(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】多重誘導触覚センサアレイ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/046 20060101AFI20220316BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
G06F3/046
G06F3/041 420
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569251
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 US2020016909
(87)【国際公開番号】W WO2020163547
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521353414
【氏名又は名称】スターリーコム センシング テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チェン,トマス
(57)【要約】
外部物体との接触の位置及び力を測定するための多重化誘導触覚センサは、センスコイルと誘導結合された駆動コイルを各センセルが有する複数のセンセルのアレイと、センス・駆動電子回路とを含む。アレイは、複数の行及び列のセンセルを有する。各列の駆動コイルが、直列に電気接続され、アナログデマルチプレクサを介してAC定電流源によって駆動される。各行の全てのセンスコイルが、直列に電気接続され、その行にかかる誘導AC電圧が、アナログマルチプレクサを介してAC増幅器に送られる。そして、増幅されたAC電圧が振幅復調器に送られて、アクティブな電流駆動列とセンス行との交点であることによって選択されるセンセルの駆動コイルとセンスコイルとの間の誘導結合係数に依存したDC信号が生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行及び複数の列を有するアレイに配列された複数の誘導性のセンセルであり、
当該センセルの各々が駆動コイル及びセンスコイルを有し、
各センセルの前記駆動コイル及び前記センスコイルの双方の巻線が同じ方向に巻かれて基板の第1の面に取り付けられ、
各列内の前記センセルの前記駆動コイルが直列に接続され、且つ
各行内の前記センセルの前記センスコイルが直列に接続される、
複数の誘導性のセンセルと、
前記複数の誘導性のセンセルの個々のセンセルを、前記複数の列のうちの1つ内の前記センセルの前記駆動コイルと前記複数の列のうちの1つ内の前記センセルの前記センスコイルとをアクティブにすることによって、独立して選択するように構成された回路であり、アクティブにされた列と行との交点にあるセンセルが選択され、該選択されたセンセルの出力が当該回路によって測定される、回路と、
を有する装置。
【請求項2】
前記回路は、前記アレイの前記センセルの各々を順次に、個別に選択し且つその出力を測定することによって、走査を実行する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回路は、前記アレイ内の対応するセンセルの位置に対応した測定結果の行列を生成する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記回路は、前記アレイ内の前記対応するセンセルの位置に対応した測定結果の行列の時系列を生成する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記回路は、前記センセルの前記駆動コイルに接続された、AC電流源とデマルチプレクサとを有した駆動回路を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記回路は、前記センセルの前記センスコイルに接続された、マルチプレクサとアナログ-デジタル変換器とを有したセンス回路を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記センセルはプリント回路基板(PCB)上に配置されており、第1の圧縮性誘電体層が前記PCBの第1の面上に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の圧縮性誘電体層上に配置された第1の変形可能な導電性シールド層であり、前記第1の圧縮性誘電体層によって前記PCBから分離されるようにされた第1の変形可能な導電性シールド層、を有する請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記PCBの第2の面と第2の変形可能な導電性シールド層との間に配置された第2の圧縮性誘電体層、を有する請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記PCBの前記第1の面上に配置された第1の圧縮性誘電体層上に配置される変形可能な誘電体フィルム層上に配置された導電性ターゲット、を有する請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記PCBの第2の面と変形可能な導電性シールド層との間に配置された第2の圧縮性誘電体層、を有する請求項10に記載の装置。
【請求項12】
各センセルの前記駆動コイル及び前記センスコイルの双方の巻線が、同じ方向に巻かれて基板の第2の面にも取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
各列内の隣接し合うセンセルの前記駆動コイルが反対方向に巻かれ、
各行内の隣接し合うセンセルの前記駆動コイルが反対方向に巻かれ、
各行内の隣接し合うセンセルの前記センスコイルが反対方向に巻かれ、且つ
各列内の隣接し合うセンセルの前記センスコイルが反対方向に巻かれている、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記センセルはグループに編成されており、各導電性ターゲットが、当該ターゲットが付随する4つのセンセルのグループを、これらのセンセルと当該導電性ターゲットとの間にエラストマ層を配置して、部分的に覆っている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記回路は、前記出力に基づいて、印加された力を三軸で測定する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
各導電性ターゲットが、角が切り取られた正方形の形状を有する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
複数のグループを有する誘導性の多重化センセルのアレイと、
複数の導電性ターゲットであり、各ターゲットが、印加する外力なしで、前記グループのうちの1つの前記センセルの各々の一部を覆うように構成される、複数の導電性ターゲットと、
前記ターゲットと前記センセルとの間に配置されたエラストマと、
選択されたグループの前記センセルを駆動し、該選択されたグループの前記センセルのうちの1つの出力を測定するように構成された回路と、
を有する触覚センサ。
【請求項18】
前記選択されたグループの前記センセルの出力は、印加された機械的な力を三軸で示す、請求項17に記載の触覚センサ。
【請求項19】
複数グループのセンセルを有した誘導性の多重化センセルのアレイを有する触覚センサを用いた方法であって、各グループに、印加する外力なしで当該グループの前記センセルの各々の一部を覆う導電性ターゲットが付随し、当該方法は、
選択されたグループの前記センセルを電流源で駆動し、前記グループは前記アレイの全センセルよりも少ないセンセルを有し、
前記選択されたグループの前記センセルのうちの1つの出力を測定する、
ことを有する、方法。
【請求項20】
前記選択されたグループの前記センセルの出力から、印加された機械的な力を三軸で計算する、ことを有する請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示に係る事項は、概して、触覚センサに関し、より具体的には、誘導センシング素子(sensing element、sensel、センセル)を有する触覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的な力、圧力、及び他の外部環境刺激の検出に触覚センサが使用されている。触覚センサを一般的に使用する技術は、ロボット工学、コンピュータハードウェア(例えば、ヒューマンマシンインタフェース(HMI))、医療装置及びシステム、環境モニタシステム、並びにセキュリティシステムを含む。典型的な触覚センサは、センセルのアレイと、センセルと環境刺激との間の物理的相互作用に応答してのセンセルの出力における変化を測定する電子回路とを含む。ピエゾ抵抗性、圧電(ピエゾ電気)性、容量性、及び誘導性を含む種々のタイプのセンセルが存在している。各タイプのセンセルが利点及び欠点を有する。
【0003】
ピエゾ抵抗センセルは、半導体のピエゾ抵抗特性に基づいて機能し、ピエゾ抵抗特性とは、機械的な歪みが印加されると電気抵抗が変化するというものである。半導体材料のピエゾ抵抗は、電荷キャリアの移動度の関数であり、それ自体、材料の体積に比例して変化する。ピエゾ抵抗センセルは、低い製造コスト及び高い感度を理由に広く使用されている。しかしながら、変換(トランスダクション)メカニズムの性質に起因して、ピエゾ抵抗材料中の電荷キャリアの移動度はまた、温度とともに変化する。従って、温度補償機構が必要とされ、それが、センサ及び関連回路の複雑さを増大させる。
【0004】
圧電センセルは、印加された機械的な力に比例する表面電荷を発生することにより、印加された機械的な力を電圧に変換することによって機能する。一般的に使用される圧電材料は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマー、酸化亜鉛(ZnO)、及びジルコン酸チタン酸鉛(PbZrTiO3又はPZT)を含む。その柔軟性、軽量さ、高い圧電係数、寸法安定性及び化学的不活性のために、しばしばPVDFポリマーが使用される。圧電センセルは、有利なことに電源を必要とせず、より幅広い多様な用途で使用されることができる可能性がある。加えて、一部の圧電材料は、非常に小さい変形に対して高い感度を示す。しかしながら、その変換メカニズムは、印加される機械的な力が一定である場合にセンサの出力電圧が経時的にゼロまで減衰するので、動的に印加される機械的な力を検出することに適するのみである。また、圧電センセルは、印加される力が隣接センセルに伝播する傾向があるためにアレイに展開されたときにクロストークに悩まされ、それにより分解能を制限してしまう。さらに、圧電センセルはヒステリシスを受けやすい。
【0005】
容量センセルは、誘電体材料によって隔てられた2つの導電性プレートを有する。センセルのキャパシタンスは、2つのプレート間の距離に反比例する。センセルの構造は、機械的な力又は圧力に応答してプレート間の距離が変化するように変形し、それにより、キャパシタンスの変化を引き起こす。容量センセルは、高い感度と、良好な周波数応答、高い空間分解能、低い温度感度及び大きいダイナミックレンジとを示す。しかしながら、容量センサは、ノイズを受けやすく、アレイに展開されるとクロストークに悩まされ、それ故に、複雑な信号処理及びノイズ抑制回路が必要とされる。
【0006】
誘導センサは、電気コイルと、該コイルの前の埋め込み金属ターゲットとを有する。外部からの機械的な力が金属ターゲットをコイルに対して変位させると、金属ターゲット内の渦電流が変化し、結果として、コイルのインダクタンスが変化する。このインダクタンス変化が電子回路によって測定されて、印加された機械的な力を割り出す。例えば、Hongbo Wang他による“Design and Characterization of Tri-axis Soft Inductive Tactile Sensors”を含め、誘導触覚センサが提案されている。誘導触覚センサは、例えば水中環境で動作するなど、流体及び汚染物質に耐性を持つという潜在的な利点を有するが、少なくとも2つの欠点を有する。印加された機械的な力に応答してのインダクタンスの変化が比較的小さく、それ故に、測定には比較的複雑な電子回路を必要とする。さらに、センセルと関連電子回路との間に必要とされる大量の電気接続が、複雑であるとともに、ノイズ及びクロストークを起こしやすい。より更には、これらの欠点は、センセル数においてアレイがスケールアップされるにつれていっそう顕著になり、それが、実世界の用途において実用的であるアレイの最大スケールを制限してしまう。
【発明の概要】
【0007】
この文書にて言及される全ての例、態様、及び特徴は、技術的に可能なやり方で組み合わされることができる。
【0008】
一部の態様によれば、装置は、複数の行及び複数の列を有するアレイに配列された複数の誘導性のセンセルであり、当該センセルの各々が駆動コイル及びセンスコイルを有し、各列内の前記センセルの前記駆動コイルが直列に接続され、各行内の前記センセルの前記センスコイルが直列に接続される、複数の誘導性のセンセルと、前記複数の誘導性のセンセルの個々のセンセルを、前記複数の列のうちの1つ内の前記センセルの前記駆動コイルと前記複数の列のうちの1つ内の前記センセルの前記センスコイルとをアクティブにすることによって、独立して選択するように構成された回路であり、アクティブにされた列と行との交点にあるセンセルが選択され、該選択されたセンセルの出力が当該回路によって測定される、回路と、を有する。一部の実装において、前記回路は、前記アレイの前記センセルの各々を順次に、個別に選択し且つその出力を測定することによって、走査を実行する。一部の実装において、前記回路は、前記アレイ内の対応するセンセルの位置に対応した測定結果の行列を生成する。一部の実装において、前記回路は、前記アレイ内の前記対応するセンセルの位置に対応した測定結果の行列の時系列を生成する。一部の実装において、前記回路は、前記センセルの前記駆動コイルに接続された、AC電流源とデマルチプレクサとを有した駆動回路を有する。一部の実装において、前記回路は、前記センセルの前記センスコイルに接続された、マルチプレクサとアナログ-デジタル変換器とを有したセンス回路を有する。一部の実装において、前記センセルはプリント回路基板(PCB)上に配置されており、第1の圧縮性誘電体層が前記PCBの第1の面上に配置されている。一部の実装において、前記第1の圧縮性誘電体層上に第1の変形可能な導電性シールド層が配置され、前記第1の圧縮性誘電体層によって前記PCBから分離されるようにされる。一部の実装において、前記PCBの前記第2の面と第2の変形可能な導電性シールド層との間に第2の圧縮性誘電体層が配置される。一部の実装において、前記PCBの前記第1の面上に配置された第1の圧縮性誘電体層上に配置される変形可能な誘電体フィルム層上に、導電性ターゲットが配置される。一部の実装において、前記PCBの前記第2の面と変形可能な導電性シールド層との間に第2の圧縮性誘電体層が配置される。一部の実装において、前記駆動コイルは第1のプリント回路基板(PCB)上に配置され、前記センスコイルは第2のPCB上に配置され、前記駆動コイルは、圧縮性誘電体層によって前記センスコイルから隔てられる。一部の実装において、隣接し合う駆動コイルが反対方向に巻かれ、且つ隣接し合うセンスコイルが反対方向に巻かれている。一部の実装において、前記センセルはグループに編成されており、各導電性ターゲットが、当該ターゲットが付随する4つのセンセルのグループを、これらのセンセルと当該導電性ターゲットとの間にエラストマ層を配置して、部分的に覆っている。一部の実装において、前記回路は、前記出力に基づいて、印加された力を複数軸で測定する。一部の実装において、各導電性ターゲットが、角が切り取られた正方形の形状を有する。
【0009】
一部の態様によれば、触覚センサは、センセルのアレイと、前記アレイの前記センセルの選択されたグループを駆動し、該選択されたグループの前記センセルのうちの1つの出力を測定するように構成された回路であり、前記グループは前記アレイの全センセルよりも少ないセンセルを有する、回路と、を有する。一部の実装において、前記アレイの前記センセルの出力が時系列で測定される。
【0010】
一部の態様によれば、方法は、センセルのアレイを有する触覚センサを用いて、前記アレイの前記センセルの選択されたグループを駆動し、該グループは、前記アレイの全センセルよりも少ないセンセルを有し、前記選択されたグループの前記センセルのうちの1つの出力を測定する、ことを有する。一部の実装は、前記アレイの前記センセルの出力を時系列で測定することを有する。
【0011】
いずれの利点も発明態様に対する限定として見られるべきではないが、多重化誘導触覚センサの一部の実装は、電磁ノイズに対する耐性と、液体、汚染物質及び他の厳しい環境条件の存在下で機能する能力とを向上させ得る。さらに、アレイサイズのスケーラビリティが改善され得るとともに、センサ内の電気接続の必要数が減少し得る。センセルアレイと制御電子回路との間の相互接続の信頼性も、従前設計と比較して改善され得る。
【0012】
他の態様、特徴、及び実装が、詳細な説明及び図面に鑑みて明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】4×4センセルアレイ、駆動回路、及びセンス回路を有する多重化誘導触覚センサの電気回路図である。
【
図2A】
図2A、2B、及び3は、変形可能な導電性シールド層及び圧縮性誘電体層を有する8×8の多重化誘導触覚センサを示している。
【
図2B】
図2A、2B、及び3は、変形可能な導電性シールド層及び圧縮性誘電体層を有する8×8の多重化誘導触覚センサを示している。
【
図3】
図2A、2B、及び3は、変形可能な導電性シールド層及び圧縮性誘電体層を有する8×8の多重化誘導触覚センサを示している。
【
図4A】
図4A、4B、及び5は、FPCBの両側に配置された平行な導電性シールド層及び平行な圧縮性誘電体層を有する多重化誘導触覚センサを示している。
【
図4B】
図4A、4B、及び5は、FPCBの両側に配置された平行な導電性シールド層及び平行な圧縮性誘電体層を有する多重化誘導触覚センサを示している。
【
図5】
図4A、4B、及び5は、FPCBの両側に配置された平行な導電性シールド層及び平行な圧縮性誘電体層を有する多重化誘導触覚センサを示している。
【
図6A】
図6A、6B、及び7は、導電性ターゲットのアレイと誘導センセルのアレイとの間に圧縮性誘電体層を有する多重化誘導触覚センサを示している。図。
【
図6B】
図6A、6B、及び7は、導電性ターゲットのアレイと誘導センセルのアレイとの間に圧縮性誘電体層を有する多重化誘導触覚センサを示している。図。
【
図7】
図6A、6B、及び7は、導電性ターゲットのアレイと誘導センセルのアレイとの間に圧縮性誘電体層を有する多重化誘導触覚センサを示している。図。
【
図8A】8A及び8Bは、導電性ターゲットと、FPCBの両側に配置された平行な導電性シールド及び平行な圧縮性誘電体層と、を有する多重化誘導触覚センサを示している。
【
図8B】8A及び8Bは、導電性ターゲットと、FPCBの両側に配置された平行な導電性シールド及び平行な圧縮性誘電体層と、を有する多重化誘導触覚センサを示している。
【
図9】駆動コイルのアレイとセンスコイルのアレイとが圧縮性誘電体層によって隔てられた多重化誘導触覚センサを示している。
【
図10】電子回路が付随した多重化誘導触覚センサのシステム図である。
【
図11A】
図11A及び11Bは、直列接続されたコイルの行及び列を有するコイルアレイ設計を示している。
【
図11B】
図11A及び11Bは、直列接続されたコイルの行及び列を有するコイルアレイ設計を示している。
【
図12】密に結合された駆動コイル及びセンスコイルを有し、且つ隣接し合うコイルが反対方向に巻かれた、両面PCB上に実装されたセンセルの4×4アレイを示している。
【
図13】センスコイルトレース及び駆動コイルトレースの両方のためにPCBの両面を使用するセンセルアレイPCB設計を示している。
【
図14】PCBの頂面及び底面のそれぞれ上の
図13のトレースパターン設計を示している。
【
図15A】
図15A、15B、16A、及び16Bは、法線方向の力がz軸にあり、表面方向の力がx軸及びy軸それぞれにあるとして、印加された機械的な力を三軸(x,y,z)で検知することができる誘導多重化触覚センサを示している。
【
図15B】
図15A、15B、16A、及び16Bは、法線方向の力がz軸にあり、表面方向の力がx軸及びy軸それぞれにあるとして、印加された機械的な力を三軸(x,y,z)で検知することができる誘導多重化触覚センサを示している。
【
図16A】
図15A、15B、16A、及び16Bは、法線方向の力がz軸にあり、表面方向の力がx軸及びy軸それぞれにあるとして、印加された機械的な力を三軸(x,y,z)で検知することができる誘導多重化触覚センサを示している。
【
図16B】
図15A、15B、16A、及び16Bは、法線方向の力がz軸にあり、表面方向の力がx軸及びy軸それぞれにあるとして、印加された機械的な力を三軸(x,y,z)で検知することができる誘導多重化触覚センサを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、外部物体によって及ぼされる接触の位置及び力を測定するための多重化触覚センサの電気回路図である。図示した多重化触覚センサは、4×4の誘導センセルアレイ50、駆動回路52、及びセンス回路54を含んでいる。駆動回路52は、AC電流源4及びデマルチプレクサ5を含んでいる。センス回路54は、マルチプレクサ(7)、AC増幅器(8)、振幅復調器(9)、及びアナログ-デジタル変換器(ADC)(10)を含んでいる。センセルアレイは、両面又は多層のフレキシブル又はリジッドなプリント回路基板(PCB、FPCB)(1)上に配置された16個のセンセル(23)を含んでいる。アレイ(50)内の各センセル(23)が、対応するセンスコイル(3)と誘導結合された駆動コイル(2)を有する。各列(縦方向に示されている)の全ての駆動コイル(2)が、直列に電気接続され、アナログデマルチプレクサ(5)を介してAC定電流源(4)によって駆動される。各行(横方向に示されている)の全てのセンスコイル(3)が、直列に電気接続され、その行にかかる誘導AC電圧が、アナログマルチプレクサ(7)を介してAC増幅器(8)に送られる。増幅されたAC電圧が振幅復調器(9)に送られて、アクティブな電流駆動列とアクティブなセンス行との交点であることによって選択される個々のセンセルの駆動コイルとセンスコイルとの間の誘導結合係数に依存したDC信号が生成される。AC定電流源(4)によるセンセル列内の直列接続された駆動コイルの励起は、同一の列内の複数のセンセルに力が印加されたときの干渉及び不正確さを回避する助けとなる。さらに、いずれの行内の直列接続されたセンスコイルにかかる誘導AC電圧も、アクティブな駆動列と本センス行との公差(交点)にある特定のセンセルに印加された力によってのみ影響されることになる。何故なら、AC増幅器(8)が非常に高い入力インピーダンスを持ち、結果として、非常に小さい電流のみがセンスコイルループに流れ込むからである。デマルチプレクサ及びマルチプレクサを用いて、アレイの個々のセンセルが順に選択され、選択されたセンセルのDC信号が測定される。センセルは、走査サイクルの間に各センセルが選択されるように任意の順序又はパターンで個々に選択され得る。
【0015】
図2A、2B、及び3は、圧縮性誘電体層(12)及び変形可能な導電性シールド層(15)を含む8×8の誘導触覚センサを示している。圧縮性誘電体層(12)は、センセルアレイ(23)と変形可能な導電性シールド層(15)との間に配置される。センセルアレイは、FPCB(1)の片面又は両面に形成される。例えば人の指などの外部物体が触れて、変形可能な導電性シールド層(15)に法線方向の力を印加することに応答して、変形可能な導電性シールド層(15)が接触領域で変形し、隣接する誘電体層(12)の部分が圧縮される。従って、印加された機械的な力に応答して、接触領域に近接した導電性シールド層(15)とセンセル(23)との間の距離が減少する。この距離の変化が、導電性シールド内の誘導渦電流によって生成される二次的な磁界のために、接触領域に近接するセンセルの駆動コイルとセンスコイルとの間の誘導結合係数を減少させる。結果として、センスコイルループにおける誘導AC電圧が振幅において減少し、それが、コントローラがそれらのセンセルを走査する時に(走査サイクルの間に順次に走査し、活性化された駆動コイル行と測定中のセンスコイル列との交点にあるセンセルが選択され、出力が測定される時に)検出される。圧縮性誘電体層(12)は弾性であり、機械的な力が除去されると接触前の平面形状に戻る。
【0016】
図1及び10を参照するに、触覚センサアレイコントローラ(30)が、AC増幅器(8)及び振幅復調器(9)及びアナログ-デジタル変換器(10)を介してAC電圧振幅変化を検出し、測定結果を、選択されたセンセルの駆動コイル行及びセンスコイル列に対応するメモリ位置に格納する。全ての駆動コイル行及び全てのセンスコイル列を通じての走査サイクルの完了後、各行列要素が、それぞれの行及び列の座標にある対応するセンセルに印加された機械的な力を表す二次元行列が形成される。駆動コイル行及びセンスコイル列の連続的又は周期的な走査が、リアルタイム触覚センシングのための、経時的な、フレーム化された二次元数値行列を生成する。
【0017】
図4A、4B、及び5は、平行な第1の変形可能な導電性シールド層(15)及び第2の変形可能な導電性シールド(25)を、それらに間に配置されたセンセル(23)及びFPCB(1)とともに有する多重化誘導触覚センサを示している。センセル(23)と第1の変形可能な導電性シールド層(15)との間に第1の圧縮性誘電体層(12)が配置される。センセル(23)と第2の変形可能な導電性シールド層(25)との間に第2の圧縮性誘電体層(22)が配置される。外部物体が第1の導電性シールド層(15)及び第1の圧縮性誘電体層(12)に対して局所的な機械的な力を加えることを受けての、センセルの駆動コイルとセンスコイルとの間の誘導結合係数の変化による誘導AC電圧変化を測定するように、コントローラ電子回路が構成される。外部物体(例えば人の指など)が変形可能な導電性シールド層(15)に触れて力を印加するとき、両方の導電性シールド層(15及び25)がFPCB(1)上のセンセルのアレイに近づくように、両方の圧縮性誘電体層(12及び22)が圧縮される。
【0018】
図6A、6B、及び7は、圧縮性誘電体層(12)によってセンセル(23)及びFPCB(1)から隔てられた変形可能な誘電体フィルム(11)上に配置された導電性材料又は膜からなる導電性ターゲット(6)のアレイを有する多重化誘導触覚センサを示している。各センセル(23)が、該センセルより大きい又は該センセルとほぼ同じ大きさのコンタクト領域を持った対応するターゲット(6)と関連付けられ、それによって覆われる。外部物体(例えば人の指など)がターゲットのアレイの表面に触れ、それに対して機械的な力を印加するとき、圧縮性誘電体層(12)が縮み、ターゲット(6)のうち接触領域にある1つ以上が、それらがそれぞれ覆う対応するセンセルに近づくよう移動する。それらのターゲットとそれらの対応するセンセルとの間の距離の減少が、それらのセンセルの各々の駆動コイルとセンスコイルとの間の誘導結合係数を減少させ、それが、センスコイルにかかる誘導AC電圧を減少させる。位置及び力を測定するためのこのAC電圧変化の検出は、上で既に説明したようにして遂行され得る。
【0019】
図8A及び8Bは、誘電体フィルム(11)上に配置された導電性ターゲット(6)を有する多重化誘導触覚センサの一実装を示しており、センセル(23)のアレイが、FPCB(1)の片面又は両面に形成される。上にターゲット(6)が配置された変形可能な誘電体フィルム(11)とセンセル(23)との間に、第1の圧縮性誘電体層(12)が配置される。導電性シールド層(25)とセンセル(23)との間に第2の圧縮性誘電体層(22)が配置される。
【0020】
図9は、駆動コイル(2)のアレイとセンスコイル(3)のアレイとが圧縮性誘電体層(12)によって隔てられる一実装を示している。各センセル(23)内の駆動コイル(2)及びセンスコイル(3)が、別々の両面FPCB(16及び17)上に配置される。これら2つのFPCBが圧縮性誘電体層(12)によって隔てられる。外部物体がいずれかのFPCB(16又は17)の表面に触れて、法線方向の力を印加すると、圧縮可能な誘電体層(12)が圧縮されて、センスコイル(3)のうちの1つ以上がそれらの対応する駆動コイル(2)に近づくように移動し、結果として、影響を受けたセンセルのセンスコイルと駆動コイルとの間の誘導結合係数が増加することになる。センスコイルにかかる誘導AC電圧が増加し、上で既に説明したようにして触覚センサ信号として検出されることになる。
【0021】
図10は、電子回路が付随した多重化誘導触覚センサのシステム図である。触覚センサアレイコントローラ(30)が、アナログデマルチプレクサ(5)を制御して、センセル行を順にAC定電流源で駆動する。アクティブにされる行ごとに、コントローラは、アナログマルチプレクサ(7)を制御して、ADC(10)によるデジタルドメインへの変換及び処理のために各センセル列からのセンシング信号(誘導AC電圧)を増幅器(8)及び振幅復調器(9)に送る。変換されたデータは、二次元行列を形成するようにコントローラのメモリに格納され、走査された行及び列が行列のx座標及びy座標として使用される。この行列は、触覚センサアレイに印加された力の分布を表すものである。データは、コントローラによって前処理され、次いで、例えばUSB、I2Cなどのデータ通信手段を介して、又はワイヤレスでブルートゥース(登録商標)(BT)若しくはWIFIなどを介して、アプリケーションのシステムホストコンピュータに転送されることができる。
【0022】
図11A及び11Bは、駆動コイル及びセンスコイルの双方で、隣接し合う(行内又は列内で隣接し合う)コイルが反対方向(矢印によって示すように時計回り又は反時計回り)に巻かれた、8×8アレイのセンセル(23)を示している。この交互の巻線方向は、特に、多数のセンセル行及び列を有する大きな触覚センサアレイで、直列接続された駆動コイル及び直列接続されたセンスコイルによる環境からの電磁雑音の拾い上げを低減させる助けとなる。雑音電圧の拾い上げは、巻線方向を交互にすることによって実質的に相殺される。
【0023】
図12は、密に結合された駆動コイル及びセンスコイルを有し、且つ全ての隣接し合う(行内又は列内で隣接し合う)コイルが反対方向に巻かれた、両面PCB上に実装されたセンセルの4×4アレイを示している。コイルトレースは、フレキシブル又はリジッドPCBの一方側にのみ存在し、PCBの他方側は相互接続にのみ使用される。しかしながら、これらのコイルは、同じ方向(時計回り又は反時計回りのいずれか)に巻かれてもよい。
【0024】
図13は、各行内及び各列内の隣接し合うコイルについて交互のコイル巻線方向を有するコイルトレースを走らせるために、PCBの頂面及び底面の両方を使用するフラットコイルアレイ設計パターンを示している。この実装は、全ての隣接し合うコイルを反対方向に巻いて、限られたPCBスペース内で可能な巻数を最大化する助けとなる。
【0025】
図14は、
図13の両面PCB上でのコイルアレイ設計の頂面トレース及び底面トレースのパターンを示している。この設計パターンを行方向及び列方向の両方に沿って繰り返すことにより、任意のサイズのセンセルアレイを設計することができる。
【0026】
図15A、15B、16A、及び16Bは、法線方向の力がz軸にあり、表面方向の力がx軸及びy軸それぞれにあるとして、印加された機械的な力を三軸(x,y,z)で検知することができる誘導多重化触覚センサを示している。八辺の導電性ターゲット(20)が、4つのセンセル(23)のグループに付随している。ターゲット(20)とセンセル(23)との間にエラストマ層(12)が配置されている。導電性ターゲット(20)の各々が、角が切り取られた正方形の形状を有する。角を切り取ることは、隣接するターゲットに対するx軸及びy軸における移動を可能にする。各ターゲット(20)が、該ターゲットが付随する4つのセンセル(23)をカバーする。
図16Aに示すように、ターゲットのアレイが、エラストマ材料(12)の層に埋め込まれる。導電性ターゲットを覆うエラストマ層(21)の頂面は、表面摩擦を増加させるために意図的に粗くされてもよい。
【0027】
ターゲットに対して印加する外力がないと、ターゲット(20)は、S1乃至S4と表記した4つの関連センセル(23)の各々の半分を覆う(破線で描いたターゲットを参照)。z軸及びx軸の正方向の力がターゲット(20)に印加されるとき、エラストマ層(12)が圧縮されてゆがめられ、ターゲット(20)がz軸及びx軸においてそれぞれ距離dz及びdxだけ移動する(実線で描いたターゲットを参照)。センセルS1、S2、S3、及びS4の誘導AC電圧が、それぞれ、V1、V2、V3、V4であると仮定する。各センスコイルによる誘導電圧は、以下のように記述されることができる:
【数1】
ここで、ki(x,y,z)及びk(x,y,z)は、ターゲット位置の関数である誘導結合係数であり、Vsは、駆動コイルに係るAC電圧である。x、y、zに関してこれらの結合係数関数の微分をとることにより、以下を得る:
【数2】
dkx=(dk1-dk2-dk3+dk4)、dky=(dk1+dk2-dk3-dk4)及びdkz=(dk1+dk2+dk3+dk4)を定義し、さらに次のように定義する:
【数3】
なお、dVxはdxに比例し、dVyはdyに比例し、dVzはdzに比例する。さらに、使用されるエラストマの特性であるx軸方向に印加された力の関数としてのx軸変位xを記述する関数x=g
x(Fx)を用いて、以下を得る:
【数4】
そして、同様に以下を得る:
【数5】
そのようにして、dVx、dVy及びdVzを、三軸の力dFx、dFy及びdFzの測定として使用することができる。上述のセンセルアレイを用いた触覚センサは、三軸で、すなわち、法線方向(z軸)及び表面方向(x軸及びy軸)で力を検知することができる。
【0028】
幾つかの特徴、態様、実施形態、及び実装を説明してきた。そうとはいえ、理解されることには、ここに記載された発明概念の範囲から逸脱することなく、広範で多様な変更及び組み合わせが為され得る。従って、それらの変更及び組み合わせは、以下の請求項の範囲内である。
【国際調査報告】