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特表2022-519789カルシフェジオールを用いた副甲状腺機能亢進症の進行を制御する方法、およびそれに使用するための組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(54)【発明の名称】カルシフェジオールを用いた副甲状腺機能亢進症の進行を制御する方法、およびそれに使用するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/593 20060101AFI20220316BHJP
   A61P 5/20 20060101ALI20220316BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
A61K31/593
A61P5/20
A61P13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569596
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 IB2020000089
(87)【国際公開番号】W WO2020161543
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/802,148
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521353274
【氏名又は名称】エアジェン ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ チャールズ ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA81
(57)【要約】
副甲状腺機能亢進症を制御するための方法および組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを50ng/mLを超える、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mLまたは少なくとも60ng/mLの濃度に増加させかつ維持し、それによって前記患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させることを含む、方法。
【請求項2】
治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、徐放性25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを50ng/mLを超える、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mLまたは少なくとも60ng/mLの濃度に増加させかつ維持し、それによって前記患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させることを含む、方法。
【請求項3】
治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者集団におけるSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを50ng/mLを超える、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mLまたは少なくとも60ng/mLの平均濃度に増加させかつ維持し、それによって前記患者集団におけるSHPT進行を予防、停止、または逆転させることを含み、SHPT進行を経験している対象の割合が30%、25%、20%、15%、10%未満、または9.7%以下、または3%未満、または2.8%以下である、方法。
【請求項4】
治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者集団におけるSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、徐放性25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを50ng/mLを超える、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mLまたは少なくとも60ng/mLの平均濃度に増加させかつ維持し、それによって前記患者集団におけるSHPT進行を予防、停止、または逆転させることを含み、SHPT進行を経験している対象の割合が30%、25%、20%、15%、10%未満、または9.7%以下、または3%未満、または2.8%以下である、方法。
【請求項5】
治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、ビタミンD類似体(VDA)または栄養ビタミンD(NVD)、ヒドロフェロール(hidroferol)、またはこれらの任意の組み合わせで達成されるよりも優れた程度まで、任意選択で、VDA、NVD、ヒドロフェロールまたはこれらの任意の組み合わせで達成されるよりも少なくとも2倍である程度まで、
a.患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを増加させかつ維持すること、
b.前記患者の血清iPTHを減少させること、または
c.これらの組み合わせ、を含む、方法。
【請求項6】
治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、ビタミンD類似体(VDA)または栄養ビタミンD(NVD)、ヒドロフェロール、またはこれらの任意の組み合わせで達成されるよりも優れた程度まで、任意選択で、VDA、NVD、ヒドロフェロールまたはこれらの任意の組み合わせで達成されるよりも少なくとも2倍である程度まで、
a.患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを増加させかつ維持すること、
b.前記患者の血清iPTHを減少させること、または
c.これらの組み合わせ、を含み、
前記患者に徐放性25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含む、方法。
【請求項7】
血清総25-ヒドロキシビタミンDが、治療前のレベルと比較して20ng/mLを超えて増加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
血清iPTHが、治療前のレベルと比較して少なくとも10pg/mL減少する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
血清iPTHが、治療前のレベルと比較して少なくとも20pg/mL減少する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
血清iPTHが、治療前のレベルと比較して少なくとも30pg/mL減少する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
血清iPTHが、治療前のレベルと比較して30%を超えて減少する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、
a.患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを治療前のレベルと比較して20ng/mLを超えて増加させかつ維持すること、
b.前記患者の血清iPTHを治療前のレベルと比較して少なくとも30%減少させること、または
c.これらの組み合わせ、を含む、方法。
【請求項13】
治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、
a.患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを治療前のレベルと比較して20ng/mLを超えて増加させかつ維持すること、
b.前記患者の血清iPTHを治療前のレベルと比較して少なくとも30%減少させること、または
c.これらの組み合わせ、を含み、
前記患者に徐放性25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記SHPT進行の予防、停止、または逆転が26週間以上にわたって達成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
患者のベースラインからのiPTHの増加に関連する疾患、状態、または障害の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを、慢性投与中、約50~約300ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲で増加させかつ維持し、それによって、前記疾患、状態、または障害を治療することを含む、方法。
【請求項16】
患者のベースラインからのiPTHの増加に関連する疾患、状態、または障害の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、徐放性25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを、慢性投与中、約50~約300ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲で、増加させかつ維持し、それによって、前記疾患、状態、または障害を治療することを含む、方法。
【請求項17】
SHPT進行の治療を必要とする患者においてSHPT進行を軽減する方法であって、25-ヒドロキシビタミンDの、週に100~900μgの範囲の投与量での効果的な投与で、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを、約50~300ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲の濃度に、徐々に増加させかつその後維持し、それによって、前記患者のSHPT進行の進行を軽減することを含む、方法。
【請求項18】
SHPT進行の治療を必要とする患者においてSHPT進行を軽減する方法であって、徐放性25-ヒドロキシビタミンDの、週に100~900μgの範囲の投与量での効果的な投与で、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを、約50~300ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲の濃度に、徐々に増加させかつその後維持し、それによって前記患者のSHPT進行の進行を軽減することを含む、方法。
【請求項19】
(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを20ng/mLを超えるまで増加させかつ維持すること、(b)前記患者の血清iPTHを少なくとも30pg/mLまで減少させること、または(c)これらの任意の組み合わせによって、患者を治療する方法であって、前記方法が、少なくとも6ヶ月の治療期間にわたって、ある量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項20】
(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを20ng/mLを超えるまで増加させかつ維持すること、(b)前記患者の血清iPTHを少なくとも30pg/mLまで減少させること、または(c)これらの任意の組み合わせによって、患者を治療する方法であって、前記方法が、少なくとも6ヶ月の治療期間にわたって、ある量の徐放性25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項21】
治療期間中に前記患者において血清カルシウムおよびリンレベルが変化しない、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
25-ヒドロキシビタミンDを増加させて、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを、50ng/mL超~約300ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲の濃度に維持することを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
25-ヒドロキシビタミンDを増加させて、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを、50ng/mL超~約200ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約200ng/mLの範囲の濃度に維持することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
25-ヒドロキシビタミンDを増加させて、前記患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを、50ng/mL超~約100ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約100ng/mLの範囲の濃度に維持することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与が、治療前のベースラインと比較して、前記患者の補正された血清カルシウムレベルの有意な増加を回避することを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与が、治療前のベースラインと比較して、前記患者の血清リンレベルの有意な増加を回避することを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与が、治療前のベースラインと比較して、前記患者の血清FGF23レベルの有意な増加を回避することを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与が、血清総25-ヒドロキシビタミンDの増加中に、3ng/mL以下の血清総25-ヒドロキシビタミンDの1日平均上昇を提供することを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与が、血清総25-ヒドロキシビタミンDの増加中に、少なくとも0.2ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDの1日平均上昇を提供することを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与が、少なくとも8週間、または少なくとも10週間、または少なくとも12週間、または少なくとも14週間の期間にわたって、血清総25-ヒドロキシビタミンDを約50もしくは約60~約300ng/mL、または約50もしくは約60~約200ng/mL、または約50もしくは約60~約100ng/mL、または50もしくは60超~約300ng/mL、または50もしくは60超~約200ng/mL、または50もしくは60超~約100ng/mLの範囲の定常状態レベルに増加させることを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与が、前記患者の血清総1,25-ジヒドロキシビタミンDを少なくとも40pg/mL、または少なくとも45pg/mLの定常状態レベルに増加させることを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与が、血清総1,25-ジヒドロキシビタミンDを62pg/mL以下の定常状態レベルに増加させることを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、療法開始時に30ng/mL未満の血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する、ビタミンD不十分である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、療法開始時に少なくとも10ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、療法開始時に30ng/mL超または約30ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が、療法開始時に40ng/mL超または約40ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
投与される前記25-ヒドロキシビタミンDの量が、患者、または前記集団の平均の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルの最大約300ng/mL、または最大約200ng/mL、または最大約100ng/mL、または最大約93ng/mL、または最大92.5ng/mL、または最大約90ng/mL、または最大約85ng/mL、または最大約80ng/mL、または最大約70ng/mL、または最大約69ng/mL、または最大68.9ng/mLを達成するのに効果的である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記患者が、CKDステージ3~5、またはステージ3~4、またはステージ5を有する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記患者が、CKDステージ3または4を有する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が、CKDステージ5を有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記患者がまた、血液透析による治療を受けている、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記25-ヒドロキシビタミンDの投与が、25-ヒドロキシビタミンD3の投与を含む、25-ヒドロキシビタミンD3の投与から本質的になる、または25-ヒドロキシビタミンD3の投与からなる、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記25-ヒドロキシビタミンDの投与が、放出調節投与を含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記25-ヒドロキシビタミンDの投与が、持続放出性投与を含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記25-ヒドロキシビタミンDの投与が、経口投与を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記25-ヒドロキシビタミンDの投与が、25-ヒドロキシビタミンDを長時間にわたって、任意選択で少なくとも1時間にわたって、任意選択で最大5時間にわたって静脈内投与することを含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記25-ヒドロキシビタミンDの投与が、任意選択で5以下、または4.8以下のVMRを特徴とする、CYP24A1の実質的な誘導を回避することを含む、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記25-ヒドロキシビタミンDが、毎日またはそれ以下の頻度で投与される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記25-ヒドロキシビタミンDが、毎日投与される、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記25-ヒドロキシビタミンDが、週に2回投与される、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記25-ヒドロキシビタミンDが、週に3回投与される、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記25-ヒドロキシビタミンDが、毎週投与される、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記25-ヒドロキシビタミンDが、30μg~600μgの25-ヒドロキシビタミンDを含む単位用量形態で投与される、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
単位用量形態が、30μgの25-ヒドロキシビタミンDを含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
単位用量形態が、60μgの25-ヒドロキシビタミンDを含む、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
単位用量形態が、90μgの25-ヒドロキシビタミンDを含む、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
単位用量形態が、200μgの25-ヒドロキシビタミンDを含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
週あたり約100μg~約900μg、または週あたり約300μg~約900μg、任意選択で週あたり600μgの範囲で25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
療法開始時の前記患者の体重に基づいて選択される25-ヒドロキシビタミンDの用量を前記患者に投与することを含む、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記用量が、療法開始時の前記患者の体重1kgあたり約0.1mcg~療法開始時の前記患者の体重1kgあたり約1mcgの、任意選択で、療法開始時の前記患者の体重1kgあたり約0.15mcg~療法開始時の前記患者の体重1kgあたり約0.85mcgの、1日用量であるか、または1日用量に相当する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記1日用量が、療法開始時の前記患者の体重1kgあたり約0.4mcg~約0.8mcgである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
開始時の前記患者の体重が140kg以上である場合、60mcgの開始用量を前記患者に投与することを含む、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
週に2回または3回用量に、任意選択で透析治療時に週に3回に、分割された25-ヒドロキシビタミンDの週用量を投与することを含む、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記患者の骨吸収マーカーの血中レベルを低下させることを含む、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記骨吸収マーカーが、血清総アルカリホスファターゼ、BSAP、CTX-1、P1NPおよびFGF-23から選択される1つ以上のマーカーである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記低下が、前記マーカーの正常な基準範囲内までである、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記低下が少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%である、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記SHPT進行が、(a)未治療の患者、または(b)活性型ビタミンD療法(任意選択でカルシトリオール、パリカルシトール、またはドキセルカルシフェロール)で治療された患者、(c)栄養ビタミンD(エルゴカルシフェロールおよび/またはコレカルシフェロール)で治療された患者、または(d)ヒドロフェロールで治療された患者と比較した26週間の治療に基づく、請求項1~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
CKDを有する患者のSHPTを治療する方法であって、前記患者の体重およびベースラインの血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて、または前記患者の体重および血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇に基づいて選択される25-ヒドロキシビタミンDの用量を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項70】
少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの治療後血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように前記患者の用量を選択することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの定常状態の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように前記患者の用量を選択することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記投与が、徐放性経口投与によるものである、請求項69~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記用量が、1日用量である、請求項69~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
mcgでの前記用量(D)が、キログラムでの療法開始時の前記患者の体重(W)およびng/mlでの血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇(R)に、スケーリングファクタ(F)を含めた関数として、D=(RxW)/Fの関係によって選択される1日用量であるかまたは1日用量に相当する量であり、式中、Fは、約50~約80、または約55~約80、または約65~約75、または約68~約72、または約69~約71、または約70の範囲にある、請求項72または73に記載の方法
【請求項75】
mcgでの前記用量(D)が、キログラムでの療法開始時の前記患者の体重(W)およびng/mlでの血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇(R)に、スケーリングファクタ(F)を含めた関数として、D=(RxW)/Fの関係によって選択される1日用量であるかまたは1日用量に相当する量であり、式中、Fは、サブファクタfおよび前記患者の体重Wに基づくさらなる調整Yに基づいて、F=f-(Y×W)となり、式中fは、約60~約80、または約65~約75、または約68~約72、または約69~約71、または約70の範囲であり、Yは、0.01~0.1の範囲である)、請求項72または73に記載の方法。
【請求項76】
前記患者の体重Wが、50kg~180kgの範囲にある、請求項74~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記患者が、ステージ3またはステージ4のCKDを有する、請求項69~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記患者の用量が、少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの治療後血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように、患者の体重およびベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて選択される、請求項69~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記方法が、治療前のベースラインと比較して、前記患者の血漿iPTH濃度の少なくとも30%の低下をさらに提供する、請求項69~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
CKDを有する患者においてSHPTを治療する方法であって、前記患者の体重およびベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて、または前記患者の体重および血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇に基づいて選択される徐放性25-ヒドロキシビタミンDの用量を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項81】
25-ヒドロキシビタミンDおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、前記組成物が、ベースラインからのiPTHの増加に関連する疾患または状態を治療するために投与され、前記投与が、前記組成物の慢性投与中、患者の25-ヒドロキシビタミンDの血清レベルを約50~300ng/mLまたは約60~300ng/mlに増加させかつ維持する、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2019年2月6日に出願された米国仮特許出願第62/802,148号の米国特許法第119条(e)に基づく利益がここに主張され、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に、血清インタクト副甲状腺ホルモンが増加した患者、例えば副甲状腺機能亢進症患者の治療に関する。本開示はまた、SHPT、例えば慢性腎臓病、の治療、および慢性腎臓病(CKD)におけるSHPT進行の制御に関する。
【0003】
連技術の簡単な説明
SHPTは、主にビタミンD不足(VDI)および欠乏症が原因で発症する障害である。副甲状腺ホルモン(PTH)の異常に高い血中レベルを特徴とし、早期発見および治療がない場合、副甲状腺過形成および一連の代謝性骨疾患に関連するようになる。これはCKDの一般的な合併症であり、CKDが進行するにつれて発生率が上昇する。SHPTは、適切なビタミンDの供給を妨げる環境的、文化的、または食事的要因により、健康な腎臓を持つ個人でも発症する可能性がある。
【0004】
SHPTおよびCKDでのその発生に関しては、25-ヒドロキシビタミンD3および25-ヒドロキシビタミンD2からのビタミンDホルモン(総称して「1,25-ジヒドロキシビタミンD」)の合成の主要部位である近位ネフロンの細胞の進行性の喪失がある。さらに、機能しているネフロンが失われると、過剰なリンが保持され、Dホルモンを生成する反応を触媒する酵素である腎臓の25-ヒドロキシビタミンD-1α-ヒドロキシラーゼの活性が低下する。これらの2つの事象は、ビタミンDの供給が適切な場合に、中等度から重度のCKDの患者に一般的に見られる1,25-ジヒドロキシビタミンDの血清レベルが低いことを説明している。
【0005】
CKDは、インタクト副甲状腺ホルモン(iPTH)の過剰産生、および副甲状腺の肥大を特徴としている。これは、血清総25-ヒドロキシビタミンDの低下、血清リンおよび線維芽細胞成長因子23(FGF23)の上昇、および血清1,25-ジヒドロキシビタミンDおよびカルシウムの減少に関連している。未治療のSHPTは、骨疾患、骨折率の増加、血管石灰化の増加、罹患率および死亡率の増加につながる可能性がある。1,25-ジヒドロキシビタミンDの血清レベルが低下すると、直接的および間接的なメカニズムによってPTHの分泌が増加し、最終的には過剰になる。結果として生じる副甲状腺機能亢進症は、骨代謝回転の著しい増加およびその後遺症である腎性骨異栄養症をもたらし、これには、嚢胞性線維性骨炎、骨軟化症、骨粗鬆症、骨外性石灰化、ならびに関連障害、例えば、骨痛、関節周囲炎、およびモッカーバーグ硬化症(Mockerberg’s sclerosis)など、様々な他の疾患が含まれ得る。1,25-ジヒドロキシビタミンDの血清レベルの低下はまた、筋力低下および骨格の変形を伴う成長遅延も引き起こし得る(ほとんどの場合、小児患者で見られる)。
【0006】
ビタミンD化合物は、従来、即時放出製剤中で投与されてきた。いくつかの徐放性剤形を含む、活性型ビタミンD、その類似体、およびそのプロホルモンを送達するための製剤が開示されている。例えば、ワックスマトリックス型の、ビタミンD化合物のいくつかの放出調節(modified release)剤形が記載されている。そのような製剤の1つは、ステージ3および4の慢性腎臓病(CKD)患者のSHPTを治療するために承認されている製品である、商標名RAYALDEE(登録商標)(カルシフェジオール)で販売されている。この薬物の処方情報は、RAYALDEE(登録商標)の持続放出性製剤が、25-ヒドロキシビタミンD3のワックスベースの徐放性製剤であることを示している。米国特許出願公開第US2009/311316A1号(2009年12月17日)、同第US2009/0176748A1号(2009年7月9日)、同第US2013/0137663A1号(2013年5月30日)、同第US2014/0349979A1号(2014年11月27日)、WO2017/182237A1(2017年10月26日)、および米国特許出願第62/725940号(2018年8月31日出願)を参照されたく、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
診療ガイドラインは、ビタミンDの充足性を目標に定めている。しかしながら、CKDにおけるビタミンDの充足性の定義についてはコンセンサスが不足している。2003年、全米腎臓財団(NKF)は、ビタミンDの充足性を血清総25-ヒドロキシビタミンD濃度が30ng/mLを超えると定義し、2011年、内分泌学会はそれを30~100ng/mLの濃度と定義した。米国(US)医学研究所(IOM)は異論を唱え、2011年に「実質的にすべての人が少なくとも20ng/mLの血清25-ヒドロキシビタミンDレベルで十分である」と述べた。本明細書に記載の結果は、CKDが進行するにつれて血清iPTHの上昇を制御し、副甲状腺機能亢進症の進行を制御するために、より高いレベルが必要であることを示している。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一態様は、対象、例えば成人のヒトにおける、治療前のベースラインからのiPTHの>10%の増加として定義される、SHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、対象の血清総25-ヒドロキシビタミンDを50ng/mLを超える、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mLまたは少なくとも60ng/mL濃度に増加させかつ維持し、それによって患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法、を提供する。
【0009】
本開示の別の態様は、治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者集団におけるSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを50ng/mLを超える、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mLまたは少なくとも60ng/mLの平均濃度に増加させかつ維持し、それによって患者集団におけるSHPT進行を予防、停止、または逆転させることを含み、SHPT進行を経験している対象の割合が30%、25%、20%、15%、10%未満、または9.7%以下、または3%未満、または2.8%以下である、方法、を提供する。
【0010】
本開示のさらなる態様は、治療前のベースラインからの血漿iPTHの>10%の増加として定義される、患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、ビタミンD類似体(VDA)または栄養ビタミンD(NVD)、ヒドロフェロール(hidroferol)、またはこれらの組み合わせで達成されるよりも優れた程度まで、(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを増加させかつ維持すること、(b)患者の血清iPTHを減少させること、または(c)これらの任意の組み合わせ、を含む、方法である。任意選択で、本方法は、VDA、NVD、ヒドロフェロール、またはこれらの任意の組み合わせで達成されるよりも少なくとも2倍である程度まで、(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを増加させかつ維持すること、(b)患者の血清iPTHを減少させること、または(c)これらの任意の組み合わせ、を含む。様々な態様では、血清総25-ヒドロキシビタミンDは、治療前のレベルと比較して20ng/mLを超えて増加する。様々な態様では、血清iPTHは、治療前のレベルと比較して、少なくとも10pg/mL、少なくとも20pg/mL、または少なくとも30pg/mL減少する。様々な例では、血清iPTHは治療前のレベルと比較して30%を超えて減少する。
【0011】
さらに、本開示の一態様は、治療前のベースラインからの血漿iPTHの>10%の増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを治療前のレベルと比較して20ng/mLを超えて増加させかつ維持すること、(b)患者の血清iPTHを治療前のレベルと比較して少なくとも30%減少させること、または(c)これらの組み合わせ、を含む方法である。SHPT進行の予防、停止、または逆転の本開示されている方法の様々な例では、SHPT進行の予防、停止、または逆転が、26週間以上にわたって達成される。
【0012】
本開示の別の態様は、患者のベースラインからのiPTHの増加に関連する疾患、状態、または障害の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与で、患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを、慢性投与中、約50~約300ng/mL、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲で増加させかつ維持し、それによって疾患、状態、または障害を治療することを含む、方法である。
【0013】
本開示の別の態様は、SHPT進行の治療を必要とする患者のSHPT進行を軽減する方法であって、25-ヒドロキシビタミンDの、週に100~900μgの範囲の投与量での効果的な投与で、患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを約50~300ng/mL、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲の濃度に、徐々に増加させかつその後維持し、それによって患者のSHPT進行の進行を軽減することを含む、方法である。
【0014】
本開示の別の態様は、(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを20ng/mLを超えるまで増加させかつ維持すること、(b)患者の血清iPTHを少なくとも30pg/mLまで減少させること、または(c)これらの任意の組み合わせによって、患者を治療する方法であって、当該方法が、少なくとも6ヶ月の治療期間にわたって25-ヒドロキシビタミンDのある量を患者に投与することを含む、方法である。本開示されている方法のいずれか1つの様々な例では、治療期間中に患者において血清カルシウムおよびリンレベルが変化しない。
【0015】
本開示の別の態様は、CKDを有する患者のSHPTを治療する方法であって、患者の体重およびベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて、または患者の体重および血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇に基づいて選択される25-ヒドロキシビタミンDの用量を患者に投与することを含む。様々な態様では、本方法は、少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの治療後血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように患者の用量を選択することを含む。様々な例では、本方法は、少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの定常状態の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように患者の用量を選択することを含む。任意選択で、投与は徐放性経口投与による。様々な態様では、用量は1日用量である。様々な態様では、mcgでの用量(D)は、キログラムでの療法開始時の患者の体重(W)およびng/mlでの血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇(R)に、スケーリングファクタ(F)を含めた関数として、D=(RxW)/Fの関係によって選択される1日用量であるかまたは1日用量に相当する量であり、式中、Fは、約60~約80、または約65~約75、または約68~約72、または約69~約71、または約70の範囲にある。様々な場合では、患者の体重Wは、50kg~180kgの範囲にある。患者は、いくつかの態様では、ステージ3またはステージ4のCKDを有している。また、様々な態様では、患者の用量は、少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの治療後血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように、患者の体重およびベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて選択される。例示的な例では、本方法は、治療前のベースラインと比較して、患者の血漿iPTH濃度の少なくとも30%の低下をさらに提供する。
【0016】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の方法で使用するための薬学的組成物、例えば、25-ヒドロキシビタミンDおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、組成物が、ベースラインからのiPTHの増加に関連する疾患または状態を治療するために投与され、当該投与が、当該組成物の慢性投与中、25-ヒドロキシビタミンDの血清レベルを約50~約300ng/mL、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲に増加させかつ維持する、薬学的組成物である。
【0017】
本開示の方法のいずれか1つの様々な例では、本方法は、25-ヒドロキシビタミンDを増加させて、患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを50ng/mL超~約300ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約300ng/mLの範囲の濃度に、または50ng/mL超~約200ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約200ng/mLの範囲の濃度に、または50ng/mL超~約100ng/mL、任意選択で約60ng/mL~約100ng/mLの範囲の濃度に、任意選択で、少なくとも8週間、または少なくとも10週間、または少なくとも12週間、または少なくとも14週間の期間にわたって、維持することを含む。様々な態様において、25-ヒドロキシビタミンDの投与は、治療前のベースラインと比較して、患者の補正された血清カルシウムレベル、血清リンレベル、血清FGF23レベル、またはこれらの任意の組み合わせの有意な増加を回避することを含む。
【0018】
様々な態様において、患者は、療法開始時に、30ng/mL超または約30ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する。任意選択で、患者は、療法開始時に、40ng/mL超または約40ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する。
【0019】
本開示の方法のいずれか1つの様々な態様では、本方法は、療法開始時の患者の体重に基づいて選択される25-ヒドロキシビタミンDの用量を患者に投与することを含む。様々な場合では、用量は、療法開始時の患者の体重1kgあたり約0.1mcg~療法開始時の患者の体重1kgあたり約1mcgの1日用量であるかまたは1日用量に相当し、任意選択で、療法開始時の患者の体重1kgあたり約0.15mcg~療法開始時の患者の体重1kgあたり約0.85mcgの1日用量であるかまたは1日用量に相当する量である。例示的な態様では、1日用量は、療法開始時の患者の体重1kgあたり約0.4mcg~約0.8mcgである。例えば、本方法は、開始時の患者の体重が140kg以上である場合、60mcgの開始用量を患者に投与することを含む。
【0020】
本開示の方法のいずれか1つの様々な態様では、SHPT進行(およびその欠如)は、(a)未治療の患者、または(b)活性型ビタミンD療法(任意選択でカルシトリオール、パリカルシトール、またはドキセルカルシフェロール)で治療された患者、(c)栄養ビタミンD(エルゴカルシフェロールおよび/またはコレカルシフェロール)で治療された患者、または(d)ヒドロフェロールで治療された患者と比較して、26週間以上の治療に基づいている。
【0021】
対象は、療法開始時にビタミンDが不十分であり、例えば、血清総25-ヒドロキシビタミンDが30ng/mL未満である対象であり得る。投与される25-ヒドロキシビタミンDの量は、患者の、または集団の平均の、血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルの最大約93ng/mL、または最大92.5ng/mL、または最大約90ng/mL、または最大約85ng/mL、または最大約80ng/mL、または最大約70ng/mL、または最大約69ng/mL、または最大68.9ng/mLを達成するのに効果的であり得る。対象は、CKDステージ3~5、またはステージ3~4、またはステージ5を有するものを含むことができる。投与される25-ヒドロキシビタミンDは、25-ヒドロキシビタミンD3、別名カルシフェジオールを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり得る。25-ヒドロキシビタミンDは、持続放出(別名:徐放または持効性放出)を含む放出調節で投与できる。投与は、任意の適切な経路、例えば、経口、静脈内、または経皮で行うことができる。25-ヒドロキシビタミンDはまた、例えば、徐々に注射または注入を介して、例えば、少なくとも1時間、任意選択で最大5時間の期間にわたって、長期間にわたって静脈内投与することができる。投与経路および/またはスケジュールは、例えば5以下または4.8以下のVMRによって特徴付けられる、CYP24A1の実質的な誘導が回避されるようなものであり得る。25-ヒドロキシビタミンDの用量は、例えば、週に2回、週に3回、または週に1回、例えば、毎日または他の一時的なベースで提供することができる。上記のように、投薬量は、対象の血清総25-ヒドロキシビタミンDを50ng/mLを超える、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mLの濃度に増加させかつ維持するのに効果的であり、例えば、1日30μg、または1日60μg、または1日90μgである。25-ヒドロキシビタミンDは、30μg~1000μgの25-ヒドロキシビタミンD、または30μg~600μgの25-ヒドロキシビタミンD、例えば、30μg、または60μg、または90μg、または200μgを含む単位用量形態で投与することができる。いくつかの実施形態では、方法は、週に約100μg~約900μgの範囲または週に約300μg~約900μgの範囲、例えば週に600μgで25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含み、任意選択で週に2回または3回の用量に分割され、例えば透析治療時に週に3回投与することを含む。
【0022】
本明細書に記載の方法、物品およびキットについて、構成成分、その組成範囲、代替物、条件、およびステップを含むがこれらに限定されない任意選択による特徴は、本明細書で提供される様々な態様、実施形態、および実施例から選択されることが企図される。
【0023】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明の考察から当業者に明らかであろう。本方法は、様々な形態の実施形態の影響を受けるが、以下の説明は、かかる開示が例示的なものであるという理解の下に特定の実施形態を含むものであり、本発明が本明細書に記載される特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の理解をさらに容易にするために、3つの図面が、本明細書に添付されている。
【0025】
図1-1】血清25-ヒドロキシビタミンD、1,25-ジヒドロキシビタミンD、血漿iPTHの、治療群およびCKDステージ別の変化を示す。治療前のベースライン(0週目)、8~12週目、および20~26週目のPP対象の平均(SE)データを、治療群およびCKDステージごとに分析した。活性群と対応するプラセボ群との間、またはCKDステージ間の違いは、t検定によって計算された。図1(A)は血清総25-ヒドロキシビタミンD(25-OH-D)を示す図1(B)は血清総1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH)2D)を示す図1(C)は血漿iPTHを示す¶は対応するプラセボ群と有意差があることを示し、p<0.05;¶¶は、対応するプラセボ群と有意差があることを示し、p<0.01;¶¶¶¶は、対応するプラセボ群と有意差があることを示す、p<0.0001。図1(A)~1(C)のそれぞれで、棒グラフが、各群の左から右に、プラセボ-CKD3、プラセボ-CK4、ER-CKD3、およびER-CKD4の順序で示されている。
図1-2】表2
図1-3】表3
図2】治療期間および治療後の25-ヒドロキシビタミンDの五分位点(quintile)による血漿iPTHの分析を示す。PP対象からの平均(SE)データは、治療期間[ベースライン(0週)、12週目(治療8~12週の平均)およびEAP(有効性評価期間、治療20~26週の平均)、図2(A)]ごとに所与の五分位点内(図2Aおよび図2Bの上部)で、および25-ヒドロキシビタミンD治療後五分位点ごとに(それぞれn=71-72)(図2Bの下部)分析した。ベースライン(図2Aに示されている)およびEAPでの五分位点1(Quintile 1)(図2Bに示されている)との違いは、ANOVAとそれに続くボンフェローニ補正によって計算された。ULN=正常上限。*は、ベースラインと有意差があることを示し、p<0.05;**は、ベースラインと有意差があることを示し、p<0.01;****は、ベースラインと有意差があることを示し、p<0.0001;†††は、五分位点1と有意差があることを示す、p<0.0001。
図3】治療後25-ヒドロキシビタミンD五分位点ごとの血漿iPTH奏功率の分析である。治療前のベースラインからの血漿iPTHの平均≧30%の減少として定義されるiPTH応答を達成するプロトコルごと(PP)の対象の割合を、平均の、治療後の血清総25-ヒドロキシビタミンD五分位点の関数として、分析した。†††は、五分位点1とは有意差があることを示し、p<0.05である。
図4】以下の実施例2に関連して、試験コホート間の患者分布を示す。
図5】以下の実施例1に関連して、1日30mcgのERCで12週間治療後の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルにおける患者の体重と用量応答との関係を示す。
図6】以下の実施例1に関連して、1日30mcgのERCで12週間治療後の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルにおける患者の体重と用量応答との関係を示す。
図7】以下の実施例1に関連して、1日30mcgのERCで12週間治療後の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルにおける患者の体重と用量応答との関係を示す。
図8】以下の実施例1に関連して、1日30mcgのERCで12週間治療後の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルにおける患者の体重と用量応答との関係を示す。
図9】表6
図10】表7
図11】表9
図12】表10
図13】表10続き
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に記載されるのは、SHPT進行を予防、軽減、停止、または逆転させるための材料および方法、ベースラインからのiPTHの増加に関連する疾患、状態、または障害を治療するための材料および方法、ならびにそのような方法および使用のための関連組成物である。
【0027】
本明細書に記載の結果は、徐放性カルシフェジオール(ERC)を有するCKDステージ3および4の患者において平均血清総25-ヒドロキシビタミンDが26週間にわたって92.5ng/mLのレベルへ上昇しても平均血清カルシウム、リン、FGF23、eGFR、VMR、または尿中のCa:Cr比に悪影響を及ぼさず、平均血清1,25-ジヒドロキシビタミンDが正常上限(ULN、62pg/mL)を超えて増加することはなかったことを示している。これらの試験を52週間のERC治療に延長しても、これらのパラメータに関連するリスクの増加は見られなかった。血清総25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDとの間に正の相関が観察されたが、血清総25-ヒドロキシビタミンDと血清カルシウムまたはリンとの間に相関は観察されなかった。
【0028】
少なくとも50.8ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDの平均レベル、および本明細書に記載のこれらのレベルの達成は、血清1,25-ヒドロキシビタミンDの比例した増加、ならびに血漿iPTHおよび血清骨代謝回転マーカーの減少と関連し、治療前のベースラインからのEOT iPTHの>10%の増加として定義されるSHPT進行を減弱させ、平均血清カルシウム、リン、FGF23、eGFR、または尿中Ca:Cr比の有害な変化とは関連しない。
【0029】
本明細書に記載の25-ヒドロキシビタミンD曝露の増加はまた、血清骨代謝回転マーカーの進行性上昇を減弱させるだけでなく、実際にこれらのマーカーのレベルを低下させ、高代謝回転骨疾患の制御の改善および関連する有害な後遺症のリスクの低下を示唆する。骨の劣化およびその結果生じる骨折は、SHPTのCKD患者の罹患率および死亡率の重要な原因である。わずかに上昇したPTHでさえ、最近、骨の構造に大きな変化をもたらし、脊椎のBMDを低下させることが実証されている。骨の健康状態の悪化は、CKDにおける血管石灰化ならびに関連する高率の心血管系の罹患率および死亡率と強く関連しており、腎臓病患者の骨疾患を診断および補正することで、骨の健康状態を改善し、医療費を削減することに大きな関心が寄せられている。
【0030】
本明細書の方法の別の態様は、本明細書に記載の方法によって患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを92.5ng/mL超に、例えば、少なくとも95ng/mL、または少なくとも100ng/mL、または少なくとも125ng/mL、または少なくとも150ng/mL、少なくとも175ng/mL、少なくとも200ng/mLのレベルに、高くすることにより、例えばSHPTを有するステージ3もしくは4、または5のCKD患者の血漿iPTHを、カルシウム代謝、またはリン代謝、またはこれらのマーカー、または前述の任意の組み合わせを妨害することなく、正常化する。本方法は、例えば、約120ng/mL~約200ng/mL、または約120ng/mL~約160ng/mL、または約150ng/mL~約200ng/mLの範囲の血清25-Dレベルを達成するための反復投与を含み得る。
【0031】
材料および方法は、別途記述がない限り、以下に詳述される、任意選択のさらなる要素、特徴、およびステップのうちの1つ以上の任意の組み合わせを含む実施形態を含むことが企図される。
【0032】
人体に対して実施される方法の特許を禁止する管轄区域においては、組成物のヒト対象への「投与」の意味は、ヒト対象が任意の手法(例えば、経口、吸入、局所適用、注射、挿入など。)で自己投与するであろう調整された物質を処方することに限定されるものとする。特許可能な主題を定義する法律または規制に則った最も広い合理的な解釈が意図されている。人体に対して実施される方法の特許を禁止しない管轄区域では、組成物の「投与」は、人体に対して実施される方法と前述の活動の両方を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、指定されたものに加えて、他の薬剤、要素、ステップ、または特徴を含む可能性を示す。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ビタミンD不足症および欠乏症」は一般に、血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルが30ng/mL未満であると定義される。
【0035】
本明細書で使用する場合、「高カルシウム血症」は、補正血清カルシウムレベルが10.2mg/dLを超えている患者の状態を指す。ヒトの正常な補正血清カルシウムレベルは約8.6~10.2mg/dLである。本明細書で使用される場合、「高カルシウム尿症」という用語は、患者が男性で275mgを超え、女性で250mgを超える尿中カルシウム排泄を有する患者の状態を指す。代替の方法では、高カルシウム尿症は、体重1kgあたり4mgを超えるカルシウムの毎日の尿中排泄として定義することができる。別の代替案として、高カルシウム尿症は、尿1リットルあたり200mgを超えるカルシウムの24時間尿中カルシウム濃度として定義することができる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「高リン血症」という用語は、血清リンレベルが4.6mg/dLを超えている患者の状態を指す。
【0037】
本明細書で使用する場合、25-ヒドロキシビタミンDという用語は一般的に、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、および25-ヒドロキシビタミンD4を含む、25-ヒドロキシビタミンDの形態を指す。本明細書に記載のいかなる方法においても、25-ヒドロキシビタミンDの使用は、25-ヒドロキシビタミンD2と25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせを含む、それらからなる、または本質的にそれらからなり得ることが企図される。本明細書に記載されるいかなる方法においても、25-ヒドロキシビタミンDの使用は、25-ヒドロキシビタミンD3を含む、それからなる、または本質的にそれからなり得ることが企図される。
【0038】
本明細書で使用する場合、「血清総25-ヒドロキシビタミンD」という用語は、血清中の25-ヒドロキシビタミンD2と25-ヒドロキシビタミンD3の合計を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、1,25-ジヒドロキシビタミンDという用語は一般的に、1,25-ジヒドロキシビタミンD2および1,25-ジヒドロキシビタミンD3を含む、25-ヒドロキシビタミンDの形態を指す。「血清総1,25-ジヒドロキシビタミンD」という用語は、血清中の1,25-ジヒドロキシビタミンD2と1,25-ジヒドロキシビタミンD3の合計を指す。
【0040】
本開示による任意の方法または使用において、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与は、例えば、1日あたり平均30~150μgの量での投与を含み得る。例えば、1日用量は30μg、60μg、90μg、または120μgであり得る。個々の用量は、例えば、5~1,000μgの範囲であり得る。
【0041】
25-ヒドロキシビタミンDは、任意の好適なスケジュールで投与され得る。例えば、投薬スケジュールは、例えば毎日、またはより少ない頻度で、または隔日、または週2回、または週3回、または毎週、または隔週であり得る。効果的な投与は、週あたり約100μg~約900μgの範囲、または週あたり約300μg~約900μgの範囲、任意選択で週あたり600μgで25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含み得る。週用量は、例えば、週に2回または3回の用量に分割することができる。例えば、用量を透析治療時に週3回投与することができる。
【0042】
25-ヒドロキシビタミンDは、食物と一緒であっても、食物と一緒でなくても、または食物とは関係なく投与することができる。ある種の実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは、食物と一緒ではなく、例えば、就寝時に投与され、食物による25-ヒドロキシビタミンDの吸収の変動を低下させる。
【0043】
本開示による任意の方法または使用では、方法は、療法開始時の患者の体重に基づいて、さらに任意選択で療法開始時の患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルおよび/または治療の結果としての患者の血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇に基づいて、選択される用量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む。様々な態様では、用量は、療法開始時の患者の体重1kgあたり約0.1mcg~療法開始時の患者の体重1kgあたり約1mcgの、任意選択で、療法開始時の患者の体重1kgあたり約0.15mcg~療法開始時の患者の体重1kgあたり約0.85mcgの1日用量であるか、または1日用量に相当する量である。いくつかの態様では、1日用量は、療法開始時の患者の体重1kgあたり約0.4mcg~約0.8mcgであり、任意選択で、本方法は、開始時の患者の体重が140kg以上である場合、60mcgの開始用量を患者に投与することを含む。
【0044】
本開示の別の態様は、CKDを有する患者のSHPTを治療する方法であって、患者の体重およびベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて、または患者の体重および血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇に基づいて選択される25-ヒドロキシビタミンDの用量を患者に投与することを含む。様々な態様では、本方法は、少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの治療後血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように患者の用量を選択することを含む。様々な例では、本方法は、少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの定常状態の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように患者の用量を選択することを含む。任意選択で、投与は徐放性経口投与による。様々な態様では、用量は1日用量である。様々な態様では、mcgでの用量(D)は、キログラムでの療法開始時の患者の体重(W)およびng/mlでの血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇(R)に、スケーリングファクタ(F)を含めた関数として、D=(RxW)/Fの関係によって選択される1日用量であるかまたは1日用量に相当する量であり、式中、Fは、約60~約80、または約65~約75、または約68~約72、または約69~約71、または約70の範囲にある。様々な場合では、患者の体重Wは、50kg~180kgの範囲にある。患者は、いくつかの態様では、ステージ3またはステージ4のCKDを有している。また、様々な態様では、患者の用量は、少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/mlの治療後血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供するように、患者の体重およびベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて選択される。例示的な例では、本方法は、治療前のベースラインと比較して、患者の血漿iPTH濃度の少なくとも30%の低下をさらに提供する。
【0045】
本開示による任意の方法または使用において、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与は、25-ヒドロキシビタミンDを投与して、血清総25-ヒドロキシビタミンDを50ng/mLを超える、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mLまたは少なくとも60ng/mLのレベルに増加させることを含み得る。母集団の観点から、SHPT進行を経験している対象の割合は、例えば、30%、25%、20%、15%、10%未満、または9.7%以下、または3%未満、または2.8%以下である可能性がある。投与される25-ヒドロキシビタミンDの量は、患者、または集団の平均の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルの最大300ng/mL、最大200ng/mL、または最大150ng/mL、または最大120ng/mL、または最大100ng/mL、または最大約93ng/mL、または最大92.5ng/mL、または最大約90ng/mL、または最大約85ng/mL、または最大約80ng/mL、または最大約70ng/mL、または最大約69ng/mL、または最大68.9ng/mLを達成するのに効果的であり、さらに高カルシウム血症、高リン血症、および/または高カルシウム尿症を引き起こすことがない。例えば、本方法は、25-ヒドロキシビタミンDを増加させて、患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを50ng/mL超~約300ng/mL、または50ng/mL超~約200ng/mL、または50ng/mL超~約100ng/mLの範囲の、任意選択で60ng/mL~約300ng/mL、または60ng/mL超~約200ng/mL、または60ng/mL超~約100ng/mLの範囲の、濃度に維持することを含むことができる。本方法は、25-ヒドロキシビタミン療法の開始後、少なくとも12週間、少なくとも19週間、または少なくとも26週間にわたり、血清総25-ヒドロキシビタミンDをそのようなレベルおよび/またはそのような量に増加させる25-ヒドロキシビタミンD療法を含むことができ、任意の所望の期間、例えば、少なくとも39週間、または少なくとも52週間以上継続することができる。様々な態様では、SHPT進行の予防、停止、または逆転は、26週間以上にわたって達成される。本方法は、血清総25-ヒドロキシビタミンDを、療法目標範囲、例えばそのような範囲で定常状態の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを維持するようなレベルに、および/または例えば、そのような量に増加させるための25-ヒドロキシビタミンD療法を含むことができる。
【0046】
様々な態様では、SHPT進行は、(a)未治療の患者、または(b)活性型ビタミンD療法(任意選択でカルシトリオール、パリカルシトール、またはドキセルカルシフェロール)で治療された患者、(c)栄養ビタミンD(エルゴカルシフェロールおよび/またはコレカルシフェロール)で治療された患者、または(d)ヒドロフェロールで治療された患者と比較した26週間の治療に基づいている。例えば、26週間の治療後のSHPT進行の比較は、毎日1mcgのパリカルシトールを投与されている患者、または1日あたり0.25μgのカルシトリオールを投与されている患者、または1日あたり0.5μgのカルシトリオールを投与されている患者、または1日あたり0.25μgのドキセルカルシフェロールを投与されている患者、またはエルゴカルシフェロール(1日あたり14,000IU、もしくは1日あたり35,000IU、もしくは1日あたり50,000IU、もしくは1日あたり105,000IU)を投与されている患者、またはコレカルシフェロール(1日あたり5,000IU、もしくは1日あたり7,000IU、もしくは1日あたり14,000IU、もしくは1日あたり28,000IU、もしくは1日あたり35,000IU、もしくは1日あたり50,000IU)を投与されている患者、と比較できる。また、治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法が提供され、当該方法が、ビタミンD類似体(VDA)または栄養ビタミンD(NVD)、ヒドロフェロール、またはこれらの任意の組み合わせで達成されるよりも優れた程度まで、(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを増加させかつ維持すること、(b)患者の血清iPTHを減少させること、または(c)これらの組み合わせ、を含む。任意選択で、本方法は、VDA、NVD、ヒドロフェロール、またはこれらの任意の組み合わせで達成されるよりも少なくとも2倍である程度まで、(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを増加させかつ維持すること、(b)患者の血清iPTHを減少させること、または(c)これらの任意の組み合わせ、を含む。様々な態様では、血清総25-ヒドロキシビタミンDは、治療前のレベルと比較して20ng/mLを超えて増加する。様々な態様では、血清iPTHは、治療前のレベルと比較して、少なくとも10pg/mL、少なくとも20pg/mL、または少なくとも30pg/mL減少する。様々な例では、血清iPTHは治療前のレベルと比較して30%を超えて減少する。
【0047】
さらに、治療前のベースラインから>10%の血漿iPTHの増加として定義される患者のSHPT進行を予防、停止、または逆転させる方法であって、(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを治療前のレベルと比較して20ng/mLを超えて増加させかつ維持すること、(b)患者の血清iPTHを治療前のレベルと比較して少なくとも30%減少させること、または(c)これらの組み合わせ、を含む、方法が提供される。SHPT進行の予防、停止、または逆転の本開示されている方法の様々な例では、SHPT進行の予防、停止、または逆転が、26週間以上にわたって達成される。
【0048】
さらに、(a)患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDを20ng/mLを超えて増加させかつ維持すること、(b)患者の血清iPTHを少なくとも30pg/mL減少させること、または(c)これらの任意の組み合わせ、によって患者を治療する方法であって、当該方法が、少なくとも6ヶ月の治療期間にわたって、ある量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0049】
本開示の別の態様は、SHPTおよびCKD(例えば、ステージ3またはステージ4)を有する患者を、患者の体重に基づいて選択される25-ヒドロキシビタミンD(例えば、25ヒドロキシビタミンD3)の用量で治療して、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルの所望の増加(上昇)をもたらす、方法である。加えて、または代替的に、SHPTおよびCKD(例えば、ステージ3またはステージ4)を有する患者を、患者の体重および治療前のベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて選択される25-ヒドロキシビタミンD(例えば、25ヒドロキシビタミンD3)の用量で治療して、例えば治療後または定常状態での所望の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルをもたらす、方法がある。
【0050】
30mcgのRayaldee(登録商標)徐放性カルシフェジオールを12週間毎日投与した後、療法開始時に低体重の患者では、比較的大きい血清25-ヒドロキシビタミンDの上昇を経験し、一方、療法開始時に比較的高体重の患者は、比較的低い血清25-ヒドロキシビタミンDの上昇を経験したことが観察された(下記の実施例1の図5を参照)。12週間の療法後に得られた患者の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度も、比較的低体重患者では比較的高レベルになる傾向があったが、レベルは、また患者のベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度によっても影響を受けた(以下の実施例1の図6を参照)。言い換えれば、高体重の患者は、血清25-ヒドロキシビタミンDの同等の上昇を経験するために、より高い用量の25-ヒドロキシビタミンDを必要とする。同様に、ビタミンDが不十分または不足している高体重の患者(例えば、10ng/mlのベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD)の場合、その患者が50ng/mlの血清25-ヒドロキシビタミンDレベルに達するには比較的高用量が必要であり、またその患者が血漿iPTHの少なくとも30%の低下を経験するためにはより高用量が必要である。
ベースライン体重(kg)あたりの用量(30mcg)の関数としての血清25-ヒドロキシビタミンD濃度(ng/ml)の患者の増加が、正の相関関係を示し、例えば、線形モデルに適合させた場合、傾きは約63であり、切片がゼロに調整された場合、約70であったことも、観察された(以下の実施例1の図7を参照)。
【0051】
上記を考慮して、本明細書に提供されるのは、患者(例えば、CKDを有する患者)における副甲状腺機能亢進症(例えばSHPT)を治療する方法であって、患者の体重およびベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて、または患者の体重および血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇に基づいて、選択される25-ヒドロキシビタミンDの用量を患者に投与することを含む、方法である。また、血清25-ヒドロキシビタミンD濃度の増加から利益を得るであろう任意の状態(例えば、ビタミンD不足)を治療する方法であって、患者の体重およびベースライン血清25-ヒドロキシビタミンD濃度に基づいて、または患者の体重および血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇に基づいて、選択される25-ヒドロキシビタミンDの用量を患者に投与することを含む、方法も提供される。用量は、血清25-ヒドロキシビタミンD濃度の任意の所望の上昇(例えば、少なくとも10ng/ml、または20ng/ml、または30ng/ml、または40ng/ml、または45ng/ml、または50ng/ml)または任意の治療後(または定常状態)血清25-ヒドロキシビタミンD濃度(例えば、少なくとも50ng/ml、または少なくとも50.8ng/ml、または少なくとも51ng/ml、または少なくとも60ng/ml)を提供するように選択することができる。投与は、任意の適切な形態および投与経路、例えば、任意の経路による徐放性投与、任意の放出メカニズムによる経口投与であり得、そしてまた、徐放性経口投与として企図される。投与の頻度は、例えば、毎日、隔日、毎週3回、毎週、隔週、または毎月など、必要に応じて選択することができる。徐放性経口投与による毎日の投与が企図されている。毎日の投薬以外の頻度が選択された場合、用量は、同等の毎日の投与濃度に基づいて単純にスケーリング(比率化(ratioed))することができ、例えば、毎日30mcgではなく毎週210mcgである。
【0052】
ある種の実施形態では、mcgでの用量(D)は、キログラムでの療法開始時の患者の体重(W)およびng/mlでの血清25-ヒドロキシビタミンDの所望の上昇(R)にスケーリングファクタ(F)を含めた関数としてD=(RxW)/Fの関係によって選択される1日用量であるかまたは1日用量に相当する量であり、式中、Fは、約50~約80、または約55~約80、または約60~約75、または約68~約72、または約69~約71、または約70の範囲にある。例えば、血清25-ヒドロキシビタミンDの40ng/mlの上昇を必要とする70kgの患者には、40mcgの1日用量を与えることができ、血清25-ヒドロキシビタミンDの40ng/mlの上昇を必要とする120kgの患者には、70mcgの1日用量を与えることができる。別のタイプの実施形態では、スケーリングファクタFは、療法開始時の患者の体重に基づいて追加の構成要素を有することができ、例えば、より高体重を有する患者は、比較的より低体重を有する患者と比較して、比較的高mcg/kg用量を得る(例えば、F=f-(YxW))、式中fは、約60~約80、または約65~約75、または約68~約72、または約69~約71、または約70の範囲にあり、Yは0.01~0.1の範囲の単位のない調整ファクタである)。
【0053】
前述の用量選択は、本明細書の開示の一態様である任意の他の方法で、任意選択で本明細書に記載の他の投薬および結果要素と組み合わせて使用することができる。
【0054】
本明細書の開示による任意の方法または使用において、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与は、カルシウム代謝、またはリン代謝、またはこれらのマーカー、または前述の任意の組み合わせを妨害することを回避することを含み得る。例えば、本方法は、治療前のベースライン濃度に関して、血清カルシウムを有意に増加させないこと、または血清リンを有意に増加させないこと、またはFGF23を有意に増加させないことを含み得る。本方法は、治療前のベースライン濃度に関して、血清カルシウムを有意に増加させないこと、および血清リンを有意に増加させないことを含むことができる。本方法は、治療前のベースライン濃度に関して、血清カルシウムを有意に増加させないこと、血清リンを有意に増加させないこと、およびFGF23を有意に増加させないことを含むことができる。本方法は、治療前のベースライン濃度に関して、高カルシウム血症を引き起こすことを回避するか、または高リン血症を引き起こすことを回避するか、または高カルシウム尿症を引き起こすことを回避するか、またはFGF23を上昇させることを回避することができる。例えば、本方法は、高カルシウム血症および高リン血症を引き起こさないことを含み得る。本方法は、治療前のベースライン濃度に関して、高カルシウム血症、高リン血症、およびFGF23の上昇を、引き起こさないことを含むことができる。本方法は、治療前のベースライン濃度に関して、高カルシウム血症、高リン血症、高カルシウム尿症、およびFGF23の上昇を、引き起こさないことを含むことができる。
【0055】
本明細書の開示による任意の方法または使用では、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与は、血清総25-ヒドロキシビタミンDが定常状態の目標レベルに増加する間に、血清総25-ヒドロキシビタミンDの比較的低い1日平均上昇、例えば、4ng/mL以下、または3.5ng/mL以下、または3ng/mL以下、または2ng/mL以下の1日平均上昇、を提供することを含み得る。任意選択で、血清総25-ヒドロキシビタミンDの増加中の血清総25-ヒドロキシビタミンDの1日平均上昇は、少なくとも0.2ng/mL、または少なくとも0.3ng/mL、または少なくとも0.5ng/mL、または少なくとも1ng/mL、または少なくとも2ng/mL、または少なくとも2.5ng/mLであり得、例えば、約0.2ng/mL~約4ng/mL、または約0.2ng/mL~約3.5ng/mL、または約0.2ng/mL~約3ng/mL、または約0.2ng/mL~約2.5ng/mL、または約0.2ng/mL~約2ng/mL、または約0.2ng/mL~約1ng/mL、または約0.3ng/mL~約4ng/mL、または約0.3ng/mL~約3.5ng/mL、または約0.3ng/mL~約3ng/mL、または約0.3ng/mL~約2.5ng/mL、または約0.3ng/mL~約2ng/mL、または約0.3ng/mL~約1ng/mLの範囲であり得る。約3ng/mLの上限が特に考慮される。同様に、個々の投与後24時間以内に最大血清総25-ヒドロキシビタミンDの上昇(ΔC24)が、4ng/mL以下、または3.5ng/mL以下、または3ng/mL以下、または2ng/mL以下であり得、および任意選択で少なくとも0.2ng/mL、または少なくとも0.3ng/mL、または少なくとも0.5ng/mL、または少なくとも1ng/mL、または少なくとも2ng/mL、または少なくとも2.5ng/mL、例えば約0.2ng/mL~約4ng/mL、または約0.2ng/mL~約3.5ng/mL、または約0.2ng/mL~約3ng/mL、または約0.2ng/mL~約2.5ng/mL、または約0.2ng/mL~約2ng/mL、または約0.2ng/mL~約1ng/mL、または約0.3ng/mL~約4ng/mL、または約0.3ng/mL~約3.5ng/mL、または約0.3ng/mL~約3ng/mL、または約0.3ng/mL~約2.5ng/mL、または約0.3ng/mL~約2ng/mL、または約0.3ng/mL~約1ng/mLの範囲であり得る。約3ng/mLの上限が特に考慮される。
【0056】
本明細書の開示による代替方法では、本方法は、任意選択で例えば毎月、隔週、または毎週などの低頻度投与によって、3ng/mLを超える可能性のある、例えば、少なくとも0.2ng/mL、0.3ng/mL、1ng/mL、2ng/mL、3ng/mL、5ng/mL、もしくは10ng/mLおよび最大30ng/mL、もしくは20ng/mL、もしくは10ng/mLであり得る、例えば約0.2ng/mL~30ng/mL、もしくは0.3ng/mL~10ng/mL、もしくは0.3ng/mL~20ng/mL、または>3ng/mL~30ng/mL、>3ng/mL~20ng/mL、もしくは>3ng/mL~10ng/mL、または>3ng/mL~7ng/mL、もしくは>3ng/mL~<7ng/mL、または>3ng/mL~6ng/mL、もしくは>3ng/mL~5ng/mL、もしくは>3ng/mL~4ng/mLの範囲であり得る、ΔC24を提供しながら、血清総25-ヒドロキシビタミンDが定常状態の目標レベルに増加する間に、例えば4ng/mL以下、または3ng/mL以下、または2ng/mL以下、および任意選択で少なくとも0.2ng/ml、または少なくとも0.3ng/mlの血清総25-ヒドロキシビタミンDの比較的低い1日平均上昇を提供することを含み得る。
【0057】
本明細書の開示による別の代替方法では、本方法は、任意選択で例えば毎月、隔週、または毎週などの低頻度投与によって、少なくとも0.2ng/ml、0.3ng/ml、1ng/mL、2ng/mL、3ng/mL、5ng/mL、もしくは10ng/mLおよび最大30ng/mL、もしくは20ng/mL、もしくは10ng/mLであり得る、例えば約0.2ng/mL~30ng/mL、もしくは0.3ng/mL~10ng/mL、もしくは0.3ng/mL~20ng/mL、または>3ng/mL~30ng/mL、>3ng/mL~20ng/mL、もしくは>3ng/mL~10ng/mL、または>3ng/mL~7ng/mL、もしくは>3ng/mL~<7ng/mL、または>3ng/mL~6ng/mL、もしくは>3ng/mL~5ng/mL、もしくは>3ng/mL~4ng/mLの範囲であり得る、約ΔC24を提供しながら、血清総25-ヒドロキシビタミンDが定常状態の目標レベルに増加する間に、約0.2ng/mL~約10ng/mL、または約0.3ng/mL~約10ng/mL、または約0.5ng/mL~約10ng/mL、または約1ng/mL~約10ng/mLの範囲~約、例えば3ng/mL以下または2ng/mL以下、および任意選択で少なくとも0.2ng/ml、または少なくとも0.3ng/mlである、血清総25-ヒドロキシビタミンDの1日平均上昇を提供するることを含み得る。
【0058】
本明細書の開示による任意の方法または使用では、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与は、少なくとも8週間、または少なくとも10週間、または少なくとも12週間、または少なくとも14週間、例えば8~14週間、8~12週間、または10~12週間の期間にわたって血清総25-ヒドロキシビタミンDを定常状態レベルに増加させることを含み得る。例えば、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与は、血清総25-ヒドロキシビタミンDを、少なくとも8週間、少なくとも10週間、または少なくとも12週間、または少なくとも14週間、例えば、8~14週間、8~12週間、または10~12週間の期間にわたって、約50~約300ng/mL、もしくは約50~約200ng/mL、もしくは約50~約100ng/mL、または50超~約300ng/mL、もしくは50超~約200ng/mL、もしくは50超~約100ng/mLの範囲、任意選択で少なくとも50.8ng/mL、任意選択で少なくとも51ng/mL、任意選択で、約60~約300ng/mL、もしくは約60~約200ng/mL、もしくは約60~約100ng/mL、または60超~約300ng/mL、もしくは60超~約200ng/mL、もしくは60超~約100ng/mL以上の範囲の定常状態レベルに増加させることを含み得る。
【0059】
本明細書の開示による任意の方法または使用では、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与は、25-ヒドロキシビタミンDを投与して、患者の血清総1,25-ジヒドロキシビタミンDを少なくとも40pg/mL、または少なくとも45pg/mL、および任意選択で62pg/mL以下、例えば40pg/mLまたは45pg/mLの範囲の定常状態レベルに増加させることを含み得る。
【0060】
本明細書の開示による任意の方法または使用では、患者は、療法開始時にビタミンDが不十分である、例えば、30ng/mL未満の血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する患者であり得る。任意選択で、療法開始時の患者の血清総25-ヒドロキシビタミンDは30ng/mL未満であり得る。
【0061】
本明細書の開示による任意の方法または使用では、患者は、療法開始時に30ng/mL超または約30ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する患者であり得る。任意選択で、患者は、療法開始時に40ng/mL超または約40ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する患者であり得る。
【0062】
本明細書の開示による任意の方法または使用では、患者は、CKD、任意選択でCKDステージ3~5、またはステージ3~4、またはステージ5を有する患者であり得る。任意選択で、患者は、血液透析による治療も受けている患者であり得る。
【0063】
本方法は、血漿iPTHレベルを低下させるため25-ヒドロキシビタミンD療法を含むことができる。本方法は、その治療前のレベルと比較して、血漿iPTHを少なくとも約15%、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または少なくとも約50%低下させるために25-ヒドロキシビタミンDを含むことができる。別の態様では、25-ヒドロキシビタミンDの反復投与は、任意選択で、その治療前のレベルと比較して、患者集団の平均血漿インタクトPTHレベルを少なくとも約15%、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または少なくとも約50%低下させるのに有効な量で、患者集団に投与される。
【0064】
本方法は、骨塩密度を、例えば、Tスコアが少なくとも-2.5、または-2.5より大きい、または少なくとも-2.0、または少なくとも-1.5、または少なくとも-1.0、または-1.0より大きくなるまで増加させる25-ヒドロキシビタミンD療法を含み得る。本方法は、骨吸収マーカー、例えば1つ以上の、血清総アルカリホスファターゼ、BSAP、CTX-1、P1NP、およびFGF-23の、血中レベルを減少させるための25-ヒドロキシビタミンD療法を含むことができる。例えば、マーカーは、検査室測定技術の基準範囲内まで低下させることができる。別の態様では、マーカーは、少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%低下させることができる。
【0065】
別の態様では、本方法は、本明細書に記載の25-ヒドロキシビタミンD療法を、1,25-ジヒドロキシビタミンD療法の非存在下、またはカルシトリオール療法の非存在下、またはドキセルカルシフェロール療法の非存在下、またはアルファカルシドール療法の非存在下、またはパリカルシトール療法の非存在下、またはマキサカルシトール療法の非存在下、またはファレカルシトリオール療法の非存在下、または活性型ビタミンD類似体による療法の非存在下で投与することを含み得る。
【0066】
別の態様では、本方法は、本明細書に記載されているように、かつシナカルセト療法の非存在下で、25-ヒドロキシビタミンD療法を投与することを含み得る。
【0067】
別の態様では、本方法は、本明細書に記載されているように25-ヒドロキシビタミンD療法の投与、およびシナカルセト療法の同時投与を含むことができる。
【0068】
25-ヒドロキシビタミンDは任意の形態で投与することができるが、一態様では、25-ヒドロキシビタミンDは、放出調節、例えば持続放出または遅延型持続放出によって投与することができる。例えば、持続放出を経口剤形により達成することもでき、または持続放出を経皮パッチにより達成することもできる。別の態様では、持続送達は、時間をかけて化合物をゆっくりと注射または注入すること、例えば、静脈内送達をゆっくりと押し進めることにより提供され得る。例えば、静脈内送達は、少なくとも1時間の間にわたって、任意選択で1時間~5時間にわたって行うことができる。投与は、例えば、血液透析治療と並行して行うことができる。別の態様では、投与は、患者が血液透析を受けていない間に行うことができる。
【0069】
ある種の実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは経口投与される。例えば、25-ヒドロキシビタミンDは、経口持続放出性製剤で投与され得る。代替の方法では、25-ヒドロキシビタミンDは、経口持続放出性製剤によって達成される場合と同様の血清25-ヒドロキシビタミンDの薬物動態プロファイルを生成するために、経口即放性製剤にして、1日を通して長時間かけて、複数回投与で投与され得る。
【0070】
本明細書の開示による任意の方法または使用では、25-ヒドロキシビタミンDの効果的な投与は、CYP24A1の実質的な誘導を回避するために25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含み得る。例えば、本方法は、血清24,25-ジヒドロキシビタミンD3/血清総25-ヒドロキシビタミンD3×100、として計算されるビタミンD代謝物の比率(VMR)が5以下、または4.8以下を達成するために、25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含むことができる。
【0071】
副甲状腺機能亢進症は、慢性的に低い血清カルシウムレベル、ビタミンD欠乏症、および腎臓病によって引き起こされる可能性がある。副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺の良性腫瘍(腺腫)、または頻度は低いが癌性腫瘍によっても引き起こされる可能性がある。副甲状腺機能亢進症は、2つ以上の副甲状腺が肥大した場合にも引き起こされる可能性がある(過形成)。副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺の肥大、多発性内分泌腫瘍症、放射線被曝、およびリチウム療法の使用など、副甲状腺の他の機能障害によって引き起こされる可能性がある。副甲状腺機能亢進症を引き起こす副甲状腺腫瘍には、多発性内分泌腫瘍症MEN1およびMEN2Aが含まれる。
【0072】
正常なベースライン値を超える血漿iPTHの増加に関連する疾患および状態には、腎性骨異栄養症、嚢胞性線維性骨炎、骨軟化症、骨粗鬆症、骨減少症、骨外性石灰化、および関連する障害、例えば、骨痛、関節周囲炎およびモッカーバーグ硬化症が含まれる。肺血管石灰化および肺高血圧症、心血管疾患、および尿毒症性最小動脈石灰化症(CUA)を含む軟部組織および血管石灰化は、副甲状腺機能亢進症の追加の深刻な結果である。副甲状腺機能亢進症の他の症状には、心血管の構造および機能の変化。免疫機能障害、腎性貧血、神経障害、血液学的異常、および内分泌機能異常が含まれる。副甲状腺機能亢進症は、加齢に伴うビタミンD欠乏症(ARVDD)症候群と関連している可能性がある
【0073】
経口を意図した制御放出組成物は、25-ヒドロキシビタミンD2および/または25-ヒドロキシビタミンD3が単位用量あたり1~1000μgの濃度で含有するように設計し、例えば、25-ヒドロキシビタミンD2および/または25-ヒドロキシビタミンD3が長期間にわたって、例えば、少なくとも4時間、または少なくとも8時間、または少なくとも12時間、または少なくとも24時間にわたって、実質的に一定に放出されるように調製することができる。
【0074】
経口投与に適した25-ヒドロキシビタミンDの持続放出形態の調製は、多くの異なる技術に従って実施することができる。例えば、1つ以上の25-ヒドロキシビタミンD化合物をマトリックス内に分散させることができ、すなわち、速度制御成分と賦形剤との比率が選択されている選択混合物をマトリックス内に分散させ、任意選択でコーティング材料で覆うことができる。また別の方法では、1つ以上の様々なコーティング技術を利用して、医薬製剤からの25-ヒドロキシビタミンDの放出速度を制御することができる。例えば、コーティングが経時的に徐々に溶解することにより、任意選択でマトリックスに入った剤形内容物を局所環境の体液に曝露することができる。ある種の実施形態では、コーティングが透過性になった後、そのコーティングを通して、例えば、コーティング内に含有されるマトリックスの外表面から25-ヒドロキシビタミンDが拡散する。そのようなマトリックスの表面で25-ヒドロキシビタミンDが使い果たされるか、または枯渇すると、下層にある蓄えは、マトリックスを介した外部溶液への拡散によって枯渇し始める。別の種類の実施形態では、透過性のコーティングまたは構造を介した25-ヒドロキシビタミンDの放出は、そこに含有されるマトリックスの段階的な崩壊または侵食、例えば、マトリックスの1つ以上の成分の溶解度によって影響を受ける。別の種類の実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDの放出は、マトリックスの段階的な崩壊または侵食による、例えば、マトリックスの1つ以上の成分の溶解度によるものであり、かつ/または物理的完全性の欠如、マトリックスを取り囲む任意のコーティングまたは他の構造がないことによるものである。剤形は、任意選択で、25-ヒドロキシビタミンDと同じ領域または異なる領域に別の活性剤をさらに含み得る。例えば、追加の活性剤は、カルシウムを含み得る。
【0075】
一態様では、製剤は、胃管、例えば胃、小腸、または結腸の内容物に曝露された場合に、持続放出用成分を放出可能に結合するマトリックス内に1つ以上の25-ヒドロキシビタミンD化合物を提供する。
【0076】
本発明の一実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDの制御放出経口製剤は、一般に以下の手順に従って調製される。十分な量の25-ヒドロキシビタミンD、例えば、カルシフェジオールを、USPグレードの無水エタノール(または他の好適な溶媒)の最小容量に完全に溶解させ、好適な量および種類の医薬品グレードの賦形剤と混合して、室温でも人体の正常な体温でも固体または半固体であるマトリックスを形成する。マトリックスは、腸および/または結腸で徐々に崩壊する。
【0077】
好適な製剤では、マトリックスは25-ヒドロキシビタミンD化合物と結合し、25-ヒドロキシビタミンDが、単純な拡散および/または段階的な崩壊によって、4~8時間、またはそれ以上の期間にわたり小腸および/または結腸の内容物に緩徐に比較的安定して、例えば、実質的に一定して放出されるようにする。
【0078】
上記のように、25-ヒドロキシビタミンDの制御放出を提供するための手段は、活性成分を約4時間以上の時間をかけて送達する既知の制御放出送達システムのいずれかを含む任意の好適な制御放出送達システムから選択されてよく、それらには、ワックスマトリックスシステム、およびEUDRAGIT RS/RLシステム(Rohm Pharma,GmbH,Weiterstadt,Germany)が含まれる。
【0079】
ワックスマトリックスシステムは、一種の親油性マトリックスを提供する。ワックスマトリックスシステムは、例えば、蜜ろう、白色ワックス、マッコウクジラワックスまたは類似の組成物を利用することができる。ある種の実施形態では、ワックスは、非消化性ワックス、例えば、パラフィンである。活性成分はワックス結合剤中に分散され、腸液中でゆっくりと崩壊して活性成分を徐々に放出する。25-ヒドロキシビタミンDを含浸させたワックス結合剤は、ソフトゲルカプセル内に充填され得る。ソフトゲルカプセルは、1つ以上のゲル形成剤、例えば、ゼラチン、デンプン、カラギーナン、および/または他の薬学的に許容されるポリマーを含んでよい。一実施形態では、部分的に架橋された軟ゼラチンカプセルが使用される。別の選択肢として、植物系のカプセルを使用できる。ワックスマトリックスシステムでは活性成分がワックス結合剤に分散されており、これが体温で軟化し、腸液でゆっくりと崩壊して活性成分を徐々に放出する。システムは、ワックスの混合物を、任意選択のさらなる油と共に好適に含んで、体温より高いが、軟カプセルもしくは硬カプセルのシェル、または植物性カプセルシェルを作製するために使用される選択された製剤、あるいはシェルケーシングまたは他のコーティングを作製するために使用される他の製剤の溶融温度よりは低い融点を達成することができる。
【0080】
具体的には、好適な一実施形態では、マトリックス用に選択されたワックスを溶融して、完全に混合する。その後、所望量の油を加えた後、十分に混合して均質化する。次に、ワックス状混合物をその融点のすぐ上の温度まで徐々に冷却する。エタノールに溶解した所望量の25-ヒドロキシビタミンDを溶融マトリックスに均一に分配し、マトリックスをカプセル、例えば、植物系またはゼラチン系のカプセルに充填する。充填されたカプセルは、任意選択で、アセトアルデヒドなどのアルデヒドを含有する溶液で適切な時間処理され、使用時に、カプセルシェル内のポリマー、例えば、ゼラチンを部分的に架橋する。カプセルシェルは、数週間にわたって次第に架橋され、それにより、胃および腸上部の内容物への溶解に対してより耐性になる。適切に構築されている場合、このゼラチンシェルは経口投与後に徐々に溶解し、小腸に到達する頃には(完全に崩壊することなく)十分に多孔質になり、25-ヒドロキシビタミンDがワックスマトリックスから小腸および/または結腸の内容物中にゆっくりと拡散できるようにする。
【0081】
本発明の方法での使用に好適な他の脂質マトリックスの例には、グリセリド、脂肪酸および脂肪アルコール、ならびに脂肪酸エステルのうちの1つ以上が含まれる。
【0082】
ワックスマトリックスは、その予想される有効期間にわたって剤形の放出特性を安定させる安定化成分を含有することができる。安定化成分は、セルロース成分、例えば、セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースであり得る。
【0083】
一実施形態では、製剤は、25-ヒドロキシビタミンD化合物のための油性ビヒクルを含んでよい。薬学的に許容される任意の油を使用することができる。例としては、動物(例えば、魚)、植物(例えば、大豆)、および鉱油が挙げられる。油は、使用される25-ヒドロキシビタミンD化合物を容易に溶解することが好ましい。油性ビヒクルは、鉱油、特に流動パラフィンなどの非消化性油、およびスクアレンを含み得る。ワックスマトリックスと油性ビヒクルとの比率は、25-ヒドロキシビタミンD化合物の所望の放出速度を達成するために最適化することができる。したがって、より重い油成分が使用される場合、比較的少ないワックスマトリックスを使用することができ、より軽い油成分が使用される場合、比較的多いワックスマトリックスが使用され得る。
【0084】
別の好適な制御放出経口薬物送達システムは、活性25-ヒドロキシビタミンD成分が、例えば、寸法が25/30メッシュである顆粒に形成されるEUDRAGIT RL/RSシステムである。次いで、顆粒は、薄いポリマーラッカーで均一にコーティングされ、これは水不溶性であるが緩徐な水透過性である。コーティングされた顆粒は、酸化防止剤、安定剤、結合剤、潤滑剤、加工助剤などのうちの1つ以上を含む任意の添加剤と混合することができる。混合物は、圧縮して、使用前は硬く乾燥した、さらにコーティングが可能な錠剤にしてもよく、またはカプセルに注入してもよい。錠剤またはカプセルが飲み込まれ、胃液および腸液と接触すると、薄いラッカーが膨潤し始め、ゆっくりと腸液が浸透する。腸液がラッカーコーティングにゆっくりと浸透すると、含有されている25-ヒドロキシビタミンDがゆっくりと放出される。約4~8時間、またはそれ以降に、錠剤またはカプセルが小腸を通過するまでには、25-ヒドロキシビタミンDはゆっくりではあるが、完全に放出されている。したがって、摂取された錠剤は、25-ヒドロキシビタミンD、ならびに任意の他の活性成分を絶え間なく放出する。
【0085】
EUDRAGITシステムは、高透過性ラッカー(RL)と低透過性ラッカー(RS)で構成されている。RSは中性の膨潤性メタクリル酸エステルと少量のトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドをベースにした水不溶性のフィルム形成剤であり、第四級アンモニウム基と中性エステル基のモル比は約1:40である。RLも、中性メタクリル酸エステルと少量のトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドをベースにした水不溶性の膨潤性フィルム形成剤であり、第四級アンモニウム基と中性エステル基のモル比は約1:20である。コーティングの透過性、ひいては薬物放出の時間経過は、コーティング材料のRSとRLの比率を変えることによって調節することができる。Eudragit RL/RSシステムの詳細については、参照により本明細書に組み込まれる、Rohm Tech,Inc.195 Canal Street,Maiden,Mass.,02146およびK.Lehmann,D.Dreher“Coating of tablets and small particles with acrylic resins by fluid bed technology,”Int.J.Pharm.Tech.&Prod.Mfr.2(r),31-43(1981)から入手可能な技術出版物を参照されたい。
【0086】
不溶性ポリマーの他の例には、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸エステル、ブタジエンスチレンコポリマーなどが含まれる。
【0087】
剤形はまた、保存剤または安定化アジュバントなどのアジュバントを含有してもよい。例えば、好ましい製剤は、25-ヒドロキシビタミンD(例えば、約30μg、約60μg、または約90μgの25-ヒドロキシビタミンD3)、約2重量%の無水エタノール、約10重量%のラウロイルポリオキシルグリセリド、約20重量%の固形パラフィン、約23重量%のモノステアリン酸グリセロール、約35重量%の流動パラフィンまたは鉱油、約10重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および任意選択で少量の抗酸化性保存剤(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン)を含む。本発明による製剤はまた、治療的に価値のある他の物質を含有してよく、または本明細書および特許請求の範囲において特定された2つ以上の化合物を混合して含有してもよい。
【0088】
経口25-ヒドロキシビタミンDの代替として、25-ヒドロキシビタミンDの静脈内投与も企図される。一実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは、無菌静脈内ボーラスとして投与され、任意選択で、持続放出性プロファイルをもたらす組成物のボーラス注射として投与される。別の実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは、段階的な注射/注入を介して、例えば、1~5時間かけて投与され、患者の血液中のDBPへ25-ヒドロキシビタミンDが制御されて、または実質的に一定に放出される。例えば、組成物は、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、または少なくとも約6時間かけて注射または注入されてもよい。一実施形態では、本発明による静脈内投与を目的とする組成物は、単位用量あたり1~100μgの濃度の25-ヒドロキシビタミンD化合物を含有するように設計される。25-ヒドロキシビタミンDの無菌等張製剤は、25-ヒドロキシビタミンDを無水エタノール、プロピレングリコールまたは別の好適な溶媒に溶解し、得られた溶液を、1つ以上の界面活性剤、塩、および保存剤と適切な量の注射用水中で化合させることにより調製され得る。そのような製剤は、例えば、ヘパリンロックを介して、または経時的に安定して注入されるより大量の無菌溶液(例えば、生理食塩水)への添加によって、シリンジからゆっくりと投与することができる。
【0089】
25-ヒドロキシビタミンDの好適な持続放出剤形は、以下に挙げられる米国特許および米国特許出願公開などに記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み入れられる:2010/0120728A1、2010/0144684A1、2013/0137663A1、8,329,677、8,361,488、8,426,391、8,962,239、および9,861,644。
【0090】
以下の実施例は、単に本発明を例示するためだけに提供され、その範囲を如何様にも限定するためではない。
【実施例
【0091】
以下の実施例は、例示のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0092】
実施例1
SHPT、VDI、およびステージ3または4のCKDの成人被験者(n=429)をステージごとに層別化し、2つの同一の並行ランダム化二重盲検試験で、徐放性カルシフェジオール(ERC)またはプラセボのいずれかで毎日治療した。26週間の治療後、すべての被験者を血清総25-ヒドロキシビタミンDのレベルでランク付けし、五分位に分けて、ビタミンDの補充度と、それに関連する血漿iPTH、血清骨代謝回転マーカー、カルシウム、リン、インタクトな線維芽細胞成長因子23(FGF23)およびビタミンD代謝物、推算糸球体濾過率(eGFR)および尿中カルシウム対クレアチニン(Ca:Cr)比の変化との関係を調べた。
【0093】
具体的には、ランダム化二重盲検プラセボ対照デザインを用いた2つの同一の26週間多施設共同試験で、SHPT(血漿iPTH≧85および<500pg/mL)、ステージ3または4のCKD(≧15および<60mL/分/173m2のeGFR)、およびVDI(血清総25-ヒドロキシビタミンD≧10および<30ng/mL)を有する89の米国の実施施設(site)からの合計429人の被験者が登録された。その他の適格基準には、血清カルシウム≧8.4および<9.8mg/dLならびに血清リン≧2.0および<5.0mg/dLが含まれていた。除外基準には、スポット尿中カルシウム:クレアチニン(Ca:Cr)比>0.2、ネフローゼ範囲タンパク尿(>3mg/mgCr)、およびSHPTまたは腎移植のための副甲状腺摘出術の病歴が含まれていた。被験者は、平均ベースライン血清総25-ヒドロキシビタミンDの季節変動を最小限に抑えるために、多くの異なる緯度の部位に段階的に登録された。これらの試験に関する詳細は、Sprague et al.,Use of extended-release calcifediol to treat secondary hyperparathyroidism in stages 3 and 4 chronic kidney disease,Am J Nephrol 2016;44:316-325、およびSprague et al.,Extended-release calcifediol for secondary hyperparathyroidism in stage 3-4 chronic kidney disease,Expert Review of Endocrinology & Metabolism 2017;12:289-301により以前に公表され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
被験者はCKDステージによって層別化され、2:1の比率でランダム化され、就寝時に1日1回30μgのERC(または対応するプラセボ)の経口投与を12週間受け、その後就寝時に1日1回の30または60μgのERC(またはプラセボ)のさらなる14週間の治療を受けた。血漿iPTHが>70pg/mL(検査基準範囲の上限)、血清総25-ヒドロキシビタミンDが<65ng/mL(100ng/mLを超える値を駆動するリスクを低下させるため)、および血清カルシウムが<9.8mg/dLの場合、13週目の初めに1日用量を60μgに増やした。唯一の有効性主要評価項目は、治療20週目から26週目までと定義された有効性評価期間(EAP)の治療前ベースラインからの血漿iPTHの≧30%の平均減少を達成した治療意図(ITT)集団における被験者の割合であった。
【0095】
合計213人の被験者がこれら2つのRCTの最初のRCT(141人のERCおよび72人のプラセボ)に参加し、216人の被験者が他のRCT(144人のERCおよび72人のプラセボ)に参加し、354人の被験者(83%)が試験を完了した。両方のRCTからのデータは、次の理由でプールされた:(a)試験は共通のプロトコルによって管理されており、(b)米国本土内の複数の実施施設を使用して同時に実施され、(c)被験者集団は、選択基準および実際のベースラインの人口統計学的および生化学的特性に従って類似しており、(d)血清総25-ヒドロキシビタミンD、血清総1,25-ジヒドロキシビタミンD、および血漿iPTHで観察された変化は、ERCまたはプラセボ治療中に類似していた。全体として、222人の被験者(51.7%)がステージ3のCKD(151人のERCおよび71人のプラセボ)を有し、207人の被験者(48.3%)がステージ4のCKD(134人のERCおよび73人のプラセボ)を有していた。
【0096】
ITT集団には、試験薬のためにランダム化されたすべての被験者(n=429)が含まれていた。ITT集団の被験者の平均年齢は66歳(範囲25~85歳)で、50%が男性、65%が白人、32%がアフリカ系アメリカ人または黒人、21%がヒスパニック、3%がその他であった。CKDの最も一般的な原因は、糖尿病および高血圧症であり、平均eGFRは31mL/分/1.73m2であった。
【0097】
プロトコルごとの(PP)集団には、主要なプロトコル偏差がなく、少なくとも2つの血清総25-ヒドロキシビタミンDおよび2つの血漿iPTH測定値が、計算されたベースライン値および治療20週目から26週目までと定義されたEAPに含まれているすべての被験者(n=356)が含まれていた。PP集団の人口統計学的およびベースラインデータは、CKDステージごとにグループ化された表1にまとめられている。ITT集団の分析に基づく結果と実質的に異ならない結果が得られ、被験者数が26週間の治療期間を通じて一定であったためここでは、PP集団の分析のみを報告する。62人のITT被験者がEAPの前に治療を中止したため除外され、11人は主要なプロトコル違反:禁止されている併用薬の受領(n=4)、すべての選択基準を満たしていない(n=3)、投薬コンプライアンス<80%(n=3)、および時期尚早の非盲検化(n=1)、のために除外された。
【0098】
血液およびスポット尿サンプルは、毎週または隔週の間隔で収集され、OODグローバルセントラルラボ(ケンタッキー州ハイランドハイツ)の該当する安定性ウィンドウ(検証レポートに記載)中に分析された。血漿iPTHレベルは、2サイトサンドイッチ電気化学発光(Roche Elecsys、基準範囲15-65pg/mL、CV%2.7)によって決定された。血清総25-ヒドロキシビタミンDは化学発光(DiaSorin)によって決定され、血清総1,25-ジヒドロキシビタミンDはラジオイムノアッセイ(IDS)によって決定された。血清25-ヒドロキシビタミンD3(定量下限:5.00ng/mL、0.82~1.84のCV%実行中(within-run)と2.01~4.26%の実行間(between-run))および24,25-ジヒドロキシビタミンD3(定量下限:0.52ng/mL、CV%2.18~4.60実行中、3.79~9.29実行間)を、血清24,25-ジヒドロキシビタミンD3/血清総25-ヒドロキシビタミンD3*100として計算されたビタミンD代謝物比(VMR)を計算する目的で、LC-MS(Syneos)によって決定された。血清(血漿ではなく)のインタクトなFGF23レベルは、検証中の回復が良好で長期安定性があるため、酵素結合免疫吸着測定法(Millipore、基準範囲0-50pg/mL、CV%10.6)によって決定された。血清コラーゲン1型C-テロペプチド(CTx-1)は、電気化学発光(Roche Cobas、基準範囲0~856pg/mL、CV%1.4)によって測定された。インタクトプロコラーゲン1型N末端プロペプチド(P1NP)は、化学発光免疫測定法(Roche Cobas基準範囲13.8-88ng/mL、CV%5.0)によって決定され、これは、CKD患者に蓄積する可能性のあるモノマーを測定し、誤って上昇した結果をもたらすアッセイである。骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)は、質量ではなく活性を測定するアッセイであるELISA(Quidel、基準範囲14.9-42.4U/L、CV%7.7)によって決定された。総アルカリホスファターゼは酵素アッセイによって測定された(Roche Cobas、基準範囲43-115U/L、CV%2.0)。その他のパラメータは、標準的な手順で決定された。血清カルシウム値は、低アルブミンのために補正された。
【0099】
ERCまたはプラセボによる治療に応じた平均血清総25-ヒドロキシビタミンDおよび1,25-ジヒドロキシビタミンDおよび血漿iPTHの治療前ベースラインからの変化を、試験の途中(治療8~12週目)およびEAP(治療20-26週目)の両方でCKDステージによって調べた。ERCは、試験中期およびEAPの両方のCKDステージで、プラセボと同様に平均血清25-ヒドロキシビタミンDを増加させた(P<0.0001)(図1A)。ERCはまた、試験中期およびEAPの両方のCKDステージで、プラセボと比較して平均血清1,25-ジヒドロキシビタミンDを増加させ、平均血漿iPTHを低下させた(P<0.05~0.0001)(図1Bおよび1C)。血清1,25-ジヒドロキシビタミンDおよび血漿iPTHの値は、ステージ3CKDの被験者の平均ベースライン値がステージ4CKDの被験者とは異なるため、ベースラインのパーセンテージとして表された(表1)。これらの3つの主要なパラメータに対するステージ特有の応答がないため、すべての以降の分析はCKDステージを考慮せずに遂行された。
【0100】
治療後の25-ヒドロキシビタミンDの五分位点ごとにグループ化されたP被験者の人口統計学的データおよびベースラインデータを表2に示す。治療期間および治療後の2-ヒドロキシビタミンDの5分位点ごとの血漿iPTHおよび血清骨代謝マーカーの分析を表3に示す。
【0101】
ERCとプラセボのどちらを投与したかにかかわらず、全被験者をその後、治療後(EAP)の血清総25-ヒドロキシビタミンDの平均値でランク付けし、五分位に分け、五分位点1を最も低いレベルの被験者、五分位点2~5を徐々に高いレベルの被験者と定義した。各五分位点における治療後の平均(SE)25-ヒドロキシビタミンD値は、PP被験者の人口統計学的特性およびベースライン特性を(五分位点ごとに)まとめた表2の上部と、表3の左側に記載されている。各五分位点2~5の平均はすべて、五分位点1の対応する平均よりも有意に大きかった(p<0.0001)。五分位点1および2でプラセボを投与された被験者の割合は、それぞれ96%および76%であった。五分位点3~5にはプラセボ投与被験者はいなかった。五分位点2~5のデータを、一元配置分散分析とそれに続くボンフェローニ補正によって五分位点1のデータと比較した。ベースラインでの平均(SE)血清総25-ヒドロキシビタミンDは、個々の五分位内で16.1(0.6)~21.7(0.6)ng/mL(P<0.05)の範囲であった。記載されているように、ベースラインでの五分位点間の有意な変動は、平均体重、肥満度指数(BMI)、および年齢でも明らかであったが、平均eGFR、またはミネラルおよび骨の代謝に関連する平均血清と尿のパラメータに違いは検出されなかった。
【0102】
平均(SE)治療後血清総1,25-ジヒドロキシビタミンDは、五分位点1の34.3(1.3)pg/mLから五分位点5の48.5(2.1)pg/mLへ、五分位点全体にわたって徐々に増加した。五分位点2~5の平均は、すべて五分位点1の平均よりも有意に大きかった(p<0.01)。
【0103】
平均(SE)治療後血清24,25-ジヒドロキシビタミンD3は、五分位点1の0.7(0.04)から五分位点5の5.6(0.27)ng/mLへ徐々に増加した。値は、最も上位の2つの五分位点についてのみ五分位1と異なった(P<0.05)。
【0104】
平均(SE)治療後VMRは、五分位点1の3.6(0.22)から五分位点4の4.8(0.22)に徐々に上昇したが、その後、五分位点5の4.7(0.19)で安定したままであった。
【0105】
平均(SE)血漿iPTHは、五分位点1および2で治療中に上昇傾向にあり、主にプラセボ被験者が含まれていたが、上位3つの五分位点では徐々に減少した(P<0.05)(表3および図2A)治療後の平均iPTHは五分位点1で166(10)pg/mLであり、五分位点3~5で有意に低く(p<0.001)、それぞれ115(6)、101(5)、97(5)pg/mLに達した(図2B)。観察されたiPTHの低下は、平均血清総25-ヒドロキシビタミンDが最高レベルに近づくにつれて減弱するように見えた。EAPの治療前のベースラインから血漿中iPTHが平均≧30%減少した被験者の割合は、五分位点1および五分位点2では8.5%であったが、その後五分位点3では27.8%、五分位点4では42.3%、五分位点5では57.7%と直線的に増加した(図3)。
【0106】
治療期間では所与の五分位点内でおよび治療の終りには五分位点全体にわたって、平均(SE)血清CTx-1、P1NP、BSAP、および総アルカリホスファターゼの変化は、血漿iPTHで観察されたものと同様であった(図2Aおよび2B)。
【0107】
治療後の平均値は、五分位点1~3で上昇したままであったP1NPを除いて、すべての五分位点で検査の正常範囲内であった。
【0108】
血清カルシウムおよびリンの平均(SE)治療後レベルは、五分位点1でそれぞれ9.3(0.05)および3.8(0.06)mg/dLであり、他の4つの五分位点でわずかに上昇傾向にあり、五分位点5でそれぞれ9.45(0.03)および4.0(0.07)mg/dLに達した。eGFRおよび尿中Ca:Cr比の平均(SE)治療後値は、5つの五分位点の間で、それぞれ27.8(1.1)~32.3(1.6)mL/分/1.73m2、および0.03(0.004)~0.04(0.006)で明らかな傾向なしに変化した。五分位点1~5の血清インタクトFGF23の平均(SE)治療後レベルは、それぞれ51.7(9.6)、63.3(16.1)、50.6(8.7)、44.9(7.5)、および62.8(7.9)pg/mLであった。これらの5つのパラメータについて、五分位点1と任意の上位五分位点(P=NS)との間に有意差は観察されなかった。
【0109】
治療前のベースラインからのEOT iPTHの>10%の増加として定義されるSHPT進行も、各五分位点について計算された。
【0110】
ベースラインおよびEOTでの平均(SE)血漿iPTHレベルを、SHPT進行を経験している被験者の割合と共に、治療後の血清総25-ヒドロキシビタミンDの五分位点ごとに以下の表4にまとめた。
【0111】
不十分なビタミンD補充療法を受けている被験者の3分の1以上(五分位点1および2)がSHPT進行を経験した。平均iPTHおよびSHPT進行のある被験者の割合は、ERC治療により平均血清総25Dが少なくとも51ng/mLに増加した場合にのみ低下した。結果は、ステージ3~4のCKDでのSHPT進行の減弱には、50ng/mLを超える血清総25-ヒドロキシビタミンD目標値が必要であることを示している。
【0112】
ステージ3または4のCKD患者を対象にERCを用いて実施された2つの同一の26週間前向き多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照試験からのプールデータの本事後分析では、血漿iPTHおよび血清骨代謝回転マーカーの平均低下が、平均血清総25-ヒドロキシビタミンDの増加に比例し、CKDステージに依存しないことが示された。これらの発見は、ERCが25-ヒドロキシビタミンDの循環レベルを徐々に上げることによって上昇したiPTHおよび骨代謝回転マーカーを抑制するという結論を支持する。さらに、CKD患者のiPTHの低下、SHPT進行の減弱、および骨代謝回転マーカーの低下には、少なくとも50.8ng/mLの平均血清25-ヒドロキシビタミンDレベルが必要であり、20または30ng/mLの診療ガイドラインの目標をはるかに上回っており、iPTHの正常化には、必要に応じて、ここで評価したレベルよりもさらに高いレベルが必要であることを示唆している。より高いレベルの血清25-ヒドロキシビタミンDは、ERC治療で容易に達成され、投与量に比例する。しかしながら、本明細書で調べた平均血清総25-ヒドロキシビタミンD(92.5ng/mL)の最高レベルでの平均iPTH低下の明らかな減弱を考慮すると、iPTHの正常化は達成できない可能性がある。この減弱は、より長い治療で克服される可能性があるか、または、iPTHの過剰抑制からの保護、およびステージ3~4のCKD患者でのiPTH低下の適切な目標の表示の両方を提供する可能性がある。
【0113】
今回の試験では、ERCによって平均血清総25-ヒドロキシビタミンDが26週間にわたって92.5ng/mLまで徐々に上昇しても、平均血清カルシウム、リン、FGF23、eGFR、VMR、または尿中Ca:Cr比に悪影響はなく、かつ平均血清1,25-ジヒドロキシビタミンDがULN(62pg/mL)を超えて増加しないことが示された。これらの試験を52週間のERC治療に延長しても、これらのパラメータに関連するリスクの増加は見られなかった。ある観察試験では、血清25-ヒドロキシビタミンDレベルと全死因死亡率との間にJ字型の関連が示唆されているが、別の試験では、血清25-ヒドロイビタミンDのレベルが低い場合にのみハザード比が増加することが示されている。今回の試験では、血清総25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDとの間に正の相関が認められたが、血清総25-ヒドロキシビタミンDと血清カルシウムまたはリンとの間には相関が認められなかった。ERCで治療された被験者の2%で観察された高カルシウム血症のいくつかの症状の発現は、血清総25-ヒドロキシビタミンDとは無関係であるように見えた。また、本試験のデータは、25-ヒドロキシビタミンD曝露の増加が血清骨代謝回転マーカーの進行性の上昇を減弱するだけでなく、実際にこれらのマーカーのレベルを低下させることを示し、高代謝回転骨疾患の管理の改善および関連する有害な後遺症のリスクの低下を示唆している。骨の劣化およびその結果生じる骨折は、SHPTのCKD患者の罹患率および死亡率の重要な原因である。わずかに上昇したPTHでさえ、最近、骨の構造に大きな変化をもたらし、脊椎のBMDを低下させることが実証されている。骨の健康状態の悪化は、CKDにおける血管石灰化ならびに関連する高率の心血管系の罹患率および死亡率と強く関連しており、腎臓病患者の骨疾患を診断および補正することで、骨の健康状態を改善し、医療費を削減することに大きな関心が寄せられている。
【0114】
驚くべきことに、ERC治療は、血清総25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンD、および血漿iPTHに対して、ステージ3または4のCKDの患者で同様の効果を示した。この発見は、CKDが進行すると、残存する腎臓でCYP27B1の発現が低下するために、カルシフェジオールが1,25-ジヒドロキシビタミンD3に変換されにくくなるという従来の常識を覆すものである。しかしながら、カルシフェジオールは副甲状腺および他の多くの組織でCYP27B1によって腎外で活性化される可能性がある。腎外ホルモン産生は、25-ヒドロキシビタミンDの十分な循環レベルに依存し、20~30ng/mLをはるかに超えるレベルでは可能になる場合がある。現在の発見は、(a)透析前の患者に25-ヒドロキシビタミンDを活性化するのに十分な腎CYP27B1活性があること、および/または(b)25-ヒドロキシビタミンDが腎臓外で発現し循環に放出されるCYP27B1によって活性化されることを示している。血清24,25-ジヒドロキシビタミンD3レベルがERC治療で増加したが、VMRは中程度にしか上昇せず、CYP24A1の実質的な誘導がなかったことを示唆している。
【0115】
図5~8は、ERCを1日30mcg、12週間治療した後の、患者の体重と血清25-ヒドロキシビタミンDレベルにおける用量反応との関係を示している。図5~6は、治療開始時の患者の体重(ベースライン)と、1日30mcgのERCによる12週間の治療後に得られた血清25-ヒドロキシビタミンD濃度(ベースラインを差し引いた血清濃度および実際の血清濃度の両方)との関係を示している。図7~8は、1日30mcgのERCによる12週間の治療後の血清25-ヒドロキシビタミンDとベースライン体重あたりの用量(それぞれベースラインを差し引いた血清濃度および実際の血清濃度の両方)との関係を示している。
【0116】
結論として、2つの大規模な前向きRCTからのプールされたデータは、ERCがステージ3または4のCKD患者の25-ヒドロキシビタミンD曝露を現在の診療ガイドラインで推奨されているレベルをはるかに超えるレベルまで安全に増加させたことを示した。少なくとも50.8ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDの平均レベルは、血清1,25-ヒドロキシビタミンDの比例した増加、血漿iPTHおよび血清骨代謝回転マーカーの減少と関連し、治療前のベースラインからのEOT iPTHの>10%の増加として定義されるSHPT進行を減弱させ、平均血清カルシウム、リン、FGF23、eGFR、または尿中Ca:Cr比の有害な変化とは関連しない。平均血清総25-ヒドロキシビタミンDの92.5ng/mLまで上昇させても、血漿iPTHを正常化するには不十分であり、ステージ3または4のCKDでSHPTを最適に治療するにはより高い曝露が必要である可能性があることが示唆される。
【0117】
実施例2
本実施例では、ビタミンD不足および続発性副甲状腺機能亢進症を患い、徐放性カルシフェジオールまたは他の関連する比較薬で治療されていたステージ3または4の慢性腎臓病患者の構造化チャートレビュー(structured chart review)について説明する。この試験は、透析前のミネラルおよび骨障害に関連している:現在のSHPT治療アプローチのリスクおよび有効性のリアルワールド評価(MBD-AWARE)
【0118】
目的
この試験の全体的な目的は、以下を実証する予備的なリアルワールドエビデンスを生成することであった:(a)ステージ3または4の慢性腎臓病(CKD)およびビタミンD不足(VDI)の成人患者における続発性副甲状腺機能亢進症(SHPT)の治療に対する徐放性カルシフェジオール(ERC)の安全性と有効性:および(b)これらの患者の治療におけるSHPTの標準治療とみなされる他のビタミンD療法(OVDT)の利用、安全性、および有効性。OVDTは、経口投与されたエルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロールとして定義される栄養ビタミンD(NVD)、または経口投与されたカルシトリオール、パリカルシトール、またはドキセルカルシフェロールとして定義される活性型(1α-ヒドロキシル化)ビタミンD類似体(VDA)で構成される。
【0119】
この試験の具体的な目的は、6ヶ月のフォローアップ期間の前および期間中に、3つのコホート(以下の試験デザインで定義)のそれぞれで以下を説明または推定することであった:(1)血清カルシウムおよびリンの変化、(2)血清総25-ヒドロキシビタミンD(25D)および副甲状腺ホルモン(PTH)レベルの変化、(3)正常25Dレベルの達成、(4)≧30%のPTH低下の達成、ならびに(5)補助的な検査値の変化。
【0120】
背景技術
ERC 30mcgカプセルは、ステージ3または4のCKDおよびVDIの成人患者におけるSHPTの治療薬として、2016年6月に食品医薬品局によって承認された。活性成分であるカルシフェジオールは、25-ヒドロキシビタミンD3であり、VDIのビタミンDホルモンである1,25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)の生理学的前駆体である。カルシフェジオールは、肝臓でビタミンD3(コレカルシフェロール)から合成される。ビタミンD3は、日光にさらされた後、皮膚で内因的に生成されるか、食事やサプリメントから得られる。別のプロホルモンである、25-ヒドロキシビタミンD2は、内因的に産生することができず、食事またはサプリメントからのみ得られるビタミンD2(エルゴカルシフェロール)から肝臓で合成される。これらの2つのプロホルモンはまとめて「25-ヒドロキシビタミンD」と呼ばれる。個人が相当量のエルゴカルシフェロール補給を受けていない限り、血中の25-ヒドロキシビタミンDの本質的にすべてがカルシフェジオールで構成されている。
【0121】
CKDは、米国(US)で着実に増加している健康問題であり、人口の高齢化と、高血圧および糖尿病に関連する合併症を伴う肥満の有病率の増加とによって引き起こされている。CKDは5つのステージに分類され、それぞれがステージ1~5に徐々に減少する推定糸球体濾過量(eGFR)範囲によって定義される。ミネラル代謝および骨組織学の異常は、CKDの初期段階で始まり、eGFRが低下するにつれて悪化する[Levin et al 2007]。eGFRの最小限の低下でさえ、骨量減少(骨粗鬆症)のリスクの増加および股関節骨折の発生率に関連している。CKDに関連する併存疾患には、SHPT、VDI、広範な軟部組織の石灰化、心血管(CV)疾患、感染症、および生活の質の低下が含まれる[Souberbielle et al 2010]。
【0122】
CKD患者のビタミンD不足(VDI)は、栄養不足、日光への曝露の減少、タンパク尿、カルシフェジオールの肝臓合成の減少、およびビタミンD異化酵素CYP24A1の過剰発現によって引き起こされる[Helvig et al 2010]。血清総25Dが患者のビタミンD状態の最良の指標であることは広く受け入れられている。≧30ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンD(25D)レベルはCKD患者では適切であるとみなされ、<30ng/mLのレベルは「不十分」であるとみなされる[Holick et al 2011]。血清総25Dの一般的に使用される基準範囲は、30~100ng/mLである[Souberbielle et al 2010]。観察試験によると、CKD患者では、糸球体濾過量(GFR)が低下するため、PTH目標を達成するためにより高い25Dレベルが必要になる可能性がある[Ennis et al 2016]。
【0123】
一般集団の血清総25Dのレベルは、日光の強度(地理的な場所および季節によって異なる)、日光への曝露(皮膚の色素沈着、日焼け止めの使用、およびその他の文化的要因の影響を受ける)、年齢、および食事摂取量など、多くの要因によって異なる。[Holick 1995]。冬の間、高緯度ではレベルが低くなる傾向がある。CKDの患者では、低い総血清25Dレベル(VDI)は季節または緯度とは無関係であり、腎臓病が進行するにつれてより一般的になる。
【0124】
カルシトリオールの腎臓および腎臓外での産生は、カルシフェジオールの適切な供給に依存しているため、VDIは不十分なカルシトリオール産生を引き起こす。腎機能の低下は、腎1α-ヒドロキシラーゼ(CYP27B1)によるカルシフェジオールのカルシトリオールへの変換をさらに損なう。循環カルシトリオールが慢性的に低いと、食事中のカルシウムの腸管吸収が減少し、副甲状腺によるPTHの分泌が増加し、最終的にはSHPTとなる。
【0125】
CKDにおけるSHPTの治療に関する診療ガイドラインでは、ステージ3のCKDの患者から始まるPTH上昇の定期的なスクリーニングが推奨されている。全米腎臓財団が腎臓病アウトカムクオリティイニシアチブ(National Kidney Foundation from the Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)(KDOQI)から発行したガイドライン[National Kidney Foundation.KDOQI Clinical Practice Guidelines for Bone Metabolism and Disease in Chronic Kidney Disease 2003, Guideline 8A]、より最近の、慢性腎臓病-ミネラルおよび骨障害(CKD-MBD)の診断、評価、予防、および治療のための腎臓病改善グローバル転帰(KDIGO)臨床診療ガイドライン(Kidney Disease Improving Global Outcomes (KDIGO) Clinical Practice Guideline for the Diagnosis, Evaluation, Prevention, and Treatment of Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder (CKD-MBD))[Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD-MBD Work Group 2009]および最新の更新版KDIGOガイドライン[KDIGO 2017 Clinical Practice Guideline Update for the Diagnosis, Evaluation, Prevention, and Treatment of CKD-MBD]では、PTHの上昇に遭遇した場合のVDIの検査、および積極的なビタミンD補給による補正を推奨している。しかしながら、医学文献は、ステージ3または4のCKDの患者では、血清総25DがNVD(エルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロール)の補給によって一貫性がないかまたは不十分に治療され、PTHの上昇はNVDによって補正されないままであると記述する。1973年以来、エルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロールがステージ3~5のCKDの患者に投与された30を超える試験が発表されている。この一連の作業からの全体的な結論は、Kalantar-ZadehおよびKovesdyによって要約されている:「これらの試験のほとんどは、通常はCKDの一部のステージでのみ、PTHレベルの変化がないか、最小限または不十分であるか、またはK/DOQIが推奨するPTHの目標範囲を未だ満たしていない変化を示している」[Kalantar-Zadeh and Kovesdy 2009]。公開されたランダム化臨床試験の最近のレビューでは、ビタミンDはステージ3~5のCKD患者のiPTHレベルを低下させる効果がないと結論付けられた[Agarwal and Georgianos 2016]。したがって、この患者集団において血清総25Dを増加させ、iPTHの上昇を制御するための効果的な治療が必要である。ERCは、この差し迫ったニーズを満たすことを目的としている。
【0126】
理論的根拠
ステージ3または4のCKDおよびVDIの成人患者におけるSHPTの治療としてのERCの安全性と有効性の証拠は、ランダム化対照臨床試験で実証されている[Sprague et al 2016、Sprague et al 2017]。しかしながら、販売承認の最新性を考慮すると、これらの患者におけるERCの利用、安全性、および有効性に関するリアルワールドの設定から発信されたデータは不足している。さらに、OVDTの現在の利用、安全性、および有効性に関するエビデンスは限られており、これらは標準治療とみなされている。この後ろ向き試験は、米国におけるERCおよびOVDTの利用、安全性、および有効性に関する新しいリアルワールドエビデンスを生成することを目的としていた。
【0127】
試験デザインおよび方法論
18の米国腎臓クリニックが試験に参加し、遡及的分析のための試験選択基準を満たした最初の376人の患者の医療記録を提供した。スクリーニングツールが開発され、試験参加クリニックのデータ入力ポータルとして機能した。データは、試験の研究者によって決定された締切日まで収集された。
【0128】
試験対象集団
376人の患者が募集され、この後ろ向き試験に参加した。患者は、ステージ3またはステージ4のCKD、VDIおよびSHPTの病歴があり、日付以降にERC、NVD、またはVDAによる治療を開始したことが記録されている場合、試験の選択基準を満たしているとみなされた。1,917人の被験者が適格性についてスクリーニングされたことが分かった。しかしながら、実施施設がデータ収集ツールで適格な患者を試行または入力する前に被験者をスクリーニングした可能性があるため、実際の数は不明である。選択基準を満たした患者は、次の3つのコホートにグループ化された:1)ERC Any Use(ERCAU)コホート、ERCを最低1ヶ月使用した患者として定義される;2)栄養ビタミンD(NVD)コホート、栄養ビタミンD(エルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロール)を最低1ヶ月間使用した患者として定義され;および、(栄養ビタミンDは、1週間の総投与量に変換されて示される);ならびに3)活性型ビタミンD類似体(VDA)コホート、活性型(1α-ヒドロキシル化)ビタミンD類似体(カルシトリオール、パリカルシトール、またはドキセルカルシフェロール)を最低1ヶ月間使用した患者として定義される。
【0129】
図4は、試験コホート間の患者分布を示している。
【0130】
選択基準
試験に含まれるすべての患者は、SHPT(PTHが検査の正常上限(ULN)を超える)、VDI(血清合計25Dが30ng/mL未満)、およびステージ3または4のCKD(eGFR≧インデックス日付(Index Date)(以下に定義)の15~<60mL/分/1.73m2)であり、上記の3つのコホートのうちの1つに含めるための基準を満たしている(試験集団を参照)。
【0131】
含まれるすべての患者には、ERCまたはOVDTによる最初の治療の日付として定義されるインデックス日付が割り当てられた。インデックス日付を定義する際、患者がこの試験に適格であるとみなされるためには、各患者について以下の基準を満たす必要があった:
・インデックス日付の≧6ヶ月前の利用可能な医療記録(ベースライン記録)、
・インデックス日付から≧6ヶ月後の利用可能な医療記録(フォローアップ記録)、
・活性型(1α-ヒドロキシル化)VDAの変化を除いて、フォローアップ期間中に関心のSHPT療法を1つだけ受け、この期間中に療法を切り替えない、
・インデックス日付前の3ヶ月間にRayaldeeおよびVDAにナイーブな患者、
・インデックス日付前1年以内の利用可能な少なくとも1つの血清総25DおよびPTH測定値、ならびに
・インデックス日付から6ヶ月後、および治療中止から30日以内の利用可能な少なくとも1つの25DおよびPTH測定値。
【0132】
ソースデータ
この試験のソースデータには、次のものが含まれている:
・電子または紙の医療記録:診断、過去の病歴、治療、およびその他のリソース利用に関するデータは、インデックス日付前の6ヶ月間、およびインデックス日付後の少なくとも6ヶ月間キャプチャされた。データタイプ、レベル、および収集日が収集された。患者が選択された施設の外でケアを求めた可能性がある。特に、CV疾患など、CKDに関連する併発状態に関連する外来患者の来診であるため、一部の医療記録が不完全である可能性がある(他の施設からのリソース利用を常にキャプチャできるとは限らないため)。潜在的な情報バイアスが導入された可能性のあるデータポイントがすべての実施施設にわたってキャプチャされ、フラグが付けられた。すべてではないが一部の実施施設、および診療所内のすべてではないが一部の患者で利用可能な他のデータポイントにもフラグが付けられ、サブグループ分析で分析された。患者データを補足するために、緊急治療室への来診、外来患者の来診、および薬局情報など、利用可能な場合は他の医療現場からの他の医療記録が組み込まれた。
・臨床検査データベース:25D、PTH、線維芽細胞成長因子23(FGF23)、カルシウム、リン、ヘモグロビン、eGFR/クレアチニン、尿タンパク質、コレステロール、アルブミン、C反応性タンパク質、フィブリノーゲン、ホモシステイン、およびカルシウムリン生成物を含む任意の関心のある臨床検査データは、インデックス日付前の6ヶ月間、およびインデックス日付後の6ヶ月間キャプチャされた。ラボのタイプ、レベル、および収集日が取得された。25DおよびPTHレベルは、インデックス日付の前後最大1年間収集された。
【0133】
結果
試験の選択基準を満たした患者が試験に含まれた。1,917人の患者のうち376人(19.6%)がスクリーニングされ、試験の適格性について評価され、試験に登録された。登録された患者のうち、174人(46.3%)がERCによる治療を開始し、55人(14.6%)がVDAによる治療を開始し、147人(39.1%)がNVDによる治療を開始した。これらの患者は、インデックス基準(セクション3.1で定義)に基づいてコホートに割り当てられた。図4は、試験のコンソートダイアグラムを示し、患者の数およびインデックス用量(週用量に変換されて表示)ごとの概要を示している。
【0134】
ERCコホート内では、173人(99.4%)の患者が1日あたり30mcgで治療を開始した。カルシトリオールは、VDAコホート内で処方された最も一般的なビタミンD療法(90.9%)であった。NVDコホートでは、エルゴカルシフェロールが患者の66.0%に処方され、月に50,000IUが最も一般的に処方された用量であった。
【0135】
登録されたコホートの平均(SE)年齢は69.5(13.2)歳であった。コホートは、男性(49.2%)と女性(50.8%)との間でほぼ均等に分布し、主に非ヒスパニック系(88.8%)および白人(64.6%)であった。被験者の平均(SD)身長は167.6(12.0)cm、体重は90.8(25.0)kg、肥満度指数(BMI)は32.8(15.2)であった。CKDの主な原因は、113人(30.2%)の被験者にのみ記載されており、既知の原因の中で最も一般的なのは高血圧(55.6%)および糖尿病(38.9%)であった。eGFRは、腎疾患の修正食(Modified Diet)(MDRD)方程式を使用してベースラインで計算された。CKDステージ4(45.7%)と比較して、CKDステージ3(54.3%)の登録患者が多かった。最も一般的な3つの併存疾患は、糖尿病(51.6%)、高血圧(80.6%)、および貧血(40.2%)であった。合計71人(18.9%)の患者が貧血薬を同時に服用したが、リン吸着剤を服用したのはわずか14人(3.7%)であった。
【0136】
年齢、性別、人種、および身長は、3つのインデックス療法コホート間で類似していた。ERCコホートは、VDA(7.3%)およびNVD(7.5%)コホートと比較して、ヒスパニック(15.5%)がほぼ2倍の割合で構成されていた。平均して、ERCで治療された人はVDA(29.4)およびNVD(32.4)で治療された人よりも高いBMI(34.2)を有していた。さらに、CKDの主な原因はコホート間で類似していた。ERCおよびVDAで治療された患者の大多数はそれぞれCKDステージ4で、53.4%および61.8%であったが、NVDで治療された患者のほとんどはCKDステージ3(69.4%)であった。さらに、コホート間で併存疾患の割合は様々であった。コホート間で多くの類似点があるにもかかわらず、治療群間には微妙な違いがあり、治療効果のばらつきに寄与している可能性がある。詳細については、表5に記載されている。
【0137】
主要分析
主要分析では、インデックス療法治療開始前後のすべての登録患者の、主要な臨床的有効性(25DおよびPTH)と安全性(血清CaおよびP)の検査値、およびeGFRを評価した。結果は、インデックス療法コホートによって分類された(表3)。
【0138】
174人のERC患者の場合、ベースラインの25DおよびPTHレベルはそれぞれ平均20.3±0.7(SE)ng/mLおよび181±7.4pg/mLであった。ERC治療は、25Dを23.7±1.6ng/mL(p<0.001)上昇させ、PTHを34.1±6.6pg/mL(p<0.001)低下させたが、血清カルシウムおよびリンレベルは統計的に有意ではなかった。さらに、eGFRは3.1±0.7mL/分/1.73m2減少した(p<0.001)。
【0139】
55人のVDA患者の場合、ベースラインの25DおよびPTHレベルはそれぞれ平均23.5±1.0(SE)ng/mLおよび156.9±9.7pg/mLであった。VDA治療は、PTHおよび血清リンレベルに統計的に有意な影響を与えることなく、25Dを5.5±1.3ng/mL(p<0.001)上昇させた。さらに、血清カルシウムレベルは0.2±0.1mg/dL(p<0.001)上昇し、eGFRは1.6±0.6(p<0.01)減少した。
【0140】
147人のNVD患者の場合、ベースラインの25DおよびPTHレベルはそれぞれ平均18.8±0.6(SE)ng/mLおよび134.8±6.8pg/mLであった。NVD治療は、PTH、血清カルシウムおよびリンレベルに統計的に有意な影響を与えることなく、25Dを9.7±1.5ng/mL(p<0.001)上昇させた。さらに、eGFRは1.2±0.6減少した(p<0.05)。NVD患者の平均週用量は38,392.2IUであった。
【0141】
平均して、ERCで治療された患者はフォローアップ中に最大の25D増加が見られた。さらに、ERCはPTHレベルの有意な平均減少をもたらした唯一の治療であり、ERCで治療された患者のみが25Dの正常レベル(≧30ng/mL)への平均増加が見られた。VDAで治療された患者の血清Caの増加を除いて、カルシウムまたはリンレベルに対する治療の影響はなかった(表6)。
【0142】
臨床試験のエンドポイント(NCT01651000)ごとの有効性を評価する追加の分析が実施された。ERCで治療された174人の患者のうち、122人(70.1%)が血清25D≧30ng/mLを達成し、71人(40.8%)がPTHレベルの≧30%低下を達成した。VDAで治療された55人の患者のうち、24人(43.6%)が25D≧30ng/mLを達成し、12人(21.8%)がPTHレベルの≧30%低下を達成した。NVDで治療された147人の患者のうち、54人(36.7%)が25D≧30ng/mLを達成し、22人(15.0%)がPTHレベルの≧30%低下を達成した。コホート全体で、ERCで治療された患者は、VDAおよびNVDと比較して臨床試験のエンドポイントを達成する割合が最も高かった。さらに、ERCで治療された患者は、PTHが10%以上増加した患者の割合が最も低かった。患者がベースラインで25D<20ng/mLであったかどうか、およびフォローアップでPTH<70pg/mLを達成したかどうかについて、追加の分析も実施された(表7)。
【0143】
さらに、SHPT進行の分析が行われた。SHPT進行は、ベースラインから少なくとも10%のPTHの増加として定義された。表8に、各コホートの結果を示す。
【0144】
表8に示すように、ERCで治療された患者のコホートは、他の2つのコホートと比較してSHPT進行を経験している患者の割合が最も低かった。
【0145】
副次的分析
iPTH分析の変化率-ERCで処理されたものの25D五分位点
ERCで治療された患者のPTHの変化を評価するために、副次的分析が実施された。この分析では、治療開始後の実験室で25Dレベルに基づいて被験者を5つの等しいグループに分割した。五分位点1の患者の中で、PTHに統計的に有意な影響はなかった。五分位点2、3、および4は、それぞれ19.3%、14.5%、および26.6%の平均PTH低下を達成した。25Dが平均79.1±(2.1)ng/mLに増加した五分位点5まで、>30%の平均PTH低下は達成されなかった(表9)。
【0146】
コホート全体のPTHの変化を評価するために、追加の副次的分析が実施された。さらに、安全性(血清CaおよびP)の実験室測定、および>30%PTH低下の臨床エンドポイント。結果は、インデックス療法コホートによって分割された。この分析では、インデックス療法および25D達成レベルに基づいて被験者をグループに分けた。25Dが>60ng/mLに増加するまで、>30%の平均PTH低下は達成されなかった。VDAで治療された0人(0%)の患者およびNVDで治療された2人(1.3%)の患者だけが25D>60ng/mLを達成したが、ERCで治療された41人(23.6%)の患者で達成された。すべての25D達成レベルにわたって、ERCによる治療は血清カルシウムまたはリン酸塩に影響を与えなかった(表10)。
【0147】
この試験の重要なポイントは次のとおりである。
・平均して、ERCは25Dを正常レベル(≧30ng/mL)に上昇させた唯一の治療法であった。
・ほぼすべてのサブグループ分析において、ERCによる治療は主要な安全性マーカー(血清カルシウムおよびリン)に影響を与えなかった。
・リアルワールドでERCで治療された被験者で、フォローアップ期間中に最高の割合の≧30ng/mLおよびiPTHの≧30%低下の達成が見られた。
・25D達成レベルでiPTH低下を評価した場合、25Dが≧60ng/mLに増加するまで、≧30%の平均iPTH低下は達成されなかった。
・ベースラインでの患者の人口統計学的と臨床的特徴の違いにもかかわらず、リアルワールドでの患者は、臨床試験の結果と比較した場合、同様の臨床的有効性と安全性の結果が見られた。
・しかしながら、ERCコホートにおける25Dの全体的な変化の違いは、用量漸増または併用薬の使用による可能性がある。
・リアルワールドでERCによる主要な臨床試験のエンドポイント治療を評価する場合、臨床試験と比較して同様の結果が得られる。
・ERCで治療された122人(70.1%)の患者は、臨床試験での80%~83%と比較して、フォローアップ時に>30ng/mLを達成した。
・ERCで治療された71人(40.8%)の患者は、33%~34%と比較して、フォローアップ時にPTHの>30%低下を達成した。
・ベースラインレベル、投与パターン、および併用薬の変動により、臨床試験のエンドポイントの達成に違いが生じる可能性がある。
・60mcg/日の用量漸増推奨を順守すると、25Dがさらに上昇し、PTHレベルが低下する可能性がある。
【0148】
結論
このチャートレビューは、リアルワールドでのERCによる治療が、より重症の集団およびより低いレベルの投薬にもかかわらず、臨床試験と同様の臨床的有効性および安全性の結果をもたらしたことを示している。さらに、臨床試験のエンドポイントの同様の達成率がリアルワールドの設定で生成された。リアルワールドでは用量漸増の割合が低くなっているが、ERCの用量を増やすと、リアルワールドでは25Dがさらに増加し、PTHレベルが低下する可能性がある。全体として、この試験は、ERC治療の臨床的有効性と安全性がリアルワールドの設定で維持されているという強力な証拠を提供する。
【0149】
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【0163】
上述の説明は、理解を明確にするためにのみ提供されており、本発明の範囲内の修正は当業者には明らかであり得るので、そこからいかなる不必要な制限も解釈されるべきではない。
【0164】
本明細書および以下の特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を含むが、任意の他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を除外しないことを意味すると理解される。
【0165】
本明細書を通して、組成物が成分または材料を含むものとして記載されている場合、当該組成物は、特に記載のない限り、列挙された成分または材料の任意の組み合わせから本質的に構成され得る、または、その組み合わせから構成され得ると考えられる。同様に、方法が特定のステップを含むものとして記載される場合、その方法は、別途記載のない限り、列挙されるステップの任意の組み合わせから本質的になるか、またはそれらからなり得ることが企図される。本明細書に例示的に開示される発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素または工程を欠いた状態で適切に実施され得る。
【0166】
本明細書に開示される方法の実施およびその個々のステップは、手動で実施することができ、および/または電子機器によってもたらされるもしくは自動化を用いて実施することができる。特定の実施形態を参照してプロセスを説明してきたが、当業者は、上記方法に関連する行為を実施する他の方法を使用できることを容易に理解するであろう。例えば、特に記載のない限り、本方法の範囲または趣旨から逸脱することなく、様々なステップの順序を変更することができる。さらに、個々のステップのいくつかは、組み合わされてもよく、省略されてもよく、または追加のステップにさらに細分されてもよい。
【0167】
本明細書で引用されるすべての特許、刊行物および参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と、組み込まれる特許、刊行物、および参考文献との間に矛盾がある場合は、本開示が優先されるべきである。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
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【国際調査報告】