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特表2022-519821プリント基板の製造のための放射線硬化性インキジェットインキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】プリント基板の製造のための放射線硬化性インキジェットインキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20220317BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220317BHJP
   H05K 3/00 20060101ALN20220317BHJP
【FI】
C09D11/38
B41M5/00 120
B41M5/00 100
H05K3/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543175
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2020051227
(87)【国際公開番号】W WO2020152078
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】19153568.1
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】トルフ,リタ
(72)【発明者】
【氏名】ソヴァジョ,マリオン
【テーマコード(参考)】
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AA17
2H186AB11
2H186AB12
2H186AB23
2H186BA08
2H186DA07
2H186FB04
2H186FB15
2H186FB36
2H186FB37
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB52
4J039AD21
4J039AE11
4J039BC20
4J039BC29
4J039BC33
4J039BC34
4J039BC53
4J039BE01
4J039BE27
4J039CA07
4J039EA06
4J039EA20
4J039EA46
4J039FA01
4J039GA16
4J039GA24
(57)【要約】
重合可能な化合物、光開始剤及び共開始剤を含み、ここで共開始剤は脂肪族第3級アミン共開始剤又は芳香族共開始剤であり、芳香族共開始剤はアミノ置換安息香酸誘導体、アミノ置換芳香族アルデヒド及びアミノ置換芳香族ケトンからなる群より選ばれる放射線硬化性インキジェットインキであって、共開始剤が脂肪族チオエーテル及び脂肪族ジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1個の官能基を含むことを特徴とする放射線硬化性インキジェットインキ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能な化合物、光開始剤及び共開始剤を含み、ここで共開始剤は脂肪族第3級アミン共開始剤又は芳香族共開始剤であり、芳香族共開始剤はアミノ置換安息香酸誘導体、アミノ置換芳香族アルデヒド及びアミノ置換芳香族ケトンからなる群より選ばれる、放射線硬化性インキジェットインキであって、共開始剤が脂肪族チオエーテル及び脂肪族ジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1個の官能基を含むことを特徴とする放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項2】
脂肪族第3級アミン共開始剤が、式I、
【化1】
[式中、
1及びR2は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
1及びR2は5ないし8員環の形成に必要な原子を示すことができ;
1は置換又は非置換エチレン又はプロピレン基を示し;
3は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれる]
に従う化学構造を有する、請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項3】
脂肪族第3級アミン共開始剤が、式II、
【化2】
[式中、
4及びR5は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
4及びR5は5ないし8員環の形成に必要な原子を示すことができ;
2は2ないし10個の炭素原子を含む2価の連結基を示す]
に従う化学構造を有する請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項4】
共開始剤が式III、
【化3】
[式中、
6及びR7は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
6及びR7は5ないし8員環の形成に必要な原子を示すことができ;
3は置換又は非置換エチレン又はプロピレン基を示し;
8は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれる]
に従う化学構造を有するアミノ置換安息香酸誘導体である、請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項5】
共開始剤が式III、
【化4】
[式中、
9及びR10は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
9及びR10は5ないし8員環の形成に必要な原子を示すことができ;
4は2ないし10個の炭素原子を含む2価の連結基を示す]
に従う化学構造を有するアミノ置換安息香酸誘導体である請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項6】
重合可能な化合物がネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及び2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレートからなる群より選ばれる請求項1ないし5のいずれかに記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項7】
さらにフェノール性樹脂又はヒドロキシスチレンに基づく樹脂を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項8】
さらに着色剤を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項9】
さらに難燃剤を含む請求項1ないし8のいずれかに記載の放射線硬化性インキジェットイ
ンキ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の放射線硬化性インキジェットを支持体上に噴射し、硬化させるインキジェット印刷段階を含むプリント基板(PCB)の製造方法。
【請求項11】
UV線を用いて硬化を行う請求項10に記載の方法。
【請求項12】
インキジェット印刷段階に導電パターンを含む誘電性支持体上にはんだマスクを与える請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
加熱段階も含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
インキジェット印刷段階に金属表面上にエッチレジストを与える請求項10又は11に記載の方法。
【請求項15】
金属表面が銅表面である請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術的分野
本発明はプリント基板の製造のための放射線硬化性インキジェットインキ及びインキジェット法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明に関する背景技術
プリント基板(PCBs)の製造ワークフローは、プロセス段階の量を減らすために、ならびにPCBsの製造の、特に短期製造のための経費及び環境的な影響を下げるために、徐々に標準的なワークフローからデジタルワークフローに移っている。
【0003】
インキジェットは、はんだマスク上のエッチレジストからレジェンド印刷に進むPCB製造法の種々の段階における好ましいデジタル製造法の1つである。好ましいインキジェットインキはUV硬化性インキジェットインキである。
【0004】
インキジェット印刷法及びインキジェットインキはレジェンド印刷のために例えば特許文献1(Agfa)及び特許文献2(Markem-Imaje)においてならびに銅表面上におけるエッチレジストの適用のために例えば特許文献3(Agfa)及び特許文献4(Agfa)において開示されている。
【0005】
はんだマスクの適用のためにもインキジェット印刷法及びインキジェットインキは例えば特許文献5(Avecia)及び特許文献6(Taiyo Ink Manufacturing)において開示されている。
【0006】
種々の製造段階において、インキジェットインキの種々の支持体への接着は極めて重要である。接着性能を最大にするために、多くの場合に接着促進剤が必要である。
【0007】
いくつかの種類の接着促進剤が先行技術において開示されており、それらのほとんどは酸性である。
【0008】
特許文献7(Avecia)は、接着促進剤として及びストリッピングの間の溶解促進剤として1個以上の酸性基を含むアクリレート官能基性モノマーを1ないし30重量%含む非水性エッチング抵抗性インキジェットインキを開示している。
【0009】
特許文献8(Avecia)は、好ましくは(メタ)アクリレート化カルボン酸、(メタ)アクリレート化リン酸エステル及び(メタ)アクリレート化スルホン酸のような(メタ)アクリレート酸接着促進剤を含むエッチング抵抗性インキジェットインキを開示している。
【0010】
はんだマスクインキ及びレジェンドインキのような顔料系(pigmented systems)において、酸性接着促進剤は多くの場合に顔料分散を妨げ、インキの安定性を制限する。これはPCB印刷における工業的印刷系の信頼性に影響を有し、生産性における許容され得ない損失を生ずる場合がある。
【0011】
従って、酸性接着促進剤の必要がない噴射可能な放射線硬化性調製物を設計する必要がまだある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願第2725075号明細書
【特許文献2】米国特許第7845785号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第2809735号明細書
【特許文献4】欧州特許出願第3000853号明細書
【特許文献5】欧州特許出願第1543704号明細書
【特許文献6】欧州特許出願第1624001号明細書
【特許文献7】国際公開第2004/026977号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2004/106437号パンフレット
【発明の概要】
【0013】
発明の概略
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、優れた噴射及び安定性能を保持しながら種々の支持体への優れた接着により特徴付けられるPCB製造法における使用のための放射線硬化性インキジェットインキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は請求項1に従う放射線硬化性インキジェットインキにより実現される。
【0016】
請求項1で定義される共開始剤を含む放射線硬化性組成物は、酸性接着促進剤の必要なく種々の支持体への優れた接着を有することが見いだされた。
【0017】
本発明のさらなる目的は下記の記載から明らかになるであろう。
【0018】
発明の詳細な記述
定義
例えば一官能基性重合可能化合物中の「一官能基性」という用語は、重合可能な化合物が1個の重合可能な基を含むことを意味する。
【0019】
例えば二官能基性重合可能化合物中の「二官能基性」という用語は、重合可能な化合物が2個の重合可能な基を含むことを意味する。
【0020】
例えば多官能基性重合可能化合物中の「多官能基性」という用語は、重合可能な化合物が2個より多い重合可能な基を含むことを意味する。
【0021】
「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子の各数に関して可能なすべての変形、すなわちメチル、エチル、3個の炭素原子の場合:n-プロピル及びイソプロピル;4個の炭素原子の場合:n-ブチル、イソブチル及び第3級ブチル;5個の炭素原子の場合:n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピル及び2-メ
チル-ブチルなどを意味する。
【0022】
他に特定しなければ、置換又は非置換アルキル基は好ましくはC1ないしC6-アルキル基である。
【0023】
他に特定しなければ、置換又は非置換アルケニル基は好ましくはC2ないしC6-アルケニル基である。
【0024】
他に特定しなければ、置換又は非置換アルキニル基は好ましくはC2ないしC6-アルキニル基である。
【0025】
他に特定しなければ、置換又は非置換アルカリール基は好ましくは1、2、3又はそれより多いC1ないしC6-アルキル基を含むフェニル又はナフチル基である。
【0026】
他に特定しなければ、置換又は非置換アラルキル基は好ましくはフェニル基又はナフチル基を含むC7ないしC20-アルキル基である。
【0027】
他に特定しなければ、置換又は非置換アリール基は好ましくはフェニル基又はナフチル基である。
【0028】
他に特定しなければ、置換又は非置換ヘテロアリール基は好ましくは1、2又は3個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子又はそれらの組み合わせにより置換された5又は6-員環である。
【0029】
例えば置換アルキル基中の「置換」という用語は、アルキル基がそのような基中に通常存在する原子、すなわち炭素及び水素以外の原子により置換されている場合があることを意味する。例えば置換アルキル基はハロゲン原子又はチオール基を含む場合がある。非置換アルキル基は炭素原子及び水素原子のみを含む。
【0030】
他に特定しなければ、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリール及び置換ヘテロアリール基は好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及び第3級ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CN及び-NO2からなる群より選ばれる1個以上の置換基により置換されている。
【0031】
放射線硬化性インキジェットインキ
放射線硬化性インキジェットインキは重合可能な化合物、光開始剤及び下記に記載する共開始剤を含む。
【0032】
放射線硬化性インキジェットインキはさらに着色剤、高分子分散剤、重合抑制剤、難燃剤又は界面活性剤のような他の成分を含む場合がある。
【0033】
放射線硬化性インキジェットインキをいずれの型の放射線によっても、例えば電子線によって硬化させる場合もあるが、好ましくはUV線により、より好ましくはUV LEDsからのUV線によって硬化させる。かくして放射線硬化性インキジェットインキは好ましくはUV硬化性インキジェットインキである。
【0034】
信頼できる工業的なインキジェット印刷のために、放射線硬化性インキジェットインキ
の粘度は好ましくはすべて1000s-1のせん断速度において45℃で20mPa.s以下、より好ましくは45℃で1mPa.sと18mPa.sの間、そして最も好ましくは45℃で4mPa.sと14mPa.sの間である。
【0035】
好ましい噴射温度は10℃と70℃の間、より好ましくは20℃と55℃の間そして最も好ましくは25℃と50℃の間である。
【0036】
優れた画質及び接着のために、放射線硬化性インキジェットインキの表面張力は好ましくは25℃において18ないし70mN/mの範囲内、より好ましくは25℃において20ないし40mN/mの範囲内である。
【0037】
共開始剤
共開始剤は脂肪族第3級アミン共開始剤又はアミノ置換安息香酸誘導体、アミノ置換芳香族アルデヒド及びアミノ置換芳香族ケトンからなる群より選ばれる芳香族共開始剤であり、共開始剤は脂肪族チオエーテル及び脂肪族ジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1個の官能基を含む。
【0038】
脂肪族第3級アミン及びチオエーテルを含む好ましい共開始剤は式I
【化1】
[式中、
1及びR2は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
1及びR2は5ないし8員環の形成に必要な原子を示す場合があり;
1は置換又は非置換エチレン又はプロピレン基を示し;
3は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれる]
に従う構造を有する。
【0039】
第3級アミン及びジスルフィドを含む好ましい共開始剤は式II
【化2】
[式中、
4及びR5は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
4及びR5は5ないし8員環の形成に必要な原子を示す場合があり;
2は2ないし10個の炭素原子を含む2価の連結基を示す]
に従う構造を有する。
【0040】
特に好ましい共開始剤は式III
【化3】
[式中、
6及びR7は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
6及びR7は5ないし8員環の形成に必要な原子を示す場合があり;
3は置換又は非置換エチレン又はプロピレン基を示し;
8は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれる]
に従う構造を有するアミノ置換安息香酸誘導体である。
【0041】
さらにもっと好ましい共開始剤は式IV
【化4】
[式中、
9及びR10は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
9及びR10は5ないし8員環の形成に必要な原子を示す場合があり;
4は2ないし10個の炭素原子を含む2価の連結基を示す]
に従う構造を有するアミノ置換安息香酸誘導体である。
【0042】
さらに好ましい態様において、前記共開始剤は5員環状スルフィドを含む。
【0043】
本発明に従う典型的な共開始剤を表1において下記に示すが、それらに制限するものではない。
【0044】
【表1-1】
【表1-2】
【0045】
共開始剤の濃度は、放射線硬化性インキジェットインキの合計重量に対して好ましくは0.1から20重量%まで、より好ましくは0.5から15重量%まで、最も好ましくは1から10重量%までである。
【0046】
上記の共開始剤は他の共開始剤と組み合わされて用いられる場合がある。
【0047】
そのような他の共開始剤の適した例を3つの群に分類することができる:1)メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリンのような第3級脂肪族アミン;(2)アミルパラジメチル-
アミノベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)-エチルベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート及び2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートのような芳香族アミン;ならびに(3)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)又はN-モルホリノアルキル-(メタ)アクリレート(例えばN-モルホリノエチル-アクリレート)のような(メタ)アクリレート化アミン。好ましい共開始剤はアミノベンゾエートである。
【0048】
重合可能な化合物
重合可能な化合物は、好ましくはフリーラジカル重合可能な化合物である。
【0049】
フリーラジカル重合可能な化合物はモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの場合がある。モノマーは希釈剤(diluents)とも呼ばれる。
【0050】
これらのモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーは種々の程度の官能価、すなわち種々のフリーラジカル重合可能な基の量を有する場合がある。
【0051】
一、二、三及びもっと高い官能基性のモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物が用いられる場合がある。モノマー及びオリゴマーの間の比率を変えることにより、放射線硬化性インキジェットインキの粘度を調整する場合がある。
【0052】
好ましい態様において、モノマー、オリゴマー又はポリマーは少なくとも1個のアクリレート基を重合可能な基として含む。
【0053】
好ましいモノマー及びオリゴマーは欧州特許出願第1911814号明細書中の[0106]ないし[0115]段落に挙げられているものである。
【0054】
好ましい態様において、放射線硬化性インキジェットインキはビニルエーテル基及びアクリレート又はメタクリレート基を含むモノマーを含む。そのようなモノマーは欧州特許出願第2848659号明細書[0099]ないし[0104]段落に開示されている。ビニルエーテル基及びアクリレート基を含む特に好ましいモノマーは2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートである。
【0055】
はんだマスクの作製に用いられる場合、重合可能な化合物は好ましくはアクリロイルモルホリン、環状トリメチルプロペンホルモールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及び2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレートからなる群より選ばれる。
【0056】
放射線硬化性インキジェットインキをエッチレジストの作製に用いる場合、好ましい重合可能な化合物は国際公開第2013/113572号パンフレット、[0056]ないし[0058]段落;国際公開第2015/132020号パンフレット、[0031]ないし[0052]段落;又は国際公開第2016/050504号パンフレット、[0028]ないし[0066]段落に開示されている。
【0057】
光開始剤
放射線硬化性インキジェットは少なくとも1種の光開始剤を含む。
【0058】
フリーラジカル光開始剤は化学線に暴露されるとフレーラジカルの形成によりモノマー及びオリゴマーの重合を開始させる化学化合物である。ノリッシュI型開始剤は励起後に開裂し、すぐに開始ラジカルを与える開始剤である。ノリッシュII型開始剤は化学線に
より活性化され、実際の開始フリーラジカルになる第2の化合物からの水素引き抜きによりフリーラジカルを形成する光開始剤である。この第2の化合物は重合相乗剤又は共開始剤と呼ばれる。I型及びII型光開始剤の両方を単独で又は組み合わせて本発明において用いることができる。
【0059】
適した光開始剤は、CRIVELLO,J.V.,et al.Photoinitiators for Free Radical,Cationic and Anionic Photopolymerization.2nd edition,BRADLEY,G.編集,London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998.p.276-293に開示されている。
【0060】
フリーラジカル光開始剤の特定の例には以下の化合物又はそれらの組み合わせが含まれる場合があるが、それらに限られない:ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン;ベンジルジメチルケタール;ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド;2,4,6トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド;2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン又は5,7-ジヨード-3-ブトキシ-6-フルオレン。
【0061】
適した市販のフリーラジカル光開始剤にはCIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能なIrgacureTM 184、IrgacureTM 500、IrgacureTM 369、IrgacureTM 1700、IrgacureTM 651、IrgacureTM 819、IrgacureTM 1000、IrgacureTM
1300、IrgacureTM 1870、DarocurTM 1173、DarocurTM 2959、DarocurTM 4265及びDarocurTM ITX;BASF AGから入手可能なLucerinTM TPO;LAMBERTIから入手可能なEsacureTM KT046、EsacureTM KIP150、EsacureTM KT37及びEsacureTM EDB;SPECTRA GROUP Ltd.から入手可能なH-NuTM 470及びH-NuTM 470Xが含まれる。
【0062】
光開始剤の好ましい量は放射線硬化性インキジェットインキの合計重量の0.1-20重量%、より好ましくは2-15重量%そして最も好ましくは3-10重量%である。
【0063】
フェノール性化合物
放射線硬化性インキジェットインキは好ましくはフェノール性化合物、より好ましくは少なくとも2個のフェノール性基を含むフェノール性化合物を含む。フェノール性化合物は2、3、4個又はそれより多いフェノール性基を含む場合がある。
【0064】
好ましいフェノール性化合物は2個のフェノール性基を含む。
【0065】
特に好ましいフェノール性化合物は式II:
【化5】
[式中、
11及びR12は独立して水素原子、置換又は非置換アルキル基、ヒドロキシル基及び置換又は非置換アルコキシ基からなる群より選ばれ、
YはCR1314、SO2、SO、S、O及びCOからなる群より選ばれ、
13及びR14は独立して水素原子、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換(ヘテロ)アリール基からなる群より選ばれ、
13及びR14は5ないし8員環の形成に必要な原子を示す場合がある]
に従う構造を有する。
【0066】
Yは好ましくはCR1314又はSO2であり、R13及びR14は好ましくは水素原子又はアルキル基を示す。
【0067】
別の好ましい態様において、フェノール性化合物は少なくとも2個のフェノール性基を含むポリマーである。好ましくは、少なくとも2個のフェノール性基を含むポリマーは分岐鎖状又は超分岐鎖状ポリマーである。
【0068】
少なくとも2個のフェノール性基を含む好ましいポリマーはフェノール性樹脂、すなわちノボラック又はレゾールである。
【0069】
フェノール性樹脂はフェノール性化合物とアルデヒド又はケトンの反応生成物である。用いられ得るフェノールは:フェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、2,4-キシレノール、3,5-キシレノール又は2,5-キシレノールである。用いられ得るアルデヒドはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド又はアセトンである。
【0070】
ノボラック製造のために最も広く用いられる方法は、フェノール/クレゾール及びホルムアルデヒドの酸-触媒一段階合成であり、それは統計的構造の樹脂に導く(下記の反応スキームを参照されたい)。
【化6】
【0071】
一般に触媒として塩酸、硫酸、p-トルエン硫酸又はシュウ酸が用いられる。通常のノボラック樹脂において、ホルムアルデヒドとフェノール/クレゾールの種々の割合が通常用いられる。より高いフェノールの含有率は分岐の程度を向上させるが、反応はオルト及びパラ位で起こり得る。より高いp-クレゾール含有率を有する樹脂の場合、パラ位がメ
チル基の存在により遮断されているためにより直鎖状のポリマーが得られる。
【0072】
フェノール及びホルムアルデヒドのノボラックコポリマーは、オルト位及びパラ位の両方で反応が起こるので、より高い分岐の程度を有するであろう。粘度を下げるために、高い分岐の程度及び/又は低い分子量が好ましい。クレゾールノボラック(cresylic novolacs)の場合、m-クレゾールの使用はo-クレゾール及びp-クレゾールと比較してより容易に高い分子量を与え得る。
【0073】
フェノール性樹脂を塩基触媒反応において製造することもでき、それはレゾールの製造に導く。レゾールはメチロール基も有するフェノール性ポリマーである。
【0074】
はんだマスクインキジェットインキ中への導入の場合、十分なインキ安定性を得るためにノボラック樹脂が好ましく、それはノボラック樹脂のみが高温(>150C)で反応性だからである。レゾールはもっと低い温度ですでに反応する場合があり、メチロール基の存在の故にインキジェットインキの比較的低い耐薬品性を生ずる場合がある。
【0075】
少なくとも2個のフェノール性基を有するもっと十分に定義された分岐鎖状ポリマーは、米国特許第5554719号明細書及び米国特許第2005250042号明細書に開示されている通り4-ヒドロキシフェニルメチルカルビノールを用いて製造される場合がある。4-ヒドロキシフェニルメチルカルビノールから製造される少なくとも2個のフェノール性基を有する特に好ましい分岐鎖状ポリマーはDu Pont Electronic Polymersにより開発され、Hydrite Chemical Companyにより商品名PB-5(CASRN 166164-76-7)の下に供給されている。
【0076】
本発明に従うフェノール性化合物の例を表2に示すが、それらに限られない。
【0077】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0078】
少なくとも2個のフェノール性基を有するポリマーの典型的な例を下記の表3に示すが、それらに限られない。
【0079】
【表3】
【0080】
フェノール性化合物の量は、インキジェットインキの合計重量に対して好ましくは0.
5重量%と20重量%の間、より好ましくは1重量%と15重量%の間、最も好ましくは2.5重量%と10重量%の間である。
【0081】
着色剤
放射線硬化性インキジェットは実質的に無色のインキジェットインキの場合があるか又は少なくとも1種の着色剤を含む場合がある。例えばインキジェットインキをエッチレジストとして用いる場合、着色剤は一時的なマスクを導電パターンの作製者に明確に見えるようにし、質の視覚検査を可能にする。インキジェットインキがはんだマスクの適用のために用いられる場合、それは典型的に着色剤を含む。はんだマスクのために好ましい色は緑であるが、黒又は赤のような他の色も用いられる場合がある。
【0082】
着色剤は顔料又は染料の場合があるが、好ましくは顔料である。
【0083】
着色顔料はHERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications,3rd edition.Wiley-VCH,2004,ISBN 3527305769により開示されているものから選ばれる場合がある。
【0084】
適した顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0128]ないし[0138]段落に開示されている。
【0085】
インキジェットインキ中の顔料粒子は、インキジェット印刷装置を介する、特に吐出ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。最大色濃度のため、及び沈降を遅らせるためにも小さい粒子を用いるのが望ましい。最も好ましくは、平均顔料粒度は150nm以下である。顔料粒子の平均粒度は、好ましくは動的光散乱の原理に基づくBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて決定される。
【0086】
PCBsにおいて、はんだマスクは典型的に青又は緑色を有する。青顔料は好ましくはフタロシアニンシリーズの1つである。青顔料の例はC.I.Pigment Blue
1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、24及び60である。
【0087】
緑顔料は一般に青及び黄色又はオレンジ顔料の混合物であるか、或いはハロゲン化フタロシアニン、例えば銅又はニッケル臭素化フタロシアニンのような緑顔料又は染料自体の場合がある。
【0088】
好ましい態様において、着色剤は放射線硬化性インキジェットインキの合計重量に基づいて0.2ないし6.0重量%、より好ましくは0.5ないし2.5重量%の量で存在する。
【0089】
高分子分散剤
放射線硬化性インキジェット中の着色剤が顔料である場合、放射線硬化性インキジェットインキは、顔料の分散のために好ましくは分散剤、より好ましくは高分子分散剤を含む。
【0090】
適した高分子分散剤は2種のモノマーのコポリマーであるが、それらは3、4、5種又はそれより多種のモノマーさえ含む場合がある。高分子分散剤の性質は、モノマーの性質及びポリマー中におけるそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは以下のポリマー組成を有する:
●ランダム重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABBAABABに重合した);
●交互重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABABABABに重合した);
●勾配(テーパード)重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがAAABAABBABBBに重合した);
●それぞれのブロックのブロック長(2、3、4、5個又はそれより多くさえ)が高分子分散剤の分散能力に重要であるブロックコポリマー(例えばモノマーA及びBがAAAAABBBBBBに重合した);
●グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合した高分子側鎖を有する高分子主鎖から成る);ならびに
●これらのポリマーの混合形態、例えばブロック様勾配コポリマー。
【0091】
適した高分子分散剤は、欧州特許出願第1911814号明細書中の「分散剤」についての段落、より特定的に[0064]ないし[0070]及び[0074]ないし[0077]に挙げられている。
【0092】
高分子分散剤の市販の例は以下である:
●BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYKTM分散剤;
●NOVEONから入手可能なSOLSPERSETM分散剤;
●EVONIKからのTEGOTM DISPERSTM分散剤;
●MUENZING CHEMIEからのEDAPLANTM分散剤;
●LYONDELLからのETHACRYLTM分散剤;
●ISPからのGANEXTM分散剤;
●CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのDISPEXTM及びEFKATM分散剤;
●DEUCHEMからのDISPONERTM分散剤;ならびに
●JOHNSON POLYMERからのJONCRYLTM分散剤。
【0093】
重合抑制剤
放射線硬化性インキジェットインキはインキの熱安定性を向上させるために少なくとも1種の抑制剤を含む場合がある。
【0094】
適した重合抑制剤にはフェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、燐光体型酸化防止剤、通常(メタ)アクリレートモノマー中で用いられるヒドロキノンモノメチルエーテル及びヒドロキノンが含まれる。t-ブチルカテコール、ピロガロール、2,6-ジ-tert.ブチル-4-メチルフェノール(=BHT)及びフェノチアジンも用いられる場合がある。
【0095】
適した市販の抑制剤は、例えばSumitomo Chemical Co.Ltdにより製造されるSumilizerTM GA-80、SumilizerTM GM及びSumilizerTM GS;Rahn AGからのGenoradTM 16、GenoradTM 18及びGenoradTM 22;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastabTMUV10及びIrgastabTMUV22、TinuvinTM 460及びCGS20;Kromachem LtdからのFlorstabTM UV領域(UV-1、UV-2、UV-5及びUV-8)、Cytec Solvay GroupからのAdditolTM S領域(S100、S110、S120及びS130)ならびにPTZである。
【0096】
抑制剤は好ましくは重合可能な抑制剤である。
【0097】
これらの重合抑制剤の過剰の添加は硬化速度を下げる場合があるので、ブレンドする前に重合を妨げることができる量を決定するのが好ましい。重合抑制剤の量は好ましくは放射線硬化性インキジェットインキ全体の5重量%未満、より好ましくは3重量%未満である。
【0098】
界面活性剤
放射線硬化性インキジェットは少なくとも1種の界面活性剤を含む場合があるが、好ましくは界面活性剤は存在しない。
【0099】
界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性イオン性であることができ、通常放射線硬化性インキジェットインキの合計重量に基づいて1重量%未満の合計量で加えられる。
【0100】
適した界面活性剤にはフッ素化界面活性剤、高級アルコールの脂肪酸塩、エステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホネート塩、スルホスクシネートエステル塩及びホスフェートエステル塩(例えばナトリウムドデシルベンゼンスルホネート及びナトリウムジオクチルスルホスクシネート)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物ならびにアセチレングリコール及びそのエチレンオキシド付加物(例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルならびにAIR PRODUCTS & CHEMICALS INCから入手可能なSURFYNOLTM 104、104H、440、465及びTG)が含まれる。
【0101】
好ましい界面活性剤はフッ素系界面活性剤(フッ素化炭化水素のような)及びシリコーン界面活性剤から選ばれる。シリコーン界面活性剤は好ましくはシロキサンであり、アルコキシル化されていることができ、ポリエーテル修飾されていることができ、ポリエーテル修飾ヒドロキシ官能基性であることができ、アミン修飾されていることができ、エポキシ修飾されていることができ、及び他の修飾がされているか又はそれらの組み合わせであることができる。好ましいシロキサンは高分子性、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0102】
好ましい市販のシリコーン界面活性剤にはBYK ChemieからのBYKTM 333及びBYKTM UV3510ならびにEvonik IndustriesからのTego Rad 2100が含まれる。
【0103】
好ましい態様において、界面活性剤は重合可能な化合物である。
【0104】
好ましい重合可能なシリコーン界面活性剤には(メタ)アクリレート化シリコーン界面活性剤が含まれる。最も好ましくは、(メタ)アクリレート化シリコーン界面活性剤はアクリレート化シリコーン界面活性剤であり、それはアクリレートがメタクリレートより反応性だからである。
【0105】
好ましい態様において、(メタ)アクリレート化シリコーン界面活性剤はポリエーテル修飾(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサン又はポリエステル修飾(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサンである。
【0106】
好ましくは、界面活性剤は放射線硬化性インキジェットインキの合計重量に基づいて0ないし3重量%の量で放射線硬化性インキジェットインキ中に存在する。
【0107】
難燃剤
好ましい難燃剤は、アルミナ三水和物(Alumina Trihydrate)及びベーマイト(Boehmite)のような無機難燃剤ならびに有機ホスフェート(例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(BADP)及びトリクレシルホスフェート(TCP));有機ホスホネート(例えばジメチルメチルホスホネート(DMMP));ならびに有機ホスフィネート(例えばアルミニウムジメチルホスフィネート)のような有機燐光体化合物である。
【0108】
他の好ましい有機燐光体化合物は米国特許第8273805号明細書に開示されている。
【0109】
インキジェットインキの調製
顔料放射線硬化性インキジェットインキの調製は当業者に周知である。調製の好ましい方法は国際公開第2011/069943号パンフレットの[0076]ないし[0085]段落に開示されている。
【0110】
プリント基板の製造方法
本発明に従うプリント基板(PCB)の製造方法はインキジェット印刷段階を含み、その段階に支持体上で上記の放射線硬化性インキジェットインキを噴射し、硬化させる。
【0111】
好ましい態様に従うと、PCBの製造方法はエッチレジストが金属表面、好ましくは銅表面上に与えられるインキジェット印刷段階を含む。
【0112】
金属表面上で放射線硬化性インキジェットインキを噴射し、硬化させ、それにより金属表面の保護領域を形成することにより、金属表面上にエッチレジスト(etch resist)が与えられる。金属表面の非保護領域からの金属は、次いでエッチングにより除去される。エッチングの後、エッチレジストの少なくとも一部は金属表面の保護領域から除去される。
【0113】
金属表面は、好ましくは支持体に取り付けられた金属箔又はシートである。
【0114】
支持体が非導電性である限り、金属シートに接着される支持体の型に現実的な制限はない。支持体はセラミック、ガラス又はポリイミドのようなプラスチックから作られる場合がある。
【0115】
金属シートは通常9μmと105μmの間の厚さを有する。
【0116】
金属表面の性質に制限はない。金属表面は好ましくは銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、チタン又は亜鉛からなるが、これらの金属を含む合金の場合もある。非常に好ましい態様において、金属表面は銅で作れらる。銅は高い導電率を有し、比較的安価な金属であり、それをプリント基板の製造に非常に適したものとしている。
【0117】
前記方法をエッチングされた装飾用金属パネルの製造に用いる場合もある。
【0118】
用いられる金属表面は導電パターンが作製される態様のための上記の金属から選ばれる場合がある。この場合、好ましくは固体金属パネルが用いられる。しかしながら支持体に取り付けられた金属箔が用いられる場合もある。金属箔に接着される支持体の型に現実的な制限はない。支持体はセラミック、ガラス又はプラスチックあるいは第二の(比較的安価な)金属板からさえ作られる場合がある。金属は合金の場合もある。
【0119】
そのような装飾用金属パネルは、情報を与える目的のような純粋に装飾用である以外の目的のために役立つ場合がある。例えばエッチング抵抗性放射線硬化性インキジェットインキが人又は会社の名前のような情報として印刷され、次いで除去されて艶消しのエッチングされた背景上に光沢のある輝く名前を生じたアルミニウムネームプレートも装飾要素を含む装飾用金属パネルと考えられる。エッチングは光沢の変化のような金属表面の光学的性質における変化を引き起こす。硬化した放射線硬化性インキジェットインキの金属表面からの除去の後、エッチングされた金属表面とエッチングされない金属表面の間に美的効果が生まれる。
【0120】
インキジェット印刷法の好ましい態様において、金属表面は放射線硬化性インキジェットインキの印刷の前に清浄化される。これは、金属表面を手で扱い、グローブを着用しない場合に特に望ましい。清浄化は金属表面への放射線硬化性インキジェットインキの接着を妨げ得るほこり粒子及び油を除去する。PCBにおいて、銅は多くの場合にマイクロエッチングにより清浄化される。銅の酸化物層は除去され、接着を向上させるために粗さが導入される。
【0121】
エッチングされた装飾用ガラスパネルの製造のためにインキジェット法を用いる場合もある。そのような方法は例えば国際公開第2013/189762号パンフレット(AGC)に開示されている。
【0122】
別の好ましい態様に従うと、PCBの製造方法ははんだマスクが与えられるインキジェット印刷段階を含む。
【0123】
はんだマスクは、典型的に導電パターンを含む誘電性支持体上で放射線硬化性インキジェットインキを噴射し、硬化させることにより与えられる。
【0124】
噴射され、硬化した放射線硬化性インキジェットインキに好ましくは熱処理が適用される。熱処理は好ましくは80℃と250℃の間の温度で行われる。温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。はんだマスクの炭化を防ぐために、温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
【0125】
熱処理は典型的に15分と90分の間の時間行われる。
【0126】
熱処理の目的は、はんだマスクの重合度をさらに向上させることである。
【0127】
電子装置の誘電性支持体はいずれの非導電性材料の場合もある。支持体は典型的に紙/樹脂複合材料又は樹脂/ガラス繊維複合材料、セラミック支持体、ポリエステル又はポリイミドである。
【0128】
導電パターンは典型的に金、銀、パラジウム、ニッケル/金、ニッケル、錫、錫/鉛、アルミニウム、錫/アルミニウム及び銅のような通常電子装置の製造に用いられるいずれかの金属又は合金で作られる。導電パターンは好ましくは銅で作られる。
【0129】
放射線硬化性インキジェットインキは両方の態様においてインキが電子線又は紫外(UV)線のような化学線に暴露されることにより硬化する場合がある。好ましくは放射線硬化性インキジェットインキはUV線により、より好ましくはUV LED硬化を用いて硬化する。
【0130】
PCBの製造方法は2、3又はもっと多いインキジェット印刷段階を含む場合がある。例えば前記方法は2つのインキジェット印刷段階を含む場合があり、ここで1つのインキ
ジェット印刷段階に金属表面上にエッチレジストが与えられ、且つここで別のインキジェット印刷段階に導電パターンを含む誘電性支持体上にはんだマスクが与えられる。
【0131】
第三のインキジェット印刷段階がレジェンド印刷のために用いられる場合がある。
【0132】
エッチング
金属表面のエッチングはエッチング液の使用により行われる。エッチング液は好ましくはpH<3を有するか又は8<pH<10である水溶液である。
【0133】
好ましい態様において、エッチング液は2未満のpHを有する酸水溶液である。酸エッチング液は好ましくは硝酸、ピクリン酸、塩酸、フッ化水素酸及び硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸を含む。
【0134】
当該技術分野において既知の好ましいエッチング液にはKalling’s No2、ASTM No30、Kellers Etch、Klemm’s Reagent、Kroll’s Reagent、Marble’s Reagent、Murakami’s Reagent、Picral及びViella’s Reagentが含まれる。
【0135】
別の好ましい態様において、エッチング液は9以下のpHを有するアルカリ性水溶液である。アルカリ性エッチング液は好ましくはアンモニア又は水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基を含む。
【0136】
エッチング液は二塩化銅、硫酸銅、フェリシアン化カリウム及び三塩化鉄のような金属塩も含む場合がある。
【0137】
PCB用途における金属表面のエッチングは好ましくは数秒ないし数分、より好ましくは5ないし200秒の時間枠内に行われる。エッチングは好ましくは35℃と60℃の間の温度で行われる。
【0138】
装飾用金属パネルの製造におけるような他の用途における金属表面のエッチング時間は、エッチング段階の間に除去されるべき金属の型及び量に依存して実質的に比較的長い場合がある。エッチング時間は15、30分より長いか又は60分より長い場合さえある。
【0139】
ガラス表面をエッチングする方法において、エッチング溶液は好ましくはフッ化水素酸の水溶液である。典型的にエッチング溶液は0と5の間のpHを有する。
【0140】
エッチングに好ましくは残留エッチング液を除去するための水を用いる濯ぎが続く。
【0141】
ストリッピング
エッチング後、硬化した放射線硬化性インキジェットインキは、例えば電気又は電子装置が残る金属表面(導電パターン)と接触できるようにするか或いはエッチングされた金属パネルの装飾的特徴が十分に可視になるように、少なくとも部分的に金属表面から除去されねばならない。例えばトランジスタのような電子部品はプリント基板上の導電(銅)パターンと電気的に接触できなければならない。好ましい態様において、硬化した放射線硬化性インキジェットインキは金属表面から完全に除去される。
【0142】
好ましい態様において、硬化した放射線硬化性インキジェットインキはアルカリ性ストリッピング浴により除去される。そのようなアルカリ性ストリッピング浴は通常pH>10を有する水溶液である。
【0143】
別の態様において、硬化した放射線硬化性インキジェットインキは乾式剥離(dry delamination)により除去される。この「乾式ストリッピング(dry stripping)」の方法は現在プリント基板の製造の技術分野において未知であり、製造方法におけるいくつかの生態学的及び経済的利点を導入する。乾式ストリッピングは腐食性のアルカリ性ストリッピング浴の必要性及びその固有の廃液を取り除くのみでなく、より高い処理量を可能にもする。例えば接着箔(adhesive foil)及びロール-ツウ-ロール ラミネーター-デラミネーター(roll-to-roll laminator-delaminator)の使用により、乾式ストリッピングを実行することができる。金属表面上に存在する硬化した放射線硬化性インキジェットインキ上に最初に接着性箔をその接着側で積層し、続いて剥離し、それにより硬化した放射線硬化性インキジェットインキを金属表面から除去する。ロール-ツウ-ロール ラミネーター-デラミネーターによる剥離は数秒内で行うことができるが、アルカリ性ストリッピングは数分を要し得る。
【0144】
インキジェット印刷装置
プリントヘッドに対して相対的に動いている支持体上にノズルを介して制御されたやり方で小さい液滴を吐出する1個以上のプリントヘッドにより、放射線硬化性インキジェットインキを噴射する場合がある。
【0145】
インキジェット印刷系のために好ましいプリントヘッドは圧電ヘッドである。圧電インキジェット印刷は圧電セラミック変換器に電圧が適用される場合のその動きに基づく。電圧の適用はプリントヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変え、空隙を形成し、それが次いでインキで満たされる。電圧が再び取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、プリントヘッドからインキ滴を吐出する。しかしながら本発明に従うインキジェット印刷法は圧電インキジェット印刷に縛られない。他のインキジェットプリントヘッドを用いることができ、それには連続型のような種々の型が含まれる。
【0146】
インキジェットプリントヘッドは通常動いているインキ受容体表面を横切って横方向で前後に走査する。多くの場合、インキジェットプリントヘッドは戻り道に印刷しない。高い面積処理量を得るために二方向印刷が好ましい。別の好ましい印刷法は「シングルパスプリント法(single pass printing process)」による方法であり、それはページ幅のインキジェットプリントヘッド又はインキ受容体表面の幅全体を覆う複数のジグザグ(staggered)インキジェットプリントヘッドの使用により行われ得る。シングルパスプリント法において、インキジェットプリントヘッドは通常静止したままであり、インキ受容体表面がインキジェットプリントヘッドの下を輸送される。
【0147】
硬化装置
放射線硬化性インキジェットインキを電子線又は紫外線のような化学線に暴露することにより、それを硬化させることができる。好ましくは、放射線硬化性インキジェットインキは紫外線により、より好ましくはUV LED硬化の使用により硬化する。
【0148】
インキジェット印刷において、硬化手段をインキジェットプリンターのプリントヘッドと組み合わせて配置し、それと一緒に移動させ、硬化性の液体が噴射された直後に硬化放射線に暴露されるようにする場合がある。
【0149】
そのような配置において、プリントヘッドに連結され且つそれと一緒に移動するのに十分に小さい放射線源を与えることは、UV LEDsを除いて困難であり得る。従って光ファイバー束(fibre optic bundle)又は内部反射性フレキシブルチ
ューブ(internally reflective flexible tube)のような柔軟性放射線伝導性手段により放射線源に連結された静止固定放射線源、例えば硬化UV光源を用いる場合がある。
【0150】
あるいはまた、放射線ヘッド上の鏡を含む鏡の配置により固定源から放射線ヘッドに化学線を供給する場合がある。
【0151】
放射線源は硬化するべき支持体を横切って横に延びる長い放射線源の場合もある。それは、プリントヘッドにより形成される画像の連続的な列が放射線源の下を段階的に又は連続的に通過するように、プリントヘッドの横方向経路に隣接している場合がある。
【0152】
発せられる光の一部が光開始剤又は光開始剤系により吸収され得る限り、高又は低圧水銀ランプ、冷陰極管、ブラックライト、紫外LED、紫外レーザー及びフラッシュライトのようないずれの紫外光源も放射線源として用いられる場合がある。もちろん好ましい源は300-400nmの主波長を有する比較的長波長のUV-寄与を示すものである。特定的にUV-A光源は、それを用いて光散乱が減少し、より有効な内部硬化を生ずるので好ましい。
【0153】
UV線は一般にUV-A、UV-B及びUV-Cとして以下の通りに分類される:
●UV-A:400nmないし320nm
●UV-B:320nmないし290nm
●UV-C:290nmないし100nm
【0154】
好ましい態様において、放射線硬化性インキジェットインキはUV LEDsにより硬化する。好ましくはインキジェット印刷装置は、好ましくは360nmより長い波長を有する1個以上のUV LEDs、好ましくは380nmより長い波長を有する1個以上のUV LEDsそして最も好ましくは約395nmの波長を有するUV LEDsを含む。
【0155】
さらに、異なる波長又は照度の2つの光源を連続的に又は同時に用いてインキ画像を硬化させることが可能である。例えば第一のUV源をUV-C、特に260nm-200nmの領域において豊富であるように選択することができる。次いで第二のUV源はUV-Aにおいて豊富であることができ、例えばガリウムがドーピングされたランプであることができるか、又はUV-A及びUV-Bの両方において高い異なるランプであることができる。2つのUV源の使用は利点、例えば速い硬化速度及び高い硬化度を有することが見いだされた。
【0156】
硬化を助長するために、インキジェット印刷装置は多くの場合に1個以上の酸素減少装置(oxygen depletion units)を含む。酸素減少装置は、硬化環境中の酸素濃度を低下させるために、窒素又は他の比較的不活性な気体(例えばCO2)のブランケットを調整可能な位置及び調整可能な不活性気体濃度で配置する。残留酸素レベルは通常200ppmのように低く保たれるが、一般に200ppmないし1200ppmの範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0157】
実施例
材料
以下の実施例において用いられるすべての材料は、他にことわらなければALDRICH CHEMICAL Co.(ベルギー)及びACROS(ベルギー)のような標準的な供給源から容易に入手可能であった。用いられた水は脱イオン水であった。
【0158】
CTFAはARKEMAからSartomerTM SR531として入手可能な環状トリメチルプロパンホルマールアクリレートである。
【0159】
VEEAはNIPPON SHOKUBAI,Japanから入手可能な2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレートである。
【0160】
SR335はARKEMEからSartomerTM SR335として入手可能なラウリルアクリレートである。
【0161】
ACMOはRAHNから入手可能なアクリロイルモルホリンである。
【0162】
CD420はARKEMAからSartomerTM CD420として入手可能な一官能基性環状アクリルモノマーである。
【0163】
TMPTAはARKEMAからSartomerTM SR351として入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0164】
ITXはLAMBSON SPECIALTY CHEMICALSからのSpeedcureTM ITX、イソプロピルチオキサントン異性体の混合物である。
【0165】
EPDはRAHN AGからGenocureTM EPDの商品名の下に入手可能なエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートである。
【0166】
BAPOはBASFからIrgacureTM 819として入手可能なビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド光開始剤である。
【0167】
INHIBは表4に従う組成を有する重合抑制剤を形成する混合物である。
【0168】
【表4】
【0169】
CupferronTM ALはWAKO CHEMICALS LTDからのアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンである。
【0170】
DPGDAはARKEMAからSartomer SR508として入手可能なジプロピレンジアクリレートである。
【0171】
Ebecryl 1360はALLNEXからのポリシロキサンヘキサアクリレートスリップ剤である。
【0172】
CyanはSUN FAST BLUE 15:4、SUN CHEMICALSから入手可能なシアン顔料である。
【0173】
YellowはCROMOPHTAL YELLOW D 1085J、BASFからのイエロー顔料である。
【0174】
Disperbyk 162は分散剤であり、BYK(ALTANA)から入手可能な溶液から沈殿させた。
【0175】
PB5はHYDRITE CHEMICAL COMPANYからPB5として入手可能な分岐鎖状ポリ(4-ヒドロキシスチレン)である。
【0176】
FR01はADEKA PALMAROLからADK Stab FP600の商品名の下に商業的に入手可能な難燃剤である。
【0177】
ACROSからのアクリル酸99.5%。
【0178】
方法
粘度
インキの粘度は45℃において且つ1000s-1のせん断速度において、CAMBRIDGE APPLIED SYSTEMSからの“Robotic Viscometer Type VISCObot”を用いて測定された。
【0179】
工業的なインキジェット印刷の場合、45℃及び1000s-1のせん断速度における粘度は好ましくは5.0mPa.sと15mPa.sの間である。より好ましくは、45℃及び1000s-1のせん断速度における粘度は15mPa.s未満である。
【0180】
接着
カット間に1mmの空間を有するBRAIVE INSTRUMENTSからのBraive No.1536 Cross Cut Testerを用い、且つTesatapeTM 4104 PVCテープと組み合わせて600gの重りを用いる、ISO2409:1992(E).塗装(国際標準 1992-08-15)に従うクロスカット試験(cross-cut test)により接着を評価した。表5に記載される基準に従って評価を行い、ここでクロスカット内及びクロスカット外の接着の両方を評価した。
【0181】
【表5】
【0182】
はんだ抵抗性
SOLDER CONNECTIONから入手可能な“K” Grade 63:37
錫/鉛はんだが満たされたL&M PRODUCTSから入手可能なSPL600240 Digital Dynamic Solder Potを用い、はんだマスクインキジェットインキのはんだ抵抗性を評価した。はんだの温度は290℃に設定された。
【0183】
Q-チップを用い、SOLDER CONNECTIONからのはんだフラックスSC7560Aを試料の表面上に適用し(すなわち接着の下に記載した銅表面上のはんだマスクインキジェットインキのコーティング)、表面を清浄化した。試料をはんだポット上に10分間置くことにより、はんだフラックスを乾燥した。
【0184】
はんだポットに試料を置いた後、はんだ波を10秒間生ぜしめ、その後試料を少なくとも10分間冷却した。
【0185】
次いで冷却された試料についてテープテストを用い、銅表面上におけるはんだマスクインキジェットインキの接着を評価した。TESA AG,Germanyからの黒色テープTesa 4104/04をコーティング上に貼り、その直後にテープを手により剥がした。
【0186】
視覚検査は0(非常に優れた接着)ないし5(非常に劣った接着)の範囲の接着の質を生じた。
【0187】
共開始剤の製造
共開始剤COINI-1ないしCOINI-3、COINI-16及びCOINI-17を以下の通りに製造した。
【0188】
COINI-1の合成
以下の反応スキームに従って共開始剤COINI-1を製造した。
【化7】
【0189】
出発材料として用いられるメシル化ポリ(エチレングリコール)をGrieshaber et al.(Macromolecules,42(7),2532-2541(2009))に記載されている通りに製造した。
【0190】
他の出発材料である1-(2-メルカプトエチル)モルホリンを国際公開第2012/075494号パンフレットに記載されている通りに製造した。
【0191】
1.5リットルのエタノール中の142g(3.55モル)の水酸化ナトリウムの溶液を調製した。521.8g(3.55モル)の1-(2-メルカプトエチル)ピペリジンを加え、続いて温度を35℃未満に保ちながら809gのジメシル化ポリ(エチレングリコール)400を30分間かけて加えた。
【0192】
反応を室温で2時間続けさせた。
【0193】
沈殿する塩をろ過により除去し、1リットルのエタノールで洗浄した。
【0194】
合わせたエタノール画分を減圧下で蒸発させ、残留物を750mlの塩化メチレン中に再溶解した。塩化メチレン溶液を200mlの5N NaOHで3回、200mlの水で1回抽出し、MgSO4上で乾燥した。
【0195】
塩化メチレンを減圧下で除去し、600gのCOINI-1を単離した。
【0196】
COINI-2の合成
以下の反応スキームに従って共開始剤COINI-2を製造した。
【化8】
【0197】
840mlのエタノールに49.6g(2.16モル)のナトリウムを分けて加えることにより、ナトリウムエタノレートを新しく調製した。混合物を3時間撹拌した。
【0198】
183g(1.08モル)の2-(ジエチルアミノ)エタンチオール塩酸塩を加え、混合物を30分間撹拌した。
【0199】
400mlのエタノール中の150gのジメシル化ポリ(エチレングリコール)200の溶液を加えた。反応混合物を4時間加熱還流した。
【0200】
反応混合物を室温に冷まし、沈殿する塩をろ過により除去し、溶媒を減圧下で蒸発させた。
【0201】
残留物を600mlの塩化メチレン中に溶解し、240mlの10%塩酸で注意深く3回抽出した。30重量%の水酸化ナトリウム溶液で水相を中和し、360mlの塩化メチレンで3回抽出した。プールした塩化メチレン画分をNa2SO4上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。
【0202】
粗ポリマーをシリカゲル上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、溶離剤として塩
化メチレン/メタノール/アンモニア 90/9/1を用いて精製した。125gのCOINI-2が単離された。
【0203】
COINI-3の合成
以下の反応スキームに従って共開始剤COINI-3を製造した。
【化9】
【0204】
480mlのエタノールに28.5g(1.239モル)のナトリウムを分けて加えることにより、ナトリウムエタノレートを新しく調製した。混合物を3時間撹拌した。
【0205】
105g(0.627モル)の2-(ジエチルアミノ)エタンチオール塩酸塩を加え、混合物を30分間撹拌した。
【0206】
250mlのエタノール中の140.2gのジメシル化ポリ(エチレングリコール)400の溶液を加えた。反応混合物を4時間加熱還流した。
【0207】
反応混合物を室温に冷まし、沈殿する塩をろ過により除去し、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗ポリマーをシリカゲル上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、溶離剤として塩化メチレン/メタノール/アンモニア 90/9/1を用いて精製した。97gのCOINI-3が単離された。
【0208】
COINI-16の合成
以下の反応スキームに従って共開始剤COINI-16を製造した。
【化10】
【0209】
4-(ジメチルアミノ)-安息香酸-2-[(1-オキソ-2-プロペニル)オキシ]エチルエステルを国際公開第2009053348号パンフレットに従って製造した。
【0210】
3.9g(15ミリモル)の4-(ジメチルアミノ)-安息香酸-2-[(1-オキソ-2-プロペニル)-オキシ]エチルエステル及び66mgのBHTを140mlの酢酸エチル中に溶解した。
【0211】
2.48g(18ミリモル)の炭酸カリウムを加え、続いて1.29g(16.5ミリモル)の2-メルカプト-エタノールを加えた。反応を60℃で1時間続けさせた。
【0212】
反応混合物を室温に冷まし、沈殿する塩をろ過により除去した。溶媒を減圧下で除去した。
【0213】
COINI-16をさらなる精製なしで用いた。1H-NMR分光分析(DMSO d6)を用いてCOINI-16を特性化した(表6を参照されたい)。
【0214】
【表6】
【0215】
COINI-17の合成
以下の反応スキームに従って共開始剤COINI-17を製造した。
【化11】
【0216】
1g(3.8ミリモル)の4-(ジメチルアミノ)-安息香酸-2-[(1-オキソ-2-プロペニル)-オキシ]エチルエステルを25mlの酢酸エチル中に溶解した。0.578g(4.18ミリモル)の炭酸カリウムを加え、続いて0.35g(1.9ミリモル)の1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタンを加えた。反応を60℃で1時間続けさせた。
【0217】
反応混合物を室温に冷まし、沈殿する塩をろ過により除去した。
【0218】
混合物を65mlの水で2回抽出した。有機画分を単離し、Na2SO4上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。COINI-17をさらなる精製なしで用いた。
【0219】
1H-NMR分光分析(CDCl3、参照としてTMS)を用いてCOINI-17を特性化した(表7を参照されたい)。
【0220】
【表7】
【0221】
緑顔料分散液GPD
以下の通りにGPDを調製した:138gの2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート中に4重量%の4-メトキシフェノール、10重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び3.6重量%のアルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンを含む2gの溶液ならびに30gのCyan及び30gのYellowをDISPERLUXTM ディスペンサーを用いて混合した。30分間撹拌を続けた。900gの0.4mmイットリウム安定化ジルコニアビーズ(TOSOH Co.からの「高耐摩耗性ジルコニア磨砕媒体」)が満たされたNETZCH MiniZetaミルに容器を連結した。120分かけ、約10.4m/秒のミル中の回転速度で混合物をミル上に循環させた(45分間の滞留時間)。完全な磨砕法の間、ミル内の内容物を冷却して60℃未満の温度を保った。磨砕後、分散液を容器中に排出した。
【0222】
【表8】
【実施例1】
【0223】
この実施例は本発明に従う共開始剤の効果を示す。
【0224】
本発明及び比較用のインキジェットインキINV-01ないしINV-04及びCOMP-01の調製
表9に従って比較用の放射線硬化性インキジェットインキCOMP-01及び本発明の放射線硬化性インキジェットインキINV-01ないしINV-04を調製した。重量パーセンテージ(重量%)はすべて放射線硬化性インキジェットインキの合計重量に基づく。
【0225】
【表9】
【0226】
Anapurna M2050iを用いて35μmの磨かれた(brushed)Cuラミネート又は磨かれたFRラミネート上にインキを噴射することにより、比較用の試料COMP-1及び本発明の試料INV-1ないしINV-04を得た(8回の通過、45
℃の噴射温度、各通過後にLED 395nmランプを用いて100%ピンニング硬化(pincure))。さらに150℃における60分間の熱硬化を行った。
【0227】
比較用のインキCOMP-01及び本発明のインキINV-01ないしINV-04のはんだ抵抗性を上記の通りにテストした。結果を表10に示す。
【0228】
【表10】
【0229】
表10の結果から、本発明に従う共開始剤を含む本発明のインキジェットインキはすべて酸性接着促進剤を含むインキジェットインキと比較してCu及びFR表面への同等の接着及びはんだ抵抗性を有することが明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能な化合物、光開始剤及び共開始剤を含み、ここで共開始剤は脂肪族第3級アミン共開始剤又は芳香族共開始剤であり、芳香族共開始剤はアミノ置換安息香酸誘導体、アミノ置換芳香族アルデヒド及びアミノ置換芳香族ケトンからなる群より選ばれる、放射線硬化性インキジェットインキであって、共開始剤が脂肪族チオエーテル及び脂肪族ジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1個の官能基を含むことを特徴とする、放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項2】
脂肪族第3級アミン共開始剤が、式I、
【化1】
[式中、
1及びR2は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
1及びR2は5ないし8員環の形成に必要な原子を示すことができ;
1は置換又は非置換エチレン又はプロピレン基を示し;
3は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれる]
に従う化学構造を有する、請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項3】
脂肪族第3級アミン共開始剤が、式II、
【化2】
[式中、
4及びR5は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
4及びR5は5ないし8員環の形成に必要な原子を示すことができ;
2は2ないし10個の炭素原子を含む2価の連結基を示す]
に従う化学構造を有する、請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項4】
共開始剤が、式III、
【化3】
[式中、
6及びR7は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
6及びR7は5ないし8員環の形成に必要な原子を示すことができ;
3は置換又は非置換エチレン又はプロピレン基を示し;
8は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれる]
に従う化学構造を有するアミノ置換安息香酸誘導体である、請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項5】
共開始剤が式III、
【化4】
[式中、
9及びR10は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アラルキル基からなる群より選ばれ;
9及びR10は5ないし8員環の形成に必要な原子を示すことができ;
4は2ないし10個の炭素原子を含む2価の連結基を示す]
に従う化学構造を有するアミノ置換安息香酸誘導体である、請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項6】
重合可能な化合物がネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及び2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレートからなる群より選ばれる請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項7】
さらにフェノール性樹脂又はヒドロキシスチレンに基づく樹脂を含む請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項8】
さらに着色剤を含む請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項9】
さらに難燃剤を含む請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項10】
請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットを支持体上に噴射し、硬化させるインキジェット印刷段階を含むプリント基板(PCB)の製造方法。
【請求項11】
UV線を用いて硬化を行う請求項10に記載の方法。
【請求項12】
インキジェット印刷段階に導電パターンを含む誘電性支持体上にはんだマスクを与える請求項10に記載の方法。
【請求項13】
加熱段階も含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
インキジェット印刷段階に金属表面上にエッチレジストを与える請求項10に記載の方法。
【請求項15】
金属表面が銅表面である請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】