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特表2022-519782交番極性磁場によってがん細胞を治療するシステム、および方法
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  • 特表-交番極性磁場によってがん細胞を治療するシステム、および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】交番極性磁場によってがん細胞を治療するシステム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/04 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
A61N2/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569261
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 US2020017365
(87)【国際公開番号】W WO2020163824
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/802,685
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/784,239
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ベルクロ
(71)【出願人】
【識別番号】521353528
【氏名又は名称】ヴィヴェーク・ケー・シャルマ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェーク・ケー・シャルマ
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA05
4C106AA06
4C106BB25
4C106CC12
4C106CC14
4C106FF06
4C106FF12
4C106FF16
(57)【要約】
0.5kHz~500kHzの周波数および0.5mT~5mTのフィールド強度を有するAP磁場を、がんまたは他の急速に分裂する細胞を有する標的身体領域に印加することを含む、がん細胞および他の急速に分裂する細胞を破壊または抑制するためのシステムおよび方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の標的身体領域におけるがん細胞を治療する方法であって、
交番極性(AP)磁場生成装置を前記標的身体領域に結合すること、並びに
前記磁場生成装置を使用して、50kHz~500kHzの周波数および0.05mT~5mTのフィールド強度を有するAP磁場を前記標的身体領域に印加すること、
を含み、
前記AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼして、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止のうちの少なくとも一つを達成する、方法。
【請求項2】
電磁場生成装置を前記標的身体領域に結合することは、一つ以上のAP電磁コイルを患者の標的身体領域に結合することを含み、
前記一つ以上のAP電磁コイルは、電源およびコントローラに結合してAP磁場の周波数およびフィールド強度を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記AP電磁場発生装置を前記患者の標的身体領域に結合することは、保持要素を使用して前記AP電磁場発生装置を前記標的身体領域に近接させるように維持ことを含み、
前記保持要素は、服装および包帯から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記がんは、乳がんであり、
前記保持要素は、ブラ、シャツおよびベストから選択されるウェアラブル服装である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記がんは、肺がん、肺カルチノイド腫瘍、胸腺悪性腫瘍、気管腫瘍、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、結腸がんおよび直腸がんから選択され、
前記保持要素は、ブラ、シャツ、ベストおよびジャケットから選択されるウェアラブル服装である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記がんは、前立腺がん、卵巣がん、結腸がんおよび直腸がんから選択される下半身のがんであり、
前記保持要素は、下着である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記がんは、皮膚がんであり、
前記保持要素は、粘着性包帯および非粘着性包帯のうちの一つである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記がんは、喉がん、甲状腺がん、口腔がん、鼻がんおよび唾液腺がんのうちの一つであり、
前記保持要素は、ネックカフ、ネックカラーおよびスカーフから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
抗がん薬物、放射線療法およびTTF療法から選択される少なくとも一つの追加の抗がん療法を患者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗がん薬物は、化学療法薬物、ホルモン療法薬物、標的療法薬物、免疫療法および血管新生抑制薬物から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つの追加の抗がん療法は、
AP磁場が標的身体領域に印加されていない場合に投与される用量よりも低い用量、および
AP磁場が標的身体領域に印加されていない場合に治療が投与される頻度よりも減少した投与頻度
のうちの一つ以上で、患者に投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記AP磁場の印加が、前記少なくとも一つの追加の抗がん療法の少なくとも一つの副作用を減少する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
AP磁場を標的身体領域に印加する前に、標的身体領域の少なくとも一部にイメージングプロシージャを実行することをさらに含み、
前記イメージングは、MRIシステム、CTスキャンシステム、PETスキャンシステム、またはX線システムから選択される一つ以上のイメージングシステムを用いて実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記電磁場生成装置コイルを標的身体領域に結合することは、複数のコイルを標的身体領域に結合することを含み、
前記複数のコイルにおける各コイルは、標的身体領域に所望のAP磁場分布を印加するように配向されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
電磁場発生装置コイルを標的身体領域に結合することは、複数のコイルを標的身体領域に結合することを含み、
前記方法は、AP磁場を印加することを活性化するように、複数のコイルから一つ以上のコイルを選択することをさらに含み、
前記AP磁場を標的身体領域に印加することは、選択された一つ以上のコイルを使用してAP磁場を標的身体領域に印加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のコイルから一つ以上のコイルを選択することは、MRIスキャン、CTスキャン、PETスキャンおよびX線から選択されるイメージングプロシージャの結果に基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のコイルから一つ以上のコイルを選択することは、がん細胞に実行する化学試験および細胞生検の顕微鏡分析から選択されるがん細胞の病理解析に基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記AP磁場を標的身体領域に印加することは、
第1の治療期間にわたって、前記AP磁場を連続的に標的身体領域に印加すること、
前記AP磁場が標的身体領域に印加されているオン時間期間とその後の前記AP磁場が標的身体領域に印加されていないオフ時間期間とが交互する第2の治療期間にわたって、前記AP磁場を断続的に標的身体領域に印加すること、
患者の概日リズムに基づいて、一つ以上の概日治療期間にわたって、AP磁場を断続的に印加すること、および
日中の定義された時間に、一つ以上の第3の治療期間にわたって、AP磁場を断続的に印加すること、
のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記AP磁場を標的身体領域に印加することは、
0.5kHz~500kHzの単一周波数を有するAP磁場を標的身体領域に印加すること、
定義されたパターンで変動する0.5kHz~500kHzの周波数を有する定義された時間期間にわたってAP磁場を印加すること、および
0.5kHz~500kHzの多重同時周波数を有するAP磁場を印加すること、
のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記定義されたパターンで変動する0.5kHz~500kHzの周波数を有する定義された時間期間にわたってAP磁場を印加することは、
定義された速度で周波数がランダムに変化するAP磁場を印加すること、
周波数が0.5kHz~500kHz範囲内の一つ以上の範囲においてガウス分布で変動するAP磁場を印加すること、および
周波数が0.5kHz~500kHz範囲内の一つ以上の範囲において非ガウス分布で変動するAP磁場を印加すること、
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記AP磁場を標的身体領域に印加することは、
患者を治療する外科処置の前、
患者を治療する外科処置中、
患者を治療する外科処置の後、
患者を治療する放射線治療の前、
患者を治療する放射線治療中、および
患者を治療する放射線治療の後、
のうちの一つで実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記AP磁場を標的身体領域に印加する段階において、AP磁場への暴露から少なくとも一つの非標的身体領域をシールドする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
患者の標的身体領域におけるがん細胞を治療するシステムであって、
標的身体領域に結合する少なくとも一つの電磁コイル、
電力を前記電磁コイルに提供する電源、並びに
少なくとも一つの電磁コイルおよび電源を制御し、0.5kHz~500kHzの周波数および0.05mT~5mTのフィールド強度を有するAP磁場を生成して標的身体領域に印加するコントローラ、
を有し、
前記AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、システム。
【請求項24】
前記AP磁場が標的身体領域に印加される間において、電磁コイルは、保持要素によって標的身体領域に近接するように維持されており、
前記保持要素は、服装および包帯から選択される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
患者の身体の標的身体領域におけるがん細胞を治療するシステムであって、
標的身体領域に結合する少なくとも一つの電磁コイル、並びに
前記少なくとも一つの電磁コイルを制御し、0.5kHz~500kHzの周波数および0.05mT~5mTのフィールド強度を有する交番極性(AP)磁場を生成して標的身体領域に印加するコントローラ、
を有し、
前記AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、システム。
【請求項26】
前記少なくとも一つの電磁コイルは、保持要素によって標的身体領域に結合され、
前記保持要素は、前記電磁コイルを標的身体領域に対して所望の位置に維持するように適合され、
前記保持要素は、服装および包帯から選択される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記少なくとも一つの電磁コイルは、複数の電磁コイルを有し、
前記保持要素は、複数の電磁コイルを乳房組織に対して所望の位置に維持するように適合されたブラを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記コントローラは、タイミング制御モジュールを有し、
前記タイミング制御モジュールは、
第1の治療期間にわたって、AP磁場を連続的に標的身体領域に印加すること、
AP磁場が標的身体領域に印加されているオン時間期間とその後のAP磁場が標的身体領域に印加されていないオフ時間期間とが交互する第2の治療期間にわたって、AP磁場を断続的に標的身体領域に印加すること、
患者の概日リズムに基づいて、一つ以上の概日治療期間にわたって、AP磁場を断続的に印加すること、および
日中の定義された時間に、一つ以上の第3の治療期間にわたって、AP磁場を断続的に印加すること、
のうちの少なく一つことを実行させる一つ以上の電磁コイルを制御する、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記コントローラは、周波数制御モジュールを有し、
前記周波数制御モジュールは、
0.5kHz~500kHzの単一周波数を有するAP磁場を標的身体領域に印加すること、
定義されたパターンで変動する0.5kHz~500kHzの周波数を有するAP磁場を印加すること、
0.5kHz~500kHzの多重同時周波数を有するAP磁場を印加すること、および
第1の下限と第1の上限との間で磁場周波数を変動させる第1の可変AP磁場分布と、第2の下限と第2の上限との間で磁場周波数を変動させる第2の可変AP磁場分布とを有する二峰性の磁場周波数分布を含むAP磁場を印加すること、
のうちの少なく一つことを実行させる一つ以上の電磁コイルを制御する、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記周波数制御モジュールは、
ランダムに変動する0.5kHz~500kHzの周波数、
0.5kHz~500kHz範囲内の一つ以上の範囲においてガウス分布で変動する周波数、および
0.5kHz~500kHz範囲内の一つ以上の範囲において非ガウス分布で変動する周波数、
のうちの少なくとも一つを有するAP磁場を印加するように一つ以上の電磁コイルをさらに制御する、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記少なくとも一つの電磁コイル、前記保持要素、前記電源および前記コントローラは、それぞれ、ユーザーによって着用可能であり、
患者が静止していない間にがん細胞の治療を提供できる動的治療システムを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項32】
前記AP磁場は、二峰性の磁場周波数分布を含み、
前記二峰性の磁場周波数分布は、0.5kHz~500kHzの間にある可変磁場周波数および0.05mT~5mTのフィールド強度を有する第1の可変AP磁場分布と、5Hz~500Hzの間にある可変磁場周波数および0.5mT~5mTのフィールド強度を有する第2の可変AP磁場とを有する、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年2月7日に出願された米国仮出願第62/802,689号の優先権を主張し、その全部の内容を参照によって本願に組み込む。
【0002】
本発明は、がん細胞などの急速に増殖または分裂する細胞を治療すること、より具体的には、定義された特性を有する交番磁場を患者身体の標的部位に印加することによって急速に分裂する細胞を選択的に抑制または破壊するためのシステムおよび方法にかかわる。本発明のいくつかの実施形態は、磁場を標的身体部位に印加して急速に分裂する細胞を抑制または破壊することにより、非静止の患者に動的療法(ambulatory therapy)を提供することができるウェアラブルシステムを提供する。
【背景技術】
【0003】
細胞分裂は、すべての生命システムにおける生殖プロセスであり、生命システムは、細菌や原生動物などの単純な単細胞生物だけでなく、藻類、植物、動物などのより複雑な生物(ヒトを含む)を含むが、これらに限定されない。細胞分裂周期は、細胞のDNAの複製につながる細胞内の一連のイベントにかかわり、複製されたDNA配列の一つが2つの娘細胞のそれぞれに送られます。原核細胞は、囲まれた細胞核を欠き、二分裂(Fission)として知られる細胞分裂プロセスによって生殖する単細胞生物である。囲まれた細胞核を持つより複雑な生物は真核生物(eukaryotes)と呼ばれ、その細胞は間期(interphase)、有糸分裂(mitosis)、細胞質分裂(cytokinesis)として知られる期間(period)にかかる3部の細胞分裂プロセスによって無性生殖する。より複雑な生物の性細胞(すなわち、卵子と精子)の生殖では、有糸分裂は減数分裂(meiosis)に置き換えられる。
【0004】
間期の間において、親細胞は、有糸分裂に必要な栄養素や他の成分を生成し、DNAは、ゆるく詰められたクロマチンとして複製される。有糸分裂は、複製されたDNAが真核細胞の細胞核へ分離してそれぞれ複製されたDNAの完全なコピーを有する2つの細胞核となることにかかわる。細胞質分裂では、細胞質(cytoplasm)と、細胞小器官(organelles)と、細胞膜(cell membrane)とが分裂され、ほぼ同じサイズの2つの娘細胞が形成される。
【0005】
有糸分裂のプロセスは、さらに前期(prophase)、前中期(prometaphase)、中期(metaphase)、後期(anaphase)、および終期(telophase)の段階に分けられる。前期では、間期の間に複製されたDNAは、セントロメアによって結合された2つの染色分体(Chromatid)を持つ離散した長くて薄い染色体(chromosome)に凝縮する。各細胞には2つの中心小体(centriole)を有し、それらは前期の間に細胞の反対の極に移動する。微小管(microtubule)は、2つの中心小体の近くから細胞の中心に向かって放射状に広がり、かつ染色分体まで伸びて2つの染色分体を別々の娘染色分体(daughter chromatid)に分離するのに役立つものが含まれる。中期において、染色体は細胞の赤道に向かって移動し、中期面(または赤道面)で整列する。娘染色分体は、微小管紡錘体繊維に沿って細胞の反対の極にあるセントロメアに向かって移動することにより、後期の早い段階(early anaphase)の間に赤道で互いに分離する。これは、細胞を伸長させるプロセスである。後期の遅い段階(late anaphase)の間において、娘染色体は、それぞれそれらの細胞の反対の極に到達し、細胞膜は、2つの娘細胞を形成するように収縮(pinch)し始める。これは、細胞質分裂または娘細胞分離プロセスの一部である。終期の間において、微小管が伸び続け、分離された娘染色体のそれぞれの周りに新しい核膜(nuclear envelope)が形成され、娘染色体のそれぞれが同一の染色体のセットを持ち、また、細胞質分裂は、2つの娘細胞をさらに収縮して別々の実体になるように進行する。終期の終わりまでに、微小管紡錘体は消える。最後に、娘細胞は完全に分離し、細胞質分裂は完成する。
【0006】
正常な細胞に比べて、がん細胞および一部の非がん性の細胞(例えば、非悪性腫瘍)は、制御されない方法で増殖または生長する。そのような腫瘍や細胞は余分なスペースを占める以外に、近くの正常な細胞にも損傷を与える可能性がある。がん細胞はまた、転移して体内の他の場所に移り、そこで過剰増殖を続け、新しい腫瘍を形成する可能性がある。腫瘍およびがん細胞の急速な生長は、その細胞分裂の速度が正常な細胞と比較して速いことに起因する。
【0007】
多くの効果的な抗がんおよび抗腫瘍療法は、分裂プロセスにある細胞が非分裂細胞よりも放射線や多くの薬物に敏感であるという事実に基づくものである。腫瘍細胞は、正常な細胞よりもはるかに頻繁的に分裂するため、腫瘍細胞が分裂するうちに腫瘍細胞に作用する療法を使用することにより、分裂頻度のより低い正常な細胞に影響を与えずに、腫瘍細胞に選択的に損傷または破壊することは可能である。しかし、多くのタイプのがん細胞は、正常な細胞よりも放射線および/または化学療法剤に対して感受性がわずかにだけ高いので、正常な細胞に影響を与えずに腫瘍細胞に選択的に影響を与えることが常に可能とは限らない。その結果、多くの放射線および化学療法剤は、腫瘍細胞だけでなく正常な細胞にも重大な損傷を与え、「成功的」な治療でさえ、患者に重大な負担(例えば、痛み、瘢痕、臓器損傷、血液損傷、免疫系機能障害)につながる。
【0008】
放射線および化学療法剤以外、超音波および電気療法を含むがこれらに限定されておらず、異なる作用様式(mode of action)にかかわる他の療法が腫瘍細胞治療に使用されている。電流と電場は、医学的目的で何十年も使用されている。
【0009】
電気療法の一つのタイプとして、2つ以上の導電性電極によって分離された体組織に電流を印加することにかかる。このタイプの療法は、例えば、筋肉または神経組織を刺激または興奮させるために(例えば、ペースメーカー、除細動器(defibrillator)、神経刺激器(neurostimulator))、または所望の体組織回路内で熱を生成するために(例えば、コラーゲン再構築(remodel collagen)または組織除去(ablate tissue)のための温熱療法)使用できる。導電性電極にかかる電気療法は、広範囲の周波数(例えば、1Hz未満から1MHz以上)での直流または交流にかかる可能性がある。電流からのエネルギーは、組織の導電特性(例えば、抵抗、静電容量)に基づいて組織に伝送される。これらの性質は腫瘍と正常な細胞の両方で類似しているため、このような治療法は腫瘍と正常な細胞の両方に同じように影響する(例えば、電流経路内にある場合はその両方を熱で破壊する)。より低い周波数(典型的には20kHz以下)では、導電性電極の使用は、筋肉または神経組織を刺激して筋肉または神経繊維を活性化するために使用できる。多くの電気療法で使用される周波数(例えば、数十kHz~MHz)では、導電性電極による刺激は刺激信号として速すぎ、組織を通って伝播することはできず、信号は「短絡」する。
【0010】
電気エネルギーの他の医学的使用は、高周波電気エネルギーを放射的または誘導的に標的組織に伝送するための絶縁電極の使用にかかる。例えば、無線周波数(radio frequency、RF)またはマイクロ波エネルギーは、空気または治療される組織から電極を分離する別の電気絶縁材料を介して組織に放射的に適用できる。このタイプの電気エネルギーが生体組織(living tissue)に与える影響は、それらの導電特性ではなく、組織の誘電性質に基づく。

ここ最近、絶縁電極は、がん細胞および他の急速に増殖する細胞を治療するために、50~500kHzの周波数および約10~1000V/mのフィールド強度のAC電場を前記のような細胞を含む標的身体領域に印加することで使用されている。このような療法は、しばしばTC(「腫瘍診療」(tumor curing))フィールドまたはTTF(「腫瘍治療フィールド」(tumor treating field))療法と呼ばれる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献1において、電場を生成する絶縁電極を使用して急速に増殖する細胞を破壊するための方法および装置が開示される。50~500kHzの電場周波数では、分裂する細胞の細胞膜は、前記分裂する細胞の2つの娘細胞を分離する分裂溝(cleavage furrow)に電気力線(electric field line)を集中させるように作用する。分裂溝での高密度磁場は、細胞内の極性化または帯電した細胞内成分を分裂溝での高密度力線に向かって移動させ、最終的に分裂溝での細胞膜を破裂させ、分裂する娘細胞を破壊する。
【0011】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献2において、放射線または化学療法薬物など他のがん療法とともに電場を印加することにつながる、がん細胞を殺すまたは破壊する方法が開示される。電場は、特許文献1に開示されるようなフィールドであってもよい。
【0012】
がん細胞を破壊するための電場の使用は、ある周波数および電場強度では効果的であるが、多くの実務面で制限されている。安全で一貫した電場強度を提供するために、特許文献1および特許文献2に開示されているようなシステムの電極は、治療の間に患者の組織(例えば、皮膚)と密接に接触する必要がある。患者の皮膚との良好な接触を確保するために、電極に結合される皮膚からすべての毛を剃る必要がある場合がある。その療法は長い時間期間に伝送する可能性があるため、電極は電極接触箇所で皮膚の炎症(skin irritation)を引き起こすことがよくある。例えば、TTF療法の最近のある研究では、患者の四十三パーセント(43%)が何らかの皮膚の炎症を経験し、そのうち1%が重度の皮膚の炎症が報告された。比較的高い皮膚の炎症または痛みの発生率は、敏感な身体部位(例えば、乳房組織)での療法が妨げられる可能性がある。TTF療法には、比較的高い電圧の使用にもかかる。このため、患者は、水にさらされるリスクのある日常の活動(例えば、シャワー、運動(発汗)、さらには雨にさらされる)を行う際に注意する必要がある。
【0013】
患者の皮膚と直接接触する電極の使用は、電極に隣接する組織がやけどされまたは加熱されるリスクがある。このリスク(および汚れ、油などの蓄積)のせいで、TTF療法システムの電極は典通常に頻繁に交換する必要がある(例えば、週に2回)。頭皮にTTF電極を装着している患者は、一日24時間電極を装着していることに関連する頭痛が報告された。
【0014】
TTF電極は、訓練を受けたユーザー(例えば、技術者、医師)によって配置する必要がある。治療が高度に局所的(すなわち、電極間)であるため、がん/腫瘍の正確な位置づけを最初に実行する必要があり、電極を通過する電場を生成するように電極を高精度で配置する必要がある。電極が最適な配置からわずかに外れると、治療は次善の結果となる場合がある。
【0015】
さらに、特許文献1は動的実施形態(すなわち、特許において、歩行、運転、買い物などの少なくともいくつかの通常の非静止生活活動を実行する際にシステムを装着および使用することができる実施形態)を開示しているが、実際には、適切な電場(例えば、少なくとも10V/m)を生成するための電力要件(例えば、高電圧)は、患者によって運ばれる必要があり、電極に結合する必要があるかさ張りおよび/または重い電子ボックスとなる。ある臨床研究により、これら煩わしいTTF電子ボックスを運ばれる患者の転倒率が比較的高いことが示された。
【0016】
TTFシステムに対するこれらの制限を考慮し、がんまたは他の急速に分裂する細胞を破壊するために、より長い持続期間適用できるより安全な療法が必要である。電極に関連する多くの問題もまた、皮膚の痛みのリスクを回避する新しい療法の必要性、または皮膚または他の組織との継続的な接触の必要性を引き起こす。システムの有効性は、急速に分裂するがん細胞に電場を印加できる時間に依存するため、真に動的かつ長持続期間の治療を可能にするには、より小さく、より軽く、より扱いやすいシステムが必要である。最後に、セットアップのために訓練を受けた患者や臨床医を必要としない療法システムが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,868,289号
【特許文献2】米国特許第8,019,414号
【発明の概要】
【0018】
一つの局面において、本発明は、磁場生成装置を患者の身体の標的身体領域に結合すること、並びに、磁場生成装置を使用して50~500kHzの周波数および0.05~5mTの磁場強度を有する交番極性(AP)磁場を標的身体領域に印加することを含み、前記AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、患者の身体の標的身体領域におけるがん細胞を治療する方法を提供する。
【0019】
もう一つの局面において、本発明は、患者の身体の標的身体領域に結合する少なくとも一つの交番極性(AP)電磁コイルと、電力を前記少なくとも一つのAP電磁コイルに提供する電源と、少なくとも一つのAP電磁コイルおよび電源を制御し0.5~500kHzの周波数および0.05~5mTのフィールド強度を有するAP磁場を生成して標的身体領域に印加するコントローラと、を有し、前記AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、患者の身体の標的身体領域におけるがん細胞を治療するシステムを提供する。
【0020】
もう一つの局面において、本発明は、患者の身体の標的身体領域に結合する少なくとも一つの交番極性(AP)電磁コイルと、少なくとも一つのAP電磁コイルが結合されて少なくとも一つのAP電磁コイルを標的治療領域に対する所望の位置に保持する保持要素と、電力を前記少なくとも一つのAP電磁コイルに提供する電源と、少なくとも一つのAP電磁コイルおよび電源を制御し0.5~500kHzの周波数および0.05~5mTのフィールド強度を有するAP磁場を生成して標的身体領域に印加するコントローラと、を有し、前記AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、患者の身体の標的身体領域におけるがん細胞を治療するシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】細胞を選択的に破壊するための一実施形態による、患者身体の標的領域に交番極性(alternating polarity、AP)磁場を提供するためのシステムの概略ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による、乳房組織にAP磁場を提供するための一つ以上のAP電磁コイルを有するブラを含む保持要素の正面図である。
図3】本発明の一実施形態による、脳組織にAP磁場を提供するための一つ以上のAP電磁コイルを有する帽子を含む保持要素の正面図である。
図4】本発明の一実施形態による、胸部または腹部組織にAP磁場を提供するための一つ以上のAP電磁コイルを有するシャツを含む保持要素の正面図である。
図5】本発明の一実施形態による、AP磁場を患者身体の標的領域に提供するための一つ以上のAP電磁コイルを有するネックカフまたはカラーを含む保持要素の正面図である。
図6】本発明の一実施形態による、AP磁場を患者身体の標的領域に提供するための一つ以上のAP電磁コイルを有する包帯を含む保持要素の正面図である。
図7A】24時間培養された未治療のB16F10マウスメラノーマ細胞の10倍の倍率での写真である。
図7B】本発明の一実施形態による、AP磁場に24時間暴露されたB16F10マウスメラノーマ細胞の写真である。
図8】未治療の対照群と比較し、AP磁場で24時間治療したB16F10マウスメラノーマ細胞の細胞数の減少を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の例示的な実施形態は、限定的ではなく例示的である図面に示されている。技術の範囲または以下の請求項に対する制限は、図面に示され、ここで説明されている例から暗示または推測されない。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明は、急速に分裂する細胞の増殖を破壊または抑制するために、特定された周波数での交番極性(AP)磁場を使用し、標的身体領域にがんまたは他の急速に分裂する細胞(例えば、細菌感染)を有する患者を治療するための装置および方法を提供する。急速に分裂する細胞を特徴とするがんまたは他の疾患を有する患者を治療するための電場(TTFシステムを含むが、これに限定されない)の使用には、多くの制限があり、これらの制限により、一部の患者の治療を、困難や、効果がないもの、痛みを伴うもの、または安全でないものにすることがある。本発明の実施形態は、AP磁場を使用することにより、一つ以上のこれらの制限を克服し、急速に分裂する細胞または過剰増殖する細胞を治療する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「磁場腫瘍(magnetic field tumor、すなわち、MFT)療法」および「MFTT」という用語は、がんまたは他の急速に分裂する細胞を、特定された周波数および磁場強度のAP磁場で治療し、そのような細胞の増殖を破壊または抑制するためのシステムおよび方法を指す。様々な実施形態において、本発明は、喉がん(throat cancer)、甲状腺がん、口腔がん、鼻がん、唾液腺がん、肺がん、肺カルチノイド腫瘍、喉がん、甲状腺がん、口腔がん、鼻がん、唾液腺がん、肺がん、肺カルチノイド腫瘍、胸腺悪性腫瘍、気管腫瘍、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、卵巣がん、結腸がんおよび直腸がんなどのうちの一つ以上のがんを治療するために使用できる。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による、MFT療法システム100のある構成要素を示す簡略化された概略ブロック図である。MFT療法システム100は、電気信号を生成して一つ以上の交番極性(AP)電磁コイル120を励磁し、特定された周波数およびフィールド強度特性を有するAP磁場を生成する交番極性磁場生成装置(APMFG、alternating polarity magnetic field generator)110を含む。一実施形態において、AP電磁コイル120は、標的身体領域内のがんまたは過剰増殖細胞の治療のために、患者の一つ以上の標的身体領域(例えば、胴体、乳房、頭部、首、咽喉)に係合することに適するサイズおよび形状を有してもよい。APMFG110によって生成されてAP電磁コイル120に印加される電気信号は、コントローラ130によって制御されており、コントローラ130は、APMFG110およびAP電磁コイル120によって生成される磁場のパラメータを特定し、システム100の機能および動作を制御する。インターフェース140は、ユーザーがプログラムするかコントローラ130と通信するかの治療パラメータを特定可能にするために、かつMFT療法システム100の動作および状態に関する情報をコントローラから受信するために、提供される。電源150は、MFT療法システム100に電力を供給する。電源150は、様々な既知の電源から選択でき、様々な実施形態において、使い捨てまたは充電式電池などの電池、または米国の標準的な120V、60Hzの電源コンセントなどのパワーソース、並びにAPMFG110、AP電磁コイル120、コントローラ130、およびインターフェース140のそれぞれについて、適切な電流および電圧で電力を調整するための回路を含んでもよい。
【0026】
コントローラ130は、APMFG110、AP電磁コイル120、およびインターフェース140の動作を指示および制御するための回路および他の部品(例えば、マイクロコントローラ、抵抗器、レジスタ、メモリ、ファームウェア、ソフトウェアなど)を含んでもよい。図1は、AP電磁コイル120が磁場生成装置から直接励磁される実施形態を示す。代替の実施形態(図示せず)において、コントローラ130は、一つ以上のAP電磁コイル120のそれぞれと直接通信し、それらの動作を全体的または部分的に制御することができる(例えば、各AP電磁コイル120を有効または無効にするスイッチによる)。
【0027】
コントローラ130は、一つまたは複数のAP電磁コイル120によって一つ以上の標的身体領域または組織に伝送されるMFT療法のタイミングを制御するためのタイミング制御モジュール112を含む。様々な実施形態において、タイミング制御モジュール112は、AP磁場発生器110およびAP電磁コイル120に、プログラムされた持続期間(programmed duration)にわたってMFT治療を提供でき、例えば、1~100時間または他の治療期間、あるいは複数の療法治療期間のタイミング、複数の療法治療期間の間のタイミングなど。例えば、タイミング制御モジュール112は、第1の周波数およびフィールド強度で、第1の時間期間(例えば、患者の起きている間)にわたって第1の治療を実現し、その後、治療が適用されない第2の時間期間を適用し、その後、第2の周波数および第2のフィールド強度による第2の治療を適用する第3の時間期間を有してもよい。また、タイミングモジュールは、患者に適用されるMFT療法の周波数またはフィールド強度の変化などの他の治療パラメータの変化のタイミングを制御することができる。
【0028】
周波数制御モジュール114は、一つまたは複数のAP電磁コイル120で、一つ以上の標的身体領域または組織に伝送されるAP磁場の周波数を制御する。周波数制御モジュール114は、0.5~500kHzのプログラムされた周波数で、AP磁場の周波数を制御することができる。いくつかの実施形態において、周波数制御モジュール114は、プログラムされた変化率で、または特定の周波数ステップ変化(step change)に従って、APMFG110およびAP電磁コイル120によって生成されたAP磁場への周波数変化を制御することができる。
【0029】
磁場強度制御モジュール116は、一つ以上の標的身体領域に印加されるAP磁場のフィールド強度を制御する。磁場強度制御モジュール116は、0.05~5mTのプログラムされた磁場強度でフィールド強度を制御することができ、かつフィールド強度のプログラムされた変化率(programmed rate of change)またはプログラムされたステップ変化に従ってフィールド強度の変化を制御することができる。
【0030】
コントローラ130は、タイミング制御モジュール112、周波数制御モジュール114、および磁場強度制御モジュール116の機能を達成するためのプログラミング論理(programming logic)、タイマー(timer)、および他の回路を含んでもよい。代替の実施形態で理解できるように、タイミング制御モジュール112、周波数制御モジュール114、及び磁場強度制御モジュール116の全部または一部の機能は、一つ以上のサブモジュールに組合せ、または全体としてコントローラ130によって実現してもよい。
【0031】
一実施形態において、インターフェース140は、ユーザーがコントローラ130からデータを入力または受信することを可能にするために、キーボードまたはボタンなどのユーザー入力を含んでもよい。さらなる実施形態(図示せず)において、インターフェース140は、コントローラ130内に位置でき、携帯電話、タブレット、または他のコンピューティングデバイスなどの別個のユーザーデバイス(図示せず)と通信し、MFT療法システム100をプログラムし、そこからデータを受信するためのトランシーバを含んでもよい(例えば、動作およびアラームステータスフラグ、プログラムされたパラメータ、治療時間など)。他の代替の実施形態(図示せず)において、インターフェース140は、省略されてもよく、またはAP磁場生成装置110、コントローラ130、およびインターフェース140の機能のいくつかまたはすべてを有する単一のユニットの一部として組み込まれてもよい。
【0032】
再び図1を参照すると、様々な実施形態において、APMFG110は、電気信号を提供し、一つ以上のAP電磁コイル120のそれぞれに、一つ以上の固定または可変AP周波数を有する磁場を生成させることができる。図1の簡略化された概略図では、ワンワイヤでAPMFG110に結合されるものとして示したが、完全な回路を提供するために、一般的には、AP電磁コイル120のそれぞれは、一対のワイヤ(図示せず)でAPMFG110に結合されることが理解できるべきである。固定周波数の実施形態において、APMFG110は、一つ以上のAP電磁コイル120のそれぞれに、定義されたデューティサイクルに従って連続か断続の単一周波数または複数周波数を有する磁場を生成させることができる(例えば、磁場がAP電磁コイル120から放出される間のプログラマブルオン時間(programmable on-time)を有し、その後、磁場が放出されない間のオフ時間(off-time)が続く)。APMFG110はまた、一つ以上のAP電磁コイル120に、正弦波、三角形、台形など様々な波形を有するAP磁場を生成させることができる。いくつかの実施形態において、APMFG110は、一つ以上のAP電磁コイル120に、あらかじめ定義された数を有する特定された第1の周波数の波形のAP磁場を生成させ、特定された第2の周波数(バーストモード)でこのパターンを繰り返すことができる。他の実施形態において、APMFG100は、一つ以上のAP電磁コイル120に、固定周波数または振幅変調と結合された周波数の組合せを使用する波形を有する磁場を生成させてもよい。
【0033】
固定であるか可変であるかにもかかわらず、各AP電磁コイル120によって生成されるAP磁場の周波数(または複数の周波数)は、約1MHz未満の周波数が好ましく、0.5~500kHzの範囲内の周波数がより好ましく、25~400kHzの範囲内の周波数がより好ましく、100~300kHzの範囲内の周波数がさらに好ましい。一実施形態において、MFT療法システム100は、少なくとも2つのAP電磁コイル120を含むことができ、AP電磁コイル120のそれぞれは、多数の周波数で標的身体領域または組織に磁場を提供するために、異なる周波数の範囲内の固定または可変周波数を有する。例えば、APMFT110は、第1の電気信号を生成し、第1のAP電磁コイル120に第1の固定周波数または第1の周波数範囲内の可変の第1の周波数を有するAP磁場を生成させることができ、また、第2の電気信号を生成し、第2のAP電磁コイル120に、第2の固定周波数または第2の周波数範囲内の可変の第2の周波数を有するAP磁場を生成させることができ、第1の周波数範囲と第2の周波数範囲の両方とも、0.5~500kHzの範囲内の範囲である。非限定的な例として、第1の範囲は、低周波数範囲(例えば、1~5kHz)であってもよく、第2の周波数範囲は、より高い周波数範囲(例えば、50kHz~300kHz)であってもよい。
【0034】
理論に拘束されることなく、0.5~500 kHzの範囲内の複数の周波数次範囲(sub-range)内のAP磁場は、急速に分裂する細胞の生殖サイクルのさまざまな態様に影響する可能性があり、このような態様のそれぞれは、0.5~500 kHzのより広い範囲内の特別の周波数次範囲内のAP磁場によってより強く影響を受ける可能性があると考えられる。例えば、超低周波AP磁場による血管新生の中断は、周波数50HzのAP磁場について報告されている(Monache et al.,“Inhibition of Angiogenesis Mediate by Extremely Low-Frequency Magnetic Fields(ELF-MFs),”PLOS One,8:11(2013年11月)。異なるタイプのがん細胞を含むがこれらに限定されなく、異なるタイプの細胞は、血管新生の中断のために異なる周波数が必要可能である。
【0035】
したがって、一実施形態において、二峰性の磁場周波数分布を有するMFT療法を標的身体領域に適用することができる。APMFT110は、第1の電気信号を生成し、第1のAP電磁コイル120に第1の可変AP磁場分布を生成させることができ、この第1の可変AP磁場分布は、周波数制御モジュール114によって定義される標的細胞群のように、第1の下限(例えば、0.5kHz)と第1の上限(例えば、5kHz)との間で、第1の時間期間(例えば、1秒間、1分間、10分間、1時間)にわたって磁場周波数を変動させて、第1の代謝プロセス(例えば、血管新生)を広く中断させる。また、APMFT110は、第2の電気信号を生成し、同じAP電磁コイル120または第2のAP電磁コイル120に第2の可変AP磁場分布を生成させることができ、この第2の可変AP磁場分布は、第2の下限(例えば、50kHz)と第2の上限(例えば、400kHz)との間で、第2の時間期間(例えば、1秒間、1分間、10分間、1時間)にわたって磁場周波数を変動させて、急速に分裂する細胞の第2の代謝プロセス(例:有糸分裂サイクル)を広く中断する。追加のコイルは、急速に分裂する細胞の生殖サイクルの別のさらなる態様を中断するために、異なる周波数または周波数範囲を有する異なる固定または可変周波数AP磁場を生成できる。代替の実施形態において、単一のAP電磁コイル120を使用し、2つの異なるAP周波数範囲内(例えば、第1の治療期間に対しては1~5kHzであり、その後、第2の治療期間に対しては50~400kHzである)のAP磁場を順次伝送することができる。
【0036】
可変周波数の実施形態において、変化する周波数を実現する多くの異なる方法が可能であり、ここであげた変動する周波数の特定実施形態は例示であり、限定することを意図するものではない。本開示を考慮し、追加の可変周波数の実施形態を実施できることが理解できるべきである。一実施形態において、磁場は、単一周波数を有するように生成でき、その単一周波数は、定義された周波数範囲時間期間内に、または所望の(例えば、プログラムされた)周波数変化率で、より低い周波数(例えば、50kHz)からより高い周波数(例えば、250kHz)まで均一な方法で変動する(すなわち、変動しない周波数の変化率)。もう一つの実施形態において、周波数は、周波数の階段状変化(stepwise change)または異なる範囲の変化などの不均一な方法で変化できる(例えば、周波数の変化率は、周波数の上限と下限の中間点の近くで最も高い)。別のさらなる実施形態において、周波数は連続または断続的に変動でき、可変周波数の期間は非可変周波数の期間と交替する。追加の実施形態において、2つの異なる周波数を有するフィールドを、標的身体領域に同時に印加することができる(例えば、単一のコイルまたは2つの異なるコイルによって放出)。多数(例えば、2つ以上)のコイルを提供することにより、所望の周波数分布(例えば、ランダム、ガウス、または非ガウス)を順次または同時に有するMFT療法を、一つ以上の標的領域に適用することができる。
【0037】
APMFG110からAP電磁コイル120への電気信号はまた、磁場強度制御モジュール116によって定義されるように、コイルによって生じるAP磁場のフィールド強度を定義する。本発明のMFT療法システム100は、比較的低い磁場強度を使用し、急速に増殖する細胞を破壊または損害できる。好ましくは、本発明のシステム100におけるMFT療法フィールドは、0.05~5mTの範囲内のフィールド強度などの5ミリテスラ(すなわち、5,000μT)未満のフィールド強度を有する。好ましい実施形態において、フィールド強度は、0.2~2mTの範囲内であり、より好ましくは、0.5~1.2mTの範囲内である。
【0038】
一実施形態において、磁場は、単一の変動しないフィールド強度を持つ場合がある。理論に拘束されることなく、異なる細胞サイズ(例えば、異なるタイプのがん)は、細胞分裂を破壊または抑制する最大の有効性のために異なるフィールド強度を必要とする可能性があると考えられる。しかしながら、そのような実施態様において、AP磁場は、例えば、タイミング制御モジュール112と磁場強度制御モジュール116によって定義されるように定義されたデューティサイクルに従って連続か断続的に単一の変動しないフィールド強度を有していてもよい。
【0039】
可変フィールド強度の実施形態において、周波数変化に関する上記の変形と同様に、フィールド強度を変動させる多くの異なる方法が想定できる。周波数と同様に、ここであげた変動するフィールド強度の特定実施形態は例示であり、限定ではない。本開示を考慮し、追加の可変フィールド強度の実施形態を(例えば、磁場強度制御モジュール116によって)実施できることが理解できるべきである。一実施形態において、磁場は、定義されたフィールド強度範囲期間内において下限(例えば、0.05mT)から上限(例えば、1mT)まで均一な方法(すなわち、変動しない変化率)で変動する磁場強度を有してもよい。もう一つの実施形態において、フィールド強度は、フィールド強度の階段状変化、または加速あるいは減速するフィールド強度変動に伴う掃引フィールド強度変動(swept field strength variation)などの不均一な方法で変動できる(例えば、フィールド強度の変化率は、フィールド強度範囲の上限と下限の近くで最も高い)。別のさらなる実施形態において、磁場強度は、連続的または断続的に変動でき、可変フィールド強度期間と非可変フィールド強度期間とが交替する。いくつかの実施形態において、異なるフィールド強度を有する2つの異なる周波数でのAP磁場のそれぞれは、標的身体領域に同時に印加することができる(例えば、2つの異なるAP電磁コイル120によって放出する)。多数のAP電磁コイル120を提供することにより、所望の周波数および磁場強度分布(例えば、ランダム、ガウス、または非ガウス)を有するMFT療法を、順次または同時に、標的身体領域に適用することができる。
【0040】
MFT療法は、分裂する細胞のみに作用するため、全体的な有効性が長い治療期間(例えば、数時間または数日、場合によっては数週間)に対応する。しかしながら、正常な(例えば、非がん性または非腫瘍性)細胞への損傷を最小限にするために、いくつかの実施形態において、治療はある期間ではしばらく中止される。これは、例えば、タイミング制御モジュール112によって定義されるように、定義された治療デューティサイクル(duty cycle)に従って、定義された交互するオン時間(例えば、1秒~24時間の時間期間内)およびオフ時間(例えば、1秒~24時間)の期間でMFT療法を継続的に提供することを含んでもよい。一実施形態において、オン時間およびオフ時間の期間は、1秒間~1週間、1秒間~24時間、1分間~12時間などの範囲内の時間期間であってもよい。そのような一つの例示的な実施形態において、MFT療法は、MFT療法フィールドを生成して10分間適用し、その後、治療が適用されない1分間が続くことにより、10:1のデューティサイクルで継続的に提供され、あらかじめ定義された合計治療持続期間(例えば、2週間)が完了するまでこのプロセスを繰り返す。もう一つの実施形態において、同じ10:1のデューティサイクルは、MFT治療フィールドを10時間印加し、その後、1時間療法を中止し、治療期間全体が完了するまでこのプロセスを繰り返すことによって投与される。
【0041】
もう一つの実施形態において、オン時間およびオフ時間の期間を含む定義された治療デューティサイクルに従ったMFT療法は、定義された治療持続期間(例えば、1時間、6時間、8時間、24時間)にわたって投与でき、その後、さらなる治療は適用されない。別のさらなる実施形態において、MFT療法は、患者の概日リズム(例えば、夜間または患者が眠っているときでは継続的に、また、朝、午後、または夕方などの日中の定義された期間の定義されたデューティサイクル)に従って投与できる。他のデューティサイクルおよび治療持続期間が使用でき、前述のように、治療は、一定または可変の磁場周波数およびフィールド強度にかかることが理解できるべきである。
【0042】
もう一つの実施形態において、MFT療法は、オン時間およびオフ時間の期間の定義された治療デューティサイクルに従って適用でき、磁場強度は、定義されたフィールド強度デューティサイクルに従って変動する。これは、例えば、4:1のフィールド強度デューティサイクルと組合せた10:1の治療デューティサイクルにかかる可能性がある。具体的な例として、MFT療法は、24時間の治療持続期間にわたって提供でき、10:1の治療デューティサイクルで、10分間にわたってAP磁場を標的身体領域に印加し、その後AP磁場が印加されない1分間が続く。10分間の治療期間内において、8分間は3.0~4.0mTの第1のフィールド強度範囲内の可変周波数治療にかかり、その後、0.5~1.5mTの第2のフィールド強度範囲内で2分間の治療を行い、4:1のフィールド強度デューティサイクルを提供する。
【0043】
代替の実施形態において、MFT療法フィールドは、患者の概日リズムに従って、または日中の特定の時間に従って印加できる。例えば、MFT治療フィールドは、昼間の間のみ標的身体領域に伝送でき;夜間のみ;食事の時間を除くすべての昼間;患者が運動する間を除き、すべての昼間(例えば、活動モニターによって検知);1日の特定の時間(例:午前9時~正午、および午後6時~午前5時)。これらの例は、例示のみを目的としており、記載から理解できるように、MFT治療フィールドの伝送は、患者にとって最も都合のよいある時間に治療を中止するように調整できるとともに、正常(すなわち、非急速に分裂する)細胞への損傷を最小限に抑えることができる。
【0044】
最大多数の磁場生成コイルは、磁力線が向けられた軸を有する磁場を生成するように構成されている。いくつかの実施形態において、多数のAP磁気コイル120は、標的身体領域の全体または一部などの関心のある領域に所望の磁場分布が生成されるように、空間的に整列させることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、MFTT療法を定義する一つ以上のパラメータ(例えば、周波数、フィールド強度、複数の利用可能なコイルの中での特定のコイルの選択)は、ある試験の結果に基づいて決められる。例えば、イメージングプロシージャ(imaging procedure)を実行し、標的の急速に分裂する細胞(例えば、がんまたは腫瘍細胞)のタイプおよび位置を識別できる。様々な実施形態において、前記イメージングプロシージャは、MRIシステム、CTスキャンシステム、PETスキャンシステムおよびX線システムのうちの一つ以上を使用するイメージングプロシージャであってもよい。
【0046】
医師などの医療提供者は、イメージングの結果(例えば、一つまたは複数の細胞のサイズ、細胞のタイプ、細胞の位置など)に基づいて、MFT療法の一つ以上のパラメータを選択して療法を適用することができ、例えば、一つまたは複数の磁場の周波数・複数の周波数、一つまたは複数のフィールド強度、一つ以上のコイルの位置づけ、コイルのサイズ、コイルの標的身体領域に対する所定位置を維持する保持要素のタイプ(例えば、服装のタイプ)、デューティサイクルまたはスケジュールなどを含むがこれらに限定されない。前述および他のパラメータはまた、他の試験、例えば、生検の顕微鏡分析、化学試験、遺伝子試験などのがん細胞の病理解析に基づいて選択できることが理解できるべきである。
【0047】
場合によって、MFTT療法の前のイメージングプロシージャの結果は、MFTT療法が向けられた標的身体領域を識別できる。標的身体領域の位置に基づいて、いくつかの実施形態において、磁気コイルを標的治療領域または組織に対する所望の位置に保持するために保持要素が必要となる場合がある。様々な保持要素を使用し、磁気コイルを患者身体の所望の標的領域に対する所望の位置に目立たないように確実に維持できる。例えば、ブラは、乳がん細胞の治療のための磁気コイルを収容するために使用できる。もう一つの例では、脳がんを治療するために、帽子を使用し、磁気コイルを所定位置に保持することができる。別のさらなる例では、ネックカフ、カラー、またはスカーフは、食道がんの治療のために一つ以上の磁気コイルを保持でき、シャツは、肺がんを治療するための一つ以上の磁気コイルを保持するために使用できる。もう一つの実施形態において、保持要素は、標的身体領域またはそれに隣接する皮膚に粘着できる粘着性包帯などの包帯であってもよい。これらの例は限定ではなく、例示的なものであり、他の様々なまたは追加の保持要素を標的組織の位置に応じて使用できることが理解できるべきである。磁気コイルは患者の皮膚に直接接触する必要がないため、保持要素は、コイルと皮膚または標的治療領域との間に配置された快適かつ生体適合性のあるライニングを用いてコイルを所定位置に確実に保持するため、ポーチまたはポケットを含んでもよい。いくつかの実施形態において、AP電磁コイル120は、製造中に保持要素内に完全に統合される(例えば、コイルは、ブラ、帽子、シャツ、包帯などの服装内に完全に統合される)。様々な実施形態において、保持要素は、一つ以上のコイル120のそれぞれをAP磁場発生器110および/またはコントローラに結合するためのリード線を含んでもよい。代替の実施形態において、直接電気結合(例えば、スナップフィット)を、電子機器パッケージとAP電磁コイル120との間で使用することができる。電子機器パッケージは、電源150、コントローラ130、APMFG110、およびインターフェース140のうちの一つ以上を含んでもよい。
【0048】
図2は、一つ以上の磁場を標的身体領域に印加して乳房組織内のがん細胞または他の急速に分裂する細胞を治療するための、一つ以上の磁気コイル220の保持要素として機能するブラ200を示す。磁気コイル220は、図1に記載されたコイル120と同じであってもよいが、ブラ200内に配置されるように適合できる(例えば、乳房組織の治療のためのサイズ、幾何形状などを含む)。多くの態様において、ブラ200は、小売衣料品店で入手可能な既存のブラと同様に構成することができ、乳房組織を支持して、乳房組織を含む標的身体領域に対する所定位置にコイル220を支持するためのカップ210を含んでもよい。ストラップ230は、ブラ200を患者の肩に固定するために提供でき、サイドストラップまたはバンド240は、ブラを患者の胴体に固定するために提供できる。AP電磁コイル220は、ブラ200に統合できるかそれに取り外し可能に結合できる。
【0049】
一つ以上のケーブルまたはワイヤ250を提供してコイル220のそれぞれを電子ボックス260に結合することができ、前記電子ボックス260は、APMFG110、コントローラ130、電源150、およびいくつかの実施形態におけるインターフェース140などの図1のMFT療法システム100における残りの構成要素を収容できる。代替の実施形態において、APMFG110、コントローラ130、電源150、またはインターフェース140のうちの一つ以上は、電子ボックス260とは別個に提供できる。例えば、インターフェース140は、APMFG110、コントローラ130、電源150などのうちの一つ以上と直接通信するだけでなく、一つ以上の前述のシステム構成要素から情報を受信および表示する携帯電話アプリを含んでもよい。携帯電話アプリインターフェースは、患者または医療提供者がMFT療法システム100の一つ以上の治療パラメータをプログラムすることを可能にして、MFT治療またはシステム100の状態に関連する情報を表示できる。(例えば、MFT療法が適用された期間の長さ、磁場が各コイル220から標的組織に現在印加されているかどうか、現在提供されている磁場の周波数および/またはフィールド強度、残りの電池寿命などを表示する)
【0050】
図3は、一つ以上の磁場を、脳組織を含む標的身体領域内のがんまたは他の急速に分裂する細胞の治療に印加するための一つ以上のAP電磁コイル320の保持要素として機能する帽子300を示している。一実施形態において、磁気コイル320は、図1に記載されたAP電磁コイル120と同様であるが、帽子300内に配置されるように適合できる。これは、脳組織の治療のために帽子300内に効果的に配置できるようにするためのサイズ、幾何形状、または他の特性の変化が含んでもよい。野球帽として描かれているが、帽子300に他の多くの帽子のタイプおよびスタイルが使用できることは明らかべきである(例えば、スカルキャップ、ベレー帽、フェドーラ帽など)。一実施形態において、帽子300は、患者の頭にぴったりとフィットする適切なサイズのスカルキャップであってもよく、磁気コイル320は、キャップ内に位置または配置されるように適合された凹形状を有してもよい(例えば、帽子の内側、または帽子の内層と外層の間のポケットの内)。AP電磁コイル320は、帽子300に統合できるかそれに取り外し可能に結合できる。
【0051】
一つ以上のケーブルまたはワイヤ350を提供してAPコイル320のそれぞれを電子ボックス360に結合することができ、前記電子ボックス360は、APMFG110、コントローラ130、電源150、およびいくつかの実施形態におけるインターフェース140などの図1のMFT療法システム100における残りの構成要素を収容できる。代替の実施形態において、APMFG110、コントローラ130、電源150、またはインターフェース140のうちの一つ以上は、電子ボックス360とは別個に提供できる。例えば、図2に関連して説明されるように、別個のインターフェース140は、APMFG110、コントローラ130、電源150などのうちの一つ以上と直接通信する携帯電話アプリとして提供できる。このようなアプリベースのインターフェースは、MFT療法に関する情報を患者または医療提供者にも提供できる。(例えば、MFT療法が適用された期間、磁場が各コイル320から標的組織に現在印加されているかどうか、現在提供されている磁場の周波数および/またはフィールド強度、残りの電池寿命などを表示する)
【0052】
図4は、一つ以上の磁場を、患者の胸部または腹部領域の標的組織におけるがんまたは他の急速に分裂する細胞の治療に印加するための一つ以上のAP電磁コイル420の保持要素として機能するシャツ400を示す。これは、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、または他の胸部または腹部の器官または構造におけるがんまたは腫瘍の治療を含む可能性はあるが、これらに限定されず、一つ以上のAP電磁コイル420の配置によるものである。一実施形態において、AP電磁コイル420は、図1に記載されたコイル120と同様であるが、標的組織に基づいてシャツ400内に配置されるように適合できる。これは、特別の標的組織の治療のためにシャツ400内に効果的に配置できるようにするためのコイルのサイズ、幾何形状、または他の特性の変化が含んでもよい。Tシャツとして描かれているが、他の多くのタイプおよびスタイルのシャツをシャツ400として使用することができ、長袖または半袖シャツ;ボタン、ジップ、またはプルオーバーシャツを含む。さらに、好ましい実施形態において、患者の身体にしっかりとフィットするシャツを使用し、より正確なまたは制御された配置でAP電磁コイル420を標的組織に対してよりよく保持するが、シャツ400は、セーター、ジャケット、コートなどを含む、患者の胸部または腹部領域を覆うことができる他の服装を含んでもよいことがわかるべきである。AP電磁コイル420は、シャツ400の内側、外側、またはポケット内の位置づけまたは設置に適合することができ、それに統合するか取り外し可能に結合することができる。
【0053】
一つ以上のケーブルまたはワイヤ450を提供してコイル420のそれぞれを電子ボックス460に結合することができ、前記電子ボックス460は、APMFG110、コントローラ130、電源150、およびいくつかの実施形態におけるインターフェース140などの図1のMFT療法システム100における残りの構成要素を収容できる。代替の実施形態において、APMFG110、コントローラ130、電源150、またはインターフェース140のうちの一つ以上は、電子機器ボックス460とは別個に提供できる。例えば、別個のインターフェース140は、APMFG110、コントローラ130、電源150などのうちの一つ以上と通信する携帯電話アプリとして提供できる。このようなアプリベースのインターフェースは、治療療法に関する情報を患者または医療提供者にも提供できる。(例えば、療法が適用された期間の長さ、磁場が各コイル420から標的組織に現在印加されているかどうか、現在提供されている磁場の周波数および/またはフィールド強度、残りの電池寿命などを表示する)
【0054】
図5は、一つ以上の磁場を、患者の首領域の標的組織におけるがんまたは他の急速に分裂する細胞の治療に印加するための一つ以上のAP電磁コイル520の保持要素として機能するネックカフまたはカラー500を示し、食道がん、喉部がん(laryngeal cancer)などを含むがこれらに限定されない。AP電磁コイル520は、図1に記載されたコイル120と同様であるが、標的治療領域または組織に基づいて、ネックカフまたはカラー500内に配置されるように適合できる。これは、特別の標的組織の治療のためにネックカフ500内に効果的に配置できるようにするためのサイズ、幾何形状、または他の特性の変化が含んでもよい。好ましくは、ネックカフまたはカラー500は、カフまたはカラーを患者のサイズに調整し、患者の首に対する固定位置に固定するための固定および/または調整タブ530(例えば、ベルクロ)を含む。一つの代替の実施形態において、ネックスカーフを保持要素として使用することができる。AP電磁コイル520は、ネックカフまたはカラー500の内側、外側、またはポケット内の位置づけまたは設置に適合することができ、それに統合するか取り外し可能に結合することができる。
【0055】
一つ以上のケーブルまたはワイヤ550を提供してコイル520のそれぞれを電子ボックス560に結合することができ、前記電子ボックス560は、APMFG110、コントローラ130、電源150、およびいくつかの実施形態におけるインターフェース140などの図1のMFT療法システム100における残りの構成要素を収容できる。代替の実施形態において、APMFG110、コントローラ130、電源150、またはインターフェース140のうちの1つ以上は、電子機器ボックス560とは別個に提供できる。例えば、別個のインターフェースは、APMFG110、コントローラ130、電源150などのうちの1つ以上と通信する携帯電話アプリとして提供できる。このようなアプリベースのインターフェースは、治療療法に関する情報を患者または医療提供者にも提供できる。(例えば、療法が適用された期間の長さ、磁場が各コイル520から標的組織に現在印加されているかどうか、現在提供されている磁場の周波数および/またはフィールド強度、残りの電池寿命などを表示する)
【0056】
図6は、一つ以上の磁場を、身体の任意場所の標的組織内のがんまたは他の急速に分裂する細胞の治療に印加するための一つ以上の磁気コイル620の保持要素として機能する包帯600を示す。磁気コイル620は、図1に記載されたものと同様であるが、標的組織に基づいて、包帯600内に配置されるように適合できる。これは、さまざまな異なる標的組織のいずれかを治療するために包帯600内に効果的に配置できるようにするためのサイズ、幾何形状、または他の特性の変化が含んでもよい。磁気コイル620は、包帯600の内側、外側、またはポケット内の位置づけまたは設置に適合することができ、それに統合するか取り外し可能に結合することができる。
【0057】
一つ以上のケーブルまたはワイヤ650を提供してコイル620のそれぞれを電子ボックス660に結合することができ、前記電子ボックス660は、APMFG110、コントローラ130、電源150およびいくつかの実施形態におけるインターフェース140などの図1のMFT療法システム100における残りの構成要素を収容できる。代替の実施形態において、APMFG110、コントローラ130、電源150、またはインターフェース140のうちの一つ以上は、電子機器ボックス560とは別個に提供できる。例えば、別個のインターフェースは、APMFG110、コントローラ130、電源150などのうちの一つ以上と通信する携帯電話アプリとして提供できる。このようなアプリベースのインターフェースは、治療療法に関する情報を患者または医療提供者にも提供できる。(例えば、療法が適用された期間の長さ、磁場が各コイル620から標的組織に現在印加されているかどうか、現在提供されている磁場の周波数および/またはフィールド強度、残りの電池寿命などを表示する)
【0058】
また、保持要素のある実施形態は、MFT療法が標的身体領域または組織に都合よく伝送されることを可能にするために、追加の特徴を提供できる。一実施形態において、保持要素は、保持要素内の別個のアイテムとして、または単一のユニットとして、統合された磁気コイル120、APMFG110、およびコントローラ130を有してもよい。ワイヤ(図示せず)を提供し、電源をAPMFG110、コイル120、コントローラ130、およびインターフェース140のうちの一つ以上に結合することができる。一実施形態において、電源150はコントローラに電力を供給し、前記コントローラはコントローラ130に電力を供給するために電源から受けた電力を変更する回路(例:整流器、コンバーター、変圧器など)を含み、前記コントローラ130は、順番に、APMFG110、AP電磁コイル120、およびインターフェース140に電力を分配する。この実施形態において、電源(例えば、電池)は、患者に近接した他の場所(例えば、患者のズボンやジャケットのポケット中)に配置することができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、MFT療法は、抗がん薬物、放射線療法、またはTTF療法などの一つ以上の他の療法と併用して患者に提供できる(例えば、特許文献1または特許文献2に記載された療法)。好ましくは、MFT療法システム100は、他の(すなわち、非MFT)療法を、MFT療法のない場合に標的身体領域または組織へ投与される用量(dosage)よりも低い用量、あるいはMFT療法のない場合に投与される頻度よりも減少した投与頻度、あるいは前記両方で、提供することができる。様々な実施形態において、MFT療法とともに適用される共同療法(co-therapy)は、化学療法薬物、ホルモン受容体薬物、標的療法薬物、免疫療法、血管新生抑制薬物、チェックポイント抑制薬物およびHER2受容体薬物から選択される薬物であってもよい。他の実施形態において、共同療法は、内部放射線療法(internal radiation therapy)および外部ビーム放射線療法(external beam radiation therapy)から選択される放射線療法であってもよい。別のさらなる実施形態において、MFT療法とともに適用される共同療法は、電場の標的組織への印加にかかるTFT療法であってもよい。理論に拘束されることなく、一つ以上の共同療法(または補助療法)をMFT療法と併用した場合、単独で投与された場合のいずれかの療法よりも優れた結果を達成できると予想される。様々な実施形態において、併用療法(combination therapy)は、MFT療法を抗がん薬物、放射線、またはTTF療法と同時または順次に投与することを含んでもよい。
【0060】
場合によって、非標的身体領域をMFT療法フィールドからシールドすることが望ましい。そのような場合、オプションの磁場シールド(図示せず)を提供し、非標的領域を磁場の影響からシールドできる。いくつかの実施形態において、高度に局在化したシールドを提供し、標的の急速に分裂する細胞に隣接する特定の血管または器官構造などの患者の標的身体領域内の特定の構造をシールドすることができる。
【0061】
電場は磁場を誘導し、逆もまた同様であることが知られている。しかしながら、理論に拘束されることなく、MFT療法にかかる本発明は、従来技術のTTFおよび/または薬物療法と異なる作用様式を有する療法を提供することが見える。特に、TTF療法は、容量性電極を使用し、比較的高い電場強度で主要電場を誘導する。報告された文献(例えば、Kirson et al、Cancer Research 2004)によると、TTF療法は、50~250kHzの周波数での約100V/mのフィールド強度で腫瘍細胞の生長を抑制し始める。最近の一つの実験(以下の実験1を参照)では、MFT療法は、TTF療法で報告されたものと同様の腫瘍細胞生長の抑制を伴うが、典型的なTTF療法の電場強度のわずか(例えば、3%未満)しかないという驚くべき結果を示した。
【0062】
[実験1]
マウスメラノーマ細胞(B16F10細胞株、カリフォルニア大学バークレー校から取得する)を、96ウェルプレートの36個のミドルウェル(middle well、直径5.0 mm)のダルベッコ改質イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、DMEM)において、37℃で24時間にわたって培養した。次に、36個の処理ウェル(Treatment Well)のそれぞれにおける細胞を、37℃の温度に維持されたヘルムホルツコイルを使用し、周波数150kHzおよび磁場強度約0.8mTでの交番磁場に24時間暴露した。対照群ウェル(Control well)は、交番磁場に暴露されておらず、37℃で同じ時間期間にわたって培養された。24時間後、交番磁場を停止し、各ウェル(処理群と対照群の両方)における細胞について組織学的検査を実行した。図7Aおよび図7Bは、典型的な対照群ウェルと処理群ウェルの違いを示す。対照群は、全体的な比較によって示されるように、ウェルあたりの著しく高い細胞数を示した。さらに、図7Aに示すように、対照群細胞(control cell)は、典型的な角張った形態構造を維持した。図7Bに示すように、磁場で処理された細胞は、著しい減少した細胞数を示し、さらに細胞ストレス(cell stress)を示す丸い形態を示した。
【0063】
図8は、各プレートに36個のウェルが2つの異なる場所で実行された処理の結果をまとめた棒グラフの比較を提供した。対照群ウェルの細胞数を100に正規化すると、処理された細胞は約31%の減少を示した。磁場と電場による治療(例えば、TTF療法)は根本的に異なる(例えば、コイル対電極を使用し、主に磁場対電場を生成する)が、実験1で使用したコイルからの誘導電場の強度は、次の式1を使用して計算できる。
【数1】
式1を使用し、2.34V/mの最大誘導電圧、またはTTF療法の抑制活性に必要であると報告されている電場強度の3%未満を発生する。実験1は、MFT療法がTTF療法の電場強度のごくわずかな部分でがん細胞に影響を与えることを示しているため、これにより、TTF療法に比べて著しい利点を有し、患者の大部分の日常生活を中断することなく継続でき、負担や負荷を最小限にする動的療法が可能となるが、これに限定されない。
【0064】
TTF療法に比べて、MFT療法の利点の一部は、2つのシステムの異なるハードウェア構成に起因する。TTF療法は、絶縁された(例えば、セラミックコーティングされた)電極を使用するが、MFT療法では、電極の代わりにコイルを使用すると、多くの利点が得られる。TTF療法の絶縁電極とは対照的に、MTF療法コイルは、身体と直接接触する必要がないため、MFTコイルは、一つ以上の衣料品の層(服装や下着など)によって標的組織から分離できる。MFT療法は、衣料品を通して磁場を印加することにより、患者の快適性を高め、患者の煩わしい体験を軽減する。

さらに、MFT療法は、電極にかかるTTF療法よりも患者へのリスクが著しく少ないように実施できる。電極の代わりにコイルを使用すると、MFT治療中に極めて低い誘導電流だけが生じるため、電気的短絡およびその後で生じる患者の体組織の制御不能な聴力のリスクはほんのわずかである。
【0065】
さらに、MFT療法は、比較的に小さくすることができて患者の体に電流が流れないコイルにかかるので、MTF療法のためのシステムは、患者にほとんど不便をかけることなく、がんおよび他の過剰増殖細胞を標的とする長い治療期間が可能となる。TTF療法に比べて、MTF療法の前記および他の利点は、本開示を考慮して当業者によって完全に理解できるべきである。
【0066】
様々な実施形態において、本発明は、以下の番号が付けられた段落の主題にかかる。
【0067】
101.患者の標的身体領域におけるがん細胞を治療する方法であって、
AP電磁コイルを標的身体領域に結合すること、並びに
前記AP電磁コイルを使用して50~500kHzの周波数および0.05~5mTのフィールド強度を有する交番極性(alternating polarity、すなわち、AP)磁場を標的身体領域に印加すること、
を含み、
前記AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、方法。
【0068】
102.コントローラをAP電磁コイルに結合することをさらに含み、
前記コントローラは、AP磁場の周波数およびフィールド強度を制御する、項101に記載の方法。
【0069】
103.AP磁場を印加することは、25~400kHzの周波数および0.2~2mTのフィールド強度を有するAP磁場を印加することを含む、項101に記載の方法。
【0070】
104.AP磁場を印加することは、100~300kHzの周波数および0.5~1.2mTのフィールド強度を有するAP磁場を印加することを含む、項101に記載の方法。
【0071】
201.患者の標的身体領域におけるがん細胞を治療する方法であって、
少なくとも一つの電磁コイルを提供すること、
前記少なくとも一つの電磁コイルに結合されるコントローラを提供すること、
前記少なくとも一つの電磁コイルを標的身体領域に結合すること、並びに
前記標的身体領域に0.5~500kHzの周波数および0.05~5mTのフィールド強度を有する交番極性(AP)磁場を印加すること、
を含み、
前記AP磁場は、コントローラーの制御下にある少なくとも一つの電磁コイルによって生成され、
前記AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、方法。
【0072】
202.AP磁場を印加することは、25~400kHzの周波数および0.2~2mTのフィールド強度を有するAP磁場を印加することを含む、項201に記載の方法。

203.AP磁場を印加することは、100~300kHzの周波数および0.5~1.2mTのフィールド強度を有するAP磁場を印加することを含む、項201に記載の方法。
【0073】
204.AP磁場を印加することは、治療デューティサイクルおよびフィールド強度デューティサイクのうちの少なくとも一つに従ってAP電場を標的身体領域に印加することを含む特徴とする、項201に記載の方法。
【0074】
205.治療デューティサイクルは、AP磁場を標的組織に印加するオン時間と、AP磁場を標的組織に印加しないオフ時間との交番期間を有する、項204に記載の方法。
【0075】
206.フィールド強度デューティサイクは、第1のフィールド強度で第1の時間期間にわたってAP磁場を標的組織に印加し、その後、第2のフィールド強度で第2の時間期間にわたって印加する交番期間を有する、項204に記載の方法。
【0076】
207.AP磁場は、二峰性の磁場周波数分布を含み、前記二峰性の磁場周波数分布は、第1の下限と第1の上限との間で磁場周波数を変動させる第1の可変AP磁場と、第2の下限と第2の上限との間で磁場周波数を変動させる第2の可変AP磁場とを有する、項201に記載の方法。
【0077】
208.AP磁場は、可変周波数および可変フィールド強度の少なくとも一方を有する、項201に記載の方法。
【0078】
209.抗がん薬物、放射線療法およびTTF療法から選択される少なくとも一つの追加の抗がん療法を患者に投与することをさらに含む、項1に記載の方法。
【0079】
210.TTF療法を投与することは、少なくとも一つのAC電場を標的組織に印加することを含み、AC電場は、50~500kHzの周波数および約10~1000V/mの電場強度を有する、項209に記載の方法。
【0080】
301.患者の標的身体領域におけるがん細胞を治療するシステムであって、
標的身体領域に結合する少なくとも一つの電磁コイル、並びに
少なくとも一つの電磁コイルを制御し、0.5~500kHzの周波数および0.05~5mTのフィールド強度を有するAP磁場を生成して標的身体領域に印加するコントローラ、
を有し、
AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、システム。
【0081】
302.前記がん細胞は、乳がん細胞、肺がん細胞、肺カルチノイド腫瘍細胞、胸腺がん細胞、気管がん細胞、膵臓がん細胞、肝臓がん細胞、胃がん細胞、腎臓がん細胞、卵巣がん細胞、結腸がん細胞、直腸がん細胞、前立腺がん細胞、喉がん細胞、甲状腺がん細胞、口腔がん細胞、鼻がん細胞および唾液腺がん細胞のうちの一つである、項301に記載のシステム。
【0082】
303.AP磁場が標的身体領域に印加される間において、少なくとも一つの電磁コイルは、保持要素によって標的身体領域に結合される、項302に記載のシステム。
【0083】
304.前記がん細胞は、乳がん細胞であり、前記保持要素は、ブラ、シャツおよびベストから選択されるウェアラブル服装である、項303に記載のシステム。
【0084】
305.前記がん細胞は、肺がん、肺カルチノイド腫瘍、胸腺悪性腫瘍、気管腫瘍、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がんおよび直腸がんから選択され、前記保持要素は、ブラ、シャツ、ベストおよびジャケットから選択されるウェアラブル服装である、項303に記載のシステム。
【0085】
306.前記がん細胞は、前立腺がん細胞、卵巣がん細胞、結腸がん細胞および直腸がん細胞から選択される下半身のがん細胞であり、前記保持要素は、下着である、項303に記載のシステム。
【0086】
307.がん細胞である、項303に記載のシステム。
【0087】
308.AP磁場が標的身体領域に印加される間において、少なくとも一つの電磁コイルは、保持要素によって標的身体領域に結合される、項301に記載のシステム。
【0088】
309.前記保持要素は、ブラ、シャツ、ベスト、ジャケット、下着および包帯から選択される、項308に記載のシステム。
【0089】
310.標的身体領域における所望の磁場分布が得られるように、少なくとも一つの電磁コイルは、標的身体領域に結合される複数の電磁コイルを含む、項301に記載のシステム。
【0090】
311.AP磁場への暴露から患者の少なくとも一つの非標的身体領域をシールドする電磁シールドをさらに含む、項301に記載のシステム。
【0091】
401.患者の身体の標的領域におけるがん細胞を治療するシステムであって、
標的身体領域に結合する少なくとも一つの電磁コイル、並びに
少なくとも一つの電磁コイルを制御し、5Hz~500kHzの周波数および0.05~5mTのフィールド強度を有する交番極性(AP)磁場を生成して標的身体領域に印加するコントローラ、
を有し、
AP磁場は、非がん性細胞を実質的に無傷のままにするとともに、がん細胞に選択的に影響を及ぼし、がん細胞の損傷、がん細胞の生長の抑制、腫瘍サイズの減少、血管新生の抑制、またはがん細胞の転移の防止の少なくとも一つを達成する、システム。
【0092】
402.電力を電磁コイルに提供する電源をさらに含む、項401に記載のシステム。
【0093】
以上に開示された特定の実施形態は例示にすぎず、本発明は、本明細書の教示の利益を受けた当業者によって、異なるが均等性のある方法で修正および実施できることが明らかである。ここに開示および請求される本発明の実施形態は、本開示の利益を利用して、過度の実験なしに作成および実行できる。本発明は特定の実施形態に関して説明されるが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載のシステムおよび装置に変形を応用できることは明らかである。例示はすべて非限定的であることを意図している。したがって、以上に開示された特定の実施形態は変更または修正でき、そのようなすべての変形は、本発明の範囲および精神内と見なされるとともに、本発明の範囲および精神は、特許請求の範囲のみによって制限される。
【符号の説明】
【0094】
110 APMFG
112 タイミング制御モジュール
114 周波数制御モジュール
116 磁場強度制御モジュール
120 AP電磁コイル
130 コントローラ
140 インターフェース
150 電源
200 ブラ
220 磁気コイル
230 ストラップ
240 バンド
250 ケーブルまたはワイヤ
260 電子ボックス
300 帽子
320 磁気コイル
350 ケーブルまたはワイヤ
360 電子ボックス
400 シャツ
420 磁気コイル
450 ケーブルまたはワイヤ
460 電子ボックス
500 ネックカフまたはカラー
520 磁気コイル
550 ケーブルまたはワイヤ
560 電子ボックス
600 包帯
620 磁気コイル
650 ケーブルまたはワイヤ
660 電子ボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】