(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】難燃セルロース系繊維及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/355 20060101AFI20220317BHJP
D01F 2/06 20060101ALI20220317BHJP
D01F 2/28 20060101ALI20220317BHJP
D01F 2/04 20060101ALI20220317BHJP
C09K 21/08 20060101ALI20220317BHJP
C09K 21/12 20060101ALN20220317BHJP
D06M 101/06 20060101ALN20220317BHJP
【FI】
D06M13/355
D01F2/06
D01F2/28 Z
D01F2/04
C09K21/08
C09K21/12
D06M101:06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541081
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2019111012
(87)【国際公開番号】W WO2020173101
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】201910141840.2
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521311665
【氏名又は名称】東華大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 鉄▲ハン▼
(72)【発明者】
【氏名】崔 世強
(72)【発明者】
【氏名】▲ジン▼ 宏
(72)【発明者】
【氏名】張 陽
(72)【発明者】
【氏名】劉 岩
(72)【発明者】
【氏名】張 玉梅
【テーマコード(参考)】
4H028
4L033
4L035
【Fターム(参考)】
4H028AA39
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC05
4L033BA57
4L035BB03
(57)【要約】
本発明は、難燃セルロース系繊維及びその調製方法に関する。調製方法は、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗することにより水洗糸を調製してから、難燃剤水溶液で水洗糸を処理した後に、すすぎ及び乾燥させることにより難燃セルロース系繊維を調製し、水洗の温度≧90℃であり、処理時の難燃剤水溶液の温度は、60~90℃であり、すすぎの温度は、20~40℃であり、難燃剤は、セルロース水酸基と共有結合を形成可能な基、自己架橋反応可能な基及びセルロース水酸基と水素結合を形成可能な基のうちの一種類以上を含む。調製された難燃セルロース系繊維は、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散される難燃剤とからなる。本発明の調製方法は、工程が簡単であり、条件が穏やかである。調製された繊維は、機械的性能が優れ、耐水洗及び難燃性能が優れる。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃セルロース系繊維の調製方法であって、
水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗してから、難燃セルロース系繊維が調製されるように、難燃剤水溶液で水洗糸を処理した後にすすぎ及び乾燥させ、
水洗の温度≧90℃であり、
処理時の難燃剤水溶液の温度は、60~90℃であり、
すすぎの温度は、20~40℃であり、
難燃剤は、セルロース水酸基と共有結合を形成可能な基であるX基、自己架橋反応可能な基であるY基及びセルロース水酸基と水素結合を形成可能な基であるZ基のうちの一種類以上を含む、
ことを特徴とする難燃セルロース系繊維の調製方法。
【請求項2】
セルロース系繊維紡糸液は、濃度が5~25wt%であり、
セルロース系繊維は、再生セルロース繊維又はセルロース誘導体繊維である、
ことを特徴とする請求項1に記載の難燃セルロース系繊維の調製方法。
【請求項3】
前記セルロース系繊維は、ビスコース繊維、アセテート繊維、Lyocell繊維、銅アンモニア繊維、イオン液体を溶媒として調製される再生セルロース系繊維又はアルカリ溶液を溶媒として調製される再生セルロース系繊維である、
ことを特徴とする請求項2に記載の難燃セルロース系繊維の調製方法。
【請求項4】
水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が40~70wt%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の難燃セルロース系繊維の調製方法。
【請求項5】
X基は、アルデヒド基、シアノ基、エポキシ基、塩化アシル基、酸無水物又はジイソシアネートであり、
Y基は、シロキサンであり、
Z基は、スルホン酸基又は硫酸エステル基である、
ことを特徴とする請求項1に記載の難燃セルロース系繊維の調製方法。
【請求項6】
難燃剤水溶液における難燃剤は、質量含有量が10~30wt%であり、
難燃剤は、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤及び窒素リン系難燃剤のうちの一種類以上である、
ことを特徴とする請求項5に記載の難燃セルロース系繊維の調製方法。
【請求項7】
処理には、浸漬又は噴霧方式が採用され、
処理時間は、60~600秒であり、
前記すすぎ時間は、10~120sである、
ことを特徴とする請求項1に記載の難燃セルロース系繊維の調製方法。
【請求項8】
乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、
熱風の温度は、100~200℃であり、
繊維の含水率が<15wt%まで乾燥させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の難燃セルロース系繊維の調製方法。
【請求項9】
主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなる、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の難燃セルロース系繊維の調製方法により調製される難燃セルロース系繊維。
【請求項10】
難燃セルロース系繊維は、結晶化度>30%であり、平均直径が5~50ナノメートルである微孔を含み、
難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の5~15%であり、
難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が0.5~5.0dtexであり、破断強度が1.0~4.0cN/dtexであり、破断伸び率が5%~20%であり、水分率が5%~15%であり、
洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が45%以上であり、
50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の3~13%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が35%以上であり、
難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用される長繊維、短繊維又はトウである、
ことを特徴とする請求項9に記載の難燃セルロース系繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製造技術分野に属し、難燃セルロース系繊維及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維における綿、麻繊維は、その製品が優れた保温性能を有するため、長い間重要な紡織原料とされている。再生可能、無毒、調製された織物の快適さが優れ、衛生健康、廃棄物が分解可能かつ白汚染がないなどの利点を有するため、長い間繊維製品の最も主要な原料であった。社会の発展に伴い、ポリエステル繊維にその役割がある程度置き換えられたが、依然として繊維製品の主流原料である。しかしながら、市場の継続的な発展に伴い、セルロース繊維の需要は日増しに増加し、綿や麻などの天然セルロース繊維の生産量は限られており、日増しに高まる消費需要に応えるのが難しいため、人々は、主に綿リンター、木材、竹、バガス、葦などの天然物質を利用して、一定の工程処理方法によりセルロース分子を再構築することによって調製され、天然素材を有効活用し、セルロース繊維の供給量を大幅に増加させる人工セルロース繊維(再生セルロース繊維)を開発した。消費者需要のさらなる向上に伴い、セルロース繊維に対する市場の需要量が増大するだけではなく、繊維の品質と機能性に対してもより高い要求が求められている。
【0003】
近年、繊維製品による火災が増加しており、寝具、装飾用織物、衣料織物が火災の主な原因となっている。そのため、業界では、繊維製品の難燃性がますます重要視されている。米国などの多くの先進国では、高齢者や子供向けのパジャマ、寝具、ホテル、航空装飾用織物、物置小屋カバー布などの特定の適用分野のいずれにも専門の立法があり、難燃繊維製品を使用する必要があると規定されている。外国の難燃技術の歴史は長く、難燃剤の生産と消費は相当な規模に達しており、難燃剤は、助剤のうち、可塑剤に次ぐ第2大分類の助剤となっている。中国における難燃技術や難燃剤の発展は比較的遅いが、社会の発展に伴い、織物の難燃化は、現在業界の切実な需要となっている。
【0004】
現在、難燃セルロース繊維の調製には、いくつかの方法がある。第一は、原液添加法であり、すなわち、紡糸液に難燃助剤を添加し、紡糸することにより難燃繊維を調製することである。これは、再生セルロース繊維の難燃化の一般的な技術的方法であり、難燃効果を大幅に向上させることができるが、以下のような欠点も存在する。1)難燃助剤は、紡糸装置及び凝固水洗システムに残留しやすく、正常な生産及び溶媒回収利用に影響を与えることになる。2)難燃助剤の分散程度及び添加量は、繊維の力学的性能などに悪影響を及ぼす。3)生産におけるロット交換は柔軟ではなく、遷移糸が多く、生産コストが増加する。第二は、繊維又は織物の後処理法である。この技術は、天然繊維及び再生繊維のいずれにも通用する。利点は、ロットが大きくても小さくてもよく、生産転換が柔軟で、適応品種が多いことであるが、欠点は、1)一般的な処理方法は、耐久性の問題を引き起こす可能性があり、また、反応型仕上げによる耐久性向上の方法は難燃助剤の選択に限界があり、少数の反応可能な難燃助剤にしか適しておらず、反応工程や未反応仕上げ剤の回収処理などの問題が増加する。2)後仕上げは、繊維や織物に機能をもたらすと同時に、繊維や織物の感触、柔軟性、通気性に影響を与える傾向があり、繊維や織物の収縮を引き起こす場合さえある。3)完成品の繊維は、微細構造が緻密であり、後処理は主に繊維表面で発生し、追加できる難燃助剤の量は限られており、製品の難燃性能に影響を与え、又は反応性を向上させるために膨潤又は活性化する必要があり、間違いなく工程、溶剤処理などのコストが増加する。
【0005】
したがって、難燃効果及び耐久性に優れた難燃セルロース系繊維の調製方法を開発することは、現実的に非常に重要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術では難燃効果と耐久性能とを両立できない欠陥に対して、難燃効果及び耐久性に優れた難燃セルロース系繊維の調製方法を提供することである。
【0007】
上記目的を実現するために、本発明によれば、難燃セルロース系繊維の調製方法であって、
水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗してから、難燃セルロース系繊維が調製されるように、難燃剤水溶液で水洗糸を処理した後にすすぎ及び乾燥させ、
水洗の温度≧90℃であり、
処理時の難燃剤水溶液の温度は、60~90℃であり、
すすぎの温度は、20~40℃であり、
難燃剤は、セルロース水酸基と共有結合を形成可能な基であるX基、自己架橋反応可能な基であるY基及びセルロース水酸基と水素結合を形成可能な基であるZ基のうちの一種類以上を含む難燃セルロース系繊維の調製方法という技術的手段が採用される。
【0008】
まず、本発明によれば、水洗により糸中の残留紡糸溶媒を除去し、水洗温度≧90℃であり、一方では、紡糸溶媒の拡散速度を著しく速めることができ、洗浄速度を速め、洗浄効率を向上させ、他方では、高い水洗温度でセルロース系繊維が熱膨張し、繊維表面の穴が大きくなり、すなわち、微孔構造が疎になる。
【0009】
次に、本発明によれば、水洗完了後に難燃剤水溶液を用いて水洗糸を処理し、60~90℃の難燃剤水溶液を用い、適当な温度の難燃剤水溶液の処理により、繊維表面の微孔構造は疎に保持することができ、繊維表面の穴を通過して難燃剤が繊維内部に浸透する速度が速められ、しかも高温での難燃剤の溶解度が高く、高温では難燃剤水溶液の濃度を高くすることができるとともに、高温の難燃剤水溶液における難燃剤の分子熱運動が比較的激しいため、難燃剤が繊維内部に迅速に入り込み、短い時間で平衡に達することを可能にし、ひいては難燃剤処理時間が短縮される。難燃剤水溶液の温度が高すぎると、拡散速度が速くなり、分布が不均一になりやすく、繊維の力学的性能にも影響を与えると同時に、難燃剤の水中での反応程度が激しくなり、難燃剤の減少につながり、難燃効果に影響を与え、難燃剤水溶液の温度が低すぎると、拡散速度が遅くなり、難燃効果が悪くなる。
【0010】
次に、本発明によれば、難燃処理後、さらに20~40℃ですすぎを行い、すすぎ温度が低いと、以前に開いた繊維表面の穴を収縮させることができ、それにより、繊維内部に浸透した難燃剤が繊維内に強固に付着することが確保され、難燃剤と繊維との結合堅牢性が大幅に向上し、繊維の耐水洗性能が向上するとともに、低温では、内部と外部の濃度の差によって内部の難燃剤が急速に拡散しないことを保証することができるほか、エネルギ消費が節約される。温度が高すぎると、内部未反応部分の難燃剤が容易に洗い出されるため、乾燥時にセルロース繊維と反応する難燃剤が減少し、難燃効果が低下し、温度が低すぎると、収縮、力学的性能の低下など、繊維自体に悪影響を及ぼすことになる。
【0011】
最後に、本発明によれば、繊維を乾燥させ、当該過程において繊維がさらに結晶化し、その微孔構造がさらに収縮し、難燃剤におけるX基、Y基又はZ基とセルロース系繊維における基との相互作用が強いため、最終的に耐久性能及び難燃性能に優れた難燃セルロース系繊維が調製される。
【0012】
好適技術的手段として、上記のような難燃セルロース系繊維の調製方法において、セルロース系繊維紡糸液は、濃度が5~25wt%である。当業者は、必要に応じてセルロース系繊維紡糸液の濃度を一定の範囲で調整することができるが調整しすぎるのはよくない。紡糸液濃度が増加するにつれて、システム全体の拡散係数が低下し続け、紡糸液の濃度が紡糸過程における相分離に影響を及ぼすことになる。紡糸液の濃度が低すぎると相変化が発生しない可能性があり、繊維が形成されないか、又は相変化がある場合にも疎な不均一な構造しか形成されず、繊維の力学的性能が低下することになる。濃度が高すぎると乾式紡糸に相当し、形成される繊維は、構造が緻密であり、その後の難燃剤処理に不利である。セルロース系繊維は、再生セルロース繊維又はセルロース誘導体繊維である。
【0013】
上記のような難燃セルロース系繊維の調製方法において、前記セルロース系繊維は、ビスコース繊維、アセテート繊維、Lyocell繊維、銅アンモニア繊維、イオン液体を溶媒として調製される再生セルロース系繊維又はアルカリ溶液を溶媒として調製される再生セルロース系繊維である。本発明に係るセルロース系繊維は、これらに限定されるものではなく、ここでは一部のみを例に挙げる。
【0014】
上記のような難燃セルロース系繊維の調製方法において、水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が40~70wt%であり、水洗糸の結晶化度が15%未満であり、微孔平均直径が10~200ナノメートルであり、微孔容積が水洗糸の全体積に占める百分率が10~30%である。水洗糸の含水率が低すぎ、すなわち繊維が乾燥しすぎると、このとき繊維内部の微孔数が減少し、微孔直径が減少し、その後の難燃剤の繊維内部への入り込みに不利である。含水率が高すぎると、微孔に多くの水が存在することになり、外部と一定の圧力差を有するようになり、同様に難燃剤の繊維内部への入り込みに不利である。
【0015】
上記のような難燃セルロース系繊維の調製方法において、X基は、アルデヒド基、シアノ基、エポキシ基、塩化アシル基、酸無水物又はジイソシアネートであり、Y基は、シロキサンであり、Z基は、スルホン酸基又は硫酸エステル基である。本発明に係るX基、Y基、Z基は、これらに限定されるものではなく、ここでは一部のみを例に挙げる。
【0016】
上記のような難燃セルロース系繊維の調製方法において、難燃剤水溶液における難燃剤は、質量含有量が10~30wt%である。当業者は、必要に応じて難燃剤水溶液の濃度を一定の範囲で調整することができるが調整しすぎるのはよくない。濃度が高すぎると、繊維内部に入り込む難燃剤の量が相当になり、すなわち、原料の無駄を引き起こすことになる。濃度が低すぎると、繊維内部に入り込む難燃剤の量が少なくなり、よい難燃効果に達することが困難になる。また、難燃剤の質量含有量は、難燃剤の種類にも関連し、難燃剤の構造が小さいほど、繊維内部への入り込みが容易になり、難燃剤水溶液における難燃剤の質量含有量が低くなる。難燃剤は、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤及び窒素リン系難燃剤のうちの一種類以上である。本発明に係る難燃剤の種類は、これらに限定されるものではなく、ここでは一部のみを例に挙げる。
【0017】
上記のような難燃セルロース系繊維の調製方法において、処理には、浸漬又は噴霧方式が採用され、処理時間は、60~600秒であり、前記すすぎ時間は、10~120sである。本発明の処理方式は、これに限定されるものではなく、浸漬及び噴霧のみを例に挙げる。処理時間の長さは、難燃剤の種類に関連し、処理時間が短すぎると、難燃剤が繊維内部に入り込むように十分に拡散しておらず、その繊維の難燃効果はよくない。処理時間が長すぎると、一方では、効率に影響を与え、他方では、繊維が硬くなり、手触りが悪くなり、力学的性能に影響を与えることになる。本発明に係るすすぎ時間も、それだけではなく、当業者は、実情に応じてすすぎ時間を選択することができる。
【0018】
上記のような難燃セルロース系繊維の調製方法において、乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、熱風の温度は、100~200℃であり、繊維の含水率が<15wt%まで乾燥させる。本発明に係る乾燥方式はこれに限定されるものではなく、ここでは熱風乾燥のみを例に挙げ、常温での風乾も可能であるが、比較的時間がかかり、繊維の調製効率にある程度影響を与えることになる。
【0019】
本発明によれば、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなる上記のような難燃セルロース系繊維の調製方法により調製される難燃セルロース系繊維がさらに提供される。
【0020】
好適技術的手段として、上記のような難燃セルロース系繊維において、難燃セルロース系繊維は、結晶化度>30%であり、平均直径が5~50ナノメートルである微孔を含み、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の5~15%であり、難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が0.5~5.0dtexであり、破断強度が1.0~4.0cN/dtexであり、破断伸び率が5%~20%であり、水分率が5%~15%であり、洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が45%以上であり、50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の3~13%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が35%以上であり、難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用される長繊維、短繊維又はトウである。
【0021】
本発明によれば、水洗温度、処理時の難燃剤水溶液の温度及びすすぎ温度の組み合わせにより、耐久性能、機械的性能及び難燃性能に優れた難燃セルロース系繊維が調製される。
【0022】
本発明によれば、水洗により糸中の残留紡糸溶媒を除去し、水洗温度≧90℃であり、一方では、紡糸溶媒の拡散速度を著しく速めることができ、洗浄速度を速め、洗浄効率を向上させ、他方では、高い水洗温度でセルロース系繊維が熱膨張し、繊維表面の穴が大きくなり、すなわち、微孔構造が疎になる。水洗完了後に難燃剤水溶液を用いて水洗糸を処理し、本発明では60~90℃の難燃剤水溶液を用い、適当な温度の難燃剤水溶液の処理により、繊維表面の微孔構造は疎に保持することができ、繊維表面の穴を通過して難燃剤が繊維内部に浸透する速度が速められ、しかも高温での難燃剤の溶解度が高く、高温では難燃剤水溶液の濃度を高くすることができるとともに、高温の難燃剤水溶液における難燃剤の分子熱運動が比較的激しいため、難燃剤が繊維内部に迅速に入り込み、短い時間で平衡に達することを可能にし、ひいては難燃剤処理時間が短縮される。難燃剤水溶液の温度が高すぎると、拡散速度が速くなり、分布が不均一になりやすく、繊維の力学的性能にも影響を与え、これは、難燃剤の水中での反応程度が激しくなるため、難燃剤の減少につながり、難燃効果に影響を与え、難燃剤水溶液の温度が低すぎると、拡散速度が遅くなり、難燃効果が悪くなる。難燃処理後、さらに20~40℃ですすぎを行い、すすぎ温度が低いと、以前に開いた繊維表面の穴を収縮させることができ、それにより、繊維内部に浸透した難燃剤が繊維内に強固に付着することが確保され、難燃剤と繊維との結合堅牢性が大幅に向上し、繊維の耐水洗性能が向上するとともに、低温では、内部と外部の濃度の差によって内部の難燃剤が急速に拡散しないことを保証することができるほか、エネルギ消費が節約される。温度が高すぎると、内部未反応部分の難燃剤が容易に洗い出されるため、乾燥時にセルロース繊維と反応する難燃剤が減少し、難燃効果が低下し、温度が低すぎると、収縮、力学的性能の低下など、繊維自体に悪影響を及ぼすことになる。繊維を乾燥させ、当該過程において繊維がさらに結晶化し、その微孔構造がさらに収縮し、難燃剤におけるX基、Y基又はZ基とセルロース系繊維における基との相互作用が強いため、最終的に耐久性能及び難燃性能に優れた難燃セルロース系繊維が調製される。
【発明の効果】
【0023】
(1)本発明に係る難燃セルロース系繊維の調製方法によれば、紡糸前に難燃助剤を添加することなく、繊維の押出成形過程に影響を与えず、難燃助剤は、溶媒の回収利用及び紡糸工程に影響を与えず、方法が柔軟であり、大量生産だけではなく、少量多品種生産にも適している。
(2)本発明に係る難燃セルロース系繊維の調製方法によれば、工程が簡単であり、条件が穏やかである。
(3)本発明に係る難燃セルロース系繊維によれば、機械的性能に優れ、耐水洗性能及び難燃性能に優れ、市場の見込みが良好である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、本発明をさらに詳述する。なお、これらの実施例は、単に本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。また、本発明によって教示される内容を読んだ後、当業者は、本発明に種々の変更又は修正を加えることができ、これらの同等の形態は、本願に添付される特許請求の範囲によって限定される範囲に同様に収まる。
【0025】
実施例1
難燃セルロース系繊維の調製方法において、具体的なステップは、以下のとおりである。
(1)濃度が5wt%であるビスコース繊維紡糸液を調製する。
(2)水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗し、水洗の温度は、90℃であり、水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が40wt%である。
(3)水洗糸を難燃剤水溶液で浸漬し、難燃剤水溶液における難燃剤の質量含有量は、10wt%であり、難燃剤は、アルコキシシクロトリホスファゼンalkoxycyclotriphosphazeneであり、浸漬時の難燃剤水溶液の温度は、60℃であり、浸漬時間は、60秒である。
(4)難燃セルロース系繊維が調製されるように、浸漬後の水洗糸をすすぎ及び乾燥させ、すすぎの温度は、20℃であり、時間は、10sであり、乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、熱風の温度は、100℃であり、繊維の含水率が14.9wt%まで乾燥させる。
【0026】
最終的に調製される難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用される長繊維であり、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなり、平均直径が5ナノメートルである微孔を含み、結晶化度が31%である。難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の5%である。難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が0.5dtexであり、破断強度が1.0N/dtexであり、破断伸び率が5%であり、水分率が5%である。洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が45%である。50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の3%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が35%である。
【0027】
比較例1
難燃セルロース系繊維の調製方法において、ステップは、実施例1と基本的に同じであるが、ステップ(2)における水洗の温度が80℃である点のみで相違する。調製されるセルロース系繊維は、結晶化度が30%であり、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の3.2%であり、難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が0.4dtexであり、破断強度が1.0N/dtexであり、破断伸び率が6%であり、水分率が5%であり、洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が30%であり、50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の2.1%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が20%である。
【0028】
比較例2
難燃セルロース系繊維の調製方法において、ステップは、実施例1と基本的に同じであるが、ステップ(3)における浸漬時の難燃剤水溶液の温度が50℃である点のみで相違する。調製されるセルロース系繊維は、結晶化度が30%であり、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の2.5%であり、難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が0.5dtexであり、破断強度が0.9N/dtexであり、破断伸び率が6%であり、水分率が6%であり、洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が25%であり、50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の1.9%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が18%である。
【0029】
比較例3
難燃セルロース系繊維の調製方法において、ステップは、実施例1と基本的に同じであるが、ステップ(4)におけるすすぎの温度が50℃である点のみで相違する。調製されるセルロース系繊維は、結晶化度が29%であり、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の3.5%であり、難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が0.5dtexであり、破断強度が0.5N/dtexであり、破断伸び率が5%であり、水分率が6%であり、洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が32%であり、50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の1.5%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が16%である。
【0030】
実施例1と比較例1~3との比較により、本発明によれば、水洗温度、処理時の難燃剤水溶液の温度及びすすぎ温度の組み合わせにより、難燃セルロース系繊維の耐久性能、機械的性能及び難燃性能を著しく向上させることができる。これは、まず、高い水洗温度が溶媒の拡散速度を速め、初生繊維における残留溶媒が速やかに洗い出されることにより、その後の過程で溶媒と難燃剤とを相互作用させて効果に影響を与えることがないと同時に、高い温度も繊維内部の穴を大きくし、難燃剤の入り込みに有利であり、染色難燃剤水溶液処理時に、適切な温度は繊維表面の微孔構造を常に水洗後の疎な状態を保持し、繊維表面の穴を通過して難燃剤が繊維内部に浸透する速度が速められ、難燃剤が繊維内部に迅速に入り込み、短い時間で平衡に達することを可能にし、ひいては難燃剤処理時間が短縮されると同時に、この温度では、温度が高すぎるため難燃剤自体が反応することがない。それから、その後の低いすすぎ温度で繊維内部の穴を収縮させ、繊維内部難燃剤が洗い出されることなく表面未反応の難燃剤を洗い流すことができるため、繊維内部で十分かつ均一な染料を保持することができ、難燃繊維の耐久性能及び機械的性能が大幅に向上する。
【0031】
比較例4
難燃セルロース系繊維の調製方法において、ステップは、実施例1と基本的に同じであるが、ステップ(4)においてすすぎが行われていない点のみで相違する。調製されるセルロース系繊維は、結晶化度が28%であり、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の4.1%であり、難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が0.4dtexであり、破断強度が0.4N/dtexであり、破断伸び率が6%であり、水分率が6%であり、洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が40%であり、50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の1.2%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が14%である。
【0032】
実施例1と比較例4との比較により、本発明によれば、すすぎにより難燃セルロース系繊維の難燃性能を著しく向上させ、すすぎにより、かつすすぎ温度を低く制御することで、以前に開いた繊維表面の穴を収縮させることができ、それにより、繊維内部に浸透した難燃剤が繊維内に強固に付着することが確保され、難燃剤と繊維との結合堅牢性が大幅に向上し、繊維の耐水洗性能が向上する。
【0033】
実施例2
難燃セルロース系繊維の調製方法において、具体的なステップは、以下のとおりである。
(1)濃度が25wt%であるアセテート繊維紡糸液を調製する。
(2)水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗し、水洗の温度は、99℃であり、水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が70wt%である。
(3)水洗糸を難燃剤水溶液で噴霧し、難燃剤水溶液における難燃剤の質量含有量は、30wt%であり、難燃剤は、ハロゲン化ホスファゼンphosphonitrilic chloride(halogenated phosphazene)であり、噴霧時の難燃剤水溶液の温度は、90℃であり、噴霧時間は、600秒である。
(4)難燃セルロース系繊維が調製されるように、噴霧後の水洗糸をすすぎ及び乾燥させ、すすぎの温度は、40℃であり、時間は、120sであり、乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、熱風の温度は、200℃であり、繊維の含水率が13.5wt%まで乾燥させる。
【0034】
最終的に調製される難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用される短繊維であり、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなり、平均直径が50ナノメートルである微孔を含み、結晶化度が33%である。難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の15%である。難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が5.0dtexであり、破断強度が4.0cN/dtexであり、破断伸び率が20%であり、水分率が15%である。洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が45%である。50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の12%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が38%である。
【0035】
実施例3
難燃セルロース系繊維の調製方法において、具体的なステップは、以下のとおりである。
(1)濃度が15wt%であるLyocell繊維紡糸液を調製する。
(2)水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗し、水洗の温度は、95℃であり、水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が55wt%である。
(3)水洗糸を難燃剤水溶液で浸漬し、難燃剤水溶液における難燃剤の質量含有量は、19wt%であり、難燃剤は、ハロゲン化亜リン酸エステルhalogenated phosphiteであり、浸漬時の難燃剤水溶液の温度は、75℃であり、浸漬時間は、330秒である。
(4)難燃セルロース系繊維が調製されるように、浸漬後の水洗糸をすすぎ及び乾燥させ、すすぎの温度は、30℃であり、時間は、65sであり、乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、熱風の温度は、125℃であり、繊維の含水率が14wt%まで乾燥させる。
【0036】
最終的に調製される難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用されるトウであり、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなり、平均直径が20ナノメートルである微孔を含み、結晶化度が31%である。難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の12%である。難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が2.8dtexであり、破断強度が2.5cN/dtexであり、破断伸び率が12%であり、水分率が11%である。洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が46%である。50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の10%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が35%である。
【0037】
実施例4
難燃セルロース系繊維の調製方法において、具体的なステップは、以下のとおりである。
(1)濃度が8wt%である銅アンモニア繊維紡糸液を調製する。
(2)水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗し、水洗の温度は、92℃であり、水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が45wt%である。
(3)水洗糸を難燃剤水溶液で噴霧し、難燃剤水溶液における難燃剤の質量含有量は、18wt%であり、難燃剤は、N-メチロール-3-ジメトキシホスホニルプロピルアミドN-hydroxymethyl-3-dimethoxyphosphonyl propionamideであり、噴霧時の難燃剤水溶液の温度は、70℃であり、噴霧時間は、500秒である。
(4)難燃セルロース系繊維が調製されるように、噴霧後の水洗糸をすすぎ及び乾燥させ、すすぎの温度は、25℃であり、時間は、35sであり、乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、熱風の温度は、125℃であり、繊維の含水率が14wt%まで乾燥させる。
【0038】
最終的に調製される難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用される長繊維であり、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなり、平均直径が14ナノメートルである微孔を含み、結晶化度が32%である。難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の14%である。難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が1.9dtexであり、破断強度が2.1cN/dtexであり、破断伸び率が9.5%であり、水分率が10%である。洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が50%である。50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の13%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が40%である。
【0039】
実施例5
難燃セルロース系繊維の調製方法において、具体的なステップは、以下のとおりである。
(1)イオン液体を溶媒として調製され、濃度が20wt%である再生セルロース系繊維紡糸液を調製し、ここでイオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾールクロル塩1-butyl-3-methylimidazolium chloride([BMIM]Cl)であり、溶媒としてイオン液体を採用し、セルローススラリーを溶解してから、再生セルロース繊維が得られるようにドライジェット湿式紡糸を採用する。
(2)水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗し、水洗の温度は、93℃であり、水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が60wt%である。
(3)水洗糸を難燃剤水溶液で浸漬し、難燃剤水溶液における難燃剤の質量含有量は、15wt%であり、難燃剤は、N-メチロール-3-ジメトキシホスホリルプロピルアミドであり、浸漬時の難燃剤水溶液の温度は、60℃であり、浸漬時間は、120秒である。
(4)難燃セルロース系繊維が調製されるように、浸漬後の水洗糸をすすぎ及び乾燥させ、すすぎの温度は、30℃であり、時間は、20sであり、乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、熱風の温度は、120℃であり、繊維の含水率が14.5wt%まで乾燥させる。
【0040】
最終的に調製される難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用される長繊維であり、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなり、平均直径が30ナノメートルである微孔を含み、結晶化度が31%である。難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の12%である。難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が1.5dtexであり、破断強度が2.1cN/dtexであり、破断伸び率が10%であり、水分率が9%である。洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が48%である。50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の10%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が39%である。
【0041】
実施例6
難燃セルロース系繊維の調製方法において、具体的なステップは、以下のとおりである。
(1)アルカリ溶液を溶媒として調製され、濃度が22wt%である再生セルロース系繊維紡糸液を調製し、ここでアルカリ溶液は、カルバメート/NaOHシステムであり、溶媒としてカルバメート/NaOHを採用し、セルローススラリーを溶解し、脱泡及び濾過した後に、再生セルロース繊維が得られるように溶液を酸液中に繊維状に析出させる。
(2)水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗し、水洗の温度は、91℃であり、水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が40wt%である。
(3)水洗糸を難燃剤水溶液で噴霧し、難燃剤水溶液における難燃剤の質量含有量は、20wt%であり、難燃剤は、ハロゲン化ホスファゼン/アルコキシシクロトリホスファゼン(質量比1:1の混合物)であり、噴霧時の難燃剤水溶液の温度は、80℃であり、噴霧時間は、600秒である。
(4)難燃セルロース系繊維が調製されるように、噴霧後の水洗糸をすすぎ及び乾燥させ、すすぎの温度は、20℃であり、時間は、40sであり、乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、熱風の温度は、105℃であり、繊維の含水率が14wt%まで乾燥させる。
【0042】
最終的に調製される難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用される短繊維であり、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなり、平均直径が20ナノメートルである微孔を含み、結晶化度が32%である。難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の12%である。難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が1.1dtexであり、破断強度が1.2cN/dtexであり、破断伸び率が18%であり、水分率が14%である。洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が45%である。50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の10%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が37%である。
【0043】
実施例7
難燃セルロース系繊維の調製方法において、具体的なステップは、以下のとおりである。
(1)濃度が12wt%であるビスコース繊維紡糸液を調製する。
(2)水洗糸が調製されるように、セルロース系繊維紡糸液をスプレーヘッドで押出、凝固、延伸、水洗し、水洗の温度は、90℃であり、水洗の終了条件は、水洗糸の含水率が40wt%である。
(3)水洗糸を難燃剤水溶液で浸漬し、難燃剤水溶液における難燃剤の質量含有量は、25wt%であり、難燃剤は、ハロゲン化ホスファゼン/アルコキシシクロトリホスファゼン/N-メチロール-3-ジメトキシホスホリルプロピルアミド(質量比1:1:1の混合物)であり、浸漬時の難燃剤水溶液の温度は、90℃であり、浸漬時間は、100秒である。
(4)難燃セルロース系繊維が調製されるように、浸漬後の水洗糸をすすぎ及び乾燥させ、すすぎの温度は、20℃であり、時間は、40sであり、乾燥には、熱風乾燥方式が採用され、熱風の温度は、125℃であり、繊維の含水率が12wt%まで乾燥させる。
【0044】
最終的に調製される難燃セルロース系繊維は、編物、織物、不織布に用いられ、又は他の繊維と混用されるトウであり、主にセルロース系繊維マトリックスと、セルロース系繊維マトリックス内に分散された難燃剤とからなり、平均直径が7ナノメートルである微孔を含み、結晶化度が31%である。難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の13%である。難燃セルロース系繊維は、単繊維繊度が3.5dtexであり、破断強度が3.9cN/dtexであり、破断伸び率が18%であり、水分率が14%である。洗浄前、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が46%である。50回洗浄後、難燃剤は、質量がセルロース系繊維マトリックス質量の12%であり、難燃セルロース系繊維は、限界酸素指数が39%である。
【国際調査報告】