(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】ビフェノール二酸無水物組成物の製造法、ビフェノール二酸無水物組成物の精製法、およびビフェノール二酸無水物から誘導したポリ(エーテルイミド)
(51)【国際特許分類】
C07D 307/89 20060101AFI20220317BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C07D307/89 Z
C08G73/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541527
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 US2020015657
(87)【国際公開番号】W WO2020160132
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パティル ダダサヘブ ブイ
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ セカンド ジェームス パトリック
【テーマコード(参考)】
4C037
4J043
【Fターム(参考)】
4C037RA11
4J043PA02
4J043PB23
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TB01
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA152
4J043UB132
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043XA03
4J043XA19
4J043XB07
4J043XB33
4J043ZA12
4J043ZA51
4J043ZB21
(57)【要約】
ビフェノール二酸無水物組成物を精製する方法であって、この方法は、ビフェノール二酸無水物組成物をハロゲン化溶媒と接触させて溶液を生成する工程と、精製したビフェノール二酸無水物組成物を前記溶液から単離する工程とを含む。ビフェノール二酸無水物組成物を製造する方法であって、この方法は、ビフェノール四酸と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つとを含む第1の溶液を、ハロゲン化溶媒と接触させて第2の溶液を生成する工程と、前記第2溶液を加熱して対応するビフェノール二酸無水物を生成する工程と、精製したビフェノール二酸無水物を単離する工程とを含む。このビフェノール二酸無水物は、様々な物品に使用可能なポリ(エーテルイミド)の生成に特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフェノール二酸無水物組成物を精製する方法であって、
前記ビフェノール二酸無水物組成物が、
次の構造式で示されるビフェノール二酸無水物(biphenol dianhydide)
【化1】
(式中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立してハロゲンまたは1価のC
1~6アルキル基であり、pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であって、望ましくは、pおよびqはそれぞれ0である)と、
ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つと
を含み、
前記方法が、
前記ビフェノール二酸無水物組成物を含む溶液が生成するような条件下で、前記ビフェノール二酸無水物組成物をハロゲン化溶媒と接触させる工程と、
精製したビフェノール二酸無水物組成物を前記溶液から単離する工程と
を含み、
精製ビフェノール二酸無水物組成物を溶液から単離する前記工程が、
前記溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、前記スラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成し、前記ウエットケークを、水、C
1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程、
前記溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程、
前記溶液をアルカリ性水溶液、望ましくは、重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性水溶液で洗浄する工程、または、
前記溶液からイオン種を除くため前記溶液に吸着剤を加え、前記溶液を濾過して前記吸着剤とイオン種を除去する工程、
あるいはこれらの工程の組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ビフェノール二酸無水物組成物を製造する方法であって、
前記方法が、
次の構造式で示されるビフェノール四酸
【化2】
(式中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立してハロゲンまたは1価のC
1~6アルキル基であり、pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であって、望ましくはpおよびqはそれぞれ0である)と、
ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つとを、
ハロゲン化溶媒と接触させて第1の溶液を生成する工程と、
前記ビフェノール四酸から対応するビフェノール二酸無水物が生成するような条件に、前記第1溶液を置く工程と、
精製したビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程と
を含み、
精製ビフェノール二酸無水物組成物を溶液から単離する前記工程が、
前記溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、前記スラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成し、前記ウエットケークを、水、C
1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程、
前記溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程、
前記溶液をアルカリ性水溶液、望ましくは、重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性水溶液で洗浄する工程、または、
前記溶液からイオン種を除くため前記溶液に吸着剤を加え、前記溶液を濾過して前記吸着剤とイオン種を除去する工程、
あるいはこれらの工程の組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する前記工程が、前記溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、前記スラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成する工程を含み、前記方法が更に、前記ウエットケークを、水、C
1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法であって、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する前記工程が、前記溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、前記溶液が、5~25質量%、望ましくは7~25質量%、より望ましくは7~15質量%の固形分を持つことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1または3から5のいずれかに記載の方法であって、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する前記工程が、前記溶液をアルカリ性水溶液、望ましくは重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性水溶液で洗浄する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の方法であって、前記溶液からイオン種を除くため溶液に吸着剤を加え、前記溶液を濾過して前記吸着剤とイオン種を除去する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法であって、前記ハロゲン化溶媒が、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、1,2,3,4-テトラクロロベンゼン、1,2,3,5-テトラクロロベンゼン、ブロモベンゼン、2-クロロフェノール、4-クロロフェニル=フェニル=エーテル、m-クロロトルエン、o-クロロトルエン、p-クロロトルエン、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の方法であって、前記ビフェノール二酸無水物が異性体混合物であり、望ましくは、前記ビフェノール二酸無水物の2~100質量%が、ビフェノール二酸無水物のビフェノール基の二価の結合を3,3’位置に持ち、より望ましくは、前記ビフェノール二酸無水物の90~100質量%が、ビフェノール二酸無水物のビフェノール基の二価の結合を3,3’位置に持つことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の方法で製造したビフェノール二酸無水物であって、精製した前記ビフェノール二酸無水物に含まれる、
ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、および鉄イオンのそれぞれが25ppm未満であり、
ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、および鉄イオンの合計が175ppm未満であり、
リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれが35ppm未満であり、また、
リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの合計が50ppm未満である
ことを特徴とするビフェノール二酸無水物。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の方法で製造した精製ビフェノール二酸無水物組成物と、有機ジアミンとの重合から誘導した繰り返し単位を含むポリ(エーテルイミド)。
【請求項12】
請求項11に記載のポリ(エーテルイミド)であって、前記有機ジアミンが、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、またはこれらの組み合わせであることを特徴とするポリ(エーテルイミド)。
【請求項13】
請求項11または12に記載のポリ(エーテルイミド)であって、前記ポリ(エーテルイミド)に含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、チタンイオン、銅イオン、およびリンイオンのそれぞれが25ppm未満であり、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれが35ppm未満であることを特徴とするポリ(エーテルイミド)。
【請求項14】
請求項11から13に記載のポリ(エーテルイミド)であって、前記ポリ(エーテルイミド)から成形した物品、または、前記ポリ(エーテルイミド)を含むプレスフィルム(pressed film)が、ASTM D1003-07による測定で、630ナノメートル、850ナノメートル、1310ナノメートル、および1550ナノメートルにおいて、40%よりも大きい透過パーセントを持つことを特徴とするポリ(エーテルイミド)。
【請求項15】
請求項11から14のいずれかに記載のポリ(エーテルイミド)を含む物品であって、望ましくは、前記物品が光学的構成要素であることを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年1月31日出願の欧州特許出願公開第19154907.0号の利益を主張するものであり、その内容は全て本件に引用して援用する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(イミド)、特に、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、180℃を超えるガラス転移温度(Tg)を持つ高性能ポリマーである。更にこのポリマーは、強さ、耐熱性、およびモジュラスが高く、幅広い耐薬品性を備えている。ポリ(エーテルイミド)は機械的および熱的特性が良好であるため、この組成物は自動車や電気/電子の用途など様々な用途に幅広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第19154907.0号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリ(エーテルイミド)は縮重合により、例えば、二酸無水物とジアミンとの縮重合によって製造可能である。反応速度が良く、分子量が高く、安定で加工に適したポリマー生成物を得るには高純度のモノマー成分が望ましい。更に、一部の用途においては、良好な光学的透明度と良好な熱および機械的特性を備えたポリマーが必要とされることがある。物品の示す曇り度は、そのポリマーの製造法に影響されることがある。実際には、金属およびその塩を実質的に含まない望ましい二酸無水物の製造は困難なことがある。
【0005】
このため、当該技術において、残留する相間移動試剤、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタン、リン、クロム、マグネシウム、マンガン、銅、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、臭化物、フッ化物、および塩化物イオンを実質的に含まない二酸無水物モノマーが求められている。これらの汚染物の濃度が低く、曇りが少なく、光学的透明度が高く、重合の際の反応速度が良好で、分子量が高く、安定で加工に適したポリマーであるポリ(エーテルイミド)ができるならば更に有益と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ビフェノール二酸無水物組成物を精製する方法であって、このビフェノール二酸無水物組成物は、次の構造式で示されるビフェノール二酸無水物
【化1】
(式中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立してハロゲンまたは1価のC
1~6アルキル基であり、pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であって、望ましくは、pおよびqはそれぞれ0である)と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つとを含み、この方法は、ビフェノール二酸無水物組成物を含む溶液が生成するような条件下で、ビフェノール二酸無水物組成物をハロゲン化溶媒と接触させる工程と、精製したビフェノール二酸無水物組成物を溶液から単離する工程とを含み、精製ビフェノール二酸無水物組成物を溶液から単離する工程は、溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、このスラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成し、このウエットケークを、水、C
1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程、溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程、溶液をアルカリ性水溶液、望ましくは、重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性水溶液で洗浄する工程、または、溶液からイオン種を除くため溶液に吸着剤を加え、この溶液を濾過して吸着剤とイオン種を除去する工程、あるいはこれらの工程の組み合わせを含む。
【0007】
ビフェノール二酸無水物組成物を製造する方法であって、この方法は、次の構造式で示されるビフェノール四酸
【化2】
(式中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立してハロゲンまたは1価のC
1~6アルキル基であり、pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であって、望ましくは、pおよびqはそれぞれ0である)と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つとを含む第1の溶液を、ハロゲン化溶媒と接触させて第2の溶液を生成する工程と、ビフェノール四酸から対応するビフェノール二酸無水物が生成するような条件下に第2溶液を置く工程と、精製したビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程とを含み、精製ビフェノール二酸無水物組成物を溶液から単離する工程は、溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、このスラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成し、このウエットケークを、水、C
1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程、溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程、または、溶液からイオン種を除くため溶液に吸着剤を加え、この溶液を濾過して吸着剤とイオン種を除去する工程、あるいはこれらの工程の組み合わせを含む。
【0008】
上記の方法で製造したビフェノール二酸無水物であって、精製したビフェノール二酸無水物に含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、鉄イオン、およびリンイオンのそれぞれは25ppm未満であり、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、鉄イオン、およびリンイオンの合計は175ppm未満であり、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれは35ppm未満であり、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの合計は50ppm未満である。
【0009】
本件に開示するもう一つの態様は、精製したビフェノール二酸無水物組成物と、1つ以上の有機ジアミンとの重合から誘導した繰り返し単位を含む、ポリ(エーテルイミド)である。
【0010】
このポリ(エーテルイミド)を含む物品であって、望ましくは、この物品は光学的構成要素である。
【0011】
上記およびその他の特徴の例を以下の詳細な記述に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発明者は、思いがけなく、残留する汚染物質濃度の低いビフェノール二酸無水物を、特に、ハロゲン化溶媒を使用することによって製造できることを発見した。発明者はまた、ハロゲン化溶媒を用いて、対応する四酸前駆物質からビフェノール二酸無水物を製造する方法も発見した。有益なことに、このビフェノール二酸無水物をジアミンとの重合に使用すると、残留汚染物質濃度の低いポリ(エーテルイミド)が製造でき、これにより、望ましい特性、特に、良好な光学的透明度と低い曇り度を持つポリマーが得られる。ハロゲン化溶媒を用いて製造すると、ビフェノール基による硬い骨格を持った、分子量の高いポリ(エーテルイミド)ができることが分かった。
【0013】
従って、本件に開示する態様の一つは、対応するビフェノール四酸前駆物質からビフェノール二酸無水物を製造する方法である。この方法は、ビフェノール四酸と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、 鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つとを、ハロゲン化溶媒と接触させて、第1の溶液を生成する工程を含む。ビフェノール四酸は次の構造式で示される。
【化3】
式中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立してハロゲンまたは1価のC
1~6アルキル基であり、pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であって、望ましくは、pおよびqはそれぞれ0である。一部の実施形態において、p、q、またはその両方は1~4、望ましくは1~2、より望ましくは1とすることができる。一部の実施形態において、R
aおよびR
bはそれぞれ独立してC
1~3アルキル基、例えば、メチル基とすることができる。ビフェノール基の二価の結合は、3,3’位置、3,4’位置、4,3’位置、または4,4’位置とすることができる。望ましくは、ビフェノール基の二価の結合は、3,3’位置とすることができる。ビフェノール四酸は、例えば、後述の実施例で更に述べるように、芳香族ビスイミド前駆物質の加水分解により製造可能である。ビフェノール四酸に含まれるビフェノール汚染物質は、望ましくは0.5質量%未満である。一部の実施形態において、ビフェノール四酸に含まれるナトリウムイオンは、望ましくは200ppm以下である。
【0014】
ハロゲン化溶媒は望ましくは芳香族ハロゲン化溶媒である。例えば、ハロゲン化溶媒の例としては、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、1,2,3,4-テトラクロロベンゼン、1,2,3,5-テトラクロロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、2-クロロフェノール、4-クロロフェニル=フェニル=エーテル、m-クロロトルエン、o-クロロトルエン、p-クロロトルエンなど、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態において、ハロゲン化溶媒はo-ジクロロベンゼンとすることができる。一部の実施形態では、他の溶媒を本方法から除外することができる。例えば、本方法では、ハロゲン化されていない溶媒、特に、非ハロゲン化芳香族溶媒を除外することができる。
【0015】
第1溶液を、対応するビフェノール二酸無水物を含む第2溶液が生成するような条件下で加熱する。ビフェノール二酸無水物は次の構造式で示すことができる。
【化4】
式中、R
a、R
b、pおよびqは先の定義と同じである。ある具体的な実施形態において、pおよびqはゼロであり、ビフェノール基の二価の結合は、3,3’位置にある。一部の実施形態において、ビフェノール二酸無水物は異性体混合物であっても良い。例えば、ビフェノール二酸無水物の2~100質量%が、ビフェノール二酸無水物のビフェノール基の二価の結合が3,3’位置にあるものであっても良い。望ましくは、ビフェノール二酸無水物の90~100質量%が、ビフェノール二酸無水物のビフェノール基の二価の結合が3,3’位置にあるものであっても良い。従って、ビフェノール二酸無水物は望ましくは、ビフェノール二酸無水物の90~100質量%が次の構造式で示される、異性体混合物である。
【化5】
【0016】
第2溶液は、更に、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つと、ハロゲン化溶媒を含むことができる。
【0017】
第2溶液が生成するような条件としては、例えば、100~250℃、望ましくは150~200℃、より望ましくは175~195℃の温度と、5分~10時間、望ましくは1~10時間、より望ましくは1~5時間の時間が挙げられる。加熱は、高圧下、減圧下、または大気圧下で行うことができる。一部の実施形態において、本方法は、望ましくは、酢酸、無水酢酸など、またはこれらを組み合わせた脱水剤を加えずに行う。一部の実施形態において、本方法では相間移動触媒を加えない。
【0018】
本方法は更に、精製したビフェノール二酸無水物を単離する工程を含む。単離工程は、例えば、濾過、遠心分離など、またはこれらを組み合わせて行うことができる。一部の実施形態において、単離の前に第2溶液を冷却、例えば、200℃未満、180℃未満、望ましくは150℃未満、より望ましくは100℃未満の温度まで冷却し、精製したビフェノール二酸無水物を結晶化させてスラリーを生成することができる。一部の実施形態において、本方法は、結晶化した精製ビフェノール二酸無水物を濾過により単離してウエットケークを生成し、必要に応じて、このウエットケークを、水、C1~6アルコール、またはこれらの組み合わせ、望ましくは、メタノール、水、またはこれらの組み合わせ、より望ましくは水で洗浄する工程を含む。一部の実施形態において、本方法は、第2溶液を、100℃未満、または90℃未満、望ましくは50~85℃の温度で十分な時間、アルカリ性水溶液と接触させ、混合物を相分離させ、精製ビフェノール二酸無水物を濾過により単離してウエットケークを生成し、必要に応じて、このウエットケークを、水、C1~6アルコール、またはこれらの組み合わせ、望ましくは、メタノール、水、またはこれらの組み合わせ、より望ましくは水で洗浄する工程を含む。アルカリ性水溶液のpHは14未満、望ましくは10未満、より望ましくは7.5~8.5とすることができる。指示された温度で溶液をアルカリ性水溶液と接触させるとビフェノール二酸無水物の結晶化を誘発することができ、こうして得られたスラリーをアルカリ性水溶液で洗浄できることにも留意する。
【0019】
単離工程の前、溶液は、2~25質量%、望ましくは5~25、より望ましくは7~15質量%の固形分を持つことができる。一部の実施形態において、溶液は、例えば、225~250℃、望ましくは220~225℃、より望ましくは180~200℃、更に望ましくは160~185℃の温度で濾過することができ、これにより不溶性の有機および無機塩を除くことができる。濾過後、精製したビフェノール二酸無水物はそのまま使用しても良く(例えば、重合に)、または、溶液を冷却して結晶化させてから濾過し、精製したビフェノール二酸無水物を単離しても良い。
【0020】
本件に開示するもう一つの態様は、ビフェノール二酸無水物組成物の精製法である。ビフェノール二酸無水物組成物は、上記の構造式で示されるビフェノール二酸無水物と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つとを含んでいる。本方法は、ビフェノール二酸無水物組成物をハロゲン化溶媒と接触させて、ビフェノール二酸無水物組成物を含む溶液を生成する工程と、ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程とを含む。ビフェノール二酸無水物組成物をハロゲン化溶媒と接触させ、ビフェノール二酸無水物組成物を単離した後の、単離ビフェノール二酸無水物組成物に含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオン、例えば、NaHSO3、Na2SO4、KHSO3、K2SO4、NaNO3、NaNO2、KNO3、KNO2、NaCl、KCl、CaSO4、およびCa(NO3)2などの様々な無機塩の少なくとも1つの濃度は低下している。
【0021】
ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程は、例えば、濾過、遠心分離など、またはこれらを組み合わせて行うことができる。ある実施形態において、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程は、溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、このスラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成する工程を含み、この方法は更に、このウエットケークを、水、C1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程を含む。
【0022】
一部の実施形態において、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程は、溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程を含む。高い温度で濾過すると不溶性無機塩を除くことができる。
【0023】
一部の実施形態において、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程は、溶液をアルカリ性水溶液、望ましくは、重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性水溶液で洗浄する工程を含む。アルカリ性水溶液による洗浄は、100℃未満、または90℃未満、望ましくは50~85℃の温度で十分な時間、行うことができる。混合物を相分離させ、精製ビフェノール二酸無水物を単離してウエットケークを生成し、必要に応じて、このウエットケークを、水、C1~6アルコール、またはこれらの組み合わせ、望ましくは、メタノール、水、またはこれらの組み合わせ、より望ましくは水で洗浄することができる。混合物の相分離と精製ビフェノール二酸無水物組成物の単離は、例えば、濾過、遠心分離など、またはこれらを組み合わせて行うことができる。アルカリ性水溶液のpHは14未満、望ましくは10未満、より望ましくは7.5~8.5とすることができる。指示された温度で溶液をアルカリ性水溶液と接触させるとビフェノール二酸無水物の結晶化を誘発することができ、こうして得られたスラリーをアルカリ性水溶液で洗浄できることに留意する。
【0024】
一部の実施形態において、精製ビフェノール二酸無水物を単離する工程は、溶液からイオン種を除くため溶液に吸着剤を加え、この溶液を濾過して吸着剤とイオン種を除去する工程を含むことができる。吸着剤は、例えば、シーライト、珪藻土、シリカ、アルミナなど、またはこれらの組み合わせを含むことができる。必要に応じて撹拌しながら、ビフェノール二酸無水物溶液を吸着剤と接触させた後、この溶液を濾過、望ましくは、孔径40~60マイクロメートル未満のフィルタで濾過して、ビフェノール二酸無水物を含み、イオン種を実質的に含まない溶液を生成することができる。ここで言う“実質的に含まない”とは、溶液に含まれるイオン種が25ppm未満であることを指すことができる。
【0025】
一部の実施形態において、スラリーは、5~25質量%、望ましくは7~25質量%、より望ましくは7~15質量%の固形分を持つことができる。固形分は、ハロゲン化溶媒と接触させたときにスラリーとなるか、溶液となるかに影響する。例えば、濃度が高い(例えば、10%よりも大きい)と指定の温度でスラリーとなるが、同じ温度でも濃度が低い(例えば、10%未満)と均一な溶液ができると考えられる。ビフェノール二酸無水物組成物をハロゲン化溶媒と接触させる工程が、溶液を生成するような温度と濃度である実施形態において、本方法は、先に論じたように、溶液の温度を調節し、ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成する工程を更に含むことができる。
【0026】
具体的な実施形態において、ビフェノール二酸無水物組成物の製造法、ビフェノール二酸無水物組成物の精製法、またはその両方は、ハロゲン化溶媒中でスラリーまたは溶液となっているビフェノール二酸無水物組成物を、100℃未満、または90℃未満、望ましくは50~85℃の温度と、5分~5時間、望ましくは15分~2時間、より望ましくは15分~55分間の時間、アルカリ性水溶液と接触させる工程を含む。混合物を相分離させ、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する。スラリーまたは溶液をアルカリ性水溶液と接触させて、スラリーまたは溶液からイオン種を除く。イオン種は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの1つ以上とすることができる。アルカリ性水溶液のpHは14未満、望ましくは10未満、より望ましくは7.5~8.5とすることができる。混合物の相分離と精製ビフェノール二酸無水物組成物の単離は、例えば、濾過、遠心分離など、またはこれらを組み合わせて行うことができる。ある実施形態において、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程は、スラリーを濾過してウエットケークを生成し、必要に応じて、このウエットケークを、水、C1~6アルコール、またはこれらの組み合わせ、望ましくは、メタノール、水、またはこれらの組み合わせ、より望ましくは水で洗浄して、イオン種を実質的に含まないビフェノール二酸無水物組成物を生成する工程を含む。ここで言う“実質的に含まない”とは、溶液に含まれるイオン種が25ppm未満であることを指すことができる。
【0027】
有益なことに、上記の方法で製造または精製したビフェノール二酸無水物は、残留する汚染物質の濃度を低く、特に、イオン種の濃度を低くすることができる。例えば、このビフェノール二酸無水物に含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、および鉄イオンのそれぞれは25ppm未満とすることができる。このビフェノール二酸無水物組成物に含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、および鉄イオンの合計は175ppm未満とすることができる。このビフェノール二酸無水物組成物に含まれる、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれは35ppm未満とすることができる。このビフェノール二酸無水物組成物に含まれる、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの合計は50ppm未満とすることができる。
【0028】
本件に記載の方法で製造または精製したビフェノール二酸無水物は、有益なことに、ポリ(エーテルイミド)の製造法に使用することができる。ポリ(エーテルイミド)の製造法は、ポリ(エーテルイミド)が生成するような条件で、ハロゲン化溶媒の存在下、ビフェノール二酸無水物を1つ以上の有機ジアミンと接触させる工程を含むことができる。
【0029】
有機ジアミンとしては、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、4-メチルノナメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、N-メチル-ビス(3-アミノプロピル)アミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、ビス(3-アミノプロピル)スルフィド、1,4-シクロヘキサンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミン、5-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、1,5-ジアミノナフタレン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、ビス(2-クロロ-4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,4-ビス(p-アミノ-t-ブチル)トルエン、ビス(p-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-メチル-o-アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p-メチル-o-アミノペンチル)ベンゼン、1,3-ジアミノ-4-イソプロピルベンゼン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)としても知られる)、およびビス(4-アミノフェニル)エーテルが挙げられる。前述の化合物のいずれの位置異性体も使用できる。前述の化合物のいずれのC1~4アルキル化またはポリ(C1~4)アルキル化誘導体、例えば、ポリメチル化1,6-ヘキサンジアミンも使用できる。これらの化合物の組み合わせも使用できる。一部の実施形態において、有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、またはこれらの組み合わせである。一部の実施形態において、ジアミンに含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、チタンイオン、リンイオン、および鉄イオンのそれぞれは25ppm未満、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれは30ppm未満とすることができる。一部の実施形態において、有機ジアミンに含まれる様々な無機塩、例えば、NaHSO3、Na2SO4、KHSO3、K2SO4、NaNO3、NaNO2、KNO3、KNO2、NaCl、KCl、CaSO4、およびCa(NO3)2のそれぞれは、30ppm未満とすることができる。
【0030】
ポリ(エーテルイミド)が生成するような条件としては、170~380℃の温度と、10~50質量%、望ましくは20~40質量%、より望ましくは25~35質量%の固形分が挙げられる。重合は、2~24時間、望ましくは3~6時間行うことができる。重合は、減圧下、大気圧下、または高圧下で行うことができる。
【0031】
本方法は更に、必要に応じて、様々な連鎖停止剤またはエンドキャッピング剤を用いることができ、このため、ポリ(エーテルイミド)は必要に応じて、連鎖停止剤に由来する少なくとも1つの鎖末端を更に含むことがある。連鎖停止剤は分子量の成長速度を制限するため、ポリ(エーテルイミド)の分子量の制御に使用することができる。連鎖停止剤の例としては、ある種のモノアミン(例えば、アニリン)、一酸無水物(例えば、無水フタル酸)、モノフェノール系化合物などが挙げられる。一部の実施形態において、連鎖停止剤は望ましくは、モノアミン連鎖停止剤または一酸無水物連鎖停止剤、より望ましくは、アニリンまたは無水フタル酸とすることができる。しかし、当然のことながら、本件に開示されているポリ(エーテルイミド)は、任意のエンドキャップを備えた、任意の所望の重量平均分子量(Mw)を持つように製造することがきる。
【0032】
一部の実施形態において、有機ジアミン、連鎖停止剤(存在する場合)、またはその両方の無機汚染物濃度を低く、例えば、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれを50ppm未満または25ppm未満とすることができる。
【0033】
一部の実施形態では、ポリ(エーテルイミド)の重合に触媒を用いない。
【0034】
ポリ(エーテルイミド)の製造法は、必要に応じて、脱揮(揮発分除去:devolatilization)ステップを更に含むことができる。脱揮により、最終ポリマー生成物中に残留する揮発種の濃度を低くすることができ、また脱揮により、ポリマー生成物中の末端基を完成(finish)させることができる。一部の実施形態では、溶媒の大部分を除き、残留する揮発種をポリマー生成物から脱揮により(必要に応じて減圧下で)除去しても良い。別の実施形態では、重合反応を溶媒中で希望するある程度まで行い、次に、溶液中での最初の反応に続く、少なくとも1回の脱揮ステップの間に重合を本質的に完了させる。ポリマー混合物を脱揮し、良好な溶融加工性とするために必要な低い濃度まで溶媒や他の揮発種を低減する装置は、一般に減圧下で高温加熱することができ、揮発種の除去を促すため急激に表面積を大きくする能力を備えている。このような装置の混合部は一般に、非常に粘度が高いと考えられる高温の無定形ポリ(エーテルイミド)溶融物をポンプ輸送、撹拌(agitate)、およびかき混ぜ(stir)するのに十分なパワーを供給することができる。適当な脱揮装置としては、ワイプドフィルムエバポレータ(wiped films evaporators)、および脱揮押出機、特に、複数の排気部を備えた二軸押出機が挙げられる(但し、これらに限定しない)。一部の実施形態において、本方法は、必要に応じて、ポリ(エーテルイミド)を、335~425℃で、望ましくは360~400℃で、より望ましくは375~390℃で1~30分間、脱揮する工程を更に含むことができる。
【0035】
本件に記載の方法に従って、また、本件に開示の方法で製造または精製したビフェノール二酸無水物を用いて製造したポリ(エーテルイミド)は、有益なことに、残留不純物の濃度を低くすることができる。より詳しくは、ポリ(エーテルイミド)に含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、チタンイオン、銅イオン、リンイオンのそれぞれを25ppm未満、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれを35ppm未満とすることができる。
【0036】
本件に開示の方法に従って製造したポリ(エーテルイミド)は、様々な物品の製造に特に有用と考えられる。本ポリ(エーテルイミド)は、任意の適当な技術、例えば、溶融加工技術を用いて物品に成形することができる。溶融成形法としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形、コイニング、およびインジェクションブロー成形が挙げられる。例えば、溶融成形法は射出成形であっても良い。本ポリ(エーテルイミド)は、流し込み、ブローイング、または押出しによって、シートまたはフィルムに成形することができる。これらは、溶融物であるときから、または、組成物の加工工程のより後の段階で狙いとした物品または構造物に更に熱成形することができる。本ポリ(エーテルイミド)は、異なる材料または異なる方法で作成した物の上に成形することができる。物品は、圧縮成形やラム押出しなどの手法を用いても成形できる。物品は機械加工によって更に別の形状に成形することができる。物品の例としては、繊維、フィルム、シート、発泡体、フィラメント、鋳造品、押出品、または粉末が挙げられる。本件に開示のポリ(エーテルイミド)はまた、光電子工学用途での使用に特に適していると考えられる。詳細には、本ポリ(エーテルイミド)は、送信機、受信機、コネクタ、レンズ、導波管などの光電子工学品に使用することができる。
【0037】
従って、本件では、残留汚染物濃度の低いビフェノール二酸無水物の製造および精製法を提示する。本件に開示のビフェノール二酸無水物は、硬く高分子量のビフェニル含有ポリ(エーテルイミド)の製造に使用でき、これは、様々な用途、例えば、光学部品に特に有用と考えられる。このように、本件の開示内容によって著しい改善を行うことができる。
【0038】
以下の実施例で本件の開示内容を更に説明するが、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0039】
以下の実施例で使用する材料を表1に示す。
【表1】
【0040】
特に断りのない限り、以下の実施例のポリマー分子量は全て、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン標準を用いて求めた。
【0041】
以下の実施例における超高速液体クロマトグラフィ(ultra-performance liquid chromatography:UPLC)分析は全て、Waters ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×50mmカラム、35℃で行った。PDA検出は、254nm、流速0.313mL/分で行った。アセトニトリルと酸性水(4L DI H2O + 3mL 85% H3PO4)との二溶媒系によるグラディエント法を用いた。BPoDAのUPLC分析では、分析の際に部分的な加水分解が起こるため、少量のBPo酸無水物-二酸(“BPoAnhDA”)が示されることに留意する。
【0042】
以下の実施例の金属(ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタン、クロム、マグネシウム、マンガン、銅、リン)の残留濃度は全て、誘導結合プラズマ-分解(ICP-分解)法で求めた。これは、軸方向および/または径方向撮像装置(viewing)と、Gem Coneおよび/または超音波ネブライザと、適当な試料分解容器セットを備えたマイクロ波分解装置とを取り付けたICP分光計を使用するものである。試料は、濃硝酸、塩酸、硫酸、および/またはフッ化水素酸(Supra pureグレード)を用いて調製した。
【0043】
BPoDAおよびポリ(エーテルイミド)試料中に存在する陰イオン(硫酸塩、塩化物、臭化物、フッ化物、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩)の残留濃度は、抽出-イオンクロマトグラフィ(IC-抽出)で測定した。BPoDA試料は塩化メチレンに溶解し、ポリ(エーテルイミド)試料は、溶解を助けるためヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を加えた塩化メチレンに溶解した。次に、溶液を脱イオン水で抽出し、水抽出物を、較正した Dionex ICS 2000装置を用いて分析した。
【0044】
BPoTA試料中に存在する陰イオン(硫酸塩、塩化物、臭化物、フッ化物、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩)の残留濃度は、較正した Dionex ICS 2000装置を使用し、全イオンクロマトグラフィ燃焼(combustion)(IC-全)で測定した。
【0045】
ポリマー試料(5ミリグラム)のDSC測定は、TA Q1000 DSC装置で行った。フィルム試料を、窒素雰囲気中、40~300℃でスキャンした。ポリマーのガラス転移温度(Tg)と融解温度(Tm)は2回目の昇温スキャンで求めた。この実験では、20℃/分の昇温速度を用いた。
【0046】
[実施例1]
DI水(260kg)を入れた加水分解槽に、N,N’-フェニルビフェノールビスイミド(N,N’-Ph-BPoBI)(N,N’-Ph-3,3’-BPoBIとN,N’-Ph-3,4’-BPoBIとN,N’-Ph-4,4’-BPoBIとの混合物)ウエットケークを加えた(全質量268kg)。窒素パージしながら90%の出力で反応器を撹拌し、90℃に加熱した。次に、50% NaOH水溶液(60.80kg、760mol、8.0当量)を加え、反応器の全質量を330kgとした。槽を密閉し、内圧が130~135psig(約9.0~9.3×105Pa)(180℃)に達するまで3時間加熱した。更に5時間、圧力を130~135psig(約9.0~9.3×105Pa)に保った後、設定温度を85~90℃に調節した。撹拌も60%の出力に下げた。槽を2psig(約1.4×104Pa)まで注意深く減圧し、試料を取り出した。UPLC分析は、対応する四酸への加水分解が終了したことを示した。
【0047】
洗浄槽にo-DCB(225kg)を入れて撹拌し、90~95℃に加熱した。BPoTA・4Naの水溶液を洗浄槽に移し入れ、50%の出力で30分間撹拌後、層を分離させた。45分後、底層(少量の沈殿したBPoTA・4Naとo-DCBとアニリンとを含む)をNutscheフィルタに移し、廃棄した。最上層(水にBPoTA・4Naを含む)は、90~95℃で加熱を続けた。o-DCBでの洗浄ステップをもう一度繰り返してアニリンを除いた。
【0048】
クエンチ槽にDI水(170kg)を入れて撹拌後、PVCフレキシブルホースの付いたテフロン引きドラムポンプで、50% H2SO4水溶液(112kg、570mol、6当量)を加えた。輸送ラインにDI水(20kg)を流してクエンチ槽に送り、全質量を302kgとした。次に、H2SO4水溶液を80%の出力で撹拌しながら90~95℃に加熱後、クエンチに使用した。洗浄槽内で90~95℃に保っていたBPoTA・4Naの水溶液をクエンチ槽に90分かけて移した。次に、洗浄槽をDI水(60kg)で濯ぎ、再び90~95℃に加熱して、濯ぎ液もクエンチ槽へ送った。生成した乳状混合物を80%の出力で撹拌した。クエンチ反応器を90~95℃で密閉し(blocked in)、内容物を一晩そのまま保って、カルボキシラート種を完全にプロトン化させた。固体が水媒体からすぐに沈殿した。その後、スラリーを80~85℃まで冷やした。
【0049】
テフロン引きフレキシブルホースと、適合性のある適当な材料から成る接続部品(fittings)を用いて、スラリーを、60μmのTeflon濾材を入れた40リットルの Nutscheフィルタに移した。50psig(約3.4×105Pa)で、Nutscheフィルタ内で固体と液体を分け、濾液をポリプロピレントート(tote)へ送った。濾過終了後、Nutscheフィルタの底部が生成物ケークで埋まるまで移送工程を繰り返した。その後、フィルタを減圧した。保持タンク(hold tank)にDI水を満たして90℃に加熱し、50psig(約3.4×105Pa)まで加圧した。次に、保持タンクから Nutscheフィルタへ水を送り、系を閉じて30分間浸漬させた。次に、Nutscheフィルタに圧をかけて水を除いた。このバッチ洗浄プロトコルを数回繰り返した。先と同様に、濾液をポリプロピレントートへ送った。pHが2.9以上になるまで廃水流をモニタした。次に、水流を止め、フィルタを50psig(約3.4×105Pa)まで加圧して大部分の水を除き、最後に、ウエットケークをプラスチック製ドラム缶に移した。全てのBPoTAが集まるまで、このケーク単離手順を続けた。ケークの全固体(pan solids)分析は、90~95%の範囲の質量%固体を示した。合計で29.00kg(推定乾燥質量は27.26kg)の白色のBPoTAウエットケークが単離された。併せたウエットケークは更に乾燥せず、そのまま閉環ステップに使用した。ICP-分解:ナトリウム(25ppm)、カリウム(0.71ppm)、カルシウム(1.4ppm)、アルミニウム(2.1ppm)、鉄(2.2ppm)、チタン(0.16ppm)、リン(7.2ppm);IC-抽出:硫酸塩(81.32ppm)、塩化物(0.8ppm)、IC-全:硫酸塩(242ppm)、塩化物(1818ppm);UPLC:3,3’-BPoTA+異性体(96.96%)、少量の3,4’-および4,4’-異性体と未知の不純物(2.53%)。
【0050】
併せたBPoTAウエットケーク(乾燥量基準で27.26kg、53.02mol)とo-DCB(535kg)と無水酢酸(73kg)を槽に入れて、3.5質量%の混合物とした。窒素を供給し、混合物を撹拌後、内容物を125~130℃に加熱し、この温度で4~5時間保った。反応器試料のUPLC分析は、BPoDAへの環化が終了したことを示した。125~130℃の温度で一晩置いた後、温度を180~185℃に上げ、全質量が250kg(9~10質量%固体)となるまで反応器内容物を濃縮した。この時点で全ての固体は溶解して黄色の溶液となっており、オーバーヘッドの試料をKarl-Fisher分析したところ、<21ppmの水を含んでいることが分かった。次に、槽の温度を75~80℃に調節し、3,3’-BPoDA生成物を再結晶化させた。試料を目視検査したところ、流動性が良く粘着性のない白~明ベージュ色の沈殿物が生成していた。閉環槽からフィルタへ柔軟性ホースを繋げ、再結晶化した生成物をNutscheフィルタで濾過した。Nutscheフィルタをo-DCB(5ガロン(約19L))で洗って乾燥し、60マイクロメートルの Nomex濾材を取り付けた。次に、o-DCB中のBPoDAスラリーを、僅かに窒素圧力をかけながらNutscheフィルタに移して、第1のケークを生成した。
【0051】
Nutschフィルタに80~85℃でDI水を満たしてケークを洗い、系を閉じて30分間浸漬させた。次に、フィルタに圧をかけて水を除いた。このステップをもう一度繰り返した。水を除いた後、生成物を室温のメタノールで洗った。全てのBPoDA生成物が単離されるまで、このプロトコルを繰り返した。ウエットケークをアルミホイル皿に入れ、真空オーブン(30インチ(約760mm)Hg)中140~145℃で恒量となるまで乾燥させた。合計で18.28kgのBPoDA異性体が明ベージュ色の固体として得られた。DSC(融解)=281~282℃;UPLC:3,3’-BPoDA+異性体(99.19%)、未知ピーク(0.81%);ICP-分解:ナトリウム(24.5ppm)、カリウム(3.6ppm)、アルミニウム(2.1ppm)、鉄(3.6ppm)、チタン(2.4ppm)、リン(5.2ppm);IC-抽出:硫酸塩(1.01ppm)、塩化物(<0.5ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)。
【0052】
[実施例2]
実施例1と同様にBPoTAを調製した。実施例2で得られたBPoTAウエットケークの固形分は85~90%の範囲であった。合計で46.58kg(推定乾燥質量は39.60kg)の白色のBPoTAウエットケークが単離された。このウエットケークは更に乾燥せず、そのまま閉環ステップに使用した。ICP-分解:ナトリウム(139ppm)、カリウム(9ppm)、亜鉛(5ppm)、カルシウム(5ppm)、アルミニウム(2ppm)、鉄(8ppm)、チタン(0ppm)、リン(9ppm);IC-抽出:硫酸塩(75.08ppm)、塩化物(<0.5ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、フッ化物(<0.5ppm);IC-全:硫酸塩(288ppm)、リン酸塩(<20ppm)、塩化物(863ppm)、フッ化物(<20ppm);UPLC:3,3’-BPoTA+異性体(97.10%)、少量の3,4’-および4,4’-異性体と未知の不純物(1.80%)。
【0053】
BPoTAウエットケーク(乾燥量基準で39.60kg、76.98mol)とo-DCB(180kg)を槽に入れて、17質量%の混合物とした。窒素を供給し、混合物を撹拌後、内容物を180~185℃に加熱し、この温度で3~4時間保った。反応器試料のUPLC分析は、BPoDAへの環化が終了したことを示した。次に、全質量が170kg(21~22質量%固体)となるまで反応器内容物を濃縮した。オーバーヘッドの試料の水含量を分析した。Karl-Fisher分析は、水が35ppmであることを示した。次に、槽の温度を75~80℃に下げ、3,3’-BPoDA生成物を再結晶化させた。試料を目視検査したところ、流動性が良く粘着性のない明ベージュ色の沈殿物が生成していた。閉環槽からフィルタへ柔軟性ホースを繋げ、再結晶化生成物を Nutscheフィルタで濾過した。Nutscheフィルタをo-DCB(5ガロン(約19L))で洗って乾燥し、60マイクロメートルの Nomex濾材を取り付けた。次に、o-DCB中のBPoDAスラリーを、僅かに窒素圧力をかけながらNutscheフィルタに移して、第1のケークを生成した。
【0054】
Nutscheフィルタに80~85℃でDI水を満たしてケークを洗い、系を閉じて30分間浸漬させた。次に、フィルタに圧をかけて水を除いた。このステップをもう一度繰り返した。水を除いた後、生成物を室温のメタノールで洗った。全てのBPoDA生成物が単離されるまで、このプロトコルを繰り返した。ウエットケークをアルミホイル皿に入れ、真空オーブン(30インチ(約760mm)Hg)中140~145℃で恒量となるまで乾燥させた。合計で23.80kgのBPoDAが明ベージュ色の固体として得られた。UPLC:3,3’-BPoDA+異性体(99.25%)、未知ピーク(0.75%);ICP-分解:ナトリウム(147ppm)、カリウム(7.3ppm)、カルシウム(9.4ppm)、アルミニウム(1.6ppm)、鉄(6.4ppm)、チタン(0.34ppm)、リン(10.5ppm);IC-抽出:硫酸塩(8.22ppm)、塩化物(<0.5ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(0.5ppm)。
【0055】
[実施例3]
先に単離した3,3’-BPoDA(比較例2)を、Nutscheフィルタに戻し入れ(それぞれ乾燥量基準で8~9kgのDAを3回のバッチで)、85~90℃のDI水で満たし、系を閉じて30分間浸漬させた。次に、Nutscheフィルタに圧をかけて水を除いた。このバッチ洗浄プロトコルを5~6回繰り返した。先と同様に、濾液をポリプロピレントートへ送った。フィルタを数時間、50psig(約3.4×105Pa)まで加圧して大部分の水を除き、最後に、ウエットケークをプラスチック製ドラム缶に移した。全てのBPoDAが再洗浄されるまで、このケーク単離手順を続けた。ケークの全固体分析は、88~94%の範囲の質量%固体を示した。UPLC:3,3’-BPoDA+異性体(99.20%);ICP-分解:ナトリウム(114ppm)、カリウム(11ppm)、カルシウム(1ppm)、アルミニウム(1.07ppm)、鉄(15ppm)、ニッケル(5ppm)、クロム(12ppm)、リン(9ppm);IC-抽出:硫酸塩(9.1ppm)、塩化物(3.6ppm)、リン酸塩(11.7ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、臭化物(<0.5ppm)、フッ化物(<0.5ppm)。
【0056】
[実施例4]
Parr反応器に、水酸化ナトリウム水溶液(20.36g、50質量%、254.5mmol、8当量)と、水(75g、75mL)と、75mlのo-DCBに加えたN,N’-Ph-BPoBI(N,N’-Ph-3,3’-BPoBI、N,N’-3,4’-BPoBI、N,N’-4,4’-BPoBI異性体の混合物)(20g、31.8mmol、1当量)を入れた。反応器を密閉し、窒素で10回脱気後、180℃(135psig(約9.3×105Pa))に加熱した。40~45分後、内圧は130~131psig(約9.0×105Pa)(180℃)に達した。この温度と圧力で2~3時間反応を続け、3時間後、反応器を90℃まで冷やした。Parr反応器を注意深く減圧後、混合物のUPLC分析は、全ての出発原料が消費されたことを示した。
【0057】
次に、混合物を予熱した(90℃)分液漏斗に注ぎ入れ、層を3~5分以内に分離した。小さな沈殿物を含む有機層を、3,3’-BPoTA・4Naを含んでいる水層と分け、廃棄した。水層を、新たな熱o-DCB(4×100mL、90℃)で洗ってアニリンを除去した。それぞれの洗浄の後、層は3~5分以内に分離した。
【0058】
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器と添加漏斗を備えた500mLの3つ口丸底フラスコに、塩酸(31.32g、26.10mL、27質量%、310.8mmol)と水(50g)を入れて90℃に加熱した。先に調製したBPoTA・4Na溶液(熱)を熱した添加漏斗に入れ、30分かけて塩酸水溶液に滴下して加えた。すぐにオフホワイトの固体沈殿物が認められた。追加の水(30mL)を用いて添加漏斗を濯ぎ、クエンチ槽に加えた。添加後、混合物を更に2時間加熱して、カルボキシラート基を完全にプロトン化させた。生成物を熱濾過して集め、熱DI水(2×200mL)で洗った。生成物を、真空オーブン中90℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、13.57gの3,3’-BPoTA生成物を、収率83%、純度95.7%で集めた。ICP-分解:ナトリウム(52ppm)、カリウム(6.8ppm)、亜鉛(16.7ppm)、カルシウム(31ppm)、アルミニウム(7.4ppm)、鉄(7.7ppm)、チタン(2.5ppm)、リン(27ppm)。
【0059】
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器を備えた250mLの3つ口丸底フラスコに、上記の3,3’-BPoTA(6g、11.66mmol)とo-DCB(11g、8mL)を入れた。次に、このフラスコを、窒素気流中、185℃の油浴内に置いた。Dean-Starkトラップで失われる溶媒を補うため、新たなo-DCBを反応フラスコに加えた。3時間後、UPLC分析は反応が終了したことを示し、o-DCB中に明ベージュ色の沈殿物が認められた。次に、混合物を70~75℃に冷やした。生成物を熱濾過して集め、熱DI水(2×20mL)で洗った。生成物を、真空オーブン中140~145℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、4.59gの3,3’-BPoDA生成物を、収率81.5%、純度97.01%で集めた。ICP-分解:ナトリウム(23.5ppm)、カリウム(11ppm)、亜鉛(22.5ppm)、カルシウム(32.5ppm)、アルミニウム(11.7ppm)、鉄(6.4ppm)、チタン(0.13ppm)、リン(23ppm)。
【0060】
[実施例5]
Parr反応器に、水酸化ナトリウム水溶液(20.36g、50質量%、254.5mmol、8当量)と、水(75g、75mL)と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)(1.35g、1.59mmol、0.05mol%)と、N,N’-Ph-BPoBI(N,N’-Ph-3,3’-BPoBI、N,N’-3,4’-BPoBI、N,N’-4,4’-BPoBI異性体の混合物)(20g、31.8mmol、1当量)を入れた。反応器を密閉し、窒素で10回脱気後、180℃(135psig(約9.3×105Pa))に加熱した。40分後、内圧は130~131psig(約9.0×105Pa)(180℃)に達した。この温度と圧力で2~3時間反応を続け、3時間後、反応器を90℃まで冷やした。Parr反応器を注意深く減圧後、混合物のUPLC分析は、全ての出発原料が消費されたことを示した。
【0061】
次に、混合物を予熱した(90℃)分液漏斗に注ぎ入れ、層を3~5分以内に分離した。小さな沈殿物を含む有機層を、3,3’-BPoTA・4Naを含んでいる水層と分け、廃棄した。水層を、新たな熱o-DCB(3×80mL、90℃)で洗ってアニリンを除去した。それぞれの洗浄の後、層は3~5分以内に分離した。
【0062】
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器と添加漏斗を備えた500mLの3つ口丸底フラスコに、硫酸(25g、13.59mL、95~98質量%、254.9mmol)と水(150g)を入れて90℃に加熱した。先に調製したTA・4Na溶液(熱)を熱した添加漏斗に入れ、30分かけて硫酸水溶液に滴下して加えた。すぐに明ベージュ色の沈殿物が認められた。追加の水(30mL)を用いて添加漏斗を濯ぎ、クエンチ槽に加えた。添加後、混合物を更に30分間加熱して、カルボキシラート基を完全にプロトン化させた。生成物を熱濾過して集め、熱DI水(3×400mL)で洗った。生成物を、真空オーブン中90℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、15.04gの3,3’-BPoTA生成物を収率91.98%で集めた。ICP-分解:ナトリウム(92ppm)、カリウム(4.3ppm)、亜鉛(3.0ppm)、カルシウム(7.5ppm)、アルミニウム(2.6ppm)、鉄(7.0ppm)、チタン(0.31ppm)、リン(6.2ppm)。
【0063】
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器を備えた250mLの3つ口丸底フラスコに、上記の3,3’-BPoTA(6g、11.66mmol)とo-DCB(18g、14mL)を入れた。次に、このフラスコを、窒素気流中、185℃の油浴内に置いた。Dean-Starkトラップで失われる溶媒を補うため、新たなo-DCBを反応フラスコに加えた。3時間後、UPLC分析は反応が終了したことを示し、o-DCB中に明ベージュ色の沈殿物が認められた。次に、混合物を70~75℃に冷やした。生成物を熱濾過して集め、熱DI水(2×20mL)で洗った。生成物を、真空オーブン中140~145℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、4.49gの3,3’-BPoDA生成物を収率80.5%で集めた。UPLC:3,3’-BPoDA+異性体(98%);ICP-分解:ナトリウム(21.6ppm)、カリウム(9ppm)、亜鉛(6.7ppm)、カルシウム(16.4ppm)、アルミニウム(6.4ppm)、鉄(4.6ppm)、チタン(0ppm)、リン(21ppm)。
【0064】
[実施例6]
Dean-Starkトラップと凝縮器を取り付けた500mLの3つ口丸底フラスコに、N,N’-Ph-BPoBI(N,N’-Ph-3,3’-BPoBI、N,N’-3,4’-BPoBI、N,N’-4,4’-BPoBI異性体の混合物)(20.0g、31.8mmol)と、50%(質量/質量)NaOH水溶液(20.36g、254.5mmol、8当量)と、エチレングリコール(85g、76mL)を入れた。この混合物を、窒素雰囲気中で5時間、150℃に加熱した。次に、温度を180℃に上げ、この状態を8時間保った。UPLC分析は、出発原料が消費されたことを示した。反応が進むにつれ、反応混合物は僅かに黄色みを帯びた白色に変わった。還流しながらアニリンを除いた。次に、熱源を外し、濾過し易いように、内容物をエチレングリコール(50mL)で希釈した。内容物を室温まで冷ましてから濾過を行った。次に、DI水(120mL)を用いて、ケークを再びスラリーとした。得られた3,3’-BPoTA・4Nを含む水性混合物を、クエンチ手順のため、添加漏斗へ移し入れた。
【0065】
撹拌機と凝縮器を取り付けた1000mLの3つ口丸底フラスコに、水(150mL)と、濃(95~98%)H2SO4(20.351mL、381.78mmol、12.0当量)を入れた。このフラスコを90℃まで加熱し、添加漏斗を取り付け、BPoTA・4Naの水溶液を30分かけて滴下して加えた。オフホワイト色の固体がすぐに沈殿した。添加後、混合物を更に2時間加熱して、カルボキシラート基を完全にプロトン化させた。固体を熱濾過して集め、水(4×250mL)で洗った。ケークを、真空オーブン(0.8インチ(約20mm)Hg)中80~90℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、13.40gの3,3’-BPoTA生成物を収率82.0%で集めた。UPLC分析は、3,3’-BPoTA(95.12%)と、3,4’-BPoTA(0.25%)と、少量の未知ピークの存在を示した。ICP-分解:ナトリウム(89ppm)、カリウム(7.2ppm)、亜鉛(14ppm)、カルシウム(20.4ppm)、アルミニウム(10.3ppm)、鉄(4.7ppm)、チタン(1.1ppm)、リン(8.2ppm)。
【0066】
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器を備えた250mLの3つ口丸底フラスコに、上記の3,3’-BPoTA(6g、11.66mmol)とo-DCB(7g、5.3mL)を入れた。次に、このフラスコを、窒素気流中、185℃の油浴内に置いた。Dean-Starkトラップで失われる溶媒を補うため、新たなo-DCBを反応フラスコに加えた。3時間後、UPLC分析は反応が終了したことを示し、o-DCB中に明緑色の沈殿物が認められた。次に、混合物を70~75℃に冷やした。生成物を熱濾過して集め、熱DI水(2×30mL)で洗った。生成物を、真空オーブン中140~145℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、4.63gの3,3’-BPoDA生成物を、収率83%、純度96.7%で集めた。ICP-分解:ナトリウム(16ppm)、カリウム(8.1ppm)、亜鉛(3.8ppm)、カルシウム(13ppm)、アルミニウム(5.5ppm)、鉄(5.4ppm)、チタン(0ppm)、リン(19ppm)。
【0067】
[実施例7]
Parr反応器に、水酸化ナトリウム水溶液(15.27g、50質量%、191mmol、8当量)と、水(75g、75mL)と、N,N’-Ph-BPoBI(N,N’-Ph-3,3’-BPoBI、N,N’-3,4’-BPoBI、N,N’-4,4’-BPoBI異性体の混合物)(15g、23.86mmol、1当量)を入れた。反応器を密閉し、窒素で10回脱気後、180℃(135psig(約9.3×105Pa))に加熱した。35分後、内圧は130~131psig(約9.0×105Pa)(180℃)に達した。この温度と圧力で5時間反応を続けた後、反応器を90℃まで冷やした。Parr反応器を注意深く減圧後、混合物のUPLC分析は、全ての出発原料が消費されたことを示した。
【0068】
次に、混合物を予熱した(90℃)分液漏斗に注ぎ入れ、層を3~5分以内に分離した。小さな沈殿物を含む有機層を、3,3’-BPoTA・4Naを含んでいる水層と分け、廃棄した。水層を、新たな熱o-DCB(3×70mL、90℃)で洗ってアニリンを除去した。それぞれの洗浄の後、層は3~5分以内に分離した。
【0069】
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器と添加漏斗を備えた500mLの3つ口丸底フラスコに、リン酸(27.50g、14.78mL、85質量%、238.6mmol)と、水(100g)を入れて90℃に加熱した。先に調製したTA・4Na溶液(熱)を熱した添加漏斗に入れ、30分かけてリン酸水溶液に滴下して加えた。すぐに、くすんだ灰色の沈殿物が認められた。追加の水(30mL)を用いて添加漏斗を濯ぎ、クエンチ槽に加えた。添加後、混合物を更に60分間加熱して、カルボキシラート基を完全にプロトン化させた。生成物を熱濾過して集め、熱DI水(3×400mL)で洗った。生成物を、真空オーブン中90℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、9.73gの3,3’-BPoTA生成物を収率79.29%で集めた。ICP-分解:ナトリウム(79ppm)、カリウム(5.8ppm)、亜鉛(5.7ppm)、カルシウム(9.7ppm)、アルミニウム(17.6ppm)、鉄(8.9ppm)、チタン(1.4ppm)、リン(464ppm)。
【0070】
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器を備えた250mLの3つ口丸底フラスコに、3,3’-BPoTA(6g、11.66mmol)と、o-DCB(120g、92mL)と、無水酢酸(8.6g、85.19mmol)を入れた。次に、このフラスコを、窒素気流中で130~135℃に加熱した。この温度で3時間、反応を保った後、温度を185℃に上げた。Dean-Starkトラップで失われる溶媒を補うため、新たなo-DCBを反応フラスコに加えた。4時間後、UPLC分析は反応が終了したことを示した。得られた均一な溶液を70~75℃まで冷やすと、o-DCB中に明灰色の沈殿物が生じた。生成物を熱濾過して集め、熱DI水(2×30mL)で洗った。生成物を、真空オーブン中140~145℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、4.75gの3,3’-BPoDA生成物を収率86.0%で集めた。UPLC:3,3’-BPoDA+異性体(97.90%);ICP-分解:ナトリウム(22ppm)、カリウム(9.1ppm)、亜鉛(6.9ppm)、カルシウム(20.3ppm)、アルミニウム(6.1ppm)、鉄(4.2ppm)、チタン(0.19ppm)、リン(22ppm)。
【0071】
以下の実施例のポリマー分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析により、Polymer Lab Plgel 5マイクロメートル MIXED-Cカラムを取り付けた、Water 2695分離モジュールと、Waters 2487 PDA検出器(254nm)を用いて求めた。ジクロロメタンのアイソクラチック溶媒系で溶出(1mL/分)し、ポリマー分子量は、ポリスチレン標準と比較して求めた。
【0072】
[比較例8]
以下の手順では、次のような分析結果を持つ3,3’-BPoTAを使用した。ICP-分解:ナトリウム(220ppm)、カリウム(6ppm)、亜鉛(4ppm)、カルシウム(10ppm)、アルミニウム(6ppm)、鉄(10ppm)、チタン(0ppm)、リン(5ppm)、ニッケル(3ppm)、マグネシウム(4ppm)、銅(1ppm)、クロム(24ppm);IC-全:フッ化物(<20ppm)、塩化物(972ppm)、亜硝酸塩(400ppm)、臭化物(<20ppm)、硝酸塩(1232ppm)、硫酸塩(796ppm)、リン酸塩(<20ppm);IC-抽出:硫酸塩(201.8ppm)、塩化物(1.1ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(1.2ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、臭化物(<0.5ppm)、フッ化物(<0.5ppm)。
【0073】
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器と窒素供給装置を備えた500mLの3つ口丸底フラスコに、3,3’-BPoTA(50.01g、97.22mmol)と、DI水(20g)と、o-DCB(215g)を入れた。このフラスコを、150rpmで撹拌しながら180℃に加熱した。2時間30分後、17gの留出物がトラップから除かれた。内容物を一晩加熱後、油浴温度を200℃に調節した。合計加熱時間23.5時間後のUPLC分析は、出発原料の>99%が閉環して3,3’-BPoDAとなっていることを示した。混合物を周囲温度まで放冷した。
【0074】
次に、混合物を90℃まで再加熱し、90℃に温めた3質量%の重炭酸ナトリウム水溶液をフラスコに加えた。15分間激しく撹拌した後、混合物を1000mLの分液漏斗に注ぎ入れ、層を分離させた。水層およびラグ(rag)層を分け、廃棄した。次に、有機層を85~90℃に温めたDI水(2×100mL)で2回洗った。得られた有機スラリーを、#4ワットマン濾紙を入れたブフナー漏斗で濾過した。固体を更に真空オーブン中140℃で一晩乾燥したところ、3,3’-BPoDA(30.61g)が収率65.8%で得られた。UPLC:3,3’-BPoDA+異性体(97%);ICP-分解:ナトリウム(200ppm)、カリウム(8ppm)、亜鉛(5ppm)、カルシウム(15ppm)、アルミニウム(6ppm)、鉄(9ppm)、チタン(0ppm)、リン(6ppm)、クロム(16ppm)、銅(1ppm)、マグネシウム(5ppm)、ニッケル(3ppm);IC-抽出:硫酸塩(15.5ppm)、塩化物(0.50ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(1.70ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)。
【0075】
[実施例9]
N,N’-Ph-BPoBI(N,N’-Ph-3,3’-BPoBI、N,N’-3,4’-BPoBI、N,N’-4,4’-BPoBI異性体の混合物)のo-DCB溶液(16~17質量%固体で260kg)にDI水を加えた。反応器を、窒素パージしながら90%の出力で撹拌した。次に、50% NaOH水溶液(45.98kg、575.20mol、6.0当量)を加水分解槽に加えた。内容物(640kg)を密閉し、窒素調節装置を10psig(約6.9×104Pa)に設定して、内圧が130~135psig(約9.0~9.3×105Pa)(180℃)に達するまで更に3時間加熱した。撹拌しながら、更に4~5時間、圧力を130~135psig(約9.0~9.3×105Pa)に保った。内容物を85~90℃まで冷やし、槽を注意深く2psig(約1×104Pa)まで減圧後、化学量論的測定のための試料を採取した。反応混合物のUPLC分析は、加水分解が終了していることを示した。
【0076】
撹拌を止め、内部温度を90~95℃に保ちながら、60分間、層を分離させた。底層(o-DCB/アニリン/少量の沈殿したBPoTA・4Na)をバッグフィルタに通し、20分以内に排出した。次に、別の170kgの熱DI水を加えて相分離を促した。フィルタに通した底層を廃棄した。この時点で、反応槽内には、約9~10質量%固体で、H2OとアニリンとBPoTA・4Naを含む最上層があった。水に生成物を含んでいる最上層を、50%で撹拌しながら120~125℃に加熱した。
【0077】
保持タンクにDI水を入れて95℃に加熱しておき、加水分解槽へ、120~125℃で共沸蒸留している間、反応器内が350kg質量(16質量%固体)に保たれるよう必要に応じて送った。30分毎に、アニリンの存在について、オーバーヘッドをモニタした。撹拌を20%の出力まで下げ、油浴温度(tempered oil)を120℃に下げた。反応器試料のUPLC分析により、アニリン副生成物の除去をモニタした。BPoTA・4Naを溶解させておくため、槽の重量を350kgに保った。次に、撹拌しながら、溶液を90℃に保った。
【0078】
クエンチ槽にDI水(120kg)を入れ、加熱せずに撹拌後、PVCフレキシブルホースの付いたテフロン引きドラムポンプで、50% H2SO4水溶液(62.05kg、316.3mol、3.3当量)を加えた。次に、輸送ラインにDI水(20kg)を流し、50%で撹拌しているクエンチ槽へ送った。次に、クエンチ槽を90~95℃に加熱した。次に、四酸-四ナトリウム塩の槽の内容物(350kg)を、90分かけてクエンチ槽へ移し入れた。次に、槽をDI水(35kg)で濯ぎ、濯ぎ液も同様にクエンチ槽へ送った(全質量は580kg、90~95℃)。次に、白色スラリーの撹拌を徐々に強めて80%の出力とした。合計2時間のクエンチ時間後、クエンチ槽を80~85℃に冷やした。この時点の試料は、粘り気のない自由に流動する白色スラリーであった。固体は、水媒体からすぐに沈殿した。
【0079】
テフロン引きフレキシブルホースと、適合性のある適当な材料から成る接続部品を用いて、スラリーをクエンチ槽から、60ミクロンのテフロン濾材を入れた加熱していない40リットルの Nutscheフィルタへ移した。50psig(約3.4×105Pa)で、Nutscheフィルタ内で固体と液体を分け、濾液をポリプロピレントートへ送った。濾過後、Nutscheフィルタの底部が生成物のケークで埋まるまで移送工程を繰り返した。その後、フィルタを減圧した。
【0080】
保持タンクにDI水を満たして90℃に加熱し、50psig(約3.4×105Pa)まで加圧した。次に、保持タンクからNutscheフィルタへ水を送り、系を閉じて30分間浸漬させた。次に、Nutscheフィルタに圧をかけて水を除いた。このバッチ洗浄プロトコルを数回繰り返した。先と同様に、濾液をポリプロピレントートへ送った。pHが2.9以上になるまで廃水流をモニタした。次に、水流を止め、フィルタを50psig(約3.4×105Pa)まで加圧して大部分の水を除き、最後に、ウエットケークをプラスチック製ドラム缶に移した。全てのBPoTAが集まるまで、このケーク単離手順を続けた。ケークの全固体分析は、85%の範囲の平均質量%固体を示した。合計で43.21kg(推定乾燥質量は36.72kg)の白色のBPoTAウエットケークが単離された。併せたウエットケークは更に乾燥せず、そのまま閉環ステップに使用した。ICP-分解:ナトリウム(184ppm)、カリウム(15ppm)、亜鉛(1ppm)、カルシウム(8ppm)、アルミニウム(9ppm)、鉄(6ppm)、チタン(0ppm)、リン(9ppm)、クロム(5ppm);IC-全:硫酸塩(1219ppm)、リン酸塩(<20ppm)、塩化物(1413ppm)、フッ化物(<20ppm);IC-抽出:硫酸塩(54.3ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、塩化物(1.7ppm)、フッ化物(<0.5ppm)。
【0081】
併せたBPoTAウエットケーク(乾燥量基準で36.72kg、71.42mol)とo-DCB(200kg)を槽に入れて、15質量%の混合物とした。窒素を供給し、混合物を撹拌後、内容物を180~185℃に加熱し、この温度で3~4時間保った。オーバーヘッド試料のKarl-Fisher分析は、21ppmの水分含量を示した。反応器試料のUPLC分析は、BPoDAの環化が終了したことを示した。次に、別の槽から熱o-DCBを加えて、反応器内容物を5~7質量%固体(全反応器質量は625kg)まで希釈した。2ミクロンのMottフィルタを175~180℃まで加熱し、一方、50%で撹拌しながら、槽温度を180~185℃で2時間保った。次に、内容物をMottフィルタに通して清浄な槽に送り、存在する残留無機種を全て除いた。濾液を225kg(16~17質量%固体)まで濃縮後、撹拌を強めて70~75℃まで冷やした。反応器試料の目視検査により、結晶化が起きて、流動性が良く粘着性のない明ベージュ色の沈殿物が生じていることを確認した。固体は、冷やしたo-DCB媒体からすぐに沈殿した。
【0082】
次に、Nutscheフィルタを用いてBPoDA/o-DCBスラリーの濾過を行い、3,3’-BPoDA生成物を集めた。テフロン引きフレキシブルホースと、適合性のある適当な材料から成る接続部品を用いて、スラリーを、結晶化槽から、テフロン(登録商標)濾材を入れた加熱していない40リットルのNutscheフィルタへ移した。50psig(約3.4×105Pa)で、Nutscheフィルタ内で液体と固体を分け、濾液を炭素鋼製ドラム缶へ送った。十分なケークが集まったことが確認されるまで、スラリーの濾過を続けた。次に、フィルタを50psig(約3.4×105Pa)まで加圧して大部分のo-DCBを除いた。次に、フィルタを減圧して生成物を取り出した。生成物固体が全て集まるまで単離工程を繰り返した。140~145℃(30インチ(約760mm)Hg)で48時間乾燥後、合計で28.30kgの明ベージュ色のDA粉末が単離された。UPLC:3,3’-BPoDAおよび異性体(98.40%)、未知ピーク(1.6%);ICP-分解:ナトリウム(0ppm)、カリウム(0.5ppm)、亜鉛(0ppm)、カルシウム(4.6ppm)、アルミニウム(11.5ppm)、鉄(15ppm)、チタン(0ppm)、リン(13.6ppm);IC-抽出:硫酸塩(10.2ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、塩化物(<0.5ppm)、フッ化物(0.8ppm)。
【0083】
[実施例10]
N,N’-Ph-BPoBI(N,N’-Ph-3,3’-BPoBI、N,N’-3,4’-BPoBI、N,N’-4,4’-BPoBI異性体の混合物)のo-DCB溶液(21~23質量%固体で210kg)にDI水(275kg)を加えた。反応器を、窒素パージしながら90%の出力で撹拌した。次に、50% NaOH水溶液(45.98kg、575.20mol、6.0当量)を加水分解槽に加えた。内容物(600kg)を密閉し、窒素調節装置を10psig(約6.9×104Pa)に設定して、内圧が130~135psig(約9.0~9.3×105Pa)(180℃)に達するまで更に3時間加熱した。撹拌しながら更に4~5時間、圧力を130~135psig(約9.0~9.3×105Pa)に保った。内容物を85~90℃まで冷やし、槽を注意深く2psig(約1×104Pa)まで減圧後、化学量論的測定のための試料を採取した。反応混合物のUPLC分析は、加水分解が終了したことを示した。
【0084】
撹拌を止め、内部温度を90~95℃に保ちながら、60分間、層を分離させた。底層(o-DCB/アニリン/少量の沈殿したBPoTA・4Na)をフィルタに通し、沈殿した生成物を集めた。次に、別の170kgの熱DI水を加えて相分離を促した。フィルタに通した底層を廃棄した。この時点で、反応槽内には、約10質量%固体で、H2OとアニリンとBPoTA・4Naを含む最上層があった。水に生成物を含んでいる最上層を、50%で撹拌しながら120~125℃に加熱した。
【0085】
保持タンクにDI水を入れて95℃に加熱しておき、加水分解槽へ、120~125℃で共沸蒸留している間、反応器内が350kg質量(16質量%固体)に保たれるよう必要に応じて送った。30分毎に、アニリンの存在について、オーバーヘッドをモニタした。撹拌を20%の出力まで下げ、油浴温度を120℃に下げた。反応器試料のUPLC分析により、アニリン副生成物の除去をモニタした。槽の重量を350kgに保った。次に、撹拌しながら、溶液を90℃に保った。
【0086】
クエンチ槽にDI水(100kg)を入れ、加熱せずに撹拌後、PVCフレキシブルホースの付いたテフロン引きドラムポンプで、50% H2SO4水溶液(62.05kg、316.3mol、3.3当量)を加えた。次に、輸送ラインにDI水(20kg)を流し、50%で撹拌しているクエンチ槽へ送った。次に、クエンチ槽を90~95℃に加熱した。次に、四酸-四ナトリウム塩の槽の内容物を、90分かけてクエンチ槽へ移し入れた。次に、槽をDI水(35kg)で濯ぎ、濯ぎ液も同様にクエンチ槽へ送った(全質量は605kg、90~95℃)。次に、白色スラリーの撹拌を徐々に強めて80%の出力とした。合計2時間のクエンチ時間後、クエンチ槽を70~80℃に冷やした。この時点の試料は、粘り気のない自由に流動する白色スラリーであった。固体は、水媒体からすぐに沈殿した。
【0087】
テフロン引きフレキシブルホースと、適合性のある適当な材料から成る接続部品を用いて、スラリーをクエンチ槽から、60マイクロメートルのテフロン濾材を入れた加熱していない40リットルのNutscheフィルタへ移した。50psig(約3.4×105Pa)で、Nutscheフィルタ内で固体と液体を分け、濾液をポリプロピレントートへ送った。濾過後、Nutscheフィルタの底部が生成物のケークで埋まるまで移送工程を繰り返した。その後、フィルタを減圧した。
【0088】
保持タンクにDI水を満たして90℃に加熱し、50psig(約3.4×105Pa)まで加圧した。次に、保持タンクからNutscheフィルタへ水を送り、系を閉じて30分間浸漬させた。次に、Nutscheフィルタに圧をかけて水を除いた。このバッチ洗浄プロトコルを数回繰り返した。先と同様に、濾液をポリプロピレントートへ送った。pHが2.9以上になるまで廃水流をモニタした。次に、水流を止め、フィルタを50psig(約3.4×105Pa)まで加圧して大部分の水を除き、最後に、ウエットケークをプラスチック製ドラム缶に移した。全てのBPoTAが集まるまで、このケーク単離手順を続けた。ケークの全固体分析は、88~92%の範囲の質量%固体を示した。合計で48.41kg(推定乾燥質量は43.10kg)の白色のBPoTAウエットケークが単離された。併せたウエットケークは更に乾燥せず、そのまま閉環ステップに使用した。ICP-分解:ナトリウム(138ppm)、カリウム(9ppm)、亜鉛(2ppm)、カルシウム(6ppm)、アルミニウム(2ppm)、鉄(20ppm)、チタン(0ppm)、リン(7ppm)、クロム(10ppm)、マグネシウム(19ppm)、ニッケル(2ppm);IC-全:硫酸塩(301ppm)、リン酸塩(<20ppm)、塩化物(919ppm);IC-抽出:硫酸塩(278ppm)、リン酸塩(2.4ppm)、塩化物(1.2ppm)、フッ化物(3.0ppm)、臭化物(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)。
【0089】
併せたBPoTAウエットケーク(湿量基準で48.41kg、質量%固体=88~92%)とo-DCB(200kg)を槽に入れた。窒素を供給し、混合物を撹拌後、内容物を180~185℃に加熱し、この温度で4~5時間保った。オーバーヘッド試料のKarl-Fisher分析は、16ppmの水分含量を示した。次に、反応器試料を採取した。反応器試料のUPLC分析は、反応が終了したことを示した(BPoTAのピークは見られなかった)。反応内容物を145~150℃で一晩置いた。次に、温度を180℃に上げ、別の槽から熱o-DCBを加えて、反応器内容物を7.5質量%固体(全反応器質量は682kg)まで希釈した。2ミクロンのMottフィルタを175~180℃まで加熱し、一方、50%で撹拌しながら、槽温度を180~185℃で2時間保った。次に、内容物をMottフィルタに通して清浄な槽に送り、存在する残留無機種を全て除いた。濾液を250kg(16~17質量%固体)まで濃縮後、撹拌を強めて70~75℃まで冷やした。反応器試料の目視検査により、結晶化が起きて、流動性が良く粘着性のない明ベージュ色の沈殿物が生じていることを確認した。固体は、冷やしたo-DCB媒体からすぐに沈殿した。
【0090】
次に、Nutscheフィルタを用いてBPoDA/o-DCBスラリーの濾過を行い、3,3’-BPoDA生成物を集めた。テフロン引きフレキシブルホースと、適合性のある適当な材料から成る接続部品を用いて、スラリーを、結晶化槽から、テフロン(登録商標)濾材を入れた加熱していない40リットルのNutscheフィルタへ移した。50psig(約3.4×105Pa)で、Nutscheフィルタ内で液体と固体を分け、濾液を炭素鋼製ドラム缶へ送った。十分なケークが集まったことが確認されるまで、スラリーの濾過を続けた。次に、フィルタを50psig(約3.4×105Pa)まで加圧して大部分のo-DCBを除いた。次に、フィルタを減圧して生成物を取り出した。生成物固体が全て集まるまで単離工程を繰り返した。140~145℃(30インチ(約760mm)Hg)で48時間乾燥後、合計で33.60kgの明ベージュ色のDA粉末が単離された。UPLC:3,3’-BPoDA、異性体、および酸無水物二酸(diacid anhydride)(99.34%)、未知ピーク(0.66%);ICP-分解:ナトリウム(7ppm)、カリウム(22ppm)、亜鉛(2ppm)、カルシウム(6ppm)、アルミニウム(4ppm)、鉄(15ppm)、チタン(1ppm)、リン(11ppm)、ニッケル(2ppm)、マグネシウム(0ppm)、銅(0ppm)、クロム(2ppm);IC-抽出:硫酸塩(8.2ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、塩化物(<0.5ppm)、フッ化物(0.8ppm)、臭化物(<0.5ppm)。
【0091】
[実施例11]
以下の手順では、次のような分析結果を持つ3,3’-BPoTAを使用した。ICP-分解:ナトリウム(10ppm)、カリウム(15ppm)、亜鉛(0ppm)、カルシウム(5ppm)、アルミニウム(0ppm)、鉄(4ppm)、チタン(0ppm)、リン(9ppm);IC-Total:硫酸塩(<20ppm)、塩化物(316ppm)。
【0092】
併せたBPoTAウエットケーク(湿量基準で87kg、85~86質量%固体)とo-DCB(250kg)を槽に入れた。窒素を供給し、混合物を撹拌後、内容物を180~185℃に加熱し、この温度で4~5時間保った(19~20質量%固体)。オーバーヘッド試料のKarl-Fisher分析は、41ppmの水分含量を示した。次に、反応器試料を採取した。反応器試料のUPLC分析は、反応が終了したことを示した(BPoTAのピークは見られなかった)。反応内容物を145~150℃で一晩置いた。次に、温度を180℃に上げ、別の槽から熱o-DCBを加えて、反応器内容物を7.5質量%固体(全反応器質量は810kg)まで希釈した。2マイクロメートルのMottフィルタを175~180℃まで加熱し、一方、50%で撹拌しながら、槽温度を180~185℃で2時間保った。次に、内容物をMottフィルタに通して清浄な槽に送り、存在する残留無機種を全て除いた。濾液を360kg(16~17質量%固体)まで濃縮後、撹拌を強めて60℃を下回るまで冷やした。反応器試料の目視検査により、結晶化が起きて、流動性が良く粘着性のない明ベージュ色の沈殿物が生じていることを確認した。固体は、冷やしたo-DCB媒体からすぐに沈殿した。
【0093】
次に、遠心分離を用いてBPoDA/o-DCBスラリーの濾過を行い、3,3’-BPoDA生成物を集めた。テフロン引きフレキシブルホースと、適合性のある適当な材料から成る接続部品を用いて、スラリーを、結晶化槽から、加熱していない遠心分離機へ移した。遠心分離機を100rpmで回転させて液体と固体を分け、濾液を炭素鋼製ドラム缶へ送った。十分なケークが集まったことが確認されるまで、スラリーの濾過を続けた。遠心分離機を2時間回転させて、大部分のo-DCBを除いた。次に、ケークを遠心分離機から取り出した。生成物が全て集まるまで単離工程を繰り返した。140~145℃(30インチ(約760mm)Hg)で48時間乾燥後、合計で51.60kgの明ベージュ色のDA粉末が単離された。UPLC:3,3’-BPoDA、異性体および酸無水物二酸(99.34%)、未知ピーク(0.66%);ICP-分解:ナトリウム(2ppm)、カリウム(5ppm)、亜鉛(0ppm)、カルシウム(0ppm)、アルミニウム(0ppm)、鉄(0ppm)、チタン(0ppm)、リン(12ppm)、ニッケル(0ppm)、マグネシウム(0ppm)、銅(0ppm)、クロム(0ppm);IC-抽出:硫酸塩(10.1ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、塩化物(<0.5ppm)、フッ化物(0.8ppm)、臭化物(<0.5ppm)。
【0094】
[比較例12]
撹拌機とDean-Starkトラップと凝縮器を備えた250mLの3つ口丸底フラスコに、3,3’-BPoTA(30g、58.31mmol)と、酢酸(55g、52mL)と、無水酢酸(55g、51mL)を加えた。このフラスコを油浴に入れ、窒素気流中、130℃に加熱した。5~6時間後、UPLC分析は反応が終了したことを示した。溶媒混合物中に明灰色の沈殿物が認められた。次に、混合物を室温まで放冷した。生成物を濾過して集め、熱DI水(2×35mL)で洗った。生成物を、真空オーブン中140~145℃で恒量となるまで乾燥させた。このようにして、22.60g(収率81%)の3,3’-BPoDA生成物を集めた。UPLC:BPoDA異性体(97.8%);ICP-分解:ナトリウム(5ppm)、カリウム(12ppm)、亜鉛(1ppm)、カルシウム(13ppm)、アルミニウム(4ppm)、鉄(11ppm)、チタン(0ppm)、リン(6ppm);IC-抽出:硫酸塩(21.0ppm)、塩化物(<0.5ppm)、リン酸塩(1.6ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)。
【0095】
どの方法で最も効果的にBPoDAを有機および無機汚染物質から精製できるかを、様々な条件を用いて調べた。結果を表2にまとめた。この結果から、BPoTAからBPoDAへの環化を、促進剤の存在下または不在下、o-DCBなどの塩素化溶媒中で行えることが分かった。標準大気圧条件下の沸点温度において、BPoDAは塩素化溶媒に対して限られた溶解度を示した。例えば、BPoDAは、180~185℃で、o-DCBに対して15質量%未満の溶解度を示した。様々な精製条件を使用したが、これには、結晶化とそれに続く洗浄、均一溶液のMott濾過とそれに続く結晶化、および、重炭酸ナトリウムでのスラリー-液体抽出が含まれる。結果から、結晶化後、単離した固体を洗浄する(実施例1および比較例2)と、硫酸塩汚染物の除去には役立つが、ナトリウム濃度には影響しないことが分かった。結晶化した二酸無水物材料を水で更に洗浄した(比較例3)が、余分のナトリウムをあまり除去することはできなかった。しかし、二酸無水物を単に結晶化させた後、固体を水洗いする(実施例4~7)と、四酸開始材料が100ppm未満のナトリウムを含む場合、ナトリウム含量が25ppm未満のBPoDA生成物が得られた。興味深いことに、重炭酸ナトリウムでスラリー-液体抽出する(実施例8)と、硫酸塩は25ppm未満であるが、ナトリウム濃度が110ppmよりも高いBPoDA生成物が得られた。最後に、均一な二酸無水物溶液をMott濾過してから結晶化させる(実施例9~11)と、ナトリウムおよび硫酸塩不純物の両方が非常に低濃度(<11ppm)まで除去された。
【表2】
【0096】
[実施例13]
以下の手順では、次のような分析結果を持つ3,3’-BPoDAを使用した。ICP-分解:ナトリウム(24.5ppm)、カリウム(3.6ppm)、アルミニウム(2.1ppm)、鉄(3.6ppm)、チタン(2.4ppm)、リン(5.2ppm);IC-抽出:硫酸塩(1.01ppm)、塩化物(<0.5ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)。
【0097】
撹拌機と凝縮器と溶媒再循環ループを備えた反応槽へ、窒素雰囲気中、3,3’-BPoDA(3.2kg、6.69mol)と、m-PD(740.44g、6.847mol)と、PA(64.30g、0.425mol)と、o-DCB(7.65L、10.00kg)を一度に加えた。加熱せず、窒素パージしながら5~10分間、反応器内容物を15~17rpmで混合した。次に、混合物を、内部温度目標値を185~195℃として、30分間加熱還流した。反応の間、塊状相を短時間経由することが観察された。続く1~2時間の間、オーバーヘッド(H2O)を除き、撹拌および窒素流量をそれぞれ28~30rpmおよび0.5scfm(約14L/分)に上げた。目標とする25%固体に達したら、オーバーヘッドを反応器へ再循環させ、還流が強くなるよう温度設定点をゆっくりと上げながら更に2~3時間還流した。
【0098】
2~3時間加熱混合後、化学量論的分析のための試料を採取した。m-PDまたは二酸無水物のいずれかが目標とする化学量論および分子量に達するよう反応を調節した。合計7時間の反応時間後、反応器内容物を窒素気流中で撹拌せずに一晩放冷した。翌朝、混合物を25~30rpmで5~10分間撹拌し、均一なスラリーとした。底部の排出バルブを開けて材料をスチール製バケツに集めた。全ての材料を取り出したら、o-DCB中のプレポリマースラリーを、ワットマン#1(240ミクロン)濾紙を載せたブフナー漏斗上で、乾燥するまで真空濾過した。ポリマーウェットケークのHaake脱揮を、365~385℃で15~20分間行った。GPC分析は、重量平均分子量が42,456g/モル、数平均分子量が15,617g/モル、PDIが2.69であることを示した。金属分析:ICP-分解:ナトリウム(28ppm)、カリウム(8ppm)、亜鉛(4.2ppm)、カルシウム(9.8ppm)、アルミニウム(10ppm)、鉄(95ppm)、チタン(1.2ppm)、リン(51ppm);IC-抽出:フッ化物(<0.5ppm)、塩化物(2.0ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、臭化物(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、硫酸塩(3.1ppm);DSC Tg:267.0℃、非常に皺になり易い透明な黄色のフィルムとなる。
【0099】
[実施例14]
以下の手順では、次のような分析結果を持つ3,3’-BPoDAを使用した。ICP-分解:ナトリウム(2ppm)、カリウム(5.5ppm)、亜鉛(1.1ppm)、カルシウム(4.1ppm)、アルミニウム(1.5ppm)、鉄(1.3ppm)、チタン(0ppm)、リン(8.7ppm);IC-抽出:硫酸塩(2.76ppm)、塩化物(1.61ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(1.22ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、フッ化物(<0.5ppm)。
【0100】
撹拌機と凝縮器と溶媒再循環ループを備えた反応槽へ、窒素雰囲気中、3,3’-BPoDA(3.2kg、6.69mol)と、m-PD(744.42g、6.883mol)と、PA(74.17g、0.508mol)と、o-DCB(7.65L、10.00kg)を一度に入れた。加熱せず、窒素パージしながら5~10分間、反応器内容物を15~17rpmで混合した。次に、混合物を、内部温度目標値を185~195℃として、30分間加熱還流した。反応の間、o-DCB中にスラリーが生じ、温度の上昇と反応の進行に伴って、粘着性の混合物が見られる塊状相が短時間生じ、その後、これが再び砕けて粉末となり、再び均一なスラリーとなることが観察された。続く1~2時間の間、オーバーヘッド(H2O)を除き、撹拌および窒素流量をそれぞれ28~30rpmおよび0.5scfm(約14L/分)に上げた。目標とする25%固体に達したら、オーバーヘッドを反応器へ再循環させ、還流が強くなるよう温度設定点をゆっくりと上げながら更に2~3時間還流した。
【0101】
2~3時間加熱撹拌後、化学量論的分析のための試料を採取した。m-PDまたは二酸無水物のいずれかが目標とする化学量論および分子量に達するよう反応を調節した。合計6時間の反応時間後、反応器内容物を窒素気流中で撹拌せずに一晩放冷した。翌朝、混合物を25~30rpmで5~10分間撹拌し、均一なスラリーとした。底部の排出バルブを開けて材料をスチール製バケツに集めた。全ての材料を取り出したら、o-DCB中のプレポリマースラリーを、ワットマン#1(240ミクロン)濾紙を載せたブフナー漏斗上で、乾燥するまで真空濾過した。ポリマーウェットケークのHaake脱揮を、365~385℃で15~20分間行った。GPC分析は、重量平均分子量が31,842g/モル、数平均分子量が15,713g/モル、PDIが2.02であることを示した。金属分析:ICP-分解:ナトリウム(2.2ppm)、カリウム(5.6ppm)、亜鉛(3.8ppm)、カルシウム(8.3ppm)、アルミニウム(1.9ppm)、鉄(7.2 ppm)、チタン(0.05ppm)、リン(11ppm);IC-抽出:フッ化物(<0.5ppm)、塩化物(1.4ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、臭化物(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、硫酸塩(<0.5ppm);DSC Tg:267.4℃、非常に皺になり易い透明な黄色のフィルムとなる。
【0102】
[実施例15]
以下の手順では、次のような分析結果を持つ3,3’-BPoDAを使用した。ICP-分解:ナトリウム(7ppm)、カリウム(22ppm)、亜鉛(2ppm)、カルシウム(6ppm)、アルミニウム(4ppm)、鉄(15ppm)、チタン(1ppm)、リン(11ppm);IC-抽出:硫酸塩(8.2ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、塩化物(<0.5ppm)、フッ化物(0.7ppm)。
【0103】
撹拌機と凝縮器と溶媒再循環ループを備えた反応槽へ、窒素雰囲気中、3,3’-BPoDA(2.46kg、5.142mol)と、m-PD(325.0g、3.00mol)と、4,4’-DDS(610g、2.457mol)と、PA(108.67g、0.719mol)と、o-DCB(7.93L、10.36kg)を一度に入れた。加熱せず、窒素パージしながら5~10分間、反応器内容物を12~15rpmで混合した。次に、混合物を、内部温度目標値を200~205℃として、30分間加熱還流した。反応の間、o-DCB中にスラリーが生じ、温度の上昇と反応の進行に伴って、粘着性の混合物が見られる粘着性膠状球相(sticky glue ball phase)が短時間生じ、その後、これが再び砕けて粉末となり、再び均一なスラリーがとなることが観察された。続く1~2時間、オーバーヘッド(H2O)を除き、撹拌および窒素流量をそれぞれ20~23rpmおよび0.5scfm(約14L/分)に上げた。目標とする25%固体に達したら、オーバーヘッドを反応器へ再循環させ、還流が強くなるよう温度設定点をゆっくりと上げながら更に3~4時間還流した。
【0104】
3~4時間加熱混合後、化学量論的分析のための試料を採取した。m-PDまたは二酸無水物または無水フタル酸のいずれかが目標とする化学量論および分子量に達するよう反応を調節した。合計12~16時間の反応時間後、反応器内容物を窒素気流中で撹拌せずに一晩放冷した。翌朝、混合物を25~30rpmで5~10分間撹拌し、均一なスラリーとした。底部の排出バルブを開けて材料をスチール製バケツに集めた。全ての材料を取り出したら、o-DCB中のプレポリマースラリーを、ワットマン#1(240ミクロン)濾紙を載せたブフナー漏斗上で、乾燥するまで真空濾過した。ポリマーウェットケークのHaake脱揮を、365~385℃で15~20分間行った。GPC分析は、重量平均分子量が23,052g/モル、PDIが2.87であることを示した。金属分析:ICP-分解:ナトリウム(8ppm)、カリウム(13ppm)、亜鉛(2ppm)、カルシウム(16ppm)、アルミニウム(15ppm)、鉄(26ppm)、チタン(2ppm)、ニッケル(2ppm)、マグネシウム(3ppm)、銅(3ppm)、クロム(4ppm)、リン(16ppm);IC-抽出:硫酸塩(2.3ppm)、塩化物(1.4ppm)、リン酸塩(3.2ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、臭化物(<0.5ppm);DSC Tg:272.6℃、非常に皺になり易い透明な黄色のフィルムとなる。実施例13~実施例15を、380℃~400℃の溶融温度と150℃~200℃の金型温度を用いて、50mm×75mm×1mmの大きさの光学用板材(optical plaques)に射出成形した。用語“パーセント光透過率”または“%T”は、入射光に対する透過光の割合を指し、ASTM D 1003-07に従って測定することができる。これらの測定値は、上記の成形品について、または、380℃~400℃でホットプレスして作成した、厚さ0.2mmのフィルムについて求めることができる。
【0105】
[実施例16]
以下の手順では、次のような分析結果を持つ3,3’-BPoDAを使用した。ICP-分解:ナトリウム(7ppm)、カリウム(22ppm)、亜鉛(2ppm)、カルシウム(6ppm)、アルミニウム(4ppm)、鉄(15ppm)、チタン(1ppm)、リン(11ppm);IC-抽出:硫酸塩(8.2ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、塩化物(<0.5ppm)、フッ化物(0.7ppm)。
【0106】
撹拌機と凝縮器と溶媒再循環ループを備えた反応槽へ、窒素雰囲気中、3,3’-BPoDA(3.0kg、6.28mol)と、p-PD(399.60g、3.695mol)と、4,4’-ODA(603.48g、3.013mol)と、PA(127.99g、0.864mol)と、o-DCB(6.50L、8.5kg)を一度に入れた。加熱せず、窒素パージしながら5~10分間、反応器内容物を15~17rpmで混合した。次に、混合物を、内部温度目標値を185~195℃として、30分間加熱還流した。ここでも、先に述べたように、反応が、塊状相を短時間経由することが観察された。続く1~2時間の間、オーバーヘッド(H2O)を除き、撹拌および窒素流量をそれぞれ21~28rpmおよび0.5scfm(約14L/分)に上げた。目標とする25%固体に達したら、オーバーヘッドを反応器へ再循環させ、還流が強くなるよう温度設定点をゆっくりと上げながら更に2~3時間還流した。
【0107】
2~3時間加熱混合後、化学量論的分析のための試料を採取した。m-PDまたは二酸無水物または無水フタル酸のいずれかが目標とする化学量論および分子量に達するよう反応を調節した。合計4~5時間の反応時間後、反応器内容物を窒素気流中で撹拌せずに一晩放冷した。翌朝、混合物を25~30rpmで5~10分間撹拌し、均一なスラリーとした。底部の排出バルブを開けて材料をスチール製バケツに集めた。全ての材料を取り出したら、o-DCB中のプレポリマースラリーを、ワットマン#1(240ミクロン)濾紙を載せたブフナー漏斗上で、乾燥するまで真空濾過した。ポリマーウェットケークのHaake脱揮を、365~385℃で15~20分間行った。GPC分析は、重量平均分子量が32,313g/モル、PDIが3.07であることを示した。金属分析:ICP-分解:ナトリウム(3ppm)、カリウム(21ppm)、亜鉛(4ppm)、カルシウム(8ppm)、アルミニウム(6ppm)、鉄(9ppm)、チタン(5ppm)、リン(11ppm)、クロム(3ppm)、銅(1ppm)、ニッケル(1ppm);IC-抽出:硫酸塩(<0.5ppm)、塩化物(1.1ppm)、リン酸塩(1.1ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、臭化物(<0.5ppm)、フッ化物(0.6ppm);DSC Tg:273.8℃、非常に皺になり易い透明な黄色のフィルムとなる。
【0108】
[比較例17]
以下の手順では、次のような分析結果を持つ3,3’-BPoTAを使用した。ICP-分解:ナトリウム(185ppm)、カリウム(37.5ppm)、亜鉛(4.38ppm)、カルシウム(8.61ppm)、アルミニウム(5.73ppm)、鉄(25.2ppm)、チタン(0.55ppm)、リン(11.1ppm)、ニッケル(3.34ppm)、クロム(15.9ppm)、マグネシウム(1.05ppm);IC-抽出:フッ化物(3ppm)、塩化物(1.2ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、臭化物(<0.5ppm)、硝酸塩(1.5ppm)、硫酸塩(278.9ppm)、リン酸塩(2.4ppm)。
【0109】
Dean-Starkトラップと凝縮器と撹拌機と窒素供給装置を取り付けた1000mLの3つ口丸底フラスコに、3,3’-BPoTA(17.14g、33.32mmol)とo-DCB(50g、38mL)を入れた。このフラスコを、窒素気流中(15scfh(約420L/時間))、150rpmで撹拌しながら25℃の油浴に入れ、加熱を開始して180℃とした。60分後、17gの留出物(o-DCB/H2O)がDean-Starkトラップから除かれた。窒素流量を10scfh(約280L/時間)に下げ、撹拌を300rpmに上げた。新たなo-DCBを反応フラスコに加えて、Dean-Starkトラップで失われた溶媒を補充した。合計で7~8時間後、UPLC分析は、反応が終了しており、3,3’-BPoDAが95.06%、BPoDA異性体が2.5%、未知ピークが2.44%であることを示した。得られたBPoDA混合物は、4,4’-DDS(3.93g、38.82mmol)と、m-PD(2.09g、72.093mmol)と、無水フタル酸(PA)(0.581g、1863.9mmol)を入れて、そのまま重合に用いた。フラスコを、窒素気流中(15scfh(約420L/時間))、200rpmで撹拌しながら、195~200℃で加熱を続けた。
【0110】
約30分後、膠状球段階の間は撹拌を70rpmまで下げた(163~180℃)。膠状球段階の後、撹拌を200rpmに上げた。合計で4時間後、42gの留出物(o-DCB/H2O)がDean-Starkトラップから除かれた。窒素流量を10scfh(約280L/時間)に下げ、撹拌を250rpmに上げた。この段階で、球状の塊は均一な黄色のスラリーに変わった。反応フラスコを油浴から外し、反応内容物を追加のo-DCB(70g)で希釈して周囲温度まで放冷した。ワットマン濾紙♯4で固体を濾別後、150℃で一晩真空乾燥した。揮発分を除いた試料のGPC分析は、この物質が21372g/モルの重量平均分子量を持つことを示した。ホットプレスすると、Tgが252.8℃、空気中での分解開始温度が321.8℃の、琥珀色の脆いフィルムができた。金属分析:ICP-分解:ナトリウム(109ppm)、カリウム(8.18ppm)、亜鉛(3.25ppm)、カルシウム(24.6ppm)、アルミニウム(14.3ppm)、鉄(8.30ppm)、チタン(<1ppm)、リン(<1ppm)、クロム(4.76ppm)、銅(<1ppm)、ニッケル(<1ppm)、マンガン(<1ppm)、マグネシウム(3.61ppm);IC-抽出:硫酸塩(30.9ppm)、塩化物(1.0ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(1.3ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)、臭化物(<0.5ppm)、フッ化物(<0.5ppm)。
【0111】
[実施例18]
以下の手順で使用した3,3’-BPoDAは、次のような分析結果を持つものであった。ICP-分解:ナトリウム(20ppm)、カリウム(7ppm)、亜鉛(0ppm)、カルシウム(2.6ppm)、アルミニウム(0ppm)、鉄(3ppm)、チタン(0ppm)、リン(8ppm);IC-抽出:硫酸塩(4.6ppm)、塩化物(<0.5ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)。また、m-PDは、次のような分析結果を持つものであった。ICP-分解:ナトリウム(1ppm)、カリウム(12ppm)、亜鉛(0ppm)、カルシウム(3ppm)、アルミニウム(3ppm)、鉄(0ppm)、チタン(0ppm)、リン(5ppm);IC-抽出:硫酸塩(<0.5ppm)、塩化物(130.7ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(1.9ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm)。
【0112】
Dean-Starkトラップと凝縮器と撹拌機と窒素供給装置(2scfh(約57L/時間))を取り付けた250mLの3つ口丸底フラスコに、3,3’-BPoDA(20.81g、43.49mmol)と、無水フタル酸(0.726g、4.90mmol)と、m-PD(2.70g、25.0mmol)と、4,4’-DDS(5.08g、20.5mmol)と、o-DCB(109g)を加えた。このフラスコを25℃の油浴に入れ、120rpmで撹拌しながら、油浴を200℃まで加熱した。
【0113】
35分後、油浴温度は155℃に達し、膠状球相が観察され、この間、撹拌を80~100rpmに下げた。更に8分後、油浴温度は173℃に達し、混合物は均一な黄色溶液となった。次に、撹拌を200rpmに上げた。
【0114】
合計で75分間加熱した後、目標とする200℃の油浴温度に達した。この時点で、46gの留出物がトラップから除かれ、30質量%固体の反応混合物ができており、また、窒素流量を0.5scfh(約14L/時間)に下げた。合計で6時間45分後、重合物は粘稠な二相混合物となった。更に70分後、金属製のへらで混合物をホイル皿へ掻き出し、周囲温度まで放冷した。試料を、窒素気流中、380~385℃で20分間、脱揮(ホットブロック(hot block))した。GPC:重量平均分子量=31,372;数平均分子量=13,644、PDI=2.30;Mz/Mw=1.35;ICP-分解:ナトリウム(16ppm)、カリウム(11ppm)、亜鉛(7ppm)、カルシウム(25ppm)、アルミニウム(6ppm)、鉄(15ppm)、チタン(0ppm)、リン(12ppm);IC-抽出:硫酸塩(4.6ppm)、塩化物(1.4ppm)、リン酸塩(<0.5ppm)、硝酸塩(<0.5ppm)、亜硝酸塩(<0.5ppm);DSC Tg:278.5℃。
【0115】
以下の実施例では、ハロゲン化溶媒中でのポリ(エーテルイミド)の製造について述べる。結果を表3にまとめた。連鎖停止剤として無水フタル酸の存在下で、BPoDAと様々なジアミン類(例えば、m-PD、4,4’-ODA/p-PD、m-PD/4,4’-DDS)との縮重合を行った。重合条件下、環流中のo-DCBからポリマーが沈殿してプレポリマーを含む二相混合物ができ、次に、これを濾別して380~385℃で15~20分間脱揮し、完成した(finished)末端基を持つポリマー生成物を得た。この結果から、ナトリウムが25ppm未満、硫酸塩および塩化物が25ppm未満のBPoDAを重合させると、高分子量のポリ(エーテルイミド)を容易に製造できることが分かった。得られたポリ(エーテルイミド)は高いガラス転移温度(Tg)を示し、透明で、皺になり易い~非常に皺になり易い黄色のフィルムを形成した(実施例13~16および18)。これに対し、ナトリウムおよび硫酸塩濃度の高いBPoDAを、同じ重合条件下でm-PDおよび4,4’-DDSと縮重合させると(比較例17)、分子量が小さく、Tgが著しく低く(~20℃)、色が濃く(黄色に対して琥珀色)、無機汚染物質濃度の高いポリマー生成物となった。得られたフィルムは脆く、必要な機械的特性を備えていないことが分かった。この比較例の配合は、BPoDAモノマーの品質以外は、本発明の実施例と同じであった。実施例13と実施例14を比較した場合、最終的な樹脂中のナトリウム含量が28ppmから2ppmに減少すると、透過率が、着目する波長によって、7~16%上昇した(表4)。同様な効果は実施例15と実施例17の間にも見られた。これは可視波長(赤、630nm)と赤外波長の両方で起こる。1mmで赤外線透過率を80%よりも大きくするには、モノマーおよび最終的な樹脂中に存在するナトリウムイオンを10ppm未満にしなければならない。結果は、有機および無機汚染物質濃度の非常に低いBPoDAを用いると、熱的、機械的、および光学的特性の改善されたポリ(エーテルイミド)ホモポリマーまたは共重合体が製造できることを明らかに示している。
【表3】
【表4】
【0116】
本開示内容は更に以下の態様を包含する。
【0117】
態様1:ビフェノール二酸無水物組成物を精製する方法であって、このビフェノール二酸無水物組成物は、次の構造式で示されるビフェノール二酸無水物
【化6】
(式中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立してハロゲンまたは1価のC
1~6アルキル基であり、pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であって、望ましくは、pおよびqはそれぞれ0である)と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つとを含み、この方法は、ビフェノール二酸無水物組成物を含む溶液が生成するような条件下で、ビフェノール二酸無水物組成物をハロゲン化溶媒と接触させる工程と、精製したビフェノール二酸無水物組成物を溶液から単離する工程とを含み、精製ビフェノール二酸無水物組成物を溶液から単離する工程は、溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、このスラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成し、このウエットケークを、水、C
1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程、溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程、溶液をアルカリ性水溶液、望ましくは、重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性水溶液で洗浄する工程、または、溶液からイオン種を除くため溶液に吸着剤を加え、この溶液を濾過して吸着剤とイオン種を除去する工程、あるいはこれらの工程の組み合わせを含む。
【0118】
態様2:ビフェノール二酸無水物組成物を製造する方法であって、この方法は、
次の構造式で示されるビフェノール四酸
【化7】
(式中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立してハロゲンまたは1価のC
1~6アルキル基であり、pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であって、望ましくは、pおよびqはそれぞれ0である)と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの少なくとも1つとを、ハロゲン化溶媒と接触させて第1の溶液を生成する工程と、ビフェノール四酸から対応するビフェノール二酸無水物が生成するような条件に、第1溶液を置く工程と、精製したビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程とを含み、精製ビフェノール二酸無水物組成物を溶液から単離する工程は、溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、このスラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成し、このウエットケークを、水、C
1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程、溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程、溶液をアルカリ性水溶液、望ましくは、重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性水溶液で洗浄する工程、または、溶液からイオン種を除くため溶液に吸着剤を加え、この溶液を濾過して吸着剤とイオン種を除去する工程、あるいはこれらの工程の組み合わせを含む。
【0119】
態様3:態様1または2の方法であって、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程は、溶液を冷却し、精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させてスラリーを生成し、このスラリーを濾過して精製ビフェノール二酸無水物組成物を含むウエットケークを生成する工程を含み、この方法は更に、ウエットケークを、水、C1~6アルコール、またはこれらの組み合わせで洗浄する工程を含む。
【0120】
態様4:態様1または2の方法であって、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程は、溶液を濾過、望ましくは、160~225℃、望ましくは160~190℃、より望ましくは165~185℃の温度で濾過し、必要に応じて、濾液を冷却して精製ビフェノール二酸無水物組成物を結晶化させる工程を含む。
【0121】
態様5:態様1から3のいずれかの方法であって、溶液は、5~25質量%、望ましくは7~25質量%、より望ましくは7~15質量%の固形分を持つ。
【0122】
態様6:態様1から5のいずれかの方法であって、精製ビフェノール二酸無水物組成物を単離する工程は、溶液をアルカリ性水溶液、望ましくは、重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性水溶液で洗浄する工程を含む。
【0123】
態様7:態様1から6のいずれかの方法であって、溶液からイオン種を除くため溶液に吸着剤を加え、溶液を濾過して吸着剤とイオン種を除去する工程を更に含む。
【0124】
態様8:態様1から7のいずれかの方法であって、ハロゲン化溶媒は、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、1,2,3,4-テトラクロロベンゼン、1,2,3,5-テトラクロロベンゼン、2-クロロフェノール、4-クロロフェニル=フェニル=エーテル、m-クロロトルエン、o-クロロトルエン、p-クロロトルエン、またはこれらの組み合わせを含む。
【0125】
態様9:態様1から8のいずれかの方法であって、ビフェノール二酸無水物は異性体混合物であり、望ましくは、ビフェノール二酸無水物の2~100質量%は、ビフェノール二酸無水物のビフェノール基の二価の結合を3,3’位置に持ち、より望ましくは、ビフェノール二酸無水物の90~100質量%は、ビフェノール二酸無水物のビフェノール基の二価の結合を3,3’位置に持つ。
【0126】
態様10:態様1から9のいずれかの方法で製造したビフェノール二酸無水物であって、精製したビフェノール二酸無水物に含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、および鉄イオンのそれぞれは25ppm未満であり、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、リンイオン、および鉄イオンの合計は175ppm未満であり、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれは35ppm未満であり、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンの合計は50ppm未満である。
【0127】
態様11:態様1から10のいずれかの方法で製造した精製ビフェノール二酸無水物組成物と、有機ジアミンとの重合から誘導した繰り返し単位を含むポリ(エーテルイミド)。
【0128】
態様12:態様11のポリ(エーテルイミド)であって、有機ジアミンは、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、またはこれらの組み合わせである。
【0129】
態様13:態様11または12のポリ(エーテルイミド)であって、このポリ(エーテルイミド)に含まれる、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、クロムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、チタンイオン、銅イオン、およびリンイオンのそれぞれは25ppm未満であり、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、および亜硝酸イオンのそれぞれは35ppm未満である。
【0130】
態様14:態様11から13のポリ(エーテルイミド)であって、このポリ(エーテルイミド)から成形した物品、または、このポリ(エーテルイミド)を含むプレスフィルム(pressed film)は、ASTM D1003-07による測定で、630ナノメートル、850ナノメートル、1310ナノメートル、および1550ナノメートルにおいて、40%よりも大きい透過パーセントを持つ。
【0131】
態様15:態様11から14のいずれかのポリ(エーテルイミド)を含む物品であって、望ましくは、この物品は光学的構成要素である。
【0132】
本組成物、方法、および物品は、選択的に、本件に開示されている任意の適当な材料、ステップ、または構成要素(components)を含む(comprise)、から成る(consist of)、あるいは、本質的に~から成る(consist essentially of)ことができる。本組成物、方法、および物品は、付加的に、または選択的に、本組成物、方法、および物品の機能または目標の達成に必ずしも必要ではない任意の材料(または種)、ステップ、または構成要素を除いて、または実質的に含まないように構成することができる。
【0133】
文中に開示されている全ての範囲は終点を含んでおり、その終点は独立して互いに組み合わせ可能である。“組み合わせ(combinations)”は、混合物(blends、mixtures)、合金、反応生成物などを含む。用語“第1(first)”、“第2(second,)”等は、順番、品質、または重要度を何ら示すものではなく、ある要素と別の要素とを区別するために使用する。用語“a”、“an”、および“the”は、数量の限定を示すものではなく、別途指示のない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、単数形と複数形の両方を含むと解釈すべきである。“または(or)”は、別に明示されない限り、“および/または(and/or)”を意味する。明細書中における“一部の(some)実施形態”、“ある(an)実施形態”などでの言及は、その実施形態に関連して述べられている特定の要素が、本件に記載されている少なくとも1つの実施形態には含まれているが、他の実施形態中には存在してもしていなくても良いことを意味する。文中で使用されている用語“その組み合わせ(combination thereof)”は、挙げられた要素の1つ以上を含んでいるが、これは非限定(open)であって、挙げられていない類似の要素が1つ以上存在していても良い。更に、記載されている要素は、様々な実施形態において、任意の適当な方法で組み合わせ可能であることは当然である。
【0134】
文中にそうではないことが明記されていない限り、全ての試験基準は、本願の出願日、あるいは、優先権が主張されている場合、この試験基準が記載されている最先の優先権出願の出願日において実施されている最も新しい基準である。
【0135】
別途定義のない限り、文中で使用する技術および科学用語は、本願の属する技術分野の当業者に通常理解されているものと同じ意味を持つ。引用されている特許、特許出願、その他の参考文献は全て、その内容を全て本件に引用して援用する。しかし、本願中の用語が援用している参考文献の用語と矛盾する、または一致しない場合は、本願の用語を、援用する参考文献からの矛盾する用語よりも優先する。
【0136】
化合物は標準命名法を用いて記述する。例えば、指示された何らかの基で置換されていない位置は、指示された結合、または水素原子で満たされたその価数を持つものとする。2つの文字または記号に挟まれていないダッシュ(“-”)は、置換基の結合に使われる位置を示すために使用する。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素で結合している。
【0137】
文中で使用している用語“ヒドロカルビル”は、単独で、あるいは、他の用語の接頭辞、接尾辞、または一部として使用されている場合も、炭素と水素のみを含む残基を指す。この残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、または不飽和とすることができる。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、および不飽和炭化水素基の組み合わせも含むことができる。しかし、ヒドロカルビル残基が置換されていると述べられている場合、必要に応じて、置換基残基を構成している炭素および水素の他にヘテロ原子を含んでいても良い。つまり、置換基についてより詳しく述べるならば、ヒドロカルビル残基は、1つ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基なども含むことができ、あるいは、ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含むことができる。用語“アルキル”は、分枝または直鎖状飽和(unsaturated)脂肪族炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、およびn-およびs-ヘキシルを意味する。“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖または分枝鎖状一価炭化水素基(例えば、エテニル(-HC=CH2))を意味する。“アルコキシ”は、酸素を経て結合しているアルキル基(即ち、アルキル-O-)、例えば、メトキシ、エトキシ、およびsec-ブチルオキシ基を意味する。“アルキレン”は、直鎖または分枝状飽和二価脂肪族炭化水素基(例えば、メチレン(-CH2-)またはプロピレン(-(CH2)3-))を意味する。“シクロアルキレン”は、二価の環状アルキレン基、-CnH2n-x (式中、xは、環化によって置換された水素の数)を意味する。“シクロアルケニル”は、1つ以上の環と、環内に1つ以上の炭素-炭素二重結合を持ち、全ての環員が炭素である一価の基(例えば、シクロペンチルおよびシクロヘキシル)を意味する。“アリール”は、指定の数の炭素原子を含む芳香族炭化水素基、例えば、フェニル、トロポン、インダニル、またはナフチルを意味する。“アリーレン”は、二価のアリール基を意味する。“アルキルアリーレン”は、アルキル基で置換されたアリーレン基を意味する。“アリールアルキレン”は、アリール基で置換されたアルキレン基(例えば、ベンジル)を意味する。接頭辞“ハロ”は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード置換基の1つ以上を含む基または化合物を意味する。異なるハロ基の組み合わせ(例えば、ブロモとフルオロ)、または、クロロ基のみが存在していても良い。接頭辞“複素(ヘテロ:hetero)”は、化合物または基が、ヘテロ原子である少なくとも1つの環員(例えば、1、2、または3個のヘテロ原子)を含むことを意味し、このときヘテロ原子は、それぞれ独立してN、O、S、Si、またはPである。“置換された”は、化合物または基が、置換されている原子の通常の価数を超えないという条件で、水素の代わりに、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、または4個)の置換基(それぞれ独立して、C1~9アルコキシ、C1~9ハロアルコキシ、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)2-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)2-アリール)、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、トシル(CH3C6H4SO2-)、C3~12シクロアルキル、C2~12アルケニル、C5~12シクロアルケニル、C6~12アリール、C7~13アリールアルキレン、C4~12ヘテロシクロアルキル、およびC3~12ヘテロアリールとすることができる)で置換されていることを意味する。ある基について示された炭素原子の数に置換基は含まれない。例えば、-CH2CH2CNは、ニトリルで置換されたC2アルキル基である。
【0138】
特定の実施形態について述べてきたが、現時点で予想されていない、または予想されていないと考えられる代替(alternatives)、変形(modifications)、変化(variations)、改善(improvements)、および実質的同等物が、出願者や他の当業者によって考案されることがある。従って、出願時の、および修正の可能性のある添付請求項は、これらの代替、変形、変化、改善、および実質的同等物を全て包含するものとする。
【国際調査報告】