネント電極に所定のAC電圧を印加する。電極システムがAC電界減衰コンポーネントを含む場合は、AC電界減衰コンポーネントは、帯電コンポーネント電極によって生成されたAC電界を減衰させて、繊維フローの方向をより良好に成形し、制御する。電極システムが前駆体液体減衰コンポーネントを含む場合は、前駆体液体減衰コンポーネントは、液体前駆体の上面が理想的な形状ではないか、または帯電コンポーネント電極上に液体を含有するリザーバのリムまたはリップより低い場合であっても、繊維生成を増加させる役割を果たす。
【0034】
以下の詳細な説明において、いくつかの例示的または代表的な実施形態を記載し、本発明の原理および概念を説明する。本教示による一つの実施形態の完全な理解を可能にするために、限定ではなく、説明を目的とし、特定の詳細を開示する代表的な実施形態を記載する。なお、本開示の利益を有する当業者には、本明細書に開示される特定の詳細から逸脱した本教示による他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に留まることが明らかであろう。さらに、周知の装置および方法の記載は、代表的な実施形態の説明を不明瞭にしないように省略されていることがある。かかる方法および装置は、明らかに本教示の範囲内である。
【0035】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためであり、限定することを意図しない。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、文脈が明示的に別様に示さない限り、単数および複数の両方の指示対象を含む。したがって、例えば、「a device」は、1つのデバイスおよび複数のデバイスを含む。添付の図面に図示されているように、相対的な用語を使用して、様々な要素の相互関係を記載し得る。これらの相対的な用語は、図面に示される配向に加えて、デバイスおよび/または要素の異なる配向を包含することが意図される。ある要素が、別の要素に「接続されている」、または「結合されている」、または「電気的に結合されている」と言及される場合、その要素は、直接接続されても結合されてもよく、または介在要素が存在してもよいことが理解されよう。
【0036】
例示的、または代表的実施形態が、図面を参照して記載されるが、同様の参照番号は、同様のコンポーネント、要素、または特徴を表す。図中の特徴、要素またはコンポーネントは、一定の縮尺で描画することを意図しておらず、代わりに、本発明の原理および概念を説明することに重点が置かれていることに留意されたい。
【0037】
図1Aおよび図1Bは、基礎となる「一般的」電極デザインを有する電極を使用する既知のAC電界紡糸プロセスによって生成された繊維の高速カメラスナップショットを示している。図1Aに示すスナップショットは、AC電界紡糸プロセスの開始後1分以内に撮影された。図1Bに示すスナップショットは、既知のAC電界紡糸プロセスの開始から10分後に撮影された。AC電界紡糸は、マイクロファイバーおよびナノファイバーの高歩留まり率生産のための比較的新しいプロセスであるが、既知のAC電界紡糸プロセスに伴う2つの重大な問題、すなわち、(1)DC電界紡糸プロセスにおいて良好な紡績特性を通常有するAC電界紡糸プロセスにおける多くの前駆体が紡績特性に乏しいこと、ならびに(2)繊維生成速度が高く、電界分布によって繊維が電極に局限されるため、AC電界紡糸で通常使用される電極の外縁において紡績材料が蓄積されることが確認されている。
【0038】
課題(1)は、AC電界紡糸において使用され得る前駆体を制限することであり、課題(2)は、繊維生産歩留まりを急速に低下させ、最終的に繊維生成を停止させる結果をもたらすことである。課題(2)の結果は、電極の外縁の周囲に形成された紡糸材料の白色の「王冠」を示している、図1Bにおいて見ることができる。紡糸材料が電極の外縁に蓄積することによって引き起こされる繊維の上向きフローの結果として生じる減少は、図1Aおよび1Bの比較から明らかである。
【0039】
本開示によるAC電界紡糸システムおよび方法は、これらの制限および制約を克服する。本開示により、AC電界紡糸システムおよびプロセスで使用するための電極システムを提供し、これは、電極の外縁上の材料蓄積を低減または除去するだけでなく、AC電界紡糸プロセスにおいて現在使用されている典型的な電極設計では紡績特性を有していないか、または紡績特性の乏しい前駆体から繊維が生成されることを可能にする。これらの目標を達成することにより、AC電界紡糸法の生産性が大幅に改善される一方で、繊維の生成および伝搬の制御もはるかに良好な制御を達成する。
【0040】
図2Aは、代表的な実施形態による、AC電界紡糸プロセス中の繊維生成の高速カメラスナップショットを示している。図2Aに示される繊維は、図1Aおよび図1Bに示されるタイプの既知のAC電界紡糸プロセスで使用されると紡糸特性に乏しい前駆体Xを使用して生成されたものである。図2Bは、代表的な実施形態による、AC電界紡糸プロセス中の繊維生成の高速カメラスナップショットである。図2Bに示される繊維は、図1Aおよび図1Bに示されるタイプの既知のAC電界紡糸プロセスで使用されると紡糸特性に乏しい前駆体である前駆体Yを使用して生成されたものである。
【0041】
図2Aおよび図2Bに示される代表的な実施形態では、AおよびBとラベル付けされたコンポーネントを含む新しい電極がAC電界紡糸システムで使用された。新しい電極システムは、図3図6を参照して以下でより詳細に説明するように、様々な構成を有することができる。新しい電極システムを使用することによって、AC電界紡糸プロセスは、従来は紡績特性の乏しかった前駆体XおよびYを使用して高い紡績特性を達成する。図2Aでは、前駆体X繊維の高い紡績特性が、均一な柱状繊維フローで達成されている。図2Bでは、前駆体Y繊維の円錐状のフローが達成される。繊維生成の規模のいくつかの概念を提供するために、図2Aおよび図2Bに示される写真の幅は、約250ミリメートル(mm)である。本発明の原理および概念は、AC電界紡糸プロセスで使用される前駆体に関して、または生成された繊維の厚さに関して限定されないことに留意されたい。
【0042】
上記のように、本開示の電極システムは、電極の外縁における材料蓄積を減少または除去するだけでなく、AC電界紡糸プロセスで使用される典型的な電極デザインでは紡績特性を有していないか、または紡績特性の乏しい前駆体から繊維が生成されることを可能にする。加えて、本開示の電極システムは、AC電界紡糸生産性をさらに向上させ、繊維の生成および伝搬に対するはるかに良好な制御を可能にする。
【0043】
代表的な実施形態によれば、電極システム構成は、少なくともコンポーネントAを備え、通常はコンポーネントAと、コンポーネントBおよびCのうちの少なくとも一方を備える。コンポーネントAは、帯電コンポーネント電極である。コンポーネントBは、AC電界減衰コンポーネントである。コンポーネントCは、回転式非導電性コンポーネントである前駆体液体減衰コンポーネントである。好ましい実施形態によれば、電極システム構成がコンポーネントAと、コンポーネントBおよびCのうちの少なくとも一方とを含む場合、コンポーネントの少なくとも2つは、それらが少なくとも1つの共通対称軸を有するように配置される。
【0044】
本発明の原理および概念によるAC電界紡糸のための電極システムは、様々な構成を有することができ、そのいくつかは、図3図6に示され、以下の属性を有する。
1)電極システム構成は、帯電コンポーネント電極(本明細書では互換的に「コンポーネントA」と呼ばれる)と、少なくとも1つの共通対称軸を有するAC電界減衰コンポーネント(本明細書では互換的に「コンポーネントB」と呼ばれる)および前駆体液体減衰コンポーネント(本明細書では互換的に「コンポーネントC」と呼ばれる)のうちの少なくとも一方とを有する。
2)電極システム構成を備えるコンポーネントは、A-Bコンポーネント構成、A-Cコンポーネント構成、またはA-B-Cコンポーネント構成のいずれであっても、互いに対して最適に位置する。
3)上記1)に記載の属性を有する電極システム構成のコンポーネントのうちの少なくとも1つは、非導電性である。
4)上記1)に記載の属性を有する電極システム構成のすべてのコンポーネントは、少なくとも1つの自由度(並進または回転のいずれか)で互いに対して移動することができる。
5)上記1)に記載の属性を有する電極システム構成のコンポーネントのうちの少なくとも1つは、磁気要素を含む。なお、磁気要素は、部品の機械的結合のためのコンポーネントA、B、およびCのいずれかまたはすべてに存在し得、それらが迅速に交換されることを可能にし、それによって、異なるプロセスに対してシステムをより適応可能にし得る。
6)上記1)に記載の属性を有する電極システム構成がコンポーネントCを含む場合、コンポーネントCは、コンポーネントAに対して繊維生成(上向き)およびフロー伝搬の一次方向に位置する。
7)上記1)に記載の属性を有する電極システム構成がコンポーネントCを含む場合、コンポーネントCは、コンポーネントAまたはコンポーネントBのいずれとも直接電気的接触を有しない。
8)上記1)に記載の属性(A-B、A-CまたはA-B-C)を有する電極システム構成のいずれも、グループ化され、多電極配置され得る。
【0045】
上記1)~8)に示される属性の少なくとも一部を有する、可能性のある電極システム構成のいくつかの実施例を、図3図6に示す。図3に示される電極構成は、コンポーネントA、B、およびCを有する。コンポーネントBは、電極システムの中心軸1に沿って位置し、本明細書では横方向とも呼ばれるX方向にコンポーネントAによって囲まれた側壁を有する。コンポーネントBは、例えば、円環状であってもよい。コンポーネントBは、円形、円筒形、または矩形の断面を有する固体要素であってもよい。コンポーネントCは、コンポーネントAの上部に積み重ねられる。コンポーネントCは、例えば、円筒、リング、球体、円盤などの形状など、それが回転することを可能にする任意の形状を有することができる。コンポーネントBは、コンポーネントCに対して凹んでいてもよく、すなわち、BのY座標は、CのY座標よりも小さい。コンポーネントAおよびCは、図3図6の下に示されるX、Y、Zデカルト座標系のY軸に平行な中心軸1に対して回転し得る。コンポーネントBは、中心軸1に沿って移動可能であり得る。
【0046】
図3に示される電極システム構成は、いくつかの方法で変更され得る。例えば、図3に示されるコンポーネントCは、A-B構成を伴う電極システムを残して除去され得る。別の実施例として、図3に示されるコンポーネントBは、A-C構成の電極システムを残して除去され得る。いずれの場合も、図3に示される構成では、電極システム構成がA-B、A-C、またはA-B-C構成を有するかどうかにかかわらず、中心軸1は、すべてのコンポーネントに共通の軸である。したがって、図3に示されるシステム構成は、属性1)を有する。図3に示される電極システム構成を形成するためにいずれのコンポーネントが使用されても、コンポーネントは、互いに対して最適に位置することができ、これは属性2)を満たす。コンポーネントのうちの少なくとも1つは、非導電性であり得、これは属性3)を満たす。図3の構成を構成するコンポーネントのすべては、少なくとも1つの自由度で互いに対して移動され得、これは属性4)を満たす。例えば、コンポーネントAおよびCは、中心軸1に対して回転し得る一方、コンポーネントBは、中心軸1に沿って移動し得る。コンポーネントA、BまたはCのうちの少なくとも1つは、磁気要素であり得、これは属性5)を満たす。図3では、コンポーネントCは、属性6)を満たすために、繊維生成およびフロー伝搬の一次方向に位置する。コンポーネントCは、コンポーネントAおよびBから離間され、コンポーネントCと、コンポーネントAおよびBとの間に直接的な電気的接続は存在せず、これは属性7)を満たす。この属性は、必要に応じて、コンポーネント間に誘電体材料またはスペーサを配置することによっても達成することができる。図3に示される構成を有する複数の電極を共にグループ化して、属性8)を満たす多極配置を実現することができる。
【0047】
図4に示される電極構成は、コンポーネントA、B、およびCを有する。コンポーネントAは、電極システムの中心軸11に沿って位置し、横方向にコンポーネントBによって囲まれた側壁を有する。コンポーネントBは、例えば、円環状であってもよい。コンポーネントAは、円形、円筒形、または矩形の断面を有する固体要素であってもよい。コンポーネントCはまた、円形、円筒形、または矩形の断面を有する固体要素であり得、コンポーネントAの上部に積み重ねられ得る。コンポーネントBは、中心軸11に対して回転し得、中心軸11は、図3図6の下に示されるX、Y、Zデカルト座標系のY軸に平行である。コンポーネントAおよびBは、中心軸11に沿って移動可能であり得る。
【0048】
図4に示す電極システム構成は、いくつかの方法で変更され得る。例えば、図4に示されるコンポーネントCは、A-B構成を伴う電極システムを残して除去され得、これは図2Aおよび図2Bに示されるものであるが、図2Aおよび図2Bにおいて、コンポーネントAがコンポーネントBに対して中心軸11に沿って突出していることを除く。別の実施例として、図4に示されるコンポーネントBは、A-C構成を伴う電極システムを残して除去され得る。すべての場合において、図4に示される構成では、電極システム構成がA-B、A-C、またはA-B-C構成を有するかどうかにかかわらず、中心軸11が、すべてのコンポーネントに共通の軸である。したがって、図4に示されるシステム構成は、属性1)を有する。図4に示される電極システム構成を形成するためにいずれのコンポーネントが使用されても、コンポーネントは、互いに対して最適に位置することができ、これは属性2)を満たす。コンポーネントCは、非導電性であり得、これは属性3)を満たす。通常、コンポーネントAおよびBは導電性であり、コンポーネントCは非導電性である。図4に示される構成を構成するコンポーネントのすべては、少なくとも1つの自由度で互いに移動され得、これは属性4)を満たす。例えば、コンポーネントBは、中心軸11に対して回転し得る一方、コンポーネントAおよびCは、中心軸11に沿って移動され得る。コンポーネントA、BまたはCのうちの少なくとも1つは、磁気要素を含有することができ、これは属性5)を満たす。図4では、コンポーネントCは、繊維生成およびフロー伝搬の一次方向に位置し、これは属性6)を満たす。コンポーネントCは、コンポーネントAおよびBから離間され、コンポーネントCと、コンポーネントAおよびBとの間に直接的な電気的接続は存在せず、これは属性7)を満たす。この属性は、必要に応じて、コンポーネント間に誘電体材料またはスペーサを配置することによっても達成することができる。図4に示す構成を有する複数の電極を共にグループ化して、多極配置を実現することができ、これは属性8)を満たす。
【0049】
図5に示される電極構成は、コンポーネントA、BおよびCを有し、コンポーネントAおよびCは、電極システムの中心軸21に沿って位置し、コンポーネントBに隣接する1つの側面を有する。コンポーネントCがリング形状である場合、リングの平面に垂直なその中心軸を中心に回転する必要がある。コンポーネントAは、円形状、円筒形状、またはリング形状の断面を有する固体要素であってもよい。コンポーネントCは、コンポーネントAの上部に積み重ねられ得る。コンポーネントBは、例えば、X-Z平面内で移動し得る。コンポーネントAおよびCは、中心軸21に沿って移動可能であり得る。コンポーネントBは、中心軸21に平行なY方向に移動可能であり得る。コンポーネントAおよび/またはCは、中心軸21に垂直なX-Z平面内で移動可能であり得る。
【0050】
図5に示される電極システム構成は、いくつかの方法で変更され得る。例えば、図5に示されるコンポーネントCは、A-B構成の電極システムを残して除去され得る。別の実施例として、図5に示されるコンポーネントBは、A-C構成の電極システムを残して除去され得る。いずれの場合においても、図5に示される構成では、中心軸21は、少なくともコンポーネントAおよびCに共通の軸である。したがって、図5に示されるシステム構成は、属性1)を有する。図5に示される電極システム構成を形成するためにいずれかのコンポーネントが使用されても、コンポーネントは、互いに対して最適に位置することができ、これは属性2)を満たす。図5に示されるコンポーネントのうちの少なくとも1つは、非導電性であり得、これは属性3)を満たす。上記のように、図5に示される構成を構成するすべてのコンポーネントは、少なくとも1つの自由度で互いに対して移動され得、これは属性4)を満たす。図5に示されるコンポーネントA、B、またはCのうちの少なくとも1つは、磁気要素であり得、これは属性5)を満たす。図5では、コンポーネントCは、繊維生成およびフロー伝搬の一次方向に位置し、これは属性6)を満たす。コンポーネントCは、コンポーネントAおよびBから離間され、コンポーネントCと、コンポーネントAおよびBとの間に直接的な電気的接続は存在せず、これは属性7)を満たす。この属性は、必要に応じて、コンポーネント間に誘電体材料またはスペーサを配置することによっても達成することができる。図5に示される構成を有する複数の電極を共にグループ化して、多極配置を実現することができ、これは属性8)を満たす。
【0051】
図6に示される電極構成は、コンポーネントA、B、およびCを有し、コンポーネントAは、電極システムの中心軸31に沿って位置し、横方向にコンポーネントBによって囲まれた側壁を有する。コンポーネントAは、例えば、円環状であってもよい。中心軸31上に位置するコンポーネントBは、円形、円筒形、または矩形の断面を有する固体要素であってもよい。最も外側のコンポーネントであるコンポーネントBは、例えば、リングであってもよい。コンポーネントCは、コンポーネントAの上部に積み重ねられ、その軸を中心に回転し、および/またはコンポーネントAの表面に沿って移動し得る。かかる場合は、コンポーネントCは、円筒形または球形であり得る。リング形状であるコンポーネントAおよびBは、X、Y、Zデカルト座標系のY軸に平行な中心軸31に対して回転し得る。リング形状ではないコンポーネントA、B、およびCは、X方向、Y方向、および/またはZ方向に平行な軸に沿って移動可能であり得る。
【0052】
図6に示される電極システム構成は、いくつかの方法で変更され得る。例えば、図6に示されるコンポーネントCは、A-B構成の電極システムを残して除去され得る。別の実施例として、図6に示されるコンポーネントBは、A-C構成の電極システムを残して除去され得る。いずれの場合も、図6に示される構成では、電極システム構成がA-B、A-C、またはA-B-C構成を有するかどうかにかかわらず、中心軸31は、すべてのコンポーネントに共通の軸である。したがって、図6に示されるシステム構成は、属性1を有する。図6に示される電極システム構成を形成するためにいずれのコンポーネントが使用されても、コンポーネントは、互いに対して最適に位置することができ、これは属性2)を満たす。図6に示されるコンポーネントのうちの少なくとも1つは、非導電性であり得、これは属性3)を満たす。上記のように、図6に示される構成を構成するすべてのコンポーネントは、少なくとも1つの自由度で互いに対して移動され得、これは属性4)を満たす。コンポーネントA、BまたはCのうちの少なくとも1つは、磁気要素であり得、これは属性5)を満たす。図6において、コンポーネントCは、繊維生成およびフロー伝搬の一次方向に位置し、これは属性6)を満たす。コンポーネントCは、コンポーネントAおよびBから離間され、コンポーネントCと、コンポーネントAおよびBとの間に直接的な電気的接続は存在せず、これは属性7)を満たす。この属性は、必要に応じて、コンポーネント間に誘電体材料またはスペーサを配置することによっても達成することができる。図6に示される構成を有する複数の電極を共にグループ化して、多極配置を実現することができ、これは属性8)を満たす。また、図3図6に示される構成を有する電極システム、またはその修正は、共にグループ化され、多重電極配置を形成することができることに留意されたい。
【0053】
コンポーネントAに好適な材料としては、一般的な溶媒、酸、および塩基に対して良好な耐性を有する金属および合金が挙げられるが、これらに限定されない。ステンレス鋼は、コンポーネントAに適した材料の一例である。通常、流体と接触しないコンポーネントBに適した材料には、一般的な溶媒、酸、および塩基に対する良好な耐性を有する銅、アルミニウム、およびステンレス鋼の金属および合金が挙げられるが、これらに限定されない。流体と接触するコンポーネントCに好適な材料としては、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン、および低誘電率を有する他の化学的に安定なポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
図7Aおよび図7Bは、図3図6を参照して上記の新しい電極システム構成のうちの1つを使用するAC電界紡糸プロセス中の繊維生成の高速カメラスナップショットを示している。図8Aおよび図8Bは、コンポーネントAおよびBを含む異なる電極システム構成の実施例の側面斜視図である。図9Aおよび図9Bは、コンポーネントAおよびBで構成され得る異なる電極システム構成の実施例の上面平面図を示している。図9Aに示される構成では、コンポーネントAはドーナツ形状の電極であり、コンポーネントBは内側電極および外側電極を備える。図9Bに示される構成では、コンポーネントAは円盤形状の電極であり、コンポーネントBは外側電極を備える。図8A図9Bに示される例示的な構成は、本発明の原理および概念のいくつかの実施例を示すために提供され、本明細書に提供される記載を考慮して当業者によって理解されるように、限定することを意図しないことに留意されたい。
【0055】
これらの電極システム構成のいずれかを用いて、前駆体流体3は、コンポーネントA電極の上面に装填される。前駆体流体3は、通常は、電極システム構成の管5を介してポンプ(図示せず)によってコンポーネントA電極の上面に圧送される。同一AC電圧がコンポーネントAおよびBの電極に印加される。AC電界がコンポーネントAおよびBに印加されると、液体ジェットが生成される。図8Aおよび図8Bに示されるように、繊維4は、前駆体流体3内の溶媒が蒸発し、繊維フローが「イオン風」現象によってコンポーネントA電極に向かって引き離されるときに形成する。
【0056】
多くの場合、AC電界減衰コンポーネントであるコンポーネントBが存在しないと、繊維ジェットが広がり過ぎる、または始動が困難になる。また、コンポーネントBが存在しない場合は、コンポーネントA電極のリムの周りに上記の繊維状残渣が形成され得る。コンポーネントBは、コンポーネントA電極と同一電源から同一AC電圧で動作する電界減衰電極である。コンポーネントBの電界減衰効果は、繊維生成を改善し、繊維フローの形状を改善し(図8B)、フロー方向を制御することを可能にする(図7Bおよび8B)。コンポーネントBは、通常、コンポーネントA電極の周りに配置される(図9A)が、コンポーネントBは、中空またはドーナツ形状のコンポーネントA電極の場合、内側部分(図9A)を有することもできる(図9A)。図7A図9Bにおいて、コンポーネントBは、リング形状かつ円形であるものとして示されている。なお、コンポーネントBは、他の形状を有することができる。例えば、コンポーネントBは、矩形(例えば、正方形)の形状を有することができる。
【0057】
図10に示されるように、コンポーネントBは、フロー方向を制御するために、管5と同軸であるコンポーネントA電極の中心軸に対して傾斜され得る。いくつかの実施形態では、コンポーネントBに機械的に結合された並進機構(図示せず)は、ユーザーがコンポーネントBの位置、配向および/または傾斜の程度を制御することを可能にし、コンポーネントBの電界減衰効果を調整して、繊維生成、繊維フローの形状および/または繊維フローの方向をより良好に制御することを可能にする。
【0058】
図11Aは、代表的な実施形態による、コンポーネントA電極およびコンポーネントBを備える電極システム構成の側面斜視図である。前駆体流体3がコンポーネントA電極の上面に最適な表面プロファイル(凸状)を有しない場合、ジェットは開始するのが困難であるか、または場合によっては不可能でさえある。コンポーネントA電極の上面に前駆体流体3が過多である場合は、流体3は、コンポーネントA電極をオーバーフローして、流出することがあり、AC電界紡糸プロセスは停止させる必要がある。一方、図14を参照して以下でより詳細に記載されるように、流体の水面がコンポーネントA電極のリップまたはリムの外縁以下である場合、ジェット生成は、通常は停止する。また、図11Aに示されるように、コンポーネントBが前駆体流体3の上面より上(+z方向)に上昇している場合は、ジェット生成は、通常は停止する。
【0059】
図11Bおよび図11Cは、図11Aに示される電極システムの写真であり、AC電界減衰コンポーネントBが液体前駆体流体層3と一直線に、またはそのわずかに下方に移動される場合に、AC電界減衰コンポーネントBが繊維生成に及ぼす影響を示している。図11Bおよび図11Cに見られるように、ジェットが生成され、コンポーネントBを前駆体流体層3のZ位置で、またはそれよりわずかに下方に維持しながら、コンポーネントA電極に対するコンポーネントBの高さ(Z方向)を調整することによって、繊維フローは、生成される繊維の幅、形状、および質量において、分単位で調整され得る。繊維フローの幅、形状、および速度は、電界電圧および周波数、ならびに液体前駆体の組成、粘度、電気伝導度、および表面張力によって決定される。
【0060】
図12Aは、代表的な実施形態による、コンポーネントA電極と、前駆体液体減衰コンポーネントであるコンポーネントCを含む電極システム構成の側面斜視図である。図12Bおよび図12Cは、図12Aに示される構成を有するが、繊維生成プロセス中に3つの回転同軸コンポーネントC円盤形状を伴う電極システムの写真である。理想的には低誘電率非導電性材料(例えば、テフロン(登録商標)またはポリプロピレン、または他のプラスチック)で作製されている前駆体液体減衰コンポーネントCを加えることにより、図11Aを参照して上記に記載の課題を解決することを可能にする。代表的な実施形態によれば、コンポーネントCは回転し、帯電した前駆体流体3は、コンポーネントCの表面上に層を形成する。前駆体流体3の層は、単位面積当たりに生成されるジェットの数を増加させる好ましい凸形状を有し、したがって、繊維生成速度が増加する。このように、コンポーネントA電極上の前駆体流体3の最適水面を維持する必要はもはやなく、したがって、コンポーネントA電極の周囲の溢れおよび残渣の蓄積が防止される。
【0061】
前駆体液体減衰コンポーネントCは、様々な形状または構成を有することができる。例えば、それは、円筒、円盤、球体、またはそれらの組み合わせであり得、例えば、流体運動を変調し、ジェット生成をさらに増加させる波形表面などの様々な表面プロファイルを有し得る。前駆体液体減衰コンポーネントCは、異なる直径および厚さ(長さ)の1つ以上の円筒、円盤、またはリングであり得る。前駆体液体減衰コンポーネントCは、液体前駆体3に部分的に浸漬され得、コンポーネントA電極の表面上の直線x-y運動と組み合わせて様々な速度(ω)で回転され得る。コンポーネントCの作業側は、液体前駆体3の保持を実現するために、平滑であるか、または構造化(例えば、切欠、穴部、突起などを有する)され得る。図12Bおよび図12Cに示される実施形態では、回転同軸コンポーネントC円盤形状は、液体前駆体3で部分的に充填された矩形のテフロン(登録商標)コンポーネントA電極に配置されたそのリムに沿ってチャネルを有する直径30mmのプラスチック(例えば、テフロン(登録商標))円盤である。円盤組立体が回転すると、各円盤に沿ってリムの各側面から繊維が生成される。図12Bおよび図12Cに示される例示的な構成では、コンポーネントAおよびCを備える組立体の長さは100mmであるが、本発明の原理および概念は、組立体またはそのコンポーネントの寸法に関して限定されない。
【0062】
AC電界減衰コンポーネントBは、コンポーネントCと共に使用することができる。コンポーネントB電極のx、y、z位置は、通常は、より良好な形状に成形し、繊維フローを方向付けるために、コンポーネントCの最上部表面のx、y、z位置より下であるものとする。コンポーネントA電極およびコンポーネントCの形状および領域に応じて、コンポーネントCは、回転しながらx-y方向に移動され得る。コンポーネントCの底部側は、それが回転するときにコンポーネントA電極の上面上で摺動してもよく、またはコンポーネントA電極の上面の少し上に配置されてもよく、その結果、コンポーネントCは、コンポーネントCが回転するときに前駆体流体3と接触するが、コンポーネントA電極の上面と直接接触しない。
【0063】
図13図15は、代表的な実施形態による、コンポーネントA電極に対する電極システムの異なる構成および前駆体流体3の異なる条件についてのAC電界紡糸プロセス中の繊維生成を概略的に示している。電界減衰コンポーネントB電極は含まれていないが、含まれていてもよい。通常、コンポーネントA電極は、図13図15に示すように、皿形状またはカップ形状を有する。繊維生成に影響を及ぼすのに必要な前駆体流体3の水面、およびその適切な凸面プロファイル(図13)が予測される。ただし、AC電界下の粘性流体層におけるファラデーの不安定性の発生の可能性、およびそれに関連してジェット形成を促進することができる表面波パターンの出現を説明する数値モデルは現在存在しない。いずれの場合でも、流体3の水面がコンポーネントAの電極のリム7を下回ると、ジェットは生成されない(図14)。コンポーネントCを含む回転するプラスチック円盤または円筒は、コンポーネントA電極から流体を引き出し(図15)、この帯電した流体3は、コンポーネントCの表面が湾曲しているために複数のジェットを容易に形成することができ、このようにして、繊維フローが生成される。さらに、上記に示されるように、コンポーネントCの使用により、通常は、コンポーネントCを含まない電極システム構成よりも繊維生成を増加させる(図13)。図13および図15に示される構成にコンポーネントB電極を追加することは、繊維フローの形状および方向をより良好に制御することを可能にするであろう。
【0064】
例示的な実施形態は、本発明の原理および概念を説明する目的で本明細書に記載されていることに留意されたい。本明細書に提供される記載を考慮して当業者によって理解されるように、多くの修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に対して行われてもよい。例えば、本発明の原理および概念は、主に特定の電極システム構成を参照して記載されているが、本発明の原理および概念は、他の電極システム構成にも等しく適用可能である。また、本発明の原理および概念から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に多くの修正を行うことができ、すべてのそのような修正は、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内である。
図1A
図1B
図2A-2B】
図3-6】
図7A-10】
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B-12C】
図13
図14
図15
【国際調査報告】