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特表2022-519777処置誘導性の胃腸傷害を防止又は処置する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】処置誘導性の胃腸傷害を防止又は処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20220316BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/655 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/63 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/275 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220316BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
A61K31/165
A61K31/506
A61K31/4985
A61K31/495
A61K31/655
A61K31/5375
A61K31/63
A61K31/275
A61K31/36
A61K31/4745
A61K31/513
A61P1/04
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569250
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 US2020016302
(87)【国際公開番号】W WO2020163187
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/801,185
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521345604
【氏名又は名称】ユ,ジアン
(71)【出願人】
【識別番号】521345615
【氏名又は名称】ツァン,リン
(71)【出願人】
【識別番号】521345626
【氏名又は名称】レイボヴィッツ,ブライアン
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,リン
(72)【発明者】
【氏名】レイボヴィッツ,ブライアン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA13
4C086BC43
4C086BC50
4C086CB05
4C086CB22
4C086DA19
4C086DA30
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA10
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA68
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA04
4C206GA28
4C206HA14
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA14
4C206MA17
4C206NA06
4C206ZA68
(57)【要約】
本明細書では、化学療法又は放射線療法によって誘導される胃腸傷害を防止又は処置するための組成物及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法又は放射線療法によって誘導される胃腸傷害を防止又は処置するための方法であって、
【化1】

【化2】


からなる群から選択される治療有効量の化合物を対象に投与すること
を含み、
ここで、前記対象が化学療法又は放射線療法を受けていた、受けている、又は受ける予定である、方法。
【請求項2】
前記対象が、がんを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記がんが、皮膚、乳房、膵臓、前立腺、卵巣、腎臓、食道、胃腸管、結腸、脳、肝臓、肺、頭及び/又は頸部のがんである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物の投与が、少なくとも非がん細胞において、アポトーシスのp53上方調節モジュレーター(PUMA)の活性を阻害し、それにより、前記化学療法又は放射線療法によって誘導される前記非がん細胞のアポトーシスを防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非がん細胞が、LGR5幹細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物の投与が、前記化学療法又は放射線療法からがん細胞を保護しない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化学療法が、塩酸イリノテカン(CPT-11)及び5-フルオロウラシル(5-FU)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、重水素化される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対象においてがんを処置するための方法であって、
化学療法又は放射線療法を前記対象に投与すること;及び
【化3】

【化4】

からなる群から選択される治療有効量の化合物を前記対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項10】
前記化合物の投与が、前記化学療法又は放射線療法によって誘導される胃腸傷害を防止又は処置する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記がんが、皮膚、乳房、膵臓、前立腺、卵巣、腎臓、食道、胃腸管、結腸、脳、肝臓、肺、頭及び/又は頸部のがんである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物の投与が、少なくとも非がん細胞において、PUMAの活性を阻害し、それにより、前記化学療法又は放射線療法によって誘導される前記非がん細胞のアポトーシスを防止する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記非がん細胞が、LGR5幹細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物の投与が、前記化学療法又は放射線療法からがん細胞を保護しない、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記化学療法が、塩酸イリノテカン(CPT-11)及び5-フルオロウラシル(5-FU)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、重水素化される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
化学療法又は放射線療法によって誘導される胃腸傷害を防止又は処置する薬剤をスクリーニングするための方法であって、
化学療法又は放射線療法により、胃腸組織から調製されたオルガノイドを処置すること;及び
前記オルガノイドを候補薬剤に曝露して、前記オルガノイドのアポトーシスを防止する薬剤を同定すること
を含む、方法。
【請求項18】
前記オルガノイドが、結腸オルガノイドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記胃腸組織が、ヒト対象から得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記オルガノイドが、少なくともがん細胞を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記化学療法が、塩酸イリノテカン(CPT-11)及び5-フルオロウラシル(5-FU)からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が、in vivoで、化学療法又は放射線療法によって誘導される胃腸傷害を防止又は処置する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年2月5日に出願された、米国仮出願第62/801,185号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、NIHによって与えられたU19-A1068021の下で政府の支援により行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
背景技術
I.発明の分野
本開示は、一般に、医学、腫瘍学、及びがん治療の分野に関する。より詳細には、本開示は、化学療法又は放射線療法によって誘導される胃腸傷害を防止又は処置する化合物、組成物、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
II.関連技術の説明
胃腸(GI)副作用は、化学療法及び腹部放射線療法における主な投与量規制因子であり、元がん患者に長期合併症を引き起こし得る。例えば、結腸直腸がん患者を処置するために一般に使用される、5-フルオロウラシル(5-FU)が、50%の患者で、化学療法誘導性の下痢を引き起こしたことが報告された。放射線及びほとんどの化学療法剤が、複数の組織及び器官系を損傷するが、一般に5-FUと組み合わせて使用して結腸直腸がん患者を処置する、塩酸イリノテカン(CPT-11)は、50%より多くの患者で、重度の下痢及び嘔吐を伴う、選択的なGI傷害を引き起こす。この急性毒性は、腸における、CPT-11の活性代謝物である、SN-38の高濃度の蓄積、並びに腸内細菌による非毒性SN-38グルクロニドのSN-38への変換後の腸内再吸収によって引き起こされる。SN-38は、トポイソメラーゼIの阻害剤であり、DNA複製とRNA転写の両方に重要な酵素であり、増殖する細胞において複製ストレス及びDNA損傷を引き起こす。下痢止め薬は、CPT-11誘導性の下痢の緩和を助けることができるが、長期のGI機能障害を減少させる効果は限られている。現在は、CPT-11誘導性のGI傷害又は合併症を防止又は処置するUS FDAが認可した薬剤はない。したがって、化学療法又は放射線療法によって誘導されるGI傷害を防止又は処置するための新しい治療剤又は方法を開発する必要性が急務である。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、例えば、化学療法又は放射線療法によって誘導される、処置誘導性の胃腸傷害を防止又は処置することができる化合物を提供する。一実施形態では、化合物は、
【0006】
【化1】

【化2】
からなる群から選択される。
【0007】
特定の実施形態では、化合物は、重水素化される。
【0008】
別の態様では、本開示は、処置誘導性の胃腸傷害を防止又は処置するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、本明細書に記載の治療有効量の化合物を対象に投与することを含み、ここで対象は、化学療法又は放射線療法を受けていた、受けている、又は受ける予定である。
【0009】
ある特定の実施形態では、対象は、がんを有する。いくつかの実施形態では、がんは、皮膚、乳房、膵臓、前立腺、卵巣、腎臓、食道、胃腸管、結腸、脳、肝臓、肺、頭及び/又は頸部のがんである。
【0010】
ある特定の実施形態では、化合物の投与は、少なくとも非がん細胞において、アポトーシスのp53上方調節モジュレーター(PUMA)の活性を阻害し、それにより、化学療法又は放射線療法によって誘導される非がん細胞のアポトーシスを防止する。ある特定の実施形態では、非がん細胞は、LGR5幹細胞である。
【0011】
ある特定の実施形態では、化合物の投与は、化学療法又は放射線療法からがん細胞を保護しない。
【0012】
ある特定の実施形態では、化学療法は、塩酸イリノテカン(CPT-11)及び5-フルオロウラシル(5-FU)からなる群から選択される。
【0013】
別の態様では、本開示は、対象においてがんを処置するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法又は放射線療法を対象に投与すること、及び本明細書に記載の治療有効量の化合物を対象に投与することを含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、化学療法又は放射線療法によって誘導される傷害を防止又は処置する薬剤をスクリーニングするための方法を提供する。一実施形態では、方法は:化学療法又は放射線療法によりオルガノイドを処置すること;及びオルガノイドを候補薬剤に曝露して、オルガノイドのアポトーシスを防止する薬剤を同定することを含む。
【0015】
ある特定の実施形態では、オルガノイドは、ヒト対象からの組織に由来する。ある特定の実施形態では、オルガノイドは、胃腸組織に由来する。ある特定の実施形態では、オルガノイドは、結腸オルガノイドである。ある特定の実施形態では、オルガノイドは、がん組織に由来する。ある特定の実施形態では、オルガノイドは、少なくともがん細胞を含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、同定された薬剤は、in vivoで、化学療法又は放射線療法によって誘導される胃腸傷害を防止又は処置する。
【0017】
本明細書に記載の任意の方法又は組成物は、本明細書に記載の任意の他の方法又は組成物に関して実施され得ると考えられる。本開示の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の例は、本発明の特定の実施形態を示すが、本開示の精神及び範囲内の様々な変更及び改変が、この詳細な説明から当業者には明らかになるため、例示の目的によってのみ与えられると理解されるべきである。
【0018】
図面の簡単な説明
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書で提示する特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することにより、より理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1-1】図1A図1Fは、PUMAがCPT-11誘導性の腸傷害を媒介することを示す図である。示した遺伝子型のマウスを、CPT-11(200mg/kg)で1回又は指定したように処置し、示した時間で分析した。(図1A)6時間での腸陰窩における末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ媒介デオキシウリジン三リン酸ニック末端標識(TUNEL)染色の代表的な画像。DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)を使用して核を染色した。スケールバー、50μm。(図1B図1Aの陰窩底部(CBC)及び+4~9細胞におけるTUNEL+円柱細胞の定量。(図1C)示したタンパク質の発現を、6時間でウェスタンブロッティングにより分析した。ライセートは、3匹のマウスの腸粘膜からプールした。代表的な結果を示し、同様の結果が、少なくとも3回の独立した実験で得られた。(図1D)6時間での陰窩におけるPuma RNA in situハイブリダイゼーション(ISH)。スケールバー、20μm。(図1A)及び(図1D)では、矢印は、パネート細胞下の位置1~3におけるCBCを示し、アスタリスクは、CBC上の位置4~9における+4~9細胞を示す。(図1A)~(図1D)では、群当たりn=3匹のマウス。(図1B)では、値は、平均+SEMである。***P<0.001(両側スチューデントのt検定)、ノックアウト(KO)対野生型(WT)。(図1E)0、1、及び2日目に、3日連続で1日用量のCPT-11(1日当たり215mg/kg)によって処置したマウスの生存。WT対Puma KO、P=0.0004;WT対p53 KO、p=0.382(ログランク検定)。(図1F)(図1E)のように処置した5日目の、マウスからの小腸のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色。スケールバー、200μm。
図1-2】同上。
図2-1】図2A図2Fは、PUMAiが、CPT-11誘導性の腸傷害に対して保護することを示す図である。マウスは、PUMA阻害剤(PUMAi)を伴って又は伴わずにCPT-11によって処置した。PUMAi(10mg/kg)又はビヒクルは、CPT-11の2時間前又は特定したとおりに、腹腔内に与えられた。小腸又は示した組織は、示した時間で分析した。(図2A)CPT-11(200mg/kg)によって処置したマウスの腸陰窩におけるTUNEL染色の代表的な画像。DAPIを使用して核を染色した。スケールバー、50μm。矢印は、CBCを示し、アスタリスクは、+4~9細胞を示す。(図2B)(図2A)からのTUNEL+CBC及び移行増幅細胞(transit-amplifying cells)の定量。Inh、阻害剤。(図2C)単回注射後の異なる時間でのPUMAiの組織分布。(図2D)CPT-11(200mg/kg)処置の6時間後のマウスにおけるTUNEL+陰窩細胞の定量。PUMAi(10mg/kg)は、CPT-11処置の2時間前、又はCPT-11処置の1時間後に与えられた。群当たりn=3匹のマウス(図2B図2D)。(図2B)及び(図2D)では、値は、平均+SEMである。P<0.05(両側スチューデントのt検定)。Veh、ビヒクル。(図2E)CPT-11(1日当たり215mg/kg)の3回投与後のWTマウスの生存(図1Eにおける対照を用いて行った)。PUMAi(10mg/kg)は、CPT-11の各投与の2時間前に与えられた。P=0.0047(ログランク検定)。(図2F)0、5、及び30日目に、(図2E)のように処置したマウスからの小腸のH&E染色。スケールバー、200μm。
図2-2】同上。
図3-1】図3A図3Gは、PUMA欠損が、腫瘍担持マウスを化学療法誘導性のGI傷害から保護することを示す図である。ルイス肺癌(LLC)腫瘍担持WT及びPuma KOマウスを、11、14、17、19、23、及び25日目に、15日間にわたり6回、CPT-11(200mg/kg)で処置した。マウス又は腫瘍は、示した時間で分析した。(図3A)腫瘍容積は、11~25日目に1日置きに測定した。CT、ビヒクル対照。(図3B)体重は、11~25日目の各マウスについて11日目の体重のパーセンテージとして表した。(図3C)25日目の小腸組織のH&E染色。スケールバー、100μm。(図3D)(図3C)からの絨毛高。測定結果は、マウス当たり最低限40個の絨毛からである。(図3E)(図3C)の視野当たりの腸陰窩の定量。(図3F)25日目に免疫蛍光によって検出された腸の好中球。DAPIを使用して核を染色した。スケールバー、100μm。(図3G)(図3F)と同じスライドからの400Å~視野当たりの好中球の定量。図3A図3B図3D図3E、及び図3Gでは、値は平均+SEMである;群当たりn=示した数(図3A及び図3B)又は3~4匹のマウス(図3D図3E、及び図3G)。**P<0.01及び***P<0.001(両側スチューデントのt検定)。Puma KO、CPT対対照(図3A);CPT-11処置、Puma KO対WT(図3B)。
図3-2】同上。
図4-1】図4A図4Gは、PUMAiが、腫瘍担持マウスを化学療法誘導性のGI傷害から保護することを示す図である。LLC腫瘍担持WTマウスを、11、14、17、19、23、及び25日目に、15日間にわたり6回、CPT-11(200mg/kg)で処置した。ビヒクル又はPUMAiは、CPT-11の各投与の2時間前及び20時間後に与えられた。マウス又は腫瘍は、示した時間で分析した。(図4A)腫瘍容積は、11日目に測定を開始した。(図4B)体重は、11~25日目の各マウスについて11日目の体重のパーセンテージとして表した。(図4C)25日目の小腸組織のH&E染色。スケールバー、100μm。(図4D)(図4C)からの絨毛高。測定結果は、マウス当たり最低限40個の絨毛からである。(E)(図4C)の視野当たりの腸陰窩の定量。(図4F)25日目に免疫蛍光によって検出された腸の好中球。DAPIを使用して核を染色した。スケールバー、100μm。(図4G)(図4F)と同じスライドからの400Å~視野当たりの好中球の定量。図4A図4B図4D図4E、及び図4Gでは、値は平均+SEMである;群当たりn=示した(図4A及び図4B)又は3~4匹のマウス(図4D図4E、及び図4G)。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001(両側スチューデントのt検定)。Pumai CPT対対照(図4A);CPT-11処置マウス、PUMAi対CT(図4B)。
図4-2】同上。
図5-1】図5A図5Gは、PUMAの標的化が、CPT-11に対してLGR5幹細胞を保護することを示す図である。WT及びPuma KOマウスを、CPT-11(200mg/kg)で処置し、示した時間で分析した。PUMAi(10mg/kg)を、CPT-11処置の2時間前に1回与えた。(図5A)腸陰窩における緑色蛍光タンパク質(GFP)(LGR5)及びTUNEL免疫蛍光染色。スケールバー、50m。矢印は、二重陽性細胞を示す。(図5B)(図5A)からのGFP陽性陰窩当たりのGFP/TUNEL二重陽性細胞の定量。(図5C)腸陰窩におけるCD166についての免疫蛍光染色。スケールバー、50μm。(図5D)陰窩における+4~9領域のCD166細胞の定量。(図5E)定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により、示したmRNAを分析した。相補的DNA(cDNA)を、3匹のマウスからプールしたRNAから合成した。値は、Gapdh発現で標準化し、各遺伝子の自身の0時間対照と比較して表した。(図5F)腸陰窩における53BP1免疫蛍光染色。スケールバー、50μm。(図5G)CPT-11単回処置の6及び48時間後、又は図2EのようにCPT-11の3回の1日用量(1日当たり215mg/kg)による#120時間での53BP1+陰窩細胞の定量。(図5C)及び(図5F)では、矢印はCBCを示し、アスタリスクは+4~9細胞を示す。図5A図5C、及び図5Fでは、DAPIを使用して核を染色した。図5B図5E、及び図5Gでは、値は平均+SEM;群当たりn=3匹のマウス。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001[Tukeyの事後検定を伴う一元配置分散分析(ANOVA)を各時点について別々に実施した]。(図5D)では、値は平均+SEM;群当たりn=3匹のマウス。**P<0.01(両側スチューデントのt検定)。
図5-2】同上。
図5-3】同上。
図6-1】図6A図6Fは、PUMAの標的化が、CPT-11の繰返し曝露後に、LGR5幹細胞枯渇を防止することを示す図である。Lgr5-EGFP-IRES-creERT2マーキングアレルを持つWT及びPuma KOマウスを、図5A図5Gのように2週間にわたりCPT-11及びPUMAiで処置し、腸の表現型について分析した。(図6A)腸陰窩におけるGFP(LGR5)免疫蛍光。矢印はLGR5(GFP)陰窩を示す。スケールバー、100μm。(図6B)少なくとも1つのGFP(LGR5)細胞を含有する腸陰窩の定量。(図6C)上:腸陰窩におけるOlfm4 RNA ISH。スケールバー、50μm。アスタリスクは、Olfm4+陰窩細胞を示す。下:少なくとも1つのOlfm4+細胞を含有する陰窩のパーセンテージ。(図6D)腸陰窩におけるMMP7免疫蛍光。スケールバー、100μm。(図6E)陰窩基底部(CBC領域)におけるMMP7+陰窩細胞の定量。(図6F)上:腸陰窩におけるGFP(LGR5)及びMMP7免疫蛍光。スケールバー、20μm。アスタリスクは、LGR5/MMP7細胞対を示す。下:陰窩当たりのLGR5/MMP7細胞対の定量。(図6A)、(図6D)、及び(図6F)では、DAPIを使用して核を染色した。(図6B)、(図6C)、(図6E)、及び(図6F)では、値は平均+SEM;n=3匹のマウス。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001(Tukeyの事後検定を伴う一元配置ANOVA)。
図6-2】同上。
図6-3】同上。
図7-1】図7A図7Hは、PUMAiが、CPT誘導性の損傷に対して、マウス及びヒト結腸の培養を保護することを示す図である。(図7A)CPT処置の6日後のマウス結腸オルガノイドの代表的な画像。オルガノイドは、50μM PUMAiを伴って又は伴わずに24時間、ビヒクル対照(CT)又は500nM CPT(1日目)で処置し、7日目まで増殖をモニターした。スケールバー、500μm。(図7B)(図7A)の視野当たりの直径が100μm以上のオルガノイドの定量。(図7C)CPT処置の24時間後のオルガノイドからの活性型(切断型)カスパーゼ3(Casp3)のウェスタンブロット。(図7D)CPT処置の24時間後、示したマウスのmRNAをqRTPCRによって分析した。NS、顕著ではない。(図7E)(図7A)のように処置したヒト結腸オルガノイドの代表的な画像。スケールバー、500μm。(図7F)(図7E)の視野当たりの直径が100μm以上のオルガノイドの定量。(図7G)CPT処置の24時間後のヒトオルガノイドからの活性型(切断型)カスパーゼ3のウェスタンブロット。(図7H)示したヒトのmRNAを、CPT処置の24時間後に分析した。(図7C)及び(図7G)では、ライセートを3つのウェルから調製した。アクチンを、ローディングするタンパク質の対照として使用した。(図7D)及び(図7H)では、cDNAを3つの培養したウェルからプールしたRNAから合成した。値は、Gapdhで標準化し、ビヒクル対照と比較して表した。(図7B)、(図7D)、(図7F)、及び(図7H)では、値は平均+SEMである。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001(Tukeyの事後検定を伴う一元配置ANOVA)。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
図8図8A図8Fは、PUMA KOが、CPT-11誘導性の陰窩アポトーシスを阻害することを示す図である。マウスは、単回用量のCPT-11(200mg/kg)で処置し、示した時間で分析した。(図8A)示した時間での、WTマウスにおけるTUNEL+陰窩細胞の定量。(図8B)6時間での、TUNEL+陰窩細胞の定量。(図8C)6時間での、陰窩における活性型カスパーゼ3染色の代表的な画像。バー=25μm。(D)6時間での、活性型カスパーゼ3+CBC及び+4~9細胞の定量。(図8E)示したmRNAを、qRT-PCRによって分析した。cDNAを、3匹のマウスからプールしたRNAから合成した。(図8F)6時間での、示したタンパク質を、ウェスタンブロッティングにより分析した。ライセートは、3匹のマウスからの腸粘膜からプールした。代表的な結果を示し、同様の結果が少なくとも3回の独立した実験で得られた。図8A図8B図8D図8Eでは、値は平均±SEMであり、群当たりn=3匹のマウスである。**P<0.01;***P<0.001(スチューデントのt検定、両側)。
図9図9は、CPT-11が、マウスにおいて用量依存的な致死を引き起こすことを示す図である。0、1、及び2日目に、180、215、又は250mg/kg/日の1日用量のCPT-11で3日連続処置したWTマウスの生存。群当たりn=10匹のマウス。P値は、ログランク検定によって算出した。
図10-1】図10A図10Eは、PUMAiが、CPT-11誘導性のアポトーシスに対して結腸がん細胞を保護しないことを示す図である。(図10A)PUMA阻害剤リード化合物(PUMAi)の構造。(図10B)24時間、個々のプラスミドでトランスフェクトした293細胞のライセートを、示した組合せで混合した。ライセートを、抗HA抗体による免疫沈降の前に、15分間、ビヒクル又はPUMA阻害剤(PUMAi、25μM)とインキュベートした。HA結合タンパク質及びインプットを、ウェスタンブロッティングにより分析した。(図10C)24時間、個々のプラスミドでトランスフェクトした293細胞のライセートを、示した組合せで混合した。ライセートを、抗HA抗体による免疫沈降の前に、15分間、ビヒクル又はPUMA阻害剤(PUMAi、25μM)とインキュベートした。HA結合タンパク質及びインプットを、ウェスタンブロッティングにより分析した。(図10D)示した結腸がん細胞株を、24時間、カンプトテシン(CPT、500nM)で処置した。HCT116細胞及びPUMA KO HCT116細胞は、WT p53を有し、その他はp53を有さず(KO)又は変異p53を有する。アポトーシスは、核断片化アッセイによって測定した。値は、平均+SEM;n=3の独立した実験。(図10E)細胞は、24時間、Dのように処置し、ウェスタンブロッティングにより分析した。代表的な結果を示し、同様の結果が少なくとも3回の独立した実験で得られた。
図10-2】同上。
図11-1】図11A図11Fは、PUMAiがCPT-11誘導性のCBCアポトーシスを阻害することを示す図である。マウスは、単回用量のCPT-11(200mg/kg)で処置し、6時間で分析した。PUMAiは、CPT-11の2時間前に与えられた。(図11A)示した処置をしたWTマウスの腸陰窩におけるTUNEL染色の代表的な画像である。バー=25μm。(図11B)位置1~3(CBC)又は4~9におけるTUNEL+陰窩細胞の定量。(図11C)腸陰窩における活性型カスパーゼ3染色の代表的な画像。バー=25μm。(図11D)位置1~3(CBC)又は4~9における活性型カスパーゼ3+陰窩細胞の定量。(図11E)TUNEL+陰窩細胞の定量。(図11F)PUMAi薬物動態実験のための処置及び組織回収スケジュールの概略。CPT-11は、0時間で投与した。B、D、及びEは、値は平均±SEMであり、群当たりn=3匹のマウスである。A及びCは、アスタリスクはTA細胞を示す。**P<0.01。P<0.05(スチューデントのT検定、両側)。
図11-2】同上。
図12図12A図12Dは、PUMAiが、化学療法及び放射線療法誘導性の致死に対して保護することを示す図である。(図12A)及び(図12B)0、1、及び2日目に、それぞれ180mg/kg/日(A)及び250mg/kg/日(B)の1日用量のCPT-11で3回処置したWTマウスの生存。PUMAi(10mg/kg)は、CPT-11の各投与の2時間前及び最終投与の20時間後に与えられた。(図12C)及び(図12D)9.5Gy(図12C)及び15Gy(図12D)での全身放射線照射(TBI)後のWTマウスの生存。PUMAi(10mg/kg)は、TBIの30分前及び30分後に、次いで4日間毎日与えられた。Cの9.5GyでのTBIの生存者は、40日目に屠殺され、明らかな健康問題はなかった。P値は、ログランク検定によって算出された。
図13-1】図13A図13Eは、PUMAの標的化が、CPT-11への腫瘍応答を損なわないことを示す図である。(図13A)腫瘍確立及び処置の概略。マウスは、400万個のルイス肺癌(LLC)細胞を、それらの脇腹の皮下に注射された。腫瘍を11日間確立させ、マウスを、2週間にわたり6回、200mg/kgのCPT-11で処置した(C)。PUMAi(P)は、CPT-11の各投与の2時間前及び20時間後に11回与えられた。マウスは、CPT-11の最終投与の4時間後に屠殺された。(図13B)処置の2週間後に回収された腫瘍の代表的な画像。バー=1cm。(図13C)CPT-11処置の2週間後の、LLC腫瘍におけるPCNA、TUNEL、及び活性型(切断型)カスパーゼ3染色の代表的な画像。バー=100μm。(図13D)Cでの視野当たりのPCNA+、TUNEL+、及び切断型カスパーゼ3+細胞の定量。値は、平均±SEM、群当たりn=3個の腫瘍。**P<0.01。***P<0.001(スチューデントのT検定、両側)。(図13E)Aのように処置した腫瘍からの示したタンパク質のウェスタンブロット。各レーンは1つの腫瘍を表す。
図13-2】同上。
図14図14A図14Fは、5-FU-誘導性のLGR5細胞のアポトーシスが、PUMA依存的であることを示す図である。WT及びPuma KO LGR5-EGFPマウスは、24時間、200mg/kgの5-FUで処置した。(図14A)腸陰窩におけるTUNEL染色の代表的な画像。バー=25μm。(図14B)TUNEL+陰窩細胞の定量。(図14C)腸陰窩における切断型カスパーゼ3染色の代表的な画像。バー=25μm。(図14D)活性型(切断型)カスパーゼ3+陰窩細胞の定量。(図14E)腸陰窩における、LGR5(GFP)/TUNEL二重免疫蛍光の代表的な画像。(図14F)GFP陽性陰窩における、GFP/TUNEL二重陽性細胞の定量。B、D、及びFは、値は平均±SEM、群当たりn=3匹のマウスである。**P<0.01(スチューデントのT検定、両側)。
図15図15は、PUMA KO及びPUMAiが、WNT及びNOTCH標的のCPT-11誘導性発現を抑制することを示す図である。示したmRNAを、qRT-PCRによって分析した。cDNAは、3匹のマウスからプールしたRNAから合成した。各遺伝子の値は、Gapdhで標準化し、それら自身の0時間対照と比較して表した。P<0.05、**P<0.01(TUKEYの事後検定を伴う一元配置ANOVAを各時点について別々に実施した)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示的な実施形態の詳細な説明
本開示の以下の説明は、単に、本開示の様々な実施形態を例示することを意図する。したがって、議論する特定の改変が、本開示の範囲の制限として解釈されるべきではない。様々な等価物、変更、及び改変が、本開示の範囲を逸脱することなく行われ得ることは当業者には明らかであり、かかる等価な実施形態が本明細書に含まれることが理解される。論文、特許、及び特許出願を含む、本明細書に引用する全ての参照は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
I.定義
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が、例示及び説明のみであり、請求した本発明を制限するものではないことが理解されるであろう。この出願では、単数の使用は、特に他に言及しない限り、複数を含む。この開示では、用語「又は」は、代替物のみを指すと明確に示すか、又は代替物が互いに排他的であるかでない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書で使用する場合、「別の」は、少なくとも2番目以上を意味し得る。さらに、用語「含む(including)」、並びに他の形態、例えば「含む(includes)」及び「included」の使用は、限定されない。また、用語、例えば「要素(element)」又は「構成要素(component)」は、特に他に言及しない限り、1つのユニットを含む要素及び構成要素と1つより多くのサブユニットを含む要素及び構成要素の両方を包含する。また、用語「一部分(portion)」の使用は、部分の一部又は全部分の一部を含み得る。
【0022】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈がはっきりと他に示さない限り、複数の参照を含む。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「アポトーシス」は、多細胞生物において生じるプログラム細胞死の形態を指す。アポトーシスは、細胞が細胞ストレスを感じた場合に内因性経路を通して、又は他の細胞からのシグナルによる外因性経路を通して開始され得る、高度に調節及び制御されたプロセスである。アポトーシスのプロセスの間、細胞は、ブレブ形成、細胞収縮、核の断片化、クロマチン凝縮、染色体DNA断片化、及び全体的なmRNA分解を含む、一連の特徴的な変化を受ける。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「がん」は、異常な細胞増殖を含む任意の疾患を指し、体内の任意の組織、器官又は細胞に影響する疾患の全てのステージ及び全ての形態を含む。用語は、悪性、良性、軟組織、又は固形と特徴づけられようとなかろうと、全ての公知のがん及び新生物病態、並びに転移前及び転移後のがんを含む、全てのステージ及び悪性度のがんを含む。一般に、がんは、そこからがんが局在する又は生じる組織又は器官、並びに癌性組織及び細胞の形態学に従って、分類され得る。本明細書で使用する場合、がんの型は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、肛門がん、星状細胞腫、小児小脳又は大脳、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨腫瘍、脳がん、乳がん、Burkittリンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、気腫、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング腫瘍、ユーイング肉腫、胃(gastric (stomach))がん、膠腫、頭頚部がん、心臓がん、Hodgkinリンパ腫、膵島細胞癌(膵臓内分泌部)、Kaposi肉腫、腎臓がん(腎細胞がん)、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、髄芽腫、メラノーマ、神経膠芽腫、非Hodgkinリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、咽頭がん(pharyngeal cancer)、前立腺がん、直腸がん、腎細胞癌(腎臓がん)、網膜芽細胞腫、皮膚がん、胃がん、テント上の初期の神経外肺葉性腫瘍、精巣がん、咽頭がん(throat cancer)、甲状腺がん、膣がん、視覚路及び視床下部膠腫を含む。
【0025】
本明細書で使用する場合、「細胞」は、原核又は真核であり得る。原核細胞は、例えば、細菌を含む。真核細胞は、例えば、真菌、植物細胞、及び動物細胞を含む。動物細胞(例えば、哺乳動物細胞又はヒト細胞)の型は、例えば、循環/免疫系又は器官からの細胞、例えば、B細胞、T細胞(細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞)、ナチュラルキラー細胞、顆粒球(例えば、好塩基性顆粒球、好酸性顆粒球、好中性顆粒球、及び過分葉好中球)、単球又はマクロファージ、赤血球(例えば、網状赤血球)、マスト細胞、血小板又は巨核球、及び樹状細胞;内分泌系又は器官からの細胞、例えば、甲状腺細胞(例えば、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞)、上皮小体細胞(例えば、上皮小体主細胞、好酸性細胞)、副腎細胞(例えば、クロム親和性細胞)、及び松果体細胞(pineal cell)(例えば、松果体細胞(pinealocyte));神経系又は器官からの細胞、例えば、グリア芽細胞(例えば、星状膠細胞及び乏突起膠細胞)、小神経膠細胞、巨細胞性神経分泌細胞、星細胞、ベッチェル細胞、及び下垂体細胞(例えば、性腺刺激ホルモン分泌細胞、副腎皮質刺激ホルモン分泌細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、ソマトトロピン産生細胞、及びプロラクチン産生細胞);呼吸器系又は器官からの細胞、例えば、肺細胞(I型肺細胞及びII型肺細胞)、クララ細胞、杯細胞、及び肺胞マクロファージ;循環系又は器官からの細胞(例えば、心筋細胞及び周皮細胞);消化系又は器官からの細胞、例えば、胃主細胞、壁細胞、杯細胞、パネート細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、I細胞、K細胞、S細胞、腸内分泌細胞、クロム親和性細胞、APUD細胞、及び肝臓細胞(例えば、肝細胞及びクッパー細胞);外皮系又は器官からの細胞、例えば、骨細胞(bone cell)(例えば、骨芽細胞、骨細胞(osteocyte)、及び破骨細胞)、歯細胞(例えば、セメント芽細胞、及びエナメル芽細胞)、軟骨細胞(cartilage)(例えば、軟骨芽細胞及び軟骨細胞(chondrocyte))、皮膚/有毛細胞(例えば、糸胞、ケラチノサイト、及びメラノサイト(母斑細胞)、筋細胞(例えば、ミオサイト)、脂肪細胞、線維芽細胞、及び腱細胞;泌尿器系又は器官からの細胞(例えば、有足細胞、傍糸球体細胞、糸球体内メサンギウム細胞、糸球体外メサンギウム細胞、腎近位尿細管刷子縁細胞、及びマクラデンサ細胞);並びに生殖器系又は器官からの細胞(例えば、精子、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、卵子、卵母細胞)を含む。細胞は、正常、健康な細胞;又は疾患若しくは非健康な細胞(例えば、がん細胞)であり得る。細胞は、さらに、哺乳動物接合子又は胚性幹細胞、胎生幹細胞、人工多能性幹細胞、及び成体幹細胞を含む幹細胞を含む。幹細胞は、未分化状態を維持しながら、及び特定の細胞型へと分化しながら、細胞分裂のサイクルを行うことができる細胞である。幹細胞は、全能性幹細胞、多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、及び単能性幹細胞であってよく、そのいずれも体細胞から誘導され得る。幹細胞は、がん幹細胞も含み得る。哺乳動物細胞は、齧歯動物細胞、例えば、マウス、ラット、ハムスター細胞であってよい。哺乳動物細胞は、ウサギ類細胞、例えば、ウサギ細胞であり得る。哺乳動物細胞はまた、霊長類細胞、例えばヒト細胞でもあり得る。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「化学療法」は、1つ以上の抗がん剤を使用するがん処置を指す。抗がん剤は、限定はされないが、アバスチン、ベバシズマブ、カンプトサー(塩酸イリノテカン)、カペシタビン、セツキシマブ、サイラムザ、エロキサチン(オキサリプラチン)、アービタックス、5-FU(フルオロウラシル)、フシレフ(ロイコボリンカルシウム)イピリムマブ、キイトルーダ、ロンサーフ(トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩)、ニボルマブ(オプジーボ)、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ラムシトルマブ、レゴラフェニブ、スチバーガ、Ziv-アフリベルセプトを含む。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「オルガノイド」は、小型化及び単純化した器官を模倣し、写実的な微小解剖を示す、インビトロの三次元培養を指す。オルガノイドは、自己複製及び分化により、組織、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞からの1つ又はわずかな細胞に由来する。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「放射線療法」は、イオン化放射線を使用して悪性細胞を制御する又は死滅させる治療を指す。放射線療法は、通常、線形加速器によって送達される。放射線療法は、多くの型のがんが身体の1つの領域に局在する場合、それらを処置するために使用され得る。放射線療法は、補助療法の一部としても使用され、原発性悪性腫瘍を除去する外科手術後の腫瘍再発を防止し得る。放射線療法は、化学療法と相乗的であってもよく、感受性のがんにおいて化学療法の前、間、及び後に使用されてきた。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、ヒト又は任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類)を指す。ヒトは、出生前及び出生後の形態を含む。多くの実施形態では、対象はヒトである。対象は、患者であってよく、疾患の診断又は処置のために医療提供者に提示されるヒトを指す。用語「対象」は、本明細書では、「個体」又は「患者」と交換可能に使用される。対象は、疾患又は障害を患っている又は疾患又は障害に感受性であってよいが、疾患又は障害の症状を示しても示さなくてもよい。
【0030】
用語「治療有効量」又は「有効投与量」は、本明細書で使用する場合、疾患又は病状を処置するために有効な薬物の投与量又は濃度を指す。例えば、化学療法又は放射線療法によって誘導されるGI傷害を処置する、本明細書に開示されるそれらの小分子化合物の使用に関して、治療有効量は、化学療法又は放射線療法によって誘導されるGI傷害を防止又は緩和することができる化合物の投与量又は濃度である。
【0031】
病状の「処置する」又は「処置」は、本明細書で使用する場合、病状を防止又は緩和すること、病状の発症又は進行速度を緩徐化すること、病状の進行のリスクを減少させること、病状と関連する症状の進行を防止又は遅らせること、病状と関連する症状を減少させる又は終わらせること、病状の完全又は部分的な回帰をもたらすこと、病状を治癒すること、又はこれらのいくつかの組合せを含む。
【0032】
II.処置誘導性の胃腸傷害
胃腸(GI)上皮は、最も早く再生する成人組織であり、組織特異的幹細胞によって維持される。処置誘導性のGI副作用は、化学療法及び腹部放射線療法の主な投与量規制因子であり、がん患者及び元がん患者の生活の質を下げ得る。例えば、結腸直腸がん患者を処置するために一般に使用される、5-フルオロウラシル(5-FU)は、50%の患者で、化学療法誘導性の下痢を引き起こしたことが報告された。放射線及びほとんどの化学療法剤が、複数の組織及び器官系を損傷するが、一般に5-FUと組み合わせて使用され、結腸直腸がん患者を処置する、塩酸イリノテカン(CPT-11)は、50%より多くの患者で、重度の下痢及び嘔吐を伴う、選択的なGI傷害を引き起こす。この急性毒性は、腸における、CPT-11の活性代謝物である、SN-38の高濃度の蓄積、並びに腸内細菌による非毒性SN-38グルクロニドのSN-38への変換後の腸の再吸収によって引き起こされる。SN-38は、トポイソメラーゼIの阻害剤であり、DNA複製とRNA転写の両方に重要な酵素であり、増殖する細胞において複製ストレス及びDNA損傷を引き起こす。下痢止め薬は、CPT-11誘導性の下痢の緩和を助けることができるが、長期のGI機能障害を減少させる効果は限られている。現在は、CPT-11誘導性のGI傷害又は合併症を防止又は処置するUS FDAが認可した薬剤はない。
【0033】
化学療法又は放射線誘導性急性腸疾患は、増殖する陰窩細胞の欠損、上皮性関門の崩壊、及び処置中又は処置直後の炎症によって特徴づけられる。多くの患者では、遅発性の腸疾患が治療の数か月後又はそれ以降に起こり得、血管硬化症及び進行性の腸壁繊維症など、上皮及び間質区画における病理変化と関連する腸機能障害によって特徴づけられる。新たな証拠は、慢性腸損傷が初期の毒性の結果のようであると示唆している。CPT-11及び5-FUなどの、化学療法によって引き起こされる腸毒性は、マウス及びヒトにおける急な陰窩のアポトーシスと関連する。小腸上皮は、最も早く再生する成人組織であり、陰窩の底部に局在する腸幹細胞(ISC)は、傷害後の新生及び再生を駆動する。ISCは、陰窩底部に円柱細胞(CBC)及び陰窩底部と比較して位置4にいくつかの細胞(+4細胞)を含む。ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質(ヘテロ三量体のグアニンヌクレオチド結合タンパク質)-結合受容体5-発現(LGR5+)CBCの遺伝子破壊は、根底にあるメカニズムは未知のままであるが、健常なマウスで十分に忍容性であるが、放射線誘導性の腸傷害を強く悪化させる。
【0034】
DNA損傷後のp53の活性化は、腫瘍抑制又は急性毒性などの、組織及び標的特異的転機をもたらす。p53の活性化は、高用量の放射線後の腸の再生の制御において諸刃の剣である。一方では、p53依存的PUMA誘導は、ほとんどの放射線誘導性アポトーシス及び腸細胞及び造血幹細胞及び前駆細胞の急性喪失の原因となり、PUMA欠損又は下方調節は、放射線誘導性の致死及びリンパ腫形成に対して保護する。しかしながら、p21、及びおそらく他の標的のp53依存的誘導は、DNA損傷蓄積、複製ストレス、及び非アポトーシス細胞死の遅延を防ぐことによる増殖性の腸の再生に必須であり、p53/p21欠損は腸傷害を悪化させる。化学療法誘導性のGI傷害におけるp53の役割は、よく分かっていない。p53阻害剤、ピフィスリンαは、ラットにおいて最初の数時間以内にCPT-11誘導性の腸のアポトーシスを減少させたが、細胞死の遅延又は粘膜炎の発症に影響しなかった。
【0035】
III.治療用化合物
本明細書に開示するように、本発明者らは、驚くべきことに、p53欠損ではなく、小分子化合物の群によるPumaの薬理学的阻害が、CPT-11への単回又は繰返し曝露によって誘導されるGI傷害に対して強力な保護を提供するが、インビボでのその抗腫瘍活性を損なわないことを発見した。この保護は、LGR5幹細胞、肝細胞ニッチ、及びゲノムの完全性の選択的な保存と関連する。
【0036】
ある特定の実施形態では、小分子化合物は:
【0037】
【化3】

【化4】

からなる群から選択される。
【0038】
ある特定の実施形態では、上記の化合物は、重水素化される。本明細書で使用する場合、「重水素化化合物」は、1つ以上の水素原子が、重水素同位体によって置き換えられた化合物を指す。合成に使用した化学物質の起源に依存して、合成した化合物において天然の同位体存在度のいくらかの変動が生じることが理解される。したがって、化合物の調製物は、少量の重水素化化合物を本質的に含有するであろう。天然に豊富な安定した水素及び炭素同位体の濃度は、本明細書に記載の重水素化化合物の安定した同位体置換の程度と比較して小さく、重要ではない。本明細書に記載の重水素化化合物では、重水素を持つように特定の位置が指定される場合、その位置における重水素の存在度が、0.015%である天然の重水素の存在度よりも実質的に大きいことが理解される。重水素を持つように指定された位置は、典型的には、少なくとも3000(45%重水素取り込み)、例えば少なくとも3500(52.5%重水素取り込み)、少なくとも4000(60%重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%重水素取り込み)、少なくとも5000(75%重水素)、少なくとも5500(82.5%重水素取り込み)、少なくとも6000(90%重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%重水素取り込み)、少なくとも6600(99%重水素取り込み)、又は少なくとも6633.3(99.5%重水素取り込み)の最小の同位体濃縮因子を有する。
【0039】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される重水素化化合物は、
【0040】
【化5】

[式中、「D」は重水素を指す]
の構造を有する。
【0041】
本明細書に記載の小分子化合物の合成は、当技術分野で公知の方法を使用して、合成化学の通常の技術によって容易に達成され得る。かかる方法は、本明細書で描写した化合物を合成するために、相当する重水素化及び任意に、他の同位体含有試薬及び/又は中間体を利用して、又は同位体原子を化学構造に導入するための当技術分野で公知の標準的な合成プロトコールを実施して、行われ得る。
【0042】
IV.製剤及び投与
本開示は、処置誘導性のGI傷害を防止又は処置するために使用される医薬組成物を提供する。かかる組成物は、本明細書に開示される予防又は治療有効量の化合物、及び薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態では、用語「薬学的に許容される」は、動物、及びより具体的にはヒトでの使用のため、連邦又は州政府の規制当局によって承認され、又は米国薬局方若しくは他の一般に認識される薬局方に掲載されることを意味する。かかる医薬担体は、ピーナツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油など、石油、動物、野菜又は合成起源のものを含む、水及び油など、滅菌液であり得る。水は、医薬組成物が静脈に投与される場合に特有の担体である。生理食塩溶液及びブドウ糖水溶液及びグリセリン溶液も、液体担体、特に注射可能溶液として用いることができる。他の好適な医薬賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等を含む。
【0043】
所望であれば、組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含有し得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、ピル、カプセル剤、粉剤、徐放性製剤等の形態をとり得る。経口製剤は、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど、標準的な担体を含み得る。好適な医薬品の例は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載される。かかる組成物は、患者への適切な投与の形態を提供するように、好適な量の担体と共に、予防又は治療有効量の化合物を含有するであろう。製剤は、経口、静脈内、動脈内、頬内、鼻腔内、噴霧、気管支吸入、又は機械的人工呼吸による送達であり得る、投与の様式に合わせるべきである。
【0044】
本明細書で記載するように、本開示の化合物は、非経口投与のために製剤化、例えば、皮内、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、又は腹腔内経路さえも介する注射のために製剤化され得る。あるいは、化合物は、例えば、点鼻、吸入により、又は噴霧器により、粘膜への直接的に、局所経路により投与され得る。薬学的に許容される塩は、酸性塩を含み、それらは、例えば塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される。遊離のカルボキシル基で形成した塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は第二鉄の水酸化物などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基からも由来し得る。
【0045】
一般に、本開示の組成物の成分は、例えば、活性剤の量を示す、アンプル又はサシェなどの密閉容器中で、凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別々に、又は単位剤形中に共に混合されて供給される。組成物が点滴によって投与される場合、滅菌の医薬品等級の水又は生理食塩水を含有する輸液ボトルによって分注され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与の前に混合され得るように、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0046】
本開示の組成物は、中性又は塩形態として製剤化され得る。薬学的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するものなどの陰イオンで形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、第二鉄の水酸化物、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来するものなどの陽イオンで形成されるものを含む。
【0047】
本明細書に開示される化合物又は医薬組成物は、処置誘導性の傷害を防止又は処置するように、治療有効量で対象に投与され得る。ある特定の実施形態では、治療有効量は、約0.001~約10mg/kg体重であり、ここで、組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、一週間に1回、一週間に2回、一週間に3回、又は2週間当たり1回投与される。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg体重、0.1mg/kg体重、約0.5mg/kg体重、約1mg/kg体重、約1.5mg/kg体重、約2mg/kg体重、約2.5mg/kg体重、約3mg/kg体重、約3.5mg/kg体重、約4mg/kg体重、約4.5mg/kg体重、約5mg/kg体重、約5.5mg/kg体重、又は約6mg/kg体重である。ある特定の実施形態では、組成物の単位用量は、約0.001mg~約10mgの間(例えば、約0.005mg、約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg)である。ある特定の実施形態では、有効量は、0.01mg/kg体重、0.1mg/kg体重、0.5mg/kg体重、又は1mg/kg体重であり、ここで、組成物は、1日1回投与される。ある特定の実施形態では、有効量は、5mg/kg体重であり、ここで、組成物は一週間に1回投与される。
【0048】
V.実施例
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を実証するために含まれる。本発明者らによって発見された代表的な技術に従う実施例において開示される技術が、本発明の実施によく機能することは当業者によって理解されるはずであり、その実施のための例示的な様式を構成するだけと考えられるべきである。当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更が行われ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様又は類似の結果を依然として得ることができると理解するはずである。
【0049】
例1.材料及び方法
化合物のスクリーニング及び調製
候補PUMA阻害剤構造及び類似物は、ZINC8.0データベースのin silicoスクリーニング、及び先に記載したin silico ADME/Toxicityプロファイルを使用して同定された(Mustata G. et al. Curr Top Med Chem (2011) 11:281-290, incorporated herein by reference)。PUMAiと関連する化合物は、販売会社から得た。
【0050】
研究デザイン
本研究の目的は、PUMA及びp53依存的アポトーシスが、化学療法誘導性の腸幹細胞喪失及び腸疾患を媒介するかどうか、並びにその遺伝学的及び薬理学的阻害が腸の化学防御を提供するかどうかを決定することである。非腫瘍担持及び腫瘍担持マウス、p53及びPuma KOマウス、小分子PUMAi、及びin vitroでのマウス及びヒトの結腸オルガノイドを使用して、化学療法後の腸傷害及び再生、並びに腫瘍応答へのPUMA阻害の効果を測定した。試料サイズは、公表された研究及び検出力計算を使用して決定した。実験者は、データの取得中、処置群を盲検にしなかった。
【0051】
マウス及び処置
全ての動物実験の手順は、ピッツバーグ大学の動物実験委員会によって承認された。Puma+/+(WT)及びPuma-/-(Puma KO)マウス(52)は、異型接合体育種によって組織内で作製した。WT及びPuma KOアレルは、記載されるように尾の切れ端から単離したゲノムDNAから遺伝子型を同定した(52)。p53-/-(p53 KO)マウスは、Jackson研究所から購入した。LGR5マーキングマウスLgr5-EGFP(Lgr5-EGFP-IRES-creERT2)が記載されている(53)。全ての株が、10世代(F10)より多く、C57BL/6バックグラウンドと戻し交配された。マウスは、自由に水と食事にアクセスしながら、07:00から19:00まで照明をつけた部屋(12:12時間明/暗サイクル)の、マイクロアイソレーターケージ内で飼育した。CPT-11(塩酸イリノテカン;カンプトサー、Pfizer)処置を、他に指定しない限り、腹腔内注射により、生理食塩水中200mg/kgで投与した(20gのマウスに200μl)。PUMAiは、HPLC/質量分析(MS)による最低純度95%で、Chempridgeによってカスタム合成され、ジメチルスルホキシド中にストック(50mg/ml)として調製され、次いでリン酸緩衝液(PBS)中で新しく希釈され(2mg/ml)、腹腔内に10mg/kgで与えられた(20gのマウスに200μl)。
【0052】
腫瘍実験のため、400万個のLLC細胞[アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC:American Type Culture Collection)]を、WT及びPumaKOマウスの脇腹に注射し、11日間増殖させた。次いで、マウスを、CPT-11(200mg/kg)で、2週間、1週間当たり3回処置した。PUMAi(10mg/kg)又はビヒクル対照を、CPT-11の各投与の2時間前及び20時間後に、腹腔内注射により投与した。マウスは、最後のCPT-11処置の4時間後に屠殺した。
【0053】
CPT-11(塩酸イリノテカン;カンプトサー、Pfizer)処置を、他に指定しない限り、i.p.により、200mg/kgで投与した。PUMA阻害剤(PUMAi)は、DMSO中に50mg/mlストックとして調製され、次いでPBS中で新しく2mg/mlに希釈され、他に指定しない限り、化学療法処置の2時間前に、i.p.により、10mg/kgで与えられた。生存実験のため、マウスを、連続3日間、CPT-11で処置した。PUMAiは、4回、各化学療法の2時間前及び最後の化学療法の22時間後に与えた。
【0054】
腫瘍実験のため、マウスを、CPT-11で、2週間、1週間当たり3回処置した。PUMAiを受けるマウスを、CPT-11の各投与の2時間前及び20時間後に、処置した。マウスは、最後のCPT-11処置の4時間後に屠殺した(図13A)。腫瘍容積は、カリパスで測定し、容積=(長さ×幅2)/2として算出した。マウスは7~9週齢であり、大体等しい数の雄及び雌の動物を使用した。開始時の体重の差異を考慮するため、図3及び図4の値は、最初のCPT-11処置の時点でのそれぞれのマウスの重さのパーセンテージとして表した。
【0055】
5-フルオロウラシル(5-FU)(APP Pharmaceutical)処置を、200mg/kgのi.p.で投与した。全身照射実験のため、PUMAi(10mg/kg)を、照射の30分前と30分後に与え、続いて4日間1日用量を与えた。
【0056】
組織プロセシング及び組織学的分析
屠殺の直後、約10cmの空腸の一部を除去し、氷冷した生理食塩水で注意深くすすいだ。組織は、長軸方向に開き、10%ホルマリン中で終夜固定するために発泡ボードに鋲で留めた。次いで、組織を、「スイスロール」状に巻き、パラフィンに包埋した。腫瘍分析のため、脇腹の腫瘍を除去し、測定し、ホルマリン固定又はドライアイス/エタノール浴中での瞬間冷凍のいずれかのために薄片に切った。組織切片(5μm)を脱パラフィンし、等級のエタノールを通して再水和した。組織学的分析は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色によって実施した。
【0057】
平均絨毛高は、群当たり少なくとも3匹の異なる動物からの、小腸の異なる位置から40~50の絨毛を測定することによって決定し、平均Å}SEMとして記録した。測定は、100Å~H&E画像及びSPOT5.1Advancedソフトウェア(Diagnostic Instruments Inc.)を使用して、陰窩の上部から絨毛の上部まで行った。
【0058】
免疫組織化学及び免疫蛍光法
再水和した切片を、3%過酸化水素(免疫化学のみ)により処置し、続いて1mM EDTAを含む、煮沸0.1Mクエン酸緩衝液(pH6.0)中で10分間抗原回復した。アポトーシスは、製造業者の説明書に従って、ApopTag Peroxidase In Situ Apoptosis Detection kit(Chemicon International)によるTUNEL染色によって分析した。
【0059】
活性型カスパーゼ3 IHC。切片を脱パラフィンし、等級のエタノールを通して再水和した。次いで、再水和した切片を、3%過酸化水素により処置し、続いて1mM EDTAを含む、煮沸0.1Mクエン酸緩衝液(pH6.0)中で10分間抗原回復した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%ヤギ血清(Invitrogen)を使用してブロッキングした。切片を、1:100希釈したウサギ抗カスパーゼ3(切断型、Asp175)(9661;Cell Signaling Technologies)と、加湿したチャンバー内で、4℃で終夜インキュベートした。次いで切片を、ビオチン化ヤギ抗ウサギ二次抗体(#31822;Pierce)と、室温で1時間インキュベートし、ABCキット及びDAB(Vector Laboratories)で現像した。
【0060】
LGR5(GFP) IF。切片を脱パラフィンし、等級のエタノールを通して再水和した。1mM EDTAを含む、0.1Mクエン酸緩衝液(pH6.0)中で10分間煮沸により抗原回復を実施した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%ヤギ血清(Invitrogen)を使用してブロッキングした。切片を、1:50希釈したマウス抗GFP(sc-9996;Santa Cruz Biotechnology)と、加湿したチャンバー内で、4℃で終夜インキュベートした。次いで切片を、AlexaFluor488-コンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体(1:200;AA11001;Invitrogen)と、室温で1時間インキュベートした(58)。次いで、切片をPBS中で洗浄し、VectaShield+DAPI(Vector Labs)を用いてマウントした。
【0061】
LGR5(GFP)/TUNEL IF。切片は、上記のように調製した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%ヤギ血清(Invitrogen)を使用してブロッキングした。切片を、1:50希釈したマウス抗GFP(sc-9996;Santa Cruz Biotechnology)と、加湿したチャンバー内で、4℃で終夜インキュベートした。次いで切片を、AlexaFluor594-コンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体(1:200;AA11005;Invitrogen)と、室温で1時間インキュベートした。次いで、切片をPBS中で洗浄し、TUNEL染色を、製造業者の説明書に従って、ApopTag Fluorescein In Situ Apoptosis Detection Kit(Chemicon)を用いて実施した(37、46)。
【0062】
MMP7 IF。切片は、上記のように調製した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%トリ血清(Invitrogen)を使用してブロッキングした。切片をPBS中で洗浄し、1:100希釈したヤギ抗MMP7(AF2967;R&D Systems)と、加湿したチャンバー内で、4℃で終夜インキュベートした。次いで切片を、AlexaFluor594-コンジュゲートウサギ抗ヤギ二次抗体(1:200;AA11080;Invitrogen)と、室温で1時間インキュベートした。次いで、切片をPBS中で洗浄し、可視化のためVectaShield+DAPI(Vector Labs)を用いてマウントした。
【0063】
LGR5(GFP)/MMP7 IF。切片は、上記のように調製した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%トリ血清(Invitrogen)を使用してブロッキングした。次いで、切片を上記のようにGFPを染色し、続いて上記のようにMMP7を染色した。
【0064】
PCNA IF。切片は、上記のように調製した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%ヤギ血清(Invitrogen)を使用してブロッキングした。切片を、1:100希釈したマウス抗PCNA(sc56;Santa Cruz)と、加湿したチャンバー内で、4℃で終夜インキュベートした。次いで切片を、AlexaFluor594-コンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体(1:200;Invitrogen)と、室温で1時間インキュベートした。次いで、切片をPBS中で洗浄し、VectaShield+DAPI(Vector Labs)を用いてマウントした。
【0065】
CD166 IF。切片は、上記のように調製した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%ウサギ血清(Pierce)を使用してブロッキングした。切片を、ヤギ抗マウスCD166抗体(1:100;AF1172;R&D Systems)と、加湿したチャンバー内で、4℃で終夜インキュベートした。次いで切片を、AlexaFluor594-ウサギ抗ヤギ二次抗体(1:200;A11080;Invitrogen)と、室温で1時間インキュベートし、VectaShield+DAPIを用いて対比染色した(59)。
【0066】
p53 BP1 IF:切片は、上記のように調製した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%ヤギ血清(Invitrogen)を使用してブロッキングした。切片を、ウサギ抗マウス53BP1抗体(1:100;IHC-00001;Bethyl Laboratories)と、加湿したチャンバー内で、4℃で終夜インキュベートした。次いで切片を、AlexaFluor594-ヤギ抗ウサギ二次抗体(1:200;A11012;Invitrogen)と、室温で1時間インキュベートし、VectaShield+DAPIを用いて対比染色した。
【0067】
好中球IF。切片は、上記のように調製した。非特異的抗体の結合を、30分間室温で、20%ヤギ血清(Invitrogen)を使用してブロッキングした。切片を、ラット抗マウスLy-6B.2(1:100;MCA771GT;AbD Serotec)と、加湿したチャンバー内で、4℃で終夜インキュベートした(56)。次いで切片を、AlexaFluor594-ヤギ抗ラット二次抗体(1:200;A11007;Invitrogen)と、室温で1時間インキュベートし、VectaShield+DAPIを用いて対比染色した。
【0068】
PUMAiのLC-MS/MS定量
アセトニトリル及び水(全てHPLC等級)は、Fisher Scientificから購入した。ギ酸及びトリフルオロ酢酸は、Sigma-Aldrichから購入した。PUMAi及び[D5]-PUMAi内部標準のストック溶液は、DMSO中1mg/mLで調製し、アセトニトリル中で10倍に希釈し、次いで-80℃で保存した。アッセイの当日に、溶液をアセトニトリル中で段階希釈(10倍段階で)し、0.01及び0.001mg/mLの低濃度の校正希釈標準溶液を得た。これらの校正希釈標準溶液は、マウス血漿(Lampire Biological Laboratories,Inc.)中で希釈し、以下の分析物濃度を作製した:10、30、50、100、300、500、1000、3000ng/mL。各一連の校正のため、ゼロ(10ng/mLの内部標準を含有する)及びブランク試料も50μLのLampire血漿から調製した。品質管理(QC)ストック溶液を、Lampireマウス血漿中で希釈し、以下のQC試料を作製した:QC Low(QCL)20ng/mL;QC Mid(QCM)200ng/mL、及びQC High(QCH)2500ng/mL。
【0069】
PUMAiを抽出するために、本発明者らは、10μLの内部標準溶液(アセトニトリル中1000ng/mLの[D5]-PUMAi)を微小遠心管中の50μLの血漿試料に添加した。250μLのアセトニトリルを添加し、試料を30秒間ボルテックスした。試料は、5分間12,000×gで遠心分離し、生じる上清を、12×75mmガラスチューブ内で、34℃での窒素下で乾燥状態に蒸発させた。乾燥残渣は、100μLのアセトニトリル/水(v/v)で再構成し、10μLをLC-MS/MSシステムに注入した。
【0070】
LC-MS/MSシステムは、Agilent 1100 autosampler及びバイナリポンプ、並びにWaters Quattromicroタンデム質量分析装置から構成された。液体クロマトグラフィーは、A:アセトニトリル/0.1%ギ酸(v/v)及びB:水/0.1%ギ酸(v/v)からなるグラジエント移動相で実施した。移動相は、流速0.3mL/分でポンプし、分離は、Phenomenex Luna 3μm PFP(100a 150×2mm)カラムを使用して達成した。グラジエント移動相は、以下の通りである:0~5分、溶媒Aは15%であった。次いで、溶媒Aは12分で80%まで直線的に増加させ、16分まで80%で維持した。16.1分で、溶媒Aは15%まで下げ、22分まで15%で維持した。実行時間は22分であった。
【0071】
質量分析器は、MRM検出を使用して、ESIポジティブモードで操作した。質量分析器のパラメーターは、以下の通りであった;キャピラリー1.0kV、コーン電圧40V、脱溶媒和温度400℃、脱溶媒和ガス流550L/h、コーンガス流50L/h、LM及びHM解像度12、衝突エネルギー25V、及びガスセルピラニ圧1.510-3mbar。モニターした質量変化は、PUMAiではm/z331>143であり、内部標準では345>157であった。
【0072】
血漿からの回収を評価するため、本発明者らは、上記のように調製した1000ng/mLのPUMAiでスパイクした対照の血漿からの面積を、水中のPUMAiのニート溶液で得られた面積と比較した。腸粘膜は、対照の血漿を校正範囲内に希釈した後に分析した。腸粘膜は、空腸の10cmの部分から剥離することにより回収し、使用まで-80℃で保存した。各処置群につき、3匹のマウスを使用した。
【0073】
In situハイブリダイゼーション
Olfm4のISHは、製造業者の説明書に従って、RNAscope 2.0 BROWN kit(Advanced Cell Diagnostics)を用いて行った。簡単に言うと、組織切片を60AaCで60分間焼き、次いでキシレン中で脱パラフィンし、等級のエタノールを通して再水和した。次いで、切片は、3つの前処置ステップ、プローブハイブリダイゼーション、6倍増幅ステップ、現像、及び対比染色を受けた。PumaのISHは、前述のように行った。
【0074】
ウェスタンブロッティング
新しい粘膜の剥離物又は刻んだ腫瘍組織を、1mlの氷冷したPBS中で洗浄し、400gでペレットにした。ペレットは、プロテアーゼ阻害剤(cOmplete EDTAfree mini,Roche)で補足した700μlのホモジナイゼーション緩衝液(0.25Mスクロース、10mM Hepes、及び1mM EGTA)中に再懸濁し、50ストロークの乳棒を用いてDounceホモジナイザーでホモジナイズした。16,000gでの遠心分離による不純物除去後、上清中のタンパク質濃度を分光光度計(NanoDrop 2000,Thermo Fisher Scientific)によって決定した。
【0075】
タンパク質(30μg)は、NuPAGEシステム(Invitrogen)を使用するSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ポリビニリデンジフルオリド膜に移した(Immobilon-P,Millipore)。代表的な結果を示し、同様の結果が少なくとも3回の独立した実験で得られた。使用した抗体は、PUMA(ab9643,Abcam)、p53、p21、ヘマグルチニン(HA)(sc-6243、sc-397、及びsc-805;Santa Cruz Biotechnology)、V5(R960-25,Invitrogen)、チューブリン(CP06,Oncogene Science)、及びアクチン(A5541,Sigma-Aldrich)を含む。
【0076】
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
10cmの空腸からの新しい粘膜の剥離物を、冷たいPBS中で洗浄し、700μlのRNA溶解緩衝液中に再懸濁し、Dounceホモジナイザーでホモジナイズした。RNAは、製造業者の説明書に従って、Quick-RNA MiniPrep kit(Zymo Research)を使用して単離した。オルガノイドは、RNA単離の前に、記載したように、Cell Recovery Solution(Corning)を使用してMatrigelを含まなかった。相補的DNAは、SuperScriptIII逆転写酵素(Invitrogen)及びランダムプライマーを使用して、マウスからの2μgの全RNAから、又は結腸オルガノイドからの~100ngの全RNAから生成し、処置群当たり、3匹のマウス又はオルガノイド培養の3つのウェルからプールした。遺伝子発現は、Gapdhで標準化した。代表的な結果を示し、同様の結果が、少なくとも3回の独立した実験で得られた。マウス及びヒトプライマーの詳細は、表1及び2に見出される。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
細胞及び処置
HCT116、DLD1、SW480、及びHT29ヒト結腸がん細胞(ATCC)、並びにHCT116 p53 KO及びPUMA KOは、10%ウシ胎仔血清(HyClone)、ペニシリン(100U/ml)、及びストレプトマイシン(100μg/ml)(Invitrogen)で補足した、McCoy’s 5A培地(Invitrogen)中で、37℃及び5%COで維持した。ヒト胚腎臓293細胞(ATCC)は、同じサプリメントで補足したダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen)中で維持した。処置のため、細胞は、24時間、~30%密度で12ウェルプレートにプレートし、次いで、CPT(Sigma-Aldrich)で処置した。PUMAiは、CPTと同時に25μMで細胞に添加した。
【0080】
アポトーシスの測定
処置後、浮遊及び接着細胞を回収し、PBS中に3.7%ホルムアルデヒド、0.5%NP-40、及びHoechst33258(10μg/ml)(Molecular Probes)を含有する溶液中で染色した。アポトーシスは、先に記載されたように(参照により本明細書に組み込まれる、Yu J. et al., Proc Natl Acad Sci U S A (2003) 100:1931-36)、濃縮及び断片化した核の顕微鏡による可視化によって評価した。処置当たり、最低300個の細胞を、3回分析した。代表的な結果を示し、同様の結果が、少なくとも3回の独立した実験で得られた。
【0081】
免疫沈降
HEK293細胞を、製造業者の説明書に従って、Lipofectamine2000を使用して、HA-タグPUMA(HA-PUMA)、HA-タグ不活性化PUMA(ΔBH3)、又はV5-タグBcl-xL(V5-Bcl-xL)を発現する、先に記載したプラスミドでトランスフェクトした。PUMAiを試験するため、HA-PUMA又はHA-ΔBH3を含有する293ライセートを、25μM PUMAiと15分間インキュベートし、次いで、V5-Bcl-xLライセートと1時間混合し、抗HA抗体(sc-805,Santa Cruz Biotechnology)を用いた免疫沈降を行った。BIM/Mcl-1相互作用は、HA-BIM及びV5-Mcl-1を含有するライセートを使用して、同じ様式で試験した。代表的な結果を示し、同様の結果が、少なくとも3回の独立した実験で得られた。
【0082】
組織中のPUMAiの測定
PUMAi{1-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-3-(2-ナフチルオキシ)-2-プロパノール二塩酸塩}は、HPLC-MSにより95%の純度で、Chempridgeによって合成され、同位体内部標準PUMAih7(D5、重水素によって置き換えられた5つの内部水素)は、HPLC-MSにより100%に達する純度で、Alsachimによって合成された。核磁気共鳴は、99.4%以上の同位体濃縮を確認した。未処置のマウスからプールした血漿は、対照の血漿として使用した。PUMAiのLC-MS/MS(液体クロマトグラフィー-タンデムMS)定量の詳細な方法は、補遺の材料と方法に見出される。
【0083】
マウス及びヒト結腸オルガノイド
WRN馴化培地の調製
L-WRN細胞(ATCC(登録商標) CRL-3276)は、コンフルエントになるまで、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)、0.5mg/mL G418(ant-gn-1,InvivoGen)、0.5mg/mL ハイグロマイシンB(10687010,Invitrogen)、及び10% FBS(vol/vol)で補足したDMEM(Invitrogen)中で培養した。次いで、細胞は、トリプシン-EDTA(Invitrogen)で回収し、それらがコンフルエント以上になるまで、3つのT75細胞培養フラスコ(Sarstedt)の1×ペニシリン/ストレプトマイシン及び10% FBS(HyClone)(vol/vol)で補足したDMEM中に分けた。次いで、細胞は、5mlの初代培養培地(1×ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM GlutaMAX(ThermoFisher)、20% FBS[vol/vol]で補足したAdvanced DMEM/F12(Invitrogen))でリンスし、同じ培地中で培養した(15ml/フラスコ)。24時間ごとに、初代培養培地(馴化培地)を回収し、新しい培地をフラスコに添加した。馴化培地は、室温で5分間、2,000gで遠心分離し、上清をデカントし、使用まで-20℃にてアリコットにして保存した。
【0084】
マウス陰窩単離、オルガノイド、及び処置
マウス陰窩単離、オルガノイド作製、及び継代は、やや改変して、先に記載されたように行った。簡単に言うと、マウス腸オルガノイドの完全培養培地は、以下のようにわずかに改変された:advancedダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/F12(12634-010,Invitrogen)は、100 units/mlペニシリン/0.1mg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)、2mM GlutaMAX(ThermoFisher)、20%(vol/vol)FBS(S11150,ATLANTA Biologicals)、及びWRN-馴化培地(50%,vol/vol)で補足した。新しく単離した陰窩は、同じ培地+10μM Y-27632(Y0503 Sigma)及び100μg/ml Primocin(ant-pm-1,InvivoGen)で培養した。CPT及びPUMAi処置のため、腸オルガノイドを継代し、CPT(0.5μM,C9911,Sigma-Aldrich)及びPUMAi(50μM)による処置の24時間前に、24ウェルプレートで25μLのMatrigel(356231,Corning)中に24時間再プレートした。CPT含有培地は、PUMAi(50μM)を含有する完全培地で置き換えた。3つの群(処置対照、CPTのみ、及びCPT+PUMAi)を設定した。直径100μm以上のオルガノイドを、CPT処置の6日後に列挙した。同様の結果が、各実験で3連のウェルによる、少なくとも3回の独立した実験から得られた。
【0085】
ヒト陰窩単離、オルガノイド作製、及び処置
外科的に切除した腸の組織は、UPMCシェイディーサイド病院及びUPMCプレスビティリアン病院の健康科学組織バンク(HSTB:Health Science Tissue Bank)から得た。全ての試料は、インフォームドコンセントによって得られ、ピッツバーグ大学の倫理委員会によって承認された。ヒトの正常な結腸陰窩単離及びオルガノイド作製は、改変して、先に記載されたように実施した。正常なヒト結腸オルガノイドの完全培養培地は、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(15140-122、Invitrogen)、10mM HEPES(15630-106、Invitrogen)、2mM GlutaMAX(Invitrogen)、1XB27(17504-044,Invitrogen)、1XN2(17502-048,Invitrogen)、1mM N-アセチルシステイン(A0737,Sigma)、10nM 「leu-15」-Gastrin(G9145,Sigma),10mM ニコチンアミド(N0636,Sigma)、10μM SB202190(S7067,Sigma)、50ng/ml組換えマウスEGF(315-09,Peprotech)、0.5μM A83-01(2939,Tocris Bioscience)、10nM PGE2(22-961-0,Tocris Bioscience)、及び50% WRN-馴化培地(vol/vol)で補足したadvanced DMEM/F12(12634-010,Invitrogen)を含有する。新しく単離した陰窩は、同じ培地+10μM Y-27632及び100μg/ml Primocinで培養した。直径100μm以上のオルガノイドを、CPT処置の6日後に列挙した。同様の結果が、各実験で3連のウェルを用いて、少なくとも3回の独立した実験から得られた。
【0086】
統計分析
統計分析は、GraphPad Prism IVソフトウェアで実施した。応答の多重比較は、一元配置分散分析(ANOVA)及びTukeyの事後検定により分析したが、2つの群間のものは両側、独立t検定によって行った。生存データは、ログランク検定によって分析した。差は、偶然に生じる差の可能性が、100のうち5より少ない(P<0.05)場合に、顕著であると考えた。試料サイズは、公表された研究及び検出力計算の組合せを使用して決定した。ANOVAのため、相互作用の試験のための検出力は、必要とされる試料サイズを算出するための混合線形成長モデルを構築することにより適用される二元配置要因分析で計算した。通常、群当たり5~10が80%検出力を提供し、1.5SDの標準化相互作用を検出すると見積もられた。
【0087】
例2.PUMAは、化学療法誘導性の陰窩のアポトーシス及び致死を媒介する
化学療法誘導性の急性腸傷害におけるp53依存的アポトーシスの潜在的な役割を調べるため、本発明者らは、野生型(WT)、p53ノックアウト(KO)、及びPuma KOマウスを、単回用量のイリノテカン(200mg/kg;CPT-11)で処置した。WTマウスにおけるCPT-11誘導性の強い陰窩のアポトーシスは、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ媒介デオキシウリジン三リン酸ニック末端標識(TUNEL)及び活性型カスパーゼ3染色によって測定されるように、6時間でピークに達し、48時間まで徐々に減少する。アポトーシスは、陰窩基底部の幹細胞(陰窩底部に対して位置1~3におけるCBC)と+4~9細胞(陰窩底部に対して)の両方で観察されたが、p53 KO及びPuma KOマウスでは抑止された(図1A及び1B、並びに図8A図8D)。CPT-11処置は、WTの腸粘膜において6時間以内に、p53及びその標的PUMA及びp21を誘導したが、p53 KOマウスでは誘導しなかった(図1C及び図8E)。Puma KOは、p53又はp21の発現に大きく影響しなかった(図1C)。BH-3onlyタンパク質であるBIM及びNOXAはCPT-11によって誘導されず、Puma KOによって影響されなかった(図8F)。RNA in situハイブリダイゼーション(ISH)は、Puma mRNAが未処置のWTマウスの陰窩で検出不可能であり、CPT-11処置によりCBC及びいくつかの+4細胞において強く誘導されたことを確認した(図1D)。CPT-11は、マウスにおいて用量依存的な致死性のGI傷害を引き起こす(24)。C57BL/6Jマウスの感受性を決定するため、3日連続の1日用量のCPT-11後の生存をモニターした。1日当たり180、215、及び250mg/kgの投与は、それぞれ、30、90、及び100%の致死をもたらし、全ての死は5日から8日の間に起こり、致死性のGI傷害の特徴である(図9)。WTマウスの90%致死量(LD90)(3日間、1日当たり215mg/kg)では、全てのPuma KOマウスは30日間生存したが、全てのp53 KOマウスは6日から9日の間に死んだ(図1E)。組織学的分析は、陰窩の重度の欠損及び絨毛の短縮を示す、5日目のWT及びp53 KOマウスにおける致死性のGI傷害を確認し、これは、Puma KOマウスでは抑止された(図1F)。放射線からの腸の回復におけるp53の二重の役割と一致して(20)、本発明者らのデータは、p21又は他の機能ではなく、PUMA及びアポトーシスのp53依存的誘導の選択的阻害が、腸の化学保護をもたらすことを実証する。
【0088】
例3.小分子PUMAiは、化学療法誘導性の陰窩のアポトーシス及び致死に対して保護する。
本発明者らは、PUMA BH3ドメインのBCL-2ファミリータンパク質との重要な相互作用のファルマコフォアモデル、in silico化合物スクリーニング、及びアポトーシスアッセイを使用して、多くの可能性のあるPUMAiを同定した。これらの化合物(PUMAi)の1つは、PUMA/BCL-xLの相互作用を阻害するが、BIM/MCL-1の相互作用は阻害しないことが確認された(図10A図10C)。PUMAiは、p53 WT(HCT 116)、p53欠損(p53 KO)、p53変異体(HT29、SW480、及びDLD1)、又はPUMA欠損(PUMA KO)を含む、異なるp53又はPUMA遺伝子型を有する結腸がん細胞株におけるカンプトテシン(CPT)誘導性のアポトーシスを減少させなかった(図10D)。PUMAは、p53 WT HCT116細胞において、CPT処置によってのみ誘導され、いずれのp53欠損株でも誘導されなかった(図10E)。基底量のPUMAは、マウス腸粘膜(図1C及び図1D)及び正常なヒト小腸及び結腸における非常に低い又は検出不可能な発現と比較して、HCT116細胞において極めて高かった。
【0089】
in vivoでのPUMAiの有効性を調べるため、WTマウスを、CPT-11(200mg/kg)の単回投与の2時間前に、ビヒクル又はPUMAi(10mg/kg、経験的な用量)で処置し、CPT-11投与の6時間及び24時間後に陰窩のアポトーシスを分析した。PUMAiは、移行増幅(TA)、+4~9、細胞と比較して、CBCにおいて優先的にTUNEL及び活性型カスパーゼ3染色を減少させた(図2A及び図2B、並びに図11A図11D)。PUMAi処置は、Puma KOマウスにおいて陰窩のアポトーシスをさらに減少させなかった(図11E)。次いで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)アッセイを行い、CPT-11投与(0時間)の-1.5、+1、及び+6時間の3時点で、腸粘膜及び血漿におけるPUMAi分布を評価した(図11F)。PUMAi濃度は、-1.5時間と比較して、+1時間及び+6時間ではそれぞれ、胃腸粘膜において67%及び30%に維持されたが、血漿ではより早く低下した(図2C)。CPT-11は、半減期およそ36分で、血漿から急速に除去される。本発明者らは、CPT-11処置の1時間後に与えたPUMAiが、依然としてアポトーシスを効果的に減少させることを見出し、PUMAiがCPT-11転換又は腸吸収に影響しないことを示す(図2D)。
【0090】
さらに、PUMAiは、3回の異なる投与で、CPT-11誘導性の致死を低下させた(図2E及び図12A及び図12B)。LD90では、PUMAiは生存を10~70%改善した。組織学的分析は、WTマウスと比較して、PUMAi及びPuma KO群において5日目にGI傷害の減少を確認した(図1F及び図2F)。PUMAiは、9.5及び15グレイの全身照射後のマウスの生存も増加し(図12C及び図12D)、他の機能ではなく、p53依存的アポトーシスの標的化が、処置誘導性の正常組織毒性を選択的に減少させるという考えをさらに支持した。
【0091】
例4.PUMA阻害は、CPT-11の抗腫瘍活性を低下させない
PUMA阻害が、選択的な腸の化学保護を提供するかどうか決定するため、本発明者らは、免疫応答性のWT及びPuma KOマウスにおいて皮下にルイス肺癌(LLC)腫瘍を確立した。腫瘍が、平均100mmに達した後(11日目)、マウスは、2週間にわたり、CPT-11(200mg/kg、腹腔内)の6回投与を受けた(図13A)。腫瘍移植及びCPT-11応答は、WT及びPuma KO宿主において区別できなかった(図3A及び図13B)。反対に、CPT-11誘導性の体重減少は、Puma KOマウスで低下し(図3B)、高い絨毛高、陰窩数、及び好中球浸潤の低下によって証明される、保存された腸構造及びバリアと関係した(図3C図3G)。
【0092】
次いで、PUMAiの効果を、腫瘍担持マウスで決定した。PUMAi(10mg/kg)又はビヒクルを、CPT-11の各投与の2時間前及び20時間後に与えた。PUMAi群は、ビヒクル群と比較して、同等の腫瘍応答を示した(図4A及び図13B)が、CPT-11誘導性の体重減少、腸損傷(図4B図4G)、及び致死(表3)に高度に耐性であった。さらに、PUMAi又はPUMA KO群は、毎日の検査に基づく研究を通して、グルーミング及び身体活動の改善を示した。3つのCPT-11処置群全てにおいて、LLC腫瘍は、増殖又はアポトーシスに同様の効果を示したが(図13C及び図13D)、変異p53と一致して、p53、PUMA、又はp21の誘導を欠損した(図13E)。これらの研究は、PUMA阻害が、CPT-11誘導性の腸管毒性を減弱するが、免疫応答性宿主におけるp53変異腫瘍の確立又は治療応答は減弱しないことを実証している。
【0093】
【表3】
【0094】
例5.PUMA標的化は、化学療法に対して、LGR5幹細胞及びニッチを強力に保護する
傷害誘導性再生におけるISCニッチの役割についてはあまり分かっていない。本発明者らは、化学感受性TA細胞ほどではない、CBCの欠損が、ニッチ「排出能」を介して「傷害」シグナルを送り、残りの幹細胞を活性化するかどうか試験した。PUMAiは、CPT-11誘導性のCBCアポトーシスを選択的に遮断するため、これを試験する薬理学的な方法を提供する(図2B)。LGR5-EGFP(高感度緑色蛍光タンパク質)レポーターマウスを使用して、本発明者らは、Puma KO又はPUMAiが、LGR5細胞のCPT-11誘導性のアポトーシスを、それぞれ90%又は70%より大きく低下させることを見出した(図5A及び図5B)。Puma KOは、別の一般に使用される化学療法薬、5-FUによって誘導されるLGR5細胞アポトーシスも遮断した(図14)。CD166は、ホメオスタシスにおいて、陰窩底部のCBC及びパネート細胞を含む、ISCニッチをマークするWNT標的である。CPT-11処置は、WTマウスにおいて48~96時間、CD166+細胞の著しい増殖を誘導し、これは96時間までにPUMAi処置によって完全に抑制された(図5C及び図5D)。これは、早くも6時間で、WNT(Lgr5、CD44、及びWnt3A)-及びNOTCH(Olfm4、Math1、Hes1、Hes5、及びDll1)-応答性遺伝子の一時的だが強い活性化によって先行され、これは、Puma KO及びPUMAi処置マウスにおいて大きく抑制された(図15)。唯一の例外は、TAマーカーCD44であり、これは、Puma KOによって強く抑制されたが、PUMAiによっては抑制されなかった(図5E)。次いで、本発明者らは、53BP1遺伝子座による陰窩DNA損傷をモニターし、これは6時間の、Puma KO、PUMAi、及び対照群で同等であった。しかしながら、Puma KO及びPUMAi群におけるDNA損傷は、CPT-11の単回投与の48時間後に低く、CPT-11の3回投与の120時間後により低かった(図5F及び図5G)。これらのデータは、LGR5細胞の欠損が、ニッチを破壊し、WNT及びNotchシグナル伝達、並びに化学療法後の腸再生をトリガーし、LGR5細胞喪失の遮断が代償性の増殖を遅らせ、DNA修復を改善するようであることを強く示している。
【0095】
例6.LGR5細胞は、PUMAiによる腸の化学保護において重要な標的である
本発明者らは、LGR5細胞欠損によってトリガーされるWNT及びNOTCH活性化が、残りの幹細胞を繰返し曝露及び幹細胞枯渇に対して感受性を増加させるようであることをさらに試験した。CPT-11処置の6回投与後、LGR5陰窩細胞及びLGR5陰窩の画分は、Puma KO及びPUMAi群の40~60%のみと比較して、WTマウスにおいて90%より減少した(図6A及び図6B)。Olfm4 RNA ISHは、Puma KO及びPUMAi群の、それぞれ8%及び49%と比較して、WTマウスにおいて、Olfm4+陰窩の93%低下を示した(図6C)。パネート細胞は、LGR5細胞のニッチであり、MMP7発現によりマークされる。単回処置ではなく、繰返しCPT-11処置は、上皮にわたって散在する顕著な誤った局在化及びMMP7+及びLGR5細胞の接触者のほぼ完全な喪失を伴い、陰窩内のMMP7+細胞を減少させ、これはPuma KO及びPUMAi群で抑制された(図6D図6F)。全体的に、これらのデータは、化学療法誘導性の腸管毒性を受ける重要なメカニズムとしてLGR5細胞の枯渇を実証し、これは、PUMAiにより効果的に標的化され得る。
【0096】
例7.PUMAiは、CPT誘導性の傷害に対して、マウス及びヒト結腸オルガノイドを保護する
PUMAiが、陰窩細胞に直接作用するかどうか決定するため、本発明者らは、放射線誘導性の、PUMA依存的LGR5細胞のアポトーシスを実証するために先に使用した、三次元の上皮オルガノイド又はエンテロイド系を使用した。CPTは、マウス結腸オルガノイドにおける増殖抑制及びカスパーゼ3の活性化を誘導し、それはPUMAiによって強く遮断された(図7A図7C)。PUMAiは、WNT及びNOTCH標的(Lgr5、CD44、及びOlfm4)のCPT誘導性の活性化も抑制した(図7D)。TAマーカーであるCD44の抑制は、Lgr5又はOlfm4と比較して顕著ではなく、本発明者らがin vivoで観察したものと類似していた。
【0097】
PUMAiの翻訳能力を実証するため、本発明者らは、原発性のヒト結腸オルガノイドを使用した。PUMAiは、オルガノイド増殖を増強し(図7E及び図7F)、CPT誘導性のカスパーゼ3活性化を阻害した(図7G)。PUMAiは、CPT誘導性のWNT及びNOTCH標的の発現を抑制し(図7H)、LGR5細胞のp53-及びPUMA-依存的喪失が、上皮画分内のISC関連経路の実質的な活性化をトリガーすることを確証した。
【0098】
例8.PUMA誘導性のアポトーシスを阻害するさらなる化合物
PUMAiに加えて、いくつかの化合物が同定され、先に記載されたように(Mustata G. et al. Curr Top Med Chem (2011) 11:281-290、参照により本明細書に組み込まれる)、ZINC 8.0データベースのin silicoスクリーニング、及びin silico ADME/Toxicityプロファイルを使用して、PUMA誘導性のアポトーシスの阻害を実証した。本発明者らは、結腸がん細胞株DLD1及びHCT-116においてPUMA誘導性のアポトーシスを減少させるそれらの能力について、PUMAiと関連する化合物の群も試験した。これらのさらなる化合物の構造及びアポトーシス阻害効果を以下の表に列挙する。
【0099】
【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】
【0100】
本明細書に開示及び請求する全ての組成物及び方法は、本開示に照らして不適当な実験を含まずに行われ、遂行され得る。本発明の組成物及び方法は、例示的な実施形態に関して記載されるが、変更が、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物及び方法、並びに方法のステップ又は方法のステップの順序に適用され得ることが、当業者には明らかであろう。より詳細には、化学的にも生理的にも関連するある特定の薬剤が本明細書に記載の薬剤と置換され得るが、同じ又は類似の結果が達成されることは明らかであろう。当業者には明らかである全てのかかる類似の置換及び改変は、添付の請求項によって規定されるように、本発明の精神、範囲及び概念内であると思われる。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
【国際調査報告】